(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051495
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】影響力評価システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/04 20230101AFI20230404BHJP
【FI】
G06Q10/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021162219
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】504202472
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人情報・システム研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100205084
【弁理士】
【氏名又は名称】吉浦 洋一
(72)【発明者】
【氏名】水野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】土井 翔平
(72)【発明者】
【氏名】栗崎 周平
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】会社や人などの実体の意思決定に対して与える影響力を評価する影響力評価システムを提供する。
【解決手段】影響力評価システム1において,実体を示すラベルがノードに,実体が有する影響力の方向がエッジに,実体がほかの実体に対して有する影響力を示す情報を影響力情報とするネットワーク情報において,処理対象のノードの上位のノードをエッジを用いて特定し,処理対象のノードのラベルを更新する更新ラベルを,影響力情報を用いて上位のノードのラベルから特定するラベル更新処理部12と,ラベル更新処理部12で特定した更新ラベルを用いて伝播経路を特定してノードにおける中間影響力を算出する中間影響力算出処理部13と,ノードにおける中間影響力を用いて,ノードにおけるラベルが示す実体の影響力を示す評価指数を算出する指数算出処理部14とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実体を示すラベルがノードに,前記実体が有する影響力の方向がエッジに,前記実体がほかの実体に対して有する影響力を示す情報を影響力情報とするネットワーク情報において,処理対象のノードの上位のノードを前記エッジを用いて特定し,前記処理対象のノードのラベルを更新する更新ラベルを,前記影響力情報を用いて前記上位のノードのラベルから特定するラベル更新処理部と,
前記特定した更新ラベルを用いて伝播経路を特定してノードにおける中間影響力を算出する中間影響力算出処理部と,
前記ノードにおける中間影響力を用いて,前記ノードにおけるラベルが示す実体の影響力を示す評価指数を算出する指数算出処理部と,
を有することを特徴とする影響力評価システム。
【請求項2】
前記ラベル更新処理部は,
前記上位のノードを有するノードにおいて更新するラベルを,ラベル伝播法を用いて特定する,
ことを特徴とする請求項1に記載の影響力評価システム。
【請求項3】
前記ラベル更新処理部は,
前記上位のノードを有するノードにおいて更新するラベルを,ランダムサンプリングを用いて特定する,
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の影響力評価システム。
【請求項4】
前記ラベル更新処理部は,
処理対象とするノードの上位のノードについて影響力情報を用いて演算した演算値が,所定の閾値に対する条件を充足した場合に,その上位のノードのラベルを,前記処理対象とするノードの更新ラベルとして特定する,
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の影響力評価システム。
【請求項5】
前記ラベル更新処理部は,
処理対象とするノードの上位のノードについて実体ごとに影響力情報を用いて演算し,
前記演算した演算値が所定の閾値に対する条件を充足した場合に,その実体のノードのラベルを,前記処理対象とするノードの更新ラベルとして特定する,
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の影響力評価システム。
【請求項6】
前記ラベル更新処理部は,
処理対象とするノードの上位のノードについて実体ごとに所定の条件に従ってソートし,
前記ソートした順に実体ごとの影響力情報を用いて演算して,その演算値が所定の閾値に対する条件を充足する実体を特定し,
前記特定した実体のノードのラベルを,前記処理対象とするノードの更新ラベルとして特定する,
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の影響力評価システム。
【請求項7】
前記ラベル更新処理部は,
前記特定した実体のノードが複数ある場合,さらに,前記特定した実体におけるノードを所定の条件に従ってソートし,
ソートした順にノードごとの影響力情報を用いて演算して,その演算値が所定の閾値に対する条件を充足するノードを特定し,
前記特定したノードを,前記処理対象とするノードへ伝播するノードとして特定する,
ことを特徴とする請求項6に記載の影響力評価システム。
【請求項8】
前記中間影響力算出処理部は,
前記ノードにおける中間影響力の算出処理をあらかじめ定めた回数実行するまで,前記ノードにおける中間影響力を履歴として記憶させない,または前記指数算出処理部における処理に用いる中間影響力から除外する,
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の影響力評価システム。
【請求項9】
前記中間影響力算出処理部は,
前記ノードにおける中間影響力の算出処理を行う際に,減衰係数を用いてノードにおける中間影響力を算出する,
ことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の影響力評価システム。
【請求項10】
前記影響力評価システムは,
前記ネットワーク情報の入力を受け付けるネットワーク情報入力受付処理部を有しており,
前記影響力情報が株式の保有を示す情報である場合,
前記ネットワーク情報入力受付処理部は,
前記実体が自社株を有するとき,前記入力を受け付けたネットワーク情報について,その自社株による補正処理を行う,
ことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれかに記載の影響力評価システム。
【請求項11】
前記ネットワーク情報入力受付処理部は,
前記実体が自社株を有するとき,前記入力を受け付けたネットワーク情報について,前記ノードと前記エッジとを新たに設け,
前記新たなエッジには前記実体を示すラベルを,前記新たなエッジは,前記新たなノードから前記ノードへのエッジを付す補正処理を行う,
ことを特徴とする請求項10に記載の影響力評価システム。
【請求項12】
前記ネットワーク情報入力受付処理部は,
前記実体が自社株を有するとき,前記入力を受け付けたネットワーク情報において,前記実体に対するエッジを有するノードのラベルの影響力情報について,前記自社株を控除した影響力情報を算出する補正処理を行う,
ことを特徴とする請求項10に記載の影響力評価システム。
【請求項13】
前記指数算出処理部は,
前記影響力を示す指数を算出する際に,前記実体の規模を重み付けする演算をして算出する,
ことを特徴とする請求項1から請求項12のいずれかに記載の影響力評価システム。
【請求項14】
前記影響力評価システムは,
前記ネットワークにおける実体の変更前の前記影響力を示す指数と,前記ネットワークにおける実体の変更後の前記影響力を示す指数との差分を算出する,
ことを特徴とする請求項1から請求項13のいずれかに記載の影響力評価システム。
【請求項15】
コンピュータを,
実体を示すラベルがノードに,前記実体が有する影響力の方向がエッジに,前記実体がほかの実体に対して有する影響力を示す情報を影響力情報とするネットワーク情報において,処理対象のノードの上位のノードを前記エッジを用いて特定し,前記処理対象のノードのラベルを更新する更新ラベルを,前記影響力情報を用いて前記上位のノードのラベルから特定するラベル更新処理部,
前記特定した更新ラベルを用いて伝播経路を特定してノードにおける中間影響力を算出する中間影響力算出処理部,
前記ノードにおける中間影響力を用いて,前記ノードにおけるラベルが示す実体の影響力を示す評価指数を算出する指数算出処理部,
として機能させることを特徴とする影響力評価プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,会社や人などの実体(entity)が,ほかの実体に対して与える影響力を評価する影響力評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ある会社や人物が,第三者に対してどのような影響力を有しているかを数値化して評価することが検討されている。
【0003】
第三者に対する影響力を示す指標の一つとして株式の保有関係がある。会社や人物は,保有する株式の議決権を株主総会で行使することにより,当該株式会社の意思決定に影響を及ぼすことができる。そしてある会社や人物などの実体(entity)が,ほかの実体に対して有する影響力を評価する代表的な手法として,下記非特許文献1の「Shapley-Shubik power index」が知られている。
【0004】
非特許文献1の評価手法は,実体同士の直接の影響力を示す指標,たとえば株式の保有関係に基づく影響力を示す指標として用いられている。これを模式的に示すのが
図31である。
図31では,A社乃至D社の株式の保有関係とそれに基づく非特許文献1による影響力の指標値を示している。
図31(a)では,B社およびC社はA社の株式を30%ずつ,D社はA社の株式を40%保有していることを示している。株式会社の株主総会における通常の意思決定は普通決議で行われる。そして,日本の場合,株式会社における株主総会で普通決議が成立するのは,定款で別段の定めがある場合を除いて,議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し,出席した当該株主の議決権の過半数の賛成があった議案である。議決権を行使できる株主がすべて出席した場合であっても,単独で,議決権を行使できる株式の過半数を保有していれば,その会社の意思決定に対して実質的な影響力を及ぼすことができるといえる。
【0005】
図31(a)では,B社乃至D社は,いずれも単独では過半数の株式を保有していない。また,A社の株式の過半数となる組み合わせは,どの組み合わせでも他社と手を組めば成立する。そうすると,A社に対する影響力について,B社乃至D社は均等であり,いずれも1/3ずつとして評価できる。これを模式的に示すのが
図31(b)である。なお,PIは影響力の指数である。影響力の指数の関係を式として示すのが
図31(c)である。
【0006】
このように,非特許文献1の評価手法では,二者の実体の直接的な関係のみについて影響力を評価する手法である。また非特許文献2乃至非特許文献4でも非特許文献1と同様に,直接的な関係のみについての影響力の指数について考察がなされているに過ぎない。
【0007】
なお,非特許文献1乃至非特許文献4のいずれにおいても,株主総会における議決権行使の有無は事前にはわからないことが一般であるため,議決権を行使できる株主は全員出席し,議決権を行使する前提で,実体に対する影響力を算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Shapley, Shubik,”Shapley-Shubik power index”,American Political Science Review, 48, p.787-792, 1954
【非特許文献2】Manfred J. Holler, Hannu Nurmi , ”Power, Voting,and Voting Power:30 Years After”,Springer Link,2013
【非特許文献3】J.M.Gallardo, N. Jimenes, A. Jimenez-Losada,”A Shapley measure of power in hierarchies”,ELSEVIER Inc., 2016
【非特許文献4】Norkhairul Hafiz Bajuri, Shanti Chakravarty, Noor Hazarina Hashim,”ANALYSIS OF CORPORATE CONTROL: CAN THE VOTING POWER INDEX OUTSHINE SHAREHOLDING SIZE?”,AAMJAF, Vol.10, No.1, p75-94,2014
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし,現実社会では,親会社,子会社,孫会社のような支配関係があり,ほかの会社などの実体への影響力が及ぶ構造は,より複雑である。たとえば
図32に示すように,会社間の株式の保有関係をはじめとして,実体同士の関係について,複数の階層があったり,株式の持ち合いのような循環関係を有する場合もある。
図32の場合,A社に対しては,B社乃至D社が直接的に株式を保有して影響力があると評価できるが,C社についてはさらにB社とE社とが株式を保有している。そしてB社がC社の80%の株式を保有し,E社が20%の株式を保有している場合,B社がC社の過半数の株式を保有していることから,C社にはB社のみが影響力を及ぼすことができる。そうすると,A社に対しては,B社が直接保有する30%の株式と,B社が影響力を行使しうるC社を介して保有する30%の株式とで過半数となるので,実質的にはB社のみがA社に対して影響力を行使しうる状態となる。
【0011】
このように,階層構造や循環関係がある場合には,従来の非特許文献1乃至非特許文献4の評価手法で評価することはできなかった。
【0012】
また,特許文献1は,経営上の問題などについて原因分析を行うシステムであって,実体同士の影響力を評価するシステムではない。
【0013】
さらに,特許文献1,非特許文献1乃至非特許文献4などの従来技術を利用しても,階層構造や循環関係がある場合の,中間にある実体の影響力を評価,算出することはできなかった。たとえば,
図32の場合,C社はA社に対して株式を保有しているので影響力があるが,C社は同時に,B社およびE社に株式を保有されており,これらの影響力を受けることとなる。そしてC社が媒介する影響力を評価,算出することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そこで本発明者らは,上記課題に鑑み,実体同士の関係が複雑な場合,たとえば複数の階層を有する場合であっても,実体がほかの実体に対して有する影響力,とくに中間にある実体の影響力を指数化することのできる影響力評価システムを発明した。
【0015】
第1の発明は,実体を示すラベルがノードに,前記実体が有する影響力の方向がエッジに,前記実体がほかの実体に対して有する影響力を示す情報を影響力情報とするネットワーク情報において,処理対象のノードの上位のノードを前記エッジを用いて特定し,前記処理対象のノードのラベルを更新する更新ラベルを,前記影響力情報を用いて前記上位のノードのラベルから特定するラベル更新処理部と,前記特定した更新ラベルを用いて伝播経路を特定してノードにおける中間影響力を算出する中間影響力算出処理部と,前記ノードにおける中間影響力を用いて,前記ノードにおけるラベルが示す実体の影響力を示す評価指数を算出する指数算出処理部と,を有する影響力評価システムである。
【0016】
本発明のように構成することで,実体が他の実体に対してて有する影響力,とくに中間にある実体の影響力を指数化することができる。
【0017】
上述の発明において,前記ラベル更新処理部は,前記上位のノードを有するノードにおいて更新するラベルを,ラベル伝播法を用いて特定する,影響力評価システムのように構成することができる。
【0018】
複数の階層を有するネットワークの場合には,本発明のようにラベル伝播法を用いて更新するラベルを特定することで,実体の影響力を伝播することができ,それによって,ほかの実体への影響力を指数化することができる。
【0019】
上述の発明において,前記ラベル更新処理部は,前記上位のノードを有するノードにおいて更新するラベルを,ランダムサンプリングを用いて特定する,影響力評価システムのように構成することができる。
【0020】
あるノードにおいて,上位のノードのうちどのラベルが影響するかは必ずしも確定的ではない。そこで,本発明のようにランダムサンプリングを用いることで,そのシミュレーションを行うことができる。
【0021】
上述の発明において,前記ラベル更新処理部は,処理対象とするノードの上位のノードについて影響力情報を用いて演算した演算値が,所定の閾値に対する条件を充足した場合に,その上位のノードのラベルを,前記処理対象とするノードの更新ラベルとして特定する,影響力評価システムのように構成することができる。
【0022】
上述の発明において,前記ラベル更新処理部は,処理対象とするノードの上位のノードについて実体ごとに影響力情報を用いて演算し,前記演算した演算値が所定の閾値に対する条件を充足した場合に,その実体のノードのラベルを,前記処理対象とするノードの更新ラベルとして特定する,影響力評価システムのように構成することができる。
【0023】
ほかの実体への影響力の伝播は,これらの発明のような処理を実行することで実現することができる。
【0024】
上述の発明において,前記ラベル更新処理部は,処理対象とするノードの上位のノードについて実体ごとに所定の条件に従ってソートし,前記ソートした順に実体ごとの影響力情報を用いて演算して,その演算値が所定の閾値に対する条件を充足する実体を特定し,前記特定した実体のノードのラベルを,前記処理対象とするノードの更新ラベルとして特定する,影響力評価システムのように構成することができる。
【0025】
上述の発明において,前記ラベル更新処理部は,前記特定した実体のノードが複数ある場合,さらに,前記特定した実体におけるノードを所定の条件に従ってソートし,ソートした順にノードごとの影響力情報を用いて演算して,その演算値が所定の閾値に対する条件を充足するノードを特定し,前記特定したノードを,前記処理対象とするノードへ伝播するノードとして特定する,影響力評価システムのように構成することができる。
【0026】
本発明では伝播経路を特定することで中間影響力を算出している。そのため,複数のノードに跨がって実体がある場合,実体間の影響力の算出では実体を一体としてみなければならないが,伝播経路を特定する場合にはノードごとに特定する必要がある。そこで,これらの発明のように構成することで,実現することができる。
【0027】
上述の発明において,前記中間影響力算出処理部は,前記ノードにおける中間影響力の算出処理をあらかじめ定めた回数実行するまで,前記ノードにおける中間影響力を履歴として記憶させない,または前記指数算出処理部における処理に用いる中間影響力から除外する,影響力評価システムのように構成することができる。
【0028】
実行回数が少ない場合には,実体の影響力は,ネットワークの最上位階層から最下位階層まで及ばない。影響が及ばない間の更新ラベルを用いて算出した中間影響力の履歴を利用して評価指数を算出すると,評価指数の精度に影響が及ぶ場合がある。そこで,あらかじめ定めた回数までの中間影響力は,影響力を示す評価指数の算出には用いない構成とすることがよい。
【0029】
上述の発明において,前記中間影響力算出処理部は,前記ノードにおける中間影響力の算出処理を行う際に,減衰係数を用いてノードにおける中間影響力を算出する,影響力評価システムのように構成することができる。
【0030】
ネットワーク情報が循環している場合,中間影響力を算出できなくなる。そこで,本発明のように減衰係数を用いることで中間影響力の算出を行うことができる。
【0031】
上述の発明において,前記影響力評価システムは,前記ネットワーク情報の入力を受け付けるネットワーク情報入力受付処理部を有しており,前記影響力情報が株式の保有を示す情報である場合,前記ネットワーク情報入力受付処理部は,前記実体が自社株を有するとき,前記入力を受け付けたネットワーク情報について,その自社株による補正処理を行う,影響力評価システムのように構成することができる。
【0032】
影響力情報が株式の保有である場合,実体である会社は自社株を保有している場合もある。そしてその自社株分を考慮しないと処理の精度に影響が及ぶ場合がある。そこで自社株を考慮した補正処理をすることが好ましい。
【0033】
上述の発明において,前記ネットワーク情報入力受付処理部は,前記実体が自社株を有するとき,前記入力を受け付けたネットワーク情報について,前記ノードと前記エッジとを新たに設け,前記新たなエッジには前記実体を示すラベルを,前記新たなエッジは,前記新たなノードから前記ノードへのエッジを付す補正処理を行う,影響力評価システムのように構成することができる。
【0034】
自社株が会社の意思決定に影響を与える場合には,上述の補正処理としては,自社株分について,自らのラベル(ノード)に対する新たなノードとエッジを設けることで,補正処理を行う方法がある。
【0035】
上述の発明において,前記ネットワーク情報入力受付処理部は,前記実体が自社株を有するとき,前記入力を受け付けたネットワーク情報において,前記実体に対するエッジを有するノードのラベルの影響力情報について,前記自社株を控除した影響力情報を算出する補正処理を行う,影響力評価システムのように構成することができる。
【0036】
上述の補正処理としては,自社株が会社の意思決定に影響を与えず,また,当初の影響力情報が自社株を含めている場合,自社株を控除して影響力情報を補正することがよい。
【0037】
上述の発明において,前記指数算出処理部は,前記影響力を示す指数を算出する際に,前記実体の規模を重み付けする演算をして算出する,影響力評価システムのように構成することができる。
【0038】
実体の規模には極めて大きいものから,極めて小さいものまである。そのため,単にほかの実体への影響力に基づいて指数を算出すると,規模の大小にかかわらず,ほかの実体との関係性が多いほど,指数が高くなってしまう。そこで実体の規模を考慮して重み付けをすることで,規模の大きな実体に対する影響力を大きく評価することができる。そのため,より現実社会に近い,影響力の指数を算出することができる。
【0039】
上述の発明において,前記影響力評価システムは,前記ネットワークにおける実体の変更前の前記影響力を示す指数と,前記ネットワークにおける実体の変更後の前記影響力を示す指数との差分を算出する,影響力評価システムのように構成することができる。
【0040】
このようにネットワークにおける実体の変更前後の影響力を示す指数の差分を算出することで,実体の変更にかかる行為,たとえばM&Aの決定などについて評価をすることができる。また第三者に対するバタフライ効果を評価することもできる。
【0041】
第1の発明は,本発明のプログラムをコンピュータに読み込ませて実行することで実現することができる。すなわち,コンピュータを,実体を示すラベルがノードに,前記実体が有する影響力の方向がエッジに,前記実体がほかの実体に対して有する影響力を示す情報を影響力情報とするネットワーク情報において,処理対象のノードの上位のノードを前記エッジを用いて特定し,前記処理対象のノードのラベルを更新する更新ラベルを,前記影響力情報を用いて前記上位のノードのラベルから特定するラベル更新処理部,前記特定した更新ラベルを用いて伝播経路を特定してノードにおける中間影響力を算出する中間影響力算出処理部,前記ノードにおける中間影響力を用いて,前記ノードにおけるラベルが示す実体の影響力を示す評価指数を算出する指数算出処理部,として機能させる影響力評価プログラムである。
【発明の効果】
【0042】
本発明の影響力評価システムを用いることによって,実体同士の関係が複雑な場合,たとえば複数の階層を有する場合であっても,実体がほかの実体に対して有する影響力,とくに中間にある実体の影響力を指数化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】本発明の影響力評価システムのシステム構成を示すブロック図の一例である。
【
図2】本発明の影響力評価システムを実現するコンピュータのハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図3】本発明の影響力評価システムの全体の処理プロセスの一例を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の影響力評価システムのノードにおける更新ラベルの特定処理の処理プロセスの一例を示すフローチャートである。
【
図5】実体同士の影響力の関係性が表現されたネットワーク情報の一例を模式的に示す図である。
【
図6】ネットワーク情報記憶部においてノードごとに中間影響力の履歴を記憶する状態を模式的に示す一例の図である。
【
図7】各ノードのラベルに乱数を付与した状態のネットワーク情報の一例を模式的に示す図である。
【
図8】更新するラベルを特定する状態のネットワーク情報の一例を模式的に示す図である。
【
図9】伝播する経路を特定した状態のネットワーク情報の一例を模式的に示す図である。
【
図10】各ノードの中間影響力を特定した状態のネットワーク情報の一例を模式的に示す図である。
【
図11】ノードのラベルを更新した状態のネットワーク情報の一例を模式的に示す図である。
【
図12】実施例1において,各ノードのラベルに乱数を付与した状態のネットワーク情報の一例を模式的に示す図である。
【
図13】実施例において,伝播する経路を特定した状態のネットワーク情報の一例を模式的に示す図である。
【
図14】実施例1において,各ノードの中間影響力を特定した状態のネットワーク情報の一例を模式的に示す図である。
【
図15】実施例1において,ノードのラベルを更新した状態のネットワーク情報の一例を模式的に示す図である。
【
図16】実施例1において,3回目の反復処理において伝播する経路,更新するラベル,各ノードの中間影響力を特定した状態のネットワーク情報の一例を模式的に示す図である。
【
図17】実施例1において,4回目の反復処理において伝播する経路,更新するラベル,各ノードの中間影響力を特定した状態のネットワーク情報の一例を模式的に示す図である。
【
図18】実施例1において,5回目の反復処理において伝播する経路,更新するラベル,各ノードの中間影響力を特定した状態のネットワーク情報の一例を模式的に示す図である。
【
図19】実施例1において,各実体の評価指数を模式的に示す図である。
【
図20】循環している場合のネットワーク情報の一例を模式的に示す図である。
【
図21】減衰係数を用いた場合の伝播する経路,更新するラベル,各ノードの中間影響力を特定した状態のネットワーク情報の一例を模式的に示す図である。
【
図22】実施例2において,ネットワーク情報として,自社株Eを新たな実体として追加してネットワーク情報を補正する処理の一例を模式的に示す図である。
【
図23】実施例2において,ネットワーク情報として,自社株Eを控除してネットワーク情報を補正する処理の一例を模式的に示す図である。
【
図24】実施例4において,2回目の反復処理において伝播する経路,更新するラベル,各ノードの中間影響力を特定した状態のネットワーク情報の一例を模式的に示す図である。
【
図25】実施例4において,3回目の反復処理において伝播する経路,更新するラベル,各ノードの中間影響力を特定した状態のネットワーク情報の一例を模式的に示す図である。
【
図26】実施例4において,4回目の反復処理において伝播する経路,更新するラベル,各ノードの中間影響力を特定した状態のネットワーク情報の一例を模式的に示す図である。
【
図27】実施例4において,5回目の反復処理において伝播する経路,更新するラベル,各ノードの中間影響力を特定した状態のネットワーク情報の一例を模式的に示す図である。
【
図28】実施例4において,各実体の評価指数を模式的に示す図である。
【
図29】実施例5において,初期状態(売買前)のネットワーク情報の一例を模式的に示す図である。
【
図30】実施例5において,売買後のネットワーク情報の一例を模式的に示す図である。
【
図31】従来の影響力を評価する手法である,「Shapley-Shubik power index」に基づく指標値の算出を模式的に示す図である。
【
図32】実際のモデルにおいて,意思決定への影響力が及ぶ構造の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明の影響力評価システム1では,実体同士の関係性をネットワーク化し,それを数値計算するためにラベル伝搬法を用いてその処理を実行する。
【0045】
本明細書の以下の説明においては,実体同士の関係性を,株式の保有関係としてネットワーク化し,そのネットワークにおいて,ある実体がほかの実体へ有する影響力の評価を行う場合を説明する。この場合の実体としては会社および/または自然人が代表的な例となるが,それらに限らず,実体とは,自然人,会社,人の集合体である団体や組織,ファンド,組合など,ほかの実体の意思決定などに対して関与できる主体を構成できるものであればいかなるものであってもよい。
【0046】
コンピュータはプログラムの演算処理を実行するCPUなどの演算装置70と,情報を記憶するRAMやハードディスクなどの記憶装置71と,ディスプレイなどの表示装置72と,情報の入力を行う入力装置73と,演算装置70の処理結果や記憶装置71に記憶する情報などの各種情報を通信する通信装置74とを有している。なお,コンピュータがタッチパネルディスプレイを備えている場合には表示装置72と入力装置73とが一体的に構成されていてもよい。タッチパネルディスプレイは,携帯電話やスマートフォン,タブレット型コンピュータなどの可搬型通信端末などで利用されることが多いが,それに限定するものではない。
【0047】
タッチパネルディスプレイは,そのディスプレイ上で,直接,所定の入力デバイス(タッチパネル用のペンなど)や指などによって入力を行える点で,表示装置72と入力装置73の機能が一体化した装置である。
【0048】
影響力評価システム1は一台のコンピュータによって実現されていてもよいが,その機能が複数のコンピュータによって実現されていてもよい。この場合のコンピュータとして,たとえばクラウドサーバであってもよい。
【0049】
さらに,本発明の影響力評価システム1における各処理部は,その機能が論理的に区別されているのみであって,物理上あるいは事実上は同一の領域を為していても良い。
【0050】
影響力評価システム1は,ネットワーク情報入力受付処理部10とネットワーク情報記憶部11とラベル更新処理部12と中間影響力算出処理部13と指数算出処理部14とを有する。
【0051】
ネットワーク情報入力受付処理部10は,本発明を用いて影響力の評価を行いたい実体同士の影響力の関係性が表現されたネットワーク構造に関する情報(ネットワーク情報)の入力を受け付ける。実体同士の影響力の関係性は,
図5(a)に示すように,実体をノード(節点),その関係性をエッジ(枝)として表現する。このエッジは影響力を有する方向に有向グラフとして表現する。株式の保有関係による影響力を示す場合には,会社や自然人がノードとなり,株主であるノードからその保有する株式の発行会社のノードに有向グラフがエッジとして付される。またほかの実体への影響力を示す情報(影響力情報)として,株式の保有比率がエッジに対応づけられる。
図5(a)の例は,株式の保有関係をネットワーク構造で示しており,A社の株式をB社およびC社が30%ずつ,E社が40%保有しており,C社の株式をB社が50%,D社が50%保有していることを示している。なお影響力としては,ほかの実体に対するさまざまな影響力があり,リスクによる影響力なども含まれる。
【0052】
図5(a)のネットワーク構造を,本発明の影響力評価システム1によるコンピュータ上での処理を実現するために,ネットワーク情報として具現化した一例を
図5(b)に示す。
図5(b)では,それぞれのノードにN1,N2のようにノードの識別情報(ノード識別情報)が付され,そのノードにある会社や自然人などの実体の識別情報(ラベル)がノード識別情報の値(数値のほか英数字,記号なども含まれる)として代入される。ラベルとしてはネットワーク情報の初期状態のノードに対応づけられた実体の識別情報(初期ラベル)と,当該ノードにおける現在の実体の識別情報(現ラベル)とがノード識別情報の値として代入されているとよい。なお,各ノードに対応づけるラベルとしては,現ラベルだけが値として代入され,ノードごとの初期ラベルは,別途,記憶していてもよい。本明細書での説明では,わかりやすさのために,各ノードのラベルとして,初期ラベルと現ラベルの双方の値が代入されている場合で説明する。
【0053】
それぞれのエッジはE(X,Y)のように表現され,Xが始点となるノード,Yが終点となるノードで示している。また影響力情報,たとえば株式の保有比率がこれらのエッジの値として代入される。なお,ネットワーク構造をネットワーク情報として表現する方法はこれに限定するものではなく,他の方法によるものであってもよい。
【0054】
図5(b)の場合,各ノードについて,N1=Aa,N2=Ee,N3=Bb,N4=Cc,N5=Ddが代入されている。また各エッジについて,E(N2,N1)=40%,E(N3,N1)=30%,E(N4,N1)=30%,E(N3,N4)=50%,E(N5,N4)=50%となる。
図5(b)においては,初期ラベルを大文字で,現ラベルを小文字で表現しているが,それに限定するものではない。本明細書では,わかりやすさのために各ノードについて初期ラベルと現ラベルをそれぞれ値として代入し,初期ラベルを大文字,現ラベルを小文字で示しているが,大文字と小文字で同じ文字は同一の実体を示している。たとえばノードN1について初期状態は,N1=Aaとなるが,仮に,ノードN1にノードN2が伝播する場合,ノードN2の実体はEeであるので,N1=Aeとなる。つまり初期ラベルとしてA,現ラベルとしてeが代入される。これは,ノードN1の初期状態の実体はAであり,伝播した実体(現在のノードN1の実体)はEであることを意味する。上述のように,各ノードについては初期ラベルの値を代入せずに,現ラベルの値を代入しているのでもよい。この場合,N1=aとなるが,これはノードN1の実体はAであることを意味している。このとき各ノードの初期ラベルの値は,適宜,初期値として記憶しておけばよい。
【0055】
ネットワーク情報入力受付処理部10は,初期状態のネットワーク情報の入力を受け付け,初期状態のネットワーク情報を,後述するネットワーク情報記憶部11に記憶させる。なお,ネットワーク情報は,
図5などで示すネットワーク構造を,適宜,コンピュータでの処理に具現化した状態であればよい。
【0056】
ネットワーク情報記憶部11は,ネットワーク情報入力受付処理部10で入力を受け付けたネットワーク情報を記憶する。ネットワーク情報としては,初期状態のネットワーク情報として,ノードとその値(ラベル(初期ラベル,現ラベル)),エッジとそのノード間の影響力情報,たとえば株式の保有比率などを対応づけて記憶している。また,ノードごとの伝播経路に基づく値(中間影響力の値)を履歴として対応づけて記憶している。なお,ノードごとの中間影響力の値に加え,現ラベルの値を履歴として記憶していてもよい。なお,履歴として記憶する現ラベルの値は,上述のノードとその値を履歴に用いてもよい。
図6にネットワーク情報記憶部11のうち,ノードごとの中間影響力の値と現ラベルの値の履歴の一例を模式的に示す。
【0057】
ラベル更新処理部12は,各ノードにおいて,ラベル伝播法により,伝播するノードのラベルを特定する。これは,あるノードにおける実体に対して,当該ノードの直接的な上位のノードにおける実体のうち,どの実体が影響したかを特定するものである。実際は,どの実体が影響したかを,たとえば,ランダムサンプリングによって反復することで実行する。
【0058】
ラベル更新処理部12は,一例として,以下のような処理を実行するが,更新(伝播)するラベル(更新ラベル)を特定できるのであれば,以下の処理に限定するものではない。
【0059】
あるノードと直接繋がる上位のノードに,乱数を付与する。そして上位ノードについて,付与した乱数に基づいて,現ラベルの情報に基づく実体ごとにノードを昇順にソートをする。そして,ソートをしたノードの順に,ノード間の影響力情報,たとえば株式の保有比率を演算(たとえば加算)する。この演算(たとえば加算)した値が所定の閾値,たとえば50%を超えると,その閾値を超えた実体のノードにおけるラベルを,更新ラベルとして特定する。なお,乱数を昇順にソートせずとも,たとえば降順のソートでもよいし,あるいは他の方法であっても,後述する各ノードのラベルの影響力情報を演算する順序をランダムに特定できる方法であれば,如何なる方法であってもよい。また,ノード間の影響力情報は,ソートした順に演算するほか,あらかじめ定めた条件を充足する順番に,影響力情報を任意の演算方法によって演算することで,閾値を超えたラベルを特定してもよい。
【0060】
なお,実体ごとにノードをソートした場合に,影響力情報が閾値を超えた場合の実体に複数のノードがあるときには,さらに,ノードごとに付与した乱数に基づいてソートし,ソートしたノードの順にノード間の影響力情報を,所定の閾値を超えるまで加算すればよい。ラベル更新処理部12における更新ラベルを特定する処理の詳細は後述する。
【0061】
ラベル更新処理部12は,自らより上位のノードを有するすべてのノードについて,更新ラベルの特定処理を実行する。
【0062】
たとえばネットワーク情報が,
図5(b)であったとする。このとき,ノードN1の上位にはノードN2,ノードN3,ノードN4があり,それぞれに,乱数として「0.52」,「0.63」,「0.17」が付与される。また,ほかに自らよりも上位のノードを有するノードは,ノードN4である。そのため,ノードN4の上位のノードN3,ノードN5に,それぞれ乱数として「0.58」,「0.21」を付与する。この状態を模式的に示すのが
図7である。
【0063】
そしてノードN1の上位ノードのノードN2,ノードN3,ノードN4について,それぞれ付与された乱数に基づいて,現ラベルの情報に基づく実体ごとにノードを昇順にソートをし,ノードN4,ノードN2,ノードN3の順に並べる。また,ノードN4の上位ノードのノードN3,ノードN5について,同様に昇順にソートをすると,ノードN5,ノードN3の順に並べる。
【0064】
ノードN1の上位ノードのノードN2,ノードN3,ノードN4について,順に影響力情報を加算をすると,ノードN3からノードN1のエッジE(N3,N1)の影響力情報が30%,ノードN2からノードN1のエッジE(N2,N1)の影響力情報が40%であることから,この時点で閾値50%を超えるので,ノードN1を更新するラベル(更新ラベル)としてノードN2の実体Eの現ラベルeを特定する。また,ノードN4の上位のノードN3,N5について,順に影響力情報を加算をすると,ノードN5からノードN4のエッジ(N5,N4)の影響力情報が50%,ノードN3からノードN4のエッジ(N3,N4)の影響力情報が50%であることから,この時点で閾値50%を超えることので,ノードN4を更新するラベル(更新ラベル)として実体Bの現ラベルbを特定する。これを模式的に示すのが
図8である。
【0065】
ラベル更新処理部12は,ラベル更新処理部12で特定した更新ラベルで,それぞれのノードのラベル(現ラベル)を更新する。
【0066】
ラベル更新処理部12で特定した更新ラベルが
図8であったとすると,
図11のように,ノードのラベル(現ラベル)を更新する。そしてラベル更新処理部12は,更新したラベル(現ラベル)を,ネットワーク情報記憶部11に履歴として記憶する。すなわち,ノードN1について現ラベルをe,ノードN4について現ラベルをbに更新した履歴をネットワーク情報記憶部11に記憶させる。
【0067】
中間影響力算出処理部13は,ラベル更新処理部12で特定した更新ラベルで,伝播するラベルの経路を伝播経路として特定し,各ノードにおける中間影響力を算出する(
図9)。
図9では伝播経路を実線,伝播しなかった経路を破線で示している。また,中間影響力とは,特定した伝播経路における,自らを含めた下位にあるノードの数を用いて算出する演算値である。たとえば,
図9では,ノードN2からノードN1,ノードN3からノードN4にラベルが伝播するので,中間影響力算出処理部13は,伝播経路として,E(N2,N1),E(N3,N4)を伝播経路として特定する。
【0068】
そして,中間影響力算出処理部13は,各ノードにおける中間影響力として,ノードN1=1,ノードN2=2,ノードN3=2,ノードN4=1,ノードN5=1として特定する。すなわち,ノードN1は自らの下に下位のノードがないので中間影響力は1となり,ノードN2は伝播経路として特定された下位のノードにノードN1があるので中間影響力は2となり,ノードN3は伝播経路として特定された下位のノードにノードN4があるので中間影響力は2となり,ノードN4は下位のノードがないので(E(N4,N1)は伝播経路として特定されていない)中間影響力は1となり,ノードN5は下位のノードがないので(E(N5,N4)は伝播経路として特定されていない)中間影響力は1となる(
図10)。
【0069】
なお,ラベル更新処理部12と中間影響力算出処理部13は,並列的に処理を実行してもよいし,先にラベル更新処理をした後,中間影響力算出処理部13の処理を実行してもよい。
【0070】
そしてこのネットワークの状態(
図9の状態)において,再度,ラベル更新処理部12および中間影響力算出処理部13における処理を実行する。このように,後述する
図3のフローチャートにおけるS110乃至S150の処理を,所定回数,たとえば1万回実行する。
【0071】
指数算出処理部14は,ネットワーク情報記憶部11に記憶した,ネットワーク情報記憶部11に記憶したノードごとの中間影響力の履歴に基づいて,本発明による指数として,評価指数(NPF)を算出する。たとえばノードごとの中間影響力の平均値を算出することで,評価指数(NPF)を算出する。
【0072】
たとえば1万回の反復処理を行った結果,
図6に示すネットワーク情報記憶部11におけるノードごとの中間影響力の履歴を用いて,各ノードごとに中間影響力の平均値を算出して,ノードN1についてNPF(N1)=1,ノードN2についてNPF(N2)=1.16,ノードN3についてNPF(N3)=2.12,ノードN4についてNPF(N4)=1.42,ノードN5についてNPF(N5)=1.69と,ノードごとの評価指数を算出することができる。
【0073】
評価指数を算出するにあたっては,各種の算出方法を用いることができるが,たとえば,ノードごとの中間影響力の平均値による場合には,
各ノードのNPF=ノードごとの中間影響力の合計÷反復回数
で算出できる。算出方法については,ノードごとの中間影響力を用いて算出すればこれに限定するものではない。
【0074】
そして指数算出処理部14は,ノードごとの評価指数(NPF)を用いて,当該ノードに対応づけられている初期ラベルの実体の評価指数(NPF)として算出をする。たとえばノードごとの評価指数が上述のとおりであるとすると,ノードN1の初期ラベルはAであるので実体Aの評価指数NPF(A)=1,ノードN2の初期ラベルはEであるので実体Eの評価指数NPF(E)=1.16,ノードN3の初期ラベルはBであるので実体Bの評価指数NPF(B)=2.12,ノードN4の初期ラベルはCであるので実体Cの評価指数NPF(C)=1.42,ノードN5の初期ラベルはDであるので実体Dの評価指数NPF(D)=1.69として算出をする。なお,ノードから実体への評価指数の算出の際に,そのまま値を用いるのではなく,任意の演算を行ってもよい。
【実施例0075】
つぎに本発明の影響力評価システム1の処理プロセスの一例を
図3および
図4のフローチャートを用いて説明する。本実施例においては,株式の保有関係による意思決定への影響力を評価する場合であり,また初期状態のネットワーク情報としては,
図5であるとする。また影響力情報を加算した場合の閾値としては50%とする。
【0076】
オペレータは,処理対象とする
図5に示す初期状態のネットワーク情報(
図5(b))を入力し,それをネットワーク情報入力受付処理部10で受け付ける(S100)。ネットワーク情報入力受付処理部10は,受け付けた初期状態のネットワーク情報をネットワーク情報記憶部11に記憶させる。
【0077】
そしてラベル更新処理部12は,自らより上位のノードを有するすべてのノードについて,更新ラベルの特定処理を実行する(S110)。
【0078】
まず,ラベル更新処理部12は,ノードN1の上位のノードのノードN2,ノードN3,ノードN4に対して,それぞれ乱数を発生させ,たとえば乱数として「0.52」,「0.63」,「0.17」を付与し,ノードN4の上位のノードN3,ノードN5に対して,それぞれ乱数を発生させ,たとえば乱数として「0.58」,「0.21」を付与する(S200)(
図7)。
【0079】
つぎにラベル更新処理部12は,ノードN1の上位ノードN2乃至N4について,それぞれ付与された乱数に基づいて,現ラベルの情報に基づく実体ごとにノードを昇順にソートをし(S210),ノードN4(実体C),ノードN2(実体E),ノードN3(実体B)の順とする。また,ノードN4の上位ノードのノードN3(実体B),ノードN5(実体D)について,同様に昇順にソートをし(S210),ノードN5(実体D),ノードN3(実体B)の順とする。
【0080】
そして,
図8に示すように,ノードN1の上位ノードN2乃至N4について,ソートした順に影響力情報を加算をし(S220),ノードN2からノードN1へのエッジE(N2,N1)の影響力情報を加算した時点で閾値50%を超えるので,ノードN1の更新ラベルとして実体Eの現ラベルeを特定する(S230)。また,ノードN4の上位ノードN3およびN5について,ソートした順に影響力情報に基づいて加算をし(S220),ノードN3からノードN4へのエッジE(N3,N4)の影響力情報を加算した時点で閾値50%を超えるので,ノードN4の更新ラベルとして実体Bの現ラベルbを特定する(S230)。
【0081】
以上のようにラベル更新処理部12において,上位のノードがあるすべてのノードについての更新ラベルを特定すると,つぎに当該特定した実体(現ラベル)に複数のノードがあるかを判定する(S240)。ここでは,ノードN1の上位のノードの処理において特定した実体Eは一つのノード(ノードN2)のみであるので,複数のノードはないと判定する(S240)。また,ノードN4の上位のノードの処理において特定した実体Bは一つのノード(ノードN3)のみであるので,複数のノードはないと判定する(S240)。
【0082】
ラベル更新処理部12において更新ラベルを特定すると,中間影響力算出処理部13は,伝播する経路を特定する(S120)。すなわち,
図8の場合,ノードN2からノードN1のエッジE(N2,N1),ノードN3からノードN4のエッジE(N3,N4)を伝播する経路として特定する(
図9)。
【0083】
そして中間影響力算出処理部13は,各ノードについての中間影響力を算出し,ネットワーク情報記憶部11に,各ノードの中間影響力を履歴として記憶させる(S130)。
図9のネットワーク情報では,ノードN1について1,ノードN2について2(ノードN2がノードN1に伝播しており,ノードN2を含む下位のノード数がノードN2とノードN1の2),ノードN3について2(ノードN3がノードN4に伝播しており,ノードN3を含む下位のノード数がノードN3とノードN4の2),ノードN4について1,ノードN5について1として特定する(
図10)。
【0084】
また,ラベル更新処理部12は,更新ラベルでノードのラベル(現ラベル)を更新し(
図11),ネットワーク情報記憶部11に,各ノードのラベル(現ラベル)を履歴として記憶させる(S140)。すなわち,ネットワーク情報記憶部11に,ノードN1について現ラベルe,ノードN2について現ラベルe,ノードN3について現ラベルb,ノードN4について現ラベルb,ノードN5について現ラベルdを履歴として記憶させる。
【0085】
仮に,所定回数として1万回の反復処理を行うとすると,処理を実行したのが1回目であるので,再度,S110以降の処理を反復する(S150)。すなわち,
図11のネットワーク情報の状態において,再度,S110以降の処理を実行する。
【0086】
ラベル更新処理部12は,上述と同様に,自らより上位のノードを有するすべてのノードについて,更新ラベルの特定処理を実行する(S110)。
【0087】
ラベル更新処理部12は,ノードN1の上位のノードのノードN2,ノードN3,ノードN4に対して,それぞれ乱数を発生させて,乱数として「0.15」,「0.59」,「0.38」を付与し,ノードN4の上位のノードN3,ノードN5に対して,それぞれ乱数を発生させて,乱数として「0.98」,「0.08」を付与する(S200)。この状態のネットワーク情報が
図12(a)である。
【0088】
つぎにラベル更新処理部12は,ノードN1の上位ノードN2乃至N4について,それぞれ付与された乱数に基づいて,現ラベルの情報に基づく実体ごとにノードを昇順にソートをする(S210)。ここで,ノードN3とノードN4の現ラベルはいずれもbであり,同一の実体Bである。そのため,ノードN3とノードN4については,ノードのソートをするとき(ノードを順に並べる時)には同一の実体Bとして取り扱う。このときにはノードN3とノードN4のいずれか一方の乱数を採用してもよいし,平均値を採用してもよいし,如何なる方法で定めてもよい。たとえばここでは,いずれか小さい乱数を採用するとする(
図12(b))。そうすると,ノードN3とノードN4については昇順のときには同一の乱数として「0.38」を付与し,以下の昇順の際には一つの実体として処理を行えるようにする。
【0089】
すなわち,ラベル更新処理部12は,まず,ノードN1の上位ノードN2乃至N4について,それぞれ現ラベルの情報に基づく実体ごとに,付与された乱数に基づいて昇順にソートをする(S210)。ここでは,ノードN2の乱数が「0.15」,ノードN3とノードN4の組み合わせの乱数が「0.38」であるから,ノードN2(実体E),ノードN3とノードN4の組み合わせ(実体B)の順にソートできる。そして,ノードN2からノードN1のエッジE(N2,N1)の影響力情報は40%であり閾値を超えていない。つぎのノードN3とノードN4の組み合わせの影響力情報は,ノードN3からノードN1のエッジE(N3,N1)の影響力情報とノードN4からノードN1のエッジ(N4,N1)の影響力情報との合計の60%である。したがってこの時点で閾値を超えるので,ノードN3とノードN4の組み合わせ(実体B)の現ラベルbを,ノードN1の更新ラベルとして特定できる(
図12(b))。
【0090】
以上のようにラベル更新処理部12において,上位のノードがあるすべてのノードについての更新ラベルを特定すると,つぎに当該特定した実体(現ラベル)に複数のノードがあるかを判定する(S240)。ここでは,ノードN1の上位のノードの処理において特定した実体Bは二つのノード(ノードN3,ノードN4)であるので,複数のノードがあると判定する(S240)。
【0091】
この場合,複数のノードがある(同一の実体として組み合わせが用いられている)ので,このままでは伝播経路が特定できないことから,さらに,ラベル更新処理部12は,同一の実体における各ノード,すなわちノードN3とノードN4でのソートをする(S250)。すなわち,ノードN3とノードN4との組み合わせにおいて,ノードN3とノードN4に元々付与されたノードごとの乱数に基づいてソートをする。そうすると,ノードN3の「0.59」とノードN4の「0.38」で昇順にソートをするので,ノードN4,ノードN3の順となる。したがって,ノードN1の上位のノードN2乃至N4について昇順にソートをすると,ノードN2,ノードN4,ノードN3の順となり,それぞれ順に影響力情報を閾値を超えるまで加算すると(S260),ノードN4からノードN1のエッジ(E(N4,N1))の影響力情報の時点で閾値を超えるので,ノードN1に伝播する更新ラベルのノードとしてノードN4を特定する(
図12(c))(S270)。
【0092】
また,ラベル更新処理部12は,ノードN4の上位ノードのノードN3,ノードN5について,同様に昇順にソートをし(S210),ノードN5,ノードN3の順とする。そして,ノードN4の上位ノードN3およびN5について,ソートした順に影響力情報に基づいて加算をし(S220),ノードN3からノードN4のエッジE(N3,N4)を加算した時点で閾値50%を超えるので,ノードN4の更新ラベルとして現ラベルbを特定する(S230)。そして,ノードN4の上位のノードの処理において特定した実体Bは一つのノード(ノードN3)のみであるので,複数のノードはないと判定する(S240)。
【0093】
以上のようにラベル更新処理部12において,上位のノードがあるすべてのノードについての更新ラベルを特定する処理を実行すると,中間影響力算出処理部13は,伝播する経路を特定する(S120)。すなわち,
図12の場合,ノードN1への伝播経路は,S270で特定したノードからの経路であるノードN4からノードN1のエッジE(N4,N1)を伝播する経路として特定し,ノードN4への伝播経路は,ノードN3からノードN4のエッジE(N3,N4)を特定する(
図13)。
【0094】
そして中間影響力算出処理部13は,各ノードについての中間影響力を算出し,ネットワーク情報記憶部11に,各ノードの中間影響力を履歴として記憶させる(S130)。
図13では,ノードN1について1,ノードN2について1,ノードN3について3(ノードN3がノードN4に伝播しており,さらにノードN4がノードN1に伝播しているので,ノードN3を含む下位のノード数がノードN3,ノードN4,ノードN1の3),ノードN4について2(ノードN4がノードN1に伝播しており,ノードN4を含む下位のノード数がノードN4,ノードN1の2),ノードN5について1と算出する(
図14)。
【0095】
また,ラベル更新処理部12は,更新ラベルでノードのラベル(現ラベル)を更新し(S140),ネットワーク情報記憶部11に,各ノードのラベル(現ラベル)を履歴として記憶させる(S140)。すなわち,ネットワーク情報記憶部11に,ノードN1について現ラベルb,ノードN2について現ラベルe,ノードN3について現ラベルb,ノードN4について現ラベルb,ノードN5について現ラベルdを履歴として記憶させる。この状態のネットワーク情報が
図15である。
【0096】
仮に,所定回数として1万回の反復処理を行うとすると,処理を実行したのが2回目であるので,再度,S110以降の処理を反復する(S140)。すなわち,
図15の状態において,S110からS130までの処理を反復する。
【0097】
たとえば,3回から5回の反復処理を実行した後のネットワーク情報,ノードごとの現ラベルと中間影響力が
図16乃至
図18であったとする。
図16は3回目の反復処理であり,ノードN1についてノードN3の現ラベルbが伝播し(伝播経路はE(N3,N1),ノードN4についてノードN5の現ラベルdが伝播した場合である(伝播経路はE(N5,N4))。このときの各ノードの現ラベルと中間影響力は,ノードN1の現ラベルがb,中間影響力が1,ノードN2の現ラベルがe,中間影響力が1,ノードN3の現ラベルがb,中間影響力が2,ノードN4の現ラベルがd,中間影響力が1,ノードN5の現ラベルがd,中間影響力が2となる。
【0098】
図17は4回目の反復処理であり,ノードN1についてノードN2の現ラベルeが伝播し(伝播経路はE(N2,N1),ノードN4についてノードN5の現ラベルdが伝播した場合である(伝播経路はE(N5,N4))。このときの各ノードの現ラベルと中間影響力は,ノードN1の現ラベルがe,中間影響力が1,ノードN2の現ラベルがe,中間影響力が2,ノードN3の現ラベルがb,中間影響力が1,ノードN4の現ラベルがd,中間影響力が1,ノードN5の現ラベルがd,中間影響力が2となる。
【0099】
図18は5回目の反復処理であり,ノードN1についてノードN4の現ラベルdが伝播し(伝播経路はE(N4,N1),ノードN4についてノードN5の現ラベルdが伝播した場合である(伝播経路はE(N5,N4))。このときの各ノードの現ラベルと中間影響力は,ノードN1の現ラベルがd,中間影響力が1,ノードN2の現ラベルがe,中間影響力が1,ノードN3の現ラベルがb,中間影響力が1,ノードN4の現ラベルがd,中間影響力が2,ノードN5の現ラベルがd,中間影響力が3となる。
【0100】
このように,S110乃至S140までの処理を所定回数反復した後(S150),指数算出処理部14は,ネットワーク情報記憶部11に記憶した,各ノードの中間影響力の履歴に基づいて,ノードごとに中間影響力の平均値を算出するなど,中間影響力を用いた所定の算出方法により,ノードごとの評価指数(NPF)を算出する(S160)。これによって,各ノードの評価指数(NPF)を,当該ノードに対応づけられた初期ラベルの実体の評価指数として算出する。
【0101】
たとえば1万回の処理をした結果,ノードN1についての評価指数(NPF)が1,ノードN2についての評価指数(NPF)が1.16,ノードN3についての評価指数(NPF)が2.12,ノードN4についての評価指数(NPF)が1.42,ノードN5についての評価指数(NPF)が1.69であったとき,各ノードに対応づけられた初期ラベルの実体の評価指数(NPF)として,実体A(ノードN1)についてNPF(A)=1,実体B(ノードN3)についてNPF(B)=2.12,実体C(ノードN4)についてNPF(C)=1.42,実体D(ノードN5)についてNPF(D)=1.69,実体E(ノードN2)についてNPF(E)=1.16と,それぞれの実体ごとの評価指数(NPF)を算出できる。これを模式的に示すのが
図19である。
【0102】
なお,上述のS110乃至S150の処理において,任意のタイミングで,各ノードにおける現ラベルを,初期ラベルに基づいて初期状態に戻すようにしてもよい。これによって,初期値依存性によるローカルミニマム問題の発生を回避することができる。
【0103】
各ノードの現ラベルを初期状態に戻すには,たとえば,S110の処理の前に,乱数pを発生させ,その乱数pが初期化基準値に関する条件を充足した場合には各ノードの現ラベルを初期ラベルに戻すようにしてもよい。たとえば乱数pが0≦p≦1のとき,初期状態に戻すための初期化基準値の条件として0≦p≦0.005とすると,乱数pが0≦p≦0.005のときには,各ノードの現ラベルを初期ラベルに戻して,それを更新ラベルとして特定する。一方,乱数p>0.005のときにはS200以降の処理を実行して更新ラベルを特定するようにしてもよい。
【0104】
なお,初期化基準値については任意に設定することができる。
【0105】
また,ネットワーク情報において,ネットワークの最上位階層から最下位階層まで実体の影響力が伝播するのは,所定回数の試行が必要である。そのため,初回からあらかじめ定めた回数,たとえば19回程度までは,S110乃至S150の処理を実行するものの,算出した中間影響力を履歴として記憶しないようにしてもよい。あるいは記憶しても,評価指数の算出に用いる中間影響力の履歴から除外するようにしてもよい。なお所定回数としては,ネットワークの階層数などの大きさに基づいて,逐次,設定することができる。
【0106】
なお,各実体のネットワーク情報が
図20に示すように循環する場合,中間影響力算出処理部13で各ノードにおける中間影響力が循環してしまうこととなる。そこで,中間影響力の特定にあたり,減衰係数qを用いてもよい。すなわち,中間影響力を特定するにあたり,自らを1,その下位を1×q,その下位を1×q×qとして,減衰係数を乗算した値を合計する。たとえば,
図20の実体Aのあるノードを基準とし,減衰係数q=0.85とした場合(小数第3位を四捨五入),実体Aのあるノードは1,その下位の実体Bのあるノードは0.85,その下位の実体Cのあるノードは0.72,その下位の実体Dのあるノードは0.61,その下位の実体Eのあるノードは0.52となる。そして指数算出処理部14が,それらの各値を加算することで実体Aのあるノードの中間影響力は3.7となるから,実体Aの評価指数(NPF(A))は3.7となる。なお,小数第3位を四捨五入して計算をしている。
【0107】
また,ネットワーク情報が
図18の場合,
図21に示すように,各ノードの中間影響力は,ノードN1の中間影響力が1,ノードN2の現ラベルがe,中間影響力が1,ノードN3の中間影響力が1,ノードN4の中間影響力が1.85(=1+1×0.85),ノードN5の中間影響力が2.57(=1+1×0.85+1×0.85×0.85)となり,これらを各ノードの中間影響力の履歴としてネットワーク情報記憶部11に記憶させる。
【0108】
なお,ネットワーク情報が循環しない場合であっても減衰係数qを用いてもよいことは当然である。また,減衰係数qとしては0.85が一例としてあげられるが,それに限定するものではなく,0<q<1であればよい。たとえば減衰係数qが0.5のときには3程度まで下流をみることとなり,減衰係数qが0.85のときには12程度まで下流を見ることとなる。
また,自社株については,上述のほか,以下のように処理をしてもよい。すなわち,影響力情報を示す株式の保有比率について,自社株を除く発行済株式のうち,議決権行使できる株式の保有比率で影響力情報を算出してもよい。
さらに,いわゆる黄金株(株主総会における特定の決議事項について拒否権を行使できる株式),複数議決権付き株式,無議決権株式などの会社の意思決定に影響を及ぼす種類株式を発行している会社の場合,影響力情報は,株式の保有比率のみに基づいて定められるものではない。そのため,その種類株式を考慮した上で,影響力情報を補正をした上で,ネットワーク情報の初期状態とし,ネットワーク情報入力受付処理部10に入力をしてもよい。