(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051790
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】光電変換素子
(51)【国際特許分類】
H10K 30/60 20230101AFI20230404BHJP
【FI】
H01L31/08 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147608
(22)【出願日】2022-09-16
(31)【優先権主張番号】P 2021161911
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鬼塚 裕也
【テーマコード(参考)】
5F849
【Fターム(参考)】
5F849AA03
5F849AB11
5F849BA05
5F849BA21
5F849BB03
5F849CB05
5F849CB06
5F849CB07
5F849CB11
5F849CB15
5F849CB18
5F849DA28
5F849DA30
5F849FA04
5F849FA05
5F849GA02
5F849XA02
5F849XA13
5F849XA35
5F849XA39
5F849XA40
5F849XA41
5F849XA53
(57)【要約】
【課題】加熱による暗電流値の上昇が抑制されている、光電変換素子。
【解決手段】一対の電極と、前記一対の電極の間に設けられ、p型半導体(P)を含む活性層と、前記一対の電極のうちのいずれかの電極と活性層との間に設けられ、誘電体(D)を含むバッファ層と、を含み、前記誘電体(D)は、バンドギャップが4eV以上でありかつ比誘電率が20以上であり、下記式(1)を満たす、光電変換素子。
Ec-E(L)>0.8eV (1)
(式(1)中、Ecは、前記誘電体(D)が有する伝導帯の下端におけるエネルギーレベルを表し、E(L)は、前記p型半導体(P)のLUMOエネルギーレベルを表す。)
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極と、
前記一対の電極の間に設けられ、p型半導体(P)を含む活性層と、
前記一対の電極のうちのいずれかの電極と前記活性層との間に設けられ、誘電体(D)を含むバッファ層と、を含み、
前記誘電体(D)は、バンドギャップが4eV以上でありかつ比誘電率が20以上であり、
下記式(1)を満たす、光電変換素子。
Ec-E(L)>0.8eV (1)
(式(1)中、Ecは、前記誘電体(D)が有する伝導帯の下端におけるエネルギーレベルを表し、E(L)は、前記p型半導体(P)のLUMOエネルギーレベルを表す。)
【請求項2】
前記誘電体(D)が、ハフニウム酸化物、ジルコニウム酸化物、及びタンタル酸化物からなる群より選択される一種以上を含む酸化物である、請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項3】
前記p型半導体(P)が、共役系高分子化合物である、請求項1又は2に記載の光電変換素子。
【請求項4】
前記p型半導体(P)が、下記式(I)で表される構成単位及び/又は下記式(II)で表される構成単位を含有する高分子化合物である、請求項1又は2に記載の光電変換素子。
【化1】
(式(I)中、Ar
1及びAr
2はそれぞれ、互いに独立に、置換基を有していてもよい3価の芳香族複素環基を表し、Zは下記式(Z-1)~式(Z-7)のいずれか1つで表される基を表す。
【化2】
(式(Z-1)~(Z-7)中、Rは、
水素原子、
ハロゲン原子、
置換基を有していてもよいアルキル基、
置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
置換基を有していてもよいアルケニル基、
置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、
置換基を有していてもよいアルキニル基、
置換基を有していてもよいシクロアルキニル基、
置換基を有していてもよいアリール基、
置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいシクロアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいアリールオキシ基、
置換基を有していてもよいアルキルチオ基、
置換基を有していてもよいシクロアルキルチオ基、
置換基を有していてもよいアリールチオ基、
置換基を有していてもよい1価の複素環基、
置換基を有していてもよい置換アミノ基、
置換基を有していてもよいイミン残基、
置換基を有していてもよいアミド基、
置換基を有していてもよい酸イミド基、
置換基を有していてもよい置換オキシカルボニル基、
シアノ基、
ニトロ基、
-C(=O)-R
cで表される基、又は
-SO
2-R
dで表される基を表し、
R
c及びR
dは、それぞれ独立して、
水素原子、
置換基を有していてもよいアルキル基、
置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
置換基を有していてもよいアリール基、
置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいシクロアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいアリールオキシ基、又は
置換基を有していてもよい1価の複素環基を表す。
式(Z-1)~式(Z-7)中、Rが2つある場合、2つあるRは同一であっても異なっていてもよい。))
【化3】
(式(II)中、Ar
3は2価の芳香族複素環基を表す。)
【請求項5】
光検出素子用である、請求項1又は2に記載の光電変換素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
光電変換素子は、例えば、省エネルギー、二酸化炭素の排出量の低減の観点から極めて有用なデバイスであり、注目されている。
【0003】
光電変換素子は、光が照射されていない暗状態であっても、光電変換が起こり電流が流れる場合がある。光電変換素子を光検出素子(OPD)として用いる場合には、かかる暗電流がノイズとなって、光検出のS/N比を低下させるため、暗電流値の低減が図られてきた。例えば、非特許文献1の技術では、電子ブロック効果を得るために、酸化ニッケル、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化タングステン等の金属酸化物半導体が用いられている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Nanomaterials,2021,11(6),1404
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光電変換素子は、基板等に形成された後の工程、例えば撮像装置に実装される工程において加熱される場合がある。非特許文献1に記載の光電変換素子は、加熱されることにより暗電流値が大幅に上昇するという課題がある。
【0006】
したがって、加熱による暗電流値の上昇が抑制されている、光電変換素子が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を進めたところ、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下を提供する。
【0008】
[1] 一対の電極と、
前記一対の電極の間に設けられ、p型半導体(P)を含む活性層と、
前記一対の電極のうちのいずれかの電極と前記活性層との間に設けられ、誘電体(D)を含むバッファ層と、を含み、
前記誘電体(D)は、バンドギャップが4eV以上でありかつ比誘電率が20以上であり、
下記式(1)を満たす、光電変換素子。
Ec-E(L)>0.8eV (1)
(式(1)中、Ecは、前記誘電体(D)が有する伝導帯の下端におけるエネルギーレベルを表し、E(L)は、前記p型半導体(P)のLUMOエネルギーレベルを表す。)
[2] 前記誘電体(D)が、ハフニウム酸化物、ジルコニウム酸化物、及びタンタル酸化物からなる群より選択される一種以上を含む酸化物である、[1]に記載の光電変換素子。
[3] 前記p型半導体(P)が、共役系高分子化合物である、[1]又は[2]に記載の光電変換素子。
[4] 前記p型半導体(P)が、下記式(I)で表される構成単位及び/又は下記式(II)で表される構成単位を含有する高分子化合物である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の光電変換素子。
【化1】
(式(I)中、Ar
1及びAr
2はそれぞれ、互いに独立に、置換基を有していてもよい3価の芳香族複素環基を表し、Zは下記式(Z-1)~式(Z-7)のいずれか1つで表される基を表す。
【化2】
(式(Z-1)~(Z-7)中、Rは、
水素原子、
ハロゲン原子、
置換基を有していてもよいアルキル基、
置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
置換基を有していてもよいアルケニル基、
置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、
置換基を有していてもよいアルキニル基、
置換基を有していてもよいシクロアルキニル基、
置換基を有していてもよいアリール基、
置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいシクロアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいアリールオキシ基、
置換基を有していてもよいアルキルチオ基、
置換基を有していてもよいシクロアルキルチオ基、
置換基を有していてもよいアリールチオ基、
置換基を有していてもよい1価の複素環基、
置換基を有していてもよい置換アミノ基、
置換基を有していてもよいイミン残基、
置換基を有していてもよいアミド基、
置換基を有していてもよい酸イミド基、
置換基を有していてもよい置換オキシカルボニル基、
シアノ基、
ニトロ基、
-C(=O)-R
cで表される基、又は
-SO
2-R
dで表される基を表し、
R
c及びR
dは、それぞれ独立して、
水素原子、
置換基を有していてもよいアルキル基、
置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
置換基を有していてもよいアリール基、
置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいシクロアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいアリールオキシ基、又は
置換基を有していてもよい1価の複素環基を表す。
式(Z-1)~式(Z-7)中、Rが2つある場合、2つあるRは同一であっても異なっていてもよい。))
【化3】
(式(II)中、Ar
3は2価の芳香族複素環基を表す。)
[5] 光検出素子用である、[1]~[4]のいずれか一項に記載の光電変換素子。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、加熱による暗電流値の上昇が抑制されている、光電変換素子が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る光電変換素子を暗状態とした場合の作用を模式的に説明するエネルギー図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る光電変換素子に光を照射した場合の作用を模式的に説明するエネルギー図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係る光電変換素子の構成要素が有するエネルギーレベルを模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、光電変換素子の構成例を模式的に示す図である。
【
図5】
図5は、イメージ検出部の構成例を模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、指紋検出部の構成例を模式的に示す図である。
【
図7】
図7は、X線撮像装置用のイメージ検出部の構成例を模式的に示す図である。
【
図8】
図8は、静脈認証装置用の静脈検出部の構成例を模式的に示す図である。
【
図9】
図9は、間接方式のTOF型測距装置用イメージ検出部の構成例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、図面は、発明が理解できる程度に、構成要素の形状、大きさ及び配置が概略的に示されているに過ぎない。本発明は以下の記述によって限定されるものではなく、各構成要素は本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。以下の説明に用いる図面において、同様の構成要素については同一の符号を付して示し、重複する説明については省略する場合がある。また、本発明の実施形態に係る構成は、必ずしも図示例の配置で使用されるとは限らない。
【0012】
[1.共通する用語の説明]
本明細書において、「高分子化合物」とは、分子量分布を有し、ポリスチレン換算の数平均分子量が、1×103以上1×108以下である重合体を意味する。高分子化合物に含まれる構成単位は、合計100モル%である。
【0013】
本明細書において、「構成単位」とは、高分子化合物中に1個以上存在する単位を意味する。
【0014】
本明細書において、「水素原子」は、軽水素原子であっても、重水素原子であってもよい。
【0015】
本明細書において、「ハロゲン原子」の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
【0016】
「置換基を有していてもよい」態様には、化合物又は基を構成するすべての水素原子が無置換の場合、及び1個以上の水素原子の一部又は全部が置換基によって置換されている場合の両方の態様が含まれる。
【0017】
置換基の例としては、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、1価の複素環基、置換アミノ基、アシル基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、置換オキシカルボニル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、及びニトロ基が挙げられる。
【0018】
本明細書において、「アルキル基」は置換基を有していてもよい。「アルキル基」は、特に断らない限り、直鎖状及び分岐状のいずれであってもよい。直鎖状のアルキル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1~50であり、好ましくは1~30であり、より好ましくは1~20である。分岐状であるアルキル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~50であり、好ましくは3~30であり、より好ましくは4~20である。
【0019】
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソアミル基、2-エチルブチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、3-n-プロピルヘプチル基、n-デシル基、3,7-ジメチルオクチル基、2-エチルオクチル基、2-n-ヘキシル-デシル基、n-ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基等の非置換アルキル基;シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、3-フェニルプロピル基、3-(4-メチルフェニル)プロピル基、3-(3,5-ジ-n-ヘキシルフェニル)プロピル基、6-エチルオキシヘキシル基等の置換アルキル基が挙げられる。
【0020】
「シクロアルキル基」は、単環の基であってもよく、多環の基であってもよい。シクロアルキル基は、置換基を有していてもよい。シクロアルキル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~30であり、好ましくは3~20である。
【0021】
シクロアルキル基の例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、アダマンチル基などの、置換基を有さないアルキル基、及びこれらの基における水素原子が、アルキル基、アルキルオキシ基、アリール基、フッ素原子などの置換基で置換された基が挙げられる。
【0022】
置換基を有するシクロアルキル基の具体例としては、メチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基が挙げられる。
【0023】
「アルケニル基」は、直鎖状でもあってもよく、分岐状であってもよい。アルケニル基は、置換基を有していてもよい。アルケニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常2~30であり、好ましくは2~20である。
【0024】
アルケニル基の例としては、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、7-オクテニル基などの、置換基を有しないアルケニル基、及びこれらの基における水素原子が、アルキルオキシ基、アリール基、フッ素原子などの置換基で置換された基が挙げられる。
【0025】
「シクロアルケニル基」は、単環の基であってもよく、多環の基であってもよい。シクロアルケニル基は、置換基を有していてもよい。シクロアルケニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~30であり、好ましくは3~20である。
【0026】
シクロアルケニル基の例としては、シクロヘキセニル基などの、置換基を有さないシクロアルケニル基、及びこれらの基における水素原子が、アルキル基、アルキルオキシ基、アリール基、フッ素原子などの置換基で置換された基が挙げられる。
【0027】
置換基を有するシクロアルケニル基の例としては、メチルシクロヘキセニル基、及びエチルシクロヘキセニル基が挙げられる。
【0028】
「アルキニル基」は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。アルキニル基は、置換基を有していてもよい。アルキニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常2~30であり、好ましくは2~20である。
【0029】
アルキニル基の例としては、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、3-ペンチニル基、4-ペンチニル基、1-ヘキシニル基、5-ヘキシニル基などの、置換基を有しないアルキニル基、及びこれらの基における水素原子が、アルキルオキシ基、アリール基、フッ素原子などの置換基で置換された基が挙げられる。
【0030】
「シクロアルキニル基」は、単環の基であってもよく、多環の基であってもよい。シクロアルキニル基は、置換基を有していてもよい。シクロアルキニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常4~30であり、好ましくは4~20である。
【0031】
シクロアルキニル基の例としては、シクロヘキシニル基などの置換基を有しないシクロアルキニル基、及びこれらの基における水素原子が、アルキル基、アルキルオキシ基、アリール基、フッ素原子などの置換基で置換された基が挙げられる。
【0032】
置換基を有するシクロアルキニル基の例としては、メチルシクロヘキシニル基、及びエチルシクロヘキシニル基が挙げられる。
【0033】
「アルキルオキシ基」は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。アルキルオキシ基は、置換基を有していてもよい。アルキルオキシ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1~30であり、好ましくは1~20である。
【0034】
アルキルオキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、3,7-ジメチルオクチルオキシ基、3-ヘプチルドデシルオキシ基、ラウリルオキシ基などの、置換基を有しないアルキルオキシ基、及びこれらの基における水素原子が、アルキルオキシ基、アリール基、フッ素原子等の置換基で置換された基が挙げられる。
【0035】
「シクロアルキルオキシ基」が有するシクロアルキル基は、単環の基であってもよく、多環の基であってもよい。シクロアルキルオキシ基は、置換基を有していてもよい。シクロアルキルオキシ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~30であり、好ましくは3~20である。
【0036】
シクロアルキルオキシ基の例としては、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基などの、置換基を有しないシクロアルキルオキシ基、及びこれらの基における水素原子が、フッ素原子、アルキル基などの置換基で置換された基が挙げられる。
【0037】
「アルキルチオ基」は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。アルキルチオ基は、置換基を有していてもよい。アルキルチオ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1~30であり、好ましくは1~20である。
【0038】
置換基を有していてもよいアルキルチオ基の例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n-ブチルチオ基、イソブチルチオ基、tert-ブチルチオ基、n-ペンチルチオ基、n-ヘキシルチオ基、n-ヘプチルチオ基、n-オクチルチオ基、2-エチルヘキシルチオ基、n-ノニルチオ基、n-デシルチオ基、3,7-ジメチルオクチルチオ基、3-ヘプチルドデシルチオ基、ラウリルチオ基、及びトリフルオロメチルチオ基が挙げられる。
【0039】
「シクロアルキルチオ基」が有するシクロアルキル基は、単環の基であってもよく、多環の基であってもよい。シクロアルキルチオ基は、置換基を有していてもよい。シクロアルキルチオ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~30であり、好ましくは3~20である。
【0040】
置換基を有していてもよいシクロアルキルチオ基の例としては、シクロヘキシルチオ基が挙げられる。
【0041】
「p価の芳香族炭素環基」とは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子p個を除いた残りの原子団を意味する。芳香族炭化水素には、縮合環を有する化合物、独立したベンゼン環及び縮合環からなる群から選ばれる2つ以上が、直接又はビニレン等の2価の基を介して結合した化合物も含まれる。p価の芳香族炭素環基は、置換基をさらに有していてもよい。
【0042】
「アリール基」は、1価の芳香族炭素環基を意味する。アリール基は置換基を有していてもよい。アリール基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含まないで、通常6~60であり、好ましくは6~48である。
【0043】
アリール基の例としては、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントラセニル基、2-アントラセニル基、9-アントラセニル基、1-ピレニル基、2-ピレニル基、4-ピレニル基、2-フルオレニル基、3-フルオレニル基、4-フルオレニル基、2-フェニルフェニル基、3-フェニルフェニル基、4-フェニルフェニル基、などの、置換基を有しないアリール基、及びこれらの基における水素原子が、アルキル基、アルキルオキシ基、アリール基、フッ素原子などの置換基で置換された基が挙げられる。
【0044】
「アリールオキシ基」は、置換基を有していてもよい。アリールオキシ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常6~60であり、好ましくは6~48である。
【0045】
アリールオキシ基の例としては、フェノキシ基、1-ナフチルオキシ基、2-ナフチルオキシ基、1-アントラセニルオキシ基、9-アントラセニルオキシ基、1-ピレニルオキシ基などの置換基を有しないアリールオキシ基、及びこれらの基における水素原子が、アルキル基、アルキルオキシ基、フッ素原子などの置換基で置換された基が挙げられる。
【0046】
「アリールチオ基」は、置換基を有していてもよい。アリールチオ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常6~60であり、好ましくは6~48である。
【0047】
置換基を有していてもよいアリールチオ基の例としては、フェニルチオ基、C1~C12アルキルオキシフェニルチオ基、C1~C12アルキルフェニルチオ基、1-ナフチルチオ基、2-ナフチルチオ基、及びペンタフルオロフェニルチオ基が挙げられる。「C1~C12」は、その直後に記載された基の炭素原子数が1~12であることを表す。さらに、「Cm~Cn」は、その直後に記載された基の炭素原子数がm~nであることを表す。以下同様である。
【0048】
「p価の複素環基」(pは、1以上の整数を表す。)は、置換基を有していてもよい複素環式化合物から環を構成する炭素原子又はヘテロ原子に直接結合する水素原子のうちのp個の水素原子を除いた残りの原子団を意味する。「p価の複素環基」には、「p価の芳香族複素環基」が含まれる。「p価の芳香族複素環基」は、置換基を有していてもよい芳香族複素環式化合物から、環を構成する炭素原子又はヘテロ原子に直接結合している水素原子のうちのp個の水素原子を除いた残りの原子団を意味する。
【0049】
芳香族複素環式化合物には、複素環自体が芳香族性を示す化合物に加えて、複素環自体は芳香族性を示さなくとも、複素環に芳香環が縮環している化合物が包含される。
【0050】
芳香族複素環式化合物のうち、複素環自体が芳香族性を示す化合物の具体例としては、オキサジアゾール、チアジアゾール、チアゾール、オキサゾール、チオフェン、ピロール、ホスホール、フラン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、トリアジン、ピリダジン、キノリン、イソキノリン、カルバゾール、及びジベンゾホスホールが挙げられる。
【0051】
芳香族複素環式化合物のうち、複素環自体が芳香族性を示さず、複素環に芳香環が縮環している化合物の具体例としては、フェノキサジン、フェノチアジン、ジベンゾボロール、ジベンゾシロール、及びベンゾピランが挙げられる。
【0052】
p価の複素環基は、置換基を有していてもよい。p価の複素環基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常2~60であり、好ましくは2~20である。
【0053】
1価の複素環基の例としては、1価の芳香族複素環基(例、チエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、キノリル基、イソキノリル基、ピリミジニル基、トリアジニル基)、1価の非芳香族複素環基(例、ピペリジル基、ピペラジル基)、及びこれらの基における水素原子が、アルキル基、アルキルオキシ基、フッ素原子などの置換基で置換された基が挙げられる。
【0054】
「置換アミノ基」は、置換基を有するアミノ基を意味する。アミノ基が有する置換基としては、アルキル基、アリール基、及び1価の複素環基が好ましい。置換アミノ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1~30である。
【0055】
置換アミノ基の例としては、ジアルキルアミノ基(例、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基)、ジアリールアミノ基(例、ジフェニルアミノ基、ビス(4-メチルフェニル)アミノ基、ビス(4-tert-ブチルフェニル)アミノ基、ビス(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)アミノ基)が挙げられる。
【0056】
「アシル基」は、置換基を有していてもよい。アシル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常2~20であり、好ましくは2~18である。アシル基の具体例としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、トリフルオロアセチル基、及びペンタフルオロベンゾイル基が挙げられる。
【0057】
「イミン残基」とは、イミン化合物から、炭素原子-窒素原子二重結合を構成する炭素原子又は窒素原子に直接結合する水素原子を1個除いた残りの原子団を意味する。「イミン化合物」とは、分子内に、炭素原子-窒素原子二重結合を有する有機化合物を意味する。イミン化合物の例としては、アルジミン、ケチミン、及びアルジミン中の炭素原子-窒素原子二重結合を構成する窒素原子に結合している水素原子が、アルキル基などの置換基で置換された化合物が挙げられる。
【0058】
イミン残基の炭素原子数は、通常2~20であり、好ましくは2~18である。イミン残基の例としては、下記の構造式で表される基が挙げられる。
【0059】
【0060】
「アミド基」とは、アミドから窒素原子に結合した水素原子1つを除いた残りの原子団を意味する。アミド基の炭素原子数は、通常1~20程度であり、好ましくは1~18である。アミド基の具体例としては、ホルムアミド基、アセトアミド基、プロピオアミド基、ブチロアミド基、ベンズアミド基、トリフルオロアセトアミド基、ペンタフルオロベンズアミド基、ジホルムアミド基、ジアセトアミド基、ジプロピオアミド基、ジブチロアミド基、ジベンズアミド基、ジトリフルオロアセトアミド基、及びジペンタフルオロベンズアミド基が挙げられる。
【0061】
「酸イミド基」とは、酸イミドから窒素原子に結合した水素原子1つを除いた残りの原子団を意味する。酸イミド基の炭素原子数は、通常4~20である。酸イミド基の具体例としては、以下に示す基が挙げられる。
【0062】
【0063】
「置換オキシカルボニル基」とは、R’-O-(C=O)-で表される基を意味する。ここで、R’は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、又は1価の複素環基を表す。
置換オキシカルボニル基は、炭素原子数が通常2~60であり、好ましくは炭素原子数が2~48である。
【0064】
置換オキシカルボニル基の具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、2-エチルヘキシルオキシカルボニル基、ノニルオキシカルボニル基、デシルオキシカルボニル基、3,7-ジメチルオクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基、トリフルオロメトキシカルボニル基、ペンタフルオロエトキシカルボニル基、パーフルオロブトキシカルボニル基、パーフルオロヘキシルオキシカルボニル基、パーフルオロオクチルオキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基、及びピリジルオキシカルボニル基が挙げられる。
【0065】
「アルキルスルホニル基」は、直鎖状でもあってもよく、分岐状であってもよい。アルキルスルホニル基は、置換基を有していてもよい。アルキルスルホニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1~30である。アルキルスルホニル基の具体例としては、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、及びドデシルスルホニル基が挙げられる。
【0066】
化学式に付される「*」は、結合手を表す。
【0067】
「π共役系」とは、π電子が複数の結合にわたって非局在化している系を意味する。
【0068】
化学式において、「Me」はメチル基を表し、「Et」はエチル基を表し、「Bu」はブチル基を表す。
【0069】
「HOMO」とは、最高被占軌道を意味する。「LUMO」とは、最低空軌道を意味する。HOMOのエネルギーレベル及びLUMOのエネルギーレベルは、真空準位を0eVとして規定される。
【0070】
[2.光電変換素子の概要]
本発明の一実施形態に係る光電変換素子は、一対の電極と、前記一対の電極の間に設けられ、p型半導体(P)を含む活性層と、前記一対の電極のうちのいずれかの電極と活性層との間に設けられ、誘電体(D)を含むバッファ層と、を含む。前記誘電体(D)は、バンドギャップが4eV以上であり、かつ比誘電率が20以上である。本発明の一実施形態に係る光電変換素子は、下記式(1)を満たす。
Ec-E(L)>0.8eV (1)
式(1)中、Ecは、前記誘電体(D)が有する伝導帯の下端におけるエネルギーレベルを表し、E(L)は、前記p型半導体(P)のLUMOエネルギーレベルを表す。
【0071】
バッファ層は、一対の電極のうちのいずれかの電極と活性層との間に設けられている。好ましくは、バッファ層は第1の電極と活性層との間に設けられ、電子ブロック層として機能しうる。
本明細書において、光電変換素子に逆方向電圧を印加して光を照射した際に、外部回路に正孔が流出する電極を第1の電極とし、外部回路に電子が流出する電極を第2の電極とする。
第1の電極は、光電変換素子に順方向電圧を印加した際の陽極であり、第2の電極は、光電変換素子に順方向電圧を印加した際の陰極である。
【0072】
本実施形態の光電変換素子は、加熱後の暗電流値の上昇が抑制され、耐熱性を有する。
本実施形態の光電変換素子は、-5Vを印加した際の暗電流値(Jd)が、好ましくは100nA/cm2以下、より好ましくは50nA/cm2以下、さらに好ましくは20nA/cm2以下であり、通常0nA/cm2以上である。
本実施形態の光電変換素子は、180℃で加熱した後における-5Vを印加した際の暗電流値をJd1とし、180℃で加熱する前における-5Vを印加した際の暗電流値をJd0とすると、Jd1/Jd0値が、好ましくは2以下、より好ましくは1.8以下、さらに好ましくは1.5以下であり、小さいほど好ましいが、例えば0.1以上であってもよく、例えば0.5以上であってもよい。
【0073】
本実施形態の光電変換素子が、加熱後の暗電流値の上昇が抑制され、耐熱性を有する理由として、下記の理由が考えられるが、本発明を限定するものではない。
【0074】
以下、理由を
図1~
図3を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る光電変換素子を暗状態とした場合の作用を模式的に説明するエネルギー図である。
図2は、本発明の一実施形態に係る光電変換素子に光を照射した場合の作用を模式的に説明するエネルギー図である。
図3は、本発明の一実施形態に係る光電変換素子の構成要素が有するエネルギーレベルを模式的に示す図である。
図1及び
図2において、E(1)は、第1の電極のフェルミ準位を示し、平行四辺形Dは、誘電体(D)のエネルギーレベルを示し、長方形Pは、活性層に含まれるp型半導体(P)のエネルギーレベルを示し、長方形Nは、活性層に含まれうるn型半導体のエネルギーレベルを示し、E(2)は、第2の電極のフェルミ準位を示す。平行四辺形Dの上側の辺は、伝導帯の下端のエネルギーレベルを示し、平行四辺形Dの下側の辺は、価電子帯の上端のエネルギーレベルを示す。長方形P及び長方形Nの上側の辺は、LUMOのエネルギーレベルを示し、下側の辺は、HOMOのエネルギーレベルを示す。
本図では、誘電体(D)を含むバッファ層が、第1の電極に直接している光電変換素子のエネルギーレベルについて示されている。
【0075】
暗状態では、活性層中のキャリアが少なく、活性層の導電性が低い。そのため、誘電体(D)を含むバッファ層に印加される電圧は低い。そのような状態においては、誘電体(D)は、バンドギャップが4eV以上であって大きいため、
図1に示すように、第1の電極から活性層へ電子を注入する際の障壁となり、また活性層内で生じた正孔を第1の電極から取り出す際の障壁となる。したがって、本実施形態の光電変換素子は、暗電流値を低減しうると考えられる。
【0076】
他方、光電変換素子に光が照射されている場合(明状態)は、活性層中のキャリアが多く、活性層の導電性が高い。そのため、誘電体(D)を含むバッファ層に印加される電圧は高い。そのような状態においては、トンネリング効果が生じて、活性層中の正孔がバッファ層の障壁を超えて第1の電極に取り出される。したがって、本実施形態の光電変換素子は、暗電流値が低減されていながら、良好な外部量子効率(EQE)が期待される。
【0077】
光電変換素子を加熱した場合、バッファ層に含まれる誘電体において、以下の変化が起こると考えられる。
・伝導帯の下端のエネルギーレベルEcより深い(小さい)エネルギーレベルを有する中間準位が生じることで、バッファ層の電子に対する正味の障壁が低くなる。
【0078】
図3に示すように、誘電体(D)の伝導帯の下端におけるエネルギーレベルEcと、活性層に含まれるp型半導体(P)のLUMOのエネルギーレベルE(L)との差(Ec-E(L))は大きく、0.8eV超である。そのため、加熱により誘電体(D)のEcより深いエネルギーレベルを有する中間準位が生じたとしても、誘電体(D)は、暗状態において、第1の電極からp型半導体(P)への電子注入に対する十分な障壁となりうると考えられる。その結果、光電変換素子の暗電流値は、加熱前後において同等の水準が維持されると考えられる。以上から式(1)の値「Ec-E(L)」は、0.8eV超であることが好ましく、1.0以上であることがより好ましく、1.1以上であることが更に好ましく、1.2以上であることがこと更に好ましい。
【0079】
他方、
図3に示すように、伝導帯の下端におけるエネルギーレベルEcと、活性層に含まれるp型半導体(p)のLUMOのエネルギーレベルE(L)との差(Ec-E(L))が小さく、0.8eV以下である誘電体(D’)とp型半導体(P)との組み合わせでは、加熱により誘電体(D’)の伝導帯の下端のエネルギーレベルEcより深いエネルギーレベルを有する中間準位が生じることにより、誘電体(D’)は、第1の電極からp型半導体(P)への電子注入に対する十分な障壁となりえず、光電変換素子の暗電流値は、加熱後において増大すると考えられる。
【0080】
[3.第一実施形態]
以下、本発明の第一実施形態に係る光電変換素子について、図面を参照して具体的に説明する。
【0081】
図4は、光電変換素子の構成例を模式的に示す図である。
【0082】
図4に示されるように、光電変換素子10は、支持基板11に設けられている。光電変換素子10は、支持基板11に接するように設けられている、第1の電極12と、第1の電極12に接するように設けられている、電子ブロック層としてのバッファ層13と、バッファ層13に接するように設けられている活性層14と、活性層14に接するように設けられている電子輸送層15と、電子輸送層15に接するように設けられている、第2の電極16とを備えている。この構成例では、第2の電極16に接するように封止部材17がさらに設けられている。
以下、本実施形態の光電変換素子に含まれ得る構成要素について具体的に説明する。
【0083】
[3.1.基板]
光電変換素子は、通常、基板(支持基板)上に形成される。また、さらに基板(封止基板)により封止される場合もある。基板には、通常、第1の電極及び第2の電極からなる一対の電極のうちの一方が形成される。基板の材料は、特に有機化合物を含む層を形成する際に化学的に変化しない材料であれば特に限定されない。
【0084】
基板の材料としては、例えば、ガラス、プラスチック、高分子フィルム、シリコンが挙げられる。不透明な基板が用いられる場合には、不透明な基板側に設けられる電極とは反対側の電極(換言すると、不透明な基板から遠い側の電極)が透明又は半透明の電極とされることが好ましい。
【0085】
[3.2.電極]
光電変換素子は、一対の電極である第1の電極及び第2の電極を含んでいる。第1の電極及び第2の電極のうち、少なくとも一方の電極は、光を入射させるために、透明又は半透明の電極とすることが好ましい。
【0086】
透明又は半透明の電極の材料の例としては、導電性の金属酸化物膜、半透明の金属薄膜が挙げられる。具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらの複合体であるインジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、NESA等の導電性材料、金、白金、銀、銅が挙げられる。透明又は半透明である電極の材料としては、ITO、IZO、酸化スズが好ましい。また、電極として、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体などの有機化合物が材料として用いられる透明導電膜を用いてもよい。透明又は半透明の電極は、第1の電極であっても第2の電極であってもよい。
【0087】
一対の電極のうちの一方の電極が透明又は半透明であれば、他方の電極は光透過性の低い電極であってもよい。光透過性の低い電極の材料の例としては、金属、及び導電性高分子が挙げられる。光透過性の低い電極の材料の具体例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等の金属、及びこれらのうちの2種以上の合金、又は、これらのうちの1種以上の金属と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン及び錫からなる群から選ばれる1種以上の金属との合金、グラファイト、グラファイト層間化合物、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体が挙げられる。合金としては、マグネシウム-銀合金、マグネシウム-インジウム合金、マグネシウム-アルミニウム合金、インジウム-銀合金、リチウム-アルミニウム合金、リチウム-マグネシウム合金、リチウム-インジウム合金、及びカルシウム-アルミニウム合金が挙げられる。
【0088】
[3.3.バッファ層]
バッファ層は、誘電体(D)を含む。バッファ層は、誘電体(D)のみからなることが好ましい。誘電体(D)は、通常比誘電率が20以上である。
バッファ層に含まれる誘電体(D)の比誘電率が20以上であることによって、光電変換素子に光が照射されている場合に、活性層で生じた正孔を外部回路に取り出しうる。
比誘電率は、通常、文献(A)「Thin Solid Films.1977,41,247-259」に記載された方法に従い、誘電体(D)のフィルムについて静電容量を測定し、測定に用いたフィルムの厚みと静電容量とから決定しうる。
また比誘電率は、例えば、文献(B)「J.App.Phys.1985,58,2407」に記載された方法に従い、10kHzにおける静電容量-電圧の測定結果から決定しうる。
また比誘電率は、例えば文献(C)「J.App.Phys.2000,88,850」に記載された方法に従い決定しうる。
【0089】
誘電体(D)は、バンドギャップEgが、通常4eV以上であり、好ましくは5.5eV以上であり、より好ましくは6.0eV以上であり、好ましくは12eV以下であり、より好ましくは15eV以下である。
バンドギャップEgが、前記下限値以上であることにより、光電変換素子を加熱した後においても、暗電流値を低い水準で維持できる。
バンドギャップEgは、通常、文献(D)「Phys.ReV.B.2008,78,085114」に記載された方法に従い、紫外光電子分光法(UPS:ultraviolet photoemission spectroscopy)及び逆光電子分光法(IPS:inverse photoemission spectroscopy)を組み合わせた方法により決定しうる。
またバンドギャップEgは、例えば、文献(C)「J.App.Phys.2000,88,850」に記載された方法に従い決定しうる。
【0090】
誘電体(D)は、好ましくは、ハフニウム酸化物、ジルコニウム酸化物、及びタンタル酸化物からなる群より選択される一種以上を含む酸化物であり、より好ましくはハフニウム酸化物及びジルコニウム酸化物からなる群より選択される一種以上を含む酸化物であり、さらに好ましくはハフニウム酸化物を含む酸化物である。誘電体(D)は、ハフニウム酸化物、ジルコニウム酸化物、及びタンタル酸化物からなる群より選択される一種以上を含む多元酸化物でありうる。
【0091】
ハフニウム酸化物を含む酸化物としては、酸化ハフニウム(IV)(HfO2)(Eg:5.7eV(文献(D)に従う。)、比誘電率:22-25(文献(A)に従う。))が挙げられ、酸化ハフニウム(IV)が好ましい。
ジルコニウム酸化物を含む酸化物としては、酸化ジルコニウム(IV)(ZrO2)(Eg:5.5eV(文献(D)に従う。)、比誘電率:21(文献(B)に従う。))が挙げられる。
タンタル酸化物を含む酸化物としては、酸化タンタル(V)(Ta2O5)(Eg:4.0eV、比誘電率:23(それぞれ文献(C)に従う。)が挙げられる。
【0092】
誘電体(D)は、ハフニウム酸化物、ジルコニウム酸化物、及びタンタル酸化物以外の成分を含んでいてもよい。例えば、誘電体(D)は、アルミニウム原子、シリコン原子、ランタン原子、及び/又はイットリウム原子を含んでいてもよい。誘電体(D)に含まれうる、ハフニウム酸化物、ジルコニウム酸化物、及びタンタル酸化物以外の成分の割合は、好ましくは50重量%以下、より好ましくは25重量%以下、更に好ましくは10重量%以下であり、通常0重量%以上であり、0重量%であってもよい。ただし、誘電体(D)の重量を100重量%とする。
【0093】
誘電体(D)は、伝導帯の下端におけるエネルギーレベルEcが前記式(1)を満たす。誘電体(D)が有する伝導帯の下端におけるエネルギーレベルEcは、通常、前記文献(D)に記載された方法に従い、UPS法及びIPS法を組み合わせた方法により決定しうる。
【0094】
バッファ層の厚みは、好ましくは1nm以上、より好ましくは5nm以上であり、好ましくは50nm以下、より好ましくは30nm以下である。
バッファ層は、誘電体(D)を含むので、前記上限値以下の厚みであっても、電子又は正孔をブロックする機能を有しうる。
【0095】
[3.4.活性層]
活性層は、p型半導体材料である、p型半導体(P)を含む。活性層は、好ましくは、p型半導体(P)の他に、さらにn型半導体を含む。活性層は、複数種のp型半導体(P)を含んでいてもよい。活性層は、複数種のn型半導体を含んでいてもよい。本実施形態に係る活性層は、バルクヘテロジャンクション型の構造を有している。
【0096】
活性層に含まれる半導体が、p型半導体及びn型半導体のうちのいずれとして機能するかは、選択された化合物のHOMOエネルギーレベルの値又はLUMOエネルギーレベルの値から相対的に決定しうる。
【0097】
p型半導体(P)のHOMO及びLUMOのエネルギーレベルの値と、n型半導体のHOMO及びLUMOのエネルギーレベルの値との関係は、活性層が、光電変換機能、光検出機能といった所定の機能を発揮する範囲に適宜設定することができる。
【0098】
(1)p型半導体(P)
本実施形態に係る活性層に含まれるp型半導体(P)は、LUMOエネルギーレベルが前記式(1)を満たす。
p型半導体(P)が有するLUMOエネルギーレベルは、例えば、実施例記載の方法に従い、UPS法を用いて決定しうる。
【0099】
本実施形態において、p型半導体(P)は、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。
【0100】
低分子化合物であるp型半導体(P)としては、例えば、フタロシアニン、金属フタロシアニン、ポルフィリン、金属ポルフィリン、オリゴチオフェン、テトラセン、ペンタセン、及びルブレンが挙げられる。
【0101】
本実施形態に係るp型半導体(P)は、π共役系高分子化合物であることが好ましい。本実施形態に係るp型半導体(P)は、ドナー構成単位とアクセプター構成単位とを含むドナー・アクセプター型構造を有するπ共役系の高分子化合物であることがより好ましい。
【0102】
本実施形態において、p型半導体(P)を構成し得る構成単位には、ドナー構成単位とアクセプター構成単位とが直接的に結合した構成単位、さらにはドナー構成単位とアクセプター構成単位とが、任意好適なスペーサー(基又は構成単位)を介して結合した構成単位も含まれる。
【0103】
高分子化合物であるp型半導体(P)としては、例えば、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミン構造を含むポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体が挙げられる。
【0104】
p型半導体(P)は、暗電流を低減させる観点から、下記式(I)で表される構成単位及び/又は下記式(II)で表される構成単位を含む高分子化合物であることが好ましい。
【0105】
【0106】
式(I)中、Ar1及びAr2は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい3価の芳香族複素環基を表し、Zは下記式(Z-1)~式(Z-7)のいずれか1つで表される基を表す。
【0107】
【0108】
式(II)中、Ar3は2価の芳香族複素環基を表す。
【0109】
【0110】
式(Z-1)~(Z-7)中、Rは、
水素原子、
ハロゲン原子、
置換基を有していてもよいアルキル基、
置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
置換基を有していてもよいアルケニル基、
置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、
置換基を有していてもよいアルキニル基、
置換基を有していてもよいシクロアルキニル基、
置換基を有していてもよいアリール基、
置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいシクロアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいアリールオキシ基、
置換基を有していてもよいアルキルチオ基、
置換基を有していてもよいシクロアルキルチオ基、
置換基を有していてもよいアリールチオ基、
置換基を有していてもよい1価の複素環基、
置換基を有していてもよい置換アミノ基、
置換基を有していてもよいイミン残基、
置換基を有していてもよいアミド基、
置換基を有していてもよい酸イミド基、
置換基を有していてもよい置換オキシカルボニル基、
シアノ基、
ニトロ基、
-C(=O)-Rcで表される基、又は
-SO2-Rdで表される基を表し、
Rc及びRdは、それぞれ独立して、
水素原子、
置換基を有していてもよいアルキル基、
置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
置換基を有していてもよいアリール基、
置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいシクロアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいアリールオキシ基、又は
置換基を有していてもよい1価の複素環基を表す。
式(Z-1)~式(Z-7)中、Rが2つある場合、2つあるRは同一であっても異なっていてもよい。好ましくは、2つあるRは同一である。
【0111】
式(Z-1)~式(Z-7)中のRは、好ましくは水素原子、アルキル基、又はアリール基であり、より好ましくは水素原子又はアルキル基であり、さらに好ましくは、水素原子又は炭素原子数1~40のアルキル基であり、より好ましくは水素原子又は炭素原子数1~30のアルキル基であり、特に好ましくは水素原子又は炭素原子数1~20のアルキル基である。これらの基は、置換基を有していてもよい。置換基が複数存在する場合、複数存在する置換基は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0112】
Zは、式(Z-4)又は式(Z-5)で表される基であることが好ましい。
【0113】
式(I)で表される構成単位は、下記式(I-1)で表される構成単位であることが好ましい。
【0114】
【0115】
式(I-1)中、Zは前記と同様の意味を表す。
【0116】
式(I-1)で表される構成単位の例としては、下記式(501)~式(505)で表される構成単位が挙げられる。式(I)で表される構成単位としては、式(501)で表される構成単位がより好ましい。
【0117】
【0118】
上記式(501)~式(505)中、Rは前記と同様の意味を表す。Rが2つ存在する場合、2つのRは互いに同一であっても異なっていてもよい。好ましくは、式(501)~式(505)中、2つ存在するRは、互いに同一である。
【0119】
上記式(501)~式(505)中、Rは、好ましくは水素原子、アルキル基、又はアリール基であり、より好ましくは水素原子又はアルキル基であり、さらに好ましくは水素原子又は炭素原子数1~40のアルキル基であり、より好ましくは水素原子又は炭素原子数1~30のアルキル基であり、特に好ましくは水素原子又は炭素原子数1~20のアルキル基である。これらの基は、置換基を有していてもよい。置換基が複数存在する場合、複数存在する置換基は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0120】
前記式(II)中、Ar3で表される2価の芳香族複素環基の炭素原子数は、通常2~60であり、好ましくは4~60であり、より好ましくは4~20である。Ar3で表される2価の芳香族複素環基は置換基を有していてもよい。Ar3で表される2価の芳香族複素環基が有していてもよい置換基の例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、1価の複素環基、置換アミノ基、アシル基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、置換オキシカルボニル基、アルケニル基、アルキニル基、シアノ基、及びニトロ基が挙げられる。
【0121】
Ar3で表される2価の芳香族複素環基の例としては、下記式(101)~式(190)で表される基、及びこれらの基が置換基により置換された基が挙げられる。
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
式(101)~式(190)中、Rは前記と同じ意味を表す。Rが複数存在する場合、複数のRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0127】
前記式(II)で表される構成単位としては、下記式(II-1)~式(II-7)で表される構成単位が好ましく、下記式(II-6)又は式(II-7)で表される構成単位がより好ましい。
【0128】
【0129】
式(II-1)~式(II-7)中、X1及びX2は、それぞれ独立に、酸素原子又は硫黄原子を表し、Rは上記と同じ意味を表す。Rが複数存在する場合、複数のRは、互いに同一でも異なっていてもよい。式(II-1)~式(II-7)中、Rは、水素原子又はハロゲン原子であることが好ましく、水素原子又はフッ素原子であることがより好ましい。式(II-1)~式(II-7)中、Rが複数存在する場合、Rは、同時に水素原子又は同時にハロゲン原子であることがより好ましく、同時に水素原子又は同時にフッ素原子であることがさらに好ましい。
【0130】
原料化合物の入手性の観点から、式(II-1)~式(II-7)中のX1及びX2は、いずれも硫黄原子であることが好ましい。
【0131】
p型半導体(P)である高分子化合物は、2種以上の式(I)の構成単位を含んでいてもよく、2種以上の式(II)の構成単位を含んでいてもよい。
【0132】
溶媒に対する溶解性を向上させる観点から、p型半導体(P)である高分子化合物は、下記式(III)で表される構成単位を含んでいてもよい。
【0133】
【0134】
式(III)中、Ar4はアリーレン基を表す。
【0135】
Ar4で表されるアリーレン基とは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から、水素原子2つを除いた残りの原子団を意味する。
【0136】
芳香族炭化水素が有していてもよい置換基の例としては、Ar3で表される2価の芳香族複素環基が有していてもよい置換基の例と同様の置換基が挙げられる。
【0137】
アリーレン基における、置換基を除いた部分の炭素原子数は、通常6~60であり、好ましくは6~20である。置換基を含めたアリーレン基の炭素原子数は、通常6~100である。
【0138】
アリーレン基の例としては、フェニレン基(例えば、下記式1~式3)、ナフタレン-ジイル基(例えば、下記式4~式13)、アントラセン-ジイル基(例えば、下記式14~式19)、ビフェニル-ジイル基(例えば、下記式20~式25)、ターフェニル-ジイル基(例えば、下記式26~式28)、縮合環化合物基(例えば、下記式29~式35)、フルオレン-ジイル基(例えば、下記式36~式38)、及びベンゾフルオレン-ジイル基(例えば、下記式39~式46)が挙げられる。
【0139】
【0140】
【0141】
【0142】
【0143】
【0144】
【0145】
【0146】
【0147】
式1~式46中、Rは前記と同義である。Rが複数ある場合、複数あるRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0148】
p型半導体(P)としての高分子化合物が、式(I)で表される構成単位及び/又は式(II)で表される構成単位を含む場合、式(I)で表される構成単位及び式(II)で表される構成単位の合計量は、高分子化合物が含むすべての構成単位の量を100モル%としたときに、通常20~100モル%であり、p型半導体としての電荷輸送性を向上させるので、好ましくは40~100モル%であり、より好ましくは50~100モル%である。
【0149】
p型半導体(P)である高分子化合物の好適な具体例としては、下記式P-1~P-2で表される高分子化合物が挙げられる。
【0150】
【0151】
p型半導体(P)としての高分子化合物は、ポリスチレン換算の重量平均分子量が、通常1×103~1×108であり、溶媒への溶解性を向上させる観点から、好ましくは1×103~1×106である。
【0152】
本実施形態に係る活性層は、p型半導体(P)としての高分子化合物を1種のみ含んでいてもよく、2種以上を任意の組合せとして含んでいてもよい。
【0153】
(2)n型半導体
本実施形態の活性層が含みうるn型半導体は、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。
【0154】
低分子化合物であるn型半導体(電子受容性化合物)の例としては、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8-ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、C60フラーレン等のフラーレン及びその誘導体であるフラーレン誘導体(以下、フラーレン化合物という場合がある。)、並びに、バソクプロイン等のフェナントレン誘導体が挙げられる。
【0155】
高分子化合物であるn型半導体の例としては、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミン構造を有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、並びに、ポリフルオレン及びその誘導体が挙げられる。
【0156】
一実施形態では、活性層に含まれうるn型半導体としては、フラーレン及びフラーレン誘導体から選ばれる1種以上が好ましく、フラーレン誘導体がより好ましい。
【0157】
フラーレンの例としては、C60フラーレン、C70フラーレン、C76フラーレン、C78フラーレン、及びC84フラーレンが挙げられる。フラーレン誘導体の例としては、これらのフラーレンの誘導体が挙げられる。フラーレン誘導体とは、フラーレンの少なくとも一部が修飾された化合物を意味する。
【0158】
フラーレン誘導体の例としては、下記式で表される化合物が挙げられる。
【0159】
【0160】
式中、
Raは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい1価の複素環基、又はエステル構造を有する基を表す。複数あるRaは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
Rbは、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。複数あるRbは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0161】
Raで表されるエステル構造を有する基の例としては、下記式で表される基が挙げられる。
【0162】
【0163】
式中、u1は、1~6の整数を表す。u2は、0~6の整数を表す。Reは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよい1価の複素環基を表す。
【0164】
C60フラーレン誘導体の例としては、下記の化合物が挙げられる。
【0165】
【0166】
C70フラーレン誘導体の例としては、下記の化合物が挙げられる。
【0167】
【0168】
フラーレン誘導体の具体例としては、[6,6]-フェニル-C61酪酸メチルエステル(C60PCBM、[6,6]-Phenyl C61 butyric acid methyl ester)、[6,6]-フェニル-C71酪酸メチルエステル(C70PCBM、[6,6]-Phenyl C71 butyric acid methyl ester)、[6,6]-フェニル-C85酪酸メチルエステル(C84PCBM、[6,6]-Phenyl C85 butyric acid methyl ester)、及び[6,6]-チエニル-C61酪酸メチルエステル([6,6]-Thienyl C61 butyric acid methyl ester)が挙げられる。
【0169】
n型半導体として、フラーレン化合物ではない化合物を用いうる。本明細書において、フラーレン化合物ではないn型半導体を、「非フラーレン化合物」という。非フラーレン化合物としては、多種の化合物が公知であり、従来公知の任意好適な非フラーレン化合物を本実施形態においてn型半導体として用いることができる。
【0170】
本実施形態に係る活性層は、n型半導体としての化合物を、1種のみ含んでいてもよく、複数種類含んでいてもよい。
【0171】
一実施形態において、n型半導体である非フラーレン化合物は、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド構造を含む化合物であることが好ましい。非フラーレン化合物であるペリレンテトラカルボン酸ジイミド構造を含む化合物の例としては、下記式で表される化合物が挙げられる。
【0172】
【0173】
【0174】
【0175】
【0176】
式中、Rは、前記定義のとおりである。複数あるRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0177】
一実施形態において、n型半導体材料は、好ましくは、下記式(V)で表される化合物を含む。下記式(V)で表される化合物は、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド構造を含む非フラーレン化合物である。
【0178】
【0179】
前記式(V)中、R1は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、置換基を有していてもよいシクロアルキルオキシ基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよい1価の芳香族複素環基を表す。複数あるR1は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0180】
好ましくは、複数あるR1は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキル基である。
【0181】
R2は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、置換基を有していてもよいシクロアルキルオキシ基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよい1価の芳香族複素環基を表す。複数あるR2は同一であっても異なっていてもよい。
【0182】
式(V)で表される化合物の好ましい例として、下記式で表される化合物が挙げられる。
【0183】
【0184】
一実施形態において、n型半導体材料は、下記式(VI)で表される化合物を含むことが好ましい。
A1-B10-A2 (VI)
【0185】
式(VI)中、
A1及びA2は、それぞれ独立に、電子求引性の基を表し、B10は、π共役系を含む基を表す。
【0186】
A1及びA2である電子求引性の基の例としては、-CH=C(-CN)2で表される基、及び下記式(a-1)~式(a-9)で表される基が挙げられる。
【0187】
【0188】
式(a-1)~式(a-7)中、
Tは、置換基を有していてもよい炭素環、又は置換基を有していてもよい複素環を表す。炭素環及び複素環は、単環であってもよく、縮合環であってもよい。これらの環が置換基を複数有する場合、複数ある置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0189】
Tである置換基を有していてもよい炭素環の例としては、芳香族炭素環が挙げられ、好ましくは芳香族炭素環である。Tである置換基を有していてもよい炭素環の具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環、ピレン環、及びフェナントレン環が挙げられ、好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、及びフェナントレン環であり、より好ましくはベンゼン環及びナフタレン環であり、さらに好ましくはベンゼン環である。これらの環は、置換基を有していてもよい。
【0190】
Tである置換基を有していてもよい複素環の例としては、芳香族複素環が挙げられ、好ましくは芳香族複素環である。Tである置換基を有していてもよい複素環の具体例としては、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、及びチエノチオフェン環が挙げられ、好ましくはチオフェン環、ピリジン環、ピラジン環、チアゾール環、及びチエノチオフェン環であり、より好ましくはチオフェン環である。これらの環は、置換基を有していてもよい。
【0191】
Tである炭素環又は複素環が有し得る置換基の例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルキルオキシ基、アリール基、及び1価の複素環基が挙げられ、好ましくはフッ素原子、及び/又は炭素原子数1~6のアルキル基である。
【0192】
X4、X5、及びX6は、それぞれ独立して、酸素原子、硫黄原子、アルキリデン基、又は=C(-CN)2で表される基を表し、好ましくは、酸素原子、硫黄原子、又は=C(-CN)2で表される基である。
【0193】
X7は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、置換基を有していてもよいアリール基又は1価の複素環基を表す。
【0194】
Ra1、Ra2、Ra3、Ra4、及びRa5は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、置換基を有していてもよいアリール基又は1価の複素環基を表し、好ましくは、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基である。
【0195】
【0196】
式(a-8)及び式(a-9)中、Ra6及びRa7は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、置換基を有していてもよいシクロアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい1価の芳香族炭素環基、又は置換基を有していてもよい1価の芳香族複素環基を表し、複数あるRa6及びRa7は、同一であっても異なっていてもよい。
【0197】
A1及びA2である電子求引性の基としては、下記の式(a-1-1)~式(a-1-4)並びに式(a-6-1)及び式(a-7-1)のいずれかで表される基が好ましく、式(a-1-1)で表される基がより好ましい。ここで、複数あるRa10は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を表し、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、又は置換基を有していてもよいアルキル基を表す。Ra3、Ra4、及びRa5は、それぞれ独立して、前記と同義であり、好ましくはそれぞれ独立して置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。
【0198】
【0199】
B10であるπ共役系を含む基の例としては、後述する式(VII)で表される化合物における、-(S1)n1-B11-(S2)n2-で表される基が挙げられる。
【0200】
本実施形態において、n型半導体材料は、下記式(VII)で表される化合物であることが好ましい。
A1-(S1)n1-B11-(S2)n2-A2 (VII)
【0201】
式(VII)中、A1及びA2は、それぞれ独立に、電子求引性の基を表す。A1及びA2の例及び好ましい例は、前記式(VI)におけるA1及びA2について説明した例及び好ましい例と同様である。
【0202】
S1及びS2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の炭素環基、置換基を有していてもよい2価の複素環基、-C(Rs1)=C(Rs2)-で表される基(ここで、Rs1及びRs2は、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基(好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよい1価の複素環基を表す。)、又は-C≡C-で表される基を表す。
【0203】
S1及びS2で表される、置換基を有していてもよい2価の炭素環基及び置換基を有していてもよい2価の複素環基は、縮合環であってもよい。2価の炭素環基又は2価の複素環基が、複数の置換基を有する場合、複数ある置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0204】
式(VII)中、n1及びn2は、それぞれ独立に、0以上の整数を表し、好ましくはそれぞれ独立に、0又は1を表し、より好ましくは、いずれも0又は1を表す。
【0205】
2価の炭素環基の例としては、2価の芳香族炭素環基が挙げられる。
2価の複素環基の例としては、2価の芳香族複素環基が挙げられる。
2価の芳香族炭素環基又は2価の芳香族複素環基が縮合環である場合、縮合環を構成する環の全部が芳香族性を有する縮合環であってもよく、一部のみが芳香族性を有する縮合環であってもよい。
【0206】
S1及びS2の例としては、既に説明したAr3で表される2価の芳香族複素環基の例として挙げられた式(101)~(190)のいずれかで表される基、及びこれらの基における水素原子が置換基で置換された基が挙げられる。
【0207】
S1及びS2は、好ましくは、それぞれ独立に、下記式(s-1)又は(s-2)で表される基を表す。
【0208】
【0209】
式(s-1)及び(s-2)中、
X3は、酸素原子又は硫黄原子を表す。
Ra10は、前記定義のとおりである。
【0210】
S1及びS2は、好ましくは、それぞれ独立に、式(142)、式(148)、若しくは式(184)で表される基、又はこれらの基における水素原子が置換基で置換された基であり、より好ましくは、前記式(142)若しくは式(184)で表される基、又は式(184)で表される基における1つの水素原子が、アルキルオキシ基で置換された基である。
【0211】
B11は、炭素環構造及び複素環構造からなる群から選択された2以上の構造の縮合環基であり、かつオルト-ペリ縮合構造を含まない縮合環基であり、かつ置換基を有していてもよい縮合環基を表す。
【0212】
B11で表される縮合環基は、互いに同一である2以上の構造を縮合した構造を含んでいてもよい。
【0213】
B11で表される縮合環基が複数の置換基を有する場合、複数ある置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0214】
B11で表される縮合環基を構成し得る炭素環構造の例としては、下記式(Cy1)又は式(Cy2)で表される環構造が挙げられる。
【0215】
【0216】
B11で表される縮合環基を構成し得る複素環構造の例としては、下記式(Cy3)~式(Cy10)のいずれかで表される環構造が挙げられる。
【0217】
【0218】
式(VII)中、B11は、好ましくは、前記式(Cy1)~式(Cy10)で表される構造からなる群から選択された2以上の構造の縮合環基であって、オルト-ペリ縮合構造を含まない縮合環基であり、かつ置換基を有していてもよい縮合環基である。B11は、式(Cy1)~式(Cy10)で表される構造のうち、2以上の同一の構造が縮合した構造を含んでいてもよい。
【0219】
B11は、より好ましくは、式(Cy1)~式(Cy6)及び式(Cy8)で表される構造からなる群から選択された2以上の構造の縮合環基であって、オルト-ペリ縮合構造を含まない縮合環基であり、かつ置換基を有していてもよい縮合環基である。
【0220】
B11である縮合環基が有していてもよい置換基は、好ましくは置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、及び置換基を有していてもよい1価の複素環基である。B11で表される縮合環基が有していてもよいアリール基は、例えば、アルキル基により置換されていてもよい。
【0221】
B11である縮合環基の例としては、下記式(b-1)~式(b-13)で表される基、及びこれらの基における水素原子が、置換基(好ましくは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、又は置換基を有していてもよい1価の複素環基)で置換された基が挙げられる。
B11である縮合環基としては、下記式(b-2)又は(b-3)で表される基、又はこれらの基における水素原子が、置換基(好ましくは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、又は置換基を有していてもよい1価の複素環基)で置換された基が好ましく、下記式(b-2)又は(b-3)で表される基がより好ましい。
【0222】
【0223】
【0224】
式(b-1)~式(b-13)中、
Ra10は、前記定義のとおりである。
式(b-1)~式(b-13)中、複数あるRa10は、それぞれ独立して、好ましくは置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基である。
【0225】
式(VI)又は式(VII)で表される化合物の例としては、下記式で表される化合物が挙げられる。
【0226】
【0227】
上記式中、Rは、前記定義のとおりであり、Xは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基又は置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
上記式中、Rは、好ましくは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいアルキルオキシ基である。
【0228】
本実施形態に係る活性層は、n型半導体として、上記非フラーレン化合物と、フラーレン及び/又はフラーレン誘導体(フラーレン化合物)とを組み合わせて含んでいてもよい。
【0229】
本実施形態に係る活性層に含まれうるn型半導体の好適な具体例としては、下記式で表される化合物が挙げられる。
【0230】
【0231】
(p型半導体のn型半導体に対する重量比(p/n比))
活性層中のp型半導体のn型半導体に対する重量比(p型半導体/n型半導体)は、好ましくは1/9以上であり、より好ましくは1/5以上であり、さらに好ましくは1/3以上であり、好ましくは9/1以下であり、より好ましくは5/1以下であり、さらに好ましくは3/1以下である。ここで、活性層が複数種のp型半導体を含んでいる場合、p型半導体の重量は、活性層に含まれる複数種のp型半導体の総重量である。また、活性層が複数種のn型半導体を含んでいる場合、n型半導体の重量は、活性層に含まれる複数種のn型半導体の総重量である。
【0232】
本実施形態において、活性層の厚さは、特に限定されない。活性層の厚さは、例えば、暗電流の抑制と生じた光電流の取り出しとのバランスを考慮して、任意好適な厚さとすることができる。活性層の厚さは、特に暗電流をより低減する観点から、好ましくは100nm以上であり、より好ましくは150nm以上であり、さらに好ましくは200nm以上である。また、活性層の厚さは、好ましくは10μm以下であり、より好ましくは5μm以下であり、さらに好ましくは1μm以下である。
【0233】
[3.5.電子輸送層]
図2に示されるように、本実施形態の光電変換素子は、第2の電極と活性層との間に、電子輸送層を備えていることが好ましい。電子輸送層は、活性層から第2の電極へと電子を輸送する機能を有する。電子輸送層は、第2の電極に接していてもよい。電子輸送層は活性層に接していてもよい。
別の実施形態では、光電変換素子は、電子輸送層を備えていなくてもよい。
【0234】
第2の電極に接して設けられる電子輸送層を、特に電子注入層という場合がある。第2の電極に接して設けられる電子輸送層(電子注入層)は、活性層で発生した電子の第2の電極への注入を促進する機能を有する。
【0235】
電子輸送層は、電子輸送性材料を含む。電子輸送性材料の例としては、ポリアルキレンイミン及びその誘導体、フルオレン構造を含む高分子化合物、カルシウムなどの金属、金属酸化物が挙げられる。
【0236】
ポリアルキレンイミン及びその誘導体の例としては、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン、ポリブチレンイミン、ポリジメチルエチレンイミン、ポリペンチレンイミン、ポリヘキシレンイミン、ポリヘプチレンイミン、ポリオクチレンイミンといった炭素原子数2~8のアルキレンイミン単位を有する重合体、特に炭素原子数2~4のアルキレンイミン単位を有する重合体、及びそれらの重合体を種々の化合物と反応させて化学的に変性させた重合体が挙げられる。ポリアルキレンイミン及びその誘導体としては、ポリエチレンイミン(PEI)及びエトキシ化ポリエチレンイミン(PEIE)が好ましい。
【0237】
フルオレン構造を含む高分子化合物の例としては、ポリ[(9,9-ビス(3’-(N,N-ジメチルアミノ)プロピル)-2,7-フルオレン)-オルト-2,7-(9,9’-ジオクチルフルオレン)](PFN)及びPFN-P2が挙げられる。
【0238】
金属酸化物の例としては、酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛、アルミニウムドープ酸化亜鉛、酸化チタン及び酸化ニオブが挙げられる。金属酸化物としては、亜鉛を含む金属酸化物が好ましく、中でも酸化亜鉛が好ましい。
【0239】
その他の電子輸送性材料の例としては、ポリ(4-ビニルフェノール)、ペリレンジイミドが挙げられる。
【0240】
[3.6.封止部材]
本実施形態の光電変換素子は、封止部材をさらに含み、かかる封止部材により封止された封止体とすることが好ましい。
封止部材は任意好適な従来公知の部材を用いることができる。封止部材の例としては、基板(封止基板)であるガラス基板とUV硬化性樹脂などの封止材(接着剤)との組合せが挙げられる。
【0241】
封止部材は、1層以上の層構造である封止層であってもよい。封止層を構成する層の例としては、ガスバリア層、ガスバリア性フィルムが挙げられる。
【0242】
封止層は、水分を遮断する性質(水蒸気バリア性)又は酸素を遮断する性質(酸素バリア性)を有する材料により形成することが好ましい。封止層の材料として好適な材料の例としては、三フッ化ポリエチレン、ポリ三フッ化塩化エチレン(PCTFE)、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、脂環式ポリオレフィン、エチレン-ビニルアルコール共重合体などの有機材料、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、ダイヤモンドライクカーボンなどの無機材料などが挙げられる。
【0243】
封止部材は、通常、光電変換素子が適用される、例えば後述する適用例のデバイスに組み込まれる際において実施され得る加熱処理に耐えうる材料により構成される。
【0244】
[4.変形例]
第一実施形態では、支持基板11に、第1の電極12が接するように光電変換素子10が設けられている。
別の実施形態では、支持基板11に、第2の電極16が接するように光電変換素子10が設けられていてもよい。すなわち、支持基板11、第2の電極16、電子輸送層15、活性層14、バッファ層13、及び第1の電極12が、この順に配置されていてもよい。
【0245】
[5.光電変換素子の製造方法]
本実施形態の光電変換素子は、従来公知の任意好適な製造方法により製造しうる。本実施形態の光電変換素子は、構成要素を形成するにあたり選択された材料に好適な工程を組み合わせて製造してよい。
【0246】
以下、本発明の実施形態として、基板(支持基板)、第1の電極、バッファ層(電子ブロック層)、活性層、電子輸送層、及び第2の電極がこの順に互いに接する構成を有する光電変換素子の製造方法を説明する。
【0247】
[5.1.基板を用意する工程]
本工程では、例えば第1の電極が設けられた支持基板を用意する。また、既に説明した電極の材料により形成された導電性の薄膜が設けられた基板を市場より入手し、必要に応じて、導電性の薄膜をパターニングして第1の電極を形成することにより、第1の電極が設けられた支持基板を用意することができる。
【0248】
本実施形態に係る光電変換素子の製造方法において、支持基板上に第1の電極を形成する場合の第1の電極の形成方法は特に限定されない。第1の電極は、既に説明した材料を、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、めっき法、塗布法などの従来公知の任意好適な方法によって、第1の電極を形成すべき構成(例、支持基板)上に形成することができる。
【0249】
[5.2.バッファ層(電子ブロック層)の形成工程]
本実施形態に係る光電変換素子の製造方法は、活性層と第1の電極との間に設けられる電子ブロック層としてのバッファ層を形成する工程を含む。
【0250】
バッファ層の形成方法は特に限定されない。例えば、バッファ層は、スパッタリング法(例、高周波(RF)スパッタリング法)、真空蒸着法、バッファ層を構成しうる材料と溶媒とを含む塗布液を用いる塗布法などにより形成することができる。塗布法の具体例としては、誘電体(D)の前駆体となる物質を含む塗布液を用意し、塗布法により塗膜を形成し、塗膜を焼成するなどして誘電体(D)を含むバッファ層を形成する方法が挙げられる。
【0251】
[5.3.活性層の形成工程]
本実施形態の光電変換素子の製造方法においては、電子ブロック層上に活性層が形成される。活性層は、任意好適な従来公知の形成工程により形成することができる。本実施形態において、活性層は、活性層に含まれうる成分を含む塗布液を電子ブロック層上に塗布する、塗布法により製造することができる。本実施形態では、p型半導体と、n型半導体と、溶媒とを含むインク組成物を、電子ブロック層上に塗布して塗膜を形成する工程、次いで、前記塗膜を乾燥させる工程を含む工程により、活性層を形成することができる。
【0252】
活性層を製造するためのインク組成物は、溶媒として、芳香族炭化水素を含みうる。当該芳香族炭化水素は置換基を有していてもよい。芳香族炭化水素としては、特に既に説明したp型半導体を溶解させることができる化合物であることが好ましい。
【0253】
溶媒として用いられうる芳香族炭化水素としては、例えば、トルエン、キシレン(例、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン)、トリメチルベンゼン(例、メシチレン、1,2,4-トリメチルベンゼン(プソイドクメン))、ブチルベンゼン(例、n-ブチルベンゼン、sec-ブチルベンゼン、tert-ブチルベンゼン)、メチルナフタレン(例、1-メチルナフタレン)、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン(テトラリン)、インダン、1-クロロナフタレン、クロロベンゼン及びジクロロベンゼン(例、1,2-ジクロロベンゼン)が挙げられる。
【0254】
溶媒は、1種のみの芳香族炭化水素から構成されていても、2種以上の芳香族炭化水素から構成されていてもよい。
【0255】
活性層を製造するためのインク組成物は、溶媒として、ハロゲン化アルキルを含みうる。溶媒として用いられうるハロゲン化アルキルとしては、例えば、クロロホルムが挙げられる。
【0256】
活性層を製造するためのインク組成物においては、上記の溶媒(第1溶媒)に加えて、特にn型半導体材料の溶解性を高める観点から選択されるさらなる溶媒(第2溶媒)を組み合わせて用いてもよい。
【0257】
さらなる溶媒の例としては、芳香族カルボニル化合物、芳香族エステル化合物及び含窒素複素環式化合物が挙げられる。
【0258】
(インク組成物における溶媒の重量百分率)
インク組成物に含まれる溶媒の総重量は、インク組成物の全重量を100重量%としたときに、p型半導体及びn型半導体の溶解性をより向上させる観点から、好ましくは90重量%以上であり、より好ましくは92重量%以上であり、さらに好ましくは95重量%以上であり、インク組成物中のp型半導体及びn型半導体の濃度をより高くして一定の厚さ以上の層を形成し易くする観点から、好ましくは99.9重量%以下である。
【0259】
インク組成物中、p型半導体及びn型半導体は溶解していても分散していてもよい。インク組成物中、p型半導体及びn型半導体は、少なくとも一部が溶解していることが好ましく、全部が溶解していることがより好ましい。
【0260】
インク組成物を塗布対象に塗布する方法としては、従来公知の任意の塗布法を用いることができる。本実施形態において、塗布法としては、スリットコート法、ナイフコート法、スピンコート法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、インクジェットコート法、ノズルコート法、又はキャピラリーコート法が好ましく、スリットコート法、スピンコート法、キャピラリーコート法、又はバーコート法がより好ましく、スリットコート法又はスピンコート法がさらに好ましい。
【0261】
インク組成物の塗膜から、溶媒を除去する方法としては、任意好適な方法を用いることができる。溶媒を除去する方法の例としては、熱風乾燥法、赤外線加熱乾燥法、フラッシュランプアニール乾燥法、減圧乾燥法などの乾燥法が挙げられる。
【0262】
[5.4.電子輸送層の形成工程]
本実施形態の光電変換素子の製造方法は、活性層に接するように設けられた電子輸送層(電子注入層)を形成する工程を含みうる。
【0263】
電子輸送層の形成方法は特に限定されない。電子輸送層の形成工程をより簡便にする観点からは、従来公知の任意好適な塗布法によって電子輸送層を形成することが好ましい。電子輸送層は、例えば、既に説明した電子輸送層を構成しうる材料と溶媒とを含む塗布液を用いる塗布法や真空蒸着法により形成することができる。
【0264】
[5.5.第2の電極の形成工程]
第2の電極の形成方法は特に限定されない。第2の電極は、例えば、上記例示の電極の材料を、塗布法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、めっき法など従来公知の任意好適な方法によって形成することができる。以上の工程により、本実施形態の光電変換素子が製造される。
【0265】
[5.6.封止体の形成工程]
封止体の形成にあたり、本実施形態では、従来公知の任意好適な封止材(接着剤)及び基板(封止基板)を用いる。具体的には、製造された光電変換素子の周辺を囲むように、支持基板上に、例えばUV硬化性樹脂などの封止材を塗布し、次いで、封止材により隙間なく貼り合わせ、次いで、選択された封止材に好適な、UV光の照射などの方法を用いて支持基板と封止基板との間隙に光電変換素子を封止することにより、光電変換素子の封止体を得ることができる。
【0266】
[6.光電変換素子の用途]
本実施形態の光電変換素子の用途の例としては、光検出素子、太陽電池が挙げられる。
より具体的には、本実施形態の光電変換素子は、電極間に電圧(逆バイアス電圧)を印加した状態で、透明又は半透明の電極側から光を照射することにより、光電流を流すことができ、光検出素子(光センサー)として動作させることができる。また、光検出素子を複数集積することによりイメージセンサーとして用いることもできる。本実施形態の光電変換素子は、特に光検出素子として好適に用いることができる。
【0267】
また、本実施形態の光電変換素子は、光が照射されることにより、電極間に光起電力を発生させることができ、太陽電池として動作させることができる。光電変換素子を複数集積することにより太陽電池モジュールとすることもできる。
【0268】
[7.光電変換素子の適用例]
本実施形態に係る光電変換素子は、光検出素子として、ワークステーション、パーソナルコンピュータ、携帯情報端末、入退室管理システム、デジタルカメラ、及び医療機器などの種々の電子装置が備える検出部に好適に適用することができる。
【0269】
本実施形態の光電変換素子は、上記例示の電子装置が備える、例えば、X線撮像装置及びCMOSイメージセンサーなどの固体撮像装置用のイメージ検出部(例えば、X線センサーなどのイメージセンサー)、指紋検出部、顔検出部、静脈検出部及び虹彩検出部などの生体の一部分の所定の特徴を検出する生体情報認証装置の検出部(例えば、近赤外線センサー)、パルスオキシメータなどの光学バイオセンサーの検出部などに好適に適用することができる。
【0270】
本実施形態の光電変換素子は、固体撮像装置用のイメージ検出部として、さらにはTime-of-flight(TOF)型距離測定装置(TOF型測距装置)に好適に適用することもできる。
【0271】
TOF型測距装置では、光源からの放射光が測定対象物において反射された反射光を光電変換素子で受光させることにより距離を測定する。具体的には、光源から放射された照射光が測定対象物で反射して反射光として戻るまでの飛行時間を検出して測定対象物までの距離を求める。TOF型には、直接TOF方式と間接TOF方式とが存在する。直接TOF方式では光源から光を照射した時刻と反射光を光電変換素子で受光した時刻との差を直接計測し、間接TOF方式では飛行時間に依存した電荷蓄積量の変化を時間変化に換算することで距離を計測する。間接TOF方式で用いられる電荷蓄積により飛行時間を得る測距原理には、光源からの放射光と測定対象で反射される反射光との位相から飛行時間を求める連続波(特に正弦波)変調方式とパルス変調方式とがある。
【0272】
以下、本実施形態に係る光電変換素子が好適に適用され得る検出部のうち、固体撮像装置用のイメージ検出部及びX線撮像装置用のイメージ検出部、生体認証装置(例えば指紋認証装置や静脈認証装置など)のための指紋検出部及び静脈検出部、並びにTOF型測距装置(間接TOF方式)のイメージ検出部の構成例について、図面を参照して説明する。
【0273】
(固体撮像装置用のイメージ検出部)
図5は、固体撮像装置用のイメージ検出部の構成例を模式的に示す図である。
【0274】
イメージ検出部1は、CMOSトランジスタ基板20と、CMOSトランジスタ基板20を覆うように設けられている層間絶縁膜30と、層間絶縁膜30上に設けられている、本発明の実施形態に係る光電変換素子10と、層間絶縁膜30を貫通するように設けられており、CMOSトランジスタ基板20と光電変換素子10とを電気的に接続する層間配線部32と、光電変換素子10を覆うように設けられている封止層40と、封止層40上に設けられているカラーフィルター50とを備えている。
【0275】
CMOSトランジスタ基板20は、従来公知の任意好適な構成を設計に応じた態様で備えている。
【0276】
CMOSトランジスタ基板20は、基板の厚さ内に形成されたトランジスタ、コンデンサなどを含み、種々の機能を実現するためのCMOSトランジスタ回路(MOSトランジスタ回路)などの機能素子を備えている。
【0277】
機能素子としては、例えば、フローティングディフュージョン、リセットトランジスタ、出力トランジスタ、選択トランジスタが挙げられる。
【0278】
このような機能素子、配線などにより、CMOSトランジスタ基板20には、信号読み出し回路などが作り込まれている。
【0279】
層間絶縁膜30は、例えば酸化シリコン、絶縁性樹脂などの従来公知の任意好適な絶縁性材料により構成することができる。層間配線部32は、例えば、銅、タングステンなどの従来公知の任意好適な導電性材料(配線材料)により構成することができる。層間配線部32は、例えば、配線層の形成と同時に形成されるホール内配線であっても、配線層とは別途形成される埋込みプラグであってもよい。
【0280】
封止層40は、光電変換素子10を機能的に劣化させてしまうおそれのある酸素、水などの有害物質の浸透を防止又は抑制できることを条件として、従来公知の任意好適な材料により構成することができる。封止層40は、既に説明した封止部材17と同様の構成とすることができる。
【0281】
カラーフィルター50としては、従来公知の任意好適な材料により構成され、かつイメージ検出部1の設計に対応した例えば原色カラーフィルターを用いることができる。また、カラーフィルター50としては、原色カラーフィルターと比較して、厚さを薄くすることができる補色カラーフィルターを用いることもできる。補色カラーフィルターとしては、例えば(イエロー、シアン、マゼンタ)の3種類、(イエロー、シアン、透明)の3種類、(イエロー、透明、マゼンタ)の3種類、及び(透明、シアン、マゼンタ)の3種類が組み合わされたカラーフィルターを用いることができる。これらは、カラー画像データを生成できることを条件として、光電変換素子10及びCMOSトランジスタ基板20の設計に対応した任意好適な配置とすることができる。
【0282】
カラーフィルター50を介して光電変換素子10が受光した光は、光電変換素子10によって、受光量に応じた電気信号に変換され、電極を介して、光電変換素子10外に受光信号、すなわち撮像対象に対応する電気信号として出力される。
【0283】
次いで、光電変換素子10から出力された受光信号は、層間配線部32を介して、CMOSトランジスタ基板20に入力され、CMOSトランジスタ基板20に作り込まれた信号読み出し回路により読み出され、図示しないさらなる任意好適な従来公知の機能部によって信号処理されることにより、撮像対象に基づく画像情報が生成される。
【0284】
(指紋検出部)
図6は、表示装置に一体的に構成される指紋検出部の構成例を模式的に示す図である。
【0285】
携帯情報端末の表示装置2は、本発明の実施形態に係る光電変換素子10を主たる構成要素として含む指紋検出部100と、当該指紋検出部100上に設けられ、所定の画像を表示する表示パネル部200とを備えている。
【0286】
この構成例では、表示パネル部200の表示領域200aと一致する領域に指紋検出部100が設けられている。換言すると、指紋検出部100の上方に、表示パネル部200が一体的に積層されている。
【0287】
表示領域200aのうちの一部の領域においてのみ指紋検出を行う場合には、当該一部の領域のみに対応させて指紋検出部100を設ければよい。
【0288】
指紋検出部100は、本発明の実施形態に係る光電変換素子10を本質的な機能を奏する機能部として含む。指紋検出部100は、図示されていない保護フィルム(protection film)、支持基板、封止基板、封止部材、バリアフィルム、バンドパスフィルター、赤外線カットフィルムなどの任意好適な従来公知の部材を所望の特性が得られるような設計に対応した態様で備え得る。指紋検出部100には、既に説明したイメージ検出部の構成を採用することもできる。
【0289】
光電変換素子10は、表示領域200a内において、任意の態様で含まれ得る。例えば、複数の光電変換素子10が、マトリクス状に配置されていてもよい。
【0290】
光電変換素子10は、既に説明したとおり、支持基板11に設けられており、支持基板11には、例えばマトリクス状に電極(第一の電極又は第二の電極)が設けられている。
【0291】
光電変換素子10が受光した光は、光電変換素子10によって、受光量に応じた電気信号に変換され、電極を介して、光電変換素子10外に受光信号、すなわち撮像された指紋に対応する電気信号として出力される。
【0292】
表示パネル部200は、この構成例では、タッチセンサーパネルを含む有機エレクトロルミネッセンス表示パネル(有機EL表示パネル)として構成されている。表示パネル部200は、例えば有機EL表示パネルの代わりに、バックライトなどの光源を含む液晶表示パネルなどの任意好適な従来公知の構成を有する表示パネルにより構成されていてもよい。
【0293】
表示パネル部200は、既に説明した指紋検出部100上に設けられている。表示パネル部200は、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)220を本質的な機能を奏する機能部として含む。表示パネル部200は、さらに任意好適な従来公知のガラス基板といった基板(支持基板210又は封止基板240)、封止部材、バリアフィルム、円偏光板などの偏光板、タッチセンサーパネル230などの任意好適な従来公知の部材を所望の特性に対応した態様で備え得る。
【0294】
以上説明した構成例において、有機EL素子220は、表示領域200aにおける画素の光源として用いられるとともに、指紋検出部100における指紋の撮像のための光源としても用いられる。
【0295】
ここで、指紋検出部100の動作について簡単に説明する。
指紋認証の実行時には、表示パネル部200の有機EL素子220から放射される光を用いて指紋検出部100が指紋を検出する。具体的には、有機EL素子220から放射された光は、有機EL素子220と指紋検出部100の光電変換素子10との間に存在する構成要素を透過して、表示領域200a内である表示パネル部200の表面に接するように載置された手指の指先の皮膚(指表面)によって反射される。指表面によって反射された光のうちの少なくとも一部は、間に存在する構成要素を透過して光電変換素子10によって受光され、光電変換素子10の受光量に応じた電気信号に変換される。そして、変換された電気信号から、指表面の指紋についての画像情報が構成される。
【0296】
表示装置2を備える携帯情報端末は、従来公知の任意好適なステップにより、得られた画像情報と、予め記録されていた指紋認証用の指紋データとを比較して、指紋認証を行う。
【0297】
(X線撮像装置用のイメージ検出部)
図7は、X線撮像装置用のイメージ検出部の構成例を模式的に示す図である。
【0298】
X線撮像装置用のイメージ検出部1は、CMOSトランジスタ基板20と、CMOSトランジスタ基板20を覆うように設けられている層間絶縁膜30と、層間絶縁膜30上に設けられている、本発明の実施形態に係る光電変換素子10と、層間絶縁膜30を貫通するように設けられており、CMOSトランジスタ基板20と光電変換素子10とを電気的に接続する層間配線部32と、光電変換素子10を覆うように設けられている封止層40と、封止層40上に設けられているシンチレータ42とシンチレータ42を覆うように設けられている反射層44と、反射層44を覆うように設けられている保護層46とを備えている。
【0299】
CMOSトランジスタ基板20は、従来公知の任意好適な構成を設計に応じた態様で備えている。
【0300】
CMOSトランジスタ基板20は、基板の厚さ内に形成されたトランジスタ、コンデンサなどを含み、種々の機能を実現するためのCMOSトランジスタ回路(MOSトランジスタ回路)などの機能素子を備えている。
【0301】
機能素子としては、例えば、フローティングディフュージョン、リセットトランジスタ、出力トランジスタ、選択トランジスタが挙げられる。
【0302】
このような機能素子、配線などにより、CMOSトランジスタ基板20には、信号読み出し回路などが作り込まれている。
【0303】
層間絶縁膜30は、例えば酸化シリコン、絶縁性樹脂などの従来公知の任意好適な絶縁性材料により構成することができる。層間配線部32は、例えば、銅、タングステンなどの従来公知の任意好適な導電性材料(配線材料)により構成することができる。層間配線部32は、例えば、配線層の形成と同時に形成されるホール内配線であっても、配線層とは別途形成される埋込みプラグであってもよい。
【0304】
封止層40は、光電変換素子10を機能的に劣化させてしまうおそれのある酸素、水などの有害物質の浸透を防止又は抑制できることを条件として、従来公知の任意好適な材料により構成することができる。封止層40は、既に説明した封止部材17と同様の構成とすることができる。
【0305】
シンチレータ42は、X線撮像装置用のイメージ検出部1の設計に対応した従来公知の任意好適な材料により構成することができる。シンチレータ42の好適な材料の例としては、CsI(ヨウ化セシウム)やNaI(ヨウ化ナトリウム)、ZnS(硫化亜鉛)、GOS(酸硫化ガドリニウム)、GSO(ケイ酸ガドリニウム)といった無機材料の無機結晶や、アントラセン、ナフタレン、スチルベンといった有機材料の有機結晶や、トルエン、キシレン、ジオキサンといった有機溶媒にジフェニルオキサゾール(PPO)やテルフェニル(TP)などの有機材料を溶解させた有機液体、キセノンやヘリウムといった気体、プラスチックなどを用いることができる。
【0306】
上記の構成要素は、シンチレータ42が入射したX線を可視領域を中心とした波長を有する光に変換して画像データを生成できることを条件として、光電変換素子10及びCMOSトランジスタ基板20の設計に対応した任意好適な配置とすることができる。
【0307】
反射層44は、シンチレータ42で変換された光を反射する。反射層44は、変換された光の損失を低減し、検出感度を増大させることができる。また、反射層44は、外部から直接的に入射する光を遮断することもできる。
【0308】
保護層46は、シンチレータ42を機能的に劣化させてしまうおそれのある酸素、水などの有害物質の浸透を防止又は抑制できることを条件として、従来公知の任意好適な材料により構成することができる。
【0309】
ここで、上記の構成を有するX線撮像装置用のイメージ検出部1の動作について簡単に説明する。
【0310】
X線やγ線といった放射線エネルギーがシンチレータ42に入射すると、シンチレータ42は放射線エネルギーを吸収し、可視領域を中心とした紫外から赤外領域の波長の光(蛍光)に変換する。そして、シンチレータ42によって変換された光は、光電変換素子10によって受光される。
【0311】
このように、シンチレータ42を介して光電変換素子10が受光した光は、光電変換素子10によって、受光量に応じた電気信号に変換され、電極を介して、光電変換素子10外に受光信号、すなわち撮像対象に対応する電気信号として出力される。検出対象である放射線エネルギー(X線)は、シンチレータ42側、光電変換素子10側のいずれから入射させてもよい。
【0312】
次いで、光電変換素子10から出力された受光信号は、層間配線部32を介して、CMOSトランジスタ基板20に入力され、CMOSトランジスタ基板20に作り込まれた信号読み出し回路により読み出され、図示しないさらなる任意好適な従来公知の機能部によって信号処理されることにより、撮像対象に基づく画像情報が生成される。
【0313】
(静脈検出部)
図8は、静脈認証装置用の静脈検出部の構成例を模式的に示す図である。
静脈認証装置用の静脈検出部300は、測定時において測定対象である手指(例、1以上の手指の指先、手指及び掌)が挿入される挿入部310を画成するカバー部306と、カバー部306に設けられており、測定対象に光を照射する光源部304と、光源部304から照射された光を測定対象を介して受光する光電変換素子10と、光電変換素子10を支持する支持基板11と、支持基板11と光電変換素子10を挟んで対向するように配置されており、所定の距離でカバー部306から離間して、カバー部306とともに挿入部310を画成するガラス基板302から構成されている。
【0314】
この構成例では、光源部304は、光電変換素子10とは、使用時において測定対象を挟んで離間するように、カバー部306と一体的に構成されている透過型撮影方式を示しているが、光源部304は必ずしもカバー部306側に位置させる必要はない。
【0315】
光源部304からの光を、測定対象に効率的に照射できることを条件として、例えば、光電変換素子10側から測定対象を照射する反射型撮影方式としてもよい。
【0316】
静脈検出部300は、本発明の実施形態に係る光電変換素子10を本質的な機能を奏する機能部として含む。静脈検出部300は、図示されていない保護フィルム(protection film)、封止部材、バリアフィルム、バンドパスフィルター、近赤外線透過フィルター、可視光カットフィルム、指置きガイドなどの任意好適な従来公知の部材を所望の特性が得られるような設計に対応した態様で備え得る。静脈検出部300には、既に説明したイメージ検出部1の構成を採用することもできる。
【0317】
光電変換素子10は、任意の態様で含まれ得る。例えば、複数の光電変換素子10が、マトリクス状に配置されていてもよい。
【0318】
光電変換素子10は、既に説明したとおり、支持基板11に設けられており、支持基板11には、例えばマトリクス状に電極(第一の電極又は第二の電極)が設けられている。
【0319】
光電変換素子10が受光した光は、光電変換素子10によって、受光量に応じた電気信号に変換され、電極を介して、光電変換素子10外に受光信号、すなわち撮像された静脈に対応する電気信号として出力される。
【0320】
静脈検出時(使用時)において、測定対象は、光電変換素子10側のガラス基板302に接触していても、接触していなくてもよい。
【0321】
ここで、静脈検出部300の動作について簡単に説明する。
静脈検出時には、光源部304から放射される光を用いて静脈検出部300が測定対象の静脈パターンを検出する。具体的には、光源部304から放射された光は、測定対象を透過して光電変換素子10の受光量に応じた電気信号に変換される。そして、変換された電気信号から、測定対象の静脈パターンの画像情報が構成される。
【0322】
静脈認証装置では、従来公知の任意好適なステップにより、得られた画像情報と、予め記録されていた静脈認証用の静脈データとを比較して、静脈認証が行われる。
【0323】
(TOF型測距装置用イメージ検出部)
図9は、間接方式のTOF型測距装置用イメージ検出部の構成例を模式的に示す図である。
【0324】
TOF型測距装置用イメージ検出部400は、CMOSトランジスタ基板20と、CMOSトランジスタ基板20を覆うように設けられている層間絶縁膜30と、層間絶縁膜30上に設けられている、本発明の実施形態に係る光電変換素子10と、光電変換素子10を挟むように離間して配置されている2つの浮遊拡散層402と、光電変換素子10と浮遊拡散層402を覆うように設けられている絶縁層401と、絶縁層401上に設けられており、互いに離間して配置されている2つのフォトゲート404とを備えている。
【0325】
離間した2つのフォトゲート404の間隙からは絶縁層401の一部分が露出しており、残余の領域は遮光部406により遮光されている。CMOSトランジスタ基板20と浮遊拡散層402とは層間絶縁膜30を貫通するように設けられている層間配線部32によって電気的に接続されている。
【0326】
層間絶縁膜30は、例えば酸化シリコン、絶縁性樹脂などの従来公知の任意好適な絶縁性材料により構成することができる。層間配線部32は、例えば、銅、タングステンなどの従来公知の任意好適な導電性材料(配線材料)により構成することができる。層間配線部32は、例えば、配線層の形成と同時に形成されるホール内配線であっても、配線層とは別途形成される埋込みプラグであってもよい。
【0327】
絶縁層401は、この構成例では、酸化シリコンにより構成されるフィールド酸化膜などの従来公知の任意好適な構成とすることができる。
【0328】
フォトゲート404は、例えばポリシリコンなどの従来公知の任意好適な材料により構成することができる。
【0329】
TOF型測距装置用イメージ検出部400は、本発明の実施形態に係る光電変換素子10を本質的な機能を奏する機能部として含む。TOF型測距装置用イメージ検出部400は、図示されていない保護フィルム(protection film)、支持基板、封止基板、封止部材、バリアフィルム、バンドパスフィルター、赤外線カットフィルムなどの任意好適な従来公知の部材を所望の特性が得られるような設計に対応した態様で備え得る。
【0330】
ここで、TOF型測距装置用イメージ検出部400の動作について簡単に説明する。
【0331】
光源から光が照射され、光源からの光が測定対象より反射され、反射光を光電変換素子10で受光する。光電変換素子10と浮遊拡散層402との間には2つのフォトゲート404が設けられており、交互にパルスを加えることによって、光電変換素子10によって発生した信号電荷を2つの浮遊拡散層402のいずれかに転送し、浮遊拡散層402に電荷が蓄積される。2つのフォトゲート404を開くタイミングに対して、光パルスが等分にまたがるように到来すると、2つの浮遊拡散層402に蓄積される電荷量は等量になる。一方のフォトゲート404に光パルスが到達するタイミングに対して、他方のフォトゲート404に光パルスが遅れて到来すると、2つの浮遊拡散層402に蓄積される電荷量に差が生じる。
【0332】
浮遊拡散層402に蓄積された電荷量の差は、光パルスの遅延時間に依存する。測定対象までの距離Lは、光の往復時間tdと光の速度cを用いてL=(1/2)ctdの関係にあるので、遅延時間が2つの浮遊拡散層402の電荷量の差から推定できれば、測定対象までの距離を求めることができる。
【0333】
光電変換素子10が受光した光の受光量は、2つの浮遊拡散層402に蓄積される電荷量の差として電気信号に変換され、光電変換素子10外に受光信号、すなわち測定対象に対応する電気信号として出力される。
【0334】
次いで、浮遊拡散層402から出力された受光信号は、層間配線部32を介して、CMOSトランジスタ基板20に入力され、CMOSトランジスタ基板20に作り込まれた信号読み出し回路により読み出され、図示しないさらなる任意好適な従来公知の機能部によって信号処理されることにより、測定対象に基づく距離情報が生成される。
【0335】
[8.光検出素子]
前記のとおり、本実施形態の光電変換素子は、照射された光を、受光量に応じた電気信号に変換し、電極を介して外部回路に出力しうる光検出機能を有しうる。よって、本発明の実施形態に係る光電変換素子は、光検出機能を有する光検出素子として特に好適に適用されうる。ここで、本実施形態の光検出素子は、光電変換素子そのものであってもよく、光電変換素子に加えて、電圧制御のためなどの機能素子をさらに含んでいてもよい。
【実施例0336】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示す。本発明は下記の実施例に限定されない。
【0337】
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り、重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温(20℃±15℃)及び常圧(1atm)の条件において行った。
【0338】
[各例で用いられた化合物]
[p型半導体]
各実施例、比較例で用いられたp型半導体材料を以下に示す。
【0339】
【0340】
【0341】
p型半導体材料である高分子化合物P-1は、国際公開第2013/051676号に
記載の方法を参考にして合成し、使用した。
p型半導体材料である高分子化合物P-2は、国際公開第2011/052709号に記載の方法を参考にして合成し、使用した。
p型半導体材料である高分子化合物P-3は、特表2007/529596号公報に記載の方法を参考にして合成し、使用した。
p型半導体材料である高分子化合物P-4は、P3HT(商品名、1-material社製)を市場より入手して使用した。
p型半導体材料である高分子化合物P-5は、PTB7(商品名、1-material社製)を市場より入手して使用した。
【0342】
n型半導体材料である化合物N-1は、商品名「Guard Surf NC-1010」(ハーベス社製)を市場より入手して使用した。
【0343】
【0344】
n型半導体材料である化合物N-2は、「C60PCBM(phenyl C61-butyric acid methyl ester)」(Nano-C社製)を市場より入手して使用した。
【0345】
[p型半導体材料のLUMOエネルギーレベルの算出方法]
化合物P-1~P-5のLUMOのエネルギーレベル(eV)は、紫外線光電子分光法(UPS法)により測定された値に基づいて算出した。以下、算出方法について具体的に説明する。
【0346】
(1)サンプル調製
まず、化合物P-1~P-5それぞれについて、オルトジクロロベンゼンに溶解させた溶液を得た。次に、得られた溶液それぞれを、ガラス基板上にスピンコート法により塗布して、塗膜を形成し、70℃のホットプレートで乾燥して、厚さ100nmの層を形成してサンプルとした。
【0347】
(2)UPS法によるHOMOのエネルギーレベルの測定
得られたサンプルそれぞれについて、大気中、光電子分光装置(理研計器株式会社製、モデルAC-2)を用いるUPS法により測定された電子数に基づいて、(高分子)化合物P-1~P-5それぞれのHOMOのエネルギーレベルを算出した。
ここで、UPS法とは、固体表面に照射される紫外線のエネルギーに対し放出される光電子数を測定する方法である。光電子が発生する最小エネルギーから、サンプルが金属である場合には仕事関数を、半導体材料である場合には、HOMOのエネルギーレベルを見積もることができる。
【0348】
(高分子)化合物P-1~P-5それぞれのLUMOのエネルギーレベルは、下記式により算出することができる。
式:LUMOのエネルギーレベル=バンドギャップ(Eg)+HOMOのエネルギーレベル
【0349】
ここで、バンドギャップ(Eg)は、p型半導体材料の吸収端波長に基づいて下記式により算出することができる。
式:バンドギャップ(Eg)=hc/吸収端波長
式中、hはプランク定数を表し(h=6.626×10-34Js)、cは光速を表す
(c=3×108m/s)。
【0350】
吸収端波長の測定には、紫外光、可視光、近赤外光の波長領域において測定が可能である分光光度計(例えば、紫外可視近赤外分光光度計JASCO-V670、日本分光社製)を用いた。
【0351】
分光光度計により得られた吸収スペクトル、すなわち、縦軸を(高分子)化合物の吸光度(吸収強度)とし、横軸を波長としてプロットすることにより示された吸収スペクトルにおいて、ベースラインと吸収ピークの肩(高波長側)でフィッティングした直線との交点における波長の値を吸収端波長(nm)とした。
【0352】
[電子ブロック層中の化合物のEc、Eg、比誘電率]
電子ブロック層を形成するために用いた化合物(誘電体(D))の、バンドギャップEg及び伝導帯の下端のエネルギーレベルEcとして、文献(1)(前記文献(D))及び文献(2)に記載の値を用いた。
文献(1):Phys.ReV.B.2008,78,085114(HfO2、ZrO2に関する。UPS法及びIPS法を組み合わせた方法による。)
文献(2): Adv.Mat.2014,26,5670-5677(WO3に関する。UPS法による。)
また、電子ブロック層を形成するために用いた化合物(誘電体(D))の比誘電率として、文献(3)(前記文献(A))、文献(4)及び文献(5)(前記文献(B))に記載の値を用いた。
文献(3):Thin Solid Films.1977,41,247-259(HfO2に関する。)
文献(4):Physica B.2012,407,4453-4457(WO3に関する。)
文献(5):J.App.Phys.1985,58,2407(ZrO2に関する。)
各値を表1に示す。
【0353】
【0354】
<実施例1>光電変換素子の製造および評価
(光電変換素子の製造)
スパッタリング法により、ガラス基板上に第1の電極としてのITO薄膜を45nmの厚さで形成させた。このガラス基板の表面に対し、オゾンUV処理を行った。
【0355】
次に、酸化ハフニウム(高純度化学研究所社製)を、バッファ層である電子ブロック層として、RFスパッタリング法により、オゾンUV処理を行ったガラス基板のITO薄膜上に成膜した。成膜条件から算出されたバッファ層の厚みは、5nm~10nmの範囲内であった。
【0356】
次に、p型半導体として高分子化合物P-1とn型半導体として化合物N-1とを重量比1:1.5で混合して、第1溶媒であるテトラリンと第2溶媒である安息香酸ブチルとの混合溶媒1(テトラリン:安息香酸ブチル=97:3(重量比))に加え、60℃で8時間撹拌して、活性層形成用塗布液1を調製した。
調製された活性層形成用塗布液1を、ガラス基板の電子ブロック層上にスピンコート法により塗布して、塗膜を形成した。形成した塗膜を、70℃に加熱したホットプレートを用いて、5分間乾燥させて、活性層(a)を形成した。形成された活性層(a)の厚さは250nmであった。
【0357】
次に、酸化亜鉛/3-ペンタノール分散液(テイカ社製、HTD-711Z)を電子輸送層形成用塗布液としてスピンコート法により、活性層(a)上に塗布した。
【0358】
次に、抵抗加熱蒸着装置内にて、形成された電子輸送層上に、第2の電極として銀(Ag)層を約60nmの厚さで形成することで、光電変換素子(光検出素子)を製造した。
【0359】
次に、紫外線(UV)硬化性封止剤を、製造された光電変換素子の周辺であるガラス基板上に塗布し、封止基板であるガラス基板を貼り合わせた後、UV光を照射することで光電変換素子を封止した。得られた光電変換素子の厚さ方向から見たときの平面的な形状は2mm×2mmの正方形であった。
光電変換素子の製造に用いた化合物を表2に示す。
【0360】
(光電変換素子の熱処理前における暗電流の評価)
製造された光電変換素子について、暗所においてJV測定を行い、-5Vにおける暗電流(Jd)を求めた。JV測定にはソースメータ―(2450型、ケースレー社製)を用いて測定した。Jdの測定結果を表3に示す。
【0361】
(光電変換素子の熱処理後における暗電流の評価)
製造された光電変換素子について、ホットプレート上で180℃、10分間の熱処理を施した。その後、前記と同様に-5Vにおける暗電流(Jd)を測定した。結果を表3に示す。
【0362】
<実施例2>
下記の事項を変更した以外は、前記実施例1と同様に操作して光電変換素子を製造した。
・p型半導体を化合物P-2に変更した。
・n型半導体を化合物N-2に変更した。
・混合溶媒1をo-ジクロロベンゼンに変更した。
得られた光電変換素子を、実施例1と同様に評価した。光電変換素子の製造に用いた化合物を表2に示す。評価結果を表3に示す。
【0363】
<実施例3>
下記の事項を変更した以外は、前記実施例1と同様に操作して光電変換素子を製造した。
・酸化ハフニウムの代わりに酸化ジルコニウム(ZrO2)を用いて電子ブロック層を形成した。
得られた光電変換素子を、実施例1と同様に評価した。光電変換素子の製造に用いた化合物を表2に示す。評価結果を表3に示す。
【0364】
<実施例4>
下記の事項を変更した以外は、前記実施例2と同様に操作して光電変換素子を製造した。
・酸化ハフニウムの代わりに酸化ジルコニウム(ZrO2)を用いて電子ブロック層を形成した。
得られた光電変換素子を、実施例1と同様に評価した。光電変換素子の製造に用いた化合物を表2に示す。評価結果を表3に示す。
【0365】
<比較例1>
下記の事項を変更した以外は、前記実施例1と同様に操作して光電変換素子を製造した。
・電子ブロック層を形成せず、オゾンUV処理を行ったガラス基板のITO薄膜上に活性層(a)を形成した。
得られた光電変換素子を、実施例1と同様に評価した。光電変換素子の製造に用いた化合物を表2に示す。評価結果を表3に示す。
【0366】
<比較例2>
下記の事項を変更した以外は、前記実施例2と同様に操作して光電変換素子を製造した。
・電子ブロック層を形成せず、オゾンUV処理を行ったガラス基板のITO薄膜上に活性層(a)を形成した。
得られた光電変換素子を、実施例1と同様に評価した。光電変換素子の製造に用いた化合物を表2に示す。評価結果を表3に示す。
【0367】
<比較例3>
下記の事項を変更した以外は、前記実施例1と同様に操作して光電変換素子を製造した。
・電子ブロック層として酸化タングステン薄膜(ジオマテック社にて成膜)を形成した。 得られた光電変換素子を、実施例1と同様に評価した。光電変換素子の製造に用いた化合物を表2に示す。評価結果を表3に示す。
【0368】
<比較例4>
下記の事項を変更した以外は、前記実施例2と同様に操作して光電変換素子を製造した。
・p型半導体を化合物P-3に変更した。
得られた光電変換素子を、実施例1と同様に評価した。光電変換素子の製造に用いた化合物を表2に示す。評価結果を表3に示す。
【0369】
<比較例5>
下記の事項を変更した以外は、前記実施例1と同様に操作して光電変換素子を製造した。
・p型半導体を化合物P-4に変更した。
・混合溶媒1をo-ジクロロベンゼンに変更した。
得られた光電変換素子を、実施例1と同様に評価した。光電変換素子の製造に用いた化合物を表2に示す。評価結果を表3に示す。
【0370】
<比較例6>
下記の事項を変更した以外は、前記実施例2と同様に操作して光電変換素子を製造した。
・p型半導体を化合物P-5に変更した。
得られた光電変換素子を、実施例1と同様に評価した。光電変換素子の製造に用いた化合物を表2に示す。評価結果を表3に示す。
【0371】
<比較例7>
下記の事項を変更した以外は、前記比較例4と同様に操作して光電変換素子を製造した。
・酸化ハフニウムの代わりに酸化ジルコニウム(ZrO2)を用いて電子ブロック層を形成した。
得られた光電変換素子を、実施例1と同様に評価した。光電変換素子の製造に用いた化合物を表2に示す。評価結果を表3に示す。
【0372】
<比較例8>
下記の事項を変更した以外は、前記比較例5と同様に操作して光電変換素子を製造した。
・酸化ハフニウムの代わりに酸化ジルコニウム(ZrO2)を用いて電子ブロック層を形成した。
得られた光電変換素子を、実施例1と同様に評価した。光電変換素子の製造に用いた化合物を表2に示す。評価結果を表3に示す。
【0373】
<比較例9>
下記の事項を変更した以外は、前記比較例6と同様に操作して光電変換素子を製造した。
・酸化ハフニウムの代わりに酸化ジルコニウム(ZrO2)を用いて電子ブロック層を形成した。
得られた光電変換素子を、実施例1と同様に評価した。光電変換素子の製造に用いた化合物を表2に示す。評価結果を表3に示す。
【0374】
【0375】
【0376】
以上の結果より、実施例に係る光電変換素子は、加熱処理後の暗電流値が、加熱処理前の暗電流値と同等であるか又は処理前の数値から大きく変化せず、耐熱性が良好であることがわかる。
比較例に係る光電変換素子は、加熱処理後の暗電流値が、加熱処理前の暗電流値から大幅に上昇し、耐熱性が不良であることがわかる。