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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051362
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】容器用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 65/00 20060101AFI20230404BHJP
   C08L 23/02 20060101ALI20230404BHJP
   C08L 53/02 20060101ALI20230404BHJP
   C08G 61/06 20060101ALI20230404BHJP
   C08F 232/08 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
C08L65/00
C08L23/02
C08L53/02
C08G61/06
C08F232/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021161977
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100195017
【弁理士】
【氏名又は名称】水間 章子
(72)【発明者】
【氏名】荒井 邦仁
【テーマコード(参考)】
4J002
4J032
4J100
【Fターム(参考)】
4J002AE052
4J002BB011
4J002BB032
4J002BB122
4J002BB141
4J002BB161
4J002BB202
4J002BP013
4J002CE001
4J002FD040
4J002FD050
4J002FD070
4J002FD160
4J002FD170
4J002FD202
4J002GG01
4J032CA38
4J032CA45
4J032CA46
4J032CB04
4J032CC03
4J032CD03
4J032CE03
4J032CF03
4J032CF06
4J032CG02
4J032CG07
4J100AA02Q
4J100AR11P
4J100CA04
4J100DA25
4J100FA10
4J100FA19
4J100FA28
4J100FA29
4J100FA30
4J100GA02
4J100GA18
4J100GB01
4J100GC07
4J100GC17
4J100GC35
4J100JA58
(57)【要約】
【課題】成形性に優れており、透明性及び耐蒸気滅菌性に優れる容器を成形可能な容器用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】環状オレフィン系樹脂と、環状オレフィン系樹脂100質量部に対して0.01質量部以上10質量部以下の鎖状炭化水素系加工助剤とを含む容器用樹脂組成物とする。そして、環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度(Tg)を125℃以上200℃以下、鎖状炭化水素系加工助剤の数平均分子量(Mn)を100以上5,000以下とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状オレフィン系樹脂と、
前記環状オレフィン系樹脂100質量部に対して0.01質量部以上10質量部以下の鎖状炭化水素系加工助剤とを含む容器用樹脂組成物であって、
前記環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度(Tg)が125℃以上200℃以下であり、
前記鎖状炭化水素系加工助剤の数平均分子量(Mn)が100以上5,000以下である、容器用樹脂組成物。
【請求項2】
さらに、スチレン-共役ジエンブロック共重合体水素化物を前記環状オレフィン系樹脂100質量部に対して0.01質量部以上0.5質量部以下の割合で含む、請求項1に記載の容器用樹脂組成物。
【請求項3】
前記鎖状炭化水素系加工助剤が鎖状飽和炭化水素からなる、請求項1又は2に記載の容器用樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に関し、特に、容器を成形するための材料として用いられる容器用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車及び電子部品、光学部品、家電部品等の種々の成形体の材料として樹脂組成物が用いられている。このような樹脂組成物として、例えば、特許文献1には、多環式ノルボルネン系単量体由来の繰返し単位を有する結晶性の環状オレフィン開環重合体水素添加物と、この水素添加物に対して所定量のワックスと、核剤とを含有する樹脂組成物が記載されている。この樹脂組成物によれば、比較的低温の金型温度で射出成形しても、結晶化が十分に進行し、熱の影響による変形が起こり難い成形体が得られる。また、この樹脂組成物によれば、高温条件下であっても優れた光反射率が低下することなく長期間維持されるLED光反射体を良好な成形性で得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2012/033076号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の樹脂組成物は、複雑な形状を有する容器を成形するための材料として用いるには成形性が不十分であった。また、上記樹脂組成物を用いて成形した容器は、透明性や、耐蒸気滅菌性を向上させるという点において、改善の余地があった。
【0005】
そこで、本発明は、成形性に優れており、透明性及び耐蒸気滅菌性に優れる容器を成形可能な容器用樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。そして、本発明者は、環状オレフィン系樹脂と、当該環状オレフィン系樹脂に対して所定量の鎖状炭化水素系加工助剤とを含む樹脂組成物であって、上記環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度(Tg)が所定範囲内であり、かつ、上記鎖状炭化水素系加工助剤の数平均分子量(Mn)が所定範囲内である樹脂組成物は、複雑な形状を有する容器を成形するための材料として用いる場合でも、優れた成形性を発揮し得ることを見出した。また、本発明者は、上記樹脂組成物を用いることで、透明性及び耐蒸気滅菌性に優れた容器を成形できることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであって、本発明の容器用樹脂組成物は、環状オレフィン系樹脂と、前記環状オレフィン系樹脂100質量部に対して0.01質量部以上10質量部以下の鎖状炭化水素系加工助剤とを含む容器用樹脂組成物であって、前記環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度(Tg)が125℃以上200℃以下であり、前記鎖状炭化水素系加工助剤の数平均分子量(Mn)が100以上5,000以下であることを特徴とする。このように、環状オレフィン系樹脂と、環状オレフィン系樹脂に対して所定量の鎖状炭化水素系加工助剤とを含む樹脂組成物であって、環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度(Tg)が所定範囲内であり、鎖状炭化水素系加工助剤の数平均分子量(Mn)が所定範囲内である樹脂組成物は、成形性に優れ、特に、複雑な形状を有する容器を成形する際の材料として用いた場合でも、優れた成形性を発揮し得る。そして、この樹脂組成物を用いれば、透明性及び耐蒸気滅菌性に優れた容器を成形することができる。
なお、本発明において、環状オレフィン系樹脂の「ガラス転移温度(Tg)」は、本明細書の実施例に記載の方法により測定することができる。
また、本発明において、鎖状炭化水素系加工助剤の「数平均分子量(Mn)」は、テトラヒドロフランを展開溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算値を指す。
【0008】
ここで、本発明の容器用樹脂組成物は、さらに、スチレン-共役ジエンブロック共重合体水素化物を前記環状オレフィン系樹脂100質量部に対して0.01質量部以上0.5質量部以下の割合で含むことが好ましい。さらにスチレン-共役ジエンブロック共重合体水素化物を上記所定の割合で含んでいれば、耐蒸気滅菌性や耐湿性が向上した容器を成形することができる。
【0009】
そして、本発明の容器用樹脂組成物において、前記鎖状炭化水素系加工助剤が鎖状飽和炭化水素からなることが好ましい。鎖状飽和炭化水素からなる鎖状炭化水素系加工助剤を用いれば、透明性が更に向上した容器を成形することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、成形性に優れており、透明性及び耐蒸気滅菌性に優れた容器を成形可能な容器用樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ここで、本発明の容器用樹脂組成物は、各種容器を成形するための材料として用いることができる。中でも、本発明の容器用樹脂組成物は、複雑な形状を有する容器を成形するための材料として好適に用いることができる。
【0012】
(容器用樹脂組成物)
本発明の容器用樹脂組成物は、環状オレフィン系樹脂と、鎖状炭化水素系加工助剤とを含み、任意に、環状オレフィン系樹脂及び鎖状炭化水素系加工助剤以外の成分(以下、「その他の成分」という。)を更に含む。そして、本発明の容器用樹脂組成物は、鎖状炭化水素加工助剤を環状オレフィン系樹脂100質量部に対して0.01質量部以上10質量部以下の割合で含み、環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度(Tg)が125℃以上200℃以下であり、鎖状炭化水素系加工助剤の数平均分子量(Mn)が100以上5,000以下であることを特徴とする。
【0013】
そして、本発明の容器用樹脂組成物は、上記所定の性状を有する環状オレフィン系樹脂と鎖状炭化水素系加工助剤とを所定の割合で含んでいるため、成形性に優れており、特に、複雑な形状を有する容器を成形する際の材料として用いた場合でも、優れた成形性を発揮し得る。そして、本発明の容器用樹脂組成物を用いれば、透明性及び耐蒸気滅菌性に優れる容器を成形することができる。
【0014】
<環状オレフィン系樹脂>
本発明の容器用樹脂組成物は、環状オレフィン系樹脂を含んでいるため、透明性及び耐湿性に優れた容器を成形することができる。
ここで、環状オレフィン系樹脂としては、例えば、環状オレフィンの開環重合体、環状オレフィンの開環重合体の水素添加物、及び環状オレフィンと鎖状オレフィンとの共重合体などが挙げられる。
これらの環状オレフィン系樹脂は、1種単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0015】
<<環状オレフィンの開環重合体>>
環状オレフィンの開環重合体は、1種類又は複数種類の環状オレフィンが開環重合された重合体である。
【0016】
環状オレフィンの具体例としては、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、シクロペンタジエン、1,3-シクロヘキサジエン等の1環の環状オレフィン;
【0017】
ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン(慣用名:ノルボルネン)、5-メチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5,5-ジメチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-エチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-ブチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-エチリデン-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-ヘキシル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-オクチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-オクタデシル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-メチリデン-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-ビニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-プロペニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン等の2環の環状オレフィン;
【0018】
トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ-3,8-ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ-3,7-ジエン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ-3-エン、トリシクロ[6.2.1.02,7]ウンデカ-3,9-ジエン、トリシクロ[6.2.1.02,7]ウンデカ-4,9-ジエン、トリシクロ[6.2.1.02,7]ウンデカ-9-エン、5-シクロペンチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-シクロヘキシル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-シクロヘキセニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-フェニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン等の3環の環状オレフィン;
【0019】
テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、9-メチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-エチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、8-エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、9-メチリデンテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-エチリデンテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-ビニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-プロペニル-テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ-3,5,7,12-テトラエン(1,4-メタノ-1,4,4a,9a-テトラヒドロフルオレンともいう。)、テトラシクロ[7.4.0.02,7.110,13]テトラデカ-2,4,6,11-テトラエン、テトラシクロ[10.2.1.02,11.04,9]ペンタデカ-4,6,8,13-テトラエン(1,4-メタノ-1,4,4a,9,9a,10-ヘキサヒドロアントラセンともいう。)等の4環の環状オレフィン;
【0020】
9-シクロペンチル-テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-シクロヘキシル-テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-シクロヘキセニル-テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]-4-ヘキサデセン、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]-4-ペンタデセン、ペンタシクロ[7.4.0.02,7.13,6.110,13]-4-ペンタデセン、9-フェニル-シクロペンチル-テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16]-5-エイコセン、ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.03,8.14,7.012,17.113,16]-14-エイコセン等の5環以上の環状オレフィンが挙げられる。
これらの環状オレフィンは、それぞれ単独であるいは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
環状オレフィンの開環重合体の調製方法としては、特に限定されることはなく、上述した環状オレフィンを開環重合させるための既知の方法、例えば、メタセシス重合などを用いることができる。
【0022】
<<環状オレフィンの開環重合体の水素添加物>>
環状オレフィンの開環重合体の水素添加物は、上述した環状オレフィンの開環重合体が水素添加されたものである。
環状オレフィンの開環重合体に水素添加する方法としては、特に限定されることはなく、既知の方法を用いることができ、例えば、上記環状オレフィンの開環重合体の溶液に、ニッケル及びパラジウムなどの遷移金属を含む公知の水素添加触媒を添加して、当該開環重合体中の炭素-炭素二重結合を水素添加する方法などが挙げられる。
また、水素添加率としては、90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましく、99%以上であることが更に好ましい。
なお、水素添加率は、本明細書の実施例に記載の方法により測定できる。
【0023】
<<環状オレフィンと鎖状オレフィンとの共重合体>>
環状オレフィンと鎖状オレフィンとの共重合体は、通常、環状オレフィンと鎖状オレフィンとが付加共重合された重合体である。
【0024】
環状オレフィンとしては、上述した環状オレフィンの開環重合体の調製に用いられる環状オレフィンと同様のものを用いることができる。
【0025】
鎖状オレフィンの具体例としては、上述した環状オレフィンと共重合可能であれば、特に限定されることはなく、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ブタジエン、ペンタジエン、ヘキサジエンなどの炭素数2~20の直鎖状又は分岐状のオレフィンが挙げられる。
【0026】
環状オレフィンと鎖状オレフィンとの共重合体の調製方法としては、特に限定されることはなく、上述した環状オレフィンと鎖状オレフィンとを共重合させるための既知の方法を用いることができる。
【0027】
-ガラス転移温度(Tg)-
本発明の容器用樹脂組成物において、上述した環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、125℃以上であり、130℃以上であることが好ましく、135℃以上であることがより好ましく、200℃以下であり、190℃以下であることが好ましく、180℃以下であることがより好ましい。環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度が125℃以上であれば、容器用樹脂組成物は成形性に優れる。また、環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度が200℃以下であれば、高温での変形が抑制された容器を成形することができる。
【0028】
<鎖状炭化水素系加工助剤>
本発明の容器用樹脂組成物に含まれる鎖状炭化水素系加工助剤は、環状オレフィン系樹脂の成形性を向上させる成分である。鎖状炭化水素系加工助剤としては、例えば、鎖状飽和炭化水素からなる鎖状炭化水素系加工助剤や、鎖状不飽和炭化水素からなる鎖状炭化水素系加工助剤を用いることができる。
【0029】
そして、鎖状飽和炭化水素からなる鎖状炭化水素系加工助剤としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、パラフィン、水素添加ポリブテンなどが挙げられる。また、鎖状不飽和炭化水素からなる鎖状炭化水素系加工助剤としては、例えば、ポリブテンなどが挙げられる。これらの中でも、容器の透明性を更に向上させる観点から、鎖状炭化水素系加工助剤は、鎖状飽和炭化水素からなる鎖状炭化水素系加工助剤であることが好ましく、ポリエチレン、水素添加ポリブテンであることがより好ましい。
これらの鎖状炭化水素系加工助剤は、1種単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0030】
また、鎖状炭化水素系加工助剤の数平均分子量(Mn)は、100以上であり、200以上であることが好ましく、500以上であることがより好ましく、5,000以下であり、3,000以下であることが好ましく、2,000以下であることがより好ましい。鎖状炭化水素系加工助剤の数平均分子量が100以上であれば、透明性に優れた容器を成形することができる。また、鎖状炭化水素系加工助剤の数平均分子量が5,000以下であれば、本発明の容器用樹脂組成物を用いて容器を成形する際に、金型汚れを防止することができる。
【0031】
そして、本発明の容器用樹脂組成物中に含まれる鎖状炭化水素系加工助剤の割合は、環状オレフィン系樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上であり、0.05質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましく、10質量部以下であり、5質量部以下であることが好ましく、1質量部以下であることがより好ましい。鎖状炭化水素系加工助剤の含有割合が上記下限値以上であれば、容器の透明性を更に高めることができる。また、鎖状炭化水素系加工助剤の含有割合が上記上限値以下であれば、容器用樹脂組成物の成形性を更に向上させることができる。
【0032】
<その他の成分>
本発明の容器用樹脂組成物は、本発明の効果を妨げない範囲であれば、特に限定されず、任意にその他の成分を含むことができる。その他の成分としては、例えば、各種添加剤が挙げられる。添加剤としては、特に限定されず、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収材、光安定剤、近赤外線吸収材、滑剤、離型剤などが挙げられる。さらに、本発明の容器用樹脂組成物は、その他の成分として、上記環状オレフィン系樹脂以外の樹脂成分(以下、「その他の樹脂成分」という。)を含んでいてもよい。
【0033】
そして、本発明の容器用樹脂組成物は、その他の樹脂成分として、スチレン-共役ジエンブロック共重合体水素化物を含むことが好ましい。スチレン-共役ジエンブロック共重合体水素化物を含んでいれば、容器の耐湿性を向上させることができる。
【0034】
<スチレン-共役ジエンブロック共重合体水素化物>
ここで、スチレン-共役ジエンブロック共重合体水素化物は、スチレン系単量体由来の繰り返し単位を主成分とするスチレンブロックと、共役ジエン単量体由来の繰り返し単位を主成分とするジエンブロックとを有するスチレンブロック-共役ジエンブロック共重合体の水素化物である。
【0035】
スチレンブロックを与えるスチレン系単量体としては、具体的には、スチレン、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、4-t-ブチルスチレン、5-t-ブチル-2-メチルスチレン、4-モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、4-モノフルオロスチレン、4-フェニルスチレンなどが挙げられ、吸湿性の面で極性基を含有しないものが好ましく、スチレンが特に好ましい。
また、スチレンブロック中には、スチレン系単量体由来の繰り返し単位以外に、その他のビニル化合物由来の繰り返し単位や鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位などのその他の単量体単位が含まれていてもよい。そして、これらその他の単量体単位の含有割合は、全スチレンブロックに対して、通常10質量%以下であり、5質量%以下であることが好ましい。
【0036】
ジエンブロックを与える共役ジエン単量体としては、具体的には、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエンなどの鎖状共役ジエン化合物が挙げられ、吸湿性の面で極性基を含有しないものが好ましく1,3-ブタジエン、イソプレンが特に好ましい。
【0037】
ジエンブロックには、共役ジエン単量体由来の繰り返し単位以外に、スチレン系単量体由来の繰り返し単位やその他のビニル化合物由来の繰り返し単位などのその他の単量体単位が含まれていてもよい。そして、本発明の容器用組成物を用いて容器を成形する際に、金型汚れの発生を更に抑制する観点からは、これらその他の単量体単位の含有割合は、全ジエンブロックに対して通常10質量%以下であり、5質量%以下であることが好ましい。
【0038】
スチレン-共役ジエンブロック共重合体水素化物の具体例としては、スチレン-エチレン・ブテンブロック共重合体(SEB)、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)などが挙げられる。
【0039】
上記スチレン-共役ジエンブロック共重合体水素化物の重量平均分子量(Mw)は、30,000以上であることが好ましく、40,000以上であることがより好ましく、50,000以上であることが更に好ましく、200,000以下であることが好ましく、150,000以下であることがより好ましく、100,000以下であることが更に好ましい。スチレン-共役ジエンブロック共重合体水素化物の重量平均分子量が上記範囲内であれば、容器用樹脂組成物を用いて成形した容器の機械強度や耐熱性が向上する。
【0040】
また、スチレン-共役ジエンブロック共重合体水素化物の分子量分布(Mw/Mn)は、3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましく、1.5以下であることが更に好ましい。スチレン-共役ジエンブロック共重合体水素化物の重量平均分子量が上記範囲内であれば、容器用樹脂組成物を用いて成形した容器の機械強度や耐熱性が更に向上する。
なお、スチレン-共役ジエンブロック共重合体水素化物の重量平均分子量及び分子量分布は、テトラヒドロフランを溶媒としたゲル・パーミエーションクロマトグラフィーにより、ポリスチレン換算値として求めることができる。
【0041】
ここで、スチレン-共役ジエンブロック共重合体水素化物としては、例えば市販のものを用いることができる。また、スチレン-共役ジエンブロック共重合体水素化物は、公知の方法に従ってスチレン-共役ジエンブロック共重合体を得た後、得られたスチレン-共役ジエンブロック共重合体の共役ジエンブロックの主鎖及び側鎖の炭素-炭素不飽和結合を水素化して得てもよい。その際、スチレン-共役ジエンブロック共重合体の水素化率は90%以上、好ましくは97%以上、より好ましくは99%以上である。水素化率が高いほど、透明性及び耐蒸気滅菌性に優れた容器を成形しやすくなる。なお、スチレン-共役ジエンブロック共重合体水素化物の水素化率は、H-NMRによる測定において求めることができる。
ここで、不飽和結合の水素化方法や反応形態などは特に限定されず、公知の方法に従って行えばよい。
【0042】
そして、本発明の容器用樹脂組成物中に含まれ得るスチレン-共役ジエンブロック共重合体水素化物の割合は、環状オレフィン系樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましく、0.08質量部以上であることが更に好ましく、0.5質量部以下であることが好ましく、0.3質量部以下であることがより好ましく、0.25質量部以下であることが更に好ましい。スチレン-共役ジエンブロック共重合体水素化物の含有割合が上記下限値以上であれば、容器用樹脂組成物を用いて成形した容器の透明性をより一層向上させることができる。また、スチレン-共役ジエンブロック共重合体水素化物の含有割合が上記上限値以下であれば、容器用樹脂組成物を用いて成形した容器の耐湿性をより一層向上させることができる。
【0043】
(容器用樹脂組成物の調製方法)
本発明の容器用樹脂組成物の調製方法は特に限定されない。好適な調製方法としては、例えば、上述した各成分を溶融状態で混練した後、ペレット状の樹脂組成物として得る方法を挙げることができる。その際、溶融及び混練に用いる装置としては、開放型のミキシングロールや非開放型のバンバリーミキサー、押出機、ニーダー、連続ミキサー等の公知のものを使用することができる。
ここで、溶融混練時の温度としては、特に限定されることはないが、180℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましく、220℃以上が更に好ましく、350℃以下が好ましく、320℃以下がより好ましく、300℃以下が更に好ましい。
【0044】
なお、本発明の容器用樹脂組成物を用いて容器を成形する方法としては、特に限定されず、既知の成形方法を用いることができる。
【実施例0045】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
実施例及び比較例において、各種の物性の測定及び評価は、下記の方法に従って行った。
【0046】
<ガラス転移温度>
各製造例で得られた環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量分析計(日立ハイテクサイエンス社製、DSC7000X)を用いて、JIS K7121に基づいて、昇温速度10℃/分の条件で測定した。
【0047】
<水素添加率>
H-NMR測定を行い、環状オレフィンの開環重合体の水素添加物の水素添加率を求めた。
【0048】
<数平均分子量(Mn)>
実施例及び比較例で使用した加工助剤の数平均分子量(Mn)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)システム HLC-8320(東ソー社製)で、Hタイプカラム(東ソー社製)を用い、温度40℃の下、テトラヒドロフランを展開溶媒として、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によって測定し、標準ポリスチレン換算値として求めた。
【0049】
<カラープレート試験片の成形>
実施例及び比較例で調製した樹脂組成物を用いてカラープレート試験片を成形した。この際、以下の条件にて成形を行った。
樹脂組成物の予備乾燥温度:(Tg-20)℃
予備乾燥時間:4時間
乾燥条件:真空乾燥
射出成形機:ファナック社製、ロボショットα-100B
金型:長さ65mm、幅65mm、厚さ3mm
シリンダー温度:(Tg+140)℃、
金型温度:(Tg-10)℃
射出圧:70MPa
なお、上記樹脂組成物の予備乾燥温度、上記シリンダー温度、及び上記金型温度のそれぞれにおいて、「Tg」は、実施例及び比較例で得られた樹脂組成物中に含まれる環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度を指す。
【0050】
<96穴ウェルプレートの成形>
実施例及び比較例で調製した樹脂組成物を用いて96穴ウェルプレートを捨てショットとして5個成形した。この際、以下の条件にて成形を行った。
樹脂組成物の予備乾燥温度:(Tg-20)℃
予備乾燥時間:4時間
予備乾燥条件:真空乾燥
射出成形機:JSW製、J110EL III
金型:96穴ウェルプレート(ANSI/SBS規格に準拠)用の金型
シリンダー温度:(Tg+160)℃
金型温度:(Tg-40)℃
射出圧:80MPa
なお、上記樹脂組成物の予備乾燥温度、上記シリンダー温度、及び上記金型温度のそれぞれにおいて、「Tg」は、実施例及び比較例で得られた各樹脂組成物中に含まれる環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度を指す。
次いで、上記条件にて、上記と同様の96穴ウェルプレートを20個成形した。
【0051】
<光線透過率>
上記のようにして成形したカラープレート試験片について、JIS K7105の方法に従って、濁度計(日本電色工業社製、NDH 300A)を用いて全光線透過率を測定した。そして、以下の基準に従って評価した。全光線透過率が高いほど、容器用樹脂組成物を用いて成形した容器は透明性が高いことを意味する。
A:全光線透過率が90%以上
B:全光線透過率が80%以上、90%未満
C:全光線透過率が70%以上、80%未満
【0052】
<蒸気滅菌後のヘイズ変化>
上記のようにして成形したカラープレート試験片について、ヘイズメータ(日本電色工業社製、製品名「NDH 2000」)を用いてヘイズを測定し、ヘイズ値(H1)を得た。ヘイズを測定した後、このカラープレート試験片について、高圧蒸気滅菌器(トミー工業株式会社製、SX-700)を用いて121℃で20分間、蒸気滅菌処理を行った。蒸気滅菌処理後、カラープレート試験片を取り出して25℃で72時間静置した。それから、蒸気滅菌後のカラープレート試験片についてヘイズを測定し、ヘイズ値(H2)を得て、以下の式に基づき、ヘイズ変化(ΔH)を算出した。
ΔH=H2-H1
そして、以下の基準に従って評価した。ヘイズ変化(ΔH)のポイントが小さいほど、樹脂組成物を用いて成形した容器は耐蒸気滅菌性に優れることを意味する。
A:ΔHが0.5ポイント以下
B:ΔHが0.5ポイント超、1ポイント以下
C:ΔHが1ポイント超、3ポイント以下
【0053】
<蒸気滅菌後の寸法変化>
上記のようにして成形したカラープレート試験片を平坦面に置き、任意の1か所の角部を平坦面に接するように固定し、他の3か所の角部と平坦面の隙間がないことを確認した。それから、カラープレート試験片について、高圧蒸気滅菌器(トミー工業株式会社製、SX-700)を用いて121℃で20分間、蒸気滅菌処理を行った。蒸気滅菌処理後、カラープレート試験片を取り出して25℃で72時間静置した。蒸気滅菌後のカラープレート試験片を再度平坦面に置き、任意の1か所の角部を平坦面に接するように固定し、他の3か所の角部と平坦面の隙間を隙間ゲージで測定した。3か所の測定した隙間で最も大きい値を寸法変化値とした。そして、以下の基準に従って評価した。寸法変化値が小さいほど、樹脂組成物を用いて成形した容器は高温での蒸気滅菌後に寸法が変化し難く、耐蒸気滅菌性に優れることを意味する。
A:寸法変化値が100μm以下
B:寸法変化値が100μm超、200μm以下
C:寸法変化値が200μm超、500μm以下
D:寸法変化値が500μm超
【0054】
<黄変度>
上記のようにして成形したカラープレート試験片について、JISK7373に準拠して、色差計(日本電色工業社製、SE 2000)を用いて、透過モードにて黄色度(YI:イエローインデックス)を測定し、黄色度(ΔδYI1)を得た。なお、このとき、ブランクとして空気のみの黄色度を測定した。次いで、カラープレート試験片を、温度100℃の恒温槽で、100時間静置して耐熱試験を行った後、上記と同様にして、黄色度を測定し、黄色度(ΔδYI2)を得た。そして、以下の式に基づき、黄変度(ΔδYI)を求めた。
ΔδYI=ΔδYI2-ΔδYI1
そして、以下の基準に従って評価した。黄変度(ΔδYI)の値が小さいほど、樹脂組成物を用いて成形した容器は透明性が高いことを意味する。
A:ΔδYIが0.5以下
B:ΔδYIが0.5超、1以下
【0055】
<成形性>
上記のようにして成形した20個の96穴ウェルプレートの外観を観察し、成形不良(割れ、反り、ヒケ、ボイド等)が発生したウェルプレートの個数を確認した。そして、以下の基準に従って評価した。成形不良が発生したウェルプレートの個数が少ないほど、樹脂組成物は成形性に優れることを意味する。
A:成形不良が発生したウェルプレートの個数が0個
B:成形不良が発生したウェルプレートの個数が1~2個
C:成形不良が発生したウェルプレートの個数が3~5個
D:成形不良が発生したウェルプレートの個数が6個以上
【0056】
(製造例1)環状オレフィンの開環重合体の水素添加物A
窒素雰囲気下、脱水したシクロヘキサン500部に、1-ヘキセン0.82部、ジブチルエーテル0.15部、及びトリイソブチルアルミニウム0.30部を室温(25℃)で反応器に入れて混合した後、45℃に保ちながら、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン(以下、「TCD」という。)40部と、テトラシクロ[7.4.0.02,7.110,13]テトラデカ-2,4,6,11-テトラエン(以下、「MTF」ともいう。)60部と、重合触媒としての六塩化タングステン(0.7%トルエン溶液)40部とを、並行して2時間かけて連続的に添加して重合し、重合溶液を得た。次いで、重合溶液にブチルグリシジルエーテル1.06部とイソプロピルアルコール0.52部とを加えて重合触媒を不活性化し、重合反応を停止させて、開環重合体を含有する反応溶液を得た。得られた開環重合体を含有する反応溶液をガスクロマトグラフィー分析したところ、各モノマーの重合転化率は、99.6%であった。
次いで、得られた開環重合体を含有する反応溶液100部に対して、溶媒であるシクロヘキサン270部を加え、さらに水素化触媒としてケイソウ土担持ニッケル触媒(日産ガードラー社製G-96D;ニッケル担持率58%)5部を加え、水素により5MPaに加圧して撹拌しながら温度200℃まで加温した後、8時間反応させ、TCD/MTF開環共重合体水素添加物を含有する反応溶液を得た。この反応溶液をケイソウ土(昭和化学工業社製「ラヂオライト#500」)を濾過床として、濾過機(石川島播磨重工社製、フンダフィルター)を使用して、フィルター圧力0.25MPaで加圧濾過して水素化触媒を除去した。次いで、円筒型濃縮乾燥器(日立製作所社製)を用いて、温度270℃、圧力1kPa以下にて、反応溶液から、溶媒であるシクロヘキサン及びその他の揮発成分を除去し、次いで水素添加物を溶融状態で押出機からストランド状に押出し、冷却後ペレット化して環状オレフィンの開環重合体の水素添加物Aを得た。
このペレット化された環状オレフィンの開環重合体の水素添加物Aは、水素添加率が99.9%であり、ガラス転移温度が161℃であった。
【0057】
(製造例2)環状オレフィンの開環重合体の水素添加物B
窒素雰囲気下、脱水したシクロヘキサン500部に、1-ヘキセン0.82部、ジブチルエーテル0.15部、及びトリイソブチルアルミニウム0.30部を室温(25℃)で反応器に入れて混合した後、45℃に保ちながら、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ-3,7-ジエン(以下、「DCP」という。)76部と、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン(TCD)70部と、テトラシクロ[7.4.0.02,7.110,13]テトラデカ-2,4,6,11-テトラエン(MTF)54部と、重合触媒としての六塩化タングステン(0.7%トルエン溶液)80部とを、並行して2時間かけて連続的に添加し重合し、重合溶液を得た。次いで、重合溶液にブチルグリシジルエーテル1.06部とイソプロピルアルコール0.52部とを加えて重合触媒を不活性化し、重合反応を停止させ、開環重合体を含有する反応溶液を得た。得られた開環重合体を含有する反応溶液をガスクロマトグラフィー分析したところ、各モノマーの重合転化率は、99.5%であった。
次いで、得られた開環重合体を含有する反応溶液100部に対して、シクロヘキサン270部を加え、さらに水素化触媒としてケイソウ土担持ニッケル触媒(日産ガードラー社製G-96D;ニッケル担持率58%)5部を加え、水素により5MPaに加圧して撹拌しながら温度200℃まで加温した後、8時間反応させ、DCP/TCD/MTF開環共重合体水素添加物を含有する反応溶液を得た。この反応溶液を、製造例1と同様にして、水素化触媒を除去した後に、環状オレフィンの開環重合体の水素添加物Bのペレットを得た。
このペレット化された環状オレフィンの開環重合体の水素添加物Bは、水素添加率が99.8%であり、ガラス転移温度が136℃であった。
【0058】
(製造例3)環状オレフィンと鎖状オレフィンとの共重合体C
シクロヘキサン258Lを投入した反応容器に、室温(25℃)、窒素気流下でビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン(以下、「NB」という。)120kgを加え、5分間撹拌を行った。さらに触媒としてのトリイソブチルアルミニウムを系内の濃度が1.0mL/Lとなるように添加した。次いで、撹拌しながら、常圧でエチレンを流通させ、系内をエチレン雰囲気とした。オートクレーブの内温を70℃に保ち、エチレンにて内圧がゲージ圧で6kg/cmとなるように加圧した。10分間撹拌した後、予め用意した触媒としてのイソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(インデニル)ジルコニウムジクロリド及びメチルアルモキサンを含むトルエン溶液0.4Lを系内に添加することによって、エチレンとNBとの共重合反応を開始させた。このときの触媒濃度は、全系に対してイソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(インデニル)ジルコニウムジクロリドが0.018mmol/Lであり、メチルアルモキサンが8.0mmol/Lであった。重合中、系内にエチレンを連続的に供給することにより、温度を70℃、内圧をゲージ圧で6kg/cmに保持した。60分後、イソプロピルアルコールを添加することにより、重合反応を停止させ、重合溶液を得た。脱圧後、重合溶液を取り出し、この重合溶液を、水1mに対し濃塩酸5Lを添加した水溶液と1:1の割合で強撹拌下に接触させて、触媒残渣を水相へ移行させて、接触混合液を得た。この接触混合液を静置したのち、水相を分離除去し、さらに水洗を2回行い、有機相を精製分離した。
次いで、精製分離された重合溶液を3倍量のアセトンと強撹拌下で接触させ、共重合体を析出させた後、固体部(共重合体)を濾過により採取し、アセトンで十分洗浄した。さらに、共重合体中に存在する未反応のモノマーを抽出するため、この固体部を40kg/mとなるようにアセトン中に投入した後、60℃で2時間の条件で抽出操作を行った。抽出処理後、固体部を濾過により採取し、窒素流通下、130℃、350mmHgで12時間乾燥し、環状オレフィンと鎖状オレフィンとの共重合体Cを得た。
次いで、製造例1と同様にして、環状オレフィンと鎖状オレフィンとの共重合体Cのペレットを得た。
このペレット化された環状オレフィンと鎖状オレフィンとの共重合体Cは、ガラス転移温度が138℃であった。
【0059】
(製造例4)環状オレフィンの開環重合体の水素添加物D
室温(25℃)、窒素雰囲気の反応器に、脱水したシクロヘキサン250部を入れ、さらに1-ヘキセン0.84部、ジブチルエーテル0.06部及びトリイソブチルアルミニウム0.11部を入れて混合した後、45℃に保ちながら、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ-3,7-ジエン(DCP)85部、8-エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン15部、及び重合触媒としての六塩化タングステン(0.7%トルエン溶液)15部を2時間かけて連続的に添加して重合し、開環重合体を含有する反応溶液を得た。得られた開環重合体を含有する反応溶液をガスクロマトグラフィー分析したところ、各モノマーの重合転化率は100%であった。
得られた開環重合体を含有する反応溶液を耐圧性の水素化反応機に移送し、水素化触媒としてのケイソウ土担持ニッケル触媒(日産ガードラー社製「G-96D」;ニッケル担持率58%)5部及びシクロヘキサン100部を加え、150℃、水素圧4.4MPaで8時間反応させた。この反応溶液を、製造例1と同様にして、水素化触媒を除去した後に、環状オレフィンの開環重合体の水素添加物Dのペレットを得た。
このペレット化された環状オレフィンの開環共重合体の水素添加物Dは、水素添加率が99.6%であり、ガラス転移温度が102℃であった。
【0060】
(実施例1)
<樹脂組成物の調製>
環状オレフィン系樹脂として環状オレフィンの開環重合体の水素添加物A100部と、加工助剤として鎖状飽和炭化水素からなる鎖状炭化水素系加工助剤であるポリエチレン(1)(ベーカーヒューズ社製、商品名「POLYWAX2000」、数平均分子量(Mn):2,000)0.2部と、スチレン-共役ジエンブロック共重合体水素化物(旭化成社製、商品名「タフテックH 1051」)0.1部とを混合後、混錬機(東芝機械社製、商品名「TEM-35B」)を用い、270℃、100rpmの条件で混練し、樹脂組成物(容器用樹脂組成物)を得た。
得られた樹脂組成物を用いてカラープレート試験片及び96穴ウェルプレートを成形した。そして、得られたカラープレート試験片及び96穴ウェルプレートを用いて光線透過率、蒸気滅菌後のヘイズ変化、蒸気滅菌後の寸法変化、黄変度、及び成形性について評価した。結果を表1に示す。
【0061】
(実施例2)
鎖状飽和炭化水素からなる鎖状炭化水素系加工助剤として、ポリエチレンに替えて水素添加ポリブテン(日油社製、商品名「ポリブテン10SH」、数平均分子量(Mn):1,000)を使用した。また、鎖状炭化水素系加工助剤の配合量を、環状オレフィン系樹脂100部に対して1部に変更した。さらに、スチレン-共役ジエンブロック共重合体水素化物の配合量を、環状オレフィン系樹脂100部に対して0.2部に変更した。それ以外は実施例1と同様にして樹脂用組成物(容器用樹脂組成物)を調製した。
そして、得られた樹脂用組成物を用いて実施例1と同様にカラープレート試験片及び96穴ウェルプレートを成形し、得られたカラープレート試験片及び96穴ウェルプレートを用いて各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0062】
(実施例3)
加工助剤として、鎖状飽和炭化水素からなる鎖状炭化水素系加工助剤に替えて、鎖状不飽和炭化水素からなる鎖状炭化水素系加工助剤であるポリブテン(日油社製、商品名「ポリブテン10N」、数平均分子量(Mn):1,000)を使用した。また、鎖状炭化水素系加工助剤の配合量を、環状オレフィン系樹脂100部に対して0.5部に変更した。それ以外は実施例1と同様にして樹脂用組成物(容器用樹脂組成物)を調製した。
そして、得られた樹脂用組成物を用いて実施例1と同様にカラープレート試験片及び96穴ウェルプレートを成形し、得られたカラープレート試験片及び96穴ウェルプレートを用いて各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0063】
(実施例4)
環状オレフィン系樹脂として、環状オレフィン系樹脂Aに替えて環状オレフィン系樹脂Bを使用した。また、鎖状炭化水素系加工助剤としてのポリエチレン(1)に替えて、ポリエチレン(2)(ベーカーヒューズ社製、商品名「POLYWAX600」、数平均分子量(Mn):600)を使用した。そして、ポリエチレン(2)の配合量を、環状オレフィン系樹脂B100部に対して3部とした。さらに、スチレン-共役ジエンブロック共重合体水素化物の配合量を、環状オレフィン系樹脂100部に対して0.3部に変更した。それ以外は実施例1と同様にして樹脂用組成物(容器用樹脂組成物)を調製した。
そして、得られた樹脂用組成物を用いて実施例1と同様にカラープレート試験片及び96穴ウェルプレートを成形し、得られたカラープレート試験片及び96穴ウェルプレートを用いて各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0064】
(実施例5)
環状オレフィン系樹脂として、環状オレフィン系樹脂Aに替えて環状オレフィン系樹脂Cを使用した。また、鎖状炭化水素系加工助剤としてのポリエチレン(1)に替えて、ポリエチレン(3)(ベーカーヒューズ社製、商品名「POLYWAX1000」、数平均分子量(Mn):1000)を使用した。そして、ポリエチレン(3)の配合量を環状オレフィン系樹脂100部に対して0.5部とした。さらに、スチレン-共役ジエンブロック共重合体水素化物は使用しなかった。それ以外は実施例1と同様にして樹脂用組成物(容器用樹脂組成物)を調製した。
そして、得られた樹脂用組成物を用いて実施例1と同様にカラープレート試験片及び96穴ウェルプレートを成形し、得られたカラープレート試験片及び96穴ウェルプレートを用いて各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0065】
(比較例1)
環状オレフィン系樹脂として、環状オレフィン系樹脂Aに替えて環状オレフィン系樹脂Dを使用した。それ以外は、実施例1と同様にして樹脂用組成物を調製した。
そして、得られた樹脂用組成物を用いて実施例1と同様にカラープレート試験片及び96穴ウェルプレートを成形し、得られたカラープレート試験片及び96穴ウェルプレートを用いて各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0066】
(比較例2)
鎖状炭化水素系加工助剤を使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調製した。
そして、得られた樹脂用組成物を用いて実施例1と同様にカラープレート試験片及び96穴ウェルプレートを成形し、得られたカラープレート試験片及び96穴ウェルプレートを用いて各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0067】
(比較例3)
加工助剤として、鎖状炭化水素系加工助剤に替えて、非鎖状炭化水素系加工助剤であるポリエチレングリコール(三洋化成社製、商品名「PEG-600」、数平均分子量(Mn):600)を使用した。また、非鎖状炭化水素系加工助剤の配合量を環状オレフィン系樹脂100部に対して1部とした。それ以外は、実施例1と同様にして樹脂用組成物を調製した。
そして、得られた樹脂用組成物を用いて実施例1と同様にカラープレート試験片及び96穴ウェルプレートを成形し、得られたカラープレート試験片及び96穴ウェルプレートを用いて各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0068】
(比較例4)
鎖状炭化水素系加工助剤の配合量を環状オレフィン系樹脂100部に対して12部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂用組成物を調製した。
そして、得られた樹脂用組成物を用いて実施例1と同様にカラープレート試験片及び96穴ウェルプレートを成形し、得られたカラープレート試験片及び96穴ウェルプレートを用いて各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0069】
(比較例5)
鎖状炭化水素系加工助剤として、ポリエチレン(1)に替えて、ポリエチレン(4)(三洋化成社製、商品名「サンワックス161-P」、数平均分子量(Mn):6,800)を使用した以外は、実施例1と同様にして樹脂用組成物を調製した。
そして、得られた樹脂用組成物を用いて実施例1と同様にカラープレート試験片及び96穴ウェルプレートを成形し、得られたカラープレート試験片及び96穴ウェルプレートを用いて各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
なお、表1中、
「樹脂A」は、環状オレフィンの開環重合体の水素添加物Aを示し、
「樹脂B」は、環状オレフィンの開環重合体の水素添加物Bを示し、
「樹脂C」は、環状オレフィンと鎖状オレフィンとの共重合体Cを示し、
「樹脂D」は、環状オレフィンの開環重合体の水素添加物Dを示し、
「PE」は、ポリエチレンを示し、
「PEG」は、ポリエチレングリコールを示す。
【0072】
表1より、環状オレフィン系樹脂と、この環状オレフィン系樹脂に対して鎖状炭化水素系加工助剤を所定の割合で含み、環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度が所定範囲内であり、鎖状炭化水素系加工助剤の数平均分子量が所定範囲内である実施例1~4の樹脂用組成物は、成形性に優れることが分かる。また、実施例1~4の樹脂組成物を用いることで、透明性及び耐蒸気滅菌性に優れる容器を成形できることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明によれば、成形性に優れており、透明性及び耐蒸気滅菌性に優れる容器を成形可能な容器用樹脂組成物を提供することができる。