(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050927
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】生体音信号処理装置および生体音信号処理方法
(51)【国際特許分類】
A61B 7/04 20060101AFI20230404BHJP
A61B 5/02 20060101ALI20230404BHJP
A61B 5/08 20060101ALI20230404BHJP
G10L 21/034 20130101ALN20230404BHJP
G10L 21/0224 20130101ALN20230404BHJP
【FI】
A61B7/04 N
A61B5/02 350
A61B5/08
G10L21/034
G10L21/0224
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021161297
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177493
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 修
(72)【発明者】
【氏名】口地 博行
(72)【発明者】
【氏名】米澤 真也
【テーマコード(参考)】
4C017
4C038
【Fターム(参考)】
4C017AA04
4C017AC35
4C038SV05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】大きな音量の雑音を含む生体音信号から小さな音量の生体音を精度よく検出する生体音信号処理装置及び生体音信号処理方法を提供する。
【解決手段】生体音信号処理装置10は、被験者等から生体音信号を検出する検出部1及び信号処理部2を備える。信号処理部2は、音量を均一化した均一化信号を生成する音量制御部21と、均一化信号と検出目的の生体音に相当するリファレンス信号との類似度を算出する類似度算出部22と、類似度の高いときには生体音信号と判定し、類似度が低いときには生体音信号ではないと判定する判定部24と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体音を生体音信号に変換する検出部と、前記生体音信号の信号処理部とを備えた生体音信号処理装置において、
前記信号処理部は、
前記生体音信号を入力して音量を均一化した均一化信号を生成する音量制御部と、
前記均一化信号と検出目的の生体音に相当するリファレンス信号とを入力して、前記均一化信号と前記リファレンス信号の類似度を示す類似度信号を生成する類似度算出部と、
前記類似度信号に基づき、前記生体音信号が前記検出目的の生体音の生体音信号であるか否かを判定して判定信号を生成する判定部と、
を備えていることを特徴とする生体音信号処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の生体音信号処理装置において、
前記信号処理部は、
前記判定信号を入力して前記検出目的の生体音の生体音信号であると判定された前記生体音信号を抽出する抽出部を備えていることを特徴とする生体音信号処理装置。
【請求項3】
生体音から生体音信号を生成する第1ステップと、
前記生体音信号の音量を均一化した均一化信号を生成する第2ステップと、
前記均一化信号と、検出目的の生体音に相当するリファレンス信号との類似度を示す類似度信号を生成する第3ステップと、
前記類似度信号に基づき、前記生体音信号が前記検出目的の生体音の生体音信号であるか否かを判定して判定信号を生成する第4ステップと、を含むことを特徴とする生体音信号処理方法。
【請求項4】
請求項3記載の生体音信号処理方法において、
前記判定信号を入力して前記検出目的の生体音の生体音信号であると判定された前記生体音信号を抽出する第5ステップを含むことを特徴とする生体音信号処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雑音を含む生体音信号について検出目的の生体音信号であるか否かを判定することができる生体音信号処理装置および生体音信号処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体音から聴診するための電子聴診器には、生体音を生体音信号に変換するマイクロフォンと、生体音信号から雑音を除去する信号処理等を行う信号処理部が搭載されている。また、乳幼児の状態を推測するため、乳幼児が着用するおむつ等にマイクロフォンを搭載したウェアラブルデバイスを取り付け、乳幼児の腹部から腸音を検出して乳幼児の感情的な状態を推定する技術が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、これらの装置により検出される生体音信号には、被験者の生体音に雑音が重畳している。例えば被験者が乳幼児の場合、生体音信号には乳幼児の泣き声や体表とおむつの擦れ音等の雑音が重畳している。一般的に、この種の雑音は検出したい生体音(検出目的の生体音)と比較して音量の大きな音であり、音量の小さい生体音を検出する妨げとなっていた。本発明はこのような実状に鑑み、大きな音量の雑音を含む生体音信号から小さな音量の生体音を精度よく検出することができる生体音信号処理装置および生体音信号処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため本願請求項1に係る発明は、生体音を生体音信号に変換する検出部と、前記生体音信号の信号処理部とを備えた生体音信号処理装置において、前記信号処理部は、前記生体音信号を入力して音量を均一化した均一化信号を生成する音量制御部と、前記均一化信号と検出目的の生体音に相当するリファレンス信号とを入力して、前記均一化信号と前記リファレンス信号の類似度を示す類似度信号を生成する類似度算出部と、前記類似度信号に基づき、前記生体音信号が前記検出目的の生体音の生体音信号であるか否かを判定して判定信号を生成する判定部と、を備えていることを特徴とする。
【0006】
本願請求項2に係る発明は、請求項1記載の生体音信号処理装置において、前記信号処理部は、前記判定信号を入力して前記検出目的の生体音の生体音信号であると判定された前記生体音信号を抽出する抽出部を備えていることを特徴とする。
【0007】
本願請求項3に係る発明は、生体音から生体音信号を生成する第1ステップと、前記生体音信号の音量を均一化した均一化信号を生成する第2ステップと、前記均一化信号と、検出目的の生体音に相当するリファレンス信号との類似度を示す類似度信号を生成する第3ステップと、前記類似度信号に基づき、前記生体音信号が前記検出目的の生体音の生体音信号であるか否かを判定して判定信号を生成する第4ステップと、を含むことを特徴とする。
【0008】
本願請求項4に係る発明は、請求項3記載の生体音信号処理方法において、前記判定信号を入力して前記検出目的の生体音の生体音信号であると判定された前記生体音信号を抽出する第5ステップを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、検出した生体音信号について音量を均一化し、得られた均一化信号とリファレンス信号との類似度から、検出した生体音が検出目的の生体音信号であるか否かを判定するため、生体音信号に含まれる雑音の除去が可能となる。また、判定信号を利用し、あるいは判定信号に基づき抽出した生体音信号を利用し、種々の検出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】本発明の実施形態の信号処理方法の説明図である。
【
図3】本発明の実施形態の信号処理方法の説明図である。
【
図4】本発明の実施形態の信号処理方法の説明図である。
【
図5】本発明の実施形態の信号処理方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の生体音信号処理装置および生体音信号処理方法は、次のように生体音の検出と検出した生体音信号の信号処理を行う。まず、検出部により被験者等から生体音を検出し、生体音信号に変換する。この生体音信号について、以下の信号処理を行う。
【0012】
まず、音量制御部により音量を均一化する。この音量の均一化により、生体音信号に含まれる雑音に基づく信号レベルは相対的に小さくなり、検出目的の生体音に基づく信号レベルは相対的に大きくなる。次に、類似度検出部により音量を均一化した均一化信号と、検出目的の生体音に相当するリファレンス信号との類似度を算出する。この算出結果となる類似度信号から、判定部により類似度の高い信号は生体音信号と判定し、類似度が低い信号は生体音信号ではないと判定する。生体音信号と判定された信号を利用することで、種々の検出が可能となる。以下、本発明の実施形態について説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は本発明の第1の実施形態の説明図で、本発明の生体音信号処理方法を実現することが可能な生体音信号処理装置となる。以下、本実施形態の生体音信号処理装置と生体音信号処理方法について説明する。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係る生体音信号処理装置10は、検出部1と信号処理部2を備えている。検出部1は、被験者の心拍、呼吸音、腸音等の生体音を収集して生体音信号に変換する(第1ステップに相当)。この検出部1は、例えば電子聴診器のチェストピースやウェアラブルデバイスに内蔵されたマイクロフォン等を備え、音響信号(生体音)を電気信号に変換する。生成された生体音信号は、有線あるいは無線により信号処理部2に出力される。
【0015】
ここで検出部1から出力される生体音信号には、検出目的の生体音に基づく信号だけでなく、チェストピース等が被験者の体表面に接触した際に発生するタッチノイズや、着衣の擦れ音、周囲の環境音や泣き声などの雑音も含まれる。
図2に実線で示す生体音信号は検出部1から出力される生体音信号の一例で、音量の大きい信号は雑音であり、この雑音と比較して生体音に基づく信号の音量は非常に小さいことがわかる。
【0016】
このように雑音を含む生体音信号は、
図1に示す生体音信号処理装置10の信号処理部2の音量制御部21に入力する。入力した生体音信号は、音量制御部21において音量の均一化処理が行われ、均一化信号を生成する(第2ステップに相当)。
【0017】
均一化信号の生成は、例えば次のように行う。まず、
図2に実線で示す生体音信号について、ヒルベルト変換を行い、極大値に対する包絡線関数h1(t)を算出する。算出算出結果は
図2に破線で示す。次に実線で示す生体音信号の正負を反転させ、再度ヒルベルト変換を行い、極小値に対する包絡線関するh2(t)を算出する。算出結果は、
図2に一点破線で示す。その後、生体音信号/|h1(t)-h2(t)|を算出することにより、大きな音量の信号は抑圧され、小さな音量の信号は増幅される。
【0018】
図3は、
図2で説明した生体音信号の音量を均一化した均一化信号を示す。この均一化処理により、生体音信号に含まれる雑音に基づく信号は、均一化処理のない場合と比較して信号レベルが相対的に小さくなる。一方検出目的の生体音に基づく信号は、均一化処理のない場合と比較して信号レベルが相対的に大きくなる。このように均一化処理を行うことで雑音の影響を小さくしている。なお均一化処理は、上述の方法に限定されず、周知の方法を採用することができる。
【0019】
音量制御部21から出力された均一化信号は、類似度算出部22に入力する。この類似度算出部22には、リファレンス信号も入力する。リファレンス信号は、予め用意された検出目的の生体音に相当する信号で雑音を含まない生体音信号となる。リファレンス信号の一例を
図4に示す。リファレンス信号は、
図1に示すように信号処理部2内の記憶部23に記憶され、記憶部23から読み込み可能に構成したり、信号処理部2の外部から有線あるいは無線により類似度算出部22に入力するように構成することができる。
【0020】
均一化信号とリファレンス信号が入力した類似度算出部22は、均一化信号とリファレンス信号の相関処理と類似度の算出を行い、類似度信号を生成する(第3ステップに相当)。
図5は均一化信号とリファレンス信号との類似度の算出結果の一例を示す図で、
図2および
図3に示す検出時間より長く検出を行い、類似度を算出した結果を示している。なお、相関処理と類似度の算出は、周知の方法を採用することができる。
【0021】
類似度算出部22から出力された類似度信号は、判定部24に入力する。判定部24では、入力した類似度信号から検出目的の生体音の生体音信号か否かを判定して判定信号を生成する(第4ステップに相当)。判定方法は、例えば予め設定した閾値以上の類似度の信号を検出目的の生体音信号と判定し、閾値に達しない類似度の信号を雑音と判定する。
図5に示す例では、類似度0.4を閾値とした場合を示している。あるいはさらに、一定割合で雑音と判定された信号が発生している時間において検出目的の生体音信号と判定された信号がある場合には、検出目的の生体音信号とは判断しない等の条件を付加して判定し、信頼度の高い生体音信号を得ることもできる。
【0022】
類似度が所定の閾値を超えたとき判定部24で生成された判定信号から、生体音信号の有無、生体音信号が発生する周波数等の情報を得ることができる。得られた情報は、被験者の状態の推測等種々の検出に利用することができる。
【0023】
(第2の実施形態)
次に本発明の第2の実施形態について説明する。
図6は本発明の第2の実施形態の説明図で、本発明の生体音信号処理方法を実現することが可能な生体音信号処理装置となる。
【0024】
上述の第1の実施形態同様、本実施形態に係る生体音信号処理装置10Aは、検出部1と信号処理部2Aを備えている。検出部1は、被験者の心拍、呼吸音、腸音等の生体音を収集して生体音信号に変換する(第1ステップに相当)。この検出部1は、例えば電子聴診器のチェストピースやウェアラブルデバイスに内蔵されたマイクロフォン等を備え、音響信号を電気信号に変換する。生成された生体音信号は、有線あるいは無線により信号処理部2Aに出力される。
【0025】
ここで検出部1から出力される生体音信号には、検出目的の生体音に基づく信号だけでなく、チェストピース等が被験者の体表面に接触した際に発生するタッチノイズや、着衣の擦れ音、周囲の環境音や泣き声などの雑音も含まれる。
図2に実線で示す生体音信号は検出部1から出力される生体音信号の一例で、音量の大きい信号は雑音であり、この雑音と比較して生体音に基づく信号の音量は非常に小さいことがわかる。
【0026】
このように雑音を含む生体音信号は、
図6に示す生体音信号処理装置10Aの信号処理部2Aの音量制御部21に入力する。入力した生体音信号は、音量制御部21において音量の均一化処理が行われ、均一化信号を生成する(第2ステップに相当)。均一化信号の生成は、上述の第1の実施形態で説明した方法の他、周知の方法で行うことができる。
【0027】
図3は、
図2で説明した生体音信号の音量を均一化した均一化信号を示す。この均一化処理により、生体音信号に含まれる雑音に基づく信号は、均一化処理のない場合と比較して信号レベルが相対的に小さくなる。一方検出目的の生体音に基づく信号は、均一化処理のない場合と比較して信号レベルが相対的に大きくなる。このように均一化処理を行うことで雑音の影響を小さくしている。なお均一化処理は、周知の方法を採用することができる。
【0028】
音量制御部21から出力された均一化信号は、類似度算出部22に入力する。この類似度算出部22には、リファレンス信号も入力する。リファレンス信号は、予め用意された検出目的の生体音に相当する信号で雑音を含まない生体音信号となる。リファレンス信号の一例を
図4に示す。リファレンス信号は、
図6に示すように信号処理部2A内の記憶部23に記憶され、記憶部23から読み込み可能に構成したり、信号処理部2Aの外部から有線あるいは無線により類似度算出部22に入力するように構成することができる。
【0029】
均一化信号とリファレンス信号が入力した類似度算出部22は、均一化信号とリファレンス信号の相関処理と類似度の算出を行い、類似度信号を生成する(第3ステップに相当)。
図5は均一化信号とリファレンス信号との類似度の算出結果の一例を示す図で、
図2および
図3に示す検出時間より長く検出を行い、類似度を算出した結果を示している。なお、相関処理と類似度の算出は、周知の方法を採用することができる。
【0030】
類似度算出部22から出力された類似度信号は、判定部24に入力する。判定部24では、入力した類似度信号から検出目的の生体音の生体音信号か否かを判定して判定信号を生成する(第4ステップに相当)。判定方法は、例えば予め設定した閾値以上の類似度の信号を検出目的の生体音信号と判定し、閾値に達しない類似度の信号を雑音と判定する。
図5に示す例では、類似度0.4を閾値とした場合を示している。あるいはさらに、一定割合で雑音と判定された信号が発生している時間において検出目的の生体音信号と判定された信号がある場合には、検出目的の生体音信号とは判断しない等の条件を付加して判定し、信頼度の高い生体音信号を得ることもできる。
【0031】
本実施形態では、判定部24から出力された判定信号は抽出部25に入力する。この抽出部25には生体音信号も入力する。この生体音信号は、検出部1から出力された信号とし、雑音を含む信号となる。
【0032】
判定信号と生体音信号が入力した抽出部25は、入力した生体音信号のうち判定信号により検出目的の生体音と判定された信号のみを抽出する(第5ステップに相当)。このように所望の生体音のみを抽出することで雑音を除去することが可能となり、生体音信号の有無、生体音信号の周波数等について、より正確な情報を得ることが可能となる。さらに雑音のない生体音信号から、被験者の状態の推測等についても、より正確に行うことが可能となる。
【0033】
なお信号処理による遅延のために、抽出部25に入力する判定信号が形成された生体音信号と、検出部1から抽出部25に直接入力する生体音信号とが一致しない場合には、抽出部25に入力する生体音信号を一旦記憶し、所望のタイミングで雑音のない生体音信号の抽出を行うようにすればよい。あるいは生体音信号を抽出部25に直接入力する代わりに、音量制御部21に入力した生体音信号が、音量制御部21から出力される均一化信号とともに出力され、同様に類似度算出部22に入力した生体音信号が、類似度算出部22から出力される類似度信号とともに出力され、判定部24に入力した生体音信号が、判定部24から出力される判定信号とともに出力する構成とすると、抽出部25に入力する生体音信号は判定信号が形成された生体音信号と一致することになる。
【0034】
このように本実施形態の生体音信号処理装置および生体音信号処理方法においても、抽出された生体音信号を利用して種々の検出が可能となる。
【0035】
次に本発明の実施例について説明する。
【実施例0036】
本発明の第1の実施例として、第1の実施形態で説明した判定部24の判定信号を用いて被験者の状態を推測する場合について説明する。以下、
図1を用いて本発明の第1の実施例について説明する。
【0037】
例えば、腸蠕動運動に伴う生体音を検出することで、腸閉そく等の病気の診断や、寝たきりの被験者の体調管理を行うことができる。このような場合、生体音の発生のみを検知すればよい。
【0038】
そこで、ウェアラブルデバイスを被験者に装着させる。被験者の生体音は、検出部1を構成するウェアラブルデバイスのマイクロフォンにより生体音信号に変換される。この生体音信号は、検出部1に備えられた出力回路等により、有線あるいは無線により信号処理部2へ出力される。信号処理部2は一般的な信号処理装置で構成することができる。検出部1から出力される生体音信号は、検出目的の腸蠕動運動に伴う生体音に基づく信号だけでなく、被験者の着衣の擦れ音、環境音などの雑音が含まれる。
【0039】
信号処理部2内では、音量制御部21に生体音信号が入力し、音量の均一化処理が行われる。その結果、均一化信号が生成される。
【0040】
音量制御部21から出力された均一化信号は、類似度算出部22に入力する。この類似度算出部22には、記憶部23に予め記憶された腸蠕動運動に伴う生体音に相当するリファレンス信号も入力する。
【0041】
均一化信号とリファレンス信号が入力した類似度算出部22は、均一化信号とリファレンス信号の相関処理と類似度の算出を行う。その結果、類似度信号が生成される。
【0042】
類似度算出部22から出力された類似度信号は、判定部24に入力する。この判定部24で、入力した類似度信号から予め設定した閾値以上の類似度の場合に、その信号を検出目的の生体音の生体音信号であると判定する。例えば、
図5に示す類似度信号を示す例において、類似度0.4以上の場合に検出目的の腸蠕動運動に伴う生体音の生体音信号であると判定すると、閾値を超える生体音信号をいくつか検知できることがわかる。また、雑音が発生している時間に検出目的の生体音信号を判定された信号は除く等の条件を付加してもよい。
【0043】
判定結果は別途設けられた管理装置あるいは表示装置に送信されるように構成すると、被験者の状態を離れた場所で知ることが可能となる。
【0044】
このように腸蠕動運動に伴う生体音の生体音信号が検出することで、被験者の腸蠕動能力が判定できる。またウェアラブルデバイスにより生体音の検出は長時間の検出が可能なため、食事を摂取した時間と生体音信号の検出時間とを関連づけて、被験者の健康状態を判断することが可能となる。またその他の実施例として、乳幼児の腸音を検出することで乳幼児の感情的な状態を推定することも可能となる。
例えば、雑音のない生体音信号を抽出することで、電子聴診器の信号処理装置として利用することができる。本実施例についても被聴診者の腸蠕動運動に伴う生体音を検出する場合について説明する。
被聴診者の生体音は、検出部1を構成する電子聴診器のチェストピースのマイクロフォンにより生体音信号に変換される。この生体音信号は、検出部1に備えられた出力回路等により信号処理部2へ出力される。検出部1から出力される生体音信号は、検出目的の腸蠕動運動に伴う生体音に基づく信号だけでなく、チェストピースのタッチノイズや、聴診者の着衣の擦れ音、環境音などの雑音が含まれる。
音量制御部21から出力された均一化信号は、類似度算出部22に入力する。この類似度算出部22、記憶部23にあらかじめ記憶された腸蠕動運動に伴う生体音に相当するリファレンス信号も入力する。
判定部24から出力された判定信号は、抽出部25に入力する。この抽出25には生体音信号も入力する。この生体音信号は、検出部1から出力された信号とし、雑音を含む信号となる。
判定信号と生体音信号が入力した抽出部25は、入力した生体音信号のうち判定信号により検出目的の生体音と判定された信号のみを抽出する。この抽出された信号は、雑音を含まないあるいは雑音の少ない被聴診者の腸蠕動運動に伴う生体音信号となる。
抽出部25で抽出された生体音信号は、通常の電子聴診器同様、イヤーピースに出力され、聴診者が聴診可能となる。あるいは抽出された生体音信号を有線あるいは無線によりスピーカー等聴覚的に認識することができる装置に送信してもよい。
以上、本発明について説明したが、本発明は上記実施例等に限定されない。例えば、検出目的の生体音は、腸蠕動運動に伴う生体音に限らず、心拍、呼吸音等の生体音であっても良い。