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特開2023-53918上部電極アセンブリ及びプラズマ処理装置
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  • 特開-上部電極アセンブリ及びプラズマ処理装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023053918
(43)【公開日】2023-04-13
(54)【発明の名称】上部電極アセンブリ及びプラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/46 20060101AFI20230406BHJP
【FI】
H05H1/46 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155478
(22)【出願日】2022-09-28
(31)【優先権主張番号】63/261,955
(32)【優先日】2021-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】加藤 智也
(72)【発明者】
【氏名】李 超
【テーマコード(参考)】
2G084
【Fターム(参考)】
2G084BB23
2G084CC12
2G084CC33
2G084DD15
2G084DD38
2G084DD55
2G084DD63
2G084DD64
2G084FF32
(57)【要約】
【課題】上部電極アセンブリが有する第1の部材と第2の部材との間において安定した電気的導通を実現する。
【解決手段】プラズマ処理装置の上部電極アセンブリであって、導電性材料から形成される第1の部材と、導電性材料から形成され、前記第1の部材の上に設けられた第2の部材と、前記第1の部材と前記第2の部材との間に介在し、前記第1の部材と前記第2の部材とを互いに導通させる導通部材と、を備え、前記導通部材は、ニッケル、クロム及びモリブデンを含有し、かつ表面処理が施されている、上部電極アセンブリが提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理装置の上部電極アセンブリであって、
導電性材料から形成される第1の部材と、
導電性材料から形成され、前記第1の部材の上に設けられた第2の部材と、
前記第1の部材と前記第2の部材との間に介在し、前記第1の部材と前記第2の部材とを互いに導通させる導通部材と、を備え、
前記導通部材は、ニッケル、クロム及びモリブデンを含有し、かつ表面処理が施されている、上部電極アセンブリ。
【請求項2】
前記導通部材は、インコネル(登録商標)、またはハステロイ(登録商標)を含む、
請求項1に記載の上部電極アセンブリ。
【請求項3】
前記導通部材は、インコネル(登録商標)625を含む、
請求項2に記載の上部電極アセンブリ。
【請求項4】
前記表面処理は、プラズマ窒化処理、プラズマ炭化処理、熱処理、またはCVDによる被膜形成である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の上部電極アセンブリ。
【請求項5】
前記導通部材は、窒素含有表面、または炭素含有表面を有する、
請求項4に記載の上部電極アセンブリ。
【請求項6】
前記第1の部材はシリコンを含む導電性部材であり、前記第2の部材はアルミニウムを含む導電性部材である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の上部電極アセンブリ。
【請求項7】
前記第1の部材は上部電極であり、前記第2の部材はクーリングプレートである、
請求項1~3のいずれか一項に記載の上部電極アセンブリ。
【請求項8】
前記第1の部材は上部電極の周縁に位置するグランドリングであり、前記第2の部材は前記上部電極の周縁に位置するヒータを有する環状部材である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の上部電極アセンブリ。
【請求項9】
前記第1の部材の電位及び前記第2の部材の電位は、フローティング電位、またはグラウンド電位である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の上部電極アセンブリ。
【請求項10】
処理チャンバと、前記処理チャンバ内にて基板を支持する基板支持部と、前記処理チャンバ内の前記基板支持部の上方に前記基板支持部に対向して設けられる上部電極アセンブリと、を有し、
前記上部電極アセンブリは、
導電性材料から形成される第1の部材と、
導電性材料から形成され、前記第1の部材の上に設けられた第2の部材と、
前記第1の部材と前記第2の部材との間に介在し、前記第1の部材と前記第2の部材とを互いに導通させる導通部材と、を備え、
前記導通部材は、ニッケル、クロム及びモリブデンを含有し、かつ表面処理が施されている、プラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、上部電極アセンブリ及びプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
容量結合型のプラズマ処理装置がプラズマ処理装置の一種として用いられている。例えば、特許文献1は、容量結合型のプラズマ処理装置を開示している。容量結合型のプラズマ処理装置は、上部電極を備える。上部電極は、シャワープレートと、上部電極本体を含んでいる。シャワープレートと上部電極本体との間には、金属スパイラルチューブが設けられている。金属スパイラルチューブにより、シャワープレートと上部電極本体との間の導通が確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-356509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、上部電極アセンブリが有する第1の部材と第2の部材との間において安定した電気的導通を実現可能なプラズマ処理装置の上部電極アセンブリ及びプラズマ処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一の態様によれば、プラズマ処理装置の上部電極アセンブリであって、導電性材料から形成される第1の部材と、導電性材料から形成され、前記第1の部材の上に設けられた第2の部材と、前記第1の部材と前記第2の部材との間に介在し、前記第1の部材と前記第2の部材とを互いに導通させる導通部材と、を備え、前記導通部材は、ニッケル、クロム及びモリブデンを含有し、かつ表面処理が施されている、上部電極アセンブリが提供される。
【発明の効果】
【0006】
一の側面によれば、上部電極アセンブリが有する第1の部材と第2の部材との間において安定した電気的導通を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る上部電極アセンブリの一例を示す拡大図。
図2】第2実施形態に係る上部電極アセンブリの一例を示す拡大図。
図3】一実施形態に係るプラズマ処理装置の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0009】
[上部電極アセンブリ]
本開示の例示的実施形態は、上部電極アセンブリ及びプラズマ処理装置に関するものである。本開示における上部電極アセンブリ3(図3参照)は第1の部材と第2の部材とを有する。第1の部材は、導電性材料から形成される。第2の部材は、導電性材料から形成され、第1の部材の上に設けられる。
【0010】
上部電極アセンブリ3は、第1の部材と第2の部材との間に介在し、第1の部材と第2の部材とを互いに導通させる導通部材を有する。上部電極アセンブリ3は、第1の部材と第2の部材との間に、ニッケル、クロム及びモリブデンを含有し、かつ表面処理が施されている。
【0011】
第1実施形態では、上部電極アセンブリ3の第1の部材及び第2の部材の一例として、図1の上部電極31及びクーリングプレート32を例に挙げる。第2実施形態では、上部電極アセンブリ3の第1の部材及び第2の部材の一例として、図2のグランドリング33及び第3環状部材36を例に挙げる。
【0012】
<第1実施形態>
第1実施形態に係る上部電極アセンブリ3について、図1を参照しながら説明する。図1は、第1実施形態に係る上部電極アセンブリ3の一例を示す拡大図である。図1は、図3の上部電極アセンブリ3の外周側の一部を拡大している。
【0013】
上部電極アセンブリ3は、上部電極31とクーリングプレート32とを有する。上部電極31は、第1の部材の一例である。クーリングプレート32は、第2の部材の一例である。導通部材41は、上部電極31とクーリングプレート32との間に介在し、上部電極31とクーリングプレート32とを互いに導通させる。例えば導通部材41は、上部電極31とクーリングプレート32との間にて周方向に全周に亘って設けられている。導通部材41は、例えば上部電極31の周方向に全周に亘って設けられるスパイラルチューブである。
【0014】
上部電極31及びクーリングプレート32の外周には、第1環状部材34と、第1環状部材34の下部に設けられた第2環状部材35と、第1環状部材34の下部に設けられた第3環状部材36とが設けられている。第1環状部材34はクーリングプレート32の周囲を囲む。第2環状部材35は径方向の断面がL字状であり、上部電極31とクーリングプレート32とを締結する締結用ネジ部52を介して上部電極31の周囲を囲む。第3環状部材36は、第2環状部材35の外周にて第2環状部材35に隣接し、第2環状部材35の周囲を囲む。第2環状部材35及び第3環状部材36の下方にはグランドリング33が設けられている。グランドリング33は、上部電極31の最外周の下面、第2環状部材35及び第3環状部材36の下面を覆うように設けられている。第3環状部材36は、上部電極31の周縁に位置するヒータ36aを有する環状部材の一例である。
【0015】
第1環状部材34~第3環状部材36及びグランドリング33は、環状である。第1環状部材34~第3環状部材36は、石英等の絶縁部材により形成されている。第3環状部材36の内部には、ヒータ36aが設けられている。ヒータ36aにより上部電極アセンブリ3を温調することができる。グランドリング33は、シリコン等の導電性部材から形成され、グラウンドに接地されている。
【0016】
締結用ネジ部52は、上部電極31と第2環状部材35との間に設けられたクランプ51を貫通する。クランプ51が上部電極31の外周下面に係合し上部電極31を釣り上げている状態で、締結用ネジ部52の下部とクランプ51とが係合する。締結用ネジ部52の上部はクーリングプレート32の凹部32aに挿入されてクーリングプレート32に固定され、バネ52aにより締結用ネジ部52を介してクランプ51が押し上げられる。これにより、上部電極31は締結用ネジ部52によって固定され、クランプ51を介して釣り上げられている。
【0017】
上部電極31はシリコンを含む導電性部材であり、例えばシリコン(Si)、シリコンカーバイド(SiC)、ポリシリコン(Poly-Si)、又は酸化シリコン(SiO)から形成されている。クーリングプレート32はアルミニウムを含む導電性部材であり、例えばアルミニウム(Al)、又はアルミナ(Al)から形成されている。
【0018】
このように上部電極31とクーリングプレート32とは異なる部材で形成され、熱膨張が異なる。このため、処理チャンバ内で生成されたプラズマやヒータ36aからの入熱により、上部電極31とクーリングプレート32との間に隙間が発生する。
【0019】
従来、上部電極31とクーリングプレート32との間に介在し、上部電極31とクーリングプレート32とを互いに導通させるためにSUSスパイラル、つまり、スパイラル状のステンレス鋼が用いられてきた。従来のSUSスパイラルは復元力が足りないため、上部電極31とクーリングプレート32との間でつぶれた際、上部電極31とクーリングプレート32との間で電気的導通が確保できない場合があった。
【0020】
これに対して本実施形態にかかる導通部材41は、ニッケル、クロム及びモリブデンを含有し、かつ表面処理が施されている。例えば、本実施形態にかかる導通部材41は、インコネル(INCONEL、いずれも登録商標)、またはハステロイ(HASTELLOY、いずれも登録商標)を含んでもよい。
【0021】
例えば、一実施形態にかかる導通部材41は、インコネル(登録商標)625(INCONEL(登録商標)625)を含んでもよい。本実施形態では、インコネル(登録商標)625を含み、かつ表面に表面処理の一例であるプラズマ窒化処理を施した導通部材41を上部電極31とクーリングプレート32との間に設置する。
【0022】
本実施形態の導通部材41は、従来のSUSスパイラルよりも硬く、「耐食性に強い」、「耐熱性が高い」、「強度が強い」という特徴を有する。このため、導通部材41はプラズマ耐性に優れるため、導通部材41が上部電極31とクーリングプレート32との間でつぶれても高い復元力を発揮する。したがって、この導通部材41を用いることにより、上部電極31とクーリングプレート32との間において、従来のSUSスパイラルよりも安定した電気的導通を確保することができる。
【0023】
さらに、本実施形態の導通部材41の表面にはプラズマ窒化処理が施されている。このような導通部材41の表面処理により、よりプラズマ耐性が高くなるため、導通部材41がプラズマからダメージを受けることをより効果的に回避することができる。
【0024】
プラズマ窒化処理は、窒素を含むガスのプラズマに導通部材41をさらすことにより、導通部材41の表面を窒化させ、被膜を形成する処理である。ただし、プラズマ耐性を高くできれば、導通部材41の表面処理はプラズマ窒化処理に限らない。例えば導通部材41の表面処理は、プラズマ窒化処理、プラズマ炭化処理、熱処理、またはCVD(Chemical Vapor Deposition)による被膜形成であってもよい。導通部材41は、窒素含有表面、または炭素含有表面を有してもよい。
【0025】
プラズマ炭化処理は、炭素を含むガスのプラズマに導通部材41をさらすことにより、導通部材41の表面を炭化させる処理である。熱処理は、導通部材41を加熱することにより、導通部材41の表面を加工する処理である。CVD処理は、導通部材41の表面に熱CVD又はプラズマCVDにより被膜を形成することにより、導通部材41の表面を被覆する処理である。
【0026】
導通部材41のスパイラルチューブの直径がより大きい導通部材41を用いることにより、上部電極31とクーリングプレート32との間にさらに安定した電気的導通を確保することができる。導通部材41の断面の直径は、1mm~5mm程度である。
【0027】
<第2実施形態>
第2実施形態に係る上部電極アセンブリ3について、図2を参照しながら説明する。図2は、第2実施形態に係る上部電極アセンブリ3の一例を示す拡大図である。図2は、図3の上部電極アセンブリ3の外周側の一部を拡大している。図2に示す第2実施形態に係る上部電極アセンブリ3では、図1に示す導通部材41が設けられておらず導通部材42が設けられている。その他の構成は、第1実施形態に係る上部電極アセンブリ3と同じであるため、以下では導通部材42及びその周囲の構成について説明し、その他の構成の説明を省略する。
【0028】
導通部材42は、グランドリング33とヒータ36aを有する第3環状部材36(環状部材)との間に介在し、グランドリング33と第3環状部材36とを互いに導通させる。グランドリング33は第1の部材の一例である。第3環状部材36は第2の部材の一例である。例えば導通部材42は、グランドリング33と第3環状部材36との間にて周方向に全周に亘って設けられている。導通部材42は、例えばグランドリング33の周方向に全周に亘って設けられるスパイラルチューブである。
これによっても、グランドリング33と第3環状部材36との間において、従来のSUSスパイラルよりも安定した電気的導通を確保することができる。
【0029】
グランドリング33と第3環状部材36との隙間にはプラズマが入り込む。そのため、従来のSUSスパイラルでは、プラズマに暴露した際、SUSスパイラルの表面がダメージを受ける結果、グランドリング33と第3環状部材36との間で電気的導通が確保できない場合があった。
【0030】
第2実施形態では、インコネル(登録商標)625を含み、かつ表面に表面処理の一例であるプラズマ窒化処理を施した導通部材42をグランドリング33と第3環状部材36との間に設置する。
【0031】
本実施形態の導通部材42は、従来のSUSスパイラルよりも硬く、「耐食性に強い」、「耐熱性が高い」、「強度が強い」という特徴を有する。このため、導通部材42はプラズマ耐性に優れるため、導通部材42がプロセス中にプラズマに暴露されてもグランドリング33と第3環状部材36との間で高い復元力を発揮する。したがって、この導通部材42を用いることにより、グランドリング33と第3環状部材36との間において、従来のSUSスパイラルよりも安定した電気的導通を確保することができる。
【0032】
なお、図2では、図1の導通部材41は設けられていないが、導通部材42に加えて上部電極31とクーリングプレート32との間に介在し、上部電極31とクーリングプレート32と、を互いに導通させる導通部材41を配置してもよい。これによれば、グランドリング33と第3環状部材36との間、及び上部電極31とクーリングプレート32との間において、更に安定した電気的導通を確保することができる。
【0033】
第1及び第2実施形態において、第1の部材の電位及び第2の部材の電位は、フローティング電位またはグラウンド電位であってもよい。つまり、上部電極31とクーリングプレート32との電位は、フローティング電位またはグラウンド電位であってもよい。また、グランドリング33と第3環状部材36との電位は、フローティング電位またはグラウンド電位であってもよい。フローティング電位の場合、第1の部材と第2の部材とが同電位になる保証がないため、導通部材41及び/又は導通部材42を第1の部材と第2の部材との間に設けることにより、より安定して第1の部材と第2の部材との間の電気的導通を確保することができる。
【0034】
[プラズマ処理装置]
一実施形態に係る上部電極アセンブリ3を有するプラズマ処理装置100の一例について、図3を参照しながら説明する。図3のプラズマ処理装置(平行平板型プラズマ処理装置)は、上部電極アセンブリ3として本開示にかかる上部電極アセンブリを含む。
【0035】
図3は、容量結合(CCP:capacitively coupled plasma)型のプラズマ処理装置の構成例を説明するための図である。
【0036】
プラズマ処理装置100は、処理チャンバ1と上部電極アセンブリ3と下部電極4とを有する。RF(Radio Frequency)電力は、RF電源6から上部電極アセンブリ3(上部電極31(図1参照))に供給され、RF電源7から下部電極4に供給される。RF電源6及びRF電源7は異なるRF周波数のRF電力を供給し得る。
【0037】
下部電極4は、処理チャンバ1内に配置される。下部電極4は、静電チャック(ESC)5を含み、半導体ウェハを一例とする基板Wを吸着し、支持する。下部電極4は、基板支持部の一例である。上部電極アセンブリ3は、処理チャンバ1内の下部電極4の上方に下部電極4に対向して設けられる。
【0038】
下部電極4は、静電チャック5及び基板Wのうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路には、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。一実施形態において、流路が下部電極4内に形成され、1又は複数のヒータが静電チャック5内に配置される。また、下部電極4は、基板Wの裏面と静電チャック5との間の間隙に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。
【0039】
プラズマ処理装置100は、ガス導入部を含む。ガス導入部は、少なくとも1つの処理ガスを処理チャンバ1内に導入するように構成される。ガスソース源8はガス導入部に接続され、ガス導入部から処理ガスを処理チャンバ1内に供給する。なお、ガス導入部は、加えて、処理チャンバ1の側壁に形成された1又は複数の開口部に取り付けられる1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0040】
ガスソース源8は、少なくとも1つの処理ガスを、流量制御器を介してプラズマ処理空間10sに供給するように構成される。流量制御器は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、プラズマ処理装置100は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調又はパルス化する1又はそれ以上の流量変調デバイスを含んでもよい。
【0041】
処理チャンバ1は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10sに供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間10sからガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。処理チャンバ1は接地される。
【0042】
排気装置9は、処理チャンバ1に接続され、処理チャンバ1内を排気する。排気装置9は、例えば処理チャンバ1の底部に設けられたガス排出口に接続され得る。排気装置9は、圧力調整弁及び真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間10s内の圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ(TMP)、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0043】
RF電力は上部電極31と下部電極4との少なくともいずれか一つに供給され、プラズマ2は上部電極31と下部電極4との間の基板Wの近傍に形成される。複数のRF電源6及びRF電源7は上部電極31及び下部電極4のうち同一の電極に接続されてもよい。
【0044】
従って、RF電源6及びRF電源7は、処理チャンバ1において1又はそれ以上の処理ガスからプラズマを生成するように構成されるプラズマ生成部の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を下部電極4に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオン成分を基板Wに引き込むことができる。
【0045】
RF電源6は、インピーダンス整合回路を介して上部電極31に結合され、プラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成される。RF電源6は、インピーダンス整合回路を介して下部電極4に結合され、プラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成されてもよい。一実施形態において、ソースRF信号は、10MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、RF電源6は、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のソースRF信号は、下部電極4及び/又は上部電極31に供給される。
【0046】
RF電源7は、インピーダンス整合回路を介して下部電極4に結合され、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成するように構成される。バイアスRF信号の周波数は、ソースRF信号の周波数と同じであっても異なっていてもよい。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号の周波数よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、100kHz~60MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、RF電源7は、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のバイアスRF信号は、下部電極4に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。
【0047】
更に、可変直流電流(DC)電源10からDC電圧(直流電圧)が上部電極アセンブリ3に供給されてもよい。種々の実施形態において、DC電圧がパルス化されてもよい。この場合、電圧パルスのシーケンスが上部電極31に印加される。電圧パルスは、矩形、台形、三角形又はこれらの組み合わせのパルス波形を有してもよい。一実施形態において、可変直流電流(DC)電源10からDC電圧(直流電圧)が下部電極4に供給されてもよい。
【0048】
制御装置50は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置100に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御装置50は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置100の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御装置50の一部又は全てがプラズマ処理装置100に含まれてもよい。制御装置50は、処理部、記憶部及び通信インターフェースを含んでもよい。制御装置50は、例えばコンピュータにより実現される。処理部は、記憶部からプログラムを読み出し、読み出されたプログラムを実行することにより種々の制御動作を行うように構成され得る。このプログラムは、予め記憶部に格納されていてもよく、必要なときに、媒体を介して取得されてもよい。取得されたプログラムは、記憶部に格納され、処理部によって記憶部から読み出されて実行される。媒体は、コンピュータに読み取り可能な種々の記憶媒体であってもよく、通信インターフェースに接続されている通信回線であってもよい。処理部は、CPU(Central Processing Unit)であってもよい。記憶部は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェースは、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置100との間で通信してもよい。
【0049】
以上に開示された実施形態は、例えば、以下の態様を含む。
(付記1)
プラズマ処理装置の上部電極アセンブリであって、
導電性材料から形成される第1の部材と、
導電性材料から形成され、前記第1の部材の上に設けられた第2の部材と、
前記第1の部材と前記第2の部材との間に介在し、前記第1の部材と前記第2の部材とを互いに導通させる導通部材と、を備え、
前記導通部材は、ニッケル、クロム及びモリブデンを含有し、かつ表面処理が施されている、上部電極アセンブリ。
(付記2)
前記導通部材は、インコネル(INCONEL、いずれも登録商標)、またはハステロイ(HASTELLOY、いずれも登録商標)を含む、
付記1に記載の上部電極アセンブリ。
(付記3)
前記導通部材は、インコネル(登録商標)625(INCONEL(登録商標)625)を含む、
付記2に記載の上部電極アセンブリ。
(付記4)
前記表面処理は、プラズマ窒化処理、プラズマ炭化処理、熱処理、またはCVDによる被膜形成である、
付記1~3のいずれか一項に記載の上部電極アセンブリ。
(付記5)
前記導通部材は、窒素含有表面、または炭素含有表面を有する、
付記4に記載の上部電極アセンブリ。
(付記6)
前記第1の部材はシリコンを含む導電性部材であり、前記第2の部材はアルミニウムを含む導電性部材である、
付記1~5のいずれか一項に記載の上部電極アセンブリ。
(付記7)
前記第1の部材は上部電極であり、前記第2の部材はクーリングプレートである、
付記1~6のいずれか一項に記載の上部電極アセンブリ。
(付記8)
前記第1の部材は上部電極の周縁に位置するグランドリングであり、前記第2の部材は前記上部電極の周縁に位置するヒータを有する環状部材である、
付記1~6のいずれか一項に記載の上部電極アセンブリ。
(付記9)
前記第1の部材の電位及び前記第2の部材の電位は、フローティング電位、またはグラウンド電位である、
付記1~8のいずれか一項に記載の上部電極アセンブリ。
(付記10)
処理チャンバと、前記処理チャンバ内にて基板を支持する基板支持部と、前記処理チャンバ内の前記基板支持部の上方に前記基板支持部に対向して設けられる上部電極アセンブリと、を有し、
前記上部電極アセンブリは、
導電性材料から形成される第1の部材と、
導電性材料から形成され、前記第1の部材の上に設けられた第2の部材と、
前記第1の部材と前記第2の部材との間に介在し、前記第1の部材と前記第2の部材とを互いに導通させる導通部材と、を備え、
前記導通部材は、ニッケル、クロム及びモリブデンを含有し、かつ表面処理が施されている、プラズマ処理装置。
【0050】
なお、上記実施形態に挙げた構成等に、その他の要素との組み合わせ等、ここで示した構成に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。また、複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【0051】
本開示のプラズマ処理装置は、一枚ずつ基板を処理する枚葉装置、複数枚の基板を一括処理するバッチ装置及びセミバッチ装置のいずれにも適用できる。
【0052】
本願は、米国特許庁に2021年10月1日に出願された米国仮出願63/261,955の優先権を主張するものであり、その全内容を参照によりここに援用する。
【符号の説明】
【0053】
3 上部電極アセンブリ
31 上部電極
32 クーリングプレート
33 グランドリング
34 第1環状部材
35 第2環状部材
36 第3環状部材
36a ヒータ
41、42 導通部材
50 制御装置
100 プラズマ処理装置
図1
図2
図3