(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023049445
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】蛍光体、その製造方法および発光装置
(51)【国際特許分類】
C09K 11/59 20060101AFI20230403BHJP
C09K 11/08 20060101ALI20230403BHJP
C09K 11/61 20060101ALI20230403BHJP
H01L 33/50 20100101ALI20230403BHJP
【FI】
C09K11/59
C09K11/08 B
C09K11/08 J
C09K11/61
H01L33/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021159183
(22)【出願日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【弁理士】
【氏名又は名称】言上 惠一
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145104
【弁理士】
【氏名又は名称】膝舘 祥治
(72)【発明者】
【氏名】勢原 拓海
(72)【発明者】
【氏名】篠原 雄之
(72)【発明者】
【氏名】國本 晃平
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 浩之
(72)【発明者】
【氏名】細川 昌治
【テーマコード(参考)】
4H001
5F142
【Fターム(参考)】
4H001CA02
4H001CA05
4H001CF02
4H001XA03
4H001XA08
4H001XA09
4H001XA11
4H001XA14
4H001XA37
4H001XB11
4H001XB32
4H001XB41
4H001XB42
4H001YA25
4H001YA63
5F142AA25
5F142BA02
5F142BA24
5F142CA02
5F142CC26
5F142CG03
5F142CG25
5F142CG43
5F142DA12
5F142DA23
5F142DA45
5F142DA48
5F142DA53
5F142DA56
5F142DA73
5F142DB16
5F142GA11
5F142GA21
(57)【要約】
【課題】より発光強度が高い緑色発光の蛍光体を提供する。
【解決手段】Rb、Na、Li、EuおよびSiを組成に含む第1酸化物を含む蛍光体である。第1酸化物は、Siに対するRbのモル比が0.5以上1未満であり、Siに対するNaのモル比が0より大きく0.5未満であり、Siに対するLiのモル比が2より大きく3.5未満であり、NaとLiの合計含有量のRbに対するモル比が3以上7以下である組成を有する。蛍光体は、CuKα線を用いたX線回折パターンにおいて、ブラッグ角度が15.5°以上16.5°以下の範囲内に第1回折ピークと、ブラッグ角度が11.0°以上12.0°以下の範囲内に第2回折ピークとを有し、第1回折ピークに対する第2回折ピークの強度比をαとしたとき、αが0.6以上1.6以下の範囲内である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Rb、Na、Li、EuおよびSiを組成に含む第1酸化物を含み、
前記第1酸化物は、Siに対するRbのモル比が0.5以上1未満であり、Siに対するNaのモル比が0より大きく0.5未満であり、Siに対するLiのモル比が2より大きく3.5未満であり、NaとLiの合計含有量のRbに対するモル比が3以上7以下である組成を有し、
CuKα線を用いたX線回折パターンにおいて、ブラッグ角度が15.5°以上16.5°以下の範囲内に第1回折ピークと、ブラッグ角度が11.0°以上12.0°以下の範囲内に第2回折ピークとを有し、
前記第1回折ピークに対する前記第2回折ピークの強度比をαとしたとき、前記αが0.6以上1.6以下の範囲内である蛍光体。
【請求項2】
前記Siに対するRbのモル比が0.5以上0.8未満であり、前記Siに対するNaのモル比が0.1より大きく0.3未満であり、前記Siに対するLiのモル比が2.9より大きく3.2未満であり、前記Siに対するEuのモル比が0より大きく0.3未満であり、前記NaとLiの合計含有量のRbに対するモル比が3.75以上6以下である組成を有する請求項1に記載の蛍光体。
【請求項3】
下記式(I)で表される組成を有する請求項1に記載の蛍光体。
RbpNaqLirSiOs:Eut (I)
(式(I)中、p、q、r、sおよびtは、0.5≦p<1、0<q<0.5、2<r<3.5、3.25<s<4.5、0<t<0.3、および3≦(q+r)/p≦7を満たす。)
【請求項4】
前記p、q、r、sおよびtは、0.5≦p<0.8、0.1<q<0.3、2.9<r<3.2、3.85<s<4.15、0<t<0.3、および3.75≦(q+r)/p≦6を満たす請求項3に記載の蛍光体。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の蛍光体を含み、525nm以上535nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する第1蛍光体を含む蛍光部材と、380nm以上470nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有する発光素子と、を備える発光装置。
【請求項6】
前記蛍光部材は、500nm以上600nm未満の波長範囲に発光ピーク波長を有する第2蛍光体または発光材料を更に含む請求項5に記載の発光装置。
【請求項7】
前記蛍光部材は、600nm以上700nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有する第3蛍光体または発光材料を更に含む請求項5または6に記載の発光装置。
【請求項8】
前記第3蛍光体は、第4族元素、第13族元素および第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種を含む元素Mと、アルカリ金属と、Mnと、Fと、を含み、アルカリ金属のモル数を2とする場合に、Mnのモル数が0を超えて0.2未満であり、元素Mのモル数が0.8を超えて1未満であり、Fのモル数が5を超えて7未満である組成を有する請求項7に記載の発光装置。
【請求項9】
Rb源、Na源、Li源、Eu源およびSi源を含む原料混合物を400℃以上800℃以下の範囲内に含まれる温度で熱処理することを含み、
前記原料混合物は、Siに対するRbのモル比が0.5以上1未満であり、Siに対するNaのモル比が0より大きく0.5未満であり、Siに対するLiのモル比が2より大きく3.5未満であり、Siに対するEuのモル比が0より大きく0.3未満であり、NaとLiの合計含有量のRbに対するモル比が3以上7以下であり、前記Rb源、Na源、Li源、Eu源およびSi源の少なくとも1つが酸化物を含む、蛍光体の製造方法。
【請求項10】
前記原料混合物は、前記Siに対するRbのモル比が0.7より大きく0.8未満であり、前記Siに対するNaのモル比が0.1より大きく0.3未満であり、前記Siに対するLiのモル比が2.9より大きく3.2未満であり、前記Siに対するEuのモル比が0より大きく0.3未満であり、前記NaとLiの合計含有量のRbに対するモル比が4以上5以下である、請求項9に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項11】
前記熱処理は、前記原料混合物を400℃以上600℃未満の範囲内に含まれる第1温度で第1熱処理して第1熱処理物を得ることと、
前記第1熱処理物を600℃以上800℃以下の範囲内に含まれる第2温度で第2熱処理した後に降温して第2熱処理物を得ることと、
前記第2熱処理物を600℃以上800℃以下の範囲内に含まれる第3温度で第3熱処理して第3熱処理物を得ることと、を含む請求項9または10に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項12】
前記原料混合物を熱処理することにより得られた蛍光体は、Rb、Na、Li、EuおよびSiを組成に含む第1酸化物を含み、前記第1酸化物は、Siに対するRbのモル比が0.5以上1未満であり、Siに対するNaのモル比が0より大きく0.5未満であり、Siに対するLiのモル比が2より大きく3.5未満であり、NaとLiの合計含有量のRbに対するモル比が3以上7以下である組成を有する請求項9から11のいずれか1項に記載の蛍光体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蛍光体、その製造方法および発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置のバックライト用途に用いられる発光装置には、色再現性の範囲をより広くするため、発光スペクトルの波長幅がより狭い緑色発光の蛍光体が用いられる場合がある。例えば、特許文献1には、緑色発光の蛍光体としてリチウムオルトシリケート蛍光体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
緑色発光の蛍光体として、より発光強度の高い蛍光体が求められており、本開示の一態様は、より発光強度が高い緑色発光の蛍光体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第一態様は、Rb、Na、Li、EuおよびSiを組成に含む第1酸化物を含む蛍光体である。前記第1酸化物は、Siに対するRbのモル比が0.5以上1未満であり、Siに対するNaのモル比が0より大きく0.5未満であり、Siに対するLiのモル比が2より大きく3.5未満であり、NaとLiの合計含有量のRbに対するモル比が3以上7以下である組成を有する。蛍光体はCuKα線を用いたX線回折(XRD)パターンにおいて、ブラッグ角度が15.5°以上16.5°以下の範囲内に第1回折ピークと、ブラッグ角度が11.0°以上12.0°以下の範囲内に第2回折ピークとを有し、前記第1回折ピークに対する前記第2回折ピークの強度比をαとしたとき、前記αが0.6以上1.6以下の範囲内である。
【0006】
第二態様は、第一態様の蛍光体を含み、525nm以上535nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する第1蛍光体を含む蛍光部材と、380nm以上470nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有する発光素子と、を備える発光装置である。
【0007】
第三態様は、Rb源、Na源、Li源、Eu源およびSi源を含む原料混合物を400℃以上800℃以下の範囲内に含まれる温度で熱処理することを含む蛍光体の製造方法である。前記原料混合物は、Siに対するRbのモル比が0.5以上1未満であり、Siに対するNaのモル比が0より大きく0.5未満であり、Siに対するLiのモル比が2より大きく3.5未満であり、Siに対するEuのモル比が0より大きく0.3未満であり、NaとLiの合計含有量のRbに対するモル比が3以上7以下である。前記原料混合物に含まれるRb源、Na源、Li源、Eu源およびSi源の少なくとも1つが酸化物を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様によれば、より発光強度が高い緑色発光の蛍光体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】XRDのピーク強度比と相対発光エネルギーとの関係を示すグラフである。
【
図3】XRDのピーク強度比と発光ピーク波長との関係を示すグラフである。
【
図4】実施例および比較例に係るXRDのスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。さらに本明細書に記載される数値範囲の上限および下限は、当該数値を任意に選択して組み合わせることが可能である。本明細書において、蛍光体または発光材料の組成を表す式中、カンマ(,)で区切られて記載されている複数の元素は、これらの複数の元素のうち少なくとも1種の元素を組成中に含有することを意味する。また、蛍光体の組成を表す式中、コロン(:)の前は母体結晶を表し、コロン(:)の後は賦活元素を表す。本明細書において、色名と色度座標との関係、光の波長範囲と単色光の色名との関係等は、JIS Z8110に従う。蛍光体の半値幅は、蛍光体の発光スペクトルにおいて、最大発光強度に対して発光強度が50%となる発光スペクトルの波長幅(半値全幅;fwhm)を意味する。以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための、蛍光体、その製造方法および発光装置を例示するものであって、本発明は、以下に示す蛍光体、その製造方法および発光装置に限定されない。
【0011】
蛍光体
蛍光体は、Rb、Na、Li、EuおよびSiを組成に含む第1酸化物を含む。第1酸化物は、Siに対するRbのモル比が0.5以上1未満であり、Siに対するNaのモル比が0より大きく0.5未満であり、Siに対するLiのモル比が2より大きく3.5未満であり、NaとLiの合計含有量のRbに対するモル比が3以上7以下である組成を有する。蛍光体は、CuKα線を用いたX線回折パターンにおいて、ブラッグ角度が15.5°以上16.5°以下の範囲内に第1回折ピークと、ブラッグ角度が11.0°以上12.0°以下の範囲内に第2回折ピークとを有し、第1回折ピークに対する第2回折ピークの強度比が0.6以上1.6以下の範囲内である。
【0012】
特定の組成を有する第1酸化物を含み、特定のX線回折パターンを示す蛍光体は、緑色に発光し、高い発光強度を示すことができる。また、半値幅が比較的狭く、表示装置のバックライト用の発光装置に適用することで、表示装置の色再現性の範囲をより広くすることができる。
【0013】
蛍光体の発光ピーク波長は、例えば525nm以上535nm以下の範囲内にあってよく、好ましくは526nm以上、または527nm以上であってよい。酸化物蛍光体の発光ピーク波長の上限は、好ましくは533nm以下、または531nm以下であってよい。蛍光体の発光スペクトルにおける半値幅は、例えば50nm以下であってよく、好ましくは45nm以下、または42nm以下であってよい。また半値幅の下限は、例えば30nm以上であってよく、好ましくは35nm以上、または38nm以上であってよい。
【0014】
蛍光体を構成する第1酸化物の組成は、好ましくはSiに対するRbのモル比が0.5以上0.8未満、または0.7より大きく0.8未満であってよい。Siに対するNaのモル比は0.1より大きく0.3未満であってよい。Siに対するLiのモル比は2.9より大きく3.2未満であってよい。Siに対するEuのモル比は0より大きく0.3未満であってよい。NaとLiの合計含有量のRbに対するモル比は3.75以上6以下であってよい。
【0015】
蛍光体は、下記式(I)で表される組成を有していてよい。
RbpNaqLirSiOs:Eut (I)
【0016】
式(I)中、p、q、r、sおよびtは、0.5≦p<1、0<q<0.5、2<r<3.5、3.25<s<4.5、0<t<0.3、および3≦(q+r)/p≦7を満たしてよく、好ましくは0.5≦p<0.8または0.7<p<0.8、0.1<q<0.3、2.9<r<3.2、3.85<s<4.15、0<t<0.3、および3.75≦(q+r)/p≦6を満たしていてよい。
【0017】
式(I)で表される組成ではSiのモル数を1としているが、蛍光体の組成は、下記式(Ia)のように表されてもよい。
Rbp1Naq1Lir1(Li3SiO4)s1Ou1:Eut1 (Ia)
【0018】
式(Ia)中、p1、q1、r1、s1、u1およびt1は、s1=2とすると、1≦p1<2、0<q1<1、0<r1<1、0<u1<1、0<t1<0.6、および0≦(q1+r1)/p1≦1を満たしてよい。
【0019】
蛍光体は、CuKα線を用いたX線回折パターンにおいて、ブラッグ角度が15.5°以上16.5°以下の範囲内に第1回折ピークと、ブラッグ角度が11.0°以上12.0°以下の範囲内に第2回折ピークとを有する。蛍光体は、第1回折ピークに対する第2回折ピークの強度比(以下、「強度比α」と呼ぶことがある。)が0.6以上1.6以下の範囲内であってよく、発光強度の観点から、好ましくは0.6以上1.5以下、または0.6以上1.4以下の範囲内であってよい。
【0020】
第1回折ピークは、例えば(-2,0,1)および(2,0,1)からの回折に由来すると考えられる。また、第2回折ピークは、例えば(2,0,0)および(0,0,1)からの回折に由来すると考えられる。第1回折ピークは、例えばRbLi(Li3SiO4)2:Eu(以下、「RbLi」と略記することがある。)では、RbとLiから構成される格子面に由来し、RbNa(Li3SiO4)2:Eu(以下、「RbNa」と略記することがある。)では、RbとNaから構成される格子面に由来する。そのため、第1回折ピークの強度は相対的に「RbNa」の方が強くなる。また、(2,0,0)および(0,0,1)は、「RbLi」ではLiで構成される格子面であり、「RbNa」ではNaで構成される格子面である。一方、面間隔の1/2ずれた格子面である(4,0,0)および(0,0,2)はRbで構成される。従って第2回折ピークの強度は、「RbLi」ではRbとLiの、「RbNa」ではRbとNaの原子散乱因子の差に依存するため、相対的に「RbLi」の方が強くなる。そうすると、第一態様に係る蛍光体が、仮にRb2NaLi(Li3SiO4)4:Euの組成を有しているとすると、「RbLi」と「RbNa」の中間の強度比をとることになると考えられる。
【0021】
また例えば、RbLi(Li3SiO4)2の母体結晶をEuで賦活すると格子体積は増加し、RbNa(Li3SiO4)2の母体結晶をEuで賦活すると格子体積は減少することが知られている。ここで、Rb2NaLi(Li3SiO4)4の母体結晶をEuで賦活する場合、EuがNaを置換するパターンとLiを置換するパターンの2つが考えられる。そのため、Rb2NaLi(Li3SiO4)4ではEu置換による格子サイズの変化が相殺されると考えられる。このようなサイズ補償効果により蛍光体の特性が向上すると考えられる。
【0022】
蛍光体の体積平均粒径は、例えば1μm以上500μm以下であってよく、好ましくは5μm以上100μm以下、または10μm以上40μm以下であってよい。蛍光体の体積平均粒径は、体積基準の粒度分布において、小径側からの累積頻度50%に対応する粒径として算出される。なお、体積基準の粒度分布は、レーザー回折式粒度分布測定装置によって測定される。蛍光体の粒度分布は単一ピークであってよい。
【0023】
蛍光体は、第1酸化物と、第1酸化物の粒子表面に付着する無機物質とを含んでいてよい。表面に無機物質を付着させることで、蛍光体の耐湿性が向上する傾向がある。無機物質としては、例えば、第1酸化物とは異なる第2酸化物、金属塩、ハロゲン化物、窒化物等を挙げることができ、これらからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよく、好ましくは第2酸化物および金属塩からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。第1酸化物に付着する無機物質は1種単独でも、2種以上の組み合わせであってもよい。無機物質として2種以上を組み合わせて用いる場合、無機物質の混合物が第1酸化物に付着していてもよいし、それぞれの無機物質を順次付着させて多層構成で付着していてもよい。
【0024】
第2酸化物は、Si、Al、Ti、Zr、SnおよびZnからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。すなわち、第2酸化物は、酸化ケイ素(例えば、SiOx、xは1以上2以下、好ましくは1.5以上2以下、または約2であってよい)、酸化アルミニウム(例えば、Al2O3)、酸化チタン(例えば、TiO2)、酸化ジルコニウム(例えば、ZrO2)、酸化スズ(例えば、SnO、SnO2など)および酸化亜鉛(例えば、ZnO)からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよく、少なくとも酸化ケイ素を含んでいてよい。第2酸化物は1種のみからなっていてもよく、2種以上を含んでいてもよい。
【0025】
蛍光体における第2酸化物の含有率は、蛍光体に対して0.02質量%以上30質量%以下であってよく、好ましくは1質量%以上15質量%以下であってよい。蛍光体における第2酸化物の含有率は、例えば、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法により測定することができる。
【0026】
金属塩は、例えば希土類リン酸塩、アルカリ土類金属リン酸塩等を含んでいてよく、これらからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。希土類リン酸塩は、ランタン(La)、セリウム(Ce)、ジスプロシウム(Dy)およびガドリニウム(Gd)からなる群から選択される少なくとも1種の希土類元素を含んでいてよく、好ましくは少なくともランタンを含んでいてよい。
【0027】
蛍光体における金属塩の含有率は、金属元素の含有率として、例えば0.1質量%以上20質量%以下であってよく、好ましくは0.2質量%以上10質量%以下であってよい。
【0028】
第1酸化物の粒子表面に付着する無機物質は、無機物質粒子として付着して第1酸化物の表面を覆っていてよい。また、無機物質は第1酸化物の粒子表面を膜状に覆っていてもよく、無機物質層として第1酸化物の表面に配置されていてもよい。
【0029】
発光装置
発光装置は、525nm以上535nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する第1蛍光体を含む蛍光部材と、380nm以上470nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有する発光素子と、を備える。蛍光部材が含む第1蛍光体は既述の第一態様に係る蛍光体を少なくとも含む。特定の蛍光体を含む蛍光部材を備えることで、高い光束を有する発光装置を構成することができる。
【0030】
発光装置の一例を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る発光装置の一例を示す概略断面図である。この発光装置は、表面実装型発光装置の一例である。発光装置100は、可視光の短波長側(例えば380nm以上470nm以下の範囲内)に発光ピーク波長を有する光を発する発光素子10と、発光素子10を載置する成形体40と、を有する。成形体40は第一のリード20と第二のリード30とを有しており、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂により一体成形されている。成形体40は底面と側面を持つ凹部が形成されており、凹部の底面に発光素子10が載置されている。発光素子10は一対の正負の電極を有しており、その一対の正負の電極は第一のリード20および第二のリード30とワイヤ60を介して電気的に接続されている。発光素子10は蛍光部材50により封止されている。蛍光部材50は、発光素子10からの光を波長変換する蛍光体70を含有している。蛍光体70は、少なくとも第一態様の蛍光体を含む第1蛍光体を含んでいればよく、発光素子10からの励起光により第一態様の蛍光体とは異なる波長範囲に発光ピーク波長を有する光を発する第2蛍光体、第3蛍光体、その他の発光材料等を更に含んでいてもよい。
【0031】
蛍光部材は、樹脂と蛍光体を含んでいてよい。蛍光部材を構成する樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂を挙げることができる。蛍光部材は、樹脂および蛍光体に加えて、光拡散材をさらに含んでいてもよい。光拡散材を含むことで、発光素子からの指向性を緩和させ、視野角を増大させることができる。光拡散材としては、例えば酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム等を挙げることができる。
【0032】
発光素子は、可視光の短波長領域である380nm以上470nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有する光を発する。発光素子は、酸化物蛍光体を励起することが可能な励起光源であってよい。発光素子は、380nm以上460nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有することが好ましく、410nm以上460nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有することがより好ましく、430nm以上460nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有することがさらに好ましい。励起光源としての発光素子には、半導体発光素子を用いることが好ましい。励起光源に半導体発光素子を用いることによって、発光効率が高く、入力に対する出力のリニアリティが高い発光装置を得ることができる。半導体発光素子としては、例えば、窒化物系半導体を用いた半導体発光素子を用いることができる。発光素子の発光スペクトルにおける発光ピークの半値幅は、例えば、30nm以下であることが好ましい。
【0033】
発光装置は、第一態様の蛍光体を含む第1蛍光体を含んで構成される。発光装置に含まれる第一態様の蛍光体の詳細については既述の通りである。第1蛍光体は、例えば、励起光源を覆う蛍光部材に含有される。励起光源が第1蛍光体を含有する蛍光部材で覆われた発光装置では、励起光源から発せられた光の一部が第1蛍光体に吸収されて、緑色光として放射される。380nm以上470nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する光を発する励起光源を用いることで、放射される光をより有効に利用することができ、発光装置から出射される光の損失を少なくすることができ、発光効率が高い発光装置を提供することができる。
【0034】
発光装置は、第1蛍光体に加えて、第一態様の蛍光体以外の蛍光体を含む第2蛍光体をさらに含んでいてよい。第2蛍光体は、光源からの光を吸収し、500nm以上600nm未満の波長範囲に発光ピーク波長を有していればよい。第2蛍光体は第1蛍光体と同様に蛍光部材に含有させることができる。
【0035】
第2蛍光体は、500nm以上600nm未満の波長範囲に発光ピーク波長を有していてよく、好ましくはβサイアロン蛍光体、ハロシリケート蛍光体、シリケート蛍光体、希土類アルミン酸塩蛍光体および窒化物蛍光体からなる群から選択される少なくとも1種であってよい。βサイアロン蛍光体は、例えば下記式(IIa)で表される組成を有していてよい。ハロシリケート蛍光体は、例えば下記式(IIb)で表される組成を有していてよい。シリケート蛍光体は、例えば下記式(IIc)で表される組成を有していてよい。希土類アルミン酸塩蛍光体は、例えば下記式(IId)で表される組成を有していてよい。窒化物蛍光体は、例えば下記式(IIe)で表される組成を有していてよい。
【0036】
Si6-tAltOtN8-t:Eu (IIa)
(式中、tは、0<t≦4.2を満たす数である。)
(Ca,Sr,Ba)8MgSi4O16(F,Cl,Br)2:Eu (IIb)
(Ba,Sr,Ca,Mg)2SiO4:Eu (IIc)
(Y,Lu,Gd,Tb)3(Al,Ga)5O12:Ce (IId)
(La,Y,Gd)3Si6N11:Ce (IIe)
【0037】
発光装置は、第1蛍光体に加えて、500nm以上600nm未満の波長範囲に発光ピーク波長を有する発光材料、例えば、下記式(IIf)で表される組成を有するペロブスカイト系の発光材料、下記式(IIg)で表される組成を有するカルコパイライト系の発光材料を含んでいてよい。500nm以上600nm未満の波長範囲に発光ピーク波長を有する発光材料は、第1蛍光体と同様に蛍光部材に含有させることができる。
【0038】
(Cs,FA,MA)Pb(F,Cl,Br,I)3 (IIf)
(式中、FAはホルムアミジニウム、MAはメチルアンモニウムである。)
Ag(Ga,In)S2 (IIg)
【0039】
発光装置は、第1蛍光体に加えて、600nm以上700nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有する第3蛍光体をさらに含んでいてよい。第3蛍光体は、光源からの光を吸収し、例えば赤色光を放射する。第3蛍光体は第1蛍光体と同様に蛍光部材に含有させることができる。第3蛍光体は、好ましくは窒化物蛍光体およびフッ化物蛍光体からなる群から選択される少なくとも1種であってよい。窒化物蛍光体は、例えば下記式(IIIa)または(IIIb)で表される組成を有していてよい。フッ化物蛍光体については後述する。
【0040】
(Sr,Ca)LiAl3N4:Eu (IIIa)
(Ca,Sr)AlSiN3:Eu (IIIb)
【0041】
発光装置は、第1蛍光体に加えて、600nm以上700nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有する発光材料、例えば、下記式(IIIc)で表される組成を有するカルコパイライト系の発光材料、下記式(IIId)で表される組成を有するリン化合物系の発光材料を含んでいてもよい。600nm以上700nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有する発光材料は、第1蛍光体と同様に蛍光部材に含有させることができる。
【0042】
(Cu,Ag)InS2 (IIIc)
(In,Ga,Al)P (IIId)
【0043】
第3蛍光体は、より好ましくはフッ化物蛍光体であってよい。フッ化物蛍光体は、第4族元素、第13族元素および第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種を含む元素Mと、アルカリ金属と、Mnと、Fと、を含む組成を有していてよい。フッ化物蛍光体の組成は、アルカリ金属のモル数を2とする場合に、Mnのモル数が0を超えて0.2未満であってよく、好ましくは0.01以上0.12以下であってよい。またフッ化物蛍光体の組成は、アルカリ金属のモル数を2とする場合に、元素Mのモル数が0.8を超えて1未満であってよく、好ましくは0.88以上0.99以下であってよい。フッ化物粒子の組成は、アルカリ金属のモル数を2とする場合に、Fのモル数が5を超えて7未満であってよく、好ましくは5.9以上6.1以下であってよい。フッ化物蛍光体の組成は、例えば、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法によって測定することができる。
【0044】
フッ化物蛍光体の組成における元素Mは、第4族元素、第13族元素および第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種を含む。第4族元素としては、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)等が挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。第13族元素としては、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)等が挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。第14族元素としては、炭素(C)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)等が挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。元素Mは、少なくとも第14族元素の少なくとも1種を含んでいてよく、好ましくは少なくともSiおよびGeの少なくとも一方を含んでいてよい。また、元素Mは、少なくとも第13族元素の少なくとも1種と第14族元素の少なくとも1種とを含んでいてよく、好ましくは少なくともAlとSiおよびGeの少なくとも一方とを含んでいてよい。
【0045】
フッ化物蛍光体の組成におけるアルカリ金属は、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)およびセシウム(Cs)からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。またアルカリ金属は、少なくともカリウム(K)を含み、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、ルビジウム(Rb)およびセシウム(Cs)からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。組成におけるアルカリ金属の総モル数に対するKのモル数の比は、例えば0.90以上であってよく、好ましくは0.97以上である。Kのモル数の比の上限は、例えば1または0.995以下であってよい。フッ化物粒子の組成においては、アルカリ金属の一部がアンモニウムイオン(NH4
+)に置換されていてもよい。アルカリ金属の一部がアンモニウムイオンに置換される場合、組成におけるアルカリ金属の総モル数に対するアンモニウムイオンのモル数の比は、例えば0.10以下であってよく、好ましくは0.03以下である。アンモニウムイオンのモル数の比の下限は、例えば0を超えていてよく、好ましくは0.005以上であってよい。
【0046】
フッ化物蛍光体の組成の一態様である第1組成は、元素Mとして第4族元素および第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよく、好ましくは第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよく、より好ましくはSiおよびGeの少なくとも一方を含んでいてよく、さらに好ましくは少なくともSiを含んでいてよい。また、フッ化物蛍光体の第1組成は、アルカリ金属のモル数2に対して、SiとGeとMnの総モル数が0.9以上1.1以下であってよく、好ましくは0.97以上1.03以下であってよい。
【0047】
フッ化物蛍光体の第1組成は、下記式(IIIe)で表される組成であってもよい。
A1
b[M1
1-aMnaFc] (IIIe)
【0048】
式(IIIe)中、A1は、Li、Na、K、RbおよびCsからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。M1は、少なくともSiおよびGeの少なくとも一方を含み、第4族元素および第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を更に含んでもよい。Mnは4価のマンガンイオンであってよい。aは0<a<0.2を満たし、bは[M1
1-aMnaFc]イオンの電荷の絶対値であり、cは5<c<7を満たす。
【0049】
式(IIIe)におけるA1は、Li、Na、K、RbおよびCsからなる群から選択される少なくとも1種を更に含んでもよい。また、A1はその一部がアンモニウムイオン(NH4
+)に置換されていてもよい。A1の一部がアンモニウムイオンに置換される場合、組成におけるA1の総モル数に対するアンモニウムイオンのモル数の比は、例えば0.10以下であってよく、好ましくは0.05以下、または0.03以下である。アンモニウムイオンのモル数の比の下限は、例えば0を超えていてよく、好ましくは0.005以上であってよい。
【0050】
式(IIIe)におけるaは、好ましくは0.005以上0.15以下、または0.015以上0.1以下である。bは、例えば1.8以上2.2以下であってよく、好ましくは1.95以上2.05以下であってよい。cは好ましくは5.5以上6.5以下、または5.9以上6.1以下であってよい。
【0051】
フッ化物蛍光体の組成の一態様である第2組成は、元素Mとして第4族元素および第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種と、第13族元素の少なくとも1種とを含んでいてよく、好ましくは第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種と、第13族元素の少なくとも1種とを含んでいてよく、より好ましくは少なくともSiおよびAlを含んでいてよい。また、フッ化物蛍光体の第2組成は、アルカリ金属のモル数2に対して、SiとAlとMnの総モル数が、0.9以上1.1以下であってよく、好ましくは0.97以上1.03以下であってよい。さらにフッ化物蛍光体の第2組成は、アルカリ金属のモル数2に対して、Alのモル数が0を超えて0.1以下であってよく、好ましくは0.003以上0.015以下であってよい。
【0052】
フッ化物蛍光体の第2組成は、下記式(IIIf)で表される組成であってもよい。
A2
g[M2
1-eMneFh] (IIIf)
【0053】
式(IIIf)中、A2は、Li、Na、K、RbおよびCsからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。M2は、少なくともSiおよびAlを含み、第4族元素、第13族元素および第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を更に含んでもよい。Mnは4価のマンガンイオンであってよい。eは0<e<0.2を満たし、gは[M2
1-eMneFh]イオンの電荷の絶対値であり、hは5<h<7を満たす。
【0054】
式(IIIf)におけるA2は、その一部がアンモニウムイオン(NH4
+)に置換されていてもよい。A2の一部がアンモニウムイオンに置換される場合、組成におけるA2の総モル数に対するアンモニウムイオンのモル数の比は、例えば0.10以下であってよく、好ましくは0.03以下である。アンモニウムイオンのモル数の比の下限は、例えば0を超えていてよく、好ましくは0.005以上であってよい。
【0055】
式(IIIf)におけるeは、好ましくは0.005以上0.15以下、または0.015以上0.1以下である。gは、例えば1.8以上2.2以下であってよく、好ましくは1.95以上2.05以下であってよい。hは、好ましくは5.5以上6.5以下、または5.9以上6.1以下であってよい。
【0056】
蛍光体の製造方法
蛍光体の製造方法は、Rb源、Na源、Li源、Eu源およびSi源を含む原料混合物を準備する準備工程と、準備した原料混合物を400℃以上800℃以下の範囲内に含まれる温度で熱処理する熱処理工程とを含んでいてよい。原料混合物は、Siに対するRbのモル比が0.5以上1未満であり、Siに対するNaのモル比が0より大きく0.5未満であり、Siに対するLiのモル比が2より大きく3.5未満であり、Siに対するEuのモル比が0より大きく0.3未満であり、NaとLiの合計含有量のRbに対するモル比が3以上7以下であってよい。原料混合物を構成するRb源、Na源、Li源、Eu源およびSi源の少なくとも1つが、酸化物を含んでいてよい。
【0057】
所定の組成を有する原料混合物を所定の温度で熱処理することで、所望の組成を有し、発光強度が高い蛍光体を効率よく製造することができる。また、製造される蛍光体は、Rb、Na、Li、EuおよびSiを組成に含む第1酸化物を含み、第1酸化物は、Siに対するRbのモル比が0.5以上1未満であり、Siに対するNaのモル比が0より大きく0.5未満であり、Siに対するLiのモル比が2より大きく3.5未満であり、NaとLiの合計含有量のRbに対するモル比が3以上7以下である組成を有していてよい。
【0058】
準備工程では、Rb源、Na源、Li源、Eu源およびSi源を含む原料混合物を準備する。この原料混合物は、Rb源、Na源、Li源、Eu源およびSi源を所望の配合比になるように計量した後、ボールミルなどを用いる混合方法、ヘンシェルミキサー、V型ブレンダーなどの混合機を用いる混合方法、乳鉢と乳棒を用いる混合方法などにより混合することで得ることができる。混合は、乾式混合で行うこともできるし、溶媒等を加えて湿式混合で行うこともできる。
【0059】
原料混合物を構成するRb源としては、Rbを含む化合物、Rb単体、Rbを含む合金等であってよく、これらからなる群から選択される少なくとも1種であってよい。Rbを含む化合物としては、炭酸塩、酸化物、ハロゲン化物(フッ化物、塩化物等)等を挙げることができ、これらからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。Rbを含む化合物として、好ましくは炭酸ルビジウム、酸化ルビジウム等を挙げることができる。Rb源は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0060】
原料混合物を構成するNa源としては、Naを含む化合物、Na単体、Naを含む合金等であってよく、これらからなる群から選択される少なくとも1種であってよい。Naを含む化合物としては、炭酸塩、酸化物、ハロゲン化物(フッ化物、塩化物等)等を挙げることができ、これらからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。Naを含む化合物として、好ましくは炭酸ナトリウム、酸化ナトリウム等を挙げることができる。Na源は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0061】
原料混合物を構成するLi源としては、Liを含む化合物、Li単体、Liを含む合金等であってよく、これらからなる群から選択される少なくとも1種であってよい。Liを含む化合物としては、炭酸塩、酸化物、ハロゲン化物(フッ化物、塩化物等)等を挙げることができ、これらからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。Liを含む化合物として、好ましくは炭酸リチウム、酸化リチウム等を挙げることができる。Li源は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0062】
原料混合物を構成するEu源としては、Euを含む化合物、Eu単体、Euを含む合金等であってよく、これらからなる群から選択される少なくとも1種であってよい。Euを含む化合物としては、酸化物、ハロゲン化物(フッ化物、塩化物等)等を挙げることができ、これらからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。Euを含む化合物として、好ましくは酸化ユウロピウム等を挙げることができる。Eu源は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0063】
原料混合物を構成するSi源としては、Siを含む化合物、Si単体、Siを含む合金等であってよく、これらからなる群から選択される少なくとも1種であってよい。Siを含む化合物としては、酸化物等を挙げることができ、これらからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。Siを含む化合物として、好ましくは酸化ケイ素等を挙げることができる。Si源は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0064】
準備工程で準備される原料混合物の組成は、好ましくはSiに対するRbのモル比が0.7より大きく0.8未満であってよく、Siに対するNaのモル比が0.1より大きく0.3未満であってよく、Siに対するLiのモル比が2.9より大きく3.2未満であってよく、Siに対するEuのモル比が0より大きく0.3未満であってよく、NaとLiの合計含有量のRbに対するモル比が4以上5以下であってよい。
【0065】
原料混合物を構成するRb源、Na源、Li源、Eu源およびSi源の少なくとも1つは酸化物を含む。酸化物は、Eu源およびSi源の少なくとも一方に含まれていてよい。
【0066】
熱処理工程では、準備した原料混合物を所定の温度で熱処理して熱処理物を得る。熱処理工程で得られる熱処理物は、目的の蛍光体を含んでいてよい。熱処理工程における熱処理温度は、例えば400℃以上800℃以下であってよい。
【0067】
熱処理工程は、所定の熱処理温度まで昇温することと、その熱処理温度を保持することと、その熱処理温度から降温することとを含んでいてよい。熱処理温度までの昇温速度は、例えば室温からの昇温速度として、0.1℃/分以上20℃/分以下であってよく、好ましくは0.5℃/分以上、または1℃/分以上であってよく、また好ましくは15℃/分以下、または10℃/分以下であってよい。熱処理温度を保持する熱処理時間は、例えば1時間以上100時間以下であってよく、好ましくは50時間以下、または20時間以下であってよい。熱処理温度からの降温速度は、例えば室温までの降温速度として、1℃/分以上600℃/分以下であってよい。
【0068】
熱処理工程は、単一の熱処理温度で1段階でのみ行ってもよいし、同一または異なる2以上の熱処理温度で多段階にわたって行ってもよい。複数回の熱処理を行う場合、それぞれの熱処理は連続して行ってもよいし、熱処理後に一旦降温し、必要に応じて粉砕、混合等の処理を行った後、次の熱処理を行ってもよい。熱処理は、蛍光体の発光強度の観点から、異なる2以上の熱処理温度において多段階で行うことが好ましく、異なる2以上の熱処理温度において連続して熱処理した後に、粉砕、混合等の処理を行い、更に熱処理を行うことがより好ましい。ここで、「連続して熱処理する」とは、先行する熱処理後に、降温(例えば、温度差として350℃以上)、粉砕、混合等を行うことなく、先行する熱処理の熱処理温度から次の熱処理温度まで昇温し、次の熱処理温度を保持して熱処理を行うことを意味する。
【0069】
熱処理を多段階で行う場合、熱処理工程は例えば、原料混合物を400℃以上600℃未満の範囲内に含まれる第1温度で第1熱処理して第1熱処理物を得る第1熱処理工程と、第1熱処理物を600℃以上800℃以下の範囲内に含まれる第2温度で第2熱処理した後に粉砕および混合して第2熱処理物を得る第2熱処理工程と、第2熱処理物を600℃以上800℃以下の範囲内に含まれる第3温度で第3熱処理して第3熱処理物を得る第3熱処理工程とを含んでいてよい。すなわち、蛍光体の製造方法における熱処理工程で得られる熱処理物は、第3熱処理物であってもよい。
【0070】
第1熱処理工程では、原料混合物について、例えば室温から所定の第1温度まで昇温し、第1温度を所定時間保持して第1熱処理物を得る。第1温度は、好ましくは450℃以上、または500℃以上であってよく、また好ましくは580℃以下であってよい。第1温度を保持する時間は、例えば1時間以上10時間以下であってよく、好ましくは2時間以上5時間以下であってよい。
【0071】
第2熱処理工程では、第1熱処理物について、例えば第1温度から所定の第2温度まで昇温し、第2温度を所定時間保持する。すなわち、第2熱処理工程は第1熱処理工程と連続して行われてよい。第2温度は、好ましくは650℃以上、または700℃以上であってよく、また好ましくは800℃未満、または780℃以下であってよい。第2温度を保持する時間は、例えば1時間以上50時間以下であってよく、好ましくは2時間以上20時間以下であってよい。第2温度を保持した後は、例えば室温以下まで降温してよい。第2温度を保持した後に得られる中間熱処理物には、粉砕処理を行ってよい。粉砕処理には、例えばボールミルなどを用いる方法、乳鉢と乳棒を用いる方法を用いることができる。これにより第2熱処理物が得られる。中間熱処理物を粉砕処理して第2熱処理物とすることで、最終的に得られる蛍光体の発光強度がより向上する傾向がある。第2熱処理工程における粉砕処理は、例えば室温(例えば、25℃)以上100℃以下、好ましくは50℃以下の温度で行ってよい。
【0072】
第3熱処理工程では、第2熱処理物について、例えば室温から所定の第3温度まで昇温し、第3温度を所定時間保持して第3熱処理物を得る。第3温度は、好ましくは650℃以上、または700℃以上であってよく、また好ましくは800℃未満、または780℃以下であってよい。第3温度を保持する時間は、例えば1時間以上50時間以下であってよく、好ましくは2時間以上20時間以下であってよい。
【0073】
蛍光体の製造方法における熱処理工程は、第3熱処理工程の後に、第3熱処理物を第4温度で第4熱処理して第4熱処理物を得る第4熱処理工程を、少なくとも1工程更に含んでいてもよい。すなわち、蛍光体の製造方法における熱処理工程で得られる熱処理物は、第4熱処理物であってもよい。蛍光体の製造方法が第4熱処理工程を含むことにより、得られる蛍光体の発光強度がより大きくなる場合がある。
【0074】
第4熱処理工程では、第3熱処理物について、例えば室温から所定の第4温度まで昇温し、第4温度を所定時間保持して第4熱処理物を得る。第4温度は、例えば600℃以上800℃以下の範囲内に含まれていてよい。第4温度は、好ましくは650℃以上、または700℃以上であってよく、また好ましくは800℃未満、または780℃以下であってよい。第4温度を保持する時間は、例えば1時間以上50時間以下であってよく、好ましくは2時間以上20時間以下であってよい。
【0075】
熱処理工程における雰囲気は、例えば還元性雰囲気であってよい。還元性雰囲気は、例えば水素ガスの含有率が1体積%以上30体積%以下であってよく、好ましくは3体積%以上、または5体積%以上であってよく、また好ましくは20体積%以下、または15体積%以下であってよい。熱処理の雰囲気は、含窒素雰囲気であってよい。含窒素雰囲気は、窒素の含有率が、例えば70体積%以上であってよく、好ましくは80体積%、または85体積%以上であってよい。
【0076】
原料混合物の熱処理は、例えば管状炉を用いて行うことができる。原料混合物の熱処理は、例えば混合物を、酸化アルミニウム材質のルツボ、ボート等に充填して用いて行うことができる。酸化アルミニウム材質以外に、黒鉛等の炭素材質、窒化ホウ素(BN)、モリブデン材質等を使用することもできる。
【0077】
熱処理工程で得られる熱処理物には、粉砕、分散、洗浄、濾過、分級等の処理を行ってもよく、少なくとも粉砕処理、分級処理を行ってよい。粉砕処理は、例えばボールミルなどを用いる方法、乳鉢と乳棒を用いる方法等を用いて乾式条件で行うこともできるし、溶媒等を加えて湿式条件で行うことができる。分級処理は、乾式ふるいまたは湿式ふるいを用いて行うことができる。分級処理を湿式ふるいで行う場合、熱処理物または粉砕処理後の熱処理物を液媒体に分散してスラリーを得た後、湿式ふるいを用いて分級することで所望の粒径を有する蛍光体を得ることができる。液媒体としては例えば、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール溶剤、酢酸エチル等のエステル溶剤、ヘキサン、トルエン等の炭化水素溶剤、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶剤、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル溶剤などの有機溶剤を挙げることができ、これらの混合物であってもよい。
【0078】
蛍光体の製造方法は、第1酸化物の粒子表面に無機物質を付着させる表面処理工程を含んでいてもよい。無機物質としては、例えば、第1酸化物とは異なる第2酸化物、金属塩、ハロゲン化物、窒化物等を挙げることができ、これらからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよく、好ましくは第2酸化物および金属塩からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。表面処理工程は、付着させる無機物質に応じて公知の方法から適宜選択することができる。
【0079】
例えば、表面処理工程で付着させる無機物質が第2酸化物の場合、例えば第1酸化物の粒子と金属アルコキシドとを液媒体中で接触させることで、第1酸化物の粒子表面の少なくとも一部に金属アルコキシドに由来する第2酸化物を付着させることができる。金属アルコキシドは、例えば、Si、Al、Ti、Zr、SnおよびZnからなる群から選択される少なくとも1種を含む金属アルコキシドであってよく、少なくともSiおよびAlの少なくとも一方を含む金属アルコキシドであってよい。金属アルコキシドを構成するアルコキシドの脂肪族基は、炭素数が例えば1以上6以下であってよい。第1酸化物の粒子表面に第2酸化物を付着させる方法の詳細については、例えば、いわゆるゾルゲル法に関する公知技術等を参照することができる。
【0080】
金属アルコシキドは、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウムおよびトリイソプロポキシアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0081】
表面処理工程において用いられる金属アルコキシドの添加量は、第1酸化物の総質量に対して、例えば1質量%以上110質量%以下であってよい。
【0082】
液媒体としては、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤;アセトニトリル等のニトリル系溶剤;ヘキサン等の炭化水素系溶剤などを挙げることができる。液媒体は、少なくとも水とアルコール系溶剤を含んでいてよい。液媒体がアルコール系溶剤を含む場合、液媒体におけるアルコール系溶剤の含有率は、例えば60質量%以上であってよい。また液媒体における水の含有率は、例えば40質量%以下、好ましくは20質量%以下であってよい。
【0083】
また、液媒体はpH調整剤を更に含んでいてもよい。pH調整剤としては、例えばアンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ性物質、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸等の酸性物質を用いることができる。液媒体がpH調整剤を含む場合、液媒体のpHは、例えば酸性条件では1以上6以下であってよい。アルカリ条件では8以上12以下であってよい。
【0084】
第1酸化物に対する液媒体の質量比率は、例えば100質量%以上1000質量%以下、好ましくは100質量%以上500質量%以下、より好ましくは100質量%以上300質量%以下であってよい。液媒体の質量比率が上記範囲内であると、より均一に第1酸化物の粒子表面を第2酸化物で覆うことができる傾向がある。
【0085】
第1酸化物と金属アルコシキドとの接触は、例えば第1酸化物を含む懸濁液に金属アルコキシドを添加することで行うことができる。このとき必要に応じて撹拌等を行ってもよい。また、第1酸化物と金属アルコシキドとの接触温度は、例えば0℃以上70℃以下であってよい。接触時間は、例えば1時間以上12時間以下であってよい。なお、接触時間には金属アルコキシドの添加に要する時間も含まれる。
【0086】
表面処理工程では、第1酸化物の粒子表面に無機物質を付着させた後に、熱処理を行ってもよい。熱処理を行うことで、無機物質を付着させた第1酸化物の安定性がより向上する場合がある。熱処理の温度は例えば100℃以上400℃以下であってよい。また熱処理時間は例えば1時間以上50時間以下であってよい。
【0087】
表面処理工程では、第1酸化物への無機物質の付着を複数回行ってもよい。無機物質の付着を複数回行う場合、付着させる無機物質は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【実施例0088】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0089】
(実施例1)
Rb2CO3、Na2CO3、Li2CO3、SiO2およびEu2O3をそれぞれRb源、Na源、Li源、Si源およびEu源として用い、これらを仕込み組成比として、各元素のモル比が、Rb:Na:Li:Si:Eu=0.75:0.25:3:1:0.04となるように、計量、混合して原料混合物を得た。原料混合物を酸化アルミニウム材質の容器に充填し、窒素/水素混合ガス(9/1)雰囲気下、550℃(第1温度)で2時間の第1熱処理した後、温度を750℃(第2温度)に上昇させてさらに10時間の第2熱処理を行った。その後、降温して粉砕を行った後、750℃(第3温度)で5時間の第3熱処理を行った。これを粉砕することで、実施例1の蛍光体E1の粉末を得た。
【0090】
(実施例2)
実施例1において、第3熱処理して粉砕した後に、さらに750℃(第4温度)で5時間の第4熱処理を行い、粉砕を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の蛍光体E2の粉末を得た。
【0091】
(実施例3)
実施例1において、第2熱処理の熱処理温度(第2温度)および第3熱処理の熱処理温度(第3温度)を760℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3の蛍光体E3の粉末を得た。
【0092】
(実施例4)
実施例2において、第2熱処理の熱処理温度(第2温度)、第3熱処理の熱処理温度(第3温度)および第4熱処理の熱処理温度(第4温度)を760℃に変更したこと以外は、実施例2と同様にして、実施例4の蛍光体E4の粉末を得た。
【0093】
(実施例5)
実施例2において、各元素のモル比が、Rb:Na:Li:Si:Eu=0.75:0.125:3.125:1:0.04になるように変更したこと以外は、実施例2と同様にして、実施例5の蛍光体E5の粉末を得た。
【0094】
(実施例6)
実施例4において、各元素のモル比が、Rb:Na:Li:Si:Eu=0.75:0.125:3.125:1:0.04になるように変更したこと以外は、実施例3と同様にして、実施例6の蛍光体E6の粉末を得た。
【0095】
(参考例)
529nmを発光ピーク波長とするβ―SiAlON蛍光体を参考例の蛍光体C0とした。
【0096】
(実施例0)
実施例1において、750℃での第3熱処理を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、実施例0の蛍光体E0の粉末を得た。
【0097】
(比較例2)
実施例0において、各元素のモル比が、Rb:Na:Li:Si:Eu=0.5:0:3.5:1:0.04になるように原料混合物を変更したこと以外は、実施例0と同様にして、比較例2の蛍光体C2の粉末を得た。
【0098】
(比較例3)
実施例1において、各元素のモル比が、Rb:Na:Li:Si:Eu=0.5:0:3.5:1:0.04になるように原料混合物を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例3の蛍光体C3の粉末を得た。
【0099】
(比較例4)
実施例2において、各元素のモル比が、Rb:Na:Li:Si:Eu=0.5:0:3.5:1:0.04になるように原料混合物を変更したこと以外は、実施例2と同様にして、比較例4の蛍光体C4の粉末を得た。
【0100】
(比較例5)
実施例0において、各元素のモル比が、Rb:Na:Li:Si:Eu=1:0:3:1:0.08になるように原料混合物を変更したこと以外は、実施例0と同様にして、比較例5の蛍光体C5の粉末を得た。
【0101】
(比較例6)
実施例1において、各元素のモル比が、Rb:Na:Li:Si:Eu=1:0:3:1:0.08になるように原料混合物を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例6の蛍光体C6の粉末を得た。
【0102】
(比較例7)
実施例2において、各元素のモル比が、Rb:Na:Li:Si:Eu=1:0:3:1:0.08になるように原料混合物を変更したこと以外は、実施例2と同様にして、比較例7の蛍光体C7の粉末を得た。
【0103】
(比較例8)
実施例0において、各元素のモル比が、Rb:Na:Li:Si:Eu=0.5:0.5:3:1:0.04になるように原料混合物を変更したこと以外は、実施例0と同様にして、比較例8の蛍光体C8の粉末を得た。
【0104】
(比較例9)
実施例1において、各元素のモル比が、Rb:Na:Li:Si:Eu=0.5:0.5:3:1:0.04になるように原料混合物を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例9の蛍光体C9の粉末を得た。
【0105】
(比較例10)
実施例2において、各元素のモル比が、Rb:Na:Li:Si:Eu=0.5:0.5:3:1:0.04になるように原料混合物を変更したこと以外は、実施例2と同様にして、比較例10の蛍光体C10の粉末を得た。
【0106】
(比較例11)
Rb2CO3、Li2CO3、SiO2およびEu2O3をそれぞれRb源、Li源、Si源およびEu源として用い、これらを仕込み組成比として、各元素のモル比が、Rb:Li:Si:Eu=0.5:3.5:1:0.04となり、原料混合物の総量が20gとなるように、計量、混合して原料混合物を得た。原料混合物を酸化アルミニウム材質の容器に充填し、窒素/水素混合ガス(9/1)雰囲気下、550℃で5時間の熱処理後、粉砕を行った。その後、750℃で10時間の再熱処理を行った。これを粉砕することで、比較例11の蛍光体C11の粉末を得た。
【0107】
(比較例12)
比較例11において、各元素のモル比が、Rb:Li:Si:Eu=1:3:1:0.02になるようにし、熱処理を1000℃で4時間の1段階のみで行ったこと以外は比較例11と同様の条件にして、比較例12の蛍光体C12の粉末を得た。
【0108】
<評価>
(X線回折スペクトル)
得られた蛍光体について、試料水平型多目的X線回折装置(製品名:Ultima IV、株式会社リガク製、X線源:CuKα線(λ=1.5418Å)、管電圧40kV、管電流40mA)を用いて、X線回折(XRD)スペクトルをそれぞれ測定した。測定されたXRDスペクトルにおいて、ブラッグ角度が15.5°以上16.5°以下の第1回折ピークと、ブラッグ角度が11.0°以上12.0°以下の第2回折ピークを特定し、第1回折ピークに対する第2回折ピークの強度比(強度比α)を算出した。
図4には、実施例1および比較例3,7,9に係るXRDのスペクトルを示す。
図4では、第1回折ピークおよび第2回折ピークをそれぞれ実線で囲って示している。
【0109】
(発光特性)
蛍光体の粉体の発光特性は、量子効率測定システム:QE-2000(大塚電子株式会社製)で励起光の波長を450nmとして測定した。得られた発光スペクトルから相対発光エネルギー(相対ENG:%)と発光ピーク波長(λp:nm)と半値全幅(fwhm:nm)を求めた。結果を表1に示す。なお、相対発光エネルギー(相対ENG(%))は、参考例(β―SiAlON)の発光エネルギーを基準として求めた。
【0110】
表1に、製造方法の違いによる特性比較を目的に、実施例0から2および比較例2から12の仕込み組成比と、評価の結果を示す。比較例2および比較例11は、目的相がほぼ生成していなかったため、強度比αは算出していない。また、表2には、組成変更による特性比較を目的に、実施例1から6および比較例3、7および9の仕込み組成比と、評価の結果を示す。また、
図2には、強度比αと相対発光エネルギー(相対ENG)との関係を示す。
図3には、強度比αと発光ピーク波長(λp)との関係を示す。
【0111】
【0112】
表1に示されるように、いずれの組成においても3段階の熱処理によって発光エネルギーが大きくなっていることが分かる。また、一部組成については4段階の熱処理によってさらなる改善がみられた。比較例2は、目的相がほぼ生成しておらず、副生成物の存在によって他の実施例および比較例とは発光スペクトルが異なり、それらと比べて半値幅が大幅に広くなったと考えられる。比較例11は、第2熱処理を実施していないため、合成のスケールを大きくした場合では十分な特性の蛍光体を再現性よく得ることができなかった。比較例12は第1温度が比較的高いため、蛍光体が溶融してしまった。そのため、蛍光体の粉体を得ようとすると強力な粉砕工程が必要となり、作業性が悪かった。
【0113】
【0114】
表2に示されるように、実施例1から6で得られた蛍光体は、参考例、比較例3、7および9と比較して、発光エネルギーが大きくなっており、より狭い半値幅を有している。また、
図2に示されるように強度比αの範囲が0.6≦α≦1.6であれば、相対ENGが高くなることが分かる。
【0115】
この理由については例えば以下のように推測される。まず、該蛍光体はALi3SiO4(Aは残りのアルカリ金属)で示される組成の内、Li3SiO4が三次元骨格を形成し、それにより生じたチャネルをA元素が占有する構造を有していると考えられる。比較例3ではRbの占有するチャネルとLiの占有するチャネルとが交互に並び、比較例9ではRbの占有するチャネルとNaの占有するチャネルとが交互に並んでいる(Rbの占有するチャネルをRチャネル、LiやNaの占有するチャネルをLNチャネルと表記する)。そして、11°から12°のXRDピークは(2,0,0)面および(0,0,1)面からの回折に由来し、15.5°から16.5°のピークは(-2,0,1)面および(2,0,1)面からの回折に由来している。(2,0,0)面および(0,0,1)面は、LNチャネル内の原子から構成された格子面であるが、面間隔の1/2ずれた格子面である(4,0,0)および(0,0,2)はRチャネル中のRbから構成されている。したがって、11°のピーク強度はRbとLNチャネル中のアルカリ金属との原子散乱因子の差に依存するため、LiがLNチャネルを占有している比較例3で最も強度が強くなる。一方で、(-2,0,1)面および(2,0,1)はRチャネルとLNチャネル内の両方の原子を通過する格子面であるため、ピーク強度は原子散乱因子の和に依存するため、LNチャネルをNaが占有している比較例9で最も強度が強くなる。すなわち強度比αはLNチャネルを占有しているLiとNaの比に関係しており、実施例で示した蛍光体はLNチャネル中をLiとNaが共占有していると推測される。
【0116】
賦活元素が母結晶に置換する際に、比較例3ではLiサイトに置換するために結晶の格子定数が増加し、比較例9ではNaサイトに置換するために格子定数が減少すると考えられる。したがって実施例の組成では、賦活元素がLiサイトに入る場合とNaサイトに入る場合とで母結晶に生じるはずの歪みが相殺されたため、特性が向上したものと推測される。また、賦活元素がRbのサイトに誤って置換される確率を、Rbの過剰添加によって低減できたことも特性向上の一因として考えられる。
【0117】
また、
図3に示されるように強度比αの増加に伴って発光ピーク波長が長くなることが分かる。これは例えば、Liの含有量が増えることで母体の格子定数が小さくなり、賦活元素に対する結晶場分裂の効果が大きくなったために、励起準位が安定化され、基底準位と励起準位とのエネルギー差が小さくなったためと推測される。
【0118】
(実施例7)
実施例4で得た蛍光体E4の粉末に対し、有機溶剤を分散媒に用いてボールミルを行った。その後、目開き41μmのふるいで粗大粒子を除去し、続いて目開き15μmのふるいで微小粒子を除去した。これを乾燥させることで、分級処理を施した実施例7の蛍光体E7の粉末を得た。
【0119】
(実施例8)
実施例7において、分散後の分級操作を目開き41μmのふるいでの微小粒子の除去に変更したことした以外は実施例7と同様の条件にして、実施例8の蛍光体E8の粉末を得た。
【0120】
(実施例9)
実施例7において、分散後の分級操作を目開き15μmのふるいでの粗大粒子の除去に変更したこと以外は実施例7と同様の条件にして、実施例9の蛍光体E9の粉末を得た。
【0121】
<評価>
(体積平均粒径)
体積平均粒径(メジアン径:Dm)を、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、MALVERN社製、製品名:MASTER SIZER3000)により測定される体積基準の粒度分布における小径側からの累積頻度が50%に対応する粒径として算出した。結果を表3に示す。
【0122】
【0123】
表3に示されるように、有機溶剤を用いることで、熱処理品からの特性劣化を抑制しつつ、分級操作を施すことで、粒径が小さいものから大きいものまで用途に合わせた粒径の調整をすることができる。例えば、発光特性のみで比較すると実施例8の方がより特性が高いが、実施例8は実施例7と比べて粒径が大きいので、より小さい粒径の蛍光体が要求される発光装置に用いる蛍光体としては向かないこともある。
【0124】
(実施例10)
第1蛍光体として実施例2で得られた蛍光体E2と第3蛍光体としてK2SiF6:Mnで表される組成を有する蛍光体とを用い、発光素子として発光ピーク波長が450nmであるLEDを組み合わせて、常法により発光装置を作製した。その際、蛍光体および樹脂を含む蛍光部材を発光色の色度座標(x,y)がx=0.262、y=0.223になるように調製した。
【0125】
(比較例13から15)
使用する第1蛍光体を表4に示すように変更したこと以外は、実施例10と同様にして発光装置をそれぞれ作製した。
【0126】
<評価>
得られた発光装置について色度座標および光束を測定した。なお、発光装置の光束は、積分式全光束測定装置を用いて測定した。表4には、蛍光体製造時のアルカリ金属の仕込み量比、得られた発光装置の色度座標、光束比および色再現性の範囲を併せて示す。なお、光束比は、参考例の蛍光体を用いた比較例15を基準として算出した。また、色再現性の範囲はBT2020規格のカバー率(%)を示す。
【0127】
【0128】
表4に示されるように、蛍光体E2を用いることで、蛍光体C3を用いる場合に比べて光束および色再現性の範囲が大きくなる。光束の改善は用いる蛍光体の発光エネルギーが増加したこと、色再現性範囲が大きくなった理由として、用いる蛍光体の発光ピーク波長がより短波に変化したことが考えられる。また、蛍光体C9を用いる場合と比較して光束が改善する。これは、用いる蛍光体の発光エネルギーが増加したことが理由と推測される。
【0129】
(実施例11)
実施例7で製造した蛍光体E7を15g秤量し、エタノール27mLと、アンモニア水6.2mLおよび純水3.3mLを混合した溶液に投入した。スターラーで攪拌しながら、液温を常温(25℃)に保ち反応母液とした。テトラエトキシシラン(TEOS:Si(OC2H5)4)を0.8g秤量し、攪拌中の反応母液に約2時間で滴下した。その後、1時間攪拌を継続し、攪拌を終了した。得られた沈殿物を固液分離後、エタノール洗浄を行い、乾燥することで、二酸化ケイ素(SiO2)で構成される膜が付着した実施例11の蛍光体E11を得た。
【0130】
(実施例12)
実施例11で製造した蛍光体E11に対して、大気中、温度350℃で10時間の熱処理を行い、実施例12の蛍光体E12を得た。
【0131】
(実施例13)
実施例7で製造した蛍光体E7を15g、TEOSを0.8g秤量し、エタノール27mLに投入した。その後、液温を50℃に保ちながら、スターラーで3時間攪拌した。攪拌後に得られた沈殿物を固液分離後、エタノール洗浄を行い、乾燥することで、実施例13の蛍光体E13を得た。
【0132】
(実施例14)
実施例13で製造した蛍光体E13に対して、実施例13と同様の条件にして、二酸化ケイ素(SiO2)で構成される膜をさらに付着させて、実施例14の蛍光体E14を作製した。
【0133】
実施例11から14いずれの実施例においても、蛍光体の表面に二酸化ケイ素で構成される膜を付着させることができた。これらの膜は、外部環境による蛍光体の劣化を抑制することができる保護膜として機能すると考えられる。
本開示の蛍光体は、特に発光ダイオードを励起光源とする発光装置に用いて、例えば、照明用光源、LEDディスプレイまたは液晶バックライト用途等の光源、信号機、照明式スイッチ、各種センサ、各種インジケータ、および小型ストロボ等に好適に利用できる。