(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005146
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】補正情報生成装置、補正情報生成方法、補正情報生成プログラム、及び、液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20230111BHJP
【FI】
B41J2/01 205
B41J2/01 401
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021106884
(22)【出願日】2021-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】増井 成博
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EB27
2C056EB36
2C056EB40
2C056EB41
2C056EB59
2C056EC07
2C056EC37
2C056EC42
2C056EC77
2C056FA13
2C056HA58
(57)【要約】
【課題】液体吐出装置における記録ヘッドの各ノズルの吐出特性を短時間で調整可能とする。
【解決手段】着弾位置検出部が、少なくとも1列分のノズルが並設された記録ヘッドにより記録媒体に印刷された所定のパターン画像の画素値に基づいて、記録ヘッドのノズル毎に、吐出された液滴の記録媒体上の着弾位置を検出する。基準着弾位置検出部は、パターン画像の画素値に基づいて、各ノズルから吐出された液滴の基準となる基準着弾位置を検出する。そして、補正情報生成部が、基準着弾位置に対する各ノズルの着弾位置の偏差に基づいて、液滴の着弾位置をノズルの並設方向に沿った直線上に位置させるように、ノズル毎に吐出特性を補正するための補正情報を生成して記憶部に記憶する。これにより、液体吐出装置における記録ヘッドの各ノズルの吐出特性を短時間で調整可能とすることができる。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1列分のノズルが並設された記録ヘッドにより記録媒体に印刷された所定のパターン画像の画素値に基づいて、前記記録ヘッドのノズル毎に、吐出された液滴の前記記録媒体上の着弾位置を検出する着弾位置検出部と、
前記パターン画像の画素値に基づいて、各前記ノズルから吐出された液滴の基準となる基準着弾位置を検出する基準着弾位置検出部と、
前記基準着弾位置に対する各前記ノズルの着弾位置の偏差に基づいて、前記液滴の着弾位置を前記ノズルの並設方向に沿った直線上に位置させるように、前記ノズル毎に吐出特性を補正するための補正情報を生成して記憶部に記憶する補正情報生成部と、
を有する補正情報生成装置。
【請求項2】
前記着弾位置検出部は、着弾位置の検出対象となるノズルにより印刷された所定の前記パターン画像の画素値、及び、着弾位置の検出対象となる前記ノズルにより印刷された所定の前記パターン画像の画素値の近傍の画素値に対する補間曲線のピーク値に基づいて、検出対象となる前記ノズルから吐出された液滴の着弾位置を検出し、
前記基準着弾位置検出部は、前記記録ヘッドの1列分の各前記ノズルにより印刷された所定の前記パターン画像の画素値の加算値に対する補間曲線のピーク値に基づいて検出した着弾位置である、各前記ノズルから吐出された液滴の平均着弾位置を、前記基準着弾位置として検出し、
前記補正情報生成部は、前記平均着弾位置と、前記補間曲線に基づいて検出した各前記ノズルから吐出された液滴の着弾位置との偏差に基づいて前記補正情報を生成すること
を特徴とする請求項1に記載の補正情報生成装置。
【請求項3】
補正情報生成部は、前記偏差に対応する時間分、前記ノズルの駆動開始時刻を早め、又は、遅延させるための前記補正情報を生成して前記記憶部に記憶し、又は、前記偏差に対応する吐出速度で前記液滴を吐出させるための前記補正情報を生成して前記記憶部に記憶すること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の補正情報生成装置。
【請求項4】
前記着弾位置検出部は、複数の前記パターン画像に対して、それぞれ前記着弾位置を検出し、
前記基準着弾位置検出部は、各前記パターン画像に対する前記基準着弾位置をそれぞれ検出し、
前記補正情報生成部は、前記パターン画像毎に前記基準着弾位置に対する各前記ノズルの着弾位置の偏差を検出して平均化した偏差に基づいて、前記補正情報を生成して前記記憶部に記憶すること
を特徴とする請求項1から請求項3のうち、いずれか一項に記載の補正情報生成装置。
【請求項5】
前記記録ヘッドは、複数のノズル列を有し、
前記着弾位置検出部は、前記ノズル列毎に前記着弾位置を検出し、
前記基準着弾位置検出部は、前記ノズル列毎に前記基準着弾位置を検出し、
前記補正情報生成部は、前記ノズル列毎に前記補正情報を生成して前記記憶部に記憶すること
を特徴とする請求項1から請求項4のうち、いずれか一項に記載の補正情報生成装置。
【請求項6】
前記記憶部は、前記記録ヘッド内に設けられた記憶部、外部記憶装置、又は、所定のネットワーク上の記憶装置であること
を特徴とする請求項1から請求項5のうち、いずれか一項に記載の補正情報生成装置。
【請求項7】
着弾位置検出部が、少なくとも1列分のノズルが並設された記録ヘッドにより記録媒体に印刷された所定のパターン画像の画素値に基づいて、前記記録ヘッドのノズル毎に、吐出された液滴の前記記録媒体上の着弾位置を検出する着弾位置検出ステップと、
基準着弾位置検出部が、前記パターン画像の画素値に基づいて、各前記ノズルから吐出された液滴の基準となる基準着弾位置を検出する基準着弾位置検出ステップと、
補正情報生成部が、前記基準着弾位置に対する各前記ノズルの着弾位置の偏差に基づいて、前記液滴の着弾位置を前記ノズルの並設方向に沿った直線上に位置させるように、前記ノズル毎に吐出特性を補正するための補正情報を生成して記憶部に記憶する補正情報生成ステップと、
を有する補正情報生成方法。
【請求項8】
コンピュータを、
少なくとも1列分のノズルが並設された記録ヘッドにより記録媒体に印刷された所定のパターン画像の画素値に基づいて、前記記録ヘッドのノズル毎に、吐出された液滴の前記記録媒体上の着弾位置を検出する着弾位置検出部と、
前記パターン画像の画素値に基づいて、各前記ノズルから吐出された液滴の基準となる基準着弾位置を検出する基準着弾位置検出部と、
前記基準着弾位置に対する各前記ノズルの着弾位置の偏差に基づいて、前記液滴の着弾位置を前記ノズルの並設方向に沿った直線上に位置させるように、前記ノズル毎に吐出特性を補正するための補正情報を生成して記憶部に記憶する補正情報生成部として機能させること
を特徴とする補正情報生成プログラム。
【請求項9】
請求項1から請求項6のうち、いずれか一項に記載の補正情報生成装置により前記記憶部に記憶された前記補正情報を用いて、前記記録ヘッドの各ノズルの吐出特性を補正する液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補正情報生成装置、補正情報生成方法、補正情報生成プログラム、及び、液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今日において、いわゆるインクジェット方式等の画像形成装置が知られている。このような画像形成装置においては、記録ヘッドのノズル毎のインク滴量のばらつき及びインクの着弾位置のばらつきを抑制して、画像品質の劣化を抑制することが好ましい。
【0003】
このようなことから、特許文献1(特開2015-091667号公報)に開示されているインクジェット記録装置は、用紙の搬送方向のずれ量が閾値を超えるノズル列に対して、複数のノズル列のずれ量の合計が最小となる調整値を設定する。これにより、複数のノズル列全体として、用紙の搬送方向におけるずれを抑制して、画像品質の劣化を抑制している。
【0004】
また、ノズルの個別駆動が可能な記録ヘッドも知られている。このノズルの個別駆動が可能な記録ヘッドは、各ノズルの吐出特性が揃うように各ノズルを駆動するための駆動波形を設定する。これにより、ノズル毎にインク滴量及び着弾位置のばらつきを抑制でき、画像品質の劣化を抑制できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ノズルの個別駆動が可能な記録ヘッドは、各ノズルの吐出特性をそれぞれ測定し、一様に吐出特性を揃えるように各ノズルの駆動波形を調整する必要がある。このため、吐出特性の調整に長時間を要する問題があった。
【0006】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、記録ヘッドの各ノズルの吐出特性を短時間で調整可能とした補正情報生成装置、補正情報生成方法、補正情報生成プログラム、及び、液体吐出装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、少なくとも1列分のノズルが並設された記録ヘッドにより記録媒体に印刷された所定のパターン画像の画素値に基づいて、記録ヘッドのノズル毎に、吐出された液滴の記録媒体上の着弾位置を検出する着弾位置検出部と、パターン画像の画素値に基づいて、各ノズルから吐出された液滴の基準となる基準着弾位置を検出する基準着弾位置検出部と、基準着弾位置に対する各ノズルの着弾位置の偏差に基づいて、液滴の着弾位置をノズルの並設方向に沿った直線上に位置させるように、ノズル毎に吐出特性を補正するための補正情報を生成して記憶部に記憶する補正情報生成部と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、記録ヘッドの各ノズルの吐出特性を短時間で調整できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施の形態のインクジェット記録装置の記録部の平面図である。
【
図2】
図2は、記録ヘッドをインク吐出面側から見た状態の平面図である。
【
図3】
図3は、記録ヘッドの内部構造を説明するための断面図である。
【
図4】
図4は、記録ヘッドの要部のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、ヘッド駆動部を駆動する主要な信号のタイミングチャートである。
【
図6】
図6は、補正情報測定装置の要部のブロック図である。
【
図7】
図7は、補正情報測定装置の制御部が、メモリに記憶されている補正情報測定プログラムを実行することで実現される各機能の機能ブロック図である。
【
図8】
図8は、補正情報測定装置の制御部が、メモリに記憶されている補正情報測定プログラムを実行することで行われる補正情報の生成動作の流れを示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、印刷されたテストパターンの一例を示す図である。
【
図10】
図10は、印刷されたテストパターンのドットの部分を拡大した図である。
【
図11】
図11は、読取部により読み取られたテストパターンの画素値を示す図である。
【
図12】
図12は、実施の形態のインクジェット記録装置の適用例となるラインエンジンプリンタシステムのシステム構成図である。
【
図13】
図13は、記録ヘッドの製造誤差又は組付け誤差により、ノズル列の配列にずれが生じた例を示す図である。
【
図14】
図14は、ノズル列の傾きが生じた状態で印刷されたテストパターンの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、実施の形態となるインクジェット記録装置の説明をする。
【0011】
(記録部の構成)
実施の形態のインクジェット記録装置は、ライン走査型のインクジェット記録装置となっており、
図1に示すように、記録媒体1上に画像を形成する記録部2を備える。なお、この
図1は、記録媒体1の記録面に対して垂直方向に記録部2を見下ろした状態の平面図である。
【0012】
記録媒体1としては、例えば普通紙等の用紙を用いることができる。この他、例えばロール紙(連続用紙)、又は、カット紙等を用いてもよい。また、これら以外の様々な記録媒体を用いてもよい。記録媒体1は、媒体搬送部により、
図1中矢印で示す所定の搬送方向に搬送される。また、インクジェット記録装置には、記録部2に対して所定の位置を所定の速度で記録媒体1が通過するように、記録媒体1の搬送を制御する機構等が設けられている。
【0013】
記録部2は、支持部により、記録媒体1の記録面に対して所定の距離を保って対向するように支持されている。記録部2は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各インクに対応して設けられた複数の記録部2K,2C,2M,2Yを備える。記録部2は、記録媒体1の搬送速度に応じた印字周期毎にインク滴を吐出することで、記録媒体1上にカラー画像を形成する。
【0014】
記録部2K,2C,2M,2Yは、それぞれ記録媒体1の搬送方向と直交する方向に配列された複数の記録ヘッド3を備える。各記録ヘッド3は、記録媒体1の搬送方向と直交する方向に一列に配列されていてもよいし、
図1に示すように千鳥状に配列されていてもよい。実施の形態のインクジェット記録装置は、このように複数の記録ヘッド3をアレー化して記録部2K,2C,2M,2Yを構成することにより、広域な印刷領域幅を確保している。
【0015】
(記録ヘッドの構成)
図2は、記録ヘッド3をインク吐出面側から見た状態の平面図である。記録ヘッド3は、記録媒体1の搬送方向と直交する方向(ノズル列方向)に所定のピッチpで配列された複数のノズル4を有する。
図2に示す例は、記録ヘッド3に対してノズル列が2列分並設されている例である。一方のノズル列は、他方のノズル列に対して、各ノズル4がノズル列方向にそれぞれ約1/2ピッチp分ずれた位置に配列されている。これにより、ノズル列方向の画像の解像度を、高解像度化できるようになっている。
【0016】
(記録ヘッドの内部構造)
図3は、記録ヘッド3の内部構造を説明するための断面図である。具体的には、この
図3は、記録ヘッド3を液室長手方向(ノズル列方向と直交する方向)に沿って切断した状態の断面を示す断面図である。このうち、
図3(a)は、圧電素子5の収縮時における液室15の容積の変化を示す図である。また、
図3(b)は、圧電素子5の伸長時における液室15の容積の変化を示す図である。
【0017】
このような
図3において、記録ヘッド3は、流路板11、振動板部材12及びノズル板13を接合することで形成された液滴吐出領域を有している。この液滴吐出領域には、液滴を吐出するノズル4、このノズル4と貫通孔14を介して通じる個別液室15、液室15に液体を供給する流体抵抗部16及び液体導入部17がそれぞれ設けられている。なお、個別液室15は、加圧室、加圧液室、圧力室、個別流路又は圧力発生室等とも称される(以下、単に「液室」という)。
【0018】
また、フレーム部材18には、共通液室19が形成され、振動板部材12の共通液室19と接する部分にはフィルタ20が設けられている。共通液室19には、液体(インク)が充填される。この共通液室19に充填されたインクは、フィルタ部20を介して液体導入部17に導入され、液体導入部17から流体抵抗部16を介して液室15に供給される。
【0019】
流路板11は、例えばSUS(ステンレス鋼)等の金属板を積層して形成されている。流路板11には、貫通孔14、液室15、流体抵抗部16、液体導入部17等を構成する開口部及び溝部が設けられている。なお、流路板11は、SUSなどの金属板の他、例えばシリコン基板を異方性エッチングして形成してもよい。
【0020】
振動板部材12は、液室15、流体抵抗部16及び液体導入部17等の壁面を構成する壁面部材であると共に、フィルタ部20を形成する部材である。振動板部材12の各液室15側の面に対して反対側となる面には、液室15のインクを加圧してノズル4からインク滴を吐出させるエネルギーを発生する積層型の圧電素子5の一方の端部が接合されている。圧電素子5の他方の端部は、ベース部材21に接合されている。
【0021】
また、圧電素子5には、圧電素子5に駆動波形を伝達するFPC(Flexible Printed Circuits)基板22が接続されている。圧電素子5は、液室15毎、つまり、ノズル4毎に、個別に駆動可能なように設けられている。
【0022】
このような記録ヘッド3は、
図3(a)に示すように、圧電素子5に印加する電圧を基準電位Veから下げると、圧電素子5が収縮して振動板部材12が変形し、液室15の容積が膨張する。これにより、液室15内にインクが流入する。その後、
図3(b)に示すように、圧電素子5に印加する電圧を上げると、圧電素子5が積層方向に伸長する。これにより、振動板部材12がノズル4側に変形して液室15の容積が収縮して液室15内のインクが加圧され、ノズル4からインク滴が吐出される。
【0023】
この後、圧電素子5に印加する電圧を基準電位Veに戻すことで、振動板部材12が初期位置に復元し、液室15が膨張して負圧が発生する。このとき、共通液室19から液室15内にインクが充填される。そして、ノズル4のメニスカス面の振動が減衰して安定した後、次のインク滴吐出のための動作に移行する。
【0024】
なお、この例は、圧電素子5を積層方向に伸縮させるモードで使用する例であるが、圧電素子5を積層方向と直交する方向に伸縮させるモードで使用してもよい。
【0025】
ここで、ノズル4から吐出されたインク滴は、一定距離「L」で保たれた記録媒体1に飛翔時間「Tj」後に着弾する。このとき、インク滴の吐出速度を「Vj」とすると、「Tj=L/Vj」である。この吐出速度「Vj」は、各ノズル4の部材の形状ばらつき又は素子特性のばらつき等により異なる。このような吐出速度「Vj」の違いにより、ノズル4から吐出されたインク滴の飛翔時間「Tj」がノズル4毎に異なる。これに対して、記録媒体1は、一定速度で搬送されているため、搬送方向の着弾位置にばらつきが生じる。また、吐出されるインクの滴量にも、ばらつきが生じる。
【0026】
(記録ヘッドの要部のハードウェア構成)
次に、
図4は、記録ヘッド3の要部のハードウェア構成を示すブロック図である。この
図4に示すように、記録ヘッド3は、ヘッド駆動部30及びコントローラ40を有している。
【0027】
ヘッド駆動部30は、記録ヘッド3に設けられたN個のノズル4に対応するN個の圧電素子5(5-1~5-N)を駆動する。この
図4に示すヘッド駆動部30により、記録ヘッド3の一列分のノズルの圧電素子5が駆動される。すなわち、
図1に示した各記録部2K,2C,2M,2Yの各記録ヘッド3のノズル列毎に、ヘッド駆動部30が設けられている。
【0028】
記録ヘッド3のノズル4毎に設けられた各圧電素子5は、それぞれ駆動波形を伝達するFPC基板22を介して、一方の電極が他の圧電素子5と共に共通電位(例えばグランド)に接続され、他方の電極がヘッド駆動部30に接続される。
【0029】
ヘッド駆動部30は、一つ又は複数の集積回路で構成され、そのうち少なくとも圧電素子5に接続する部分はFPC基板22に設置されている。ヘッド駆動部30は、コントローラ40から取得したデータに基づき、各ノズル4から適切な状態でインク滴が吐出されるように、各ノズル4に対応する圧電素子5に対して最適な駆動波形を個別に生成して、各圧電素子5を駆動する。
【0030】
なお、ヘッド駆動部30を記録ヘッド3と一体に設けて記録ヘッドユニットを形成してもよい。
【0031】
コントローラ40は、印刷する画像データを各記録ヘッド3及びノズル列に対応する画像データに分割してヘッド駆動部30に転送する。また、コントローラ40は、ヘッド駆動部30で駆動波形を生成する際に使用する基本駆動波形情報及び駆動波形補正情報をヘッド駆動部30に転送して設定する機能、及び、ヘッド駆動部30に各種制御信号を供給する機能を有する。
【0032】
ヘッド駆動部30は、シフトレジスタ31、ラッチ回路32、駆動波形生成部33(33-1~33-N)、駆動波形情報保持部34、駆動波形補正情報保持部35、及び、制御部36を備える。
【0033】
コントローラ40からヘッド駆動部30に対しては、記録ヘッド3の1行分のデータに相当するN個の画像データSDIが、転送クロックSCKに同期してシリアル入力される。シリアル入力されたN個の画像データは、シフトレジスタ31に順次保持される。
【0034】
ここで、記録ヘッド3のノズル4から例えば大滴、中滴、小滴、吐出なしの4値の大きさの異なるドットに対応するインク滴を吐出させるものとすると、1個の画像データは、例えば2ビットのデータとなる。
【0035】
ラッチ回路32は、シフトレジスタ31で一旦保持したN個の画像データを、ラッチイネーブル信号LENのタイミングで保持するN個のラッチ回路となっている。各ラッチ回路は、それぞれ2ビットのデータ(D1~DN)を保持し、それぞれ対応する駆動波形生成部30に供給する。
【0036】
駆動波形生成部33は、N個の圧電素子5-1~5-Nをそれぞれ個別に駆動するための駆動波形を生成するものであり、各圧電素子5-1~5-Nに対応してN個の駆動波形生成部33-1~33-Nを備える。駆動波形生成部33は、N個の圧電素子5-1~5-Nをそれぞれ個別に駆動するための駆動波形を生成する。
【0037】
具体的には、i番目(
図4の例では、iは1~N)のチャンネルである駆動波形生成部33-iに、ラッチイネーブル信号LENに同期してラッチ回路32から2ビットの画像データDiが供給されたとする。駆動波形生成部33-iのリファレンス波形生成部71は、駆動波形情報保持部34に保持されている基本駆動波形情報と、駆動波形補正情報保持部35に保持されている補正情報とを参照し、ラッチイネーブル信号LENを開始基準として駆動波形信号を生成する。この駆動波形信号は、制御アンプ73及びドライバ部72を介して圧電素子5-iに供給される。
【0038】
駆動波形情報保持部34には、ノズル4毎(チャンネル毎)の補正情報を含まない基本駆動波形の情報である基本駆動波形情報が、例えば大滴、中滴、小滴、吐出なしといった大きさの異なるドットごとの駆動波形として保持されている。駆動波形生成部33-iは、駆動波形情報保持部34により保持される大滴、中滴等の基本駆動波形情報のうち、ラッチ回路32から供給される画像データDiに応じた基本駆動波形情報を取得する。例えば画像データDiが大滴を表すデータであれば、駆動波形生成部33-iは、大滴用の基本駆動波形情報を取得する。
【0039】
また、駆動波形補正情報保持部35には、基本駆動波形情報を補正するための補正情報が、ノズル4毎(チャンネル毎)に保持されている。駆動波形生成部33-iは、駆動波形補正情報保持部35が保持するこれらの補正情報のうち、i番目のチャンネルに対応する補正情報を取得する。そして、駆動波形生成部33-iは、駆動波形情報保持部34から取得した基本駆動波形情報を、駆動波形補正情報保持部35から取得した補正情報を用いて補正することにより、i番目のチャンネルの駆動に最適な駆動波形を生成して圧電素子5-iに供給する。
【0040】
制御部36は、ヘッド駆動部30全体の制御を行う。また、制御部36は、コントローラ40との間で通信を行い、例えば上述した基本駆動波形情報及び補正情報をコントローラ40から受信して、駆動波形情報保持部34又は駆動波形補正情報保持部35に設定し、又は、情報を更新する処理を行う。
【0041】
次に、駆動波形生成部33の詳細構成について説明する。上述したように、例えば基本駆動波形情報と各チャンネルに対応した補正情報との加算値が、チャンネルに対応した駆動波形情報となる。
【0042】
なお、この実施の形態の例は、基本駆動波形情報と各チャンネルに対応した補正情報との加算値であるチャンネル毎の駆動波形情報を、ヘッド駆動部30の内部で計算する例である。しかし、チャンネル毎の駆動波形情報をヘッド駆動部30の外部(例えばコントローラ40)で計算する構成としてもよい。この場合、例えば、駆動波形情報保持部34又は駆動波形補正情報保持部35の代わりに、各チャネルの駆動波形情報をそれぞれ保持する複数の保持部をヘッド駆動部30に設け、各保持部が保持するチャンネル毎の駆動波形情報を、制御部36を介して更新してもよい。
【0043】
この場合、駆動波形生成部33-iは、ラッチイネーブル信号LENに同期してラッチ回路32から2ビットの画像データDiが供給されると、各保持部のうち、i番目のチャンネルに対応する保持部に保持されている駆動波形情報を参照する。そして、駆動波形生成部33-iは、ラッチイネーブル信号LENを開始基準として駆動波形を生成して圧電素子5-iへ供給する。
【0044】
次に、駆動波形生成部33(33-1~33-N)は、
図4に示すように、リファレンス波形生成部71、制御アンプ73、及び、ドライバ部72を備える。リファレンス波形生成部71は、画像データDiに応じて参照される基本駆動波形情報及び補正情報に基づいて、所望の吐出特性でのインクの吐出を可能とする駆動波形信号をリファレンス波形信号として生成する。このリファレンス波形生成部71は、例えばDA(デジタル-アナログ)コンバータ等を備え、基本駆動波形情報及び補正情報から計算される駆動波形情報を入力データとして、リファレンス波形信号を出力する。
【0045】
制御アンプ73は、リファレンス波形生成部71が出力するリファレンス波形信号と、実際に圧電素子5の一端に印加されている駆動電圧とを比較し、これらが一致するように、圧電素子5に対する充放電を制御するための充放電信号(up又はdown(dn))を生成して出力する。
【0046】
ドライバ部72は、制御アンプ73が出力する充放電信号に従って圧電素子5に対し充放電を行うことで、所望の波形の駆動波形信号で圧電素子5を駆動する。このようにして、圧電素子5に印加されている駆動波形が所望のリファレンス波形と常に一致するように充放電制御を行う。これにより、圧電素子5に対して所望の駆動波形を精度よく印加することができ、ノズル4毎(チャンネル毎)に所望の吐出特性を得ることができる。
【0047】
(ヘッド駆動部を駆動するための主要信号)
図5は、ヘッド駆動部30を駆動する主要な信号のタイミングチャートである。実施の形態のインクジェット記録装置は、
図5に示すように所定の印字周期Tでインクを吐出するように記録ヘッド4を制御する。印字周期Tは、記録媒体1の搬送速度及び記録媒体1の搬送方向における各ノズル列の印字解像度によって決定される。
【0048】
図5(a)は、転送クロックSCKを示し、
図5(b)は画像データSDIを示している。コントローラ40からヘッド駆動部30に対し、
図5(a)の転送クロックSCKに同期して、
図5(b)の画像データSDIがシリアル入力される。転送クロックSCKの周期は、ヘッド駆動部30で駆動するN個のノズル4に対応するN個の画像データが印字周期T内に転送されるように決められている。
【0049】
なお、
図5に示す例は、画像データSDIがD1から順次、シリアル転送される例であるが、逆の順序で画像データSDIをシリアル転送してもよい。
【0050】
次に、
図5(c)はラッチイネーブル信号LENを示し、
図5(d)はラッチされた画像データSDIのうちの1つを示している。ヘッド駆動部30は、
図5(c)のラッチイネーブル信号LENの立ち上がりのタイミングで、前サイクルでシリアル転送された画像データSDIをラッチする。
【0051】
図5(d)では、ラッチされた画像データSDIのうちの1つのみを示しているが、同じタイミングでD2~DNもラッチされる。時刻t0では、前サイクルで転送されたデータ(ここでは大滴の吐出を示す「11」)がラッチされ、時刻t1では時刻t0~時刻t1のサイクルで転送されたデータ(ここでは小滴の吐出を示す「01」)がラッチされる。
【0052】
また、この実施の形態の例の場合、ラッチイネーブル信号LENが、後述する駆動波形生成の開始基準にもなっている。このため、ラッチイネーブル信号LENの周期は、印字周期Tである。なお、ラッチイネーブル信号LEN及び駆動波形生成の開始基準を示す信号は、個別の信号として入力してもよいし、ラッチイネーブル信号LENを所定量遅延させた信号を、駆動波形生成の開始基準を示す信号として用いてもよい。
【0053】
図5(e)及び
図5(f)は、駆動波形生成部33の動作の具体例を示している。以下、1番目のチャンネルの圧電素子5-1を駆動するための駆動波形生成部33-1を例として説明するが、他のチャンネル2~Nも同様である。
【0054】
図5(e)は、駆動波形生成部33-1で生成する駆動波形の情報を表す駆動波形情報の一部を示している。
図5(f)は、
図5(e)に例示する駆動波形情報に基づいてリファレンス波形生成部71-1により生成されるリファレンス波形信号を示している。また、実際に圧電素子5-1の一端に印加される駆動波形と一致するように、制御アンプ73は、ドライバ部72に充放電信号を供給する。このため、ドライバ部72は、
図5(f)に示すリファレンス波形と同じ波形を圧電素子5-1に印加する。すなわち
図5(f)は、駆動波形も示している。
【0055】
次に、駆動波形の生成例について説明する。
図5に示す時刻t0~時刻t1のサイクルでは、駆動波形生成部33-1は、
図5(d)に示すように大滴吐出用の駆動波形を生成する。大滴吐出時には、
図5(f)に示すように連続する3発のパルス状の駆動波形信号で圧電素子5を駆動する。3発の駆動波形信号でそれぞれ吐出されるインク滴は、それぞれ飛翔中に合体して記録媒体1に着弾する。所望の滴量かつ所望の着弾位置にインク滴が着弾するように、パルスの間隔ti*、パルス幅pw*、パルス波高値V*、立ち下がり時間tf*、立ち上がり時間tr*(*は順序を表す自然数)等のパラメータの値を制御する。これらのパラメータを、各ノズル4のばらつきを補正したうえで、正確に制御するためには、圧電素子5に対する駆動波形を正確に制御すればよい。
【0056】
この実施の形態の場合、駆動波形とリファレンス波形は一致するよう制御されるため、以下、リファレンス波形と駆動波形の生成は同義とする。リファレンス波形は、駆動波形情報に基づいて生成する。この駆動波形情報は、上述した駆動波形情報保持部34に保持されている基本駆動波形情報、及び、駆動波形補正情報保持部35に保持されている補正情報に基づいて決定される。基本駆動波形情報は、ノズル4から吐出されるインク滴の吐出特性の代表値を定めるものであり、ノズル4の代表値(ノミナル値=実測データの平均値)で規定されている。
【0057】
一方、補正情報は、各ノズル4のばらつきを補正して吐出特性が代表値と略同一となるように、ノズル4毎に予め定められた情報である。基本駆動波形情報は、滴サイズ(例えば大滴、中滴、小滴、吐出なし)に応じて、それぞれ駆動波形情報保持部34に保持されている。
【0058】
駆動波形生成部33は、駆動波形情報保持部34に保持されている基本駆動波形情報のうち、対応するノズル4から吐出する滴サイズに応じた基本駆動波形情報を参照(取得)する。
図5に示す時刻t0~時刻t1のサイクルでは、駆動波形生成部33-1により、ラッチされた画像データD1の値(=11)に基づき、大滴用の基本駆動波形情報が参照(取得)される。
【0059】
なお、インク温度によって吐出特性は変化するため、基本駆動波形情報はインク温度別に準備されており、インク温度に応じて駆動波形情報保持部34に保持される情報が更新される。
【0060】
または、予め各温度範囲に対応する基本駆動波形情報を駆動波形情報保持部34に保持しておいてもよい。この場合、コントローラ40から制御部36を介して現在のインク温度を示す情報を各駆動波形生成部33に通知する。駆動波形生成部33は、現在のインク温度に応じて参照する基本駆動波形情報を切り替える。
【0061】
補正情報は、各ノズル4からインクを吐出する際の駆動波形の補正値であり、ノズル4毎(チャンネル毎)に対応する補正情報が駆動波形補正情報保持部35に保持されている。駆動波形生成部33は、駆動波形補正情報保持部35に保持されている補正情報のうち、自身のチャンネルに対応する補正情報を参照(取得)する。この補正情報を上述の基本駆動波形情報に加算処理することで、サイクル毎の駆動波形情報を得る。
【0062】
なお、ノズル4毎の各補正情報又は一部のノズル4の補正情報を、基本駆動波形情報と同様に滴サイズ(例えば大滴、中滴、小滴、吐出なし)に応じて保持してもよい。この場合、駆動波形生成部33は、自身のチャンネルに対応する補正情報のうち、ノズル4から吐出する滴サイズに応じた補正情報を、滴サイズに応じた基本駆動波形情報に加算処理して、駆動波形情報を得る。
【0063】
また、駆動波形情報は、所望の駆動波形(リファレンス波形)を一意に表す形式であればどのような形式であっても良い。例えば、
図5(f)の例は、駆動開始時刻Ts(前述の駆動波形生成の開始基準であり、ここではTs=0とする)とその電位Veを(Ts,Ve)として開始点として表し、以降の駆動波形の変位点を(ti,vi)の組み合わせで示している。「ti」は、前の変位点からの相対時間、「vi」は前の変位点からの相対電位である。駆動波形の開始点は、
図5(f)に黒い四角の記号で示す点であり、変位点は、
図5(f)に黒丸の記号で示す点である。
【0064】
リファレンス波形生成部71は、例えばDAコンバータ等を備える。DAコンバータのサンプリングクロックCLK_DAは、外部から供給され、又は、図示しないPLL回路等により内部で生成されている。上述の形式で表された駆動波形情報は、サンプリングクロックCLK_DAに同期した電圧データに変換されて、DAコンバータに供給され、リファレンス波形が生成される。
【0065】
後続のパルスも同様であり、パルスの間隔ti*、パルス幅pw*、パルス波高値V*、立ち下がり時間tf*、立ち上がり時間tr*を制御することで、ノズル4毎にばらつきがあっても、所望の着弾位置に所望の適量でインクを吐出させることが可能な駆動波形を生成できる。
【0066】
図5に示す時刻1~時刻t2のサイクルでは、駆動波形生成部33-1が、小滴吐出用の駆動波形を生成する。小滴用の駆動波形は、例えば1発のパルスで構成される。この時刻1~時刻t2のサイクルでは、駆動波形生成部33-1は、ラッチされた画像データD1の値(=01)に基づいて小滴用の基本駆動波形情報を参照(取得)する。そして、この基本駆動波形情報に、チャンネルに対応する補正情報を加算処理することで、このサイクルにおける駆動波形情報を得る。その後は、上述と同様に駆動波形が生成される。
【0067】
図5に示す時刻t2~時刻t3のサイクルは、吐出なし(=00)の画像データD1がラッチされたサイクルである。この場合、インクの乾燥及び液詰まり等を防止するために、ノズル4からインク滴が吐出されない程度の振動を与える(これを微駆動と呼ぶ)。このため、駆動波形生成部33-1は、微駆動(吐出なし)用の基本駆動波形情報を参照して駆動波形を生成する。
【0068】
なお、基本駆動波形情報は、例えば記録ヘッド3又はインクジェット記録装置の設計時等に、使用するインクの特性に適合するように設計された駆動波形を示す情報として、インクジェット記録装置内のメモリ(例えば、コントローラ40のプログラム格納ROM(Read Only Memory)又は不揮発性メモリ等)に格納される。この基本駆動波形情報は、インクジェット記録装置の起動時に、例えばコントローラ40によって読み出され、駆動波形情報保持部34に設定される。
【0069】
また、補正情報は、例えば記録ヘッド3の製造時等において、テストパターンの印刷画像に基づいてノズル4毎に測定される着弾位置のばらつき、滴量のばらつき、及びノズル4からの吐出状態に基づいて生成される。この補正情報は、
図6を用いて後述する記録ヘッド3内に設けられた不揮発性メモリ56に格納される。インクジェット記録装置のコントローラ40は、例えば起動時に不揮発性メモリ56から補正情報を読み出し、駆動波形補正情報保持部35に設定する。
【0070】
この他、記録ヘッド3をインクジェット記録装置に組み付けた際に、コントローラ40内の不揮発性メモリに記録ヘッド3の補正情報を書き込んで保持してもよい。この場合、コントローラ40は、インクジェット記録装置の起動時等に、コントローラ40内の不揮発性メモリから補正情報を読み出し、動波形補正情報保持部35へ設定する。
【0071】
また、記録ヘッド3の補正情報は、記録ヘッド3内の不揮発性メモリ56に記憶させる他、USBメモリ等の外部記憶装置、又は、所定のネットワーク上に設けられた別の記憶装置に、記録ヘッド3を識別する情報に関連付けて記憶してもよい。この場合、インクジェット記録装置に記録ヘッド3を組み付けた際に、コントローラ40が、ネットワーク上の別の記憶装置から補正情報をダウンロードして、コントローラ40内の不揮発性メモリに書き込んで用いる。これにより、記録ヘッド3の組み付け時又は交換時等に、対応した補正情報を取得でき、記録ヘッド3の組付け又は交換に要する作業時間を短縮化できる。
【0072】
また、記録ヘッド3の組み付け後、他の記録ヘッド3との相対的なずれにより生じる着弾位置ずれを補正するように補正情報を変更し、変更後の補正情報により記録ヘッド3内の不揮発性メモリ56に格納された補正情報を更新してもよい。これにより、
図1に示したように、複数個の記録ヘッド3を備えるライン走査型のインクジェット記録装置において、記録ヘッド3間の相対的な位置ずれも補正可能となり、画像品質のさらなる向上を容易に実現できる。
【0073】
このように、実施の形態のインクジェット記録装置は、記録ヘッド3に設けられたノズル4にそれぞれ対応する複数の駆動波形生成部33を備える。そして、ノズル4のばらつきによって生じるインク滴量のばらつき及び着弾位置のばらつきを補正する駆動波形を、駆動波形生成部33で生成する。このため、簡単な構成で、各ノズル4から吐出されるインク滴量を所望の滴量とすることができ、また、各ノズル4から吐出されるインクの着弾位置を所望の着弾位置とすることができ、ノズル4の吐出特性のばらつきに起因する画像品質の劣化を抑制することができる。
【0074】
(補正情報測定装置)
次に、記録ヘッド3のノズル毎の吐出特性を測定して、上述の補正情報を生成する補正情報測定装置(補正情報生成装置の一例)の説明をする。
図6は、この補正情報測定装置の要部のブロック図である。この補正情報測定装置は、上述のインクジェット記録装置に対して物理的に異なる装置となっている。なお、インクジェット記録装置内に、この補正情報測定装置を設けてもよい。
【0075】
補正情報測定装置50は、
図6に示すようにノズル4毎に吐出特性を調整可能な記録ヘッドユニット51の着脱が可能となっている。補正情報測定装置50は、例えば記録ヘッドユニット51の製造時等に、各記録ヘッドユニット51の駆動波形の補正情報をそれぞれ生成し、記録ヘッドユニット51内の不揮発性メモリ56に格納する。または、補正情報測定装置50は、生成した各記録ヘッドユニット51の駆動波形の補正情報を、例えばネットワーク上の別の記憶装置又はUSB(Universal Serial Bus)メモリ等に、記録ヘッド3の固有の識別情報に関連付けて記憶する。
【0076】
図6は、記録媒体53の記録面を垂直方向に見下ろす状態で補正情報測定装置50を見た状態の平面図である。この
図6に示すように、補正情報測定装置50は、記録媒体53上にテストパターンを印字する記録ヘッドユニット51、記録ヘッドユニット51が着脱可能で、記録媒体53の上部に配置されたヘッド取付部52を有している。また、補正情報測定装置50は、記録ヘッド3のノズル列方向と水平になるよう記録媒体53の上部に配置される読取部54と、この補正情報測定装置50全体の制御を行う制御部55とを有している。
【0077】
また、補正情報測定装置50は、メモリ45を有している。このメモリ45には、補正情報測定プログラム(補正情報生成プログラムの一例)が記憶されている。制御部55は、この補正情報測定プログラムに基づいて、各ノズルの吐出特性を測定して補正情報を生成する。詳しくは、後述する。
【0078】
記録媒体53は、例えば普通紙等の用紙であり、図示しない媒体搬送部により、
図6中矢印で示す搬送方向に搬送される。この搬送方向は、ノズル列方向と直交する方向となっている。記録媒体53の搬送速度は、記録ヘッドユニット51が設けられる実施の形態のインクジェット記録装置の記録媒体1の搬送速度と同じとすることが望ましい。
【0079】
ヘッド取付部52は、記録ヘッドユニット51の着脱が可能となっている。ヘッド取付部52は、取り付けられた記録ヘッドユニット51を、記録媒体53の記録面に対して所定の距離を保って対向するように支持する。
【0080】
記録ヘッドユニット51は、補正情報の生成対象となる記録ヘッド3及びヘッド駆動部30が一体となったユニットである。記録ヘッドユニット51は、実施の形態のインクジェット記録装置に設けられ、
図1に示した記録部2として動作する。また、記録ヘッドユニット51は、ヘッド取付部52に取り付けられた際は、記録媒体53に対して後述するテストパターンを形成する。
【0081】
読取部54は、ラインセンサ等を備え、記録媒体53の搬送方向に対して直交する方向の1次元画像を読み取る。すなわち、読取部54は、記録媒体53上に形成されたテストパターンをノズル列方向に沿って読み取る。
【0082】
制御部55は、
図4に示したヘッド駆動部30を制御するためのコントローラ40と同等の機能を有し、記録ヘッドユニット51に対してテストパターンデータの転送、駆動波形情報等の各種情報の転送、及び、各種制御信号の供給等を行う。また、制御部55は、読取部54からテストパターンの読取データを受信し、受信した読取データに基づいて、各ノズル4の補正情報を算出し、不揮発性メモリ56等に記憶制御する。また、制御部55は、補正情報測定装置50全般の制御、及び、図示しないホストコンピュータ又は操作部との間の通信制御を行う。
【0083】
(補正情報測定装置の機能)
図7は、補正情報測定装置50の制御部55が、メモリ45に記憶されている補正情報測定プログラムを実行することで実現される各機能の機能ブロック図である。この
図7に示すように、制御部55は、補正情報測定プログラムを実行することで、印刷制御部91、中心位置検出部92、平均値算出部93、着弾位置ずれ検出部94、及び、補正情報設定部95の各機能を実現する。
【0084】
印刷制御部91は、記録媒体53に対して所定のテストパターンを印刷する。中心位置検出部92は、記録ヘッドユニット51の各ノズル4から吐出されたインクのドットの中心位置を検出する。平均値算出部93は、各ノズル4から吐出されたインクの着弾位置の平均を算出する。着弾位置ずれ検出部94は、各ノズル4の着弾位置の平均値からのずれ量を検出する。補正情報設定部95は、各ノズル4の着弾位置の平均値からのずれ量を波形開始タイミングに換算した補正情報を生成し、その記録ヘッドユニット51の不揮発性メモリ56等に記憶させる。
【0085】
(補正情報の生成動作)
実施の形態のインクジェット記録装置で形成する画像のように、液滴を吐出して形成した画像の画像品質は、例えば滴速度、滴量、曲がり、サテライト等に影響される。なかでも、主に滴速度のノズル間偏差が要因で発生する着弾位置のばらつきは、画像品質に大きく影響する。
【0086】
これに対して、滴量のばらつきは、濃度差が生ずることで画像品質に影響を及ぼすこともあるが、各ノズル4から吐出される滴量の平均値が変わらなければ、平均値からそれぞれのノズルからの適量の偏差(ばらつき)が多少あったとしても、視認できるほど画像品質が劣化することは少ない。他の特性も同様であり、各ノズル4の吐出特性の平均値が所望の値となるように、基準の駆動波形が決められていれば(これを基準駆動波形と称し、駆動波形情報保持部34に保持された波形情報から生成される)、各特性値の偏差が画像品質に与える影響は少ない。このため、着弾位置のばらつき(滴速度の各ノズル4間のばらつき)さえ調整すれば、画像品質の劣化を十分に抑制できる。このようなことから、補正情報測定装置50は、各ノズル4間の着弾位置の偏差に基づいて、各ノズル4の補正情報を生成する。
【0087】
図8は、補正情報測定装置50の制御部55が、メモリ45に記憶されている補正情報測定プログラムを実行することで行われる補正情報の生成動作の流れを示すフローチャートである。この
図8のフローチャートに示すように、印刷制御部91は、まず、ステップS1において、補正情報取得対象である記録ヘッドユニット51を駆動して各ノズル4の着弾位置偏差を検出するためのテストパターンを記録媒体53に印刷する。
【0088】
図9は、印刷されたテストパターンの一例を示す図である。一例ではあるが、記録ヘッドユニット51は、1つのノズル列がそれぞれノズル間隔p(1/150インチ。150dpi)で配列されている。また、記録ヘッドユニット51は、8列のノズル列が互いに重ならないよう配置され、ノズル列方向に1200dpiの画像を形成する。記録媒体53は、ヘッドのノズル列方向(以下、X方向)に対して垂直方向(以下、Y方向)となる搬送方向に、相対的に移動される。このため、記録媒体53の搬送速度と記録ヘッドユニット51の吐出周波数により搬送方向の解像度が決まる。一例ではあるが、この搬送方向の画像の解像度は、ノズル列方向と同様に1200dpiとする。
【0089】
図9に示すテストパターンは、例えば8つのノズル列の全てのノズル4を、同一の基準駆動波形で駆動して記録媒体53に印刷される。
図9に示す黒丸は、各ノズル4から吐出したインク滴が、記録媒体53に着弾して形成されるドットである。また、
図9に示す「Nx」は、1ノズル列内のノズル番号(
図4の5-1~5-Nに対応する)を示している。また、
図9に示す「Ny」は、ノズル列の番号を示している。また、
図9に示す「dx」は、1つのノズル列から吐出して形成されるドットの間隔であり、ノズル間隔pと一致する。
【0090】
印刷制御部91は、このテストパターンの印刷時において、各ノズル列のノズル4からインクが吐出されて形成されるドットは、一定の間隔「dy」となるように、記録ヘッドユニット51の吐出タイミングを制御する。これは、テストパターンの読み取り時に、他のノズル列のドットからの干渉がないように間隔を空けるためである。一例ではあるが、間隔「dy」は、間隔「dx」と同程度の間隔となっている。なお、
図9では、3列分のノズル列に対応するドットを図示しているが、ノズル列が8列の場合は、8列のノズル列に対応するドットが記録媒体53上に形成される。
【0091】
また、各ノズル列の吐出順序は、昇順でもよいし、他の順序でもよい。また、各ノズル列を所定の順番で複数回吐出制御して印刷したテストパターンを用いてもよい。また、テストパターンのパターン形状は、所望のパターン形状でよい。
【0092】
次に、
図10は、印刷されたテストパターンのドットの部分を拡大した図である。
図10に示す点線で示す格子状の領域は、読取部54の一画素分の読取領域を示している。一例として、1200dpi相当の読取領域となっている。
【0093】
なお、読取部54の解像度は、1200dpi等の高解像にしなくても、以下のようにすれば印字解像度と同等で十分にサブピクセル単位での位置偏差は検出できる。例えば、検出精度は1/4ピクセル(4800dpi=約5μm)あれば、視認性の観点で十分である。
【0094】
次に、
図8のフローチャートのステップS2では、中心位置検出部92(着弾位置検出部の一例)が、読取部54で読み取られたテストパターンの読取値に基づいて、各ドットの中心位置を検出する。
【0095】
図11は、読取部54により読み取られたテストパターンの画素値を示す図である。このうち、
図11(a)は、読取部54により読み取られた、着弾位置ずれの検出対象となる検出ドット及びその近傍の画素値(ドットの濃度)を示している。また、
図11(b)は、例えば
図10に加算範囲A
2として示すように、読取部54により同一時刻に読み取られた検出ドット及びその近傍の画素値の加算値(読み取り加算値)を示している。なお、この
図11(b)は、縦軸が画素値であり、横軸が時間(記録媒体53の搬送方向=Y方向)となっている。
【0096】
図11(b)に示す点線は、この読み取り加算値に対して、例えばスプライン補間処理等を施すことで形成された補間曲線である。この補間曲線のピーク値が、Y方向のトッド中心位置(CYn:nはノズル番号)である。中心位置検出部92は、このように検出ドット及びその近傍の画素値に基づいて、ノズル4毎にインクのドットの中心位置(CYn)を検出する。
【0097】
次に、
図8のフローチャートのステップS3では、平均値算出部93(基準着弾位置検出部の一例)が、記録ヘッドユニット51の各ノズル4における、基準となるインクの着弾位置(基準着弾位置)を検出する。具体的には、平均値算出部93は、読取部54で読み取られた全ドットの画素値を加算処理して上述の補間曲線のピーク値を検出し、このピーク値に対応する着弾位置を、そのノズル列から吐出されるインクのドットの平均着弾位置(CYavg)として検出する。
【0098】
次に、
図8のフローチャートのステップS4では、着弾位置ずれ検出部94が、各ノズル4のドットの中心位置(CYn)から記録ヘッドユニット51のノズル列の平均着弾位置(CYavg)を減算処理する(CYn-CYavg)。これにより、着弾位置ずれ検出部94は、平均着弾位置に対する着弾位置のずれ(偏差)を、ノズル4毎に検出する。
【0099】
次に、
図8のフローチャートのステップS5では、補正情報設定部95(補正情報生成部の一例)が、平均着弾位置に対する着弾位置のずれ(偏差)を時間(波形開始タイミング)に換算し、基準駆動波形をこの時間分、早める又は遅延させるための補正情報を生成する。
【0100】
例えば、
図5に示す吐出周期Tが「20μs」で、あるノズル4から吐出されたドットの着弾位置が、平均着弾位置に対して「-0.25画素分」、ずれていたとする。なお、「-0.25画素」の「-」の記号は、平均より早く着弾していることを意味する。この場合、補正情報設定部95は、基準駆動波形の駆動開始時刻Tsを5μs遅延させる補正情報(ΔTs(n))を生成し、これを
図6に示す記録ヘッドユニット51の不揮発性メモリ56に記憶制御する。
【0101】
この記録ヘッドユニット51の不揮発性メモリ56に記憶された補正情報は、不揮発性メモリ56から読み出され、
図4に示す動波形補正情報保持部35に設定される。これにより、ヘッド駆動部30で吐出制御される各ノズル4の駆動波形開始タイミングを、それぞれTs+ΔTs(n)に調整することができ、各ノズル4から吐出されるインクの着弾位置を揃えることができる。すなわち、各ノズル4のインクの着弾位置を、ノズル4の並設方向に沿った直線上に位置させることができる。
【0102】
なお、回路構成上、駆動波形開始タイミングをT0よりも早めることは困難である。この場合は、基準駆動開始時刻Tsを所定時間分遅延させればよい。
【0103】
(インクジェット記録装置の適用例)
次に、このような実施の形態のインクジェット記録装置は、例えば
図12に示すラインエンジンプリンタシステムに適用できる。この
図12に示すラインエンジンプリンタシステムは、巻き出し装置100、前処理装置120、表面印字装置130、スキャナ装置131、表裏反転装置140、裏面印字装置150、スキャナ装置151及び巻取り装置160を備えている。実施の形態のインクジェット記録装置は、表面印字装置130及び(又は)裏面印字装置150に適用できる。
【0104】
このようなラインエンジンプリンタシステムは、ロール状の記録媒体1が、巻き出し装置100の巻き出し部111に巻回されている。この記録媒体1は、巻き出し部111から巻き出され、バッファ部112を介して前処理装置120に供給される。
【0105】
前処理装置120に供給された記録媒体1は、記録媒体1の裏面に前処理液を塗布する塗布装置122及び表面に前処理液を塗布する塗布装置121を順に通過する。これにより、記録媒体1の表面及び裏面に、それぞれ印刷滲み防止用の滲み抑制剤を塗布する前処理が施される。
【0106】
このような前処理が施された記録媒体1は、実施の形態のインクジェット記録装置が適用された表面印字装置130に供給される。表面印字装置130は、上述の記録ヘッドユニット51から補正情報で補正されたタイミングで、記録媒体1の表面にインクを吐出することで、所望の文字、画像等を印刷する。そして、表面印字装置130は、印刷した記録媒体1を乾燥器で乾燥させた後に表裏反転装置140に供給する。スキャナ装置131は、表面印字装置130から表裏反転装置140に記録媒体1が供給される間に、記録媒体1の表面を光学的に読み取る。スキャナ装置131により読み取られた画像は、表面の画像検査に用いられる。
【0107】
表裏反転装置140は、記録媒体1の表裏を反転させ、実施の形態のインクジェット記録装置が適用された裏面印字装置150に供給する。裏面印字装置150は、上述の記録ヘッドユニット51から補正情報で補正されたタイミングで、記録媒体1の裏面にインクを吐出することで、所望の文字、画像等を印刷する。そして、裏面印字装置150は、印刷した記録媒体1を乾燥器で乾燥させた後に巻取り装置160に供給する。スキャナ装置151は、裏面印字装置150から巻取り装置160に記録媒体1が供給される間に、記録媒体1の裏面を光学的に読み取る。スキャナ装置151により読み取られた画像は、裏面の画像検査に用いられる。巻取り装置160は、表面及び裏面の印刷が行われた記録媒体1を、バッファ部162を介して巻取り部161により巻き取る。
【0108】
(実施の形態の効果)
以上の説明から明らかなように、実施の形態のインクジェット記録装置は、各ノズル4のインクのドットの着弾位置の偏差を検出し、この検出した偏差に基づいて、基準駆動波形の駆動開始時刻を制御する補正情報を生成する。そして、この補正情報を、記録ヘッドユニット51の不揮発性メモリ56又はネットワーク上の記憶装置等に記憶しておき、印刷時に読み出して各ノズルを吐出制御する。
【0109】
これにより、ノズル毎に吐出特性を測定し、ノズル毎の補正情報を生成する作業を不要とすることができ、一度のテストパターンの印刷及びその読取画像に基づく演算で、全てのノズル4の補正情報を取得できる。このため、記録ヘッド3の各ノズル4の吐出特性を短時間で調整することができる。
【0110】
(第1の変形例)
印刷制御部91が、
図9に例示したテストパターンを、記録媒体53の搬送方向(Y方向)に、所定の間隔で複数セット分、繰り返し印刷する。そして、着弾位置ずれ検出部94が、各セットのテストパターンで、それぞれ上述した着弾位置の偏差を検出して平均化する。これにより、補正情報設定部95は、平均化された着弾位置の偏差に基づいて。上述の補正情報を生成する。これにより、着弾位置ずれの測定誤差を希釈化することができ、より高精度な補正情報を算出することができる他、上述の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0111】
(第2の変形例)
次に、上述の着弾位置ずれは、滴速度のノズル4間のばらつきが主な要因であるが、この他、記録ヘッド3の製造誤差及び組付け誤差によっても生じる。
図13は、記録ヘッド3の製造誤差又は組付け誤差により、ノズル列の配列にずれが生じた例を示している。すなわち、記録ヘッド3は、
図13に示す基準面を基準として製造組立が行われ、また、この基準面が記録媒体1の搬送方向に対して垂直となるように、インクジェット記録装置又は補正情報測定装置50に対する組み付けが行われる。
【0112】
図13に示す記録ヘッド81a及び記録ヘッド81bを備えた記録ヘッド80の製造時において、記録ヘッド81aの上片部を基準面とし、この基準面に対して、記録ヘッド81a及び記録ヘッド81bのA列~D列の各ノズル列が正確に水平となるように組立てられる。
【0113】
しかし、記録ヘッド81aのB列のノズル列のように、基準面に対して傾きを持って製造される場合がある。また、記録ヘッド81a及び記録ヘッド81bの組み合わせ精度が悪いことで、記録ヘッド81bのC列及びD列のノズル列が、記録ヘッド81aの基準面に対して傾きを持って記録ヘッド80が組み立てられる場合がある。さらに、
図1を用いて説明したように、複数の記録ヘッド3をアレー化して記録部2K等を構成する場合、アレー化の際に、互いの記録ヘッド3の組付けの相対的な誤差が、ノズル列間の相対的な傾きとなる場合がある。
【0114】
図14は、このようなノズル列の傾きが生じた状態で印刷されたテストパターンの一例を示す図である。傾きが生じたノズル列は、同一の基準駆動波形で、同一の時刻に吐出制御しても、
図14の第1列のように、インクの着弾位置が搬送方向の直交方向対して傾きを生ずる。これにより、アレー化された隣接する記録ヘッド3(
図14ではノズル番号1´~)から吐出したインクの着弾位置に段差を生じ、印刷画像の画質が劣化する。
【0115】
しかし、補正情報測定装置50の場合、このようなノズル列の傾きによって生じる着弾位置のずれに対しても調整することができる。すなわち、上述と同様にしてテストパターンを印字し、着弾したインクのドットを読取部54で読み取り、上述のように各ドットの中心位置CYnを算出する。
【0116】
ノズル列から吐出されるインクのドットの平均着弾位置CYavgも、同様にして求めても良いが、
図11のように徐々にずれていくような場合には、読取部54の全画素値の加算値は、なだらかになり、上述の補間曲線のピーク値の検出に誤差を生じる恐れがある。
【0117】
このような場合、着弾位置ずれ検出部94は、以下の数式に示すように、それぞれ求めたドットの中心位置を加算処理して平均値を算出する。
【0118】
CYavg=ΣCYi/N
【0119】
この数式において、「CYavg」は、上述のように平均着弾位置である。また、「CYn」は、各ノズル4のドットの中心位置である。また、「i」はノズル番号で1~Nである。また、「N」は、1つのノズル列のノズル4の数である。平均弾位置CYavgからの、各ノズル4(n)の着弾位置のずれ(偏差)は上述のとおりである。
【0120】
補正情報設定部95は、このようにして算出された各ノズル4(n)の着弾位置の平均値からのずれを波形開始タイミングに換算し、基準駆動波形をこのタイミング分、早め又は遅延させる補正情報を生成する。これにより、記録ヘッド3の製造又は組み付け時にノズル列の傾きが生じても、各ノズル4の着弾位置を揃えるように短時間で調整できる。また、各ノズル4の吐出特性のばらつきによる着弾位置のずれも同時に調整できる。
【0121】
(第3の変形例)
次に、
図6に示した読取部54を、実施の形態のインクジェット記録装置側に設けてもよい。この場合、記録媒体1の搬送方向に対して直交する方向にテストパターンの読取を行うように読取部が設けられる。これにより、記録ヘッド3をインクジェット記録装置に組み付けた際に、上述したノズル列の傾き(記録媒体1の搬送方向に対して直交する方向に対する傾き)が生じたとしても、簡単に所望の着弾位置となるように調整できる。また、インクジェット記録装置に対する記録ヘッド34の組み付け時に、傾きを極力無くすよう調整することで長時間を要していたノズル列の調整工程を大幅に簡略化して、短時間での調整が可能となる。
【0122】
また、
図6に示した読取部54を、実施の形態のインクジェット記録装置外の装置である、例えば
図12に示したスキャナ装置131又はスキャナ装置151で代用してもよい。この場合、上述と同様に、スキャナ装置131又はスキャナ装置151で、記録媒体1に印刷されたテストパターンを読み取り、各ノズル4の着弾位置の偏差に基づいて補正情報を生成する。これにより、上述と同様の効果を得ることができる。なお、テストパターン内に搬送方向を示す直線、(及び)又は、インクを吐出したノズル4を特定可能なパターンを同時に印刷しておくとよい。
【0123】
(第4の変形例)
次に、上述の実施の形態の説明では、平均着弾位置からの偏差に基づいて、基準駆動波形の開始時刻(駆動波形開始タイミング)を調整することで、ノズル4毎の着弾位置の調整を行うこととした。
【0124】
しかし、各ノズルから吐出されるインクの着弾位置が揃うように、ノズル4毎の吐出速度を調整してもよい。吐出速度は、基本駆動波形のパルスの一部又は全ての電圧を調整することで制御できる。このため、着弾位置の変更量に応じた駆動波形のパルス電圧調整量を予め求めてメモリに記憶しておく。補正情報設定部95は、ノズル4毎の着弾位置の偏差(ずれ量)に対応するパルス電圧調整量を補正情報として不揮発性メモリ54等に記憶させる。これにより、ノズル4毎の着弾位置の偏差(ずれ量)に応じて、ノズル毎に吐出速度を制御でき、各ドットを揃えることができる等、上述と同様の効果を得ることができる。
【0125】
最後に、上述の実施の形態は、一例として提示したものであり、本発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことも可能である。また、実施の形態及び実施の形態の変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0126】
1 記録媒体
2 記録部
3 記録ヘッド
4 ノズル
5 圧電素子
30 ヘッド駆動部
31 シフトレジスタ
32 ラッチ回路
33 駆動波形生成部
34 駆動波形情報保持部
35 駆動波形補正情報保持部
36 制御部
40 コントローラ
45 メモリ
50 補正情報測定部
51 記録ヘッドユニット
52 ヘッド取付部
53 記録媒体
54 読取部
55 制御部
91 印刷制御部
92 中心位置検出部
93 平均値算出部
94 着弾位置ずれ検出部
95 補正情報設定部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0127】