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  • 特開-加硫ゴム部材の動摩擦特性の推定方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050969
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】加硫ゴム部材の動摩擦特性の推定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 19/02 20060101AFI20230404BHJP
   B60C 11/00 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
G01N19/02 A
B60C11/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021161370
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 英征
(72)【発明者】
【氏名】前川 覚
(72)【発明者】
【氏名】糸魚川 文広
(72)【発明者】
【氏名】吉田 出海
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA02
3D131BA04
(57)【要約】
【課題】多数の剛性粒子が内在する加硫ゴム部材の動摩擦特性をより簡便に推定できる推定方法を提供する。
【解決手段】加硫ゴム部材1の対象表面4に対する動摩擦係数と下記(1)式により算出される推定パラメータXとの相関関係CRとを予め把握しておき、推定対象の加硫ゴム部材1の貯蔵弾性率Eo’および内在する剛性粒子の外径Doと、適用される対象表面4の突起径Roおよび波長λoと、推定パラメータXとに基づいて、適用される対象表面4に対する推定対象の加硫ゴム部材1の動摩擦特性を推定する。
推定パラメータX=R2/(λ・E’2・D4)・・・(1)
(1)式中のRは対象表面の突起径、λは対象表面の波長、E’は加硫ゴム部材の貯蔵弾性率、Dは剛性粒子の外径である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の剛性粒子が内在する加硫ゴム部材の対象表面に対する動摩擦係数と下記(1)式により算出される推定パラメータXとの相関関係を予め把握しておき、
推定対象の前記加硫ゴム部材の貯蔵弾性率Eo’および内在する前記剛性粒子の外径Doと、適用される前記対象表面の突起径Roおよび波長λoと、前記推定パラメータXとに基づいて、適用される前記対象表面に対する推定対象の前記加硫ゴム部材の動摩擦特性を推定することを特徴とする加硫ゴム部材の動摩擦特性の推定方法。
推定パラメータX=R2/(λ・E’2・D4)・・・(1)
ここで、Rは前記対象表面の突起径、λは前記対象表面の波長、E’は前記加硫ゴム部材の貯蔵弾性率、Dは前記剛性粒子の外径である。
【請求項2】
前記加硫ゴム部材の前記対象表面に接触する接触面側の領域に前記剛性粒子が散在している請求項1に記載の加硫ゴム部材の動摩擦特性の推定方法。
【請求項3】
推定対象の加硫ゴム部材1の貯蔵弾性率Eo’が30MPa以下、前記剛性粒子の外径Doが0.010μm~0.100μmである請求項1または2に記載の加硫ゴム部材の動摩擦特性の推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加硫ゴム部材の動摩擦特性の推定方法に関し、さらに詳しくは、多数の剛性粒子が内在する加硫ゴム部材の動摩擦特性をより簡便に推定できる推定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゴム製品の中には動摩擦特性が重要視されるものがある。例えば、タイヤは走行路面に対する動摩擦特性、ブレーキパッドはブレーキディスクに対する動摩擦特性が重要になる。この動摩擦特性を把握するには、従来、動摩擦試験を行って動摩擦係数を測定している。
【0003】
動摩擦特性を向上させるために、例えばタイヤではトレッドゴムに卵殻粉、貝殻の粉砕品などの剛性粒子を配合することが知られている(例えば、特許文献1参照)。所望の動摩擦特性を有するゴム仕様を選定するには、これら剛性粒子やゴム種などを異ならせた多数種類の試験サンプルを作製して動摩擦試験を行う必要がある。それ故、加硫ゴム部材の動摩擦特性をより簡便に把握するには改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-167410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、多数の剛性粒子が内在する加硫ゴム部材の動摩擦特性をより簡便に推定できる推定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明の加硫ゴム部材の動摩擦特性の推定方法は、多数の剛性粒子が内在する加硫ゴム部材の対象表面に対する動摩擦係数と下記(1)式により算出される推定パラメータXとの相関関係CRを予め把握しておき、推定対象の前記加硫ゴム部材の貯蔵弾性率Eo’および内在する前記剛性粒子の外径Doと、適用される前記対象表面の突起径Roおよび波長λoと、前記推定パラメータXとに基づいて、適用される前記対象表面に対する推定対象の前記加硫ゴム部材の動摩擦特性を推定することを特徴とする加硫ゴム部材の動摩擦特性の推定方法。
推定パラメータX=R2/(λ・E’2・D4)・・・(1)
ここで、Rは前記対象表面の突起径、λは前記対象表面の波長、E’は前記加硫ゴム部材の貯蔵弾性率、Dは前記剛性粒子の外径である。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、推定対象の加硫ゴム部材の貯蔵弾性率Eo’および内在する剛性粒子の外径Doと、適用される対象表面の突起径Roおよび波長λoと、が判明すれば、これらのデータと、予め把握している動摩擦係数と推定パラメータXとの相関関係CRとを利用することで、適用される対象表面に対する推定対象の加硫ゴム部材の動摩擦特性を推定することが可能になる。したがって、推定対象の加硫ゴム部材の仕様や適用される対象表面の仕様が異なる度に、動摩擦試験を行う必要がないので簡便に動摩擦特性を把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】加硫ゴム部材と対象表面を断面視で模式的に例示する説明図である。
図2図1の加硫ゴム部材と対象表面との摺動状態を断面視で模式的に例示する説明図である。
図3】推定パラメータと動摩擦係数の増大具合との相関関係CRを例示するグラフ図である。
図4】本発明の加硫ゴム部材の動摩擦特性の推定方法の手順のフローを例示する説明図である。
図5】動摩擦係数を算出する過程を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の加硫ゴム部材の動摩擦特性の推定方法を、図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0010】
この推定方法では、図1に例示するような加硫ゴム部材1の対象表面4に対する動摩擦特性(動摩擦係数μD)を推定する。加硫ゴム部材1の一端面(図では下端面)が、対象表面4に接触して摺動する接触面1aになっている。
【0011】
加硫ゴム部材1は、加硫ゴム2と、加硫ゴム2に内在する多数の剛性粒子3とを有している。加硫ゴム2のゴム種は特に限定されず、種々の汎用のゴム組成物で形成することができる。
【0012】
剛性粒子3は、加硫ゴム2よりも硬くて、摩擦力が作用しても実質的に変形しない粒子、凝集体である。剛性粒子3としては具体的には、種々のシリカ、カーボン、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、金属粒子などの凝集体を例示できる。
【0013】
対象表面4は、多数の微小な突起を有する凹凸状である。突起どうしの間隔が波長λ、突起の半径が突起径R、突起の高さ(凹凸の大きさ)が振幅aとして記載されている。
【0014】
まず、多数の剛性粒子3が内在する加硫ゴム部材1に生じる動摩擦力について説明する。
【0015】
図2に例示するように、加硫ゴム部材1を対象表面4に向かって所定圧力で押圧して接触面1aを接触させると、接触面1aが対象表面4に押し込まれた状態になる。詳述すると、対象表面4の突起に接触面1aが押し込まれた状態(突起が接触面1aに喰い込んだ状態)になる。
【0016】
この状態で、対象表面4に対して接触面1aを摺動させるように加硫ゴム部材1を対象表面4に対して相対移動させる。相対移動方向は、図2の矢印で示すように対象表面面4の延在方向である。加硫ゴム部材1は接触面1aの近傍領域(破線で囲まれた領域)を変形させながら相対移動して、その際の抵抗力として動摩擦力が生じる。
【0017】
接触面1aの近傍領域では剛性が周囲の加硫ゴム2と顕著に異なっていることに起因して、接触面1aを対象表面4に摺動させると、剛性粒子3が内在していない場合に比して、加硫ゴム部材1(この近傍領域の加硫ゴム2)のヒステリシスロスが大きくなる。これに伴い、接触面1aの周辺では発熱が促進されて対象表面4に対する動摩擦力(動摩擦係数μD)が増大する。この接触面近傍領域の変形に起因した動摩擦力の増大はヒステリシス摩擦と言われ、主に、ゴム中に配合されているシリカのような凝集塊の崩壊によって発現すると考えられている。最近の研究によって、上述の凝集体の崩壊によるヒステリシスロスの他にも、剛性粒子3がゴム中に存在することによって、接触面近傍領域の変形に起因する摩擦力が増大することが明らかになってきた。
【0018】
この剛体粒子3の存在に起因する動摩擦力(動摩擦係数μD)の増大具合が、本願発明者の様々な実験、分析によって、下記(1)式の推定パラメータXを用いて把握することが判明した。本願発明は、この推定パラメータXを利用することに大きな特徴がある。
推定パラメータX=R2/(λ・E’2・D4)・・・(1)
(1)式中のRは対象表面4の突起径(mm)、λは対象表面4の波長(mm)、E’は加硫ゴム部材1の貯蔵弾性率(MPa)、Dは剛性粒子3の外径(μm)である。
【0019】
加硫ゴム部材1の貯蔵弾性率E’は公知の種々の測定装置(粘弾性測定装置)を用いて測定することができる。貯蔵弾性率E’の測定条件は、初期歪み10%、振幅±2%、温度0℃、周波数20Hzに設定してJIS K6394の規定に準拠して測定すればよい。測定条件を一貫して同じにするのであれば、それぞれの条件はこれに限定されず若干異ならせることもできる。
【0020】
剛性粒子3の外径Dは、それぞれの剛性粒子3の平均粒子径である。超小角X線散乱測定(USAXS)により得られた散乱プロファイルを、下記(2)式のUnified-Guinier関数にフィッティングさせて求めることができる粒子(凝集体)の大きさRssを平均粒子径とする。尚、外径Dが1μm超の剛性粒子3については、光学顕微鏡などによって外径Dを測定して把握する。
【0021】
I(q)=Aexp(-(q2・Rgg2)/3)q-p+Bexp(-(q2・Rgg2)/3)+Cexp(-(q2・Rgg2)/3)×{erf(q・Rss/61/2)}3Dm・q-Dm+Dexp(-(q2・Rgg2)/3)×E{erf(q・Rss/61/2)}3(2dDs)・q-(2d-Ds) ・・・(2)
ここで、qは波数、I(q)は波数qにおける散乱強度、A、B、C、DおよびEは定数(尚、この定数D、Eは上述した外径D、弾性率E’とは別の数値である)、pは累乗の指数、Rssは階層構造を形成している粒子(凝集体)の大きさ、Rggは高次凝集体の大きさ、Dmは質量フラクタル次元、Dsは表面フラクタル次元、dは空間のユークリッド次元である。
【0022】
剛性粒子3は、加硫ゴム部材1の全体に散在していてもよく、この実施形態のように、少なくとも加硫ゴム部材1の接触面1a側の領域に万遍なく散在していることが望ましい。この実施形態では、剛性粒子3は、接触面1aからまったく露出していない状態であるが、露出している状態でもよい。
【0023】
対象表面4の突起径R、波長λ、振幅aなどのデータは、公知の種々の装置(表面粗さ計測器)を用いて測定することができる。図1は対象表面4が単純化して記載されているが、実際の対象表面4はより複雑な形状をしている。そこで、対象表面4の突起径Rは、表面粗さ測定データのプロファイルの凸部に二次曲線をフィッティングさせ、フィッティングした二次曲線から半径を求め、それぞれの半径の平均を代表値として用いる。また、波長λは、表面粗さ測定データのプロファイルをフーリエ解析して振幅aが最大の時の波長を代表値として用いる。
【0024】
図3に加硫ゴム部材1の動摩擦係数μDと推定パラメータXとの相関関係CRを例示する。図3では、縦軸が動摩擦係数μDの増大具合になっている。この動摩擦係数μDの増大具合とは、加硫ゴム部材1に剛性粒子3が内在する場合の、剛性粒子3が内在しない場合に対する動摩擦係数μDの増大具合であり、この実施形態では、動摩擦係数μDの数値の差異になっている。したがって、図3では、加硫ゴム部材1に剛性粒子3が内在する場合に、内在しない場合に比して動摩擦係数μDが大きくなるほど、データは上方位置にプロットされ、縦軸の原点では両者に差異がないことを示している。尚、縦軸は、剛性粒子3が内在する場合と内在しない場合とでの動摩擦係数μDの数値の差異の増大割合(増大率%)などにしてもよい。本願発明では、動摩擦係数μDはJIS K7125に規定された試験方法に準拠して測定するが、凝着摩擦の影響を排除するために、接触面1aと対象表面4との間に潤滑剤を介在させた状態で測定を行って取得した数値を用いる。
【0025】
図4の動摩擦係数μDと推定パラメータXとの相関関係CRによると、推定パラメータXの数値が1近傍を境界点として、動摩擦係数μDの増大具合が大きく変化する。即ち、推定パラメータXの値が略1以下では、動摩擦係数μDの増大具合がゼロ(動摩擦係数μDは不変である)ことが分かる。推定パラメータXの数値が略1超では、推定パラメータXの値が増大するに連れて動摩擦係数μDがリニアに増大することが分かる。
【0026】
推定パラメータXは、境界点(数値が略1)を超えると、貯蔵弾性率E’が小さいほど、剛性粒子3の外径Dが小さいほど、突起径Rが大きいほど、波長λが短いほど、大きくなって、動摩擦係数μDが増大する。その理由は、貯蔵弾性率E’が小さいほど加硫ゴム2が変形し易いので剛性粒子3が対象表面4の凹凸に入り込み易く、また、剛性粒子3の外径Dが小さいほど、突起径Rが大きいほど、波長λが短いほど、剛性粒子3が対象表面4の凹凸に入り込み易くなって、加硫ゴム部材1(加硫ゴム2)のヒステリシスロスが大きくなるためである。
【0027】
本発明では、様々な仕様の加硫ゴム部材1(加硫ゴム2の仕様や剛性粒子3の仕様を異ならせた)の様々な仕様の対象表面4(突起径Rや波長λを異ならせた)に対する動摩擦係数μDを測定した際のデータを分析して、図3に例示する加硫ゴム部材1の動摩擦係数μDと推定パラメータXとの相関関係CRを予め把握しておく。この相関関係CRデータはコンピュータなどの演算装置に入力、記憶する。
【0028】
そして、図4に例示する手順によって、適用される対象表面4に対する推定対象の加硫ゴム部材1の動摩擦特性(動摩擦係数μD)を推定する。この動摩擦特性を推定するために必要になるデータは、推定対象の加硫ゴム部材1の貯蔵弾性率Eo、剛性粒子3の外径Do、適用される対象表面4の突起径Ro、波長λoと、予め把握している上述した相関関係CRである。
【0029】
そこで、推定対象の加硫ゴム部材1を用いて、貯蔵弾性率Eo、剛性粒子3の外径Doを把握する。これらのデータは、上述した方法で測定して把握する。また、適用される対象表面4を用いて突起径Ro、波長λoを把握する。これらのデータも、上述した方法で測定して把握する。
【0030】
次いで、把握した貯蔵弾性率Eo、剛性粒子3の外径Do、突起径Ro、波長λoのデータと、予め把握している上述の相関関係CRのデータとを用いて、適用される対象表面4に対する推定対象の加硫ゴム部材1の動摩擦特性(動摩擦係数μD)を推定する。そこで、把握した貯蔵弾性率Eo、剛性粒子3の外径Do、突起径Ro、波長λoのデータを演算装置に入力する。演算装置では、入力されたデータに基づいて、推定パラメータXが算出される。
【0031】
次いで、図5に例示するように、演算装置は、算出された推定パラメータXの値を、予め記憶されている上述の相関関係CRのデータに代入して、動摩擦係数μDの増大具合を算出する。相関関係CRのデータを把握する際に、様々な仕様の加硫ゴム部材1の様々な仕様の対象表面4に対する動摩擦係数μDを測定した際のデータが取得されている。或いは、今までに別途、動摩擦係数μDを測定した際のデータが蓄積されている。そこで、これら既存の多数のデータから、動摩擦係数μDの増大具合の基準となるデータ(基準となる動摩擦係数μD)を選定して、このデータに算出された増大具合を加味することで、適用される対象表面4に対する推定対象の加硫ゴム部材1の動摩擦特性(動摩擦係数μD)を推定することができる。基準となる動摩擦係数μDは新たに測定して取得してもよい。
【0032】
この実施形態によれば、推定対象の加硫ゴム部材1の貯蔵弾性率Eo’および内在する剛性粒子の外径Doと、適用される対象表面4の突起径Roおよび波長λoと、が判明すれば、これらのデータと、予め把握している相関関係CRのデータとを利用することで、適用される対象表面4に対する推定対象の加硫ゴム部材1の動摩擦特性(動摩擦係数μDの増大具合)を推定することが可能になる。したがって、推定対象の加硫ゴム部材1の仕様や適用される対象表面4の仕様が異なる度に、動摩擦試験を行う必要がない。これに伴い、作業工数が大幅に削減されるので、簡便に動摩擦特性を把握することができる。
【0033】
換言すると、より多くの仕様の加硫ゴム部材1の動摩擦特性を短時間で把握できるので、適用される対象表面4の仕様に応じて、所望の動摩擦特性を有する加硫ゴム部材1の仕様をより精度よく効率的に選定することができる。
【0034】
尚、貯蔵弾性率Eo、外径Do、突起径Ro、波長λoのデータは実際に測定しなくても仮想のデータでもよい。即ち、設定する貯蔵弾性率Eo、外径Do、突起径Ro、波長λoの数値によって、加硫ゴム部材1の動摩擦特性がどの程度になるかを把握するために、本発明を利用することもできる。
【0035】
加硫ゴム部材1としては例えば、タイヤ部材(トレッドゴムなど)、ブレーキパッド、シール材(パッキン)などが想定される。それ故、本発明は、性能の優れたタイヤやブレーキパッド、シール材などを開発するには大きく寄与する。
【0036】
加硫ゴム部材1の動摩擦特性を高精度で推定するには、加硫ゴム部材1の貯蔵弾性率E’(Eo’)は例えば30MPa以下の範囲にするとよい。また、剛性粒子3の外径D(Do)は例えば、0.010μm以上0.100μm以下の範囲にして、剛性粒子3の数密度(個/cm3)は例えば1014以上1018以下の範囲にするとよい。突起径R(Ro)は例えば、0.1mm以上の範囲にするとよい。波長λ(λo)例えば、3mm以下の範囲にするとよい。
【符号の説明】
【0037】
1 加硫ゴム部材
1a 接触面
2 加硫ゴム
3 剛性粒子
4 対象表面
図1
図2
図3
図4
図5