(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050318
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】異物検出装置、および異物検出方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/85 20060101AFI20230404BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20230404BHJP
G01N 21/95 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
G01N21/85 Z
G06T7/00 350C
G01N21/95 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021160365
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】312017444
【氏名又は名称】ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100158698
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 基樹
(72)【発明者】
【氏名】池内 啓
(72)【発明者】
【氏名】坂口 昌洋
(72)【発明者】
【氏名】服部 幹也
(72)【発明者】
【氏名】蔦 瑞樹
【テーマコード(参考)】
2G051
5L096
【Fターム(参考)】
2G051AA33
2G051AB01
2G051AB06
2G051AC12
2G051BA06
2G051BB03
2G051BB07
2G051CA04
2G051CA06
2G051CB02
2G051DA06
2G051DA13
2G051EB01
2G051EB05
5L096BA03
5L096HA08
5L096HA11
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】固形食品に混入している異物を検出することが可能な異物検出装置、および異物検出方法を提供する。
【解決手段】固形食品に対して近赤外光を局所的に照射する近赤外光照射部と、この近赤外光を透過させた固形食品の画像を撮像する撮像部と、撮像された画像から固形食品よりも近赤外光透過率が低い異物を検出する検出部と、を備える異物検出装置等により、前記課題を解決する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形食品に混入している、前記固形食品よりも近赤外光透過率が低い異物を検出する異物検出装置であって、
前記固形食品に対して近赤外光を局所的に照射する近赤外光照射部と、
前記近赤外光を透過させた前記固形食品の画像を撮像する撮像部と、
撮像された前記画像から前記異物を検出する検出部と、を備える、
異物検出装置。
【請求項2】
前記近赤外光照射部は、前記近赤外光を放射する光源と、前記光源から放射されて前記固形食品を透過する前記近赤外光の光量および/または光方向を調整する近赤外光調整部と、を備える、請求項1に記載の異物検出装置。
【請求項3】
前記近赤外光調整部が、前記光源と前記固形食品との間に配置され、前記光源から放射された前記近赤外光の光方向の一部を絞るスリットを含む、請求項2に記載の異物検出装置。
【請求項4】
前記スリットは、短手方向の幅が10mm以下であり、且つ長手方向の長さが前記長手方向における前記固形食品の寸法以上である、請求項3に記載の異物検出装置。
【請求項5】
前記固形食品が破砕する圧縮荷重である破砕圧縮荷重より小さい圧縮荷重を前記固形食品に負荷して、前記近赤外光を透過させる方向の前記固形食品の厚さを圧縮して固定する圧縮固定手段を備え、
前記撮像部は、圧縮された前記固形食品に前記近赤外光を透過させた前記画像を撮像する、請求項1~4のいずれか1項に記載の異物検出装置。
【請求項6】
前記圧縮固定手段は、前記固形食品の前記厚さを30%以上90%以下まで圧縮して固定する、請求項5に記載の異物検出装置。
【請求項7】
前記近赤外光が波長800nm以上1200nm以下の近赤外光である、請求項1~6のいずれか1項に記載の異物検出装置。
【請求項8】
前記検出部は、前記撮像部により撮像された前記画像から、前記異物が含まれる前記固形食品の不良品画像および前記異物が含まれない前記固形食品の良品画像をデータとして与えて学習させた機械学習モデル、あるいは前記良品画像をデータとして与えて学習させた機械学習モデルによって前記異物を検出する、請求項1~7のいずれか1項に記載の異物検出装置。
【請求項9】
前記固形食品が畜肉、魚介類の肉、果肉、または芋類のいずれかであり、且つ、前記異物が骨、殻、種子、および軟質異物からなる群から選ばれる1以上である、請求項1~8のいずれか1項に記載の異物検出装置。
【請求項10】
固形食品に混入している、前記固形食品よりも近赤外光透過率が低い異物を検出する方法であって、
前記固形食品に対して近赤外光を局所的に照射する近赤外光照射工程と、
前記近赤外光を透過させた前記固形食品の画像を撮像する撮像工程と、
撮像された前記画像から前記異物を検出する異物検出工程と、を備える、
異物検出方法。
【請求項11】
固形食品に対して近赤外光を局所的に照射する近赤外光照射工程と、
前記近赤外光を透過させた前記固形食品の画像を撮像する撮像工程と、
撮像された前記画像から前記固形食品よりも近赤外光透過率が低い異物を検出する異物検出工程と、
検出された前記異物を前記固形食品から除去するか、あるいは前記異物を含む前記固形食品を除去する異物除去工程と、を備える、
固形食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異物検出装置、および異物検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品の製造において、異物混入は重大な問題となり得る。そのため、異物が混入した食品の出荷を避けるために、通常、食品製造では異物検出機などによる検査が行われている。特に、X線検査機や金属探知機は、食品を破壊することなく異物の検出を行うことができることから、食品製造においてよく利用されている。
【0003】
例えば特許文献1には、両側面に被検食品の入口又は出口となる開口部を有し、該開口部を覆うための傾斜面と2つの側板を有する一対のサイドカバーが設けられている筐体と、被検食品を入口開口部から出口開口部に搬送する無端状のベルトコンベアと、筐体内においてベルトコンベア上の被検食品にX線を照射するX線源と、被検食品を透過したX線を検出して被検食品に混入している異物を検出するX線検出手段と、を備え、無端状のベルトコンベアが、縦断面等脚台形形状の上り斜面、上底水平面、下り斜面及び下底水平面を備えた無端状のベルトコンベアであって、この上り斜面と下り斜面の搬送方向の長さと傾きが、サイドカバーの2つの傾斜面の長さと傾きにほぼ等しくなるように構成されているX線検査装置が開示されている。
【0004】
また、照明光の照射により異物を検出する異物検出装置なども利用される場合がある。例えば特許文献2には、食品を異物検出領域に搬送する搬送手段と、検出領域の一側から食品の表画像を撮像する撮像手段と、搬送手段を挟んで検査領域の一方もしくは両側から食品に対して照明光を照射する照明手段と、撮像した表画像に対して2値化処理を含む画像処理を行う画像処理手段と、を備える食品の異物検出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-075830号公報
【特許文献2】特表2008-541007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、畜肉、魚介類の肉、果肉、芋類などの固形食品に混入し得る骨、殻、種子、茎や根、繊維製軟質材料などの異物は、この固形食品自体との密度の差が小さい場合が多く、また金属性物質も通常は含まれないため、X線検査機や金属探知機では検出されにくいという課題がある。特に、固形食品の内部に埋まっている上記のような異物の検出は極めて困難である。また、特許文献1に記載されているように、X線検査機は外部にX線ができるだけ漏洩しないようにする必要があるため、安全性やコスト面などでも課題がある。
【0007】
さらに、特許文献2に記載の異物検出装置は、実質的に上下2方向から食品に対して照明光を照射して食品表面に付着した毛髪や虫などの異物を検出するものであり、これも固形食品の内部に埋まっている上記のような異物の検出は難しいという課題がある。
【0008】
そこで本発明は、固形食品に混入している異物を検出することが可能な異物検出装置、および異物検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明者は鋭意検討し、上記のような異物が、これを含んでいる固形食品よりも近赤外光透過率が低いことを見出した。さらに、このような異物を容易に検出するためには、固形食品に近赤外光を局所的に照射して透過させ、この近赤外光を局所的に透過させた固形食品の画像を撮像し、撮像された画像を異物検出に用いるのが効果的であることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は次の(1)~(11)である。
(1)固形食品に混入している、前記固形食品よりも近赤外光透過率が低い異物を検出する異物検出装置であって、前記固形食品に対して近赤外光を局所的に照射する近赤外光照射部と、前記近赤外光を透過させた前記固形食品の画像を撮像する撮像部と、撮像された前記画像から前記異物を検出する検出部と、を備える、異物検出装置。
(2)前記近赤外光照射部は、前記近赤外光を放射する光源と、前記光源から放射されて前記固形食品を透過する前記近赤外光の光量および/または光方向を調整する近赤外光調整部と、を備える、(1)に記載の異物検出装置。
(3)前記近赤外光調整部が、前記光源と前記固形食品との間に配置され、前記光源から放射された前記近赤外光の光方向の一部を絞るスリットを含む、(2)に記載の異物検出装置。
(4)前記スリットは、短手方向の幅が10mm以下であり、且つ長手方向の長さが前記長手方向における前記固形食品の寸法以上である、(3)に記載の異物検出装置。
(5)前記固形食品が破砕する圧縮荷重である破砕圧縮荷重より小さい圧縮荷重を前記固形食品に負荷して、前記近赤外光を透過させる方向の前記固形食品の厚さを圧縮して固定する圧縮固定手段を備え、前記撮像部は、圧縮された前記固形食品に前記近赤外光を透過させた前記画像を撮像する、(1)~(4)のいずれか1つに記載の異物検出装置。
(6)前記圧縮固定手段は、前記固形食品の前記厚さを30%以上90%以下まで圧縮して固定する、(5)に記載の異物検出装置。
(7)前記近赤外光が波長800nm以上1200nm以下の近赤外光である、(1)~(6)のいずれか1つに記載の異物検出装置。
(8)前記検出部は、前記撮像部により撮像された前記画像から、前記異物が含まれる前記固形食品の不良品画像および前記異物が含まれない前記固形食品の良品画像をデータとして与えて学習させた機械学習モデル、あるいは前記良品画像をデータとして与えて学習させた機械学習モデルによって前記異物を検出する、(1)~(7)のいずれか1つに記載の異物検出装置。
(9)前記固形食品が畜肉、魚介類の肉、果肉、または芋類のいずれかであり、且つ、前記異物が骨、殻、種子、および軟質異物からなる群から選ばれる1以上である、(1)~(8)のいずれか1つに記載の異物検出装置。
(10)固形食品に混入している、前記固形食品よりも近赤外光透過率が低い異物を検出する方法であって、前記固形食品に対して近赤外光を局所的に照射する近赤外光照射工程と、前記近赤外光を透過させた前記固形食品の画像を撮像する撮像工程と、撮像された前記画像から前記異物を検出する異物検出工程と、を備える、異物検出方法。
(11)固形食品に対して近赤外光を局所的に照射する近赤外光照射工程と、前記近赤外光を透過させた前記固形食品の画像を撮像する撮像工程と、撮像された前記画像から前記固形食品よりも近赤外光透過率が低い異物を検出する異物検出工程と、検出された前記異物を前記固形食品から除去するか、あるいは前記異物を含む前記固形食品を除去する異物除去工程と、を備える、
固形食品の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、固形食品に混入している、この固形食品よりも近赤外光透過率が低い異物を容易に検出することが可能な異物検出装置、および異物検出方法を提供することができる。そして、この装置または方法によって、固形食品に混入している上記異物を容易に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態に係る異物検出装置の概略図である。
【
図2】本実施形態に係る異物検出装置のスリットを含む近赤外光調整部の正面図である。
【
図3】実施例1において撮像した平貝肉(貝柱)の画像である(図面代用写真)。
【
図4】実施例2において撮像した鶏肉の画像である(図面代用写真)。
【
図5】実施例3において撮像したプルーン果肉の画像である(図面代用写真)。
【
図6】実施例4において撮像したホタテ貝肉(貝柱)の画像である(図面代用写真)。
【
図7】実施例5において撮像したジャガイモの画像である(図面代用写真)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明について説明する。
本発明は、固形食品に対して近赤外光を局所的に照射する近赤外光照射部と、この近赤外光を透過させた固形食品の画像を撮像する撮像部と、撮像された画像から固形食品よりも近赤外光透過率が低い異物を検出する検出部と、を備える異物検出装置(以下においては、これを「本発明に係る異物検出装置」ともいう)である。また、本発明は、本発明に係る異物検出装置等を用いた、固形食品に対して近赤外光を局所的に照射する近赤外光照射工程と、この近赤外光を透過させた固形食品の画像を撮像する撮像工程と、撮像された画像から異物を検出する異物検出工程と、を備える異物検出方法(以下においては、これを「本発明に係る異物検出方法」ともいう)や、この方法等により検出された異物を固形食品から除去するか、あるいは異物を含む固形食品を除去する異物除去工程をさらに備える固形食品の製造方法(以下においては、これを「本発明に係る固形食品の製造方法」ともいう)も包含する。
【0014】
まず、本発明に係る異物検出装置の実施形態について、
図1および
図2を用いて説明する。なお、これらの図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。また、一部には、便宜上、符号を付していない(省略している)箇所がある。さらに、図面に示された各機器や部材の寸法比率は、発明の理解を容易にするために、実際の寸法比率とは異なる場合がある。
【0015】
<異物検出装置の全体構成>
本発明に係る異物検出装置100は、固形食品11に混入している(特に一部または全部が内部に埋まっている)、この固形食品11よりも近赤外光透過率が低い異物13を検出する装置である。そして、このような異物13の検出をインラインで行うこともできるものである。
【0016】
なお、対象物となる固形食品11は、常温(10℃以上35℃以下)で固形状の食品であって、畜肉(鶏肉、豚肉、牛肉等)、魚介類の肉(魚類の肉、イカやタコなどの頭足類の肉、貝柱、ウニ、エビ、カニなどの殻を有する魚介類の身等)、果肉(プルーンやベリー類などの果実の食用果肉であり、可食部となり得る果皮が含まれていても良い)、芋類(ジャガイモ、サツマイモ、サトイモ等)などが代表的なものとして例示される。また、これらは生鮮品(冷凍された後に解凍されたものも含む)であっても良く、あるいは加熱処理(ボイル、ブランチング、乾燥等)などの加工がされたものであっても良い。特に、本発明に係る異物検出装置100は、後述するような、破砕圧縮荷重より小さい圧縮荷重を負荷することによって少なくとも1方向の厚さを30%以上90%以下まで破砕せずに圧縮することが可能な固形食品11である軟質固形食品を対象物とするのがより好適である。なお、上記で例示したものはいずれも、少なくとも1方向の厚さを30%以上90%以下まで破砕せずに圧縮することが可能な軟質固形食品である。しかしながら、この固形食品11には、常温で液状やペースト状の食品は包含されない。そして、本発明に係る異物検出装置100は、畜肉に含まれる骨、魚類の肉に含まれる骨や鱗、殻を有する魚介類の肉(身など)に含まれる殻、果肉に含まれる種子、または芋類に含まれる軟質異物の検出に極めて有効である。
【0017】
また、対象物である固形食品11よりも近赤外光透過率が低い異物13は、この固形食品11よりも近赤外光23を透過しにくく且つこの固形食品11が製品となったときに混入が望ましくないものあるいは混入を防止すべきものであって、骨(小骨や軟骨も含む)、鱗、殻(貝殻、ウニのトゲなどを含む)、種子(硬質種子等)、軟質異物(茎(実と枝とを繋いでいる軸部)、根、ヘタ、製造作業などに用いられる繊維製軟質材料等)などが例示され、これらの一部(例えば骨片、鱗片、殻片、種子片、茎片など)も包含される。これらは、主に生体由来であって対象物である固形食品11との密度の差が小さい場合が多いことや非金属であることなどからX線検査機や金属探知機では検出されにくく、固形食品11の内部にこれらの一部または全部が埋まっている場合には特に検出がしにくいものであるが、これらは近赤外光透過率が固形食品11よりも低く、その差が大きい場合が多いため、本発明に係る異物検出装置100により、固形食品11に混入しているこれらからなる群から選ばれる1以上を容易に検出することができるのが特徴である。また、これら以外にも、対象物である固形食品11よりも近赤外光透過率が低く且つこの固形食品11が製品となったときに混入が望ましくないものあるいは混入を防止すべきものである限り、異物13として検出が可能である。
【0018】
そして、本発明に係る異物検出装置100は、少なくとも、近赤外光照射部20と、撮像部41と、検出部51と、を備える(例えば
図1)。また、
図1に示すような、制御部61、圧縮固定手段71、搬送手段73などをさらに備える実施形態であっても良い。以下において、これらについて詳細に説明する。
【0019】
<近赤外光照射部>
近赤外光照射部20は、固形食品11に対して近赤外光23を局所的に照射することが可能な機器である。したがって、少なくとも近赤外光23を放射する光源21を含む。
ここで、近赤外光23を「局所的に照射する」には、固形食品11の一部のみに近赤外光23を照射するだけでなく、固形食品11の全体に近赤外光23を弱く照射し、且つ一部にこれよりも強く近赤外光23を照射することも含まれる。また、「近赤外光」とは、赤外光(可視光よりも波長が長い光)のうち可視光に近い側の波長である波長780nm以上2500nm以下の光線である。そして、光源21としては、このような近赤外光を放射可能なものであれば限定されないが、LEDライト(例えばユーテクノロジー社製のUPD2450W-2S等)やハロゲン照明(例えばハヤシレピック社製のLA-100IR等)などを使用することができる。
【0020】
近赤外光23を局所的に照射するための実施形態としては、光源21自体が近赤外光23を局所的に放射する実施形態や、光源21から放射された近赤外光23を遮へい物などによって一部遮へいしたり、鏡や偏光板などによって光方向を一部に集光させたり揃えたりする実施形態が例示される。これにより、固形食品11の内部等での近赤外光23の散乱を抑制することができ、これにより固形食品11の内部に異物13が埋まっていても異物13が鮮明化された画像を撮像し易く、つまり異物13を容易に検出することが可能となる。そして、本発明に係る異物検出装置100では、近赤外光照射部20が、近赤外光23を放射する光源21と、この光源21から放射されて固形食品11を透過する近赤外光23の光量および/または光方向を調整する近赤外光調整部31(例えば前述した遮へい物、鏡、偏光板など)と、を備える実施形態であるのが、装置の設計がし易く且つ低コストで装置を得ることができ、さらに異物13の検出もし易いためより好ましい。
【0021】
特に、この近赤外光調整部31が、上記した近赤外光23の一部を遮へいする遮へい物として、
図2に示すような、光源21と固形食品11との間に配置され、光源21から放射された近赤外光23の光方向の一部を絞るスリット31aを含む実施形態であるとより好適である。つまり、光源21から放射された近赤外光23(放射光23a)が、近赤外光調整部31のスリット31aを通過することによって少なくとも光方向の一部が絞られ、このスリット31aを通過した近赤外光23が固形食品11を透過する(透過光23b)実施形態であるとより好適である。言い換えれば、光源21から放射された近赤外光23の光方向の一部を、スリット31aが形成された部材を含む近赤外光調整部31により絞る実施形態であるのがより好ましい。光源21の機器の種類などに関わらず固形食品11の内部などでの近赤外光23の散乱を抑制し易く、よって光量などをより強く設定しても画像が白化して異物13が判別できなくなるホワイトアウト状態となりにくく、異物13をより検出し易いからである。
【0022】
例えば、近赤外光調整部31が、近赤外光23を遮へいする機能を有する材料により構成された板状構造等の部材であり、その一部に、方形状の切り欠きであるスリット31aが形成された構成などが例示される(
図2)。この近赤外光23を遮へいする機能を有する材料としては、金属、木材、着色樹脂、紙材などが例示される。また、スリット31aの形状も方形状に限定されるものではなく、楕円形状などであっても良い。
【0023】
そして、このスリット31aは、近赤外光23の散乱抑制などの観点から、短手方向の幅D(最大幅)が10mm以下、より好ましくは8mm以下、さらに好ましくは5mm以下であり、且つ長手方向の長さLが長手方向における固形食品11の寸法以上であるのが好ましい。また、スリット31aの短手方向の幅Dは、異物13の検出に必要な光量を得やすいという観点から、最小幅が0.5mm以上であるのがより好ましく、1mm以上であるのがさらに好ましい。
【0024】
また、限定されるものではないが、上記したスリット31aの構成などにより、近赤外光照射部20および固形食品11がいずれも静止した状態において、固形食品11における近赤外光23が局所的に照射される領域の表面積が、固形食品11の表面積全体のうち好ましくは20%以下、より好ましくは17%以下、さらに好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下となる構成であっても良い。
【0025】
そして、近赤外光調整部31が上記したスリット31aを含む場合には、固形食品11に混入した異物13をより確実に検出できるようにするために、スリット31aが固形食品11に対して一定方向に一定速度で移動するように固形食品11またはスリット31aを動かして、この間に固形食品11を連続的に撮像する構成であるのが好ましい。そして、この連続的に撮像した画像を合成して異物13の検出のための画像として用いるのが好適である。
【0026】
なお、光源21自体が前述したような近赤外光23を局所的に放射することが可能な構成(近赤外レーザー光を放射可能な光源21など)である場合には、近赤外光照射部20が上記した近赤外光調整部31を含まない実施形態であっても構わない。
【0027】
また、前述したような種類の異物13をより検出し易いことから、この近赤外光照射部20から固形食品11に対して局所的に照射する近赤外光23、つまり固形食品11を透過させる近赤外光23は、波長800nm以上1200nm以下の近赤外光23であると好適である。そして、この波長の下限は900nm以上であるのがより好ましく、950nm以上であるのがさらに好ましい。この波長の上限も1100nm以下であるのがより好ましく、1050nm以下であるのがさらに好ましい。
【0028】
<撮像部>
撮像部41は、近赤外光23を透過させた固形食品11の画像(透過光23bを含む固形食品11の画像)を撮像することが可能な機器であり、例えば、画像撮像用カメラなどが例示される。そして、この撮像部41は、上記した画像を撮像することが可能な構成であれば良く、例えば画像撮像用カメラとともに鏡を含む構成である場合などでは、その配置等は特段限定されないが、装置の設計のし易さなどの観点から、撮像部41が固形食品11に対して近赤外光照射部20と対向する位置(反対側)に配置されているのが好ましい。
【0029】
なお、画像撮像用カメラとしては、限定されるものではないが、InGaAs(インジウム・ガリウム・ヒ素)センサを搭載したInGaAsカメラなどの近赤外波長領域に高い感度を有するカメラや、他のカメラよりも安価で且つ可視光領域も撮像可能なブラックシリコンカメラ、複数の波長をスキャン可能なハイパースペクトルカメラなどを使用するのが好ましい。また、1つの画像を撮像する際のカメラの露光時間(シャッター速度)は、固形食品11を透過する近赤外光23の光量などにより設定すれば良く、これも限定されるものではないが、1000μs以上150000μs以下程度が例示される。
【0030】
<検出部>
検出部51は、撮像部41により撮像された画像から異物13を検出することが可能な機器であり、コンピューターであるのが好ましい。したがって、例えば、記憶装置51aと演算処理装置51bとを含み、これらがネットワークなどを介して接続されたコンピューターなどが検出部51として例示される。また、必要に応じて、設定などを入力するためのキーボードやマウス、タッチパネル等の入力部や、撮像された画像等を表示するモニタ部などの機器を含んでいても良い。なお、この検出部51は、異物13の検出精度を高めるという観点から、光源21、撮像部41などの本発明に係る異物検出装置100に備わる機器の少なくとも一部を制御する制御部61(例えば制御コンピューターなど)と接続されて、光源21からの近赤外光23の放射や撮像部41での撮像タイミングなどと連動するように制御されている構成であるのが好ましい。
【0031】
この検出部51では、撮像部41において撮像された画像を記憶装置51aなどに読み込み、必要であれば複数の画像を合成して、画像データとする。そして、演算処理装置51bなどにおいて、この画像データから、透過光23bの強度(輝度)などによって異物13の有無を判別し、異物13が混入している場合にはその位置も特定する。そして、この結果をモニタ部や他の機器などに出力する。
【0032】
さらに、この検出部51(例えば演算処理装置51b)は、撮像部41により撮像された画像から、異物13が含まれる固形食品11の不良品画像および異物13が含まれない固形食品11の良品画像をデータ(教師データ)として与えて学習させた機械学習モデルによって異物13の有無を判別する構成、あるいはこれらのうち良品画像だけをデータ(教師データ)として与えて学習させた機械学習モデルによってそのスコア等から外れているものを異物13が含まれる固形食品11(不良品)と判定する構成により異物13を検出するものであると好適である。つまり、少なくとも良品画像をデータとして与えて学習させた機械学習モデルによって異物13を検出するのが好適である。異物検出のスピードアップを図ることができ、且つ異物検出の精度もより高まるからである。
【0033】
この機械学習モデル(Machine Learning(ML)モデル)は、学習済みモデル、AIモデル(Artificial Intelligenceモデル)ともいい、教師データを用いた機械学習、即ち教師あり学習により得られたモデルである。例えば、限定されるものではないが、回帰分析で得られる回帰式であっても良いし、ディープニューラルネットワークを含む畳み込みニューラルネットワークで構成されていても良く、コンピュータプログラムとパラメータとの組合せ、複数の関数とパラメータとの組合せなどにより実現され得る。
このほか、例えば画像中の異物13を判別するための輝度の閾値を予め設定して検出部51の記憶手段に記憶させておき、検出部51はこの閾値との大小判定により異物13の有無を判別するなどの、機械学習モデル以外の方法を用いても構わない。
【0034】
<圧縮固定手段>
さらに、本発明に係る異物検出装置100は、固形食品11が破砕する圧縮荷重である破砕圧縮荷重より小さい圧縮荷重を固形食品11に負荷して、近赤外光23を透過させる方向の固形食品11の厚さ(透過させる方向が複数ある場合にはその少なくとも1方向)を圧縮して固定する圧縮固定手段71を備える構成であるのがより好ましい。そしてこの場合、前述した撮像部41は、圧縮固定手段71により圧縮された固形食品11に近赤外光23を透過させた画像を撮像する。したがって、この構成では、固形食品11の厚みが元に戻らないように器具などを用いて固定を行うことが重要である。また、固形食品11が破砕しない程度に圧縮して、その状態を維持することも重要である。このような構成によって、固形食品11の内部にある異物13と固形食品11の近赤外光23を透過させる方向の表面との距離減少やこの固形食品11の表面の凹凸量減少などの影響により、透過させる近赤外光23の散乱(特に異物13の周縁部での異物13に直接当たっていない近赤外光23の散乱)をさらに抑制することができ、一方で固形食品11の異物13が含まれない領域の近赤外光透過率はより高まり、これによって異物13がより鮮明化された画像を取得でき、異物13をより検出し易くすることができる。
【0035】
なお、この圧縮固定手段71は、固形食品11の近赤外光23を透過させる方向の厚さを、破砕圧縮荷重より小さい圧縮荷重により30%以上90%以下まで圧縮して固定する構成であるのが、固形食品11の形状等の維持と異物13の検出のし易さとの両立という観点から好適である。したがって、このような圧縮固定手段71を含む構成の場合には、近赤外光23を透過させる方向の厚さを30%以上90%以下まで破砕せずに圧縮して固定することが可能な、前述の軟質固形食品を対象物とするのが好ましい。この圧縮の下限は33%以上であるのがより好ましく、40%以上であるのがさらに好ましく、50%以上であるのがさらに好ましい。また上限は85%以下であるのがより好ましく、80%以下であるのがさらに好ましく、75%以下であるのがさらに好ましい。例えばプルーン果肉であれば、16~25mm程度の厚さであるものを、上記範囲内となるように10~15mm程度の厚さとなるまで圧縮させるのが好適である。ここで、この圧縮の%は、圧縮を行う前の近赤外光23を透過させる方向の固形食品11の厚さを100%としたときに、これに対する圧縮後の当該厚さを割合(%)で示したものである。
【0036】
この圧縮固定手段71の具体的な構成としては、限定されるものではないが、近赤外光23を透過可能な板状部材(アクリル樹脂またはガラスにより構成された板材など)により、固形食品11を、近赤外光23を透過させる方向において両側から挟んで固定する実施形態などが例示される。
【0037】
<搬送手段>
また、本発明に係る異物検出装置100は、対象物となる固形食品11(例えば上記した圧縮固定手段71により圧縮されて固定された軟質固形食品など)を、近赤外光23を透過させる工程に搬送し、さらにこの工程から次工程に搬送することが可能な搬送手段73を備える構成であるのがより好ましい。この搬送手段73は、例えば
図1に示すような駆動機構を有するベルトコンベアなどであって良いが、搬送されている固形食品11に対する近赤外光23の照射およびその撮像を妨げない構成(近赤外光透過性のコンベア、近赤外光照射領域に空隙を備えるコンベアなど)である必要がある。さらに、この搬送手段73も、前述した制御部61と接続されて、搬送速度等が制御されている構成であるのが好ましい。
【0038】
そして、本発明に係る異物検出装置100がこのような搬送手段73を備える場合には、例えば
図1のように、近赤外光照射部20(光源21およびスリット31aを含む近赤外光調整部31)と撮像部41とが固定されて配置され、搬送手段73により固形食品11を一定の搬送速度で移動させながら、撮像部41が所定の時間間隔ごとに画像を撮像可能な構成であるのが好ましい。なお、この場合の移動方向(搬送方向)は、例えば
図1の黒矢印方向のようにスリット31aの幅方向と一致している。このような構成であると、近赤外光23を透過させた固形食品11の画像を連続的に撮像することができ、得られた画像を検出部51によって処理することにより、固形食品11において異物13がどのような位置に含まれていても検出がし易くなる。
【0039】
さらに、このような構成において、近赤外光照射部20が近赤外光調整部31としてスリット31aを含む場合、撮像時間間隔における搬送手段73による固形食品11の搬送距離、つまり撮像画像ごとのスリット31aの移動長さが、スリット31aの幅Dよりも小さいことが好ましい。固形食品11のすべての部位が、スリット31aを通過するときに最低1枚は撮像されるようにすることができるからである。なお、搬送手段73が固形食品11を移動させるにあたっては、固形食品11を不停止で連続的に移動させてもよく、または移動と停止を繰り返して間欠的に移動させてもよい。間欠的に移動させる場合、固形食品11の停止時間中に撮像部41が画像を撮像するように制御部61は搬送手段73および撮像部41の動作を制御するのが好ましい。これにより撮像部41はぶれの少ない画像を撮像することができる。また、搬送手段73が固形食品11を間欠的に移動させる場合、1回の移動長さ(搬送距離)は、上記のようにスリット31aの幅Dよりも小さいことが好ましい。
【0040】
なお、上記実施形態では搬送手段73が固形食品11を搬送しながら撮像部41が画像を撮像する態様を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、近赤外光23の照射方向を可変とする駆動機構(図示せず)を光源21に設け、静止する固形食品11に対して近赤外光23を照射する位置を順次変えながら撮像部41が画像を撮像する実施形態や、固定されて配置された光源21と静止する固形食品11との間で近赤外光調整部31(例えばスリット31aを含む部材など)が位置を順次変えながら撮像部41が画像を撮像する実施形態であっても良い。
【0041】
さらに、本発明に係る異物検出装置100には、本発明の効果に影響を与えない範囲において、上記以外の機器や部材などを任意に含むことができる。例えば、撮像された画像に基づいて異物13を含む固形食品11を排斥する排斥機構(エアー、排斥コンベア等)や、画像撮像の精度を高めることが可能な光源21とは別の補助照明などが備わっていても良い。
【0042】
<異物検出方法等>
次に、本発明に係る異物検出方法等の実施形態について説明する。
【0043】
本発明に係る異物検出方法は、本発明に係る異物検出装置100等を用いて実施することができ、固形食品11に対して近赤外光23を局所的に照射する近赤外光照射工程と、この近赤外光23を透過させた固形食品11の画像を撮像する撮像工程と、撮像された画像から異物13を検出する異物検出工程と、を備える。各工程の詳細は、前述した本発明に係る異物検出装置100の構成と同様であって良い。
【0044】
さらに、本発明に係る異物検出方法は、破砕圧縮荷重より小さい圧縮荷重を固形食品11に負荷して、近赤外光23を透過させる方向の固形食品11の厚さを圧縮して固定する圧縮固定手段を用いた圧縮固定工程を含んでいても良い。また、この固形食品11を搬送手段によって搬送する搬送工程を含んでいても良い。これらも、前述した本発明に係る異物検出装置100の構成と同様であって良く、例えば、圧縮固定手段71により圧縮されて固定された固形食品11を搬送手段73により一定の搬送速度で移動させながら(圧縮固定工程、搬送工程)、近赤外光照射部20によりこの圧縮された固形食品11に対して近赤外光23を局所的に照射し(近赤外光照射工程)、撮像部41により所定の時間間隔ごとに近赤外光23を透過させた固形食品11の画像を撮像し(撮像工程)、撮像された画像を合成したものを用いて検出部51により異物13を検出する(異物検出工程)方法などであって良い。
【0045】
このような、本発明に係る異物検出装置100、あるいは本発明に係る異物検出方法により、骨、殻、種子、茎や根などのX線検査機や金属探知機では検出されにくかった異物13、特に固形食品11の内部に埋まっている(外見からでは視認し難いまたは視認できない)異物13を効率的に検出することが可能となる。さらに、この本発明に係る異物検出方法の各工程と、検出された異物13を固形食品11から除去するかあるいは異物13を含む固形食品11を製造工程から除去する異物除去工程と、を組み合わせることによって、上記したような異物13を含まない固形食品11を製造することが可能な本発明に係る固形食品の製造方法を提供することもできる。例えば、前述した近赤外光照射工程、撮像工程、および異物検出工程と、その後の上記した異物除去工程と、を備える、固形食品11の製造方法を提供することができる。そして、この製造方法は、前述した圧縮固定工程や搬送工程をさらに含むものであっても良い。
【0046】
上記の異物除去工程としては、ロボット等による固形食品11に含まれる異物13の吸引工程や、不良品排斥装置(振分機構等)などによって異物13が混入している固形食品11を製造工程から機械的に排斥する(振り分ける)排斥工程などが例示される。さらに、この異物除去工程には、製造工程から排斥された固形食品11中から手作業などにより異物13を除去し、異物13が除去された固形食品11を製造工程に戻す工程を包含していても良い。
【0047】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において様々な変形が可能である。
【実施例0048】
(実施例1)
貝殻片が異物として混入している平貝の貝柱(茹で、厚み10mmまたは15mm)について、LEDライト(ユーテクノロジー社製、UPD2450W-2S)を用いて波長1050nmの近赤外光を照射し、この近赤外光を透過させた貝柱をInGaAsカメラ(キセニクス社製、XEVA-165 SS-1700、解像度300×256画素)により以下の条件で撮像を行った。
【0049】
<a>貝柱はそのままの状態(厚み10mm)とし、この厚み方向で透過するように近赤外光を全体に照射(圧縮無し、スリット無し)。カメラ露光時間6000μsで撮像。
<b>貝柱はそのままの状態(厚み10mmまたは15mm)とし、この厚み方向で透過するように、金属板に形成された短手方向の幅が5mmまたは1mmのスリットを通過させた近赤外光を局所的に照射(圧縮無し×5mmスリット、圧縮無し×1mmスリット)。カメラ露光時間20000μsまたは80000μsで撮像。
<c>貝柱(厚み10mm)をアクリル板で挟んで厚み6mmとなるように圧縮して(破砕しない圧縮をして)固定し、この圧縮方向で透過するように、金属板に形成された短手方向の幅が5mmのスリットを通過させた近赤外光を局所的に照射(6mm圧縮×5mmスリット)。カメラ露光時間10000μsで撮像。
<d>貝柱(厚み15mm)をアクリル板で挟んで厚み12mmとなるように圧縮して(破砕しない圧縮をして)固定し、この圧縮方向で透過するように、金属板に形成された短手方向の幅が1mmのスリットを通過させた近赤外光を局所的に照射(12mm圧縮×1mmスリット)。カメラ露光時間80000μsで撮像。
【0050】
得られた各画像について
図3に示した。
図3の左端が<a>の画像、中央上下の2画像が<b>の画像、右端上段が<c>の画像であり、右端下段が<d>の画像である。なお、スリットを用いた条件の画像はいずれも、
図3の画像において左側から右側に向かってスリットが移動するようにスリットが形成された金属板を動かしながら連続的に撮像を行い、これらを合成した画像である(以下の実施例におけるスリットを用いた条件の画像も、特に断りがないものについては同様の方法で撮像された画像である)。
【0051】
この結果から、スリット無しで近赤外光を全体に照射して透過させた<a>では貝殻片が検出しにくかったが、スリット有りで近赤外光を局所的に照射して透過させた<b>では貝殻片が検出し易くなっていた。さらに、貝柱の厚みを60%または80%となるまで圧縮して固定してからスリット有りで近赤外光を局所的に照射して透過させた<c>および<d>では貝殻片がより鮮明となり、さらに検出がし易くなっていた。
【0052】
(実施例2)
骨(軟骨または硬骨)が異物として混入している鶏肉(生ササミ、厚み24mmまたは20mm)について、LEDライト(ユーテクノロジー社製、UPD2450W-2S)を用いて波長1050nmの近赤外光を照射し、この近赤外光を透過させた鶏肉をInGaAsカメラ(キセニクス社製、XEVA-165 SS-1700、解像度300×256画素)により以下の条件で撮像を行った。
【0053】
<e>鶏肉はそのままの状態(厚み24mmまたは20mm)とし、この厚み方向で透過するように近赤外光を全体に照射(圧縮無し、スリット無し)。
<f>鶏肉(厚み20mm)をアクリル板で挟んで厚み15mmまたは12mmとなるように圧縮して(破砕しない圧縮をして)固定し、この圧縮方向で透過するように近赤外光を全体に照射(15mm圧縮または12mm圧縮、スリット無し)。
<g>鶏肉(厚み24mm)をアクリル板で挟んで厚み8mmとなるように圧縮して(破砕しない圧縮をして)固定し、この圧縮方向で透過するように、金属板に形成された短手方向の幅が1mmのスリットを通過させた近赤外光を局所的に照射(8mm圧縮×1mmスリット)。
<h>鶏肉(厚み20mm)をアクリル板で挟んで厚み15mmまたは12mmとなるように圧縮して(破砕しない圧縮をして)固定し、この圧縮方向で透過するように、金属板に形成された短手方向の幅が1mmのスリットを通過させた近赤外光を局所的に照射(15mm圧縮または12mm圧縮×1mmスリット)。
【0054】
得られた各画像について
図4に示した。
図4の左側上下が<e>の画像、中央下段の2画像が<f>の画像、右側上段が<g>の画像、右側下段の2画像が<h>の画像である。この結果から、スリット無しおよび圧縮無しで近赤外光を全体に照射して透過させた<e>や、圧縮有りであるがスリット無しで近赤外光を全体に照射して透過させた<f>では骨が検出しにくかったが、厚みが33.3%となるまで圧縮して固定してからスリット有りで近赤外光を局所的に照射して透過させた<g>や、厚みが75%または60%となるまで圧縮して固定してからスリット有りで近赤外光を局所的に照射して透過させた<h>では明らかに骨(<g>は軟骨、<h>は硬骨、いずれも画像中の丸印内)が検出し易くなっていた。
なお、画像は示していないが、圧縮無しで1mmのスリットを通過させた近赤外光を局所的に照射して透過させた場合でも、<e>や<f>より骨が検出し易くなっていた。
【0055】
(実施例3)
種子破片が異物として混入しているプルーン果肉(乾燥処理品、厚み18mm、17mm、または20mm)について、LEDライト(ユーテクノロジー社製、UPD2450W-2S)を用いて波長1050nmの近赤外光を照射し、この近赤外光を透過させた果肉をInGaAsカメラ(キセニクス社製、XEVA-165 SS-1700、解像度300×256画素)により以下の条件で果肉、光源、スリット、およびカメラをいずれも固定してカメラ露光時間5000μsで撮像を行った。なお、以下の条件における圧縮はいずれも破砕しない圧縮である。
【0056】
<i>厚み18mmの果肉をそのままの状態(圧縮なし)、厚み14mmとなるように圧縮して固定(14mm調整)、厚み12mmとなるように圧縮して固定(12mm調整)、および厚み12mmとなるように圧縮して固定し且つ紙製の板材に形成された10mm幅のスリットを設置(12mm調整+スリット)の4条件で、厚み方向(圧縮方向)で透過するように近赤外光を照射。
<k>厚み17mmの果肉をそのままの状態(圧縮なし)、厚み14mmとなるように圧縮して固定(14mm調整)、厚み12mmとなるように圧縮して固定(12mm調整)、および厚み12mmとなるように圧縮して固定し且つ紙製の板材に形成された10mm幅のスリットを設置(12mm調整+スリット)の4条件で、厚み方向(圧縮方向)で透過するように近赤外光を照射。
<l>厚み20mmの果肉をそのままの状態(圧縮なし)、厚み14mmとなるように圧縮して固定(14mm調整)、厚み12mmとなるように圧縮して固定(12mm調整)、および厚み12mmとなるように圧縮して固定し且つ紙製の板材に形成された10mm幅のスリットを設置(12mm調整+スリット)の4条件で、厚み方向(圧縮方向)で透過するように近赤外光を照射。
【0057】
得られた各画像について
図5に示した。
図5の上段4画像が<i>の画像、中段4画像が<k>の画像、下段4画像が<l>の画像である。この結果から、いずれの厚みのプルーン果肉についても、厚みを12mm(60.0~70.6%)となるまで圧縮して固定し、スリットを通過させて近赤外光を局所的に照射して透過させることによって、種子破片がより鮮明となり検出し易くなった。
【0058】
(実施例4)
貝殻片およびウニのトゲが異物として混入しているホタテ貝の貝柱(茹で、厚み10mm)について、LEDライト(ユーテクノロジー社製、UPD2450W-2S)を用いて波長1050nmの近赤外光を照射し、この近赤外光を透過させた貝柱をInGaAsカメラ(キセニクス社製、XEVA-165 SS-1700、解像度300×256画素)により以下の条件で撮像を行った。なお、以下の条件における圧縮はいずれも破砕しない圧縮である。
【0059】
<m>貝柱はそのままの状態(厚み10mm)とし、この厚み方向で透過するように近赤外光を全体に照射(圧縮無し、スリット無し)、あるいはこの厚み方向で透過するように金属板に形成された短手方向の幅が1mmのスリットを通過させた近赤外光を局所的に照射(圧縮無し×1mmスリット)。
<n>貝柱(厚み10mm)をアクリル板で挟んで厚み9mmとなるように圧縮して固定し、この圧縮方向で透過するように、金属板に形成された短手方向の幅が5mmまたは1mmのスリットを通過させた近赤外光を局所的に照射(9mmに圧縮×5mmスリット、9mmに圧縮×1mmスリット)。
<p>貝柱(厚み10mm)をアクリル板で挟んで厚み8mmとなるように圧縮して固定し、この圧縮方向で透過するように、金属板に形成された短手方向の幅が5mmのスリットを通過させた近赤外光を局所的に照射(8mmに圧縮×5mmスリット)。
<q>貝柱(厚み10mm)をアクリル板で挟んで厚み7mmとなるように圧縮して固定し、この圧縮方向で透過するように、金属板に形成された短手方向の幅が5mmのスリットを通過させた近赤外光を局所的に照射(7mmに圧縮×5mmスリット)。
<r>貝柱(厚み10mm)をアクリル板で挟んで厚み6mmとなるように圧縮して固定し、この圧縮方向で透過するように、金属板に形成された短手方向の幅が5mmまたは1mmのスリットを通過させた近赤外光を局所的に照射(6mmに圧縮×5mmスリット、6mmに圧縮×1mmスリット)。
【0060】
得られた各画像について
図6に示した。
図6の左側列から順に、<m>の画像、<n>の画像、<p>の画像、<q>の画像、<r>の画像である。この結果、スリット無しおよび圧縮無しで近赤外光を全体に照射して透過させた<m>の上段の画像では、異物(貝殻片およびウニのトゲ)が貝柱から露出している部分以外は検出できなかった。しかし、1mmのスリットを使用して近赤外光を局所的に照射して透過させることにより異物全体が検出可能となり(<m>の下段の画像中の丸印内)、厚みが90%以下となるまで圧縮して固定してからスリット有りで近赤外光を局所的に照射して透過させることにより明らかに異物全体が検出し易くなっていた(<n>、<p>、<q>、<r>の各画像中の丸印内)。
【0061】
(実施例5)
繊維製のヒモが異物として混入しているジャガイモ(90℃×15分間の加熱処理品、厚み19mm)について、LEDライト(ユーテクノロジー社製、UPD2450W-2S)を用いて波長1050nmの近赤外光を照射し、この近赤外光を透過させたジャガイモをInGaAsカメラ(キセニクス社製、XEVA-165 SS-1700、解像度300×256画素)により以下の条件で撮像を行った。なお、以下の条件における圧縮はいずれも破砕しない圧縮である。
【0062】
<s>ジャガイモはそのままの状態(厚み19mm)とし、この厚み方向で透過するように近赤外光を全体に照射(スリット及び圧縮無し)。カメラ露光時間10000μsまたは20000μsで撮像。
<t>ジャガイモはそのままの状態(厚み19mm)とし、この厚み方向で透過するように、金属板に形成された短手方向の幅が5mmのスリットを通過させた近赤外光を局所的に照射(スリット有り、圧縮無し)。カメラ露光時間60000μsで撮像。
<u>ジャガイモ(厚み19mm)をアクリル板で挟んで厚み15mm、厚み13mm、または厚み12mmとなるように圧縮して固定し、この圧縮方向で透過するように、金属板に形成された短手方向の幅が5mmのスリットを通過させた近赤外光を局所的に照射(スリット及び圧縮有り)。カメラ露光時間50000μsで撮像。
<v>ジャガイモ(厚み19mm)をアクリル板で挟んで厚み13mmまたは厚み12mmとなるように圧縮して固定し、この圧縮方向で透過するように、金属板に形成された短手方向の幅が1mmのスリットを通過させた近赤外光を局所的に照射(スリット及び圧縮有り)。カメラ露光時間120000μsで撮像。
【0063】
得られた各画像について
図7に示した。
図7の左側端の2画像が<s>の画像、
図7の中央上側の1画像が<t>の画像、
図7の中央下側の3画像が<u>の画像、
図7の右側端の2画像が<v>の画像である。この結果、スリット無しおよび圧縮無しで近赤外光を全体に照射して透過させた<s>の画像では異物の検出がし難かったが、スリット有り、または厚みが63.2~78.9%となるまで圧縮して固定してからスリット有りで近赤外光を局所的に照射して透過させることにより明らかに異物(各画像中におけるジャガイモの中央部やや左側に混入しているヒモ)が検出し易くなっていた(<t>、<u>、<v>の画像)。
【0064】
(実施例6)
不良品として、5mm×5mmの種子破片(異物)をプルーン果肉(乾燥処理品)の厚み中心部に埋め込んだサンプルを、学習用として10サンプル、テスト用として50サンプル作成した。また、良品として、種子破片を含まないプルーン果肉サンプルを、これも学習用として10サンプル、テスト用として50サンプル準備した。
【0065】
そして、これらについて、LEDライト(ユーテクノロジー社製、UPD2450W-2S)を用いて波長1050nmの近赤外光を照射し、従来法(対照法)ではこの近赤外光を全体に照射して透過させInGaAsカメラ(キセニクス社製、XEVA-165 SS-1700、解像度300×256画素)により撮像を行い、また、改良法(本発明法)ではスリット(幅10mm)を通過させた近赤外光を局所的に照射して透過させInGaAsカメラ(キセニクス社製、XEVA-165 SS-1700、解像度300×256画素)により、実施例3と同様に果肉、光源、スリット、およびカメラをいずれも固定して撮像を行った。これらの条件等を下記表1に示す。
【0066】
【0067】
得られた各画像のうち、不良品の画像25および良品の画像25の計50の画像を用い、5名の検査者が異物の有無について目視で検査を行った。なお、この検査者は、事前に学習用サンプルの画像(不良品の画像および良品の画像)を確認し、その判別の学習を行った検査者である。この結果を下記表2に示す。この結果から、本発明法は、対照法よりも正答率が30%以上向上し、プルーン果肉に混入している種子破片をより検出し易い方法であることが示された。また、このような不良品画像および良品画像を教師データとして与えて学習させた機械学習モデルを用いれば正答率はより向上すると見込まれ、さらに小さい種子破片の検出も可能と認められる。
【0068】