(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050573
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】成膜方法及び成膜装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/285 20060101AFI20230404BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20230404BHJP
H01L 21/3205 20060101ALI20230404BHJP
H01L 21/768 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
H01L21/285 C
H01L21/28 301R
H01L21/88 M
H01L21/90 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021160747
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504203572
【氏名又は名称】国立大学法人茨城大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】布瀬 暁志
(72)【発明者】
【氏名】久保田 雄介
(72)【発明者】
【氏名】山内 智
【テーマコード(参考)】
4M104
5F033
【Fターム(参考)】
4M104AA01
4M104AA03
4M104AA04
4M104AA05
4M104BB04
4M104DD43
4M104DD45
4M104DD46
4M104FF18
5F033GG02
5F033HH07
5F033HH11
5F033HH14
5F033HH15
5F033HH18
5F033HH19
5F033HH32
5F033HH33
5F033PP06
5F033PP08
5F033QQ48
5F033RR03
5F033RR04
5F033RR06
5F033RR08
(57)【要約】
【課題】金属膜の形成される領域の選択性を向上する、技術を提供する。
【解決手段】成膜方法は、下記(A)~(D)を含む。(A)第1膜が露出する第1領域と、前記第1膜とは異なる材料で形成される第2膜が露出する第2領域とを表面に有する基板を準備する。(B)前記基板の前記表面に対して還元性有機物の蒸気を供給する。(C)前記還元性有機物の蒸気を供給した後に、前記基板の前記表面に対してハロゲン化金属の蒸気を供給する。(D)前記ハロゲン化金属に含まれる金属元素で構成される金属膜を、前記第1領域に対して前記第2領域に選択的に形成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1膜が露出する第1領域と、前記第1膜とは異なる材料で形成される第2膜が露出する第2領域とを表面に有する基板を準備することと、
前記基板の前記表面に対して還元性有機物の蒸気を供給することと、
前記還元性有機物の蒸気を供給した後に、前記基板の前記表面に対してハロゲン化金属の蒸気を供給することと、
前記ハロゲン化金属に含まれる金属元素で構成される金属膜を、前記第1領域に対して前記第2領域に選択的に形成することと、
を含む、成膜方法。
【請求項2】
前記第1膜は絶縁膜又は半導体膜であり、前記第2膜は導電膜である、請求項1に記載の成膜方法。
【請求項3】
前記還元性有機物はアルコールを含む、請求項1又は2に記載の成膜方法。
【請求項4】
前記ハロゲン化金属は、ヨウ化銅、ヨウ化銀、及びヨウ化ルテニウムから選ばれる少なくとも1つを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項5】
前記還元性有機物の蒸気の圧力は、0.5×10-4Torrよりも大きく5.0×10-4よりも小さい、請求項1~4のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項6】
第1膜が露出する第1領域と、前記第1膜とは異なる材料で形成される第2膜が露出する第2領域とを表面に有する基板を収容する処理容器と、
前記処理容器の内部で前記基板を保持する保持部と、
前記保持部に保持されている前記基板の前記表面に対して、還元性有機物の蒸気を供給する第1供給部と、
前記保持部に保持されている前記基板の前記表面に対して、ハロゲン化金属の蒸気を供給する第2供給部と、
前記処理容器の内部を減圧する減圧部と、
前記第1供給部と前記第2供給部と前記減圧部を制御することで、前記基板の前記表面に対して前記還元性有機物の蒸気と前記ハロゲン化金属の蒸気をこの順番で供給し、前記ハロゲン化金属に含まれる金属元素で構成される金属膜を前記第1領域に対して前記第2領域に選択的に形成する制御を行う制御部と、
を備える、成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成膜方法及び成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の成膜装置は、基板上に銅を成膜する。成膜装置は、成膜チャンバと、基板加熱手段と、CuI蒸気発生手段と、を備える。成膜チャンバは、基板を減圧雰囲気下で内部に収容する。基板加熱手段は、基板を250℃~350℃に加熱する。CuI蒸気発生手段は、CuI(ヨウ化銅(I))蒸気を成膜チャンバ中で基板に照射する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の一態様は、金属膜の形成される領域の選択性を向上する、技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様の成膜方法は、下記(A)~(D)を含む。(A)第1膜が露出する第1領域と、前記第1膜とは異なる材料で形成される第2膜が露出する第2領域とを表面に有する基板を準備する。(B)前記基板の前記表面に対して還元性有機物の蒸気を供給する。(C)前記還元性有機物の蒸気を供給した後に、前記基板の前記表面に対してハロゲン化金属の蒸気を供給する。(D)前記ハロゲン化金属に含まれる金属元素で構成される金属膜を、前記第1領域に対して前記第2領域に選択的に形成する。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一態様によれば、金属膜の形成される領域の選択性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る成膜方法を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、
図1のステップS2の第2領域で生じる還元反応の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、
図1のステップS2の第1領域で生じる化学吸着の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、一実施形態に係る成膜装置を示す平面図である。
【
図9】
図9は、ステップS2の前後の第2領域の表面状態をXPSで測定した結果の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、ステップS2の前後の第1領域の表面状態をXPSで測定した結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略することがある。
【0009】
先ず、
図1~
図7を参照して、一実施形態に係る成膜方法について説明する。成膜方法は、例えば
図1に示すステップS1~S5を含む。なお、成膜方法は、少なくともステップS1~S3を含めばよく、例えばステップS4~S5を含まなくてもよい。成膜方法は、
図1に示すステップS1~S5以外のステップを含んでもよい。
【0010】
図1のステップS1は、
図2に示すように、基板1を準備することを含む。基板1は、その表面に、第1膜11が露出する第1領域A1と、第2膜12が露出する第2領域A2とを有する。第2膜12は、第1膜11とは異なる材料で形成される。第1膜11と第2膜12は、下地基板10の上に形成される。下地基板10は、シリコンウェハ、又は化合物半導体ウェハである。化合物半導体ウェハは、例えばGaAsウェハ、SiCウェハ、GaNウェハ、又はInPウェハである。
【0011】
第1膜11は、例えば絶縁膜である。絶縁膜は、特に限定されないが、例えばSiO膜、SiN膜、SiOC膜、SiON膜、SiOCN膜、SiBN膜、SiOBN膜、AlO膜、ZrO膜、HfO膜、TiO膜、B膜、又はBN膜である。ここで、SiO膜とは、シリコン(Si)と酸素(O)を含む膜という意味である。SiO膜におけるSiとOの原子比は1:1には限定されない。SiN膜、SiOC膜、SiON膜、SiOCN膜、SiBN膜、SiOBN膜、AlO膜、ZrO膜、HfO膜、TiO膜、B膜、及びBN膜について同様である。絶縁膜と下地基板10の間に、導電膜などが形成されてもよい。絶縁膜は、例えば層間絶縁膜である。層間絶縁膜は、好ましくは低誘電率(Low-k)膜である。
【0012】
なお、第1膜11は、半導体膜であってもよい。半導体膜は、特に限定されないが、例えばSi膜である。Si膜は、単結晶膜、多結晶膜、及びアモルファス膜のいずれでもよい。
【0013】
第2膜12は、上記の通り、第1膜11とは異なる材料で形成される。第2膜12は、例えば導電膜である。導電膜は、例えば金属膜である。金属膜は、特に限定されないが、例えば、Cu膜、Co膜、Ru膜、Mo膜、W膜、又はTi膜である。導電膜は、金属窒化膜であってもよい。金属窒化膜は、特に限定されないが、例えばTiN膜、又はTaN膜である。ここで、TiN膜とは、チタン(Ti)と窒素(N)を含む膜という意味である。TiN膜におけるTiとNの原子比は1:1には限定されない。TaN膜についても同様である。
【0014】
なお、本実施形態では第1膜11が絶縁膜であって且つ第2膜12が導電膜であるが、本開示の技術はこれに限定されない。後述するステップS3において、ハロゲン化金属の自己解離が、第1領域A1に対して第2領域A2で選択的に生じればよい。
【0015】
第1領域A1と第2領域A2とは、基板1の板厚方向片側(例えば、表面側)に設けられる。第1領域A1の数、及び第2領域A2の数は、特に限定されない。また、第1領域A1と第2領域A2は、
図2では隣接しているが、離れていてもよい。
【0016】
なお、基板1は、その表面に、不図示の第3領域を有してもよい。第3領域は、例えばバリア膜が露出する領域である。バリア膜は、金属膜と絶縁膜の間に形成され、金属膜から絶縁膜への金属拡散を抑制する。バリア膜は、特に限定されないが、例えば、TiN膜、又はTaN膜である。
【0017】
基板1は、その表面に、不図示の第4領域を更に有してもよい。第4領域は、例えばライナー膜が露出する領域である。ライナー膜は、バリア膜の上に形成され、金属膜の形成を支援する。金属膜は、ライナー膜の上に形成される。ライナー膜は、特に限定されないが、例えば、Co膜、又はRu膜である。
【0018】
図1のステップS2は、基板1の表面に対して還元性有機物の蒸気を供給することを含む。還元性有機物は、第2膜12の表面を還元すると共に、第1膜11の表面に有機物を吸着させる。ステップS2は、ステップS3の前に実施される。ステップS3において、ハロゲン化金属の自己解離が、第2領域A2でより生じやすく、第1領域A1でより生じにくくなる。還元性有機物は、例えばアルコールを含む。アルコールは、好ましくは第1級アルコールまたは第2級アルコールがよい。
【0019】
次に、
図3を参照して、
図1のステップS2の第2領域A2で生じる還元反応の一例について説明する。第2領域A2に露出するCu膜の表面は、ステップS2の前に自然に酸化され、酸素と結合している。アルコールの蒸気は、
図3に示すように、Cu膜の表面に結合する酸素を除去する。具体的には、例えば、第1級アルコール(R-CH
2OH)の蒸気は、Cu膜の表面に結合する酸素を除去すると共に、アルデヒド(R-CHO)の蒸気と水蒸気を生じる。水蒸気は、そのまま排出される。アルデヒドの蒸気は、Cu膜の表面に結合する酸素を除去すると共に、カルボン酸(R-COOH)の蒸気を生じる。カルボン酸の蒸気は、そのまま排出される。
図3において、Rは、例えば、炭素数1~5のアルキル基、又は水素である。
【0020】
次に、
図4を参照して、
図1のステップS2の第1領域A1で生じる化学吸着の一例について説明する。第1領域A1に露出するSiO膜の表面には、ステップS2の前に、通常、OH基が吸着している。アルコールの蒸気は、
図4に示すように、SiO膜の表面に炭素を含む有機物を化学吸着させる。具体的には、例えば、第1級アルコール(R-CH
2OH)の蒸気は、Cu膜の表面に吸着するOH基を除去し、その代わりに炭素を含む有機基を化学吸着させると共に、水蒸気を生じる。水蒸気は、そのまま排出される。
図4において、Rは、例えば、炭素数1~5のアルキル基、又は水素である。
【0021】
ステップS2の処理条件の一例は、下記の通りである。基板1の温度は、例えば300℃~400℃である。還元性有機物の蒸気の圧力は、例えば0.5×10-4Torrよりも大きく5.0×10-4Torrよりも小さく、好ましくは1.0×10-4Torr以上2.0×10-4Torr以下である。還元性有機物の蒸気の供給時間は、例えば1分~30分である。
【0022】
還元性有機物の蒸気の圧力が0.5×10-4Torrよりも大きく5.0×10-4Torrよりも小さければ、基板1の表面に対して適度な量の還元性有機物の蒸気を供給できる。よって、第2膜12の表面を十分に還元でき、且つ第1膜11の表面に有機物を十分に吸着できる。その結果、後述するステップS3において金属膜13の形成される領域の選択性を向上できる。なお、還元性有機物の蒸気の量が多過ぎれば、選択性が却って低下してしまう。
【0023】
図1のステップS3は、ステップS2の後に、基板1の表面に対してハロゲン化金属の蒸気を供給することで、
図5に示すように第1領域A1に対して第2領域A2に金属膜13を選択的に形成することを含む。金属膜13は、ハロゲン化金属に含まれる金属元素で構成される。例えばハロゲン化金属が金属元素として銅(Cu)、銀(Ag)又はルテニウム(Ru)を含む場合、金属膜13は銅膜、銀膜又はルテニウム膜である。
【0024】
ハロゲン化金属は、例えば、ヨウ化銅、ヨウ化銀、及びヨウ化ルテニウムから選ばれる少なくとも1つを含む。ヨウ化銅は、例えばヨウ化銅(I)である。ヨウ化銅(I)の化学式はCuIである。ヨウ化銀は、例えばヨウ化銀(I)である。ヨウ化銀(I)の化学式はAgIである。ヨウ化ルテニウムは、例えばヨウ化ルテニウム(III)である。ヨウ化ルテニウム(III)の化学式はRuI3である。
【0025】
ハロゲン化金属は、常温常圧で固体であり、例えば、るつぼの内部に粉体の形態で充填される。るつぼは、処理容器の内部に設置される。処理容器の内部に基板1を収容した状態で、処理容器の内部を真空ポンプなどで所望の圧力まで減圧した後、るつぼを加熱することで、ハロゲン化金属の蒸気を基板1の表面に対して供給することができる。
【0026】
ステップS3の処理条件の一例は、下記の通りである。基板1の温度は、例えば250℃~450℃である。るつぼの温度は、例えば250℃~400℃である。ハロゲン化金属の蒸気の圧力は、例えば1×10-3Torr以下である。ハロゲン化金属の蒸気の供給時間は、例えば1分~30分である。
【0027】
基板1の温度は、ハロゲン化金属の昇華温度以上に設定される。ハロゲン化金属は、絶縁膜又は半導体膜の表面上では、自己解離することなく蒸発し、排気される。ハロゲン化金属は、導電膜の表面上では、その表面に化学吸着する金属元素と、蒸発するハロゲン元素とに自己解離する。ハロゲン元素は、排気される。その結果、金属膜13が形成される。
【0028】
従って、第1膜11が絶縁膜又は半導体膜であって且つ第2膜12が導電膜である場合、ハロゲン化金属の自己解離、ひいては金属膜13の形成が第1領域A1に対して第2領域A2で選択的に生じる。なお、ハロゲン化金属の自己解離には、基板1中の伝導電子とハロゲン化金属分子の間での電子交換が寄与していると考えられる。
【0029】
本実施形態によれば、ステップS3の前に、ステップS2を実施する。ステップS2は、上記の通り、基板1の表面に対して還元性有機物の蒸気を供給することを含む。還元性有機物は、導電膜の表面を還元すると共に、絶縁膜又は半導体膜の表面に有機物を吸着させる。
【0030】
ステップS2を実施することで、ステップS3において、導電膜の表面では電子交換を促進でき、絶縁膜又は半導体膜の表面では電子交換を制限できる。よって、ステップS3において、金属膜13の形成される領域の選択性を向上できる。金属膜13は、第1領域A1に対して第2領域A2に選択的に形成される。
【0031】
図1のステップS4は、
図6に示すように、第1領域A1と第2領域A2に絶縁膜14を形成することを含む。絶縁膜14は、第1領域A1では第1膜11の上に、第2領域A2では金属膜13の上に、それぞれ堆積する。絶縁膜14は、金属膜13よりも厚く形成される。
【0032】
絶縁膜14は、例えば酸化アルミニウム膜(AlO膜)、酸化シリコン膜(SiO膜)、窒化シリコン膜(SiN膜)、酸化ジルコニウム膜(ZrO膜)、又は酸化ハフニウム膜(HfO膜)などである。ここで、AlO膜とは、アルミニウム(Al)と酸素(O)を含む膜という意味である。AlO膜におけるAlとOの原子比は1:1には限定されない。SiO膜、SiN膜、ZrO膜、及びHfO膜について同様である。
【0033】
絶縁膜14を形成する方法は、例えば、物理蒸着(PVD)法、化学蒸着(CVD)法、又は原子層堆積(ALD)法である。絶縁膜14の材料として金属酸化物が用いられる場合、例えば、物理蒸着法が用いられる。物理蒸着法は、例えば電子ビーム蒸着を含む。また、絶縁膜14の材料として有機金属化合物が用いられる場合、例えば、CVD法又はALD法が用いられる。
【0034】
図1のステップS5は、
図7に示すように、第2領域A2に金属膜13が露出するまで絶縁膜14を除去し、基板1の表面を平坦化することを含む。その平坦化には、例えば、エッチング又は化学機械研磨(Chemical Mechanical Polish:CMP)が用いられる。
【0035】
なお、図示しないが、ステップS2~S5は、複数回繰り返し実施されてもよい。ステップS2~S5を複数回繰り返し実施することで、金属膜13と絶縁膜14の膜厚を増やすことができる。
【0036】
次に、
図8を参照して、上記の成膜方法を実施する成膜装置100について説明する。成膜装置100は、
図1のステップS2及びS3を実施する。成膜装置100は、処理容器110と、保持部120と、第1供給部130と、第2供給部140と、減圧部150と、制御部190と、を備える。
【0037】
処理容器110は、基板1を収容する。処理容器110の側面には、不図示の搬送口が設けられている。処理容器110に対する基板1の搬入出は、搬送口を介して行われる。搬送口は、ゲートバルブによって開閉される。ゲートバルブは、通常、搬送口を密閉しており、基板1の搬入出時に搬送口を開放する。
【0038】
保持部120は、処理容器110の内部で基板1を保持する。保持部120は、基板1の処理対象である表面を下に向けて、基板1を水平に保持する。保持部120は、例えばメカニカルチャック121を含む。メカニカルチャック121は、図示しないが、基板1の周縁に沿って間隔をおいて複数の爪を有し、複数の爪で基板1の周縁をつかむ。
【0039】
保持部120は、基板1を加熱する加熱源122と、基板1の温度を測定する温度センサ123とを含む。温度センサ123は、基板1の測定温度を示す信号を制御部190に送信する。制御部190は、基板1の測定温度が設定温度になるように、加熱源122の出力を制御する。加熱源122は、例えば電気ヒータを含む。
【0040】
第1供給部130は、保持部120に保持されている基板1の表面に対して、還元性有機物の蒸気を供給する。第1供給部130は、処理容器110に接続される配管131を含む。配管131は、例えば処理容器110の側面に接続され、基板1の表面(例えば下面)よりも下方に向けて、還元性有機物の蒸気を水平に吐出する。
【0041】
なお、処理容器110の内部は真空雰囲気であり、還元性有機物の蒸気は処理容器110の内部全体に直ぐに拡散するので、配管131の接続位置は、処理容器110の側面には限定されない。
【0042】
第1供給部130は、図示しないが、配管131の途中に設けられる開閉バルブと、配管131の途中に設けられる流量制御器とを含む。開閉バルブが配管131を開くと、配管131を介して供給源から処理容器110に還元性有機物の蒸気が供給される。その供給量は流量制御器によって制御される。一方、開閉バルブが配管131を閉じると、供給源から処理容器110への還元性有機物の蒸気の供給が停止される。配管131の途中には、バンドヒータなどが設けられてもよい。
【0043】
第2供給部140は、保持部120に保持されている基板1の表面に対して、ハロゲン化金属の蒸気を供給する。第2供給部140は、例えば、るつぼ141と、るつぼ141を加熱する加熱源142と、るつぼ141の温度を測定する温度センサ143とを含む。るつぼ141は、ハロゲン化金属の粉末を収容する。るつぼ141は、処理容器110の内部に設置される。温度センサ143は、るつぼ141の測定温度を示す信号を制御部190に送信する。制御部190は、るつぼ141の測定温度が設定温度になるように、加熱源142の出力を制御する。加熱源142は、例えば電気ヒータを含む。
【0044】
るつぼ141は、例えば保持部120の真下に配置される。るつぼ141と保持部120との間には、ハロゲン化金属の蒸気の通路を開閉するシャッター144が設けられる。シャッター144が通路を閉じている間、ハロゲン化金属の蒸気は基板1の表面に供給されない。シャッター144が通路を開けている間、ハロゲン化金属の蒸気が基板1の表面に供給される。
【0045】
減圧部150は、処理容器110の内部を減圧する。減圧部150は、処理容器110に接続される配管151を含む。配管151は、例えば処理容器110の側面に接続される。減圧部150の配管151は、例えば第1供給部130の配管131と同じ高さで、処理容器110の側面に接続される。なお、その接続位置は、特に限定されない。
【0046】
減圧部150は、図示しないが、配管151の途中に設けられる開閉バルブと、配管151の途中に設けられる圧力制御器とを含む。真空ポンプなどの減圧源が作動し、開閉バルブが配管151を開くと、処理容器110から配管151にガスが吸引される。処理容器110のガス圧は、圧力制御器によって制御される。圧力制御器は、例えばバタフライバルブなどの圧力調整バルブを備える。
【0047】
制御部190は、例えばコンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)191と、メモリなどの記憶媒体192とを有する。記憶媒体192には、成膜装置100において実行される各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御部190は、記憶媒体192に記憶されたプログラムをCPU191に実行させることにより、成膜装置100の動作を制御し、
図1のステップS2及びS3を実施する。
【0048】
[実験データ]
以下、実験データについて説明する。
【0049】
例1では、Cu膜を表面に有する基板を準備し、Cu膜表面に対してメタノール(CH3OH)の蒸気を供給した。その処理条件は、下記の通りであった。
基板の温度:390℃
メタノールの蒸気の圧力:5.0×10-4Torr
メタノールの蒸気の供給時間:10分。
【0050】
例1では、X線光電子分光(X-ray Photoelectron Spectroscopy:XPS)法で、メタノールの蒸気を供給する前後、つまりステップS2の前後のCu膜表面の状態を測定した。測定結果を、
図9に示す。
【0051】
図9に示すように、ステップS2の前には、Cu
2+に由来するピークとCuに由来するピークの両方が重なっており、ピークがブロードであったのに対し、ステップS2の後には、Cuに由来するピークのみが見られ、ピークがシャープであった。このことから、ステップS2を実施することで、Cu膜表面に結合する酸素を除去できることがわかる。
【0052】
例2では、SiO
2膜を表面に有する基板を準備し、SiO
2膜表面に対してメタノール(CH
3OH)の蒸気を供給した。その処理条件は、例1と同じ条件であった。例2では、例1と同様に、X線光電子分光法で、メタノールの蒸気を供給する前後、つまりステップS2の前後のSiO
2膜表面の状態を測定した。測定結果を、
図10に示す。
【0053】
図10に示すように、ステップS2の前には、SiOHに由来するピークが高かったのに対し、ステップS2の後には、SiOHに由来するピークが低かった。このことから、ステップS2を実施することで、SiO
2膜表面に吸着するOH基を除去できることがわかる。OH基の代わりに、メチル基(CH
3)基が吸着されたと推定される。
【0054】
以上、本開示に係る成膜方法及び成膜装置の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態などに限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、及び組み合わせが可能である。それらについても当然に本開示の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0055】
1 基板
11 第1膜
12 第2膜
13 金属膜
A1 第1領域
A2 第2領域