(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050931
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】摩擦部材およびこれを用いた摩擦部材センサシステム
(51)【国際特許分類】
F16D 66/02 20060101AFI20230404BHJP
【FI】
F16D66/02 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021161302
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】309014573
【氏名又は名称】日清紡ブレーキ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004374
【氏名又は名称】日清紡ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177493
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 修
(72)【発明者】
【氏名】矢田 智春
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 征幸
(72)【発明者】
【氏名】藤原 宗
(72)【発明者】
【氏名】砂川 祐介
(72)【発明者】
【氏名】藤井 大樹
(72)【発明者】
【氏名】藤木 憲夫
【テーマコード(参考)】
3J058
【Fターム(参考)】
3J058AA43
3J058AA53
3J058AA73
3J058BA70
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3J058GA37
3J058GA38
3J058GA55
3J058GA92
(57)【要約】 (修正有)
【課題】摩擦部材の交換が必要な状態に達する前から連続的に、かつ正確に摩擦材の摩耗を検出することができる摩擦部材とこれを用いた摩擦部材センサシステムを提供する。
【解決手段】摩擦部材1(A1)の摩擦材2を、第1の摩擦材組成物からなる領域(第1の領域2a)と、第1の摩擦材組成物又は別の摩擦材組成物に導電性材料が添加された第2の摩擦材組成物からなり、高い電気伝導率を有する領域(第2の領域2b)とで構成する。摩擦部材センサシステム(10A)は、摩擦材2の第2の領域2bに流れる電流を摩耗検出部5で測定し、摩擦材2の摩耗状態を検出する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の相手部材と接触する摩擦材を備えた摩擦部材において、
前記摩擦材は、第1の摩擦材組成物からなる第1の領域と、前記第1の摩擦材組成物又は別の摩擦材組成物に導電性材料が添加され前記第1の摩擦材組成物と同等の性能を有する第2の摩擦材組成物からなり、前記第1の領域より高い電気伝導率を有し、前記第1の領域の摩耗とともに摩耗することで抵抗値が変化する第2の領域を備え、少なくとも前記第2の領域の一方の面は、前記相手部材に接触可能となるように露出していることを特徴とする摩擦部材。
【請求項2】
請求項1記載の摩擦部材において、
前記第2の領域は、前記摩擦材の厚さ方向における断面積が変化していることを特徴とする摩擦部材。
【請求項3】
請求項1記載の摩擦部材において、
前記第2の領域は、前記摩擦材の厚さ方向における前記導電性材料の添加量が変化していることを特徴とする摩擦部材。
【請求項4】
導電性の相手部材と、前記相手部材と接触する摩擦材を前記相手部材と接触可能に配置した摩擦部材とを含む摩擦部材センサシステムにおいて、
前記摩擦材は、第1の摩擦材組成物からなる第1の領域と、前記第1の摩擦材組成物又は別の摩擦材組成物に導電性材料が添加され前記第1の摩擦材組成物と同等の性能を有する第2の摩擦材組成物からなり、前記第1の領域より高い電気伝導率を有し、前記第1の領域の摩耗とともに摩耗することで抵抗値が変化する第2の領域を備え、少なくとも前記第2の領域の一方の面は、前記相手部材に接触可能となるように露出し、
露出する前記第2の領域の一方の面と前記相手部材とを接触させ、前記第2の領域に流れる電流値又は前記電流値から算出される抵抗値、あるいは前記電流値又は前記抵抗値の変化から、前記摩擦材の摩耗を検出する摩耗検出部を備えていることを特徴とする摩擦部材センサシステム。
【請求項5】
請求項4記載の摩擦部材センサシステムにおいて、
前記相手部材は、前記第2の領域に流れる電流値の測定経路の一部となることを特徴とする摩擦部材センサシステム。
【請求項6】
請求項5記載の摩擦部材センサシステムにおいて、
少なくとも2つの前記第2の領域を備え、
それぞれの前記第2の領域の一方の面と前記相手部材とを接触させ、少なくとも2つの前記第2の領域を前記相手部材を介して直列に接続し、一方の前記第2の領域、前記相手部材、他方の前記第2の領域に流れる電流値又は前記電流値から算出される抵抗値、あるいは前記電流値又は前記抵抗値の変化から、前記摩耗検出部により前記摩擦材の摩耗を検出することを特徴とする摩擦部材センサシステム。
【請求項7】
請求項4乃至請求項6いずれか記載の摩擦部材センサシステムにおいて、
前記第2の領域は、前記摩擦材の厚さ方向における断面積が変化していることを特徴とする摩擦部材センサシステム。
【請求項8】
請求項4乃至請求項6いずれか記載の摩擦部材センサシステムにおいて、
前記第2の領域は、前記摩擦材の厚さ方向における前記導電性材料の添加量が変化していることを特徴とする摩擦部材センサシステム。
【請求項9】
請求項4乃至請求項8いずれか記載の摩擦部材センサシステムにおいて、
前記摩耗検出部により検知された前記摩擦材の摩耗の検知結果から、前記摩擦材の摩耗状態に関する摩耗情報信号を生成することを特徴とする摩擦部材センサシステム。
【請求項10】
請求項9記載の摩擦部材センサシステムにおいて、
前記摩耗情報信号は、前記摩擦部材の交換を必要とする摩耗状態に達する前の前記摩擦材の摩耗状態を示す情報を含んでいることを特徴とする摩擦部材センサシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や鉄道、産業機械等のブレーキ装置に使用される摩擦部材およびこれを用いた摩擦部材センサシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車や鉄道、産業機械等のブレーキ装置としてディスクブレーキ装置やドラムブレーキ装置が使用されている。
【0003】
ディスクブレーキ装置は、摩擦部材として支持部材(バックプレート)に摩擦材を張り付けたブレーキパッドと、相手部材としてディスクロータを備えるブレーキ装置であり、車輪等と一体的に回転するディスクロータの両側に設けた一対のブレーキパッドをディスクロータ側にそれぞれ押圧して車輪等を制動するものである。
【0004】
またドラムブレーキ装置は、摩擦部材として支持部材(シューリム)に摩擦材を張り付けたブレーキシューと、相手部材としてブレーキドラムを備えるブレーキ装置であり、車輪等と一体的に回転するブレーキドラムの内側に設けた一対のブレーキシューをブレーキドラム側にそれぞれ押圧して車輪等を制動するものである。
【0005】
このような摩擦部材には摩擦材の摩耗状態を検出する摩擦部材センサが装着されることがあり、可聴式や電気式の摩擦部材センサが知られている。可聴式の摩擦部材センサは、摩擦材が摩耗して薄くなると摩擦部材に取り付けられた金具が相手部材と接触して音が発生することにより、摩擦材の摩耗を検知する構成となっている(例えば、特許文献1)。また電気式の摩擦部材センサは、摩擦材が摩耗して薄くなると摩擦材に埋め込まれた電線が露出しディスクロータ等に接触して断線することにより、摩擦材の摩耗を検知する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の摩擦部材センサは、相手部材に金具が接触することで発生する音や、摩擦材に埋め込まれた電線の断線により、摩擦部材の交換が必要なほど摩擦材が薄くなったことを検出する構成となっていた。そのため、摩擦材が所定の薄さに達しないと摩耗を検出することができなかった。
【0008】
本発明は、摩擦材の摩耗を検出するにあたり、摩擦部材の交換が必要な状態に達する前から連続的に、かつ正確に摩擦材の摩耗を検出することができる摩擦部材とこれを用いた摩擦部材センサシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため本願請求項1に係る発明は、導電性の相手部材と接触する摩擦材を備えた摩擦部材において、前記摩擦材は、第1の摩擦材組成物からなる第1の領域と、前記第1の摩擦材組成物又は別の摩擦材組成物に導電性材料が添加され前記第1の摩擦材組成物と同等の性能を有する第2の摩擦材組成物からなり、前記第1の領域より高い電気伝導率を有し、前記第1の領域の摩耗とともに摩耗することで抵抗値が変化する第2の領域を備え、少なくとも前記第2の領域の一方の面は、前記相手部材に接触可能となるように露出していることを特徴とする。
【0010】
本願請求項2に係る発明は、請求項1記載の摩擦部材において、前記第2の領域は、前記摩擦材の厚さ方向における断面積が変化していることを特徴とする。
【0011】
本願請求項3に係る発明は、請求項1記載の摩擦部材において、前記第2の領域は、前記摩擦材の厚さ方向における前記導電性材料の添加量が変化していることを特徴とする。
【0012】
本願請求項4に係る発明は、導電性の相手部材と、前記相手部材と接触する摩擦材を前記相手部材と接触可能に配置した摩擦部材とを含む摩擦部材センサシステムにおいて、前記摩擦材は、第1の摩擦材組成物からなる第1の領域と、前記第1の摩擦材組成物又は別の摩擦材組成物に導電性材料が添加され前記第1の摩擦材組成物と同等の性能を有する第2の摩擦材組成物からなり、前記第1の領域より高い電気伝導率を有し、前記第1の領域の摩耗とともに摩耗することで抵抗値が変化する第2の領域を備え、少なくとも前記第2の領域の一方の面は、前記相手部材に接触可能となるように露出し、露出する前記第2の領域の一方の面と前記相手部材とを接触させ、前記第2の領域に流れる電流値又は前記電流値から算出される抵抗値、あるいは前記電流値又は前記抵抗値の変化から、前記摩擦材の摩耗を検出する摩耗検出部を備えていることを特徴とする。
【0013】
本願請求項5に係る発明は、請求項4記載の摩擦部材センサシステムにおいて、前記相手部材は、前記第2の領域に流れる電流値の測定経路の一部となることを特徴とする。
【0014】
本願請求項6に係る発明は、請求項5記載の摩擦部材センサシステムにおいて、少なくとも2つの前記第2の領域を備え、それぞれの前記第2の領域の一方の面と前記相手部材とを接触させ、少なくとも2つの前記第2の領域を前記相手部材を介して直列に接続し、一方の前記第2の領域、前記相手部材、他方の前記第2の領域に流れる電流値又は前記電流値から算出される抵抗値、あるいは前記電流値又は前記抵抗値の変化から、前記摩耗検出部により前記摩擦材の摩耗を検出することを特徴とする。
【0015】
本願請求項7に係る発明は、請求項4乃至請求項6いずれか記載の摩擦部材センサシステムにおいて、前記第2の領域は、前記摩擦材の厚さ方向における断面積が変化していることを特徴とする。
【0016】
本願請求項8に係る発明は、請求項4乃至請求項6いずれか記載の摩擦部材センサシステムにおいて、前記第2の領域は、前記摩擦材の厚さ方向における前記導電性材料の添加量が変化していることを特徴とする。
【0017】
本願請求項9に係る発明は、請求項4乃至請求項8いずれか記載の摩擦部材センサシステムにおいて、前記摩耗検出部により検知された前記摩擦材の摩耗の検知結果から、前記摩擦材の摩耗状態に関する摩耗情報信号を生成することを特徴とする。
【0018】
本願請求項10に係る発明は、請求項9記載の摩擦部材センサシステムにおいて、前記摩耗情報信号は、前記摩擦部材の交換を必要とする摩耗状態に達する前の前記摩擦材の摩耗状態を示す情報を含んでいることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、摩擦部材の交換が必要な摩耗状態に達する前に摩擦材の摩耗状態を正確に検出することができる。また、摩擦部材が不均一に摩耗した場合であっても摩擦材の摩耗状態を正確に検出することができる。
【0020】
本発明によれば、摩擦材の摩耗状態を検知するために利用される第2の領域は、摩擦材を構成する第1の摩擦材組成物又は別の摩擦材組成物に導電性材料が添加され第1の摩擦材組成物と同等の性能を有する第2の摩擦材組成物からなる領域となっているため、第2の領域の摩擦材としての性能は第1の領域の性能と同等となり、摩擦材としての性能を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の摩擦部材の第1の実施形態の説明図である。
【
図2】本発明の摩擦部材の第2の実施形態の説明図である。
【
図3】本発明の摩擦部材の第3の実施形態の説明図である。
【
図4】本発明の摩擦部材センサシステムの第1の実施形態の説明図である。
【
図5】本発明の摩擦部材センサシステムの第2の実施形態の説明図である。
【
図6】本発明の摩擦部材センサシステムの第3の実施形態の説明図である。
【
図7】本発明の摩擦部材センサシステムの第4の実施形態の説明図である。
【
図8】本発明の摩擦部材センサシステムの第5の実施形態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の摩擦部材およびこれを用いた摩擦部材センサシステムは、摩擦部材を構成する摩擦材として、摩擦材を構成する第1の摩擦材組成物又は別の摩擦材組成物に導電性材料が添加され第1の摩擦材組成物と同等の性能を有する第2の摩擦材組成物からなる電気伝導率の高い領域(第2の領域)を備えた構成としている。摩擦材が摩耗すると第2の領域が摩耗し、この第2の領域に流れる電流値等が変化し、摩擦材の摩耗状態を検出することが可能となる。以下、本発明の摩擦部材およびこれを用いて摩擦部材センサシステムについて説明する。
【0023】
まず、本発明の摩擦部材について説明する。
【0024】
(摩擦部材の第1の実施形態)
図1は本発明の摩擦部材の第1の実施形態の説明図である。本実施形態の摩擦部材1Aは、一般的な摩擦部材(ブレーキパッド)同様、摩擦材2の裏面が支持部材3(バックプレート)に接着しており、摩擦材2の表面がディスクロータ等に押圧されることで、車輪等の制動が行われる。
【0025】
摩擦材2は、一般的な原料で構成されている。具体的には、例えばフェノール樹脂等の結合材、アラミドパルプ等の繊維基材、黒鉛や二硫化モリブデン等の潤滑材、酸化ジルコニウムやケイ酸ジルコニウム等の無機摩擦調整材、カシューダスト等の有機摩擦調整材、硫化バリウム等の充填材等を含む摩擦材組成物によって構成されている。
【0026】
また摩擦材2は、上述の原料を含む第1の摩擦材組成物からなる第1の領域2aの一部に、導電性材料が添加された第2の摩擦材組成物からなる第2の領域2bを備えている。
図1に示す摩擦部材1Aは、第2の領域2bの形状が円柱状で、摩擦材2の厚さ方向が円柱の高さとなるように配置されている。また摩擦材2の摩耗する表面に第2の領域2bが露出している。なお
図1では、摩擦材2の裏面の第2の領域2bが露出するように図示しているが、この露出する第2の領域2bの裏面は、後述する摩擦部材センサシステムにおいて第2の領域2bの電流値を測定するための電極が配置される領域となる。この第2の領域に電極を形成することができれば、
図1に示すように支持部材3の一部を除去して第2の領域2bを露出させる必要はない。
【0027】
第2の領域2bに添加される導電性材料は、第1の領域2aを構成する摩擦材組成物に添加しても、第1の領域2aと第2の領域2bの線膨張率、摩擦係数など摩擦材として同等の性能となる原料から選択されるのが好ましい。具体的には、一般的な原料を用いる場合、天然鱗片状黒鉛を添加することで、第2の領域2bを形成することが可能となる。なお、第1の領域2aを構成する摩擦材組成物と、第2の領域2bを構成する摩擦材組成物は必ずしも同一である必要はなく、第1の領域2aと第2の領域2bが摩擦材として要求される性能が同等となる原料を適宜選択すればよい。
【0028】
第2の領域2bに添加される導電性材料の量は、第2の領域2bに所望の電流が流れ、その電流値が摩擦材2の摩耗とともに変化し、本来の摩擦材として性能を維持できる範囲で設定すればよい。所望の電流値とするため、同時に第2の領域2bの径や高さ等を変更してもよい。
【0029】
図1に示す摩擦部材1Aでは、摩擦材2が摩耗すると円柱状の第2の領域2bの高さが低くなる。そこで、後述する摩擦部材センサシステムにおいて第2の領域2bの両端に所望の電極を接触させ、あるいは第2の領域2bの配置を種々変更し、第2の領域2bに流れる電流等から摩擦材2の摩耗を検出することが可能となる。詳細は後述する。
【0030】
(摩擦部材の第2の実施形態)
次に本発明の摩擦部材の第2の実施形態について説明する。
図2は本発明の摩擦部材の第2の実施形態の説明図である。上述の第1の実施形態で説明した摩擦部材1Aと比較して本実施形態の摩擦部材1B、1Cは、第2の領域2bの形状が相違している。すなわち第2の領域2bの形状を円錐台状とし、摩擦材2の厚さ方向における断面積が変化した形状としている。
図2(a)に示す摩擦部材1Bの第2の領域2bの形状は、ディスクロータ等に押圧される摩擦材2の表面に露出する第2の領域2bの面積が、裏面側の面積より小さい。一方
図2(b)に示す摩擦部材1Cの第2の領域2bの形状は、ディスクロータ等に押圧される摩擦材2の表面に露出する第2の領域2bの面積が、裏面側の面積より大きい。
【0031】
図2(a)に示す構造の摩擦部材1Bでは、上述の摩擦部材1Aと比較して摩擦材2が摩耗するに従い、第2の領域2bに流れる電流の変化が大きくなる。すなわち、摩擦材2が厚い状態から所定の一定厚さだけ摩耗した際に生じる電流値の変化と、摩擦材2の摩耗が進み薄くなった状態から所定の一定厚さだけ摩耗した際に生じる電流値の変化とを比較すると、後者の変化が大きくなる。そこで摩擦部材1Bを用いて摩擦部材センサシステムを構成した場合、電流値の絶対値の検出に加えて、あるいはそれに代えて変化量からも摩擦材2の摩耗を検出することが可能となる。特に摩擦部材1Bの交換の準備が必要な変化量の閾値を設定しておけば、電流等を検知する際に電流値の絶対値に誤差が生じたとしても、確実に検出が可能となる。
【0032】
同様に
図2(b)に示す構造の摩擦部材1Cでは、上述の摩擦部材1Aと比較して摩擦材2が摩耗するに従い、第2の領域2bに流れる電流の変化が小さくなる。すなわち、摩擦材2が厚い状態から所定の一定厚さだけ摩耗した際に生じる電流値の変化と、摩擦材2の摩耗が進み薄くなった状態から所定の一定厚さだけ摩耗した際に生じる電流の変化値の変化とを比較すると、後者の変化が小さくなる。そこで摩擦部材1Cを用いて摩擦部材センサシステムを構成した場合、電流値の絶対値の検出に加えて、あるいはそれに代えて変化量からも摩擦材2の摩耗を検出することが可能となる。特に本実施形態によれば、車両使用初期におけるシステム不良による異常摩耗の検出が可能となる。
【0033】
本実施形態の摩擦部材1B、1Cは、第2の領域2bの形状を除けば、上述の第1の実施形態で説明した摩擦部材1Aと同様であるので、本実施形態の摩擦部材1B、1Cでも、後述する摩擦部材センサシステムにおいて第2の領域2bの両端に所望の電極を接触させ、あるいは第2の領域2bの配置を種々変更し、第2の領域2bに流れる電流等から摩擦材2の摩耗を検出することが可能となる。
【0034】
(摩擦部材の第3の実施形態)
次に本発明の摩擦部材の第3の実施形態について説明する。
図3は本発明の摩擦部材の第3の実施形態の説明図である。上述の第1の実施形態で説明した摩擦部材1Aと比較して本実施形態の摩擦部材1Dは、第2の領域2bの厚さ方向における導電性材料の添加量が相違している。例えば、
図3に示す摩擦部材1Dの第2の領域2bは円柱状の領域が厚さ方向に複数の領域(
図3では3つの領域)に分かれており、ディスクロータ等に押圧される摩擦材2の表面側から、裏面側に向かって表面側ほど導電性材料の添加量が少なく、あるいは表面側ほど導電性材料の添加量が多い。
【0035】
第2の領域2bに添加される導電性材料は、第1の領域2aを構成する摩擦材組成物に添加しても、第1の領域2aと第2の領域2bの線膨張率、摩擦係数など摩擦材として同等の性能を有する原料および添加量から選択されるのが好ましい。具体的には、一般的な原料を用いた場合、天然鱗片状黒鉛を添加することで、第2の領域2bを形成することが可能である。なお、第1の領域2aを構成する摩擦材組成物と、第2の領域2bを構成する摩擦材組成物は、必ずしも同一である必要はなく、第1の領域2aと第2の領域2bが摩擦部材として要求される性能と同等となる原料を適宜選択すればよい。
【0036】
また第2の領域2bに添加する導電性材料の添加量を厚さ方向において変化させることで、第2の領域2bの厚さ方向における抵抗値を変化させることができる。この場合も、第2の領域2bに所望の電流が流れ、その電流値が摩擦材2の摩耗とともに変化し、本来の摩擦材として要求される性能と同等の性能を維持できる範囲で添加量等を設定すればよい。
【0037】
図3に示す構造の摩擦部材1Dにおいて、例えば、ディスクロータ等に押圧される摩擦材2の表面側ほど導電性材料の添加量を少なくした場合であって、3つの領域の各領域内では均一に導電性材料が添加されている場合、摩擦材2が摩耗するに従い、第1の実施形態で説明した摩擦材2と比較して、第2の領域2bに流れる電流の変化が変わり、かつ電流の変化が大きくなる。すなわち、摩擦材2が厚い状態から所定の一定厚さだけ摩耗した際に生じる電流値の変化と、摩擦材2の摩耗が進み薄くなった状態から所定の一定厚さだけ摩耗した際に生じる電流値の変化とを比較すると、後者の変化が大きくなる。そこで、所定の厚さに達すると大きく変化する電流値の絶対値の検出から摩擦材2の摩耗を検出することが可能となる。特に摩擦部材1Dの交換の準備が必要な厚さに達した際に大きな電流値の変化が生じるように設定しておけば、電流値を検知する際に誤差が生じたとしても、確実に検知が可能となる。
【0038】
同様にディスクロータ等に押圧される摩擦材2の表面側ほど導電性材料の添加量を多くした場合であって、3つの領域の各領域内では均一に導電性材料が添加されている場合、摩擦材2が摩耗するに従い、第1の実施形態で説明した摩擦材2と比較して、第2の領域2bに流れる電流の変化が変わり、かつ電流の変化が小さくなる。すなわち、摩擦材2が厚い状態から所定の一定厚さだけ摩耗した際に生じる電流値の変化と、摩擦材2の摩耗が進み薄くなった状態から所定の一定厚さだけ摩耗した際に生じる電流値の変化とを比較すると、後者の変化が小さくなる。そこで、所定の厚さに達すると変化が小さくなる電流値の絶対値の検出に加えて、あるいはそれに代えて変化量から摩擦材2の摩耗を検出することが可能となる。また、摩擦材が厚い状態における電流の変化が大きく、厚さの変化を確実に検出することができ、車両使用初期におけるシステム不良による異常摩耗の検出や交換時期の予測が容易となる。
【0039】
本実施形態の摩擦部材1Dは、第2の領域2bの導電性材料の添加量の変化を除けば、上述の第1の実施形態で説明した摩擦部材1Aと同様であるので、本実施形態の摩擦部材1Dでも、後述する摩擦部材センサシステムにおいて第2の領域2bの両端に所望の電極を接触させ、あるいは第2の領域2bの配置を種々変更し、第2の領域2bに流れる電流等から摩擦材2の摩耗を検出することが可能となる。
【0040】
また本実施形態の摩擦部材1Dは、上述の第2の実施形態で説明した摩擦部材1B、1Cについても適用可能である。この場合も、後述する摩擦部材センサシステムにおいて第2の領域2bの両端に所望の電極を接触させ、あるいは第2の領域2bの配置を種々変更し、第2の領域2bに流れる電流等から摩擦材2の摩耗を検出することが可能となる。
【0041】
導電性材料の添加量を変化させる方法は、それぞれの領域における導電性材料の添加量について、各領域内で均一に添加されている場合に限らず、導電性材料の添加量を徐々に変化させ添加してもよい。またこれらを組み合わることも可能である。
【0042】
次に、本発明の摩擦部材センサシステムについて説明する。
【0043】
(摩擦部材センサシステムの第1の実施形態)
図4は本発明の摩擦部材センサシステムの第1の実施形態の説明図である。本実施形態の摩擦部材センサシステム10Aは、
図1に示す摩擦部材1Aを備えた摩擦部材センサシステムであり、本実施形態の摩擦部材センサシステムをディスクブレーキ装置に適用した例を示している。
【0044】
図4に示すように、例えば車輪等と一体となって回転するディスクロータ4(相手部材に相当)を、一対の摩擦部材1(A1)、1(A2)で押圧することで、車輪等を制動する。各摩擦部材は、ディスクロータ4に接触する摩擦材2とこの摩擦材2を張り付けた支持部材3(バックプレート)とで構成されている。摩擦部材1(A1)は、上述の摩擦部材の第1の実施形態で説明した摩擦部材1Aに相当する。摩擦部材1(A2)は、摩擦部材1(A1)の摩擦材2の第2の領域2bを備えない構造で、摩擦部材1Aの第1の領域を構成する摩擦材組成物のみにより全体が構成されている。
【0045】
一般的なブレーキ装置では、摩擦材2がディスクロータ4を押圧することで車輪等を制動するため、押圧を繰り返すと摩擦材2の表面が摩耗し、摩擦部材1(A1)、1(A2)を交換する必要がある。そこで本実施形態の摩擦部材センサシステム10Aでは、摩擦材2の摩耗を検出するため、摩擦材2の第2の領域2bに電流を流し、その電流値から摩耗検出部5で摩擦材2の摩耗を検出する構成としている。
【0046】
摩擦材2の第2の領域2bに流れる電流を測定するため、第2の領域2bに接続する電極が必要となる。そこで
図4に示すように、摩擦部材1(A1)の摩擦材2の支持部材3側の面に第2の領域2bに達する銅線6と引き出し用の電極7により一方の電極が形成されている。摩擦材2の反対面は摩耗が生じる面となるので、露出する第2の領域2bの表面にディスクロータ4を接触させる。このように構成するとディスクロータ4は、第2の領域2bに接続する電極として機能するとともに、摩耗検出部5との測定経路の一部としても機能することになる。
【0047】
ディスクロータ4は、例えばFC150~FC250のネズミ鋳鉄等の導電性材料で構成すればよい。
【0048】
本実施形態の摩擦部材センサシステム10Aは、次のように摩擦材2の摩耗を検出する。
図4に示すようにディスクロータ4と電極7とを一対の電極として、この一対の電極で挟み込まれた摩擦材2の第2の領域2bを流れる電流値を摩耗検出部5で測定する。
【0049】
この電流値の測定は、ディスクロータ4が静止している(車両等が動いていない)状態で、予め設定した一定の圧力で摩擦部材1(A1)をディスクロータ4に押圧することで正確に測定することができる。このような制御は、ブレーキ装置を備える車両等の図示しない制御部により行うことができる。
【0050】
またこの電流値の測定は、ディスクロータ4が動いている(車両等が動いている)状態で予め設定した一定圧力で摩擦部材1(A1)をディスクロータ4に押圧することでも行うことができる。このような制御も、ブレーキ装置を備える車両等の図示しない制御部により行うことができる。
【0051】
摩耗検出部5には、電極7とディスクロータ4を電極として用いて測定した電流が入力し、この電流値に基づき、摩耗情報信号S1を生成して出力する。摩耗検出部5に所定の電流値あるいはこの電流値から算出される抵抗値と、摩擦材2の厚さとの関係を記憶しておけば、入力する電流値あるいは抵抗値に基づき、摩擦材2の厚さを算出することもできる。出力される摩耗情報信号S1は、摩擦材2の摩耗状態を示す信号であれば、摩擦材2の厚さを示す信号に限定されない。例えば、摩擦材2の厚さが十分厚く、摩擦部材1(A1)、1(A2)の交換まで余裕がある状態、摩擦部材1(A1)、1(A2)の交換は必要ないが交換の準備をするのが好ましい状態、摩擦材2の厚さが薄く、摩擦部材1(A1)、1(A2)の交換が必要な状態のように、厚さのレベルを表示する信号としたり、摩耗のない状態と比較した厚さの割合(%)を表示するための信号等とすることができる。
【0052】
摩耗情報信号S1は、図示しない報知部に出力し、運転者や管理者が摩耗状態を認知可能とすればよい。たとえば、摩擦部材1(A1)、1(A2)の交換まで十分余裕がある状態では青色が、交換の準備が必要な状態では黄色が、交換が必要な状態では赤色が、それぞれ表示されるようにすればよい。あるいは、摩耗のない状態と比較した厚さの割合(%)を文字で表示したり、さらに色の表示、点滅等の表示方法の変更、警告音等の音等、種々組み合わせて報知するための信号とすることができる。このように本実施形態の摩擦部材センサシステムは、摩擦部材の交換が必要な状態に達する前に摩耗状態を認知可能とすることができ好ましい。
【0053】
ところで、ブレーキ装置による制動を繰り返すと摩擦材2の温度は上昇する。そのため摩擦材2の温度の変化に応じて測定される電流値を補正するのが好ましい。そこで、摩擦材2の近傍に温度センサを配置して、温度変化に伴い補正した電流値等から摩耗状態を検出するのが好ましい。
【0054】
(摩擦部材センサシステムの第2の実施形態)
次に本発明の摩擦部材センサシステムの第2の実施形態について説明する。
図5は本発明の摩擦部材センサシステムの第2の実施形態の説明図である。上述の第1の実施形態で説明した摩擦部材センサシステム10Aと比較して本実施形態の摩擦部材センサシステム10Bは、複数の第2の領域2bを備えた摩擦部材1(B1)を備えている点が相違している。
【0055】
本実施形態の摩擦部材センサシステム10Bでは、摩擦材2の摩耗を検出するため、摩擦材2の第2の領域2b(B1)と第2の領域2b(B2)に電流を流し、その電流値から摩耗検出部5で摩擦材2の摩耗を検出する構成としている。
図5に示す摩擦材2の第2の領域2b(B1)と第2の領域2b(B2)は、それぞれ
図4に示す第2の領域2bと同じ構造としている。
【0056】
第2の領域2b(B1)と第2の領域2b(B2)に流れる電流を測定するため、これらを接続する電極が必要となる。そこで
図5に示すように、摩擦部材1(B1)の摩擦材2の支持部材3側の面の第2の領域2b(B1)に電極7(B1)を形成し、第2の領域2b(B2)に電極7(B2)を形成する。また摩耗が生じる面となる第2の領域2b(B1)の表面と第2の領域2b(B2)の表面にディスクロータ4を接触させる。このように構成するとディスクロータ4は、第2の領域2b(B1)の表面と第2の領域2b(B2)の表面とを電気的に接続し、摩擦材2の摩耗を検出するために第2の領域2b(B1)と第2の領域2b(B2)に流れる電流の測定経路の一部として機能することになる。
【0057】
本実施形態の摩擦部材センサシステム10Bは、次のように摩擦材2の摩耗を検出する。
図5に示すように電極7(B1)と電極7(B2)とを一対の電極とし、この一対の電極間に直列に接続された摩擦材2の第2の領域2b(B1)と第2の領域2b(B2)を流れる電流値を摩耗検出部5で測定する。
【0058】
この電流値の測定も、ディスクロータ4が静止している(車両が動いていない)状態で、予め設定した一定の圧力で摩擦部材1(B1)をディスクロータ4に押圧することで正確に測定することができる。このような制御は、ブレーキ装置を備える車両等の図示しない制御部により行うことができる。
【0059】
またこの電流値の測定は、ディスクロータ4が動いている(車両等が動いている)状態で予め設定した一定圧力で摩擦部材1(B1)をディスクロータ4に押圧することでも行うことができる。このような制御も、ブレーキ装置を備える車両等の図示しない制御部により行うことができる。
【0060】
摩耗検出部5には、電極7(B1)と電極7(B2)を用いて測定した電流が入力し、この電流値に基づき、摩耗情報信号S2を生成して出力する。摩耗検出部5に所定の電流値あるいはこの電流値から算出される抵抗値と、摩擦材2の厚さとの関係を記憶しておけば、入力する電流値あるいは抵抗値に基づき、摩擦材2の厚さを算出することもできる。出力される摩耗情報信号S2は、摩擦材2の摩耗状態を示す信号であれば、摩擦材2の厚さを示す信号に限定されない。例えば、摩擦材2の厚さが十分厚く、摩擦部材1(B1)、1(B2)の交換まで余裕がある状態、摩擦部材1(B1)、1(B2)の交換は必要ないが交換の準備をするのが好ましい状態、摩擦材2の厚さが薄く、摩擦部材1(B1)、1(B2)の交換が必要な状態のように、厚さのレベルを表示する信号としたり、摩耗のない状態と比較した厚さの割合(%)を表示するための信号等とすることができる。
【0061】
特に本実施形態の摩擦部材センサシステム10Bでは、摩耗量が摩擦材2の位置によって異なる場合に、平均的な摩耗量を検出することができ好ましい。また、ディスクロータ4は可動部であり、安定した電気的な接続を確保することが困難な場合があるが、本実施形態によれば、ディスクロータ4を電極として用いないため、安定した接続を確保することが可能となる。
【0062】
摩耗情報信号S2は、図示しない報知部に出力し、運転者や管理者が摩耗状態を認知可能とすればよい。たとえば、摩擦部材1(B1)、1(B2)の交換まで十分余裕がある状態では青色が、交換の準備が必要な状態では黄色が、交換が必要な状態では赤色が、それぞれ表示されるようにすればよい。あるいは、摩耗のない状態と比較した厚さの割合(%)を文字で表示したり、さらに色の表示、点滅等の表示方法の変更、警告音等の音等、種々組み合わせて報知するための信号とすることができる。このように本実施形態のセンサシステム10Bも、摩擦部材の交換が必要な状態に達する前に摩耗状態を認知可能とすることができ好ましい。
【0063】
本実施形態においても、温度変化に伴い補正した電流値等から摩耗状態を検知するのが好ましい。
【0064】
(摩擦部材センサシステムの第3の実施形態)
次に本発明の摩擦部材センサシステムの第3の実施形態について説明する。
図6は本発明の摩擦部材センサシステムの第3の実施形態の説明図である。上述の第1の実施形態で説明した摩擦部材センサシステム10Aと比較して本実施形態の摩擦部材センサシステム10Cは、摩擦部材1(A1)に相当する摩擦部材1(C1)と、摩擦部材1(C2)を備えている点で相違している。
【0065】
本実施形態の摩擦部材センサシステム10Cでは、一対の摩擦材2の摩耗を検知するため、摩擦部材1(C1)の摩擦材2の第2の領域2b(C1)と摩擦部材1(C2)の摩擦材2の第2の領域2b(C2)に電流を流し、その電流値から摩耗検出部5で摩擦部材1(C1)の摩擦材2の摩耗と摩擦部材1(C2)の摩擦材2の摩耗を検出する構成としている。
【0066】
摩擦部材1(C1)の摩擦材2の第2の領域2b(C1)と摩擦部材1(C2)の摩擦材2の第2の領域2b(C2)に流れる電流を測定するため、これらを接続する電極が必要となる。そこで
図6に示すように、摩擦部材1(C1)の摩擦材2の支持部材3側の面の第2の領域2b(C1)に電極7(C1)を形成し、摩擦部材1(C2)の摩擦材2の支持部材3側の面の第2の領域2b(C2)に電極7(C2)を形成する。また摩耗が生じる面となる摩擦部材1(C1)の第2の領域2b(C1)の表面と摩擦部材1(C2)の第2の領域2b(C2)の表面にディスクロータ4を接触させる。このように構成するとディスクロータ4は、第2の領域2b(C1)の表面と第2の領域2b(C2)の表面とを電気的に接続し、摩擦部材1(C1)の摩擦材2および摩擦部材1(C2)の摩擦材2の摩耗を検出するために第2の領域2b(C1)と第2の領域2b(C2)に流れる電流の測定経路の一部として機能することになる。
【0067】
本実施形態の摩擦部材センサシステム10Cは、次のように一対の摩擦材2の摩耗を検知する。
図6に示す電極7(C1)と電極7(C2)とを一対の電極とし、この一対の電極間に直列に接続された摩擦部材1(C1)の摩擦材2の第2の領域2b(C1)と摩擦部材1(C2)の摩擦材2の第2の領域2b(C2)を流れる電流を摩耗検出部5で測定する。
【0068】
この電流値の測定も、ディスクロータ4が静止している(車両が動いていない)状態で、予め設定した一定の圧力で摩擦部材1(C1)および摩擦部材1(C2)をディスクロータ4に押圧することで正確に測定することができる。このような制御は、ブレーキ装置を備える車両等の図示しない制御部により行うことができる。
【0069】
またこの電流値の測定は、ディスクロータ4が動いている(車両等が動いている)状態で予め設定した一定圧力で摩擦部材1(C1)および摩擦部材1(C2)をディスクロータ4に押圧することでも行うことができる。このような制御も、ブレーキ装置を備える車両等の図示しない制御部により行うことができる。
【0070】
摩耗検出部5には、電極7(C1)と電極7(C2)を用いて測定した電流が入力し、この電流値に基づき、摩耗情報信号S3を生成して出力する。摩耗検出部5に所定の電流値あるいはこの電流値から算出される抵抗値と、摩擦材2の厚さとの関係を記憶しておけば、入力する電流値あるいは抵抗値に基づき、摩擦材2の厚さを算出することもできる。出力される摩耗情報信号S3は、摩擦材2の摩耗状態を示す信号であれば、摩擦材2の厚さを示す信号に限定されない。例えば、摩擦材2の厚さが十分厚く、摩擦部材1(C1)、1(C2)の交換まで余裕がある状態、摩擦部材1(C1)、1(C2)の交換は必要ないが交換の準備をするのが好ましい状態、摩擦材2の厚さが薄く、摩擦部材1(C1)、1(C2)の交換が必要な状態のように、厚さのレベルを表示する信号としたり、摩耗のない状態と比較した厚さの割合(%)を表示するための信号等とすることができる。
【0071】
特に本実施形態の摩擦部材センサシステム10Cでは、一対の摩擦材2のインナー側とアウター側の平均的な摩耗量を検出することができ好ましい。また、ディスクロータ4は可動部であり、安定した電気的な接続を確保することが困難な場合があるが、本実施形態によれば、ディスクロータ4を電極として用いないため、安定した接続を確保することが可能となる。
【0072】
摩耗情報信号S3は、図示しない報知部に出力し、運転者や管理者が摩耗状態を認知可能とすればよい。たとえば、摩擦部材1(C1)、1(C2)の交換まで十分余裕がある状態では青色が、交換の準備が必要な状態では黄色が、交換が必要な状態では赤色が、それぞれ表示されるようにすればよい。あるいは、摩耗のない状態と比較した厚さの割合(%)を文字で表示したり、さらに色の表示、点滅等の表示方法の変更、警告音等の音等、種々組み合わせて報知するための信号とすることができる。このように本実施形態のセンサシステム10Cも、摩擦部材の交換が必要な状態に達する前に摩耗状態を認知可能とすることができ好ましい。
【0073】
本実施形態においても、温度変化に伴い補正した電流値等から摩耗状態を検知するのが好ましい。
【0074】
(摩擦部材センサシステムの第4の実施形態)
次に本発明の摩擦部材センサシステムの第4の実施形態について説明する。
図7は本発明の摩擦部材センサシステムの第4の実施形態の説明図である。上述の第3の実施形態で説明した摩擦部材センサシステム10Cと比較して本実施形態の摩擦部材センサシステム10Dは、配置の異なる第2の領域2b(D2)を備えた摩擦部材1(D2)を備えている点で相違している。
【0075】
本実施形態の摩擦部材センサシステム10Dでは、一対の摩擦材2の摩耗を検知するため、摩擦部材1(D1)の摩擦材2の第2の領域2b(D1)と摩擦部材1(D2)の摩擦材2の第2の領域2b(D2)に電流を流し、その電流値から摩耗検出部5で摩擦部材1(D1)の摩擦材2の摩耗と摩擦部材1(D2)の摩擦材2の摩耗を検出する構成としている。
【0076】
摩擦部材1(D1)の摩擦材2の第2の領域2b(D1)と摩擦部材1(D2)の摩擦材2の第2の領域2b(D2)に流れる電流を測定するため、これらを接続する電極が必要となる。そこで
図7に示すように、摩擦部材1(D1)の摩擦材2の支持部材3側の面の第2の領域2b(D1)に電極7(D1)を形成し、摩擦部材1(D2)の摩擦材2の支持部材3側の面の第2の領域2b(D2)に電極7(D2)を形成する。また摩耗が生じる面となる摩擦部材1(D1)の第2の領域2b(D1)の表面と摩擦部材1(D2)の第2の領域2b(D2)の表面にディスクロータ4を接触させる。このように構成するとディスクロータ4は、第2の領域2b(D1)の表面と第2の領域2b(D2)の表面とを電気的に接続し、摩擦部材1(D1)の摩擦材2の摩耗および摩擦部材1(D2)の摩擦材2の摩耗を検出するために第2の領域2b(D1)と第2の領域2b(D2)に流れる電流の測定経路の一部として機能することになる。
【0077】
本実施形態では、摩擦部材1(D1)の摩擦材2の第2の領域2b(D1)と摩擦部材1(D2)の摩擦材2の第2の領域2b(D2)は、比較的離れた位置に配置されているが、導電性のディスクロータ4を介して接続されるため、何ら問題はない。
【0078】
本実施形態の摩擦部材センサシステム10Dは、次のように一対の摩擦材2の摩耗を検知する。
図7に示す電極7(D1)と電極7(D2)とを一対の電極とし、この一対の電極間に直列に接続された摩擦部材1(D1)の摩擦材2の第2の領域2b(D1)と摩擦部材1(D2)の摩擦材2の第2の領域2b(D2)を流れる電流を摩耗検出部5で測定する。
【0079】
この電流値の測定も、ディスクロータ4が静止している(車両が動いていない)状態で、予め設定した一定の圧力で摩擦部材1(D1)および摩擦部材1(D2)をディスクロータ4に押圧することで正確に測定することができる。このような制御は、ブレーキ装置を備える車両等の図示しない制御部により行うことができる。
【0080】
またこの電流値の測定は、ディスクロータ4が動いている(車両等が動いている)状態で予め設定した一定圧力で摩擦部材1(D1)および摩擦部材1(D2)をディスクロータ4に押圧することでも行うことができる。このような制御も、ブレーキ装置を備える車両等の図示しない制御部により行うことができる。
【0081】
摩耗検出部5には、電極7(D1)と電極7(D2)を用いて測定した電流が入力し、この電流値に基づき、摩耗情報信号S4を生成して出力する。摩耗検出部5に所定の電流値あるいはこの電流値から算出される抵抗値と、摩擦材2の厚さとの関係を記憶しておけば、入力する電流値あるいは抵抗値に基づき、摩擦材2の厚さを算出することもできる。出力される摩耗情報信号S4は、摩擦材2の摩耗状態を示す信号であれば、摩擦材2の厚さを示す信号に限定されない。例えば、摩擦材2の厚さが十分厚く、摩擦部材1(D1)、1(D2)の交換まで余裕がある状態、摩擦部材1(D1)、1(D2)の交換は必要ないが交換の準備をするのが好ましい状態、摩擦材2の厚さが薄く、摩擦部材1(D1)、1(D2)の交換が必要な状態のように、厚さのレベルを表示する信号としたり、摩耗のない状態と比較した場合の厚さの割合(%)を表示するための信号等とすることができる。
【0082】
特に本実施形態の摩擦部材センサシステム10Dでは、インナー側とアウター側とで摩耗量が摩擦材2の位置によって異なる場合に、摩耗が早く進む位置に第2の領域を配置することで、摩耗が進み摩擦材2の表面に傾きが生じた場合であっても平均的な摩耗量を検出することができる。また、摩耗が早く進む位置では、摩擦材2とディスクロータ4間の接触性が高く、接触面での電気抵抗が低くなる。このため、第2の領域2b(D1)と第2の領域2b(D2)に流れる電流値を安定的に測定可能となる。
【0083】
摩耗情報信号S4は、図示しない報知部に出力し、運転者や管理者が摩耗状態を認知可能とすればよい。たとえば、摩擦部材1(D1)、1(D2)の交換まで十分余裕がある状態では青色が、交換の準備が必要な状態では黄色が、交換が必要な状態では赤色が、それぞれ表示されるようにすればよい。あるいは、摩耗のない状態と比較した厚さの割合(%)を文字で表示したり、さらに色の表示、点滅等の表示方法の変更、警告音等の音等、種々組み合わせて報知するための信号とすることができる。このように本実施形態のセンサシステム10Dも、摩擦部材の交換が必要な状態に達する前に摩耗状態を認知可能とすることができ好ましい。
【0084】
本実施形態においても、温度変化に伴い補正した電流値等から摩耗状態を検知するのが好ましい。
【0085】
(摩擦部材センサシステムの第5の実施形態)
次の本発明の摩擦部材センサシステムの第5の実施形態について説明する。
図8は本発明の摩擦部材センサシステムの第5の実施形態の説明図である。上述の第4の実施形態で説明した摩擦部材センサシステム10Dと比較して本実施形態の摩擦部材センサシステム10Eは、複数の第2の領域2bを備えた摩擦部材1(E1)、1(E2)を備えている点で相違している。
【0086】
本実施形態の摩擦部材センサシステム10Eでは、一対の摩擦材2の摩耗を検知するため、摩擦部材1(E1)の摩擦材2の第2の領域2b(E1)、第2の領域2b(E2)のいずれかあるいは両方と、摩擦部材1(E2)の摩擦材2の第2の領域2b(E3)、第2の領域2b(E4)のいずれかあるいは両方に電流を流し、その電流値から摩耗検出部5で摩擦部材1(E1)の摩擦材2の摩耗と摩擦部材1(E2)の摩擦材2の摩耗を検出する構成としている。
【0087】
摩擦部材1(E1)の摩擦材2の第2の領域2b(E1)、第2の領域2b(E2)のいずれかあるいは両方と、摩擦部材1(E2)の摩擦材2の第2の領域2b(E3)、第2の領域2b(E4)のいずれかあるいは両方に電流を流すため、これらに接続する電極必要となる。そこで
図8に示すように、摩擦部材1(E1)の摩擦材2の支持部材3側の面の第2の領域2b(E1)に接続する電極7(E1)と、第2の領域2b(E2)に接続する電極7(E2)と、摩擦部材1(E2)の摩擦材2の支持部材3側の面の第2の領域2b(E3)に接続する電極7(E3)と、第2の領域2b(E4)に接続する電極7(E4)とを備え、スイッチSW1~SW4を制御することで、電極7(E1)~7(E4)の少なくとも2つの電極を選択することができる。
【0088】
また摩耗が生じる面となる摩擦部材1(E1)の第2の領域2b(E1)の表面、第2の領域2b(E2)の表面、摩擦部材1(E2)の第2の領域2b(E3)の表面および第2の領域2b(E4)の表面にディスクロータ4を接触させる。このように構成するとディスクロータ4は、各第2の領域2b(E1)~2b(E4)の表面を電気的に接続し、摩擦部材1(E1)の摩擦材2の摩耗、摩擦部材1(E2)の摩擦材2の摩耗、あるいは摩擦部材1(E1)の摩擦材2の摩耗および摩擦部材1(E2)の摩擦材2の摩耗を検出するために、第2の領域2b(E1)~2b(E4)のうち少なくとも選択された2つの第2の領域に流れる電流の測定経路の一部として機能することになる。
【0089】
本実施形態の摩擦部材センサシステム10Eは、スイッチSW1~SW4のオンオフを制御することで、次のように摩擦材2の摩耗を検知する。
【0090】
スイッチSW1とスイッチSW2をオンし、スイッチSW3とスイッチSW4をオフすると、電極7(E1)と電極7(E2)とを一対の電極とし、この一対の電極間に直列に接続された摩擦部材1(E1)の摩擦材2の第2の領域2b(E1)と第2の領域2b(E2)に流れる電流を摩耗検出部5で測定することで、摩擦部材1(E1)の摩擦材2の摩耗を検出することができる。これは、
図5で説明した第2の実施形態と同じである。
【0091】
スイッチSW1とスイッチSW2をオフし、スイッチSW3とスイッチSW4をオンすると、電極7(E3)と電極7(E4)とを一対の電極とし、この一対の電極間に直列に接続された摩擦部材1(E2)の摩擦材2の第2の領域2b(E3)と第2の領域2b(E4)に流れる電流を摩耗検出部5で測定することで、摩擦部材1(E2)の摩擦材2の摩耗を検出することができる。
【0092】
スイッチSW1とスイッチSW4をオンし、スイッチSW2とスイッチSW3をオフすると、電極7(E1)と電極7(E3)とを一対の電極とし、この一対の電極間に直列に接続された摩擦部材1(E1)の摩擦材2の第2の領域2b(E1)と摩擦部材1(E2)の摩擦材2の第2の領域2b(E3)に流れる電流を摩耗検出部5で測定することで、摩擦部材1(E1)の摩擦材2の摩耗と摩擦部材1(E2)の摩擦材2の摩耗を検出することができる。これは、
図6で説明した第3の実施形態と同じである。
【0093】
スイッチSW1とスイッチSW4をオフし、スイッチSW2とスイッチSW3をオンすると、電極7(E2)と電極7(E4)とを一対の電極とし、この一対の電極間に直列に接続された摩擦部材1(E1)の摩擦材2の第2の領域2b(E2)と摩擦部材1(E2)の摩擦材2の第2の領域2b(E4)に流れる電流を摩耗検出部5で測定することで、摩擦部材1(E1)の摩擦材2の摩耗と摩擦部材1(E2)の摩擦材2の摩耗を検出することができる。
【0094】
スイッチSW1とスイッチSW3をオンし、スイッチSW2とスイッチSW4をオフすると、電極7(E1)と電極7(E4)とを一対の電極とし、この一対の電極間に直列に接続された摩擦部材1(E1)の摩擦材2の第2の領域2b(E1)と摩擦部材1(E2)の摩擦材2の第2の領域2b(E4)に流れる電流を摩耗検出部5で測定することで、摩擦部材1(E1)の摩擦材2の摩耗と摩擦部材1(E2)の摩擦材2の摩耗を検出することができる。これは、
図7で説明した第3の実施形態と同じである。
【0095】
スイッチSW1とスイッチSW3をオフし、スイッチSW2とスイッチSW4をオンすると、電極7(E2)と電極7(E3)とを一対の電極とし、この一対の電極間に直列に接続された摩擦部材1(E1)の摩擦材2の第2の領域2b(E2)と摩擦部材1(E2)の摩擦材2の第2の領域2b(E3)に流れる電流を摩耗検出部5で測定することで、摩擦部材1(E1)の摩擦材2の摩耗と摩擦部材1(E2)の摩擦材2の摩耗を検出することができる。
【0096】
さらにすべてのスイッチSW1~SW4をオンすると、電極7(E1)および電極7(E2)と、電極7(E3)および電極7(E4)との間に接続された、摩擦部材1(E1)の摩擦材の第2の領域2b(E1)、2b(E2)と摩擦部材1(E2)の摩擦材2の第2の領域2b(E3)、2b(E4)に流れる電流を摩耗検出部5で測定することで、摩擦部材1(E1)の摩擦材2の摩耗と摩擦部材1(E2)の摩擦材2の摩耗を検出することができる。
【0097】
以上の電流値の測定も、ディスクロータ4が静止している(車両が動いていない)状態で、予め設定した一定の圧力で摩擦部材1(E1)および摩擦部材1(E2)をディスクロータ4に押圧することで正確に測定することができる。このような制御は、ブレーキ装置を備える車両等の図示しない制御部により行うことができる。スイッチSW1~SW4のオンオフ制御もブレーキ装置を備える車両等の図示しない制御部により行うことができる。
【0098】
またこの電流値の測定は、ディスクロータ4が動いている(車両等が動いている)状態で予め設定した一定圧力で摩擦部材1(E1)および摩擦部材1(E2)をディスクロータ4に押圧することでも正確に測定することができる。このような制御も、ブレーキ装置を備える車両等の図示しない制御部により行うことができる。スイッチSW1~SW4のオンオフ制御もブレーキ装置を備える車両等の図示しない制御部により行うことができる。
【0099】
摩耗検出部5には、スイッチSW1~SW4のオンオフ制御により測定した電流が入力し、この電流値に基づき、摩耗情報信号S5を生成して出力する。摩耗検出部5に所定の電流値あるいはこの電流値から算出される抵抗値と、摩擦材2の厚さとの関係を記憶しておけば、入力する電流値あるいは抵抗値に基づき、摩擦材2の厚さを算出することもできる。出力される摩耗情報信号S5は、摩擦材2の摩耗状態を示す信号であれば、摩擦材2の厚さを示す信号に限定されない。例えば、摩擦材2の厚さが十分厚く、摩擦部材1(E1)、1(E2)の交換まで余裕がある状態、摩擦部材1(E1)、1(E2)の交換は必要ないが交換の準備をするのが好ましい状態、摩擦材2の厚さが薄く、摩擦部材1(E1)、1(E2)の交換が必要な状態のように、厚さのレベルを表示する信号としたり、摩耗のない状態と比較した場合の厚さの割合(%)を表示するための信号等とすることができる。
【0100】
特に本実施形態の摩擦部材センサシステム10Eでは、スイッチSW1~SW4のオンオフを制御することで、摩擦材2の所望の位置の摩耗を検出することができるので、摩擦量が摩擦材2の位置によって異なる場合に、そのばらつきを検出することができる。また、電流値が高くなる組み合わせを見つけることで、最も摩耗が進行している位置を特定し、その組み合わせを基準として、摩擦情報信号S5を生成することが可能となる。さらにすべてのスイッチSW1~SW4をオンとすると、一対の摩擦材2のインナー側とアウター側の異なる位置の平均的な摩耗量を検出することができ好ましい。
【0101】
なお本実施形態の摩擦部材センサシステム10Eでは、摩擦部材1(E1)、1(E2)のいずれかの摩擦材2の第2の領域2b(E1)~2b(E4)に流れる電流の測定を行う構成とすればよく、上述の説明に限定されない。また必ずしもすべての測定を行う必要はない。
【0102】
摩耗情報信号S5は、図示しない報知部に出力し、運転者や管理者が摩耗状態を認知可能とすればよい。たとえば、摩擦部材1(E1)、1(E2)の交換まで十分余裕がある状態では青色が、交換の準備が必要な状態では黄色が、交換が必要な状態では赤色が、それぞれ表示されるようにすればよい。あるいは、摩耗のない状態と比較した厚さの割合(%)を文字で表示したり、さらに色の表示、点滅等の表示方法の変更、警告音等の音等、種々組み合わせて報知するための信号とすることができる。このように本実施形態のセンサシステム10Eも、摩擦部材の交換が必要な状態に達する前に摩耗状態を認知可能とすることができ好ましい。
【0103】
本実施形態においても、温度変化に伴い補正した電流値等から摩耗状態を検知するのが好ましい。
【0104】
以上本発明の実施形態についてディスクブレーキ装置に適用した例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えばドラムブレーキ装置に適用することも可能で、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更すればよい。
【0105】
また第2の領域の配置は適宜変更可能である。さらにまた複数の第2の領域を配置する場合、2個あるいは4個に限らず、それらの配置も適宜変更可能である。
【0106】
さらにまた摩擦材2の第2の領域は、
図2で説明したように摩擦部材2の厚さ方向において、断面積が変化するように構成したり、
図3で説明したように摩擦材2の厚さ方向において導電性材料の添加量が変化している構成としてもよい。
【符号の説明】
【0107】
1:摩擦部材、2:摩擦材、2a:第1の領域、2b:第2の領域、3:支持部材、4:ディスクロータ、5:摩耗検出部、6:銅線、7:電極、10:摩擦部材センサシステム