(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050923
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】発光装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/54 20100101AFI20230404BHJP
H01L 33/56 20100101ALI20230404BHJP
【FI】
H01L33/54
H01L33/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021161290
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】光永 隆之
(72)【発明者】
【氏名】島▲崎▼ 誠也
【テーマコード(参考)】
5F142
【Fターム(参考)】
5F142AA12
5F142BA24
5F142CA02
5F142CC04
5F142CC26
5F142CC27
5F142CE02
5F142CE06
5F142CG03
5F142CG04
5F142CG05
5F142CG16
5F142CG43
5F142DA12
5F142DA64
5F142DB02
5F142DB30
5F142FA18
(57)【要約】
【課題】適度に低光度の発光装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】凹部11aを有する基体11と、凹部11a内に配置された発光素子12と、凹部11a内に配置され、発光素子12を覆い、表面が凹面13aとなっている封止部材13と、凹部11aの上方に配置され、基体11に固定された光吸収部材14と、を備え、封止部材13の表面と光吸収部材14との間に空間15を有する発光装置。
【選択図】
図1C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部を有する基体と、
前記凹部内に配置された発光素子と、
前記凹部内に配置され、前記発光素子を覆い、表面が凹面となっている封止部材と、
前記凹部の上方に配置され、前記基体に固定された光吸収部材と、を備え、
前記封止部材の前記表面と前記光吸収部材との間に空間を有する発光装置。
【請求項2】
前記光吸収部材は、シリコーン樹脂にカーボンブラックが含有された材料である請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記光吸収部材は、複数個の孔を有する請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記孔は、平面視において行列状、同心円状又はランダムに配置されている請求項3に記載の発光装置。
【請求項5】
前記孔は、平面視において前記封止部材の中心部よりも外周付近に多く配置されている請求項3に記載の発光装置。
【請求項6】
前記孔は、前記中心部よりも前記外周付近で直径が大きい請求項3~5のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記孔の直径は、前記光吸収部材の厚みよりも小さい請求項3~6のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項8】
前記光吸収部材は、前記発光素子からの光の30%以上を吸収する請求項1~7のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項9】
前記光吸収部材は、前記封止部材の表面の50%以上90%以下を被覆する請求項1~8のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項10】
凹部を有する基体と、前記凹部内に配置された発光素子と、前記凹部内に配置され、前記発光素子を覆い、表面が凹面となっている封止部材と、を含む中間体を準備する工程と、
前記凹部の上方に光吸収部材を配置し、前記封止部材の前記表面と前記光吸収部材との間に空間を有するように、前記光吸収部材を前記基体に固定する工程と、を有する発光装置の製造方法。
【請求項11】
前記基体と向かい合う前記光吸収部材の面に大気圧にてプラズマ照射を行うことを含む請求項10に記載の発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発光装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光装置は高出力化に伴って種々の用途に用いられているが、その用途によっては、低光度の発光装置が求められていることから、遮光粒子等を利用した発光素子が提案されている(特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、適度に低光度の発光装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施形態に係る発光装置は、凹部を有する基体と、前記凹部内に配置された発光素子と、前記凹部内に配置され、前記発光素子を覆い、表面が凹面となっている封止部材と、前記凹部の上方に配置され、前記基体に固定された光吸収部材と、を備え、前記封止部材の前記表面と前記光吸収部材との間に空間を有する。
本開示の一実施形態に係る発光装置の製造方法は、凹部を有する基体と、前記凹部内に配置された発光素子と、前記凹部内に配置され、前記発光素子を覆い、表面が凹面となっている封止部材とを含む中間体を準備する工程と、前記凹部の上方に光吸収部材を配置し、前記封止部材の前記表面と前記光吸収部材との間に空間を有するように、前記光吸収部材を前記基体に固定する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一実施形態によれば、適度に低光度の発光装置及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】本発明の一実施形態を示す発光装置の概略斜視図である。
【
図2A】本発明の別の実施形態を示す発光装置の概略平面図である。
【
図3】本発明のさらに別の実施形態を示す発光装置の概略断面図である。
【
図4A】本発明のさらに別の実施形態を示す発光装置の概略平面図である。
【
図4C】光の進路を説明するための
図4BのX部の拡大模式図である。
【
図5】本発明の実施形態の発光装置の製造方法を示すフローチャートである。
【
図6A】本発明の一実施形態の発光装置の製造方法を示す概略断面図である。
【
図6B】本発明の一実施形態の発光装置の製造方法を示す概略断面図である。
【
図6C】本発明の一実施形態の発光装置の製造方法を示す概略断面図である。
【
図6D】本発明の一実施形態の発光装置の製造方法を示す概略断面図である。
【
図6E】本発明の一実施形態の発光装置の製造方法を示す概略平面図である。
【
図6F】本発明の一実施形態の発光装置の製造方法を示す概略平面図である。
【
図6G】本発明の一実施形態の発光装置の製造方法を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に図面を参照しながら、本発明を実施するための形態を説明する。ただし、以下に示す形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明を以下に限定するものではない。また、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするために誇張していることがある。さらに、同一の名称、符号については、原則として同一もしくは同質の部材を示しており、重複した説明は適宜省略する。また、断面のみを示す端面図を断面図として用いる場合がある。
【0009】
[発光装置]
本実施形態の発光装置10は、
図1Aから1Cに示すように、凹部11aを有する基体11と、凹部11a内に配置された発光素子12と、凹部11a内に配置され、発光素子12を覆い、表面が凹面13aとなっている封止部材13と、凹部11aの上方に配置され、基体11に固定された光吸収部材14と、を備える。発光装置10は、封止部材13の表面と光吸収部材14との間に空間15を有する。
このような構成を備えることにより、封止部材と、空気と、光吸収部材との間の屈折率の違いを利用して、発光素子から出射される光を発光装置から出射しにくく、遮光することができる。その結果、適度に低光度の発光装置とすることができる。また、空間の存在により、封止部材と光吸収部材とが直接接触しないため、封止部材を経由した発光素子の点灯時の熱を光吸収部材に伝えにくくするために、光吸収部材の熱劣化を低減することができ、安定した品質の発光装置を提供することができる。さらに、発光装置の点灯消灯を繰り返すことにより封止部材の膨張収縮が生じたとしても、封止部材と光吸収部材との界面剥離を問題とすることがないため、信頼性の高い発光装置を提供することができる。また、発光装置の表面に光吸収部材を備えることにより、通常タック性を有する封止部材を被覆して、発光装置表面のタック性を低減することができる。
【0010】
(基体11)
基体11は、発光素子12を収納する筐体として機能する。基体11は凹部11aを有する。凹部11aは、基体11の上面11bに開口を有し、底面11cと側面とを有する。本実施形態では、上面11bの外縁は、略四角形状である。
基体11は、本実施形態では、絶縁性材料に一対のリード端子8の一部が埋設されて構成される。基体11は、その上面11bが本実施形態では平坦であるが、凹凸が設けられてもよいし、開口を囲む溝等が設けられていてもよい。
絶縁性材料は、発光素子12からの光及び外光が透過しにくい材料であることが好ましい。基体11の構造を維持するために、所定の強度を有することが好ましい。基体11は、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、セラミックス等によって形成される。具体的には、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ガラスエポキシ樹脂、BTレジン、ポリフタルアミド(PPA)樹脂等の樹脂材料、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム等のセラミックス材料が挙げられる。基体11は、凹部11aを画定する側面において、発光素子からの光を反射する材料によって形成されていることが好ましい。これによって、発光素子からの光を分散させることができ、適度に低輝度にすることが可能となる。
光を反射又は分散させるために、例えば、絶縁性材料に光反射材を含有させることが好ましい。光反射材としては、例えば、二酸化チタン、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウム、チタン酸カリウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ムライト、酸化ニオブ、硫酸バリウム、各種希土類酸化物(例えば、酸化イットリウム、酸化ガドリニウム)等が挙げられ、なかでも、酸化チタン、窒化ホウ素、酸化ケイ素及び酸化アルミニウムからなる群から選択される1種以上が好ましい。特に、反射性向上の観点から、酸化チタン、熱伝導性の観点から、窒化ホウ素がより好ましい。
【0011】
リード端子8は、発光素子12を基体11の外部の配線等と電気的に接続するための端子として機能する。リード端子8は、その一部が凹部11aを画定する底面11c及び基体11の外表面で露出しており、他の一部は基体11内に埋設されている。
リード端子8は、当該分野で公知の材料によって形成することができ、例えば、アルミニウム、鉄、ニッケル、銅等の金属又はこれらを含む合金の単層又は積層構造によって形成することができる。リード端子は、その表面に、例えば、Ag、Ag合金、Au、Au合金等が被覆されていてもよい。
【0012】
(発光素子12)
発光素子12は、半導体レーザ、発光ダイオード等の半導体発光素子である。発光素子12の発光波長は任意に選択することができる。例えば、青色、緑色の発光素子としては、ZnSe、窒化物系半導体(InXAlYGa1-X-YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)を用いた発光素子を用いることができる。また、赤色の発光素子としては、GaAs、AlInGaP、AlGaAs系の半導体等を用いることができる。これ以外の材料からなる半導体発光素子を用いることもできる。用いる発光素子の組成及び発光色、大きさ、個数等は目的に応じて適宜選択することができる。可視光領域の光だけでなく、紫外線又は赤外線を出力する発光素子とすることができる。
本実施形態では、発光素子12は、凹部11aの底面11cに露出したリード端子8上に配置される。発光素子12の正負一対の電極は、凹部11aの底面11cに露出した一対のリード端子8と電気的に接続されている。電気的な接続は、導電性ワイヤを利用したものであってもよいし、フリップチップ実装として、導電性の接合部材を利用したものであってもよい。
【0013】
(封止部材13)
封止部材13は、凹部11a内に配置され、発光素子12、任意に導電性ワイヤ又は接合部材等を水分、外力、塵芥から保護部材である。封止部材13は、凹部11a内の一部又は全部を埋め込んでおり、発光素子12等を凹部11a内で被覆し、基体11の上面11bには配置されていないことが好ましい。
封止部材13は、その表面に凹面13aを有する。凹面13aは、封止部材13の全表面にわたって配置されていてもよいし、一部のみに配置されていてもよい。凹面13aは、発光素子が配置された上部において最大深さを有することが好ましい。凹面の凹みの最大深さ(
図1C中、H)、つまり、凹面13aと後述する光吸収部材14の発光素子と対向する面との最大距離は、封止部材13を構成する材料等によって適宜調整することができ、例えば、凹部の深さの25%以下が挙げられる。言い換えると、発光素子の直上の封止部材13の厚みが300μm以上400μm以下が挙げられる。封止部材13の凹面13aは、
図1Cに示すように、なだらかに下方に膨らんだ曲面であってもよい。
図3に示すように、封止部材23の凹面23aは、凹部11aの周辺において上面11b側に凸の形状を有し、その内側で、発光素子12側に向かって急激に凹むような曲面を有していてもよい。凹面13aの中央付近は平坦であって、凹部11aの側壁に沿って封止部材13が急激に這い上がる形態を採ってもよい。
【0014】
封止部材13は、発光素子12から出射する光を透過させるために、また、光が封止部材に吸収されて熱に変換されることにより封止部材の劣化を防止するために、透光性を有することが好ましい。ここでの透光性は、例えば、発光素子から出射される光の60%以上を透過させることが好ましく、70%以上又は80%以上がより好ましい。封止部材13は、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂等を含んで構成することができる。具体的には、エポキシ樹脂組成物、シリコーン樹脂組成物、シリコーン変性エポキシ樹脂等の変性エポキシ樹脂組成物;エポキシ変性シリコーン樹脂等の変性シリコーン樹脂組成物;ハイブリッドシリコーン樹脂;ポリイミド樹脂組成物、変性ポリイミド樹脂組成物;ポリフタルアミド(PPA);ポリカーボネート樹脂;ポリフェニレンサルファイド(PPS);液晶ポリマー(LCP);ABS樹脂;フェノール樹脂;アクリル樹脂;PBT樹脂等の樹脂が挙げられる。なかでも、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、アクリル樹脂の1種以上を含む樹脂又はハイブリッド樹脂等が好ましく、シリコーン樹脂及びエポキシ樹脂から選択された一種以上であることがより好ましく、シリコーン樹脂であることがさらに好ましい。
【0015】
封止部材13は、上述した樹脂に加えて充填材を含んでいてもよい。充填材として、波長変換部材及び/又は光拡散材等が挙げられる。
波長変換部材としては、蛍光体、量子ドット等が挙げられる。蛍光体としては、公知の蛍光体が用いられる。蛍光体としては、イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(例えば、Y3(Al,Ga)5O12:Ce)、ルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(例えば、Lu3(Al,Ga)5O12:Ce)、テルビウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(例えば、Tb3(Al,Ga)5O12:Ce)、CCA系蛍光体(例えば、Ca10(PO4)6Cl2:Eu)、SAE系蛍光体(例えば、Sr4Al14O25:Eu)、クロロシリケート系蛍光体(例えば、Ca8MgSi4O16Cl2:Eu)、βサイアロン系蛍光体(例えば、(Si,Al)3(O,N)4:Eu)、αサイアロン系蛍光体(例えば、Ca(Si,Al)12(O,N)16:Eu)、SLA系蛍光体(例えば、SrLiAl3N4:Eu)、CASN系蛍光体(例えば、CaAlSiN3:Eu)若しくはSCASN系蛍光体(例えば、(Sr,Ca)AlSiN3:Eu)等の窒化物系蛍光体、KSF系蛍光体(例えば、K2SiF6:Mn)、KSAF系蛍光体(例えば、K2(Si,Al)F6:Mn)若しくはMGF系蛍光体(例えば、3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn)等のフッ化物系蛍光体、ペロブスカイト構造を有する蛍光体(例えば、CsPb(F,Cl,Br,I)3)、又は、量子ドット蛍光体(例えば、CdSe、InP、AgInS2又はAgInSe2)等を用いることができる。蛍光体は、複数の種類の蛍光体を組み合わせて用いてもよい。例えば、発光色の異なる蛍光体を所望の色調に適した組み合わせ及び/又は配合比で用いて、演色性及び/又は色再現性を調整することができる。
光拡散材としては、酸化チタン、チタン酸バリウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、アエロジル、ガラス、ガラスファイバー又はワラストナイト等のフィラー、窒化アルミニウム等、当該分野で通常用いられているもののいずれを用いてもよい。これを用いることによって、光がランダムな方向に反射し、発光装置から出射する光の輝度むら、色むら等を抑制することができる。
【0016】
封止部材13を構成する材料は、ボイドの発生を防止しやすいという観点から、流動性が高く、熱又は光の照射により硬化する樹脂を含むことが好ましい。このような材料は、例えば、0.5Pa・sから30Pa・sの粘度での流動性を示すものが挙げられる。封止部材13は、例えば、射出成形、ポッティングによる成形、樹脂印刷法、トランスファーモールド法、圧縮成形等で成形することができる。
【0017】
(光吸収部材14)
光吸収部材14は、基体11の凹部11aの上方に配置され、基体11の上面11bに固定されている。光吸収部材14は、発光素子から出射された光を吸収して、適度に低光度の発光装置とするために用いる部材であって、例えば、発光素子から出射された光の30%以上を吸収するものが好ましい。このような光吸収を実現する限り、光吸収部材14は、例えば、
図1Bに示すように、封止部材13の表面の全部を被覆していてもよいし、一部のみを被覆していてもよい。例えば、光吸収部材14は、封止部材の全表面を被覆している場合には、光吸収部材14を構成する材料及び/又は厚み等を適宜選択又は設定して、発光素子から出射された光の30%以上を吸収し得るように調整することが好ましい。あるいは、光吸収部材14の材料及び/又は厚みを調整することに加えて、封止部材の表面の50%から90%を被覆することが好ましい。そのために、例えば、
図2A及び4Aに示すように、光吸収部材14、24に、複数個の孔24a、34aを配置してもよい。
孔24a、34aは、有底の孔であってもよいが、貫通孔であることが好ましい。孔24a、34aの大きさ、形状及び個数は、特に限定されない。孔は、例えば、円形、楕円形、三角形、四角形等の多角形又はこれらを組み合わせた形状等種々の形状とすることができる。1つの孔の大きさは、例えば、発光素子の光出射面(上面)の1/100から1/2の面積を有する大きさ等が挙げられる。また、孔の大きさは、例えば、光吸収部材の厚みよりも小さい径又は幅を有するものが挙げられる。
【0018】
このような孔24a、34aを配置することにより、その位置によって、発光素子から出射された一次光のほとんどが孔の側壁に当たることにより吸収され、光吸収の程度を増大させることができる。
孔24a、34aは、複数の場合、全部が同じ形状、同じ大きさ及び/又は同じ間隔で配置されていてもよいし、一部又は全部が異なる形状、異なる大きさ及び/又は異なる間隔であってもよい。例えば、
図4Aに示すように、孔34aは、発光素子の直上である、封止部材の中心部において小さく又は存在せず、その外周において又は外周に向かって大きくなるように配置してもよい。発光素子が中央に置かれている場合、
図4Cに示すように、発光素子から出射した光Aは、封止部材13の凹面13aの外周方向にいくほど傾斜角度が大きくなるために、光吸収部材14の孔34aから出射されにくくなる。よって、光吸収部材14の外周部分で大きな孔34aが配置していることにより、面内における光の輝度の均一性を調整することができる。
孔は、平面視において、面内においてピッチが同じに配置されていてもよいし、ピッチが異なるように偏って配置されていてもよい。孔は、例えば、行列状(
図2A)、同心円(同心楕円)状(
図4A)、ランダム状に配置することができる。また、孔は、平面視において、封止部材の中心部、つまり、発光素子の直上よりもその外周に多く配置(
図4A)してもよい。例えば、行列状の孔の配置は、容易に孔を形成することができるとともに、配光に寄与し得る。発光素子が中央に置かれており、孔を同心円状等に配置する場合又は外周で多くの孔を配置する場合、発光素子の直上の光出力が高い部分を光吸収部材で覆い、その外周に孔を配置することができるため、強い光が直接光吸収部材を抜けず、面内において均一又は略均一な光度を与えることができる。また、孔は、通気性を確保することができる。ランダム状の配置は、発光ばらつきを低減させることができる。
【0019】
光吸収部材14は、母材に光吸収性物質を含んで構成されている。光吸収性物質としては、例えば、カーボンブラック、グラファイト等の黒色顔料が挙げられる。黒色顔料は、例えば、200nm以上400nm以下の平均粒径を有する粒又は粉末状のものが好ましい。母材としては、上述した熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂等が挙げられる。なかでも、シリコーン樹脂が好ましい。光吸収部材14は、例えば、シリコーン樹脂にカーボンブラックが含有された材料であることが好ましい。このような材料を用いることにより、有効に光吸収を行うことができるとともに、耐光性を確保することができる。この場合、カーボンブラックの含有量は、光吸収部材の全重量に対して5重量%以上25重量%以下が挙げられ、8重量%以上20重量%以下が好ましい。光吸収性物質は、母材中に均一又は略均一に分散されていることが好ましい。これにより、光の吸収及び/又は出射を容易に制御することができる。また、発光装置の色むらを改善することができる。
【0020】
光吸収部材14は、凹部11aの上方、つまり、凹面13aを有する封止部材13の表面を被覆するように配置されることにより、封止部材13と光吸収部材14とを離して配置して、封止部材13の表面と光吸収部材14の発光素子12に対する対向面との間に空間15を形成することができる。この空間15は、閉塞した空間であって、空気が含まれていてもよいし(
図1B)、上述した孔によって一部開放され、それによって空気と接触する空間15であってもよい(
図2A、4A)。このように、封止部材13と光吸収部材14との間に空間15、つまり空気層が配置していることにより、封止部材、空気層及び光吸収部材の間で、屈折率差を与えることができる。その結果、発光素子から出射された光を光吸収部材の上方により出射されにくくすることができ、適度な低光度の発光装置を得ることができる。また、空間15の配置によって、封止部材と光吸収部材とが離れて配置されるために、発光素子で発生し、封止部材に溜まった熱を光吸収部材に伝わりにくくすることができるために、光吸収部材の熱劣化を低減することが可能となる。さらに、熱による封止部材の膨張又は収縮を、空気層によって緩和することができるために、発光装置自体の膨張又は収縮、熱劣化等を防止することができる。加えて、封止部材は、通常タック性があるために、他の発光装置等との接触等によって、両者が接着されることがあるが、光吸収部材での封止部材の被覆により、封止部材のタック性を低減することができる。
【0021】
[発光装置の製造方法]
本実施形態の発光装置の製造方法は、
図5に示すように、凹部11aを有する基体11と、凹部11a内に配置された発光素子12と、凹部11a内に配置され、発光素子12を覆い、表面が凹面13aとなっている封止部材13とを含む中間体9を準備する工程(S1)と、凹部11aの上方に光吸収部材14を配置し、封止部材13の表面と、光吸収部材14との間に空間15を有するように、光吸収部材14を基体11に固定する工程(S2)とを有する。
【0022】
(中間体9の準備:S1)
中間体9を準備するためには、例えば、
図5及び6Aから6Dに示すように、凹部11aを有する基体11を準備し(S11)、基体11の凹部11aに発光素子12を配置し(S12)、未硬化の封止部材13mを充填し(S13)、未硬化の封止部材13mを硬化させて、その表面に凹面13aを有する封止部材13を形成する(S14)工程を含むことが好ましいが、これらの一部のみを省略してもよい。
【0023】
(基体11の準備:S11)
まず、
図6Aに示すように、上面11bと、上面11bに位置する開口を備えた凹部11aとを有する基体11を準備する。
基体11は前述したようにリード端子8を含む。なお、複数の発光装置を同時に製造する場合には、複数の基体11を準備してもよい。この場合、発光素子の実装、封止部材の充填等の製造効率を高めるために、複数の基体11を、所定のピッチで2次元に配列することが好ましい。そのために、複数の基体が配置されたリードフレームを用いてもよい。
基体11は、例えば、リード端子8を覆うように、射出成形、トランスファーモールド等公知の方法を利用して形成してもよいし、市販品や開発品等を購入してもよい。
【0024】
(発光素子12の配置:S12)
図6Bに示すように、基体11の凹部11aの底面11cに発光素子12を配置する。そのために、まず、発光素子12を準備する。発光素子12は、一対のリード端子8の一方の上面に発光素子12をフェイスアップで接合する。次に、発光素子12の一対の電極と、一対のリード端子8とをそれぞれ導電性ワイヤで接続する。また、発光素子は、一対のリード端子を跨いでフリップチップ実装してもよい。
【0025】
(封止部材13mの充填:S13)
図6Cに示すように、基体11の凹部11aに、例えば、シリコーン樹脂を含む未硬化の封止部材を充填する。シリコーン樹脂は、波長変換部材を含まないものを用いてもよいし、波長変換部材を添加し、分散させたものを用いてもよい。シリコーン樹脂は、例えば、ディスペンサー等を用いて、上面11bを覆わないように、基体11の凹部11a内に充填する。この際、発光素子12及び導電性ワイヤがある場合には導電性ワイヤを完全に被覆していることが好ましい。また、表面張力等により、シリコーン樹脂が盛り上がっていてもよい。
【0026】
(封止部材13mの硬化:S14)
図6Dに示すように、未硬化の封止部材13mが充填された基体11を加熱し、未硬化の封止部材13mを硬化させる。例えば、オーブン等、ヒータを有し、所定の温度で維持し得る恒温器で保持することによって、基体11を加熱することができる。加熱は、例えば、封止部材の硬化温度以上とすることが好ましい。具体的には、70℃から200℃が挙げられる。加熱時間は、例えば、0.5時間から4.0時間以下が挙げられる。
加熱によって、基体11の凹部11a内に封止部材13が配置される。この封止部材は、硬化後において、その表面に凹面を有する。
【0027】
(光吸収部材14の固定:S2)
続いて、光吸収部材14を基体11に固定するために、例えば、
図5及び
図6Eから6Gに示すように、光吸収部材14を準備し(S21)、任意に光吸収部材14に孔24aを形成し、光吸収部材14を基体11の上面11bに固定するための処理を、光吸収部材14及び/又は基体11の上面11bに行い(S22)、光吸収部材14を基体11に配置し、固定する(S23)工程を含むことが好ましい。
【0028】
(光吸収部材14の準備:S21)
図6Eに示すように、光吸収部材14として、例えば、シート状のものを準備する。この場合、光吸収部材14は、柔軟性があるシート状の光吸収部材14であってもよいが、上述した封止部材13の凹面13aに完全に追従しない程度の剛性を有するものが好ましい。つまり、光吸収部材14は、光吸収部材14を凹部の上方に配置するために光吸収部材14を基体11の上面11bに載置した場合に、凹面13aと光吸収部材14の発光素子に対する対向面とが接触せずに離間した状態となって、空間15を形成し得るものが好ましい。
任意に、
図6Fに示すように、光吸収部材14において、封止部材13の直上に相当する領域に、孔24aを形成してもよい。孔24aは、レーザ加工、エッチング、ポンチ加工等の当該分野で公知の方法で形成してもよいし、シート状の光吸収部材14を形成する際に、同時に孔を配置するように形成してもよい。光吸収部材14として、例えば、孔の開いたシートを用いてもよい。
【0029】
(光吸収部材14及び/又は基体11の上面11bの処理:S22)
光吸収部材14の一面、つまり、基体11と接触する面、特に、基体11の上面11bと接触する領域と、基体11の上面11bとのいずれかに又は双方に、表面処理を施すことが好ましい。ここでの表面処理とは、両者の接着を促すために、光吸収部材14の表面及び/又は基体11の上面11bの改変処理を意味する。改変処理としては、イオンビーム又はプラズマを照射する処理が挙げられる。イオン又はプラズマは、不活性ガス又は窒素を用いればよい。これらの処理は、真空中で行ってもよいが、大気圧中で行うことが好ましい。
具体的には、大気プラズマ処理装置を用いてプラズマ処理を行う。大気プラズマ処理装置は、例えば、周波数:15~25KHz、出力800W~1200W、プラズマ種は空気、プラズマ照射時間は0.5~1秒で行う。
このような処理を行うことによって、光吸収部材14の表面及び/又は基体11の上面11bを活性化して、両者の接触により強固な接着を促進することができる。
【0030】
(光吸収部材14の基体11への配置:S23)
続いて、凹部11aの上方、つまり、基体11の上面11bに接触するように光吸収部材14を配置する。
これによって、封止部材13の凹面13aと、光吸収部材14との間に空間15を有するように、光吸収部材14を基体11に固定することができる(S2)。両者をより一層強固に接着するために、光吸収部材14を基体11の上面11bに押圧することが好ましい。なお、上述したS22を行って又は省略して、接着剤を用いて光吸収部材14を基体11に固定してもよい。
この際、
図6Eに示すように、孔を有さない光吸収部材14を用いた場合には、
図1Cに示すように、光吸収部材14と封止部材13の凹面13aとの間に、閉塞された空間15を有する発光装置10を得ることができる。また、
図6Fに示すように、孔14aを有する光吸収部材14を用いた場合には、
図6Gに示すように、光吸収部材14と封止部材13の凹面13aとの間に、解放された空間15を有する発光装置10Aを得ることができる。
このような製造方法により、封止部材13の凹面13aと、光吸収部材14との間に空間15を有する発光装置を製造することができる。
【0031】
実施例
実施例に係る発光装置として所定の凹部を有する基体を準備した(日亜化学工業株式会社製NHSW146A)。封止部材としてシリコーン樹脂を用い、封止部材中にはYAG蛍光体が含有されている。この凹部の上方に配置され、基体に固定された光吸収部材として50μmの遮光フィルムを準備した。遮光フィルムはカーボンが含有されている。封止部材の表面と光吸収部材との間に空間が設けられている。
一方、比較例に係る発光装置は、実施例に係る発光装置に対して、光吸収部材を有していない以外は、同様の構成を有する。
実施例の発光装置は、光度9.0mcd(If=5mA)であった。比較例の発光装置は、光度243.8mcd(If=5mA)であった。従って、実施例の発光装置は、比較例に対して96.3%もの光度低下率(%)を示した。
【符号の説明】
【0032】
9 中間体
10、10A 発光装置
11 基体
11a 凹部
11b 上面
11c 底面
16 リード端子
12 発光素子
13、23 封止部材
13a、23a 凹面
13m 封止部材
14、24 光吸収部材
14a、24a、34a 孔
15 空間