(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023054158
(43)【公開日】2023-04-13
(54)【発明の名称】接合システムおよび接合方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/52 20060101AFI20230406BHJP
【FI】
H01L21/52 F
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024483
(22)【出願日】2023-02-20
(62)【分割の表示】P 2021173723の分割
【原出願日】2018-11-14
(31)【優先権主張番号】P 2018162738
(32)【優先日】2018-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018205227
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】304019355
【氏名又は名称】ボンドテック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】503177074
【氏名又は名称】須賀 唯知
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【弁理士】
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100165489
【弁理士】
【氏名又は名称】榊原 靖
(72)【発明者】
【氏名】山内 朗
(72)【発明者】
【氏名】須賀 唯知
(57)【要約】
【課題】第1被接合物と第2被接合物との接合不良の発生が抑制される接合システムおよび接合方法を提供する。
【解決手段】チップ接合システムは、枠保持部621と枠保持部621に保持されたチップCPが貼着されたシートTEに対して粒子ビームを照射することによりチップCPの接合面CPfを活性化させる粒子ビーム源61とを有する活性化処理装置60と、活性化処理装置60により接合面CPfが活性化されたチップCPを基板に接触させることにより基板に接合するボンディング装置と、を備える。枠保持部621は、樹脂から形成されチップCPが貼着されたシートTEを保持する保持枠112のシートTEにおけるチップCPが貼着された一面側を粒子ビーム源61側に露出させた姿勢で保持枠112を支持する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1被接合物に第2被接合物を接合する接合システムであって、
前記第1被接合物を前記第1被接合物の接合面が鉛直下方を向く姿勢で保持する基板支持部と、
前記基板支持部の鉛直下方に配置され、複数の前記第2被接合物が前記第2被接合物の接合面が鉛直上方を向く姿勢で貼着されたシートを保持する保持枠を支持する枠支持部と、
前記シートにおける複数の前記第2被接合物側とは反対側に当接するヘッドと、
前記ヘッドを前記基板支持部に近づく方向へ駆動することにより前記シートにおける複数の前記第2被接合物側とは反対側から1つの前記第2被接合物を前記第1被接合物側へ押し出して前記第2被接合物の接合面を前記第1被接合物の接合面に接触させることにより、前記第2被接合物を前記第1被接合物に接合するヘッド駆動部と、を有する、
接合システム。
【請求項2】
前記第1被接合物には、第1アライメントマークが設けられ、
前記第2被接合物には、第2アライメントマークが設けられ、
前記基板支持部と前記枠支持部との少なくとも一方を駆動する支持部駆動部と、
前記第1被接合物における前記第2被接合物側とは反対側と、前記第2被接合物における前記第1被接合物側とは反対側と、の少なくとも一方から、前記第1アライメントマークおよび前記第2アライメントマークを撮像する撮像部と、
前記支持部駆動部および撮像部を制御する制御部と、を更に備え、
前記制御部は、前記撮像部を制御して、前記第1アライメントマークおよび前記第2アライメントマークを撮像し、撮像された撮影画像に基づいて、前記第1被接合物に対する前記第2被接合物の位置ずれ量を算出した後、前記支持部駆動部を制御して、前記第2被接合物の前記第1被接合物に対する位置ずれ量を低減する方向へ前記基板支持部と前記枠支持部との少なくとも一方を相対的に移動させる、
請求項1に記載の接合システム。
【請求項3】
少なくとも前記第2被接合物の接合面を活性化する活性化処理装置を更に備える、
請求項1または2に記載の接合システム。
【請求項4】
第1被接合物に第2被接合物を接合する接合方法であって、
前記第1被接合物を前記第1被接合物の接合面が鉛直下方を向く姿勢で保持し、複数の前記第2被接合物が前記第2被接合物の接合面が鉛直上方を向く姿勢で貼着されたシートを、前記第1被接合物の鉛直下方に配置し、前記シートにおける前記第2被接合物側とは反対側にヘッドを当接させた状態で、前記ヘッドを前記第1被接合物に近づく方向へ移動させることにより、前記シートにおける複数の前記第2被接合物側とは反対側から1つの前記第2被接合物を前記第1被接合物側へ押し出して前記第2被接合物の接合面を前記第1被接合物の接合面に接触させることにより、前記第2被接合物を前記第1被接合物に接合する接合工程を含む、
接合方法。
【請求項5】
前記第1被接合物には、第1アライメントマークが設けられ、
前記第2被接合物には、第2アライメントマークが設けられ、
撮像部により前記第1被接合物における前記第2被接合物側とは反対側と、前記第2被接合物における前記第1被接合物側とは反対側と、の少なくとも一方から、前記第1アライメントマークおよび前記第2アライメントマークを撮像する撮像工程と、
前記撮像工程において撮像された撮影画像に基づいて、前記第1被接合物に対する前記第2被接合物の位置ずれ量を算出する位置ずれ量算出工程と、
前記第2被接合物の前記第1被接合物に対する位置ずれ量を低減する方向へ前記第2被接合物または前記第1被接合物を移動させる移動工程と、を更に含む、
請求項4に記載の接合方法。
【請求項6】
少なくとも前記第2被接合物の接合面を活性化する第1活性化工程を更に含む、
請求項4または5に記載の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合システムおよび接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2つの被接合物の接合面に対してプラズマ処理を施した後、2つの被接合物の接合面同士を接触させて接合する方法も提案されている(例えば特許文献1参照)。ここで、プラズマ処理は、酸素、アルゴン、NH3およびCF4 RIE(Reactive Ion Etching)のプラズマのいずれかに曝すことにより行われる。そして、チップにおける基板に接合される接合面にプラズマ処理を施した後、チップの接合面を基板に接触させてチップを基板に接合する方法が提供されつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されている方法では、チップと基板との接合不良が発生してしまう虞がある。
【0005】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、第1被接合物と第2被接合物との接合不良の発生が抑制される接合システムおよび接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る接合システムは、
第1被接合物に第2被接合物を接合する接合システムであって、
前記第1被接合物を前記第1被接合物の接合面が鉛直下方を向く姿勢で保持する基板支持部と、
前記基板支持部の鉛直下方に配置され、複数の前記第2被接合物が前記第2被接合物の接合面が鉛直上方を向く姿勢で貼着されたシートを保持する保持枠を支持する枠支持部と、
前記シートにおける複数の前記第2被接合物側とは反対側に当接するヘッドと、
前記ヘッドを前記基板支持部に近づく方向へ駆動することにより前記シートにおける複数の前記第2被接合物側とは反対側から1つの前記第2被接合物を前記第1被接合物側へ押し出して前記第2被接合物の接合面を前記第1被接合物の接合面に接触させることにより、前記第2被接合物を前記第1被接合物に接合するヘッド駆動部と、を有する。
【0007】
他の観点から見た本発明に係る接合方法は、
第1被接合物に第2被接合物を接合する接合方法であって、
前記第1被接合物を前記第1被接合物の接合面が鉛直下方を向く姿勢で保持し、複数の前記第2被接合物が前記第2被接合物の接合面が鉛直上方を向く姿勢で貼着されたシートを、前記第1被接合物の鉛直下方に配置し、前記シートにおける前記第2被接合物側とは反対側にヘッドを当接させた状態で、前記ヘッドを前記第1被接合物に近づく方向へ移動させることにより、前記シートにおける複数の前記第2被接合物側とは反対側から1つの前記第2被接合物を前記第1被接合物側へ押し出して前記第2被接合物の接合面を前記第1被接合物の接合面に接触させることにより、前記第2被接合物を前記第1被接合物に接合する接合工程を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第1被接合物と第2被接合物との接合不良の発生が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態に係るチップ接合システムの概略構成図である。
【
図2】実施の形態に係るチップ接合システムの一部を側方から見た概略構成図である。
【
図3A】実施の形態に係るチップ保持部の平面図である。
【
図3B】実施の形態に係るチップ搬送装置の一部を示す断面図である。
【
図4A】実施の形態に係るボンディング装置のヘッドを示す断面図である。
【
図4B】実施の形態に係るボンディング装置のヘッドを示す平面図である。
【
図5】実施の形態に係る活性化処理装置の概略構成図である。
【
図6】実施の形態に係る活性化処理装置の動作説明図である。
【
図7】実施の形態に係る制御部を示すブロック図である。
【
図8】実施の形態に係るチップ接合方法の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図9A】実施の形態に係る活性化処理装置において、粒子ビームを照射する様子を示す概略側面図である。
【
図9B】実施の形態に係る活性化処理装置において、粒子ビームを照射する様子を示す概略平面図である。
【
図10A】実施の形態に係る活性化処理装置において、シートを反転させる様子を示す概略側面図である。
【
図10B】実施の形態に係る活性化処理装置において、窒素ラジカルを照射する様子を示す概略側面図である。
【
図11A】実施の形態に係るチップ接合システムにおいてチップ供給部からチップが供給される様子を示す概略平面図である。
【
図11B】実施の形態に係るチップ接合システムにおいてチップ供給部からチップが供給される様子を示す概略側面図である。
【
図12A】実施の形態に係るチップ接合システムにおいてチップ搬送部からヘッドへチップが受け渡される様子を示す概略平面図である。
【
図12B】実施の形態に係るチップ接合システムにおいてチップ搬送部からヘッドへチップが受け渡される様子を示す概略側面図である。
【
図13】比較例に係る活性化処理装置の概略構成図である。
【
図14A】変形例に係る洗浄装置の支持部について、保持枠を移動させる前の状態を示す概略図である。
【
図14B】変形例に係る洗浄装置の支持部について、保持枠を移動させた状態を示す概略図である。
【
図14C】変形例に係る洗浄装置の支持部について、枠支持部および内側支持部を回転させる様子を示す概略図である。
【
図15A】変形例に係る被ダイシング基板の概略図である。
【
図15B】変形例に係るチップCPの概略図である。
【
図16A】変形例に係るチップ保持部の概略断面図である。
【
図16B】変形例に係るチップ保持部の概略断面図である。
【
図17A】変形例に係るボンディング装置の一部を示す概略図である。
【
図17B】変形例に係るボンディング装置の一部を示す概略図である。
【
図17C】変形例に係るボンディング装置の一部を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態に係るチップ接合システムについて、図面を参照しながら説明する。本実施の形態に係るチップ接合システムは、基板上にチップを実装するシステムである。ここで、基板が、第1被接合物に相当し、チップが、第2被接合物に相当する。チップとしては、例えばダイシングされた基板から供給される半導体チップである。また、チップとしては、その基板に接合される接合面に絶縁体材料のみが露出したチップまたは絶縁体材料と導電性材料とが露出したチップが挙げられる。ここで、絶縁体材料としては、例えばSiO2、Al2O3等の酸化物、SiN、AlN等の窒化物、SiONのような酸窒化物、或いは樹脂が挙げられる。また、導電性材料としては、Si、Ge等の半導体材料、Cu、Al、はんだ等の金属が挙げられる。つまり、チップは、その接合面に互いに材料が異なる複数種類の領域が形成されたものであってもよい。具体的には、チップが、その接合面に電極と絶縁膜とが設けられたものであり、絶縁膜が、SiO2、Al2O3等の酸化物またはSiN、AlN等の窒化物から形成されているものであってもよい。このチップ接合システムは、基板におけるチップが実装される実装面とチップの接合面とについて活性化処理を行った後、チップを基板に接触、または加圧して接合する。その後、または同時に加熱することにより、チップを基板に強固に接合する。
【0011】
図1に示すように、本実施の形態に係るチップ接合システム1は、チップ供給装置10と、チップ搬送装置39と、ボンディング装置30と、活性化処理装置60と、搬送装置70と、搬出入ユニット80と、洗浄装置85と、制御部90と、を備える。搬送装置70は、基板WTまたはチップCPが貼着されたシートTEを保持する保持枠112を掴むアームを有する搬送ロボット71を有する。ここで、シートTEは、例えば樹脂から形成されている。搬送ロボット71は、
図1の矢印AR11に示すように、搬出入ユニット80から受け取った基板WTまたはチップCPが貼着されたシートTEを保持する保持枠112を、活性化処理装置60、洗浄装置85、ボンディング装置30、チップ供給装置10それぞれへ移載する位置へ移動可能となっている。ここで、チップCPが貼着されたシートTEを保持する保持枠112が、チップCPを含む対象物に相当する。
【0012】
搬送ロボット71は、搬出入ユニット80から基板WTを受け取ると、受け取った基板WTを掴んだ状態で活性化処理装置60へ移載する位置へ移動し、基板WTを活性化処理装置60へ移載する。また、搬送ロボット71は、活性化処理装置60において基板WTの実装面WTfの活性化処理が完了した後、活性化処理装置60から基板WTを受け取り、受け取った基板WTを洗浄装置85へ移載する。更に、搬送ロボット71は、洗浄装置85において基板WTの水洗浄が完了した後、洗浄装置85から基板WTを受け取り、受け取った基板WTを掴んだ状態で基板WTを反転させた後、ボンディング装置30へ移載する位置へ移動する。そして、搬送ロボット71は、基板WTをボンディング装置30へ移載する。
【0013】
また、搬送ロボット71は、搬出入ユニット80からチップCPが貼着されたシートTEを保持する保持枠112を受け取ると、受け取った保持枠112を掴んだ状態で保持枠112を活性化処理装置60へ移載する位置へ移動し、保持枠112を活性化処理装置60へ移載する。更に、搬送ロボット71は、活性化処理装置60においてシートTEに貼着されたチップCPの接合面の活性化処理が完了した後、活性化処理装置60から保持枠112を受け取り、受け取った保持枠112をチップ供給装置10へ移載する。また、搬送装置70内には、例えばHEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタ(図示せず)が設置されている。これにより、搬送装置70内は、パーティクルが極めて少ない大気圧環境になっている。
【0014】
洗浄装置85は、基板WTを支持するステージ852と、ステージ852を回転駆動するステージ駆動部853と、ステージ852の鉛直上方に配置され鉛直下方に向かって水を吐出する洗浄ヘッド851と、を有する。洗浄装置85は、ステージ852に基板WTが支持された状態でステージ駆動部853によりステージ852を回転させつつ、洗浄ヘッド851から水を基板WTに向けて吐出することにより基板WTを水洗浄する。
【0015】
チップ供給装置10は、基板をダイシングすることにより作製された複数のチップCPの中から1つのチップCPを切り出し、ボンディング装置30へチップCPを供給する第2被接合物供給装置である。ここで、ダイシングとは、複数の電子部品が作り込まれた基板を縦方向および横方向に切削しチップ化する処理である。また、チップCPは、例えば接合面CPfに互いに材料が異なる複数種類の領域が形成されたものであってもよい。即ち、チップCPの接合面CPfに、絶縁材料からなる領域と金属からなる領域とが形成されていてもよい。チップ供給装置10は、
図2に示すように、チップ供給部11を有する。チップ供給部11は、複数のチップCPが貼着されたシートTEを保持する保持枠112と、保持枠112を保持する枠保持部119と、複数のチップCPの中から1つのチップCPをピックアップするピックアップ機構111と、カバー114と、を有する。また、チップ供給部11は、保持枠112をXY方向またはZ軸周りに回転する方向へ駆動する保持枠駆動部113を有する。枠保持部119は、シートTEにおける複数のチップCPが貼着された面が鉛直上方(+Z方向)側となる姿勢で保持枠112を保持する。保持枠112と枠保持部119とから、複数のチップCPそれぞれの接合面CPf側とは反対側に貼着されたシートTEを接合面CPfが鉛直上方側を向く姿勢で保持するシート保持部が構成されている。
【0016】
ピックアップ機構111は、複数のチップCPのうちの1つのチップCPを、シートTEにおける複数のチップCP側とは反対側から切り出すことにより1つのチップCPをシートTEから離脱した状態にする。ここで、ピックアップ機構111は、チップCPの接合面CPf側とは反対側における後述のヘッド33Hにより保持される第1部位である中央部とは異なる第3部位である周部を保持して、チップCPを切り出す。ピックアップ機構111は、ニードル111aを有し、
図2の矢印AR14に示すように鉛直方向へ移動可能となっている。カバー114は、複数のチップCPの鉛直上方を覆うように配置され、ピックアップ機構111に対向する部分に孔114aが設けられている。ニードル111aは、例えば4つ存在する。但し、ニードル111aの数は、3つであってもよいし、5つ以上であってもよい。ピックアップ機構111は、シートTEにおける鉛直下方(-Z方向)からニードル111aをシートTEに突き刺してチップCPを鉛直上方(+Z方向)へ持ち上げることによりチップCPを供給する。そして、シートTEに貼着された各チップCPは、ニードル111aによりカバー114の孔114aを通じて1個ずつカバー114の上方へ突き出され、チップ搬送装置39に受け渡される。保持枠駆動部113は、保持枠112をXY方向またはZ軸周りに回転する方向へ駆動することにより、ニードル111aの鉛直下方に位置するチップCPの位置を変化させる。
【0017】
チップ搬送装置(ターレットとも称する)39は、チップ供給部11から供給されるチップCPを、ボンディング装置30のボンディング部33のヘッド33HにチップCPを移載する移載位置Pos1まで搬送する第2被接合物搬送装置である。チップ搬送装置39は、
図1に示すように、2つの長尺のプレート391と、アーム394と、アーム394の先端部に設けられたチップ保持部393と、2つのプレート391を一斉に回転駆動するプレート駆動部392と、を有する。2つのプレート391は、長尺の矩形箱状であり、チップ供給部11とヘッド33Hとの間に位置する他端部を基点として一端部が旋回する。2つのプレート391は、例えばそれらの長手方向が互いに90度の角度をなすように配置されている。なお、プレート391の数は、2枚に限定されるものではなく、3枚以上であってもよい。
【0018】
チップ保持部393は、
図3Aに示すように、アーム394の先端部に設けられ、チップCPを保持する2つの脚片393aを有する第2被接合物保持部である。プレート391は、
図3Bに示すように、内側に長尺のアーム394を収容することが可能となっている。そして、プレート391の内側には、アーム394をプレート391の長手方向に沿って駆動するアーム駆動部395が設けられている。これにより、チップ搬送装置39は、アーム駆動部395により、アーム394の先端部をプレート391の外側に突出させた状態にしたり、アーム394の先端部をプレート391の内側に没入させた状態にしたりすることができる。そして、チップ搬送装置39は、プレート391を旋回させる際、
図3Bの矢印AR25に示すように、アーム394をプレート391内へ没入させてチップ保持部393をプレート391の内側に収納する。これにより、搬送時におけるチップCPへのパーティクルの付着が抑制される。なお、2つの脚片393aには、吸着溝(図示せず)が設けられていてもよい。この場合、チップCPが脚片392aに吸着保持されるので、チップCPを位置ずれなく搬送することができる。また、プレート391が旋回する際に生じる遠心力によるチップCPの飛び出しを防止するために、脚片393aの先端部に突起(図示せず)を設けてもよい。
【0019】
ここで、
図1に示すように、ピックアップ機構111とヘッド33Hとは、Z軸方向において、プレート391が回転したときにアーム394の先端部が描く軌跡OB1と重なる位置に配置されている。チップ搬送装置39は、ピックアップ機構111からチップCPを受け取ると、
図1の矢印AR1に示すように、プレート391を軸AX周りに旋回させることによりチップCPをヘッド33Hと重なる移載位置Pos1まで搬送する。
【0020】
ボンディング装置30は、ステージユニット31と、ヘッド33Hを有するボンディング部33と、ヘッド33Hを駆動するヘッド駆動部36と、を有するチップ接合装置である。ヘッド33Hは、例えば
図4Aに示すようにチップツール411と、ヘッド本体部413と、チップ支持部432aと、支持部駆動部432bと、を有する。チップツール411は、例えばシリコン(Si)から形成されている。ヘッド本体部413は、チップCPをチップツール411に吸着保持させるための吸着部を有する保持機構440と、チップツール411を真空吸着によりヘッド本体部413に固定するための吸着部(図示せず)と、を有する。また、ヘッド本体部413には、セラミックヒータやコイルヒータ等が内蔵されている。チップツール411は、ヘッド本体部413の保持機構440に対応する位置に形成された貫通孔411aと、チップ支持部432aが内側に挿入される貫通孔411bと、を有する。
【0021】
チップ支持部432aは、例えば筒状の吸着ポストであり、ヘッド33Hの先端部に設けられ鉛直方向へ移動自在の部品支持部である。チップ支持部432aは、チップCPの接合面CPf側とは反対側における第1部位である中央部を支持する。チップ支持部432aは、例えば
図4Bに示すように、中央部に1つ設けられている。
【0022】
支持部駆動部432bは、チップ支持部432aを鉛直方向へ駆動するとともに、チップ支持部432aの先端部にチップCPが載置された状態でチップ支持部432aの内側をシ減圧することによりチップCPをチップ支持部432aの先端部に吸着させる。支持部駆動部432bは、チップ搬送装置39のチップ保持部393がチップCPを保持した状態でヘッド33Hへの移載位置(
図1のPos1参照)に位置し、チップ支持部432aの先端部でチップCPの中央部を支持した状態で、チップ支持部432aをチップ保持部393よりも鉛直上方側へ移動させる。これにより、チップCPが、チップ搬送装置39のチップ保持部393からヘッド33Hへ移載される。
【0023】
ヘッド駆動部36は、移載位置Pos1(
図2参照)において移載されたチップCPを保持するヘッド33Hを鉛直上方(+Z方向)へ移動させることによりヘッド33Hをステージ315に近づけて基板WTの実装面WTfにチップCPを実装する。より詳細には、ヘッド駆動部36は、チップCPを保持するヘッド33Hを鉛直上方(+Z方向)へ移動させることによりヘッド33Hをステージ315に近づけて基板WTの実装面WTfにチップCPを接触させて基板WTに接合させる。ここにおいて、基板WTの実装面WTfとチップCPにおける基板WTに接合される接合面CPfとは、活性化処理装置60により活性化処理が施されている。また、基板WTの実装面WTfは、活性化処理が施された後、洗浄装置85により水洗浄がなされている。従って、基板WTの実装面WTfにチップCPの接合面CPfを接触させることにより、チップCPが基板WTに水酸基(OH基)を介していわゆる親水化接合される。
【0024】
ステージユニット31は、基板WTにおけるチップCPが実装される実装面WTfが鉛直下方(-Z方向)を向く姿勢で基板WTを保持するステージ315と、ステージ315を駆動するステージ駆動部320と、を有する。ステージ315は、X方向、Y方向および回転方向に移動できる。これにより、ボンディング部33とステージ315との相対位置関係を変更することができ、基板WT上における各チップCPの実装位置を調整することができる。
【0025】
活性化処理装置60は、基板WTの実装面WTfまたはチップCPの接合面CPfを活性化する活性化処理を行う。活性化処理装置60は、基板WTまたはチップCPが貼着されたシートTEを保持する保持枠112を対向配置することなく一つの処理面にセットし活性化処理する。即ち、活性化処理装置60は、2枚の基板WTまたは2つのチップCPが貼着されたシートTEを保持する保持枠112を対向させた状態での活性化処理は行わない。対向配置して処理すると一方の基板WTまたはチップCPの材料が他方のチップCPまたは基板WTへ付着することにより結果的に複数材料が混ざってしまう。活性化処理装置60は、
図5に示すように、チャンバ64と、保持枠112を支持する支持部62と、粒子ビーム源61と、ビーム源搬送部63と、ラジカル源67と、を有する。チャンバ64は、排気管651を介して真空ポンプ652に接続されている。そして、真空ポンプ652が作動すると、チャンバ64内の気体が、排気管651を通してチャンバ64外へ排出され、チャンバ64内の気圧が低減(減圧)される。
【0026】
支持部62は、枠状であり内側で保持枠112を保持する枠保持部621と、カバー622と、枠保持部621を支持し
図5の矢印AR33に示すように枠保持部621をその厚さ方向に直交する1つの軸周りに回転駆動する枠保持部駆動部623と、を有する。この支持部62は、対象物であるチップCPが貼着されたシートTEを保持する保持枠112を支持する対象物支持部に相当する。チップCPを保持するチップ保持部が構成されている。また、支持部62は、基板WTが投入された場合、枠保持部621により基板WTの周部を保持した状態で基板WTを支持する。支持部62は、チップCPが貼着されたシートTEを保持する保持枠112を対向配置することなく、一つの処理面にセットされた状態で保持枠112を支持する。カバー622は、例えばガラスから形成され、チップCPが貼着されたシートTEを保持する保持枠112が枠保持部621に保持された状態で、シートTEのチップCPが貼着された一面側におけるチップCPが貼着された部分の外側の領域および保持枠112を覆っている。ここで、複数のチップCPが、平面視円形の基板(図示せず)をダイシングしたものである場合、シートTEにおける平面視円形の領域に貼着された状態となっている。この場合、カバー622は、シートTEにおける複数のチップCPが貼着された平面視円形の領域の外側の領域を覆う形状のものが採用される。これにより、粒子ビーム源61により、シートTEにおけるチップCPが貼着された部分を除く部分に粒子ビームが照射されることが抑制される。
【0027】
粒子ビーム源61は、例えば高速原子ビーム(FAB、Fast Atom Beam)源であり、放電室612と、放電室612内に配置される電極611と、ビーム源駆動部613と、窒素ガスを放電室612内へ供給するガス供給部614と、を有する。放電室612の周壁には、中性原子を放出するFAB放射口612aが設けられている。放電室612は、炭素材料から形成されている。ここで、放電室612は長尺箱状であり、その長手方向に沿って複数のFAB放射口612aが一直線上に並設されている。ビーム源駆動部613は、放電室612内に窒素ガスのプラズマを発生させるプラズマ発生部(図示せず)と、電極611と放電室612の周壁との間に直流電圧を印加する直流電源(図示せず)と、を有する。ビーム源駆動部613は、放電室612内に窒素ガスのプラズマを発生させた状態で、放電室612の周壁と電極611との間に直流電圧を印加する。このとき、プラズマ中の窒素イオンが、放電室612の周壁に引き寄せられる。このとき、FAB放射口612aへ向かう窒素イオンは、FAB放射口612aを通り抜ける際、FAB放射口612aの外周部の、炭素材料から形成された放電室612の周壁から電子を受け取る。そして、この窒素イオンは、電気的に中性化された窒素原子となって放電室612外へ放出される。但し、窒素イオンの一部は、放電室612の周壁から電子を受け取ることができず、窒素イオンのまま放電室612の外へ放出される。
【0028】
ここで、粒子ビーム源61は、シートTEに貼着された少なくとも1つのチップCPそれぞれの接合面CPfのうちの少なくとも1つを含む仮想平面S1に対する粒子ビームの入射角度が30度以上80度以下となるように設定されている。即ち、粒子ビームの照射軸J1と仮想平面S1の法線方向N1とのなす角度(入射角度)θ1が、30度以上80度以下となるように設定されている。また、粒子ビームの入射角度θ1は、
図6に示すように、隣り合うチップCPの間の間隔をL1とし、チップCPの厚さをT1とすると、下記式(1)の関係式が成立するように設定されている。
【0029】
【0030】
これにより、粒子ビームが直接シートTEに照射されることが抑制される。従って、粒子ビームがシートTEに照射されることに起因したシートTEからの不純物の発生が抑制されるので、シートTEから発生した不純物によるチップCPの接合面CPfの損傷が抑制されるという利点がある。
【0031】
ビーム源搬送部63は、長尺でありチャンバ64に設けられた孔64aに挿通され一端部で粒子ビーム源61を支持する支持棒631と、支持棒631の他端部で支持棒631を支持する支持体632と、支持体632を駆動する支持体駆動部633と、を有する。また、ビーム源搬送部63は、チャンバ64内の真空度を維持するためにチャンバ64の孔64aの外周部と支持体632との間に介在するベローズ634を有する。支持体駆動部633は、
図5の矢印AR31に示すように、支持体632を支持棒631がチャンバ64内へ挿脱される方向へ駆動することにより、
図5の矢印AR32に示すようにチャンバ64内において粒子ビーム源61の位置を変化させる。ここで、ビーム源搬送部63は、粒子ビーム源61を、その複数のFAB放射口612aの並び方向に直交する方向へ移動させる。
【0032】
ところで、粒子ビーム源61は、前述のように、一直線上に並設された複数のFAB放射口612aを有する。そして、粒子ビーム源61は、複数のFAB放射口612aの並び方向に直交する方向へ移動される。これにより、粒子ビームが照射される領域の形状は、矩形状となる。これに対して、複数のチップCPが、平面視円形の基板(図示せず)をダイシングしたものである場合、シートTEにおける平面視円形の領域に貼着された状態となっている。従って、シートTEに貼着された複数のチップCP全体に粒子ビームを照射しようとすすると、粒子ビームが照射される領域を複数のチップCPが貼着された平面視円形の領域を含む矩形状の領域に設定する必要がある。この場合、前述のカバー622が無い構成では、シートTEにおける複数のチップCPの外側の領域または保持枠112に粒子ビームが照射されることになりシートTEからの不純物が発生し易くなる。これに対して、本実施の形態では、カバー622がシートTEにおける複数のチップCPの外側の領域または保持枠112を覆っている。これにより、シートTEにおける複数のチップCPの外側の領域または保持枠112へ照射される粒子ビームが遮断され、シートTEまたは保持枠112からの不純物の発生が抑制される。
【0033】
ラジカル源67は、プラズマ室671と、ガラス窓674と、トラップ板675と、導波管673と、マグネトロン672と、を有するICP(Inductively Coupled Plasma)ICPプラズマ源を採用してもよい。プラズマ室671は、ガラス窓674を介して導波管673に接続されている。また、ラジカル源67は、プラズマ室671内へ供給管676を介して窒素ガスを供給するガス供給部677を有する。マグネトロン672で生成されるマイクロ波は、導波管673を通じてプラズマ室671内へ導入される。マグネトロン672としては、例えば周波数2.45GHzのマイクロ波を生成するものを採用することができる。この場合、マグネトロン672からプラズマ室671へ供給される電力は、例えば2.5kWに設定される。そして、プラズマ室671内に窒素ガスが導入された状態で、導波管673からマイクロ波が導入されると、マイクロ波によりプラズマ室671内にプラズマPLMを形成する。トラップ板675は、プラズマPLM中に含まれるイオンをトラップし、ラジカルのみをチャンバ64内へダウンフローさせる。また、即ち、プラズマ室671でプラズマが発生し、プラズマに含まれるラジカルのみがプラズマ室671の下方へダウンフローする。
【0034】
なお、ラジカル源67としては、マグネトロン672と導波管673とを備える構成に限定されるものではなく、例えばガラス窓674上に設けられた平板電極と平板電極に電気的に接続された高周波電源と、を備える構成であってもよい。この場合、高周波電源としては、例えば27MHzの高周波バイアスを印加するものを採用することができる。そして、高周波電源からプラズマ室671へ供給される電力は、例えば250Wに設定される。また、粒子ビームを照射する際、チャンバ64内の圧力は、例えばターボ分子ポンプを使用して10-3Pa台まで真空引きされるが、ラジカル処理時においては、チャンバ64内の圧力を数10Pa程度まで上昇させて行う。
【0035】
制御部90は、MPU(Micro Processing Unit)と主記憶部と補助記憶部とインタフェースと各部を接続するバスと、を有する。ここで、主記憶部は、揮発性メモリから構成され、MPUの作業領域として使用される。補助記憶部は、不揮発性メモリから構成され、MPUが実行するプログラムを記憶する。また、補助記憶部は、後述する第1距離、第2距離を示す情報も記憶する。制御部90は、
図7に示すように、ヘッド駆動部36、ステージ駆動部320、プレート駆動部392、アーム駆動部395、ピックアップ機構111、保持枠駆動部113、洗浄ヘッド851、ステージ駆動部853、ビーム源駆動部613、ビーム源搬送部63、枠保持部駆動部623、マグネトロン672および搬送ロボット71に接続されている。そして、MPUは、補助記憶部が記憶するプログラムを主記憶部に読み込んで実行することにより、インタフェースを介して、ヘッド駆動部36、ステージ駆動部320、プレート駆動部392、アーム駆動部395、ピックアップ機構111、保持枠駆動部113、洗浄ヘッド851、ステージ駆動部853、ビーム源駆動部613、ビーム源搬送部63、枠保持部駆動部623、マグネトロン672および搬送ロボット71それぞれへ制御信号を出力する。
【0036】
次に、本実施の形態に係るチップ接合システム1の動作について
図8乃至
図12を参照しながら説明する。なお、基板WT、チップCPが貼着されたシートTEを保持する保持枠112は、搬出入ユニット80から投入されるものとする。まず、チップ接合システム1は、
図8に示すように、搬出入ユニット80から投入された基板WTを活性化処理装置60へ投入することにより基板WTの実装面WTfに対して活性化処理を施す基板実装面活性化工程を実行する(ステップS1)。ここで、活性化処理装置60は、まず、支持部62に基板WTの実装面WTfが鉛直下方を向く姿勢で支持させた状態で、粒子ビーム源61から窒素原子を含む粒子ビームを実装面WTfへ照射させる。このとき、粒子ビーム源61への供給電力は、例えば1kV、100mAに設定されている。また、粒子ビーム源61の放電室612内へ導入される窒素ガスの流量は、例えば100sccmに設定される。そして、粒子ビーム源61から基板WTの実装面WTfへ粒子ビームが照射しつつ、粒子ビーム源61を1.2乃至14.0mm/secの速度で1往復させる。次に、活性化処理装置60は、枠保持部621に保持された基板WTを反転させることにより、基板WTの実装面WTfが鉛直上方を向く姿勢にする。そして、活性化処理装置60は、ラジカル源67により基板WTの実装面WTfに窒素ラジカルを照射する。ここで、ラジカル源67においてマグネトロン672からプラズマ室671へ供給される電力は、例えば2.5kWに設定される。なお、ラジカル源67が、前述のガラス窓674上に設けられた平板電極と平板電極に電気的に接続された高周波電源とを備える構成である場合、高周波電源からプラズマ室671へ供給される電力は、例えば250Wに設定される。また、プラズマ室671内へ導入される窒素ガスの流量は、例えば100sccmに設定される。更に、基板WTの実装面WTfへのラジカルの照射を継続する時間は、例えば15secに設定される。例えは、基板WTの実装面WTfとチップCPの接合面CPfとの両方に、金属の電極と絶縁膜とが設けられている場合、基板WTの実装面WTfに粒子ビームを照射することが好ましい。
【0037】
次に、チップ接合システム1は、活性化処理装置60から活性化処理が施された基板WTを、洗浄装置85へ投入して、基板WTの実装面WTfを水洗浄する水洗浄工程を実行する(ステップS2)。ここで、洗浄装置85は、ステージ852に基板WTが支持された状態でステージ駆動部853によりステージ852を回転させつつ、洗浄ヘッド851から水を基板WTに向けて吐出することにより基板WTを水洗浄する。これにより、基板WTの実装面WTfに水酸基(OH基)または水分子が比較的多く付着した状態となる。
【0038】
続いて、チップ接合システム1は、ボンディング装置30のステージ315に基板WTを保持させて基板WTにチップCPを接合するための準備を行う基板準備工程を実行する(ステップS3)。このとき、搬送ロボット71が、洗浄装置85から基板WTをその実装面WTfが鉛直上方を向く姿勢で受け取る。その後、搬送ロボット71は、受け取った基板WTを反転させて、基板WTをその実装面WTfが鉛直下方を向く姿勢で保持する。そして、搬送ロボット71は、基板WTをその実装面WTfが鉛直下方を向く姿勢のままボンディング装置30のステージ315へ移載する。
【0039】
その後、チップ接合システム1は、搬出入ユニット80から投入されたチップCPが貼着されたシートTEを保持する保持枠112を活性化処理装置60へ投入することによりチップCPの接合面CPfに対して活性化処理を施すチップ接合面活性化工程を実行する(ステップS4)。ここで、活性化処理装置60は、まず、支持部62に、保持枠112をシートTEにおけるチップCPが貼着された一面側を粒子ビーム源61側に対向させた姿勢、即ち、鉛直下方を向く姿勢で支持させる。そして、活性化処理装置60は、粒子ビーム源61からシートTEに貼着された状態のチップCPそれぞれの接合面CPfに向けて粒子ビームを照射する第1活性化工程を実行する。ここで、活性化処理装置60は、複数のチップCPが貼着されたシートTEを保持する保持枠112を1つだけ準備し、準備した保持枠112に保持されたシートTEに貼着されたチップCPに対して粒子ビームを照射する。また、活性化処理装置60は、例えば
図9Aおよび
図9Bの矢印AR34に示すように、粒子ビーム源61を、チップCPの接合面CPfへ粒子ビームを照射させながらX軸方向へ移動させていく。ここで、活性化処理装置60は、例えば粒子ビーム源61を+X方向へ移動させながら粒子ビームをテープTEに貼着された全てのチップCPの接合面CPfに照射した後、粒子ビーム源61を-X方向へ移動させながらチップCPの接合面CPfに粒子ビームを照射する。また、粒子ビーム源61の移動速度は、例えば1.2乃至14.0mm/secに設定される。更に、
図9(A)に示す粒子ビームの照射軸J1と仮想平面S1の法線方向N1とのなす角度(入射角度)θ1は、30度以上80度以下となるように設定される。また、粒子ビーム源61への供給電力は、例えば1kV、100mAに設定されている。そして、粒子ビーム源61の放電室612内へ導入される窒素ガスの流量は、例えば100sccmに設定される。このとき、チップCPまたはシートTEから発生した不純物CPA1は、チップCPから離れる方向へ飛ばされ、チップCPの接合面CPf側へ戻ってこない。
【0040】
次に、活性化処理装置60は、
図10Aの矢印AR36に示すように、枠保持部621に保持された保持枠112を反転させることにより、シートTEに貼着されたチップCPの接合面CPfが鉛直上方を向く姿勢にする。そして、活性化処理装置60は、
図10Bの矢印AR37に示すように、ラジカル源67により、チップCPの接合面CPfに窒素ラジカルを照射する第2活性化工程を実行する。ここで、ラジカル源67におけるプラズマ室671へ供給する電力、プラズマ室671内へ導入される窒素ガスの流量および窒素ラジカルの照射時間は、例えば前述の基板実装面活性化工程と同様の条件に設定される。
【0041】
図8に戻って、次に、チップ接合システム1は、チップ供給装置10のチップ供給部11にチップCPが貼着されたシートTEを保持する保持枠112を保持させて基板WTにチップCPを接合するための準備を行うチップ準備工程を実行する(ステップS5)。このとき、搬送ロボット71が、活性化処理装置60からシートTEを保持する保持枠112をチップCPの接合面CPfが鉛直上方を向く姿勢で受け取る。その後、搬送ロボット71は、受け取った保持枠112をそのままチップ供給装置10のチップ供給部11へ移載する。
【0042】
続いて、チップ接合システム1は、活性化処理装置60により接合面CPfが活性化されたチップCPを基板WTの実装面WTfに接触させることにより基板WTに接合するチップ接合工程を実行する(ステップS6)。ここでは、チップ接合システム1が、まず、チップ搬送装置39の1つのプレート391をチップ供給部11の方向へ向けた状態にする。次に、ピックアップ機構111が鉛直上方へ移動することにより、1つのチップCPをシートTEにおける複数のチップCP側とは反対側から切り出し、1つのチップCPをシートTEから離脱した状態にするチップ供給工程(第2被接合物供給工程)を実行する。この状態で、チップ搬送装置39は、プレート391からアーム394を突出させる。このとき、チップ保持部393の2つの脚片393aの間にピックアップ機構111のニードル111aが配置された状態となる。このようにして、
図11Aおよび
図11Bに示すように、チップ保持部393にチップCPが移載できる状態となる。この状態からピックアップ機構111を鉛直下方へ移動させると、チップCPがチップ保持部393へ移載される。
【0043】
続いて、チップ接合システム1が、プレート391を
図11Aの矢印AR1の方向へ旋回させる。このとき、
図12Aに示すように、チップ搬送装置39のアーム394の先端部のチップ保持部393がボンディング部33のヘッド33Hの鉛直上方の移載位置Pos1に配置される。即ち、チップ搬送装置39は、チップ供給部11から受け取ったチップCPをヘッド33HにチップCPを移載する移載位置Pos1まで搬送する。そして、ヘッド駆動部36は、ボンディング部33を鉛直上方へ移動させてヘッド33Hをチップ搬送装置39のチップ保持部393へ近づける。次に、支持部駆動部432bは、チップ支持部432aを鉛直上方へ移動させる。これにより、チップ保持部393に保持されたチップCPは、
図12Bに示すように、チップ支持部432aの上端部で支持された状態で、チップ保持部393よりも鉛直上方側に配置される。続いて、チップ搬送装置39は、アーム394をプレート391内へ没入させる。その後、支持部駆動部432bは、チップ支持部432aを鉛直下方へ移動させる。これにより、ヘッド33Hの先端部にチップCPが保持された状態となる。
【0044】
その後、チップ接合システム1は、ステージ315を駆動するとともにボンディング部33を回転させることにより、チップCPと基板WTとの相対的な位置ずれを補正するアライメントを実行する。そして、チップ接合システム1は、ヘッド33Hを上昇させることにより、チップCPを基板WTに接合する。ここにおいて、基板WTの実装面WTfとチップCPの接合面CPfとは、水酸基(OH基)を介して親水化接合した状態となる。
【0045】
そして、前述の一連の工程が完了した後、チップCPが実装された状態の基板WTは、チップ接合システム1から取り出され、その後、熱処理装置(図示せず)に投入され熱処理が行われる。熱処理装置は、例えば温度350℃、1時間の条件で基板WTの熱処理を実行する。
【0046】
次に、本実施の形態に係るチップ接合システムにより接合されたチップCPと基板WTとの接合強度を評価した結果について説明する。ここでは、本実施の形態に係るチップ接合方法により接合されたチップCPと基板WTとの接合強度の評価結果と、3種類の比較例1、2、3に係るチップ接合方法により接合されたチップCPと基板WTとの接合強度の評価結果と、について説明する。まず、比較例1、2、3に係るチップ接合方法について説明する。
【0047】
比較例1に係るチップ接合方法は、
図8を用いて説明したチップ接合面活性化工程において、
図13に示すような活性化処理装置9060を使用する点で実施の形態に係るチップ接合方法と相違する。この活性化処理装置9060は、チャンバ9064と、保持枠112を支持するステージ9621と、高周波バイアスを印加する高周波電源9061と、チャンバ9064内へ供給管676を介して窒素ガスを供給するガス供給部677と、を有する。なお、
図13において、実施の形態に係る活性化処理装置60と同様の構成については、
図5と同一の符号を付している。高周波電源9061は、ステージ9621に支持された保持枠112に保持された支持されたシートTEに貼着されたチップCPに高周波バイアスを印加する。高周波電源9061としては、例えば13.56MHzの高周波バイアスを発生させるものである。このように、高周波電源9061によりチップCPに高周波バイアスを印加することにより、チップCPの接合面CPfおよびシートTEの近傍に運動エネルギを有するイオンが繰り返しチップCPおよびシートTEに衝突するシース領域PLM9が発生する。そして、このシース領域PLM9に存在する運動エネルギを有するイオンによりチップCPの接合面CPfが活性化される。ここで、チップCPまたはシートTEから発生した不純物CPA9のうちシース領域PLM9に存在しイオン化したものも、チップCPの接合面CPfに衝突する。
【0048】
比較例2に係るチップ接合方法は、
図8を用いて説明したチップ接合面活性化工程において、前述の活性化処理装置9060に実施の形態で説明したラジカル源67が設けられた活性化処理装置を使用する点で実施の形態に係るチップ接合方法と相違する。即ち、比較例2に係るチップ接合方法では、チップCPに高周波バイアスを印加することによりチップCPの接合面CPfに対して活性化処理を施した後、チップCPの接合面CPfに窒素ラジカルを照射する。
【0049】
比較例3に係るチップ接合方法は、
図8を用いて説明したチップ接合面活性化工程において、活性化処理装置60によりチップCPの接合面CPfへの粒子ビームの照射のみを行いチップCPの接合面CPfへの窒素ラジカルの照射を行わない点で実施の形態に係るチップ接合方向と相違する。なお、比較例1乃至3並びに実施の形態に係るチップ接合方法において、チップCPの接合面CPfへの窒素ラジカルの照射に使用する活性化処理装置として、
図5に示す活性化処理装置60について、マグネトロン672および導波管673の代わりに、ガラス窓674上に設けられた平板電極と平板電極に電気的に接続された高周波電源と、を備える構成のものを使用した。
【0050】
次に、比較例1乃至3に係るチップ接合方法並びに実施の形態に係るチップ接合方法により互いに接合されたチップCPと基板WTとの接合強度を評価した結果について説明する。ここで、基板WTとしては、ガラス(SiO2)基板を採用した。また、チップCPとしては、接合面CPfにSiONのみが露出したチップ、接合面CPfにSiONとCuが露出したチップ、接合面CPfに樹脂とCuが露出したチップ、接合面CPfにSiONと鉛および錫を主成分とした合金(以下、「ハンダ」と称する。)とが露出したチップ、接合面CPfに樹脂とハンダとが露出したチップを採用した。つまり、チップCPとして、接合面CPfにSiONからなる領域のみ存在するチップと、接合面CPfにSiONからなる領域とCuからなる領域とが形成されたチップと、接合面CPfに樹脂からなる領域とCuからなる領域とが形成されたチップと、接合面CPfにSiONからなる領域とハンダからなる領域とが形成されたチップと、接合面CPfに樹脂からなる領域とハンダからなる領域とが形成されたチップと、を採用した。接合強度の評価は、チップCPの接合面CPfの活性化処理に使用したガスの種類と、採用したチップ接合方法と、チップCPの種類と、の組み合わせが互いに異なる40種類の試料1乃至試料40について行った。
【0051】
また、比較例1、2に係るチップ接合面活性化工程において、チップCPへ印加する高周波バイアスのバイアス電力は、いずれも110Wに設定した。そして、チップCPへ高周波バイアスの印加を継続する時間を30secに設定した。また、比較例1、2に係るチップ接合面活性化工程におけるチャンバ64内の真空度は、いずれの試料の場合も50Paに設定した。一方、比較例3および実施の形態に係るチップ接合面活性化工程における粒子ビーム照射時のチャンバ64内の真空度は、いずれの試料の場合も5.0×10-3Paに設定した。更に、比較例2および実施の形態に係るチップ接合面活性化工程において、窒素ラジカルを照射する際に高周波電源からプラズマ室671へ供給される電力は、いずれも250Wに設定した。
【0052】
また、比較例1乃至3に係るチップ接合方法並びに実施の形態に係るチップ接合方法によるチップCPの基板WTへの接合が完了した後のいずれの試料についても、熱処理装置で、温度350℃、1時間の条件で基板WTの熱処理を行った。40種類の試料1乃至試料40それぞれについて、チップCPの接合面CPfに露出している材料と、チップ接合面活性化工程における処理条件と、を纏めたものを以下の表1に示す。なお、表1における「接合面に露出している材料」の欄は、各試料についてチップCPの接合面CPfに露出している材料を示している。また、「チップ接合面活性化工程」の欄は、各試料についてチップ接合面活性化工程で採用した活性化処理方法を示している。具体的には、「比較例1」は前述の比較例1に係るチップ接合面活性化工程を採用したことを示し、「比較例2」は前述の比較例2に係るチップ接合面活性化工程を採用したことを示し、「比較例3」は前述の比較例3に係るチップ接合面活性化工程を採用したことを示す。また、「実施の形態」は、前述の
図8を用いて説明した実施の形態に係るチップ接合面活性化工程を採用したことを示す。また、試料1乃至20については、チップ接合面活性化工程におけるチップCPへの高周波バイアス印加時にチャンバ9064に導入されるガスまたは粒子ビーム照射時に粒子ビーム源61の放電室612に導入されるガスを窒素ガスとした。一方、試料21乃至40については、チップ接合面活性化工程におけるチップCPへの高周波バイアス印加時にチャンバ9064に導入されるガスまたは粒子ビーム照射時に粒子ビーム源61の放電室612に導入されるガスをアルゴン(Ar)ガスとした。
【0053】
【0054】
また、試料1乃至試料40についてのチップCPと基板WTとの接合強度の評価は、ブレードを挿入するクラックアンドオープニング法を用いて接合強度(表面エネルギ換算)を測定することにより行った。このクラックアンドオープニング法では、まず、互いに接合されたチップCPと基板WTとにおけるチップCPの周縁から接合部分に例えばカミソリの刃のようなブレードを挿入したときのチップCPの剥離長さを測定する。ブレードとしては、例えば厚さ100μmのブレードを使用する。また、基板WTに接合されたチップCPの周縁部の4箇所にブレードを挿入したときのブレード接点からの剥離長さを測定した。そして、チップCPの周縁部の4箇所それぞれについて、剥離長さから、チップCPと基板WTとの接合界面の強度を単位面積当たりの表面エネルギ換算で算出することにより、チップCPと基板WTとの接合強度の評価を行った。なお、剥離長さから接合強度(表面エネルギ換算)Ebを算出する際には、下記式(2)の関係式を使用した。
【0055】
【数2】
ここで、Yはヤング率を示し、TsはチップCPおよび基板WTの厚さを示し、Tbはブレードの厚さを示す。試料1乃至40についてのチップCPと基板WTとの接合強度の評価では、ヤング率Yを6.5×1010[N/m2]とし、チップCPおよび基板WTの厚さTsを0.0011m(1.1mm)、ブレードの厚さTbを0.0001m(0.1mm)とした。計算式より剥離長さが短いほど接合強度が大きくなる。
【0056】
試料1乃至40それぞれのチップCPの周縁部の4箇所における接合強度(表面エネルギ換算)の平均値を表2および表3に示す。なお、表2および表3において「試料名」の欄は、前述の表1の試料1乃至試料40それぞれに対応する。また、各試料について算出された接合強度(表面エネルギ換算)が大きいほど、チップCPと基板WTとの接合強度が大きいことを示し、バルク破壊したものは「バルク破壊」と記載する。また、表2および表3における「接合可否」の欄は、チップCPが基板WTに接合できた場合を「○」とし、チップCPが基板WTに接合できなかった場合を「×」としている。そして、接合強度は、チップCPが基板WTに接合できた試料のみについて算出している。
【0057】
【0058】
【0059】
表2および表3の試料2乃至5、7乃至10、22乃至25、27乃至30についての評価結果から、比較例1、2に係るチップ接合面活性化工程を採用した場合、チップCPの接合面CPfにCu、樹脂またはハンダが露出している場合、チップCPを基板WTに接合できないことが判る。このことから、比較例1、2に係るチップ接合面活性化工程を採用した場合、Cu、樹脂またはハンダから生じる不純物が接合面CPfに衝突することによる接合面CPfの損傷がチップCPを基板WTに接合できなくなる程度に大きくなっていると考えられる。但し、試料1、6、21、26についての評価結果から、比較例1、2に係るチップ接合面活性化工程を採用した場合であってもチップCPの接合面CPfにSiONのみが露出している場合にはチップCPを基板WTに接合できることが判る。
【0060】
一方、表2および表3の試料11乃至20、31乃至40についての評価結果から、比較例3および実施の形態に係るチップ接合面活性化工程を採用した場合、チップCPの接合面CPfにCu、樹脂またはハンダが露出している場合であっても、チップCPを基板WTに接合できることが判る。これは、チップCPの接合面CPfに粒子ビームを照射することにより接合面CPfを活性化する場合、チップCPに高周波バイアスが印加されていないため、Cu、樹脂またはハンダから生じる不純物の接合面CPfへ衝突することによる接合面CPfの損傷が抑制されているためと考えられる。このことから、チップCPの接合面CPfにCu、樹脂またはハンダが露出している場合には、チップ接合面活性化工程において、粒子ビームを照射することによりチップCPの接合面CPfを活性化する方法を採用することが、チップCPの基板WTへの良好な接合を実現するために重要であると言える。
【0061】
更に、試料21乃至30の接合強度と試料31乃至40の接合強度とを比較すると、試料21乃至30の接合強度は、試料31乃至40の接合強度に比べて高いことが判る。このことから、粒子ビームをチップCPの接合面CPfに照射する際に粒子ビーム源61の放電室612に導入するガスは、Arガスよりも窒素ガスのほうがチップCPと基板WTとの接合強度向上の観点から好ましいことが判る。このように、窒素ガスを用いた場合のほうが、Arガスを用いた場合に比べてチップCPと基板WTとの接合強度が向上した理由は、Arは窒素に比べて質量が大きいため、チップCPの接合面CPfにOH基が生成されても、それがArの衝突により飛ばされてしまうことにあると考えられる。また、試料21乃至25の接合強度と試料26乃至30の接合強度とを比較すると、試料21乃至25の接合強度は、試料26乃至30の接合強度に比べて高いことが判る。このことから、粒子ビームをチップCPの接合面CPfに照射した後、接合面CPfに窒素ラジカルを照射したほうが、チップCPと基板WTとの接合強度向上の観点から好ましいことが判る。
【0062】
なお、前述の各資料1乃至4、6乃至9、11乃至14、16乃至19、21乃至24、25乃至29、31乃至34、35乃至39において、酸化物SiONを、酸化物SiO2、窒化物SiNに変更して同様の評価を行ったところ、前述と同様な結果が得られた。なお、窒素ガスに代えて酸素ガスを使用した場合、チップCPの接合面CPfにCuまたははんだのような金属が存在すると、それらが酸素により酸化されてしまい、チップCPと基板WTとの接続抵抗が悪くなるという結果が出た。同様に、前述のように粒子ビーム源61を使用してチップCPの接合面CPfに粒子ビームを照射する代わりに、チップCPの接合面CPfをプラズマ処理した場合でも窒素ガスを使用した場合が最もよい結果であった。つまり、窒素ガスを使用することが、チップCPの接合面CPfにCuまたははんだのような金属が存在してもそれらを酸化させることなく、チップCPの接合面CPfに最も効果的にOH基を生成することができると考えられる。
【0063】
以上説明したように、本実施の形態に係るチップ接合システム1によれば、活性化処理装置60において、支持部62が、チップCPが貼着されたシートTEにおけるチップCPが貼着された一面側を粒子ビーム源61側に対向させた姿勢で保持する。そして、粒子ビーム源61が、シートTEに貼着された状態のチップCPの接合面CPfに向けて粒子ビームを照射する。即ち、シートTEに貼着されたチップCPにおける接合面CPfに対して粒子ビームを照射することにより接合面CPfを活性化させる。これにより、粒子ビームの照射によりシートTEまたはチップCPから生じた不純物のチップCPの接合面CPfへの衝突が抑制され、不純物の衝突に起因したチップCPの接合面CPfの損傷が抑制される。従って、チップCPと基板WTとの接合不良の発生が抑制される。
【0064】
また、本実施の形態に係るチップ接合システム1では、基板WTに接合しようとするチップCPが、その接合面CPfに互いに材料が異なる複数種類の領域が形成されたチップCPであってもよい。この場合、粒子ビームの照射によりチップCPの接合面CPfにおける複数種類の領域それぞれから生じた不純物のチップCPの接合面CPfへの衝突が抑制され、不純物の衝突に起因したチップCPの接合面CPfの損傷が抑制される。
【0065】
また、本実施の形態に係るチップ接合システム1では、粒子ビーム源61が、シートTEに貼着された複数のチップCPの接合面CPfのうちの少なくとも1つを含む仮想平面S1に対する粒子ビームの入射角度θ1が30度以上80度以下となるように設定されている。これにより、粒子ビームが互いに隣り合うチップCPの隙間を通じてシートTEに照射されることが抑制されるので、シートTEからの不純物の発生が抑制される。
【0066】
更に、本実施の形態に係る活性化処理装置60は、チップCPが貼着されたシートTEを保持する保持枠112が枠保持部621に保持された状態で、シートTEのチップCPが貼着された一面側におけるチップCPが貼着された部分を除く部分を覆うカバー622を有する。これにより、シートTEにおけるチップCPが貼着された部分を除く部分へ粒子ビームが照射されることによるシートTEからの不純物の発生が抑制される。
【0067】
また、本実施の形態に係る活性化処理装置60では、チップCPの接合面CPfへの粒子ビーム照射時において、支持部62が、チップCPの接合面CPfが鉛直下方を向く姿勢で、チップCPが貼着されたシートTEを保持する保持枠112を支持する。そして、粒子ビーム源61が、支持部62の鉛直下方からチップCPの接合面CPfへ粒子ビームを照射する。これにより、シートTEおよびチップCPへ粒子ビームを照射することにより生じた不純物が、重力により鉛直下方へ落下するので、不純物のチップCPの接合面CPfへの付着が抑制される。
【0068】
更に、本実施の形態に係る粒子ビーム源61がチップCPの接合面CPfへ照射する粒子ビームは、窒素を含む。これにより、例えば前述のチップ接合面活性化工程において、Arを含む粒子ビームを照射する構成に比べて、チップCPを基板WTに接合したときのチップCPと基板WTとの接合強度を高めることができる。
【0069】
また、本実施の形態に係る活性化処理装置60は、チップCPの接合面CPfに対して窒素ラジカルを照射するラジカル源を更に有する。これにより、例えば前述のチップ接合面活性化工程において、窒素を含む粒子ビームを照射するのみの構成に比べて、チップCPを基板WTに接合したときのチップCPと基板WTとの接合強度を高めることができる。
【0070】
ところで、粒子ビーム源61が、例えばイオンガンの場合、粒子ビームが広がり過ぎてチャンバ64内におけるチップCPが貼着されたシートTEを保持する保持枠112以外の部分へも粒子ビームが照射される。そうすると、チャンバ64の内壁からメタルコンタミが発生し易くなる。特に、本実施の形態のように活性化処理装置60において親水化処理を行う場合は、メタルが混在してしまうことは良くない。これに対して、本実施の形態では、粒子ビーム源61として、指向性の高い高速粒子ビーム源を使用している。これにより、チャンバ64内におけるチップCPが貼着されたシートTEを保持する保持枠112以外の部分へも粒子ビームの照射が抑制される。また、高速粒子ビーム源からなる粒子ビーム源61は、チップCPが貼着されたシートTEを保持する保持枠112の近くで保持枠112に対して相対的にスキャン移動させることにより、シートTE1における平面視円形の領域に貼着された複数のチップCPの外周部を遮蔽することによりチップCPのみに粒子ビームを照射させることができるので有効である。
【0071】
ところで、粒子ビーム源61が、高速原子ビーム源であり、放電室612が炭素材料から形成されている場合、放電室612の周壁から炭素粉が発生する。そして、チップ接合面活性化工程において、粒子ビーム源61をチップCPの鉛直上方に配置し、チップCPの鉛直上方から粒子ビームを照射する構成の場合、放電室612の周壁から発生した炭素粉が、チップCPの接合面CPfに落下して付着してしまう虞がある。これに対して、本実施の形態によれば、粒子ビーム源61が複数のチップCPに対して鉛直下方に配置されている。これにより、粒子ビーム源61で発生する炭素粉が放電室612内に溜まり、放電室612外への飛散が抑制されるので、チップCPの接合面CPfへの付着が抑制される。従って、チップCPの基板WTへの接合不良の発生が抑制される。
【0072】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は前述の実施の形態に限定されるものではない。例えば、活性化処理装置60の粒子ビーム源61が、窒素のイオンを加速して放出するイオンビーム源であってもよい。
【0073】
実施の形態では、チップCPを基板WTに接合するチップ接合システム1の例について説明したが、これに限らず、例えば基板同士を接合する基板接合システムであってもよい。この場合、活性化処理装置60において、互いに接合する基板それぞれの接合面について実施の形態で説明した活性化工程と同様の工程を行うようにすればよい。例えば2つの基板それぞれの接合面に金属の電極と絶縁膜とが設けられている場合、基板の接合面に粒子ビームを照射して活性化処理することが好ましい。
【0074】
実施の形態では、チップCPが貼着されたシートTEを保持する保持枠112に対して粒子ビーム源61を移動させる活性化処理装置60の例について説明した。但し、これに限らず、例えば粒子ビーム源61を固定し、チップCPが貼着されたシートTEを保持する保持枠112を移動させる構成であってもよい。或いは、粒子ビーム源61と、チップCPが貼着されたシートTEを保持する保持枠112と、を互いに逆向きに移動させる構成であってもよい。
【0075】
実施の形態に係る活性化処理装置60において、チャンバ64内に水ガスを供給する水供給部が設けられていてもよい。ここで、水供給部は、水蒸気をチャンバ64内へ導入するものであってもよいし、液体状(霧状)の水をチャンバ64内へ導入するものであってもよい。また、水蒸気は、たとえば液体の水の中に窒素をキャリアガスとして通過させることにより生成されてもよい。
【0076】
実施の形態では、1つの活性化処理装置60においてチップCPへの粒子ビームの照射およびチップCPのラジカル処理を実行する例について説明したが、これに限らず、例えばチップCPへの粒子ビームの照射とチップCPのラジカル処理とを各別の装置で行う構成であってもよい。
【0077】
実施の形態では、活性化処理装置60において、保持枠112に保持されたシートTEに貼着されたチップCPに対してチップ接合面活性化工程、即ち、第1活性化工程および第2活性化工程が実行された後、そのまま、その保持枠112がチップ供給装置10のチップ供給部11へ投入されるチップ接合システム1の例について説明した。但し、これに限らず、例えば、チップ接合システムが、チップCPを、保持枠112に保持されたシートTEに貼着された状態で洗浄する洗浄装置(図示せず)を備え、チップCPに対してチップ接合面活性化工程が実行された後、チップCPを洗浄するものであってもよい。ここで、洗浄装置は、例えば、チップCPが貼着されたシートTEを保持する保持枠112を支持する支持部(図示せず)と、保持枠112に保持されたシートTEに貼着されたチップCPに対して超音波またはメガソニック振動を与えた水または電極表面を還元する洗浄液を吐出する洗浄ヘッド(図示せず)と、を有する。なお、洗浄ヘッドから吐出される液体としては、水および前述洗浄液に限定されるものではなく、有機溶剤のような他の種類の液体であってもよい。洗浄装置は、まず、洗浄ヘッドにより超音波を印加した水または洗浄液をシートTEに貼着されたチップCPに吹き付けながら、チップCPを支持する支持部を回転させてチップCPの接合面CPf全面を洗浄する。その後、洗浄装置は、洗浄ヘッドからの水または洗浄液の吐出を停止させた状態で、支持部を回転させることにより、チップCPおよびシートTEを乾燥させる。なお、洗浄装置は、例えば水の代わりN2のような不活性ガスをチップCPに吹き付けることにより、チップCPに付着したパーティクルを除去するものであってもよい。
【0078】
ところで、実施の形態で説明したように、粒子ビーム源61が、高速原子ビーム源であり、放電室612が炭素材料から形成されている場合、放電室612の周壁から炭素粉が発生する。そして、チップ接合面活性化工程において、放電室612の周壁から発生した炭素粉が、チップCPの接合面CPfに付着してしまう虞がある。これに対して、本構成によれば、活性化処理装置60においてチップ接合面活性化工程を行った後、洗浄装置においてチップCPの接合面CPfが洗浄されるので、チップCPの基板WTへの接合不良の発生が抑制される。
【0079】
また、チップCPの接合面CPfを洗浄する方法として、ボンディング装置30でチップCPを基板WTに接合する前において、チップCPを1つずつ洗浄する方法が考えられる。しかしながら、この場合、チップCP毎に洗浄を行う分だけ複数のチップCPの基板WTへの実装に要する時間が長期化してしまう。これに対して、本構成によれば、シートTEに貼着された複数のチップCPを一度に洗浄することができる。従って、複数のチップCPを基板WTに実装するのに要する時間を短縮することができる。
【0080】
実施の形態では、チップ接合面活性化工程において、複数のチップCPがシートTEに互いに離間して貼着された状態で、複数のチップCPへの粒子ビームの照射およびチップCPのラジカル処理を実行する例について説明した。但し、これに限らず、例えば複数のチップCPの基となる被ダイシング基板をダイシングした後、複数のチップCP同士が接触した状態または繋がった状態で、前述の洗浄装置においてチップCPの接合面CPfを洗浄するようにしてもよい。ここで、チップ供給装置は、保持枠112に保持されたシートTEを伸長することにより、シートTEに貼着された複数のチップCP同士を離間した状態にするエキスパンド部を有するものであってもよい。この場合、洗浄装置が、保持枠112に保持されたシートTEに貼着された複数のチップCPを洗浄した後、保持枠112をそのままチップ供給装置へ投入し、チップ供給装置が、保持枠112に保持されたシートTEを伸長させることにより複数のチップCP同士を互いに離間した状態にするようにすればよい。なお、チップ供給装置は、シートTEを伸長させた後、複数のチップCPおよびシートTEを乾燥させる乾燥ユニット(図示せず)を有するものであってもよい。
【0081】
本構成によれば、例えば複数のチップCPを水または洗浄液により洗浄する場合、複数のチップCPの間に水が溜まることが抑制される。
【0082】
また、前述の洗浄装置が、例えば
図14Aに示すような、内側支持部2119aと枠支持部2119bとを有するものであってもよい。ここで、内側支持部2119aは、保持枠112に保持されたシートTEにおける保持枠112の内側を支持する。枠支持部2119bは、保持枠112を支持し、
図14Aの矢印AR10に示すように、内側支持部2119aに対して-Z方向へ移動可能となっている。また、洗浄装置は、枠支持部2119bをZ軸方向へ駆動する枠駆動部(図示せず)と、シートTEを支持する内側支持部2119aと保持枠112を支持する枠支持部2119bとを保持枠112の厚さ方向、即ち、Z軸方向に沿った回転軸J10周りに回転させる回転駆動部(図示せず)と、を有する。枠駆動部は、複数のチップCPが水で洗浄された後、枠支持部2119bを内側支持部2119aに対して相対的に移動させることにより、シートTEにおける複数のチップCPが貼着された第1部位PA1が、保持枠112に固定された第2部位PA2よりも回転軸J10方向に離間した状態にする。
【0083】
また、洗浄装置は、更に、シートTEにおける複数のチップCPが貼着された第1部位PA1をチップCP側とは反対側から吸着する吸着部(図示せず)を有する。そして、枠駆動部は、
図14Bに示すように、シートTEにおける第1部位PA1が第2部位PA2よりもシートTEの回転軸J10方向、即ち、-Z方向に離間した状態にする。このとき、吸着部が、シートTEに貼着された複数のチップCPの基となる被ダイシング基板をダイシングすることにより生成される、互いに接触した状態または繋がった状態の複数のチップCPを吸着する。そして、枠駆動部が、枠支持部2119bを内側支持部2119aに対して-Z方向へ移動させる。これにより、互いに接触した状態または繋がった状態でシートTEに貼着された複数のチップCP同士が離間することが抑制されるので、複数のチップCPの間に水が付着することが抑制される。
【0084】
そして、洗浄装置では、
図14Cに示すように、洗浄ヘッドから水または洗浄液を吐出させつつ、内側支持部2119aと枠支持部2119bとを回転させることにより、チップCPを洗浄する。その後、回転駆動部は、洗浄ヘッドからの水または洗浄液の吐出が停止した状態で、内側支持部2119aと枠支持部2119bとを回転させることにより、シートTEおよび複数のチップCPを乾燥させる。このとき、チップCPに付着した水または洗浄液は、
図14(C)の矢印AR11に示すように、遠心力により除去される。
【0085】
本構成によれば、シートTEにおける複数のチップCPが貼着された第1部位PA1が、保持枠112に固定された第2部位PA2よりも距離H1だけ回転軸J10方向に離間した状態で配置されることにより、内側支持部2119aと枠支持部2119bとを回転させたときに、チップCPに付着した水または洗浄液が保持枠112の内側およびシートTEに接触せずに溜まることが抑制される。
【0086】
また、チップ接合システムは、チップCPを1つずつ個別に洗浄する洗浄装置(図示せず)を備えるものであってもよい。この場合、洗浄装置は、チップ供給装置から1つのチップCPが供給され、その1つのチップCPがボンディング装置へ搬送される途中で、そのチップCPを洗浄するものであってもよい。
【0087】
また、複数のチップCPの基となる被ダイシング基板をダイシングする方法としては、チップCP端部のバリの発生を抑制する観点からレーザ光を利用したステルスダイシング法を採用することが好ましい。これにより、互いに接触した状態または繋がった状態でシートTEに貼着された複数のチップCPを、ダイシング前の1つの被ダイシング基板と同様に扱うことが可能となる。
【0088】
更に、ダイシング装置を利用して、例えば
図15Aに示すように、被ダイシング基板WCにおけるステルスダイシングが行われた部分PASに対応する部分に溝WCTを形成するように加工してもよい。この場合、
図15Aの破線で囲んだコーナ部分WCCにバリが生じることがある。そこで、溝WCTを形成した後に研磨することによりコーナ部分WCCに生じたバリを除去する。その後、
図15Bに示すように、被ダイシング基板WCを、段差部CPdを有する複数のチップCPに分割する。このように、チップCPが段差部CPdを有することにより、段差部CPdの-Z方向側の面Cpd1または第1コーナ部CPC1を保持してチップCPを搬送することができる。従って、チップCPの接合面CPfと第2コーナ部分CPC2を触ることなく、チップCPを搬送することが可能となる。
【0089】
また、前述の変形例に係るチップ接合システムにおいて、複数のチップCPが貼着されたシートTEを保持する保持枠112に保持されたシートTEを伸長させることにより、複数のチップCPを互いに離間した状態にする分離工程を実行する分離装置(図示せず)を更に備えるものであってもよい。また、この分離装置において、シートTEが伸長された状態で、リング状のシート保持枠(図示せず)に再保持させて、シートTEを保持したシート保持枠をボンディング装置へ供給するようにしてもよい。
【0090】
ところで、例えば1つの基板WTに複数種類のチップCPを実装しようとする場合において、チップ供給装置へ投入するチップCPを変更するときに、伸長された状態のシートTEを緩めてチップ供給装置外へ取り出す必要がある。このため、伸長された状態のシートTEを緩める際にシートTEに貼着された隣接するチップCP同士が衝突して損傷してバリまたはパーティクルが発生してしまう虞がある。
【0091】
これに対して、本構成によれば、シートTEに貼着された複数のチップCPを離間した状態で維持することができる。これにより、複数種類のチップCPそれぞれをシートTEに貼着した状態で保管することが可能となる。従って、例えば1つの基板WTに複数種類のチップCPを実装しようとする場合、適宜シートTEを保持するシート保持枠を交換しながらチップCPの基板WTへの実装を行うことができ、且つ、チップCPにおけるバリまたはパーティクルの発生が抑制される。
【0092】
実施の形態において、チップCPが、例えば
図16Aに示すように、接合面CPf側の周部に段差部CPdを有するものであってもよい。この場合、チップ搬送装置39は、前述のアーム394の先端部に
図16Aに示すような吸引部3393aが設けられたチップ保持部3393を有するものであってもよい。このチップ保持部3393は、一部がチップCPの段差部CPdにおける接合面CPf側とは反対側の部分、即ち、コーナ部CPP1に当接した状態で吸引部3393aによりチップCPを吸引することによりチップCPを保持するコレットチャックである。なお、「チップCPの段差部CPdにおける接合面CPf側とは反対側の部分」とは、コーナ部CPP1のみならず、段差部CPdまたはチップCPの最外周の側面をも含む。つまり、チップ保持部3393は、チップCPの段差部CPdにおける接合面CPf側とは反対側の部分、即ち、コーナ部CPP1を保持する。そして、チップ搬送装置39は、チップ保持部3393によりチップCPの段差部CPdにおける接合面CPf側とは反対側の部分CPP1を保持してチップCPをチップ供給装置10からボンディング装置30へ搬送するチップ搬送工程(第2被接合物搬送工程)を実行する。なお、
図16Bに示すように、チップ保持部4393が、傾斜面4393bを有するコレットチャックであってもよい。なお、
図16Bにおいて、
図16Aに示す構成と同様の構成については同一の符号を付している。この場合、チップ保持部4393にチップCPを保持させる際、傾斜面4393bにチップCPの第1コーナ部CPC1が接触した状態で保持されるので、チップCPの位置が修正させる。これにより、チップ保持部4393にチップCPが保持される際、チップCPの位置ずれに起因してチップ保持部4393が、チップCPの接合面CPfまたは第2コーナ部CPC2への接触しにくくなるので好ましい。また、チップ保持部が、第2コーナ部CPC2またはチップCPの最外側面をクランプして搬送する構成であってもよい。更に、チップ保持部は、チップCPの段差部CPdに接触し且つチップCPの第2コーナ部CPC2および接合面CPfに接触しない状態でチップCPを吸引して保持できるいわゆる段付きツールを有するものであってもよい。
【0093】
実施の形態で説明したチップ接合システムでは、チップCPを基板WTに接合する接合工程の前に、チップCPをヘッド33へ1つずつ搬送して接合する。この場合、前述のアーム394の先端部にチップCPをその接合面CPf側から保持するチップ保持部(図示せず)が設けられている場合、チップ保持部がチップCPの接合面CPfまたはチップCPのコーナ部に接触するとパーティクルまたはバリが生じてしまい、チップCPを基板WTに接合したときのその両者の界面にボイドが発生する虞がある。また、活性化処理がなされたチップCPの接合面CPfにチップ保持部が接触すると、接合面CPfの状態が悪化しチップCPと基板WTとの接合不良が発生する虞もある。例えば、チップCPに設けられたハンダを溶融させることによりチップCPを基板WTに接合する方法では、チップCPの接合面CPfに付着したパーティクルがハンダ内に取り込まれるため、チップCPと基板WTとの接合状態に大きな影響を与えない。しかしながら、チップCPの接合面CPfに対して活性化処理を行った後、チップCPと基板WTとを接合する方法では、固相状態での接合面CPfと実装面WTfとの接合となるため、チップCPの接合面CPfに付着したパーティクルまたはチップCPのコーナ部に生じたバリが、チップCPと基板WTとの接合状態に大きな影響を与えうる。これに対して、本構成によれば、チップCPの接合面CPf側の周部に段差部CPdが設けられているので、チップCPの接合面CPfを触ることなく、チップCPを搬送することが可能となるので、チップCPの接合面CPfおよびコーナ部でのパーティクルまたはバリの発生が抑制されるとともに接合面CPfを良好な状態で維持できるので、チップCPと基板WTとの接合不良の発生が抑制される。
【0094】
更に、本構成は、チップCPの接合面CPfの活性化処理の方法が前述の粒子ビームを照射する方法である場合に限定されるものではなく、活性化処理方法が、例えばチップCPの接合面CPfにプラズマ処理を施すことにより接合面CPfを活性化する方法である場合でも有効である。チップCPの接合面CPfに対して活性化処理を行うことによりチップCPと基板WTとを接合する接合方法において、活性化処理が施された接合面CPfにチップ保持部が接触するとチップCPと基板WTとの接合不良が生じるため、前述のようにチップCPの接合面CPfを触らず搬送することは、チップCPと基板WTとを良好に接合する上で特に重要である。
【0095】
実施の形態では、チップCPの接合面CPfに対して活性化処理を行った後、チップCPをボンディング装置30へ搬送する途中でチップCPの接合面CPfを洗浄する洗浄工程を行う例について説明した。但し、これに限らず、チップCPの接合面CPfに対して活性化処理を行った後、チップCPをボンディング装置30へ搬送する前にチップCPの接合面CPfを洗浄するようにしてもよい。この場合、ボンディング装置30へ搬送する前にチップCPの接合面CPfに付着したパーティクルを除去できるので好ましい。
【0096】
実施の形態では、チップCPをボンディング装置30のヘッド33Hへ1つずつ搬送してチップCPを基板WTに接合する例について説明した。但し、これに限らず、例えば、前述の分離工程を行った後、チップCPがシートTEに貼着された状態でボンディング装置30へ搬送してチップCPを直接基板WTへ接合してもよい。ボンディング装置が、例えば
図17Aに示すように、基板WTを保持する基板支持部であるステージ315と、複数のチップCPが貼着されたシートTEを保持する保持枠112を支持する枠支持部3331と、シートTEにおけるチップCP側とは反対側からチップCPをステージ315側へ押圧するヘッド3033Hと、ヘッド3033Hを駆動するヘッド駆動部3036と、枠支持部3331とヘッド駆動部3036を昇降させる昇降機構(図示せず)と、を有するものであってもよい。なお、
図17Aにおいて、実施の形態と同様の構成については、
図2と同一の符号を付している。
【0097】
また、ボンディング装置は、ステージ315および枠支持部3331を駆動する支持部駆動部(図示せず)と、チップCPにおける基板WT側とは反対側と、基板WTにおけるチップCP側とは反対側と、の少なくとも一方から、第1アライメントマークおよび第2アライメントマークを撮像する撮像部(図示せず)と、支持部駆動部および撮像部を制御する制御部(図示せず)と、を有する。また、基板WTには、第1アライメントマーク(図示せず)が設けられ、チップCPには、第2アライメントマーク(図示せず)が設けられているとする。この場合、制御部は、撮像部を制御して、第1アライメントマークおよび第2アライメントマークを撮像し、撮像された撮影画像に基づいて、基板WTに対するチップCPの位置ずれ量を算出する。その後、制御部は、支持部駆動部を制御して、チップCPの基板WTに対する位置ずれ量を低減する方向へ枠支持部331またはステージ315を相対的に移動させる。つまり、このチップ接合システムは、撮像部により基板WTにおけるチップCP側とは反対側と、チップCPにおける基板WT側とは反対側と、の少なくとも一方から、第1アライメントマークおよび第2アライメントマークを撮像する撮像工程と、撮像工程において撮像された撮影画像に基づいて、基板WTに対するチップCPの位置ずれ量を算出する位置ずれ量算出工程と、チップCPの基板WTに対する位置ずれ量を低減する方向へ枠支持部3331またはステージ315を移動させる移動工程と、を実行する。ここで、撮像部は、いわゆる2視野カメラであり、チップCPと基板WTとの間に挿入した状態でチップCPと基板WTとのそれぞれに設けられたアライメントマークを撮像する構成であってもよい。或いは、撮像部が、いわゆる赤外線を利用したカメラであり、基板WTにおける実装面WTf側とは反対側またはチップCPにおける接合面CPf側とは反対側から赤外光を利用してアライメントマークを撮像するものであってもよい。ところで、撮像部が、2視野カメラである場合、パーティクルがチップCPと基板WTとの間に混入する。これに対して、撮像部が、前述赤外光を利用してアライメントマークを撮像する構成である場合、撮像部をチップCPと基板WTとの間に配置する必要が無いので、チップCPと基板WTとの間へのパーティクルの混入が抑制され、チップCPまたは基板WTへのパーティクルの付着を抑制することができるので好ましい。
【0098】
ボンディング装置は、1つの撮像部を移動させながらアライメントマークを撮像してもよいし、2つの撮像部により基板WTに設けられたアライメントマークとチップCPに設けられたアライメントマークとからなる1組のアライメントマークを2組撮像して、チップCPの位置ずれとチップCPの回転方向の姿勢のずれを算出するようにしてもよい。更に、ボンディング装置は、チップCPをヘッド3033Hで突き上げる際、突き上げるチップCPと隣り合うチップCPが追従して突き上げられないようにシートTEにおけるチップCP側とは反対側から吸着しておくことが好ましい。また、シートTEを伸長させてチップCPを分離させた後、シートTEを再び縮めると、隣り合うチップCP同士が接触して、チップCPからパーティクルが発生したり、チップCPのコーナ部にバリが生じたりする。従って、前述の分離工程の後、シートTEを伸長させた状態で、チップCPを基板WTに接合することが好ましい。更に、チップCPを基板WTに接合する際、チップCPの中央部を基板WT側に押圧することにより、チップCPの中央部から基板WTに接触させることが好ましい。これにより、チップCPの中央部から基板WTへの接合が進むため、チップCPと基板WTとの間への空気の巻き込みによるボイドの発生が回避される。
【0099】
ここで、枠支持部3331、ヘッド3033Hおよびヘッド駆動部3036とは、ステージ315の鉛直下方に配置されている。
【0100】
このボンディング装置では、まず、
図17Aに示すように、保持枠112が、シートTEにおけるチップCP側の面が鉛直上方を向く姿勢で配置される。続いて、昇降機構が、
図17Bの矢印AR302、AR303に示すように、枠支持部3331とヘッド駆動部3036とを上昇させてステージ315に近づけて、シートTEと基板WTの実装面WTfとの間の距離が予め設定された基準距離となるようにする。この状態で、
図17Cに示すように、ヘッド駆動部3036が、ヘッド3033Hをステージ315に近づく方向へ駆動することによりチップCPを基板WTに接合する。即ち、ボンディング装置は、複数のチップCPが貼着されたシートTEにおける複数のチップCP側とは反対側にヘッド3033Hを当接させた状態で、ヘッド3033Hを基板WTに近づく方向へ移動させることにより、チップCPを基板WTに接合する。
【0101】
なお、シートTEとして、そのシートTEにおける複数のチップCPが貼着される側に紫外線が照射されると接着力が低下する接着材が塗布されたものを採用してもよい。この場合、ボンディング装置は、シートTEにおける基板WTに接触しているチップCPに対応する部分のみに局所的に紫外線を照射することができる紫外線照射部を有するものとしてもよい。この場合、ボンディング装置は、ヘッド3033Hが透明な材質から形成されており、シートTEにおけるチップCP側とは反対側にヘッド3033Hを当接させて、ヘッド3033Hを基板WTに近づく方向へ移動させてチップCPを基板WTに接触させた状態で、ヘッド3033Hを介して紫外線照射部によりシートTEに紫外線を照射するようにすればよい。なお、シートTEは、紫外線が照射されると接着力が低下する接着材が塗布されたものに限定されるものではなく、例えば加熱またはその他の方法を施すことにより接着力が低下する接着材が塗布されたものであってもよい。
【0102】
本構成によれば、実施の形態に係るチップ実装システム1のように、チップCPをシートTEからピックアップしてヘッド33Hへ移載する工程が不要となるので、チップCPの基板WTへの実装に要する工程が削減できる。また、本構成によれば、チップCPを1つずつ搬送する工程を省略することができるので、チップCPを1つずつ搬送する際のチップCPの接合面CPfへのチップ保持部の接触による接合面CPfの悪化またはパーティクルの発生、或いは、チップCPのコーナ部へのチップ保持部の接触に起因したバリの発生が抑制でき、チップCPと基板WTとの接合不良が抑制される。
【0103】
なお、チップCPの接合面CPfに対して活性化処理を行った後、そのままチップCPを基板WTに接合する接合工程を行ってもよい。或いは、チップCPの接合面CPfに対して活性化処理を行った後且つチップCPを基板WTに接合する接合工程の前に、チップCPの接合面CPfを洗浄する洗浄工程を行ってもよい。この場合、チップCPを基板WTに接合する前にチップCPの接合面CPfに付着したパーティクルを除去できるので好ましい。
【0104】
ところで、シートTE上には、シートTEを伸長させて複数のチップCPに分離したときにチップCPから発生したパーティクルが載っていることが多い。このため、例えばチップCPを基板WTの鉛直上方から接合しようとすると、シートTEに載ったパーティクルが基板WT上に降り注ぎ、チップCPと基板WTとの接合不良が生じる虞がある。これに対して、本構成によれば、チップCPを鉛直下方から基板WTに近づけて接合するので、シートTEの載ったパーティクルに起因したチップCPと基板WTとの接合不良の発生が抑制される。
【0105】
また、本構成は、例えばCu電極と絶縁膜とをCMP研磨した平坦な接合面CPfに対してプラズマ処理または粒子ビーム照射により活性化し、その後、接合面CPfに水分子を付着させて親水化してからチップCPを基板WTに接合するいわゆるハイブリッドボンディングに好適である。
【0106】
実施の形態では、洗浄装置85を備えるチップ接合システムの例について説明したが、これに限らず、洗浄装置85を備えないものであってもよい。
【0107】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。つまり、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、請求の範囲によって示される。そして、請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
【0108】
本出願は、2018年8月31日に出願された日本国特許出願特願2018-162738号および2018年10月31日に出願された日本国特許出願特願2018-205227号に基づく。本明細書中に日本国特許出願特願2018-162738号および日本国特許出願特願2018-205227号の明細書、特許請求の範囲および図面全体を参照として取り込むものとする。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明は、例えばCMOSイメージセンサやメモリ、演算素子、MEMSの製造に好適である。
【符号の説明】
【0110】
1:チップ接合システム、10:チップ供給装置、11:チップ供給部、30:ボンディング装置、31:ステージユニット、33:ボンディング部、33H,3033H:ヘッド、36,3036:ヘッド駆動部、39:チップ搬送装置、60:活性化処理装置、61:粒子ビーム源、62:支持部、63:ビーム源搬送部、64:チャンバ、64a:孔、70:搬送装置、71:搬送ロボット、80:搬出入ユニット、85:洗浄装置、90:制御部、111:ピックアップ機構、111a:ニードル、112:保持枠、113:保持枠駆動部、114,622:カバー、114a:貫通孔、119,621:枠保持部、315:ステージ、320,853:ステージ駆動部、391:プレート、392:プレート駆動部、393:チップ保持部、394:アーム、395:アーム駆動部、411:チップツール、411a,411b:貫通孔、413:ヘッド本体部、432a:チップ支持部、432b:支持部駆動部、611:電極、612:放電室、612a:FAB放射口、613:ビーム源駆動部、614,677:ガス供給部、623:枠保持部駆動部、631:支持棒、632:支持体、633:支持体駆動部、634:ベローズ、672:マグネトロン、673:導波管、674:ガラス窓、675:プラズマ室、676:供給管、851:洗浄ヘッド、852:ステージ、2119a:内側支持部、2119b:枠支持部、CP:チップ、CPA1,CPA9:不純物、CPf:接合面、TE:シート、OB1:軌跡、PLM9:シース領域、WT:基板、WTf:実装面