(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051765
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、硬化膜、カラーフィルター、タッチパネルおよび表示装置
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20230404BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20230404BHJP
G03F 7/038 20060101ALI20230404BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20230404BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/004 505
G03F7/027 515
G03F7/038 501
G02B5/20 101
G06F3/041 400
G06F3/041 495
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135741
(22)【出願日】2022-08-29
(31)【優先権主張番号】P 2021161794
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 莉奈
(72)【発明者】
【氏名】小野 悠樹
【テーマコード(参考)】
2H148
2H225
【Fターム(参考)】
2H148BE36
2H148BF04
2H148BF07
2H148BF16
2H148BF25
2H148BG02
2H148BG06
2H148BH03
2H148BH04
2H148BH18
2H225AC36
2H225AC44
2H225AC46
2H225AC49
2H225AC54
2H225AC64
2H225AC72
2H225AD06
2H225AM86P
2H225AN39P
2H225AN42P
2H225AP03P
2H225AP11P
2H225BA01P
2H225BA05P
2H225BA33P
2H225BA35P
2H225CA18
2H225CB06
2H225CC01
2H225CC13
(57)【要約】
【課題】所望する遮光性と反射率の両方を有し、かつパターン形成において、パターンエッジ部分にギザつきが生じない硬化膜を得ることが可能な感光性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】(1)(A)不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂と、(B)少なくとも2個以上の不飽和結合を有する光重合性化合物と、(C)光重合開始剤と、(D)黒色顔料、混色有機顔料および遮光材から選ばれる少なくとも1種の遮光成分と、(E)屈折率1.50以上1.80以下の微粒子と、を含む、感光性樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂と、
(B)少なくとも2個以上の不飽和結合を有する光重合性化合物と、
(C)光重合開始剤と、
(D)黒色顔料、混色有機顔料および遮光材からなる群から選択される少なくとも1種の遮光成分と、
(E)屈折率1.50~1.80の微粒子と、
を含む、感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(E)微粒子は、酸化アルミニウム粒子である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(E)微粒子の平均粒子径は、10~300nmである、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(E)微粒子の固形分中の割合が、1~30質量%である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記感光性樹脂組成物を光により硬化して得られた膜厚1μmの硬化膜の遮光度OD[μm-1]が2.6以上、かつ、前記硬化膜の反射率[%]が6.5以下、かつ前記硬化膜の反射率を前記遮光度ODで除した値が1.65未満となる、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を硬化してなる硬化膜。
【請求項7】
請求項6に記載の硬化膜をブラックマトリックスとして有する、カラーフィルター。
【請求項8】
請求項6に記載の硬化膜をブラックマトリックスとして有する、タッチパネル。
【請求項9】
請求項7に記載のカラーフィルターまたは請求項8に記載のタッチパネルを有する表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、硬化膜、カラーフィルター、タッチパネルおよび表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、モバイル端末の発達により、屋外や車載にて使用するタッチパネルおよび液晶パネル等の表示装置が増加している。上記表示装置において、タッチパネル外枠には背面の液晶パネル周辺部の光漏れを遮光するために遮光膜が設けられ、上記液晶パネルには黒色表示時に画面から光が漏れるのを抑制するため、および隣接し合うカラーレジスト同士の混色を抑制するために、遮光膜の一種であるブラックマトリックスが設けられている。
【0003】
表示装置等において、光漏れ等を抑制して上記表示装置等の画面の視認性を改善するために、遮光膜中の黒色顔料の濃度を高くして、遮光膜の遮光性を上げる(遮光膜の光透過性を下げる)ことがある。透明基材や硬化性樹脂の屈折率と比較して、黒色顔料の屈折率は高いため、遮光膜中の黒色顔料濃度を高くしていくと、透明基材の遮光膜が形成された面とは反対の面側から見たときの反射率が高くなってしまう。そのため、透明基材上に形成した遮光膜と透明基材の界面における反射が増加し、遮光膜上への映り込みや、カラーフィルター着色部との反射率の差異でブラックマトリックス境界が目立つという不具合が
生じる。
【0004】
このため、高遮光性と低反射率との両方を有するブラックレジスト用感光性樹脂組成物およびこれを硬化してなる遮光膜並びにカラーフィルターが要望されている。
【0005】
たとえば、特許文献1では、疎水性のシリカ微粒子および特定の分散剤(ウレタン系分散剤)を含むことを特徴とする黒色感光性樹脂組成物が開示されている。これは、疎水性シリカ微粒子および特定の分散剤を用いることにより高遮光性および低反射率を両立するブラックマトリックスを形成できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者らが検討したところ、特許文献1に記載の黒色感光性樹脂組成物では、所望する遮光性と反射率の両方を有し、かつパターン形成において、パターンエッジ部分にギザつきが生じない遮光膜を得られないことがあった。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、高遮光性および低反射率を有し、高精細なパターン形成が可能な感光性樹脂組成物およびこれを硬化してなる硬化膜、当該硬化膜を有するカラーフィルターおよびタッチパネル、当該カラーフィルターおよびタッチパネルを有する表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、本発明の要旨は以下のとおりである。
(1) (A)不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂と、(B)少なくとも2個以上の不飽和結合を有する光重合性化合物と、(C)光重合開始剤と、(D)黒色顔料、混色有機顔料および遮光材から選ばれる少なくとも1種の遮光成分と、(E)屈折率1.50~1.80以下の微粒子と、を含む、感光性樹脂組成物。
【0010】
(2) 前記(E)微粒子は、酸化アルミニウム粒子である、(1)に記載の感光性樹脂組成物。
(3) 前記(E)微粒子の平均粒子径が10~300nmである、(1)または(2)に記載の感光性樹脂組成物。
(4) 前記(E)微粒子の固形分中の割合が、1~30質量%である、(1)~(3)のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【0011】
(5) 前記感光性樹脂組成物を光により硬化して得られた膜厚1μmの硬化膜の遮光度OD[μm-1]が2.6以上、かつ、前記硬化膜の反射率[%]が6.5以下、かつ前記硬化膜の反射率を前記遮光度ODで除した値が1.65未満となる、(1)~(4)のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【0012】
(6) (1)~(5)のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を硬化してなる硬化膜。
(7) (6)に記載の硬化膜をブラックマトリックスとして有する、カラーフィルター。
(8) (6)に記載の硬化膜をブラックマトリックスとして有する、タッチパネル。
(9) (7)に記載のカラーフィルターまたは(8)に記載のタッチパネルを有する表示装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高遮光性および低反射率を有する硬化膜を得ることが可能な感光性樹脂組成物およびこれを硬化してなる硬化膜、当該硬化膜を有するカラーフィルターおよびタッチパネル、当該カラーフィルターおよびタッチパネルを有する表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
本実施の形態に係る(A)成分である不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂は、1分子中に重合性不飽和基と、アルカリ可溶性を発現するための酸性基を有していることが好ましく、重合性不飽和基とカルボキシ基との両方を含有していることがより好ましい。上記樹脂であれば、特に限定されることなく、広く使用することができる。
【0015】
上記不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂の例には、ビスフェノール類から誘導される2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物(以下、「一般式(1)で表されるビスフェノール型エポキシ化合物」ともいう)に、(メタ)アクリル酸を反応させ、得られたヒドロキシ基を有する化合物に多塩基カルボン酸またはその無水物を反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物がある。ビスフェノール類から誘導されるエポキシ化合物とは、ビスフェノール類とエピハロヒドリンを反応させて得られるエポキシ化合物またはこれと同等物を意味する。なお、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸およびメタクリル酸の総称であり、これらの一方または両方を意味する。
【0016】
(A)成分である不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂は、一般式(1)で表されるビスフェノール型エポキシ化合物であることが好ましい。一般式(1)で表されるビスフェノール型エポキシ化合物を採用することにより、良好な現像特性を得ることができる。
【0017】
【0018】
式(1)中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1~5のアルキル基またはハロゲン原子のいずれかであり、Xは-CO-、-SO2-、-C(CF3)2-、-Si(CH3)2-、-CH2-、-C(CH3)2-、-O-、一般式(2)で表されるフルオレン-9,9-ジイル基または単結合であり、lは、0~10の整数である。
【0019】
【0020】
一般式(1)で表されるビスフェノール型エポキシ化合物は、ビスフェノール類とエピクロルヒドリンとを反応させて得られる2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物である。この反応の際には、一般にジグリシジルエーテル化合物のオリゴマー化を伴うため、ビスフェノール骨格を2つ以上含むエポキシ化合物を含んでいる。
【0021】
この反応に用いられるビスフェノール類の例には、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)ケトン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)ケトン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)ジメチルシラン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)ジメチルシラン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)メタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-クロロフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)エーテル、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-クロロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フルオロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)フルオレン、4,4’-ビフェノール、3,3’-ビフェノールなどが含まれる。この中でも、フルオレン-9,9-ジイル基を有するビスフェノール類が好ましい。
【0022】
また、このようなエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られたエポキシ(メタ)アクリレート分子中のヒドロキシ基とを反応させる(a)ジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物の例には、鎖式炭化水素ジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物、脂環式ジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物、芳香族ジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物等が含まれる。ここで、鎖式炭化水素ジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物の例には、コハク酸、アセチルコハク酸、マレイン酸、アジピン酸、イタコン酸、アゼライン酸、シトラリンゴ酸、マロン酸、グルタル酸、クエン酸、酒石酸、オキソグルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、スベリン酸、ジグリコール酸等の酸一無水物が含まれる。さらには、任意の置換基が導入されたジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物等が含まれる。また、脂環式ジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物の例には、シクロブタンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ノルボルナンジカルボン酸等の酸一無水物が含まれる。さらには、任意の置換基が導入されたジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物等も含まれる。また、芳香族ジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物の例には、フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸等の酸一無水物が含まれる。さらには、任意の置換基が導入されたジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物が含まれる。
【0023】
また、エポキシ(メタ)アクリレートに反応させる(b)テトラカルボン酸の酸二無水物としては、鎖式炭化水素テトラカルボン酸の酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸の酸二無水物または芳香族テトラカルボン酸の酸二無水物が使用される。ここで、鎖式炭化水素テトラカルボン酸の酸二無水物の例には、ブタンテトラカルボン酸、ペンタンテトラカルボン酸、ヘキサンテトラカルボン酸等の酸二無水物が含まれる。さらには、任意の置換基が導入されたテトラカルボン酸の酸二無水物等が含まれる。また、脂環式テトラカルボン酸の酸二無水物の例には、シクロブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、シクロへプタンテトラカルボン酸、ノルボルナンテトラカルボン酸等の酸二無水物が含まれる。さらには、任意の置換基が導入されたテトラカルボン酸の酸二無水物等が含まれる。また、芳香族テトラカルボン酸の酸二無水物の例には、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸等の酸二無水物が含まれる。さらには、任意の置換基が導入されたテトラカルボン酸の酸二無水物等が含まれる。
【0024】
エポキシ(メタ)アクリレートに反応させる(a)ジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物と(b)テトラカルボン酸の酸二無水物とのモル比(a)/(b)は、0.01以上10.0以下であることが好ましく、0.02以上3.0未満であることがより好ましい。モル比(a)/(b)が上記範囲を逸脱すると、良好な光パターニング性を有する感光性樹脂組成物とするための最適分子量が得られないため、好ましくない。なお、モル比(a)/(b)が小さいほど分子量は大きくなり、アルカリ溶解性は低下する傾向
にある。
【0025】
また、エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応、およびこの反応で得られたエポキシ(メタ)アクリレートと多塩基カルボン酸またはその酸無水物との反応は、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。また、上記反応で合成される不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂は、その重量平均分子量(Mw)は2000~10000が好ましく、酸価は30~200mg/KOHであることが好ましい。なお、重量平均分子量(Mw)は、例えば、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)「HLC-8220GPC」(東ソー株式会社製)を用いて測定することができる。また、酸価は、例えば、電位差滴定装置「COM-1600」(平沼産業株式会社製)を用いて1/10N-KOH水溶液で滴定することができる。
【0026】
(A)成分である不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂として好ましい樹脂の別の例には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等の共重合体であって、(メタ)アクリロイル基およびカルボキシ基を有する樹脂が含まれる。上記樹脂の例には、グリシジル(メタ)アクリレートを含む(メタ)アクリル酸エステル類を溶剤中で共重合させて得られた共重合体に、(メタ)アクリル酸を反応させ、最後にジカルボン酸またはトリカルボン酸の無水物を反応させて得られる重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂が含まれる。上記共重合体は、特開2014-111722号公報に示されている、両端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化されたジエステルグリセロールに由来する繰返し単位20~90モル%、およびこれと共重合可能な1種類以上の重合性不飽和化合物に由来する繰返し単位10~80モル%で構成され、数平均分子量(Mn)が2000~20000かつ酸価が35~120mgKOH/gである共重合体、および特開2018-141968号公報に示されている、(メタ)アクリル酸エステル化合物に由来するユニットと、(メタ)アクリロイル基およびジまたはトリカルボン酸残基を有するユニットと、を含む、重量平均分子量(Mw)3000~50000、酸価30~200mg/KOHの重合体である重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂を参考にできる。
【0027】
(A)成分の含有量は、固形分の全質量に対して10質量%以上90質量%以下であることが好ましく、20質量%以上80質量%以下であることがより好ましい。(A)成分の上記含有量が10質量%以上であると、高解像度のパターンを形成することが可能となる。
【0028】
(A)成分の不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂については、1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0029】
本実施の形態に係る(B)成分における少なくとも2個以上の不飽和結合を有する光重合性化合物の例には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル類;ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールフルオレン型エポキシ(メタ)アクリレート、ジフェニルフルオレン型エポキシ(メタ)アクリレート、フェノールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、フェノールアラルキル型エポキシ(メタ)アクリレート等のエポキシ(メタ)アクリレート;エチレン性二重結合を有する化合物として(メタ)アクリル基を有する樹枝状ポリマー等が含まれる。これらの光重合性化合物の1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。また、当該少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物は、重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂の分子同士を架橋する役割を果たすことができるものであり、この機能を発揮させるためには不飽和結合を3個以上有するものを用いることが好ましい。また、光重合性化合物の分子量を1分子中の(メタ)アクリル基の数で除したアクリル当量が50~300であることが好ましく、アクリル当量は80~200であることがより好ましい。なお、(B)成分は遊離のカルボキシ基を有しない。
【0030】
(A)成分と(B)成分との配合割合は、重量比(A)/(B)で、30/70~90/10であることが好ましく、60/40~80/20であることがより好ましい。(A)成分の配合割合が30/70以上であると、光硬化後の硬化物が脆くなりにくく、また、未露光部において塗膜の酸価が低くなりにくいためにアルカリ現像液に対する溶解性の低下を抑制できる。よって、パターンエッジがギザつくことや、シャープにならないといった不具合が生じにくい。また、(A)成分の配合割合が90/10以下であると、樹脂に占める光反応性官能基の割合が十分なので、所望する架橋構造の形成を行うことができる。また、樹脂成分における酸価度が高過ぎないので、露光部におけるアルカリ現像液に対する溶解性が高くなりにくいことから、形成されたパターンが目標とする線幅より細くなることや、パターンの欠落を抑制することができる。
【0031】
(C)成分である光重合開始剤の例には、アセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、p-ジメチルアセトフェノン、p-ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p-tert-ブチルアセトフェノン等のアセトフェノン類、ベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、p,p’-ビスジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類;2-(o-クロロフェニル)-4,5-フェニルビイミダゾール、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)ビイミダゾール、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルビイミダゾール、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルビイミダゾール、2,4,5-トリアリールビイミダゾール等のビイミダゾール系化合物類;2-トリクロロメチル-5-スチリル-1,3,4-オキサジアゾール、2-トリクロロメチル-5-(p-シアノスチリル)-1,3,4-オキサジアゾール、2-トリクロロメチル-5-(p-メトキシスチリル)-1,3,4-オキサジアゾール等のハロメチルチアゾール化合物類;2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-フェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-クロロフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(3,4,5-トリメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メチルチオスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン等のハロメチル-S-トリアジン系化合物類;1,2-オクタンジオン、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(O-ベンゾイルオキシム)、1-(4-フェニルスルファニルフェニル)ブタン-1,2-ジオン-2-オキシム-O-ベンゾアート、1-(4-メチルスルファニルフェニル)ブタン-1,2-ジオン-2-オキシム-O-アセタート、1-(4-メチルスルファニルフェニル)ブタン-1-オンオキシム-O-アセタート、4-エトキシ-2-メチルフェニル-9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾロ-3-イル-O-アセチルオキシム等のO-アシルオキシム系化合物類;ベンジルジメチルケタール、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン等のイオウ化合物;2-エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、2,3-ジフェニルアントラキノン等のアントラキノン類;アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、クメンパーオキシド等の有機過酸化物;2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール等のチオール化合物、トリエタノールアミン、トリエチルアミン等の第3級アミン等が含まれる。これらの光重合開始剤は、その1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0032】
好ましく用いることができるO-アシルオキシム系化合物類の例としては、一般式(3)および一般式(4)で表されるO-アシルオキシム系光重合開始剤がある。これらの化合物群の中においても、遮光成分を高濃度で用いる場合には、365nmにおけるモル吸光係数が10000以上であるO-アシルオキシム系光重合開始剤を用いることが好ましい。なお、本発明でいう「光重合開始剤」とは、増感剤を含む意味で使用される。
【0033】
【化3】
式(3)中、R
5、R
6は、それぞれ独立に、C1~C15のアルキル基、C6~C18のアリール基、C7~C20のアリールアルキル基またはC4~C12の複素環基であり、R
7はC1~C15のアルキル基、C6~C18のアリール基またはC7~C20のアリールアルキル基である。ここで、アルキル基およびアリール基はC1~C10のアルキル基、C1~C10のアルコキシ基、C1~C10のアルカノイル基、ハロゲンで置換されていてもよく、アルキレン部分は、不飽和結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合を含んでいてもよい。また、アルキル基は直鎖、分岐または環状のいずれのアルキル基であってもよい。
【0034】
【0035】
式(4)中、R8およびR9はそれぞれ独立に、炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基であるか、炭素数4~10のシクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基もしくはアルキルシクロアルキル基であるか、または炭素数1~6のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基である。R10は独立して炭素数2~10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基またはアルケニル基であり、当該アルキル基またはアルケニル基中の-CH2-基の一部が-O-基で置換されていてもよい。さらに、これらR8~R10の基中の水素原子の一部がハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0036】
(C)成分の光重合開始剤の使用量は、(A)および(B)の各成分の合計100重量部を基準として3~30重量部であることが好ましく、5~20重量部であることがより好ましい。(C)成分の配合割合が3重量部以上の場合には、感度が良好であり、十分な光重合の速度を有することができる。(C)成分の配合割合が30重量部以下の場合には、適度な感度を有することができるので、所望するパターン線幅および所望するパターンエッジを得ることができる。
【0037】
本実施の形態に係る(D)成分である黒色顔料、混色有機顔料および遮光材等の遮光成分は、1~1000nmの平均粒子径(レーザー回折・散乱法粒径分布計または動的光散乱法粒径分布計測定された平均粒子径)で分散されたものであれば、公知の遮光成分を特に制限なく使用することができる。
【0038】
(D)成分である黒色顔料の例には、ペリレンブラック、シアニンブラック、アニリンブラック、ラクタムブラック、カーボンブラック、チタンブラックなどが含まれる。
【0039】
(D)成分である混色有機顔料の例には、アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾメチン顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、ジオキサジン顔料、スレン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料、チオインジゴ顔料などの有機顔料から選択される少なくとも2色が混合された顔料が含まれる。
【0040】
上記(D)成分は、目的とする感光性樹脂組成物の機能に応じて、その1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0041】
なお、(D)成分として混色有機顔料を用いる場合に使用可能な有機顔料の例には、カラーインデックス名で以下のナンバーのものが含まれるが、これに限定されない。
ピグメント・レッド2、3、4、5、9、12、14、22、23、31、38、112、122、144、146、147、149、166、168、170、175、176、177、178、179、184、185、187、188、202、207、208、209、210、213、214、220、221、242、247、253、254、255、256、257、262、264、266、272、279等
ピグメント・オレンジ5、13、16、34、36、38、43、61、62、64、67、68、71、72、73、74、81等
ピグメント・イエロー1、3、12、13、14、16、17、55、73、74、81、83、93、95、97、109、110、111、117、120、126、127、128、129、130、136、138、139、150、151、153、154、155、173、174、175、176、180、181、183、185、191、194、199、213、214等
ピグメント・グリーン7、36、58等
ピグメント・ブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、60、80等
ピグメント・バイオレット19、23、37等
【0042】
これらのうち、黒色顔料が好ましく、カーボンブラックがより好ましい。
【0043】
カーボンブラックの平均一次粒子径は、5nm以上60nm以下であることが好ましく、10nm以上50nm以下であることがより好ましく、20nm以上45nm以下であることがさらに好ましい。本明細書において、遮光成分の粒径または平均一次粒子径とは、遮光成分の粒子または一次粒子を電子顕微鏡で観察して求めた長径と短径との平均値の、1500個の遮光成分についての相加平均値を意味する。カーボンブラックの平均一次粒子径がより大きいほど、高濃度での分散が容易になる。カーボンブラックの平均一次粒子径を過剰でない大きさにすることで、二次粒子の形状不良や表面粗さの低下を抑制することができる。
【0044】
また、カーボンブラックのDBP吸油量は、100ml/100g以下であることが好ましい。なおDBP吸油量とは、カーボンブラック100gが吸収するフタル酸ジブチル(DBP)の容量を意味する(JIS K 6217-4(2017年))。カーボンブラックのDBP吸油量が上記範囲であると、硬化膜の抵抗値および黒色度をより高くし、かつ、感光性樹脂組成物の高粘度化によるが塗布性の低下を抑制することができる。
【0045】
また、カーボンブラックは、pHが2以上10以下であることが好ましく、5以上9以下であることがより好ましく、4以上8以下であることがさらに好ましい。なお、pH値とは、カーボンブラックと蒸留水の混合液をガラス電極pH計で測定した値を意味する。カーボンブラックのpHがより高いほど、カーボンブラックの安定性が高まる。カーボンブラックのpHが過剰ではない範囲にすることで、硬化膜の基板への密着性をより高めることができる。
【0046】
また、カーボンブラックは、灰分が1.0%以下であることが好ましい。灰分が1.0%以下であると、硬化膜の抵抗値をより高めることができる。
【0047】
また、カーボンブラックは、比表面積が20m2/g以上300m2/g以下であることが好ましい。比表面積が20m2/g以上であると、硬化膜の形状が安定しやすい。比表面積が300m2/g以下であると、分散剤や染料等の必要量を低減させることができるため、コストをより抑えることができる。
【0048】
また、カーボンブラックは、酸化処理により表面に酸性官能基を有することが好ましい。特には、複数種類の酸化処理により表面に2種類以上の酸性官能基を有することが好ましい。上記酸性官能基は、カーボンブラックの分散性を高めることができる。上記酸化処理の例には、オゾンガス、硝酸、次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素、一酸化窒素ガス、二酸化窒素ガス、無水硫酸、フッ素ガス、濃硫酸、硝酸、および各種過酸化物等を用いる処理が含まれる。上記酸性官能基の例には、水酸基、オキソ基、ヒドロペルオキシ基、カルボニル基、カルボキシル基、ペルオキシカルボン酸基、アルデヒド基、ケトン基、ニトロ基、ニトロソ基、アミド基、イミド基、スルホン酸基、スルフィン酸基、スルフェン酸基、チオカルボン酸基、クロロシル基、クロリル基、ペルクロリル基、ヨードシル基、およびヨージル基等が含まれる。
【0049】
また、(D)成分は、表面が染料により被覆されて表面処理されていてもよい。特に、表面が染料で被覆されたカーボンブラックは、感光性樹脂組成物の現像性を高め、かつこれを硬化してなる硬化膜の基板への密着性、細線再現性、および遮光性を高め、硬化膜の抵抗値を高めることもできる。
【0050】
上記染料は、遮光成分の表面に吸着できるものであればよく、塩基性染料、酸性染料、直接染料、反応性染料等を利用することができる。なお、このとき、遮光成分(特にはカーボンブラック)の分散性を高めるためにその表面に酸性官能基を付与している(酸化処理している)ときは、当該酸性官能基と相互しやすい酸性染料(特にはスルホン酸基またはカルボキシル基を有する酸性染料)が好ましい。また、(A)成分が有する酸性基との反応を抑制する観点から、アミノ基等を有する染料と比較して、酸性染料または非イオン性の染料が好ましい。また、硬化膜の遮光性をより高める観点からは、濃色系の染料が好ましい。
【0051】
上記染料の具体例には、Food Black No.1、Food Black No.2、Food Red No.40、Food Blue No.1、Food Yellow No.7等の食用色素染料、Bernacid Red 2BMN、Basacid Black X34(BASF X-34)(BASF社製)、Kayanol Red 3BL(Nippon Kayaku Company社製)、Dermacarbon 2GT(Sandoz社製)、Telon Fast Yellow 4GL-175、BASF Basacid Black SE 0228、Basacid Black X34(BASF X-34)(BASF社製)、Basacid Blue 750(BASF社製)、Bernacid Red(Bemcolors, Poughkeepsie, N. Y. 社製)、BASF Basacid Black SE 0228(BASF社製)等の各色の酸性染料、Pontamine Brilliant Bond Blue A及びその他のPontamine Brilliant Bond Blue A及びその他のPontamine(登録商標)染料(Bayer Chemicals Corporation、Pittsburgh,PA社製)、Cartasol Yellow GTF Presscake(Sandoz, Inc社製);Cartasol Yellow GTF Liquid Special 110(Sandoz, Inc. 社製);Yellow Shade 16948(Tricon社製)、Direct Brilliant Pink B(Crompton & Knowles社製)、Carta Black 2GT(Sandoz, Inc. 社製)、Sirius Supra Yellow GD 167、Cartasol Brilliant Yellow 4GF(Sandoz社製);、Pergasol Yellow CGP(Ciba-Geigy社製)、Pyrazol Black BG(JCI社製)、Diazol Black RN Quad(JCJ社製)、Pontamine Brilliant Bond Blue; Berncolor A. Y. 34等の各色の直接染料、Cibacron Brilliant Red 3B-A(Reactive Red 4)(Aldrich Chemical、Milwaukee, WI社製)、Drimarene Brilliant Red X-2B(Reactive Red 56)(Pylam Products, Inc. Tempe, AZ社製)、Levafix Brilliant Red E-4B,Levafix Brilliant Red F-6BA,及び類似のLevafix(登録商標)dyes Dystar L. P.(Charlotte, NC社製)製の染料、Procion Red H8B(Reactive Red 31)(JCI America社製)、等の各色の反応性染料、Neozapon Red 492(BASF社製)、Orasol Red G(Ciba-Geigy社製)、Aizen Spilon RedC-BH(Hodogaya Chemical Company社製)、Spirit Fast Yellow 3G、Aizen Spilon Yellow C-GNH(Hodogaya Chemical Company社製)、Orasol Black RL(Ciba-Geigy社製)、Orasol Black RLP(Ciba-Geigy社製)、Savinyl Black RLS(Sandoz社製)、Orasol Blue GN (Ciba-Geigy社製)、Luxol BlueMBSN (Morton-Thiokol社製)、Morfast Black Concentrate A(Morton-Thiokol社製)等の油溶性染料等が含まれる。これらは単独で利用されてもよいし又は2種以上を組み合わせて利用されてもよい。
【0052】
上記染料の含有量は、(D)成分中の全質量に対して0.5質量%以上10質量%以下であることが好ましく、1質量%以上7質量%以下であることがより好ましい。染料の量がより多いほど、硬化膜の抵抗値を高めることができる。染料の量が過剰とならない程度にすることで、余剰の染料による感光性樹脂組成物の増粘、および余剰の染料が他の成分の分散性を阻害することによる凝集の発生を抑制することができる。
【0053】
また、上記染料は、金属または金属塩によりレーキ化されていてもよい。染料をレーキ化することで、上記金属または金属塩を介して遮光成分の表面に染料を固定して、遮光成分の表面からの染料の離脱による上記効果の低減を抑制することができる。上記金属の例には、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムおよびマンガン等が含まれる。上記金属塩の例には、これらの金属の塩酸塩および硫酸塩などが含まれる。上記金属または金属塩の含有量は、染料に対して0.3倍モル以上であることが好ましく、0.5倍モルであることがより好ましく、0.8倍モルであることがさらに好ましい。
【0054】
(D)成分の遮光成分の配合割合については、所望の遮光度によって任意に決めることができるが、感光性樹脂組成物中の固形分に対して20~80質量%であることが好ましく、40~70質量%であることがより好ましい。(D)成分の遮光成分として、アニリンブラック、シアニンブラック、ラクタムブラック等の有機顔料またはカーボンブラック等のカーボン系遮光成分を用いる場合は、感光性樹脂組成物中の固形分に対して40~60質量%であることが特に好ましい。遮光成分が、感光性樹脂組成物中の固形分に対して20質量%以上であると、遮光性を十分に得ることができる。遮光成分が、感光性樹脂組成物中の固形分に対して80質量%以下であると、本来のバインダーとなる感光性樹脂の含有量が減少することがないため、所望する現像特性および膜形成能を得ることができる。
【0055】
上記(D)成分は溶剤に分散させた遮光成分分散体として他の配合成分と混合するのが通常であり、その際には分散剤を添加することができる。分散剤は、顔料(遮光成分)分散に用いられている公知の化合物(分散剤、分散湿潤剤、分散促進剤等の名称で市販されている化合物等)等を特に制限なく使用することができる。
【0056】
分散剤の例には、カチオン性高分子系分散剤、アニオン性高分子系分散剤、ノニオン性高分子系分散剤、顔料誘導体型分散剤(分散助剤)が含まれる。特に、分散剤は、着色剤への吸着点としてイミダゾリル基、ピロリル基、ピリジル基、一級、二級または三級のアミノ基等のカチオン性の官能基を有し、アミン価が1~100mgKOH/g、数平均分子量(Mn)が1000~100000の範囲にあるカチオン性高分子系分散剤であることが好ましい。この分散剤の配合量は、遮光成分に対して1~35質量部であることが好ましく、2~25質量部であることがより好ましい。なお、樹脂類のような高粘度物質は、一般に分散を安定させる作用を有するが、分散促進能を有しないものは分散剤として扱わない。しかし、分散を安定させる目的で使用することを制限するものではない。
【0057】
(E)成分である微粒子としては、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウムおよびメタケイ酸ナトリウムなどを使用することができる。これらのうち、酸化アルミニウム微粒子が好ましい。ガラス等の透明基板の屈折率は約1.5であるのに対し、遮光成分となるカーボンブラックの屈折率は約2.0であるため、遮光成分の屈折率よりも低い屈折率の微粒子を使用することで、当該微粒子を含む硬化膜の屈折率を低くすることができる。(E)成分である微粒子の屈折率は、1.50~1.80であることが好ましく、1.55~1.75であることがより好ましい。酸化アルミニウム微粒子の屈折率は1.74(文献値)であり、屈折率が透明基板と遮光成分の中間付近に位置するため、当該微粒子を使用することで、ガラスと硬化膜の屈折率差が小さくなり、反射率が低減するものと考えられる。また、(E)成分のような屈折率が大きい粒子は、比重が大きいことが多く、感光性樹脂組成物を基板上に塗布したときに、透明基材と硬化膜との界面付近に偏在しやすい。そのため、(E)成分は、少量であっても基材と硬化膜との間の屈折率差を十分に低下させ、反射を抑制することができる。また、(E)成分を少量とすることで(D)成分の相対的な含有量を高め、硬化膜の光学濃度を高めることができる。これらの作用により、(E)成分は硬化膜の高遮光性と低反射率とを両立させることができる、と考えられる。さらには(E)成分を少量とすることで、(E)成分によるパターンエッジ部分のギザつきを生じさせにくくすることができる。
【0058】
本発明で使用する酸化アルミニウム粒子は、気相反応または液相反応といった製造方法や、形状(球状、非球状)は特に制限されない。
【0059】
(E)成分の平均粒子径は、10~300nmであることが好ましく、50~250nmであることがより好ましく、55~250nmであることがさらに好ましい。粒子の平均粒子径が10nm以上であると、粒径が十分に大きく、かつ粒子の重量が大きく透明基材と硬化膜との界面付近に偏在しやすいため、反射率低減効果が十分に得られやすい。また粒子の平均粒子径が300nm以下であると、パターンエッジ部分のギザつきが生じにくくなる。なお、平均粒子径は、(E)成分が一次粒子からなるときは平均一次粒子径であり、(E)成分が二次粒子からなるときは平均一次粒子径である。
【0060】
(E)成分の配合割合については、感光性樹脂組成物中の固形分に対して1~30質量%であることが好ましく、2~10質量%であることがより好ましい。(E)成分の含有量が1質量%以上であると、硬化膜の屈折率を十分に高めて、反射率低減効果が高まる。(E)成分の含有量が30質量%以下であると、高精細なパターン形成が可能となる。
【0061】
(D)成分と(E)成分との配合割合は、重量比(D)/(E)で、85/15~99/1であることが好ましく、92/8~98/2であることがより好ましい。(D)成分の配合割合が85/15以上とすることで、硬化膜の遮光性をより高めることができる。また、(E)成分の相対量を少なくすることで、(E)成分によるパターンエッジ部分のギザつきを生じさせにくくすることができる。なお、(E)成分の相対量を上記程度にまで少なくしても、(E)成分による反射率の低減効果は十分に奏される。
【0062】
本発明の感光性樹脂組成物には、(A)~(E)の成分の他に(F)成分である溶剤を使用することが好ましい。溶剤の例には、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;α-もしくはβ-テルピネオール等のテルペン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N-メチル-2-ピロリドン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類が含まれる。これらを単独または2種類以上を併用して溶解、混合させることにより、均一な溶液状の組成物とすることができる。
【0063】
また、本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じてエポキシ樹脂等の(A)成分以外の樹脂、硬化剤、硬化促進剤、熱重合禁止剤および酸化防止剤、可塑剤、屈折率1.50以上1.80以下の微粒子以外の充填材、レベリング剤、消泡剤、界面活性剤、カップリング剤等の添加剤を配合することができる。
【0064】
熱重合禁止剤および酸化防止剤の例には、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、tert-ブチルカテコール、フェノチアジン、ヒンダードフェノール系化合物等が含まれる。可塑剤の例には、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、リン酸トリクレジル等が含まれる。充填剤の例には、ガラスファイバー、シリカ、マイカ等が含まれる。消泡剤やレベリング剤の例には、シリコーン系、フッ素系、アクリル系の化合物が含まれる。界面活性剤の例には、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などが含まれる。カップリング剤の例には、3-(グリシジルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が含まれる。
【0065】
本発明の感光性樹脂組成物は、溶剤を除いた固形分(固形分には硬化後に固形分となる光重合性化合物を含む)中に、(A)成分である不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂と、(B)成分である少なくとも2個以上不飽和結合を有する光重合性化合物と、(C)成分である光重合開始剤と、(D)成分である黒色顔料、混色有機顔料および遮光材から選ばれる少なくとも1種の遮光成分と、(E)屈折率1.50以上1.80以下の微粒子が合計で80質量%以上含まれていることが好ましく、90質量%以上含まれることがより好ましい。溶剤の量は、目標とする粘度によって変化するが、全体量に対して40~90質量%であることが好ましい。
【0066】
また、本発明の感光性樹脂組成物を硬化させてなる硬化膜は、例えば、感光性樹脂組成物の溶液を基板等に塗布し、溶剤を乾燥し、光(紫外線、放射線等を含む)を照射して硬化させることで得られる。フォトマスク等を使用して光が当たる部分と当たらない部分とを設けて、光が当たる部分だけを硬化させ、他の部分をアルカリ溶液で溶解させれば、所望のパターンが得られる。
【0067】
また、本発明の感光性樹脂組成物を硬化させてなる硬化膜は、膜厚1μmの硬化膜の遮光度OD[μm-1]が2.6以上であることが好ましく、3.0以上であることがより好ましく、3.3以上であることがさらに好ましい。また、本発明の感光性樹脂組成物を硬化させてなる硬化膜は、反射率が6.5%以下であることが好ましく、5.0%以下であることがより好ましい。また、本発明の感光性樹脂組成物を硬化させてなる硬化膜は、反射率[%]を遮光度OD[μm-1]で除した値が1.65未満であることが好ましく、1.50未満であることがより好ましい。膜厚1μmの硬化膜の遮光度OD[μm-1]がより高い遮光領域において反射率が抑制されることにより、視認性に極めて優れた硬化膜(遮光膜)をブラックマトリクスとして有する表示装置を得ることが可能となる。
【0068】
特に、本発明の感光性樹脂組成物を硬化させてなる硬化膜は、膜厚1μmの硬化膜の遮光度OD[μm-1]が2.6以上、かつ、反射率[%]を遮光度ODで除した値が1.65未満、かつ、反射率が6.5%以下であり、好ましくは、膜厚1μmの硬化膜の遮光度OD[μm-1]が3.0以上、かつ、反射率[%]を遮光度ODで除した値が1.50未満、かつ、反射率が5.0%以下、より好ましくは膜厚1μmの硬化膜の遮光度OD[μm-1]が3.3以上、かつ、反射率[%]を遮光度ODで除した値が1.50未満、かつ、反射率が5.0%以下の範囲で用いられる。
【0069】
また、本発明の硬化膜(遮光膜)をブラックマトリックスとして有する、カラーフィルターまたはタッチパネルは、例えば、膜厚が1.0~2.0μmである硬化膜を透明基材上に形成し、遮光膜形成後にレッド、ブルーおよびグリーン各画素をフォトリソグラフィーにより形成すること、また、遮光膜中にインクジェットプロセスでレッド、ブルーおよびグリーンのインクを打ち込むこと等により作製される。
【0070】
なお、本発明の感光性樹脂組成物を硬化させてなる硬化膜は、液晶表示装置のブラックカラムスペーサーとして使用することもできる。たとえば、単一のブラックレジストを用いて、膜厚の異なる部分を複数作製して、一方をスペーサーとして機能させ、他方をブラックマトリックスとして機能させることもできる。
【0071】
感光性樹脂組成物の塗布・乾燥による硬化膜の成膜方法の各工程について、具体的に例示する。
【0072】
感光性樹脂組成物を基板に塗布する方法としては、公知の溶液浸漬法、スプレー法、ローラーコーター機、ランドコーター機、スリットコート機やスピナー機を用いる方法等の何れの方法をも採用することができる。これらの方法によって、所望の厚さに塗布した後、溶剤を除去する(プレベーク)ことにより、被膜が形成される。プレベークはオーブン、ホットプレート等による加熱、真空乾燥またはこれらの組み合わせることによって行われる。プレベークにおける加熱温度および加熱時間は使用する溶剤に応じて適宜選択されうるが、例えば、80~120℃で、1~10分間行われることが好ましい。
【0073】
露光に使用される放射線としては、例えば、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等を使用することができるが、放射線の波長の範囲は、250~450nmであることが好ましい。また、このアルカリ現像に適した現像液としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、ジエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の水溶液を用いることができる。これらの現像液は、樹脂層の特性に合わせて適宜選択されうるが、必要に応じて界面活性剤を添加することも有効である。現像温度は、20~35℃であることが好ましく、市販の現像機や超音波洗浄機等を用いて微細な画像を精密に形成することができる。なお、アルカリ現像後は、通常、水洗される。現像処理法としては、シャワー現像法、スプレー現像法、ディップ(浸漬)現像法、パドル(液盛り)現像法等を適用することができる。
【0074】
このようにして現像した後、180~250℃で、20~100分間、熱処理(ポストベーク)が行われる。このポストベークは、パターニングされた硬化膜(遮光膜)と基板との密着性を高めるため等の目的で行われる。これはプレベークと同様に、オーブン、ホットプレート等により加熱することによって行われる。本発明のパターニングされた硬化膜(遮光膜)は、フォトリソグラフィー法による各工程を経て形成される。そして、熱により重合または硬化(両者を合わせて硬化ということがある)を完結させ、所望のパターンを有する遮光膜を得ることができる。このときの硬化温度は160~250℃であることが好ましい。
【0075】
本発明の感光性樹脂組成物は、前述の通り、露光、アルカリ現像等の操作によって微細なパターンを形成するのに適しているだけでなく、従来のスクリーン印刷によりパターンを形成しても、同様の遮光性、密着性、電気絶縁性、耐熱性、耐薬品性に優れた遮光膜を得ることができる。
【0076】
本発明の感光性樹脂組成物は、コ-ティング材として好適に用いることができる。特に、液晶の表示装置あるいは撮影素子に使われるカラーフィルター用インキ、およびこれにより形成される遮光膜は、カラーフィルター、液晶プロジェクション、タッチパネル用のブラックマトリックス等として有用である。また、本発明の感光性樹脂組成物は、カラー液晶ディスプレーのカラーフィルターインクの他に、有機EL素子に代表される有機電界発光装置、カラー液晶表示装置、カラーファクシミリ、イメージセンサー等の各種の多色表示体における各色分画用または遮光用のインク材料としても使用することができる。本発明のカラーフィルターによれば、着色層(ブラックレジスト層を含む)と基板の界面での外光の反射や、例えば、有機EL素子に用いた際に素子からの発光の反射を低減することができる。つまり、外光の反射の低減による明所コントラストの向上や、発光側からの光取り出し効率改善による発光効率の向上を実現することができる。
【実施例0077】
以下、実施例および比較例に基づいて、本発明の実施形態を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0078】
まず、(A)成分である重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂の合成例から説明するが、これらの合成例における樹脂の評価は、断りのない限り以下の通りに行った。
【0079】
[固形分濃度]
合成例中で得られた樹脂溶液1gをガラスフィルター〔重量:W0(g)〕に含浸させて秤量し〔W1(g)〕、160℃にて2時間加熱した後の重量〔W2(g)〕から次式より求めた。
固形分濃度(重量%)=100×(W2-W0)/(W1-W0)
【0080】
[酸価]
樹脂溶液をジオキサンに溶解させ、電位差滴定装置「COM-1600」(平沼産業株式会社製)を用いて1/10N-KOH水溶液で滴定して求めた。
【0081】
[分子量]
ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)「HLC-8220GPC」(東ソー株式会社製、溶媒:テトラヒドロフラン、カラム:TSKgelSuper H-2000(2本)+TSKgelSuper H-3000(1本)+TSKgelSuper H-4000(1本)+TSKgelSuper H-5000(1本)(東ソー株式会社製)、温度:40℃、速度:0.6ml/min)にて測定し、標準ポリスチレン(東ソー株式会社製、PS-オリゴマーキット)換算値として重量平均分子量(Mw)を求めた。
【0082】
[平均粒子径]
酸化アルミニウム粒子の平均粒子径は、動的光散乱法の粒度分布計「粒径アナライザーFPAR-1000」(大塚電子株式会社製)を用い、キュムラント法により求めた。
【0083】
合成例等で使用する略号は次のとおりである。
BPFE :9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンとクロロメチルオキシランとの反応物。一般式(1)の化合物において、Xがフルオレン-9,9-ジイル基、R1~R4が水素、lは0~0.15であるエポキシ化合物。
DCPMA :ジシクロペンタニルメタクリレート
GMA :グリシジルメタクリレート
St :スチレン
AA :アクリル酸
BPDA :3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
THPA :テトラヒドロ無水フタル酸
SA :無水コハク酸
TEAB :臭化テトラエチルアンモニウム
AIBN :アゾビスイソブチロニトリル
TDMAMP:トリスジメチルアミノメチルフェノール
HQ :ハイドロキノン
TEA :トリエチルアミン
TPGDA :トリプロピレングリコールジアクリレート
PGMEA :プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0084】
[合成例A1]
還留冷却器付き500mlの四つ口フラスコ中にBPFE(114.4g、0.23モル)、AA(33.2g、0.46モル)、PGMEA(157g)およびTEAB(0.48g)を仕込み、100~105℃で20時間撹拌して反応させた。次いで、フラスコ内にBPDA(35.3g、0.12モル)、THPA(18.3g、0.12モル)を仕込み、120~125℃で6時間撹拌し、重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂(A)-1を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は56.1質量%であり、酸価(固形分換算)は103mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは3600であった。
【0085】
[合成例A2]
還留冷却器付き1Lの四つ口フラスコ中に、PGMEA(300g)を入れ、フラスコ系内を窒素置換した後120℃に昇温した。次いで、フラスコ内にモノマー混合物(DCPMA(77.1g、0.35モル)、GMA(49.8g、0.35モル)、St(31.2g、0.30モル)、およびAIBN(10g)を溶解した混合物を滴下ロートから2時間かけて滴下し、さらに120℃で2時間撹拌して、共重合体溶液を得た。
【0086】
次いで、フラスコ内を空気に置換した後、得られた共重合体溶液にAA(24.0g、0.33モル(GMA添加モル数の95%))、TDMAMP(0.8g)およびHQ(0.15g)を添加し、120℃で6時間撹拌して、重合性不飽和基含有共重合体溶液を得た。得られた重合性不飽和基含有共重合体溶液にSA(30.0g、AA添加モル数の90%)、TEA(0.5g)を加え120℃で4時間反応させ、不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂(A)-2を得た。樹脂溶液の固形分濃度は46.0質量%であり、酸価(固形分換算)は76mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは5300であった。
【0087】
また、表面が染料により被覆されたカーボンブラックを、以下の方法により調製した。
【0088】
[調製例D1]
カーボンブラック(TPX-1099:cabot社製)1000gを水と混合してスラリー10Lを調製し、95℃で1時間撹拌させ放冷した後水洗した。これを再び水と混合処理してスラリー10Lを調製し、70%の硝酸42.9gを添加して40℃で4時間撹拌した。これを放冷して水洗した後再び水と混合してスラリー10Lを調製し、13%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液769.2gを添加して40℃で6時間撹拌した。これを放冷して水洗した後再び水と混合してスラリー10Lを調製し、純度38.4%の染料(Direct Deep BLACK)38.1gを添加して40℃で1時間撹拌し、その後更に硫酸アルミニウム10.1gを添加して40℃で1時間撹拌した。これを放冷した後水洗し、ろ過乾燥させて、染料被覆カーボンブラックを得た。
【0089】
上記染料被覆カーボンブラックと、高分子分散剤と、分散樹脂(合成例A1のアルカリ可溶性樹脂((A)-1))と、PGMEAとを混合し、ビーズミルで分散して、染料被覆カーボンブラックの濃度が25.0質量%、高分子分散剤の濃度が2.0質量%、分散樹脂の濃度が8.0質量%の、カーボンブラック分散液(D)-1を得た。
【0090】
表1に記載の配合量(単位は質量部)で実施例1~7、比較例1~3の感光性樹脂組成物を調製した。表1中で使用した配合成分は以下のとおりである。
【0091】
(重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂)
(A)-1:上記合成例A1で得られたアルカリ可溶性樹脂溶液(固形分濃度56.1質量%)
(A)-2:上記合成例A2で得られたアルカリ可溶性樹脂溶液(固形分濃度46.0質量%)
【0092】
(光重合性化合物)
(B):ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとヘキサアクリレートとの混合物(DPHA(アクリル当量96~115)、日本化薬株式会社製)
【0093】
(光重合開始剤)
(C)-1:エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)(Irgacure OXE-02、BASFジャパン社製、「Irgacure」は同社の登録商標)
(C)-2:アデカアークルズNCI-831、株式会社ADEKA製、「アデカアークルズ」は同社の登録商標)
【0094】
(カーボンブラック分散液)
(D)-1:調製例D1で得られた染料被覆カーボンブラック濃度25質量%、高分子分散剤濃度2質量%、分散樹脂(合成例A1のアルカリ可溶性樹脂((A)-1))濃度8質量%のPGMEA溶剤の顔料分散液(固形分35質量%)
(D)-2:カーボンブラック濃度25質量%、高分子分散剤濃度3質量%、分散樹脂(合成例A1のアルカリ可溶性樹脂((A)-1))濃度5質量%のPGMEA溶剤の顔料分散液(固形分33質量%)
【0095】
(E)-1:酸化アルミニウムTPGDA分散液「ALTPGDA30WT%-A03」(CIKナノテック株式会社製、酸化アルミニウム濃度30質量%、TPGDA濃度70質量%、平均粒子径90nm)
(E)-2:酸化アルミニウムTPGDA分散液「ALTPGDA25WT%-A07」(CIKナノテック株式会社製、酸化アルミニウム濃度25質量%、TPGDA濃度75質量%、平均粒子径50nm)
(E)-3:シリカPGMEA分散液「YA050C」(株式会社アドマテックス製、シリカ濃度30質量%、PGMEA濃度70質量%、平均粒子径50nm)
【0096】
(溶剤)
(F)-1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
(F)-2:シクロヘキサノン(ANON)
【0097】
(その他成分)-1:3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(KBE-9007N、信越化学工業株式会社製)
(その他成分)-2:アラルキル変性ポリメチルアルキルシロキサン(BYK-323、ビックケミー・ジャパン株式会社製)の1質量%ANON希釈溶液
【0098】
【0099】
[評価]
評価に使用するための感光性樹脂組成物を硬化してなる硬化膜(遮光膜)を次のように作製した。
【0100】
(光学濃度(OD)評価用の硬化膜(塗膜)の作製)
表1に示した感光性樹脂組成物を、予め低圧水銀灯で波長254nmの照度1000mJ/cm2の紫外線を照射して表面を洗浄した、125mm×125mmのガラス基板「#1737」(コーニング社製)(以下「ガラス基板」という)上に、加熱硬化処理後の膜厚が1.2μmとなるようにスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレートを用いて90℃で1分間プリベークをして硬化膜(塗膜)を作製した。ネガ型フォトマスクを被せず、i線照度30mW/cm2の超高圧水銀ランプで50mJ/cm2の紫外線を照射して、光硬化反応を行った。
【0101】
次いで、露光した上記硬化膜(遮光膜)を25℃、0.05%水酸化カリウム溶液により1kgf/cm2のシャワー圧にて、パターンが現れ始める現像時間(ブレイクタイム=BT)から20秒間、現像処理を行った後、5kgf/cm2のスプレー水洗を行い、上記硬化膜(遮光膜)の未露光部分を除去してガラス基板上に硬化膜パターンを形成し、熱風乾燥機を用いて230℃で30分間、本硬化(ポストベーク)し、実施例1~7、比較例1~3に係る硬化膜(遮光膜)を得た。
【0102】
[膜厚測定]
(評価方法)
段差計(KLA-Tencor社製「テンコールP-17」)を用い、測定範囲500μm、走査速度50μm/秒、サンプリングレート20Hzの条件で、ガラス基板表面と硬化膜表面との段差を測定し、その平均値を硬化膜の平均厚さとした。
【0103】
[光学濃度(OD)評価]
(評価方法)
透過濃度計「X-rite社製「X-rite 361T(V)」」を用いて光学濃度(OD)を測定した。上記の測定した膜厚と光学濃度(OD)から膜厚1μmあたりの光学濃度(OD)を算出した。
【0104】
光学濃度(OD)は次の式(5)で算出した。
光学濃度(OD)=-log10T 式(5)
(Tは透過率を示す)
【0105】
[反射率評価]
(評価方法)
光学濃度(OD)評価用の硬化膜(遮光膜)と同様にして作製した硬化膜(遮光膜)付き基板に対して、紫外可視赤外分光光度「UH4150」(株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて、C光源、入射角2°、波長範囲380~780nmの条件で硬化膜(遮光膜)側と基板(ガラス基板)側の各々の反射率を測定した。
【0106】
(現像特性評価用の硬化膜(遮光膜)の作製)
表1に示した感光性樹脂組成物を、予め低圧水銀灯で波長254nmの照度1000mJ/cm2の紫外線を照射して表面を洗浄した、125mm×125mmのガラス基板「#1737」(コーニング社製)(以下「ガラス基板」という)上に、加熱硬化処理後の膜厚が1.2μmとなるようにスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレートを用いて90℃で1分間プリベークをして硬膜(遮光膜)を作製した。次いで、露光ギャップを100μmに調整し、乾燥硬化膜の上にライン/スペース=10μm/50μmのネガ型フォトマスクを被せ、i線照度30mW/cm2の超高圧水銀ランプで50mJ/cm2の紫外線を照射して、感光部分の光硬化反応を行った。
【0107】
次いで、露光した上記硬化膜(遮光膜)を25℃、0.04%水酸化カリウム溶液により1kgf/cm2のシャワー圧にて、パターンが現れ始める現像時間(ブレイクタイム=BT)から+20秒の現像処理を行った後、5kgf/cm2のスプレー水洗を行い、上記硬化膜(遮光膜)の未露光部分を除去してガラス基板上に硬化膜パターンを形成し、熱風乾燥機を用いて230℃で30分間、本硬化(ポストベーク)し、実施例1~7、および比較例1~3に係る硬化膜(遮光膜)を得た。
【0108】
上記で得られた実施例1~7、比較例1~3の感光性樹脂組成物を硬化してなる硬化膜(遮光膜)について、以下の項目について評価した。
【0109】
[現像特性評価]
(パターン直線性)
(評価方法)
本硬化(ポストベーク)の10μmマスクパターンを光学顕微鏡を用いて観察した。なお、パターン直線性の評価は、BT+20秒の場合で行った。なお、△以上を合格とした。
【0110】
(現像特性の評価基準)
○:パターンエッジ部分のギザつきが、パターンの長さを100%とした際に、線幅10μmに対して、0.5μmの突起が1%未満しか認められない
△:パターンエッジ部分のギザつきが、パターンの長さを100%とした際に、線幅10μmに対して、0.5μmの突起が1%以上25%未満の割合で認められる
×:パターンエッジ部分のギザつきが、パターンの長さを100%とした際に、線幅10μmに対して、0.5μmの突起が25%以上の割合で認められる
【0111】
上記評価結果を表2に示す。
【0112】
【0113】
実施例1~7の感光性樹脂組成物では、シリカ粒子を用いた系(比較例1~3)と比較して、高い遮光率において基板側からの反射率を低減できることが確認された。また、実施例1~3、5の感光性樹脂組成物を硬化してなる硬化膜(遮光膜)は、いずれもパターン直線性が良好であることが確認された。
本発明の感光性樹脂組成物によれば、高遮光性および低反射率を両立する感光性樹脂組成物およびこれを用いた硬化膜並びにカラーフィルター、タッチパネルを提供することができる。また、このカラーフィルターおよびタッチパネルによれば、視認性に優れた各種表示装置を提供することができる。