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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051468
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】半導体装置及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20230404BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20230404BHJP
   H01L 29/41 20060101ALI20230404BHJP
   H01L 29/423 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
H01L29/78 652K
H01L29/78 652S
H01L29/78 652N
H01L29/78 658F
H01L29/78 658G
H01L29/78 653A
H01L29/78 652F
H01L29/44 P
H01L29/44 S
H01L29/58 G
H01L29/78 301W
H01L29/78 301P
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021162167
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沼口 浩之
(72)【発明者】
【氏名】井上 巧
(72)【発明者】
【氏名】塩入 俊太朗
(72)【発明者】
【氏名】古田 健一
(72)【発明者】
【氏名】黒木 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 友三
(72)【発明者】
【氏名】東平 真人
(72)【発明者】
【氏名】井上 剛
【テーマコード(参考)】
4M104
5F140
【Fターム(参考)】
4M104AA01
4M104BB01
4M104CC01
4M104CC05
4M104DD09
4M104DD28
4M104DD43
4M104DD66
4M104EE03
4M104EE16
4M104FF02
4M104FF06
4M104FF11
4M104GG09
4M104GG18
5F140AA19
5F140BA01
5F140BB04
5F140BD05
5F140BE03
5F140BE07
5F140BF04
5F140BF43
5F140BF51
5F140BG24
5F140BG28
5F140BG38
(57)【要約】
【課題】ゲート絶縁膜の膜質の低下及びゲート耐圧性の低下を抑制することができる、半導体装置及び半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】第1の深さを有する第1のトレンチ部分と、第1の深さよりも深い第2の深さを有する第2のトレンチ部分と、第1のトレンチ部分及び第2のトレンチ部分に接続され第1の深さよりも浅い第3の深さを有する第3のトレンチ部分とにより構成されたトレンチを備えた半導体基板と、半導体基板に形成されたトレンチの内面上に設けられたゲート絶縁膜と、第1のトレンチ部分に設けられた第1の電極と、ゲート絶縁膜を介して第1の電極と離間し、第3のトレンチ部分に設けられた第2の電極と、を備えた半導体装置とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の深さを有する第1のトレンチ部分と、該第1の深さよりも深い第2の深さを有する第2のトレンチ部分と、該第1のトレンチ部分及び該第2のトレンチ部分に接続され該第1の深さよりも浅い第3の深さを有する第3のトレンチ部分とにより構成されたトレンチを備えた半導体基板と、
前記半導体基板に形成された前記トレンチの内面上に設けられたゲート絶縁膜と、
前記第1のトレンチ部分に設けられた第1の電極と、
前記ゲート絶縁膜を介して前記第1の電極と離間し、前記第3のトレンチ部分に設けられた第2の電極と、
を備えた半導体装置。
【請求項2】
前記第1のトレンチ部分は、長さ方向の終端部に向かって幅が狭くなり、深さが浅い請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1のトレンチ部分は傾斜構造を有する請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】

前記第2のトレンチ部分は、第3のトレンチ部分を介して前記第1のトレンチ部分の終端部と連結する請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2のトレンチ部分は角部を有する請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1のトレンチ部分の2つの終端部の一方又は両方に、前記第2のトレンチ部分が連結された、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第2のトレンチ部分の側壁は、前記半導体基板に略垂直である、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第3のトレンチ部分が形成された領域の前記半導体基板の厚さは、前記トレンチが形成されていない領域の前記半導体基板の厚さより薄い、請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第3のトレンチ部分の幅及び深さは、前記ゲート絶縁膜により埋められる幅及び深さとする、請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第1のトレンチ部分に対し、複数の前記第2のトレンチ部分が設けられた、請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記第1のトレンチ部分と前記第2のトレンチ部分とが複数の前記第3のトレンチ部分により連結された、請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記第2のトレンチ部分が複数設けられ、前記第3のトレンチ部分は複数の前記第2のトレンチ部分に接続された、請求項1から請求項11までのいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項13】
半導体基板上にマスクを形成する工程と、
前記マスクを用いたエッチングにより第1の深さを有する第1のトレンチ部分と、該第1の深さよりも深い第2の深さを有する第2のトレンチ部分と、該第1のトレンチ部分及び該第2のトレンチ部分に接続され該第1の深さよりも浅い第3の深さを有する第3のトレンチ部分とにより構成されるトレンチを形成する工程と、
前記トレンチが形成された前記半導体基板を水洗浄する工程と、
前記半導体基板を乾燥する工程と、
前記半導体基板に形成された前記トレンチの内面上にゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記マスクを除去した後に、前記第1のトレンチ部分に電極材料を充填して第1の電極を形成すると共に、前記第2のトレンチ部分に前記電極材料を充填して第2の電極を形成する工程と、
を備え、
前記第1のトレンチ部分が、長さ方向の終端部に向かって幅が狭くなり、深さが浅くなるように形成され、
前記第2のトレンチ部分が、前記第1のトレンチ部分の前記終端部の外側に配置され、第3のトレンチ部分により前記第1のトレンチ部分の前記終端部と連結され、前記第1のトレンチ部分の終端部よりも幅が広く且つ深さが深くなるように形成される、
半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記乾燥する工程は、前記半導体基板上に残留する水分を遠心力により振り切る工程を含む請求項13に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トレンチゲート構造の半導体装置は、例えば、図14に示すように、N型のドレイン層102上にN型のドリフト層104が形成された半導体基板100を備えている。ドリフト層104の表面にはP型のチャネル領域106が形成され、チャネル領域106の表面にはN型のソース領域108が形成されている。半導体基板100には、ソース領域108の表面からチャネル領域106を貫通してドリフト層104に到達するトレンチ110が形成されている。
【0003】
トレンチ110の内面には、ゲート酸化膜112が形成されている。ゲート酸化膜112が形成されたトレンチ110の内部には、ポリシリコンが充填されてゲート電極114が形成されている。ソース領域108の表面には、ソース電極116が形成されている。ゲート電極114とソース電極116とは、酸化膜118により絶縁されている。ドレイン層102の裏面には、ドレイン電極120が設けられている。
【0004】
この通り、トレンチゲート構造では、ゲート電極114は半導体基板100に埋め込まれている。トレンチ110は一方向を長手方向とし、トレンチ110の長手方向の終端部は、ゲート電極114の引き出し部となっている。したがって、引き出し部の上方には金属電極(図示せず)も設けられている。
【0005】
特許文献1には、トレンチゲート構造の縦型二重拡散MOSトランジスタを有する半導体装置であって、半導体基板と、この半導体基板に形成されたトレンチと、このトレンチの内面に沿って形成され、前記トレンチの外部に隆起した隆起部を有するゲート絶縁膜と、前記トレンチ内に埋設されたゲート電極と、前記半導体基板の表面および前記ゲート電極の表面に形成された金属シリサイド膜とを含むことを特徴とする、半導体装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-150082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
トレンチゲート構造の半導体装置の製造工程では、トレンチ形成後、熱酸化前に基板の前洗浄を行うのが通常である。前洗浄では、基板を水に浸漬した後、取り出してスピンドライにより乾燥する。この際、トレンチの角部では水が飛ばされ難いため、基板としてシリコン基板を用いた場合は大気中でシリコン(Si)と水滴が反応することでシリコン化合物が発生して残る。残ったシリコン化合物は、ゲート絶縁膜の膜質低下、ひいてはゲート耐圧低下を引き起こす。
【0008】
本発明は、ゲート絶縁膜の膜質の低下及びゲート耐圧性の低下を抑制することができる、半導体装置及び半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の第1の態様は、半導体装置に係るものである。この半導体装置は、第1の深さを有する第1のトレンチ部分と、該第1の深さよりも深い第2の深さを有する第2のトレンチ部分と、該第1のトレンチ部分及び該第2のトレンチ部分に接続され該第1の深さよりも浅い第3の深さを有する第3のトレンチ部分とにより構成されたトレンチを備えた半導体基板と、前記半導体基板に形成された前記トレンチの内面上に設けられたゲート絶縁膜と、前記第1のトレンチ部分に設けられた第1の電極と、前記ゲート絶縁膜を介して前記第1の電極と離間し、前記第3のトレンチ部分に設けられた第2の電極と、を備える。
【0010】
本開示の第2の態様は、半導体装置の製造方法に係るものである。この半導体装置の製造方法は、半導体基板上にマスクを形成する工程と、前記マスクを用いたエッチングにより第1の深さを有する第1のトレンチ部分と、該第1の深さよりも深い第2の深さを有する第2のトレンチ部分と、該第1のトレンチ部分及び該第2のトレンチ部分に接続され該第1の深さよりも浅い第3の深さを有する第3のトレンチ部分とにより構成されるトレンチを形成する工程と、前記トレンチが形成された前記半導体基板を水洗浄する工程と、前記半導体基板を乾燥する工程と、前記半導体基板に形成された前記トレンチの内面上にゲート絶縁膜を形成する工程と、前記マスクを除去した後に、前記第1のトレンチ部分に電極材料を充填して第1の電極を形成すると共に、前記第2のトレンチ部分に前記電極材料を充填して第2の電極を形成する工程と、を備え、前記第1のトレンチ部分が、長さ方向の終端部に向かって幅が狭くなり、深さが浅くなるように形成され、前記第2のトレンチ部分が、前記第1のトレンチ部分の前記終端部の外側に配置され、第3のトレンチ部分により前記第1のトレンチ部分の前記終端部と連結され、前記第1のトレンチ部分の終端部よりも幅が広く且つ深さが深くなるように形成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ゲート絶縁膜の膜質の低下及びゲート耐圧性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】半導体装置の製造工程においてウェハ上に形成されるトレンチ構造の一例を示す平面図である。
図2】(A)及び(B)は本発明の半導体装置のトレンチ終端部周辺の構造の一例を示す図であり、(A)は図1の領域Aを拡大して示す平面図であり、(B)は(A)のA-A線断面図である。
図3】(A)及び(B)は1つのトレンチの全体構造の一例を示す平面図である。
図4】(A)~(H)は本発明の半導体装置の製造方法の各工程の一例を示す断面図である。
図5】スピンドライにより遠心力が掛かる方向を示す模式図である。
図6】従来のトレンチ終端部周辺の構造の一例を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は(A)のB-B線断面図である。
図7】従来のトレンチ構造の問題点を示す断面図である。
図8】本発明の半導体装置による作用効果を示す断面図である。
図9】トレンチ終端部周辺の構造の変形例を示す平面図である。
図10】トレンチ終端部周辺の構造の変形例を示す平面図である。
図11】トレンチ終端部周辺の構造の変形例を示す平面図である。
図12】トレンチ終端部周辺の構造の変形例を示す平面図である。
図13】トレンチ終端部周辺の構造の変形例を示す平面図である。
図14】トレンチゲート構造の半導体装置の概略構造の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。
【0014】
<半導体装置>
まず、本開示の半導体装置の構造について説明する。
図1は半導体装置の製造工程においてウェハ上に形成されるトレンチ構造の一例を示す平面図である。半導体装置の製造工程では、ウェハ10上に複数の半導体装置を一度に形成した後で、各々が1つの半導体装置を備えた複数のチップ11に分割される。トレンチゲート構造の半導体装置の場合、1つのチップ11に相当する半導体基板12には複数のトレンチ、例えば第1のトレンチ14が形成されている。図示した例では、一方向を長手方向とする複数の第1のトレンチ14は、互いに平行となるように幅方向に並べて配列されている。但し、チップ11内でのトレンチパターンはこれに限定されるものではない。
【0015】
図2(A)及び(B)はトレンチ終端部周辺(図1の領域A)の構造の一例を示す図である。図2(A)及び(B)に示すように、半導体基板12には、トレンチが形成されており、トレンチは深さや幅が異なる3つのトレンチ部分を有する。ここで、深さや幅が異なる3つのトレンチ部分を第1のトレンチ、第2のトレンチ、第3のトレンチとして説明する。図2(A)及び(B)に示すように、第1のトレンチ14、第2のトレンチ18、及び第3のトレンチ20が形成されている。図2(A)に示す第1のトレンチ14、第2のトレンチ18、及び第3のトレンチ20が連結されている方向が長さ方向、長さ方向と直交する方向が幅方向である。
【0016】
図2(A)及び(B)を見ると、第1のトレンチ14は、長さ方向の終端部16に向かって幅が狭くなり、深さが浅くなっている。第2のトレンチ18は、第1のトレンチ14の終端部16よりも幅が広く且つ深さが深い。第2のトレンチ18は、第1のトレンチ14の終端部16の外側に配置され、第1のトレンチ14及び第2のトレンチ18よりも深さが浅い第3のトレンチ20により第1のトレンチ14の終端部16と連結されている。各トレンチの好適な形状は、作用効果の説明の後で詳細に説明する。
【0017】
なお、第1のトレンチは本発明に係る「第1のトレンチ部分」の一例であり、第2のトレンチは本発明に係る「第2のトレンチ部分」の一例であり、第3のトレンチは本発明に係る「第3のトレンチ部分」の一例である。
【0018】
図3(A)及び(B)は1つのトレンチの全体構造の一例を示す平面図である。第1のトレンチ14は、2つの終端部16を有している。第1のトレンチ14の概略的な大きさを示すと、長さ方向の2つの終端部16の間の距離d1は数100mmであり、中央部の幅w1は数μmである。ここで、第1のトレンチ14の中央部は、図3(A)及び(B)に示す第1トレンチ14の幅が最も広い部分を指している。
【0019】
図3(A)に示すように、第1のトレンチ14の2つの終端部16の両方に第2のトレンチ18が連結されていてもよく、図3(B)に示すように、第1のトレンチ14の2つの終端部16の一方だけに第2のトレンチ18が連結されていてもよい。第2のトレンチ18の幅及び深さは、第1のトレンチ14の中央部の幅及び深さと略等しい。
【0020】
なお、3種類のトレンチは図4(A)~(H)を参照して後述する通り半導体装置の製造工程で半導体基板12に形成されるものであり、本実施の形態では、いずれもチップ11の素子形成領域内(図示せず)に形成されるものとして説明する。
【0021】
詳しくは、図4(H)に示すように、半導体装置は、第1のトレンチ14、第2のトレンチ18及び第3のトレンチ20と、これらトレンチ各々の内面に形成されたゲート酸化膜22と、第1のトレンチ14内に電極材料を充填して形成されたゲート電極24と、第2のトレンチ18内に電極材料を充填して形成されたフローティング電極32とを備えている。フローティング電極32は、第3のトレンチ20に形成されたゲート酸化膜22によりゲート電極24とは絶縁されている。
【0022】
半導体装置は、上記構成要素の外に、半導体基板12上に形成された絶縁膜34と、金属電極40と、半導体基板12の裏面に設けられる裏面電極42とを備えている。絶縁膜34は、ゲート電極24及びフローティング電極32と金属電極40とを絶縁する。絶縁膜34には、コンタクトホール38が形成されている。金属電極40は、コンタクトホール38を介してゲート電極24と接続される。なお、ゲート酸化膜は本発明に係る「ゲート絶縁膜」の一例である。
【0023】
<半導体装置の製造方法>
次に、図4(A)~(H)を参照して半導体装置の製造方法について説明する。
まず、イオン注入処理及び拡散処理により各種半導体層(図示せず)や各種半導体領域(図示せず)が形成された半導体基板12を用意する(図4(A))。ここでは、半導体基板12がシリコン基板である例について説明する。次に、半導体基板12上にトレンチ形成用のマスク30を形成する(図4(B))。
【0024】
マスク30の形状は、例えば図2(A)のように第1のトレンチ14を形成する部分は中央部から終端部16に向かって幅が狭く、第2のトレンチ18を形成する部分は第1のトレンチ14の中央部の幅と略等しく、第3のトレンチ20を形成する部分は第1のトレンチ14の終端部16の幅より狭いパターンである。
【0025】
次に、マスク30を用いて半導体基板12をエッチングし、第1のトレンチ14、第2のトレンチ18及び第3のトレンチ20を形成する(図4(C))。エッチングは等方性エッチングであり、エッチングにより形成されるトレンチの深さは、幅が広くなるほど深くなり、幅が狭くなるほど浅くなる。そのため、マスク30のパターンの幅に応じて深さが異なる第1のトレンチ14、第2のトレンチ18、及び第3のトレンチ20が形成される。なお、図2(A)及び(B)に示す構造は、マスク30のパターンが図2(A)よりも一回り程度小さいものを用いて形成されている。
【0026】
次に、マスク30を除去した後、各トレンチが形成された半導体基板12を前洗浄し、洗浄・乾燥した後で、各トレンチの内面を熱酸化してゲート酸化膜22を形成する(図4(D))。第1のトレンチ14の内面及び第2のトレンチ18の内面にはゲート酸化膜22が形成され、第3のトレンチ20は、ゲート酸化膜22で埋められる。上述した通り、前洗浄は、半導体基板12に付着した有機系などの異物を洗い流すために行われる。前洗浄では、半導体基板12を水に浸漬した後、水から取り出して、スピンドライにより乾燥させる。
【0027】
次に、化学気相成長(CVD:chemical vapor deposition)等により各トレンチ内にポリシリコン等の導電性の電極材料を堆積させて、各トレンチ内にポリシリコンを充填する(図4(E))。続いてエッチングし、第3のトレンチ20内のゲート酸化膜22が露出されるようにトレンチの外部に堆積したポリシリコンを除去することにより、第1のトレンチ14内部にポリシリコンが充填されたゲート電極24が形成され、第2のトレンチ18内部にポリシリコンが充填されたフローティング電極32が形成される。
【0028】
ここでのエッチングは異方性エッチングであり、例えばエッチング終点検出装置(EPD:end point detector)を用いてポリシリコンの露出を検出してエッチングを止める。ゲート電極24とフローティング電極32とは、第3のトレンチ20を埋めるゲート酸化膜22、すなわち二酸化ケイ素(SiO)により絶縁された状態となる。
【0029】
次に、半導体基板12、第3のトレンチ20内のゲート酸化膜22、ゲート電極24及びフローティング電極32上に絶縁膜34を形成し、絶縁膜34上にコンタクトホール形成用のマスク36を形成する(図4(F))。次に、リソグラフィー及びエッチングにより絶縁膜34をパターニングしてコンタクトホール38を形成する(図4(G))。次に、絶縁膜34及びコンタクトホール38上に金属電極40を形成し、半導体基板12の裏面に裏面電極42を形成する(図4(H))。
【0030】
<作用効果>
本開示の半導体装置は、半導体基板12上に第1のトレンチ14に加えて、第1のトレンチ14の終端部16の外側に第2のトレンチ18及び第3のトレンチ20を形成することにより、トレンチ形成後、熱酸化前に行われる上記の前洗浄工程において、ゲート電極24が形成される第1のトレンチ14に残留物が溜まらないようにしたものである。
【0031】
ここで、従来のトレンチ構造について課題が生じる理由を図5から図8を用いて説明する。前洗浄工程のスピンドライでは、図5に示すように、チップ11のウェハ10内の位置に応じて遠心力のかかる方向が異なるが、概ね図3で示した第1のトレンチ14の中央部から終端部16に向かう方向に遠心力がかかる。
【0032】
図6に示すように、従来のトレンチ構造では、半導体基板100に形成されたトレンチ110は、終端部が角部となっている。このため、スピンドライで遠心力が掛かっても、トレンチ110の角部では水が飛ばされ難いため、大気中でシリコン(Si)と水滴が反応することでシリコン化合物が発生して残るなど、残留物Wが溜まってしまう。図7に示すように、トレンチ110の角部に残った残留物Wは、ゲート酸化膜112の膜質を低下させ、ひいてはゲート耐圧低下を引き起こす。
【0033】
これに対して、本開示の半導体装置では、図8に示すように、スピンドライで遠心力が掛かると、点線で示す矢印に沿って、洗浄廃水が移動する。これは主に、以下の3つの要因によるものと考えられる。
【0034】
(1)第1のトレンチ14が、終端部16に向かって狭く、浅くなる傾斜構造を備えているので、洗浄廃水が排出され易く、第1のトレンチ14内に溜まり難いこと。
【0035】
(2)第1のトレンチ14の終端部16に第1のトレンチ14よりも深さが浅い第3のトレンチ20を連結したことにより、連結部が基板表面より低くなり、第1のトレンチ14から洗浄廃水が排出され易くなること。
【0036】
(3)第3のトレンチ20に連結される深い第2のトレンチ18に洗浄廃水が流れ込むと、第2のトレンチ18の側壁が半導体基板12に対し略垂直なので、洗浄廃水は第2のトレンチ18でトラップされ、第1のトレンチ14に逆流しないこと。
【0037】
この結果、ゲート電極24が形成される第1のトレンチ14には洗浄廃水が溜まらず、ゲート電極24については、ゲート酸化膜112の膜質の低下及びゲート耐圧の低下が回避される。その代わりに、第2のトレンチ18に洗浄廃水が溜まり、残留物Wが残留することになるが、第2のトレンチ18に形成される電極は、ゲート電極24とは絶縁され、電流が流れないフローティング電極となるので、実質的な問題は発生しない。
【0038】
<好適なトレンチ形状>
上記の作用効果を考慮すると、各トレンチの好適な形状は以下の通りである。なお、各トレンチの長さとは、第1のトレンチ14の長さ方向に沿った「長さ」であり、各トレンチの幅とは、第1のトレンチ14の幅方向に沿った「長さ」である。
【0039】
(第1のトレンチ)
第1のトレンチ14は、終端部16に角部を備えず、終端部16に向かって幅が狭く、深さが浅くなる傾斜構造を備えている。傾斜構造は、なだらかに変化するものでもよく、段階的に変化するものでもよい。第1のトレンチ14の中央部での幅は約1μm、深さは約3μmである。第1のトレンチ14の終端部16での幅はこれより短く、深さはこれより浅い。終端部16で第3のトレンチ20に連結されることを考慮すると、第1のトレンチ14の終端部16での幅及び深さは、第3のトレンチ20の幅及び深さと略等しいことが好ましい。第1のトレンチ14の全長は約100mm、傾斜構造が形成される部分は終端部16付近の極狭い範囲である。
【0040】
(第2のトレンチ)
第2のトレンチ18は、従来のトレンチ終端部と同様に角部を備える。すなわち、第2のトレンチ18は、側壁が半導体基板12に対し略垂直で、洗浄廃水をトラップする角部を備えている。第2のトレンチ18の幅は、第1のトレンチ14の終端部16の幅より広く、第2のトレンチ18の深さは、第1のトレンチ14の終端部16の深さより深い。第2のトレンチ18の長さは、特に限定されないが、長過ぎるとチップサイズが大きくなるデメリットもある。したがって、第2のトレンチ18の長さの上限は、要求されるチップサイズに応じて定まる。
【0041】
(第3のトレンチ)
第3のトレンチ20は、狭く浅い形状を有している。第3のトレンチ20の幅及び深さは、ゲート酸化膜で埋まる幅及び深さとする。第3のトレンチ20の幅は、具体的には、ゲート酸化膜の厚さの1.1倍以下とするのが好ましい。第3のトレンチ20の深さは、この幅に応じた深さとなる。
【0042】
ここでゲート酸化膜の厚さとは、トレンチの底面に相当する平坦部に形成されたゲート酸化膜の厚さである。トレンチ側壁のシリコン自体も酸化されゲート酸化膜が形成されるが、側壁では、平坦部に形成されるゲート酸化膜の厚さの約6割(0.6倍)の厚さのゲート酸化膜が形成される。側壁両側では、ゲート酸化膜の厚さの1.2倍となる。したがって、第3のトレンチ20の幅をゲート酸化膜の厚さの1.1倍以下とすると、第3のトレンチ20はゲート酸化膜で完全に埋まる。
【0043】
第3のトレンチ20の長さは、第1のトレンチ14と第2のトレンチ18との離間距離に相当する。第3のトレンチ20の長さ、すなわち離間距離は、素子分離に必要となる耐圧が確保できる距離とするのが好ましく、具体的には、最低でもゲート酸化膜厚の1.1倍以上とするのが好ましい。また、離間距離が長いほどチップサイズが大きくなるデメリットもある。したがって、第3のトレンチ20の長さの上限は、要求されるチップサイズに応じて定まる。
【0044】
<終端部周辺の構造の変形例>
上記の例では、第1のトレンチ14の1つの終端部16に対し、1つの第2のトレンチ18と1つの第3のトレンチ20とが設けられる例について説明したが、トレンチパターンはこれに限定される訳ではない。図9から図13に示す通り、トレンチ終端部周辺の構造については様々な変形例がある。
【0045】
(変形例1)
図9に示す変形例は、1つの第1のトレンチ14Aに対し、2つの第2のトレンチ18Aと2つの第3のトレンチ20Aとを設けた例である。詳しくは、第1のトレンチ14Aが対向する側壁の各々に近接して配置された2つの終端部16A、16Aを有し、終端部16Aに対して第2のトレンチ18A及び第3のトレンチ20Aが設けられると共に、終端部16Aに対して第2のトレンチ18A及び第3のトレンチ20Aが設けられている。この例では、第1のトレンチ14Aを分岐して排水経路を増やすことで、排水効率が向上する。また、第1のトレンチ14Aの側壁に沿って洗浄廃水が流れ易い。
【0046】
(変形例2)
図10に示す変形例は、変形例1の片側だけを採用したものであり、第1のトレンチ14Bの一方の側壁に近接して配置された終端部16Bを有し、終端部16Bに対して第2のトレンチ18B及び第3のトレンチ20Bが設けられている。この例では、第1のトレンチ14Bの側壁に沿って洗浄廃水が流れ易い。
【0047】
(変形例3)
図11に示す変形例は、1つの第1のトレンチ14Cに対し、1つの第2のトレンチ18Cと2つの第3のトレンチ20Cとを設けた例である。詳しくは、第1のトレンチ14Cが1つ終端部16Cを有し、終端部16Cに対して1つの第2のトレンチ18Cが設けられると共に、終端部16Cと第2のトレンチ18Cとを連結する2つの第3のトレンチ20C、20Cが設けられている。この例では、第3のトレンチ20Cを複数として排水経路を増やすことで、排水効率が向上する。
【0048】
(変形例4)
図12に示す変形例は、2つの第1のトレンチ14Dに対し、1つの第2のトレンチ18Dと2つの第3のトレンチ20Dを設けた例である。詳しくは、第1のトレンチ14Dが終端部16Dを有し、終端部16Dに対して第3のトレンチ20Dが設けられると共に、第1のトレンチ14Dが終端部16Dを有し、終端部16Dに対して第3のトレンチ20Dが設けられている。第1のトレンチ14Dの終端部16Dは、第3のトレンチ20Dにより第2のトレンチ18Dに連結され、第1のトレンチ14Dの終端部16Dは、第3のトレンチ20Dにより第2のトレンチ18Dに連結されている。この例では、第1のトレンチ14毎に第2のトレンチ18を設ける必要がないので、第2のトレンチ18の位置合わせ精度が低くてもよく、作成が容易である。また、洗浄廃水のトラップ容量を大きくすることができる。
【0049】
(変形例5)
図13に示す変形例は、変形例4と同様に、複数(n個)の第1のトレンチ14Eに対し、1つの第2のトレンチ18Eと複数(n個)の第3のトレンチ20Eを設けた例である。なお、図13では図3と同様にトレンチの全体構造を示している。第1のトレンチ14Eが終端部16Eを有し、終端部16Eに対して第3のトレンチ20Eが設けられている。第1のトレンチ14Ekの終端部16Eは、第3のトレンチ20Eにより第2のトレンチ18Eに連結されている。kは1からnの整数である。この例では、変形例4と同様に第2のトレンチ18の位置合わせ精度が低くてもよく、作成が容易である。また、洗浄廃水のトラップ容量を大きくすることができる。
【0050】
<その他の変形例>
なお、上記実施の形態で説明した半導体装置及び半導体装置の製造方法の構成は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内においてその構成を変更してもよいことは言うまでもない。
【0051】
例えば、上記の実施の形態では、第2のトレンチが素子形成領域の内部に形成される態様について説明した。しかしながら、第2のトレンチ内に電極材料を充填して形成される電極はフローティング電極であり、素子の一部とする必要はないため、第2のトレンチを素子形成領域の外部に形成してもよい。
【符号の説明】
【0052】
10 ウェハ
11 チップ
12 半導体基板
14 第1のトレンチ
16 終端部
18 第2のトレンチ
20 第3のトレンチ
22 ゲート酸化膜
24 ゲート電極
30 マスク
32 フローティング電極
34 絶縁膜
36 マスク
38 コンタクトホール
40 金属電極
42 裏面電極
A 領域
W 残留物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14