(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004943
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】脱臭フィルタ及びこれを含む空気清浄装置
(51)【国際特許分類】
A61L 9/014 20060101AFI20230110BHJP
A61L 9/00 20060101ALI20230110BHJP
B01J 20/18 20060101ALI20230110BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20230110BHJP
F24F 8/80 20210101ALI20230110BHJP
F24F 8/108 20210101ALI20230110BHJP
F24F 8/15 20210101ALI20230110BHJP
F24F 11/72 20180101ALI20230110BHJP
B01J 29/08 20060101ALI20230110BHJP
F24F 110/60 20180101ALN20230110BHJP
F24F 110/65 20180101ALN20230110BHJP
【FI】
A61L9/014 ZAB
A61L9/00 C
B01J20/18 E
B01J20/30
F24F8/80 150
F24F8/108 110
F24F8/15
F24F8/108 310
F24F11/72
B01J29/08 A
F24F110:60
F24F110:65
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100747
(22)【出願日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】10-2021-0082310
(32)【優先日】2021-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】502032105
【氏名又は名称】エルジー エレクトロニクス インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】LG ELECTRONICS INC.
【住所又は居所原語表記】128, Yeoui-daero, Yeongdeungpo-gu, 07336 Seoul,Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】519135633
【氏名又は名称】公立大学法人大阪
(74)【代理人】
【識別番号】100109841
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 健史
(74)【代理人】
【識別番号】230112025
【弁護士】
【氏名又は名称】小林 英了
(72)【発明者】
【氏名】西垣 賢一
(72)【発明者】
【氏名】松岡 雅也
(72)【発明者】
【氏名】堀内 悠
【テーマコード(参考)】
3L260
4C180
4G066
4G169
【Fターム(参考)】
3L260AB18
3L260BA09
3L260CA17
3L260FC25
4C180AA02
4C180BB09
4C180CC01
4C180CC02
4C180CC04
4C180CC15
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4G066AA31B
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4G066AB13A
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4G066BA36
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4G066FA33
4G066FA37
4G169AA03
4G169BA04A
4G169BA07A
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4G169DA06
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4G169FC08
4G169ZA01A
4G169ZA04A
4G169ZC04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ガス吸着剤と相互作用の弱い有害ガスを効率的に除去することができる脱臭フィルタを提供する。
【解決手段】複数の気孔が形成された第1多孔質体を含み、ガスを酸化させるように、前記第1多孔質体の気孔に酸化触媒または酸化剤が配置され、前記第1多孔質体は疎水性で、酸点を有する第1吸着剤5aと、複数の気孔が形成された第2多孔質体を含み、前記第2多孔質体は前記第1吸着剤を通過しながら発生した酸化ガスを吸着するゼオライトで構成された第2吸着剤5bと、を備える本発明による脱臭フィルタにより達成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱臭フィルタであって、
複数の気孔が形成された第1多孔質体を備え、ガスを酸化させるように前記第1多孔質体の気孔に酸化触媒又は酸化剤が配置され、前記第1多孔質体は疎水性であり、酸点を有する第1吸着剤と、
複数の気孔が形成された第2多孔質体を備え、前記第2多孔質体は前記第1吸着剤を通過しながら発生した酸化ガスを吸着するゼオライトで構成された第2吸着剤と、を備えてなる、脱臭フィルタ。
【請求項2】
前記第1多孔質体に形成された複数の気孔の平均大きさは、前記第2多孔質体に形成された複数の気孔の平均大きさ以上である、請求項1に記載の脱臭フィルタ。
【請求項3】
前記第1吸着剤と前記第2吸着剤は並列に互いに異なるフィルタ基材に配置される、請求項1に記載の脱臭フィルタ。
【請求項4】
前記第1吸着剤は、五酸化ヨウ素が含有されたHYゼオライトを用いる、請求項1に記載の脱臭フィルタ。
【請求項5】
前記第1吸着剤は、SiO2/Al2O3比が500以上であるHYゼオライトを用いる、請求項1に記載の脱臭フィルタ。
【請求項6】
前記五酸化ヨウ素が含有されたHYゼオライトは、五酸化ヨウ素とイオン交換水に溶解させた水溶液と、HYゼオライトを室温で混合して、アルゴン環境で脱水して生成されたものである、請求項4に記載の脱臭フィルタ。
【請求項7】
前記五酸化ヨウ素が含有されたHYゼオライトは、
1)五酸化ヨウ素と、イオン交換水に溶解させた水溶液と、HYゼオライトを室温で湿式混合し、第1設定時間で乾燥させるステップと、
2)前記乾燥過程で生成された乾燥粉末を前記第1設定時間よりも長い第2設定時間、アルゴン環境で加熱して部分脱水させるステップと、
3)その後、更に、前記第2設定時間よりも長い第3設定時間、アルゴン環境で加熱して完全に脱水させるステップと、を経て生成される、請求項4に記載の脱臭フィルタ。
【請求項8】
前記五酸化ヨウ素が含有されたHYゼオライトは、
前記1)ステップでは、乾燥過程を第1設定温度で行い、
前記2)ステップでは、前記第1設定温度よりも高い第2設定温度で部分脱水し、
前記3)ステップでは、前記第2設定温度よりも高い第3設定温度で完全脱水して生成される、請求項7に記載の脱臭フィルタ。
【請求項9】
前記第2吸着剤は、エチレンジアミンが含有されたNaYゼオライトを用いる、請求項1に記載の脱臭フィルタ。
【請求項10】
前記第2吸着剤は、
エチレンジアミン一水和物をエタノールに投入して室温で撹拌して堆積液を作り、前記堆積液をNaYゼオライトに室温で湿式混合し、蒸発させて生成されたエチレンジアミンが50wt%含有されたNaYゼオライトを用いる、請求項9に記載の脱臭フィルタ。
【請求項11】
空気清浄装置であって、
吸入口と吐出口が形成されるケースと、
前記ケースの内部に配置され、前記吸入口から前記吐出口に空気流動を形成するファンと、
前記ケースの内部に配置され、流動する空気中の悪臭ガスを除去する脱臭フィルタと、を備えてなり、
前記脱臭フィルタは、
複数の気孔が形成された第1多孔質体を備え、ガスを酸化させるように前記第1多孔質体の気孔に酸化触媒又は酸化剤が配置され、
前記第1多孔質体は、
疎水性で、酸点を有する第1吸着剤と、
複数の気孔が形成された第2多孔質体と、を備え、
前記第2多孔質体は、
前記第1吸着剤を通過しながら発生した酸化ガスを吸着するゼオライトで構成された第2吸着剤と、を備える、空気清浄装置。
【請求項12】
前記第1吸着材は、前記第2吸着材よりも前記吸入口に隣接して配置され、
前記第2吸着材は、前記第1吸着材よりも前記吐出口に隣接して配置される、請求項11に記載の空気清浄装置。
【請求項13】
前記ケースの内側に配置され、流動する空気中の悪臭ガスの濃度を感知するにおいセンサを更に備え、
前記においセンサは、前記吸入口と前記脱臭フィルタとの間に配置される、請求項11に記載の空気清浄装置。
【請求項14】
前記においセンサから感知される悪臭ガスの濃度を基準として前記ファンの回転速度を調節する制御装置を更に備える、請求項13に記載の空気清浄装置。
【請求項15】
前記制御装置は、前記においセンサで感知される悪臭ガスの濃度が濃くなるほど前記ファンの回転速度を高める、請求項14に記載の空気清浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱臭フィルタ及びこれを含む空気清浄装置に関し、2つの吸着剤を備えた脱臭フィルタ及びこれを含む空気清浄装置に関する。
【0002】
〔関連技術〕
本願は、韓国特許出願第10-2021-0082310号(出願日:2021年6月24日)に基づくパリ条約4条の優先権主張を伴ったものであり、本願発明は、当該韓国特許出願に開示された内容に基づくものである。参考のために、当該韓国特許出願の明細書、特許請求の範囲及び図面の内容は本願明細書の一部に包摂される。
【背景技術】
【0003】
一般に、脱臭フィルタ用吸着剤は、多孔質体に化学添着剤が添着された構成からなって、悪臭ガス成分が一旦多孔質体に物理的に吸着され、化学添着剤に拡散されて化学吸着されることで脱臭される。特に、化学吸着は化学結合であるので、再脱離が少なく、悪臭ガスが低濃度の場合にも、高い脱臭性能を得ることができる。
【0004】
しかしながら、化学的に安定した無極性ガス(例えば、トルエン)は、多孔質体と化学添着剤との相互作用が弱くて、外部環境のガス濃度が低濃度になるか、加熱環境では多孔質体から簡単に再脱離されて室内に放出されるという問題がある。
【0005】
一方、触媒を併用することにより、有害ガスをCO2とH2Oに完全に分解して解毒することができる。然し乍ら、分解速度は吸着速度に比べて非常に遅くて、完全に分解されるまでアルデヒドなどの他の有害な中間生成物が吸着剤から脱離されて室内に放出されるという問題がある。
【0006】
日本国特許第6568402号(B2:特許文献1)では、光触媒によってガス分解を実施しているが、分解活性を出すために、ブラックライトなどの光源と導光板などの光触媒に対する導光経路の確保が必要となって、複雑な装置構成が必要となるという問題がある。
【0007】
日本国特許第6417597号(B2:特許文献2)では、金属触媒、多孔性セラミックス、及び活性炭、ゼオライト及び珪藻土からなる群で選択される少なくとも1種を含む脱臭材料を含む脱臭フィルタを用いる脱臭装置を開示する。ただ、前記文献では、ガス分解触媒金属触媒に限定されていて、材料選択の幅が狭いという問題がある。
【0008】
また、実施例では、吸着剤の追加機能が低いホルムアルデヒドを金属触媒である二酸化マンガンに完全に分解して除去効率を高めているが、ホルムアルデヒドは、比較的短時間内に分解ガスであり、トルエンまたはアルコールなど完全分解まで時間がかかるガスに対しては、アルデヒド類の中間生成物が放出されるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】日本国特許第6568402号公報
【特許文献2】日本国特許第6417597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、ガス吸着剤と相互作用の弱い有害ガスを効率的に除去することができる脱臭フィルタ、及びこれを含む空気清浄装置を提供することである。
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、多様な空気清浄装置に構造や設計の変更なしに容易に適用することができる脱臭フィルタを提供することである。
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、中間生成物の発生なしに、迅速なガス除去が可能な脱臭フィルタを提供することである。
【0013】
本発明の課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及されなかったまた他の課題は、以下の記載から当業者に明確に理解されるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
〔本発明の一の態様〕
本発明にあっては、その一の態様として、以下の発明を提案する。
〔1〕 脱臭フィルタであって、
複数の気孔が形成された第1多孔質体を備え、ガスを酸化させるように前記第1多孔質体の気孔に酸化触媒又は酸化剤が配置され、前記第1多孔質体は疎水性であり、酸点を有する第1吸着剤と、
複数の気孔が形成された第2多孔質体を備え、前記第2多孔質体は前記第1吸着剤を通過しながら発生した酸化ガスを吸着するゼオライトで構成された第2吸着剤と、を備えてなる、脱臭フィルタ。
〔2〕 前記第1多孔質体に形成された複数の気孔の平均大きさは、前記第2多孔質体に形成された複数の気孔の平均大きさ以上である、〔1〕に記載の脱臭フィルタ。
〔3〕 前記第1吸着剤と前記第2吸着剤は並列に互いに異なるフィルタ基材に配置される、〔1〕に記載の脱臭フィルタ。
〔4〕 前記第1吸着剤は、五酸化ヨウ素が含有されたHYゼオライトを用いる、〔1〕に記載の脱臭フィルタ。
〔5〕 前記第1吸着剤は、SiO2/Al2O3比が500以上であるHYゼオライトを用いる、〔1〕に記載の脱臭フィルタ。
〔6〕 前記五酸化ヨウ素が含有されたHYゼオライトは、五酸化ヨウ素とイオン交換水に溶解させた水溶液と、HYゼオライトを室温で混合して、アルゴン環境で脱水して生成されたものである、〔4〕に記載の脱臭フィルタ。
〔7〕 前記五酸化ヨウ素が含有されたHYゼオライトは、
1)五酸化ヨウ素と、イオン交換水に溶解させた水溶液と、HYゼオライトを室温で湿式混合し、第1設定時間で乾燥させるステップと、
2)前記乾燥過程で生成された乾燥粉末を前記第1設定時間よりも長い第2設定時間、アルゴン環境で加熱して部分脱水させるステップと、
3)その後、更に、前記第2設定時間よりも長い第3設定時間、アルゴン環境で加熱して完全に脱水させるステップと、を経て生成される、〔4〕に記載の脱臭フィルタ。
〔8〕 前記五酸化ヨウ素が含有されたHYゼオライトは、
前記1)ステップでは、乾燥過程を第1設定温度で行い、
前記2)ステップでは、前記第1設定温度よりも高い第2設定温度で部分脱水し、
前記3)ステップでは、前記第2設定温度よりも高い第3設定温度で完全脱水して生成される、〔7〕に記載の脱臭フィルタ。
〔9〕 前記第2吸着剤は、エチレンジアミンが含有されたNaYゼオライトを用いる、〔1〕に記載の脱臭フィルタ。
〔10〕 前記第2吸着剤は、
エチレンジアミン一水和物をエタノールに投入して室温で撹拌して堆積液を作り、前記堆積液をNaYゼオライトに室温で湿式混合し、蒸発させて生成されたエチレンジアミンが50wt%含有されたNaYゼオライトを用いる、〔9〕に記載の脱臭フィルタ。
〔11〕 空気清浄装置であって、
吸入口と吐出口が形成されるケースと、
前記ケースの内部に配置され、前記吸入口から前記吐出口に空気流動を形成するファンと、
前記ケースの内部に配置され、流動する空気中の悪臭ガスを除去する脱臭フィルタと、を備えてなり、
前記脱臭フィルタは、
複数の気孔が形成された第1多孔質体を備え、ガスを酸化させるように前記第1多孔質体の気孔に酸化触媒又は酸化剤が配置され、
前記第1多孔質体は、
疎水性で、酸点を有する第1吸着剤と、
複数の気孔が形成された第2多孔質体と、を備え、
前記第2多孔質体は、
前記第1吸着剤を通過しながら発生した酸化ガスを吸着するゼオライトで構成された第2吸着剤と、を備える、空気清浄装置。
〔12〕 前記第1吸着材は、前記第2吸着材よりも前記吸入口に隣接して配置され、
前記第2吸着材は、前記第1吸着材よりも前記吐出口に隣接して配置される、〔11〕に記載の空気清浄装置。
〔13〕 前記ケースの内側に配置され、流動する空気中の悪臭ガスの濃度を感知するにおいセンサを更に備え、
前記においセンサは、前記吸入口と前記脱臭フィルタとの間に配置される、〔11〕に記載の空気清浄装置。
〔14〕 前記においセンサから感知される悪臭ガスの濃度を基準として前記ファンの回転速度を調節する制御装置を更に備える、〔13〕に記載の空気清浄装置。
〔15〕 前記制御装置は、前記においセンサで感知される悪臭ガスの濃度が濃くなるほど前記ファンの回転速度を高める、〔14〕に記載の空気清浄装置。
〔16〕 前記〔4〕に記載の脱臭フィルタに用いられる前記五酸化ヨウ素が含有されたHYゼオライトの製造方法であって、
五酸化ヨウ素とイオン交換水に溶解させた水溶液と、HYゼオライトを室温で混合し、
アルゴン環境で脱水して生成することを含んでなる、製造方法。
〔17〕 〔4〕(請求項4)に記載の脱臭フィルタに用いられる前記五酸化ヨウ素が含有されたHYゼオライトの製造方法であって、
1)五酸化ヨウ素と、イオン交換水に溶解させた水溶液と、HYゼオライトを室温で湿式混合し、第1設定時間で乾燥させるステップと、
2)前記乾燥過程で生成された乾燥粉末を前記第1設定時間よりも長い第2設定時間、アルゴン環境で加熱して部分脱水させるステップと、
3)その後、更に、前記第2設定時間よりも長い第3設定時間、アルゴン環境で加熱して完全に脱水させるステップと、を含んでなる、製造方法。
〔18〕 前記五酸化ヨウ素が含有されたHYゼオライトは、
前記1)ステップでは、乾燥過程を第1設定温度で行い、
前記2)ステップでは、前記第1設定温度よりも高い第2設定温度で部分脱水し、
前記3)ステップでは、前記第2設定温度よりも高い第3設定温度で完全脱水して生成される、〔17〕に記載の製造方法。
〔19〕 〔1〕に記載の脱臭フィルタの用いられる前記第2吸着剤の製造方法であって、
NaYゼオライトにエチレンジアミンを含有させることを含んでなる、製造方法。
〔20〕 前記第2吸着剤は、
エチレンジアミン一水和物をエタノールに投入して室温で撹拌して堆積液を調製し、
前記堆積液をNaYゼオライトに室温で湿式混合し、蒸発させ、
エチレンジアミンが50wt%含有されたNaYゼオライトを得る、〔19〕に記載の製造方法。
【0015】
前記課題を達するために、本発明の実施形態に係る脱臭フィルタは、複数の気孔が形成された第1多孔質体を含み、ガスを酸化させるように前記第1多孔質体の気孔に酸化触媒または酸化剤が配置され、前記第1多孔質体は疎水性で、酸点を有する第1吸着剤と、複数の気孔が形成された第2多孔質体を含み、前記第2多孔質体は、前記第1吸着剤を通過しながら発生した酸化ガスを吸着するゼオライトで構成された第2吸着剤とを含み(備える;構成する;構築する;設定する;包接する;包含する;含有する)、第1吸着剤を通過したガスが酸化され、酸化されたガスが第2吸着剤に吸着されることができる。
【0016】
前記第1多孔質体に形成された複数の気孔の平均大きさ(サイズ)は、前記第2多孔質体に形成された複数の気孔の平均大きさ以上に形成されて、第1吸着剤を経て酸化された大きさの小さい分子が第2多孔質体を通過することができる。
【0017】
前記第1吸着剤と前記第2吸着剤は並列に互いに異なるフィルタ基材に配置されて、第1吸着剤を通過したガスが第2吸着剤を通過する。
【0018】
前記第1吸着剤は、五酸化ヨウ素が含有されたHYゼオライトを用いて、悪臭ガスの酸化を促進させることができる。
【0019】
前記第1吸着剤は、500以上のSiO2/Al2O3比のHYゼオライトを用いて、悪臭ガスの酸化を促進させることができる。
【0020】
前記五酸化ヨウ素が含有されたHYゼオライトは、五酸化ヨウ素とイオン交換水に溶解させた水溶液と、HYゼオライトを室温で混合し、アルゴン環境で脱水して生成する。
【0021】
前記五酸化ヨウ素が含有されたHYゼオライトは、1)五酸化ヨウ素と、イオン交換水に溶解させた水溶液と、HYゼオライトを室温で湿式混合し、第1設定時間乾燥させるステップと、2)前記乾燥過程で生成された乾燥粉末を前記第1設定時間よりも長い第2設定時間アルゴン環境で加熱して部分脱水させるステップと、3)その後、さらに前記第2設定時間よりも長い第3設定時間アルゴン環境で加熱して完全に脱水させるステップとを経て生成される。
【0022】
前記五酸化ヨウ素が含有されたHYゼオライトは、前記1)ステップで、乾燥過程を第1設定温度で行い、前記2)ステップは、前記第1設定温度よりも高い第2設定温度で部分脱水し、前記3)ステップは、前記第2設定温度よりも高い第3設定温度で完全脱水して生成される。
【0023】
前記第2吸着剤は、エチレンジアミンが含有されたNaYゼオライトを用いて、酸化された悪臭ガスを吸着することができる。
【0024】
前記第2吸着剤は、エチレンジアミン一水和物をエタノールに投入して、室温で撹拌して堆積液を作り、前記堆積液をNaYゼオライトで、室温で湿式混合し、蒸発させて生成されたエチレンジアミンが50wt%含有されたNaYゼオライトを用いる。
【0025】
前記課題を達するために、本発明の実施形態に係る空気清浄装置は、吸入口と吐出口が形成されるケースと、前記ケースの内部に配置され、前記吸入口から前記吐出口に空気流動を形成するファンと、前記ケースの内部に配置され、流動する空気中の悪臭ガスを除去する脱臭フィルタとを含み、前記脱臭フィルタは、複数の気孔が形成された第1多孔質体を含み、ガスを酸化させるように前記第1多孔質体の気孔に酸化触媒または酸化剤が配置され、前記第1多孔質体は疎水性で、酸点を有する第1吸着剤と、複数の気孔が形成された第2多孔質体を含み、前記第2多孔質体は前記第1吸着剤を通過しながら発生した酸化ガスを吸着するゼオライトで構成された第2吸着剤と、を含んで、吸入口から流入された悪臭ガスを、第1吸着剤を通じて(介して)酸化させ、酸化されたガスが第2吸着剤に吸着されることができる。
【0026】
前記第1吸着材は前記第2吸着材よりも前記吸入口に隣接して配置され、前記第2吸着材は前記第1吸着材よりも前記吐出口に隣接して配置されて、吸入口に流入された空気中の悪臭ガスが第1吸着剤と第2吸着剤を順次通過する。
【0027】
前記ケースの内側に配置され、流動する空気中の悪臭ガスの濃度を感知するにおい(臭い;匂い等)センサをさらに含み、前記においセンサは、前記吸入口と前記脱臭フィルタとの間に配置されて、脱臭フィルタに流動する空気中の悪臭ガスの濃度を感知することができる。
【0028】
前記においセンサから感知される悪臭ガスの濃度を基準として前記ファンの回転速度を調節する制御装置をさらに含み、においセンサで感知される悪臭ガスの濃度に基づいてファンの速度を調節することができる。
【0029】
前記制御装置は、前記においセンサで感知される悪臭ガスの濃度が濃くなるほど前記ファンの回転速度を高めて、第2吸着剤の飽和を防止し、第1吸着剤の悪臭除去率を向上させることができる。
【0030】
本発明による脱臭フィルタに用いられる前記五酸化ヨウ素が含有されたHYゼオライトの製造方法であって、五酸化ヨウ素とイオン交換水に溶解させた水溶液と、HYゼオライトを室温で混合し、アルゴン環境で脱水して生成することを含んでなる、製造方法を提案する。
【0031】
本発明による脱臭フィルタに用いられる前記五酸化ヨウ素が含有されたHYゼオライトの製造方法であって、
1)五酸化ヨウ素と、イオン交換水に溶解させた水溶液と、HYゼオライトを室温で湿式混合し、第1設定時間で乾燥させるステップと、
2)前記乾燥過程で生成された乾燥粉末を前記第1設定時間よりも長い第2設定時間、アルゴン環境で加熱して部分脱水させるステップと、
3)その後、更に、前記第2設定時間よりも長い第3設定時間、アルゴン環境で加熱して完全に脱水させるステップと、を含んでなる、製造方法が提案される。
【0032】
前記五酸化ヨウ素が含有されたHYゼオライトは、
前記1)ステップでは、乾燥過程を第1設定温度で行い、
前記2)ステップでは、前記第1設定温度よりも高い第2設定温度で部分脱水し、
前記3)ステップでは、前記第2設定温度よりも高い第3設定温度で完全脱水して生成される、ことを含んでなる、本発明による五酸化ヨウ素が含有されたHYゼオライトの製造方法が提案される。
【0033】
本発明による脱臭フィルタの用いられる前記第2吸着剤の製造方法であって、
NaYゼオライトにエチレンジアミンを含有させることを含んでなる、製造方法が提案される。
【0034】
前記第2吸着剤は、
エチレンジアミン一水和物をエタノールに投入して室温で撹拌して堆積液を調製し、
前記堆積液をNaYゼオライトに室温で湿式混合し、蒸発させ、
エチレンジアミンが50wt%含有されたNaYゼオライトを得る、本発明による脱臭フィルタの用いられる前記第2吸着剤の製造方法が提案される。
【0035】
その他実施形態の具体的な事項は、詳細な説明及び図面に含まれている。
【発明の効果】
【0036】
本発明の脱臭フィルタ及びこれを含む空気清浄装置に係ると、次のような効果が一つ或はそれ以上ある。
【0037】
本発明の脱臭フィルタは、触媒または酸化剤が担持された多孔質体と化学吸着剤が添着された多孔質体の2種類のガス吸着剤を同時に備えて、除去対象ガスを触媒または酸化剤を通じて酸性ガスなどに変換した後、生成されたガスを化学吸着剤によって再び化学吸着させて、有害ガスを効率的に除去することができるという長所がある。
【0038】
本発明の脱臭フィルタは、第1吸着剤に用いられる触媒及び酸化剤は、常温で外部刺激がなく、活性があるので、多様な空気清浄装置に構造や設計の変更なしに容易に適用することができるという長所がある。
【0039】
本発明の脱臭フィルタは、金属触媒の外に他の酸化剤に効果があるので、材料選択の幅を広げることができるという長所がある。
【0040】
本発明の脱臭フィルタは、予め部分酸化で短時間の反応及び吸着することで中間生成物が発生することなく迅速なガス除去が可能であるという長所がある。
【0041】
本発明の効果は、以上で言及した効果に制限されず、言及されなかったまた他の効果は特許請求範囲の記載から当業者に明確に理解されるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】本発明の一実施形態に係る脱臭フィルタを含む空気清浄装置の概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る第1吸着剤を製造する方法を並べた順序図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る第2吸着剤を製造する方法を並べた順序図である。
【
図4】トルエンと五酸化ヨウ素の反応式を示した図面である。
【
図5】本発明の第1吸着剤にトルエンが反応する時の色変化と、第1吸着剤の比較例による吸着剤がトルエンと反応する時の色変化を示した写真である。
【
図6】本発明の脱臭フィルタの性能を試験するための実験体の概略図である。
【
図7】
図6の実験体で実験した脱臭フィルタの性能と、脱臭フィルタの比較例によるフィルタの性能を示したデータである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明の利点及び特徴、そしてそれらを達成する方法は、添付する図面と共に詳細に後述されている実施形態を参照すると明確になり得る。しかしながら、本発明は以下に開示される実施形態に限定されるのでなく、互いに異なる多様な形態に具現されることができ、単に本実施形態は本発明の開示が完全になるようにし、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は請求項の範疇により定義されるだけである。明細書の全体に亘って同一参照符号は同一構成要素を称する。
【0044】
以下、本発明の実施形態によって脱臭フィルタ及びこれを含む空気清浄装置を、図面を参考して説明することにする。
【0045】
図1を参照すると、本発明の空気清浄装置1は、一側に吸入口2aが形成され、他側に吐出口2bが形成されるケース2と、ケース2の内部に配置され、吸入口2aから吐出口2bに空気流動を形成するファン3と、ケース2の内部に配置され、流動する空気中の悪臭ガスを除去する脱臭フィルタ4と、ケース2の内部に配置され、悪臭ガスの濃度を感知するにおいセンサ7と、においセンサ7から感知される悪臭ガスの濃度を基準としてファン3の回転速度を調節する制御装置8とを含む。
【0046】
においセンサ7は、吸入口2aと脱臭フィルタ4との間に配置される。においセンサ7は、吸入口2aで流入された空気中の悪臭ガスの濃度を感知することができる。
【0047】
においセンサ7は、ppmで悪臭ガスの濃度を測定することができ、分解能が1ppm程度であれば制限はない。においセンサ7は、廉価で、安定的な半導体センサが好ましい。
【0048】
制御装置8は、においセンサ7で測定した悪臭ガスの濃度に応じてファン3の風速を制御することができる。すなわち、においセンサ7で感知された悪臭ガスの濃度が高濃度の場合、ファン3の風速を迅速に調節することができる。また、においセンサ7で感知された悪臭ガスの濃度が低濃度の場合、ファン3の風速を遅く調節することができる。
【0049】
脱臭フィルタ4は、ガスを触媒または酸化剤を通じて酸化させる第1吸着剤5aと、第1吸着剤5aを通過して酸化されたガスを化学吸着させる第2吸着剤5bとを含む。
【0050】
図1を参照すると、第1吸着剤5aと第2吸着剤5bのそれぞれは、別途のフィルタ基材6a、6bに装着される。すなわち、第1吸着剤5aは、第1フィルタ基材6aに装着され、第2吸着剤5bは、第2フィルタ基材6bに装着される。第1吸着剤5aと第2吸着剤5bは、空気の流動方向に並列に配置される。よって、吸入口2aを通過して吐出口2bに流動する空気は、第1吸着剤5aと第2吸着剤5bを順次経ることができる。第1吸着剤5aは、吸入口2aに隣接して配置され、第2吸着剤5bは、吐出口2bに隣接して配置される。
【0051】
したがって、第1吸着剤5aで酸化されたガスが第2吸着剤5bに吸着されるので、酸化されたガスが外部に漏れることを防止することができる。
【0052】
フィルタ基材と各吸着剤の接着方法は、吸着剤がフィルタ基材から容易に剥離されない方法であれば制限がない。したがって、バインダをフィルタ基材に塗布して吸着剤をフィルタ基材上に散布して接着することも可能である。
【0053】
脱臭フィルタのフィルタ基材は、吸着剤を接着することができ、接着後に空気流動が可能なものであれば、制限がない。したがって、不織布やしわ加工された紙素材でもよい。
【0054】
ただ、
図1と違って、第1吸着剤5aと第2吸着剤5bが同一フィルタ基材に接着されて、単一の脱臭フィルタとして用いられることも可能である。第1吸着剤5aと第2吸着剤5bを同一フィルタ基材に接着する場合、悪臭ガスが吸着される領域が偏ることを防止するように、第1吸着剤5aと第2吸着剤5bを予め充分に混合した後接着することが好ましい。第1吸着剤5aと第2吸着剤5bの混合方法は、各吸着剤の特性を損傷させるのではなければ、特に制限がない。
【0055】
<第1吸着剤>
【0056】
第1吸着剤5aは、吸着ガスを酸化させるガス変換用吸着剤を用いることができる。
【0057】
第1吸着剤5aに用いられる触媒や酸化剤は、吸着ガスを酸化させる物質であれば、特に限定されない。
【0058】
例えば、第1吸着剤5aは、酸化チタン、二酸化マンガンなどの金属酸化物触媒や五酸化ヨウ素、過マンガン酸カリウムなどの無機酸化剤を用いることができる。五酸化ヨウ素、過マンガン酸カリウムなどの無機酸化剤は、常温でも酸化活性を有する。また、五酸化ヨウ素、過マンガン酸カリウムなどの無機酸化剤は、外部刺激が不必要で、水溶性であるので、低価含浸法に効率的に多孔質体に担持することができる。
【0059】
第1吸着剤5aに用いられる多孔質体は、活性炭、ゼオライト多孔性シリカ、MOFの中で対象ガスの吸着効率が高いものであれば、特に限定されない。
【0060】
例えば、第1吸着剤5aに用いられる多孔質体は、トルエンのような非極性ガスを除去する場合、500以上のSiO2/Al2O3比のHYゼオライトを用いることができる。
【0061】
500以上のSiO2/Al2O3比のHYゼオライトは、疎水性で、トルエン分子直径0.6nm以上の気孔直径を有し、酸点を有して触媒と酸化剤に係るトルエンの酸化を促進させる。
【0062】
多孔質体の表面気孔の大きさは、悪臭ガスの分子直径以上で、50nm以下の微細気孔範囲であり得る。例えば、トルエン分子(分子直径0.6nm)を基準とする時、多孔質体の表面気孔の大きさが0.6~50nmの範囲に形成され得る。表面気孔(微細気孔:細孔)の(平均)直径が0.6nm以下の場合、トルエン分子を気孔内に吸着することができず、また、それが50nm以上の場合、十分な比表面積を保持できなくて、トルエンの吸着量が減少することがある。
【0063】
触媒または酸化剤を多孔質体に担持する方法は、触媒または酸化剤と多孔性担体を物理的に混合する方法、触媒または酸化剤を含有する水溶液を多孔質体に含浸または噴射する方法、ナノ粒子を多孔質体で結晶成長させる水熱合成法など周知の担持技術の中で選択することができる。ただ、過程が簡便で、費用的に廉価な含浸法が好ましい。
【0064】
以下では、
図2を参照して、本発明に係る第1吸着剤5aを製造する方法について説明する。
【0065】
まず、4wt%の五酸化ヨウ素と、8wt%のイオン交換水に溶解させた水溶液と、96wt%のHYゼオライト(気孔大きさ0.74nm、粒径5-7μm、500のSiO2/Al2O3比)を第1設定時間室温で湿式混合し、第2設定温度で乾燥させる。
【0066】
前記乾燥過程で生成された乾燥粉末を第2設定温度で、第2設定時間アルゴン環境で加熱して部分脱水させる。その後、さらに第3設定温度で、第3設定時間アルゴン環境で加熱して完全に脱水させて、五酸化ヨウ素が4wt%含有されたHYゼオライトを得ることができる。
【0067】
ここで、第1設定時間は第2設定時間よりも低く、第2設定時間は第3設定時間よりも低く設定され得る。一つの実施形態として、第1設定時間は1時間で、第2設定時間は2時間で、第3設定時間は4時間に設定され得る。
【0068】
ここで、第1設定温度は第2設定温度よりも低い温度で、第2設定温度は第3設定温度よりも低い温度である。一つの実施形態として、第1設定温度は40℃(313K)であり、第2設定温度は120℃(393K)であり、第3設定温度は240℃(513K)であり得る。
【0069】
本発明の第1吸着剤5aは、前記の方法で製造された五酸化ヨウ素が4wt%含有されたHYゼオライトを用いることができる。
【0070】
図4に示したように、五酸化ヨウ素はトルエンと反応してヨウ素に還元される。この時、五酸化ヨウ素がヨウ素に還元されると、白色から紫色に変色される。
【0071】
図5では、本発明の第1吸着剤5aである五酸化ヨウ素が4wt%含有されたHYゼオライト500mgを3Lの別途のテドラーバッグに入れ、追加的に、トルエン濃度が20ppmになるように調整したトルエンと乾燥空気の混合ガスをテドラーバッグで封入して30分間ガスを吸着剤に吸着させて、五酸化ヨウ素の色変化を観察した。
【0072】
図5では、本発明の第1吸着剤5aの第1比較例による吸着剤と第2比較例による吸着剤を第1吸着剤5aと同一条件でトルエンと乾燥空気の混合ガスと作用による五酸化ヨウ素の色変化を観察した。
【0073】
ここで、第1比較例による吸着剤は、500のSiO2/Al2O3比のHYゼオライトの代りに、40のSiO2/Al2O3比のHYゼオライトを用いて生成された吸着剤を用いる。
【0074】
また、第2比較例による吸着剤は、500のSiO2/Al2O3比のHYゼオライトの代りに、5.5のSiO2/Al2O3比のHYゼオライトを用いて生成された吸着剤を用いる。
【0075】
すなわち、第1比較例による吸着剤と第2比較例による吸着剤は、本発明の第1吸着剤5aに比べてSiO2/Al2O3比の低いゼオライトを用いたのである。
【0076】
図5は、吸着前後の吸着剤の色変化を示した写真である。
図5を参照すると、SiO
2/Al
2O
3の比が高いHYゼオライトを用いた本発明の第1吸着剤が白色から淡い紫色の色相変化が顕著に表れることを確認することができる。すなわち、SiO
2/Al
2O
3比の高いHYゼオライトを用いた本発明の第1吸着剤が五酸化ヨウ素還元、すなわちトルエンの酸化が促進されることを確認することができる。
【0077】
<第2吸着剤>
【0078】
第2吸着剤5bは、ガスを化学的に吸着するガス材吸着用吸着剤を用いることができる。
【0079】
第2吸着剤5bに用いられる化学吸着剤は、対象となるガスを化学的に吸着することができるものであれば、制限はない。例えば、トルエンを酸化した場合、安息香酸(benzoic acid)のような酸性ガスが発生するので、第2吸着剤5bを化学反応速度の早いエチレンジアミン(ethylenediamine)やポリエチレンイミン(polyethyleneimine)のような塩基性高分子を用いて、脱臭率を高めることができる。
【0080】
第2吸着剤5bに用いられる多孔質体は、表面気孔の大きさを容易に制御することができるセラミックスを用いることができる。また、第2吸着剤5bに用いられる多孔質体は、ガスの濃度が低い低濃度吸着量が多いゼオライトを用いることができる。第1吸着剤5aを通過して酸化によって発生するガスの濃度は低濃度であるので、ゼオライトを通じて低濃度のガスを多量に吸着することができる。
【0081】
第2吸着剤5bの多孔質体の表面気孔の大きさは、悪臭ガスの分子直径以上であり、2nm以下の微細気孔の範囲であり得る。
【0082】
第2吸着剤5bの多孔質体に形成された複数の気孔の平均大きさは、第1吸着剤5aの多孔質体に形成された複数の気孔の平均大きさよりも小さいか同じく形成される。
【0083】
例えば、トルエンの酸化生成物である安息香酸分子(分子直径0.4nm)を基準とする時、第2吸着剤5bの多孔質体の表面気孔の大きさは0.4~2nmの範囲に形成され得る。表面気孔の直径が0.4nm以下の場合、安息香酸分子を気孔に吸着することができず、2nm以上の場合、他のガス分子と空気中の水分が大量に吸着されて気孔に満たされるため、安息香酸の吸着が阻害される。
【0084】
このような第2吸着剤5bの多孔質体は、TEMのような電子顕微鏡で表面を直接観察するか、ガス吸着法によって平均気孔の大きさを計算して適切なものを選択することができる。また、第2吸着剤5bの多孔質体の表面をMOFなどの気孔の大きさがより小さい多孔質体やナノ纎維でコーティングし、又は、シラノール基の表面修飾などで表面気孔の大きさを制御してもよい。
【0085】
化学吸着剤の吸着方法に制限はないが、簡便で、廉価な費用で実現することのできる含浸法が好ましい。
【0086】
以下では、
図3を参照して、本発明に係る第2吸着剤5bを製造する方法について説明する。
【0087】
まず、100wt%のエチレンジアミン一水和物を100wt%のエタノールに投入して、室温で40分間撹拌して堆積液を作る。前記堆積液を100wt%のNaYゼオライト(気孔の大きさ0.74nm、粒径5-7μm、5.5のSiO2/Al2O3の比)で、室温で10時間湿式混合した後、70℃(343K)で24時間蒸発させて、エチレンジアミンが50wt%担持されたNaYゼオライトを得ることができる。
【0088】
本発明の第2吸着剤5bは、前記の方法で製造されたエチレンジアミンが50wt%担持されたNaYゼオライトを用いることができる。
【0089】
本発明の第1吸着剤5aと第2吸着剤5bを備えた脱臭フィルタ4は、流動する空気中のガスが第1吸着剤5aを通過することによって酸化吸着剤と相互作用の強い酸性ガスなどに変換され、第2吸着剤5bを通過することによって生成されたガスをさらに化学吸着して効果的に悪臭ガスを除去することができる。
【0090】
本発明の脱臭フィルタ4の性能は、以下の実験を通じて把握することができる。
【0091】
図6では、別途の実験体を通じて脱臭フィルタ4の性能を把握している。当該実験体は、内部に脱臭フィルタ4が配置されるジグが形成されたハウジング11と、ハウジング11の内部に配置され、ジグを通過する空気中の悪臭ガスを除去する脱臭フィルタ4と、ハウジング11の内部の空気流動を形成する通風ファン12とを含む。
【0092】
ハウジング11は、アクリル材質で形成されることができる。ハウジング11は、内部に空気流動を形成する空間を形成することができる。ハウジング11の内部は約27Lの大きさに形成され得る。ハウジング11の内部に形成されるジグは一辺の長さが50mmの正方形の形態を有することができる。
【0093】
通風ファン12の作動でハウジング11の内部の空気は流動することができる。通風ファン12の作動でジグを通過した空気は脱臭フィルタ4を通過することができる。
【0094】
したがって、当該実験体の内部に10ppmのトルエンを入れ、脱臭フィルタ4を通過するガスの風速が0.2m/sになるように通風ファン12の電圧を調節して、脱臭フィルタ4の性能を把握することができる。60分間前記の状態で、脱臭フィルタ4でトルエンを露出させた後、感知装置(図示しない)でハウジング11の内部を測定した。
【0095】
ここで、感知装置は、ハウジング11の内部のガス濃度を感知する光イオン化検出器と、酸性ガス濃度を感知する酢酸用検知管を用いることができる。
【0096】
図7を参照すると、本発明の脱臭フィルタ4を用いる時、トルエンが70%以上減少されることを把握することができる。また、本発明の脱臭フィルタ4を用いる時、酸性ガスは検知限界以下であることを把握することができる。
【0097】
一方、第1吸着剤のみを用いた第1比較例による脱臭フィルタは、本発明の脱臭フィルタ4と違って、酸性ガスが7%残っていることを把握することができる。また、五酸化ヨウ素を担持しないHYゼオルライドを用いた第1吸着剤を含み、第2吸着剤を含まない第2比較例による脱臭フィルタは、トルエンの除去率が顕著に低下されることを把握することができる。すなわち、本発明の脱臭フィルタ4は、第2比較例による脱臭フィルタに比べて、トルエンの除去率が11%以上に形成されることを把握することができる。
【0098】
<作動>
【0099】
空気清浄装置1は、においセンサ7で外部環境の悪臭ガスの濃度を測定しながら脱臭フィルタ4で空気が流動するようにファン3を作動させる。
【0100】
ファン3の作動でケース2の吸入口2aに流入された空気は脱臭フィルタ4を通過する。したがって、吸入口2aに流入された悪臭ガスは脱臭フィルタ4を通過して濃度が低くなることがある。
【0101】
脱臭フィルタ4を通過する空気は、第1吸着剤5aと第2吸着剤5bを通過して悪臭ガスの濃度が低くなることがある。
【0102】
この時、脱臭フィルタ4の第2吸着剤5bを構成する多孔質体の表面気孔の大きさは、悪臭ガスの分子直径ほど狭く、気孔内への拡散抵抗が増加して高い風速で吸着量が制限される。
【0103】
すなわち、悪臭ガスが高濃度の場合、ファンの風速を高速に制御すると、第2吸着剤5bにガス吸着を制限することができて、直ちに吸着が飽和されることを防止することができる。また、単位時間当りの循環回収が増加するので、第1吸着剤の悪臭除去率が向上されることができる。
【0104】
<製造方法>
【0105】
本発明による脱臭フィルタに用いられる前記五酸化ヨウ素が含有されたHYゼオライトの製造方法であって、五酸化ヨウ素とイオン交換水に溶解させた水溶液と、HYゼオライトを室温で混合し、アルゴン環境で脱水して生成することを含んでなる、製造方法を提案する。
【0106】
本発明による脱臭フィルタに用いられる前記五酸化ヨウ素が含有されたHYゼオライトの製造方法であって、
1)五酸化ヨウ素と、イオン交換水に溶解させた水溶液と、HYゼオライトを室温で湿式混合し、第1設定時間で乾燥させるステップと、
2)前記乾燥過程で生成された乾燥粉末を前記第1設定時間よりも長い第2設定時間、アルゴン環境で加熱して部分脱水させるステップと、
3)その後、更に、前記第2設定時間よりも長い第3設定時間、アルゴン環境で加熱して完全に脱水させるステップと、を含んでなる、製造方法が提案される。
【0107】
前記五酸化ヨウ素が含有されたHYゼオライトは、
前記1)ステップでは、乾燥過程を第1設定温度で行い、
前記2)ステップでは、前記第1設定温度よりも高い第2設定温度で部分脱水し、
前記3)ステップでは、前記第2設定温度よりも高い第3設定温度で完全脱水して生成される、ことを含んでなる、本発明による五酸化ヨウ素が含有されたHYゼオライトの製造方法が提案される。
【0108】
本発明による脱臭フィルタの用いられる前記第2吸着剤の製造方法であって、
NaYゼオライトにエチレンジアミンを含有させることを含んでなる、製造方法が提案される。
【0109】
前記第2吸着剤は、
エチレンジアミン一水和物をエタノールに投入して室温で撹拌して堆積液を調製し、
前記堆積液をNaYゼオライトに室温で湿式混合し、蒸発させ、
エチレンジアミンが50wt%含有されたNaYゼオライトを得る、本発明による脱臭フィルタの用いられる前記第2吸着剤の製造方法が提案される。
【0110】
以上では、本発明の好ましい実施形態について図示して説明したが、本発明は前述の特定の実施形態に限定されず、特許請求範囲で請求する本発明の要旨を逸脱することなく当該発明が属する技術分野において通常の知識を有する者によって多様な変形実施が可能であることは勿論であり、このような変形実施は本発明の技術的思想や見込みから個別的に理解されてはならない。
【符号の説明】
【0111】
1 空気清浄装置
2 ケース
3 ファン
4 脱臭フィルタ
5a 第1吸着剤
5b 第2吸着剤
7 においセンサ
8 制御装置