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特開2023-50936半導体装置、および半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050936
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】半導体装置、および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/12 20060101AFI20230404BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20230404BHJP
   H01L 25/00 20060101ALI20230404BHJP
   H01F 10/08 20060101ALI20230404BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
H01L23/12 501P
H01L27/04 L
H01L23/12 B
H01L25/00 B
H01F10/08
H01F17/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021161310
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】進藤 正典
【テーマコード(参考)】
5E049
5E070
5F038
【Fターム(参考)】
5E049BA11
5E070AB04
5E070BA20
5E070CB12
5F038AZ04
5F038CA02
5F038CA05
(57)【要約】
【課題】性能が向上したインダクタを含む半導体装置、および半導体装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】半導体基板上に形成された回路部と、回路部の上部を含む半導体基板上の領域の少なくとも一部を覆って形成された第1の絶縁膜と、第1の絶縁膜上に形成された再配線と、再配線により第1の絶縁膜上に形成されるとともに回路部に接続されたコイルと、コイルの下部に設けられた第1の絶縁膜の開口部に形成された第1の軟磁性体膜と、コイルの少なくとも一部を覆って第1の軟磁性体膜上に形成された第2の軟磁性体膜と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に形成された回路部と、
前記回路部の上部を含む前記半導体基板上の領域の少なくとも一部を覆って形成された第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜上に形成された再配線と、
前記再配線により前記第1の絶縁膜上に形成されるとともに前記回路部に接続されたコイルと、
前記コイルの下部に設けられた前記第1の絶縁膜の開口部に形成された第1の軟磁性体膜と、
前記コイルの少なくとも一部を覆って前記第1の軟磁性体膜上に形成された第2の軟磁性体膜と、を含むことを特徴とする
半導体装置。
【請求項2】
前記第1の絶縁膜は前記第1の軟磁性体膜を囲んで形成され、
前記第1の絶縁膜の上部に形成されるとともに前記第2の軟磁性体膜を囲む第2の絶縁膜をさらに含むことを特徴とする
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1の軟磁性体膜と前記第2の軟磁性体膜は一体化され、前記コイルは一体化された前記第1の軟磁性体膜および前記第2の軟磁性体膜の中に埋設されていることを特徴とする
請求項1または請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記コイルは前記第1の軟磁性体膜に設けられたビアを介して前記回路部に接続されていることを特徴とする
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
外部と接続する端子であって、前記第1の絶縁膜上に設けられるとともに前記第1の絶縁膜に形成されたビアを介して前記回路部に接続された端子をさらに含むことを特徴とする
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
半導体基板上に形成された回路部と、
前記回路部の上部を含む前記半導体基板上の領域の少なくとも一部を覆って形成された絶縁膜と、
前記絶縁膜上に形成された再配線と、
前記再配線により前記絶縁膜上に形成されるとともに前記回路部に接続されたコイルと、
前記コイルの少なくとも一部を覆って前記絶縁膜上に形成された軟磁性体膜を含むことを特徴とする
半導体装置。
【請求項7】
半導体基板上に回路部を形成し、
前記回路部の上部を含む領域であって第1の所定の領域を除く領域に第1の絶縁膜を形成し、
前記第1の所定の領域の内部に第1の軟磁性体膜を形成し、
前記第1の軟磁性体膜の上部に前記回路部と接続されるコイルを形成し、
前記第1の絶縁膜の上部の領域であって、平面視で前記第1の所定の領域の少なくとも一部と重なる第2の所定の領域を除く領域に第2の絶縁膜を形成し、
前記第2の所定の領域の内部に第2の軟磁性体膜を形成することを特徴とする
半導体装置の製造方法。
【請求項8】
半導体基板上に回路部を形成し、
前記回路部の上部を含む領域であって前記半導体基板上の領域の少なくとも一部を覆う絶縁膜を形成し、
前記絶縁膜上に第1の軟磁性体膜を形成し、
前記第1の軟磁性体膜の上部に前記回路部と接続されるコイルを形成し、
前記第1の軟磁性体膜上に前記コイルの少なくとも一部を覆う第2の軟磁性体膜を形成することを特徴とする
半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置のパッケージングの一形態として、WL-CSP(Wafer Level-Chip Size Package)が知られている。WL-CSPとは、CSP(Chip Size Package)と呼ばれる超小型集積回路の一種である。CSPとは基本的にBGA(Ball Grid Arrey)の一形態であり、BGAのサイズを大幅に小さくし、実装する半導体チップとほぼ同サイズに縮小したパッケージのことである。これに対しWL-CSPでは製造プロセスにおいて、ウェハレベルの段階で回路表面のパッドに再配線層を形成し、再配線上の接続部を残して例えば樹脂で表面を封止した後個々のチップに個片化する。WL-CSPによれば、半導体集積回路をプリント基板等の基板に実装する場合においてその専有面積を大幅に削減できる等の効果がある。
【0003】
BGAに関連する技術を開示した文献として、例えば特許文献1が知られている。特許文献1に係るファン-アウト半導体パッケージモジュールは、互いに離隔している第1貫通孔および第2貫通孔を有するコア部材と、第1貫通孔内に配置され、接続パッドが配置された活性面、および活性面の反対側である非活性面を有する半導体チップと、第2貫通孔内に配置された第2受動部品と、コア部材および第2受動部品のそれぞれの少なくとも一部を覆い、第2貫通孔内の少なくとも一部を満たす第1封止材と、第1封止材上に配置された補強部材と、半導体チップの少なくとも一部を覆い、第1貫通孔内の少なくとも一部を満たす第2封止材と、コア部材、半導体チップの活性面、および第2受動部品上に配置され、接続パッド、および第2受動部品と電気的に連結された再配線層を含む連結部材と、を含んでいる。
【0004】
一方、半導体装置を構成する回路に不可欠な受動部品としてインダクタが挙げられる。
インダクタは、半導体装置の回路面に渦巻き状のパターン(コイル)を配線材等によって形成する場合もあるが、その場合スペースの関係で例えば配線長を長くしたり、巻き数を多くしたりすることに限界がある。そのため得られるインダクタンスの値も制限されるので、ある程度以上のインダクタンス値が必要な場合には個別部品として半導体装置とは別に実装されている。特許文献1に係るファン-アウト半導体パッケージモジュールでも受動部品としてのインダクタは個別部品の形態で貫通孔内に配置される。
【0005】
図11(a)は、内部に比較例に係るインダクタ領域100が形成された比較例に係る半導体装置150の断面図を示している。「インダクタ領域」とは半導体装置150においてインダクタの作用を示す構成の領域をいう。半導体装置150はWL-CSP技術を用いて製造されている。図11(a)に示すように、半導体装置150は、半導体基板11上に形成されたパッド12-1、12-2、パッシベーション膜13、ビア16-1、16-2、絶縁膜14、15、再配線17、ポスト18、半田端子19、およびモールド20を含んでいる。
【0006】
図11(b)はインダクタ領域100の断面図を示している。図11(b)に示すようにインダクタ領域100は、半導体基板11、パッド12-3、12-4、パッシベーション膜13、ビア16-3、16-4、絶縁膜25、再配線17、およびモールド20を含んでいる。ただし、絶縁膜25は図11(a)の絶縁膜14、15をまとめて1つの膜として表したものである。絶縁膜25の上部に再配線17が渦巻き状に配置されてコイル22が形成されている。ビア16-3および16-4は、各々コイル22の一端および他端に接続され、パッド12-3および12-4を介して半導体チップ(図示省略)に形成された回路部に接続されている。ここで「半導体チップ」とは、半導体装置150のうち、再配線する前の状態の半導体素子をいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-83304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
WL-CSPにおいてもインダクタを半導体装置内に搭載することができれば至便であるが、これまでは通信等限られた分野の限られたインダクタンス値のインダクタが半導体装置内に搭載されているに過ぎなかった。つまり半導体装置150のインダクタ領域100のインダクタンス値には限界があった。インダクタの中でも電源回路等の高電力用途のインダクタ(以下、「パワーインダクタ」)は、特に配線抵抗が小さいこと、所望のインダクタンス値が確保できることが求められるため、従来、パワーインダクタは半導体装置の外部に個別部品として配置されていた。その結果、半導体装置およびその関連部品の専有面積の削減には限界があった。例えば半導体装置150のようにWL-CSP内に搭載するためには、同じ形状、専有面積のインダクタで比較した場合にその性能(インダクタンス、配線抵抗等)の向上が求められていた。
【0009】
本発明は、上記の事情を踏まえ、性能が向上したインダクタを含む半導体装置、および半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明に係る半導体装置は、半導体基板上に形成された回路部と、前記回路部の上部を含む前記半導体基板上の領域の少なくとも一部を覆って形成された第1の絶縁膜と、前記第1の絶縁膜上に形成された再配線と、前記再配線により前記第1の絶縁膜上に形成されるとともに前記回路部に接続されたコイルと、前記コイルの下部に設けられた前記第1の絶縁膜の開口部に形成された第1の軟磁性体膜と、前記コイルの少なくとも一部を覆って前記第1の絶縁膜上に形成された第2の軟磁性体膜と、を含むことを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決するため、本発明に係る他の態様の半導体装置は、半導体基板上に形成された回路部と、前記回路部の上部を含む前記半導体基板上の領域の少なくとも一部を覆って形成された絶縁膜と、前記絶縁膜上に形成された再配線と、前記再配線により前記絶縁膜上に形成されるとともに前記回路部に接続されたコイルと、前記コイルの少なくとも一部を覆って前記絶縁膜上に形成された軟磁性体膜を含むことを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決するため、本発明に係る半導体装置の製造方法は、半導体基板上に回路部を形成し、前記回路部の上部を含む領域であって第1の所定の領域を除く領域に第1の絶縁膜を形成し、前記第1の所定の領域の内部に第1の軟磁性体膜を形成し、前記第1の軟磁性体膜の上部に前記回路部と接続されるコイルを形成し、前記第1の絶縁膜の上部の領域であって、平面視で前記第1の所定の領域の少なくとも一部と重なる第2の所定の領域を除く領域に第2の絶縁膜を形成し、前記第2の所定の領域の内部に第2の軟磁性体膜を形成することを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決するため、本発明に係る他の態様の半導体装置の製造方法は、半導体基板上に回路部を形成し、前記回路部の上部を含む領域であって前記半導体基板上の領域の少なくとも一部を覆う絶縁膜を形成し、前記絶縁膜上に第1の軟磁性体膜を形成し、前記第1の軟磁性体膜の上部に前記回路部と接続されるコイルを形成し、前記第1の軟磁性体膜上に前記コイルの少なくとも一部を覆う第2の軟磁性体膜を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、性能が向上したインダクタを含む半導体装置、および半導体装置の製造方法を提供することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1の実施の形態に係る半導体装置の、(a)は断面図、(b)は平面図である。
図2】第1の実施の形態に係るインダクタ領域の、(a)は断面図、(b)は平面図である。
図3】実施の形態に係るインダクタ領域の作用を説明する模式図である。
図4】(a)から(c)は、実施の形態に係るインダクタ領域のシミュレーションモデルを示す図である。
図5】(a)から(c)は、実施の形態に係るインダクタ領域のシミュレーション結果を示す図である。
図6】実施の形態に係るコイルのシミュレーションモデルを示す図である。
図7】第2の実施の形態に係るインダクタ領域の、(a)は断面図、(b)は平面図である。
図8】第2の実施の形態に係る半導体装置の断面図である。
図9】(a)から(f)は第2の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図10】(a)、(b)は第2の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図11】(a)は比較例に係る半導体装置の断面図、(b)は比較例に係るインダクタ領域の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について詳細に説明する。以下に説明する実施の形態では、本発明に係る半導体装置をインダクタ領域を含む半導体装置に適用した形態を例示して説明する。以下の実施の形態では、便宜的にインダクタ領域と該インダクタ領域を含む半導体装置とに分けて説明するが、本実施の形態に係る半導体装置はインダクタ単独の形態であってもよいし、周辺の回路を含む形態であってもよい。以下の実施の形態では、インダクタ領域のインダクタとして特に高電力用途のパワーインダクタに適用した形態を例示して説明する。
【0017】
[第1の実施の形態]
図1から図6を参照して、本実施の形態に係るインダクタ領域10を含む半導体装置50について説明する。
【0018】
図1(a)は本実施の形態に係る半導体装置50の断面図、図1(b)は平面図を、各々示している。図1(a)は図1(b)のA-A線に沿って切断した断面図である。半導体装置50にはインダクタ領域10が形成されている。「インダクタ領域」とは半導体装置50においてインダクタの作用を示す構成の領域をいう。本実施の形態では、後述する配線(後述の再配線17)で形成したコイル22に加え、第1の軟磁性体膜24-1、第2の軟磁性体膜24-2等インダクタとしての作用を規定する構成を含む領域をいう。また、本実施の形態に係る半導体装置50は、回路が形成されていない半導体基板の上部にインダクタ領域10を形成している。しかし、回路が形成された回路部の上部にインダクタ領域10を形成してもよい。
【0019】
図1に示す半導体装置50も半導体装置150と同様WL-CSP技術を用いて製造されており、図11(a)に示す半導体装置150と基本的に同様の構成となっている。すなわち、図1(a)に示すように、半導体装置50は、半導体基板11、パッド12-1、12-2(以下総称する場合は後述のパッド12-3、12-4を含めて「パッド12」)、パッシベーション膜13、絶縁膜14、15、ビア16-1、16-2(以下総称する場合は後述のビア16-3、16-4を含めて「ビア16」)、再配線17、ポスト18、半田端子19、およびモールド20を含んでいる。パッド12は一例としてアルミニウム(Al)で形成され、パッシベーション膜13に設けられた開口部から露出している。パッシベーション膜13は一例として窒化シリコン膜で形成され、半導体基板11およびパッド12の一部を覆っている。絶縁膜14、15は一例としてポリイミド膜で形成され、絶縁膜14はパッシベーション膜13およびパッド12の一部を覆っており、絶縁膜15は絶縁膜14およびビア16-1、16-2の一部を覆っている。ここで、再配線17、絶縁膜14、15、およびポスト18を含む層が本実施の形態に係る「再配線層」である。
【0020】
図1(a)に示す半導体装置50では、点線で囲まれた領域にインダクタ領域10が形成されている。なお、半導体基板11の材料に制限はないが、本実施の形態では一例としてのシリコン(Si)基板を用いている。また、図1(a)に示す第1の軟磁性体膜24-1、第2の軟磁性体膜24-2の詳細については後述する。
【0021】
図1(b)に示すように、インダクタ領域10にはコイル22が形成され、コイル22の一端および他端には各々端子21-1、21-2が配置されている。なお、本実施の形態において「コイル22」とは、渦巻き状に形成された再配線17による配線部分をいう。換言すると、本実施の形態に係るコイル22は再配線層に形成されている。
【0022】
図1(a)で示した半導体基板11、パッド12-1、12-2、およびパッシベーション膜13が半導体チップの製造工程によって製造された部分であり、絶縁膜14、15、ビア16-1、16-2、再配線17、ポスト18、半田端子19、およびモールド20が再配線工程によって製造された部分である。本実施の形態では、絶縁膜15上にコイル22を形成する配線層、およびビア16-1、16-2(以下で説明するビア16-3、16-4を含む)を再配線17という。
【0023】
絶縁膜14にはビア16-1および16-2が設けられ、各々のビアの一端はそれぞれパッド12-1、12-2に接続されている。また、ビア16-1および16-2の他端は絶縁膜15上の再配線17に接続されている。半導体装置50では、絶縁膜14上の再配線17によって、ポスト18の位置まで配線を延伸することが可能となっている。
【0024】
ポスト18および半田端子19は、半導体装置50を外部の例えばプリント基板(図示省略)等に実装する場合の端子である。ポスト18は、一例として銅(Cu)で形成されている。モールド20は半導体基板11上に形成された回路等を外気等から保護する封止樹脂である。
【0025】
図2(a)は本実施の形態に係るインダクタ領域10の断面図を、図2(b)は平面図を、各々示している。図2(a)は、図2(b)に示すB-B線に沿って切断した断面を表している。図2(a)に示すようにインダクタ領域10は、半導体基板11、パッド12-3、12-4、パッシベーション膜13、ビア16-3、16-4、再配線17、第1の軟磁性体膜24-1および第2の軟磁性体膜24-2(以下総称する場合は「軟磁性体膜24」)、およびモールド20を含んでいる。
【0026】
図2(a)、(b)に示すように再配線17にはコイル22が形成されている。本実施の形態に係るコイル22は略矩形形状の配線が渦巻き状に配置されて形成されている。しかしながらコイル22の形状はこれ限られず、円形状あるいは楕円形状の配線を渦巻き状に配置して形成してもよい。ビア16-3および16-4は、各々コイル22の一端である端子21-1および他端である端子21-2に接続され、各々パッド12-3および12-4を介して半導体チップに形成された回路に接続されている。
【0027】
ここで、本実施の形態に係るインダクタ領域10は、一例としてパワーインダクタとして使用可能なように、比較例に係るインダクタ領域100に対して、インダクタンス、配線抵抗等の性能が向上するように配慮されている。すなわち、図2(a)に示すように、本実施の形態に係るインダクタ領域10はインダクタ領域100にはない第1の軟磁性体膜24-1および第2の軟磁性体膜24-2を備えている。軟磁性体膜24-1はパッシベーション膜13上に形成され、軟磁性体膜24-2は軟磁性体膜24-1上にコイル22等が形成された再配線17を覆って形成されている。ここで、軟磁性体膜24の材料は特に限定されないが、本実施の形態では一例として軟磁性体の磁性粉末を含有する樹脂などの絶縁体膜を用いている。
【0028】
軟磁性体膜24-1および軟磁性体膜24-2は各々分離されたものではなく、本実施の形態では混然一体となっている。しかしながら、インダクタ領域10のインダクタンス値等を考慮して差し支えない場合は軟磁性体膜24-1と軟磁性体膜24-2とを分離してもよい。さらに軟磁性体膜24-1または軟磁性体膜24-2のいずれか一方を配置する形態としてもよい。
【0029】
本実施の形態に係るインダクタ領域10によれば軟磁性体膜24の作用によって漏洩磁束が抑制され、軟磁性体膜24を設けていない同じサイズのインダクタ領域と比べてインダクタンスLの値が増大し、またインダクタンスLの増大により配線長が短くて済むので配線抵抗が減少する。すなわち、インダクタ領域10によればその性能を向上させることができる。さらにコイル22で発生する磁束が第1の軟磁性体膜24-1および第2の軟磁性体膜24-2の中に閉じ込められ、外部への漏洩が抑制されるので、コイル22による磁束が半導体基板11上に形成された他の回路等に影響することが抑制される。そのため、軟磁性体膜が設けられていない比較例に係るインダクタ領域100は、コイル22の磁束によって他の回路でのノイズ等の発生が懸念されるが、本実施形態に係るインダクタ領域10は、他の回路でのノイズ等の発生を抑制することができる。
【0030】
図3を参照して、上記磁束の漏洩の抑制についてより詳細に説明する。図3図2(a)に示す軟磁性体膜24とコイル22との関係を概念的に示した図である。すなわち、軟磁性体膜24上にコイル22の一部を構成する再配線17が形成され、再配線17はさらに軟磁性体膜24によって囲まれている。再配線17には図3に示す方向に電流ILが流れている。図3の左に示す電流ILは、奥から手前に向かう方向に流れており、右に示す電流ILは、手前から奥に向かう方向に流れている。
【0031】
図3に示す構成において、左右の再配線17には図に示す回転方向の磁束Φが発生する。左の再配線17は反時計回りの磁束Φが発生し、右の再配線17は時計回りの磁束Φが発生する。そして、発生した磁束Φのほとんどは軟磁性体膜24の中に閉じ込められ、外部への漏洩が抑制される。この閉磁路構造により軟磁性体膜24を設けていない同じサイズのインダクタ領域と比べてインダクタンス値が大きくなるので、インダクタ領域10の性能が向上する。また、本実施の形態では半導体基板11上に直接コイル22を形成しているため配線長が短くなるので配線抵抗が減少し、このことによってもインダクタ領域10の性能が向上する。さらに、例えばコイル22の下部の半導体基板11の主面(図示省略)に回路が形成されている場合であっても磁束Φは軟磁性体膜24の内部に閉じ込められ、当該回路に影響を及ぼすことが抑制される。このことにより、意図しない起電力、ノイズ等が発生することが抑制される。
【0032】
次に本実施の形態に係る軟磁性体膜24-1および軟磁性体膜24-2の作用についてより具体的に説明する。図4図5は上記効果を電磁界シミュレータによるシミュレーションによって確認した結果を示している。図4は本シミュレーションで用いたモデルを示しており、図4(a)は軟磁性体膜24を配置しない場合、図4(b)はコイル22の上部に軟磁性体膜24-2のみを配置した場合、図4(c)はコイル22の上下に軟磁性体膜24-1および24-2を配した場合の各々の構成を示している。図5は磁束Φの分布のシミュレーション結果を示しており、図5(a)、(b)、(c)は、各々図4(a)、(b)、(c)に対応する結果を示している。本シミュレーションの条件は以下のとおりである。
絶縁膜26-1(ポリイミド膜)の膜厚=3μm
絶縁膜26-2の膜厚=10μm
軟磁性体膜24-1の膜厚=3μm
軟磁性体膜24-2の膜厚=10μm
【0033】
図6は本シミュレーションで用いたコイル22の外形を示している。図6に示すように、本シミュレーションではコイル22の外形を略正方形状としている。コイル22のシミュレーション条件は以下のとおりである。
配線材料:銅(Cu)
配線幅=8μm、配線間隔=8μm
配線の厚さ=7μm
コイル22の1辺の長さ=0.6mm
【0034】
図5(a)と、図5(b)および図5(c)を比較して明らかなように、軟磁性体膜24-2、または軟磁性体膜24-1および24-2を配置することによって磁束Φの広がりが大幅に抑制されることがわかる。ここで、図4(b)に示すコイル22の上部に軟磁性体膜24-2のみを配置した場合と、図4(c)に示すコイル22の上下に軟磁性体膜24-1および24-2を配した場合とで磁束Φの広がりには大きな差が無いように見える。しかしながら、実際は磁束ベクトルの大きさに差があり、図4(c)に示す軟磁性体膜24-1、24-2の両方を配置した場合の方がインダクタンス値が大幅に大きくなっている。なお、図4では図示を省略しているが、コイル22の下部に軟磁性体膜24-1のみを配置する場合についてもシミュレーションしており、この場合は図4(b)の結果よりは劣るものの図4(a)と比較して明らかに効果があることが分かっている。
【0035】
[第2の実施の形態]
図7から図10を参照して、本実施の形態に係る半導体装置50Aおよびインダクタ領域10Aについて説明する。本実施の形態は、インダクタ領域の周囲に絶縁膜を配置した形態である。従ってインダクタ領域および半導体装置の主要構成については上記第1の実施の形態と共通するので、同様の構成には同じ符号を付して重複する説明を省略する。
【0036】
図7(a)はインダクタ領域10Aの断面図を、図7(b)はインダクタ領域10Aの平面図を各々示している。図7(a)は図7(b)に示すC-C線で切断した断面を示している。
【0037】
図7(a)、(b)に示すように、インダクタ領域10Aはインダクタ領域10(図2参照)にはない第1の支持絶縁膜25-1および第2の支持絶縁膜25-2(以下総称する場合は「支持絶縁膜25」)を含んでいる。第1の支持絶縁膜25-1は第1の軟磁性体膜24-1の形状を画定し、第2の支持絶縁膜25-2は第2の軟磁性体膜24-2の形状を画定している。ここで、第2の支持絶縁膜は25-1は図1(a)に示す絶縁膜14および絶縁膜15をまとめて1つの層として表したものである。換言すれば、支持絶縁膜25-1は絶縁膜14、15と共通の膜で形成されている。本実施の形態に係るインダクタ領域10Aは支持絶縁膜25備えているので軟磁性体膜24の形状を制御しやすく、しいてはコイル22が発生する磁束の形状を制御しやすいという特徴がある。支持絶縁膜25の材料について特に制限はないが、本実施の形態では一例として感光性ポリイミド樹脂を用いている。なお、「第1の支持絶縁膜25-1」および「第2の支持絶縁膜25-2」は、各々本発明に係る「第1の絶縁膜」および「第2の絶縁膜」の一例である。
【0038】
図8は本実施の形態に係る半導体装置50Aの断面図を示している。半導体装置50Aでは半導体基板11上に回路が形成された回路部27の上部にインダクタ領域10Aを形成している。むろん、半導体装置50Aで回路部27を形成していない半導体基板11の上部にインダクタ領域10Aを形成してもよい。図8に示すように、第1の支持絶縁膜25-1は回路部27に沿って延伸され、第1の支持絶縁膜25-1の上部にポスト18が形成されている。第2の支持絶縁膜25―2は第1の支持絶縁膜25―1の上部に形成されている。インダクタ領域10Aのコイル22はパッド12-3、12-4を介して回路部27に形成された関連する回路に接続されている。
【0039】
次に図9および図10を参照して本実施の形態に係るインダクタ領域10Aを含む半導体装置50Aの製造方法について説明する。なお、本実施の形態に係る製造方法は半導体ウェハの状態で製造するが、以下の説明ではそのうちのひとつのインダクタ領域10A、半導体装置50Aに着目して説明する。
【0040】
まず半導体基板11の主面(図示省略)上に回路部27(図9では不図示)、パッド12、パッシベーション膜13まで、すなわち半導体チップが形成された半導体ウェハを準備する。そして、フォトリソグラフィおよびエッチングを用いてパッシベーション膜13上にインダクタ領域10Aを形成する領域を囲う(図7(b)参照)ように第1の支持絶縁膜25-1を形成する(図9(a))。
【0041】
次にインダクタ領域10Aの形成領域を囲う第1の支持絶縁膜25-1の内部に第1の軟磁性体膜24-1を塗布し、硬化させる(図9(b))。
【0042】
次に第1の支持絶縁膜25-1のビア16-3、16-4を形成する部位に開孔を設け、その後金属材料(例えばCu)をめっきし、フォトリソグラフィおよびエッチングを用いて再配線17(すなわちコイル22)を形成する(図9(c))。本工程における半導体装置50Aの途中経過を図10(a)に示す。図10(a)に示すように、第1の支持絶縁膜25-1はインダクタ領域10Aに相当する領域以外の領域(回路部27等を含む)にも延伸され、再配線17の形成後にポスト18が形成される。
【0043】
次にフォトリソグラフィおよびエッチングを用いて第1の支持絶縁膜25-1の上部にインダクタ領域10Aの形成領域を囲う第2の支持絶縁膜25-2を形成する(図9(d))。
【0044】
次に第2の支持絶縁膜25-2の内部に第2の軟磁性体膜24-2を塗布して硬化させる(図9(e))。
【0045】
次に第1の支持絶縁膜25-1、第2の支持絶縁膜25-2、第2の軟磁性体膜24-2の上部にモールド20を塗布して硬化させる(図9(f))。その後各半導体チップに個片化してインダクタ領域10Aを含む半導体装置50Aが製造される。本工程における半導体装置50Aの途中経過を図10(b)に示す。図10(b)に示すように、モールド20はインダクタ領域10Aに相当する領域以外の領域(回路部27等を含む)にも延伸され、ポスト18の周囲を埋める。ポスト18の上部には半田端子19が形成される。
【0046】
なお、上記実施の形態に係る半導体装置50も以上の製造工程に準じて製造される。半導体装置50は第2の支持絶縁膜25-2を備えていないので、インダクタ領域10を形成する領域以外の領域に絶縁膜14、15(図1(a)参照)を形成し、その絶縁膜14、15が形成されていない領域にインダクタ領域10を形成する。より詳細には一例として以下の再配線工程によって製造する。
・全面に絶縁膜14、15を成膜する。この際ビア16も形成する。
・インダクタ領域10を形成する領域の絶縁膜14、15に開口を設ける。あるいは、マスクを用いてインダクタ領域10を形成する領域に絶縁膜14、15を形成しないようにしてもよい。
・軟磁性体膜24-1を上記開口に塗布し、硬化させる。
・絶縁膜15および軟磁性体膜24-1の上部にコイル22を含む再配線17を形成し、さらにポスト18を形成する。
・フォトリソグラフィ、エッチングを用いて再配線17の上部に軟磁性体膜24-2を塗布し、硬化させる。
【0047】
なお上記各実施の形態ではコイル22を絶縁膜15の上部に設ける形態を例示して説明したが、レイアウト等を考慮して絶縁膜14の上部に設けてもよいし、インダクタンス値等を考慮して絶縁膜14、15の両方の上部に設けて両者をビアで接続する形態としてもよい。
【0048】
また上記各実施の形態ではコイル22の下部に配置された軟磁性体膜24にビアを設けてコイル22と回路部27とを接続する形態を例示して説明した。しかしながら、軟磁性体膜24にビアを設けたくない場合、あるいはコイル22から離れた位置に配置された回路部27と接続したい場合はコイル22の端部を絶縁膜25-1の上部まで延伸し、絶縁膜25-1にビアを設けて回路部27と接続する形態としてもよい。
【0049】
また上記各実施の形態では第1の軟磁性体膜24-1と第2の軟磁性体膜24-2を同一の材料で形成する形態を例示して説明したが、製造工程等を勘案して両者を別々の材料で形成する形態としてもよい。
【符号の説明】
【0050】
10、10A、100 インダクタ領域
11 半導体基板
12、12-1、12-2、12-3、12-4 パッド
13 パッシベーション膜
14 絶縁膜
15 絶縁膜
16、16-1、16-2、16-3、16-4 ビア
17 再配線
18 ポスト
19 半田端子
20 モールド
21-1、21-2 端子
22 コイル
24 軟磁性体膜
24-1 第1の軟磁性体膜
24-2 第2の軟磁性体膜
25 絶縁膜
25-1 第1の支持絶縁膜
25-2 第2の支持絶縁膜
26-1 第1の絶縁膜
26-2 第2の絶縁膜
27 回路部
50、50A,150 半導体装置
IL 電流
Φ 磁束
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11