(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051736
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】光源装置、画像投射装置および表示装置
(51)【国際特許分類】
G03B 21/14 20060101AFI20230404BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20230404BHJP
F21V 7/28 20180101ALI20230404BHJP
F21V 9/20 20180101ALI20230404BHJP
F21V 9/40 20180101ALI20230404BHJP
F21V 9/45 20180101ALI20230404BHJP
F21V 7/26 20180101ALI20230404BHJP
F21V 9/35 20180101ALI20230404BHJP
F21V 9/38 20180101ALI20230404BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20230404BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20230404BHJP
【FI】
G03B21/14 A
G03B21/00 D
F21V7/28 240
F21V9/20
F21V9/40 200
F21V9/45
F21V7/26
F21V9/35
F21V9/38
F21S2/00 340
F21S2/00 355
F21Y115:30
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114201
(22)【出願日】2022-07-15
(31)【優先権主張番号】P 2021162136
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021162354
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 洋平
(72)【発明者】
【氏名】平川 真
(72)【発明者】
【氏名】藤田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 崇
【テーマコード(参考)】
2K203
【Fターム(参考)】
2K203FA07
2K203FA25
2K203FA32
2K203FA44
2K203FA45
2K203FA54
2K203FA62
2K203GA25
2K203GA35
2K203GA36
2K203GA40
2K203HA14
2K203HA27
2K203HA65
2K203HB22
2K203HB24
2K203HB25
2K203MA04
(57)【要約】
【課題】波長変換素子の光変換効率を向上させる。
【解決手段】光源と、片面もしくは両面に複数のレンズがアレイ状に並んだレンズアレイを有する光学素子と、前記光源から出射され前記光学素子を通過した光の波長を変換する波長変換素子と、を備え、前記光学素子の隣り合う前記レンズの頂点間の距離Pが、前記光学素子に入射する光の光束の幅Dの1/4以下である。
【選択図】
図3-2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
片面もしくは両面に複数のレンズがアレイ状に並んだレンズアレイを有する光学素子と、
前記光源から出射され前記光学素子を通過した光の波長を変換する波長変換素子と、
を備え、
前記光学素子の隣り合う前記レンズの頂点間の距離Pが、前記光学素子に入射する光の光束の幅Dの1/4以下である、
ことを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記光学素子と前記波長変換素子との間に配置された第2の光学系をさらに備え、
前記光束の幅Dが、前記第2の光学系の前記光源側のレンズの外径Doptの1/3以下である、
ことを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記光学素子を通過した光を前記波長変換素子に導く光学面を有し、
前記光学面上の光束の幅Dmirrorが前記外径Doptの1/3以下である、
ことを特徴とする請求項2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記光源は、複数の発光点を有し、
前記距離Pは、前記複数の発光点のうちの1つの発光点から射出される光にかかる前記光学素子上の光束の幅Dsingleの1/2以下である、
ことを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項5】
前記光学素子は、矩形形状の複数の球面レンズをアレイ状に並べたレンズアレイを有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項6】
前記光学面は、ダイクロイックミラーである、
ことを特徴とする請求項3に記載の光源装置。
【請求項7】
前記光源と前記光学面との間に、少なくとも正のパワーを有するレンズと負のパワーを有するレンズとを有する第1の光学系を備える、
ことを特徴とする請求項3に記載の光源装置。
【請求項8】
前記負のパワーを有するレンズの外径は、前記第2の光学系の前記光源側のレンズの外径Doptの1/2以下である、
ことを特徴とする請求項7に記載の光源装置。
【請求項9】
前記光学素子への光の入射角度は、3度以内である、
ことを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項10】
前記光学素子は、少なくとも2面のレンズアレイ面を有する、
ことを特徴とする請求項9に記載の光源装置。
【請求項11】
前記光学素子は、入射面と出射面のどちらか一方にレンズアレイ面を有する、
ことを特徴とする請求項9に記載の光源装置。
【請求項12】
前記光源と前記光学素子との間に設けられ、前記光源から出射される光の光束を縮小する第1の光学系と、
前記第1の光学系のシフトもしくはチルトによって前記光学素子へ入射する光束の入射角度を調整する調整手段と、
を備えることを特徴とする請求項9に記載の光源装置。
【請求項13】
前記光源と前記光学素子との間に設けられ、前記光源から出射される光を反射し前記光学素子へと導く反射型光学素子と、
前記反射型光学素子のシフトもしくはチルトによって前記光学素子への光線入射角度を調整する調整手段と、
を備えることを特徴とする請求項9に記載の光源装置。
【請求項14】
前記光源と前記光学素子との間に設けられ、前記光源から出射される光を透過する透過型光学素子と、
前記透過型光学素子のシフトもしくはチルトによって前記光学素子への光線入射角度を調整する調整手段と、
を備えることを特徴とする請求項9に記載の光源装置。
【請求項15】
前記調整手段は、スペーサである、
ことを特徴とする請求項12に記載の光源装置。
【請求項16】
請求項1ないし15のいずれか一項に記載の光源装置と、
前記光源装置から出射された光をミキシングすることで均一化する光均一化素子と、
前記光均一化素子が均一化した光を照明する照明光学系と、
前記照明光学系により照明される光を変調することにより画像光を形成する画像形成素子と、
前記画像形成素子が形成した画像光を被照射部材に投射する投射光学系と、
を備えることを特徴とする画像投射装置。
【請求項17】
前記光学素子の複数レンズの矩形の一辺は、前記光均一化素子の入り口の1辺と略平行である、
ことを特徴とする請求項16に記載の画像投射装置。
【請求項18】
請求項16に記載の画像投射装置と、
前記画像投射装置からの画像光が照射される被照射部材と、
を備え、
前記画像光が照射された前記被照射部材を回転または振動をさせることで3次元像を表示する、
ことを特徴とする表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置、画像投射装置および表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、様々な映像を拡大投影するプロジェクタ(画像投射装置)が広く普及している。プロジェクタは、光源から出射された光をDMD(Digital Mirror Device)または液晶表示素子といった空間光変調素子(画像表示素子)に集光させ、映像信号に基づいて変調された空間光変調素子からの出射光(反射光)をスクリーン上にカラー映像として表示させる装置である。
【0003】
近年、プロジェクタにおいては、光源光学系の高効率化、装置の小型化の要望が強くなってきている。光源光学系の高効率化は、波長変換素子の光変換効率を上げることが必要である。波長変換素子の光変換効率は、波長変換素子に入射される励起光のエネルギー密度によって変動する。具体的には、波長変換素子に入射されるエネルギー密度が高い場合には、温度上昇が生じたり、波長変換層内の励起可能な電子が少なくなったりすることにより、波長変換素子の光変換効率が低下することになる。そのため、エネルギー密度を小さくすることで、波長変換素子の光変換効率の向上を図るようにしている。
【0004】
一方で、波長変換素子上での励起光のエネルギー密度を低下させるために波長変換素子上の励起光スポットサイズを大きくすると、後段の光学系等での光線ケラレが大きくなるため、プロジェクタ全体での光利用効率は低下する。
【0005】
特許文献1には、波長変換素子の光変換効率を上げる目的で、光学素子を用いる技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術によれば、エネルギー密度の低減が十分でなく、波長変換素子の光変換効率が低下する等の問題があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、波長変換素子の光変換効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、光源と、片面もしくは両面に複数のレンズがアレイ状に並んだレンズアレイを有する光学素子と、前記光源から出射され前記光学素子を通過した光の波長を変換する波長変換素子と、を備え、前記光学素子の隣り合う前記レンズの頂点間の距離Pが、前記光学素子に入射する光の光束の幅Dの1/4以下である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、波長変換素子の光変換効率を向上させることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1の実施の形態にかかるプロジェクタを示す概略構成図である。
【
図2】
図2は、カラーホイールの構成の一例を示す図である。
【
図3-1】
図3-1は、光源部の構成を示す模式図である。
【
図3-2】
図3-2は、光源部における光束を示す模式図である。
【
図4】
図4は、光学素子に入射する励起光全体の光源像の輝度を示す輝度断面図である。
【
図5】
図5は、一の光源に対応する光学素子上の光源像の輝度を示す輝度断面図である。
【
図6】
図6は、光学素子を励起光入射側から見た正面図である。
【
図7】
図7は、光学素子の断面を示す断面図である。
【
図8】
図8は、波長変換素子の構成の一例を示す平面図である。
【
図9】
図9は、波長変換素子の断面を示す図である。
【
図10】
図10は、実施例1にかかる光源部を構成する各部の寸法例を示す図である。
【
図11】
図11は、波長変換素子上の像を例示的に示す図である。
【
図12】
図12は、波長変換素子上の像の輝度の分布を示す図である。
【
図13】
図13は、実施例2にかかる光源部を構成する各部の寸法例を示す図である。
【
図14】
図14は、波長変換素子上の像を例示的に示す図である。
【
図15】
図15は、波長変換素子上の像の輝度の分布を示す図である。
【
図16】
図16は、比較例にかかる光源部を構成する各部の寸法例を示す図である。
【
図17】
図17は、波長変換素子上の像を例示的に示す図である。
【
図18】
図18は、波長変換素子上の像の輝度の分布を示す図である。
【
図19】
図19は、光学素子の変形例を励起光入射側から見た正面図である。
【
図20】
図20は、光学素子の変形例の断面を示す断面図である。
【
図21】
図21は、第2の実施の形態にかかる光源部の構成を示す模式図である。
【
図22】
図22は、第3の実施の形態にかかる光源部の構成を示す模式図である。
【
図23】
図23は、第4の実施の形態にかかる光源部の構成を示す模式図である。
【
図24】
図24は、波長変換素子の構成の一例を示す平面図である。
【
図26】
図26は、第5の実施の形態にかかる光源部の構成を示す模式図である。
【
図27】
図27は、波長変換素子の構成の一例を示す平面図である。
【
図29】
図29は、第6の実施の形態にかかる光源部の構成を示す模式図である。
【
図30】
図30は、従来の光学素子のレンズピッチと光束のビームサイズとの関係の一例を示す図である。
【
図31】
図31は、第7の実施の形態における光学素子のレンズピッチと光束のビームサイズとの関係の一例を示す図である。
【
図32】
図32は、光学素子に入射する光線の傾きに応じた波長変換素子上での光分布を示す図である。
【
図33】
図33は、光学素子に入射する励起光全体の光源像の輝度を示す輝度断面図である。
【
図34】
図34は、光学素子への入射角度の調整例を示す図である。
【
図35】
図35は、第8の実施の形態にかかる光源部の構成を示す模式図である。
【
図36】
図36は、反射型光学素子を用いた光学素子への入射角度の調整例を示す図である。
【
図37】
図37は、第9の実施の形態にかかる光源部の構成を示す模式図である。
【
図38】
図38は、透過型光学素子を用いた光学素子への入射角度の調整例を示す図である。
【
図39】
図39は、第10の実施の形態にかかる表示装置の全体構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照して、光源装置、画像投射装置および表示装置の実施の形態を詳細に説明する。
【0012】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態にかかるプロジェクタ1を示す概略構成図である。
【0013】
プロジェクタ(画像投射装置)1は、筐体10と、光源装置20と、光均一化素子30と、照明光学系40と、画像形成素子(画像表示素子)50と、投射光学系60と、制御装置80と、カラーホイール90と、を有している。
【0014】
筐体10は、光源装置20と光均一化素子30と照明光学系40と画像形成素子50と投射光学系60と制御装置80とカラーホイール90とを収納する。
【0015】
光源装置20は、例えば、RGBの各色に対応する波長を含んだ光を出射する。光源装置20は、光源部20A、光源部20Bおよび合成部である光路合成素子20Cを有する。光源部20Aおよび光源部20Bは同じ構造のものであって、所定の形状の光束を出射する。なお、光源部20Aおよび光源部20Bの内部構成については、後に詳細に説明する。光源部20Aと光源部20Bから出射された光束は、光路合成素子20Cによりそれぞれ偏向されて光均一化素子30の入射側面に入射する。なお、本実施の形態においては、光路合成素子20Cとしてプリズムを例として示しているが、これに限るものではない。
【0016】
図1に示すように、プロジェクタ1は、光源部20Aおよび光源部20Bから対向して出力された集光途中の光束を、互いに略90度の角度をなした二つの反射部(
図1では光路合成素子20C)に、それぞれの光束を反射させて偏向し、同一方向に反射させ、それぞれの集光光束を隣接あるいは一部重ね合わせて合成し、同時に光均一化素子30に入射させる。
【0017】
なお、本実施の形態においては、光源装置20は、2つの光源部20A,20Bを用いた例を示しているが、これに限るものではなく、2つ以上例えば4つの光源部を用い、合成する構成としてもよい。
【0018】
光均一化素子30は、光源装置20から出射された光をミキシングすることで均一化する。より詳細には、光均一化素子30は、入射側面から入射した光束を、反射を繰り返しながら内部を伝搬して出射面から出射する。光均一化素子30は、入射側面から入射した光束を、内部で複数回反射することで、均一な面光源を出射面上に形成する。光均一化素子30としては、例えば、内部を中空にして内面に4枚のミラーを組み合わせたライトトンネル、ガラス等の透明な材料で角柱を形成したロッドインテグレータ、フライアイレンズ等が用いられる。例えば、光均一化素子30としてライトトンネルを適用した場合、画像形成素子50のアスペクト比とほぼ同じにして、ライトトンネルの出口の形を画像形成素子50の面上に投影する形とするので、画像形成素子50の面上に無駄なく効率よく照明することができる。
【0019】
照明光学系40は、光均一化素子30が均一化した光で画像形成素子50を略均一に照明する。照明光学系40は、例えば、1枚以上のレンズや1面以上の反射面等を有している。
【0020】
画像形成素子50は、例えば、デジタル・マイクロミラー・デバイス(DMD)、透過型液晶パネル、反射型液晶パネル等のライトバルブを有している。画像形成素子50は、照明光学系40により照明される光(光源装置20の光源光学系からの光)を変調することにより画像光を形成する。
【0021】
制御装置80は、画像形成素子50の面を画素単位で、画像形成素子50に照射された照明光を入力画像に応じて反射あるいは透過するなどしてスイッチングし、投射光学系60へと導く。
【0022】
投射光学系60は、画像形成素子50が形成した画像光をスクリーン(被照射部材)70に拡大投射する。投射光学系60は、例えば、1枚以上のレンズを有している。投射光学系60は、画像形成素子50の面の像を、所望のスクリーン(被照射部材)70の位置に拡大像として結像するような共役関係としているので、画像形成素子50の面上に空間変調された画像光を拡大投射して映し出す。
【0023】
加えて、光均一化素子30の光の出口には、少なくとも青光、緑光、赤光成分を取り出すようにカラーフィルタを切り替える機能を有したカラーホイール90を設けている。カラーホイール90は、蛍光光から所望の色成分を取り出すカラーフィルタを備えている。カラーホイール90は、光源部20Aおよび光源部20Bそれぞれに用いられている波長変換素子26(
図3-1等参照)の回転と、カラーホイール90の回転を同期し、カラーフィルタ切り替えを同期駆動させるとともに、それら切り替えのタイミングに応じて画像形成素子50の面上の画像を表示することで、単色の画像を順次に表示する。このような切り替え時間は目の応答速度より早いため、カラー画像として認識されることになる。
【0024】
より詳細には、カラーホイール90は、カラーフィルタを順次切り替えることによって、蛍光光から、必要な色成分、例えば緑色成分や赤色成分を時間分割にて取り出す。このようにカラーフィルタを順次切り替えるには、カラーフィルタごとにセグメントを設けて、回転モータによって回転させて、順次所望のカラーフィルタが切り替わるようにすればよい。
【0025】
ここで、
図2はカラーホイール90の構成の一例を示す図である。
図2に示すように、カラーホイール90は、青色領域B、黄色領域Y、赤領域R、緑領域Gの4つに別れている。青領域Bは、波長変換素子26の青反射領域A3(
図8参照)に対応し、黄色領域Y、赤領域R、緑領域Gは、波長変換素子26の蛍光体領域A1,A2(
図8参照)にそれぞれ対応するように、同期される。
【0026】
青色領域Bは、透過拡散板を配置することにより、レーザ光源のコヒーレンスを低減することが可能となり、スクリーン(被照射部材)70上でのスペックルを低減させることができる。黄色領域Yは、波長変換素子26の蛍光体領域から発光する黄色の波長領域の光をそのまま透過させる。また、赤領域R、緑領域Gは、それぞれダイクロイックミラーを用いることにより、黄色の波長域の光から不要な波長域の光を反射させ、純度の高い色の光を得る。
【0027】
カラーホイール90において作られた各色は、照明光学系40を通して画像形成素子50に導かれる。画像形成素子50は、各色に対応した画像を形成する。そして、画像形成素子50が形成した画像は、投射光学系60によってスクリーン(被照射部材)70に拡大投影される。
【0028】
ここで、
図3-1は光源部20Aの構成を示す模式図、
図3-2は光源部20Aにおける光束を示す模式図である。なお、光源部20Bも同様の構成である。
【0029】
光源部20A(20B)は、光の伝搬方向に順に配置された、レーザ光源(励起光源)21と、レーザ光源(励起光源)21を構成するそれぞれの光源に対応して設けられたコリメータレンズ22と、第1の光学系23と、光学素子28と、ダイクロイックミラー24と、第2の光学系(集光光学系)25と、波長変換プレートである波長変換素子26と、第3の光学系27と、を有している。第1の光学系23を構成しているのは、正のパワーを有する正レンズ23aと負のパワーを有する負レンズ23bである。第2の光学系25を構成しているのは、2つの正レンズ25a,25bである。なお、第1の光学系23の負レンズ23bの外径は、第2の光学系25の正レンズ25aの外径(後述のDopt)の1/2以下である。これにより、光束を細くすることができるため、小型化することが可能になる。例えば、光源装置20のうち、レーザ光源21および波長変換素子26を除いた構成要素によって「光源光学系」が構成される。光源部20A(20B)は、上述の各部を、レーザ光源21から出射する励起光の伝搬順に配置する。
【0030】
レーザ光源21は、複数の光源(発光点)を有している。レーザ光源21としては、発光点が二次元アレイ上に並んだレーザダイオードが用いられる。
図3-1では、上下方向に並ぶ4個の光源を描いているが、実際には、4個の光源が紙面直交方向(奥行方向)に4列に並んでおり、4×4=16個の光源が二次元的に配列されている。レーザ光源21の各光源は、波長変換素子26が備える蛍光体を励起させる励起光として、例えば発光強度の中心波長が455nmの青色帯域の光(青色レーザ光)を出射する。
【0031】
光源としては、例えば金属ブロックにレーザダイオードが配置されたもの、または、一つの基板上にアレイ状にレーザダイオードチップを並べたマルチチップ品を用いることができる。なお、本実施形態では、光源としてマルチチップ品を用いることができるとしているが、これに限るものではなく、CANタイプのレーザをアレイ状に並べたものなどを用いることも可能である。
【0032】
レーザ光源21の各光源から出射される青色レーザ光(第1の色光)は、偏光状態が一定の直線偏光であり、ダイクロイックミラー24に対してS偏光となるように配置されている。ここで、S偏光となるように入射させるとしたが、P偏光やその他の偏光状態としてもよい。レーザ光源21の各光源から出射される青色レーザ光は、コヒーレント光である。また、レーザ光源21の各光源から出射される励起光は、波長変換素子26が備える蛍光体を励起させることができる波長の光であればよく、青色帯域の光に限定されるものではない。
【0033】
なお、レーザ光源21は、複数の光源を用いることを例として示しているが、単一のレーザ光源でもよい。また、レーザ光源21としては、基板上にアレイ状に配置した光源ユニットを使用してもよいが、これに限定されるものではない。本実施形態においては、
図3-2に示すように、複数または単数のレーザ光源により形成される光束の中心線を、主光線とする。
【0034】
コリメータレンズ22は、レーザ光源21の16個の光源に対応して16個設けられている。各コリメータレンズ22は、レーザ光源21の各光源が出射した励起光を略平行光となるように調整する。コリメータレンズ22の数は、レーザ光源21の光源の数に対応していればよく、レーザ光源21の光源の数の増減に応じて増減することができる。
【0035】
光学素子28は、複数のレンズがアレイ状に並んだレンズアレイ面を持つマイクロレンズアレイである。光学素子28は、光線のプロファイルを変化させる。具体的には、光学素子28は、波長変換素子26上に形成される光スポットの光密度を均一にし、波長変換素子26の局所的な温度上昇を抑え、波長変換効率が低下することを防ぐ。なお、光学素子28のレンズアレイ面は、光の入射面または出射面のいずれか単面でもよく、または光の入射面および出射面の複数面でもよい。光学素子28は、少なくとも2面のレンズアレイ面を有することにより、低損失な画像投射装置を実現することができる。また、光学素子28は、入射面と出射面のどちらか一方にレンズアレイ面を有することにより、安価な画像投射装置を実現することができる。また、光学素子28は、単体でも複数でもよいものとする。本実施形態の光学素子28は、矩形形状の複数の球面レンズを、表裏両面にアレイ状に並べたレンズアレイである。
【0036】
複数のレーザ光源21より出射された励起光は、レーザ光源21の各光源に対応したコリメータレンズ22により略平行光となる。略平行光となった励起光は、第1の光学系23に入射する。第1の光学系23の光軸は、レーザ光源21のアレイの中心を通るように配置される。つまり、主光線は、第1の光学系23の光軸と一致する。励起光の光束は、第1の光学系23により縮小され、光束幅Dの光束となって光学素子28に入射する。このように第1の光学系23を用いることにより光束を細くすることができるため、光源光学系を小型化することが可能になる。このとき、各励起光源一つ一つより射出される励起光の光学素子28上のそれぞれの光源像の光束幅は、Dsingleである。第1の光学系23を通過した励起光は、光学素子28を通過し、第1の光学系23の光軸に対して45度の角度で配置されたダイクロイックミラー24へと導かれる。
【0037】
なお、本実施形態においては、ダイクロイックミラー24を45度の角度で配置した構成を示しているが、他の角度でもよい。
【0038】
ここで、
図4は光学素子28に入射する励起光全体の光源像の輝度を示す輝度断面図、
図5は一の光源に対応する光学素子28上の光源像の輝度を示す輝度断面図である。
図4に示す例では、レーザ光源21の複数の光源より出射された励起光の並びが、離散的な分布になっている。
図4に示すように、光学素子28に入射する励起光の光束幅Dは、輝度断面の包絡線において最大輝度の1/e
2の輝度が得られる幅とする。また、
図5に示すように、レーザ光源21の一の光源より射出される励起光の光学素子28上の光源像の最大輝度の1/e
2の輝度が得られる幅は、D
singleとする。なお、後述の光束についても同様の定義である。
【0039】
次に、光学素子28について詳述する。ここで、
図6は光学素子28を励起光入射側から見た正面図、
図7は光学素子28の断面を示す断面図である。
図6および
図7に示すように、本実施形態の光学素子28は、矩形形状の複数の球面レンズを、表裏両面にアレイ状に並べたレンズアレイである。このようなレンズアレイである光学素子28の焦点距離と、第2の光学系25の焦点距離とを適切に設定することにより、レンズアレイのそれぞれのレンズと同様の形状の像を、波長変換素子26上に形成することが可能になる。また、レンズを矩形状にすることにより、光均一化素子30や画像形成素子50で効率的に光を利用することができる。
【0040】
図7に示すように、光学素子28の隣り合うレンズ頂点間の距離は、レンズピッチPである。上述したように、球面レンズは矩形形状(長方形形状)である。つまり、光学素子28の球面レンズのレンズピッチPは、X方向とY方向とで異なる。光学素子28の球面レンズを矩形形状(長方形形状)としているのは、複数レンズの矩形の1辺を光均一化素子30の入り口の一辺と略平行とし、光均一化素子30もしくは画像形成素子50と略相似形状とするためである。これにより、光学系での光のケラレが少なくなるため光変換効率を向上させることができる。なお、本実施形態においては光学素子28の球面レンズを矩形形状(長方形形状)としたが、これに限るものではなく、三角形、六角形等の形状であってもよい。
【0041】
ダイクロイックミラー24は、平行平板形状のガラス板である。ダイクロイックミラー24は、第1の光学系23から導かれた励起光の波長帯域のS偏光(第1の偏光成分)を反射し、第1の光学系23から導かれた励起光の波長帯域のP偏光(第2の偏光成分)および波長変換素子26からの蛍光光(第2の色光)を透過するようなコートを、入射面側に施している。
【0042】
ダイクロイックミラー24は、その中心を第2の光学系25の光軸に対してシフトさせ、励起光を波長変換素子26の法線に対して傾いて入射する。すなわち、光学素子28より射出された励起光は、ダイクロイックミラー24で折り返される。
【0043】
なお、本実施の形態では、光学素子28を通過した光を波長変換素子26に導く光学面として平板状のダイクロイックミラー24を用いている。ダイクロイックミラー24は、励起光と蛍光光を効率よく導光することができるため、光源光学系の高効率化をすることが可能になる。ただし、光学素子28を通過した光を波長変換素子26に導く光学面としては、プリズムタイプを用いることも可能である。また、本実施の形態では、ダイクロイックミラー24が、励起光の波長帯域のS偏光を反射してP偏光を透過しているが、これとは逆に、励起光の波長帯域のP偏光を反射してS偏光を透過するようにしてもよい。また、反射型光学素子は、単なるミラーであってダイクロイックミラーのような波長特性を持つものでも、DOEのような回折光学素子でもよい。
【0044】
図3-1に示すように、ダイクロイックミラー24により反射された励起光は、光路を90度回転させられ、集光光学系である第2の光学系25へと入射する。ここで、第1の光学系23と第2の光学系25の光軸は実質的に偏心している。第2の光学系25を通過した励起光は、波長変換素子26へ導かれる。励起光は、第2の光学系25に偏心して入射する。励起光は、波長変換素子26に対して斜めに入射することにより、所望の集光スポットを波長変換素子26上に形成する。波長変換素子26の青反射領域A3(
図8参照)で反射された励起光は、再び第2の光学系25を通過し、第2の光学系25の光軸に対してダイクロイックミラー24の反対側を通過し、第3の光学系27を透過し、光路合成素子20Cで偏向され、光均一化素子30に入射する。光均一化素子30は、入射した光を均一化する。
【0045】
また、
図3-1に示すように、波長変換素子26の蛍光体領域(黄蛍光体領域A1および緑蛍光体領域A2:
図8参照)は、励起光が入射すると、励起光を受けて波長変換された蛍光光を蛍光分子の周辺360度において発する。波長変換素子26の蛍光体領域において発される蛍光光は黄色または緑色の成分を含む。また、波長変換素子26の基板26a(
図9参照)の表面(基板面)で反射された励起光は、再び蛍光体領域(黄蛍光体領域A1および緑蛍光体領域A2)を通過して、蛍光体領域(黄蛍光体領域A1および緑蛍光体領域A2)の表面側にランバート分布にて蛍光光を発する。波長変換素子26の蛍光体領域(黄蛍光体領域A1および緑蛍光体領域A2)で発せられた蛍光光は、光路合成素子20C(
図1参照)を介して光均一化素子30に導かれる。より詳細には、蛍光光は、第2の光学系25により略平行光とされ、第3の光学系27により光均一化素子30近傍に集光するように屈折され、光路合成素子20Cで偏向され、光均一化素子30に入射する。
【0046】
これにより、
図3-1に示すように波長変換素子26で反射された励起光がダイクロイックミラー24等に干渉されることなく光均一化素子30へ導くことができ、効率低下や光学系の大型化を防ぐことが可能になる。
【0047】
なお、本実施形態では、波長変換素子26で反射された励起光がダイクロイックミラー24を通らない構成を示したが、これに限るものではない。例えば、ダイクロイックミラー24を大きくし、半分の面のコートは励起光を反射するとともに蛍光光を透過する特性とし、残りの半分を励起光および蛍光光を透過する特性を有したダイクロイックミラー24を利用することも可能である。
【0048】
この場合、励起光が波長変換素子26の蛍光体領域(黄蛍光体領域A1および緑蛍光体領域A2:
図8参照)に入射した場合は、蛍光光は励起光の入射面側から射出され、第2の光学系25に入射される。第2の光学系25を通った光の一部は、ダイクロイックミラー24の励起光反射部を透過し、集光レンズ27に入射し、光均一化素子30、カラーホイール90に導かれる。
【0049】
図8は、波長変換素子26の構成の一例を示す平面図である。本実施の形態にかかる波長変換素子26は、
図8に示すように、円盤状である。波長変換素子26は、波長変換部材(蛍光体)26fを備える変換領域である黄蛍光体領域(第1波長変換領域)A1、波長変換部材(蛍光体)26gを備える変換領域である緑蛍光体領域(第2波長変換領域)A2、およびレーザ光源(励起光源)21から出射された光を反射させる青反射領域(言い換えると、レーザ光源(励起光源)21から受光した光の波長を変換することなく出射する無変換領域)A3の3つのセグメントが、所望の角度で円盤状のプレートの周辺に帯状に形成された波長変換プレートである。
【0050】
黄蛍光体領域A1は、例えば、青色レーザ光を励起光として受けて黄色の波長帯域の蛍光光を発する黄色の蛍光体26fにより形成されている。緑蛍光体領域A2は、例えば、青色レーザ光を励起光として受けて緑色の波長帯域の蛍光光を発する緑色の蛍光体26gにより形成されている。
【0051】
なお、本実施形態においては、黄蛍光体領域A1と緑蛍光体領域A2との二種の蛍光体を用いたが、これに限るものではない。例えば、黄蛍光体領域A1のみでも構わないし、赤蛍光体領域をさらに追加してもよい。また、波長変換素子26は、青反射領域A3を複数備えるようにしてもよい。
【0052】
そして、円盤状の波長変換素子26は、制御装置80に制御される駆動部により高速に回転駆動されることで、黄蛍光体領域A1と緑蛍光体領域A2と青反射領域A3とを周期的に順次移動することができる。なお、駆動部は、通常は回転モータMが好ましい。そして、波長変換素子26は、駆動部による回転駆動に伴って、レーザ光源(励起光源)21から光が照射される位置である集光スポットにおいて黄蛍光体領域A1と緑蛍光体領域A2と青反射領域A3とが入れ替わり、波長が異なる光を時分割で射出する。
【0053】
なお、光源部20A(20B)は、波長変換素子26のホイールまたは当該ホイールを支持して回転している部材に、光吸収または反射部材を配置し、フォトカプラーで検出するなどして二つの波長変換素子26の回転速度を同一にする。
【0054】
図9は、波長変換素子26の断面を示す図である。波長変換素子26の基板26aとしては、透明基板やアルミニウムのような金属基板を用いることができる。ただし、波長変換素子26の基板26aは、金属基板に限定するものではない。
【0055】
励起光を反射する青反射領域A3においては、例えば励起光により高い反射率を有する反射コート26bを基板26a上に形成してもよく、また、前述の通り金属基板とすることで反射領域とすることができる。
【0056】
蛍光体領域(黄蛍光体領域A1および緑蛍光体領域A2)においては、基板26a上に蛍光体26f,26gからの発光光の波長領域の光を反射させる反射コート26bと、蛍光体26f,26gと、蛍光体表面での反射を低減する反射防止コート(ARコート)26cと、を順に備える。ただし、蛍光体領域(黄蛍光体領域A1および緑蛍光体領域A2)の構成は、これに限るものではない。なお、基板26aを金属基板とした場合、反射コート26bを省くことも可能である。
【0057】
蛍光体26f,26gとしては、蛍光体材料を有機または無機のバインダー内に分散させたものや、蛍光体材料の結晶を直接形成したものでもよい。また、蛍光体材料としては、例えばCe:YAG系のなどの希土類蛍光体を用いることができるが、これに限定したものではなく、燐光体や非線形光学結晶などを用いてもよい。
【0058】
蛍光体より発光する蛍光光の波長帯域は、例えば黄色や青、緑、赤の波長帯域のものを用いることができるが、本実施形態においては黄色の波長帯域および緑色の波長帯域を有する蛍光光を用いる場合について示している。
【0059】
近年、プロジェクタ1においては、光源光学系の高効率化、装置の小型化の要望が強くなってきている。光源光学系の高効率化は、波長変換素子26の光変換効率を上げることが必要である。波長変換素子26の光変換効率は、波長変換材料に入射される励起光のエネルギー密度によって変動する。具体的には、波長変換素子26に入射されるエネルギー密度が高い場合には、温度上昇が生じたり、蛍光体領域(黄蛍光体領域A1および緑蛍光体領域A2)の励起可能な電子が少なくなったりすることにより、波長変換素子26の光変換効率が低下することになる。そのため、エネルギー密度を小さくすることで、波長変換素子26の光変換効率の向上を図るようにしている。
【0060】
一方で、波長変換素子26上での励起光のエネルギー密度を低下させるため、波長変換素子26上の励起光のスポットサイズを大きくすると、後段の光学系等での光線ケラレが大きくなるため、プロジェクタ1全体での光利用効率は低下する。
【0061】
すなわち、プロジェクタ1の光利用効率の向上には、エネルギー密度の低減と最適なスポットサイズを得ることが重要となっている。
【0062】
そこで、本実施形態においては、光源部20を構成する各部の寸法について以下に示すような設定としている。
【0063】
図3-2に示すように、ダイクロイックミラー24上に形成される励起光像の光束幅は、D
mirrorとする。また、第2の光学系25の入射面側の光学素子(本実施形態では正レンズ25a)の外径をD
optとする。D
optは、正レンズ25aを入射側から視たときに、中心点を通る正レンズ25aの端から端までの長さのうち最大の長さである。これは、正円だけでなく楕円も考慮しての定義である。
【0064】
ここで、レーザ光源21の一の光源より射出される励起光の光学素子28上の光源像の最大輝度の1/e2の輝度が得られるレンズピッチPは、幅Dsingleの1/2以下とする。これにより、一つの光源の光源像に対して、マイクロレンズアレイのピッチを最適にすることにより、蛍光体状の光源像の均一化をより図ることができる。
また、レンズピッチPは、光学素子28に入射する光束の幅Dの1/4以下とする。さらに、光学素子28に入射する光束幅Dを第2の光学系25の入射側の光学素子(正レンズ25a)の外径Doptの1/3以下とする。これにより、ダイクロイックミラー24を小型化することができるため、部品と光との干渉をさけることができ、効率向上、小型化をすることが可能になる。さらに、ダイクロイックミラー24上の励起光像の光束幅Dmirrorを外径Doptの1/3以下にする。
【0065】
なお、矩形形状の複数の球面レンズを表裏両面にアレイ状に並べたレンズアレイである光学素子28は、レンズピッチPは表面と裏面との両方で条件を満たしているものとする。
【0066】
ここで、波長変換素子26上の像の強度分布について、いくつか実施例を挙げて説明する。
【0067】
(実施例1)
まず、実施例1について説明する。
【0068】
ここで、
図10は実施例1にかかる光源部20を構成する各部の寸法例を示す図である。
図10に示すように、実施例1にかかる光源部20を構成する各部の寸法は、下記に示す各条件を満たしている。
D/D
opt<1/3
P/D<1/4
D
mirror/D
opt<1/3
P/D
single<1/2
【0069】
ここで、
図11は波長変換素子26上の像を例示的に示す図、
図12は波長変換素子26上の像の輝度の分布を示す図である。
図12は、
図11におけるX軸およびY軸方向の輝度を示すものである。
【0070】
レンズピッチPが光学素子28に入射する光束の幅Dの1/4以下であるという条件を満たした結果、
図12に示す波長変換素子26上の像の輝度の分布によれば、トップハット形状に近くなっており、波長変換素子26上の像が全体に均一な像となっていることがわかる。これにより、波長変換素子26の局所的な温度上昇を防ぐことができるため、波長変換素子26の光変換効率を向上させることが可能になる。
【0071】
(実施例2)
次に、実施例2について説明する。
【0072】
ここで、
図13は実施例2にかかる光源部20を構成する各部の寸法例を示す図である。
図13に示すように、実施例2にかかる光源部20を構成する各部の寸法は、下記に示す各条件を満たしている。
D/D
opt<1/3
P/D<1/4
D
mirror/D
opt<1/3
P/D
single<1/2
【0073】
ここで、
図14は波長変換素子26上の像を例示的に示す図、
図15は波長変換素子26上の像の輝度の分布を示す図である。
図15は、
図14におけるX軸およびY軸方向の輝度を示すものである。
【0074】
レンズピッチPが光学素子28に入射する光束の幅Dの1/4以下であるという条件を満たした結果、
図15に示す波長変換素子26上の像の輝度の分布によれば、第1の実施形態と比べると弱まってはいるが、トップハット形状に近くなっており、波長変換素子26上の像が全体に均一な像となっていることがわかる。これにより、波長変換素子26の局所的な温度上昇を防ぐことができるため、波長変換素子26の光変換効率を向上させることが可能になる。
【0075】
(比較例)
次に、比較例について説明する。
【0076】
ここで、
図16は比較例にかかる光源部20を構成する各部の寸法例を示す図である。
図16に示すように、比較例にかかる光源部20を構成する各部の寸法は、下記に示す条件を満たしていない。これは、光学素子28に入射する光束の幅Dに含まれる光学素子28を構成するレンズアレイのレンズ数が足りていないためである。
P/D<1/4
【0077】
ここで、
図17は波長変換素子26上の像を例示的に示す図、
図18は波長変換素子26上の像の輝度の分布を示す図である。
図18は、
図17におけるX軸およびY軸方向の輝度を示すものである。
【0078】
上述の条件を満たしていない場合、
図18に示すように、特にX方向の中心部分において局所的に集光している部分ができてしまうため、波長変換素子26の温度が上昇し、光変換効率が大幅に低下してしまう。
【0079】
このように本実施形態によれば、後段の第3の光学系27でのケラレが発生することなく、かつ均一なスポットを波長変換素子26上に結像することができ、波長変換素子26の光変換効率を向上させることが可能になる。
【0080】
なお、本実施形態においては、光学素子28は、矩形形状の複数の球面レンズを、表裏両面にアレイ状に並べたレンズアレイであるとしたが、これに限るものではない。ここで、
図19は光学素子28の変形例を励起光入射側から見た正面図、
図20は光学素子28の変形例の断面を示す断面図である。
図19および
図20に示すように、光学素子28は、励起光入射側または励起光出射側のいずれか片面のみレンズアレイを有するものであってもよい。このような光学素子28は、表裏両面にレンズアレイを有するものに比べると均一化が少し劣ることになるが、十分な均一化をすることが可能になる。
【0081】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態について説明する。
【0082】
第2の実施の形態は、励起光がダイクロイックミラー24を透過する構成となっている点が、第1の実施の形態と異なるものとなっている。以下、第2の実施の形態の説明では、第1の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0083】
図21は、第2の実施の形態にかかる光源部20Aの構成を示す模式図である。なお、光源部20Bも同様の構成である。
【0084】
図21に示すように、本実施形態のダイクロイックミラー24は、平面内で2つの領域24a,24bに分かれており、第1の光学系23より射出された励起光が通る第1の領域24aにおいては、励起光の波長帯域の光を透過する。第2の光学系25から射出される励起光が通る第2の領域24bにおいては、励起光の波長帯域の光を反射、波長変換素子26より発生する蛍光光を全面で反射する。
【0085】
なお、本実施形態のダイクロイックミラー24は、平板のダイクロイックミラーを用いているが、これに限るものではなく、プリズムタイプのダイクロイックミラーを用いることもできる。
【0086】
より詳細には、ダイクロイックミラー24の第1の領域24aを透過した励起光は、第2の光学系(集光光学系)25へと入射する。ここで、
図21に示すように、第1の光学系23と第2の光学系(集光光学系)25の光軸は実質的に偏心している。
【0087】
第2の光学系(集光光学系)25を通過した励起光は、波長変換素子26へ導かれる。第2の光学系(集光光学系)25に偏心して入射されることにより、波長変換素子26に対して励起光が斜めに入射する。ここで、波長変換素子26の構成は、第1の実施の形態と同様である。
【0088】
波長変換素子26に入射した励起光は、波長変換素子26の青反射領域A3で正反射される。そのため、
図21に示すように、第2の光学系(集光光学系)25の入射側とは反対側を通って、第2の光学系(集光光学系)25より射出される。
【0089】
第2の光学系(集光光学系)25から射出された励起光は、ダイクロイックミラー24の第2の領域24bで反射され、第3の光学系27に入射し、光均一化素子30およびカラーホイール90に導かれる。
【0090】
また、励起光が波長変換素子26の蛍光体領域(黄蛍光体領域A1および緑蛍光体領域A2)に入射した場合、蛍光光が励起光の入射面側から射出され、第2の光学系(集光光学系)25に入射される。第2の光学系(集光光学系)25を通った光の少なくとも一部は、ダイクロイックミラー24の第2の領域24bで反射され、第3の光学系27に入射し、光均一化素子30およびカラーホイール90に導かれる。
【0091】
このように本実施形態によれば、後段の第3の光学系27でのケラレが発生することなく、かつ均一なスポットを波長変換素子26上に結像することができ、波長変換素子26の光変換効率を向上させることが可能になる。
【0092】
(第3の実施の形態)
次に、第3の実施の形態について説明する。
【0093】
第3の実施の形態は、レーザ光源21から射出される励起光の光束が細く、第1の光学系23が存在しない構成となっている点が、第1の実施の形態と異なるものとなっている。以下、第3の実施の形態の説明では、第1の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0094】
図22は、第3の実施の形態にかかる光源部20Aの構成を示す模式図である。なお、光源部20Bも同様の構成である。
【0095】
図22に示すように、本実施形態のレーザ光源21は、複数の光源(発光点)を有している。レーザ光源21としては、発光点が二次元アレイ上に並んだレーザダイオードが用いられる。
図22では、上下方向に並ぶ2個の光源を描いているが、実際には、2個の光源が紙面直交方向(奥行方向)に4列に並んでおり、2×4=8個の光源が二次元的に配列されている。レーザ光源21の各光源は、波長変換素子26が備える蛍光体を励起させる励起光として、例えば発光強度の中心波長が455nmの青色帯域の光(青色レーザ光)を出射する。なお、波長帯域については蛍光体を励起させることができる波長の光であれば青色帯域の光に限定されるものではない。また、
図22においては、レーザ光源21は複数のレーザ光源を用いることを例として示しているが、これに限るものではなく、単一のレーザ光源でもよい。また、レーザ光源21を構成する複数のレーザ光源としては、基板上にアレイ状に配置した光源ユニットを使用してもよいが、これに限定されるものではない。
【0096】
図22に示すように、レーザ光源21を構成する複数または単数のレーザ光源により形成される光束の中心線をここでは主光線とする。光束が小さい光源として、本実施形態のレーザ光源21としては、半導体レーザの一種であるVCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser;垂直共振器型面発光レーザ)等が用いられる。
【0097】
レーザ光源21より射出された励起光は、それぞれのレーザ光源に対応したコリメータレンズ22により略平行光となる。略平行となった励起光は、光学素子28を通過したのち、主光線に対して45度の角度で配置されたダイクロイックミラー24へと導かれる。
【0098】
このように本実施形態によれば、小型で安価な構成であっても、後段の第3の光学系27でのケラレが発生することなく、かつ均一なスポットを波長変換素子26上に結像することができ、波長変換素子26の光変換効率を向上させることが可能になる。
【0099】
(第4の実施の形態)
次に、第4の実施の形態について説明する。
【0100】
第4の実施の形態は、波長変換素子26の構成が異なる点、カラーホイール90が省略されている点、第3の光学系27が省略されている点が、第1の実施の形態と異なるものとなっている。以下、第4の実施の形態の説明では、第1の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0101】
図23は第4の実施の形態にかかる光源部20Aの構成を示す模式図、
図24は波長変換素子26の構成の一例を示す平面図、
図25は波長変換素子26の断面を示す図である。なお、光源部20Bも同様の構成である。
【0102】
図24に示すように、本実施形態の波長変換素子26は、第1の実施の形態とは異なり、波長変換素子26の領域が分割されておらず、円周方向に単一の蛍光体領域A4を有している。
【0103】
図25に示すように、波長変換素子26は、基板26a上に蛍光光と励起光の波長領域を反射する反射コート26bと、蛍光体26fと、励起光の一部を反射して蛍光光と励起光の一部を透過する反射コート26dと、が形成されている。蛍光体26fとしては、蛍光体材料を有機または無機のバインダー内に分散させたものや、蛍光体材料の結晶を直接形成したものでもよい。また、蛍光体材料としては、例えばCe:YAG系のなどの希土類蛍光体を用いることができるが、これに限定したものではない。蛍光体より発光する光の波長帯域は、例えば黄色とすることで、励起光の青色と組み合わせることで白色光を得ることができる。本実施形態においては、入射側面を反射コート26dとしているが、拡散面などであってもよい。
【0104】
図23に戻り、波長変換素子26の反射コート26bで反射された励起光は、再び第2の光学系25を通過し、第2の光学系25より射出された励起光は、ダイクロイックミラー24を通らずに、後段の照明光学系に導かれる。
【0105】
また、波長変換素子26の蛍光体26fに励起光が入射することにより射出される蛍光光は、第2の光学系25により略平行光とされ、ダイクロイックミラー24を一部通過し、後段の照明光学系に導かれる。
【0106】
なお、本実施形態においては、励起光がダイクロイックミラー24で反射される構成を示したが、
図21に示したようにダイクロイックミラーを透過し、蛍光体に入射する方式としてもよい。
【0107】
このように本実施形態によれば、部品数を削減した安価な構成であっても、均一なスポットを波長変換素子26上に結像することができ、波長変換素子26の光変換効率を向上させることが可能になる。
【0108】
(第5の実施の形態)
次に、第5の実施の形態について説明する。
【0109】
第5の実施の形態は、波長変換素子26の青反射領域が青透過領域になり、青光路が別光路になっている点が、第1の実施の形態と異なるものとなっている。以下、第5の実施の形態の説明では、第1の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0110】
図26は第5の実施の形態にかかる光源部20Aの構成を示す模式図、
図27は波長変換素子26の構成の一例を示す平面図、
図28は波長変換素子26の断面を示す図である。なお、光源部20Bも同様の構成である。
【0111】
図27に示すように、本実施形態の波長変換素子26は、第1の実施の形態で青反射領域A3であった箇所を、青透過領域A5としている。
図28に示すように、波長変換素子26の青透過領域A5は、透明基板26e上に反射防止コート(ARコート)26cが形成されている。
【0112】
図26に示すように、波長変換素子26の青透過領域A5を透過した励起光は、集光光学系で略平行光になり、第4の光学系29を経由してミラー31~33により反射され、ダイクロイックミラー24に導かれる。ダイクロイックミラー24に導かれた光は、ダイクロイックミラー24により蛍光光の光路と合成され、第3の光学系27を通り、光均一化素子30およびカラーホイール90に導かれる。
【0113】
このように本実施形態によれば、後段の第3の光学系27でのケラレが発生することなく、かつ均一なスポットを波長変換素子26上に結像することができ、波長変換素子26の光変換効率を向上させることが可能になる。
【0114】
(第6の実施の形態)
次に、第6の実施の形態について説明する。
【0115】
第6の実施の形態は、集光光学系として放物面ミラーを用いる点が、第1の実施の形態と異なるものとなっている。以下、第6の実施の形態の説明では、第1の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0116】
図29は第6の実施の形態にかかる光源部20Aの構成を示す模式図である。なお、光源部20Bも同様の構成である。
【0117】
図29に示すように、集光光学系である放物面ミラー34は、放物面の焦点に、波長変換素子26の表面がくるように配置される。これにより、波長変換素子26上にスポットを結像することができる。
【0118】
図29に示すように、ダイクロイックミラー24で反射された励起光は、放物面ミラー34で反射集光され、波長変換素子26上にスポットを結像する。励起光によって発光した蛍光光は、放物面ミラー34により平行光になり、ダイクロイックミラー24を一部通過し、第3の光学系27で集光され、光均一化素子30およびカラーホイール90に導かれる。
【0119】
また、
図29に示すように、波長変換素子26の青反射領域A3により反射された励起光は放物面ミラーで平行光になり、第3の光学系27で集光され、光均一化素子30およびカラーホイール90に導かれる。
【0120】
このように本実施形態によれば、後段の第3の光学系27でのケラレが発生することなく、かつ均一なスポットを波長変換素子26上に結像することができ、波長変換素子26の光変換効率を向上させることが可能になる。
【0121】
(第7の実施の形態)
次に、第7の実施の形態について説明する。
【0122】
第7の実施の形態は、光学素子28への光線入射角度を調整することを可能とするとともに、入射角度の適切な範囲を設定するようにした点が、第1の実施の形態と異なるものとなっている。以下、第7の実施の形態の説明では、第1の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0123】
本件特許出願の発明者はレーザ光源21として高輝度のレーザ光源の開発を行っている。このような高輝度のレーザ光源では、光学素子28のレンズアレイのピッチを光学素子28に入射する光の光束の幅の1/4以下とすることが好ましいことを実験により得た。しかし、このような狭いピッチのレンズアレイを用いると、光学素子28へのレーザ光の入射角度の要件が非常に厳しくなる課題が新たに判明した。
【0124】
一方、上記構成の光源光学系を組み立てた場合、各構成部品及びその固定手段の公差によって、光学素子28への入射角度にばらつきが生じてしまう。このように光学素子28への入射角度にばらつきが生じると、波長変換素子26上の光スポットの光密度が不均一となり、波長変換素子28の光変換効率が低下することになる。
【0125】
そこで、本実施の形態の光源光学系においては、光学素子28への光線入射角度を調整することを可能とするとともに、入射角度の適切な範囲を設定している。
【0126】
ここで、
図30は従来の光学素子のレンズピッチと光束のビームサイズとの関係の一例を示す図、
図31は第7の実施の形態における光学素子28のレンズピッチと光束のビームサイズとの関係の一例を示す図である。なお、光線のプロファイルはガウスでもトップハットでもよく、ここでの光束とは全光量の80%以上が集中する領域を指す。また、
図32は光学素子28に入射する光線の傾きに応じた波長変換素子26上での光分布を示す図である。
図32(a)は光学素子28に入射する光線が傾きなく入射した場合を示し、
図32(b)は光学素子28に入射する光線がわずかに傾いて入射した場合を示す。
【0127】
図31に示すように、波長変換素子26上での光分布を均一(
図32(a))にするために、光学素子28は、入射する光束の幅に対して小さな(光束の幅の1/4以下)レンズピッチp2のレンズアレイ面を使用する。なお、光学素子28のレンズアレイ面のレンズピッチp2は、X、Y方向両方ともに光束の幅に対して1/4以下である。
【0128】
ここで、
図33は光学素子28に入射する励起光全体の光源像の輝度を示す輝度断面図である。
図33に示す例では、レーザ光源21の複数の光源より出射された励起光の並びが、離散的な分布になっている。
図33に示すように、光学素子28に入射する励起光の光束幅Dは、輝度断面の包絡線において最大輝度の1/e
2の輝度が得られる幅とする。
【0129】
図30に示す従来の光学素子おいては、光束の幅に対して十分に大きいピッチp1のレンズアレイ面を使用していた。一方、本実施の形態の光学素子28は、光束の幅の1/4以下のピッチp2のレンズアレイ面を使用するため、
図32(b)に示すように、光学素子28に入射する光線がわずかに傾くと、波長変換素子26上での光スポットが均一にならない、という問題がある。
【0130】
そこで、本実施形態においては、第1の光学系23を構成する正レンズ23aと負レンズ23bとの少なくともいずれか一つについてシフトまたはチルトもしくはその両方を調整手段により調整することで、光学素子28への入射角度が3度以内になるように調整する。調整手段による調整は、第1の光学系23を構成する正レンズ23aと負レンズ23bとの少なくともいずれか一つについてシムプレートなどのスペーサを挟むことで行うものとするが、ネジとばねなどによる機構でもよい。このように、第1の光学系23と調整手段を一体にすることで、小型安価な画像投射装置を実現することができる。
【0131】
ここで、入射角度とは光束の中心もしくは重心の軌跡が描く線が光学素子に入射する際の、入射面に対する法線とのなす角度である。
図32に示すように、波長変換素子26上の光分布が、小さく均一なスポットを形成することが光変換効率の点からよく、光学素子28への入射角度を3度以内としているのは、この効率の影響・変動が許容される範囲であるためである。
【0132】
より詳細には、光学素子28への入射角度が3度を超えると、隣のマイクロレンズに光が入ることで生じるゴーストの光量が50%以上となってしまう。ゴースト部の光量を50%とする根拠は、一般的に人の知覚はlogスケールなので、高輝度光源のように光源自体の光量が十分であれば、調整によって個体差で50%ばらついたとしても人間の知覚上ではその差は小さく、規格上許容できるためである。
【0133】
ここで、
図34は光学素子28への入射角度の調整例を示す図である。
図34に示す例は、第1の光学系23を構成する正レンズ23aを、不図示の調整手段により矢印A方向にシフト(移動)することにより、光学素子28への入射角度が3度以内になるように調整したものである。
【0134】
このように本実施形態によれば、光学素子28への光線の入射角度を適切にすることで、波長変換素子26上の光スポットの光密度を均一化して波長変換素子26の温度上昇を抑制することで、波長変換素子26の光変換効率の低下を避けることができるので、高効率な画像投射装置を実現することができる。
【0135】
(第8の実施の形態)
次に、第8の実施の形態について説明する。
【0136】
第8の実施の形態は、励起光を反射する反射型光学素子を第1の光学系23と光学素子28との間に設け、反射型光学素子についてシフトまたはチルトもしくはその両方の調整を行うようにした点が、第7の実施の形態と異なるものとなっている。以下、第8の実施の形態の説明では、第7の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第7の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0137】
図35は、第8の実施の形態にかかる光源部20Aの構成を示す模式図である。なお、光源部20Bも同様の構成である。
【0138】
図35に示すように、本実施形態の光源部20Aは、反射型光学素子29を、第1の光学系23と光学素子28との間に設けている。本実施形態においては、反射型光学素子29としてダイクロイックミラーを適用する。なお、反射型光学素子29としてダイクロイックミラーを適用したが、これに限るものではなく、ミラー、プリズム、回折光学素子などを適用するようにしてもよい。
【0139】
図35に示すように、複数のレーザ光源21より出射された励起光は、レーザ光源21の各光源に対応したコリメータレンズ22により略平行光となる。略平行光となった励起光は、第1の光学系23に入射する。励起光の光束は、第1の光学系23により縮小され、光束となって反射型光学素子29へと導かれる。反射型光学素子29で折り返された励起光は、光学素子28に入射する。光学素子28を通過した励起光は、ダイクロイックミラー24へと導かれる。
【0140】
図36は、反射型光学素子29を用いた光学素子28への入射角度の調整例を示す図である。
【0141】
図36に示す例は、調整手段が、反射型光学素子29を、角度θだけチルトすることにより、光学素子28への入射角度が3度以内になるように調整したものである。調整手段による調整は、シムプレートなどのスペーサを反射型光学素子29に挟むことで行うものとするが、ネジとばねなどによる機構でもよい。このように、調整手段の調整対象に反射型光学素子29を適用することで、光学系を折り畳み可能とし、小型な画像投射装置を実現する。
【0142】
このように本実施形態によれば、光学素子28への光線の入射角度を適切にすることで、波長変換素子26上の光スポットの光密度を均一化して波長変換素子26の温度上昇を抑制することで、波長変換素子26の光変換効率の低下を避けることができるので、高効率な画像投射装置を実現することができる。
【0143】
(第9の実施の形態)
次に、第9の実施の形態について説明する。
【0144】
第9の実施の形態は、励起光を透過する透過型光学素子を第1の光学系23と光学素子28との間に設け、透過型光学素子についてシフトまたはチルトもしくはその両方の調整を行うようにした点が、第7の実施の形態と異なるものとなっている。以下、第9の実施の形態の説明では、第7の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第7の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0145】
図37は、第9の実施の形態にかかる光源部20Aの構成を示す模式図である。なお、光源部20Bも同様の構成である。
【0146】
図37に示すように、本実施形態の光源部20Aは、透過型光学素子31を、第1の光学系23と光学素子28との間に設けている。本実施形態においては、透過型光学素子31としてダイクロイックミラーを適用する。なお、透過型光学素子31としてダイクロイックミラーを適用したが、これに限るものではなく、平行平板、ウェッジプリズムのような入射面と出射面が平行でないもの、回折光学素子などを適用するようにしてもよい。
【0147】
図37に示すように、複数のレーザ光源21より出射された励起光は、レーザ光源21の各光源に対応したコリメータレンズ22により略平行光となる。略平行光となった励起光は、第1の光学系23に入射する。励起光の光束は、第1の光学系23により縮小され、光束となって透過型光学素子31に入射する。透過型光学素子31を通過した励起光は、光学素子28を通過し、ダイクロイックミラー24へと導かれる。
【0148】
図38は、透過型光学素子31を用いた光学素子28への入射角度の調整例を示す図である。
【0149】
図38に示す例は、調整手段が、透過型光学素子31を、角度θだけチルトすることにより、光学素子28への入射角度が3度以内になるように調整したものである。調整手段による調整は、シムプレートなどのスペーサを透過型光学素子31に挟むことで行うものとするが、ネジとばねなどによる機構でもよい。このように、調整手段の調整対象に透過型光学素子31(回折光学素子など)を適用することで、安価な画像投射装置を実現する。
【0150】
このように本実施形態によれば、光学素子28への光線の入射角度を適切にすることで、波長変換素子26上の光スポットの光密度を均一化して波長変換素子26の温度上昇を抑制することで、波長変換素子26の光変換効率の低下を避けることができるので、高効率な画像投射装置を実現することができる。
【0151】
(第10の実施の形態)
次に、第10の実施の形態について説明する。
【0152】
第10の実施の形態は、第1の実施の形態ないし第9の実施の形態で説明した画像投射装置の一例であるプロジェクタ1を、3次元像をユーザに視認させる表示装置に適用した点が、第1の実施の形態ないし第6の実施の形態と異なるものとなっている。以下、第7の実施の形態の説明では、第1の実施の形態ないし第9の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態ないし第9の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0153】
図39は第10の実施の形態にかかる表示装置100の全体構成の一例を示すブロック図である。表示装置100は、3次元像をユーザに視認させる立体ディスプレイとも言う。ここで、3次元像とは、3次元空間上に表示され、人間が視認可能な体積を持った立体的な像をいう。
【0154】
図39に示すように、表示装置100は、情報処理部110と、プロジェクタ1と、螺旋スクリーンであるスクリーン70と、モータ140と、モータ制御部141とを有する。
【0155】
表示装置100は、3次元モデルデータ901を受信して、表示装置100のユーザに3次元像を視認させる。3次元モデルデータ901は、ユーザに3次元像を視認させるための3次元モデルを示すデータであって、例えば、3次元ボクセルごとの画素値を示すデータである。具体的には、3次元モデルデータ901は、情報処理部110に入力される。
【0156】
情報処理部110は、入力された3次元モデルデータ901に基づく画像情報903を生成する。具体的には、情報処理部110は、モータ制御部141に回転指示信号201を送信し、回転の開始を指示する。指示を受けたモータ制御部141は、例えば規定された略一定の速度でスクリーン70を回転させるように、回転制御信号202を送信してモータ140を駆動させる。
【0157】
スクリーン70は、螺旋軸に直交する平面で切断した断面が曲線状である螺旋形状を含む被照射部材の一例である。
【0158】
モータ140は、螺旋軸周りにスクリーン70を回転させる駆動部である。モータ140には、ステッピングモータ、DC(Direct Current)モータ又はAC(Alternating Current)モータ等を適用できる。
【0159】
モータ140にはロータリエンコーダが取り付けられている。ロータリエンコーダは、モータ140の回転軸の回転角度を示すエンコーダ信号203をモータ制御部141に送信する。モータ制御部141は、受信したエンコーダ信号203に基づいて、スクリーン70の回転角度を示す回転角度情報904を生成し、情報処理部110に送信する。
【0160】
情報処理部110は、受信した回転角度情報904に基づいて、スクリーン70の回転角度に応じた画像情報903を生成し、プロジェクタ1に送信する。画像情報903は、2次元画像を示す情報である。
【0161】
プロジェクタ1は、回転されるスクリーン70に画像光Lを照射する。プロジェクタ1は、情報処理部110から出力された画像情報903に基づく画像光Lをスクリーン70に照射できる。換言すると、プロジェクタ1は、回転されるスクリーン70の位置に基づき生成された画像光Lを照射することができる。
【0162】
表示装置100は、高速に回転されるスクリーン70に照射された画像光Lのうち、スクリーン70により反射された光で、残像効果を利用して、カラーの3次元像をユーザに視認させることができる。
【0163】
なお、被照射部材としては、スクリーン70に限らず、残像効果を利用して像を表示するものであれば、スクリーンを振動させるものでもよい。
【0164】
このように、本発明は、本実施形態で説明した内容に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更することができる。
【0165】
特に、実施の形態で例示した各部の具体的形状および数値は、本発明を実施するに際して行う具体化のほんの一例にすぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならないものである。
【0166】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1>
光源と、
片面もしくは両面に複数のレンズがアレイ状に並んだレンズアレイを有する光学素子と、
前記光源から出射され前記光学素子を通過した光の波長を変換する波長変換素子と、
を備え、
前記光学素子の隣り合う前記レンズの頂点間の距離Pが、前記光学素子に入射する光の光束の幅Dの1/4以下である、
ことを特徴とする光源装置。
<2>
前記光学素子と前記波長変換素子との間に配置された第2の光学系をさらに備え、
前記光束の幅Dが、前記第2の光学系の前記光源側のレンズの外径Doptの1/3以下である、
ことを特徴とする<1>に記載の光源装置。
<3>
前記光学素子を通過した光を前記波長変換素子に導く光学面を有し、
前記光学面上の光束の幅Dmirrorが前記外径Doptの1/3以下である、
ことを特徴とする<2>に記載の光源装置。
<4>
前記光源は、複数の発光点を有し、
前記距離Pは、前記複数の発光点のうちの1つの発光点から射出される光にかかる前記光学素子上の光束の幅Dsingleの1/2以下である、
ことを特徴とする<1>ないし<3>のいずれか一項に記載の光源装置。
<5>
前記光学素子は、矩形形状の複数の球面レンズをアレイ状に並べたレンズアレイを有する、
ことを特徴とする<1>ないし<4>のいずれか一項に記載の光源装置。
<6>
前記光学面は、ダイクロイックミラーである、
ことを特徴とする<3>に記載の光源装置。
<7>
前記光源と前記光学面との間に、少なくとも正のパワーを有するレンズと負のパワーを有するレンズとを有する第1の光学系を備える、
ことを特徴とする<3>に記載の光源装置。
<8>
前記負のパワーを有するレンズの外径は、前記第2の光学系の前記光源側のレンズの外径Doptの1/2以下である、
ことを特徴とする<7>に記載の光源装置。
<9>
<1>ないし<8>のいずれか一項に記載の光源装置と、
前記光源装置から出射された光をミキシングすることで均一化する光均一化素子と、
前記光均一化素子が均一化した光を照明する照明光学系と、
前記照明光学系により照明される光を変調することにより画像光を形成する画像形成素子と、
前記画像形成素子が形成した画像光を被照射部材に投射する投射光学系と、
を備えることを特徴とする画像投射装置。
<10>
前記光学素子の複数レンズの矩形の一辺は、前記光均一化素子の入り口の1辺と略平行である、
ことを特徴とする<9>に記載の画像投射装置。
<11>
<9>または<10>に記載の画像投射装置と、
前記画像投射装置からの画像光が照射される被照射部材と、
を備え、
前記画像光が照射された前記被照射部材を回転または振動をさせることで3次元像を表示する、
ことを特徴とする表示装置。
【0167】
また、本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1>
光源と、
複数のレンズがアレイ状に並んだレンズアレイ面を有する光整形素子と、
前記光源から出射され前記光整形素子を通過した光の波長を変換する波長変換素子と、
を備え、
前記レンズアレイ面の隣り合う前記レンズのピッチは、前記光整形素子に入射する光の光束の幅の1/4以下であり、
前記光整形素子への光の入射角度は、3度以内である、
ことを特徴とする光源装置。
<2>
前記光整形素子は、少なくとも2面のレンズアレイ面を有する、
ことを特徴とする<1>に記載の光源装置。
<3>
前記光整形素子は、入射面と出射面のどちらか一方にレンズアレイ面を有する、
ことを特徴とする<1>に記載の光源装置。
<4>
前記光源と前記光整形素子との間に設けられ、前記光源から出射される光の光束を縮小する第1の光学系と、
前記第1の光学系のシフトもしくはチルトによって前記光整形素子へ入射する光束の入射角度を調整する調整手段と、
を備えることを特徴とする<1>ないし<3>のいずれか一項に記載の光源装置。
<5>
前記光源と前記光整形素子との間に設けられ、前記光源から出射される光を反射し前記光整形素子へと導く反射型光学素子と、
前記反射型光学素子のシフトもしくはチルトによって前記光整形素子への光線入射角度を調整する調整手段と、
を備えることを特徴とする<1>ないし<3>のいずれか一項に記載の光源装置。
<6>
前記光源と前記光整形素子との間に設けられ、前記光源から出射される光を透過する透過型光学素子と、
前記透過型光学素子のシフトもしくはチルトによって前記光整形素子への光線入射角度を調整する調整手段と、
を備えることを特徴とする<1>ないし<3>のいずれか一項に記載の光源装置。
<7>
前記調整手段は、スペーサである、
ことを特徴とする<4>ないし<6>のいずれか一項に記載の光源装置。
<8>
<1>ないし<7>のいずれか一項に記載の光源装置と、
前記光源装置から出射された光をミキシングすることで均一化する光均一化素子と、
前記光均一化素子が均一化した光を照明する照明光学系と、
前記照明光学系により照明される光を変調することにより画像光を形成する画像形成素子と、
前記画像形成素子が形成した画像光を被照射部材に投射する投射光学系と、
を備えることを特徴とする画像投射装置。
<9>
<8>に記載の画像投射装置と、
前記画像投射装置からの画像光が照射される被照射部材と、
を備え、
前記画像光が照射された前記被照射部材を回転または振動をさせることで3次元像を表示する、
ことを特徴とする表示装置。
【符号の説明】
【0168】
1 画像投射装置
20 光源装置
21 光源
23 第1の光学系
24 光学面
25、34 集光光学系
26 波長変換素子
28 光学素子
29 反射型光学素子
30 光均一化素子
31 透過型光学素子
40 照明光学系
50 画像形成素子
60 投射光学系
70 被照射部材
100 表示装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0169】