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特開2023-51755光電変換素子、光電変換モジュール、及び電子機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051755
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】光電変換素子、光電変換モジュール、及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   H10K 39/10 20230101AFI20230404BHJP
   H10K 30/50 20230101ALI20230404BHJP
【FI】
H01L31/04 120
H01L31/04 166
H01L31/04 168
H01L31/04 154B
H01L31/04 154C
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128078
(22)【出願日】2022-08-10
(31)【優先権主張番号】P 2021162002
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】田中 正人
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕二
(72)【発明者】
【氏名】田元 望
(72)【発明者】
【氏名】兼為 直道
【テーマコード(参考)】
5F151
【Fターム(参考)】
5F151BA18
5F151DA07
5F151FA02
5F151FA04
5F151FA06
5F151GA03
5F151GA05
(57)【要約】
【課題】高温高湿保存後及び低照度光の連続照射後において、高い出力を維持できる光電変換素子の提供。
【解決手段】第1の電極と、光電変換層と、第2の電極と、を有し、前記光電変換層及び前記第2の電極の少なくとも側面を覆うように配置された封止部を有し、前記封止部は、感圧粘着剤を含む光電変換素子である。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極と、光電変換層と、第2の電極と、を有し、
前記光電変換層及び前記第2の電極の少なくとも側面を覆うように配置された封止部を有し、
前記封止部は、感圧粘着剤を含むことを特徴とする光電変換素子。
【請求項2】
前記封止部が、オレフィン系樹脂、ゴム系樹脂、シリコン系樹脂、及びアクリル系樹脂の少なくともいずれかを含有する請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項3】
前記光電変換層が塩基性化合物を含有する請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項4】
前記塩基性化合物が、ピリジン化合物である請求項3に記載の光電変換素子。
【請求項5】
前記ピリジン化合物が、下記一般式(1)及び一般式(2)で表される3級アミン化合物の少なくともいずれかを含有する請求項4に記載の光電変換素子。
【化1】
【化2】
ただし、前記一般式(1)及び前記一般式(2)中、Ar及びArは、置換基を有していてもよいアリール基を表し、前記Ar及び前記Arは、同一でも異なっていてもよく、互いに結合してもよい。
【請求項6】
前記封止部の前記第2の電極と対向する面とは反対の面において、封止基材をさらに有する請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項7】
前記封止部が、水分捕捉材を含有する請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項8】
前記水分捕捉材の水分捕捉性が、20mg/100mm以上である請求項7に記載の光電変換素子。
【請求項9】
前記水分捕捉材が、乾燥剤である請求項7に記載の光電変換素子。
【請求項10】
前記乾燥剤が、活性炭、ゼオライト、カルシウム化合物、マグネシウム化合物、シリカゲル、及び有機金属化合物の少なくともいずれかである請求項9に記載の光電変換素子。
【請求項11】
前記封止部と、前記第2の電極と、の間に電極保護層をさらに有する請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項12】
前記電極保護層が、シラン構造を有するフッ素化合物を含有する請求項11に記載の光電変換素子。
【請求項13】
前記光電変換層が、電子輸送層と、ホール輸送層と、を有する請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項14】
前記第1の電極と、前記光電変換層と、の間にホールブロッキング層をさらに有する請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項15】
第1の電極と、光電変換層と、第2の電極と、を有する光電変換素子を有し、
前記光電変換層及び前記第2の電極の少なくとも側面を覆うように配置された封止部を有し、
前記封止部は、感圧粘着剤を含むことを特徴とする光電変換モジュール。
【請求項16】
前記光電変換素子を複数隣接して有し、
隣接する前記光電変換素子が直列又は並列に接続されている請求項15に記載の光電変換モジュール。
【請求項17】
隣接する少なくとも2つの前記光電変換素子を有する光電変換モジュールにおいて、
一の前記光電変換素子における前記第1の電極と、他の前記光電変換素子における前記第2の電極とが、前記光電変換層を貫通した導通部により電気的に接続されている請求項16に記載の光電変換モジュール。
【請求項18】
請求項1から14のいずれかに記載の光電変換素子、及び請求項15から17のいずれかに光電変換モジュールのいずれかと、
前記光電変換素子又は前記光電変換モジュールが光電変換することによって発生した電力によって動作する装置と、を有することを特徴とする電子機器。
【請求項19】
請求項1から14のいずれかに記載の光電変換素子、及び請求項15から17のいずれかに光電変換モジュールのいずれかと、
前記光電変換素子又は前記光電変換モジュールが光電変換することによって発生した電力を蓄電可能な蓄電池と、
前記蓄電池に蓄電された前記電力によって動作する装置と、を有することを特徴とする電子機器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子、光電変換モジュール、及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料の代替エネルギーとして、また地球温暖化対策として、太陽電池の重要性が高まっている。また、太陽電池やフォトダイオードは、光エネルギーを電気エネルギーに変換することができる光電変換素子を応用したものである。
最近では、太陽光(直射光での照度:約100,000 lux)に限らず、LED(light emitting diode:発光ダイオード)や蛍光灯など、低照度の光(照度:20 lux以上1,000 lux以下)でも高い発電性能を有する室内向けの光電変換素子が注目を集めている。
【0003】
しかし、光電変換素子は、高温高湿環境下で保存された場合、出力が大きく低下するという問題がある。
そこで、高温高湿環境下において、外部環境の水蒸気や酸素が、光電変換素子の内部へ浸透し、光電変換効率が低下することを抑制するため、例えば、光硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂を光電変換層の全てを覆うようにし、硬化させた接着層を設けた有機薄膜太陽電池素子が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、高温高湿保存後及び低照度光の連続照射後において、高い出力を維持できる光電変換素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための手段としての本発明の光電変換素子は、第1の電極と、光電変換層と、第2の電極と、を有し、前記光電変換層及び前記第2の電極の少なくとも側面を覆うように配置された封止部を有し、前記封止部は、感圧粘着剤を含む。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、高温高湿保存後及び低照度光の連続照射後において、高い出力を維持できる光電変換素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の光電変換素子の一例を示す概略図である。
図2図2は、本発明の光電変換素子の他の一例を示す概略図である。
図3図3は、本発明の光電変換素子の他の一例を示す概略図である。
図4図4は、本発明の光電変換素子の他の一例を示す概略図である。
図5図5は、本発明の光電変換素子の他の一例を示す概略図である。
図6図6は、本発明の光電変換モジュールの一例を示す概略図である。
図7図7は、図6を異なる角度から観察した概略図である。
図8図8は、本発明の光電変換モジュールを有する、本発明の電子機器としてのマウスの一例を示す概略図である。
図9図9は、マウスに光電変換素子を実装した一例を示す概略図である。
図10図10は、本発明の光電変換モジュールを有する、本発明の電子機器としてパソコンに用いられるキーボードの一例を示す概略図である。
図11図11は、キーボードに光電変換素子を実装した一例を示す概略図である。
図12図12は、キーボードのキーの一部に小型の光電変換素子を実装した一例を示す概略図である。
図13図13は、本発明の光電変換モジュールを有する、本発明の電子機器としてセンサの一例を示す概略図である。
図14図14は、本発明の光電変換モジュールを有する、本発明の電子機器としてターンテーブルを用いた一例を示す概略図である。
図15図15は、本発明の光電変換素子及び/又は光電変換モジュールと、光電変換素子及び/又は光電変換モジュールが光電変換することによって発生した電力によって動作する装置とを組み合わせた電子機器の一例を示す概略図である。
図16図16は、図15において光電変換素子と機器の回路との間に光電変換素子用の電源ICを組み込んだ一例を示す概略図である。
図17図17は、図16において、蓄電デバイスを電源ICと機器の回路との間に組み込んだ一例を示す概略図である。
図18図18は、本発明の光電変換素子及び/又は光電変換モジュールと、電源ICとを有する電源モジュールの一例を示す概略図である。
図19図19は、図18において電源ICに蓄電デバイスを追加した電源モジュールの一例を示す概略図である。
図20図20は、実施例1の光電変換モジュールを用いて測定したX線吸収微細構造(XAFS)スペクトルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、以下のことを見出した。
従来の光電変換素子の場合、光電変換層等の側面等を覆う封止部を、光硬化樹脂又は熱硬化樹脂を用いて設けている。しかしながら、高温高湿環境下での保存や、光の照射により、出力が大幅に低下してしまい、耐久性が維持できない場合があった。
【0009】
そこで、本発明者らは、封止部が感圧粘着剤を含むことにより、高温高湿保存後及び低照度光の連続照射後において、高い出力を維持できる光電変換素子を提供することができることを見出した。
【0010】
(光電変換素子)
本発明の光電変換素子は、第1の電極と、光電変換層と、第2の電極と、封止部とを有し、必要に応じて、基板、ホールブロッキング層、電極保護層、その他の層を有する。
【0011】
なお、本願明細書において、「光電変換素子」とは、光エネルギーを電気エネルギーに変換する素子、又は電気エネルギーを光エネルギーに変換する素子を意味し、具体的には、太陽電池又はフォトダイオードなどが挙げられる。
なお、本発明において、前記層とは、単一の膜である場合(単層)であってもよく、複数の膜が重なった積層であってもよい。
また、積層方向とは、光電変換素子における各層の面方向に対して垂直な方向を意味する。また、接続とは、物理的な接触だけでなく、本発明の効果を奏することができる程度の電気的なつながりを意味する。
【0012】
<基板>
本発明の光電変換素子は、基板を有してもよい。
前記基板としては、その形状、構造、大きさについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記基板の材質としては、透光性及び絶縁性を有するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ガラス、プラスチックフィルム、セラミック等の基板が挙げられる。これらの中でも、後述するように電子輸送層を形成する際に焼成する工程を含む場合は、焼成温度に対して耐熱性を有する基板が好ましい。また、基板としては、可とう性を有するものが好ましい。
【0013】
前記基板は、前記光電変換素子の第1の電極側の最外部、及び第2の電極側の最外部のどちらか一方、又は両方に設けてもよい。
以下、第1の電極側の最外部に設けられる基板を第1の基板、第2の電極側の最外部に設けられる基板を第2の基板と称する。
【0014】
<第1の電極>
前記光電変換素子は、第1の電極を有する。
前記第1の電極としては、その形状、大きさについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0015】
前記第1の電極の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、一層構造であってもよいし、複数の材料を積層する構造であってもよい。
【0016】
前記第1の電極の材質としては、可視光に対する透明性及び導電性を有するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、透明導電性金属酸化物、カーボン、金属などが挙げられる。
【0017】
前記透明導電性金属酸化物としては、例えば、インジウム・スズ酸化物(以下、「ITO」と称する)、フッ素ドープ酸化スズ(以下、「FTO」と称する)、アンチモンドープ酸化スズ(以下、「ATO」と称する)、ニオブドープ酸化スズ(以下、「NTO」と称する)、アルミドープ酸化亜鉛、インジウム・亜鉛酸化物、ニオブ・チタン酸化物などが挙げられる。
前記カーボンとしては、例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレンなどが挙げられる。
前記金属としては、例えば、金、銀、アルミニウム、ニッケル、インジウム、タンタル、チタンなどが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、透明性が高い透明導電性金属酸化物が好ましく、ITO、FTO、ATO、NTOがより好ましい。
【0018】
前記第1の電極の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5nm以上100μm以下が好ましく、50nm以上10μm以下がより好ましい。なお、前記第1の電極の材質がカーボンや金属の場合には、前記第1の電極の平均厚みとしては、透光性を得られる程度の平均厚みにすることが好ましい。
【0019】
前記第1の電極は、スパッタ法、蒸着法、スプレー法等の公知の方法などにより形成することができる。
【0020】
また、前記第1の電極は、前記第1の基板上に形成されることが好ましく、予め前記第1の基板上に前記第1の電極が形成されている一体化された市販品を用いることができる。
前記一体化された市販品としては、例えば、FTOコートガラス、ITOコートガラス、酸化亜鉛:アルミニウムコートガラス、FTOコート透明プラスチックフィルム、ITOコート透明プラスチックフィルムなどが挙げられる。他の一体化された市販品としては、例えば、酸化スズ若しくは酸化インジウムに原子価の異なる陽イオン若しくは陰イオンをドープした透明電極、又はメッシュ状やストライプ状等の光が透過できる構造にした金属電極を設けたガラス基板などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用して混合又は積層したものでもよい。また、電気的抵抗値を下げる目的で、金属リード線などを併用してもよい。
【0021】
前記金属リード線の材質としては、例えば、アルミニウム、銅、銀、金、白金、ニッケルなどが挙げられる。
前記金属リード線は、例えば、蒸着、スパッタリング、圧着などで基板に形成し、その上にITOやFTOの層を設けることにより併用することができる。
【0022】
<ホールブロッキング層>
前記光電変換素子は、ホールブロッキング層を有することが好ましい。
前記ホールブロッキング層は、前記第1の電極と後述する電子輸送層との間に形成される。
前記ホールブロッキング層は、出力の向上並びにその持続性の向上に対し、非常に有効である。
前記ホールブロッキング層は、光増感化合物を含有し、電子輸送層に輸送された電子を第1の電極に輸送し、かつホール輸送層との接触を防ぐものである。これにより、前記ホールブロッキング層は、前記第1の電極へホールを流入しにくくし、電子とホールの再結合による出力低下を抑制することができる。
前記ホール輸送層を設けた固体型の光電変換素子は、電解液を用いた湿式型に比べて、ホール輸送材料中のホールと電極表面の電子の再結合速度が速いことから、ホールブロッキング層の形成による効果は非常に大きい。
【0023】
前記ホールブロッキング層の材質としては、可視光に対して透明であり、かつ電子輸送性を有するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリコン、ゲルマニウム等の単体半導体、金属のカルコゲニドに代表される化合物半導体、ペロブスカイト構造を有する化合物などが挙げられる。
前記金属のカルコゲニドとしては、例えば、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、タンタルの酸化物;カドミウム、亜鉛、鉛、銀、アンチモン、ビスマスの硫化物;カドミウム、鉛のセレン化物;カドミウムのテルル化物などが挙げられる。他の化合物半導体としては、例えば、亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム等のリン化物;ガリウム砒素、銅-インジウム-セレン化物、銅-インジウム-硫化物などが挙げられる。
前記ペロブスカイト構造を有する化合物としては、例えば、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸カリウムなどが挙げられる。
これらの中でも、酸化物半導体が好ましく、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化タングステン、酸化スズなどがより好ましく、酸化チタンが更に好ましい。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、単層としても積層してもよい。また、これらの半導体の結晶型は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、単結晶でもよいし、多結晶でもよいし、あるいは非晶質でもよい。
【0024】
前記ホールブロッキング層の作製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、真空中で薄膜を形成する方法(真空製膜法)、湿式製膜法などが挙げられる。
前記真空製膜法としては、例えば、スパッタリング法、パルスレーザーデポジッション法(PLD法)、イオンビームスパッタ法、イオンアシスト法、イオンプレーティング法、真空蒸着法、アトミックレイヤーデポジッション法(ALD法)、化学気相成長法(CVD法)などが挙げられる。
前記湿式製膜法としては、例えば、ゾル-ゲル法が挙げられる。ゾル-ゲル法は、溶液から、加水分解や重合・縮合などの化学反応を経てゲルを作製し、その後、加熱処理によって緻密化を促進させる方法である。ゾル-ゲル法を用いた場合、ゾル溶液の塗布方法としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ディップ法、スプレー法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、また、湿式印刷方法として、凸版、オフセット、グラビア、凹版、ゴム版、スクリーン印刷などが挙げられる。また、ゾル溶液を塗布した後の加熱処理の際の温度としては、80℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。
【0025】
前記ホールブロッキング層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択可能であるが、5nm以上1μm以下が好ましく、湿式製膜では500nm以上700nm以下がより好ましく、乾式製膜では5nm以上30nm以下がより好ましい。
【0026】
<光電変換層>
前記光電変換層は、電子輸送層と、ホール輸送層と、を有し、さらに必要に応じてその他の層を有する。
前記光電変換層は単層であってもよく、複数の層が積層された多層であってもよい。
また、前記光電変換層は、塩基性化合物を含有することが好ましい。
前記塩基性化合物は、前記光電変換層を構成するいずれの層に含有されるが、例えば、前記ホール輸送層に含有されることが好ましい。
【0027】
<<電子輸送層>>
前記光電変換素子は、電子輸送層を有する。
前記電子輸送層は、生成された電子を前記ホールブロッキング層まで輸送する目的で形成される。このため、前記電子輸送層は、前記ホールブロッキング層に隣接して配置されることが好ましい。
【0028】
前記電子輸送層の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、互いに隣接する少なくとも2つの光電変換素子において、前記電子輸送層どうしが互いに延設されずに分割されていることが好ましい。前記電子輸送層どうしが分割されていれば、電子拡散が抑制されてリーク電流が低下するため、光耐久性が向上する点で有利である。
また、前記電子輸送層の構造としては、連続層単層であってもよく、複数の層が積層された多層であってもよい。
【0029】
前記電子輸送層は、電子輸送性材料を含み、光増感化合物を含むことが好ましく、必要に応じて、その他の材料を含む。
前記電子輸送性材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、半導体材料が好ましい。
前記半導体材料は、微粒子状の形状を有し、これらが接合することによって、多孔質状の膜に形成されることが好ましい。多孔質状の電子輸送層を構成する半導体微粒子の表面に、光増感化合物が化学的あるいは物理的に吸着される。前記電子輸送層を多孔質状にすることで、表面に吸着する光増感化合物の量を飛躍的に増加させることが可能になり、高出力化に有効である。
【0030】
前記半導体材料としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができ、例えば、単体半導体、化合物半導体、ペロブスカイト構造を有する化合物などが挙げられる。
前記単体半導体としては、例えば、シリコン、ゲルマニウムなどが挙げられる。
前記化合物半導体としては、例えば、金属のカルコゲニド、具体的には、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、タンタル等の酸化物;カドミウム、亜鉛、鉛、銀、アンチモン、ビスマス等の硫化物;カドミウム、鉛等のセレン化物;カドミウム等のテルル化物などが挙げられる。他の化合物半導体としては亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム等のリン化物、ガリウム砒素、銅-インジウム-セレン化物、銅-インジウム-硫化物等が挙げられる。
前記ペロブスカイト構造を有する化合物としては、例えば、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸カリウムなどが挙げられる。
これらの中でも、酸化物半導体が好ましく、特に酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ニオブがより好ましい。前記電子輸送層の前記電子輸送性材料が酸化チタンであると、伝導帯準位(導電帯(Conduction Band))が高いため、高い開放電圧を得られ、高い光電変換特性を得ることができる点で有利である。また、屈折率が高く、光閉じ込め効果により高い短絡電流が得られる。更に、誘電率が高く、移動度が高くなることで、高い曲線因子が得られる点で有利である。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、半導体材料の結晶型としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、単結晶でも多結晶でもよく、非晶質でもよい。
【0031】
前記半導体材料の一次粒子の個数平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1nm以上100nm以下が好ましく、5nm以上50nm以下がより好ましい。また、個数平均粒径よりも大きい半導体材料を混合あるいは積層させてもよく、入射光を散乱させる効果により、変換効率を向上できる場合がある。この場合の個数平均粒径は、50nm以上500nm以下が好ましい。
【0032】
前記電子輸送層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50nm以上100μm以下が好ましく、100nm以上50μm以下がより好ましく、120nm以上10μm以下が更に好ましい。電子輸送層の平均厚みが好ましい範囲内であると、単位投影面積当たりの光増感化合物の量を十分に確保でき、光の捕獲率を高く維持できるとともに、注入された電子の拡散距離も増加しにくく、電荷の再結合によるロスを少なくできる点で有利である。
【0033】
前記電子輸送層の作製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スパッタリング法等の真空中で薄膜を形成する方法、湿式製膜法、湿式印刷方法などが挙げられる。これらの中でも、製造コストの観点から、湿式製膜法が好ましく、前記半導体材料の粉末あるいはゾルを分散したペースト(半導体材料の分散液)を調製し、電子集電電極基板としての第1の電極の上、あるいはホールブロッキング層の上に塗布する方法がより好ましい。
前記湿式製膜法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ディップ法、スプレー法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、ダイコート法などが挙げられる。
前記湿式印刷方法としては、例えば、凸版、オフセット、グラビア、凹版、ゴム版、スクリーン印刷などの様々な方法を用いることができる。
【0034】
前記半導体材料の分散液を作製する方法としては、例えば、公知のミリング装置等を用いて機械的に粉砕する方法が挙げられる。この方法により、粒子状の半導体材料を単独で、あるいは半導体材料と樹脂の混合物を、水又は溶媒に分散することにより半導体材料の分散液を作製できる。
前記樹脂としては、例えば、スチレン、酢酸ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等によるビニル化合物の重合体や共重合体、シリコーン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリエステル樹脂、セルロースエステル樹脂、セルロースエーテル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記溶媒としては、例えば、水、アルコール溶媒、ケトン溶媒、エステル溶媒、エーテル溶媒、アミド溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、炭化水素溶媒などが挙げられる。
前記アルコール溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、α-テルピネオールなどが挙げられる。
前記ケトン溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。
前記エステル溶媒としては、例えば、ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチルなどが挙げられる。
前記エーテル溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサンなどが挙げられる。
前記アミド溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンなどが挙げられる。
前記ハロゲン化炭化水素溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、ブロモホルム、ヨウ化メチル、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、フルオロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、1-クロロナフタレンなどが挙げられる。
前記炭化水素溶媒としては、例えば、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-オクタン、1,5-ヘキサジエン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサジエン、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、クメンなどが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0035】
前記半導体材料を含む分散液、あるいはゾル-ゲル法等によって得られた半導体材料を含むペーストには、粒子の再凝集を防ぐため、酸、界面活性剤、キレート化剤などを添加してもよい。
前記酸としては、例えば、塩酸、硝酸、酢酸などが挙げられる。
前記界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルなどが挙げられる。
前記キレート化剤としては、例えば、アセチルアセトン、2-アミノエタノール、エチレンジアミンなどが挙げられる。
また、製膜性を向上させる目的で、増粘剤を添加することも有効な手段である。
前記増粘剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、エチルセルロースなどが挙げられる。
【0036】
前記半導体材料を塗布した後に、前記半導体材料の粒子間を電子的に接触させ、膜強度や基板との密着性を向上させるために焼成したり、マイクロ波や電子線を照射したり、又はレーザー光を照射することができる。これらの処理は、1種単独で行ってもよく、2種類以上組み合わせて行ってもよい。
【0037】
前記半導体材料から形成された前記電子輸送層を焼成する場合には、焼成温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、温度が高すぎると基板の抵抗が高くなったり、溶融したりすることがあることから、30℃以上700℃以下が好ましく、100℃以上600℃以下がより好ましい。また、焼成時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10分間以上10時間以下が好ましい。
前記半導体材料から形成された前記電子輸送層をマイクロ波照射する場合には、照射時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1時間以下が好ましい。この場合、前記電子輸送層が形成されている面側から照射してもよく、前記電子輸送層が形成されていない面側から照射してもよい。
【0038】
前記半導体材料からなる前記電子輸送層を焼成した後、前記電子輸送層の表面積の増大や、後述する光増感化合物から半導体材料への電子注入効率を高める目的で、例えば、四塩化チタンの水溶液や有機溶剤との混合溶液を用いた化学メッキや三塩化チタン水溶液を用いた電気化学的メッキ処理を行ってもよい。
直径が数十nmの半導体材料を焼結し得られた膜は、多孔質状を形成することができる。このようなナノ多孔質構造は、非常に高い表面積を有し、その表面積はラフネスファクターを用いて表すことができる。ラフネスファクターは、前記第1の基板に塗布した前記半導体粒子の面積に対する多孔質内部の実面積を表わす数値である。したがって、ラフネスファクターとしては、大きいほど好ましいが、前記電子輸送層の平均厚みとの関係から、20以上が好ましい。
また、電子輸送性材料の粒子には、リチウム化合物をドーピングしてもよい。具体的には、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホンイミド)化合物の溶液を、スピンコートなどを用いて電子輸送性材料の粒子の上に堆積させ、その後焼成処理する方法である。
前記リチウム化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホンイミド)、リチウムビス(フルオロメタンスルホンイミド)、リチウムビス(フルオロメタンスルホニル)(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、過塩素酸リチウム、ヨウ化リチウムなどが挙げられる。
【0039】
<<<光増感化合物>>>
前記光増感化合物は、前記電子輸送層上に配されていることが好ましい。
前記光増感化合物は、出力や光電変換効率の更なる向上させる化合物を用いることができる。前記電子輸送層を構成する半導体材料の表面に吸着させることが好ましい。
前記光増感化合物としては、光電変換素子に照射される光により光励起される化合物であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、下記の公知の化合物などが挙げられる。
具体的には、特表平7-500630号公報、特開平10-233238号公報、特開2000-26487号公報、特開2000-323191号公報、特開2001-59062号公報等に記載の金属錯体化合物;特開平10-93118号公報、特開2002-164089号公報、特開2004-95450号公報、J.Phys.Chem.C,7224,Vol.111(2007)等に記載のクマリン化合物;特開2004-95450号公報、Chem.Commun.,4887(2007)等に記載のポリエン化合物;特開2003-264010号公報、特開2004-63274号公報、特開2004-115636号公報、特開2004-200068号、特開2004-235052号公報、J.Am.Chem.Soc.,12218,Vol.126(2004)、Chem.Commun.,3036(2003)、Angew.Chem.Int.Ed.,1923,Vol.47(2008)等に記載のインドリン化合物;J.Am.Chem.Soc.,16701,Vol.128(2006)、J.Am.Chem.Soc.,14256,Vol.128(2006)等に記載のチオフェン化合物;特開平11-86916号公報、特開平11-214730号公報、特開2000-106224号公報、特開2001-76773号公報、特開2003-7359号公報等に記載のシアニン色素;特開平11-214731号公報、特開平11-238905号公報、特開2001-52766号公報、特開2001-76775号公報、特開2003-7360号等に記載のメロシアニン色素;特開平10-92477号公報、特開平11-273754号公報、特開平11-273755号公報、特開2003-31273号等に記載の9-アリールキサンテン化合物;特開平10-93118号公報、特開2003-31273号等に記載のトリアリールメタン化合物;特開平9-199744号公報、特開平10-233238号公報、特開平11-204821号公報、特開平11-265738号、J.Phys.Chem.,2342,Vol.91(1987)、J.Phys.Chem.B,6272,Vol.97(1993)、Electroanal.Chem.,31,Vol.537(2002)、特開2006-032260号公報、J.Porphyrins Phthalocyanines,230,Vol.3(1999)、Angew.Chem.Int.Ed.,373,Vol.46(2007)、Langmuir,5436,Vol.24(2008)等に記載のフタロシアニン化合物;ポルフィリン化合物などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、金属錯体化合物、クマリン化合物、ポリエン化合物、インドリン化合物、チオフェン化合物が好ましく、三菱製紙株式会社製の下記構造式(1)、下記構造式(2)、下記構造式(3)で表される化合物が好ましい。
【0040】
【化1】
【0041】
【化2】
【0042】
【化3】
【0043】
更に好ましく用いられる光増感化合物として、下記一般式(5)を含む化合物が挙げられる。
【0044】
【化4】
上記一般式(5)式中、X11、及びX12は、それぞれ独立して、酸素原子、硫黄原子、又はセレン原子を表す。
11は置換基を有していてもよいメチン基を表す。その置換基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基などのアリール基、チエニル基、フリル基などのヘテロ環が挙げられる。
12は置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。アルキル基としては、メチル基、エチル基、2-プロピル基、2-エチルヘキシル基等、アリール基及びヘテロ環基としては前述のものが挙げられる。
13はカルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、ボロン酸、フェノール類などの酸性基を表す。R13は、1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0045】
、及びZは、それぞれ独立して、環状構造を形成する置換基を表し、Zは、ベンゼン環、ナフタレン環などの縮合炭化水素系化合物、チオフェン環、フラン環などのヘテロ環が挙げられ、それぞれ置換基を有していてもよい。その置換基の具体例としては前述のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、2-イソプロポキシ基等のアルコキシ基が挙げられる。Zと、Zに縮合するベンゼン環と、R12と、を含む部分は、それぞれ下記に示す(A-1)~(A-22)が挙げられる。
なお、mは0から2の整数を表す。
【0046】
【化5】
【0047】
また、下記一般式(6)で表される化合物が、より好ましく用いられる。
【化6】
ただし、前記一般式(6)中、nは0又は1の整数を表し、Rは、置換基を有していてもよいアリール基、又は次の3つの構造式で表されるいずれかの置換基を表す。
【0048】
【化7】
【0049】
上記一般式(5)及び一般式(6)を含む光増感化合物の具体例としては、以下に示す(B-1)~(B-41)が挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。
【0050】
【化8】
【0051】
【化9】
【0052】
【化10】
【0053】
【化11】
【0054】
【化12】
【0055】
【化13】
【0056】
更に、好ましく用いられる光増感化合物として、下記一般式(7)を含む化合物も挙げられる。
【0057】
【化14】
ただし、前記一般式(7)中、Ar及びArは、置換基を有していてもよいアリール基を表す。R及びRは、炭素数4~10の直鎖又は分岐状のアルキル基を表す。Xは、次の構造式で表されるいずれかの置換基を表す。
【0058】
【化15】
【0059】
上記一般式(7)で表される光増感化合物の中でも、下記一般式(8)で表される化合物は、より好ましく用いられる。
【0060】
【化16】
ただし、前記一般式(8)中、Ar及びArは、置換基を有してもよいフェニル基、又は置換基を有してもよいナフチル基を表す。Arは、置換基を有してもよいフェニル基、又は置換基を有してもよいチオフェン基を表す。
以下に、上記一般式(7)及び上記一般式(8)で示される光増感化合物の具体的な例示化合物(B-42~B-58)を示すが、本発明における光増感化合物はこれらに限定されるものではない。
【0061】
【化17】
【0062】
【化18】
【0063】
【化19】
【0064】
【化20】
【0065】
【化21】
【0066】
これらの光増感化合物は、1種を含有してもよいし、2種以上含有してもよい。
光源として用いられるLED光源は、暖色、寒色、白色などの色味が異なるものが存在し、色味によってスペクトルが異なる。
例えば、色温度が3,000Kは相対的に600nmの領域の波長が強くなり赤味を帯びた電球色になる。また、色温度が5,000Kは全体的にバランスが取れた昼白色になる。さらに、色温度が6,500Kを超えると450nmの領域の波長が相対的に強くなり、青みがかった昼光色になる。
そのため、光電変換素子としては、使用するLEDの色温度が異なっても高い出力を維持できることが好ましい。この場合、光電変換層において、吸収波長が異なる光増感化合物を混合して含有することにより、色温度による出力差を低減することができる場合があり有効である。
【0067】
前記電子輸送層の半導体材料の表面に、前記光増感化合物を吸着させる方法としては、前記光増感化合物の溶液中、又は前記光増感化合物の分散液中に、前記半導体材料を含む前記電子輸送層を浸漬する方法、前記光増感化合物の溶液、又は前記光増感化合物の分散液を前記電子輸送層に塗布して吸着させる方法などを用いることができる。
前記光増感化合物の溶液中、又は前記光増感化合物の分散液中に、前記半導体材料を形成した電子輸送層を浸漬する方法の場合、浸漬法、ディップ法、ローラ法、エアーナイフ法などを用いることができる。
前記光増感化合物の溶液、又は前記光増感化合物の分散液を、前記電子輸送層に塗布して吸着させる方法の場合は、ワイヤーバー法、スライドホッパー法、エクストルージョン法、カーテン法、スピン法、スプレー法などを用いることができる。
また、二酸化炭素などを用いた超臨界流体中で吸着させることも可能である。
【0068】
前記光増感化合物を前記半導体材料に吸着させる際には、縮合剤を併用してもよい。
前記縮合剤としては、前記半導体材料の表面に物理的もしくは化学的に、前記光増感化合物を結合させるような触媒的作用をするもの、又は化学量論的に作用し、化学平衡を有利に移動させるもののいずれであってもよい。更に、縮合助剤として、チオールやヒドロキシ化合物などを添加してもよい。
【0069】
前記光増感化合物を溶解、又は分散する溶媒としては、例えば、水、アルコール溶媒、ケトン溶媒、エステル溶媒、エーテル溶媒、アミド溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、炭化水素溶媒、その他の溶媒などが挙げられる。
前記アルコール溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、t-ブタノールなどが挙げられる。
前記ケトン溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。
前記エステル溶媒としては、例えば、ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチルなどが挙げられる。
前記エーテル溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサンなどが挙げられる。
前記アミド溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンなどが挙げられる。
前記ハロゲン化炭化水素溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、ブロモホルム、ヨウ化メチル、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、フルオロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、1-クロロナフタレンなどが挙げられる。
前記炭化水素溶媒としては、例えば、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-オクタン、1,5-ヘキサジエン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサジエン、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、クメンなどが挙げられる。
前記その他の溶媒としては、例えば、アセトニトリルなどが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0070】
前記光増感化合物は、その種類によっては化合物間の凝集を抑制した方がより効果的に働くものが存在するため、凝集解離剤を併用してもよい。
前記凝集解離剤としては、特に制限はなく、用いる色素に対して適宜選択することができるが、コール酸、ケノデオキシコール酸などのステロイド化合物、長鎖アルキルカルボン酸又は長鎖アルキルホスホン酸が好ましい。
前記凝集解離剤の含有量としては、前記光増感化合物1質量部に対して0.01質量部以上500質量部以下が好ましく、0.1質量部以上100質量部以下がより好ましい。
【0071】
前記電子輸送層を構成する半導体材料の表面に、光増感化合物、又は、光増感化合物及び凝集解離剤を吸着させる際の温度としては、-50℃以上200℃以下が好ましい。吸着時間としては、5秒間以上1,000時間以下が好ましく、10秒間以上500時間以下がより好ましく、1分間以上150時間以下が更に好ましい。吸着させる工程は、暗所で行うことが好ましい。また、吸着させる工程は、静置して行ってもよく、攪拌しながら行ってもよい。
攪拌する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スターラー、ボールミル、ペイントコンディショナー、サンドミル、アトライター、ディスパーザー、超音波分散等を用いた方法などが挙げられる。
【0072】
前記電子輸送層は、その層と隣接するペロブスカイト層及びバルクヘテロ接合層を設けることが好ましい。
【0073】
<<ペロブスカイト層>>
前記ペロブスカイト層とは、ペロブスカイト化合物を含み、光を吸収して電子輸送層を増感する層を意味する。そのため、ペロブスカイト層は、電子輸送層に隣接して配置されることが好ましい。
【0074】
前記ペロブスカイト層としては、その形状、大きさについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0075】
前記ペロブスカイト化合物は、有機化合物と無機化合物の複合物質であり、以下の一般式(X)で表わされる。
αβγ ・・・一般式(X)
ただし、前記一般式(X)中、α:β:γの比率は3:1:1であり、β及びγは1より大きい整数を表し、Xはハロゲン、Yはアミノ基を有する有機化合物、Zは金属イオンを表す。
【0076】
上記の一般式(X)におけるXとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲンが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0077】
上記の一般式(X)におけるYとしては、有機カチオンであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メチルアミン、エチルアミン、n-ブチルアミン、ホルムアミジンなどのアルキルアミン化合物イオンや、無機のアルカリ金属カチオンとしては、アンチモンイオン、セシウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、無機アルカリ金属カチオンと有機カチオンとをそれぞれ併用してもよい。これらの中でも、アミノ基を有する有機化合物(アルキルアミン化合物イオン)が好ましい。
また、ハロゲン化鉛-メチルアンモニウムのペロブスカイト化合物の場合、ハロゲンイオンがClのときは、光吸収スペクトルのピークλmaxは約350nm、Brのときは約410nm、Iのときは約540nmと、順に長波長側にシフトするため、利用できるスペクトル幅(バンド域)は異なる。
【0078】
上記の一般式(X)におけるZとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、鉛、インジウム、アンチモン、スズ、銅、ビスマス等の金属のイオンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0079】
また、前記ペロブスカイト層は、ハロゲン化金属からなる層と有機カチオン分子が並んだ層が、交互に積層した層状ペロブスカイト構造を示すことが好ましい。
【0080】
また、前記ペロブスカイト層の膜厚は50nm以上2μm以下が好ましく、100nm以上600nm以下がより好ましい。
【0081】
前記ペロブスカイト層を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ハロゲン化金属及びハロゲン化アルキルアミンやハロゲン化セシウムなどを、溶解又は分散させた溶液を塗布した後に乾燥する方法などが挙げられる。
また、ペロブスカイト層を形成する方法としては、例えば、ハロゲン化金属を溶解又は分散させた溶液を塗布、乾燥した後、ハロゲン化アルキルアミンを溶解させた溶液中に浸して、ペロブスカイト化合物を形成する二段階析出法などが挙げられる。
更に、ペロブスカイト層を形成する方法としては、例えば、ハロゲン化金属及びハロゲン化アルキルアミンを溶解又は分散した溶液を塗布しながら、ペロブスカイト化合物にとっての貧溶媒(溶解度が小さい溶媒)を加えて結晶を析出させる方法などが挙げられる。 加えて、ペロブスカイト層を形成する方法としては、例えば、メチルアミンなどが充満したガス中において、ハロゲン化金属を蒸着する方法などが挙げられる。
これらの中でも、ハロゲン化金属及びハロゲン化アルキルアミンを溶解又は分散した溶液を塗布しながら、ペロブスカイト化合物にとっての貧溶媒を加えて結晶を析出させる方法が好ましい。
【0082】
溶液を塗布する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、浸漬法、スピンコート法、スプレー法、ディップ法、ローラ法、エアーナイフ法などが挙げられる。また、溶液を塗布する方法としては、例えば、二酸化炭素などを用いた超臨界流体中で析出させる方法であってもよい。
【0083】
また、前記ペロブスカイト層は、光増感色素(光増感化合物)を含んでもよい。
前記光増感色素(光増感化合物)を含んだ前記ペロブスカイト層を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記ペロブスカイト化合物と前記光増感色素(光増感化合物)を混合する方法、前記ペロブスカイト層を形成した後で、前記光増感色素(光増感化合物)を吸着させる方法などが挙げられる。
【0084】
前記光増感色素(光増感化合物)としては、使用される励起光により光励起される化合物であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記光増感色素(光増感化合物)としては、例えば、金属錯体化合物、クマリン化合物、ポリエン化合物、インドリン化合物、チオフェン化合物、シアニン色素、メロシアニン色素、9-アリールキサンテン化合物、トリアリールメタン化合物、フタロシアニン化合物、ポルフィリン化合物などが挙げられる。
前記金属錯体化合物としては、例えば、特表平7-500630号公報、特開平10-233238号公報、特開2000-26487号公報、特開2000-323191号公報、特開2001-59062号公報等に記載の金属錯体化合物などが挙げられる。
前記クマリン化合物としては、例えば、特開平10-93118号公報、特開2002-164089号公報、特開2004-95450号公報、J.Phys.Chem.C,7224,Vol.111(2007)等に記載のクマリン化合物などが挙げられる。
前記ポリエン化合物としては、例えば、特開2004-95450号公報、Chem.Commun.,4887(2007)等に記載のポリエン化合物などが挙げられる。
前記インドリン化合物としては、例えば、特開2003-264010号公報、特開2004-63274号公報、特開2004-115636号公報、特開2004-200068号公報、特開2004-235052号公報、J.Am.Chem.Soc.,12218,Vol.126(2004)、Chem.Commun.,3036(2003)、Angew.Chem.Int.Ed.,1923,Vol.47(2008)等に記載のインドリン化合物などが挙げられる。
前記チオフェン化合物としては、例えば、J.Am.Chem.Soc.,16701,Vol.128(2006)、J.Am.Chem.Soc.,14256,Vol.128(2006)等に記載のチオフェン化合物などが挙げられる。
前記シアニン色素としては、例えば、特開平11-86916号公報、特開平11-214730号公報、特開2000-106224号公報、特開2001-76773号公報、特開2003-7359号公報等に記載のシアニン色素などが挙げられる。
前記メロシアニン色素としては、例えば、特開平11-214731号公報、特開平11-238905号公報、特開2001-52766号公報、特開2001-76775号公報、特開2003-7360号公報等に記載のメロシアニン色素などが挙げられる。
前記9-アリールキサンテン化合物としては、例えば、特開平10-92477号公報、特開平11-273754号公報、特開平11-273755号公報、特開2003-31273号公報等に記載の9-アリールキサンテン化合物などが挙げられる。
前記トリアリールメタン化合物としては、例えば、特開平10-93118号公報、特開2003-31273号公報等に記載のトリアリールメタン化合物などが挙げられる。
前記フタロシアニン化合物、前記ポルフィリン化合物としては、例えば、特開平9-199744号公報、特開平10-233238号公報、特開平11-204821号公報、特開平11-265738号公報、J.Phys.Chem.,2342,Vol.91(1987)、J.Phys.Chem.B,6272,Vol.97(1993)、Electroanal.Chem.,31,Vol.537(2002)、特開2006-032260号公報、J.Porphyrins Phthalocyanines,230,Vol.3(1999)、Angew.Chem.Int.Ed.,373,Vol.46(2007)、Langmuir,5436,Vol.24(2008)等に記載のフタロシアニン化合物、ポルフィリン化合物などが挙げられる。
これらの中でも、金属錯体化合物、インドリン化合物、チオフェン化合物、ポルフィリン化合物が好ましい。
【0085】
<<バルクヘテロ接合層>>
前記バルクヘテロ接合層は、電子供与性有機材料及び電子求引性有機材料を含有する。
前記バルクヘテロ接合層においては、前記電子供与性有機材料(P型有機半導体)及び前記電子求引性有機材料(N型有機半導体)が混合されていることで、ナノサイズのPN接合であるバルクヘテロ接合が生じる。そうすることにより、接合面で生じる光電荷分離を利用して電流を得ることができる。
【0086】
<<<電子供与性有機材料(P型有機半導体)>>>
前記P型有機半導体としては、例えば、ポリチオフェン又はその誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、オリゴチオフェン又はその誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン又はその誘導体、ポリフェニレンビニレン又はその誘導体、ポリチエニレンビニレン又はその誘導体、ベンゾジチオフェン誘導体、ジケトピロロピロール誘導体等の共役ポリマーや低分子化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0087】
これらの中でも、π共役を有する導電性ポリマーであるポリチオフェン又はその誘導体が好ましい。前記ポリチオフェン及びその誘導体は、優れた立体規則性を確保することができ、溶媒への溶解性が比較的高い点で有利である。
【0088】
前記ポリチオフェン及びその誘導体としては、チオフェン骨格を有する化合物であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ポリ-3-ヘキシルチオフェンに代表されるポリアルキルチオフェン、ポリ-3-ヘキシルイソチオナフテン、ポリ-3-オクチルイソチオナフテン、ポリ-3-デシルイソチオナフテン等のポリアルキルイソチオナフテン;ポリエチレンジオキシチオフェンなどが挙げられる。
【0089】
また、近年では、ベンゾジチオフェン、カルバゾール、ベンゾチアジアゾール及びチオフェンからなる共重合体であるPTB7(ポリ({4,8-ビス[(2-エチルヘキシル)オキシ]ベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジチオフェン-2,6-ジイル}{3-フルオロ-2-[(2-エチルヘキシル)カルボニル]チエノ[3,4-b]チオフェネジル}))、PCDTBT(ポリ[N-9’’-ヘプタデカニル-2,7-カルバゾール-アルト-5,5-(4’,7’-ジ-2-チエニル-2’,1’,3’-ベンゾチアジアゾール)])などの誘導体が、優れた光電変換効率を得られる化合物として挙げられる。
【0090】
更に、共役ポリマーだけでなく、電子供与性ユニットと電子吸引性ユニットとを結合させた低分子化合物でも優れた光電変換効率を得られる化合物が知られており、本発明にも用いることができる(例えば、ACSAppl.Mater.Interfaces2014,6,803-810参照)。
前記電子供与性有機材料としての低分子化合物の中でも、下記一般式(A)で示される化合物が好ましい。
【0091】
【化22】
【0092】
ただし、前記一般式(A)中、nは、1~3の整数を表す。
は、n-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-デシル基、及びn-ドデシル基のいずれかを表す。
は、炭素数6~22のアルキル基を有する酸素原子、炭素数6~22のアルキル基を有する硫黄原子、炭素数6~22のアルキル基を有する炭素原子、又は下記一般式(B)で表される基を表す。中でも、炭素数6~20のアルキル基を有する酸素原子、炭素数6~20のアルキル基を有する硫黄原子、炭素数6~20のアルキル基を有する炭素原子、又は下記一般式(B)で表される基が好ましい。
【0093】
【化23】
【0094】
ただし、前記一般式(B)中、R及びRは、水素原子若しくは炭素数6~12のアルキル基を表す。
は、炭素数6~22の分岐鎖を有していてもよいアルキル基を表す。中でも、炭素数6~12の分岐鎖を有していてもよいアルキル基が好ましい。
【0095】
前記電子供与性有機材料としての低分子化合物としては、より具体的には、下記一般式(C)で表される化合物が好ましい。
【0096】
【化24】
【0097】
ただし、前記一般式(C)中、R及びRは、水素原子若しくは炭素数6~12のアルキル基を表し、水素原子若しくは炭素数6~10のアルキル基であることが好ましい。
は、炭素数6~22の分岐鎖を有していてもよいアルキル基を表し、炭素数6~12の分岐鎖を有していてもよいアルキル基であることが好ましい。
【0098】
ここで、前記一般式(C)で表される化合物について、具体例を下記に示すがこれに限定されるものではない。
【0099】
【表1】
【0100】
<<<電子求引性有機材料(N型有機半導体)>>>
前記電子求引性有機材料としては、例えば、イミド誘導体、フラーレン、フラーレン誘導体などが挙げられる。これらの中でも、電荷分離及び電荷輸送の点から、フラーレン誘導体が好ましい。
【0101】
前記フラーレン誘導体としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよく、例えば、PC71BM(フェニルC71酪酸メチルエステル、フロンティアカーボン社製)、PC61BM(フェニルC61酪酸メチルエステル、フロンティアカーボン社製)、PC85BM(フェニルC85酪酸メチルエステル、フロンティアカーボン社製)、ICBA(フラーレンインデン2付加体、フロンティアカーボン社製)等が挙げられる。また、この他にも、下記一般式(D)に示すフラロピロリジン系フラーレン誘導体などが挙げられる。
【0102】
【化25】
【0103】
ただし、前記一般式(D)中、Y及びYは、同一でも異なっていてもよく、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基のいずれかを表す。
なお、YとYが同時に水素原子であることはない。
【0104】
前記Arは、置換基を有していてもよいアリール基を表す。
前記アリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントラリル基、フェナントリル基などが挙げられる。これらの中でも、フェニル基が好ましい。
【0105】
前記Arで表される置換基を有するアリール基の置換基としては、酸素原子を除くことが好ましい。置換基としては、例えば、アリール基、アルキル基、シアノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基などが挙げられる。
これらの置換基のうちで、アリール基としては、フェニル基等が挙げられる。
アルキル基、及びアルコキシ基のアルキル基部分としては、後述するY及びYで表されるアルキル基と同様に例えば炭素数1~22のアルキル基等が挙げられる。
これらの置換基の数、及び置換位置については、特に限定されないが、例えば、1~3個の置換基がArで表されるアリール基の任意の位置に存在することができる。
【0106】
前記Y及びYで表される基のうちで、アルキル基としては、炭素数1~22のアルキル基が好ましく、炭素数1~12のアルキル基がより好ましく、炭素数6~12のアルキル基が特に好ましい。これらのアルキル基は、直鎖状及び分枝鎖状のいずれでもよいが、特に、直鎖状であることが好ましい。
なお、アルキル基には、炭素鎖中に更にS、Oなどの異種元素が1個又は2個以上含まれていてもよい。
【0107】
前記Y及びYで表される基のうちで、アルケニル基としては、炭素数2~10のアルケニル基が好ましく、特に好ましい具体例としては、ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-メチル-2-プロペニル基、1,3-ブタジエニル基等の炭素数2~4の直鎖状又は分岐鎖状アルケニル基を挙げることができる。
【0108】
前記Y及びYで表される基のうちで、アルキニル基としては、炭素数1~10のアルキニル基が好ましく、特に好ましい具体例として、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-メチル-2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基等の炭素数2~4の直鎖状又は分岐鎖状アルキニル基などが挙げられる。
【0109】
前記Y及びYで表される基のうちで、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラリル基、フェナントリル基などが挙げられる。
【0110】
前記Y及びYで表される基のうちで、アラルキル基としては、2-フェニルエチル、ベンジル、1-フェニルエチル、3-フェニルプロピル、4-フェニルブチル等の炭素数7~20のアラルキル基などが挙げられる。
【0111】
上述のように、前記Y及びYで表される基の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、及びアラルキル基は置換基を有する場合と、置換基を有しない場合を含む。
前記Y及びYで表される基が有することができる置換基としては、例えばアルキル基、アルコキシカルボニル基、ポリエーテル基、アルカノイル基、アミノ基、アミノカルボニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、基:-CONHCOR’(ただし、式中、R’はアルキル基である)、基:-C(=NR’)-R”(ただし、式中、R’及びR”はアルキル基である)、基:-NR’=CR”R’”(ただし、式中、R’、R”及びR’”はアルキル基である)などが挙げられる。
【0112】
これらの置換基のうちで、前記ポリエーテル基としては、例えば、式:Y-(OY)n-O-で表される基が挙げられる。ここで、Yはアルキル基等の1価の炭化水素基を表し、Yは2価の脂肪族炭化水素基を表す。
上記式で表されるポリエーテル基において、-(OY-で表される繰り返し単位の具体例としては、-(OCH-、-(OC-、-(OC-等のアルコキシ鎖等が挙げられる。これらの繰り返し単位の繰り返し数nは、1~20が好ましく、1~5がより好ましい。-(OY-で表される繰り返し単位には、同一の繰り返し単位だけではなく、2種以上の異なる繰り返し単位が含まれていてもよい。上記した繰り返し単位のうちで、-OC-及び-OC-については、直鎖状及び分枝鎖状のいずれであってもよい。
【0113】
また、前記置換基のうちで、アルキル基と、アルコキシカルボニル基、アルカノイル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ポリエーテル基、基:-CONHCOR’、基:-C(=NR’)-R”、及び基:-NR’=CR”R’”におけるアルキル基部分(R’、R”)は、前述したアルキル基と同様に、炭素数1~22のアルキル基が好ましく、炭素数1~12のアルキル基がより好ましく、炭素数6~12のアルキル基が特に好ましい。
【0114】
前記アミノ基、及びアミノカルボニル基におけるアミノ基部分としては、特に、炭素数1~20のアルキル基が1個又は2個以上結合したアミノ基が好ましい。
【0115】
前記一般式(D)で表されるフラーレン誘導体のうちで、好適な性能を有する化合物の例としては、Arが、置換基を有するか、若しくは置換基を有しないフェニル基であって、Y及びYのいずれか一方が水素原子であり、他方が、置換基としてアルコキシカルボニル基を有するアルキル基、置換基としてアルコキシ基を有するアルキル基、置換基としてポリエーテル基を有するアルキル基、置換基としてアミノ基を有するアルキル基、又は置換基を有するか若しくは置換基を有しないフェニル基である化合物が挙げられる。
【0116】
このような化合物のうちで、特に優れた性能を有する化合物の一例としては、Arが置換基としてフェニル基、シアノ基、アルコキシ基、アルコシキカルボニル基、又はアルキル基を有するか若しくは置換基を有しないフェニル基であって、Y及びYのいずれか一方が水素原子であり、他方が、置換基としてアルコキシカルボニル基を有するアルキル基、置換基としてアルコキシ基を有するアルキル基、置換基としてポリエーテル基を有するアルキル基、フェニル基、置換基としてアルキル基を有するフェニル基、置換基としてアルコキシカルボニル基を有するフェニル基、又は置換基としてアルコキシ基を有するフェニル基である化合物が挙げられる。
【0117】
これらの化合物は、ピロリジン骨格上に適度な極性を有する基を含むものであり、自己組織化性が良好であるために、バルクヘテロジャンクション構造の光電変換層を形成する際に、適切な層分離構造を有するバルクヘテロジャンクション構造の光電変換部を形成できる。これにより、電子移動度などが向上して高い変換効率が発現されるものと考えられる。
【0118】
最も好ましい化合物としては、Arがフェニル基であり、Y又はYのいずれか一方が水素原子であり、他方が無置換のアルキル基(炭素数4~6のアルキル基)、無置換のフェニル基、1-ナフチル基、又は2-ナフチル基である化合物である。
【0119】
前記バルクヘテロ接合層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スピンコート塗布、ブレードコート塗布、スリットダイコート塗布、スクリーン印刷塗布、バーコーター塗布、鋳型塗布、印刷転写法、浸漬引き上げ法、インクジェット法、スプレー法、真空蒸着法などが挙げられる。これらの中から、厚み制御や配向制御など、作製しようとする有機材料薄膜の特性に応じて適宜選択することができる。
【0120】
例えば、前記スピンコート塗布を行う場合には、P型有機半導体及びN型有機半導体の濃度が5mg/mL以上40mg/mL以下であることが好ましい。この濃度にすることにより均質な有機材料薄膜を容易に作製することができる。
【0121】
作製した有機材料薄膜から有機溶媒を除去するため、減圧下又は不活性雰囲気下(窒素やアルゴン雰囲気下)でアニーリング処理を行ってもよい。前記アニーリング処理の温度は、40℃以上300℃以下が好ましく、50℃以上200℃以下がより好ましい。また、前記アニーリング処理を行うことにより、積層した層が界面で互いに浸透して接触する実効面積が増加し、短絡電流を増大させることができる。なお、前記アニーリング処理は、電極の形成後に行ってもよい。
【0122】
前記有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、トルエン、キシレン、o-クロロフェノール、アセトン、酢酸エチル、エチレングリコール、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、クロロナフタレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、γ-ブチロラクトンなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、クロロベンゼン、クロロホルム、オルトジクロロベンゼンが好ましい。
【0123】
また、前記P型有機半導体と前記N型有機半導体の相分離構造制御のために、前記有機溶媒に0.1質量%以上10質量%以下の添加剤を加えてもよい。前記添加剤としては、例えば、ジヨードアルカン(1,8-ジヨードオクタン、1,6-ジヨードヘキサン、1,10-ジヨードデカンなど)、アルカンジチオール(1,8-オクタンジチオール、1,6-ヘキサンジチオール、1,10-デカンジチオールなど)、1-クロロナフタレン、ポリジメチルシロキサン誘導体などが挙げられる。
【0124】
前記光電変換層の平均厚みは、50nm以上400nm以下が好ましく、60nm以上250nm以下がより好ましい。前記平均厚みが、50nm以上であれば、光電変換層による光吸収が少なくてキャリア発生が不充分となることはなく、400nm以下であれば、光吸収により発生したキャリアの輸送効率が一段と低下するようなことはない。
【0125】
<<ホール輸送層>>
前記光電変換素子は、ホール輸送層を有することが好ましい。
前記ホール輸送層は、ホールを輸送する機能を有する層であり、塩基性化合物を含有し、さらに、ホール輸送材と、アルカリ金属塩とを含むことが好ましく、さらに必要に応じてその他の材料を含有していてもよい。
【0126】
<<<塩基性化合物>>>
前記塩基性化合物としては、酸解離定数(pKa)が、6以上10以下であることが好ましい、ピリジン化合物やイミダゾール化合物などが挙げられる。中でもピリジン化合物が好ましい。
前記ピリジン化合物としては、例えば、下記一般式(1)及び下記一般式(2)の少なくともいずれかで表される化合物である。
【0127】
【化26】
【化27】
ただし、前記一般式(1)、及び前記一般式(2)中、Ar及びArは、置換基を有していてもよいアリール基を表し、前記Ar及び前記Arは、同一でも異なっていてもよく、互いに結合してもよい。
前記アリール基の具体例としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基などが挙げられる。前記置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基などが挙げられる。
【0128】
以下に、上記一般式(1)で示されるピリジン化合物の具体的な例示化合物を示すが、本発明におけるピリジン化合物はこれらに限定されるものではない。
【0129】
【化28】
【0130】
ホール輸送層における上記のピリジン化合物の含有量としては、ホール輸送材料に対して、20モル%以上65モル%以下が好ましく、35モル%以上50モル%以下がより好ましい。ピリジン化合物の含有量が好ましい範囲であることにより、高い開放電圧を維持でき、高い出力が得られ、かつ様々な環境(特に低温環境)で長期使用しても高い安定性と耐久性が得られる。
【0131】
<<<ホール輸送材>>>
前記ホール輸送層には、ホールを輸送する機能を得るために、例えば、ホール輸送材としての、ホール輸送材料又はp型半導体材料を含有していることが好ましい。
前記ホール輸送材料又は前記p型半導体材料としては、公知の有機ホール輸送性化合物を用いることができる。
前記有機ホール輸送性化合物の具体例としては、例えば、オキサジアゾール化合物、トリフェニルメタン化合物、ピラゾリン化合物、ヒドラゾン化合物、オキサジアゾール化合物、テトラアリールベンジジン化合物、スチルベン化合物、スピロ型化合物等を挙げることができる。
これらの中でもスピロ型化合物がより好ましい。
前記スピロ型化合物としては、下記一般式(10)を含む化合物が好ましい。
【0132】
【化29】
ただし、前記一般式(8)中、R31~R34は、それぞれ独立して、ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ナフチル-4-トリルアミノ基等の置換アミノ基を表す。
スピロ型化合物の具体例としては、以下に示す(D-1)~(D-22)が挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。
【0133】
【化30】
【0134】
【化31】
【0135】
【化32】
【0136】
【化33】
【0137】
【化34】
【0138】
【化35】
【0139】
【化36】
【0140】
また、前記ホール輸送材料としての前記スピロ型化合物としては、下記一般式(4)で表される化合物を特に好適に用いることができる。
【化37】
ただし、前記一般式(4)中、Rは、水素原子又はアルキル基を表す。
【0141】
例えば、上記の(D-1)~(D-22)の内、上記一般式(4)で表されるものは、(D-7)及び(D-10)である。
【0142】
これらのスピロ型化合物は、高いホール移動度を有している他に、2つのベンジジン骨格分子が捻れて結合しているため、球状に近い電子雲を形成しており、分子間におけるホッピング伝導性が良好であることにより優れた光電変換特性を示す。また溶解性も高いため各種有機溶媒に溶解し、アモルファス(結晶構造をもたない無定形物質)であるため、多孔質状の電子輸送層に密に充填されやすい。更に、450nm以上の光吸収特性を有さないために、光増感化合物に効率的に光吸収をさせることができ、固体型色素増感型太陽電池にとって特に好ましい。
【0143】
<<<アルカリ金属塩>>>
前記アルカリ金属塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などが挙げられる。
前記リチウム塩としては、例えば、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、過塩素酸リチウム、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)ジイミド、リチウムジイソプロピルイミド、酢酸リチウム、テトラフルオロホウ素酸リチウム、ペンタフルオロリン酸リチウム、テトラシアノホウ素酸リチウムなどが挙げられる。
前記ナトリウム塩としては、例えば、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、ナトリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)ジイミド、酢酸ナトリウム、テトラフルオロホウ素酸ナトリウム、ペンタフルオロリン酸ナトリウム、テトラシアノホウ素酸ナトリウムなどが挙げられる。
前記カリウム塩としては、例えば、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、過塩素酸カリウムなどが挙げられる。
これらの中でも、導電性が向上することにより、出力特性の耐久性や安定性を高めることができる点から、リチウム塩が好ましく、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)ジイミド、リチウムジイソプロピルイミドがより好ましい。
【0144】
前記リチウム塩としては、下記一般式(3)で表される化合物が好ましい。
【0145】
【化38】
ただし、前記一般式(3)中、A及びBは、F、CF、C、C、及びCのいずれかの置換基を表す。前記Aの置換基と前記Bの置換基は互いに異なることが好ましい。
【0146】
前記リチウム塩としては、例えば、リチウム(フルオロスルホニル)(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Li-FTFSI)、リチウム(フルオロスルホニル)(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド(Li-FPFSI)、リチウム(フルオロスルホニル)(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド(Li-FNFSI)、リチウム(ノナフルオロブタンスルホニル)(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Li-NFTFSI)、リチウム(ペンタフルオロエタンスルホニル)(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Li-PFTFSI)などが挙げられ、これらの中でも、リチウム(フルオロスルホニル)(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(Li-FTFSI)が特に好ましい。
【0147】
前記リチウム塩の具体例の構造式としては、例えば、以下の通りである。
【0148】
【化39】
【0149】
ここで、例えば、前記リチウム塩を含有したホール輸送層形成用塗布液を用いて塗布した場合、形成した膜においては、上記のリチウム塩は、アニオンとカチオンが結合した塩の状態で含有している必要はなく、リチウムカチオンとアニオンに分離した状態であってもよい。具体的には、前記リチウム塩は、例えば、ホール輸送層形成用塗布液に含有した状態でホール輸送層を形成すると、リチウムカチオンは電子輸送層にマイグレートし、ホール輸送層よりも電子輸送層に多く含有されることを本発明者らは知見した。一方、アニオンについては、例えば、電子輸送層に一部マイグレートされるものの、電子輸送層よりもホール輸送層に多く含有されることを本発明者らは知見した。
本発明においては、リチウム塩のカチオンとアニオンが分離し、それぞれが異なる分布状態を形成することが好ましく、これらが光電変換層内に含有されていることで、低温環境においても、低照度の光に対して高い出力が得られ、かつ出力の持続性に優れるという効果を更に向上させることができる。
【0150】
前記光電変換層におけるホール輸送層には、上記一般式(3)で表されるリチウム塩に加えて、別の構造を有するリチウム塩を含有させることもできる。これらのリチウム塩としては、前述のリチウム塩の他に、アニオン種が対称のものでもよく、例えば、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(Li-FSI)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Li-TFSI)、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド(Li-BETI)、リチウムビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド等が挙げられる。また、リチウム(シクロヘキサフルオロプロパン)(ジスルホン)イミドのような環状イミドも挙げられる。
ただし、これらのリチウム塩は、アニオンが対称型であるため相溶性が低く、添加量を増加することが難しくなるため、添加するとしても少量が好ましい。
【0151】
上記一般式(3)で表されるリチウム塩の含有量としては、ホール輸送材料に対して、5モル%以上50モル%以下であることが好ましく、20モル%以上35モル%以下がより好ましい。含有量が上記範囲内であることにより、低照度光に対する出力が高く、かつ出力の維持率が向上し、高耐久化との両立が可能になる。
【0152】
特に、光電変換層におけるピリジン化合物のモル量をaとし、光電変換層における前記リチウム塩のモル量をbとしたとき、前記光電変換層における、ピリジン化合物とリチウム塩のモル比である(a/b)は、2.0未満であることが好ましく、1.8以下がより好ましく、1.7以下がさらに好ましい。
前記モル比(a/b)が2.0未満であると、低温環境で低照度光を照射したときの高い出力を更に長期間維持することが可能になり、光電変換素子の耐久性を更に向上できるという利点がある。
【0153】
前記ホール輸送層には、ホール輸送材料やリチウム塩以外に、酸化剤を添加することが好ましい。酸化剤を含有させることにより、ホール輸送性が向上し、出力特性やその耐久性又は安定性を高めることが可能になる。
【0154】
<<<酸化剤>>>
前記酸化剤としては、例えば、ヘキサクロロアンチモン酸トリス(4-ブロモフェニル)アミニウム、ヘキサフルオロアンチモネート銀、ニトロソニウムテトラフルオボラート、硝酸銀、金属錯体、超原子価ヨウ素化合物などが挙げられる。
これらの中でも金属錯体及び超原子価ヨウ素化合物が好適に用いられる。
前記酸化剤が金属錯体や超原子価ヨウ素化合物であると、有機溶媒に対する溶解度が高いことで、多く添加することが可能になり、その結果ホール輸送性が向上し、かつその効果の持続性に優れる。
【0155】
前記金属錯体は、金属カチオン、配位子、アニオンから構成される。
前記金属カチオンとしては、例えば、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、金、白金等のカチオンを挙げることができる。これらの中でも、コバルト、鉄、ニッケル、銅のカチオンが好ましく、コバルト錯体がより好ましい。
前記配位子としては、少なくとも一つの窒素を含有する5及び/又は6員複素環を含むものが好ましく、置換基を有していてもよい。具体例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0156】
【化40】
【0157】
【化41】
【0158】
前記アニオンとしては、例えば、水素化物イオン(H)、フッ化物イオン(F)、塩化物イオン(Cl)、臭化物イオン(Br)、ヨウ化物イオン(I)、水酸化物イオン(OH)、シアン化物イオン(CN)、硝酸イオン(NO )、亜硝酸イオン(NO )、次亜塩素酸イオン(ClO)、亜塩素酸イオン(ClO )、塩素酸イオン(ClO )、過塩素酸イオン(ClO )、過マンガン酸イオン(MnO )、酢酸イオン(CHCOO)、炭酸水素イオン(HCO )、リン酸二水素イオン(HPO )、硫酸水素イオン(HSO )、硫化水素イオン(HS)、チオシアン酸イオン(SCN)、テトラフロオロホウ素酸イオン(BF )、ヘキサフルオロリン酸イオン(PF )、テトラシアノホウ素酸イオン(B(CN) )、ジシアノアミンイオン(N(CN) )、p-トルエンスルホン酸イオン(TsO)、トリフルオロメチルスルホン酸イオン(CFSO2-)、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミンイオン(N(SOCF2-)、テトラヒドロキソアルミン酸イオン([Al(OH)、又は[Al(OH)(HO))、ジシアノ銀(I)酸イオン([Ag(CN))、テトラヒドロキソクロム(III)酸イオン([Cr(OH))、テトラクロロ金(III)酸イオン([AuCl)、酸化物イオン(O )、硫化物イオン(S )、過酸化物イオン(O 2-)、硫酸イオン(SO 2-)、亜硫酸イオン(SO 2-)、チオ硫酸イオン(S 2-)、炭酸イオン(CO 2-)、クロム酸イオン(CrO 2-)、二クロム酸イオン(Cr 2-)、リン酸一水素イオン(HPO 2-)、テトラヒドロキソ亜鉛(II)酸イオン([Zn(OH)2-)、テトラシアノ亜鉛(II)酸イオン([Zn(CN)2-)、テトラクロロ銅(II)酸イオン([CuCl2-)、リン酸イオン(PO 3-)、ヘキサシアノ鉄(III)酸イオン([Fe(CN)3-)、ビス(チオスルファト)銀(I)酸イオン([Ag(S3-)、ヘキサシアノ鉄(II)酸イオン([Fe(CN)4-)などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、テトラフロオロホウ素酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、テトラシアノホウ素酸イオン、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミンイオン、過塩素酸イオンが好ましい。
【0159】
これらの金属錯体の中でも、3価のコバルト錯体を添加することが特に好ましい。酸化剤として3価のコバルト錯体を添加すると、ホール輸送材料を酸化させ、安定化することが可能になり、ホール輸送性を高めることができる。
本発明においては、例えば、ホール輸送層形成用塗布液に添加するコバルト錯体には3価を用いることが好ましいが、前記ホール輸送層形成用塗布液を用いて得られた光電変換素子のホール輸送層には2価のコバルト錯体が含有されていることが好ましい。これは、3価のコバルト錯体がホール輸送材料と混合することで、ホール輸送材料が酸化され、コバルト錯体が2価になるためである。言い換えると、本発明においては、光電変換層が、2価のコバルト錯体を更に含むことが好ましい。
特に、光電変換素子のホール輸送層には3価のコバルト錯体は殆ど残存せず、ほぼすべてのコバルト錯体が2価になっていることが特に好ましい。これにより、ホール輸送性が向上し、かつ安定化し、高出力化並びにその持続性が向上できるだけでなく、低温環境でもその効果を更に発揮することが可能になる。
【0160】
前記ホール輸送層に含有されるコバルト錯体の価数については、例えば、XAFS分析を行うことにより明確化できる。XAFS分析は、X-ray Absorption Fine Structureの略であり、X線吸収微細構造解析と称される。例えば、試料にX線を照射し、その吸収量を計測することにより、XAFSスペクトルを得ることができる。
前記XAFSスペクトル中、吸収端近傍構造はXANES(X-ray Absorption Near Edge Structure)、吸収端より約100eV以上高エネルギー側に現れる広域X線吸収微細構造はEXAFS(Extended X-ray Absorption Fine Structure)と称されるが、着目する原子の価数や構造に関する情報は、主として前者のXANESより得ることができる。この場合、例えば、2価及び3価のコバルト錯体粉末のXAFSスペクトルを別途測定し、ホール輸送層に含有するコバルト錯体のXAFSスペクトルと比較することによって、ホール輸送層に含有されるコバルト錯体の価数を明らかにすることができる。
図20には、本発明の光電変換素子の一例を用いた光電変換モジュール(実施例1の光電変換モジュール)について、上記の通りにXAFSスペクトルを取得した結果を示す。図20に示すように、本発明の光電変換素子の一例を用いた光電変換モジュールのホール輸送層に含有されるコバルト錯体は、2価のコバルト錯体粉末とよく一致しており、3価のコバルト錯体粉末と一致する部分がないため、含有するコバルト錯体のほぼすべてが2価であると判断することができる。
【0161】
前記ホール輸送層形成用塗布液に添加する前記3価のコバルト錯体は、下記構造式(4)及び(5)で示されるコバルト錯体を好ましく用いることができる。
【0162】
【化42】
【0163】
【化43】
ただし、前記構造式(5)中、RからR10は、水素原子、メチル基、エチル基、ターシャルブチル基、又はトリフルオロメチル基を示す。Xは、下記構造式(6)から(9)のいずれかを示す。
【0164】
【化44】
【0165】
前記Xについては、前記構造式(6)から(9)の中でも、前記構造式(8)がより好ましい。前記構造式(8)を用いることにより、前記ホール輸送材料が酸化された状態で安定に維持できる点で有効である。
【0166】
これらのコバルト錯体の具体例としては、以下に示す(F-1)~(F-24)が挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。
【0167】
【化45】
【0168】
【化46】
【0169】
【化47】
【0170】
前記酸化剤の含有量としては、前記ホール輸送材料に対して、1モル%以上30モル%以下であることが好ましく、5モル%以上20モル%がより好ましい。
前記酸化剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用することで、前記ホール輸送層が結晶化にくくなり、高い耐熱性が得られる場合がある。
【0171】
前記ホール輸送層は、単一材料からなる単層構造でもよく、複数の化合物を含む積層構造であってもよい。
前記ホール輸送層が積層構造の場合には、第2の電極に近い前記ホール輸送層に高分子材料を用いることが好ましい。
製膜性に優れる前記高分子材料を用いると、多孔質状の電子輸送層の表面をより平滑化することができ、光電変換特性を向上することができる点で有利である。
また、前記高分子材料は、多孔質状の電子輸送層内部へ浸透しにくいことから、多孔質状の前記電子輸送層表面の被覆性に優れ、電極を設ける際の短絡防止にも効果が得られる場合がある。
【0172】
<<<高分子材料>>>
前記ホール輸送層に用いられる前記高分子材料としては、公知のホール輸送性高分子材料が挙げられる。
前記ホール輸送性高分子材料としては、例えば、ポリチオフェン化合物、ポリフェニレンビニレン化合物、ポリフルオレン化合物、ポリフェニレン化合物、ポリアリールアミン化合物、ポリチアジアゾール化合物などが挙げられる。
【0173】
前記ポリチオフェン化合物としては、例えば、ポリ(3-n-ヘキシルチオフェン)、ポリ(3-n-オクチルオキシチオフェン)、ポリ(9,9’-ジオクチル-フルオレン-コ-ビチオフェン)、ポリ(3,3’’’-ジドデシル-クォーターチオフェン)、ポリ(3,6-ジオクチルチエノ[3,2-b]チオフェン)、ポリ(2,5-ビス(3-デシルチオフェン-2-イル)チエノ[3,2-b]チオフェン)、ポリ(3,4-ジデシルチオフェン-コ-チエノ[3,2-b]チオフェン)、ポリ(3,6-ジオクチルチエノ[3,2-b]チオフェン-コ-チエノ[3,2-b]チオフェン)、ポリ(3,6-ジオクチルチエノ[3,2-b]チオフェン-コ-チオフェン)、ポリ(3,6-ジオクチルチエノ[3,2-b]チオフェン-コ-ビチオフェン)などが挙げられる。
【0174】
前記ポリフェニレンビニレン化合物としては、例えば、ポリ[2-メトキシ-5-(2-エチルヘキシルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン]、ポリ[2-メトキシ-5-(3,7-ジメチルオクチルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン]、ポリ[(2-メトキシ-5-(2-エチルフェキシルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン)-コ-(4,4’-ビフェニレン-ビニレン)]などが挙げられる。
【0175】
前記ポリフルオレン化合物としては、例えば、ポリ(9,9’-ジドデシルフルオレニル-2,7-ジイル)、ポリ[(9,9-ジオクチル-2,7-ジビニレンフルオレン)-alt-コ-(9,10-アントラセン)]、ポリ[(9,9-ジオクチル-2,7-ジビニレンフルオレン)-alt-コ-(4,4’-ビフェニレン)]、ポリ[(9,9-ジオクチル-2,7-ジビニレンフルオレン)-alt-コ-(2-メトキシ-5-(2-エチルヘキシルオキシ)-1,4-フェニレン)]、ポリ[(9,9-ジオクチル-2,7-ジイル)-コ-(1,4-(2,5-ジヘキシルオキシ)ベンゼン)]などが挙げられる。
【0176】
前記ポリフェニレン化合物としては、例えば、ポリ[2,5-ジオクチルオキシ-1,4-フェニレン]、ポリ[2,5-ジ(2-エチルヘキシルオキシ-1,4-フェニレン]などが挙げられる。
【0177】
前記ポリアリールアミン化合物としては、例えば、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-alt-コ-(N,N’-ジフェニル)-N,N’-ジ(p-ヘキシルフェニル)-1,4-ジアミノベンゼン]、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-alt-コ-(N,N’-ビス(4-オクチルオキシフェニル)ベンジジン-N,N’-(1,4-ジフェニレン)]、ポリ[(N,N’-ビス(4-オクチルオキシフェニル)ベンジジン-N,N’-(1,4-ジフェニレン)]、ポリ[(N,N’-ビス(4-(2-エチルヘキシルオキシ)フェニル)ベンジジン-N,N’-(1,4-ジフェニレン)]、ポリ[フェニルイミノ-1,4-フェニレンビニレン-2,5-ジオクチルオキシ-1,4-フェニレンビニレン-1,4-フェニレン]、ポリ[p-トリルイミノ-1,4-フェニレンビニレン-2,5-ジ(2-エチルヘキシルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン-1,4-フェニレン]、ポリ[4-(2-エチルヘキシルオキシ)フェニルイミノ-1,4-ビフェニレン]などが挙げられる。
【0178】
前記ポリチアジアゾール化合物としては、例えば、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-alt-コ-(1,4-ベンゾ(2,1’,3)チアジアゾール]、ポリ(3,4-ジデシルチオフェン-コ-(1,4-ベンゾ(2,1’,3)チアジアゾール)などが挙げられる。
【0179】
これらの中でも、キャリア移動度やイオン化ポテンシャルの観点から、ポリチオフェン化合物及びポリアリールアミン化合物が好ましい。
【0180】
前記ホール輸送層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、多孔質状の前記電子輸送層の細孔に入り込んだ構造を有することが好ましく、前記電子輸送層上に0.01μm以上20μm以下がより好ましく、0.1μm以上10μm以下が更に好ましく、0.2μm以上2μm以下が特に好ましい。
【0181】
前記ホール輸送層は、前記光増感化合物が吸着された前記電子輸送層の上に直接形成することができる。
前記ホール輸送層の作製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、真空蒸着等の真空中で薄膜を形成する方法、湿式製膜法などが挙げられる。これらの中でも、製造コストなどの点で、特に湿式製膜法が好ましく、電子輸送層上に塗布する方法が好ましい。
前記湿式製膜法を用いた場合、塗布方法としては、特に制限はなく、公知の方法にしたがって行うことができ、例えば、ディップ法、スプレー法、ワイヤーバー法、スピンコート法、スリットダイコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、また、湿式印刷方法として、凸版、オフセット、グラビア、凹版、ゴム版、スクリーン印刷等様々な方法を用いることができる。
【0182】
また、超臨界流体又は臨界点より低い温度及び圧力の亜臨界流体中で製膜してもよい。
前記超臨界流体は、気体と液体が共存できる限界(臨界点)を超えた温度及び圧力領域において非凝集性高密度流体として存在し、圧縮しても凝集せず、臨界温度以上、かつ臨界圧力以上の状態にある流体である限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、臨界温度が低いものが好ましい。
【0183】
前記超臨界流体としては、例えば、一酸化炭素、二酸化炭素、アンモニア、窒素、水、アルコール溶媒、炭化水素溶媒、ハロゲン溶媒、エーテル溶媒などが挙げられる。
アルコール溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n-ブタノールなどが挙げられる。
前記炭化水素溶媒としては、例えば、エタン、プロパン、2,3-ジメチルブタン、ベンゼン、トルエンなどが挙げられる。ハロゲン溶媒としては、例えば、塩化メチレン、クロロトリフロロメタンなどが挙げられる。
前記エーテル溶媒としては、例えば、ジメチルエーテルなどが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、二酸化炭素が、臨界圧力7.3MPa、臨界温度31℃であることから、容易に超臨界状態をつくり出せるとともに、不燃性で取扱いが容易である点で好ましい。
【0184】
前記亜臨界流体としては、臨界点近傍の温度及び圧力領域において、高圧液体として存在する限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記超臨界流体として挙げられる化合物は、前記亜臨界流体としても好適に使用することができる。
前記超臨界流体の臨界温度及び臨界圧力は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、臨界温度としては、-273℃以上300℃以下が好ましく、0℃以上200℃以下がより好ましい。
【0185】
更に、前記超臨界流体及び前記亜臨界流体に加え、有機溶媒やエントレーナーを併用することもできる。
前記有機溶媒及び前記エントレーナーの添加により、前記超臨界流体中での溶解度の調整をより容易に行うことができる。
【0186】
前記有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ケトン溶媒、エステル溶媒、エーテル溶媒、アミド溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、炭化水素溶媒などが挙げられる。
前記ケトン溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。
前記エステル溶媒としては、例えば、ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチルなどが挙げられる。
前記エーテル溶媒としては、例えば、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサンなどが挙げられる。
前記アミド溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンなどが挙げられる。
前記ハロゲン化炭化水素溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、ブロモホルム、ヨウ化メチル、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、フルオロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、1-クロロナフタレンなどが挙げられる。
前記炭化水素溶媒としては、例えば、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-オクタン、1,5-ヘキサジエン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサジエン、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、クメンなどが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0187】
また、前記光増感化合物を吸着させた前記電子輸送層上に、前記ホール輸送材料を積層した後、プレス処理工程を施してもよい。
プレス処理を施すことによって、前記ホール輸送材料がより多孔質電極である前記電子輸送層と密着するため、効率が改善できる場合がある。
プレス処理の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、IR錠剤成形器に代表されるような平板を用いたプレス成形法、ローラ等を用いたロールプレス法などを挙げることができる。
前記圧力としては、10kgf/cm以上が好ましく、30kgf/cm以上がより好ましい。
【0188】
プレス処理する時間は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1時間以下が好ましい。また、プレス処理時に熱を加えてもよい。プレス処理の際、プレス機と電極との間に離型剤を挟んでもよい。
前記離型剤としては、例えば、ポリ四フッ化エチレン、ポリクロロ三フッ化エチレン、四フッ化エチレン六フッ化プロピレン共重合体、ペルフルオロアルコキシフッ化樹脂、ポリフッ化ビニリデン、エチレン四フッ化エチレン共重合体、エチレンクロロ三フッ化エチレン共重合体、ポリフッ化ビニル等のフッ素樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0189】
プレス処理工程を行った後、前記第2の電極を設ける前に、前記ホール輸送材料と前記第2の電極との間に金属酸化物を設けてもよい。
前記金属酸化物としては、例えば、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化バナジウム、酸化ニッケルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、酸化モリブデンが好ましい。
【0190】
前記金属酸化物を前記ホール輸送層上に設ける方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、スパッタリング、真空蒸着等の真空中で薄膜を形成する方法や湿式製膜法などが挙げられる。
前記湿式製膜法としては、前記金属酸化物の粉末又はゾルを分散したペーストを調製し、前記ホール輸送層上に塗布する方法が好ましい。
前記湿式製膜法を用いた場合の塗布方法としては、特に制限はなく、公知の方法にしたがって行うことができ、例えば、ディップ法、スプレー法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、また、湿式印刷方法として、凸版、オフセット、グラビア、凹版、ゴム版、スクリーン印刷等様々な方法を用いることができる。
【0191】
塗布された前記金属酸化物の平均厚みとしては、0.1nm以上50nm以下が好ましく、1nm以上10nm以下がより好ましい。
【0192】
<第2の電極>
本発明の光電変換素子は、第2の電極を有する。
前記第2の電極は、前記ホール輸送層上に、又は前記ホール輸送層における前記金属酸化物上に形成することができる。
また、前記第2の電極は、前記第1の電極と同様のものを用いることができ、強度が十分に保たれる場合には支持体は必ずしも必要ではない。
前記第2の電極の材質としては、例えば、金属、炭素化合物、導電性金属酸化物、導電性高分子などが挙げられる。
前記金属としては、例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウムなどが挙げられる。
前記炭素化合物としては、例えば、グラファイト、フラーレン、カーボンナノチューブ、グラフェンなどが挙げられる。
前記導電性金属酸化物としては、例えば、ITO、FTO、ATOなどが挙げられる。
前記導電性高分子としては、例えば、ポリチオフェン、ポリアニリンなどが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0193】
前記第2の電極の形成については、用いられる材料の種類やホール輸送層の種類により、適宜、前記ホール輸送層上に塗布、ラミネート、蒸着、CVD、貼り合わせなどの手法により形成可能である。
本発明の光電変換素子においては、前記第1の電極と前記第2の電極の少なくともいずれかは実質的に透明であることが好ましい。
前記第1の電極側が透明であり、入射光を前記第1の電極側から入射させる方法が好ましい。この場合、前記第2の電極側には光を反射させる材料を使用することが好ましく、金属、導電性酸化物を蒸着したガラス、プラスチック、あるいは金属薄膜が好ましく用いられる。また、入射光側に反射防止層を設けることも有効な手段である。
【0194】
<電極保護層(パッシベーション層)>
本発明の光電変換素子は、前記電極保護層(パッシベーション層と称することがある)を有していることが好ましい。
前記電極保護層は、後述する封止部と、前記第2の電極と、の間に配される層である。
前記電極保護層は、前記第2の電極が前記封止部によって剥離してしまうことを防止する層である。
前記電極保護層としては、前記第2の電極における前記封止部を設ける側の面に配されていれば特に制限はなく、前記第2の電極が前記封止部と完全に接触しないように配されていてもよく、本発明の効果を奏することができれば、前記第2の電極が前記封止部と部分的に接触するように配されていてもよい。
前記電極保護層の材質としては、例えば、酸化物、フッ素化合物などが挙げられる。
前記酸化物としては、例えば、酸化アルミニウムなどが挙げられる。
前記フッ素化合物としては、窒化シリコン、酸化シリコンなどが挙げられる。これらの中でも、前記フッ素化合物としては、シラン構造を有するフッ素化合物である酸化シリコンが好ましい。
前記電極保護層の平均厚みとしては、10nm以上が好ましく、50nm以上がより好ましい。
【0195】
<封止部>
前記封止部は、感圧粘着剤を含む。
前記封止部は、前記光電変換層及び前記第2の電極の、少なくとも側面を覆うように配置され、前記光電変換層及び前記第2の電極を外部環境から遮蔽する層である。
前記封止部は、少なくとも前記光電変換層及び前記第2の電極を、光電変換素子の外部環境から遮蔽することができる。
ここで、前記光電変換層及び前記第2の電極を外部環境から遮蔽するとは、少なくとも前記光電変換層及び前記第2の電極を、光電変換素子の外部環境と異なる環境下に置くことができれば特に制限はなく、例えば、光電変換素子の光電変換層で構成される発電領域の全面に封止部を配し、第2の基板と接着する「面封止」が好ましい。
ここで、封止の方式は、光電変換素子の光電変換層で構成される発電領域の周縁部に封止部材を設け、第2の基板と接着する「枠封止」と、前記発電領域全面に封止部材を設け、第2の基板と接着する「面封止」に大別できる。前者の「枠封止」は、封止内部に中空部を形成することができるため、封止内部の水分量や酸素量を適正に調整することが可能であり、また第2の電極が封止部材と接触していないために、電極剥がれの影響を低減できる効果がある。一方、後者の「面封止」は、外部からの過剰な水や酸素の侵入を防止する効果に優れており、また封止部材との接着面積が大きいため、封止強度が高く、特に第1の基板にフレキシブル基板を用いた場合に特に好ましい。
【0196】
前記封止部は、以下の条件で測定したときの180°剥離強度が、5N/1cm以上であることが好ましい。
前記封止部の剥離強度が当該範囲であると、高温高湿環境下での保存後及び光の連続照射後の耐久性が向上する。これは、封止部の剥離強度が当該範囲であると、封止部の粘着力が高いため、外部環境からの遮蔽性が高まるためであると推察される。また、UV硬化樹脂や熱硬化樹脂では硬化に伴い収縮が起き、封止部と基板等の間に隙間ができることにより高温高湿環境下での耐久性懸念があると推察される。
<条件>
・ガラスに封止部付きフィルムを貼り合わせた後に、JIS規格 K6854-2に準拠した測定方法で測定した際の剥離強度を意味する。
【0197】
前記封止部は、感圧粘着剤を含む。前記封止部の材料としては、外部環境からの過剰な水分や酸素などの侵入を低減でき、上記封止部に該当する材料であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
また、前記封止部は、外部から押圧されることによる機械的な破壊を防止する効果もあり、これを実現可能なものであれば、従来公知の材料を使用することもできる。
【0198】
前記感圧粘着剤とは、恒常的に、タック性(べたつき)と、表面に強く接着する力(粘着力)と、粘着剤が固まっていようとする性質(凝集力)とを有する粘着剤である。感圧粘着剤は、べたつきと粘着力とを有するため、被写体の表面形状に影響することなく接した瞬間に接着することができる。一方、硬化型接着剤は、被写体と接しただけでは接着せず、硬化反応を伴うことで、接着することができる。また、感圧粘着剤は、恒常的に凝集力を有することで、被写体と接した部分以外に拡散することない。一方、硬化型接着剤は、凝集力がない為に、被写体と接した部分以外に拡散されることで、不要な領域まで接着剤が汚染される可能性が高い。
前記感圧粘着剤としては、例えば、オレフィン系樹脂、ゴム系樹脂、シリコン系樹脂、アクリル系樹脂が好ましく用いられる。
【0199】
前記封止部としてシート状封止材を用いることもできる。
前記シート状封止材とは、例えば、シート上に予めエポキシ樹脂などの封止部を形成したもので、シートはガラスやガスバリア性の高いフィルム等が用いられ、本発明における第2の基板、又は第2の基板と封止基材との組み合わせに該当する。
前記シート状封止材を、第2の電極上に貼り付け、その後加温しながら押圧することにより、封止基材及び第2の基板を一度に形成することができる。
シート上に形成する前記封止部の形成パターンにより、中空部を設けた構造にすることもでき、有効である。
シート上に形成する前記封止部が全面に形成されていれば、「面封止」になるが、前記封止部の形成パターンにより、光電変換素子の内部に中空部を設けるように前記封止部をパターン形成すれば「枠封止」とすることができる。
前記シート状封止材としては、例えば、ゴム系封止部付きアルミペットシート(Tesa社製、商品名:61539)、オレフィン系封止部付きアルミペットシート(Moresco社製、商品名:S2191)、封止部付きアルミペットシート(味の素ファインテクノ社製、商品名:FD21)などが挙げられる。
【0200】
前記感圧粘着剤は、必要に応じて添加剤を含有することが好ましい。
前記添加剤としては、例えば、充填材(フィラー)、ギャップ剤、乾燥剤(吸湿剤)、可とう化剤、着色剤、難燃助剤、酸化防止剤、有機溶剤などが挙げられる。これらの中でも、充填材、ギャップ剤、乾燥剤(吸湿剤)が好ましく、充填材がより好ましい。
【0201】
前記充填材は、水分や酸素の浸入を抑制する上で有効であるほか、体積収縮の低減、加熱時のアウトガス量の低減、機械的強度の向上、熱伝導性や流動性の制御等の効果を得ることができ、様々な環境でも安定した出力を維持する上で非常に有効である。特に、光電変換素子の出力特性やその耐久性は、単に侵入する水分や酸素の影響だけでなく、封止部材の加熱時に発生するアウトガスの影響が無視できない。特に、加熱時に発生するアウトガスの影響は、高温環境保管における出力特性に大きな影響を及ぼす。
この場合、前記封止部に前記充填材や前記ギャップ剤、前記乾燥剤を含有させることにより、これら自身が水分や酸素の浸入を抑制できるほか、前記封止部の使用量を低減できることにより、アウトガスを低減させる効果を得ることができる。これは、高温高湿保管における出力特性だけでなく、光電変換素子を高温環境に保存した際にも有効である。
【0202】
前記充填材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、結晶性又は不定形のシリカ、タルク、アルミナ、窒化アルミ、窒化珪素、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム等の無機系充填材が好ましく用いられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記充填材の平均一次粒径は、0.1μm以上10μmが好ましく、1μm以上5μm以下がより好ましい。
【0203】
前記充填材の含有量としては、封止部材全体が100質量部に対し、10質量部以上90質量部以下が好ましく、20質量部以上70質量部以下がより好ましい。
前記充填材の含有量が上記範囲内であることにより、水分や酸素の浸入抑制効果が十分に得られ、粘度も適正となり、基板との密着性や脱泡性の向上、又は作業性に対しても有効である。
【0204】
前記乾燥剤は、吸湿剤とも称され、水分を物理的又は化学的に吸着、吸湿する機能を有する材料であり、前記封止部に含有させることにより、耐湿性を更に高めたり、アウトガスの影響を低減できたりする場合もあることから有効である。
前記乾燥剤としては、粒子状であるものが好ましく、例えば、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、塩化カルシウム、シリカゲル、モレキュラーシーブ、ゼオライトなどの無機吸水材料が挙げられる。これらの中でも、吸湿量が多いゼオライトが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0205】
前記封止部としては、水分捕捉材を含有することが好ましい。
前記水分捕捉材としては、気体や液体の水分を捕捉することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、吸水材、吸水性樹脂などが挙げられる。
前記水分捕捉材としては、測定した水分捕捉性が、20mg/100mm以上であることが好ましく、30mg/100mm以上であることがより好ましく、60mg/100mm以上であることが更に好ましい。
前記吸水材としては、例えば、乾燥剤などが挙げられる。前記乾燥剤としては、例えば、活性炭、ゼオライト、カルシウム化合物、マグネシウム化合物、シリカゲル、有機金属化合物などが挙げられる。
【0206】
前記封止部の形成方法としては、特に制限はなく、公知の方法にしたがって行うことができ、例えば、真空張り合わせ法、ヒートローラ法、ディスペンス法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、凸版、オフセット、凹版、ゴム版、スクリーン印刷等様々な方法を用いることができる。
【0207】
本発明の光電変換素子においては、前記封止部の前記第2の電極と対向する面とは反対の面において、封止基材を有していてもよい。
【0208】
<封止基材>
前記封止基材は、前記封止部における水蒸気などの気体の透過をより抑制するために設けることができる。
前記封止基材の材質としては、気体の透過を抑制することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記封止基材の材質としては、例えば、アルミニウム、ガラス、PETフィルムなどが挙げられる。
前記封止基材の大きさ、構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0209】
<第2の基板>
本発明の光電変換素子は、第2の基板を有してもよい。
前記第2の基板としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記第1の基板と同様のものを用いることができる。
前記第2の基板としては、特に制限されるものではなく、公知のものを用いることができ、例えば、ガラス、プラスチックフィルム、セラミック、PET等の基板が挙げられる。第2の基板と封止部材との接合部は密着性を上げるため、凹凸部を形成してもよい。
凹凸部の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、サンドブラスト法、ウオーターブラスト法、研磨紙、化学エッチング法、レーザー加工法などが挙げられる。
第2の基板と前記封止部又は前記封止基材との密着性を上げる手段としては、例えば、表面の有機物を除去してもよく、親水性を向上させてもよい。第2の基板の表面の有機物を除去する手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、UVオゾン洗浄、酸素プラズマ処理などが挙げられる。
【0210】
[実施形態]
以下に、本発明の光電変換素子の一例について、図面を用いて説明する。ただし、本発明は、これらに限定されるものではなく、例えば、下記構成部材の数、位置、形状等について、本実施の形態に記載されていないものについても、本発明の範疇に含まれる。
【0211】
図1は、本発明の光電変換素子の一例を示す概略図である。
図1に示すように、光電変換素子101には、第1の基板1上に第1の電極2が形成され、第1の電極2上にはホールブロッキング層3が形成される。ホールブロッキング層3上には電子輸送層4が形成され、電子輸送層4を構成する電子輸送性材料の表面に光増感化合物5が吸着される。電子輸送層4の上部及び内部にはホール輸送層6が形成され、ホール輸送層6の上に第2の電極7が形成される。前記第2の電極7の上方には第2の基板9が配置され、第2の基板9はホールブロッキング層3との間で封止部8によって固定される。ホールブロッキング層3を形成することにより、電子とホールの再結合を防止することができるため、発電性能を向上させることができる。
図1に示される光電変換素子は、第2の電極7及び第2の基板9の間に空隙部10を有することができる。前記空隙部を有することにより、空隙部内の酸素濃度を制御することができるため、発電性能、及び耐久性を向上させることができる。また、第2の電極7と第2の基板9が直接接触しないため、第2の電極7が剥離したり破壊したりすることを防ぐことができる。
なお、図示しないが、第1の電極2及び第2の電極7は、各々電極取出し端子まで導通する経路を有することができる。
【0212】
図2図4は、本発明の光電変換素子の他の一例を示す概略図であり、空隙部を設けず、図1の光電変換層(電子輸送層4及びホール輸送層6)を封止部8で完全に覆った場合を示す。
空隙部を設けない光電変換素子の作製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、封止部8を第2の電極7上の全面に塗布し、その上に第2の基板9を設ける方法や、前述のシート状封止材を用いる方法などが挙げられる。
この場合、第2の電極7と封止部8との間にパッシベーション層13を設けることが可能であり、第2の電極の剥離防止に有効な場合がある。
前記空隙部としては、図2のように完全に無くしてもよいし、図3のように空隙部を一部残してもよい。封止部8で光電変換層を完全に覆うことにより、光電変換素子に捻りや落下等により応力が加わった場合に、第2の基板9が剥離したり、破壊したりすることを低減でき、光電変換素子の機械的強度を高めることができる。また、図2の変更例として、図4に示すように第2の基板を設けない構成にしてもよい。
【0213】
図5は、本発明の光電変換素子の他の一例を示す概略図であり、封止部8が第1の基板1及び第2の基板9に接着される場合を示す。このような構成にすることにより、封止部8の基板との接着性が高くなり、光電変換素子の機械的強度が高まる効果が得られる。また、密着性が高まることにより、水分や酸素の過剰な浸入を防ぐ封止効果をより一層高める効果を得ることができる。
【0214】
(光電変換モジュール)
本発明の光電変換モジュールは、第1の電極と、光電変換層と、第2の電極と、を有する光電変換素子を有し、前記光電変換層及び前記第2の電極の少なくとも側面を覆うように配置された封止部を有し、必要に応じて、その他の層を有する。各層は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
本発明の光電変換モジュールは、複数の本発明の光電変換素子が隣接して配置され、かつ直列又は並列に接続された光電変換素子配置領域を有することが好ましい。
【0215】
また、本発明の光電変換モジュールは、隣接する少なくとも2つの前記光電変換素子を有する光電変換モジュールにおいて、一の前記光電変換素子における前記第1の電極と、他の前記光電変換素子における前記第2の電極とが、前記光電変換層を貫通した導通部により電気的に接続されていることが好ましい。
【0216】
光電変換モジュールは、一対の基板を有し、かつ直列又は並列に接続された光電変換素子配置領域を前記一対の基板の間に有し、前記封止部材が前記一対の基板に挟持された構成とすることができる。
【0217】
[実施形態]
以下に、本発明の光電変換モジュールの一例について、図面を用いて説明する。ただし、本発明は、これらに限定されるものではなく、例えば、下記構成部材の数、位置、形状等について、本実施の形態に記載されていないものについても、本発明の範疇に含まれる。
【0218】
図6は、本発明の光電変換モジュールの一例を示す概略図であり、複数の光電変換素子を含み、それらが直列に接続された光電変換モジュールのある一部の断面を示す一例である。
図6の光電変換モジュール102は、ホール輸送層6を形成した後、貫通部11を形成し、その後、第2の電極7を形成することによって、貫通部11の内部に第2の電極材料が導入され、隣接するセルの第1の電極2bと導通させた光電変換モジュールである。なお、図6には図示しないが、第1の電極2a及び第2の電極7bは、更に隣接するセルの電極、あるいは出力取出し端子まで導通する経路を有する。
【0219】
貫通部11は、第1の電極2を貫通し、第1の基板1まで達していてもよいし、第1の電極2の内部で加工をやめ、第1の基板1にまで達していなくてもよい。
貫通部11の形状を第1の電極2を貫通し、第1の基板1まで到達する微細孔とする場合、貫通部11の面積に対して微細孔の開口面積合計が大きくなりすぎると、第1の電極2の膜断面積が減少することで抵抗値が増大してしまい、光電変換効率の低下を引き起こす場合がある。そのため、前記貫通部11の面積に対する微細孔の開口面積合計の比率としては、5/100以上60/100以下が好ましい。
【0220】
貫通部11の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、サンドブラスト法、ウオーターブラスト法、研磨紙、化学エッチング法、レーザー加工法などが挙げられる。これらの中でも、レーザー加工法が好ましい。これにより、微細な孔をサンドやエッチング、レジスト等を使うことなく形成でき、また、清浄に再現性よく加工することが可能となる。また、貫通部11を形成する場合に、ホールブロッキング層3、電子輸送層4、ホール輸送層6、第2の電極7のうち少なくとも一つをレーザー加工法による衝撃剥離によって除去することが可能になる。これにより、積層時にマスクを設ける必要がなく、また、除去と微細な貫通部11の形成を一度に簡易的に行うことができる。
【0221】
図7は、本発明の光電変換モジュールの一例を示す概略図であり、光電変換モジュール102は、複数の光電変換素子を含み、それらが直列に接続され、セル間の空隙部に梁のように封止部12を設けた光電変換モジュールのある一部の断面を示す一例である。
図2のように、第2の電極7と第2の基板9との間に空隙部を設けた場合、第2の電極7の剥離や破壊を防止できる反面、封止の機械的強度が低下する場合がある。一方、図3のように、第2の電極7と第2の基板9との間を封止部6で満たした場合、封止の機械的強度は高まるが、第2の電極7の剥離が生じる懸念がある。ここで、発電力を高めるためには、光電変換モジュールの面積を増加することが有効であるが、空隙部を有する場合には機械的強度の低下が避けられない。
そこで、図7に示すように梁のように封止部12を設けることにより、第2の電極7の剥離や破壊を防止し、かつ封止の機械的強度を高めることが可能となり、有効である。
封止部12は、封止部8と同じ材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。
【0222】
(電子機器)
本発明の電子機器は、本発明の光電変換素子及び光電変換モジュールの少なくともいずれかと、前記光電変換素子及び光電変換モジュールの少なくともいずれかが光電変換することによって発生した電力によって動作する装置と、を有し、更に必要に応じてその他の装置を有する。
また、本発明の電子機器は、本発明の光電変換素子及び光電変換モジュールの少なくともいずれかと、前記光電変換素子及び光電変換モジュールの少なくともいずれかが光電変換することによって発生した電力を蓄電可能な蓄電池と、前記蓄電池に蓄電された前記電力によって動作する装置と、を有し、更に必要に応じてその他の装置を有する。
【0223】
(電源モジュール)
本発明の電源モジュールは、本発明の光電変換素子及び/又は光電変換モジュールと、電源集積回路(電源IC)と、を有し、更に必要に応じてその他の装置を有する。
【0224】
本発明の光電変換素子、及び光電変換モジュールと、これらが発電することによって得られた電力により動作する装置を有する電子機器の具体的な実施形態について説明する。
図8には、前記電子機器として、マウスを用いた一例を示す。
図8に示すように、光電変換素子201、及び光電変換モジュールと電源IC202、更に蓄電デバイス203とを組み合わせ、供給される電力をマウスの制御回路204の電源に接続する。これにより、マウスを使用していない時に蓄電デバイス203に充電し、その電力でマウスを動作させることができ、配線や電池交換が不要なマウスを得ることができる。また、電池が不要になることで軽量化も可能となり、有効である。
図9には、マウスに光電変換素子201を実装させた概略図を示した。光電変換素子201及び電源IC202、蓄電デバイス203はマウス内部に実装されるが、光電変換素子201に光が当たるように光電変換素子201の上部は透明の筐体で覆われている。また、マウスの筐体すべてを透明な樹脂で成形することも可能である。光電変換素子201の配置はこれに限られるものではなく、例えばマウスを手で覆っていても光が照射される位置に配置することも可能であり、好ましい場合がある。
【0225】
本発明の光電変換素子、及び光電変換モジュールと、これらが発電することによって得られた電力により動作する装置を有する電子機器の他の実施形態について説明する。
図10には、前記電子機器として、パソコンに用いられるキーボードを用いた一例を示す。
図10に示すように、光電変換素子201と電源IC202、蓄電デバイス203を組み合わせ、供給される電力をキーボードの制御回路205の電源に接続する。これにより、キーボードを使用していない時に蓄電デバイス203に充電し、その電力でキーボードを動作させることができ、配線や電池交換が不要なキーボードを得ることができる。また、電池が不要になることで軽量化も可能となり、有効である。
図11には、キーボードに光電変換素子201を実装させた概略図を示した。光電変換素子201及び電源IC202、蓄電デバイス203はキーボード内部に実装されるが、光電変換素子201に光が当たるように光電変換素子201の上部は透明の筐体で覆われている。キーボードの筐体すべてを透明な樹脂で成形することも可能である。光電変換素子201の配置はこれに限られるものではない。
光電変換素子を組み込むスペースが小さい小型のキーボードの場合には、図12に示すように、キーの一部に小型の光電変換素子を埋め込むことも可能であり、有効である。
【0226】
本発明の光電変換素子、及び光電変換モジュールと、これらが発電することによって得られた電力により動作する装置を有する電子機器の他の実施形態について説明する。
図13には、前記電子機器として、センサを用いた一例を示す。
図13に示すように、光電変換素子201と電源IC202、蓄電デバイス203を組み合わせ、供給される電力をセンサ回路206の電源に接続する。これにより、外部電源に接続する必要がなく、また電池交換を行う必要もなく、センサモジュールAを構成することが可能となる。センシング対象としては、温湿度、照度、人感、CO濃度、加速度、UV強度、騒音、地磁気、気圧など、様々なセンサに応用でき、有効である。センサモジュールは、図13中に示すように、定期的に測定対象をセンシングし、読み取ったデータをPCやスマートフォンなどの機器207に無線通信で送信する構成になっている。
IoT社会の到来により、センサは急増することが予想されている。この無数のセンサの電池を一つ一つ交換するには大きな手間がかかり、現実的ではない。またセンサは、天井や壁など、電池交換しにくい場所にあることも作業性を悪くしている。光電変換素子により電力供給できることもメリットは非常に大きい。また、本発明の光電変換素子は、低照度でも高い出力を得ることができ、かつ出力の光入射角依存性が小さいことから、設置自由度が高いといったメリットも得られる。
【0227】
本発明の光電変換素子、及び光電変換モジュールと、これらが発電することによって得られた電力により動作する装置を有する電子機器の他の実施形態について説明する。
図14には、前記電子機器として、ターンテーブルを用いた一例を示す。
図14に示すように、光電変換素子201と電源IC202、蓄電デバイス203を組み合わせ、供給される電力をターンテーブル制御回路208の電源に接続する。これにより、外部電源に接続する必要がなく、また電池交換を行う必要もなく、ターンテーブルを構成することが可能となる。
ターンテーブルは、例えば、商品を陳列するショーケースなどに用いられるが、電源の配線は見栄えが悪く、また電池交換の際には陳列物を撤去しなければならず、大きな手間がかかっていた。本発明の光電変換素子を用いることで、そのような不具合を解消でき、有効である。
【0228】
<用途>
以上、本発明の光電変換素子、及び光電変換モジュールと、これらが発電することによって得られた電力により動作する装置を有する電子機器、及び電源モジュールについて説明したが、これらはごく一部であり、本発明の光電変換素子、あるいは光電変換モジュールが、これらの用途に限定されるものではない。
【0229】
光電変換素子、及び光電変換モジュールは、発生した電流を制御する回路基盤等と組み合わせることにより、例えば、電源装置に応用できる。
電源装置を利用している機器類としては、例えば、電子卓上計算機、腕時計、携帯電話、電子手帳、電子ペーパーなどが挙げられる。
また、充電式や乾電池式の電気器具の連続使用時間を長くするための補助電源として、光電変換素子を有する電源装置を用いることができる。
【0230】
本発明の光電変換素子、及び光電変換モジュールは、自立型電源として機能させることができ、光電変換によって発生した電力を用いて、装置を動作させることが可能である。本発明の光電変換素子、及び光電変換モジュールは、光が照射されることにより発電することが可能であるため、電子機器を電源に接続したり、あるいは電池交換したりする必要がない。そのため、電源設備がない場所でも電子機器を動作させたり、身に着けて持ち歩いたり、電池交換が困難な場所でも電池を交換することなく、電子機器を動作させたりすることが可能である。また、乾電池を用いる場合は、その分電子機器が重くなったり、サイズが大きくなったりするため、壁や天井への設置、あるいは持ち運びに支障を来すことがあるが、本発明の光電変換素子、及び光電変換モジュールは、軽量で薄いため、設置自由度が高く、身に着けたり、持ち歩く上でもメリットが大きい。
このように、本発明の光電変換素子、及び光電変換モジュールは、自立型電源として使用でき、様々な電子機器に組み合わせることができる。例えば、電子卓上計算機、腕時計、携帯電話、電子手帳、電子ペーパーなどの表示機器、マウスやキーボードなどのパソコンの付属機器、温湿度センサや人感センサなどの各種センサ機器、ビーコンやGPSなどの発信機、補助灯、リモコン等数多くの電子機器と組み合わせて使用することができる。
【0231】
本発明の光電変換素子、及び光電変換モジュールは、特に低照度の光でも発電できるため、室内でも、更に薄暗い影のところでも発電することが可能であるため、適用範囲が広い。また、乾電池のように液漏れがなく、ボタン電池のように誤飲することもなく安全性が高い。更に、充電式や乾電池式の電気器具の連続使用時間を長くするための補助電源として用いることができる。このように、本発明の光電変換素子、及び光電変換モジュールと、それが光電変換することによって発生した電力によって動作する装置とを組み合わせることで、軽量で使い勝手がよく、設置自由度が高く、交換が不要で、安全性に優れ、かつ環境負荷低減にも有効な電子機器に生まれ変わることができる。
【0232】
本発明の光電変換素子及び/又は光電変換モジュールと、それが光電変換することによって発生した電力によって動作する装置とを組み合わせた電子機器の基本構成図を図15に示す。これは、光電変換素子に光が照射されると発電し、電力を取り出すことができる。機器の回路は、その電力によって動作することが可能になる。
【0233】
しかし、光電変換素子は周囲の照度によって出力が変化するため、図15に示す電子機器は安定に動作することができない場合がある。この場合、図16に示すように、回路側に安定した電圧を供給するために、光電変換素子201と機器回路209の間に光電変換素子用の電源IC202を組み込むことが可能であり、有効である。
しかし、光電変換素子は十分な照度の光が照射されていれば発電できるが、発電するだけの照度が足りなくなると、所望の電力が得られなくなり、これが光電変換素子の欠点でもある。この場合には、図17に示すように、キャパシタ等の蓄電デバイス203を電源IC202と機器回路209の間に搭載することによって、光電変換素子201からの余剰電力を蓄電デバイス203に充電することが可能となり、照度が低すぎる場合や、光電変換素子201に光が当たらない場合でも、蓄電デバイス203に蓄えられた電力を機器回路209に供給することが可能になり、安定に動作させることが可能となる。
このように、本発明の光電変換素子及び/又は光電変換モジュールと、機器回路とを組み合わせた電子機器において、電源ICや蓄電デバイスを組み合わせることで、電源のない環境でも動作可能であり、また電池交換が不要で、安定に駆動させることが可能になり、光電変換素子のメリットを最大限に活かすことができる。
【0234】
一方、本発明の光電変換素子及び/又は光電変換モジュールは、電源モジュールとしても使用することが可能であり、有用である。例えば、図18に示すように、本発明の光電変換素子及び/又は光電変換モジュールと、光電変換素子用の電源IC202を接続すると、光電変換素子201が光電変換することによって発生した電力を電源IC202にて一定の電圧レベルで供給することが可能な直流電源モジュールを構成することができる。
更に、図19に示すように、電源IC202に蓄電デバイス203を追加することにより、光電変換素子201が発生させた電力を蓄電デバイス203に充電することが可能になり、照度が低すぎる場合や、光電変換素子201に光が当たらない状態になっても、電力を供給することが可能な電源モジュールを構成することができる。
図18及び図19に示した本発明の電源モジュールは、従来の一次電池のように電池交換をすることなく、電源モジュールとして使用することが可能である。
【実施例0235】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0236】
(実施例1)
<光電変換モジュールの作製>
第1の基板としてのガラス基板上に、第1の電極としてのインジウムドープ酸化錫(ITO)とニオブドープ酸化錫(NTO)を順次スパッタ製膜した(ITO:平均厚み250nm、NTO:平均厚み150nm)。次いで、ホールブロッキング層として酸化チタンからなる緻密な層(平均厚み20nm)を酸素ガスによる反応性スパッタにより形成した。
【0237】
次に、酸化チタンペースト(日揮触媒化成社製、商品名:PST-18NR)を、ホールブロッキング層上に平均厚みが約0.7μmになるようにスクリーン印刷により塗布した。120℃で乾燥後、空気中、550℃で30分間焼成し、多孔質状の電子輸送層を形成した。その後、レーザー加工によって、ITO/NTO層、ホールブロッキング層及び電子輸送層を8つのセルに分割した。
【0238】
電子輸送層を形成したガラス基板を、下記(B-5)で表される光増感化合物(0.2mM)にアセトニトリル/t-ブタノール(体積比1:1)混合液を加え撹拌した溶液に浸漬し、1時間暗所で静置して、電子輸送層の表面に光増感化合物を吸着させた。
【化48】
【0239】
次に、クロロベンゼン溶液に、リチウム塩としてリチウム(フルオロスルホニル)(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Li-FTFSI)(キシダ化学株式会社製)65.1mM、下記(H-1)で表されるピリジン化合物を146.5mM、下記(D-7)で表される有機ホール輸送材料(HTM)(SHT-263、メルク株式会社製)162.8mM、及び下記(F-11)で表されるコバルト錯体(Greatcell solar materials社製)12.7mMを加えて溶解し、ホール輸送層塗布液を調製した。なお、ピリジン化合物(a)とリチウム塩(b)のモル比(a/b)は、2.25であった。
【化49】
【化50】
【化51】
【化52】
【0240】
次に、光増感化合物を吸着させた電子輸送層上に、ホール輸送層塗布液を用い、ダイコートにより平均厚みが約600nmのホール輸送層を形成した。以上より、電子輸送層と、ホール輸送層と、を有する光電変換層を形成した。
【0241】
次に、ガラス基板の端部及びセル間にマスクを装着した後、銀を真空蒸着し、平均厚みが約70nmの第2の電極を形成した。
次に、第2の電極上に電極保護層としてシラン構造を有するフッ素化合物(株式会社ハーベス製、商品名:DURASURF DS-5935F130)をダイコートで平均厚みが10nmとなるように成膜した。
【0242】
その後、封止部が設けられるガラス基板の端部から幅1.0mm及びセル間をレーザー加工によりエッチング処理(デリーション処理)した(封止部がガラス基板と接触する部位の形成)。更にレーザー加工により端子取り出し部となるITO/NTO層に接続するための貫通孔を形成し、加えてレーザー加工により、セル間を直列に接続するための貫通孔を形成した。
【0243】
ガラス基板全面に対して、封止部、及び第2の基板が一体となった封止部付きアルミペットシート(Tesa社製、感圧粘着剤A、水分捕捉性:60mg/100mm、剥離強度:5N/1cm以上、乾燥剤:酸化カルシウム)を真空貼り合わせ装置(常陽光学株式会社製、装置名:エアーバック式真空ラミネーター)を用いて貼り合わせ、貼り合わせたものを、加熱ラミネータで70℃に加温しながら、圧着して、封止部、封止基材、及び第2の基板を形成した。
以上のように、発電領域の封止を行い、最後に、受光面にUVカットフィルム(リンテック株式会社製、商品名:PET50 HD UV400 PET25)を貼り付け、図6に示す光電変換モジュールを作製した。
なお、前記剥離強度は、JIS K6854-2に準拠して、180°剥離試験により測定された剥離強度である。
【0244】
(実施例2)
実施例1において、電極保護層成膜後のレーザーエッジング処理の幅を端部から1.5mmに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2の光電変換モジュールを作製した。
【0245】
(実施例3)
実施例1において、電極保護層成膜後のレーザーエッジング処理の幅を端部から0.5mmに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例3の光電変換モジュールを作製した。
【0246】
(実施例4)
実施例1において、ホール輸送層塗布液の平均厚みを400nmに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例4の光電変換モジュールを作製した。
【0247】
(実施例5)
実施例1において、ホール輸送層塗布液の平均厚みを900nmに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例5の光電変換モジュールを作製した。
【0248】
(実施例6)
実施例1において、封止部付きアルミペットシート(Tesa社製、感圧粘着剤A、水分捕捉性:60mg/100mm、剥離強度:5N/1cm以上、乾燥剤:酸化カルシウム)を、味の素ファインテクノ社製「AFTINNOVA(登録商標) EF(感圧粘着剤、水分捕捉性:20mg/100mm、乾燥剤含む)」に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例6の光電変換モジュールを作製した。
【0249】
(実施例7)
実施例1において、封止部付きアルミペットシート(Tesa社製、感圧粘着剤A、水分捕捉性:60mg/100mm、剥離強度:5N/1cm以上、乾燥剤:酸化カルシウム)を、Moresco社製、S2191(感圧粘着剤B、剥離強度:5N/1cm以上、乾燥剤含まない)に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例7の光電変換モジュールを作製した。
【0250】
(実施例8)
実施例1において、封止部付きアルミペットシート(Tesa社製、感圧粘着剤A、水分捕捉性:60mg/100mm、剥離強度:5N/1cm以上、乾燥剤:酸化カルシウム)を、Moresco社製、S9012(感圧粘着剤C、剥離強度:5N/1cm以上、乾燥剤含まない)に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例8の光電変換モジュールを作製した。
【0251】
(実施例9)
実施例1において、電極保護層を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして、実施例9の光電変換モジュールを作製した。
【0252】
(実施例10)
実施例1において、電極保護層の材質を酸化アルミニウムに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例10の光電変換モジュールを作製した。
【0253】
(実施例11)
実施例1において、ホール輸送層塗布液の調整に用いられるピリジン化合物(H-1)を、下記(H-3)で表されるピリジン化合物に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例11の光電変換モジュールを作製した。
【化53】
【0254】
(実施例12)
実施例1において、ホール輸送層塗布液の調整に用いられるピリジン化合物(H-1)を、下記(H-5)で表されるピリジン化合物に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例12の光電変換モジュールを作製した。
【化54】
【0255】
(実施例13)
実施例1において、封止部付きアルミペットシート(Tesa社製、感圧粘着剤A、水分捕捉性:60mg/100mm、剥離強度:5N/1cm以上、乾燥剤:酸化カルシウム)を、水分捕捉性が半分であるPSA(Tesa社製、感圧粘着剤A、水分捕捉性30mg/100mm、剥離強度:5N/1cm以上、乾燥剤:酸化カルシウム)に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例13の光電変換モジュールを作製した。
【0256】
(実施例14)
実施例1において、光電変換層をヨウ化鉛(II)(0.5306g)、臭化鉛(II)(0.0736g)、臭化メチルアミン(0.0224g)、ヨウ化ホルムアミジン(0.1876g)、ヨウ化カリウム(0.0112g)を、N,N-ジメチルホルムアミド(0.8ml)、ジメチルスルホキシド(0.2ml)に加え、60℃で加熱攪拌して得た溶液を、電子輸送層上にスピンコート法を用いて塗布しながらクロロベンゼン(0.3ml)を加えて、ペロブスカイト膜を形成し、150℃で30分間乾燥させることにより、ペロブスカイト層に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例14の光電変換モジュールを作製した。
【0257】
(比較例1)
実施例1において、封止部の材質をUV硬化樹脂(商品名:WorldRockNo.5910、協立化学産業株式会社製)に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例1の光電変換モジュールを作製した。
【0258】
<光電変換モジュールの性能評価>
次に、作製した各光電変換モジュールについて、以下のようにして、光電変換モジュールの性能(初期の最大出力電力Pmax1、及びPmax維持率)を評価した。結果を表3に示した。
【0259】
得られた光電変換モジュールを、太陽電池評価システム(As-510-PV03、株式会社エヌエフ回路設計ブロック製)を用いて、25℃、200lxにおけるIV特性を測定し、初期の最大出力電力Pmax1(μW/cm)を求めた。
その後、恒温槽内60℃、相対湿度90%環境に約500時間放置した後、再度IV特性を測定し、最大出力電力Pmax2(μW/cm)を測定し、Pmax維持率[(Pmax2/Pmax1)×100](%)を求めた。
また、併せて作製した光電変換モジュールを20klxのLED連続照射した後の初期値維持率についても求めた結果を表3に示す。
【0260】
<水分捕捉性の評価>
次に、封止部付きアルミペットシートについて、以下のようにして、水分捕捉性を評価した。封止部付きアルミペットシートを□100mmの大きさに切り出し、精密天秤を用いて重量測定を行い、重量(1)を求めた、重量(1)測定後封止部付きアルペットシートを60℃90%環境に5h以上保管した後に再度重量測定を行い、重量(2)を求めた。求めた重量(2)-重量(1)の値を水分捕捉性と定義し、水分捕捉性を求めた。また水分捕捉性評価時には封止部を保護する剥離フィルムなどは除いた状態で測定を行った。
【0261】
【表2】
【0262】
【表3】
【0263】
表3の結果から、実施例1~6の光電変換モジュールの封止部において感圧粘着剤を用いることにより、60℃、相対湿度90%という高温高湿環境における保管後においても高い出力を得ることができていることが分かった。
一方で紫外線硬化樹脂を用いた比較例の光電変換モジュールは、重合開始剤として光酸発生剤が使用されている。光酸発生剤は、光を吸収し、次いで分解して、溶媒または酸発生剤自身から水素を引き抜くことで、酸を発生する。
前述の発生した酸は常温環境においては化学反応しないが、高温環境、例えば60℃環境下において上記一般式(1)又は上記一般式(2)のいずれかで表されるピリジン化合物と化学反応することで、光電変換素子の劣化につながったものと考えられる。
感圧粘着剤に乾燥剤を含有させることにより、60℃、相対湿度90%という高温高湿環境における保管後、及び高照度下(20klx)という環境においても高い出力を保持することが分かった。これは粘着剤に乾燥剤を含有させることにより感圧粘着剤が赤外線及び可視光波長を吸収するようになり、レーザー加工時の光吸収性が向上することでレーザー加工断面精度が向上することによって、第1の電極への加工ダメージを減少することに由来しているものと考えられる。前述した加工断面の精度向上は、生産性歩留まりにも影響し、乾燥剤を含有した感圧粘着剤を使用することで生産性歩留まりも向上することができることが分かった。
【0264】
本発明の態様としては、例えば、以下の通りである。
<1> 第1の電極と、光電変換層と、第2の電極と、を有し、
前記光電変換層及び前記第2の電極の少なくとも側面を覆うように配置された封止部を有し、
前記封止部は、感圧粘着剤を含むことを特徴とする光電変換素子である。
<2> 前記封止部が、オレフィン系樹脂、ゴム系樹脂、シリコン系樹脂、及びアクリル系樹脂の少なくともいずれかを含有する前記<1>に記載の光電変換素子である。
<3> 前記光電変換層が塩基性化合物を含有する前記<1>から<2>のいずれかに記載の光電変換素子である。
<4> 前記塩基性化合物が、ピリジン化合物である前記<3>に記載の光電変換素子である。
<5> 前記ピリジン化合物が、下記一般式(1)及び一般式(2)で表される3級アミン化合物の少なくともいずれかを含有する前記<4>に記載の光電変換素子である。
【化55】
【化56】
ただし、前記一般式(1)及び前記一般式(2)中、Ar及びArは、置換基を有していてもよいアリール基を表し、前記Ar及び前記Arは、同一でも異なっていてもよく、互いに結合してもよい。
<6> 前記封止部の前記第2の電極と対向する面とは反対の面において、封止基材をさらに有する前記<1>から<5>のいずれかに記載の光電変換素子である。
<7> 前記封止部が、水分捕捉材を含有する前記<1>から<6>のいずれかに記載の光電変換素子である。
<8> 前記水分捕捉材の水分捕捉性が、20mg/100mm以上である前記<7>に記載の光電変換素子である。
<9> 前記水分捕捉材が、乾燥剤である前記<7>から<8>のいずれかに記載の光電変換素子である。
<10> 前記乾燥剤が、活性炭、ゼオライト、カルシウム化合物、マグネシウム化合物、シリカゲル、及び有機金属化合物の少なくともいずれかである前記<9>に記載の光電変換素子である。
<11> 前記封止部と、前記第2の電極と、の間に電極保護層をさらに有する前記<1>から<10>のいずれかに記載の光電変換素子である。
<12> 前記電極保護層が、シラン構造を有するフッ素化合物を含有する前記<11>に記載の光電変換素子である。
<13> 前記光電変換層が、電子輸送層と、ホール輸送層と、を有する前記<1>から<12>のいずれかに記載の光電変換素子である。
<14> 前記第1の電極と、前記光電変換層と、の間にホールブロッキング層をさらに有する前記<1>から<13>のいずれかに記載の光電変換素子である。
<15> 第1の電極と、光電変換層と、第2の電極と、を有する光電変換素子を有し、
前記光電変換層及び前記第2の電極の少なくとも側面を覆うように配置された封止部を有し、
前記封止部は、感圧粘着剤を含むことを特徴とする光電変換モジュールである。
<16> 前記光電変換素子を複数隣接して有し、
隣接する前記光電変換素子が直列又は並列に接続されている前記<15>に記載の光電変換モジュールである。
<17> 隣接する少なくとも2つの前記光電変換素子を有する光電変換モジュールにおいて、
一の前記光電変換素子における前記第1の電極と、他の前記光電変換素子における前記第2の電極とが、前記光電変換層を貫通した導通部により電気的に接続されている前記<16>に記載の光電変換モジュールである。
<18> 前記<1>から<14>のいずれかに記載の光電変換素子、及び前記<15>から<17>のいずれかに記載の光電変換モジュールのいずれかと、
前記光電変換素子又は前記光電変換モジュールが光電変換することによって発生した電力によって動作する装置と、を有することを特徴とする電子機器である。
<19> 前記<1>から<14>のいずれかに記載の光電変換素子、及び前記<15>から<17>のいずれかに記載の光電変換モジュールのいずれかと、
前記光電変換素子又は前記光電変換モジュールが光電変換することによって発生した電力を蓄電可能な蓄電池と、
前記蓄電池に蓄電された前記電力によって動作する装置と、を有することを特徴とする電子機器である。
【0265】
前記<1>から<14>のいずれかに記載の光電変換素子、前記<15>から<17>のいずれかに記載の光電変換モジュール、及び前記<18>から<19>のいずれかに記載の電子機器によると、従来における前記諸問題を解決し、前記本発明の目的を達成することができる。
【符号の説明】
【0266】
1 第1の基板
2、2a、2b 第1の電極
3 ホールブロッキング層
4 電子輸送層
5 光増感化合物
6 ホール輸送層
7、7a、7b 第2の電極
8 封止部
9 第2の基板
10 空隙部
11 貫通部
12 封止部
13 パッシベーション層
101、201 光電変換素子
102 光電変換モジュール
202 電源IC
203 蓄電デバイス
204 マウスの制御回路
205 キーボードの制御回路
206 センサ回路
207 機器
208 ターンテーブル制御回路
209 機器回路
【先行技術文献】
【特許文献】
【0267】
【特許文献1】特開2013-168572号公報
図1
図2
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図5
図6
図7
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