(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023053418
(43)【公開日】2023-04-13
(54)【発明の名称】難燃剤組成物、難燃性樹脂組成物、成形品及び成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09K 21/12 20060101AFI20230406BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20230406BHJP
C08K 5/521 20060101ALI20230406BHJP
C08L 23/00 20060101ALI20230406BHJP
C08K 7/04 20060101ALI20230406BHJP
C09K 21/10 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
C09K21/12
C08L101/00
C08K5/521
C08L23/00
C08K7/04
C09K21/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020045065
(22)【出願日】2020-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】倪 陽
【テーマコード(参考)】
4H028
4J002
【Fターム(参考)】
4H028AA34
4H028BA06
4J002AA011
4J002AB021
4J002BB001
4J002BB021
4J002BB031
4J002BB071
4J002BB111
4J002BB121
4J002BB171
4J002BB181
4J002BB251
4J002BD001
4J002BG001
4J002CF031
4J002CF161
4J002CG001
4J002CH071
4J002CK021
4J002CL001
4J002CN021
4J002DL007
4J002EW046
4J002FA047
4J002FD017
4J002FD136
(57)【要約】
【課題】耐水性に優れた難燃剤組成物を提供する。
【解決手段】本発明の難燃剤組成物は、下記一般式(I)で表される化合物を含むものである。
(上記一般式(I)中、Mは金属元素を表し、Aは〔R
1R
2N(CH
2)
nNR
3R
4〕、ピペラジンまたはピペラジン環を含むジアミンであり、R
1、R
2、R
3及びR
4はそれぞれ水素原子、炭素原子数1~5の直鎖もしくは分岐のアルキル基であり、R
1、R
2、R
3及びR
4は同一の基であっても異なってもよく、nは1~10の整数、xは0<x≦2yの関係式を満たす整数、yは1~3の整数、mは2~4の整数、zは1または2の整数である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される化合物を含む、難燃剤組成物。
【化1】
(上記一般式(I)中、Mは金属元素を表し、Aは〔R
1R
2N(CH
2)
nNR
3R
4〕、ピペラジンまたはピペラジン環を含むジアミンであり、R
1、R
2、R
3及びR
4はそれぞれ水素原子、炭素原子数1~5の直鎖もしくは分岐のアルキル基であり、R
1、R
2、R
3及びR
4は同一の基であっても異なってもよく、nは1~10の整数、xは0<x≦2yの関係式を満たす整数、yは1~3の整数、mは2~4の整数、zは1または2の整数である。)
【請求項2】
請求項1に記載の難燃剤組成物であって、
上記一般式(I)中、Mが、Zn、Mg、Ca、AlまたはTiのいずれかを表す前記化合物を含む、難燃剤組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の難燃剤組成物であって、
上記一般式(I)中、Aがピペラジンである前記化合物を含む、難燃剤組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の難燃剤組成物であって、
前記化合物の粉末X線回折分析パターンにおいて、回折角2θが8.0°以上10.4°以下の範囲内、又は10.8°以上13.5°以下の範囲内にピークを有することを特徴とする、難燃剤組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の難燃剤組成物であって、
前記化合物のIRスペクトルにおいて、波数が850cm-1以上980cm-1以下の範囲内、又は1030cm-1以上1180cm-1以下の範囲内にピークを有することを特徴とする、難燃剤組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の難燃剤組成物であって、
前記化合物を、窒素雰囲気下、150℃で30分前処理した後、10℃/secの昇温速度で、150℃から320℃まで加熱処理したとき、その重量が1重量%減少したときの温度が、160℃以上である、難燃剤組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の難燃剤組成物であって、
前記化合物中の金属元素と同種の金属元素を含む、金属酸化物または金属水酸化物を含む、難燃剤組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の難燃剤組成物であって、
(ポリ)リン酸塩を含む、難燃剤組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の難燃剤組成物であって、
オルソリン酸塩、ピロリン酸塩、および縮合度が3以上のポリリン酸塩からなる前記(ポリ)リン酸塩のうち、少なくとも、ピロリン酸メラミンを少なくとも含む、難燃剤組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の難燃剤組成物と、
熱可塑性樹脂と、
を含む、難燃性樹脂組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の難燃性樹脂組成物であって、
前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂を含む、難燃性樹脂組成物。
【請求項12】
請求項10または11に記載の難燃性樹脂組成物であって、
ガラス繊維を含む、難燃性樹脂組成物。
【請求項13】
請求項10~12のいずれか一項に記載の難燃性樹脂組成物を用いてなる成形品。
【請求項14】
請求項10~12のいずれか一項に記載の難燃性樹脂組成物を用いて成形品を製造する、成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃剤組成物、難燃性樹脂組成物、成形品及び成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで難燃剤について様々な開発がなされてきた。この種の技術として、例えば、特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1には、難燃剤として、ピロリン酸とピペラジンを1:1のモル比で反応させてなるピロリン酸ピペラジンが記載されている(特許文献1の請求項1、段落0191等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者が検討した結果、上記特許文献1に記載の難燃剤において、耐水性の点で改善の余地があることが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者はさらに検討したところ、ピロリン酸ピペラジンは水に対しての溶解度が高いため、ピロリン酸ピペラジンからなる難燃剤を使用した樹脂組成物において耐水性が低下する恐れがあることを見出した。
このような知見に基づきさらに鋭意研究したところ、ピロリン酸ピペラジン類に金属酸化物又は金属水酸化物を反応させることによって、反応物における水溶解度を低減して耐水性を向上できること、さらには得られた反応物を難燃剤に使用することによって樹脂組成物における耐水性も向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明によれば、
下記一般式(I)で表される化合物を含む、難燃剤組成物が提供される。
【化1】
(上記一般式(I)中、Mは金属元素を表し、Aは〔R
1R
2N(CH
2)
nNR
3R
4〕、ピペラジンまたはピペラジン環を含むジアミンであり、R
1、R
2、R
3及びR
4はそれぞれ水素原子、炭素原子数1~5の直鎖もしくは分岐のアルキル基であり、R
1、R
2、R
3及びR
4は同一の基であっても異なってもよく、nは1~10の整数、xは0<x≦2yの関係式を満たす整数、yは1~3の整数、mは2~4の整数、zは1または2の整数である。)
【0007】
また本発明によれば、
上記の難燃剤組成物と、
熱可塑性樹脂と、
を含む、難燃性樹脂組成物が提供される。
【0008】
また本発明によれば、上記の難燃性樹脂組成物を用いてなる成形品が提供される。
【0009】
また本発明によれば、上記の難燃性樹脂組成物を用いて成形品を製造する、成形品の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、耐水性に優れた難燃剤組成物、難燃性樹脂組成物、成形品及び成形品の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1~3のIRスペクトルを示す図である。
【
図2】実施例4~6のIRスペクトルを示す図である。
【
図3】実施例7~9のIRスペクトルを示す図である。
【
図4】実施例1~3のXRDスペクトルを示す図である。
【
図5】実施例1、10のXRDスペクトルを示す図である。
【
図6】実施例1、11のXRDスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施形態の難燃剤組成物を概説する。
上記難燃剤組成物は、下記一般式(I)で表される化合物を含む。
【0013】
【0014】
上記一般式(I)中、Mは金属元素を表し、Aは〔R1R2N(CH2)nNR3R4〕、ピペラジンまたはピペラジン環を含むジアミンであり、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ水素原子、炭素原子数1~5の直鎖もしくは分岐のアルキル基であり、R1、R2、R3及びR4は同一の基であっても異なってもよく、nは1~10の整数、xは0<x≦2yの関係式を満たす整数、yは1~3の整数、mは2~4の整数、zは1または2の整数である。
【0015】
一般的な難燃剤に、ピロリン酸ピペラジン(以下、PPPと呼称する。)と(ポリ)リン酸メラミンとを主成分とするものが使用されている。
このPPPは、水に対しての溶解量が約1.5(g/100g H2O)と高いため、難燃剤として、PPPを使用した難燃性樹脂組成物において耐水性が低下する恐れがあることが判明した。
近年の難燃性樹脂組成物は、屋外、設備施設、家庭などの水暴露環境下での使用も検討がなされており、難燃性に加え、耐水性について益々高い水準が要求されていてきる。
【0016】
これに対して、本発明者の知見によれば、PPPに対して、金属酸化物や金属水酸化物などの金属化合物を反応させることによって、新たな反応物(PPPM)が得られ、これによって、PPPと比べてPPPMの水溶解量を大幅に低減できることが判明した。このようなPPPMを使用することによって、難燃剤組成物の耐水性のみならず、難燃性樹脂組成物の耐水性を向上させることができることが見出された。また、難燃性樹脂組成物について、用途に応じて、例えば、絶縁破壊特性、耐腐食性、機械的強度や耐熱性等を向上させることも可能である。
【0017】
本実施形態によれば、難燃性樹脂組成物における耐水性や難燃性を向上できる難燃剤組成物を実現できる。
【0018】
本実施形態の難燃剤組成物を詳述する。
上記難燃剤組成物は、下記一般式(I)で表される化合物を含むものである。
【0019】
【0020】
上記一般式(I)中、Mは金属元素を表し、Aは〔R1R2N(CH2)nNR3R4〕、ピペラジンまたはピペラジン環を含むジアミンであり、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ水素原子、炭素原子数1~5の直鎖もしくは分岐のアルキル基であり、R1、R2、R3及びR4は同一の基であっても異なってもよく、nは1~10の整数、xは0<x≦2yの関係式を満たす整数、yは1~3の整数、mは2~4の整数、zは1または2の整数である。
【0021】
一般式(I)で表される化合物は、例えば、後述の一般式(3)で表されるピロリン酸塩(以下、ピロリン酸ピペラジン類と呼称する。)と、金属酸化物または金属水酸化物を反応させることによって得られる反応物を含む。
【0022】
本発明者によれば、このような反応は、水などの極性溶媒中でよく混合することによって進めることができることが見出された。すなわち、極性溶媒の極性度合いを高めることによって反応性を高め、収率を向上できることが分かった。
【0023】
極性溶媒の極性度合いについては、例えば、溶解パラメータのSP値(σ)を指標として活用できる。
極性溶媒のSP値は、例えば、7.0以上、より好ましくは11.0以上、さらに好ましくは12.0以上、一層好ましくは15.0以上である。例えば、H2OのSP値は、21.0、CH3OHのSP値は12.9である。
【0024】
本実施形態の難燃剤組成物の製造方法は、例えば、一般式(3)で表されるピロリン酸塩(ピロリン酸ピペラジン類)と金属酸化物または金属水酸化物とを極性溶媒中、より好ましくは、上記の下限値以上のSP値を有する極性溶媒中で反応させる工程を含んでもよい。
【0025】
極性溶媒としては、単一溶媒を使用してもよいが、2種以上を含む混合溶媒を使用してもよい。
極性溶媒の一例としては、例えば、H2O、H2Oを主成分とする溶媒、アルコール系溶媒、H2O及びアルコール系溶媒の混合溶媒等が挙げられる。ここで、主成分とは、溶媒中の含有量が、質量換算で、50質量%以上であることを意味する。
【0026】
また、難燃剤組成物の製造方法において、混合時間や混合時における環境温度は、適宜、設定可能である。混合時間は、例えば、1~20h、2~10hでもよい。反応環境温度は、室温25℃でもよいが、必要に応じて加熱してもよい。
【0027】
また、ピロリン酸ピペラジン類と金属酸化物または金属水酸化物と混合割合は、適宜選択されるが、例えば、1:0.5以上、1:1以上、1:2以上でもよい。金属酸化物または金属水酸化物の混合比率を、ピロリン酸ピペラジン類よりも大きく設定することによって、ピロリン酸ピペラジン類の反応収率を高め、耐水性をより高めることが可能になる。
【0028】
また、本実施形態の難燃剤組成物の製造方法は、反応物と極性溶媒を含む溶液に対して、極性溶媒を乾燥させる工程を含んでもよい。乾燥方法は、加熱乾燥、減圧乾燥などの、公知の方法を使用できる。
必要に応じて、破砕や分級を行ってもよい。
【0029】
以上により、ピロリン酸ピペラジン類と金属酸化物または金属水酸化物との反応物を含む難燃剤組成物が得られる。この難燃剤組成物は、25℃で、粉末状で構成されてもよい。
【0030】
ここで、本発明者は、一例として、ピロリン酸ピペラジン類としてPPP、金属水酸化物としてZn(OH)2を使用した例について検討を行った。これらの反応物をPPPZnと表記する。
PPPZnについてIRスペクトルや元素分析を行った。IRスペクトルの結果から、PPPとZnとが結合することが推察された。また、IRスペクトルや元素分析の結果を踏まえると、PPPZnの構造の一例は、以下の式(II)ように推察される。
【0031】
【0032】
また、PPP、Zn(OH)2、PPPZnについて、XRDスペクトルを求めた結果、PPPZnは、PPP及びZn(OH)2のいずれのパターンとも異なるパターンを示すことが判明した。
【0033】
したがって、本実施形態の製造方法によって、ピロリン酸ピペラジン類でもなく、金属水酸化物や金属酸化物でもない、新たな物質(PPPZn)が合成されることが判明した。
Znに代えて、MgやCa等のその他の金属Mを使用したPPPMについても、同様の結果が得られた。
【0034】
難燃剤組成物は、上記一般式(I)中、Mが、Zn、Mg、Ca、AlまたはTiのいずれかを表す化合物を含んでもよい。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
この中でも、Mが、Zn、Mg、Caが好ましく、耐熱性の観点から、Mが、Znがより好ましい。
【0035】
上記一般式(I)中、上記ピペラジン環を含むジアミンとしては、例えば、ピペラジンの2、3、5、6位の1箇所以上をアルキル基(好ましくは炭素数1~5のもの)で置換した化合物;ピペラジンの1位及び/又は4位のアミノ基をアルキル基(好ましくは炭素数1~5のもの)で置換した化合物が挙げられる。
【0036】
ジアミンとしては、具体的には、N,N,N’,N’-テトラメチルジアミノメタン、エチレンジアミン、N,N’-ジメチルエチレンジアミン、N,N’-ジエチルエチレンジアミン、N,N-ジメチルエチレンジアミン、N,N-ジエチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラエチルエチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,3-プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1、7-ジアミノへプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9ージアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、ピペラジン、trans-2,5-ジメチルピペラジン、1,4-ビス(2-アミノエチル)ピペラジン、1,4-ビス(3-アミノプロピル)ピペラジン等が挙げられる。
【0037】
難燃剤組成物は、上記一般式(I)中、Aがピペラジンである化合物を含んでもよい。これにより、安定的に耐熱性を向上できる。
【0038】
難燃剤組成物は、化合物中の金属元素と同種の金属元素を含む、金属酸化物または金属水酸化物を含んでもよい。これにより、難燃性を高められる。
金属酸化物または金属水酸化物としては、ZnO、CaO、MgO、Zn(OH)2、Ca(OH)2、Mg(OH)2等が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
化合物の粉末X線回折分析パターンにおいて、回折角2θが8.0°以上10.4°以下の範囲内、又は10.8°以上13.5°以下の範囲内にピークを有してもよい。これにより、耐水性を高められる。
【0040】
化合物のIRスペクトルにおいて、波数が850cm-1以上980cm-1以下の範囲内、又は1030cm-1以上1180cm-1以下の範囲内にピークを有してもよい。これにより、耐水性を高められる。
【0041】
850cm-1以上980cm-1以下の範囲の最大ピーク強度は、波数が400cm-1以上600cm-1以下の範囲内の最大ピーク強度を100%としたとき、例えば、35%以上、好ましくは45%以上、より好ましくは50%以上である。このピークは、Nに結合するOとPとの結合を表すと推察される。
また、1030cm-1以上1180cm-1以下の範囲の最大ピーク強度は、波数が400cm-1以上600cm-1以下の範囲内の最大ピーク強度を100%としたとき、例えば、30%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上である。このピークは、Mに結合するOとPとの結合を表すと推察される。これにより、耐水性を高められる。
【0042】
化合物を、窒素雰囲気下、150℃で30分前処理した後、10℃/secの昇温速度で、150℃から320℃まで加熱処理したとき、その重量が1重量%減少したときの温度(Td1)とし、3重量%減少したときの温度(Td3)とする。
Td1は、例えば、160℃以上、好ましくは180℃以上、より好ましくは200℃以上、さらに好ましくは250℃以上、一層好ましくは300℃以上である。これにより、難燃剤組成物の耐熱性を向上できる。
また、Td3は、例えば、170℃以上、好ましくは210℃以上、より好ましくは270℃以上、さらに好ましくは320℃以上である。これにより、難燃剤組成物の耐熱性を向上できる。
【0043】
本実施形態では、たとえば難燃剤組成物中に含まれる各成分の種類や配合量、難燃剤組成物の調製方法等を適切に選択することにより、上記XRDスペクトル中のパターン、IRスペクトル中のピーク強度、Td1、Td3を制御することが可能である。これらの中でも、たとえば、ピロリン酸メラミン類と金属水酸化物または金属酸化物との混合プロセスにおいて、極性溶媒の種類や極性度合い、混合比率などを適切に調整することが、上記XRDスペクトル中のパターン、IRスペクトル中のピーク強度、Td1、Td3を所望の数値範囲とするための要素として挙げられる。
【0044】
難燃剤組成物は、下記一般式(1)または下記一般式(3)で表される、オルソリン酸塩、ピロリン酸塩、およびnが3以上またはrが3以上のポリリン酸塩からなる(ポリ)リン酸塩の群のうち、少なくとも一つを含んでもよく、好ましくはピロリン酸塩、より好ましくはピロリン酸メラミンを含んでもよい。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
【0046】
上記一般式(1)中、nは1~100の数を表し、X1はアンモニアまたは下記一般式(2)で表されるトリアジン誘導体を表し、pは、0<p≦n+2の関係式を満たす数である。
【0047】
【0048】
上記一般式(2)中、Z1及びZ2は、同一でも異なっていてもよく、-NR5R6基、水酸基、メルカプト基、炭素原子数1~10の直鎖または分岐のアルキル基、炭素原子数1~10の直鎖または分岐のアルコキシ基、フェニル基及びビニル基からなる群より選ばれる基を表し、R5およびR6は各々独立して、水素原子、直鎖または分岐を有する炭素原子数1~6のアルキル基、または、メチロール基を表す。
【0049】
【0050】
上記一般式(3)中、rは1~100の数を表し、Y1は〔R1R2N(CH2)nNR3R4〕、ピペラジンまたはピペラジン環を含むジアミンであり、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ水素原子、炭素原子数1~5の直鎖もしくは分岐のアルキル基であり、R1、R2、R3及びR4は同一の基であっても異なってもよく、nは1~10の整数であり、qは、0<q≦r+2の関係式を満たす数である。
【0051】
本明細書において、(ポリ)リン酸とは、オルソリン酸、ピロリン酸、および縮合度が3以上のポリリン酸のいずれか一方、あるいは、これらの混合物を指す。(ポリ)リン酸塩は、重合度または塩の種類が異なる2以上を含んでもよい。
【0052】
本明細書において、上記一般式(1)で表される(ポリ)リン酸塩は、トリアジン(ポリ)リン酸塩((ポリ)リン酸とトリアジン誘導体またはアンモニア等との塩)と呼称し、上記一般式(3)で表される(ポリ)リン酸塩は、ピペラジン(ポリ)リン酸塩((ポリ)リン酸とピペラジンまたはピペラジン環等を含むジアミンとの塩)と呼称する。
【0053】
上記一般式(1)中、例えば、nが1の場合がオルソリン酸塩、nが2の場合がピロリン酸塩、nが3の場合がトリリン酸塩を指す。
上記一般式(3)中、例えば、rが1の場合がオルソリン酸塩、rが2の場合がピロリン酸塩、rが3の場合がトリリン酸塩を指す。
【0054】
上記一般式(2)におけるZ1及びZ2で表される炭素原子数1~10の直鎖又は分岐のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n-オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2-エチルヘキシル、ノニル、デシル等が挙げられ、炭素原子数1~10の直鎖又は分岐のアルコキシ基としては、これらアルキル基から誘導される基が挙げられる。また、Z1及びZ2がとり得る-NR5R6基におけるR5及びR6で表される炭素原子数1~6の直鎖又は分岐のアルキル基としては、上記に挙げたアルキル基のうちの炭素原子数1~6のものが挙げられる。
【0055】
上記一般式(2)中、X1で表されるトリアジン誘導体の具体的な例としては、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、アクリルグアナミン、2,4-ジアミノ-6-ノニル-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-ハイドロキシ-1,3,5-トリアジン、2-アミノ-4,6-ジハイドロキシ-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-メトキシ-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-エトキシ-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-プロポキシ-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-イソプロポキシ-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-メルカプト-1,3,5-トリアジン、2-アミノ-4,6-ジメルカプト-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。
【0056】
上記難燃剤組成物は、上記一般式(1)で表されるピロリン酸塩(ピロリン酸トリアジン、ピロリン酸アンモニウム)を含むことが好ましい。また、上記難燃剤組成物は、上記一般式(1)中のX1がメラミンであるピロリン酸塩(ピロリン酸メラミン)を含むことが好ましい。これにより、安定的に耐熱性を向上できる。
【0057】
上記一般式(3)中、Y1で表されるジアミンは、上記一般式(I)中のAと同様のものが挙げられる。
【0058】
また、上記難燃剤組成物は、上記一般式(1)で表される(ポリ)リン酸塩を含んでもよい。
この中でも、上記難燃剤組成物は、上記一般式(1)中のX1がメラミンであるピロリン酸塩(ピロリン酸メラミン)を含むことが好ましい。これにより、より一層難燃性を高めることが可能である。なお、両者の含有比率は適切に選択してよい。
【0059】
上記難燃剤組成物は、ピロリン酸塩に加えて、オルソリン酸塩およびピロリン酸塩のいずれか一方または両方を含んでもよい。これにより、難燃剤組成物の諸物性のバランスを図ることができる。
【0060】
一般式(I)で表される化合物の含有量の下限は、上記難燃剤組成物100重量%に対して、例えば、1重量%以上、好ましくは20重量%以上、より好ましくは40重量%以上である。これにより、耐水性を高められる。一方、一般式(I)で表される化合物の上限は、特に限定されないが、上記難燃剤組成物100重量%に対して、例えば、100重量%以下でもよく、95重量%以下でもよい。これにより、各種の用途に応じた特性とのバランスを図ることができる。
【0061】
一般式(I)で表される化合物及び(ポリ)リン酸塩の含有量の下限は、上記難燃剤組成物100重量%に対して、例えば、1重量%以上、好ましくは20重量%以上、より好ましくは30重量%以上である。これにより、樹脂材料の難燃性を高められる。また、難燃剤組成物の耐熱性を向上できる。一方、一般式(I)で表される化合物及び(ポリ)リン酸塩の上限は、特に限定されないが、上記難燃剤組成物100重量%に対して、例えば、100重量%以下でもよく、99重量%以下でもよく、95重量%以下でもよい。これにより、各種の用途に応じた特性とのバランスを図ることができる。
【0062】
難燃剤組成物中における一般式(I)で表される化合物と(ポリ)リン酸塩との含有比率は、質量換算で、例えば、9:1~1:9でもよく、2:8~8:2でもよく、3:7~7:3でもよい。このような範囲内とすることで、耐水性及び難燃性のバランスを図ることができる。
【0063】
また、上記難燃剤組成物は、発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、後述の添加剤を含んでもよい。
【0064】
添加剤として、ベーマイト、酸化亜鉛、シリコーンオイル、エポキシ系カップリング剤、ハイドロタルサイト、滑剤等が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
ベーマイトとしては、具体的には、特開昭60-46923号公報、特開平6-263437号公報、特開平6-329411号公報、特開平11-21125号公報、特開2000-86235号公報、特開2000-239014号公報、特開2001-261331号公報、特開2001-261976号公報、特開2001-302236号公報、特開2003-2641号公報、特開2003-2642号公報、特開2003-176126号公報、特開2003-221227号公報、特開2003-238150号公報、特開2003-292819号公報などに記載のベーマイトが挙げられる。
【0066】
また、本発明の組成物においては、市販されているベーマイトを用いることができる。ベーマイトの市販品としては、例えば、河合石灰工業(株)の商品名「セラシュール」シリーズ[例えば、BMB、BMT、BMB(33)、BMT(33)、BMM、BMF、BMIなど]、Nabaltec GmbH社の商品名「Apyral」シリーズ[例えば、AOH180DE、AOH180DSなど]、Sasol North America Inc.社の商品名「DISPAL」シリーズ、Saint-Gobain Ceramic Materials社の商品名「ナノアルミナ」シリーズ[例えば、CAM9010など]などが挙げられる。
【0067】
酸化亜鉛(ZnOは、難燃助剤として機能する。該酸化亜鉛は表面処理されている場合がある。酸化亜鉛は市販品を使用することができ、例えば、酸化亜鉛1種(三井金属鉱業(株)製)、部分被膜型酸化亜鉛(三井金属鉱業(株)製)、ナノファイン50(平均粒径0.02μmの超微粒子酸化亜鉛:堺化学工業(株)製)、ナノファインK(平均粒径0.02μmの珪酸亜鉛被膜した超微粒子酸化亜鉛:堺化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0068】
難燃剤組成物は、シリコーンオイル、エポキシ系カップリング剤、ハイドロタルサイト及び滑剤から選ばれる少なくとも一種を含んでもよい。これにより、粉末状の難燃剤組成物が凝集することを防止し、保存安定性の向上と、合成樹脂への分散性向上や難燃性向上を図ることができる。
【0069】
シリコーンオイルの例としては、ポリシロキサンの側鎖、末端が全てメチル基であるジメチルシリコーンオイル、ポリシロキサンの側鎖、末端がメチル基であり、その側鎖の一部がフェニル基であるメチルフェニルシリコーンオイル、ポリシロキサンの側鎖、末端がメチル基であり、その側鎖の一部が水素であるメチルハイドロジェンシリコーンオイル等や、これらのコポリマーが挙げられ、またこれらの側鎖及び/又は末端の一部に有機基を導入した、アミン変性、エポキシ変性、脂環式エポキシ変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、メルカプト変性、ポリエーテル変性、長鎖アルキル変性、フロロアルキル変性、高級脂肪酸エステル変性、高級脂肪酸アミド変性、シラノール変性、ジオール変性、フェノール変性及び/又はアラルキル変性、させた変性シリコーンオイルを使用することができる。
【0070】
シリコーンオイルの具体例をあげると、ジメチルシリコーンオイルとして、KF-96(信越化学(株)製)、KF-965(信越化学(株)製)、KF-968(信越化学(株)製)等が挙げられ、メチルハイドロジェンシリコーンオイルとして、KF-99(信越化学(株)製)、KF-9901(信越化学(株))、HMS-151(Gelest社製)、HMS-071(Gelest社製)、HMS-301(Gelest社製)、DMS-H21(Gelest社製)等が挙げられ、メチルフェニルシリコーンオイルの例としては、KF-50(信越化学(株)製)、KF-53(信越化学(株)製)、KF-54(信越化学(株)製)、KF-56(信越化学(株)製)等が挙げられ、エポキシ変性品としては、例えば、X-22-343(信越化学(株)製)、X-22-2000(信越化学(株)製)、KF-101(信越化学(株)製)、KF-102(信越化学(株)製)、KF-1001(信越化学(株)製)、カルボキシル変性品としては、例えば、X-22-3701E(信越化学(株)製)、カルビノール変性品としては、例えば、X-22-4039(信越化学(株)製)、X-22-4015(信越化学(株)製)、アミン変性品としては、例えば、KF-393(信越化学(株)製)等が挙げられる。
【0071】
シリコーンオイルの中でも、難燃剤粉末が凝集することを防止し、保存安定性の向上と、合成樹脂への分散性向上の点から、メチルハイドロジェンシリコーンオイルが好ましい。
【0072】
エポキシ系カップリング剤は、難燃剤粉末の凝集を防止し、保存安定性の向上のためや、耐水性、耐熱性を付与するという機能を有する。エポキシ系カップリング剤としては、例えば、一般式A-(CH2)k-Si(OR)3で表される化合物であってエポキシ基を有する化合物が挙げられる。Aはエポキシ基であり、kは1~3の数を表し、Rはメチル基又はエチル基を表す。ここでいうエポキシ基としては、グリシドキシ基や3,4-エポキシシクロヘキシル基が挙げられる。
【0073】
エポキシ系カップリング剤の具体例としては、例えば、エポキシ基を有するシランカップリング剤として、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシオクチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0074】
ハイドロタルサイトとは、天然物や合成物として知られるマグネシウム、アルミニウム、水酸基、炭酸基および任意の結晶水からなる複合塩化合物であり、マグネシウム又はアルミニウムの一部をアルカリ金属や亜鉛など他の金属で置換したものや水酸基、炭酸基を他のアニオン基で置換したものが挙げられる。
【0075】
上記ハイドロタルサイトは、結晶水を脱水したものである場合があり、ステアリン酸等の高級脂肪酸、オレイン酸アルカリ金属塩等の高級脂肪酸金属塩、ドデシルベンゼンスルホン酸アルカリ金属塩等の有機スルホン酸金属塩、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステル又はワックス等で被覆されたものでる場合がある。
【0076】
滑剤としては、流動パラフィン、天然パラフィン、マイクロワックス、合成パラフィン、低分子量ポリエチレン、ポリエチレンワックス等の純炭化水素系滑剤;ハロゲン化炭化水素系滑剤;高級脂肪酸、オキシ脂肪酸等の脂肪酸系滑剤;脂肪酸アミド、ビス脂肪酸アミド等の脂肪酸アミド系滑剤;脂肪酸の低級アルコールエステル、グリセリド等の脂肪酸の多価アルコールエステル、脂肪酸のポリグリコールエステル、脂肪酸の脂肪アルコールエステル(エステルワックス)等のエステル系滑剤;金属石鹸、脂肪アルコール、多価アルコール、ポリグリコール、ポリグリセロール、脂肪酸と多価アルコールの部分エステル、脂肪酸とポリグリコール、ポリグリセロールの部分エステル系の滑剤や、シリコーンオイル、鉱油等が挙げられる。これらの滑剤は1種を単独で用いることができ、2種以上を併用して用いることができる。
【0077】
上記難燃剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の添加剤を含んでもよい。
その他の成分としては、通常、熱可塑性樹脂を改質するために使用される添加剤が使用できるが、例えば、抗酸化剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、その他の難燃剤・難燃助剤、強化材、結晶核剤、透明化剤、架橋剤、帯電防止剤、金属石鹸、充点剤、防曇剤、プレートアウト防止剤、蛍光剤、防黴剤、殺菌剤、発泡剤、金属不活性剤、離型剤、顔料等が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0078】
抗酸化剤として、例えば、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、その他の酸化防止剤等が挙げられる。
【0079】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、2-tert-ブチル-4,6-ジメチルフェノール、スチレン化フェノール、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-チオビス-(6-tert-ブチル-4-メチルフェノール)、2,2’-チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2-メチル-4,6-ビス(オクチルスルファニルメチル)フェノール、2,2’-イソブチリデンビス(4,6-ジメチルフェノール)、イソオクチル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド、2,2’-オキサミド-ビス[エチル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2-エチルヘキシル-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’-エチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ベンゼンプロパン酸及びC13-15アルキルのエステル、2,5-ジ-tert-アミルヒドロキノン、ヒンダードフェノールの重合物(アデカパルマロール社製商品名AO.OH.98)、2,2’-メチレンビス[6-(1-メチルシクロヘキシル)-p-クレゾール]、2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート、6-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルベンズ[d,f][1,3,2]-ジオキサホスフォビン、ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ビス[モノエチル(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ホスホネート]カルシウム塩、5,7-ビス(1,1-ジメチルエチル)-3-ヒドロキシ-2(3H)-ベンゾフラノンとo-キシレンとの反応生成物、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノール、DL-a-トコフェノール(ビタミンE)、2,6-ビス(α-メチルベンジル)-4-メチルフェノール、ビス[3,3-ビス-(4’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-フェニル)ブタン酸]グリコールエステル、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、2,6-ジフェニル-4-オクタデシロキシフェノール、ステアリル(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジステアリル(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ホスホネート、トリデシル-3,5-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルチオアセテート、チオジエチレンビス[(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、2-オクチルチオ-4,6-ジ(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェノキシ)-s-トリアジン、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、ビス[3,3-ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、4,4’-ブチリデンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(6-tert-ブチル-3-メチルフェノール)、2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、ビス[2-tert-ブチル-4-メチル-6-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルベンジル)フェニル]テレフタレート、1,3,5-トリス(2,6-ジメチル-3-ヒドロキシ-4-tert-ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2,4,6-トリメチルベンゼン、1,3,5-トリス[(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]イソシアヌレート、テトラキス[メチレン-3-(3’,5’―ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、2-tert-ブチル-4-メチル-6-(2-アクリロイルオキシ-3-tert-ブチル-5-メチルベンジル)フェノール、3,9-ビス[2-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロパノイルオキシ]-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、トリエチレングリコールビス[3-tert-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート]、ステアリル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド、パルミチル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド、ミリスチル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド、ラウリル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド等の3-(3,5-ジアルキル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸誘導体等が挙げられる。これらフェノール系酸化防止剤は1種を単独で用いることができ、2種以上を併用して用いことができる。
【0080】
ホスファイト系酸化防止剤は、例えば、トリフェニルホスファイト、ジイソオクチルホスファイト、ヘプタキス(ジプロピレングリコール)トリホスファイト、トリイソデシルホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、ジイソオクチルフェニルホスファイト、ジフェニルトリデシルホスファイト、トリイソオクチルホスファイト、トリラウリルホスファイト、ジフェニルホスファイト、トリス(ジプロピレングリコール)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、ジオレイルヒドロゲンホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、ビス(トリデシル)ホスファイト、トリス(イソデシル)ホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、ジノニルフェニルビス(ノニルフェニル)ホスファイト、ポリ(ジプロピレングリコール)フェニルホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチル-5-メチルフェニル)ホスファイト、トリス〔2-tert-ブチル-4-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニルチオ)-5-メチルフェニル〕ホスファイト、トリ(デシル)ホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジ(デシル)モノフェニルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールとステアリン酸カルシウム塩との混合物、アルキル(C10)ビスフェノールAホスファイト、ジ(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6-トリ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラフェニル-テトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)エチルホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(トリデシル)-4,4’-n-ブチリデンビス(2―tert-ブチル-5-メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)-1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、9,10-ジハイドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナンスレン-10-オキサイド、(1-メチル-1―プロペニル-3-イリデン)トリス(1,1-ジメチルエチル)-5-メチル-4,1-フェニレン)ヘキサトリデシルホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-2-エチルヘキシルホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-オクタデシルホスファイト、2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)フルオロホスファイト、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェニルジトリデシル)ホスファイト、トリス(2-〔(2,4,8,10-テトラキス-tert-ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン-6-イル)オキシ〕エチル)アミン、3,9-ビス(4-ノニルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスフェススピロ[5,5]ウンデカン、2,4,6-トリ-tert-ブチルフェニル-2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールホスファイト、4,4’-イソプロピリデンジフェノールC12-15アルコールホスファイト、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)-3,9-ビス-ジホスファ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスフェススピロ[5,5]ウンデカン、ジフェニル(イソデシル)ホスファイト、ビフェニルジフェニルホスファイト等が挙げられる。これらホスファイト系酸化防止剤は1種を単独で用いることができ、2種以上を併用して用いることができる。
【0081】
チオエーテル系酸化防止剤は、例えば、3,3’-チオジプロピオン酸、アルキル(C12-14)チオプロピオン酸、ジ(ラウリル)-3,3’-チオジプロピオネート、3,3’-チオビスプロピオン酸ジトリデシル、ジ(ミリスチル)-3,3’-チオジプロピオネート、ジ(ステアリル)-3,3’-チオジプロピオネート、ジ(オクタデシル)-3,3’-チオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、テトラキス[メチレン-3-(ドデシルチオ)プロピオネート]メタン、チオビス(2-tert-ブチル-5-メチル-4,1-フェニレン)ビス(3-(ドデシルチオ)プロピオナート)、2,2’-チオジエチレンビス(3-アミノブテノエート)、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、2,2’-チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート] 、2,2’-チオビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-チオビス(6-tert-ブチル-p-クレゾール)、2-エチルヘキシル-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)チオアセテート、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-3-メチルフェノール)、4,4’-チオビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-[チオビス(メチレン)]ビス(2-tert-ブチル-6-メチル-1-ヒドロキシベンジル)、ビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェノール-2-イル)スルファイド、トリデシル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルチオアセテート、1,4-ビス(オクチルチオメチル)-6-メチルフェノール、2,4-ビス(ドデシルチオメチル)-6-メチルフェノール、ジステアリル-ジサルファイド、ビス(メチル-4-[3-n-アルキル(C12/C14)チオプロピオニルオキシ]5-tert-ブチルフェニル)スルファイド等が挙げられる。これらチオエーテル系酸化防止剤は1種を単独で用いることができ、2種以上を併用して用いることができる。
【0082】
その他の酸化防止剤は、例えば、N-ベンジル-α-フェニルニトロン、N-エチル-α-メチルニトロン、N-オクチル-α-ヘプチルニトロン、N-ラウリル-α-ウンデシルニトロン、N-テトラデシル-α-トリデシルニトロン、N-ヘキサデシル-α-ペンタデシルニトロン、N-オクチル-α-ヘプタデシルニトロン、N-ヘキサデシル-α-ヘプタデシルニトロン、N-オクタデシル-α-ペンタデシルニトロン、N-ヘプタデシル-α-ヘプタデシルニトロン、N-オクタデシル-α-ヘプタデシルニトロン等のニトロン化合物、3-アリールベンゾフラン-2(3H)-オン、3-(アルコキシフェニル)ベンゾフラン-2-オン、3-(アシルオキシフェニル)ベンゾフラン-2(3H)-オン、5,7-ジ-tert-ブチル-3-(3,4-ジメチルフェニル)-ベンゾフラン-2(3H)-オン、5,7-ジ-tert-ブチル-3-(4-ヒドロキシフェニル)-ベンゾフラン-2(3H)-オン、5,7-ジ-tert-ブチル-3-{4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}-ベンゾフラン-2(3H)-オン、6-(2-(4-(5,7-ジ-tert-2-オキソ-2,3-ジヒドロベンゾフラン-3-イル)フェノキシ)エトキシ)-6-オキソヘキシル-6-((6-ヒドロキシヘキサノイル)オキシ)ヘキサノエート、5-ジ-tert-ブチル-3-(4-((15-ヒドロキシ-3,6,9,13-テトラオキサペンタデシル)オキシ)フェニル)ベンゾフラン-2(3H)オン等のベンゾフラン化合物等が挙げられる。これらその他の酸化防止剤は1種を単独で用いることができ、2種以上を併用して用いることができる。
【0083】
核剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、4-第三ブチル安息香酸アルミニウム塩、アジピン酸ナトリウム、2ナトリウムビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボキシレート等のカルボン酸金属塩、ナトリウムビス(4-第三ブチルフェニル)ホスフェート、ナトリウム-2,2’-メチレンビス(4,6-ジ第三ブチルフェニル)ホスフェート、リチウム-2,2’-メチレンビス(4,6-ジ第三ブチルフェニル)ホスフェート等のリン酸エステル金属塩、ジベンジリデンソルビトール、ビス(メチルベンジリデン)ソルビトール、ビス(3,4-ジメチルベンジリデン)ソルビトール、ビス(p-エチルベンジリデン)ソルビトール、ビス(ジメチルベンジリデン)ソルビトール、1,2,3-トリデオキシ-4,6:5,7-ビス-O-((4-プロピルフェニル)メチレン)-ノニトール、1,3:2,4-ビス(p-メチルベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-ベンジリデン-D-グルシトール(ジベンジリデンソルビトール)等の多価アルコール誘導体、N,N’,N”-トリス[2-メチルシクロヘキシル]―1,2,3-プロパントリカルボキサミド、N,N’,N”-トリシクロヘキシルー1,3,5-ベンゼントリカルボキサミド、N,N’-ジシクロヘキシル-ナフタレンジカルボキサミド、1,3,5-トリ(ジメチルイソプロポイルアミノ)ベンゼン等のアミド化合物等を挙げることができる。これら核剤は1種を単独で用いることができ、2種以上を併用して用いることができる。
【0084】
紫外線吸収剤は、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、5,5’-メチレンビス(2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン)、2-ヒドロキシー4-ノルマルオクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシー4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシー4-ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ―4-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系や、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス(4-tert-オクチル-6-ベンゾトリアゾリルフェノール)、2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾールのポリエチレングリコールエステル、2-〔2-ヒドロキシ-3-(2-アクリロイルオキシエチル)-5-メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2-〔2-ヒドロキシ-3-(2-メタクリロイルオキシエチル)-5-tert-ブチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2-〔2-ヒドロキシ-3-(2-メタクリロイルオキシエチル)-5-tert-オクチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2-〔2-ヒドロキシ-3-(2-メタクリロイルオキシエチル)-5-tert-ブチルフェニル〕-5-クロロベンゾトリアゾール、2-〔2-ヒドロキシ-5-(2-メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2-〔2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-(2-メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2-〔2-ヒドロキシ-3-tert-アミル-5-(2-メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2-〔2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-(3-メタクリロイルオキシプロピル)フェニル〕-5-クロロベンゾトリアゾール、2-〔2-ヒドロキシ-4-(2-メタクリロイルオキシメチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2-〔2-ヒドロキシ-4-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2-〔2-ヒドロキシ-4-(3-メタクリロイルオキシプロピル)フェニル〕ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系や、フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4-ジ-tert-ブチルフェニル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、オクチル(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ)ベンゾエート、ドデシル(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ)ベンゾエート、テトラデシル(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ)ベンゾエート、ヘキサデシル(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ)ベンゾエート、オクタデシル(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ)ベンゾエート、ベヘニル(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ)ベンゾエート等のベンゾエート系や、2-エチル-2’-エトキシオキザニリド、2-エトキシ-4’-ドデシルオキザニリド、2-エチル-2’-エトキシ-5’-tert-ブチル-オキザニリド等の置換オキザニリド系や、エチル-α-シアノ-β,β-ジフェニルアクリレート、メチル-2-シアノ-3-メチル-3-(p-メトキシフェニル)アクリレート、テトラキス(α-シアノ-β,β-ジフェニルアクリルロイルオキシメチル)メタン等のシアノアクリレート系や、2-(2-ヒドロキシ-4-(2-(2-エチルヘキサノイルオキシ)エチルオキシ)-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシ-3-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-オクチルフオキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヘキシルオキシフェノール、2-(4,6-ジ(1,1´-ビフェニル)4-イル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-(2-エチルヘキシルオキシ)フェノール等のトリアジン系が挙げられる。これら紫外線吸収剤は1種を単独で用いることができ、2種以上を併用して用いることができる。
【0085】
光安定剤は、例えば、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルステアレート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)・ジ(トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-ジ(トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,4,4-ペンタメチル-4-ピペリジル)-2-ブチル-2-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)マロネート、1-(2-ヒドロキシエチル)-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノ-ル/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4-ジクロロ-6-モルホリノ-s-トリアジン重縮合物、1,6-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4-ジクロロ-6-tert-オクチルアミノ-s-トリアジン重縮合物、1,5,8,12-テトラキス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕-1,5,8,12-テトラアザドデカン、1,5,8,12-テトラキス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕-1,5,8-12-テトラアザドデカン、1,6,11-トリス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕アミノウンデカン、1,6,11-トリス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕アミノウンデカン、ビス{4-(1-オクチルオキシ-2,2,6,6-テトラメチル)ピペリジル}デカンジオナート、ビス{4-(2,2,6,6-テトラメチル-1-ウンデシルオキシ)ピペリジル}カーボナート、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製TINUVIN NOR 371、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルメタクリレート、1,2,3,4-ブタンテトラカルボンサン、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)―1,3-プロパンジオール及び3-ヒドロキシー2,2-ジメチルプロパナールトノポリマー、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニルエステル、1,3‐ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジンー4-イル)2,4-ジトリデシルベンゼン-1,2,3,4,テトラカルボキシレート、ビス(1-オクチルオキシ-2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ポリ[[6-[(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル][(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)イミノ]-1,6-ヘキサンジイル[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)イミノ]])等が挙げられる。これら光安定剤は1種を単独で用いることができ、2種以上を併用して用いることができる。
【0086】
可塑剤としては、例えば、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化脂肪酸オクチルエステル等のエポキシ系や、メタクリレート系や、ジカルボン酸と多価アルコールとの重縮合物、多価カルボン酸と多価アルコールとの重縮合物等のポリエステル系や、ジカルボン酸と多価アルコールとアルキレングリコールとの重縮合物、ジカルボン酸と多価アルコールとアリーレングリコールとの重縮合物、多価カルボン酸と多価アルコールとアルキレングリコールとの重縮合物、多価カルボン酸と多価アルコールとアリーレングリコールとの重縮合物等のポリエーテルエステル系や、アジピン酸エステル、コハク酸エステル等の脂肪族エステル系や、フタル酸エステル、テレフタル酸エステル、トリメリット酸エステル、ピロメリット酸エステル、安息香酸エステル等の芳香族エステル系などが挙げられる。これら可塑剤は1種を単独で用いることができ、2種以上を併用して用いることができる。
【0087】
充填剤は、例えば、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、ガラス粉末、ガラス繊維、クレー、ドロマイト、マイカ、シリカ、アルミナ、チタン酸カリウムウィスカー、ワラステナイト、繊維状マグネシウムオキシサルフェート、モンモリロナイト等を挙げることができ、粒子径(繊維状においては繊維径や繊維長及びアスペクト比)を適宜選択して用いることができる。これら充填剤は1種を単独で用いることができ、2種以上を併用して用いることができる。
【0088】
脂肪酸金属塩の脂肪酸としては、例えば、カプリン酸、2-エチルヘキサン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルチミン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデシル酸、アラキジン酸、ヘイコシル酸、ベヘン酸、トリコシル酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸等の飽和脂肪酸、4-デセン酸、4-ドデセン酸、パルミトレイン酸、α-リノレン酸、リノール酸、γ-リノレン酸、ステアリドン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸等の直鎖不飽和脂肪酸、トリメシン酸等の芳香族脂肪酸であるものが挙げられ、特に、ミリスチン酸、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸等の飽和脂肪酸が好ましい。脂肪酸金属塩の金属としては、例えば、アルカリ金属、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタニウム、マンガン、鉄、亜鉛、珪素、ジルコニウム、イットリウム、バリウム又はハフニウム等が挙げられるが、特に、ナトリウム、リチウム、カリウム等のアルカリ金属が好ましい。これら脂肪酸金属塩は1種を単独で用いることができ、2種以上を併用して用いることができる。
【0089】
帯電防止剤は、例えば、脂肪酸第四級アンモニウムイオン塩、ポリアミン四級塩等のカチオン系帯電防止剤や、高級アルコールリン酸エステル塩、高級アルコールEO付加物、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、アニオン型のアルキルスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキシド付加物硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキシド付加物リン酸エステル塩等のアニオン系帯電防止剤や、多価アルコール脂肪酸エステル、ポリグリコールリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル等のノニオン系帯電防止剤や、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の両性型アルキルベタイン、イミダゾリン型両性活性剤等の両性帯電防止剤が挙げられる。これら帯電防止剤は1種を単独で用いることができ、2種以上を併用して用いることができる。
【0090】
顔料は、市販の顔料を用いることもでき、例えば、ピグメントレッド1、2、3、9、10、17、22、23、31、38、41、48、49、88、90、97、112、119、122、123、144、149、166、168、169、170、171、177、179、180、184、185、192、200、202、209、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、254;ピグメントオレンジ13、31、34、36、38、43、46、48、49、51、52、55、59、60、61、62、64、65、71や、ピグメントイエロー1、3、12、13、14、16、17、20、24、55、60、73、81、83、86、93、95、97、98、100、109、110、113、114、117、120、125、126、127、129、137、138、139、147、148、150、151、152、153、154、166、168、175、180、185や、ピグメントグリーン7、10、36や、ピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:5、15:6、22、24、56、60、61、62、64や、ピグメントバイオレット1、19、23、27、29、30、32、37、40、50等が挙げられる。これら顔料は1種を単独で用いることができ、2種以上を併用して用いることができる。
【0091】
染料は、市販の染料を用いることもでき、例えば、アゾ染料、アントラキノン染料、インジゴイド染料、トリアリールメタン染料、キサンテン染料、アリザリン染料、アクリジン染料、スチルベン染料、チアゾール染料、ナフトール染料、キノリン染料、ニトロ染料、インダミン染料、オキサジン染料、フタロシアニン染料、シアニン染料等の染料等が挙げられる。これら染料は1種を単独で用いることができ、2種以上を併用して用いることができる。
【0092】
なお、上述の添加剤の1または2以上については、上記難燃剤組成物に配合してもよいが、難燃剤組成物および熱可塑性樹脂を含む難燃性樹脂組成物に配合してもよい。
【0093】
次に、本実施形態の難燃性樹脂組成物について説明する。
上記難燃性樹脂組成物は、上述の難燃剤組成物と熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂の少なくとも一方の樹脂とを含む。
【0094】
上記樹脂は、分子量、重合度、密度、軟化点、溶媒への不溶分の割合、立体規則性の程度、触媒残渣の有無、原料となるモノマーの種類や配合比率、重合触媒の種類(例えば、チーグラー触媒、メタロセン触媒等)等に関わらず、使用することができる。
【0095】
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等を挙げることができる。
【0096】
難燃性樹脂組成物は、難燃剤組成物と熱可塑性樹脂とを含んでもよい。
上記熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、バイオマス含有ポリオレフィン系樹脂、含ハロゲン樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、直鎖ポリエステル樹脂、分解性脂肪族、ポリアミド樹脂、セルロースエステル系樹脂;ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、アクリル系樹脂等を用いてもよい。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0097】
また、上記熱可塑性樹脂としては、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ニトリル系熱可塑性エラストマー、ナイロン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー等も挙げることができる。
【0098】
以上の各種の樹脂の中でも、優れた難燃性を付与できる点から、ポリオレフィン系樹脂又はポリウレタン系熱可塑性エラストマーが好ましい。
ポリオレフィン系樹脂としては、例えばポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ホモポリプロピレン、ランダムコポリマーポリプロピレン、ブロックコポリマーポリプロピレン、インパクトコポリマーポリプロピレン、ハイインパクトコポリマーポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、ヘミアイソタクチックポリプロピレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、ポリブテン、シクロオレフィンポリマー、ステレオブロックポリプロピレン、ポリ-3-メチル-1-ブテン、ポリ-3-メチル-1-ペンテン、ポリ-4-メチル-1-ペンテン等のα-オレフィン重合体、エチレン/プロピレンブロック又はランダム共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のα-オレフィン共重合体等が挙げられる。
【0099】
またポリウレタン系熱可塑性エラストマーとしては、熱可塑性ポリウレタン樹脂(TPU)が挙げられる。熱可塑性ポリウレタン樹脂(TPU)は分子構造中に、ウレタン基(-NHCOO-)を有するゴム状弾性体であり、ソフトセグメントと称される動きやすい長鎖部分と、ハードセグメントと称される極めて結晶性の強い部分とからなり、一般に、ポリオール、ジイソシアネート、及び鎖延長剤を用いて調製される。
また、熱可塑性ポリウレタン樹脂は、その成形方法により、液状で型に注入・硬化反応させる注型タイプ、従来のゴムと同じくロール混練後プレス成形するタイプ及び一般熱可塑性樹脂と同様に加工できるタイプに大別できるが、本発明では、それらを区別するものではない
【0100】
熱可塑性ポリウレタン樹脂の具体例としては、エステル(ラクトン)系ポリウレタン共重合体、エステル(アジぺート)系ポリウレタン共重合体、エーテル系ポリウレタン共重合体、カーボネート系ポリウレタン共重合体、エーテル・エステル系ポリウレタン共重合体が挙げられ、これらの熱可塑性ポリウレタン樹脂(TPU)は、単独で用いることができ、組み合わせて用いることができる。
【0101】
難燃剤組成物の含有量は、熱可塑性樹脂または樹脂100重量部に対して、通常、1~400重量部であり、好ましくは15~200重量部であり、より好ましくは20~70重量部の範囲内とすることができる。これにより、熱可塑性樹脂の改質効果を十分に得ることができる。
本明細書中、「~」は、特に明示しない限り、上限値と下限値を含むことを表す。
【0102】
難燃性樹脂組成物は、上記難燃剤組成物に加えて、必要に応じて、上述の添加剤から選ばれる一または二以上を含んでもよい。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0103】
難燃性樹脂組成物における添加剤の含有量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、たとえば、0.001~15重量部であり、好ましくは0.005~10重量部、より好ましくは0.01~5重量部が好ましい。このような数値範囲とすることにより、添加剤の効果の向上が得られる。
【0104】
また、難燃性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂とともに、ガラス繊維などの強化材料を含む複合材料として使用してもよい。このような難燃性樹脂組成物の一例としては、ポリオレフィン系樹脂とガラス繊維とを含んでもよい。難燃性樹脂組成物中、ポリオレフィン系樹脂がガラス繊維中に含浸された状態であってもよい。
【0105】
ガラス繊維は、ガラスの連続状繊維を用いてよい。ガラス繊維の平均繊維径が、例えば、4~30μm、フィラメント集束本数は400~10,000本、およびテックス番手は300~20,000g/kmのガラス繊維を使用してもよく、好ましくは平均繊維径9~23μm、集束本数1,000~6,000本のガラス繊維を使用してもよい。
【0106】
ガラス繊維の繊維長は、例えば、2mm以上50mm以下であり、好ましくは5mm以上30mm以下、特に好ましくは5mm以上20mm以下である。
また、ガラス繊維の表面は、シラン処理されていてもよい。
【0107】
次に、上記難燃性樹脂組成物の製造方法について説明する。
上記難燃性樹脂組成物は、上述の難燃剤組成物と熱可塑性樹脂中とを混合することで得ることができる。必要に応じて、上記添加剤を混合してよい。添加剤は、難燃剤組成物中に混合してもよく、難燃剤組成物と熱可塑性樹脂との混合物中に混合してもよい。
【0108】
混合する方法としては、一般に用いられる公知方法をそのまま適用することができる。例えば、混練機を用いて、難燃剤組成物、熱可塑性樹脂、必要に応じて添加剤を混合する。混合機としては、例えば、タンブラーミキサー、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、V型混合機、W型混合機、スーパーミキサー、ナウターミキサーなどが挙げられる。
【0109】
上記難燃性樹脂組成物は、各種形態で使用することができるが、たとえば、ペレット状、顆粒状、粉末状のいずれでもよい。取り扱い性の観点から、ペレット状が好ましい。
【0110】
次に、上記難燃性樹脂組成物を用いて成形することで、成形品を製造することができる。すなわち、本実施形態によれば、難燃性樹脂組成物を用いた成形品の製造方法や、その製造方法で得られた成形品を提供できる。
【0111】
上記成形方法としては、特に限定されるものではなく、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、回転成形、真空成形法、インフレーション成形法、カレンダー成形法、スラッシュ成形法、ディップ成形法、発泡成形法等が挙げられる。この中でも、射出成形法、押出成形法、ブロー成型法が好ましい。
これにより、樹脂板、シート、フィルム、異形品等の種々の形状の成形体が製造できる。
【0112】
上記難燃性樹脂組成物を用いてなる成形品は、各種の用途に用いることができるが、例えば、電気・電子部品、機械部品、光学機器、建築部材、自動車部品及び日用品等、各種の用途に利用することができる。この中でも、難燃性の観点から、電気・電子部品に好適に用いることができる。
【0113】
上記難燃性樹脂組成物及びその成形体は、例えば、電気・電子・通信、エレクトロニック&エンジニアリング、農林水産、鉱業、建設、食品、繊維、衣類、医療、石炭、石油、ゴム、皮革、自動車、精密機器、木材、建材、土木、家具、印刷、楽器等の幅広い産業分野に使用することができる。より具体的には、プリンター、パソコン、ワープロ、キーボード、PDA(小型情報端末機)、電話機、複写機、ファクシミリ、ECR(電子式金銭登録機)、電卓、電子手帳、カード、ホルダー、文具等の事務、OA機器、洗濯機、冷蔵庫、掃除機、電子レンジ、照明器具、ゲーム機、アイロン、コタツ等の家電機器、TV、VTR、ビデオカメラ、ラジカセ、テープレコーダー、ミニディスク、CDプレーヤー、スピーカー、液晶ディスプレー等のAV機器、コネクター、リレー、コンデンサー、スイッチ、プリント基板、コイルボビン、半導体封止材料、LED封止材料、電線、ケーブル、トランス、偏向ヨーク、分電盤、時計等の電気・電子部品及び通信機器、OA機器等のハウジング(枠、筐体、カバー、外装)や部品、自動車内外装材の用途に用いられる。この中でも特に、電線等の電子部品や自動車内外装部材等の自動車部品等に用いることができる。
【0114】
上記難燃性樹脂組成物及びその成形体は、例えば、座席(詰物、表地等)、ベルト、天井張り、コンパーチブルトップ、アームレスト、ドアトリム、リアパッケージトレイ、カーペット、マット、サンバイザー、ホイルカバー、マットレスカバー、エアバック、絶縁材、吊り手、吊り手帯、電線被覆材、電気絶縁材、塗料、コーティング材、上張り材、床材、隅壁、カーペット、壁紙、壁装材、外装材、内装材、屋根材、デッキ材、壁材、柱材、敷板、塀の材料、骨組及び繰形、窓及びドア形材、こけら板、羽目、テラス、バルコニー、防音板、断熱板、窓材等の、自動車、ハイブリッドカー、電気自動車、車両、船舶、航空機、建物、住宅及び建築用材料や、土木材料、衣料、カーテン、シーツ、合板、合繊板、絨毯、玄関マット、シート、バケツ、ホース、容器、眼鏡、鞄、ケース、ゴーグル、スキー板、ラケット、テント、楽器等の生活用品、スポーツ用品等の各分野において使用することができる。
【0115】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【実施例0116】
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0117】
<難燃剤組成物の調製>
(リン酸ピペラジン組成物の製造)
二オルトリン酸一ピペラジンの粉末25kgを、熱媒を通したヘンシェルミキサー(三井鉱山製、FM150J/T、容量150L)を使用して、温度240~255℃、回転数700~1000rpmの条件で2.5時間加熱撹拌し、脱水縮合反応を行い、リン酸ピペラジン組成物を得た。
得られたリン酸ピペラジン組成物は、分析の結果、二オルトリン酸一ピペラジンを、0.8質量%、ピロリン酸ピペラジンを99.15質量%、3分子以上の二オルトリン酸一ピペラジンが縮合したポリリン酸ピペラジンを0.05質量%含有していた。
【0118】
(実施例1)
ピロリン酸ピペラジン(PPP)として上記で製造されたリン酸ピペラジン組成物を使用し、リン酸ピペラジン組成物と、水酸化亜鉛(Zn(OH)2、純正化学株式会社製)と、を、質量比で1:1の割合で混合して混合物を得た。
得られた混合物を水に加え、室温25℃下で、2時間高速攪拌し、反応生成物を含む溶液を得た。
得られた反応生成物を、ブフナー漏斗により固液分離し、水で洗浄した後、120℃で16時間乾燥させ、白色粉末状の難燃剤組成物(PPPZn)を得た。
【0119】
(実施例2~9)
実施例1の水酸化亜鉛に代えて、表1に示す金属水酸化物を使用し、PPPと金属水酸化物との混合比率を表1に示す値を使用した以外は、実施例1と同様にして、白色粉末状の難燃剤組成物(PPPZn、PPPMg、又はPPPCa)を得た。
【0120】
(比較例1)
ピロリン酸ピペラジン(PPP)として、上記で製造されたリン酸ピペラジン組成物をそのまま、難燃剤組成物として使用した。
【0121】
【0122】
実施例1~3の難燃剤組成物をPPPZn、実施例4~6の難燃剤組成物をPPPMg、実施例7~9の難燃剤組成物をPPPCaとし、これらをPPPMと総称する。比較例1の難燃剤組成物をPPPと呼称する。
【0123】
<水への溶解量>
各実施例のPPPMの過剰量5.23g、又は比較例1のPPPの過剰量4.0gを、水100gに加え、25℃で30分間ゆっくり攪拌し、混合液を得た。混合液中の固形分を固液分離した後、残りの水分を別の容器に入れ、エバポレーターで水を乾燥させた後、容器中の残分の重量を測定した。
その残分の重量を、水100gに溶解したときの難燃剤組成物の水溶解量(g/100g H2O)とした。
結果を表1に示す。
【0124】
<TGA>
熱重量測定装置を用いて、窒素雰囲気下、150℃で30分の条件で、得られた難燃剤組成物に対して前処理を行い、前処理後の難燃剤組成物について、10℃/secの昇温速度で、150℃から320℃まで加熱処理を行い、重量減少量(%)を算出した。なお、重量減少量の算出にあたって、前処理後の難燃剤組成物を初期の重量とした。
算出された温度に対する重量減少量の関係式から、重量減少量が1%、3%減少したときの温度(1%重量減少温度Td1、3%重量減少温度Td3)を求めた。結果を表1に示す。
【0125】
<IRスペクトル>
得られた難燃剤組成物について、IRPrestige21(株式会社島津製作所)にダイアモンドATRアタッチメントDura Sampl IR 2(Smiths Detection)を取り付け、ATR法でIRスペクトルを測定した。実施例1~3を
図1、実施例4~6を
図2、実施例7~9を
図3に示す。
以下の表2に、波数が850cm
-1以上980cm
-1以下の範囲内の最大のピーク強度、又は1030cm
-1以上1180cm
-1以下の範囲内の最大のピーク強度をそれぞれ示す。
【0126】
【0127】
<XRDスペクトル>
Zn(OH)
2、PPP、実施例1~3のPPPZnに対して、UltimaIV(株式会社リガク)を用いて、粉末X線回折測定を実施した。得られたX線回折分析パターンを
図4に示す。
【0128】
(実施例10)
水酸化亜鉛(Zn(OH)
2、純正化学株式会社製)に代えて、酸化亜鉛(ZnO、三井金属鉱業株式会社製)を使用し、混合物を6時間混合した以外は、実施例1と同様にして、白色粉末状の難燃剤組成物(PPPZn)を得た。
実施例10のPPPZnの水溶解量は、0.9(g/100g H
2O)であった。
ZnO、PPP、実施例1のPPPZn、実施例10のPPPZnに対して、UltimaIV(株式会社リガク)を用いて、粉末X線回折測定を実施した。得られたX線回折分析パターンを
図5に示す。
【0129】
(実施例11)
水に代えて、100%メタノール(CH
3OH、東京化成工業株式会社製)を使用し、混合物を6時間混合した以外は、実施例1と同様にして、白色粉末状の難燃剤組成物(PPPZn)を得た。
実施例11のPPPZnの水溶解量は、0.9(g/100g H
2O)であった。
ZnO、PPP、実施例1のPPPZn、実施例11のPPPZnに対して、UltimaIV(株式会社リガク)を用いて、粉末X線回折測定を実施した。得られたX線回折分析パターンを
図6に示す。
【0130】
<難燃性樹脂組成物の調製>
(リン酸メラミン組成物の製造)
オルトリン酸一メラミンの粉末25kgを、熱媒を通したヘンシェルミキサー(三井鉱山製、FM150J/T、容量150L)を使用して、温度220~240℃、回転数700~1000rpmの条件で2.8時間加熱撹拌し、脱水縮合反応を行い、リン酸メラミン組成物を得た。得られたリン酸メラミン組成物は、分析の結果、オルトリン酸一メラミンを、0.8質量%、ピロリン酸メラミンを99.15質量%、3分子以上のオルトリン酸一メラミンが縮合したポリリン酸メラミンを0.05質量%含有していた。
【0131】
実施例1のPPPZnと、ピロリン酸メラミンとして、上記で製造されたリン酸メラミン組成物とを混合して、難燃剤組成物Aを調製した。
また、比較例1のPPPと上記で製造されたリン酸メラミン組成物とを難燃剤組成物Aと同じ比率で混合し、さらに微量のZnOを混合して、難燃剤組成物Bを調製した。
【0132】
ポリプロピレン(株式会社プライムポリマー製、J705P)100重量部に対して、得られた難燃剤組成物A/または難燃剤組成物B26重量部、グリセリンモノステアレート(理研ビタミン株式会社製、GMS)0.3重量部、フェノール系酸化防止剤(株式会社ADEKA社製、AO-60)0.1重量部、リン系酸化防止剤(株式会社ADEKA社製、2112)0.1重量部、滑剤(昭和化学株式会社製、Ca-St)0.1重量部を混合し、難燃性樹脂組成物A、Bを得た。
【0133】
【0134】
<難燃性:UL-94V試験>
得られた難燃性樹脂組成物A、Bを、200~230℃でプレス成型し、厚さ1.6mmの試験片A、Bを作成した。
UL-94規格:長さ127mm、幅12.7mm、厚さ1.6mmの試験片を垂直に保ち、下端にバーナーの火を10秒間接炎させた後で炎を取り除き、試験片に着火した火が消える時間を測定した。次に、火が消えると同時に2回目の接炎を10秒間開始し、1回目と同様にして着火した火が消える時間を測定した。また、落下する火種により試験片の下の綿が着火するか否かについても同時に評価した。
【0135】
1回目と2回目の燃焼時間、綿着火の有無などから上述のUL-94規格にしたがって燃焼ランクをつけた。燃焼ランクはV-0が最高のものであり、以下にV-1、V-2となるにしたがって難燃性は低下する。但し、V-0~V-2のランクの何れにも該当しないものはNRとする。
結果を表4に示す。
【0136】
<耐水性:耐温水性試験>
上記<難燃性:UL-94V試験>で作成した試験片A、Bについて、85℃の超純水中に7日間浸漬させた(耐温水性試験)。
・重量減少量:
耐温水性試験後の試験片A、Bに対して、120℃で、減圧乾燥を行い、その重量減少量(%)を算出した。
・電気伝導率:
耐温水性試験を行い、水を室温25℃に戻した後、水中の電気伝導率を測定し、水100g中の難燃剤組成物1gあたりの電気伝導率((μS/cm)/100g H2O/g)を算出した。
・pH:
耐温水性試験を行い、水を室温25℃に戻した後、phメーターを用いて、水中のphを測定した。
【0137】
<機械的強度、耐熱性>
得られた難燃性樹脂組成物A、Bを、200~230℃でプレス成型した後、射出成型機(NEX80:株式会社日精樹脂工業製)にて、210℃の射出温度、40℃の金型温度の条件で射出成形し、各物性評価用試験片を作成し、成形後直ちに23℃の恒温機にいれて48時間静置後、試験片を取り出して以下の測定を行った。
・引張試験:
得られた試験片(1号、厚み4mm)を用いてISO527に準拠して測定した。
・曲げ試験:
得られた試験片(80mm×10mm×4mm)を用いてISO178に準拠して測定した。
・HDT試験:
得られた試験片(80mm×10mm×4mm)を用いてISO75-2に準拠して測定した。
・シャルピー衝撃試験:
得られた試験片(80mm×10mm×4mm)を用いてISO179-1(ノッチ付)に準拠して測定した。
【0138】
実施例1~11の難燃剤組成物は、比較例1と比べて、水溶解量が小さい結果を示したことから、耐水性に優れることが分かった。
実施例1~3の難燃剤組成物は、実施例4~9と比べて、1%重量減少温度が高い結果を示したことから、耐熱性に優れることが分かった。
また、実施例1の難燃剤組成物を含む難燃性樹脂組成物は、難燃性に優れており、比較例1の難燃剤組成物を含む場合比べて、耐水性、機械的強度や耐熱性に優れる結果を示した。
このような難燃剤組成物や難燃性樹脂組成物は、耐水性が要求される用途に好適に用いることができる。