(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051251
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】成膜装置および成膜方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/34 20060101AFI20230404BHJP
H01L 21/316 20060101ALI20230404BHJP
H01L 21/318 20060101ALI20230404BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
C23C14/34 J
C23C14/34 C
C23C14/34 M
H01L21/316 Y
H01L21/318 B
H01L21/31 D
H01L21/31 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021161817
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099944
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 宏志
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 直樹
(72)【発明者】
【氏名】波多野 達夫
【テーマコード(参考)】
4K029
5F045
5F058
【Fターム(参考)】
4K029BA46
4K029BA58
4K029BB02
4K029BD01
4K029CA05
4K029CA15
4K029DA08
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4K029DC12
4K029DC13
4K029DC16
4K029DC34
4K029DC35
4K029DC46
4K029FA09
4K029GA00
4K029JA03
4K029JA05
5F045AA19
5F045AB32
5F045AB33
5F045AC07
5F045AC08
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5F058BF12
5F058BF13
5F058BF14
5F058BF15
5F058BF73
5F058BF74
(57)【要約】
【課題】高生産性と良好な制御性を両立可能な成膜装置および成膜方法を提供する。
【解決手段】成膜装置は、複数の基板を収容する処理容器と、処理容器内に設けられた、複数の基板が周方向に沿って配置されるように基板を保持する基板保持部と、基板保持部上の複数の基板を、自転させ、かつ、円周方向に沿って公転させる自転公転機構と、基板保持部に保持された前記複数の基板に対し、スパッタ粒子を放出させるスパッタ粒子放出機構とを備え、基板保持部に保持された前記複数の基板を前記自転公転機構で自転および公転させながら、前記スパッタ粒子放出機構からスパッタ粒子を放出させ、スパッタ成膜を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基板を収容する処理容器と、
前記処理容器内に設けられた、複数の基板が周方向に沿って配置されるように基板を保持する基板保持部と、
前記基板保持部上の前記複数の基板を、自転させ、かつ、前記円周方向に沿って公転させる自転公転機構と、
前記基板保持部に保持された前記複数の基板に対し、スパッタ粒子を放出させるスパッタ粒子放出機構と、
を備え、
前記基板保持部に保持された前記複数の基板を前記自転公転機構で自転および公転させながら、前記スパッタ粒子放出機構からスパッタ粒子を放出させ、スパッタ成膜を行う、成膜装置。
【請求項2】
前記スパッタ粒子放出機構は、スパッタ粒子を放出させるターゲットを有するカソードを複数有する、請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
隣り合う前記カソードの間に設けられ、前記基板上のスパッタ成膜により成膜された膜に対して反応処理を行う反応処理領域をさらに有する、請求項2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記反応処理は、酸化処理または窒化処理である、請求項3に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記スパッタ粒子放出機構は、前記ターゲットを開閉するシャッターを有し、前記スパッタ成膜の際に、前記シャッターが開にされる、請求項3または請求項4に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記シャッターは開口部を有し、前記スパッタ成膜の際に前記開口部が前記ターゲットに対応した位置とされ、前記反応処理の際に前記開口部が前記ターゲットからずれた位置とされる、請求項5に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記カソードは、前記シャッターを閉じた状態でプリスパッタを行う、請求項5に記載の成膜装置。
【請求項8】
複数の基板を収容する処理容器と、
前記処理容器内に設けられた、複数の基板が周方向に沿って配置されるように基板を保持する基板保持部と、
前記基板保持部上の前記複数の基板を、自転させ、かつ、前記円周方向に沿って公転させる自転公転機構と、
前記基板保持部に保持された前記複数の基板に対し、スパッタ粒子としてSiを放出させるターゲットを有するカソードを複数有し、基板上にSi膜を成膜するスパッタ粒子放出機構と、
隣り合う前記カソードの間に設けられ、前記基板上の前記Si膜に対して酸化処理を行う酸化処理領域と、
隣り合う前記カソードの間に設けられ、前記基板上の前記Si膜に対して窒化処理を行う窒化処理領域と、
を備え、
前記基板保持部に保持された前記複数の基板を前記自転公転機構で自転および公転させながら、前記各基板に対し、前記カソードによる前記Si膜の成膜、前記酸化処理領域による前記Si膜の酸化処理、前記カソードによる前記Si膜の成膜、前記窒化処理領域による前記Si膜の窒化処理を繰り返し行い、SiO2膜とSiN膜との積層膜を形成する、成膜装置。
【請求項9】
前記スパッタ粒子放出機構は、前記ターゲットを開閉するシャッターを有し、前記スパッタ成膜の際に、前記シャッターが開にされる、請求項8に記載の成膜装置。
【請求項10】
前記シャッターは開口部を有し、前記スパッタ成膜の際に前記開口部が前記ターゲットに対応した位置とされ、前記酸化処理および前記窒化処理の際に前記開口部が前記ターゲットからずれた位置とされる、請求項9に記載の成膜装置。
【請求項11】
前記カソードは、前記ターゲットの裏面に揺動可能に設けられたマグネットを有する、請求項2から請求項10のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項12】
前記マグネットは、前記複数の基板の公転に同期して揺動される、請求項11に記載の成膜装置。
【請求項13】
前記ターゲットは、前記基板に対して斜めに配置されている、請求項2から請求項12のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項14】
前記ターゲットは、円筒状をなし、その軸が基板に対して平行になるように配置され、前記軸の回りに回転するように構成される、請求項2から請求項12のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項15】
成膜装置により膜を形成する成膜方法であって、
前記成膜装置は、複数の基板を収容する処理容器と、前記処理容器内に設けられた、複数の基板が周方向に沿って配置されるように基板を保持する基板保持部と、前記基板保持部上の前記複数の基板を、自転させ、かつ、前記円周方向に沿って公転させる自転公転機構と、前記基板保持部に保持された前記複数の基板に対し、スパッタ粒子を放出させるスパッタ粒子放出機構と、を備え、
複数の基板を前記処理容器内に搬入し、前記基板保持部に保持させる工程と、
前記基板保持部に保持された前記複数の基板を前記自転公転機構で自転および公転させる工程と、
前記複数の基板を自転および公転させながら、前記スパッタ粒子放出機構からスパッタ粒子を放出させ、スパッタ成膜を行う工程と、
を有する成膜方法。
【請求項16】
前記スパッタ粒子放出機構は、スパッタ粒子を放出させるターゲットを有するカソードを複数有し、隣り合う前記カソードの間に、前記基板上のスパッタ成膜により成膜された膜に対して反応処理を行う反応処理領域を設け、
前記スパッタ成膜後に、前記反応処理領域において前記膜に対して反応処理を行う工程をさらに有する、請求項15に記載の成膜方法。
【請求項17】
前記反応処理は酸化処理または窒化処理である、請求項16に記載の成膜方法。
【請求項18】
前記スパッタ粒子放出機構は、スパッタ粒子を放出させるターゲットを有するカソードを複数有し、
前記スパッタ成膜を行う工程により成膜される前記膜はSi膜であり、
隣り合う前記カソードの間に、前記反応処理領域として酸化処理領域および窒化処理領域を有し、
前記スパッタ成膜後に、前記酸化処理領域において前記Si膜に対して酸化処理を行う工程と、
前記スパッタ成膜後に、前記窒化処理領域において前記Si膜に対して窒化処理を行う工程と、
をさらに有し、
前記複数の基板を自転および公転させながら、前記スパッタ成膜を行う工程と、前記酸化処理を行う工程と、前記スパッタ成膜を行う工程と、前記窒化処理を行う工程とを繰り返し、SiO2膜とSiN膜との積層膜を形成する、請求項15に記載の成膜方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成膜装置および成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスといった電子デバイスの製造においては、基板上に膜を形成する成膜処理が行われる。成膜処理に用いられる成膜装置としては、ターゲットからスパッタ粒子を放出させスパッタ粒子を基板に堆積させるスパッタ成膜が知られている。
【0003】
このようなスパッタ成膜を行う技術として、特許文献1には、ターゲットからのスパッタ粒子によって成膜される位置に二以上の基板を保持する一または二以上の基板ホルダーが設けられた成膜装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、高生産性と良好な制御性を両立可能な成膜装置および成膜方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る成膜装置は、複数の基板を収容する処理容器と、前記処理容器内に設けられた、複数の基板が周方向に沿って配置されるように基板を保持する基板保持部と、前記基板保持部上の前記複数の基板を、自転させ、かつ、前記円周方向に沿って公転させる自転公転機構と、前記基板保持部に保持された前記複数の基板に対し、スパッタ粒子を放出させるスパッタ粒子放出機構と、を備え、前記基板保持部に保持された前記複数の基板を前記自転公転機構で自転および公転させながら、前記スパッタ粒子放出機構からスパッタ粒子を放出させ、スパッタ成膜を行う。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、高生産性と良好な制御性を両立可能な成膜装置および成膜方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係る成膜装置を模式的に示す縦断面図である。
【
図2】一実施形態に係る成膜装置の下部を模式的に示す水平断面図である。
【
図3】一実施形態に係る成膜装置の上部の水平断面図である。
【
図4】ステージに設けられた隔離壁と排気スリットを説明するための斜視図である。
【
図5】ターゲット配置の他の例を示す水平断面図である。
【
図6】ターゲットを開閉するためのシャッターを説明するための底面図および断面図であり、シャッター開の状態を示している。
【
図7】ターゲットを開閉するためのシャッターを説明するための底面図および断面図であり、シャッター閉の状態を示している。
【
図8】マグネットの揺動と基板の公転を同期させた例を示す模式図である。
【
図9】マグネットの揺動および基板の自転および公転の詳細なタイミング例を示す図である。
【
図10】ターゲットAとターゲットBにおけるマグネットの初期位置と膜厚分布の関係および膜厚調整を説明するための模式図である。
【
図11】異なるターゲット配置の場合において、マグネットの揺動と基板の公転を同期させた例を示す模式図である。
【
図12】一実施形態により基体上にSiO
2膜およびSiN膜を交互に所望の積層数で積層した積層体を示す断面図である。
【
図13】ペースティングを行う場合に用いられるダミー基板をステージ上に載置する機構を説明するための斜視図である。
【
図15】ターゲットのさらに他の例を示す断面図である。
【
図16】ステージを周方向に二列以上配置する例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態について具体的に説明する。
図1は一実施形態に係る成膜装置を模式的に示す縦断面図、
図2は一実施形態に係る成膜装置の下部を模式的に示す水平断面図、
図3は一実施形態に係る成膜装置の上部の水平断面図である。
【0010】
成膜装置100は、複数の基板に対しスパッタ成膜を行うスパッタ成膜装置として構成される。成膜装置100は、成膜処理が行われる処理室を画成し、真空に保持される処理容器10を有している。
【0011】
処理容器10の側面には、基板Wを搬入および搬出するための搬入出口11が形成されており、搬入出口11はゲートバルブ12で開閉可能となっている。そして、処理容器10に隣接して設けられた真空搬送室(図示せず)の搬送機構(図示せず)により、処理容器10に対するの基板Wの搬入および搬出が行われる。
【0012】
処理容器10の底部には、排気口13が形成され、排気口13には排気管51を介して排気装置50が接続されている。排気装置50は、圧力制御弁、および真空ポンプを含んでおり、排気装置50により、処理容器10内が真空排気され、予め定められた真空圧力に制御されるようになっている。
【0013】
処理容器10内には回転テーブル20が水平に配置されており、回転テーブル20には円周方向に沿って基板Wを載置する複数のステージ21が等間隔に設けられている。本例では、
図2に示すように、ステージ21が5個の場合を示している。回転テーブル20およびステージ21は、基板保持機構として機能する。
【0014】
ステージ21には、加熱または冷却を行う温調機構(図示せず)が設けられており、例えば室温から350℃の範囲で温調可能となっている。ステージ21に冷却機構を設けることにより、成膜時にスパッタ粒子からの入熱による基板Wの温度上昇を防止することができる。また、ステージ21を100~350℃の高温プロセスに適合した高温に温調することにより高品質の膜を形成することができる。また、基板Wを静電吸着する静電チャックが設けられていてもよい。静電チャックは、特に高温プロセスの場合に有効である。また、ステージ21には、基板Wの受け渡しのための昇降ピン(図示せず)が設けられている。
【0015】
ステージ21の下面中央には下方に延びる回転軸22が接続され、回転軸22はモータ等の回転機構23により回転可能となっている。回転テーブル20とステージ21との間には、例えばベアリング(図示せず)が設けられている。回転機構23により回転軸22を介してステージ21を回転させることにより、ステージ21に載置された基板Wが自転されるように構成されている。ステージ21の周囲には、基板Wを囲むようにマスク部材26が設けられている。
【0016】
回転テーブル20の中央には下方に延びる回転軸24が接続され、回転軸24は処理容器10の外部に設けられたモータ等の回転機構25により回転可能となっている。回転機構25により回転軸24を介して回転テーブル20を回転させることにより、ステージ21に載置された基板Wがステージ21の配列方向に沿って公転されるように構成されている。
【0017】
すなわち、回転機構23および回転機構25により、ステージ21に載置された基板Wが自転および公転が可能となっており、回転機構23および回転機構25は、自転公転機構として機能する。そして、この自転公転機構により、基板Wを連続的に自転させながら公転させることができる。
【0018】
回転テーブル20の隣接するステージ21の間の位置には、隔離壁27と排気スリット28が設けられている。
図4に示すように、隔離壁27により隣接するステージ21を物理的に隔離しつつ、スリット28を介してステージ21の間を排気するので、隣接する基板Wの雰囲気を隔離することができる。
【0019】
回転テーブル20の上方には、
図3に示すように、スパッタ粒子を放出する4つのカソード30が等間隔に設けられ、隣り合うカソード30の間に、酸化処理や窒化処理のような反応処理を行う4つの反応処理領域40が設けられている。なお、カソード30の下方は成膜領域となっている。
【0020】
4つのカソード30は、スパッタ粒子放出機構として構成され、処理容器10の天壁部に設けられている。カソード30は、ターゲットホルダ31と、ターゲットホルダ31に保持されるターゲット32と、ターゲットホルダ32を介してターゲット32に電圧を印加する電源33と、マグネット34とを有する。本例では、ターゲット32が基板Wに対して平行に設けられた例を示している。
【0021】
ターゲットホルダ31は、導電性を有する材料からなり、絶縁性の部材35を介して、処理容器10の天壁に取り付けられている。
【0022】
ターゲット32は、矩形状をなし、成膜しようとする膜の構成元素を含む材料からなり、導電性材料であっても誘電体材料であってもよい。ターゲット32は、ターゲットホルダ31に保持されている。
【0023】
電源33は、ターゲットホルダ31に電気的に接続されている。電源33は、ターゲット32が導電性材料である場合には、直流電源であってよく、ターゲット32が誘電性材料である場合には、高周波電源であってよい。
【0024】
マグネット34は、ターゲットホルダ31の裏面側に設けられている。マグネット34は、ターゲット32に漏洩磁場を与え、マグネトロンスパッタを行うためのものである。マグネット34は、マグネット駆動部(図示せず)によりターゲットホルダ31の裏面に沿って揺動するように構成されている。本例では、ターゲット32は、その長辺が径方向になるように配置され、マグネット34がターゲット32の長辺方向に沿って径方向に揺動するように構成されている。
【0025】
なお、ターゲット32の配置位置、および向きは任意であり、基板Wに形成されたパターン等に応じて設定される。
図5のように、ターゲット32を、その長手方向が径方向に直交する方向になるように配置(横置き)してもよい。この場合は、マグネット34は径方向に直交するように揺動される。
【0026】
処理容器10内のカソード30の直下の領域には、ガス供給部(図示せず)からArガス等のスパッタガスが供給され、電源33からターゲットホルダ31を介してターゲット32に電圧が印加されることにより、ターゲット32の周囲でスパッタガスが解離する。このとき、マグネット34の漏洩磁場がターゲット32の周囲に及ぼされることで、ターゲット32の周囲に集中してマグネトロンプラズマが形成される。この状態でプラズマ中の正イオンがターゲット32に衝突し、ターゲット32からスパッタ粒子が放出される。スパッタ粒子は、ターゲット32の下方を通過する基板W上に堆積され、基板W上に所望の膜が形成される。形成される膜は特に限定されないが、例えばSiを挙げることができる。
【0027】
ターゲット32の下方位置には、ターゲット32を開閉可能なシャッター36が設けられている。シャッター36については、後で詳細に説明する。
【0028】
反応処理領域40は、ガス供給部(図示せず)から反応ガス、例えばO2ガス等の酸化ガスまたはN2ガス等の窒化ガスが供給されることにより反応ガス雰囲気が形成される領域である。そして、カソード30の下方の成膜領域においてスパッタ成膜により膜が形成されたステージ21上の基板Wが反応処理領域40を通過することにより反応処理、例えば酸化処理や窒化処理が行われる。スパッタにより成膜される膜がSi膜の場合、例えば、反応処理領域40で酸化処理が行われることによりSi膜が酸化されてSiO2膜となり、窒化処理が行われることによりSiN膜となる。
【0029】
反応処理が酸化処理の場合に用いられる酸化ガスとしては、O2ガス以外にO3、N2O、H2O、CH2OH、C2H5OH、CO、CO2を挙げることができ、反応処理が窒化処理の場合に用いられる窒化ガスとしては、N2ガス以外にNH3、N2Oや、CH3NH2、(CH3)2NH、(CH3)3N等の有機アミン化合物を挙げることができる。
【0030】
反応処理領域40へのガスの供給方法は特に限定されず、上から供給しても横から供給してもよく、シャワーヘッドのようなガス導入部材を用いて供給してもよい。また、適宜のプラズマを用いて反応処理を行ってもよい。
【0031】
ステージ21および回転テーブル20を回転させて基板Wを自転および公転させながら、カソード30からスパッタ粒子を放出させることにより、カソード30の領域を通過する基板W上に所望の膜が均一に形成される。そして、その際に、反応処理領域40を通過させることにより、スパッタ成膜により形成された膜に酸化処理や窒化処理等の反応処理を施すことができる。
【0032】
例えば、反応処理領域で酸化処理と窒化処理を交互に行うようにすれば、成膜領域でのSi膜の成膜→反応処理領域での酸化処理→成膜領域でのSiの成膜→反応処理領域での窒化処理を繰り返してSiO2膜およびSiN膜を交互に形成することができる。
【0033】
以上のように、基板Wを自転および公転させながら成膜処理を行うが、このとき自転速度は20~120rpmとすることができ、公転速度は5~30rpmとすることができる。また、膜の均一性を高める観点から、自転速度を公転速度の整数倍とすることが好ましく、本例のように4つのカソード40を有する場合、基板Wの自転速度を公転速度の4×n(nは整数)倍とすることが好ましい。
【0034】
上述したシャッター36は、
図6の(a)に示す底面図のように4つの開口部37を有しており、
図6の(b)に示す断面図のように回転および昇降可能に設けられる。
図6(a)、(b)は、4つの開口部37がターゲット32の位置にありシャッター36開の場合を示しており、この状態でスパッタ成膜が行われる。
図7(a)、(b)は、シャッター36が
図6の位置から回転して開口部37がターゲット32からずれた位置となる、シャッター36閉の場合を示しており、この状態で酸化処理や窒化処理のような反応処理が行われる。これによりターゲット32の表面の酸化や窒化等を抑制することができる。また、シャッター36を閉じた状態で、ターゲット32のプリスパッタを行うことができる。
【0035】
成膜装置100は、コンピュータからなる制御部60を有する。制御部60は、成膜装置100の各構成部、例えば、回転機構23および25、電源33、マグネット34の駆動部、ガス供給部、排気装置50等を制御する。制御部60は、実際にこれらの制御を行うCPUからなる主制御部と、入力装置、出力装置、表示装置、記憶装置とを有している。記憶装置には、成膜装置100で実行される各種処理のパラメータが記憶され、また、成膜装置100で実行される処理を制御するためのプログラム、すなわち処理レシピが格納された記憶媒体を有している。制御部60の主制御部は、記憶媒体に記憶されている所定の処理レシピを呼び出し、その処理レシピに基づいて成膜装置100に成膜処理を実行させる。
【0036】
次に、以上のように構成される成膜装置100の成膜処理動作について説明する。以下の処理は制御部60の制御により実行される。
【0037】
まず、ゲートバルブ12を開いて、回転テーブル20を回転させながら、真空搬送室の搬送機構により、処理容器10内の複数のステージ21に基板Wを順次載置する。基板Wの載置は、各ステージ21の昇降ピンを載置面から突出させた状態で行われる。次いで、真空搬送室の搬送機構を戻してゲートバルブ12を閉じる。
【0038】
次に、処理容器10内を所望の圧力に制御し、ステージ21および回転テーブル20を回転させて基板Wを自転および公転させる。
【0039】
そして、まずカソード30の下方の成膜領域を通過する基板Wに対してスパッタ成膜を行う。スパッタ成膜は、処理容器10内にArガス等のスパッタガスを導入し、マグネット34を揺動させつつカソード30のターゲット32に電圧を印加することにより行われる。電源33からの電圧がターゲット32に印加されることにより、ターゲット32の周囲でスパッタガスが解離し、マグネット34の漏洩磁場がターゲット32の周囲に及ぼされることで、ターゲット32の周囲に集中してマグネトロンプラズマが形成される。この状態でプラズマ中の正イオンがターゲット32に衝突し、ターゲット32からスパッタ粒子が放出され、ターゲット32の下方を通過する基板W上に堆積され、膜が形成される。
【0040】
一つのカソード30を通過してスパッタにより膜が形成された基板Wは、次に反応処理領域40を通過して酸化処理や窒化処理のような反応処理が施される。反応処理領域40では、例えば基板Wに酸化ガスや窒化ガスのような反応ガスを供給することにより酸化処理や窒化処理が行われる。
【0041】
一つの反応処理領域40を通過した後の基板Wは、次のカソード30の下方の成膜領域を通過して同様に膜が形成され、さらに次の反応領域を通過することにより反応処理が行われる。このようにして、基板Wに対してスパッタ成膜と反応処理が交互に繰り返し行われる。
【0042】
以上のように、本実施形態では基板Wを自転および公転させながら複数(本例では5枚)の基板Wに対してスパッタ成膜を行う。これにより、複数の基板Wに対して同時に成膜処理を行うので高い生産性が得られるとともに、基板Wが自転した状態で公転してターゲット32の下方を通過するので良好な制御性で均一にスパッタ成膜を行うことができる。
【0043】
また、本実施形態では、スパッタ成膜を行った後の基板Wに対して反応処理領域40で酸化処理や窒化処理のような反応処理を行うことができるので、スパッタにより成膜された膜に対して極めて簡易に所望の反応を生じさせることができる。
【0044】
特許文献1には、基板ホルダーに複数の基板を保持させてスパッタ成膜を行う技術が開示されているが、高生産性と良好な制御性を両立するという視点は含まれていない。また、従来のバッチ式のスパッタ装置では、複数の基板を積層配置して処理を行うので生産性が高いが、膜厚分布等のプロセス制御性が不十分である。また、枚葉式のスパッタ装置は、プロセス制御性は高いが、バッチ式の場合よりも生産性が低く、生産性を高めるためにはチャンバ数を増やすことで対応せざるを得ず、フットプリントの増加によりコスト低下が困難である。
【0045】
これに対して、本実施形態では、上述したように、高い生産性と良好なプロセス制御性を両立することができる。
【0046】
本実施形態のようにマグネット34を用いたマグネトロンスパッタの場合、マグネットの位置により基板Wの表面に堆積される膜の厚さが異なり、マグネット34の直下位置において膜厚が大きくなる。このため、マグネット34の位置によって膜厚分布が生じることがある。このようなマグネット34の位置による膜厚分布は、マグネット34の揺動と基板Wの公転を同期させることにより抑制することができる。
【0047】
例えば、4つのターゲット32をA~Dとし、基板WがターゲットAから隣り合うターゲットBまで1/4周(90°)公転し、マグネット34がターゲットの長手方向の一端aから他端bの間を揺動する場合を考える。このとき、例えば
図8の(a)~(d)のようにマグネット34の揺動と基板Wの公転を同期させることができる。そして、基板WがターゲットAからターゲットBまで公転している間、基板Wはn回(nは整数)自転するようにする。
【0048】
具体的には、初期状態の
図8の(a)では、基板WがターゲットAの直下に位置し、ターゲットAのマグネット34は一端a側に位置し、ターゲットBのマグネット34は他端b側に位置している。この状態から基板Wの公転に同期して、マグネット34を揺動させながら、基板Wが(b)の位置、(c)の反応処理領域40の位置を経て、(d)のターゲットBの直下位置まで公転し、(d)の位置ではターゲットAおよびターゲットBのマグネット34の位置は初期状態と同じになっている。
【0049】
このときのマグネット34の揺動および基板Wの自転および公転の詳細なタイミング例を
図9に示す。この例では、基板Wの公転に同期し、かつターゲットAとターゲットBとでマグネット34の位置が逆になるようにマグネット34を揺動させている。
図10に示すように、初期状態において、ターゲットAではマグネット34が存在する一端a側において基板W上の膜の膜厚が厚くなり(
図10(a))、ターゲットBではマグネット34が存在する他端b側において基板上の膜の膜厚が厚くなる(
図10(b))。したがって、基板Wを自転させながら公転させ、公転に同期して
図9に示すようにターゲットAとターゲットBでマグネット34の位置が反対になるようにマグネット34を揺動させることにより、
図10(c)のように均一な膜厚が得られる。
【0050】
以上は基板WをターゲットAとターゲットBの間で1/4周公転させる際の当該2つのターゲットのマグネット34の揺動を示しているが、ターゲットBとターゲットCの間、ターゲットCとターゲットDの間、ターゲットDからターゲットAの間も全く同様である。
【0051】
また、基板Wが1/4周公転する間に基板Wを整数回(n回)自転させることにより、膜の均一性を高めることができる。すなわち、本例のようにカソード30が4つの場合、基板Wの自転速度を公転速度の4×n(nは整数)倍とすることが好ましい。
【0052】
なお、ターゲット32を
図5のように横置きした場合も、例えば、
図11の(a)~(d)のようにマグネット34の揺動と基板Wの公転を同期させることができる。
【0053】
本実施形態において、スパッタにより成膜する膜は特に限定されないが、一例としてSi膜を挙げることができる。スパッタにより成膜される膜がSi膜の場合、例えば、反応処理領域40で酸化処理が行われることによりSi膜が酸化されてSiO2膜が形成され、窒化処理が行われることによりSiN膜が形成される。
【0054】
そして、スパッタ成膜でSi膜を成膜し、反応処理領域で酸化処理と窒化処理を交互に行うようにすれば、
図12に示すように、例えばSiからなる基体200上に、SiO
2膜201およびSiN膜202を交互に所望の積層数で積層した積層体210を形成することができる。すなわち、基板Wを自転させながら、回転テーブル20により公転させることにより、基板Wに対して、成膜領域におけるSi成膜→反応処理領域40での酸化処理→成膜領域におけるSi成膜→反応領域40での窒化処理を繰り返し行うことができ、SiO
2膜およびSiN膜を交互に所望の積層数で形成することができる。例えば、半導体メモリに用いられる100層を超えるSiO
2/SiN積層膜を製造することができる。
【0055】
このように、複数の基板Wを自転および公転させている間に、Si成膜→酸化処理→Si成膜→窒化処理を繰り返すことによりSiO2/SiN積層膜を製造できるので、極めて高効率であり高スループットが実現できる。また、基板Wを搬送することなく一つの処理容器内で一括してSiO2/SiN積層膜を製造できるので、パーティクルの発生を低減することができる。しかも、円周状に複数配置された基板Wを自転および公転させながら基板Wに対してスパッタ成膜や酸化処理・窒化処理を行うので膜厚等の制御性が高い。
【0056】
これに対して、特許文献1では、基板ホルダーに複数の基板を保持させてスパッタ成膜を行うことが記載されているのみであり、SiO2/SiN積層膜を一括して製造することは想定していない。また、SiO2膜の成膜やSiN膜の成膜は、従来CVDで行うことが主流であり、バッチ式や枚葉式の装置が用いられている。しかし、いずれも場合にもSiO2/SiN積層膜を製造するためには、SiO2膜およびSiN膜の成膜処理にそれぞれ別個の処理容器を用いる必要があり、処理容器間の基板の搬送が必要であり、生産性が低下するとともに、搬送にともないパーティクル発生の危険性がある。
【0057】
本実施形態では、上述したように、途中で基板の搬送を行うことがないため、高効率かつ高スループット(生産性)でかつパーティクルの危険性を極めて低くしてSiO2/SiN積層膜を製造することができる。
【0058】
また、本実施形態では、反応処理領域40をカソード30の間に設け、かつ回転テーブル20の隣接するステージ21の間に、隔離壁27と排気スリット28を設け、隣接する基板Wの雰囲気を隔離する。これにより、ターゲット32の酸化等を防止することができる。
【0059】
また、ターゲット32は、シャッター36により開閉可能になっているので、反応処理領域40で酸化処理や窒化処理等の反応処理を行う場合に、シャッター36を閉にすることにより、ターゲット32の表面の酸化や窒化等を抑制することができる。また、シャッター36を閉じた状態で、処理容器10内にArガスを導入し、ターゲット32に電圧を印加してプリスパッタを行うことができる。これにより、ターゲット32の最表面に形成された酸化膜や窒化膜を除去することができる。
【0060】
ターゲット32の一部をペースティング用とし、ペースティングを可能にしてもよい。スパッタ成膜を行う際には、スパッタされた金属やそれが酸化した金属酸化物が処理容器10内の部材や内壁に付着するが、付着物が剥がれてパーティクルとなるおそれがある。このような場合に、ペースティング用のターゲットに電圧を印加してスパッタするペースティングを行うことにより、処理容器10内に付着した付着物を金属で覆う。これにより、パーティクルの発生を抑制することができる。ペースティング用のターゲットとしては、Ti、SiC、Ta等を挙げることができる。
【0061】
ペースティングは、ステージ21上にダミー基板を載置した状態で行う。
図13は、ペースティングのためのダミー基板をステージ21上に載置する機構を備えた実施形態を示す図である。
図13に示すように、本実施形態では、回転テーブル20に隣接してダミー基板を収容するダミー基板収容容器70が配置される。ダミー基板収容容器70は、昇降可能に設けられ、その中には複数のダミー基板dWが積層状態で収容されるように構成される。そして、ダミー基板収容容器70に隣接してダミー基板搬送アーム71が設けられ、ダミー基板収容容器70を昇降させつつ、ダミー基板搬送アーム71によりダミー基板dWが各ステージ21に搬送される。
【0062】
次に、ターゲットの他の例について説明する。
図14の例は、処理容器10の天壁部を円錐状にしてターゲット32を基板Wに対して斜めに配置した例である。このようにターゲット32を斜めに配置することにより、ターゲット粒子を基板Wに斜めに入射させて堆積させることができる。これにより、膜厚分布調整しやすく均一な膜形成が可能である。
【0063】
図15の例は、ターゲット32を円筒状とした例である。本例では円筒状のターゲット32は、その軸が基板Wに対して平行になるように配置され、軸回りに回転するように構成されている。マグネット34は円筒状のターゲット32の内部に設けられている。ターゲット32をこのように構成することにより、ターゲット32の寿命が長くなり、生産性を高めることができる。
【0064】
以上、実施形態について説明したが、今回開示された実施形態は、全ての点において例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0065】
例えば、上記実施形態のスパッタ粒子を放出させるカソードの構成は例示であり、他の手法でスパッタ粒子を放出させるものであってもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、カソードを4つ設けた例を示したが、これに限るものではない。均一なスパッタ成膜を行うためには、ターゲットは2つ以上、さらには4つ以上が好ましい。
【0067】
さらに、上記実施形態では、スパッタ成膜で成膜する膜としてSi膜を例示し、Si膜の成膜後に酸化処理してSiO2膜を成膜する処理と、Si膜の成膜後に窒化処理してSiN膜を成膜する処理とを繰り返す例を示したがこれに限るものではない。すなわち、成膜する膜はSi以外であってもよいし、反応処理は酸化処理および窒化処理を繰り返すものに限らず、酸化処理のみあるいは窒化処理のみであっても、または、炭化等の他の反応処理であってもよい。
【0068】
さらにまた、カソードによるスパッタ成膜においては、1種類の膜である必要はなく、複数種類の膜を形成するようにしてもよい。また、反応処理領域を設けず、カソードによるスパッタ成膜のみを行うようにしてもよい。
【0069】
さらにまた、上記実施形態では、5枚の基板を同時に処理する場合について示したが、基板は複数であれば枚数は限定されない。生産性の観点からは、4枚以上が好ましい。また、基板を載置するステージを周方向に一列で配置した例を示したが、周方向に二列以上配置してもよい。ここで、二列以上配置するとは、公転半径が異なる複数の列を配置することをいい、例えば
図16のような例を挙げることができる。本例では
図16(a)に示すように、回転テーブル20に外周側の3つのステージ21と内周側の3つのステージ21がそれぞれ等間隔に設けられている。図中にこれらの公転軌跡が破線で記されており、異なる公転半径を有することが示されている。このとき、例えば
図16(b)に示すように、ターゲット32およびマグネット34は、は外周側のステージ21および内周側のステージ21に配置された基板Wをカバーするように配置されることが好ましい。
【0070】
さらにまた、ターゲットの形状として、矩形および円筒状を例示したが、これに限るものではなく、例えば矩形以外の多角形であってもよい。
【0071】
さらにまた、上記実施形態では、基板を公転させる公転機構として、複数のステージを回転可能に保持する回転テーブルを用いた例を示したが、これに限るものではなく、例えば複数のステージをアームで支持して公転させるものであってもよい。
【符号の説明】
【0072】
10;処理容器
20;回転テーブル(公転機構)
21;ステージ
23,25;回転機構
27;隔離壁
28;スリット
30;カソード
32;ターゲット
33;電源
34;マグネット
36;シャッター
40;反応処理領域
60;制御部
70;ダミー基板収容容器
71;ダミー基板搬送アーム
100;成膜装置
W;基板