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特開2023-49683表面欠陥検査装置及び表面欠陥検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023049683
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】表面欠陥検査装置及び表面欠陥検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20230403BHJP
【FI】
G01N21/88 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021159570
(22)【出願日】2021-09-29
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)予稿集 ▲1▼発行日 令和3年9月5日 ▲2▼刊行物 The 8th IIAE International Conference on Intelligent Systems and Image Processing 2021 Proceeding,Online Session 7-3,一般社団法人産業応用工学会 (2)学会発表 ▲1▼開催日 令和3年9月6日~令和3年9月10日 ▲2▼集会名 The 8th IIAE International Conference on Intelligent Systems and Image Processing 2021 ▲3▼開催場所 オンライン開催
(71)【出願人】
【識別番号】000157083
【氏名又は名称】トヨタ自動車東日本株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504165591
【氏名又は名称】国立大学法人岩手大学
(74)【代理人】
【識別番号】100131026
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 博
(74)【代理人】
【識別番号】100194124
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 まゆみ
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 昭芳
(72)【発明者】
【氏名】大澤 博和
(72)【発明者】
【氏名】福島 寿昭
(72)【発明者】
【氏名】松井 洋一
(72)【発明者】
【氏名】菊田 真基
(72)【発明者】
【氏名】明石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】張 精
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 国渡
(72)【発明者】
【氏名】山本 優
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 良峻
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA89
2G051AB12
2G051AC02
2G051BA01
2G051CA04
2G051CB01
2G051DA06
2G051DA15
2G051EA11
2G051EB01
2G051EB02
2G051EC03
(57)【要約】
【課題】パラメータの設定を自動で行うことができる表面欠陥検査装置及び表面欠陥検査方法を提供する。
【解決手段】欠陥候補抽出手段40は、撮影手段20により得られた画像に基づく抽出対象画像ついて2値化処理を行い1次欠陥候補を抽出する1次抽出手段44と、1次欠陥候補から欠陥候補を抽出する2次抽出手段46とを有する。1次抽出手段44は、抽出対象画像について、2値化閾値を2値化基準値から一方向に順に変化させながら2値化処理を順に行い、処理の順に得られた2値化画像を比較し、欠陥候補点の出現数が所定の基準数よりも少ない状態から所定の基準数以上となった時、又は、欠陥候補点の出現数が所定の基準数よりも多い状態から所定の基準数以下となった時の2値化画像を閾値画像として、この閾値画像から1次欠陥候補を抽出する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査面に光を照射する光源と、
前記光源により照射された前記被検査面を撮影して画像を得る撮影手段と、
前記撮影手段により撮影した画像から欠陥候補を抽出する欠陥候補抽出手段と、
前記欠陥候補抽出手段により抽出した欠陥候補に基づき欠陥を検出する欠陥検出手段とを備え、
前記欠陥候補抽出手段は、前記撮影手段により得られた画像に基づく抽出対象画像について、2値化閾値を2値化基準値から一方向に順に変化させながら2値化処理を順に行い、処理の順に得られた複数の2値化画像を比較し、欠陥候補点の出現数が所定の基準数よりも少ない状態から所定の基準数以上となった時の2値化画像、又は、欠陥候補点の出現数が所定の基準数よりも多い状態から所定の基準数以下となった時の2値化画像を閾値画像とし、この閾値画像から、前記欠陥候補を抽出するための1次欠陥候補を抽出する1次抽出手段を有する
ことを特徴とする表面欠陥検査装置。
【請求項2】
前記欠陥候補抽出手段は、前記撮影手段により得られた画像に基づく抽出対象画像について、前記1次抽出手段により抽出された1次欠陥候補のうち、1次欠陥候補の輝度値と、その1次欠陥候補の周辺の平均輝度値との輝度差が所定の輝度差基準値以上であるものを前記欠陥候補として抽出する2次抽出手段を有することを特徴とする請求項1記載の表面欠陥検査装置。
【請求項3】
前記2次抽出手段は、前記撮影手段により得られた画像に基づく抽出対象画像ついて、前記光源の反射鏡像の周囲の領域を前記光源の反射鏡像からの距離に応じて複数に分割し、分割した複数の距離領域毎に前記輝度差基準値を設定することを特徴とする請求項2記載の表面欠陥検査装置。
【請求項4】
光源から光を照射した被検査面を撮影して画像を得る撮影手順と、
前記撮影手順により撮影した画像から欠陥候補を抽出する欠陥候補抽出手順と、
前記欠陥候補抽出手順により抽出した欠陥候補に基づき欠陥を検出する欠陥検出手順とを含み、
前記欠陥候補抽出手順は、前記撮影手順により得られた画像に基づく抽出対象画像について、2値化閾値を2値化基準値から一方向に順に変化させながら2値化処理を順に行い、処理の順に得られた複数の2値化画像を比較し、欠陥候補点の出現数が所定の基準数よりも少ない状態から所定の基準数以上となった時の2値化画像、又は、欠陥候補点の出現数が所定の基準数よりも多い状態から所定の基準数以下となった時の2値化画像を閾値画像とし、この閾値画像から、前記欠陥候補を抽出するための1次欠陥候補を抽出する1次抽出手順を含む
ことを特徴とする表面欠陥検査方法。
【請求項5】
前記欠陥候補抽出手順は、前記撮影手順により得られた画像に基づく抽出対象画像について、前記1次抽出手順により抽出された1次欠陥候補のうち、1次欠陥候補の輝度値と、その1次欠陥候補の周辺の平均輝度値との輝度差が所定の輝度差基準値以上であるものを前記欠陥候補として抽出する2次抽出手順を含むことを特徴とする請求項4記載の表面欠陥検査方法。
【請求項6】
前記2次抽出手順では、前記撮影手段により得られた画像に基づく抽出対象画像について、前記光源の反射鏡像の周囲の領域を前記光源の反射鏡像からの距離に応じて複数に分割し、分割した複数の距離領域毎に前記輝度差基準値を設定することを特徴とする請求項5記載の表面欠陥検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車のボディ表面の塗装などの状態を検査するのに好適な表面欠陥検査装置及び表面欠陥検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車のボディを塗装する工程においては、検査員の目視により塗装表面の検査作業を行っている。しかし、検査員による外観検査は労力を要する仕事であり、個人によってばらつきがあるため、検査ミスや検査漏れが生じる恐れがある。また、検査員による外観検査では、検査に要する時間も多くなり、人件費が製品の生産コストをあげてしまう要因のひとつになっている。そのため、外観検査の自動化が望まれており、近年では、光学的に自動的に検査することが可能な表面欠陥検査装置の開発が進められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、光を照射した自動車の塗装面の撮影画像を取得し、得られた撮影画像について2値化を行って欠陥候補を抽出すると共に、その欠陥候補について、直交する2方向での輝度変化が設定値以上である場合に欠陥であると判断する表面欠陥検査装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-200775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の表面欠陥検査装置では、検査部位や塗色によって光の反射度合が変わると撮影画像の全体平均輝度が変わるために、欠陥検出精度にばらつきが出てしまう。そのため、検査部位や塗色に応じて画像処理のパラメータを調整し、手動により設定を変更しなければならないという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題に基づきなされたものであり、パラメータの設定を自動で行うことができる表面欠陥検査装置及び表面欠陥検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の表面欠陥検査装置は、被検査面に光を照射する光源と、光源により照射された被検査面を撮影して画像を得る撮影手段と、撮影手段により撮影した画像から欠陥候補を抽出する欠陥候補抽出手段と、欠陥候補抽出手段により抽出した欠陥候補に基づき欠陥を検出する欠陥検出手段とを備え、欠陥候補抽出手段は、撮影手段により得られた画像に基づく抽出対象画像について、2値化閾値を2値化基準値から一方向に順に変化させながら2値化処理を順に行い、処理の順に得られた複数の2値化画像を比較し、欠陥候補点の出現数が所定の基準数よりも少ない状態から所定の基準数以上となった時の2値化画像、又は、欠陥候補点の出現数が所定の基準数よりも多い状態から所定の基準数以下となった時の2値化画像を閾値画像とし、この閾値画像から、欠陥候補を抽出するための1次欠陥候補を抽出する1次抽出手段を有するものである。
【0008】
本発明の表面欠陥検査方法は、光源から光を照射した被検査面を撮影して画像を得る撮影手順と、撮影手順により撮影した画像から欠陥候補を抽出する欠陥候補抽出手順と、欠陥候補抽出手順により抽出した欠陥候補に基づき欠陥を検出する欠陥検出手順とを含み、欠陥候補抽出手順は、撮影手順により得られた画像に基づく抽出対象画像について、2値化閾値を2値化基準値から一方向に順に変化させながら2値化処理を順に行い、処理の順に得られた複数の2値化画像を比較し、欠陥候補点の出現数が所定の基準数よりも少ない状態から所定の基準数以上となった時の2値化画像、又は、欠陥候補点の出現数が所定の基準数よりも多い状態から所定の基準数以下となった時の2値化画像を閾値画像として、この閾値画像から、欠陥候補を抽出するための1次欠陥候補を抽出する1次抽出手順を含むものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、2値化閾値を2値化基準値から一方向に順に変化させながら2値化処理を順に行い、欠陥候補点の出現数が所定の基準数よりも少ない状態から所定の基準数以上となった時の2値化画像を閾値画像とし、又は、欠陥候補点の出現数が所定の基準数よりも多い状態から所定の基準数以下となった時の2値化画像を閾値画像として、1次欠陥候補を抽出するようにしたので、画像処理を自動で行い、検査部位や塗色が異なっても全体平均輝度の差異が少ない画像を得ることができる。よって、検査部位や塗色に応じたパラメータの設定を手動で変更する必要がなく、自動で設定することができ、簡便に欠陥候補を抽出することができる。
【0010】
特に、撮影手段により得られた画像に基づく抽出対象画像について、1次抽出手段により抽出された1次欠陥候補のうち、1次欠陥候補の輝度値と、その1次欠陥候補の周辺の平均輝度値との輝度差が所定の輝度差基準値以上であるものを欠陥候補として抽出するようにしたので、塗色が異なっても同一の輝度差基準値を用いることができ、簡便に欠陥候補を抽出することができる。
【0011】
また、撮影手段により得られた画像に基づく抽出対象画像について、光源の反射鏡像の周囲の領域を光源の反射鏡像からの距離に応じて複数に分割し、分割した複数の距離領域毎に輝度差基準値を設定するようにしたので、光源の反射鏡像からの距離により変化する輝度差に応じて輝度差基準値を設定することができ、より高い精度で欠陥候補を抽出することができる。
【0012】
更に、光源に直管型の照明器具を用い、撮影手段により得られた画像に基づく抽出対象画像について、光源の反射鏡像を含む領域を長さ方向において複数に分割し、分割した複数の分割画像毎に2値化処理を行い、1次欠陥候補を抽出するようにしたので、光源の反射鏡像の長さ方向における中央部と端部とで輝度が異なるのに合わせて、2値化処理を行うことができ、より高い精度で欠陥候補を抽出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施の形態に係る表面欠陥検査装置の全体構成を表す図である。
図2図1に示した欠陥検出手段の構成を表すブロック図である。
図3】前処理手段により得られた画像の一例を表すものである。
図4】画像分割手段により得られた画像の一例を表すものである。
図5】2値化閾値を変えて2値化した2値化画像の一例を表すものである。
図6】2次抽出手段により抽出した欠陥候補の一例を表すものである。
図7】光源の反射鏡像の周囲の領域を光源の反射鏡像からの距離に応じて分割した概念図である。
図8】本発明の一実施の形態に係る表面欠陥検査方法の手順を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施の形態に係る表面欠陥検査装置1の全体構成を表すものである。この表面欠陥検査装置1は、例えば、自動車のボディの塗装面を被検査面Mとし、被検査面Mの表面に存在する欠陥を検出するものである。
【0016】
表面欠陥検査装置1は、例えば、被検査面Mに光を照射する光源10と、光源10により照射された被検査面Mを撮影して画像を得る撮影手段20と、撮影手段20に対する被検査面Mの位置を相対的に移動させる移動手段30と、移動手段30により撮影手段20と被検査面Mとを相対的に移動させながら任意の時間ごとに撮影手段20により撮影した複数の画像から欠陥候補を抽出する欠陥候補抽出手段40と、欠陥候補抽出手段により抽出した欠陥候補に基づき欠陥を検出する欠陥検出手段50と、欠陥検出手段50による検出結果を表示する表示手段60とを備えている。
【0017】
光源10には、直管型の照明器具、例えば、直管型の蛍光灯又はLED照明を用いることが好ましく、また、自動車のボディの色は多種多様であるので白色光源を用いることが好ましい。光源10は、例えば、被検査面Mを多方向から観察できるように、被検査面Mに対して複数配置することが好ましい。撮影手段20は、例えば、CCDカメラ等のカメラ21を有しており、デジタル画像を得ることができるものである。カメラ21は、例えば、光源10に対向するように配置され、光源10の反射鏡像及びその周辺領域を撮影するように構成される。
【0018】
移動手段30は、撮影手段20及び被検査面Mの少なくとも一方を移動させることにより、撮影手段20に対する被検査面Mの位置を相対的に移動させるものである。例えば、コンベヤー等の搬送手段により被検査面Mを一方向に一定の速度で搬送するように構成されていることが好ましい。欠陥候補抽出手段40及び欠陥検出手段50は、例えば、コンピュータにより構成されており、画像処理により欠陥候補を抽出し、又は、欠陥を検出するように構成されている。表示手段60は、例えば、ディスプレイ等により構成され、例えば、欠陥の重心に円マーク等を付して表示するように構成されている。
【0019】
(欠陥候補抽出手段40)
図2は、図1に示した欠陥候補抽出手段40及び欠陥検出手段50の構成を表すものである。欠陥候補抽出手段40は、例えば、撮影手段20と被検査面Mとを相対的に移動させながら撮影手段20により撮影した撮影時刻の異なる複数の画像を記憶するメモリ等の画像記憶手段41と、撮影手段20により撮影された画像を前処理する前処理手段42と、撮影手段20により得られた画像に基づく抽出対象画像について、光源10の反射鏡像を含む領域を長さ方向において複数に分割し、複数の分割画像とする画像分割手段43と、撮影手段20により得られた画像に基づく抽出対象画像について2値化処理を行い、欠陥候補を抽出するための1次欠陥候補を抽出する1次抽出手段44と、1次欠陥候補を記憶する1次欠陥候補記憶手段45と、1次欠陥候補から欠陥候補を抽出する2次抽出手段46と、欠陥候補を記憶する欠陥候補記憶手段47とを有していることが好ましい。
【0020】
前処理手段42は、例えば、撮影手段20により得らえた画像をグレースケール画像等の濃淡画像に変換して、被検査面Mの領域を切り出すと共に、ノイズの低減を行うものである。ノイズの低減としては、例えば、ガウシアンフィルタや、メディアンフィルタがある。図3に前処理手段42により得られた画像の一例を示す。図3において、白色の部分が光源10の反射鏡像である。
【0021】
画像分割手段43は、例えば、抽出対象画像である前処理手段42により得られた画像について、光源10の1つの反射鏡像及びその周辺領域を含む領域を切り取り、反射鏡像の長さ方向において複数に分割するように構成されていることが好ましい。反射鏡像の長さ方向における中央部と端部とで輝度が異なるので、画像を分けることにより、1次抽出手段44において2値化処理を高い精度で行うことができるからである。図4に画像分割手段43により分割した画像の一例を示す。図4において、白色の部分が光源10の反射鏡像である。なお、図4では、分割したことを分かりやすく示すために、各画像の間に隙間を開けて示している。また、図4では、画像分割手段43により、反射鏡像の長さ方向に6個に分割する場合について示したが、分割数は任意に設定することができる。分割数は、例えば、2個から12個の範囲とすることが好ましい。
【0022】
1次抽出手段44は、例えば、抽出対象画像である前処理手段42により処理された画像について、それぞれ、2値化閾値を2値化基準値から一方向に順に変化させながら2値化処理を順に行い、処理の順に得られた複数の2値化画像を比較し、欠陥候補点の出現数が所定の基準数よりも少ない状態から所定の基準数以上となった時の2値化画像、又は、欠陥候補点の出現数が所定の基準数よりも多い状態から所定の基準数以下となった時の2値化画像を閾値画像とし、この閾値画像から、1次欠陥候補を抽出するように構成されている。すなわち、1次抽出手段44は、2値化閾値の変化に伴う欠陥候補点の出現数の変化に基づき2値化閾値を自動的に決定し、2値化するものである。このように、欠陥候補点の出現数を全体平均輝度の代用特性として用い、2値化閾値を決定することは、実験結果から見出されたものである。
【0023】
2値化画像において、欠陥候補点は、例えば、光源10の反射鏡像の周辺領域に出現する。例えば、図4に示したように、光源10の反射鏡像が白色で表れている場合には、光源10の反射鏡像の周辺領域に白色の点として出現する。2値化基準値は、例えば、0から255の間で、最大値の255としてもよく、最小値の0としてもよく、最大値と最小値の間の任意の値としてもよい。被検査面Mにより、予め2値化閾値の好ましい範囲が分かっている時は、その近傍の値を2値化基準値として設定することにより、迅速に2値化閾値を決めることができ、2値化閾値の好ましい範囲が分からない時には、最大値又は最小値を2値化基準値とすることにより、2値化閾値を決めることができるからである。
【0024】
2値化閾値を変化させる方向は、2値化基準値が最大値の255の場合には小さくなる方向であり、2値化基準値が最小値の0の場合には大きくなる方向であり、2値化基準値が最大値と最小値の間の値である場合には、小さくなる方向又は大きくなる方向のどちらでもよい。
【0025】
例えば、図4に示したように光源10の反射鏡像及び欠陥候補点が白色で現れる場合には、2値化閾値を大きな値から小さな値に変化させることにより2値化画像における欠陥候補点の出現数は増加し、2値化閾値がある値において、2値化画像における欠陥候補点の出現数が所定の基準数よりも少ない状態から所定の基準数以上となる。参考として、図5(A)に2値化閾値を最大値の255として2値化した2値化画像の一例を示し、図5(B)に2値化閾値を255よりも小さい値で2値化し、欠陥候補点の出現数が所定の基準数よりも多くなった2値化画像の一例を示す。なお、例えば、図4に示したように光源10の反射鏡像及び欠陥候補点が白色で現れる場合において、逆に、2値化閾値を小さな値から大きな値に変化させることにより2値化画像における欠陥候補点の出現数は減少し、2値化閾値がある値において、2値化画像における欠陥候補点の出現数が所定の基準数よりも多い状態から所定の基準数以下となる。
【0026】
また、例えば、光源10の反射鏡像及び欠陥候補点が黒色で現れる図4の反転画像の場合には、2値化閾値を小さな値から大きな値に変化させることにより2値化画像における欠陥候補点の出現数は増加し、2値化閾値がある値において、2値化画像における欠陥候補点の出現数が所定の基準数よりも少ない状態から所定の基準数以上となる。なお、例えば、光源10の反射鏡像及び欠陥候補点が黒色で現れる図4の反転画像の場合において、逆に、2値化閾値を大きな値から小さな値に変化させることにより2値化画像における欠陥候補点の出現数は減少し、2値化閾値がある値において、2値化画像における欠陥候補点の出現数が所定の基準数よりも多い状態から所定の基準数以下となる。
【0027】
2値化閾値は、1ずつ変化させるようにすることが好ましいが、2又は3等の任意の値ずつ変化させてもよい。欠陥候補点の出現数を比較する基準数は、被検査面Mに応じて任意に設定することができる。基準数の一例を挙げれば、例えば、3から10の範囲とすることが好ましい。
【0028】
1次抽出手段44は、また、画像分割手段43により分割した複数の分割画像毎に2値化処理を行い、1次欠陥候補を抽出することが好ましい。光源10の反射鏡像の長さ方向における中央部と端部とで輝度が異なるのに合わせて、2値化処理を行うことができ、より高い精度で欠陥候補を抽出することができるからである。
【0029】
1次欠陥候補記憶手段45は、例えば、メモリ等により構成され、1次抽出手段44により抽出された1次欠陥候補の重心座標を記憶するように構成されている。
【0030】
2次抽出手段46は、例えば、撮影手段20により得られた抽出対象画像である前処理手段42により処理された画像について、1次抽出手段44により抽出された1次欠陥候補のうち、1次欠陥候補の輝度値と、その1次欠陥候補の周辺の平均輝度値との輝度差が所定の輝度差基準値以上であるものを欠陥候補として抽出するように構成されている。具体的には、例えば、抽出対象画像である分割手段43により処理された画像について、1次欠陥候補記憶手段45に記憶された1次欠陥候補の座標の輝度値と、その1次欠陥候補の周辺の座標の平均輝度値との輝度差を算出し、その輝度差が所定の輝度差基準値以上である場合に、欠陥候補として抽出するように構成されている。
【0031】
すなわち、欠陥候補を1次抽出手段44と2次抽出手段46の2段階で抽出することにより、より高い精度で抽出することができるようになっている。また、2次抽出手段46では、1次欠陥候補の輝度値と、その周辺の平均輝度値との輝度差により判断するので、輝度値を用いる場合と異なり、塗色が異なっても同一の輝度差基準値を用いることができ、簡便に欠陥候補を抽出することができる。図6に、2次抽出手段46により抽出した欠陥候補の一例を示す。図6において、○で囲んだ中の白色の点が欠陥候補である。
【0032】
2次抽出手段46は、また、例えば、抽出対象画像である分割手段43により処理された画像について、光源10の反射鏡像の周囲の領域を光源10の反射鏡像からの距離に応じて複数に分割し、分割した複数の距離領域毎に輝度差基準値を設定するように構成されていることが好ましい。光源10の反射鏡像からの距離により、1次欠陥候補の輝度値と、その1次欠陥候補の周辺の平均輝度値との輝度差が変化するので、距離領域毎に輝度差基準値を設定することにより、より高い精度で欠陥候補を抽出することができるからである。
【0033】
図7に、光源10の反射鏡像の周囲の領域を光源10の反射鏡像からの距離に応じて分割した概念図を示す。図7では、光源10の反射鏡像の周囲の領域について、反射鏡像の領域R1から所定のピクセル毎に複数の領域R2,R3,R4,R5,R6に分割した状態を表している。なお、図7では、各領域R2,R3,R4,R5,R6を分かりやすく示すために、それぞれにハッチングを付して示している。
【0034】
隣接する各領域R2,R3,R4,R5,R6の反射鏡像の領域R1からの距離の差、例えば、各領域R2,R3,R4,R5の幅は、被検査面Mに応じて任意に設定することができる。隣接する各領域R2,R3,R4,R5,R6の反射鏡像の領域R1からの距離の差は、例えば、1ピクセルから10ピクセルの範囲とすることが好ましい。また、図7では、光源10の反射鏡像の周囲の領域を5個の領域に分割する場合について示したが、分割数についても被検査面Mに応じて任意に設定することができる。分割数は、例えば、6から10とすることが好ましい。
【0035】
欠陥候補記憶手段47は、例えば、メモリ等により構成され、2次抽出手段46により抽出された欠陥候補の重心座標を記憶するように構成されている。
【0036】
(欠陥検出手段50)
欠陥検出手段50は、例えば、欠陥候補抽出手段40により抽出された欠陥候補において、撮影時刻の異なる少なくとも2枚以上の画像間での移動距離及び移動角度が、被検査面Mに欠陥が存在した時に移動すると想定される基準移動距離及び基準移動角度の範囲内にある場合に、欠陥であると判定する連続性判断手段51と、基準移動距離及び基準移動角度を記憶する基準値記憶手段52とを有している。欠陥候補の移動距離及び移動角度は、例えば、撮影時刻の順に連続する3枚以上の画像間について見ることが好ましいが、被検査面Mに応じて、画像数は任意に決定することができる。また、被検査面Mに応じて、2枚の画像間で見るようにしてもよい。欠陥候補の移動距離は、例えば、撮影時刻の異なる画像間における欠陥候補を結ぶ直線の長さであり、欠陥候補の移動角度は、例えば、撮影時刻の異なる画像間における欠陥候補を結ぶ直線の角度である。
【0037】
被検査面Mに欠陥が存在した時に移動すると想定される基準移動距離及び基準移動角度は、例えば、予め、被検査面Mにマークを付して移動手段30により一定速度で移動させながら撮影手段20により一定の時間間隔で撮影することにより撮影時刻の異なる複数の基準画像を取得し、これら複数の基準画像を合わせることにより得られたマーク移動軌跡に基づいて設定されることが好ましい。
【0038】
この表面欠陥検査装置1は、例えば、次のようにして用いられる。図8は、表面欠陥検査装置1を用いた表面欠陥検査方法の手順を表すものである。この表面欠陥検査方法では、まず、例えば、光源10から光を照射した被検査面Mを撮影手段20により撮影すると共に、撮影手段20に対する被検査面Mの位置を移動手段30により相対的に移動させて、撮影時間の異なる複数の画像を取得する(ステップS110;撮影手順)。撮影手段20により撮影された画像は、画像記憶手段41に保存する。
【0039】
次いで、例えば、撮影手順(ステップS110)により撮影した撮影時刻の異なる複数の画像からそれぞれ欠陥候補を抽出する(ステップS120;欠陥候補抽出手順)。欠陥候補抽出手順(ステップS120)では、例えば、まず、前処理手段42により、上述したようにして撮影手段20で得られた画像について前処理を行う(ステップS121;前処理手順)。続いて、例えば、画像分割手段43により、上述したようにして前処理した画像から光源10の1つの反射鏡像及びその周辺領域を含む領域を切り取り、反射鏡像の長さ方向において複数に分割する(ステップS122;画像分割手順)。
【0040】
次に、例えば、1次抽出手段44により、画像分割手順(ステップS122)により分割した複数の分割画像毎に、上述したようにして2値化処理を行い、1次欠陥候補を抽出する(ステップS123;1次抽出手順)。具体的には、例えば、撮影手順(ステップS110)により得られた画像に基づく抽出対象画像である前処理した画像について、画像分割手順により分割した分割画像毎に、それぞれ、2値化閾値を2値化基準値から一方向に順に変化させながら2値化処理を順に行い、処理の順に得られた複数の2値化画像を比較して、欠陥候補点の出現数が所定の基準数よりも少ない状態から所定の基準数以上となった時の2値化画像、又は、欠陥候補点の出現数が所定の基準数よりも多い状態から所定の基準数以下となった時の2値化画像を閾値画像とし、この閾値画像から、1次欠陥候補を抽出する。すなわち、例えば、1つの抽出対象画像について、2値化閾値を2値化基準値から一方向に順に変化させて2値化処理を繰り返し行い、得られた2値化画像を比較して、欠陥候補点の出現数の変化から閾値画像を見つけ、1次欠陥候補を抽出する。1次抽出手順(ステップS123)により抽出した1次欠陥候補は1次欠陥候補記憶手段45に保存する。
【0041】
その後、例えば、2次抽出手段46により、撮影手順(ステップS110)により得られた画像に基づく抽出対象画像である分割した画像について、上述したようにして1次抽出手順(ステップS123)により抽出された1次欠陥候補から欠陥候補を抽出する(ステップS124;2次抽出手順)。具体的には、例えば、抽出対象画像である分割した画像について、1次欠陥候補の輝度値と、その1次欠陥候補の周辺の平均輝度値との輝度差を算出し、その輝度差が所定の輝度差基準値以上である場合に欠陥候補として抽出する。2次抽出手順(ステップS124)により抽出した欠陥候補は欠陥候補記憶手段47に保存する。
【0042】
欠陥候補抽出手順(ステップS120)により欠陥候補を抽出した後、例えば、欠陥検出手段50において、連続性判断手段51により、上述したようにして抽出した欠陥候補に基づき欠陥を検出する(ステップS130;欠陥検出手順)。具体的には、例えば、抽出した欠陥候補において、撮影時刻の異なる少なくとも2枚以上の画像間での移動距離及び移動角度が、被検査面Mに欠陥が存在した時に移動すると想定される基準移動距離及び基準移動角度の範囲内にある場合に、欠陥であると判断する。
【0043】
そののち、表示手段60により、欠陥検出手順(ステップS130)で得られた検出結果を表示する(ステップS140;表示手順)。表示手段60では、例えば、ディスプレイ等に、欠陥の重心に円マーク等を付して表示する。これにより、表面欠陥の検査を行うことができる。
【0044】
このように本実施の形態によれば、2値化閾値を2値化基準値から一方向に順に変化させながら2値化処理を順に行い、欠陥候補点の出現数が所定の基準数よりも少ない状態から所定の基準数以上となった時の2値化画像を閾値画像とし、又は、欠陥候補点の出現数が所定の基準数よりも多い状態から所定の基準数以下となった時の2値化画像を閾値画像として、1次欠陥候補を抽出するようにしたので、画像処理を自動で行い、検査部位や塗色が異なっても全体平均輝度の差異が少ない画像を得ることができる。よって、検査部位や塗色に応じたパラメータの設定を手動で変更する必要がなく、自動で設定することができ、簡便に欠陥候補を抽出することができる。
【0045】
特に、撮影手段20により得られた画像に基づく抽出対象画像ついて、1次抽出手段44により抽出された1次欠陥候補のうち、1次欠陥候補の輝度値と、その1次欠陥候補の周辺の平均輝度値との輝度差が所定の輝度差基準値以上であるものを欠陥候補として抽出するようにしたので、塗色が異なっても同一の輝度差基準値を用いることができ、簡便に欠陥候補を抽出することができる。
【0046】
また、撮影手段20により得られた画像に基づく抽出対象画像について、光源10の反射鏡像の周囲の領域を光源10の反射鏡像からの距離に応じて複数に分割し、分割した複数の距離領域毎に輝度差基準値を設定するようにしたので、光源10の反射鏡像からの距離により変化する輝度差に応じて輝度差基準値を設定することができ、より高い精度で欠陥候補を抽出することができる。
【0047】
更に、光源10に直管型の照明器具を用い、撮影手段20により得られた画像に基づく抽出対象画像ついて、光源10の反射鏡像を含む領域を長さ方向において複数に分割し、分割した複数の分割画像毎に2値化処理を行い、1次欠陥候補を抽出するようにしたので、光源10の反射鏡像の長さ方向における中央部と端部とで輝度が異なるのに合わせて、2値化処理を行うことができ、より高い精度で欠陥候補を抽出することができる。
【0048】
以上、実施の形態を挙げて本願発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態では、各構成要素について具体的に説明したが、全ての構成要素を備えていなくてもよく、また、他の構成要素を備えていてもよい。
【0049】
また、上記実施の形態では、自動車のボディの塗装面を検査する場合について具体的に説明したが、本願発明は、自動車のボディに限らず、他の塗装製品の表面検査をする場合についても適用することができる。更に、塗装面に限らず、反射性質を有する表面の検査をする場合にも適用することもできる。
【0050】
更に、上記実施の形態では、欠陥検出手段50及び欠陥検出手順(ステップS130)について具体的に説明したが、他の構成及び手順により欠陥を検出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…表面欠陥検査装置、10…光源、20…撮影手段、21…カメラ、30…移動手段、40…欠陥候補抽出手段、41…画像記憶手段、42…前処理手段、43…画像分割手段、44…1次抽出手段、45…1次欠陥候補記憶手段、46…2次抽出手段、47…欠陥候補記憶手段、50…欠陥検出手段、51…連続性判断手段、52…基準値記憶手段、60…表示手段、M…被検査面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8