(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051506
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】温度校正システム、検査装置および温度校正方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20230404BHJP
G01K 15/00 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
H01L21/66 B
G01K15/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021162244
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】太田 智浩
(72)【発明者】
【氏名】河西 繁
(72)【発明者】
【氏名】村田 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】藤井 郁也
【テーマコード(参考)】
2F056
4M106
【Fターム(参考)】
2F056XA07
4M106AA01
4M106BA01
4M106DD10
4M106DD23
4M106DH14
4M106DH15
4M106DH44
4M106DH45
4M106DH46
4M106DJ02
4M106DJ04
4M106DJ05
4M106DJ19
4M106DJ27
(57)【要約】
【課題】載置部に設けられる複数の温度センサの測定値を精度よく校正することができる技術を提供する。
【解決手段】温度校正システムは、載置部に載置した被検査体の温度を調整して被検査体を検査する検査装置と、表面温度計と、を有し、載置部に設けられた複数の温度センサの校正を行う。検査装置は、載置部をX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に移動可能な移動部と、複数の温度センサの測定値に対して校正処理を行う制御部と、を有する。表面温度計は、載置部の載置面に接触して当該載置面の表面温度を検出する。制御部は、移動部を制御して載置部の載置面の検出位置に表面温度計を接触させ、表面温度計により検出位置の表面温度を検出し、当該表面温度に基づき検出位置に対応する温度センサの測定値を校正する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
載置部に載置した被検査体の温度を調整して前記被検査体を検査する検査装置と、表面温度計と、を有し、前記載置部に設けられた複数の温度センサの校正を行う温度校正システムであって、
前記検査装置は、
前記載置部をX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に移動可能な移動部と、
前記複数の温度センサの測定値に対して校正処理を行う制御部と、を有し、
前記表面温度計は、前記載置部の載置面に接触して当該載置面の表面温度を検出し、
前記制御部は、前記移動部を制御して前記載置部の前記載置面の検出位置に前記表面温度計を接触させ、前記表面温度計により前記検出位置の表面温度を検出し、当該表面温度に基づき前記検出位置に対応する前記温度センサの測定値を校正する、
温度校正システム。
【請求項2】
前記表面温度計は、
前記載置面に接触する接触体と、
前記接触体よりも外側に突出し、前記載置面に接触した際に弾性変形可能な検出子と、を含む、
請求項1に記載の温度校正システム。
【請求項3】
前記接触体は、前記検出子の一部を内側に収容する環状に形成されており、
前記検出子は、前記接触体の肉厚よりも薄い板状に形成されている、
請求項2に記載の温度校正システム。
【請求項4】
前記表面温度計は、前記載置部の周囲に設けられる複数の支柱に固定される治具に取り付けられ、前記載置面よりも上方に配置されている、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の温度校正システム。
【請求項5】
前記治具は、前記表面温度計をZ軸方向に変位可能に保持する逃げ構造を有し、
前記逃げ構造は、前記表面温度計と前記載置面とが接触した際に、前記載置面から受ける押圧力を逃がす、
請求項4記載の温度校正システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記検出位置の前記温度センサと、前記表面温度計が検出した前記検出位置の表面温度と、を紐づけて記憶する記憶装置を有する、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の温度校正システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記校正処理において、温調機構により複数の目標温度毎に前記測定値の校正を行い、前記複数の目標温度毎の校正結果に基づき前記複数の温度センサ毎の検量線を得る、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の温度校正システム。
【請求項8】
前記複数の温度センサは、前記載置面において温度が安定化する安定領域に少なくとも1つ設けられ、
前記制御部は、前記校正処理において、前記安定領域の温度センサの測定値に基づき前記載置部の温度を制御する、
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の温度校正システム。
【請求項9】
前記表面温度計の検出値は、国家標準に準じる値に校正されている、
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の温度校正システム。
【請求項10】
前記複数の温度センサは、少なくとも1つの基準用センサを有し、
前記制御部は、前記基準用センサが測定した基準値と、前記基準用センサ以外の前記複数の温度センサが測定した測定値とを比較し、前記基準値に対して前記測定値が所定以上ずれている場合に、当該測定値がずれている温度センサの異常を判定する、
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の温度校正システム。
【請求項11】
前記基準用センサは、前記載置面において温度が安定化する安定領域に設けられている、
請求項10に記載の温度校正システム。
【請求項12】
被検査体を検査する検査装置であって、
前記被検査体を載置し、当該被検査体の温度を調整する載置部と、
前記載置部に設けられる複数の温度センサと、
前記載置部をX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に移動可能な移動部と、
前記複数の温度センサの測定値に対して校正処理を行う制御部と、を有し、
前記載置部の載置面に接触して当該載置面の表面温度を検出する表面温度計を備え、
前記制御部は、前記移動部を制御して前記載置部の前記載置面の検出位置に前記表面温度計を接触させ、前記表面温度計により前記検出位置の表面温度を検出し、当該表面温度に基づき前記検出位置に対応する前記温度センサの測定値を校正する、
検査装置。
【請求項13】
載置部に載置した被検査体の温度を調整して前記被検査体を検査する検査装置と、表面温度計と、を有し、前記載置部に設けられた複数の温度センサの校正を行う温度校正方法であって、
前記載置部の温度を調整する第1工程と、
X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に移動可能な移動部により前記載置部を移動させて、前記載置部の載置面の検出位置に前記表面温度計を接触させる第2工程と、
前記載置面の前記検出位置の表面温度を前記表面温度計により検出し、当該表面温度に基づき前記検出位置に対応する前記温度センサの測定値を校正する第3工程と、を有し、
前記第1工程を行っている最中に、前記複数の温度センサの全てに対して前記第1工程および前記第2工程を繰り返す、
温度校正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、温度校正システム、検査装置および温度校正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被検査体であるウエハの電気的検査を行う検査装置は、プローブ装置の載置部に設けられたチャックによりウエハを保持して、当該ウエハを搬送する。この種の検査装置は、ウエハを載置する載置部の載置面の温度を温度センサにより測定しつつ、チャック内のヒータ(温調機構)により載置面の温度を調整するものが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、載置部に載置される基板(ウエハ)上に設けられる複数の測温抵抗体(温度センサ)と、プローブを介して基板の測温抵抗体の抵抗値(温度)を計測して載置部のヒータの温度を調整する制御部と、を有する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、載置部に設けられる複数の温度センサの測定値を精度よく校正することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、載置部に載置した被検査体の温度を調整して前記被検査体を検査する検査装置と、表面温度計と、を有し、前記載置部に設けられた複数の温度センサの校正を行う温度校正システムであって、前記検査装置は、前記載置部をX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に移動可能な移動部と、前記複数の温度センサの測定値に対して校正処理を行う制御部と、を有し、前記表面温度計は、前記載置部の載置面に接触して当該載置面の表面温度を検出し、前記制御部は、前記移動部を制御して前記載置部の前記載置面の検出位置に前記表面温度計を接触させ、前記表面温度計により前記検出位置の表面温度を検出し、当該表面温度に基づき前記検出位置に対応する前記温度センサの測定値を校正する、温度校正システムが提供される。
【発明の効果】
【0007】
一態様によれば、載置部に設けられる複数の温度センサの測定値を精度よく校正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る検査装置の一例を示す水平断面図である。
【
図2】
図1の検査装置のII-II線断面図である。
【
図3】
図1の検査装置のY軸方向に沿った断面図である。
【
図4】各検査空間に設けられるプローバを示す概略説明図である。
【
図5】プローバに設けられるチャックの構成を示す斜視図である。
【
図6】チャックの各温度センサの設置状態を示す概略平面図である。
【
図8】治具の表面温度計およびその周辺構造を示す断面図である。
【
図9】温度校正システムの表面温度計の校正を示すブロック図である。
【
図10】プローバ制御部の機能ブロックを示すブロック図である。
【
図11】温度校正方法の処理フローを示す第1フローチャートである。
【
図12】温度校正方法の処理フローを示す第2フローチャートである。
【
図13】第2実施形態に係る温度校正システムのチャックの概略平面図である。
【
図14】センサ故障検知方法の処理フローを示すフローチャートである。
【
図15】第3実施形態に係る温度校正システムを備える検査装置を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態に係る検査装置1の一例を示す水平断面図である。
図2は、
図1の検査装置1のII-II線断面図である。
図3は、
図1の検査装置1のY軸方向に沿った断面図である。
【0011】
図1に示すように、検査装置1は、被検査体の一例である半導体基板(ウエハW)に対して電気的検査を行う装置である。検査装置1は、例えば、ウエハWを製造する工場のクリーンルーム内に配置される。この検査装置1は、複数の検査室11を有する検査部10と、検査部10にウエハWを搬送するローダ部20と、を有する。検査部10およびローダ部20はY軸方向に連なっている。
【0012】
検査部10の複数の検査室11同士は、隔壁12によって相互に仕切られている。検査部10は、複数の検査室11の各々に検査ユニット40を備え、それぞれの検査ユニット40においてウエハWの電気的検査を行う。また、各検査室11の前面(Y軸正方向)には、ローダ部20との間でウエハWを搬入出するための搬送口13と、搬送口13を開閉するシャッタ14と、が設けられている。各検査室11の背面(Y軸負方向)側には、当該検査室11の各々に連通し、各検査ユニット40を制御するセルコントロールユニット15が設けられている。セルコントロールユニット15は、例えば、ソレノイド、バキュームセンサ、電空レギュレータ、E-IOM基板、温調器などを有する(共に不図示)。
【0013】
ローダ部20は、載置台21と、搬入出部22と、検査部10および搬入出部22の間に設けられる搬送室部23と、を有する。載置台21は、複数のウエハWを収容する容器であるFOUP21fを載置する。搬入出部22は、プローブカード24(
図3参照)を搬入出するためのプローブカードローダ25と、ウエハWの位置合わせを行う位置合わせ部26と、を備える。プローブカードローダ25と位置合わせ部26はX軸方向に沿って互いに隣接している。また、搬入出部22の内部には、検査装置1の制御ユニット9が設けられている。搬送室部23は、ウエハWを搬送する搬送機構27を有する。
【0014】
さらに、検査装置1は、検査部10に対して冷媒を供給するとともに、検査部10から冷媒を排出する冷媒部30を備える。冷媒部30は、冷媒配管31と、冷媒配管31に冷媒を供給する冷媒出力部32と、冷媒の温度を調整する熱交換器33と、検査部10から排出される冷媒を処理する排熱処理部34を有している。冷媒配管31は、検査装置1の外部と検査装置1の筐体2内との間を延在し、冷媒出力部32、熱交換器33および排熱処理部34に接続されている。
【0015】
図2に示すように、検査部10は、X軸方向に沿って4つの検査室11が並んだ検査室列16を備えるとともに、この検査室列16をZ軸方向(鉛直方向)に沿って3段配置している。つまり、検査装置1は、12室の検査室11を有し、これらの検査室11の各々に対して検査ユニット40を備える。
【0016】
各段の検査室列16は、隔壁12の一部を切り欠くことで、X軸方向に沿って4つの検査室11を連通しており、一つの略密閉した検査空間17を形成している。すなわち、検査部10は、Z軸方向の検査室列16に応じて、上段検査空間17a、中段検査空間17b、下段検査空間17cを有する。上段検査空間17aと中段検査空間17bとの間、中段検査空間17bと下段検査空間17cとの間、下段検査空間17cの下には、冷媒部30の冷媒配管31が配置される冷媒配管用空間18が形成されている。冷媒配管用空間18の冷媒配管31は、上段検査空間17a、中段検査空間17b、下段検査空間17cのそれぞれに対応して1本ずつ配設され、各検査室列16内の4つの検査ユニット40を直列に接続している。
【0017】
上段検査空間17a、中段検査空間17b、下段検査空間17cの各々には、X軸方向に移動可能な1台のプローバ50(ステージ)が設けられている。プローバ50は、検査室列16の各検査ユニット40の下方に設けられ、X軸方向に並ぶ各検査ユニット40に対してウエハWを搬送する。また、上段検査空間17a、中段検査空間17b、下段検査空間17cの各々には、X軸方向に沿って移動可能な1台のアライメント用のカメラ19が設けられている。
【0018】
図3に示すように、搬送室部23の搬送機構27は、マトリクス状に配置された複数の検査室11に対応して、X軸方向およびZ軸方向に移動可能となっている。搬送機構27は、ウエハWを支持する搬送アーム271と、搬送アーム271を回転させる回転駆動部272と、回転駆動部272を支持するベース部273と、を含む。
【0019】
搬送機構27は、搬送アーム271のY軸方向の進退およびθ軸方向の回転によって、FOUP21fから検査前のウエハWを受け取って各段のプローバ50へウエハWを受け渡すとともに、検査後のウエハWを受け取ってFOUP21fへ戻す。さらに、搬送機構27は、各検査ユニット40からメンテナンスを必要とするプローブカード24をプローブカードローダ25へ搬送するとともに、新規またはメンテナンス済みのプローブカード24を各検査ユニット40へ搬送する。
【0020】
各検査室11の各々に設けられる各検査ユニット40は、テスタ41、プローブカード24およびベローズ42を有する。テスタ41は、支持プレート(不図示)を介してプローブカード24を支持し、コンタクトブロック(不図示)およびプローブカード24の複数のプローブ24aを介して、ウエハWに形成された複数のデバイスに検査信号を送信する。ベローズ42は、プローブカード24を囲むように支持プレートから垂下しており、プローバ50のチャック70上に載置されたウエハWに複数のプローブ24aを接触させた状態で、プローブカード24とウエハWを含む密閉空間を形成する。検査ユニット40は、図示しないバキュームラインを介してベローズ42で囲われた密閉空間を真空引きすることにより、プローブカード24、チャック70を支持プレートに吸着する。
【0021】
図4は、各検査空間17に設けられるプローバ50を示す概略説明図である。
図4に示すように、検査装置1は、検査部10を構成し、プローバ50を支持するフレーム構造51を有する。フレーム構造51に設置されたプローバ50は、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向にウエハWを搬送する。プローバ50は、移動部56(X軸移動機構57、Y軸移動機構58、Z軸移動機構59)、チャック70、プローバ制御部80およびモータドライバ90を有する。チャック70は、適宜の保持手段(真空吸着、メカニカルチャック、静電吸着など)により、その上面においてウエハWを保持する。
【0022】
フレーム構造51は、移動部56を支持する上ベース52と、プローバ制御部80およびモータドライバ90を支持する下ベース53と、上ベース52や下ベース53の四隅に設けられる複数の支柱54と、を含む2段構造を呈している。例えば、上ベース52よりも上方の空間は検査空間17に配置され、プローバ制御部80を有する上ベース52と下ベース53間の空間は冷媒配管用空間18に配置される。
【0023】
移動部56のX軸移動機構57は、上ベース52の上面に固定されてX軸方向に沿って延在する複数のガイドレール57aと、各ガイドレール57a上にわたって配置されるX軸可動体57bと、を含む。X軸可動体57bは、図示しないX軸動作部(モータ、ギア機構など)を内部に有し、このX軸動作部はモータドライバ90に接続されている。X軸可動体57bは、モータドライバ90からの電力供給に基づきX軸方向を往復動する。
【0024】
同様に、Y軸移動機構58は、X軸可動体57bの上面に固定されてY軸方向に沿って延在する複数のガイドレール58aと、各ガイドレール58a上にわたって配置されるY軸可動体58bと、を含む。Y軸可動体58bも、図示しないY軸動作部(モータ、ギア機構など)を内部に有し、このY軸動作部はモータドライバ90に接続されている。Y軸可動体58bは、モータドライバ90からの電力供給に基づきY軸方向を往復動する。
【0025】
Z軸移動機構59は、Y軸可動体58bに設置されるとともに、上部においてチャック70を離脱可能に係合している。Z軸移動機構59は、チャック70をZ軸方向(鉛直方向)に変位させることで、チャック70に載置されたウエハWを昇降させる。
【0026】
このように構成されたプローバ50は、プローバ制御部80の指令を受けたモータドライバ90からX軸移動機構57、Y軸移動機構58、Z軸移動機構59の各々に適宜の電力を供給することで、チャック70を所望の3次元位置に移動させる。
【0027】
図5は、プローバ50に設けられるチャック70の構成を示す斜視図である。
図5に示すように、チャック70は、載置されるウエハWの形状に応じて、円盤状に形成されている。また、本実施形態に係るチャック70は、真空吸着によりウエハWを支持するとともに、ウエハWを温調する機能を有する。具体的には、チャック70は、鉛直方向下側から上側に向かって順に、ベースプレート71、スペーサ72、温調機構73、均熱プレート74およびトッププレート75を積層して構成されている。
【0028】
ベースプレート71は、最下層に設けられ、チャック70をZ軸移動機構59に取り付ける。ベースプレート71の内部には、ウエハWを真空吸着するための吸引流路(不図示)が設けられ、この吸引流路は、Z軸移動機構59の内部に設けられた吸引機構64(
図4参照)に接続されている。また、吸引流路は、ベースプレート71の上面に形成された複数の孔部76に連通している。各孔部76は、温調機構73、均熱プレート74にも貫通形成され、トッププレート75の吸着凹部75aに連通している。つまり、吸引機構64は、吸引流路および各孔部76を介してトッププレート75上に陰圧を付与することで、トッププレート75上でウエハWを保持する。
【0029】
スペーサ72は、ベースプレート71の外周部の対向位置を周回するリング状に形成され、ベースプレート71と温調機構73との間に断熱空間を形成する。
【0030】
温調機構73は、円板状のジャケット731と、ジャケット731内に設けられる冷媒流路およびヒータ(共に不図示)とを有する。ジャケット731は、冷媒部30の冷媒配管31が接続される冷媒ポート732を、外周部の所定箇所に備える。冷媒流路は、冷媒ポート732に連通し、かつジャケット731の面方向(水平方向)に沿って周回、蛇行または渦状に延在している。冷媒流路は、冷媒ポート732に接続された冷媒配管31からの冷媒の流入出に基づき、ジャケット731内で冷媒を流通させて、ジャケット731全体を冷却する。
【0031】
ヒータは、例えば、電熱線が適用され、ジャケット731内の冷媒流路の間または冷媒流路の上方に配置され、ジャケット731の面方向に沿って周回、蛇行または渦状に延在している。ヒータは、プローバ制御部80の温度コントローラ(不図示)に電気的に接続されており、プローバ制御部80から電力が供給されることで、ジャケット731を加熱する。温度コントローラは、例えば、PID制御用回路によってヒータの温度を目標温度に合わせる。
【0032】
また、温調機構73は、チャック70の平面視で、複数の領域を個別に温調可能としている。例えば、温調機構73は、平面円形のチャック70を略90°間隔毎に4分割した領域を設定して、各領域にヒータおよび冷媒流路を独立的に配している。これにより、プローバ制御部80は、温調機構73により4つの領域毎に温度を調整できる。
【0033】
均熱プレート74は、適宜の熱伝導率を有する材料(例えば、セラミック)により形成されている。均熱プレート74は、温調機構73(ジャケット731)により調整された温度を、トッププレート75に対して均等化して伝達する。
【0034】
トッププレート75は、均熱プレート74よりも厚い円板状に形成され、その上面にウエハWを載置する載置面751を有する。この載置面751に吸着凹部75aが形成されている。そして、トッププレート75は、載置面751と反対側(裏面側)に、当該載置面751の温度(換言すれば、載置面751に載置されたウエハWの温度)を測定する複数の温度センサ77を備える。なお、ウエハWを静電吸着するように構成されたチャック70である場合、載置面751は平坦状に形成されてよい。
【0035】
プローバ50は、温度センサ77を複数備えることで、載置面751の温度分布を認識し、温調機構73による温度制御の精度を高める。各温度センサ77の種類は、特に限定されるものではないが、例えば、測温抵抗体(RTD)式のセンサを適用することが好ましい。測温抵抗体は、サーミスタ、熱電対、光学式温度センサ、半導体温度センサであってもよい。
【0036】
各温度センサ77は、温度センサ用基板78(
図4参照)に電気的に接続され、温度センサ用基板78に測定値を送信する。温度センサ用基板78は、チャック70とZ軸移動機構59が連結される箇所の側方位置に固定されるとともに、プローバ制御部80に通信可能に接続される。この温度センサ用基板78は、検査装置1によるウエハWの検査時に、複数の温度センサ77の測定を自動的に切り替えることで、切り替えた温度センサ77で温度の測定を行い、受信した測定結果をプローバ制御部80に送信する。
【0037】
図6は、チャック70の各温度センサ77の設置状態を示す概略平面図である。
図6(a)は、本実施形態に係る各温度センサ77の配置例を示し、
図6(b)は、各温度センサ77を適用した場合のチャック70の温度分布例を示し、
図6(c)は、参考例として示す1つの温度センサ77'を適用した場合のチャック70の温度分布例を示す。
図6(a)に示すように、複数の温度センサ77は、トッププレート75の載置面751全体の温度分布を測定可能な適宜の個数および設置位置に設定される。
【0038】
一例として、複数の温度センサ77は、トッププレート75の平面視で、仮想外円ioの周方向上において等間隔に12個設けられるとともに、仮想外円ioよりも内側の仮想内円iiの周方向上において等間隔に4個設けられる。さらに複数の温度センサ77は、仮想外円ioよりも外側の所定位置(トッププレート75のY軸方向側の外周部)にも1個設けられる。すなわち、トッププレート75は、合計17個の温度センサ77を備える。
【0039】
ここで、
図6(c)に示すように、1個の温度センサ77'がチャック70に設けられている構成では、1個の温度センサ77'は、トッププレート75において設置箇所周辺のみの温度を測定することになる。この場合、載置面751の温度分布にばらつきがあったとしても、プローバ50の温調機構73は、温度センサ77'の設置箇所周辺の温度に基づき、冷媒部30またはヒータの動作を制御して温調を行うことになる。例えば、チャック70の載置面751は、検査時にウエハWのデバイス自体の発熱を受けることで、部分的に温度が上昇する可能性がある。特にウエハWの検査を高速で行う場合は、発熱量が大きくなることで、載置面751の温度が部分的に上昇し易くなる。そのため、温度センサ77'が1つのチャック70は、温調機構73による温度制御の精度が低下する懸念がある。
【0040】
これに対し、
図6(b)に示すように、本実施形態に係るチャック70のように複数の温度センサ77を備えることで、プローバ制御部80は、各温度センサ77の測定結果に基づき載置面751の温度分布を精度よく認識できる。例えば、載置面751の目標温度を85℃に設定した場合に、温度センサ用基板78により載置面751の高温箇所を各温度センサ77で測定する。各温度センサ77の測定値を用いることで、プローバ制御部80は、載置面751全体が目標温度に近づくように温調機構73を良好に制御することができる。
【0041】
また、
図6(a)の各温度センサ77のうち、チャンネル番号の1、12、17付近の温度センサ77は、チャック70において温度が安定化し易い箇所(安定領域SA)の温度センサ77にあたる。温度が安定化し易いとは、冷媒流路の冷媒の入口付近やPID制御されるヒータの入力付近が存在する箇所であることにより、温調機構73の温度調整の応答性が、他の箇所よりも速い(高い)ことをいう。つまり、温度センサ用基板78は、温調機構73の温度調整において、複数の温度センサ77の中でも、安定領域SAの温度センサ77(例えば、チャンネル番号の1番)の温度を先に検出することで、載置面751の温度がより監視し易くなる。
【0042】
なお、チャック70の温度センサ77の個数および設置位置は、特に限定されないことは勿論であり、温度センサ77は2個以上設けられればよく、その設置位置も、冷媒流路やヒータの位置などに応じて適切に設計されればよい。チャック70に設けられる各温度センサ77の種類は、相互に同じであってもよく、異なってもよい。
【0043】
プローバ制御部80は、検査装置1の制御ユニット9に接続され、制御ユニット9の指令に基づき、プローバ50の動作を制御する。プローバ制御部80は、例えば、プローバ50全体の動作を制御するメインコントローラ、移動部56の動作を制御するPLC、温調機構73を制御する温度コントローラ、照明制御部、電源ユニットなどを有する(共に不図示)。プローバ制御部80のメインコントローラは、図示しない1以上のプロセッサ、メモリ、入出力インタフェースおよび電子回路などを有するプローバ用コンピュータ内臓ボードを適用し得る。1以上のプロセッサは、CPU、ASIC、FPGA、複数のディスクリート半導体からなる回路などのうち1つまたは複数を組み合わせたものであり、メモリに記憶されたプログラムおよびレシピを実行処理する。メモリは、不揮発性メモリおよび揮発性メモリを含み、プローバ制御部80の記憶部を形成している。
【0044】
プローバ制御部80は、プローバ50上のチャック70に搬送機構27からウエハWを受け取った後、水平方向(X-Y軸方向)に移動部56を移動させ、所定の検査ユニット40のプローブカード24にウエハWが対向するように位置合わせを行う。位置合わせ後に、プローバ制御部80は、プローバ50によりチャック70を上昇させ、プローブカード24のプローブ24aにウエハWを接触させる。このウエハWとプローブ24aの接触状態を維持しつつ、検査装置1の制御ユニット9は、ベローズ42に囲まれた密閉空間を真空引きしてチャック70を支持プレートに吸着させる。この状態で、制御ユニット9は、テスタ41による電気的検査を開始する。また、プローバ制御部80は、テスタ41の検査終了後に、上記と逆動作により、検査後のウエハWを下降および水平移動させ、搬送機構27にウエハWを戻す。
【0045】
以上の検査装置1は、チャック70に設けられる複数の温度センサ77について校正を行う必要がある。次に、各温度センサ77を校正する温度校正システム100について、
図7および
図8を参照して説明する。
図7は、温度校正システム100を示す説明図であり、(a)はシステムの概略側面図であり、(b)は治具110を示す斜視図である。
図8は、治具110の表面温度計120およびその周辺構造を示す断面図であり、(a)は、表面温度計120が載置面751に非接触の状態を示し、(b)は、表面温度計120が載置面751に接触した状態を示す。
【0046】
本実施形態に係る温度校正システム100は、各温度センサ77が測定する測定値を校正するために、実際に温度センサ77の測定値を用いるプローバ50を利用している。また、温度校正システム100は、プローバ50に加えて、フレーム構造51に固定されチャック70の載置面751の温度を検出する表面温度計120を有する治具110と、表面温度計120の検出結果を記録するデータロガー130と、を含む。
【0047】
治具110は、表面温度計120をチャック70の上方に配置する。本実施形態に係る治具110は、フレーム構造51の複数の支柱54に載置可能な一対の棒部111と、一対の棒部111の延在方向中央部の間を架橋する架橋部112と、を有する平面視でH字状に形成されている。治具110は、例えば、アルミなどの金属フレームにより形成されている。表面温度計120は、治具110の架橋部112の延在方向中央部に固定されている。
【0048】
治具110は、表面温度計120を固定するための固定ブロック113を架橋部112に備える。固定ブロック113は、フレーム構造51の面方向(水平方向)に沿って位置調整可能に治具110に取り付けられる。固定ブロック113は、架橋部112から横方向に突出した部分に、支持バー114を介して表面温度計120を支持している。
【0049】
固定ブロック113と支持バー114は、表面温度計120を鉛直方向(Z軸方向)に沿って変位可能に保持する逃げ構造115を構成している。この逃げ構造115は、治具110に対する表面温度計120の水平方向の変位を規制しつつ、治具110と相対的に表面温度計120の上方へ移動を許容することで、表面温度計120の載置面751の接触時の押圧力を受け流す機能を有している。例えば、固定ブロック113は、支持バー114が貫通配置される貫通孔113hを有し、この貫通孔113hを構成する内周面には段差116が形成されている。一方、支持バー114は、段差116に引っ掛かり可能なフランジ114fを有する。貫通孔113hの上部は、フランジ114fが移動可能な内径に形成され、また抜け止め部材125が設けられている。支持バー114は、この貫通孔113hにより固定ブロック113の上方への移動が許容されるとともに、フランジ114fと段差116の係合により固定ブロック113の下方への脱落が阻止される。
【0050】
表面温度計120は、固定ブロック113の下端に連結されることで、治具110によって鉛直方向に沿うように吊り下げられる。表面温度計120は、鉛直方向に延在する円筒状のケース121を有し、このケース121の下側に検出部122を備える。検出部122は、ケース121に連結される接触体123と、接触体123内においてチャック70の載置面751に直接接触する検出子124と、を含む。
【0051】
接触体123は、ポリミイドなどの樹脂材料により形成され、載置面751に対向する下端面が平坦状に形成されている。この接触体123は、ケース121の外周面に面一に連なる環状(筒状)を呈しており、接触体123の内側には、検出子124を配置する平面円形の空洞が設けられている。接触体123は、検出子124よりも高い断熱性をもつことで熱の逃げを少なくし、検出子124の検出精度を高める。
【0052】
検出子124は、薄い板状に形成されたK型熱電対を適用することができる。検出子124の両端部は、ケース121の接触体123の連結面に固定され、両端部から中間部が下方に向かって湾曲する山形に形成されている。検出子124の板厚は、接触体123の径方向に沿った肉厚よりも大幅に(例えば、1/10以下に)薄く形成されている。このように薄く形成された検出子124は、熱容量が小さく、載置面751に接触した際の熱応答性が速くなる。
【0053】
また、接触体123の下端面から突出した部分が、チャック70の載置面751に当たると、検出子124は、上方向かつ横方向に容易に弾性変形して載置面751に面接触する。接触体123が載置面751に接触した状態において、検出子124は、常に同じ接触面積で載置面751に接触することが可能である。すなわち、検出子124は、温度検出を複数回実施しても、同じ検出形態で温度を検出できる(再現性が担保されている)。
【0054】
図9は、温度校正システム100の表面温度計120の校正を示すブロック図である。
図9に示すように、本実施形態に係る表面温度計120は、国家標準(国際基準)に準じるように先に校正された標準器200に基づき、その検出する温度が校正される。例えば、表面温度計120は、国家標準に準じるように定期的に校正を行っている校正サービス機関の標準器200に接続されて、当該表面温度計120の温度の検量線と、標準器200の温度の検量線とが一致する(国家標準をトレースする)ように校正される。
【0055】
治具110に設けられる表面温度計120は、チャック70に設けられる複数の温度センサ77に対して1つであるため、標準器200による表面温度計120自体の校正は短時間で行うことができる。また、表面温度計120の校正は、定期的に(例えば、年に1回程度)実施することが好ましい。このように校正された表面温度計120は、標準器200(すなわち国家標準)と同じ温度補償がなされる。
【0056】
データロガー130は、プロセッサ、メモリおよび入出力インタフェース(共に不図示)を有するコンピュータが適用され、表面温度計120が検出した表面温度を記憶する。メモリは、揮発性メモリ、不揮発性メモリ(コンピュータ記憶媒体、フレキシブルディスク、コンパクトディスク、ハードディスク、光磁気ディスク、メモリカードなどの記憶媒体)を含み、データロガー130の記憶部を構成している。このデータロガー130は、表面温度計120に接続されるとともに、プローバ制御部80に接続される。
【0057】
温度校正システム100は、プローバ50(検査装置1)の出荷時に、各温度センサ77の校正を行う。この校正において、温度校正システム100は、複数の温度センサ77に重なる載置面751の検出位置に表面温度計120を接触させて、当該載置面751の表面温度を検出する。データロガー130は、表面温度計120に対向する載置面751の検出位置の位置情報をプローバ制御部80から取得するとともに、表面温度計120から表面温度を取得して、検出位置の位置情報、表面温度および時間情報を紐づけてメモリに記憶する。
【0058】
そして、プローバ制御部80は、データロガー130にて蓄積した検出位置の位置情報、表面温度および時間情報を校正情報として取得し、この校正情報を用いてチャック70の各温度センサ77を校正する。なお、温度校正システム100は、データロガー130を備えずに、表面温度計120が検出した表面温度を、プローバ制御部80が直接取得する構成でもよい。各温度センサ77の校正を行うことで、プローバ制御部80は、所定の温度センサ77の測定値を、表面温度計120が検出した表面温度に合わせることができる。
【0059】
図10は、プローバ制御部80の機能ブロックを示すブロック図である。各温度センサ77の校正において、プローバ制御部80は、
図10に示すように、温調制御部81、移動制御部82、表面温度取得部83、温度測定値取得部84、補正値算出部85、検量線算出部86および確認部87を内部に形成する。
【0060】
温調制御部81は、プローバ50の温調機構73(冷媒部30、ヒータ)を制御して、チャック70の温度を、各温度センサ77の校正において設定される基準温度とする。この基準温度は、特に限定されるものではないが、例えば、-55℃、25℃、150℃の3種類があげられる。
【0061】
移動制御部82は、モータドライバ90に制御指令を出力し、モータドライバ90を介してプローバ50の移動部56の動作を制御する。各温度センサ77の校正時に、移動制御部82は、各温度センサ77のうち所定の温度センサ77に重なる載置面751の検出位置に表面温度計120を接触させる。例えば、移動制御部82は、各温度センサ77の位置情報を予め有しており、その位置情報に基づき一の温度センサ77から他の温度センサ77までの移動距離および移動方向を算出し、算出した移動距離および移動方向に沿うように移動部56を制御する。
【0062】
各温度センサ77を校正する際に、移動制御部82は、互いに近い距離にある温度センサ77に対して順に校正処理を行うことが好ましい。例えば、移動制御部82は、
図6(a)において温度センサ77に割り振ったチャンネル番号の順に、各温度センサ77の温度校正(載置面751の温度の検出)を行う。これにより、温度校正方法におけるプローバ50の移動時間を短くすることができ、校正にかかる時間を短くすることができる。
【0063】
図10に戻り、表面温度取得部83は、表面温度計120が検出した各温度センサ77の表面温度をデータロガー130から取得して、メモリに記憶する。例えば、1つの基準温度について、表面温度計120による各温度センサ77全ての検出位置での検出が終わると、表面温度取得部83は、データロガー130から校正情報(各検出位置の表面温度、時間情報)を取得する。
【0064】
一方、温度測定値取得部84は、各温度センサ77が測定する温度(測定値)を取得して、各温度センサ77の位置情報、時間情報などに紐づけて当該測定値をメモリに記憶する。特に、温度測定値取得部84は、移動制御部82の動作状態を取得することで、表面温度計120が検出位置の表面温度を検出したタイミングに合わせて、当該所定の温度センサ77の温度を測定する。これにより、メモリに記憶された所定の温度センサ77の測定値と、表面温度計120の表面温度とを、同じタイミングで検出した値とすることができる。
【0065】
補正値算出部85は、温度測定値取得部84が取得した所定の温度センサ77の測定値と、データロガー130から取得した所定の温度センサ77の表面温度との差分を補正値として算出する。補正値算出部85は、この補正値の算出について各温度センサ77全てで実施し、複数の温度センサ77毎に対応する補正値としてそれぞれメモリに記憶する。この補正値は、各温度センサ77の測定値に紐づくように記憶される。つまり、温度センサ77の測定値に紐づいている補正値を加えた値が、所定の基準温度における温度センサ77の校正値となる。
【0066】
検量線算出部86は、補正値算出部85により複数の基準温度毎に補正値が算出されると、メモリに記憶された測定値および補正値に基づき、複数の温度センサ77毎の検量線を算出する。検量線算出部86は、この検量線の算出についても各温度センサ77全てで実施し、算出した複数の温度センサ77毎の検量線をメモリに記憶する。
【0067】
例えば、各温度センサ77の検量線は、複数の校正値に基づき適宜の傾きおよび切片を有する1次関数で算出される。また、検量線は、-55℃から25℃までの1次関数と、25℃から150℃までの1次関数の2つの関数で算出されることが好ましい。これにより、プローバ制御部80は、複数の温度センサ77毎に高精度な検量線を有するようになり、検査装置1によるウエハWの検査時に、載置面751の温度分布を精度よく測定することが可能となる。なお、温度センサ77の検量線は、センサの特性に応じて算出されればよく、2次関数などの他の関数であってもよい。
【0068】
また、確認部87は、表面温度計120により各温度センサ77の表面温度を再検出してチェック用温度とし、補正値算出部85で得た校正値とチェック用温度とを比較することで、校正結果を確認する。確認部87による各構成の動作は、基本的には校正時における各構成の動作と同じであり、その詳細については後述する。
【0069】
そして、温度センサ77を校正した後に検査装置1を運用する際には、プローバ制御部80は、複数の温度センサ77毎に設定された検量線に基づき各温度センサ77の測定値を得る。これにより、プローバ制御部80は、温調機構73をより精度よく制御することが可能となり、載置面751の温度を適切に調整することができる。
【0070】
本実施形態に係る温度校正システム100は、以上のように形成され、以下その動作(温度校正方法)について説明する。
【0071】
検査装置1を工場に設置する初期時またはメンテナンス時に、作業者は、プローバ50の複数の温度センサ77を校正する温度校正方法を実施する。温度校正方法の実施において、作業者は、まずプローバ50のフレーム構造51に治具110を取り付ける。これにより、治具110の表面温度計120がチャック70の載置面751に対向可能な位置に配置される。
【0072】
治具110の取り付け後、作業者は、検査装置1の制御ユニット9(図示しないユーザインタフェース)を操作して温度校正方法を実施する。これにより、制御ユニット9から温度校正方法の実施指令を受けたプローバ制御部80が、温度校正方法の処理を開始する。
【0073】
図11は、温度校正方法の処理フローを示す第1フローチャートであり、
図12は、温度校正方法の処理フローを示す第2フローチャートである。
図11および
図12に示すように温度校正方法において、プローバ制御部80は、温度安定工程と、校正処理工程、確認工程を順に行う。また、プローバ制御部80は、上記の3種類の基準温度(-55℃、25℃、150℃)毎に、
図11および
図12の処理フローを繰り返すことで、最終的に各温度センサ77の検量線を取得する。
【0074】
具体的には、プローバ制御部80は、温度校正方法を開始すると、まず温度安定工程として温調制御部81により温調機構73を制御して、チャック70の温度を本処理フローにおける基準温度に調整する(ステップS1)。例えば、プローバ制御部80は、複数の基準温度のうちの1つを、温調機構73が調整する目標温度に設定する。
【0075】
その後、プローバ制御部80は、予め定めた安定化期間にわたって、所定の温度センサ77により温度を測定し、安定化期間における測定値の最大値と最小値の差が許容温度範囲以内となる状態とする(ステップS2)。安定化期間としては、例えば、5分間~10分間があげられる。また、温度を監視する所定の温度センサ77としては、温度が安定化し易い安定領域SAの温度センサ77が好ましい。本実施形態では、
図6(a)中のチャンネル番号が1番の温度センサ77の測定値を用いている。また、許容温度範囲としては、例えば、±0.5℃以内があげられる。これにより、温度安定工程が終了した段階では、載置面751の温度が安定化した状態となる。
【0076】
温度安定工程後の校正処理工程において、プローバ制御部80は、温調機構73により基準温度を維持する制御を行う(ステップS3)。そして、プローバ制御部80は、移動制御部82により、例えば、
図6(a)に示す各温度センサ77の番号順に沿うように移動部56を制御して、所定の温度センサ77に重なる載置面751の検出位置に、表面温度計120を接触させる(ステップS4)。
【0077】
移動部56の制御において、プローバ制御部80は、まずチャック70を水平方向(X-Y軸方向)に移動させて、所定の温度センサ77の検出位置と表面温度計120の検出子124とを対向させる。次いで、プローバ制御部80は、チャック70を上方向(Z軸正方向)に上昇させて、表面温度計120の検出子124と載置面751を接触させる。この際、プローバ制御部80は、表面温度計120の接触体123の下端面が載置面751に接触した後も、チャック70の上昇を継続して固定ブロック113に対して表面温度計120を上方に相対変位させる。これにより、表面温度計120の検出子124は、載置面751の所定範囲に接触するように形状が変形する(
図8(b)参照)。
【0078】
プローバ50の移動が終了すると、表面温度計120により検出位置の温度を検出し、データロガー130は、表面温度計120からその表面温度を受信する(ステップS5)。この際、データロガー130は、プローバ制御部80からも表面温度計120に対向する載置面751の検出位置の位置情報(温度センサ77の設置位置)を取得し、検出位置の位置情報と表面温度を紐づけて記憶する。
【0079】
また、プローバ制御部80は、表面温度取得部83によりデータロガー130を経由して表面温度計120の表面温度を取得し、所定期間にわたって表面温度の最大値と最小値の差が許容温度範囲(例えば±0.5℃)以内か否かを監視する(ステップS6)。表面温度を監視する所定期間は、特に限定されないが、例えば、数十秒から数分に設定されるとよい。最大値と最小値の差が許容温度範囲を超えている場合(ステップS6:NO)は、温調機構73による温度調整が安定しなくなったことになる。このため、プローバ制御部80は、例えば、校正処理工程を一旦中断してステップS1からやり直す。
【0080】
一方、最大値と最小値の差が許容温度範囲以内の場合(ステップS6:YES)は、温調機構73による温度調整が安定していることになる。よって、プローバ制御部80は、ステップS7において、表面温度取得部83により所定期間の最後の表面温度計120の表面温度を取得するとともに、温度測定値取得部84により検出位置に対応する所定の温度センサ77の測定値を取得する。
【0081】
さらに、プローバ制御部80の補正値算出部85は、所定の温度センサ77の測定値と表面温度計120の表面温度との差分(補正値)を算出し、メモリに記憶する。この処理フローの基準温度において、所定の温度センサ77の測定値は、算出した補正値を加算することで、表面温度計120の表面温度に一致するようになる。
【0082】
また、ステップS7の終了後に、プローバ制御部80は、チャック70を下方向(Z軸負方向)に下降して、表面温度計120の検出子124と載置面751を離間させる。その後、プローバ制御部80は、載置面751における各温度センサ77の検出位置全てについて、表面温度計120による検出を行ったか否かを判定する(ステップS8)。各温度センサ77の検出が終了していない場合(ステップS8:NO)、プローバ制御部80は、ステップS4に戻り以下同様の処理フローを繰り返す。一方、各温度センサ77の検出位置全てについて校正値(補正値)を得た場合には、校正処理工程を終了して、
図12に示す確認工程に移行する。
【0083】
確認工程において、確認部87は、移動制御部82によりプローバ50の移動部56を制御して、載置面751における各温度センサ77の検出位置に対して表面温度計120を再び接触させる(ステップS9)。これにより、表面温度計120は、検出位置の温度をチェック用の温度として検出する(ステップS10)。
【0084】
また、確認部87は、温度測定値取得部84により検出位置における温度センサ77の測定値を継続的に取得し、所定期間にわたって測定値の最大値と最小値の差が許容温度範囲(例えば±0.5℃)以内か否かを監視する(ステップS11)。この温度センサ77の測定値は、ステップS7での校正値(補正値)を反映したものとなる。測定値の最大値と最小値の差が許容温度範囲を超えている場合(ステップS6:NO)は、温調機構73による温度調整が安定しなくなったことになる。このため例えば、確認部87は、確認工程を一旦中断してステップS9からやり直す。
【0085】
一方、最大値と最小値の差が許容温度範囲以内の場合(ステップS11:YES)は、温調機構73による温度調整が安定していることになる。よってステップS12において、確認部87は、所定期間の最後における表面温度計120の表面温度を表面温度取得部83により取得する。さらに、確認部87は、その検出位置における表面温度(チェック用温度)と、校正済の温度センサ77の測定値とを比較し、チェック用温度と校正済の測定値の差が予め規定した仕様(スペック)以内か否かを判定する(ステップS13)。チェック用温度と校正済の測定値の差が仕様を超える場合には、ステップS14に進み、ユーザインタフェースを介してエラーを出力する。この仕様は、温度センサ77の規格(誤差範囲)に基づき設定されるとよい。
【0086】
一方、チェック用温度と校正済の測定値が仕様の範囲内であれば、その温度センサ77の校正結果の正常を認識し、ステップS15に進む。そして、確認部87は、各温度センサ77の検出位置全てについて確認を行ったか否かを判定する(ステップS15)。各温度センサ77の確認が終了していない場合(ステップS15:NO)、確認部87は、ステップS9に戻り、以下同様の処理フローを繰り返す。一方、各温度センサ77の検出位置全てについて確認が終了した場合(ステップS15:YES)には、確認工程を終了する。
【0087】
そして、プローバ制御部80の検量線算出部86は、3つの基準温度について、上記の処理フロー(各温度センサ77の測定値の校正)を行うと、その3点の校正値に基づき、各温度センサ77の検量線を各々算出する。これにより、プローバ制御部80は、各温度センサ77の測定値について、表面温度計120が検出する表面温度に合わせることができ、結果的に、国家標準に準じるように校正できる。
【0088】
なお、温度校正システム100および温度校正方法は、上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形例をとり得る。例えば、温度校正システム100は、
図7(a)に点線で示すように、表面温度計120の位置またはチャック70の位置を検出する位置検出器140を備えてもよい。位置検出器140としては、例えば、表面温度計120の周辺を撮像するカメラ、表面温度計120の距離やチャック70の距離を測定する変位計(レーザ変位計など)があげられる。この位置検出器140によって、プローバ制御部80は、チャック70の載置面751と表面温度計120との相対位置を精度よく認識できるようになる。したがって、プローバ制御部80は、相対位置をフィードバックすることで、表面温度計120に対するプローバ50の移動を一層正確に行うことができ、各温度センサ77の検出位置に表面温度計120をより確実に接触させることが可能となる。
【0089】
また例えば、温度校正システム100は、プローバ50の移動部56(載置面751)により、載置面751を表面温度計120と相対移動させる構成に限定されず、載置面751と相対的に表面温度計120を移動させる構成としてもよい。
【0090】
〔第2実施形態〕
図13は、第2実施形態に係る温度校正システム100のチャック70の概略平面図である。
図13に示すように、第2実施形態に係る温度校正システム100は、複数の温度センサ77のうち一部(1つ)の温度センサ77を、他部の温度センサ77の故障を検知するための基準用センサ77Aとして使用する。基準用センサ77Aは、各温度センサ77のうち温度が安定化し易い安定領域SAの温度センサ77を適用することが好ましく、例えば、
図13中のチャンネル番号のうち1番または17番の温度センサ77を用いるとよい。本実施形態では、チャンネル番号17番の温度センサ77を基準用センサ77Aとしている。
【0091】
基準用センサ77Aに適用される温度センサ77は、温度が安定化し易い箇所にある他に、耐熱性、測定精度(許容誤差範囲)などの仕様が他の温度センサ77の仕様よりも優れているセンサを適用することが好ましい。例えば、基準用センサ77Aは、他の温度センサ77の測温抵抗体(一例としてサーミスタ)よりも高精度な抵抗素子が白金の測温抵抗体を適用するとよい。
【0092】
さらに、基準用センサ77Aは、保護管79の内部に収容されて、トッププレート75の裏面に設置されることで、プローバ50周辺の雰囲気からセンサを保護する構造であるとよい。保護管79は、ステンレス(SUS304)などにより形成される。保護管79内に設けられる基準用センサ77Aは、保護管79の周囲のトッププレート75に対して異物に対する耐性も高くなる。換言すれば、基準用センサ77Aは、各温度センサ77の中でも異常が生じ難くなっている。
【0093】
この基準用センサ77Aも、検査装置1の設置時やメンテナンス時に、表面温度計120による温度校正がなされることで、国家標準に準じる(国家標準に対してトレースすることができる)温度測定が実施可能となる。したがって、基準用センサ77Aは、検出位置における載置面751の温度を正確に測定でき、しかも他の温度センサ77に対して高い信頼性や参照性を有する。
【0094】
そして、第2実施形態に係るプローバ制御部80Aは、検査装置1の運用時に、基準用センサ77Aを用いて他の複数(16個)の温度センサ77の故障を検知する処理を行う。すなわち、検査装置1は、定期的または必要に応じて、複数の温度センサ77の正常または異常を判定するセンサ故障検知方法を実施する。センサ故障検知方法は、温度校正方法により校正した基準用センサ77Aを用いて行うものであり、その意味で本開示の温度校正方法に関連した処理である。以下、このセンサ故障検知方法について詳述していく。
【0095】
図14は、センサ故障検知方法の処理フローを示すフローチャートである。
図14に示すように、検査装置1の運用時において、プローバ制御部80は、まずセンサ故障検知方法を実施するか否かを判定する(ステップS21)。例えば、プローバ制御部80は、温度校正方法やセンサ故障検知方法を行った前回時点からの経過期間、ウエハWの検査を行っている累積実施期間、または各温度センサ77の測定値の差が所定以上ある場合に、故障検知用フラグを立てる。そして、プローバ制御部80は、検査装置1の起動時、ウエハWの検査開始前、またはウエハWの検査の待機中などのタイミングにおいて、故障検知用フラグを参照し、故障検知用フラグが1となっている場合、センサ故障検知方法を実施する。なお、プローバ制御部80は、故障検知用フラグが0となっている場合、センサ故障検知方法の非実施を判定して(ステップS21:NO)、ウエハWの検査に移行すればよい。
【0096】
センサ故障検知方法を実施する場合(ステップS21:YES)、プローバ制御部80は、温調機構73を動作させてチャック70の載置面751の温度を適宜の目標温度に変化させる(ステップS22)。目標温度は、特に限定されるものではないが、ウエハWの検査時に設定される温度(例えば、85℃)や温度校正方法において目標とした基準温度(例えば、-55℃、25℃、155℃)があげられる。プローバ制御部80は、1つの目標温度だけでセンサ故障検知方法を行ってもよく、複数の目標温度毎にセンサ故障検知方法を行ってもよい。1つの目標温度でセンサ故障検知方法を行えば作業時間を短縮化でき、逆に複数の目標温度でセンサ故障検知方法を行えば、故障検知の精度を高めることができる。
【0097】
プローバ制御部80は、温調機構73による載置面751の温度制御において、基準用センサ77Aにより載置面751の温度を測定して、その測定結果をメモリに記憶する(ステップS23)。さらに、プローバ制御部80は、予め定めた安定化期間における測定値の最大値と最小値の差が許容温度範囲以内となる状態とする(ステップS24)。
【0098】
その後、プローバ制御部80は、基準用センサ77A以外の全ての温度センサ77について、各検出位置の載置面751の温度を測定して、各測定結果をメモリに記憶していく(ステップS25)。なおこの際、プローバ制御部80は、各温度センサ77による温度測定を所定期間にわたって実施して、各測定値の最大値と最小値の差が許容温度範囲(例えば±0.5℃)以内か否かを監視し、所定期間の最後の測定値を抽出してもよい。
【0099】
温度センサ77の温度を測定すると、プローバ制御部80は、基準用センサ77A以外の各温度センサ77の測定値について、基準用センサ77Aの参照温度値(測定値)との故障検知用差分を算出する(ステップS26)。この故障検知用差分は絶対値で算出されることが好ましい。
【0100】
次いで、プローバ制御部80は、基準用センサ77A以外の各温度センサ77の各故障検知用差分と、予め保有している故障閾値とを比較し、各故障検知用差分が故障閾値以下となっているか否かを判定する(ステップS27)。この故障閾値は、センサの故障とみなす適宜の値であれば特に限定されず、例えば、1℃に設定されるとよい。故障検知用差分が故障閾値以下の場合、温度センサ77は、故障などの異常が生じていないとみなすことができる。プローバ制御部80は、基準用センサ77A以外の全ての温度センサ77が正常である場合(ステップS27:YES)、ステップS28に進み、センサ故障検知方法の終了処理を行う。終了処理において、プローバ制御部80は、故障検知用フラグを0に戻すとともに、検査装置1の次の動作(例えば、ウエハWの検査開始など)を識別し、温調機構73の目標温度を設定し直すなどして別の制御に移行する。
【0101】
一方、故障検知用差分が故障閾値を超える場合(ステップS27:NO)、その温度センサ77は、故障などの異常が生じているとみなすことができる。このため、プローバ制御部80は、各温度センサ77のうち1つでも温度センサ77の異常を判定すると、ステップS29に進む。ステップS29において、プローバ制御部80は、制御ユニット9のユーザインタフェースを介して、プローバ50の温度センサ77に異常が生じている旨の情報をユーザに報知する。これにより、ユーザは、温度センサ77の異常を簡単かつ早期に認識することができる。
【0102】
〔第3実施形態〕
図15は、第3実施形態に係る温度校正システム100を備える検査装置1Aを示す概略説明図である。
図15に示すように、検査装置1Aは、筐体2の内部に温度校正システム100を備えることで、チャック70の各温度センサ77の校正を必要に応じて(または所定期間毎に)自動的に行う構成でもよい。例えば、検査装置1Aは、検査室列16の側方に、温度校正システム100の表面温度計120を備える。
【0103】
検査装置1Aは、温度校正方法を開始する際に、プローバ50をX-Y軸方向に沿って移動させることで、チャック70の載置面751を表面温度計120に対向させる。このプローバ50の配置後に、プローバ制御部80は、
図11の処理フローに沿って温度校正方法を実施することで、検査装置1の初期設置やメンテナンス以降の運用過程でも各温度センサ77の校正を行うことが可能となる。なお、表面温度計120は、検査装置1のメンテナンス時などにおいて、国家標準に準じる標準器200との間で校正を行うことで、トレーサビリティを確保しておくとよい。
【0104】
以上の実施形態で説明した本開示の技術的思想及び効果について以下に記載する。
【0105】
本開示の第1の態様は、載置部(チャック70)に載置した被検査体(ウエハ)の温度を調整して被検査体を検査する検査装置1と、表面温度計120と、を有し、載置部に設けられた複数の温度センサ77の校正を行う温度校正システム100であって、検査装置1は、載置部をX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に移動可能な移動部56と、複数の温度センサ77の測定値に対して校正処理を行う制御部(プローバ制御部80)と、を有し、表面温度計120は、載置部の載置面751に接触して当該載置面751の表面温度を検出し、制御部は、移動部56を制御して載置部の載置面751の検出位置に表面温度計120を接触させ、表面温度計120により検出位置の表面温度を検出し、当該検出位置の表面温度に基づき検出位置に対応する温度センサ77の測定値を校正する。
【0106】
上記によれば、温度校正システム100は、1つの表面温度計120を用いて複数の温度センサ77の校正を行うことで、機器による校正のばらつきを回避して、各温度センサ77の測定値を精度よく校正できる。また、温度校正システム100は、移動部56と連動して載置部(チャック70)を移動させて検出位置に表面温度計120を接触させるため、温度センサ77の検出位置に対する誤差を抑制でき、表面温度を精度よく得ることができる。
【0107】
また、表面温度計120は、載置面751に接触する接触体123と、接触体123よりも外側に突出し、載置面751に接触した際に弾性変形可能な検出子124と、を含む。これにより、表面温度計120は、接触体123に載置面751が接触した状態で、検出子124が弾性変形した形状を同一にすることが可能となり、温度センサ77毎の表面温度の検出精度を高めることができる。
【0108】
また、接触体123は、検出子124の一部を内側に収容する環状に形成されており、検出子124は、接触体123の肉厚よりも薄い板状に形成されている。このように薄い板状の検出子124は、熱容量が少ないことで熱応答性が速くなり、複数の温度センサ77の校正処理を効率化できる。また、環状の接触体123の面を載置面751に接触させることで、検出子124の形状をより確実に一致させることができる。
【0109】
また、表面温度計120は、載置部の周囲に設けられる複数の支柱54に固定される治具110に取り付けられ、載置面751よりも上方に配置されている。これにより、温度校正システム100は、載置部を移動させる検査装置1の移動部56をそのまま適用して各温度センサ77の校正を行うことが可能となり、システムを簡素化できる。
【0110】
また、治具110は、表面温度計120をZ軸方向に変位可能に保持する逃げ構造115を有し、逃げ構造115は、表面温度計120と載置面751とが接触した際に、載置面751から受ける押圧力を逃がす。これにより、温度校正システム100は、表面温度計120の自重または検出子124への押圧力が均等に作用するため、より再現性の良い表面温度が得られる。
【0111】
また、制御部(プローバ制御部80)は、検出位置の温度センサ77と、表面温度計120が検出した検出位置の表面温度と、を紐づけて記憶する記憶装置(データロガー130)を有する。これにより、温度校正システム100は、表面温度計120が検出した表面温度と、温度センサ77の位置とを容易に蓄積していくことができる。
【0112】
また、制御部(プローバ制御部80)は、校正処理において、温調機構73により複数の目標温度毎に測定値の校正を行い、複数の目標温度毎の校正結果に基づき複数の温度センサ77毎の検量線を得る。これにより、制御部は、各温度センサ77の測定値により被検査体(ウエハW)の載置面751の温度分布を精度よく捉えることが可能となる。
【0113】
また、複数の温度センサ77は、載置面751において温度が安定化する安定領域SAに少なくとも1つ設けられ、制御部(プローバ制御部80)は、校正処理において、安定領域SAの温度センサ77の測定値に基づき載置部(チャック70)の温度を制御する。これにより、温度校正システム100は、載置部の温度が確実に安定した状態で、各温度センサ77の校正処理を実施できる。
【0114】
また、表面温度計120の検出値は、国家標準に準じる値に校正されている。これにより、温度校正システム100は、表面温度計120により検出した表面温度により校正した複数の温度センサ77の測定値についても、国家標準に対してトレースすることが可能となる。
【0115】
また、複数の温度センサ77は、少なくとも1つの基準用センサ77Aを有し、制御部は、基準用センサ77Aが測定した基準値と、基準用センサ77A以外の複数の温度センサ77が測定した測定値とを比較し、基準値に対して測定値が所定以上ずれている場合に、当該測定値がずれている温度センサ77の異常を判定する。これにより、温度校正システム100は、定期的または必要に応じて、各温度センサ77の正常または異常を容易且つ精度よく認識することができる。
【0116】
また、基準用センサ77Aは、載置面751において温度が安定化する安定領域SAに設けられている。これにより、基準用センサ77Aは、載置面751の温度を安定して測定することができる。
【0117】
また、本開示の第2の態様は、被検査体を検査する検査装置1であって、被検査体(ウエハW)を載置し、当該被検査体の温度を調整する載置部(チャック70)と、載置部に設けられる複数の温度センサ77と、載置部をX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に移動可能な移動部56と、複数の温度センサ77の測定値に対して校正処理を行う制御部(プローバ制御部80)と、を有し、載置部の載置面751に接触して当該載置面751の表面温度を検出する表面温度計120を備え、制御部は、移動部56を制御して載置部の載置面751の検出位置に表面温度計120を接触させ、表面温度計120により検出位置の表面温度を検出し、当該表面温度に基づき検出位置に対応する温度センサ77の測定値を校正する。
【0118】
また、本開示の第3の態様は、載置部(チャック70)に載置した被検査体(ウエハW)の温度を調整して被検査体を検査する検査装置1と、表面温度計120と、を有し、載置部に設けられた複数の温度センサ77の校正を行う温度校正方法であって、載置部の温度を調整する第1工程と、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に移動可能な移動部56により載置部を移動させて、載置部の載置面751の検出位置に表面温度計120を接触させる第2工程と、載置面751の検出位置の表面温度を表面温度計120により検出し、当該表面温度に基づき検出位置に対応する温度センサ77の測定値を校正する第3工程と、を有し、第1工程を行っている最中に、複数の温度センサ77の全てに対して第1工程および第2工程を繰り返す。
【0119】
上記の第2の態様および第3の態様でも、複数の温度センサ77を精度よく校正することができる。
【0120】
今回開示された実施形態に係る温度校正システム100、検査装置1および温度校正方法は、すべての点において例示であって制限的なものではない。実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形及び改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。例えば、検査装置1が検査する被検査体は、基板(ウエハW)に限定されず、電気的検査が必要な種々の電気電子デバイスであってよい。検査装置1は、複数の検査ユニット40(テスタ41)を有するものに限定されず、1つの検査ユニット40を有するものでもよい。この場合でも、プローバ50は、温調機構73および複数の温度センサ77を有することでチャック70の温度を調整でき、またウエハWを載置したチャック70を移動させることができる。そして、上記の温度校正方法によって、複数の温度センサ77を良好に校正できる。
【0121】
本開示の温度校正システム100は、検査装置1のチャック70に設けられた複数の温度センサ77の校正を行うものに限定されない。例えば、温度校正システム100は、基板処理装置の処理容器内に設置される載置部(載置台、チャックなど)に複数の温度センサ77を備えた構成において、当該複数の温度センサ77の校正を行うことができる。
【符号の説明】
【0122】
1 検査装置
56 移動部
70 チャック
751 載置面
77 温度センサ
80 プローバ制御部
100 温度校正システム
120 表面温度計
W ウエハ