(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023053764
(43)【公開日】2023-04-13
(54)【発明の名称】像形成装置及び像形成方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20230406BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20230406BHJP
B41J 2/18 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
B41J2/175 171
B41J2/01 501
B41J2/175 121
B41J2/175 111
B41J2/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021162999
(22)【出願日】2021-10-01
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】齋賀 拓也
(72)【発明者】
【氏名】山本 誓
(72)【発明者】
【氏名】中川 智裕
(72)【発明者】
【氏名】梅村 和彦
(72)【発明者】
【氏名】廣川 悠哉
(72)【発明者】
【氏名】萩原 弘規
(72)【発明者】
【氏名】田村 里彩
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA15
2C056EC20
2C056EC32
2C056EC49
2C056FA13
2C056KB16
2C056KB37
2C056KC02
2C056KD02
(57)【要約】
【課題】液体吐出ヘッドや液体吐出ヘッドに連通する流路の気泡を効率的に除去することができ、吐出性を安定化させ、高精細な画像を出力することができる像形成装置を提供する。
【解決手段】水、顔料及びシロキサン化合物を含むインクと、前記インクを吐出する液体吐出ヘッド108と、前記インクを収容するメインタンク101と、前記メインタンク及び前記液体吐出ヘッドに接続するサブタンク120と、を備える像形成装置であって、前記サブタンクは、前記液体吐出ヘッドに前記インクを供給する正圧サブタンク103と、前記液体吐出ヘッドから前記インクを回収する負圧サブタンク102と、を有し、前記正圧サブタンクの内部の気体の圧力と、前記負圧サブタンクの内部の気体の圧力との差が、2kPa以上30kPa以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、顔料及びシロキサン化合物を含むインクと、
前記インクを吐出する液体吐出ヘッドと、
前記インクを収容するメインタンクと、
前記メインタンク及び前記液体吐出ヘッドに接続するサブタンクと、を備える像形成装置であって、
前記サブタンクは、前記液体吐出ヘッドに前記インクを供給する正圧サブタンクと、前記液体吐出ヘッドから前記インクを回収する負圧サブタンクと、を有し、
前記正圧サブタンクの内部の気体の圧力と、前記負圧サブタンクの内部の気体の圧力との差が、2kPa以上30kPa以下であることを特徴とする像形成装置。
【請求項2】
前記シロキサン化合物は、下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の像形成装置。
【化1】
(一般式(1)中、mは1以上の整数を表し、nは整数を表し、R
1及びR
2はメチル基又はOを介する環状構造を表し、Xは下記一般式(2)を表す。)
【化2】
(一般式(2)中、a及びbは整数を表し、R
3はアルキレン基を表し、R
4はアルキル基を表す。)
【請求項3】
前記シロキサン化合物は、前記インク中、0.01質量%以上1.0質量%以下含まれることを特徴とする請求項1又は2に記載の像形成装置。
【請求項4】
前記正圧サブタンクの内部の気体の圧力は、前記液体吐出ヘッドの外気圧より大きく、
前記負圧サブタンクの内部の気体の圧力は、前記液体吐出ヘッドの外気圧より小さいことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の像形成装置。
【請求項5】
前記液体吐出ヘッドは、前記サブタンクから前記インクが供給される供給口と、前記サブタンクに回収される回収口と、を有し、
前記供給口へのインク供給量は、前記回収口からのインク回収量以上であり、
前記インク回収量は、1.0mL/min以上30.0mL/min以下であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の像形成装置。
【請求項6】
前記インクは、無機シリカ粒子を含むことを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の像形成装置。
【請求項7】
前記無機シリカ粒子の体積平均一次粒子径は、1nm以上50nm以下であることを特徴とする請求項6に記載の像形成装置。
【請求項8】
前記無機シリカ粒子は、前記インク中、0.01質量%以上0.1質量%以下含まれることを特徴とする請求項6又は7に記載の像形成装置。
【請求項9】
前記インクは、25℃における粘度が4mPa・s以上10mPa・s以下であることを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の像形成装置。
【請求項10】
前記インクは、25℃における表面張力が35mN/m以下であることを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載の像形成装置。
【請求項11】
前記液体吐出ヘッドは、ラインヘッド方式であることを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載の像形成装置。
【請求項12】
水、顔料及びシロキサン化合物を含むインクと、
前記インクを吐出する液体吐出ヘッドと、
前記インクを収容するメインタンクと、
前記メインタンク及び前記液体吐出ヘッドに接続されるサブタンクと、を備える像形成装置により行う像形成方法であって、
前記サブタンクは、前記液体吐出ヘッドに前記インクを供給する正圧サブタンクと、前記液体吐出ヘッドから前記インクを回収する負圧サブタンクと、を有し、
前記正圧サブタンクの内部の気体の圧力と、前記負圧サブタンクの内部の気体の圧力との差を2kPa以上30kPa以下にすることを特徴とする像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像形成装置及び像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンター、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えば、液体吐出ヘッドを有するインク吐出方式の記録装置が知られている。また、液体吐出ヘッドとしては、ノズルに連通する個別液室への供給流路と個別液室に通じる排出流路とを有し、供給流路に通じる液体の供給口と、排出流路に通じる液体の排出口を備える循環型の液体吐出ヘッドが知られている。
【0003】
循環型の液体吐出ヘッドとしては、供給側と排出側(回収側)に液体タンクをそれぞれ備え、2つの液体タンク内のエアの正負による圧力差によって、正圧側から負圧側へ液体を送液し、またポンプで負圧側から正圧側へ送液することで、液体タンクと液体を吐出するヘッドとの間で液体を循環させる構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような循環機構により、ノズルの乾燥防止や密度の高い顔料の沈降防止等を実現することができる。
【0004】
従来の装置では、生産性を上げるためにインクを高速で循環させると、ヘッドのノズルにおける開放部を通過したインクが微細な気泡をヘッド内部に巻き込み、気泡が流路を伝ってインクタンクやヘッドなどに蓄積してしまう。このため、吐出が不安定化する問題があった。インクの吐出が不安定になると、狙った位置にインクが着弾しないため、画質が低下してしまう。
【0005】
これに対し、特許文献2及び特許文献3では、ヘッド内の泡を除去するために、インクジェットインクに消泡性や破泡性に優れるシリコーン系化合物を添加し、吐出性を安定化させる技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、シリコーン系化合物は消泡を意図した分子構造により静的表面張力が低下しやすく、ノズル内のメニスカス形成が不安定になり、気泡の巻き込みが発生しやすくなる。また、消泡剤単体では液体吐出ヘッドから流路に侵入した気泡を除去することはできない。このため、気泡除去性とインクの吐出安定性を両立させる技術が望まれている。
【0007】
そこで本発明は、液体吐出ヘッドや液体吐出ヘッドに連通する流路の気泡を効率的に除去することができ、吐出性を安定化させ、高精細な画像を出力することができる像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の像形成装置は、水、顔料及びシロキサン化合物を含むインクと、前記インクを吐出する液体吐出ヘッドと、前記インクを収容するメインタンクと、前記メインタンク及び前記液体吐出ヘッドに接続するサブタンクと、を備える像形成装置であって、前記サブタンクは、前記液体吐出ヘッドに前記インクを供給する正圧サブタンクと、前記液体吐出ヘッドから前記インクを回収する負圧サブタンクと、を有し、前記正圧サブタンクの内部の気体の圧力と、前記負圧サブタンクの内部の気体の圧力との差が、2kPa以上30kPa以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、液体吐出ヘッドや液体吐出ヘッドに連通する流路の気泡を効率的に除去することができ、吐出性を安定化させ、高精細な画像を出力することができる像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明における像形成装置の一例を示す概略図である。
【
図2】本発明における像形成装置の他の例を示す概略図である。
【
図4】液体吐出ヘッドの一例のノズル配列方向と直交する方向の断面図である。
【
図5】液体吐出ヘッドの一例のノズル配列方向と平行な方向の断面図である。
【
図6】液体吐出ヘッドの一例のノズル板を示す平面図である。
【
図7】液体吐出ヘッドの一例の流路部材を構成する各部材を示す平面図(a)~(f)である。
【
図8】液体吐出ヘッドの一例の共通液室部材を構成する各部材を示す平面図(a)及び(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る像形成装置及び像形成方法について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0012】
本発明の像形成装置は、水、顔料及びシロキサン化合物を含むインクと、前記インクを吐出する液体吐出ヘッドと、前記インクを収容するメインタンクと、前記メインタンク及び前記液体吐出ヘッドに接続するサブタンクと、を備える像形成装置であって、前記サブタンクは、前記液体吐出ヘッドに前記インクを供給する正圧サブタンクと、前記液体吐出ヘッドから前記インクを回収する負圧サブタンクと、を有し、前記正圧サブタンクの内部の気体の圧力と、前記負圧サブタンクの内部の気体の圧力との差が、2kPa以上30kPa以下であることを特徴とする。
【0013】
像形成装置は印刷装置、記録装置、画像形成装置、2次元又は3次元の像形成装置などと称されてもよく、液体吐出ヘッドとしてインクジェットヘッドを用いる場合には、像形成装置はインクジェット記録装置などと称されてもよい。
【0014】
また、本発明の像形成方法は、水、顔料及びシロキサン化合物を含むインクと、前記インクを吐出する液体吐出ヘッドと、前記インクを収容するメインタンクと、前記メインタンク及び前記液体吐出ヘッドに接続されるサブタンクと、を備える像形成装置により行う像形成方法であって、前記サブタンクは、前記液体吐出ヘッドに前記インクを供給する正圧サブタンクと、前記液体吐出ヘッドから前記インクを回収する負圧サブタンクと、を有し、前記正圧サブタンクの内部の気体の圧力と、前記負圧サブタンクの内部の気体の圧力との差を2kPa以上30kPa以下にすることを特徴とする。
【0015】
像形成方法は印刷方法、記録方法、画像形成方法、2次元又は3次元の像形成方法などと称されてもよく、液体吐出ヘッドとしてインクジェットヘッドを用いる場合には、像形成方法はインクジェット記録方法などと称されてもよい。
【0016】
(像形成装置及び像形成方法の一実施形態)
図1は、本発明に係る像形成装置の一実施形態を示す要部概略図である。
図中の矢印は液体又は基体の流れる方向を模式的に示すものであり、黒矢印は液体の流れを示し、白矢印は気体の流れを示す。
【0017】
図1には、液体吐出ヘッド108、メインタンク101、サブタンク120が図示されている。
液体吐出ヘッド108は、インクを吐出する。メインタンク101は、インクを収容する。サブタンク120は、正圧サブタンク103と負圧サブタンク102を有している。正圧サブタンク103は、液体吐出ヘッド108にインクを供給する。負圧サブタンク102は、液体吐出ヘッド108からインクを回収する。
【0018】
正圧サブタンク103と負圧サブタンク102は、気体と液体を収容している。また、正圧サブタンク103は、負圧サブタンク102及び液体吐出ヘッド108に接続されている。負圧サブタンク102は、メインタンク101及び液体吐出ヘッド108に接続されている。
【0019】
正圧サブタンク103と負圧サブタンク102は、内部の気体の圧力を測定する圧力計106と圧力計107をそれぞれ備え、各サブタンク内の気体の圧力を制御する機構を備える。これにより、各サブタンクの内部の気体が移動できる(矢印e、f)。各サブタンク内の気体の圧力を制御する機構としては、特に制限されるものではなく、適宜選択することができる。
【0020】
本実施形態の像形成装置は、メインタンク101と負圧サブタンク102との間を接続するインク供給流路109を備えている。また、送液ポンプ104を備えており、送液ポンプ104によりインクがインク供給流路109を流れる。本実施形態では、メインタンク101から負圧サブタンク102にインクが流れる(矢印a)。
【0021】
また、本実施形態の像形成装置は、負圧サブタンク102と正圧サブタンク103とを連通するバイパス流路110を備えている。また、送液ポンプ105を備えており、送液ポンプ105によりインクがバイパス流路110を流れる。本実施形態では、負圧サブタンク102から正圧サブタンク103にインクが流れる(矢印b)。
【0022】
本実施形態において、正圧サブタンク103の内部の気体の圧力と、負圧サブタンク102の内部の気体の圧力との差が、2kPa以上30kPa以下であることを要する。
なお、正圧サブタンク103の内部の気体の圧力と、負圧サブタンク102の内部の気体の圧力との差を、単に圧力差とも称することがある。
【0023】
前記圧力差が2kPa以上の場合、インクの循環が十分に行われ、サブタンク内部の圧力差により流路や負圧サブタンク内部で気泡が破泡し、気泡の除去が促進される。前記圧力差が30kPa以下の場合、インクの循環を適正にでき、インク循環による液体吐出ヘッドのノズルから気泡の巻き込みが減少するだけでなく、液滴の形成が適正に行われることで、吐出安定性が飛躍的に向上する。また、前記圧力差を上記の範囲にした上で、更に後述のインクを用いる場合、シロキサン化合物や無機シリカがインクと空気界面にある気泡の表面に割り込み、気泡を形成する膜の均一性を乱すことで維持を阻害する。これによりサブタンク内での破泡が促進され、気泡除去の相乗効果が発揮される。本実施形態によれば、優れた気泡除去性が得られ、吐出安定性が向上し、高精細な画像の出力が可能になる。
【0024】
前記圧力差としては、2kPa以上30kPa以下の範囲であり、4kPa以上24kPa以下であることが好ましく、6kPa以上20kPa以下であることがより好ましい。この場合、気泡の除去性を更に向上させることができる。
【0025】
正圧サブタンク103の内部の気体の圧力は、液体吐出ヘッド108の外気圧より大きく、かつ、負圧サブタンク102の内部の気体の圧力は、液体吐出ヘッド108の外気圧より小さいことが好ましい。この場合、インク循環時にノズルから気泡の巻き込みが減少し、吐出安定性が向上するため好ましい。
【0026】
また、正圧サブタンク103の内部の気体の圧力としては、適宜選択できるが、サブタンク外部の気圧を基準として0.1kPa以上15kPa以下であることが好ましい。この範囲である場合、ノズルからインクが漏れることを抑えることができ、吐出不良や画像乱れをより抑制することができる。
負圧サブタンク102の内部の気体の圧力としては、適宜選択できるが、サブタンク外部の気圧を基準として-20kPa以上-0.1kPa以下であることが好ましく、-15kPa以上-2kPa以下であることがより好ましい。この範囲である場合、ノズルから空気を巻き込むことをより抑制することができ、空気との接触による液体吐出ヘッド108内部でのインク乾燥を抑制できる。
【0027】
インクは、液体吐出ヘッド108のインク供給口を通って液体吐出ヘッド108の内部に供給され、液体吐出ヘッド108のインク回収口から回収される(矢印c、d)。サブタンク内部の圧力により、正圧サブタンク103から供給されたインクは、液体吐出ヘッド108の内部を通じて負圧サブタンク102へと循環する。
【0028】
この際、流量計により液体吐出ヘッド108へのインク供給量と液体吐出ヘッド108からのインク回収量をモニターしてもよい。本実施形態の像形成装置は、流量計112と流量計111を備えており、流量計112により液体吐出ヘッド108へのインク供給量をモニターし、流量計111により液体吐出ヘッド108からのインク回収量をモニターする。
【0029】
液体吐出ヘッド108は、例えばサブタンク120からインクが供給される供給口と、サブタンク120に回収される回収口と、を有している。供給口へのインク供給量と回収口からのインク回収量は、適宜選択することができる。供給口へのインク供給量は、回収口からのインク回収量以上であり、かつ、インク回収量は、1.0mL/min以上30.0mL/min以下であることが好ましい。
【0030】
インク供給量がインク回収量以上であると、吐出によって液体吐出ヘッド108内部のインクが消費された際にノズルから空気を巻き込みにくくなる。このため、気泡の発生を減少させることができる。また、インク回収量が1.0mL/min以上であると、液体吐出ヘッド108に十分な量のインクを供給することができ、流路内の気泡を除去しやすくなる。インク回収量が30.0mL/min以下であると、インク循環時にノズルから気泡を巻き込むことを減少させることができるため、吐出安定性を向上させることができる。
【0031】
次に、本実施形態の像形成装置の他の例について
図2を用いて説明する。
図2は、本例の像形成装置の要部概略図である。上記の例と同様の事項については説明を省略する。
【0032】
本実施形態における正圧サブタンク103と負圧サブタンク102は予備のエアタンクを備えていてもよい。
図2に示す例のように、本実施形態では、正圧サブタンク103は正圧エアタンク114を備えることが好ましく、負圧サブタンク102は負圧エアタンク113を備えることが好ましい。また、正圧エアタンク114は正圧サブタンク103よりも大きい容量であることがより好ましく、負圧エアタンク113は負圧サブタンク102よりも大きい容量であることがより好ましい。
【0033】
本例のように、正圧サブタンクと負圧サブタンクがそれぞれエアタンクを備えることにより、インクの供給やインクの吐出によるサブタンク内の気圧の変化を小さくすることができる。これにより、吐出安定性を更に向上させることができる。
なお、正圧エアタンク114と負圧エアタンク113では、矢印g、hのようにエアタンク外部と気体の移動がなされる。気体としては、例えば空気の他、任意の気体を用いることができる。
【0034】
次に、液体吐出ヘッドの詳細例を説明する。液体吐出ヘッドをインク吐出ヘッドなどと称することがある。また単にヘッドと称することがある。
【0035】
本実施形態における液体吐出ヘッド108は、例えば共通液室と複数の個別液室を有している。液体吐出ヘッド108は、共通液室を介して個別液室に液体が供給され、個別液室に連通するノズル孔(ノズル)から液体を吐出する。また、本実施形態の液体吐出ヘッド108では、液体は個別液室に連通する循環流路を介して共通液室に循環される。
【0036】
本発明における液体吐出ヘッドとしては、例えば以下のようなものを使用することができる。その例について、
図3~
図8を参照して説明する。
図3は、インク吐出ヘッドの一例を示す外観斜視図である。
図4は、
図3のインク吐出ヘッドのノズル配列方向と直交する方向の断面説明図である。
図5は、
図3のインク吐出ヘッドのノズル配列方向と平行な方向の一部断面説明図である。
図6は、
図3のインク吐出ヘッドのノズル板の平面説明図である。
図7は、
図3のインク吐出ヘッドの流路部材を構成する各部材の平面説明図である。
図8は、
図3のインク吐出ヘッドの共通液室部材を構成する各部材の平面説明図である。
【0037】
本例のインク吐出ヘッドは、例えば
図3~
図5に示すように、ノズル板1と、流路板2と、壁面部材としての振動板部材3とが積層接合されており、振動板部材3を変位させる圧電アクチュエータ11と、共通液室部材20と、カバー29とを備えている。
【0038】
ノズル板1は、前記インクを吐出する複数のノズル4を有している。
流路板2は、ノズル4に通じる個別液室6と、前記流入流路としての個別液室6に通じる流体抵抗部7、及び流体抵抗部7に通じる液導入部8が形成されている。また、流路板2は、ノズル板1側から複数枚の板状部材41~45を積層接合して形成され、これらの板状部材41~45と振動板部材3を積層接合して流路部材40が構成されている。
【0039】
振動板部材3は、液導入部8と共通液室部材20で形成される共通液室10とを通じる開口としてのフィルタ部9を有している。振動板部材3は、流路板2の個別液室6の壁面を形成する壁面部材である。この振動板部材3は2層構造(限定されない)とし、流路板2側から薄肉部を形成する第1層と、厚肉部を形成する第2層で形成され、第1層で個別液室6に対応する部分に変形可能な振動領域30を形成している。
【0040】
ここで、ノズル板1には、
図6に示すように、複数のノズル4が千鳥状に配置されている。
【0041】
流路板2を構成する板状部材41には、
図7(a)に示すように、個別液室6を構成する貫通溝部(溝形状の貫通穴の意味)6aと、流体抵抗部51、前記流出流路としての循環流路52を構成する貫通溝部51a、52aが形成されている。
【0042】
同じく板状部材42には、
図7(b)に示すように、個別液室6を構成する貫通溝部6bと、循環流路52を構成する貫通溝部52bが形成されている。
【0043】
同じく板状部材43には、
図7(c)に示すように、個別液室6を構成する貫通溝部6cと、循環流路53を構成するノズル配列方向を長手方向とする貫通溝部53aが形成されている。
【0044】
同じく板状部材44には、
図7(d)に示すように、個別液室6を構成する貫通溝部6dと、流体抵抗部7である貫通溝部7aと、液導入部8を構成する貫通溝部8aと、循環流路53を構成するノズル配列方向を長手方向とする貫通溝部53bが形成されている。
【0045】
同じく板状部材45には、
図7(e)に示すように、個別液室6を構成する貫通溝部6eと、液導入部8を構成するノズル配列方向を長手方向とする貫通溝部8b(フィルタ下流側液室となる)と、循環流路53を構成するノズル配列方向を長手方向とする貫通溝部53cが形成されている。
【0046】
振動板部材3には、
図7(f)に示すように、振動領域30と、フィルタ部9と、循環流路53を構成するノズル配列方向を長手方向とする貫通溝部53dが形成されている。
【0047】
このように、流路部材を複数の板状部材を積層接合して構成することにより、簡単な構成で複雑な流路を形成することができる。
【0048】
以上の構成により、流路板2及び振動板部材3からなる流路部材40には、各個別液室6に通じる流路板2の面方向に沿う流体抵抗部51、循環流路52及び循環流路52に通じる流路部材40の厚み方向の循環流路53が形成される。なお、循環流路53は後述する循環共通液室50に通じている。
【0049】
一方、共通液室部材20には、正圧サブタンクから前記インクが供給される共通液室10と、負圧サブタンクにインクが回収される側の流路となる循環共通液室50が形成されている。
【0050】
第1共通液室部材21には、
図8(a)に示すように、圧電アクチュエータ用貫通穴25aと、共通液室下流部10Aとなる貫通溝部10aと、循環共通液室50となる底の有る溝部50aが形成されている。
【0051】
第2共通液室部材22には、
図8(b)に示すように、圧電アクチュエータ用貫通穴25bと、共通液室上流部10Bとなる溝部10bが形成されている。また、第2共通液室部材22には、
図3に示すように、共通液室10のノズル配列方向の一端部と供給ポート71を通じる供給口部となる貫通穴71aが形成されている。
【0052】
第1共通液室部材21及び第2共通液室部材22には、循環共通液室50のノズル配列方向の他端部(貫通穴71aと反対側の端部)と循環ポート81を通じる貫通穴81a、81bが形成されている。
【0053】
なお、
図8(a)及び(b)において、貫通孔については白抜き、底のある溝部については面塗りを施して示している。
【0054】
共通液室部材20は、第1共通液室部材21及び第2共通液室部材22によって構成され、第1共通液室部材21を流路部材40の振動板部材3側に接合し、第1共通液室部材21に第2共通液室部材22を積層して接合している。
【0055】
ここで、第1共通液室部材21は、液導入部8に通じる共通液室10の一部である共通液室下流部10Aと、循環流路53に通じる循環共通液室50とを形成している。また、第2共通液室部材22は、共通液室10の残部である共通液室上流部10Bを形成している。このとき、共通液室10の一部である共通液室下流部10Aと循環共通液室50とはノズル配列方向と直交する方向に並べて配置されるとともに、循環共通液室50は共通液室10内に投影される位置に配置される。
【0056】
これにより、循環共通液室50の寸法(大きさ)が流路部材40で形成される個別液室6、流体抵抗部7及び液導入部8を含む流路に必要な寸法による制約を受けることがなくなる。そして、循環共通液室50と共通液室10の一部が並んで配置され、循環共通液室50は共通液室10内に投影される位置に配置されることにより、ノズル配列方向と直交する方向のヘッドの幅を抑制することができ、ヘッドの大型化を抑制できる。
【0057】
上述したように、共通液室部材20は、共通液室10と循環共通液室50が形成されている。共通液室10は正圧サブタンクから前記インクが供給される。循環共通液室50は負圧サブタンクにインクが回収される側の流路となる。
【0058】
一方、振動板部材3の個別液室6とは反対側に、振動板部材3の振動領域30を変形させる駆動手段(アクチュエータ手段、圧力発生手段)としての電気機械変換素子を含む圧電アクチュエータ11を配置している。この圧電アクチュエータ11は、
図5に示すように、ベース部材13上に接合した圧電部材12を有している。圧電部材12にはハーフカットダイシングによって溝加工して1つの圧電部材12に対して所要数の柱状の圧電素子12A、12Bを所定の間隔で櫛歯状に形成している。
【0059】
ここでは、圧電部材12の圧電素子12Aは駆動波形を与えて駆動させる圧電素子とし、圧電素子12Bは駆動波形を与えないで単なる支柱として使用しているが、すべての圧電素子12A、12Bを駆動させる圧電素子として使用することもできる。
【0060】
そして、圧電素子12Aを振動板部材3の振動領域30に形成した島状の厚肉部である凸部30aに接合している。また、圧電素子12Bを振動板部材3の厚肉部である凸部30bに接合している。
【0061】
この圧電部材12は、圧電層と内部電極とを交互に積層したものであり、内部電極がそれぞれ端面に引き出されて外部電極が設けられ、外部電極にフレキシブル配線部材15が接続されている。
【0062】
このように構成したインク吐出ヘッドにおいては、例えば、圧電素子12Aに与える電圧を基準電位から下げることによって圧電素子12Aが収縮し、振動板部材3の振動領域30が下降して個別液室6の容積が膨張する。これにより、個別液室6内に前記インクが流入する。
【0063】
その後、圧電素子12Aに印加する電圧を上げて圧電素子12Aを積層方向に伸長させ、振動板部材3の振動領域30をノズル4に向かう方向に変形させて個別液室6の容積を収縮させる。これにより、個別液室6内の前記インクが加圧され、ノズル4から前記インクが吐出される。
【0064】
そして、圧電素子12Aに与える電圧を基準電位に戻すことによって振動板部材3の振動領域30が初期位置に復元し、個別液室6内部に負圧が発生するので、このとき、共通液室10から個別液室6内に前記インクが充填される。そこで、ノズル4のメニスカス面の振動が減衰して安定した後、次の吐出のための動作に移行する。
【0065】
なお、このヘッドの駆動方法については上記の例(引き-押し打ち)に限るものではなく、駆動波形の与えた方によって引き打ちや押し打ちなどを行うこともできる。
【0066】
また、上述した実施形態では、個別液室6に圧力変動を与える手段として積層型圧電素子を用いて説明した。駆動方法についてはこれに限定されず、薄膜状の圧電素子を用いることも可能である。更に、個別液室6内に発熱抵抗体を配し、発熱抵抗体の発熱によって気泡を生成して圧力変動を与えるものや、静電気力を用いて圧力変動を生じさせるものを使用することができる。液体供給装置や循環経路の保護および吐出安定性の観点からピエゾ方式であることが好ましい。
【0067】
インクジェットの印刷方式としては、ライン方式及びシリアル方式のインクジェットヘッドが知られている。
ライン方式のインクジェットヘッドは、被印刷物の搬送方向に対して直交する方向にノズルをライン状に配置し、被印刷物を搬送方向に連続的に移動させつつ、一定の位置に保持されたインクジェットヘッドから被印刷物に対して液滴を吐出する方式である。
シリアル方式のインクジェットヘッドは、被印刷物を搬送方向に断続的に移動させつつ、被印刷物の搬送方向に対して直交する方向に移動可能なインクジェットヘッドから被印刷物に対して液滴を吐出する方式である。
【0068】
本発明では、いずれの方式も用いることができるが、ラインヘッド方式の液体吐出ヘッドを用いることが好ましい。ラインヘッド方式ではヘッドを固定するため、振動など環境の影響を受けにくいという点で吐出安定性が向上する。
【0069】
(インク)
次に、本発明に用いられるインクについて説明する。
本発明に用いられるインクは、水、顔料及びシロキサン化合物を含み、必要に応じて、有機溶剤、界面活性剤及びその他の添加剤等を含む。
【0070】
<シロキサン化合物>
本発明におけるシロキサン化合物としては、適宜選択でき、例えば、ポリジメチルシロキサン等のポリシロキサン繰り返し構造を有する化合物の側鎖に親水性基や親水性ポリマー鎖を有する化合物、もしくは末端に親水性基や親水性ポリマー鎖を有する化合物などが挙げられる。
【0071】
本発明におけるシロキサン化合物としては、他にも未変性シロキサン化合物であってもよく、未変性シロキサン化合物としては、例えば未変性ポリジメチルシロキサンが挙げられる。このようなシロキサン化合物としては、例えばオクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等が挙げられる。
【0072】
なお、前記シロキサン化合物とは、その構造中にポリシロキサン構造を有していればよい。シロキサン化合物は表面張力が小さく、親水性基の導入により水との混和性も良好であるため拡散性に優れ、泡膜に侵入しやすい特徴がある。そのため、少量の添加で消泡効果を示すが、本発明では圧力操作による循環機構を併用することにより、シロキサン化合物の拡散を促し、サブタンク内部で減圧、破泡することにより更に優れた消泡効果を発揮する。
【0073】
前記シロキサン化合物としては、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。
変性基としては、適宜選択でき、ポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基等が挙げられる。ポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するポリエーテル変性シロキサン化合物は良好な性質を示すため好ましい。
【0074】
このようなシロキサン化合物としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、ビックケミー株式会社、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、日本エマルジョン株式会社、共栄社化学などから入手できる。
【0075】
上記のポリエーテル変性シロキサン化合物としては、市販品を用いることができ、例えば、KF-618、KF-642、KF-643、KF-6004(信越化学工業株式会社)、EMALEX-SS-5602、SS-1906EX(日本エマルジョン株式会社)、FZ-2105、FZ-2118、FZ-2154、FZ-2161、FZ-2162、FZ-2163、FZ-2164、DOWSIL DK Q1-1247、DOWSIL FS 1277、DOWSIL FS 013A、DOWSIL 1313、(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社)、BYK-019、BYK-025、BYK-033、BYK-387(ビックケミー株式会社)、TSF4440、TSF4452、TSF4453(東芝シリコン株式会社)などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0076】
前記シロキサン化合物の形態は特に限定されず、オイル型、コンパウンド型、エマルション型、水溶液など適宜使用可能である。インク中の分散性の観点から、エマルション型または水溶液の形態であることが好ましい。
【0077】
シロキサン化合物は、インク中、0.01質量%以上1.0質量%以下含まれることが好ましい。この範囲であると、ノズルの濡れ性やサブタンク内部における消泡性に優れた効果を示し、吐出安定性が向上するため好ましい。
【0078】
シロキサン化合物としては、下記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。この場合、水に対して優れた分散性を有し、吐出安定性を向上させることができる。
【0079】
【0080】
(一般式(1)中、mは1以上の整数を表し、nは整数を表し、R1及びR2はメチル基又はOを介する環状構造を表し、Xは下記一般式(2)を表す。)
【0081】
【0082】
(一般式(2)中、a及びbは整数を表し、R3はアルキレン基を表し、R4はアルキル基を表す。)
【0083】
上記のポリエーテル変性シロキサン化合物として、このようなポリアルキレンオキシド構造をジメチルポリシロキサンのSi部側鎖に導入したものを用いることで、水に対して優れた分散性を有し、吐出安定性を向上させることができる。
【0084】
前記一般式(1)の構造において、整数m個の変性シロキサンの繰り返し構造単位を有していることが好ましく、mは0でもよいが1以上だと水系インクとの親和性が向上して気泡除去が促進されるため好ましい。また、整数n個のジメチルシロキサンの繰り返し構造単位はインクの表面張力を低下させて吐出性を向上させる効果があり、効果を高めるにはnはmより大きいことが好ましい。
【0085】
前記一般式(1)の構造において、R1及びR2はメチル基又はOを介する環状構造である。Oを介する環状構造とは、主鎖末端が―R1―O―R2―の形で結合した環状シロキサンを指す。例としては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等が挙げられる。これらの一部に変性シロキサンを導入して親水性を向上させたシロキサン化合物を用いてもよい。
【0086】
前記一般式(2)の構造において、R3は短鎖のアルキレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基、プロピレン基が好ましい。R4はアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基が好ましい。
【0087】
<無機シリカ粒子>
本発明で使用されるインクは無機シリカ粒子を成分に含むことが好ましい。無機シリカ粒子を含むことにより、気泡除去性を向上させることができる。
【0088】
無機シリカ粒子の種類としては、特に制限はないが、例えばヒュームドシリカやコロダイルシリカを用いることができ、これらに親水性の表面処理を加えたものや、分散剤などを加えながらミル分散させて得た分散液も好適に用いることができる。
【0089】
無機シリカ粒子の体積平均一次粒子径は、1nm以上50nm以下であることが好ましい。この範囲である場合、分散性が向上する。なお、無機シリカ粒子の体積平均一次粒子径は、無機シリカの一次粒子の体積平均粒子径を表す。
【0090】
無機シリカ粒子は、インク中、0.01質量%以上0.1質量%以下含まれることが好ましい。この範囲である場合、像形成装置のサブタンク内部での破泡性が向上する。
【0091】
本発明における無機シリカ粒子は、市販されているものを使用することができ、例えばST-XS、ST-S、ST-30、ST-50-T、ST-30L、ST-CM、ST-YL、ST-PS-M、ST-NS(日産化学株式会社)、AEROSIL 50、AEROSIL OX50、AEROSIL 130、AEROSIL 200、AEROSIL 200CF、AEROSIL 300、AERODISP W7520、AERODISP W7622、AERODISP W1813(日本アエロジル株式会社)、QSG-10、QSG-30、QSG-100、X-24-9600A(信越化学工業株式会社)などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0092】
<有機溶剤>
本発明に使用する有機溶剤としては特に制限されず、水溶性有機溶剤を用いることができる。例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
【0093】
水溶性有機溶剤の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
【0094】
湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
【0095】
炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物も好適に使用される。炭素数8以上のポリオール化合物の具体例としては、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールなどが挙げられる。
グリコールエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類などが挙げられる。
【0096】
炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物は、記録媒体として紙を用いた場合に、インクの浸透性を向上させることができる。
【0097】
有機溶剤のインク中における含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上60質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0098】
<水>
インクにおける水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%~60質量%がより好ましい。
【0099】
<顔料>
顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。これらは、1種単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。また、混晶を使用しても良い。
顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンダ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、金色や銀色などの光沢色顔料やメタリック顔料などを用いることができる。
【0100】
無機顔料としては、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
【0101】
また、有機顔料としては、アゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。これらの顔料のうち、溶媒と親和性の良いものが好ましく用いられる。その他、樹脂中空粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
【0102】
顔料の具体例として、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料があげられる。
【0103】
さらに、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、153、155、180、185、213、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、207、208、209、213、219、224、254、264、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3、15:4(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36、等がある。
【0104】
インク中の顔料の含有量は、良好な定着性や吐出安定性の点から、0.1質量%以上25質量%以下が好ましく、より好ましくは1.0質量%以上20.0質量%以下である。
【0105】
<樹脂>
インク中に含有する樹脂の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂などが挙げられる。
これらの樹脂からなる樹脂粒子を用いても良い。樹脂粒子を、水を分散媒として分散した樹脂エマルションの状態で、色材や有機溶剤などの材料と混合してインクを得ることが可能である。前記樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。また、これらは、1種を単独で用いても、2種類以上の樹脂粒子を組み合わせて用いてもよい。
【0106】
樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な定着性、高い画像硬度を得る点から、10nm以上1,000nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が特に好ましい。
前記体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0107】
樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、定着性、インクの保存安定性の点から、インク全量に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましい。
【0108】
<添加剤>
インクには、必要に応じて、界面活性剤、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤等を加えても良い。
【0109】
<界面活性剤>
界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
シリコーン系界面活性剤には特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、前記シロキサン化合物が界面活性機能を持つ場合は代替または併用しても良い。また、シリコーン系界面活性剤としては高pHでも分解しないものが好ましい。
【0110】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH4、NH3CH2CH2OH、NH2(CH2CH2OH)2、NH(CH2CH2OH)3等が挙げられる。
【0111】
両性界面活性剤としては、例えばラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩、などが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0112】
インク中における界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、濡れ性、吐出安定性に優れ、画像品質が向上する点から、0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましい。
【0113】
<防腐防黴剤>
防腐防黴剤としては、特に制限はなく、例えば、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンなどが挙げられる。
【0114】
<防錆剤>
防錆剤としては、特に制限はなく、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0115】
<pH調整剤>
pH調整剤としては、pHを7以上に調整することが可能であれば、特に制限はなく、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンなどが挙げられる。
【0116】
<インクの物性>
インクの物性としては、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
インクの25℃での粘度は、印字濃度や文字品位が向上し、また、良好な吐出性が得られる点から、4mPa・s以上10mPa・s以下が好ましい。ここで、粘度は、例えば回転式粘度計(東機産業社製RE-80L)を使用することができる。測定条件としては、25℃で、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間で測定可能である。
【0117】
インクの表面張力としては、ノズルのメニスカスの安定化、また記録媒体上で好適にインクがレベリングされ、インクの乾燥時間が短縮される点から、25℃で、35mN/m以下が好ましく、32mN/m以下がより好ましい。
【0118】
インクのpHとしては、接液する金属部材の腐食防止の観点から、7~12が好ましく、8~11がより好ましい。
【0119】
(記録媒体)
記録媒体としては、特に制限はなく、普通紙、光沢紙、特殊紙、布などを用いることもできるが、非浸透性基材を用いても良好な画像形成が可能である。また、一般的な記録媒体として用いられるものに限られず、壁紙や床材などの建材、衣料用などの布、テキスタイル、皮革等を適宜使用することができる。また、被印刷物を搬送する経路の構成を調整することで、セラミックスやガラス、金属を使用することもできるが、これに限定されるものではない。
【実施例0120】
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0121】
(シアン顔料分散液の製造例)
機械式撹拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管、及び滴下ロートを備えた1Lのフラスコ内を充分に窒素ガス置換した後、スチレン11.2質量部、アクリル酸2.8質量部、ラウリルメタクリレート12.0質量部、ポリエチレングリコールメタクリレート4.0質量部、スチレンマクロマー4.0質量部、及びメルカプトエタノール0.4質量部を混合し、65℃に昇温した。
【0122】
次に、スチレン100.8質量部、アクリル酸25.2質量部、ラウリルメタクリレート108.0質量部、ポリエチレングリコールメタクリレート36.0質量部、ヒドロキシルエチルメタクリレート60.0質量部、スチレンマクロマー36.0質量部、メルカプトエタノール3.6質量部、アゾビスメチルバレロニトリル2.4質量部、及びメチルエチルケトン18質量部を混合した混合溶液を2.5時間かけて、フラスコ内に滴下した。滴下後、アゾビスメチルバレロニトリル0.8質量部及びメチルエチルケトン18質量部の混合溶液を0.5時間かけて、フラスコ内に滴下した。65℃で1時間熟成した後、アゾビスメチルバレロニトリル0.8質量部を添加し、更に1時間熟成した。反応終了後、フラスコ内にメチルエチルケトン364質量部を添加し、濃度が50質量%のポリマー溶液Aを800質量部得た。
【0123】
次に、得られたポリマー溶液Aを28質量部と、フタロシアニン顔料(大日精化工業株式会社、クロモファインブルーA-220JC)26質量部、1mol/Lの水酸化カリウム水溶液13.6質量部、メチルエチルケトン20質量部、及びイオン交換水13.6質量部を十分に撹拌した後、ロールミルを用いて混練しペーストを得た。得られたペーストを純水200質量部に投入し、充分に攪拌した後、エバポレータ用いてメチルエチルケトン及び水を留去し、更に粗大粒子を除くためにこの分散液を平均孔径5.0μmのポリビニリデンフロライドメンブランフィルターにて加圧濾過し、顔料15質量%含有、固形分20質量%の顔料含有ポリマー微粒子分散液を得た。得られた顔料分散液におけるポリマー微粒子の平均粒子径(D50)を測定した。
なお、粒度分布測定装置(日機装株式会社製、ナノトラックUPA-EX150)で測定した平均粒子径(D50)は56.0nmであった。
【0124】
(インク1の作製例)
イオン交換水40.0部、サフィノール420(日信化学工業株式会社)1.0質量部、1,2,3-ベンゾトリアゾール0.1質量部、1,2-ベンゾイソチアゾール-3(2H)-オン0.1質量部からなる混合液に、AEROSIL 200(日本アエロジル株式会社)0.05質量部を加えて撹拌し、ホモミキサーで無機シリカの分散液を得た。前記分散液に、プロパン-1,2-ジオール20.0質量部、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール2.0質量部、シロキサン化合物としてBYK-019(ビックケミー株式会社)0.2質量部を加えて撹拌した。
次いで、前記シアン顔料分散体20.0質量部、バインダーとしてスーパーフレックス130(第一工業製薬社製)15.0質量部、残量分のイオン交換水を添加して全量を100質量部とし、1時間撹拌した。この液を平均孔径5.0μmのポリビニリデンフロライドメンブレンフィルターにて加圧濾過し、粗大粒子やごみを除去して、[インク1]を作製した。
【0125】
(インク2~14の作製例)
前記[インク1]の作製例において、表1の材料に置き換える以外は同様にして[インク2~14]を作製した。
【0126】
前記インク作製に使用した材料は下記の通りである。一次粒子径とあるのは、体積平均一次粒子径を表す。
・BYK-019(ビックケミー株式会社):側鎖ポリエーテル変性シロキサン化合物
・KF-642(信越化学工業株式会社):側鎖ポリエーテル変性シロキサン化合物
・オクタメチルシクロテトラシロキサン(富士フイルム和光純薬株式会社):環状ポリメチルシロキサン
・KF-6004(信越化学工業株式会社):両末端ポリエーテル変性シロキサン化合物
・AEROSIL 200(日本アエロジル株式会社):無機シリカ(一次粒子径7~20nm)
・X-24-9600A(信越化学工業株式会社):無機シリカ(一次粒子径80nm)
【0127】
なお、BYK-019とKF-642のシロキサン化合物は、前記一般式(1)で表される化合物に該当する。
【0128】
また、表1中、PGとEHDは、以下である。
・PG:プロパン-1,2-ジオール
・EHD:2-エチル-1,3-ヘキサンジオール
【0129】
また、表1中、イオン交換水は、インク全量が100質量部となるような残量を加えており、表中、小数点第1位まで表示している。
【0130】
(実施例1)
図1に示す循環手段を有した装置に、インクジェットヘッド(RICOH MH5421MF、株式会社リコー製)を搭載した装置を作製し、前記[インク1]を充填した。外気圧に対して、正圧サブタンク内の気体の圧力を+9.0kPaに設定し、負圧サブタンク内の気体の圧力を-9.0kPaに設定した。このような装置でインク循環を行った。
【0131】
(実施例2~6、実施例12~18)
実施例1の装置において、インクを表2の条件に置き換える以外は同様にして、実施例2~6および実施例12~18の条件の装置でインク循環を行った。
【0132】
(実施例7~9)
実施例1の装置において、各サブタンク内部圧力の条件を表2の条件に置き換える以外は同様にして、実施例7~9の条件の装置でインク循環を行った。
なお、実施例8では、サブタンクからヘッドに供給されるインクの供給量が、ヘッドからサブタンクに回収されるインクの回収量よりも下回っていた。
【0133】
(実施例10、11)
実施例1の装置において、各サブタンク内部圧力の条件を表2の条件に置き換え、装置のインク流路となるシリコンチューブの内径を変更してインク流量を調節した以外は同様にして、実施例10、11の条件の装置でインク循環を行った。
【0134】
(比較例1)
実施例1の装置において、インクを表2の条件に置き換える以外は同様にして、比較例1の条件の装置でインク循環を行った。
【0135】
(比較例2)
実施例1の装置において、負圧サブタンクと正圧サブタンクを大気開放してヘッド下流のインク回収及び循環を停止した以外は同様にして、比較例2の条件の装置でインク循環を行った。
【0136】
(比較例3、4)
実施例1の装置において、サブタンク内部圧力の条件を表2の条件に置き換える以外は同様にして、比較例3、4の条件の装置でインク循環を行った。
【0137】
(評価)
各条件に対して以下のようにして、吐出安定性、気泡除去性を評価した。結果を下記表2に示した。
【0138】
<吐出安定性>
PVCフィルム上にノズルチェックパターンを印刷して吐出ノズル数(A)を確認する。次いで、ノズル面を大気開放したままインクを1時間循環させ、再度PVCフィルム上にノズルチェックパターンを印刷して、正常に印刷された吐出ノズル数(B)を確認する。吐出ノズル数(A)を100%としたときの吐出ノズル数(B)の割合を計算し、以下の基準で吐出安定性を評価した。評価はAが最も優れた結果を示し、C以上である場合が好ましい。
【0139】
-吐出安定性の評価基準-
A:吐出ノズル数が98%以上
B:吐出ノズル数が90%以上98%未満
C:吐出ノズル数が50%以上90%未満
D:吐出ノズル数が50%未満
【0140】
<気泡除去性>
PVCフィルム上にノズルチェックパターンを印刷して吐出ノズル数(A)を確認する。次いで、正圧サブタンクからヘッドまでの間の流路に接続した三方活栓から、プラスチックシリンジで流路に空気を1mL注入してインクの循環を行う。ヘッドのクリーニングを実施し、ノズルチェックパターンを印刷して吐出ノズル数(C)を確認する。以降、5分毎にクリーニングと吐出ノズル数の確認をセットで行う。吐出ノズル数(A)を100%としたときの吐出ノズル数(C)の割合を計算し、98%以上回復するまでの時間を評価基準として装置内の気泡除去性を評価した。評価はAが最も優れた結果を示し、C以上である場合が好ましい。
【0141】
-気泡除去性の評価基準-
A:回復に要する時間が10分以下
B:回復に要する時間が20分以下
C:回復に要する時間が50分以下
D:60分で回復しない
【0142】
なお、表2中、「ヘッド下流側インク回収量」とあるのは、液体吐出ヘッドの回収口からのインク回収量を表す。
【0143】
【0144】