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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023049596
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】油脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23D 9/02 20060101AFI20230403BHJP
   C11C 3/00 20060101ALI20230403BHJP
   C11B 3/14 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
A23D9/02
C11C3/00
C11B3/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021159416
(22)【出願日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】辻野 祥伍
(72)【発明者】
【氏名】青柳 寛司
(72)【発明者】
【氏名】関口 吉則
(72)【発明者】
【氏名】藤田 尚也
【テーマコード(参考)】
4B026
4H059
【Fターム(参考)】
4B026DC01
4B026DG05
4B026DP10
4H059BC03
4H059BC13
4H059BC15
4H059CA72
4H059DA07
4H059EA23
4H059EA25
(57)【要約】
【課題】油脂組成物を含む食品又は油脂組成物に含まれる風味成分に由来する風味を口腔内で適切に拡散することができ、かつ、当該風味が適度に持続することができる、油脂組成物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】具体的には、特定のオゾン量で原料油脂と前記オゾンとを接触させるオゾン処理工程(1)、工程(1)でオゾン処理した油脂を活性白土に接触させる活性白土処理工程(2)、及び工程(2)で活性白土処理した油脂を特定温度以下で脱臭処理する脱臭工程(3)を含む油脂組成物の製造方法等を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)原料油脂1kgに対して120mg以上のオゾン量で、前記原料油脂と前記オゾンとを接触させるオゾン処理工程、
(2)工程(1)でオゾン処理した油脂を活性白土に接触させる活性白土処理工程、及び
(3)工程(2)で活性白土処理した油脂を235℃以下の温度で脱臭処理する脱臭工程、
を含む油脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記工程(3)で得られた脱臭した油脂に対し、風味成分を配合する配合工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記原料油脂が大豆油である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記原料油脂が大豆脱酸油である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記工程(1)において、原料油脂とオゾンとの接触時間が1分以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記工程(1)のオゾン量が、前記原料油脂1kgに対して126.3mg以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記工程(3)の脱臭処理が、230℃以下の温度で行われる、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記工程(1)でオゾン処理した油脂の、酢酸-イソオクタン法に従って測定された過酸化物価が、6以上である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法から得られた油脂組成物と、風味成分とを含有する、風味付けした油脂組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の方法で得られた油脂組成物を含む、風味成分の風味を改善するための風味改良剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油脂組成物の製造方法及び油脂組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
油脂は、通常原料油脂を脱ガム、脱酸、脱色、脱ロウ、及び脱臭等の精製処理を行うことにより、原料油脂中に含まれる各種不純物を除去することによって精製し、精製油脂として製品化される。このように生成された精製油脂は他の食品素材と共に食品として飲食する際に、他の食品素材が有する風味や、精製した油脂にさらに添加された風味成分に基づく風味が口腔内で適度に広がり、飲食者に当該精製油脂やこれを含む食品に優れた風味や旨味を与えることができる。しかし、上記精製処理の方法如何によっては得られた精製油脂の風味が損なわれることもあり、また、風味成分を精製油脂に別途添加した場合にも当該風味成分に由来する風味を適切に引き出すことができないこともあった。さらに、風味の拡散性がより高い油脂組成物や、風味がより長時間持続する油脂組成物が求められていた。
【0003】
例えば、特許文献1には、油脂をオゾンに接触させる工程及び蒸留工程を経ることによって得られた食用油脂が、曝光臭改善効果を示すことが記載されている。しかし、特許文献1の方法では、曝光臭改善効果を有する食用油脂は得られるとしても、上述したような油脂組成物を含む食品又は油脂組成物に含まれる風味成分に由来する風味をいかにして適切に引き出すかという課題は開示されておらず、その解決方法についても一切検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2021/010491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、油脂組成物を含む食品又は油脂組成物に含まれる風味成分に由来する風味を十分に引き出すことができる油脂組成物及びその製造方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、油脂を一定の条件下でオゾンに接触させ、その後活性白土処理及び/又は脱臭工程を経て処理した油脂組成物を得ることにより、油脂を含む食品の風味又は油脂組成物に含まれる風味成分に由来する風味を十分に引き出すことができることを見出し、本発明に至った。
本発明の態様は、下記の通りであり得る。
〔1〕
(1)原料油脂1kgに対して120mg以上のオゾン量で、前記原料油脂と前記オゾンとを接触させるオゾン処理工程、
(2)工程(1)でオゾン処理した油脂を活性白土に接触させる活性白土処理工程、及び
(3)工程(2)で活性白土処理した油脂を235℃以下の温度で脱臭処理する脱臭工程、
を含む油脂組成物の製造方法。
〔2〕
前記工程(3)で得られた脱臭した油脂に対し、風味成分を配合する配合工程をさらに含む、前記〔1〕に記載の方法。
〔3〕
前記原料油脂が大豆油である、前記〔1〕又は〔2〕に記載の方法。
〔4〕
前記原料油脂が大豆脱酸油である、前記〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の方法。
〔5〕
前記工程(1)において、原料油脂とオゾンとの接触時間が1分以上である、前記〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の方法。
〔6〕
前記工程(1)のオゾン量が、前記原料油脂1kgに対して126.3mg以上である、前記〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の方法。
〔7〕
前記工程(3)の脱臭処理が、230℃以下の温度で行われる、前記〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載の方法。
〔8〕
前記工程(1)でオゾン処理した油脂の、酢酸-イソオクタン法に従って測定された過酸化物価が、6以上である、前記〔1〕~〔7〕のいずれか一項に記載の方法。
〔9〕
前記〔1〕に記載の方法から得られた油脂組成物と、風味成分とを含有する、風味付けした油脂組成物。
〔10〕
前記〔1〕に記載の方法で得られた油脂組成物を含む、風味成分の風味を改善するための風味改良剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、油脂組成物を含む食品又は油脂組成物に含まれる風味成分に由来する風味を十分に引き出すことができる、油脂組成物及びその製造方法等を提供することができる。特に、本発明によれば、油脂組成物を含有する食品に由来する風味及び/又は当該油脂組成物に含まれる風味成分に由来する風味を口腔内で適切に拡散することができ、かつ、当該風味が適度に持続することができる、油脂組成物及びその製造方法等を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ここで、発明を実施するための形態を詳説するが、以下で例示する好ましい態様やより好ましい態様等は、「好ましい」や「より好ましい」等の表現にかかわらず適宜相互に組み合わせて使用することができる。また、数値範囲の記載は例示であって、各範囲の上限と下限並びに実施例の数値とを適宜組み合わせた範囲も好ましく使用することができる。さらに、「含有する」又は「含む」等の用語は、「本質的になる」や「のみからなる」と読み替えてもよい。
【0009】
<油脂組成物の製造方法>
本発明の油脂組成物の製造方法は、
(1)原料油脂1kgに対して120mg以上のオゾン量で、前記原料油脂と前記オゾンとを接触させるオゾン処理工程、
(2)工程(1)でオゾン処理した油脂を活性白土に接触させる活性白土処理工程、及び
(3)工程(2)で活性白土処理した油脂を235℃以下の温度で脱臭処理する脱臭工程、
を含む。以下、各工程について詳細に説明する。
【0010】
(1)オゾン処理工程
オゾン処理工程では、原料油脂とオゾンとを接触させることが行われる。原料油脂とオゾンとの接触に使用されるオゾン量(オゾン負荷量)は、原料油脂とオゾンとの接触が十分に行われる量であればよく、具体的には原料油脂に対してオゾンが接触する時間の間に、原料油脂1kgに対して120mg以上、好ましくは、126mg以上又は126.3mg以上、より好ましくは250mg以上、更に好ましくは500mg以上、特に好ましくは800mg以上のオゾンが供給され、原料油脂とオゾンとが接触することが適当である。オゾン量の上限は特にないが、オゾン発生器の能力や環境への配慮から、原料油脂1kgに対して例えば8000mg以下、好ましくは、6500mg以下、より好ましくは4000mg以下、更に好ましくは2000mg以下、特に好ましくは1000mg以下のオゾン量で行われる。理論に縛られることはないが、オゾン処理工程により、最終的に得られる油脂組成物を含む食品に由来する風味や当該油脂組成物に含まれる風味成分に由来する風味を口腔内で効率的に拡散させ、かつ、風味を長く持続することができると考えられる。
【0011】
オゾンは、酸素原子3個から構成される常温常圧で気体の化合物である。オゾン処理では、オゾン気体を油脂に接触させるか、オゾンを含有する水を原料油脂と撹拌・混合することで接触させることもできる。
オゾン気体を使用する場合、オゾン気体の流量を、例えば0.0005~0.1m3/分、好ましくは0.001~0.05m3/分、より好ましくは0.003~0.01m3/分とし、オゾン気体1リットル中のオゾン濃度を、例えば0.1~20mg、好ましくは0.5~10mg、より好ましくは1~5mgとすることが適当である。オゾンを含有する水を使用する場合、水中のオゾン残存量が、例えば、水1g中に0.1~3質量ppm、好ましくは0.3~1.5質量ppm、より好ましくは0.4~1質量ppmであってもよい。ただし、オゾンを接触させた後に、オゾン以外の成分を除去する必要がないことから、オゾン気体を油脂に接触させることが好ましい。オゾン気体を油脂に接触させる方法としては、脱気された油脂をオゾン気体と接触させる方法、及び/又は、油脂中にオゾン気体をバブリングさせることで接触させる方法を用いることができる。なお、オゾン発生方法としては、特に限定するものではないが、空気中あるいは酸素中での紫外線照射、または空気中あるいは酸素中での無声放電などにより、高いエネルギーを持つ電子と酸素分子とを衝突させてオゾンを発生させる方法を利用することができる。実際のオゾン発生器としては、水や食品等の殺菌、脱臭、及び脱色に用いる市販のオゾン発生器を利用することができる。
【0012】
原料油脂とオゾンとの接触時間は、長いほど本発明で得られる油脂組成物を含む食品又は当該油脂組成物に含まれる風味成分に由来する風味を引き出す効果が高いが、例えば1分以上であることが好ましく、10分~24時間であることがより好ましい。原料油脂とオゾンとを30分~6時間接触させることがさらに好ましく、原料油脂とオゾンとを1.5時間~4時間接触させることがことさら好ましい。また、原料油脂とオゾンとの接触温度は、オゾンと油脂を効率よく接触させるため、原料油脂が液状である温度が適当である。原料油脂が液状であると、原料油脂中にオゾンが溶存できることになるので好ましい。原料油脂とオゾンとの接触温度は、例えば-10℃以上であることが好ましく、5℃以上であることがより好ましい。また、接触温度が高くなると油脂の酸化反応が促進され、反応のコントロールが難しくなるので、接触温度は180℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましい。原料油脂とオゾンとの接触温度は、10~60℃がさらに好ましく、10~40℃が特に好ましく、室温(20℃±5℃)が最も好ましい。また、原料油脂とオゾンとの接触時の圧力は、原料油脂1kgに対して120mg以上のオゾン量で、前記原料油脂と前記オゾンとを接触できる条件であればよく、大気圧付近でも本願発明の効果を十分発揮することができる。接触時の圧力は高い方が、原料油脂へのオゾンの溶解しやすく、反応も進みやすくなることが期待できるので好ましいが、高圧の容器を用いる必要がある。原料油脂とオゾンとの接触時の圧力は、50000~300000Pa(約0.5~約3気圧)が好ましく、80000~150000Paがより好ましく、大気圧又は10000~10500Paで行うことがさらに好ましい。なお、油脂とオゾンとの接触において、原料油脂中の水分量は影響を受けない。
【0013】
上記工程(1)でオゾン処理した油脂の、酢酸-イソオクタン法に従って測定された過酸化物価(POV)は、例えば6以上、好ましくは8以上、より好ましくは15以上、更に好ましくは20以上であることが適当である。当該過酸化物価(POV)の上限値は特に規定する必要はないが、例えば、100以下、好ましくは80以下、より好ましくは60以下、更に好ましくは40以下であることが適当である。ここで過酸化物価(POV)は、酢酸-イソオクタン法に従って測定され、試料にヨウ化カリウムを加えた場合に遊離されるヨウ素を試料lkgに対するミリ当量数で表したものである。具体的には、日本油化学会制定 「基準油脂分析試験法 2.5.2.1-2013過酸化物価(酢酸-イソオクタン法)」の測定方法に基づいて、過酸化物価(POV)を求めることができる。
【0014】
[原料油脂]
本発明の原料油脂として用いる油脂は、通常の油脂を主成分として含むあらゆる油脂を使用することができる。通常の油脂は、動植物油脂及びその水素添加油、分別油、エステル交換油などを単独あるいは組み合わせて用いることができる。動植物油脂としては、例えば、大豆油、ハイオレイック大豆油、なたね油、ハイオレイックなたね油、ひまわり油、ハイオレイックひまわり油、オリーブ油、サフラワー油、ハイオレイックサフラワー油、コーン油、綿実油、米油、ゴマ油、グレープシード油、落花生油、綿実油、ぶどう油、小麦はい芽油、フラックス油、エゴマ油、パーム油、パーム核油、及びヤシ油等の植物油脂、牛脂、乳脂、魚油、ラード、肝油、鯨油、及び骨油等の動物油脂、これら2種以上を混合した調合油脂などが挙げられる。原料油脂として用いる油脂は、流通時、あるいは保管時(例えば、10~40℃)に液状である油脂が好ましい。特に大豆油や大豆油を脱酸した大豆脱酸油が好ましい。本発明の原料油脂としては、油脂中に大豆油を10~100質量%含有する油脂を用いることが好ましく、油脂中に大豆油を50~100質量%含有する油脂を用いることがより好ましい。
【0015】
原料油脂として使用する油脂は、未精製の油脂の他、精製工程を経た油脂を用いることができる。精製工程を経た油脂としては、通常の油脂の精製で用いられる、脱ガム工程、脱酸工程、脱色工程、脱ロウ工程、脱臭工程等のいずれか1つ以上、又は全部を経た油脂を用いることができる。特に大豆油を、さらにアルカリ脱酸処理等行うことにより遊離した脂肪酸等酸成分を除去した大豆脱酸油を好ましく使用することができる。
【0016】
(2)活性白土処理工程
活性白土処理工程では、工程(1)でオゾン処理した油脂を活性白土に接触させることが行われる。活性白土処理工程は、活性白土を使用する以外、油脂の脱色工程で通常行われる方法及び条件を使用することができる。活性白土処理工程は、脱臭工程を経ていないが、上記オゾン処理工程(1)を経た油脂に対して行われ、いわゆる脱色工程を兼ねて行われてもよい。
活性白土処理工程における各種条件は特に制限されず、通常の油脂の製造方法で使用される脱色工程の条件を用いることができる。例えば、原料油脂に活性白土を加えた後、例えば、70~150℃、好ましくは80~130℃、より好ましくは90~120℃の温度で、例えば、5~120分間、好ましくは10~90分間、より好ましくは15~60分間加熱して、油脂と活性白土とを接触させてもよい。活性白土処理工程を終えた後は、ろ過又は遠心分離等により活性白土及びその他不純物を除去し、活性白土処理された油脂(脱色油脂)を得ることができる。活性白土処理は、活性白土に含まれる水分を除去して、吸着能力を高めるために減圧下で行うことが好ましい。圧力(減圧度)は、例えば、20000Pa以下、好ましくは、300~13000Pa、より好ましくは2000~10000Paの減圧下が好ましい。
【0017】
上記活性白土処理に加え、例えば、アルカリ性白土、酸性白土、及び中性白土など、通常使用される白土、若しくは活性炭等で事前に脱色工程を行った後に、活性白土処理を行うこともできる。
実際の活性白土処理工程は、例えば、上記接触される原料を処理槽に投入し、原料を任意に撹拌することによって行われてもよい。処理槽としては、例えば、タンク、カラム、ろ過器などを用いることができる。タンクの場合は、攪拌機付のタンクであることが好ましく、原料油脂と活性白土とを含む混合物を互いに接触させた後、ろ過もしくは遠心分離機等で上記混合物中の各成分を分離することが好ましい。ろ過を容易にするために、活性白土処理工程を、ろ過助剤等の助剤の存在下で行われていてもよい。ろ過助剤としては、例えば、セライトなどの無機ろ過助剤及びセルロースなどの繊維やその粉砕物などの有機ろ過助剤が挙げられる。また、カラムやろ過器に活性白土を充填・保持し、液体の原料油脂を当該カラムやろ過器に通液してもよい。液体の原料油脂を通液することにより、通液と同時に上記各成分も分離でき、装置もタンクに比べてコンパクトになるので好ましい。ろ過器としては、例えば、単板ろ過器、フィルタープレス、アマフィルター等を用いることが好ましい。タンク、カラム、ろ過器は、ガラス製、プラスチック製もしくは鉄、ステンレスなどの金属製を用いることができるが、耐久性の点から金属製であることが好ましい。
【0018】
[活性白土]
活性白土としては、例えば、白土や酸性白土を鉱酸等の酸で活性化処理したものを挙げることができる。活性白土は、活性白土を水に5質量%の濃度で懸濁させた液(5質量%水性懸濁液)のpHとして、例えば1.0以上、好ましくはpHが2.0以上、より好ましくはpHが3.0以上であって、例えばpHが6.0以下、好ましくはpHが5.0以下、より好ましくはpHが4.0以下を呈する活性白土が好ましい。上記pHの上限及び下限は適宜組み合わせた範囲としてもよく、また、例えば、pH=1.0~6.0の範囲が好ましく、より好ましくはpH=2.0~5.0、特に好ましくはpH=3.0~4.0であることが適当である。
好ましい活性白土としては、例えば、ガレオンアース(水澤化学工業株式会社製、5質量%水性懸濁液 pH=3.3)、及びSUPER PLUS(TAIKO CLAY MARKETING SDN.BHD.社製、pH=3.9)等の市販品を挙げることができる。
使用する活性白土の量は、処理されるべき油脂の質量に対し、0.05~10質量%であることが好ましく、0.1~5質量%であることがより好ましく、0.5~2質量%であることが更に好ましく、1質量%±0.5質量%がこと更好ましい。
【0019】
(3)脱臭工程
脱臭工程では、工程(2)で活性白土処理した油脂を235℃以下の温度で脱臭処理することが行われる。ここで脱臭は、活性白土処理を行った油脂を適切な温度に加熱し、任意に水蒸気を適用することによって行われる。加熱温度条件は、235℃以下、好ましくは230℃以下、より好ましくは225℃以下の温度が好ましい。加熱温度の下限値は、例えば100℃以上、好ましくは150℃以上、より好ましくは170℃以上、更に好ましくは180℃以上、特に好ましくは200℃以上の温度が適当である。加熱温度条件はこれらの下限値及び上限値を組み合わせた任意の温度範囲でもよいが、通常の油脂の脱臭工程において好ましい温度条件よりも、比較的低い235℃以下の温度で、かつ、脱臭が適度に行われる170℃以上の温度で行われることが、本発明で得られる油脂組成物を含む食品又は油脂組成物に含まれる風味成分に由来する風味を十分に引き出すためには適当である。
【0020】
脱臭時間は、十分な脱臭効果が期待できる限り任意の脱臭時間を選択することができるが、例えば15~180分、好ましくは20~150分、より好ましくは40~100分であることが適当である。
前記加熱は、任意に減圧下で行ってもよい。減圧の条件は、例えば、10~1300Pa、好ましくは、100~1000Pa、より好ましくは200~600Paであることが適当である。
前記加熱は、水蒸気を油脂中に吹き込みながら行うことが好ましい。吹込む水蒸気の温度は、例えば80℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上の温度で、150℃以下の温度を上限とすることが適当である。吹込む水蒸気量は、処理されるべき油脂の質量に対し、0.5~10質量%であることが好ましく、1~5質量%であることがより好ましい。
【0021】
脱臭工程では、必要に応じて、脱臭工程の最後、又は脱臭工程後に、油脂の酸化安定性を高めるために有機酸を添加してもよい。有機酸としては、クエン酸、アスコルビン酸、コハク酸、リンゴ酸、シュウ酸等が挙げられ、添加量としては0.1~100ppmが好ましく、1~50ppmがより好ましく、2~40ppmがさらに好ましく、2~20ppmが最も好ましい。
【0022】
(4)配合工程
上記工程(3)によって油脂組成物を得ることはできるが、さらに上記工程(3)で得られる脱臭した油脂に対し、風味成分を配合して風味付けした油脂組成物を得る配合工程を任意に含んでもよい。本発明は、上記工程(1)~(3)によって油脂組成物を含有する食品の風味を十分に引き出すことを目的とするが、当該油脂組成物に風味成分が含まれる場合、当該風味成分に由来する風味をも口腔内で適切に拡散することができ、かつ、当該風味が適度に持続することができるものである。ここで風味成分とは、食品(飲料も含む)にもともと含まれる風味を与える成分(油脂にもともと含まれる風味成分も含む)のほか、食品に添加されて食品に新たな風味を与える成分の双方を意味し、風味成分としては、酸味料、甘味料、及び香料、未精製オイルの風味成分を挙げることができるが、油脂組成物との相溶性がよく、油脂組成物と共に口腔内で成分が広がることが期待できる油溶性の成分が好ましい。さらに好ましくは、フレーバーオイルの風味成分、未精製油の風味成分などの油溶性の成分である。なお、水溶性の風味成分は、油脂組成物中に微粒子として分散、あるいは乳化剤を用いて、可溶化、乳化させることで、油脂組成物と共に口腔内で成分が広がることが期待でき好ましい。具体的な風味成分としては、例えば、酸味料としては、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸、クエン酸、コハク酸等の天然又は合成酸味料が挙げられる。甘味料としては、例えば、砂糖、ぶどう糖、ショ糖、果糖、オリゴ糖、水飴、サッカリン、アスパルテーム、ネオテーム、スクラロース、及びアセスルファムK等の天然又は合成甘味料が挙げられる。香料としては、例えば、魚介類、ハーブやスパイスなどの香辛料、ガーリック、ねぎ、オニオンなどの野菜類、バター、クリームなどの乳脂類、オレンジ、グレープフルーツ、柚子やレモンなどのフルーツや柑橘類等の風味を有するものを挙げることができる。これらの風味は、未加工の風味の他、ロースト(焙煎)したもの、燻製したもの、あるいはフライして得られた風味のものも含まれる。これらの風味は、合成したもの、及び/又は天然物に由来する成分を含む香料を用いることができる。なお、本発明においては、これら風味が付与された食用油脂(フレーバーオイル)も前記香料に含まれる。風味を付与された油脂としては、好ましくは、ポークフレーバーオイル、ビーフフレーバーオイル、ガーリックオイル、ネギオイル、ジンジャーオイル、柑橘系オイル、中華風味油、ラー油等が挙げられる。また、未精製オイルとしては、焙煎ごま油、未精製オリーブオイル等を挙げることができる。風味成分は1種類のみ使用しても、複数種類を組み合わせて使用してもよい。風味付けした油脂組成物の質量に対する風味成分の質量は、例えば、0.01~10質量%、好ましくは0.03~5質量%、より好ましくは0.05~1質量%、更に好ましくは0.1±0.02質量%が適当である。
【0023】
(5)その他任意工程
上記工程のほか、原料油脂や各工程の途中の油脂を、脱ガム処理、脱酸処理、脱ロウ処理、分別処理等、その他の任意工程にかけて、油脂組成物を得てもよい。脱ガム処理は、油脂と、リン酸、クエン酸水溶液、シュウ酸水溶液、コハク酸水溶液等の酸性溶液とを接触させ、その後分離するガム質を遠心分離、又は吸着等で除去することによって行われてもよい。なお、分離したガム質の除去は、後述する脱酸処理の脂肪酸石鹸の除去と同時に行ってもよい。
脱酸処理は、油脂と、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリとを接触させることによって行われてもよい。その場合、油脂中の遊離脂肪酸、脱ガム処理で用いた酸は、脂肪酸石鹸や塩として遠心分離や水洗等で除去される。また、脱酸処理は、油脂中の遊離脂肪酸を蒸留にて除去することによって行われてもよい。
脱ロウ処理、分別処理は、原料油脂を冷却することにより、原料油脂中の低温で固まりやすいロウ分を除去する、又は高融点油脂(液状油脂など)と低融点油脂(固形脂など)を分ける工程である。また、上記(1)~(5)の工程を複数繰り返し行ってもよい。
【0024】
本発明では、活性白土工程(2)に先立ってオゾン処理工程(1)を行うことが望ましい。当該順序で原料油脂を処理することによって、油脂組成物を含む食品又は油脂組成物に含まれる風味成分に由来する風味を十分に引き出すことができる。追加工程として活性白土処理工程(2)とは別に脱色工程を行う場合も、オゾン処理工程(1)の後に脱色工程を行うことが望ましい。脱臭工程(3)は脱色工程や活性白土処理工程(2)の後に行うことが好ましい。その他の任意工程は、本発明の効果に影響がない限り、任意の段階で行うことができるが、脱ガム処理、脱酸処理は、オゾン処理工程(1)の前に行うことが好ましい。
【0025】
<油脂組成物>
本発明に沿って処理された油脂を含む油脂組成物は、油脂組成物を含む食品や風味成分に由来する風味を口腔内で適切に拡散することができ、かつ、当該風味が適度に持続することができる。このように、本発明の方法に従って処理することによって油脂に対する優れた風味特性が得られる理由、及び後述するように油脂組成物に添加した風味成分の風味特性にも大きく影響し得る理由は定かではないが、本発明に従って油脂を処理することにより、最終的に得られる油脂組成物中の不純物や夾雑物が適度に除去され、上記風味に関する作用効果を得ることができるものと考えられる。本発明で得られる油脂組成物は、本発明の方法により生成された油脂を1種又は2種以上含んでいてもよい。また、その他の任意の成分として、例えばその他の未処理油脂、植物ステロール、レシチン、抗酸化成分、色素成分等が含まれてもよい。本発明で得られる油脂組成物は、油脂組成物全体の質量に対し当該処理した油脂を50質量%以上含有することが好ましく、70質量%以上含有することがより好ましく、90質量%以上含有することが更に好ましい。処理した油脂の含有量の上限は100質量%が好ましいが、98質量%、95質量%、90質量%、85質量%又は80質量%であってもよい。
【0026】
<風味付けした油脂組成物>
本発明の一態様は、油脂を風味付けした油脂組成物である。風味付けした油脂組成物は、上述の通りの油脂組成物の製造方法によって得られた油脂組成物と、上述した風味成分とを含有する。本発明において「油脂組成物」は風味成分を含む組成物をも含む意味であるが、風味成分を含む場合は特に「風味付けした油脂組成物」と表現することがある。油脂組成物を含有する食品も「風味付けした油脂組成物」の一種であり、特に「風味付けした飲食用油脂組成物」とも表現できる。風味付けした油脂組成物は、当該風味成分を含む油脂組成物に含まれる当該風味成分に由来する風味を口腔内で適切に拡散することができ、かつ、当該風味が適度に持続することができる。特定の処理工程を経て製造された油脂組成物が、当該風味成分の風味特性を相乗的に向上できることは驚くべきことである。使用できる風味成分の種類は上述したとおりであり、風味成分は1種類のみ使用しても、複数種類を組み合わせて使用してもよい。風味付けした油脂組成物の質量に対する風味成分の質量は、例えば、0.01~10質量%、好ましくは0.03~5質量%、より好ましくは0.05~1質量%、更に好ましくは0.1±0.02質量%が適当である。
【0027】
<油脂組成物の用途>
上記油脂組成物は、油脂を原料とする各種分野で利用できる。特に、食用油、バター、マーガリン、ショートニング、及び調味料等の食品分野、及び香料、口腔洗浄剤、歯磨き剤等の非食品分野で利用することができる。食品又は非食品の製品中の上記油脂組成物の含有量は、対象とする製品の種類によって異なるが、例えば、最終的に得られる製品全体を100質量%とした場合、例えば、0.1~99質量%、好ましくは、0.1~90質量%、より好ましくは、0.5~80質量%、さらに好ましくは、1~70質量%である。本発明の製品は、上記油脂組成物を原料として使用する以外は、公知の方法により製造することができる。
【0028】
上記油脂組成物は、油脂組成物を含む食品又は油脂組成物に含まれる風味成分に由来する風味を十分に引き出すことができる油脂組成物である。食品中の風味成分としては、食品にもともと含まれる風味を与える成分(油脂に含まれる風味成分も含む)のほか、油脂組成物とは別に配合された風味成分であってもよく、風味成分としては、果物、野菜、魚介類、卵類、肉類、穀物類等の風味成分の他、前述の酸味料、甘味料、及び香料、未精製オイルの風味成分が挙げられる。また、油脂組成物との相溶性がよく、油脂組成物と共に口腔内で成分が広がることが期待できる油溶性の成分が好ましい。
【0029】
<風味改良剤>
上記油脂組成物は、風味成分の風味を改善するための風味改良剤としても使用できる。例えば、フレーバーオイルなどの風味成分に上記油脂組成物を含む風味改良剤を加えることにより、食品や風味成分に由来する風味を口腔内で適切に拡散することができ、かつ、当該風味が適度に持続することができる。また、フレーバーオイルのベースオイルとして用いてもよい。
上記風味改良剤は、上記の油脂組成物を、好ましくは50~100質量%、より好ましくは80~100質量%、さらに好ましくは90~100質量%含有する。
但し、本発明の好ましい風味改良剤は、実質的に当該油脂組成物のみからなることが好ましい。また「実質的に」とは、風味改良剤中に含まれる油脂組成物以外の成分が、風味改良剤を100質量%とした場合、例えば、0~10質量%、好ましくは0~5質量%、より好ましくは、0~3質量%であることを意味する。
また、風味改良剤の風味成分への添加量は、風味改良剤全体の質量に対し、風味成分が、例えば、0.01~10質量%、好ましくは0.03~5質量%、より好ましくは0.05~1質量%、更に好ましくは0.1±0.02質量%含まれることが適当である。
【実施例0030】
以下、本発明について、実施例及び比較例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0031】
<評価方法>
[過酸化物価(POV)]
オゾン処理工程又は空気酸化工程を行った後の油脂の酸化程度を測定するため、当該油脂の過酸化物価(POV)を測定した。具体的には、日本油化学会制定の「基準油脂分析試験法 2.5.2.1-2013過酸化物価(酢酸-イソオクタン法)」に沿って過酸化物価(POV)を分析した。
【0032】
[官能評価]
実施例及び比較例で得られた油脂組成物の風味を、専門パネラーによる官能試験を行って評価した。まず、各実施例及び比較例で得られた油脂組成物に、風味成分としてポークフレーバーオイル(商品名「バックアロマポークオイルCS1283」小川香料(株))を、油脂組成物の質量に対して0.1質量%の量で添加し、官能評価用の試料を作成した。官能評価では、20代~40代の男女12名の官能評価専門のパネラーにより、以下の評価項目及び評価基準により風味の5段階評価を行った。評価においては、後述する比較例1の評価点を1点とし、後述する比較例2の評価点を2点とし、以後3~5点は1点と2点との差を1点分の差として配点するようにパネラーに伝えるとともに、当該比較例1及び2等の評価点はパネラー間に差がないように話し合いによる事前調整を行った。
-評価項目-
(1)拡散性:試料を口腔内に含んだ際、口腔内での風味の拡散性が強いと感じるか否か。
(2)持続性:試料を口腔内に含んだ際、風味が長く持続すると感じるか否か。
-評価点-
1点:当てはまらない(感じない)
2点:わずかに当てはまる
3点:当てはまる
4点:強く当てはまる
5点:非常に強く当てはまる
【0033】
<各工程>
以下の各工程で「処理されるべき油脂」とは、各工程の直前の工程で得られた油脂又は直前の工程がない場合は原料油脂として使用する大豆脱酸油(日清オイリオグループ株式会社製、液体)を意味する。
[オゾン処理工程1]
処理されるべき油脂2.4kgを3リットル丸底フラスコに仕込み、当該処理されるべき油脂中にオゾン発生器(OZSD-1200D、荏原実業株式会社製)を用いて発生させた気体のオゾン(オゾン濃度2.02mg/L、流量0.005m3/分)を室温(20℃)かつ大気圧下で192分吹き込み、オゾン処理した油脂(オゾン量:808mg/kg油脂)を得た。
[オゾン処理工程2]
処理されるべき油脂にオゾンを吹き込む時間を15分とした以外、オゾン処理工程1と同様にして、オゾン処理した油脂(オゾン量:63.1mg/kg油脂)を得た。
[オゾン処理工程3]
処理されるべき油脂にオゾンを吹き込む時間を30分とした以外、オゾン処理工程1と同様にして、オゾン処理した油脂(オゾン量:126.3mg/kg油脂)を得た。
[オゾン処理工程4]
処理されるべき油脂にオゾンを吹き込む時間を60分とした以外、オゾン処理工程1と同様にして、オゾン処理した油脂(オゾン量:252.5mg/kg油脂)を得た。
[空気酸化処理工程1]
処理されるべき油脂に、オゾンに代えて乾燥空気(流量0.005m3/分)を80℃で180分吹き込む以外はオゾン処理工程1と同様にして、空気酸化処理した油脂を得た。
【0034】
[活性白土処理工程1]
当該処理されるべき油脂1.2kgに、活性白土(商品名「ガレオンアース」、水澤化学工業(株)製)を、処理すべき油脂の質量に対して活性白土1質量%の量で添加し、110℃で撹拌しながら20分処理し、活性白土を濾過にて除去して、活性白土処理した油脂を得た。
[活性白土処理工程2]
処理すべき油脂の質量に対して活性白土0.5質量%の量で活性白土を添加する以外、活性白土処理工程1と同様にして、活性白土処理した油脂を得た。
[酸性白土処理工程1]
活性白土の代わりに酸性白土(商品名「ミズカエース#300」、水澤化学工業(株)製)を使用する以外、活性白土処理工程1と同様にして、酸性白土処理した油脂を得た。
【0035】
[脱臭工程1]
処理すべき油脂1.0kgを、当該処理すべき油脂に対して3質量%の水蒸気を吹き込みながら、255℃の温度及び圧力400Paで60分間脱臭処理を行いった。その後、脱臭処理の降温時に、脱臭処理して得られた油脂の質量に対してクエン酸10ppmとなるように、10質量%のクエン酸水溶液を添加して、油脂組成物を得た。
[脱臭工程2]
脱臭処理の温度を220℃とした以外は、脱臭工程1と同様にして、油脂組成物を得た。
[脱臭工程3]
脱臭処理の温度を160℃とした以外は、脱臭工程1と同様にして、油脂組成物を得た。
[脱臭工程4]
脱臭処理の温度を180℃とした以外は、脱臭工程1と同様にして、油脂組成物を得た。
[脱臭工程5]
脱臭処理の温度を230℃とした以外は、脱臭工程1と同様にして、油脂組成物を得た。
【0036】
上記各工程を組み合わせて実施例及び比較例の油脂組成物を製造した。実施例及び比較例で使用した原料油脂は、上述した大豆脱酸油(日清オイリオグループ株式会社製、液体)である。具体的には、表1~4のように各工程を順次行って油脂組成物を製造した。
【0037】
表1

*1:POVは、オゾン処理工程又は空気酸化工程後の過酸化物価である。
*2:(1)及び(2)の値の上段の値は平均値であり、下段の括弧内の値は標準偏差である。
【0038】
表1に示すように、実施例1は、口腔内での拡散性が強く、風味が長く持続するという結果になった。従って、オゾン処理後に活性白土処理工程を行うことが適当であり、脱臭温度は低温(220℃程度)である適当があることが示された。また、比較例4では、実施例1と同様の過酸化物価であるものの、オゾンではなく空気で酸化処理しているため、口腔内拡散性や持続性が劣る結果となった。したがって、単なる空気酸化処理ではなく、酸化条件としてオゾン処理が必要であることが示された。
【0039】
表2

*1:POVは、オゾン処理工程後の過酸化物価である。
*2:(1)及び(2)の値の上段の値は平均値であり、下段の括弧内の値は標準偏差である。
【0040】
表2の結果から、オゾン量が少ない比較例5(63.1mg/kg)では、実施例2(126.3mg/kg)および実施例3(252.5mg/kg)に比べ、(1)拡散性及び(2)持続性が劣ることが示された。
【0041】
表3

*1:POVは、オゾン処理工程後の過酸化物価である。
*2:(1)及び(2)の値の上段の値は平均値であり、下段の括弧内の値は標準偏差である。
【0042】
表1の実施例1と表3の実施例4とを対比すると、活性白土の添加量が減少しても(実施例4)、十分な(1)拡散性及び(2)持続性が発現することが理解できる。一方で、活性白土の代わりに酸性白土を用いた比較例6では、十分な(1)拡散性及び(2)持続性が発現しなかったことがわかった。
【0043】
表4

*1:POVは、オゾン処理工程後の過酸化物価である。
*2:(1)及び(2)の値の上段の値は平均値であり、下段の括弧内の値は標準偏差である。
【0044】
表4の結果から、脱臭工程の温度が230℃程度又はそれ以下の低温であれば、十分な(1)拡散性及び(2)持続性が得られることがわかった。なお、実施例5の160℃での脱臭処理の場合、若干の異味を感じたとの報告があった。