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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051440
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】液体洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 17/08 20060101AFI20230404BHJP
   C11D 3/04 20060101ALI20230404BHJP
   C11D 1/10 20060101ALI20230404BHJP
   C11D 3/37 20060101ALI20230404BHJP
   C11D 3/36 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
C11D17/08
C11D3/04
C11D1/10
C11D3/37
C11D3/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021162107
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(71)【出願人】
【識別番号】593085808
【氏名又は名称】ADEKAクリーンエイド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077573
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100123009
【弁理士】
【氏名又は名称】栗田 由貴子
(72)【発明者】
【氏名】加藤 福一
【テーマコード(参考)】
4H003
【Fターム(参考)】
4H003AB10
4H003BA12
4H003DA05
4H003DA12
4H003DB01
4H003EA21
4H003EB23
4H003EB24
4H003EB30
4H003EB32
4H003ED02
4H003FA04
4H003FA16
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高濃度アルカリとキレート剤とを含む高濃縮化された液体洗浄剤組成物でありながら、長期間保存した場合でも貯蔵安定性に優れ、貯蔵タンク内で長期間保存した際の結晶析出や凍結等が生じる虞がなく、硬質表面等のCIP洗浄用としても好適な液体洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】本発明の液体洗浄剤組成物は、(A)成分としてアルカリ金属水酸化物20質量%以上、40質量%以下、(B)成分としてメチルグリシン二酢酸及び/又はそのアルカリ金属塩0.1質量%以上、10質量%以下、(C)成分として高分子分散剤0.005質量%以上、5質量%以下、(D)成分として水を含有することを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分としてアルカリ金属水酸化物20質量%以上、40質量%以下、
(B)成分としてメチルグリシン二酢酸及び/又はそのアルカリ金属塩0.1質量%以上、10質量%以下、
(C)成分として高分子分散剤0.005質量%以上、5質量%以下、
(D)成分として水を含有することを特徴とする液体洗浄剤組成物。
【請求項2】
(A)成分のアルカリ金属水酸化物が、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムを含有する請求項1記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項3】
(C)成分の高分子分散剤が、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、アクリル酸/マレイン酸共重合体、アクリル酸/スルホン酸共重合体、オレフィン/マレイン酸共重合体及びこれらのアルカリ金属塩から選択される1種又は2種以上を含有する請求項1又は2記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項4】
(C)成分の重量平均分子量が、500以上、20000以下である請求項1から3のいずれか1項に記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項5】
更に(E)成分として、有機ホスホン酸、有機ホスフィン酸及びこれらのアルカリ金属塩から選択される1種又は2種以上を含有する請求項1から4のいずれか1項に記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項6】
前記液体洗浄剤組成物が、硬質表面の洗浄用として用いられる請求項1から5のいずれか1項に記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項7】
前記液体洗浄剤組成物が、CIP洗浄用として用いられる請求項1から6のいずれか1項に記載の液体洗浄剤組成物。



















【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体洗浄剤組成物に関し、主として金属、プラスチックス、ガラス、陶磁器等の硬質表面に付着した汚れの洗浄・除去に好適な洗浄剤組成物に関する。特に、食品工場や、飲料工場等における製造設備等に付着した汚れをCIP洗浄にて洗浄・除去するために適した洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、飲料工場や食品工場等では、製造設備の大型化や、製造品種の増加による洗浄頻度の増加に伴い、製造設備の分解洗浄が困難になってきている。そのため、分解洗浄に代わって配管、殺菌機及び充填機などの製造設備内に洗浄液を満たして循環させ、或いは製造設備内に対し洗浄液をスプレーすることで、残留汚れを洗浄・除去するCIP洗浄(Cleaning in place:定置洗浄)方式が広く採用されている。
【0003】
このCIP洗浄には、アルカリ洗浄剤、酸洗浄剤、又は殺菌剤などから選択される1以上の洗浄剤が使用されている。たとえば一般に、CIP洗浄は、1.水洗浄、2.アルカリ洗浄、3.水すすぎ、4.酸洗浄、5.水すすぎ、6.殺菌、7.水すすぎという全7工程で行われる。しかし、各洗浄剤の配合成分、或いは汚れの種類や状態に応じて、上記工程の一部が省略され、上記工程の順序が変更され、或いは同じ工程が繰り返し実施される場合もある。
また、対象となる汚れが主として食品残渣である場合、当該食品残渣には、タンパク質、油脂及び炭水化物などの有機質汚れ、並びに炭酸カルシウム、燐酸カルシウム及びケイ酸カルシウムなどの無機質汚れが含まれる。上記有機質汚れには、殺菌機などで見られる加熱変性した強固なものも存在する。
【0004】
上述する洗浄剤のうち、アルカリ洗浄剤としては、従来、有機質汚れの分解・除去性と経済性に優れる水酸化ナトリウム等のアルカリ、及び使用水に含まれる硬度成分と無機質汚れの溶解性に著しく優れるエチレンジアミン四酢酸塩等の金属イオン封鎖剤が配合され、更に必要に応じて、ポリカルボン酸塩、ホスホン酸塩、低泡性の界面活性剤などが配合された洗浄剤が用いられている。
こうしたアルカリ洗浄剤を使用して製造設備等でCIP方式等の洗浄を行う場合、一般的には、容量の大きなタンク等に高濃縮化した洗浄剤を保存し、高濃縮化した洗浄剤を、通常、アルカリ濃度が0.5~5質量%になるよう希釈して使用している。
【0005】
高濃縮化されたアルカリ洗浄剤としては、強アルカリ剤25~40質量%と、HLB3~18の非イオン界面活性剤0.1~7質量%と、アミノカルボン酸型キレート剤及びオキシカルボン酸型キレート剤から選ばれる一種以上のキレート剤0.2~10質量%と、2-メチル酪酸、3-メチル酪酸及びそれらのアルカリ金属塩もしくは低級アミン塩から選ばれる一種以上の化合物0.5~15質量%を含有する高濃度強アルカリ性水溶性組成物(特許文献1)や、水酸化ナトリウム26~40質量%と、エチレンジアミン四酢酸及び/又はその塩と、トリエチレンテトラアミン六酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、エチレンジアミン二コハク酸及びこれらの塩から選択される少なくとも1種の可溶化剤を含有する硬質表面用液体洗浄剤組成物(特許文献2)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5-230498号公報
【特許文献2】特開2012-87161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1、2に記載された高濃縮化されたアルカリ洗浄剤は、製造、容器及び輸送費用などのコスト、加えて輸送費用などに伴う二酸化炭素排出量削減などから望ましいが、高濃度のアルカリとキレート剤とを含む洗浄剤は貯蔵安定性が悪くなり、特に26質量%以上の水酸化ナトリウムとともに、エチレンジアミン四酢酸やその塩を含む高濃縮洗浄剤では、長期保存中に結晶析出や凍結等が生じ、貯蔵安定性が悪くなるという問題が生じる。このような高濃縮洗浄剤を貯蔵タンクに保存した場合には、洗浄剤の使用に伴って液面が低下するにつれて、タンク上部壁面に付着している洗浄剤の水分が蒸発し壁面上に固形物が生じる場合があり、次の洗浄剤が補充されて該固形物に洗浄剤溶液が接すると、溶解性に劣るエチレンジアミン四酢酸塩が析出し、それが核となって結晶析出や凍結を促進し、洗浄剤供給口や洗剤供給ポンプを詰まらせ、ひいては洗剤供給ポンプを故障させる原因となる。
【0008】
本発明は上記の問題に鑑みなされたもので、高濃度アルカリとキレート剤とを含む高濃縮化された液体洗浄剤組成物でありながら、長期間保存した場合でも貯蔵安定性に優れ、貯蔵タンク内で長期間保存した際の結晶析出や凍結等が生じる虞がなく、硬質表面等のCIP洗浄用としても好適な液体洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち本発明は、
(1)(A)成分としてアルカリ金属水酸化物20質量%以上、40質量%以下、(B)成分としてメチルグリシン二酢酸及び/又はそのアルカリ金属塩0.1質量%以上、10質量%以下、(C)成分として高分子分散剤0.005質量%以上、5質量%以下、(D)成分として水を含有することを特徴とする液体洗浄剤組成物、
(2)(A)成分のアルカリ金属水酸化物が、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムを含有する上記(1)に記載の液体洗浄剤組成物、
(3)(C)成分の高分子分散剤が、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、アクリル酸/マレイン酸共重合体、アクリル酸/スルホン酸共重合体、オレフィン/マレイン酸共重合体及びこれらのアルカリ金属塩から選択される1種又は2種以上を含有する上記(1)又は(2)に記載の液体洗浄剤組成物、
(4)(C)成分の重量平均分子量が、500以上、20000以下である上記(1)から(3)のいずれかに記載の液体洗浄剤組成物、
(5)更に(E)成分として、有機ホスホン酸、有機ホスフィン酸及びこれらのアルカリ金属塩から選択される1種又は2種以上を含有する上記(1)から(4)のいずれかに記載の液体洗浄剤組成物、
(6)前記液体洗浄剤組成物が、硬質表面の洗浄用として用いられる上記(1)から(5)のいずれかに記載の液体洗浄剤組成物、
(7)前記液体洗浄剤組成物が、CIP洗浄用として用いられる上記(1)から(6)のいずれかに記載の液体洗浄剤組成物
を要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の液体洗浄剤組成物は、高濃度アルカリとキレート剤とを含有する高濃縮化された液体洗浄剤組成物であるにもかかわらず、貯蔵安定性に優れ、長期間保存しても結晶析出や凍結等が生じる虞がない等の効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の液体洗浄剤組成物に用いられる(A)成分であるアルカリ金属水酸化物としては、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられるが、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを単独で用いるか、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムとを併用することが好ましい。水酸化ナトリウムと水酸化カリウムとを併用する場合、質量比で水酸化ナトリウム/水酸化カリウム=0.5~5となる割合で併用することが好ましく、水酸化ナトリウム/水酸化カリウム=1~5となる割合で併用することがより好ましい。特に水酸化ナトリウムの割合が多いことが更に好ましい。
【0012】
本発明の液体洗浄剤組成物中における(A)成分のアルカリ金属水酸化物の割合(無水物換算量)は、20質量%以上、40質量%以下である。(A)成分の割合が20質量%未満の場合、洗浄性が充分でない場合があり、40質量%を超えると貯蔵安定性が充分とならない場合がある。液体洗浄剤組成物中の(A)成分の割合は、好ましくは、20質量%以上、35質量%以下であり、20質量%以上、30質量%以下がより好ましく、貯蔵安定性の点で20質量%以上、26質量%未満が特に好ましい。
【0013】
(B)成分としては、メチルグリシン二酢酸及び/又はそのアルカリ金属塩が用いられる。メチルグリシン二酢酸及びそのアルカリ金属塩は、それぞれ単独で用いてもよく、或いは両者を併用してもよい。メチルグリシン二酢酸のアルカリ金属塩としては例えば、メチルグリシン二酢酸三ナトリウム、メチルグリシン二酢酸カリウムを用いることが好ましいが、メチルグリシン二酢酸のナトリウム塩、カリウム塩以外の他のアルカリ金属塩を用いることもできる。これらのメチルグリシン二酢酸のアルカリ金属塩は単独で用いても或いは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
本発明の液体洗浄剤組成物中における(B)成分のメチルグリシン二酢酸及び/又はその塩の割合は、0.1質量%以上、10質量%以下である。(B)成分の割合が0.1質量%未満の場合、スケール洗浄性及びスケール抑制性が充分とならない場合があり、10質量%を超えると貯蔵安定性が充分とならない場合がある。(B)成分の液体洗浄剤組成物中の割合は、0.1質量%以上、5質量%以下が好ましく、0.2質量%以上、3.5質量%以下がより好ましく、0.5質量%以上、3質量%以下が更に好ましい。
【0015】
(C)成分としては、高分子分散剤が用いられる。高分子分散剤としては、カルボン酸型ポリマーが挙げられ、例えば、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、ポリメタクリル酸、ポリイタコン酸、アクリル酸系共重合体、マレイン酸系共重合体、メタクリル酸系共重合体、アクリル酸/マレイン酸共重合体、アクリル酸/メタクリル酸共重合体、アクリル酸/スルホン酸共重合体、オレフィン/マレイン酸共重合体、無水マレイン酸/スチレン共重合体、無水マレイン酸/エチレン共重合体、無水マレイン酸/酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸/アクリル酸エステル共重合体等や、これらのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。(C)成分の高分子分散剤としては、スケール抑制性に優れたポリアクリル酸、ポリマレイン酸、アクリル酸/マレイン酸共重合体、アクリル酸/スルホン酸共重合体、オレフィン/マレイン酸共重合体又はこれらのアルカリ金属塩が好ましい。高分子分散剤は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0016】
本発明の液体洗浄剤組成物中における(C)成分の高分子分散剤の割合は、0.005質量%以上、5質量%以下である。(C)成分の割合が0.005質量%未満の場合、スケール抑制性が充分とならない場合があり、5質量%を超えてもそれ以上の効果は得られない。(C)成分の液体洗浄剤組成物中の割合は、0.01質量%以上、4質量%以下が好ましく、0.02質量%以上、2質量%以下がより好ましい。
【0017】
(C)成分の高分子分散剤は、スケール抑制性、貯蔵安定性の点から重量平均分子量が500以上、20000以下のものが好ましく、2000以上、15000以下のものがより好ましい。高分子分散剤の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によって測定された値である。具体的には、カラムとして、TSKgel G4000Hxl、G3000Hxl、G2000Hxl(何れも東ソー社製)を直列接続し、テトラヒドロフラン(THF)を遊離液として使用し、遊離液流量:1mL/分、検出器:示差屈折(RI)、サンプル濃度:0.1質量%(THF溶液)、サンプル量:200μL、カラム温度40℃で測定して得られる。
【0018】
(D)成分の水としては、水道水、工業用水、再生水、イオン交換水、RO水、蒸留水、軟水等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いても良いが、経済性の点で水道水が好ましい。水道水としては、例えば東京都荒川区の水道水(pH=7.6、総アルカリ度(炭酸カルシウム換算値として)40.0mg/L、ドイツ硬度2.3°DH(そのうち、カルシウム硬度1.7°DH、マグネシウム硬度0.6°DH)、塩化物イオン21.9mg/L、ナトリウム及びその化合物15mg/L、硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素1.2mg/L、フッ素及びその化合物0.1mg/L、ホウ素及びその化合物0.04mg/L、総トリハロメタン0.016mg/L、残留塩素0.4mg/L、有機物(全有機炭素量)0.7mg/L)が挙げられる。(D)成分の水は、洗浄剤組成物全体が100質量%となるように配合する(必要に応じ、後述する(E)成分、(F)成分を配合する場合、これらを含めて全体が100質量%となるように配合する)。
【0019】
本発明の液体洗浄剤組成物には、更に(E)成分として有機ホスホン酸、有機ホスフィン酸及びこれらのアルカリ金属塩から選択される1種又は2種以上を含有することができる。有機ホスホン酸としては例えば、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、1-ヒドロキシプロピリデン-1,1-ジホスホン酸、1-ヒドロキシブチリデン-1,1-ジホスホン酸、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸、又はこれらのアルカリ金属塩等が挙げられる。また、有機ホスフィン酸としては例えば、ビス(ポリ-2-カルボキシエチル)ホスフィン酸、ホスフィノカルボン酸共重合物又はこれらのアルカリ金属塩等が挙げられる。中でも、スケール洗浄性の点から1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸又はこれらのアルカリ金属塩が好ましい。
【0020】
本発明の液体洗浄剤組成物中に、(E)成分の有機ホスホン酸、有機ホスフィン酸又はこれらのアルカリ金属塩を配合する場合、液体洗浄剤組成物中の(E)成分の割合は、0.01質量%以上、10質量%以下が好ましいが、0.1質量%以上、7質量%以下がより好ましく、0.3質量%以上、5質量%以下が特に好ましい。(E)成分の割合が0.01質量%未満の場合、充分なスケール洗浄性の向上効果が得られず、10質量%を超える量を添加しても、それ以上の効果が得られ難い。
【0021】
本発明の液体洗浄剤組成物は、本発明の効果が損なわない範囲で、必要に応じて当該技術分野で通常使用される他の成分を含有していてもよい。このような成分としては、例えば、ノニオン界面活性剤、金属腐食防止剤、増粘剤、pH調整剤、酵素、香料、色素、防腐剤等が挙げられる。
【0022】
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンジアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルジエステル、ポリオキシアルキレンアリールエーテル、グリセリン脂肪酸エステル又はそのアルキレンオキシド付加体、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルケニルエーテル、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのランダム或いはブロック付加体、ポリオキシアルキレンひまし油、ポリオキシアルキレン硬化ひまし油、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、ジポリオキシアルキレンアルキルアミン、高級脂肪酸アルカノールアミド、アルキルアミンオキシド、アルキルグルコシド等が挙げられる。
【0023】
金属腐食防止剤としては、短鎖のジカルボン酸やトリカルボン酸等のカルボン酸類、ベンゾトリアゾールやトリルトリアゾール等のトリアゾール類、メルカプトベンゾチアゾールやイミダゾチアゾール等のチアゾール類、アジピン酸塩、グルタル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩等の有機酸塩類が挙げられる。
【0024】
増粘剤としては、例えば、セルロース・ポリマー(カルボキシメチルセルロースなど)、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、植物の粘液からのキサンタン・ガム、グアール・ガムなどの天然ガム、アルギネート、スターチ、多糖類をベースとする増粘剤、ペクチンなどのハイドロコロイド増粘剤等が挙げられる。
【0025】
pH調整剤としては、例えば、酢酸、塩酸、硫酸、硝酸、クエン酸、リン酸、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム等が挙げられる。
【0026】
酵素としては、例えば、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ、グルカナーゼ等が挙げられる。香料としては、例えば、天然香料、合成香料又はこれらの調合香料等が挙げられる。色素としては、例えば、天然色素、合成色素又はこれらの混合物が挙げられる。
【0027】
本発明の液体洗浄剤組成物は、ガラス、プラスチック、金属等の硬質表面であれば何れの硬質表面においても使用可能であり、具体的な洗浄場所としては、台所、業務用の厨房、調理器具、浴室、工場設備等が挙げられる。これらの中でも、工場設備等へのCIP(定置洗浄)による使用が好ましい。尚、本発明の液体洗浄剤組成物を使用する場合は、使用用途にあわせて、任意の濃度に水又は湯で希釈してから使用すればよい。希釈濃度としては液体洗浄剤組成物が0.01質量%以上、30質量%以下になるように希釈するのが好ましく、0.5質量%以上、5質量%以下がより好ましい。希釈には水又は湯が用いられるが、60℃以上、80℃以下の水溶液としてアルカリ洗浄工程に用いることが好ましい。希釈に用いる水としては、(D)成分として用いる水と同様のものを用いることができる。
【実施例0028】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。実施例、比較例において用いた各成分を以下に示す。表中において各成分の割合は質量%で示す。尚、表中、各成分の割合は、純分としての割合を示す。
【0029】
(A)成分
A-1:水酸化ナトリウム
A-2:水酸化カリウム
【0030】
(B)成分
B-1:メチルグリシン二酢酸三ナトリウム
【0031】
(C)成分
C-1:ポリアクリル酸ナトリウム(重量平均分子量4,000)
C-2:アクリル酸/スルホン酸共重合体ナトリウム(重量平均分子量5,000)
C-3:アクリル酸/マレイン酸共重合体ナトリウム(重量平均分子量3,000)
C-4:オレフィン/マレイン酸共重合体ナトリウム(重量平均分子量10,000)
C-5:ポリマレイン酸ナトリウム(重量平均分子量500)
【0032】
(D)成分
D-1:イオン交換水
【0033】
(E)成分
E-1:1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸ナトリウム
E-2:2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸ナトリウム
E-3:ビス(ポリ-2-カルボキシエチル)ホスフィン酸ナトリウム
【0034】
実施例1~27、比較例1~6
表1~4に示す液体洗浄剤組成物を調製し、各液体洗浄剤組成物の洗浄性、スケール洗浄性、スケール抑制性、貯蔵安定性を試験した。結果を表1~4に示す。
【0035】
※1:洗浄性試験
試験方法:
ステンレス片(6cm×7cmの長方形、厚さ1mmのSUS316片)の質量を測定し、これに汚れとして牛乳を0.5mL噴霧(汚れ付着量0.5g)し、130℃で30分間加熱して汚れを付着させたものを試験片として質量を測定した。この試験片を各液体洗浄剤組成物の3質量%水溶液300mLに浸漬し、80℃で20分間放置した後、イオン交換水ですすぎ、105℃で30分間乾燥した後、質量を測定した。
洗浄前の試験片と、汚れ付着前のステンレス片との質量差を汚れ付着量とし、洗浄前後の試験片の質量変化から洗浄率を下記式(1)より算出し、以下の基準で洗浄性を評価した。
【0036】
洗浄率(%)={(洗浄前試験片質量-洗浄後試験片質量)/(汚れ付着量)}×100
(1)
【0037】
評価基準:
◎:洗浄率80%以上(洗浄性に優れる)。
○:洗浄率70%以上、80%未満(洗浄性良好)。
△:洗浄率60%以上、70%未満(洗浄性あり)。
×:洗浄率60%未満(洗浄性が悪い)。
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0038】
※2:スケール洗浄性試験
ステンレス片(2cm×7cm、厚さ1mmのSUS316片)の質量を測定し、これに汚れとして25%リン酸カルシウム懸濁液を0.2g塗布して、100℃で60分間乾燥させたものを試験片として質量を測定した。この試験片を希釈水で2質量%に希釈した各液体洗浄剤組成物の水溶液100mLに浸漬し、80℃で20分間放置した後、イオン交換水ですすぎ、105℃で30分間乾燥し、外観を観察して以下の基準でスケール洗浄性を評価した。
【0039】
評価基準:
○:汚れなし。
△:わずかに汚れあり。
×:汚れあり。
とし、△、○を実用性のあるものとして判定した。
【0040】
※3:スケール抑制性試験
試験液濃度が、炭酸カルシウム換算で100mg/L(ドイツ硬度5.6°DH)となるように希釈水で各液体洗浄剤組成物を希釈し、アルカリ金属水酸化物濃度が0.01質量%の試験液を調製した。30mLガラスビンに入れた各試験液を80℃で15時間静置後、ガラスビン底の付着物及び析出物を目視で確認し、以下の基準でスケール付着防止性を評価した。
【0041】
評価基準:
○:ほとんど付着物、析出物は見られない。
△:少量の付着物、析出物が見られる。
×:多量の付着物や析出物が見られる。
とし、△、○を実用性のあるものとして判定した。
【0042】
※4:貯蔵安定性試験
試験方法:
各液体洗浄剤組成物100gをポリプロピレン製容器に入れ、-5℃、25℃、40℃に設定された各インキュベーター内で1ヶ月間静置した後、外観を目視により観察し、以下の基準で評価した。
【0043】
評価基準:
○:分離や濁りが認められず安定である。
△:全体的な分離は認められないが、若干の濁りが生じている。
×:全体的な分離もしくは濁りが認められる。
とし、△、○を実用性のあるものとして判定した。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】
【表4】