(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051383
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】研磨用組成物および磁気ディスク基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09K 3/14 20060101AFI20230404BHJP
G11B 5/84 20060101ALI20230404BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20230404BHJP
【FI】
C09K3/14 550D
C09K3/14 550Z
G11B5/84 A
B24B37/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021162005
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000236702
【氏名又は名称】株式会社フジミインコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100154449
【弁理士】
【氏名又は名称】谷 征史
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼水 陽介
(72)【発明者】
【氏名】大山 貴治
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 和正
【テーマコード(参考)】
3C158
5D112
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158CA01
3C158CB01
3C158CB10
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5D112AA02
5D112AA24
5D112BA03
5D112BA06
5D112GA09
5D112GA14
(57)【要約】
【課題】Ni-P基板の研磨に用いられて、実用的な加工性を維持しつつ、研磨抵抗を低減することのできる研磨用組成物を提供すること。
【解決手段】ニッケルリンめっき層を有する磁気ディスク基板研磨用組成物が提供される。この研磨用組成物は、砥粒としてのコロイダルシリカと、酸と、添加剤Aと、添加剤Bと、水とを含む。前記添加剤Aは、スルホン酸(塩)基を有するポリマーである。また、前記添加剤Bは、一分子中にオキシエチレン単位を10以上有するノニオン性界面活性剤である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケルリンめっき層を有する磁気ディスク基板の研磨に用いられる研磨用組成物であって、
砥粒としてのコロイダルシリカと、酸と、添加剤Aと、添加剤Bと、水とを含み、
前記添加剤Aは、スルホン酸(塩)基を有するポリマーであり、
前記添加剤Bは、一分子中にオキシエチレン単位を10以上有するノニオン性界面活性剤である、研磨用組成物。
【請求項2】
さらに酸化剤を含む、請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項3】
pHが1~4の範囲内である、請求項1または2に記載の研磨用組成物。
【請求項4】
前記コロイダルシリカは、透過型電子顕微鏡観察に基づく平均アスペクト比が1.0以上1.2以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の研磨用組成物。
【請求項5】
前記コロイダルシリカの平均一次粒子径は1nm以上50nm以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の研磨用組成物。
【請求項6】
仕上げ研磨工程で用いられる、請求項1~5のいずれか一項に記載の研磨用組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の研磨用組成物を用いて研磨対象基板を研磨する工程を含む、磁気ディスク基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨用組成物および磁気ディスク基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高精度な表面が要求される基板の製造プロセスには、研磨液を用いて該基板の原材料である研磨対象基板を研磨する工程が含まれる。例えば、ニッケルリンめっきが施された磁気ディスク基板(以下、Ni-P基板ともいう。)の製造においては、一般に、より研磨効率を重視した研磨(一次研磨)と、最終製品の表面精度に仕上げるために行う最終研磨(仕上げ研磨)とが行われている。Ni-P基板を研磨する用途で使用される研磨用組成物に関する技術文献として、特許文献1が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
Ni-P基板の研磨は、通常、キャリアに保持された状態の研磨対象物(Ni-P基板)に研磨パッドを押し付けて、研磨対象物と研磨パッドとの間に研磨液を供給し、研磨対象物と研磨パッドとを研磨対象物の面方向に沿って相対的に移動(例えば回転移動)させることによって行われる。キャリアは、研磨中、研磨対象物である基板の側面(端面)を保持する。特に限定されるものではないが、キャリアは、通常、ホールと称される保持孔を有する研磨対象物よりも薄厚に構成された部材であり、上記保持孔内に研磨対象物は配置される。上記キャリアは、研磨中、研磨対象物が研磨パッドから受ける作用に対する反作用力(当該研磨対象物が面方向に移動しようとする力)を、保持孔の側面で受けている。
【0005】
ところで、近年、Ni-P基板の薄板化にともない、キャリアの薄板化が進んでいる。キャリアが薄板化すると、その剛性が低下し、作用する力に対して変形しやすくなる。キャリアが変形すると、例えば変形したキャリアの一部が研磨パッドに突き刺さるなど研磨パッドに作用し、例えば研磨パッドに傷を発生させる原因となり得る。このような研磨パッド傷は、研磨対象物の表面品質に影響するため、研磨パッドの交換等が必要となり、望ましくない。
【0006】
上記キャリアにかかる反作用力は、研磨パッドと研磨対象物との間にかかる研磨抵抗(摩擦力)が大きくなると、それに比例して大きくなる。特に、砥粒としてコロイダルシリカを含む研磨液を用いる研磨では、砥粒の微細化によって研磨パッドと基板が密着し易くなることで、研磨パッド-研磨対象物間の摩擦力が大きくなりがちであり、キャリアにかかる負荷も大きくなる傾向がある。かかる研磨において、研磨中に研磨対象物と研磨パッドとの間にかかる研磨抵抗を低減できれば、キャリアにかかる負荷が緩和され、キャリアの変形を防止または抑制することができ、パッド傷発生を防止できる。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、Ni-P基板の研磨に用いられ、砥粒としてのコロイダルシリカと、酸と、水とを含む組成において、実用的な加工性を維持しつつ、研磨抵抗を低減できる研磨用組成物を提供することを目的とする。関連する他の目的は、そのような研磨用組成物を用いて磁気ディスク基板を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書によると、ニッケルリンめっき層を有する磁気ディスク基板の研磨に用いられる研磨用組成物が提供される。この研磨用組成物は、砥粒としてのコロイダルシリカと、酸と、添加剤Aと、添加剤Bと、水とを含む。前記添加剤Aは、スルホン酸(塩)基を有するポリマーである。また、前記添加剤Bは、一分子中にオキシエチレン単位を10以上有するノニオン性界面活性剤である。
砥粒としてコロイダルシリカを含む研磨用組成物に上記添加剤AおよびBを添加することで、Ni-P基板の研磨において、コロイダルシリカ砥粒および酸を含むことによる実用的な加工性を維持しつつ、研磨抵抗を低減することができる。
【0009】
いくつかの態様において、さらに酸化剤が含まれる。酸化剤を含むことにより、良好な加工性が得られやすい。
【0010】
いくつかの態様に係る研磨用組成物は、pHが1~4の範囲内である。かかるpH環境下において、ここに開示される技術による効果は好ましく実現される。
【0011】
いくつかの態様において、透過型電子顕微鏡観察に基づく前記コロイダルシリカの平均アスペクト比は1.0以上1.2以下である。コロイダルシリカの平均アスペクト比を1.0以上1.2以下とすることで、研磨中にコロイダルシリカが転がりやすくなり、研磨抵抗が低減されるため、加工が安定し、研磨後、高い表面品位を実現しやすい。かかる構成の研磨用組成物は、研磨後に高い表面品位が要求される研磨工程(例えば、仕上げ研磨工程)に好ましく使用され得る。
【0012】
上記コロイダルシリカとしては、平均一次粒子径が1nm以上50nm以下のものを好ましく採用し得る。上記範囲の平均一次粒子径を有するコロイダルシリカを含む構成によると、研磨後、高い表面品位を実現しやすい。かかる構成の研磨用組成物は、研磨後に高い表面品位が要求される研磨工程(例えば、仕上げ研磨工程)に好ましく使用され得る。
【0013】
いくつかの態様に係る研磨用組成物は、仕上げ研磨工程で用いられる。ここに開示される研磨用組成物は、コロイダルシリカ砥粒を含むので、研磨後に高い表面品位が要求される仕上げ研磨に特に好適である。ここに開示される研磨用組成物は、Ni-P基板の仕上げ研磨において、実用的な加工性を維持しつつ、研磨抵抗を低減することができる。
【0014】
また、この明細書によると、磁気ディスク基板の製造方法が提供される。この製造方法は、ここに開示されるいずれかの研磨用組成物を用いて研磨対象基板を研磨する工程を含む。かかる製造方法によると、磁気ディスク基板(Ni-P基板)を効率よく製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0016】
<研磨用組成物>
(砥粒)
ここに開示される研磨用組成物は、砥粒としてコロイダルシリカを含む。コロイダルシリカは、Ni-P基板の表面を機械的に研磨する働きを有する。コロイダルシリカとしては、例えば、ケイ酸ソーダ法シリカやアルコキシド法シリカのように、水相での粒子成長を経て合成されたコロイダルシリカの使用が好ましい。この種のコロイダルシリカを含むシリカ砥粒によると、高い加工性と良好な面精度とが好適に達成され得る。ここに開示されるシリカ砥粒がコロイダルシリカを含む場合、該シリカ砥粒に含まれるコロイダルシリカは、1種であってもよく、製造条件および/または物性の異なる2種以上であってもよい。コロイダルシリカは、表面改質されていてもよい。表面改質としては、例えば、官能基の導入、金属修飾等の化学的修飾が挙げられる。いくつかの好ましい態様では、研磨用組成物に含まれる砥粒が、コロイダルシリカを単独で含む。コロイダルシリカを単独で用いることにより、高い加工性を保ちつつ、より良好な面精度(例えばスクラッチ数の低減された表面)が実現され得る。
【0017】
コロイダルシリカの平均一次粒子径は特に限定されない。いくつかの態様において、BET法により測定されるコロイダルシリカの平均一次粒子径は1nm以上である。平均一次粒子径の増大によって、より高い加工性が実現され得る。加工性等の観点から、上記平均一次粒子径は、好ましくは3nm以上、より好ましくは5nm以上、さらに好ましくは7nm以上、特に好ましくは10nm以上である。また、より面精度の高い表面を得るという観点から、上記平均一次粒子径は、例えば100nm未満であり、好ましくは50nm以下、より好ましくは45nm以下、さらに好ましくは40nm以下、特に好ましくは35nm以下である。いくつかの好ましい態様において、上記平均一次粒子径は、例えば30nm以下としてもよく、例えば25nm以下(例えば20nm以下)としてもよい。
【0018】
なお、ここに開示される技術において、コロイダルシリカの平均一次粒子径は、BET法に基づいて求められる平均粒子径をいう。コロイダルシリカの平均一次粒子径は、BET法により測定される比表面積(BET値)から、D1(nm)=(6000/(真密度(g/cm3)×BET値(m2/g))の式により算出される。上記比表面積の測定は、例えば、マイクロメリテックス社製の表面積測定装置、商品名「Flow Sorb II 2300」を用いて行うことができる。後述の実施例についても同様である。
【0019】
コロイダルシリカのTEM(Transmission Electron Microscope)観察に基づく個数基準の粒度分布における50%累積径(D50)は、特に限定されず、加工性等の観点から、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上である。より高い加工性を得る観点から、個数基準の粒度分布における50%累積径(D50)は、15nm以上であることがより好ましい。また、より面精度の高い表面を得るという観点から、コロイダルシリカのD50は、200nm以下が適当であり、好ましくは100nm以下、より好ましくは70nm以下、さらに好ましくは50nm以下、特に好ましくは40nm以下(例えば30nm以下)である。
【0020】
コロイダルシリカのTEM観察に基づく個数基準の粒度分布における50%累積径(D50)は、次の方法から求めることができる。まず、測定対象のコロイダルシリカを水に分散させたコロイダルシリカ分散液を用意する。そして、透過型電子顕微鏡(TEM、日立ハイテクノロジーズ社製STEM HD-2700)を用いて、測定対象のコロイダルシリカに含まれるTEMにて観察可能な所定個数(1000個以上)の粒子を、1視野内に100個程度観察可能な倍率(例えば200000倍~400000倍)で撮影し、TEM画像を取得する。そして、取得したTEM画像から各粒子の面積を算出し、算出された面積と同一の面積を有する理想円(真円)の直径を各粒子の粒子径として算出する。当該コロイダルシリカを構成する個々の粒子について上記算出された粒子径を横軸に、累積個数(%)を縦軸にプロットすることにより、TEM観察に基づく個数基準の粒度分布は求められる。上記50%累積径(D50)は、上記粒度分布において累積個数が50%となる点に相当する粒子径である。上記粒度分布は、マウンテック社製画像解析ソフトウエアMacViewを用いて求めることができる。後述の実施例についても同様である。
なお、上記所定個数、すなわち粒子毎の粒子径を算出する粒子の個数は、測定精度や再現性を高める観点から、1000個以上とすることが適当であり、1500個以上とすることが好ましい。上記所定個数の上限は特に制限されない。測定効率の観点から、上記所定個数は、例えば5000個以下であってよく、2500個以下でもよい。
【0021】
コロイダルシリカの粒子形状は特に限定されず、例えば球形であってもよく、非球形であってもよい。ここに開示される研磨用組成物をNi-P基板の仕上げ研磨工程に使用する場合は、球形に近い形状が好ましい。
【0022】
特に限定するものではないが、コロイダルシリカの平均アスペクト比は、原理上1.0以上であり、加工性の観点から、例えば1.03以上であってもよく、1.06以上でもよく、1.08以上でもよい。また、面精度を効率よく高めやすくする観点から、いくつかの態様において、上記平均アスペクト比は、1.30以下であることが適当である。コロイダルシリカの平均アスペクト比の低減によって、コロイダルシリカが転がり移動しやすくなるため、研磨抵抗が低減されることで加工が安定し、スクラッチがより好ましく低減され得る。そのような観点から、コロイダルシリカの平均アスペクト比は、好ましくは1.20以下、より好ましくは1.18以下(例えば1.15以下)である。ここで、コロイダルシリカの平均アスペクト比とは、該コロイダルシリカを構成する個々の粒子の長径/短径比の平均値、すなわち個数平均アスペクト比をいう。以下、特記しない場合、本明細書において平均アスペクト比とは、上記個数平均アスペクト比を意味するものとする。
【0023】
コロイダルシリカの平均アスペクト比は、TEM観察に基づき測定される。具体的には、上記TEM観察に基づく個数基準の粒度分布を得る際、取得したTEM画像から、各粒子画像に外接する最小の長方形について、その長辺の長さ(長径の値)を短辺の長さ(短径の値)で除した値を各粒子の長径/短径比(アスペクト比)として算出する。そして、上記所定個数の粒子のアスペクト比を算術平均することにより、平均アスペクト比(個数平均アスペクト比)を求めることができる。上記各アスペクト比は、マウンテック社製画像解析ソフトウエアMacViewを用いて求めることができる。後述の実施例についても同様である。
なお、上記所定個数、すなわち粒子毎のアスペクト比を算出する粒子の個数は、測定精度や再現性を高める観点から、1000個以上とすることが適当であり、1500個以上とすることが好ましい。上記所定個数の上限は特に制限されない。測定効率の観点から、上記所定個数は、例えば5000個以下であってよく、2500個以下でもよい。
【0024】
研磨用組成物におけるコロイダルシリカの含有量は特に制限されず、例えば0.1重量%以上であり、0.5重量%以上であることが好ましく、1重量%以上であることがより好ましく、3重量%以上であることがさらに好ましい。上記含有量は、複数種類のコロイダルシリカを含む場合には、それらの合計含有量である。コロイダルシリカの含有量の増大によって、より高い加工性が実現される傾向にある。研磨後の基板の表面平滑性や砥粒の分散安定性の観点から、上記含有量は、25重量%以下が適当であり、好ましくは20重量%以下、より好ましくは15重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下、例えば8重量%以下であり、6重量%以下でもよい。
【0025】
いくつかの好ましい態様では、研磨用組成物は、砥粒として実質的にコロイダルシリカのみを含むものであり得る。ここで、実質的にコロイダルシリカのみを含むとは、研磨用組成物に含まれる固形分全量のうちコロイダルシリカの割合が99重量%以上、より好ましくは99.5重量%以上、さらに好ましくは99.9重量%以上であることをいう。このような態様において、ここに開示される技術の適用効果が好適に発揮され得る。
【0026】
ここに開示される研磨用組成物は、本発明の効果が著しく損なわれない範囲で、上記コロイダルシリカ以外のシリカ粒子(例えばヒュームドシリカ、沈降シリカ等)を含有してもよい。また、本発明の効果が著しく損なわれない範囲で、非シリカ粒子を含有してもよい。非シリカ粒子としては、無機粒子、有機粒子、および有機無機複合粒子のいずれも利用可能である。無機粒子の具体例としては、アルミナ粒子、酸化セリウム粒子、酸化クロム粒子、二酸化チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化マグネシウム粒子、二酸化マンガン粒子、酸化亜鉛粒子、ベンガラ粒子等の酸化物粒子;窒化ケイ素粒子、窒化ホウ素粒子等の窒化物粒子;炭化ケイ素粒子、炭化ホウ素粒子等の炭化物粒子;ダイヤモンド粒子;炭酸カルシウムや炭酸バリウム等の炭酸塩;等が挙げられる。上記アルミナ粒子としては、α-アルミナ、α-アルミナ以外の中間アルミナおよびこれらの複合物が挙げられる。中間アルミナとは、α-アルミナ以外のアルミナ粒子の総称であり、具体例としてはγ-アルミナ、δ-アルミナ、θ-アルミナ、η-アルミナ、κ-アルミナおよびこれらの複合物が挙げられる。有機粒子の具体例としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)粒子やポリ(メタ)アクリル酸粒子、ポリアクリロニトリル粒子等が挙げられる。ここで(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸およびメタクリル酸を包括的に指す意味である。なお、上記コロイダルシリカ以外の粒子は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられ得る。
【0027】
ここに開示される研磨用組成物は、アルミナ粒子を実質的に含まない態様で好ましく実施され得る。アルミナ粒子としては、例えばα-アルミナ粒子が挙げられる。かかる研磨用組成物によると、アルミナ粒子の使用に起因する品質低下が防止される。ここでいう品質低下としては、例えば、スクラッチや窪みの発生、アルミナの残留、砥粒の突き刺さり欠陥等が挙げられる。なお、本明細書において、所定の砥粒、例えばアルミナ粒子を実質的に含まないとは、研磨用組成物に含まれる固形分全量のうち当該砥粒の割合が1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下、例えば0.1重量%以下であることをいう。アルミナ粒子の割合が0重量%である研磨用組成物、すなわちアルミナ粒子を含まない研磨用組成物が特に好ましい。また、ここに開示される研磨用組成物は、α-アルミナ粒子を実質的に含まない態様で好ましく実施され得る。
【0028】
(酸)
ここに開示される研磨用組成物は、酸を含む。酸は、Ni-P基板を化学的に研磨する働きをする。酸としては、無機酸および有機酸のいずれも使用可能である。酸は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
無機酸の具体例としては、リン酸(オルトリン酸)、硝酸、硫酸、塩酸、ホウ酸、スルファミン酸、ホスフィン酸、ホスホン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸、ヘキサメタリン酸、炭酸、フッ化水素酸、亜硫酸、チオ硫酸、塩素酸、過塩素酸、亜塩素酸、ヨウ化水素酸、過ヨウ素酸、ヨウ素酸、臭化水素酸、過臭素酸、臭素酸、クロム酸、亜硝酸等が挙げられる。
【0030】
有機酸の例としては、有機カルボン酸、有機ホスホン酸、有機スルホン、アミノ酸等が挙げられる。これらの有機酸に含まれる炭素数は、例えば1~18程度であり、例えば1~10程度であることが好ましい。
有機酸の具体例としては、マロン酸、クエン酸、イソクエン酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、マレイン酸、リンゴ酸、グリコール酸、コハク酸、イタコン酸、イミノ二酢酸、グルコン酸、乳酸、マンデル酸、酒石酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、アジピン酸、シュウ酸、吉草酸、エナント酸、カプロン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、安息香酸、クロトン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノレン酸、メタクリル酸、グルタル酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、タルトロン酸、グリセリン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ酢酸、ヒドロキシ安息香酸、サリチル酸、メチレンコハク酸、没食子酸、アスコルビン酸、ニトロ酢酸、オキサロ酢酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、ニコチン酸やピコリン酸等のピリジンカルボン酸、等の有機カルボン酸;メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、エチルグリコールアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、フィチン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エタン-1,1-ジホスホン酸、エタン-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1-ヒドロキシ-1,1-ジホスホン酸、エタンヒドロキシ-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1,2-ジカルボキシ-1,2-ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、2-ホスホノブタン-1,2-ジカルボン酸、1-ホスホノブタン-2,3,4-トリカルボン酸、α-メチルホスホノコハク酸、アミノポリ(メチレンホスホン酸)等の有機ホスホン酸;エタンスルホン酸、アミノエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、スルホコハク酸、10-カンファースルホン酸、タウリン等の有機スルホン酸;グリシン、アラニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、プロリン、シスチン、グルタミン、アスパラギン、リシン、アルギニン等のアミノ酸;等が挙げられる。
【0031】
加工性の観点から好ましい酸として、リン酸、ホスホン酸、マロン酸、クエン酸、マレイン酸、塩酸、硝酸、硫酸、スルファミン酸、フィチン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸等が例示される。なかでも好ましい酸として、リン酸、ホスホン酸、マロン酸、クエン酸、マレイン酸が挙げられる。
【0032】
酸は、該酸の塩の形態で用いられてもよい。塩の例としては、上述した無機酸や有機酸の、金属塩、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩等が挙げられる。金属塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。アンモニウム塩としては、例えば、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩等の第四級アンモニウム塩が挙げられる。アルカノールアミン塩としては、例えば、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩が挙げられる。
【0033】
ここに開示される研磨用組成物に含有させ得る塩の具体例としては、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等のアルカリ金属リン酸塩およびアルカリ金属リン酸水素塩;上記で例示した有機酸のアルカリ金属塩;その他、グルタミン酸二酢酸のアルカリ金属塩、ジエチレントリアミン五酢酸のアルカリ金属塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸のアルカリ金属塩、トリエチレンテトラミン六酢酸のアルカリ金属塩;等が挙げられる。これらのアルカリ金属塩におけるアルカリ金属は、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等であり得る。
【0034】
いくつかの態様において、上記塩として、無機酸のアルカリ金属塩やアンモニウム塩等の無機酸塩を採用し得る。例えば、上述したアルカリ金属リン酸塩やアルカリ金属リン酸水素塩の他、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム等を使用し得る。
【0035】
酸およびその塩は、1種を単独でまたは2種以上(例えば2種または3種)を組み合わせて用いることができる。いくつかの態様において、酸と、該酸とは異なる酸の塩とを組み合わせて用いることができる。例えば、上記酸としては、無機酸が、上記酸の塩としては、無機酸の塩が用いられ得る。
【0036】
研磨用組成物中における酸の濃度(複数種類の酸を含む場合には、それらの合計濃度)は、特に限定されない。酸の濃度は、通常、0.1重量%以上が適当であり、0.5重量%以上が好ましく、0.8重量%以上がより好ましく、1重量%以上がさらに好ましく、1.2重量%以上でもよい。酸の濃度を高くすることで、実用的な加工性が得られやすい傾向がある。研磨用組成物における酸の濃度は、通常、15重量%以下が適当であり、10重量%以下が好ましく、5重量%以下がより好ましく、3重量%以下でもよい。酸の含有量を制限することにより、研磨対象物(Ni-P基板)の面精度は向上しやすい。
【0037】
(添加剤A)
ここに開示される研磨用組成物は添加剤Aを含む。上記添加剤Aは、スルホン酸(塩)基を有するポリマー(以下、「スルホン酸(塩)基含有ポリマー」ともいう。)である。スルホン酸(塩)基を有する添加剤Aを、後述する添加剤B(ノニオン性界面活性剤)と併用することにより、Ni-P基板の研磨において、実用的な加工性を維持しつつ、研磨抵抗(摩擦)を低減することができる。上記の効果が得られる理由は、例えば以下のように考えられる。添加剤Aと添加剤Bとは、両者が共存することで複合体を形成する。かかる複合体は、添加剤Bが分子中に特定単位数以上のオキシエチレン単位を含むことで、コロイダルシリカに対して適度な吸着性を示す。その結果、かかる複合体がコロイダルシリカと研磨対象基板との間に介在し、潤滑作用を示すことで、コロイダルシリカと研磨対象基板の間の研磨抵抗の低減に作用していると考えられる。また、研磨中、Ni-P基板は負に帯電し得る。一方でかかる複合体が吸着したコロイダルシリカは負電荷を帯びると考えられるため、Ni-P基板に対して静電反発し、コロイダルシリカの転動頻度が高まり、この作用によっても研磨抵抗が低減すると考えられる。なお、上記のメカニズムは、実験結果に基づく本発明者らの考察であり、ここに開示される技術は上記のメカニズムに限定して解釈されるものではない。
【0038】
添加剤Aとして用いられるスルホン酸(塩)基含有ポリマーとは、該ポリマーを構成する繰返し単位として、スルホン酸(塩)基を有する繰返し単位Xを少なくとも1種類含むポリマーをいう。ここで「スルホン酸(塩)」とは、スルホン酸およびスルホン酸塩を包含する概念であり、スルホン酸およびスルホン酸塩の少なくとも一方を指す。また、本明細書において「ポリマー」とは、繰返し単位(モノマーに由来する単位)を複数有する物質(化合物、分子)またはその混合物をいい、重合によって生成する重合物であってもよく、天然物由来の高分子であってもよい。スルホン酸(塩)基はアニオン性であるので、スルホン酸(塩)基を有する添加剤Aもアニオン性を有する。添加剤Aは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
添加剤Aが有する繰返し単位Xは、一分子中に少なくとも一つのスルホン酸(塩)基を有する単量体(モノマー)に由来する繰返し単位であり得る。スルホン酸(塩)基を有する単量体としては、スチレンスルホン酸、イソプレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、イソアミレンスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、メタリルスルホン酸等が挙げられる。スルホン酸(塩)基含有ポリマーは、上記繰返し単位Xを2種類以上含んでいてもよい。スルホン酸(塩)基含有ポリマーは、スルホン酸(塩)基を有しない繰返し単位をさらに含んでいてもよい。スルホン酸(塩)基を有しない繰返し単位は、スルホン酸(塩)以外のアニオン性官能基を有する繰返し単位であってもよく、アニオン性官能基を有しない繰返し単位であってもよい。
【0040】
スルホン酸(塩)以外のアニオン性官能基を有する繰返し単位の一例として、カルボキシ基を有する繰返し単位Yが挙げられる。繰返し単位Yは、例えば、(メタ)アクリル酸に由来する繰返し単位であり得る。ここで「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸およびメタクリル酸の一方または両方を包含する概念である。添加剤Aは、(メタ)アクリル酸に由来するカルボキシ基含有繰返し単位Yと繰返し単位Xとを含む(メタ)アクリル酸/スルホン酸共重合体であってもよい。上記(メタ)アクリル酸/スルホン酸共重合体の例としては、(メタ)アクリル酸/イソプレンスルホン酸共重合体、(メタ)アクリル酸/2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸共重合体、(メタ)アクリル酸/イソプレンスルホン酸/2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸共重合体等が挙げられる。(メタ)アクリル酸/スルホン酸共重合体は、スルホン酸(塩)基を有さず、かつ(メタ)アクリル酸単量体由来ではない繰返し単位をさらに含んでいてもよい。
【0041】
いくつかの態様において、添加剤Aとして、カルボキシ基を有する繰返し単位Yを含まないスルホン酸(塩)基含有ポリマーを採用し得る。繰返し単位Y不含有のスルホン酸(塩)基含有ポリマーは、スルホン酸(塩)基およびカルボキシ基を有しない繰返し単位(例えば、アニオン性官能基を有しない繰返し単位)をさらに含んでいてもよい。
【0042】
スルホン酸(塩)基含有ポリマーの例として、該重合体の分子構造に含まれる全繰返し単位のモル数に占めるスルホン酸(塩)基含有繰返し単位Xのモル数の割合(モル比)が95%以上である重合体が挙げられる。例えば、実質的に繰返し単位Xからなるスルホン酸(塩)基含有ポリマーを添加剤Aとして使用し得る。かかるスルホン酸(塩)基含有ポリマーにおいて、上記繰返し単位Xのモル比は、例えば98%以上であってよく、99.5%以上でもよく、99.9%以上でもよい。いくつかの態様において、添加剤Aとして、繰返し単位Xのモル比が100%であるスルホン酸(塩)基含有ポリマー、すなわちスルホン酸(塩)基を有する繰返し単位Xのみからなるスルホン酸(塩)基含有ポリマーを採用し得る。そのようなスルホン酸(塩)基含有ポリマーの例として、上記スルホン酸(塩)基含有単量体のいずれか1種からなる単独重合体や、2種以上のスルホン酸(塩)基含有単量体からなる共重合体が挙げられる。上記単独重合体の例として、ポリスチレンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリイソアミレンスルホン酸等が例示される。なかでもポリスチレンスルホン酸、すなわちスチレンスルホン酸の単独重合体(ホモポリマー)が好ましい。
【0043】
いくつかの好ましい態様において、添加剤Aとして、主鎖とスルホン酸(塩)基とを有し、該主鎖中に芳香環を有する化学構造を有するポリマーが用いられる。添加剤Aの主鎖は、典型的には、複数の繰返し単位から構成されており、主鎖中には芳香環が含まれている。主鎖中に芳香環を有する構造としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン等の構造や、メラミン構造、リグニン構造等が挙げられ、これらはメチル基等のアルキル基が介在した状態で主鎖中に存在し得る。スルホン酸(塩)基は、側鎖として主鎖に結合しており、通常、上記主鎖に直接に結合しているが、これに限定されず、上記主鎖に他の基を介して連結していてもよい。
【0044】
上記の化学構造を有する添加剤Aの好適例としては、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物またはその塩、メチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物またはその塩、アントラセンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物またはその塩等のポリアルキルアリールスルホン酸系化合物;メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物またはその塩等のメラミンホルマリン樹脂スルホン酸系化合物;リグニンスルホン酸またはその塩、変成リグニンスルホン酸またはその塩等のリグニンスルホン酸系化合物;アミノアリールスルホン酸-フェノール-ホルムアルデヒド縮合物またはその塩等の芳香族アミノスルホン酸系化合物;等が挙げられる。
【0045】
添加剤Aが、中和された塩の形態である場合、添加剤Aは、Na、K等のアルカリ金属塩、Ca等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩、モノエタノールアミン等のアルカノールアミン塩の形態であり得る。添加剤Aは、例えば、Na塩等のアルカリ金属塩の形態で好ましく用いられ得る。
【0046】
添加剤AのMwは、特に限定されず、例えば凡そ400以上であり、1000以上であってもよい。いくつかの好ましい態様において、添加剤AのMwは、例えば1500以上であり、2000以上であってよく、2500以上でもよい。また、添加剤AのMwの上限は、例えば30万以下であり、10万以下であってもよい。いくつかの好ましい態様において、添加剤AのMwは、例えば5万以下であり、1万以下(例えば10000未満)であってもよく、9000以下でもよく、5000以下でもよい。他のいくつかの態様において、添加剤AのMwは、3000以上であってもよく、5000以上でもよく、7000以上でもよく、9000以上でもよい。他のいくつかの態様において、添加剤AのMwの上限は、例えば150万以下であってよく、100万以下でもよく、50万以下でもよい。なお、添加剤AのMwとしては、GPCにより求められる重量平均分子量(水系、ポリエチレングリコール換算)を採用することができる。
【0047】
研磨用組成物における添加剤Aの濃度は、特に限定されず、例えば0.0001重量%以上であってもよく、0.0005重量%以上でもよい。いくつかの好ましい態様において、上記添加剤Aの濃度は、添加剤Aの添加効果を効果的に発揮させる観点から、例えば0.001重量%以上であり、0.005重量%以上であってもよく、0.01重量%以上でもよい。また、加工性や研磨後の洗浄除去性等の観点から、上記添加剤Aの濃度は、通常、1重量%未満とすることが適当であり、好ましくは0.2重量%以下であり、より好ましくは0.1重量%以下であり、0.07重量%以下でもよく、0.05重量%以下でもよく、0.03重量%以下でもよい。
【0048】
(添加剤B)
ここに開示される研磨用組成物は添加剤Bを含む。上記添加剤Bは、一分子中にオキシエチレン単位(以下「OE単位」ともいう。)を10以上有するノニオン性界面活性剤である。上記化学構造および性質を有する添加剤Bを上記添加剤Aと組み合わせて使用することにより、Ni-P基板の研磨において、実用的な加工性を維持しつつ、研磨抵抗(摩擦)を低減することができる。その考察メカニズムは、添加剤Aに関する説明のとおりであるが、補足すると、添加剤Bは、OE単位を10以上有することにより、コロイダルシリカによく吸着し、これによって、実用的な加工性の維持と研磨抵抗低減に寄与していると考えられる。添加剤Bは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0049】
添加剤Bとしてのノニオン性界面活性剤は、OE単位を含むポリオキシエチレン鎖(OE単位が2以上連続した鎖状構造)を有している。ここで、OE単位とは、式:-CH2-CH2-O-;で表わされる構造単位である。いくつかの好ましい態様において、添加剤BのOE単位数は、12以上であってもよく、15以上でもよく、18以上でもよく、20以上でもよく、25以上でもよく、30以上でもよく、35以上でもよく、40以上でもよく、45以上でもよい。OE単位数が増えるほど、砥粒への吸着性が向上する傾向がある。添加剤BのOE単位数は、例えば80以下であってもよく、分散安定性等の観点から、60以下でもよく、50以下でもよく、45以下でもよく、40以下でもよく、35以下でもよく、30以下でもよく、25以下でもよく、20以下でもよく、16以下でもよい。なお、上記OE単位数とは、OE単位数の異なる混合物においては平均OE数を意味する。
【0050】
添加剤Bとしてのノニオン性界面活性剤は、典型的には、親水性領域としての上記ポリオキシエチレン鎖と疎水性領域とからなる構造を有するものであり得る。上記疎水性領域は、例えば炭化水素基であってもよく、炭素および水素以外の原子(リン、窒素、酸素、硫黄、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等)を含む基であってもよい。2以上の疎水性領域を有する添加剤Bにおいて、それらの疎水性領域は、同一であってもよく、異なっていてもよい。いくつかの好ましい態様では、上記疎水性領域は炭化水素基を含む。上記炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよく、アリール基やアルキルアリール基等のように芳香環を含む炭化水素基であってもよい。脂肪族炭化水素基は、飽和炭化水素基であってもよく、炭素-炭素二重結合等の不飽和結合を含む不飽和炭化水素基であってもよく、また、鎖状でもよく、環状構造を含んでいてもよい。鎖状炭化水素基は、直鎖状および分岐状のいずれであってもよい。疎水性領域を構成する炭化水素基の好適例として、アルキル基およびアルケニル基が挙げられる。
【0051】
添加剤Bとして、脂肪族炭化水素基を有するノニオン性界面活性剤を用いる態様において、上記脂肪族炭化水素基(例えば、アルキル基、アルケニル基)の炭素数は、例えば4以上であることが適当であり、6以上でもよく、8以上でもよく、10以上でもよく、12以上でもよく、14以上でもよく、16以上でもよく、18以上でもよく、20以上でもよい。上記脂肪族炭化水素基の炭素数が大きくなるほど、研磨抵抗低減に寄与するサイズを有する複合体が形成されやすい傾向がある。また、添加剤Bの分散安定性等の観点から、上記脂肪族炭化水素基の炭素数は、例えば80以下であってもよく、60以下でもよく、40以下でもよく、30以下でもよく、24以下であってもよく、22以下でもよく、20以下でもよい。
【0052】
いくつかの態様において、添加剤Bは、ポリオキシエチレン鎖と脂肪族炭化水素基とがエーテル結合またはエステル結合を介して連結した構造を有し得る。そのような構造を有する添加剤Bの例として、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルケニルエステル等が挙げられる。
【0053】
添加剤Bの好適例として、上記ポリオキシエチレン鎖と、脂肪族炭化水素基とからなる化学構造を有するノニオン性界面活性剤が挙げられる。脂肪族炭化水素基は、上記のように飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基であってもよく、環状構造を含んでもよい。かかる添加剤Bの典型例としては、式:R-O-(CH2-CH2-O)nH;で表わされる化合物が挙げられる。上式中、Rは脂肪族炭化水素基であり、例えばアルキル基またはアルケニル基である。上記脂肪族炭化水素基(例えばアルキル基またはアルケニル基)の炭素数は、上述の脂肪族炭化水素基の炭素数の範囲が採用され得る。また、nは10以上の実数であり、上述のOE単位数の範囲が採用され得る。
【0054】
なお、添加剤Bは、本発明の効果が損なわれない範囲で、OE単位に加えてOE単位以外のオキシアルキレン単位(例えば、オキシプロピレン単位、オキシブチレン単位)を含んでよい。この場合、添加剤Bに含まれるOE単位以外のオキシアルキレン単位の数は、OE単位の数より少ない(例えば、OE単位の数の1/2以下、1/5以下または1/10以下である)ことが好ましい。また、添加剤Bは、本発明の効果が損なわれない範囲で、水酸基、アミド基、炭素原子数1~2のアルカノール基等を含んでもよい。
【0055】
添加剤Bの具体例としては、OE単位数が10以上であるPOE(ポリオキシエチレン)ブチルエーテル、POEエチルヘキシルエーテル、POEオクチルエーテル、POEデシルエーテル、POEイソデシルエーテル、POEラウリルエーテル、POEイソトリデシルエーテル、POEセチルエーテル、POEステアリルエーテル、POEオレイルエーテル、POEベヘニルエーテル、POEモノラウレート、POEモノステアレート、POEモノオレート、POEジオレート等が挙げられる。
【0056】
研磨用組成物に含まれる添加剤Bの濃度は、特に限定されず、例えば0.0001重量%以上であり、0.0003重量%以上とすることができる。いくつかの好ましい態様において、上記添加剤Bの濃度は、添加剤Bの添加効果を効果的に発揮させる観点から、例えば0.0005重量%以上であり、0.001重量%以上であってもよく、0.003重量%以上でもよく、0.005重量%以上でもよく、0.008重量%以上でもよく、0.01重量%以上でもよい。また、研磨用組成物中の添加剤Bの濃度は、例えば0.1重量%以下とすることができ、0.06重量%以下であってもよく、0.04重量%以下でもよく、0.02重量%以下(例えば0.01重量%未満)でもよい。添加剤Bの使用量を制限することにより、加工性が維持されやすく、また、研磨用組成物は分散安定性に優れる傾向がある。
【0057】
研磨用組成物に含まれる添加剤Bの量は、当該研磨用組成物に含まれるコロイダルシリカとの相対的関係によっても特定され得る。研磨用組成物に含まれるコロイダルシリカ100重量部に対する添加剤Bの含有量は、例えば0.001重量部以上とすることが適当であり、好ましくは0.005重量部以上、より好ましくは0.01重量部以上であり、さらに好ましくは0.05重量部以上であり、0.1重量部以上であってもよく、0.2重量部以上でもよい。また、コロイダルシリカ100重量部に対する添加剤Bの含有量は、凡そ10重量部以下とすることが適当であり、好ましくは5重量部未満、より好ましくは3重量部未満、さらに好ましくは1重量部未満であり、0.5重量部以下であってもよく、0.3重量部以下でもよい。コロイダルシリカ量に対して適当量の添加剤Bを使用することにより、研磨抵抗が効果的に低減され得る。
【0058】
添加剤Aと添加剤Bとの使用割合は、本発明の効果が好適に発揮されるよう適切に設定され、特定の範囲に限定されない。添加剤Bの濃度CBに対する添加剤Aの濃度CAの重量比(CA/CB)は、例えば0.1以上であり、0.3以上であってもよく、0.7以上でもよく、1.0以上でもよく、1.2以上でもよい。また、上記重量比(CA/CB)は、例えば30以下であり、15以下であってもよく、10以下でもよく、8以下でもよく、5以下でもよい。添加剤Aと添加剤Bの比率を適当な範囲とすることにより、研磨抵抗低減に寄与し得る複合体が形成されやすくなる。
【0059】
(水)
ここに開示される研磨用組成物は、水を含む。水としては、イオン交換水、純水、超純水、蒸留水等を好ましく用いることができる。上記イオン交換水は、脱イオン水であり得る。
【0060】
(酸化剤)
ここに開示される研磨用組成物には、必要に応じて酸化剤を含有させることができる。酸化剤の例としては、過酸化物、硝酸またはその塩、過ヨウ素酸またはその塩、ペルオキソ酸またはその塩、過マンガン酸またはその塩、クロム酸またはその塩、酸素酸またはその塩、金属塩類、硫酸類等が挙げられるが、これらに限定されない。酸化剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。酸化剤の具体例としては、過酸化水素、過酸化ナトリウム、過酸化バリウム、硝酸、硝酸鉄、硝酸アルミニウム、硝酸アンモニウム、ペルオキソ一硫酸、ペルオキソ一硫酸アンモニウム、ペルオキソ一硫酸金属塩、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸金属塩、ペルオキソリン酸、ペルオキソ硫酸、ペルオキソホウ酸ナトリウム、過ギ酸、過酢酸、過安息香酸、過フタル酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸、塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸、過ヨウ素酸、過塩素酸、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、過マンガン酸カリウム、クロム酸金属塩、重クロム酸金属塩、塩化鉄、硫酸鉄、クエン酸鉄、硫酸アンモニウム鉄等が挙げられる。好ましい酸化剤として、過酸化水素、硝酸鉄、過ヨウ素酸、ペルオキソ一硫酸、ペルオキソ二硫酸および硝酸が例示される。少なくとも過酸化水素を含むことが好ましく、過酸化水素からなることがより好ましい。
【0061】
ここに開示される研磨用組成物が酸化剤を含む場合、該研磨用組成物における酸化剤の含有量は、研磨対象物を酸化する速度、ひいては加工性を考慮して、有効成分量基準で0.01重量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.05重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上であり、0.2重量%以上でもよく、0.3重量%以上でもよい。また、研磨対象物の面精度を高める観点から、研磨用組成物における酸化剤の含有量は、有効成分量基準で5重量%以下であることが好ましく、より好ましくは1重量%以下である。
【0062】
(水溶性高分子)
ここに開示される研磨用組成物には、任意成分として水溶性高分子を含有させることができる。水溶性高分子は、研磨中の基板を保護し、基板表面の欠陥(例えばスクラッチ)の発生を抑制する機能を発揮し得る。ここでいう水溶性高分子は、重量平均分子量(Mw)が凡そ2000以上、典型的には4000以上の化合物である。水溶性高分子は、単独重合体でもよく、共重合体でもよい。水溶性高分子の例としては、アニオン性ポリマー、ノニオン性ポリマー、カチオン性ポリマー、両性ポリマーのいずれも使用可能であるが、添加剤AおよびBに該当するものは含まれない。かかる任意水溶性高分子の例としては、ポリアクリル酸およびその塩、ポリ酢酸ビニル、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリグリセリン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドンとポリアクリル酸および/または酢酸ビニルとの共重合体、ジアリルアミン塩酸塩二酸化硫黄共重合体、カルボキシメチルセルロースおよびその塩、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、プルラン、キトサンおよびその塩、等が挙げられるが、これらに限定されない。任意水溶性高分子は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0063】
上記水溶性高分子のMwは、例えば2000以上であってよく、2500以上でもよい。基板表面の保護性を高めて欠陥の発生を抑制する観点から、いくつかの態様において、上記水溶性高分子のMwは、好ましくは3000以上、より好ましくは5000以上であり、7000以上でもよく、9000以上でもよい。上記水溶性高分子のMwの上限は特に制限されないが、例えば150万以下であってよく、100万以下でもよく、50万以下でもよく、30万以下でもよく、20万以下でもよく、10万以下でもよく、7万以下でもよく、5万以下でもよく、3万以下でもよい。なお、上記水溶性高分子のMwとしては、GPCにより求められる重量平均分子量(水系、ポリエチレングリコール換算)を採用することができる。
【0064】
研磨用組成物における上記水溶性高分子の濃度は、特に限定されない。上記濃度は、例えば0.0001重量%以上であり得る。研磨中における基板の保護効果を高める観点から、上記濃度は、好ましくは0.0005重量%以上、より好ましくは0.001重量%以上であり、0.002重量%以上でもよく、0.0025重量%以上でもよく、0.003重量%以上でもよい。また、研磨中における基板の保護性と研磨後の基板からの洗浄除去性とを好適に両立しやすくする観点から、上記水溶性高分子の濃度は、通常、0.2重量%以下とすることが適当であり、好ましくは0.15重量%以下、例えば0.1重量%以下であり、0.07重量%以下でもよく、0.05重量%以下でもよい。ここに開示される研磨用組成物は、上記水溶性高分子(任意水溶性高分子)を実質的に含まないものであってもよい。
【0065】
(塩基性化合物)
研磨用組成物には、pH調整等の目的で、必要に応じて塩基性化合物を含有させることができる。ここで塩基性化合物とは、研磨用組成物に添加されることによって該組成物のpHを上昇させる機能を有する化合物を指す。塩基性化合物の例としては、水酸化カリウムや水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化第四級アンモニウム等の第四級アンモニウム化合物、アンモニア、アミン等が挙げられる。塩基性化合物は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0066】
(その他の成分)
ここに開示される研磨用組成物は、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、界面活性剤、キレート剤、防腐剤、防カビ剤等の、研磨用組成物(例えば、Ni-P基板等のような磁気ディスク基板用の研磨用組成物)に使用され得る公知の添加剤を、必要に応じてさらに含有してもよい。
【0067】
添加剤Aおよび添加剤Bに加えて用いられ得る任意界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤のいずれも使用可能である。なお、ここでいう任意界面活性剤には、添加剤Aおよび添加剤Bは含まれない。任意界面活性剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記アニオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル、アルキル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキル硫酸、アルキル硫酸、アルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンスルホコハク酸、アルキルスルホコハク酸、ポリアクリル酸、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
上記ノニオン性界面活性剤の具体例としては、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド等が挙げられる。
上記カチオン性界面活性剤の具体例としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、アルキルアミン塩等が挙げられる。
上記両性界面活性剤の具体例としては、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシド等が挙げられる。
【0068】
上記任意界面活性剤を含む態様の研磨用組成物では、界面活性剤の含有量を、例えば0.0005重量%以上とすることが適当である。上記含有量は、研磨後の表面の平滑性等の観点から、好ましくは0.001重量%以上、より好ましくは0.01重量%以上である。また、加工性等の観点から、上記含有量は、1重量%以下とすることが適当であり、好ましくは0.5重量%以下、例えば0.1重量%以下である。ここに開示される研磨用組成物は、上記任意界面活性剤を実質的に含まないものであってもよい。
【0069】
キレート剤の例としては、アミノカルボン酸系キレート剤および有機ホスホン酸系キレート剤が挙げられる。アミノカルボン酸系キレート剤の例には、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸アンモニウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、トリエチレンテトラミン六酢酸およびトリエチレンテトラミン六酢酸ナトリウムが含まれる。有機ホスホン酸系キレート剤の例には、2-アミノエチルホスホン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エタン-1,1-ジホスホン酸、エタン-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1-ヒドロキシ-1,1-ジホスホン酸、エタン-1-ヒドロキシ-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1,2-ジカルボキシ-1,2-ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、2-ホスホノブタン-1,2-ジカルボン酸、1-ホスホノブタン-2,3,4-トリカルボン酸およびα-メチルホスホノコハク酸が含まれる。これらのうち有機ホスホン酸系キレート剤がより好ましく、なかでも好ましいものとしてエチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)およびジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)が挙げられる。特に好ましいキレート剤として、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)が挙げられる。
【0070】
防腐剤および防カビ剤の例としては、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン等のイソチアゾリン系防腐剤、パラオキシ安息香酸エステル類、フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0071】
(pH)
ここに開示される研磨用組成物のpHは特に制限されず、例えば0.5~6.5の範囲から選択し得る。加工性等の観点から、研磨用組成物のpHは、例えば4.0以下であり、好ましくは3.7以下、より好ましくは3.5以下であり、3.2以下でもよく、3.0以下でもよく、2.5以下でもよく、2.2以下でもよい。また、研磨用組成物のpHは、例えば1.0以上とすることができ、1.0より高くすることが適当であり、研磨後の基板表面の荒れを抑制する観点から、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.5以上(例えば1.5超)であり、1.7以上でもよい。ここに開示される技術は、研磨用組成物のpHが1.0以上4.0以下(例えば1.5以上3.7以下)である態様で好ましく実施され得る。上述したpHは、Ni-P基板の仕上げ研磨用の研磨用組成物において特に好ましく適用され得る。
【0072】
なお、ここに開示される技術において、研磨用組成物のpHは、pHメーターを用いて3点校正した後で、ガラス電極を測定対象の組成物に入れて測定することにより把握することができる。標準液は、例えば、シュウ酸塩pH標準液:pH1.68(25℃)、フタル酸塩pH標準液:pH4.01(25℃)、中性リン酸塩pH標準液:pH6.86(25℃)、炭酸塩pH標準液:pH10.01(25℃)である。
【0073】
<濃縮液>
ここに開示される研磨用組成物は、研磨対象物(例えば磁気ディスク基板)に供給される前には濃縮された形態(すなわち、研磨液の濃縮液の形態)であってもよい。このように濃縮された形態の研磨用組成物(濃縮液)は、製造、流通、保存等の際における利便性やコスト低減等の観点から有利である。濃縮倍率は、例えば、体積換算で1.5倍~20倍程度とすることができる。濃縮液の貯蔵安定性等の観点から、例えば2倍~10倍程度の濃縮倍率が適当である。かかる濃縮液は、所望のタイミングで希釈して研磨用組成物(研磨液)を調製し、その研磨液を研磨対象物に供給する態様で使用することができる。上記希釈は、例えば上記濃縮液に水を加えて混合することにより行うことができる。
【0074】
<多剤型研磨用組成物>
ここに開示される研磨用組成物は、一剤型であってもよいし、二剤型を始めとする多剤型であってもよい。例えば、該研磨用組成物の構成成分(例えば水以外の成分)のうち一部の成分を含むパートAと、残りの成分を含むパートBとが混合されて研磨対象物の研磨に用いられるように構成されていてもよい。いくつかの好ましい態様に係る多剤型研磨用組成物は、砥粒を含むパートA(例えば該砥粒の分散媒をさらに含む分散液)と、砥粒以外の成分の少なくとも一部(例えば、酸、添加剤A、B等)を含むパートBとを含んで構成されている。これらは、例えば使用前は分けて保管されており、使用時に混合して一液の研磨用組成物が調製され得る。混合時には、例えば過酸化水素等の酸化剤や、希釈用の水等がさらに混合され得る。
【0075】
<研磨プロセス>
ここに開示される研磨用組成物は、例えば以下の操作を含む態様で、研磨対象物(ここではNi-P基板)の研磨に好適に使用することができる。以下、ここに開示される研磨用組成物を用いて研磨対象物を研磨する方法の好適な一態様につき説明する。
すなわち、ここに開示されるいずれかの研磨用組成物を含む研磨液(ワーキングスラリー)を用意する。上記研磨液を用意することには、研磨用組成物に濃度調整(例えば希釈)やpH調整等の操作を加えて研磨液を調製することが含まれ得る。あるいは、研磨用組成物をそのまま研磨液として使用してもよい。
【0076】
次いで、その研磨液を研磨対象物に供給し、研磨する。例えば、一般的な研磨装置に研磨対象物をセットし、該研磨装置の研磨パッドを通じて上記研磨対象物の表面(研磨対象面)に研磨液を供給する。例えば、上記研磨液を連続的に供給しつつ、研磨対象物の表面に研磨パッドを押しつけて両者を相対的に移動(例えば回転移動)させる。
【0077】
使用し得る研磨パッドは特に限定されない。例えば、硬質発泡ポリウレタンタイプ、不織布タイプ、スウェードタイプ等の研磨パッドを用いることができる。スウェードタイプの研磨パッド(典型的にはポリウレタン製研磨パッド)は、加工性に優れ、また基板表面の高品質化を実現しやすい。なお、ここに開示される技術で用いられる研磨パッドは砥粒を含まない。
【0078】
スウェードタイプの研磨パッドは、バフパッドであってもよく、表面をバフ加工していないノンバフ状態にある研磨パッド(いわゆるノンバフパッド)であってもよい。ここで、「バフ加工」とは、砥石等を利用して表面を荒削りする処理であって、典型的には、研磨パッドの表層部分を除去してポアの開口径や開口率を調整する処理のことをいう。
【0079】
特に限定するものではないが、研磨パッドとしてノンバフパッドを使用する場合、研磨対象基板(研磨対象物)の研磨の前に、パッドドレッシング処理と、ダミー研磨とを行い、該研磨パッドの研磨面を所望の状態に調整することがある。ここで、パッドドレッシング処理は、パッドコンディショナー(パッドドレッサー)を用いて研磨パッドの表層を削り取る処理であり、処理後の研磨パッドの表面には、ポアや毛羽立った部分が存在し得る。このような表面の研磨パッドに対してダミー基板(典型的には、研磨対象基板の同種の基板)を用いた研磨を行うことで、上記パッドドレッシング処理後の研磨パッドの表面状態が、続く研磨対象基板の研磨に適した状態となるように調整される。一方で、このように表面状態が整えられた研磨パッドは、バフパッドに比べ平滑なパッド表面となり、かつポア径も小さい(例えば20μm程度)ことから、研磨対象基板と吸着しやすくなっている。そのため、基板-研磨パッド間の研磨抵抗は、このような研磨パッドの使用において、高くなりやすい傾向がある。このような研磨パッド(典型的にはノンバフパッド)を用いた研磨対象基板(Ni-P基板)の研磨において、ここに開示される研磨用組成物を用いることによる研磨抵抗低減効果は、効果的に発揮され得る。
【0080】
また、ここに開示される研磨方法では、研磨対象物は、キャリアによって保持された状態で研磨装置にセットされ、研磨が実施される。キャリアは、研磨中、研磨対象物である基板の側面を保持するものであり、特に限定されるものではないが、通常、ホールと称される保持孔を有する部材であり、上記保持孔内に研磨対象物が配置されて、研磨が行われる。
【0081】
キャリアの材質は特に限定されず、例えば、アラミド樹脂やポリカーボネート樹脂等の樹脂材料、繊維強化プラスチック(FRP)等の複合樹脂材料、これらを組み合わせた複合材が用いられる。かかる複合材としては、アラミド不織布にエポキシ樹脂を含浸させたアラミド積層板のキャリアが挙げられる。ここに開示される技術は、アラミド樹脂等の樹脂製キャリアを用いる態様に好適である。樹脂製キャリアを用いる態様において、ここに開示される技術による研磨抵抗低減効果に基づき、当該研磨抵抗を原因とするキャリアの変形を防止または抑制し得る。
【0082】
また、キャリアは、通常、研磨対象物よりも薄厚に構成されている。キャリアの厚みは、研磨対象物等に応じて適当な厚みを有するものが用いられ、特定の範囲に限定されない。キャリアの厚みは、例えば1.5mm以下であり、通常は1mm以下であり、0.7mm以下程度であってもよく、0.5mm以下程度でもよい。このような厚さを有するキャリアは、研磨時にかかる負荷が大きくなると変形しやすいところ、ここに開示される技術を適用することにより、研磨抵抗が低減され、キャリアにかかる負荷が緩和され、当該負荷による変形を防止または抑制することができる。キャリアの厚みの下限値は、0.1mm以上(例えば0.2mm以上)程度であり得る。
【0083】
上記のように研磨対象物を研磨した後、研磨対象物を洗浄する。例えば、研磨対象物をアルカリ性洗浄液で洗浄するアルカリ洗浄工程を実施する。アルカリ洗浄工程は、例えば、研磨対象物の少なくとも研磨対象面にアルカリ性洗浄液を接触させることを含む。例えば、研磨対象物をアルカリ性洗浄液に浸漬することにより、研磨対象面にアルカリ性洗浄液を接触させることができる。上記アルカリ性洗浄液に浸漬した研磨対象物に超音波を付与する超音波処理を行ってもよい。上記超音波の付与に加えて、あるいは上記超音波の付与に代えて、ポリビニルアルコール製スポンジ、不織布、ナイロンブラシ等を用いるスクラブ洗浄を行ってもよい。
アルカリ洗浄工程に使用するアルカリ性洗浄液のpHは、例えば7.5以上であってよく、洗浄性向上の観点から、好ましくは8.0以上であり、より好ましくはpH8.5以上、例えば8.8以上である。また、洗浄による基板表面の荒れを防ぐ観点から、上記アルカリ性洗浄液のpHは、11以下が適当であり、10以下が好ましく、9.5以下がより好ましい。アルカリ性洗浄液としては、上述した塩基性化合物の1種または2種以上を含む水溶液を用いることができる。なかでもアルカリ金属水酸化物の水溶液が好ましく、例えば水酸化カリウム水溶液を好ましく使用し得る。アルカリ洗浄工程は、市販のアルカリ洗浄液を用いて行ってもよい。
【0084】
なお、研磨液を用いて行う研磨の終了後、アルカリ洗浄工程に移行する前に、研磨対象物を非アルカリ性のリンス液で洗浄してもよい。リンス液としては、純水やイオン交換水等の水や、酸性水溶液(例えば、研磨液から砥粒を除いた組成の水溶液)を用いることができる。
【0085】
<用途>
ここに開示される研磨用組成物は、ニッケルリンめっきが施された磁気ディスク基板(Ni-P基板)の研磨に用いられる。上記Ni-P基板は、基材の表面にニッケルリンめっき層を有する磁気ディスク基板である。上記基材の材質は、例えば、アルミニウム合金、ガラス、ガラス状カーボン等であり得る。ここに開示される研磨用組成物は、例えば、アルミニウム合金製の基材上にニッケルリンめっき層を有するNi-P基板の研磨に好ましく用いられ得る。
この明細書によると、ここに開示される研磨用組成物を用いた研磨工程と、該研磨工程後に行われるアルカリ洗浄工程と、を備えるNi-P基板の製造方法および該方法により製造されたNi-P基板が提供され得る。
【0086】
ここに開示される研磨用組成物は、Ni-P基板のファイナルポリシング工程(仕上げ研磨工程)に特に好ましく使用され得る。この明細書によると、ここに開示される研磨用組成物を用いたファイナルポリシング工程と、該ファイナルポリシング工程後に行われるアルカリ洗浄工程と、を備えるNi-P基板の製造方法および該方法により製造されたNi-P基板が提供され得る。なお、ファイナルポリシングとは、目的物の製造プロセスにおける最後のポリシング工程(すなわち、その工程の後にはさらなるポリシングを行わない工程)を指す。上記基板の製造方法は、上記研磨工程の前に行われる粗研磨工程や予備研磨工程をさらに含み得る。
【0087】
ここに開示される研磨用組成物は、ファイナルポリシングよりも上流のポリシング工程に用いられてもよい。ここで、ファイナルポリシングよりも上流のポリシング工程とは、粗研磨工程と最終研磨工程との間の予備研磨工程を指す。予備研磨工程は、少なくとも1次ポリシング工程を含み、さらに2次、3次・・・等のポリシング工程を含み得る。上記研磨用組成物は、いずれのポリシング工程にも使用可能であり、これらのポリシング工程において同一のまたは異なる研磨用組成物を用いることができる。ここに開示される研磨用組成物は、例えば、ファイナルポリシングの直前に行われるポリシング工程に用いられてもよい。
【0088】
ここに開示される研磨用組成物は、例えば、上流の工程により表面粗さ20Å以下に調整されたNi-P基板の研磨に好ましく用いられ得る。ここで表面粗さとは、Schmitt Measurement System社製レーザースキャン式表面粗さ計「TMS-3000WRC」により測定される表面粗さ(算術平均粗さ(Ra))をいう。表面粗さ10Å以下に調整されたNi-P基板の研磨への適用が特に好ましい。これにより、高品位の表面を有するNi-P基板を生産性よく製造し得る。
【実施例0089】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0090】
<研磨用組成物の調製>
(実施例1)
砥粒としてのコロイダルシリカ(4重量%)、酸(1.5重量%)、添加剤A(0.02重量%)、添加剤B(0.004重量%)、過酸化水素(0.4重量%)および脱イオン水を含み、水酸化カリウムでpH2.0に調整された研磨用組成物を調製した。BET法により測定されるコロイダルシリカの平均一次粒子径は18nmであり、TEM観察に基づく個数基準の粒度分布におけるコロイダルシリカの50%累積径(D50)は24nmであった。また、TEM観察に基づくコロイダルシリカの平均アスペクト比は1.11であった。酸としては、リン酸(オルトリン酸)を使用した。添加剤Aとしては、Mwが3000であるナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物ナトリウム塩を使用した。添加剤Bとしては、OE単位数が13のPOE(13)セチルエーテルを使用した。なお、表1中の「添加剤B」の欄において、POEに付されたかっこ書き内の数字はOE単位数を表している。
【0091】
(実施例2~5および比較例1~6)
添加剤Aおよび添加剤Bの種類および量を表1に示すように変更した他は実施例1と同様にして、各例に係る研磨用組成物を調製した。実施例1~5、比較例3~6における添加剤Bのモル量は同量である。なお、表1において、OE単位数が10未満である添加剤も、便宜上「添加剤B」の欄に記載した。また、表1中、「-」は不使用を表す。
【0092】
<Ni-P基板の研磨>
各例に係る研磨用組成物をそのまま研磨液に使用して、下記の条件で研磨対象基板の研磨を行った。研磨対象基板としては、表面に無電解ニッケルリンめっき層を備えたハードディスク用アルミニウム基板(Ni-P基板)を、Schmitt Measurement System社製レーザースキャン式表面粗さ計「TMS-3000WRC」により測定される表面粗さ(算術平均粗さ(Ra))の値が6Åとなるように予備研磨したものを使用した。上記研磨対象物の直径は3.5インチ(外径約95mm、内径約25mmのドーナツ型)、厚さは1.75mmであった。
【0093】
(研磨条件)
研磨装置:CETR社製の卓上研磨機、型式「CP-4」
研磨パッド:スウェードノンバフタイプ(フジボウ社製)
研磨荷重:131g/cm2
研磨定盤回転数:70rpm
ヘッド回転数:70rpm
研磨液の供給レート:13mL/分
研磨時間:300秒
なお、基板は、ヘッド部分に貼り付けられたキャリア(厚み1.5mm)に固定した。
【0094】
<洗浄>
研磨後のNi-P基板を純水に浸漬して周波数170kHzで超音波処理を行い、続いてアルカリ性洗浄液(スピードファムクリーンシステム社から入手可能な洗浄液「CSC-102B」を体積基準で200倍に希釈したもの)に浸漬し、周波数170kHzの超音波を付与しながらポリビニルアルコール製スポンジによるスクラブ洗浄を行った。次いで上記基板を純水に浸漬して周波数950kHzで超音波処理を行った後、イソプロピルアルコール雰囲気中に引き上げて乾燥させた。
【0095】
<研磨レート>
各例に係る研磨用組成物により研磨し、洗浄を行って得られた基板につき、研磨による基板の重量減少量を測定することにより研磨レートを算出し、これを平均することにより各例の研磨レートとした。具体的には、研磨レートは、次の計算式に基づいて求めた。
研磨レート[μm/分]=研磨による基板の重量減少量[g]/(基板の片面面積[cm2]×ニッケルリンめっきの密度[g/cm3]×研磨時間[分])×104
ここで、基板の片面面積は66cm2、ニッケルリンめっきの密度は7.9g/cm3として計算した。得られた値を、比較例1の値を100とする相対値に換算して、表1の「研磨レート」の「相対値」の欄に示した。
【0096】
得られた相対値から、加工性(研磨レート)を以下の2水準で判定した。結果を表1の「研磨レート」の「判定」の欄に示した。
〇:相対値95以上(実用的な加工性を有する)
×:相対値95未満
【0097】
<研磨抵抗の測定>
各例に係る研磨用組成物を用いた研磨中の研磨対象基板と研磨パッドとの間の研磨抵抗を研磨装置から取得した。具体的には、研磨対象基板を保持するヘッドに対してX軸方向(水平方向)にかかる力Fxを、研磨対象基板と研磨パッドとの間の研磨抵抗とし、研磨開始180秒後から研磨終了(300秒)までの120秒間の力Fxの平均値を研磨抵抗として測定した。そして、得られた値を、比較例1の値を100とする相対値に換算して、表1の「研磨抵抗」の「相対値」の欄に示した。
【0098】
得られた研磨抵抗の相対値につき、研磨抵抗低減効果の程度を以下の2水準で判定した。結果を表1の「研磨抵抗」の「判定」の欄に示した。
〇:相対値85以下(パッド傷の発生が抑制できる)
×:相対値85超
【0099】
【0100】
表1に示されるように、Ni-P基板の研磨において、コロイダルシリカ砥粒と、酸と、水とを含む研磨用組成物に、スルホン酸(塩)基含有ポリマーである添加剤Aと、一分子中にOE単位を10以上有するノニオン性界面活性剤である添加剤Bとを添加した実施例1~5では、上記添加剤AおよびBを含まない比較例1の研磨用組成物と比較して、実用的な加工性を維持しつつ、基板と研磨パッドとの間にかかる研磨抵抗が低下した。また、添加剤Bを用いず添加剤Aを使用した比較例2では、比較例1に対して研磨抵抗低減効果が得られたものの、その効果は、添加剤Aと添加剤Bとを併用した実施例1~5には及ばなかった。添加剤Aを用いず添加剤Bを使用した比較例4~6では、比較例1に対して研磨レートは向上したが、研磨抵抗低減効果は得られなかった。また、添加剤Aと、添加剤BとしてOE単位数が9個のノニオン性界面活性剤とを使用した比較例3でも、研磨レートは向上したが、研磨抵抗低減効果は得られなかった。
【0101】
上記の結果から、コロイダルシリカ砥粒と、酸と、水とを含み、さらに、スルホン酸(塩)基含有ポリマーである添加剤Aと、一分子中にOE単位を10以上有するノニオン性界面活性剤である添加剤Bとを含む研磨用組成物によると、Ni-P基板の研磨において、実用的な加工性を維持しつつ、研磨抵抗を低減できることがわかる。
【0102】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。