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特開2023-54437水系分散体、水系分散体の製造方法、及びインク
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  • 特開-水系分散体、水系分散体の製造方法、及びインク 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023054437
(43)【公開日】2023-04-14
(54)【発明の名称】水系分散体、水系分散体の製造方法、及びインク
(51)【国際特許分類】
   C09D 17/00 20060101AFI20230407BHJP
   C09D 11/322 20140101ALI20230407BHJP
【FI】
C09D17/00
C09D11/322
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021163279
(22)【出願日】2021-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】大川 瑞季
(72)【発明者】
【氏名】八田 周子
(72)【発明者】
【氏名】山崎 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】宮越 亮
【テーマコード(参考)】
4J037
4J039
【Fターム(参考)】
4J037AA30
4J037CC24
4J037DD05
4J037EE03
4J037FF08
4J037FF09
4J037FF23
4J039BC10
4J039BC57
4J039BC61
4J039BE01
4J039BE12
4J039BE22
4J039BE28
4J039CA06
4J039EA16
4J039EA33
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】 顔料と当該顔料の分散性を向上させる樹脂との複合物を含有する水系分散体を用いた場合であっても、顔料から樹脂が脱離することで顔料の分散安定性が低下して顔料が凝集し、水系分散体を含むインクにより形成される画像において光沢度が低下する課題がある。また、顔料から樹脂が脱離することを抑制するために、樹脂の割合を増やして顔料の割合を減らした場合、上記画像において画像濃度が低下する課題がある。
【解決手段】 樹脂により構成される樹脂粒子を含有する水系分散体であって、前記樹脂粒子として、金属原子を分子内に含む顔料を前記樹脂中に内包した顔料内包樹脂粒子を含み、前記水系分散体において、前記顔料の含有量及び前記樹脂の含有量の質量比(顔料/樹脂)は、0.4以上0.7以下であり、所定の顔料面積比率算出条件に基づいて測定される顔料面積比率が10%以下であることを特徴とする水系分散体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂により構成される樹脂粒子を含有する水系分散体であって、
前記樹脂粒子として、金属原子を分子内に含む顔料を前記樹脂中に内包した顔料内包樹脂粒子を含み、
前記水系分散体において、前記顔料の含有量及び前記樹脂の含有量の質量比(顔料/樹脂)は、0.4以上0.7以下であり、
所定の顔料面積比率算出条件に基づいて測定される顔料面積比率が10%以下であることを特徴とする水系分散体。
【請求項2】
前記顔料は、シアン顔料である請求項1に記載の水系分散体。
【請求項3】
前記樹脂は、ポリエステル樹脂を含む請求項1又は2に記載の水系分散体。
【請求項4】
前記ポリエステル樹脂は、カルボキシル基を有し、自己乳化型樹脂である請求項3に記載の水系分散体。
【請求項5】
前記顔料内包樹脂粒子の粒径は、50nm以上1000nm以下である請求項1から4のいずれか一項に記載の水系分散体。
【請求項6】
樹脂により構成される樹脂粒子を含有する水系分散体の製造方法であって、
有機溶剤と金属原子を分子内に含む顔料とを混合して混合液1を調整する工程1と、
前記混合液1と前記樹脂とを混合して混合液2を調整する工程2と、
前記混合液2と水とを混合し、前記顔料を前記樹脂中に内包した顔料内包樹脂粒子を含む混合液3を調整する工程3と、
前記混合液3から前記有機溶剤を除去する工程4と、を有し、
前記樹脂粒子として、前記顔料内包樹脂粒子を含み、
前記水系分散体において、前記顔料及び前記樹脂の質量比(顔料/樹脂)は、0.4以上0.7以下であり、
所定の顔料面積比率算出条件に基づいて測定される顔料面積比率が10%以下であることを特徴とする水系分散体の製造方法。
【請求項7】
前記混合液1の50%累積体積粒径(D50)は、10nm以上150nm以下である請求項6に記載の水系分散体の製造方法。
【請求項8】
前記顔料内包樹脂粒子の粒径は、50nm以上1000nm以下である請求項6又は7に記載の水系分散体の製造方法。
【請求項9】
請求項1から5のいずれか一項に記載の水系分散体を含むことを特徴とするインク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系分散体、水系分散体の製造方法、及びインクに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、低騒音、低ランニングコスト、カラー印刷が容易であるなどの利点を有しており、デジタル信号の出力機器として一般家庭に広く普及している。また、近年では、家庭用のみならず商業用途や産業用途にもインクジェット技術が利用されてきている。
【0003】
商業用途や産業用途では、インク低吸収性の印刷用塗工紙(コート紙)やインク非吸収性のプラスチックメディアが記録媒体として用いられることもあるため、これらメディアに対しても、インクジェット記録方法により、従来のオフセット印刷並の画質を実現することが求められている。
【0004】
また、インクジェット記録装置に用いられるインクは、色材として顔料を用いたものが普及してきている。このようなインクは、分散した顔料を含有する分散体、水、及び有機溶剤などを混合して製造される。このような顔料を含むインク又は分散体においては、顔料の分散方法が種々検討されてきており、特許文献1~3には、顔料に対して顔料の分散性を向上させる樹脂を吸着又は被覆させることで顔料と樹脂を複合化させ、顔料を分散させる方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、顔料と当該顔料の分散性を向上させる樹脂との複合物を含有する水系分散体を用いた場合であっても、顔料から樹脂が脱離することで顔料の分散安定性が低下して顔料が凝集し、水系分散体を含むインクにより形成される画像において光沢度が低下する課題がある。また、顔料から樹脂が脱離することを抑制するために、樹脂の割合を増やして顔料の割合を減らした場合、上記画像において画像濃度が低下する課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、樹脂により構成される樹脂粒子を含有する水系分散体であって、前記樹脂粒子として、金属原子を分子内に含む顔料を前記樹脂中に内包した顔料内包樹脂粒子を含み、前記水系分散体において、前記顔料の含有量及び前記樹脂の含有量の質量比(顔料/樹脂)は、0.4以上0.7以下であり、所定の顔料面積比率算出条件に基づいて測定される顔料面積比率が10%以下であることを特徴とする水系分散体に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、水系分散体を含むインクにより形成される画像において光沢度及び画像濃度が向上する水系分散体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、記録装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0010】
<<水系分散体>>
水系分散体は、樹脂により構成される樹脂粒子を含有する。また、水系分散体は、必要に応じて、顔料分散剤、水、添加剤等を含有してもよい。
本開示において「水系分散体」とは、分散質として樹脂粒子を含み、分散媒として水を含み、かつ分散媒において最大の質量を有する成分が水である混合物を表す。
また、本開示において「樹脂により構成される樹脂粒子(以降、「樹脂粒子」と称する)」とは、構成成分の少なくとも1つとして樹脂を含む粒状物である。従って、樹脂粒子は、樹脂以外の構成成分として、例えば、顔料等を有していてもよい。樹脂粒子としては、例えば、顔料及び樹脂が一体化しており且つ顔料が樹脂中に内包されている顔料内包樹脂粒子、及び顔料及び樹脂が一体化しており且つ顔料の一部が外部に露出している顔料露出樹脂粒子等の顔料含有樹脂粒子、並びに樹脂を含むが顔料を含まない顔料非含有樹脂粒子などが挙げられる。なお、本開示において「内包」とは、少なくとも観察範囲(例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察することで取得される画像の範囲)において、内部に位置する材料が外部に位置する材料に完全に包含されており、内部に位置する材料が露出していないことを表す。
【0011】
<樹脂粒子>
樹脂粒子は、上記の通り水系分散体の分散媒中に分散して含有されており、言い換えると、樹脂エマルションの形態で含有されている。また、樹脂粒子としては、顔料及び樹脂が一体化しており且つ顔料が樹脂中に内包されている顔料内包樹脂粒子を含む。水系分散体中に顔料内包樹脂粒子を含むことで、顔料から当該顔料の分散性を向上させる樹脂が脱離することが抑制され、顔料の分散安定性が向上する。これにより、例えば、水系分散体を含むインクにより形成される画像を加熱乾燥する場合などにおいて、顔料が凝集して画像の表面粗さが増加することを抑制することができ、画像における光沢度を向上させることができる。また、一般に、顔料から当該顔料の分散性を向上させる樹脂が脱離することを抑制するためには、樹脂の割合を増やして顔料の割合を減らす手法が有効だが、水系分散体を含むインクにより形成される画像の画像濃度が低下する課題がある。この点、顔料内包樹脂粒子を含むことで、顔料から樹脂が脱離することが抑制されるため、顔料の割合を減らさなくてもよくなり、画像濃度の向上にも寄与する。
【0012】
樹脂粒子は、顔料内包樹脂粒子を含むが、更に、顔料を含まない顔料非含有樹脂粒子などを含んでもよい。このように、樹脂粒子として顔料内包樹脂粒子以外の粒子も含まれる場合、顔料内包樹脂粒子の含有量は、目的に応じて適宜調整することができる。例えば、50nm以上の粒径を有する樹脂粒子の個数に対する顔料内包樹脂粒子の個数の割合は、30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。30%以上であることで水系分散体を含むインクにより形成される画像における光沢度及び画像濃度が向上する。
具体的には、50nm以上の粒径を有する樹脂粒子を3つ以上含む視野の画像を、任意に場所を変更して5枚以上取得し、各画像において50nm以上の粒径を有する樹脂粒子の個数に対する50nm以上の粒径を有する顔料内包樹脂粒子の個数の割合を求め、これら割合の平均を採用する。
より具体的には、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察することで上記画像を取得する。この場合、まず、顔料内包樹脂粒子を含む水系分散体を、固形分濃度が0.1質量%となるようにイオン交換水で希釈して試料液を作製する。次いで、親水化処理を行ったコロジオン膜貼付メッシュ(日新EM社製コロジオン膜貼付メッシュ Cu150メッシュ)上に、試料液を、マイクロピペットを用いて1μL載せ、すぐに三角形に切ったろ紙で試料液を吸い取る。次いで、10倍に希釈したEMステイナーを、マイクロピペットを用いて1μL載せ、すぐに三角形に切ったろ紙で試料液を吸い取る。減圧乾燥の後、透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製JEM-2100F)にて、加速電圧200kV、倍率40000倍で観察を行う。
なお、本開示において、上記の樹脂粒子及び顔料内包樹脂粒子における「粒径」とは、画像中における樹脂粒子及び顔料内包樹脂粒子の形状を楕円近似させた場合の長軸の長さを表す。また、顔料内包樹脂粒子の粒径は、50nm以上1000nm以下であることが好ましい。
【0013】
上記の通り、本開示の水系分散体は、顔料内包樹脂粒子を含むが、顔料が樹脂中に内包されている程度は、下記の顔料面積比率算出条件に基づいて測定される顔料面積比率により代替的に定量可能であり、顔料面積比率は10%以下であり、8%以下であることが好ましく、6%以下であることがより好ましい。顔料面積比率が10%以下であることで、水系分散体を含むインクにより形成される画像における光沢度及び画像濃度が向上する。
(顔料面積比率算出条件)
水系分散体を固形分濃度が10.75質量%となるようにイオン交換水で調製した調整液を作成し、調整液を塗工紙(ルミアートグロス130、STORA ENSO社製)に対して0.15mmバーコーターを用いて塗工してから0℃で12時間乾燥させて平均厚み2μmの塗工膜を形成し、塗工膜を切り出してSEM観察用スタブにカーボンテープを用いて固定し、塗工膜の表面をカーボン蒸着により導電処理し、導電処理後の塗工膜を走査型電子顕微鏡(SEM、ZEISS製Merlin)により、所定の条件(反射電子検出器、試料入射電圧1.5kV、試料距離2.7~3.3mm、検出器手前のグリッド電圧1kV、倍率20000倍)で観察することで観察像を取得し、観察像を二値化することによって観察像中における顔料の面積である顔料面積を取得し(顔料及び樹脂の反射電子放出量の違いから、観察像におけるコントラストの違いにより顔料部分を見分けることが可能)、顔料面積の観察像の面積に対する割合を顔料面積比率とする。
なお、顔料面積比率は、任意に場所を変更して観察することで取得した3つ以上の観察像から算出される顔料面積比率の平均を採用することが好ましい。また、上記観察条件において、チャージアップにより観察不能なものは、顔料面積比率が低い傾向にあり、顔料面積比率が3%以下の場合に観測されやすい。
【0014】
顔料内包樹脂粒子は、顔料の複数の一次粒子を樹脂が内包していることが好ましい。顔料内包樹脂粒子が顔料の複数の一次粒子を内包していることで、水系分散体を含むインクにより形成される画像を加熱乾燥する場合などにおいて、顔料が凝集して画像の表面粗さが増加することを抑制することができ、画像における光沢度を向上させることができる。顔料内包樹脂粒子における顔料の内包形態については、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察することで取得した画像に基づいて判断することができる。透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた観察方法については上記と同様の方法により行う。
【0015】
樹脂粒子として顔料内包樹脂粒子を含む水系分散体を用いて製造されたインクにより形成された画像は、上記の通り、加熱乾燥する場合であっても、加熱乾燥後の画像中における顔料の分散均一性が維持され、画像表面の表面粗さが小さくなる。このインクにより形成された画像表面における表面粗さは、以下説明する水系分散体により形成された塗膜表面における表面粗さにより代替的に評価できる。具体的には、塗膜表面における表面粗さは、20nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましい。
上記の水系分散体により形成された塗膜表面における表面粗さは、例えば、走査型プローブ顕微鏡(SPM)を用いて算出する。まず、水系分散体を固形分濃度が10.75質量%となるようにイオン交換水で調製した調整液を作成し、調整液を塗工紙(ルミアートグロス130、STORA ENSO社製)に対して0.15mmバーコーターを用いて塗工してから100℃で5分間乾燥させて平均厚み2μmの塗膜を形成する。次に、塗膜を切り出して、塗膜の表面粗さを走査プローブ型顕微鏡(例えば、Bruker製DimensionIcon)を用い、所定の条件(例えば、カンチレバー:オリンパス製OMCL-AC240TS、測定モード:タッピングモード、観察範囲:2μm四方)で観察する。観察は場所を変更して3視野にて行い、これらの平均値を表面粗さとする。
【0016】
水系分散体において、顔料の含有量及び樹脂の含有量の質量比(顔料/樹脂)は、0.4以上0.7以下であり、0.5以上0.7以下であることが好ましい。質量比が0.4以上であると、顔料濃度が適切になり、水系分散体を用いて製造されたインクで形成された画像の画像濃度が向上する。質量比が0.7以下であると、樹脂粒子として顔料内包樹脂粒子が適切に含まれ、水系分散体を用いて製造されたインクで形成された画像の光沢度が向上する。なお、上記質量比は、水系分散体に含まれる樹脂粒子全体(顔料内包樹脂粒子及び顔料非含有樹脂粒子など)を対象として算出される比率であり、顔料内包樹脂粒子に対象を限って算出される比率ではない。
質量比(顔料/樹脂)は、水系分散体からの分析により求めることができる。分散体からの分析方法としては、例えば、熱重量示差熱分析装置(TG-DTA)を用い、水系分散体の乾固膜の熱分析により算出することができる。具体的には、水系分散体の乾固膜を熱重量示差熱分析装置により、窒素ガス雰囲気化で樹脂の熱分解温度まで昇温、保持し、分解した量を樹脂の質量、残量を顔料の質量として算出することができる。また、樹脂が窒素ガス雰囲気化での熱分解では完全に分解できないような高耐熱性である場合は、加熱減量と樹脂に対する顔料比率の検量線を用いて算出することができる。具体的には、任意の比率で混合した顔料と樹脂の混合物を複数作成し、それぞれの混合物を一定の温度まで昇温、保持することで、上記検量線を作成し、未知サンプル測定結果より得られる減量率を基に樹脂に対する顔料の比率を算出することができる。
【0017】
樹脂粒子の含有量は、水系分散体の全質量に対して10.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましく、20.0質量%以上40.0質量%以下であることがより好ましい。
【0018】
-樹脂-
樹脂としては特に制限はないが自己乳化型樹脂が好ましく、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、及びアクリル系樹脂などが挙げられるが、ポリエステル樹脂であることが好ましい。自己乳化型樹脂とは、樹脂溶液と水との混合攪拌により乳化状態を形成可能な樹脂のことを表す。また、自己乳化型樹脂は、ノニオン性基、アニオン性基、カチオン性基等の親水性基を有することが好ましく、アニオン性基を有することがより好ましい。アニオン性基としては、例えば、カルボキシル基、カルボキシレート基、スルホン酸基、スルホネート基などが挙げられる。これらの中でも、一部又は全部、特に好ましくは全部が塩基性化合物等により中和されたカルボキシレート基やスルホネート基を使用することが好ましい。
【0019】
アニオン性基の中和に使用可能な中和剤としては、例えば、アンモニア、トリエチルアミン、ピリジン、モルホリン等の有機アミンや、モノエタノールアミン等のアルカノールアミン等の塩基性化合物、Na、K、Li、Ca等を含む金属塩基化合物などが挙げられる。
【0020】
自己乳化型樹脂の酸価は、5mgKOH/g以上50mgKOH/g以下が好ましく、10mgKOH/g以上30mgKOH/g以下がより好ましい。酸価が5mgKOH/g以上であると、分散安定性が優れ、またその影響で粒子径が均一化され、分散および吐出性が良好となる。また、酸価が50mgKOH/g以下であると、親水性が適正であり、耐水性が向上し、粒子としての安定性が良好となる。
【0021】
酸価はカタログ値を使用してもよいし、測定により算出しても構わない。酸価の測定方法は、例えば、樹脂がポリエステルである場合、ポリエステルをテトラヒドロフラン(THF)溶液に入れ、0.1Mの水酸化カリウムメタノール溶液を用いて滴定することで、酸価を測定することができる。また、水系分散体における樹脂中のカルボキシル基が中和されている場合は、例えば、過剰の塩酸水溶液を加えて酸性溶液にした後に、クロロホルムで樹脂を抽出する。次いでろ過、遠心分離などにより顔料を除去した後に加熱もしくは減圧乾燥することで樹脂の乾固物を得る。得られた樹脂をTHFに溶解し、0.1Mの水酸化カリウムメタノール溶液を用いて滴定することでも、測定することができる。
【0022】
--ポリエステル--
以下、自己乳化型樹脂の一例として、ポリエステルについて詳細に説明する。
ポリエステルは、多価アルコールと、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸エステル等の多価カルボン酸及び/又はその誘導体と、を重縮合させて得られ、組成の一部あるいは全てに芳香族ユニットを有する。即ち、芳香族含有ポリエステルは、多価アルコールと、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸エステル等の多価カルボン酸及び/又はその誘導体とを、構成成分として有する。
【0023】
多価アルコール成分としては、2価のアルコール(ジオール)、具体的には、炭素数2~36のアルキレングリコール(エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチロールプロパンなど);炭素数4~36のアルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなど);炭素数6~36の脂環式ジオール(1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなど);上記脂環式ジオールの炭素数2~4のアルキレンオキシド〔エチレンオキシド(以下EOと略記する)、プロピレンオキシド(以下POと略記する)、ブチレンオキシド(以下BOと略記する)など〕付加物(付加モル数1~30);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど)の炭素数2~4のアルキレンオキシド(EO、PO、BOなど)付加物(付加モル数2~30)などが挙げられる。
【0024】
また、2価のジオールに加えて3価以上(3~8価またはそれ以上)のアルコール成分を含有してもよく、具体的には、炭素数3~36の3~8価又はそれ以上の脂肪族多価アルコール(アルカンポリオール及びその分子内若しくは分子間脱水物、例えば、グリセリン、トリエチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ポリグリセリン、ジペンタエリスリトール;糖類及びその誘導体、例えば庶糖及びメチルグルコシド;など);脂肪族多価アルコールの炭素数2~4のアルキレンオキシド(EO、PO、BOなど)付加物(付加モル数1~30);トリスフェノール類(トリスフェノールPAなど)の炭素数2~4のアルキレンオキシド(EO、PO、BOなど)付加物(付加モル数2~30);ノボラック樹脂(フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど:平均重合度3~60)の炭素数2~4のアルキレンオキシド(EO、PO、BOなど)付加物(付加モル数2~30)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
多価カルボン酸成分としては、2価のカルボン酸(ジカルボン酸)、具体的には、炭素数4~36のアルカンジカルボン酸(コハク酸、アピジン酸、セバシン酸など)、アルケニルコハク酸(ドデセニルコハク酸など);炭素数4~36の脂環式ジカルボン酸〔ダイマー酸(2量化リノール酸)など〕;炭素数4~36のアルケンジカルボン酸(マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸など);炭素数8~36の芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸又はこれらの誘導体、ナフタレンジカルボン酸など)などが挙げられる。これらの中でも、炭素数4~20のアルカンジカルボン酸、炭素数8~20の芳香族ジカルボン酸が好ましい。なお、多価カルボン酸成分としては、上述のものの酸無水物又は低級アルキル(炭素数1~4)エステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)も挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
このほか、ポリ乳酸やポリカーボネートジオールの如き開環重合系も好適に使用しうる。
【0026】
ポリエステルを単離する方法としては、例えば、顔料内包樹脂粒子を含む水系分散体を加熱乾燥により乾固し、得られた乾固物をテトラヒドロフラン(THF)溶液に入れてポリエステルを溶解させる。次いで、遠心分離、ろ過などにより含有する顔料を除去し、次いでTHFを除去することでポリエステルを単離可能である。また、必要に応じてリサイクルGPCを活用することもできる。
【0027】
ポリエステルの分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、GPC測定において、重量平均分子量(Mw)2,000~15,000が好ましく、4,000~12,000がより好ましい。
なお、重量平均分子量(Mw)は、分子量既知のポリスチレン試料によって作成した検量線を標準としてGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)にて測定する。カラムは排除限界6万のもの、2万のもの、1万のものを直列に繋いだものを使用した。
・装置:GPC(東ソー(株)製)、検出器:RI、測定温度:40℃
・移動相:テトラヒドロフラン、流量:0.45mL/min.
【0028】
ポリエステルのガラス転移温度(Tg)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30℃以上100℃以下が好ましく、50℃以上80℃以下がより好ましい。
ポリエステルの軟化温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60℃以上180℃以下が好ましく、80℃以上150℃以下がより好ましい。
ポリステルの分子構造は、溶液又は固体によるNMR測定の他、GC/MS、LC/MS、IR測定などにより確認することができる。
【0029】
ポリエステルの製造方法については、従来一般的に用いられている方法を用いることができ、例えば、以下の方法が挙げられる。
まず、無溶剤下又は有機溶剤存在下で、多価アルコールと多価カルボン酸の重縮合により製造する。
また、ポリエステルの酸価は任意の方法で調整可能であり、例えば、得られたポリエステルと多価カルボン酸、カルボン酸無水物を反応させることで酸価を付与することが可能である。
【0030】
-顔料-
顔料としては、金属原子を分子内に含む顔料を使用する。金属原子を分子内に含む顔料であれば、SEMの反射電子検出器を用いることで容易に顔料内包樹脂粒子の存在を確認することができ、水系分散体の品質を担保することができる。金属原子を分子内に含む顔料の色としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンダ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、金色や銀色などの光沢色顔料やメタリック顔料などを用いることができる。また、これらの中でも、安全性の面から白色顔料、緑色顔料、シアン顔料を用いることが好ましく、使用頻度の高さの点からシアン顔料を用いることがより好ましい。
【0031】
金属原子を分子内に含む顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができ、これらの中でも溶媒と親和性の高いものが好ましい。
無機顔料としては、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローを使用することができる。
有機顔料としては、フタロシアニン顔料など、有機金属錯体として分子中に金属原子を有するものを使用できる。
【0032】
金属原子を分子内に含む顔料のうち、黒色用としては、銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類があげられる。
金属原子を分子内に含む顔料のうち、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、153、C.I.ピグメントオレンジ17、51、C.I.ピグメントレッド48:2、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、63:1、63:2、64:1、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、172、193、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、5:1、16、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3、15:4(フタロシアニンブルー)、17:1、63、C.I.ピグメントグリーン7、17、18、36、等が挙げられる。
【0033】
金属原子を分子内に含む顔料の一次粒径(個数平均一次粒径)は、15nm以上100nm以下が好ましく、この範囲とすることで発色性が向上し、加熱乾燥時の画像濃度の低下を抑制することが可能となる。
なお、金属原子を分子内に含む顔料の一次粒径は透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、画像解析ソフト(アメリカ国立衛生研究所製、ImageJ)により処理し、画像解析で20個の一次粒子を無作為に抽出してその粒子径を測定し、平均を算出した。なお、粒子に長径と短径がある場合は、長径を用いて算出した。
【0034】
なお、金属原子を分子内に含む顔料としては自己分散顔料を用いてもよい。自己分散顔料とは、顔料表面に直接または他の原子団を介して官能基を導入することにより分散安定化させた顔料をいう。分散安定化させる前の顔料としては、例えば、国際公開第2009/014242号パンフレットに列挙されているような、従来公知の様々な顔料を用いることができる。
【0035】
<顔料分散剤>
顔料分散剤は、後述する通り、樹脂粒子の製造時において顔料の分散性を向上させるために用いられることが好ましく、これが残留することで水系分散体に含有される。顔料分散剤により、樹脂粒子の製造時において顔料の分散性が向上することで、顔料が樹脂中に内包化されやすくなり、顔料内包樹脂粒子が適切に形成され、水系分散体を含むインクにより形成される画像において光沢度及び画像濃度が向上する水系分散体を提供することができる。
【0036】
顔料分散剤としては、界面活性剤、高分子分散剤など目的に応じて適宜選択することができる。顔料分散剤としては、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ステアリルアミンアセテート等を用いることができる。
【0037】
顔料分散剤は、適宜合成したものを用いてもよいが、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、ジョンクリル(ジョンソンポリマー社製)、Anti-Terra-U(BYK Chemie社製)、Disperbyk(BYK Chemie社製)、Efka(Efka CHEMICALS社製)、フローレン(共栄社化学社製)、ディスパロン(楠本化成社製)、アジスパー(味の素ファインテクノ社製)、デモール(花王社製)、ホモゲノール、エマルゲン(以上、花王社製)、ソルスパース(ルーブリゾール社製)、ニッコール(日光ケミカル社製)等が挙げられる。
【0038】
顔料分散剤の親疎水性としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、樹脂粒子の製造時において顔料が樹脂中に内包化されやすくなり、顔料内包樹脂粒子が適切に形成される観点から疎水性であることが好ましい。なお、顔料分散剤の親疎水性は、顔料分散剤が水に不溶性であれば疎水性であり、水に可溶性であれば親水性である。
【0039】
<水>
水分散体は、分散媒として水を含む。また、分散媒において最大の質量を有する成分が水である。
水の含有量は、水系分散体の全質量に対して20.0質量%以上90.0質量%以下であることが好ましく、40.0質量%以上70.0質量%以下であることがより好ましい。
【0040】
<水系分散体の製造方法>
水系分散体の製造方法としては、特に制限はないが、例えば、下記工程1~4を有することが好ましい。
・工程1:有機溶剤、顔料、及び顔料分散剤を混合し、50%累積体積粒径(D50)が10nm以上150nm以下である顔料プレ分散体(「混合液1」とも称する)を得る工程
・工程2:工程1で得られた顔料プレ分散体及び樹脂を混合し、顔料分散樹脂溶液(「混合液2」とも称する)を得る工程
・工程3:工程2で得られた顔料分散樹脂溶液及び水を混合し、顔料内包樹脂粒子を含む分散液(「混合液3」とも称する)を得る工程
・工程4:工程3で得られた分散液から有機溶剤を除去し、顔料内包化樹脂粒子を含む水系分散体を得る工程
【0041】
-工程1-
工程1は、有機溶剤、顔料、顔料分散剤、及び必要に応じてその他成分を混合し、50%累積体積粒径(D50)が10nm以上150nm以下である顔料プレ分散体を得る工程である。また、顔料プレ分散体は、必要に応じて、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過してもよい。
【0042】
有機溶剤は、工程2において用いる樹脂を溶解することができるものであることが好ましい。有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン等のケトン系であることが好ましい。
【0043】
工程1を経て得られる顔料プレ分散体における50%累積体積粒径(D50)は10nm以上150nm以下であることが好ましく、20nm以上120nm以下であることがより好ましい。顔料プレ分散体における50%累積体積粒径(D50)の測定は、例えば、ゼータ電位・粒子計測システム(ELSZ-1000、大塚電子株式会社製)を用いて測定することができる。具体的には、測定サンプルの固形分濃度が0.01wt%となるように、サンプルをイオン交換水または必要に応じて有機溶剤により希釈し、得られた溶液の一部を石英セルに入れ、サンプルホルダーにセットする。そして、温度:25℃、ダストカット(回数:5、Upper:5、Lower:100)、積算回数:70の条件で測定を行うことができる。
顔料プレ分散体における50%累積体積粒径(D50)を上記範囲に調整する方法としては、例えば、顔料分散剤を有機溶剤に溶解又は懸濁させた後で顔料を添加して撹拌し、得られた混合液を分散機に投入して分散処理する方法等が挙げられる。分散機としては、例えば、アンカー翼、ディスパー翼、ホモミキサー、ボールミル、ロールミル、ビーズミル、サンドミル、アトライター、パールミル、ダイノーミル、高圧ホモジナイザー、超音波分散機、アジテーターミル、ペイントシェーカー、グレンミル、コボルミル、ジェットミル等があげられる。これらの中でも、ロールミル、ビーズミル、サンドミル、ダイノーミル、高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカーが分散効率の点で好ましい。
【0044】
顔料プレ分散体において、顔料の顔料分散剤に対する質量比(顔料:顔料分散剤)は、4.0:0.2~4.0:4.0が好ましく、4.0:0.5~4.0:3.0がより好ましい。質量比(顔料:顔料分散剤)を4.0:0.2~4.0:4.0にすることで、顔料プレ分散体中の顔料の分散性が向上する。
【0045】
-工程2-
工程2は、工程1で得られた顔料プレ分散体、樹脂、及び必要に応じてその他成分(塩基性化合物、有機溶剤、添加剤等)を混合し、顔料分散樹脂溶液を得る工程である。
【0046】
樹脂は、工程3において顔料を内包化して顔料内包樹脂粒子を形成する樹脂である。樹脂は、樹脂の固形物を添加してもよく、樹脂の固形物を有機溶剤に溶解したものを添加してもよい。
顔料分散樹脂溶液において、樹脂の有機溶剤に対する質量比(樹脂/有機溶剤)は、1.2以上3.0以下が好ましく、1.4以上2.0以下がより好ましい。有機溶剤に対する樹脂の比率が1.2以上であると、工程3における樹脂の乳化速度が速くなり、顔料内包樹脂粒子の小粒径化を可能とする。また、有機溶剤に対する樹脂の比率が3.0以下であると、反応系内の高粘度化を抑制し、攪拌効率が良好になることで粗大粒子の生成を抑制できる。
【0047】
工程2における混合方法は、特に制限されず、公知の混合攪拌装置を用いることができる。例えば、工程1で挙げた分散機を用いることができ、これらの中でも、アンカー翼又はディスパー翼を備えた高速攪拌装置が好ましい。これらは、高粘度溶液の均一攪拌に好適であり、また、樹脂の固形物を効率よく溶解させることができるためである。
【0048】
工程2を経て得られる顔料分散樹脂溶液における50%累積体積粒径(D50)は、工程1を経て得られる顔料プレ分散体における50%累積体積粒径(D50)と同様であること(言い換えると、50%累積体積粒径(D50)の変化が少ないこと)が好ましい。すなわち、顔料分散樹脂溶液における50%累積体積粒径(D50)は、10nm以上150nm以下であることが好ましく、20nm以上120nm以下であることがより好ましい。
【0049】
工程2を経て得られる顔料分散樹脂溶液における水の含有量は、顔料分散樹脂溶液の質量に対して20.0質量%以下が好ましく、10.0質量%以下がより好ましく、3.0質量%以下が更に好ましい。顔料分散樹脂溶液における水の含有量が20.0質量%以下であることで、顔料の分散安定性が向上し、顔料の凝集体の発生が抑制され、工程3にて得られる顔料内包化樹脂粒子の粗大化が抑制される。
【0050】
-工程3-
工程3は、工程2で得られた顔料分散樹脂溶液及び水を混合し、顔料内包樹脂粒子を含む分散液を得る工程である。
【0051】
顔料分散樹脂溶液と水との混合手順には特に制限はないが、顔料分散樹脂溶液に水を加えることが好ましい。
水の添加速度としては、樹脂100質量部に対して10質量部/min以上1000質量部/min以下が好ましい。水の添加速度が10質量部/min以上1000質量部/min以下であると、系内の顔料凝集を抑制することができ、顔料内包樹脂粒子の粗大化を抑制することができる。
水の添加量は、顔料内包樹脂粒子の分散安定性の観点から、工程2で用いた樹脂に対して70質量%以上700質量%以下であることが好ましく、100質量%以上500質量%以下であることが好ましい。
【0052】
工程3における混合方法は、特に制限されず、公知の混合攪拌装置を用いることができる。例えば、工程1で挙げた分散機を用いることができ、これらの中でも、アンカー翼又はディスパー翼を備えた高速攪拌装置が好ましい。これらは、高粘度溶液の均一攪拌に好適であり、また、分散物に付加されるエネルギーが必要以上に高くならないため生成された顔料内包樹脂粒子が粉砕されて顔料内包形態を維持できなくなることが抑制される。
また、工程3における反応温度は、20℃以上80℃以下が好ましく、30℃以上60℃以下がより好ましい。
【0053】
-工程4-
工程4は、工程3で得られた分散液から有機溶剤を除去し、顔料内包化樹脂粒子を含む水系分散体を得る工程である。また、水系分散体は、必要に応じて、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過してもよい。
【0054】
工程3で得られた分散液から有機溶剤を除去する方法としては特に制限はなく公知の除去装置が使用できるが、減圧下にて有機溶剤の沸点以上の温度にて加熱することが好ましく、例えば、ロータリーエバポレーターを使用することができる。減圧としては、200mmHg以下が好ましく、100mmHg以下がより好ましい。また、加熱温度としては20℃以上80℃以下が好ましく、30℃以上60℃以下がより好ましい。
【0055】
<<インク>>
インクは、目的に応じて、樹脂粒子、界面活性剤、水、有機溶剤、及びその他添加剤等を含有する。インクは、例えば、水系分散体、界面活性剤、水、有機溶剤、及びその他添加剤等を混合することで製造される。
以下、インクの製造時に用いられる水系分散体以外のインク成分について説明する。
【0056】
<有機溶剤>
有機溶剤としては特に制限されず、水溶性有機溶剤を用いることができる。例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
【0057】
水溶性有機溶剤の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、トリエチレングリコール、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
【0058】
炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物も好適に使用される。炭素数8以上のポリオール化合物の具体例としては、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールなどが挙げられる。
グリコールエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類などが挙げられる。
炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物は、記録媒体として紙を用いた場合に、インクの浸透性を向上させることができる。
【0059】
有機溶剤のインク中における含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、インク全量に対して、10質量%以上60質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0060】
<水>
インクにおける水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宣選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、インク全量に対して、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0061】
<界面活性剤>
界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
シリコーン系界面活性剤には特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。中でも高pHでも分解しないものが好ましい。シリコーン系界面活性剤としては、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。また、シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH、NHCHCHOH、NH(CHCHOH)、NH(CHCHOH)等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えばラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩、などが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0062】
シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤が水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。
このような界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、ビックケミー株式会社、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、日本エマルジョン株式会社、共栄社化学などから入手できる。
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一般式(S-1)式で表わされる、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルポリシロキサンのSi部側鎖に導入したものなどが挙げられる。
【化1】
(但し、一般式(S-1)式中、m、n、a、及びbは、それぞれ独立に、整数を表わし、Rは、アルキレン基を表し、R’は、アルキル基を表す。)
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、市販品を用いることができ、例えば、KF-618、KF-642、KF-643(信越化学工業株式会社)、EMALEX-SS-5602、SS-1906EX(日本エマルジョン株式会社)、FZ-2105、FZ-2118、FZ-2154、FZ-2161、FZ-2162、FZ-2163、FZ-2164(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社)、BYK-33、BYK-387(ビックケミー株式会社)、TSF4440、TSF4452、TSF4453(東芝シリコン株式会社)などが挙げられる。
【0063】
フッ素系界面活性剤としては、フッ素置換した炭素数が2~16の化合物が好ましく、フッ素置換した炭素数が4~16である化合物がより好ましい。
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが挙げられる。 これらの中でも、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物は起泡性が少ないため好ましく、特に一般式(F-1)及び一般式(F-2)で表わされるフッ素系界面活性剤が好ましい。
【化2】
上記一般式(F-1)で表される化合物において、水溶性を付与するためにmは0~10の整数が好ましく、nは0~40の整数が好ましい。
【化3】
上記一般式(F-2)で表される化合物において、YはH、又はCmF2m+1でmは1~6の整数、又はCHCH(OH)CH-CmF2m+1でmは4~6の整数、又はCpH2p+1でpは1~19の整数である。nは1~6の整数である。aは4~14の整数である。
上記のフッ素系界面活性剤としては市販品を使用してもよい。この市販品としては、例えば、サーフロンS-111、S-112、S-113、S-121、S-131、S-132、S-141、S-145(いずれも、旭硝子株式会社製);フルラードFC-93、FC-95、FC-98、FC-129、FC-135、FC-170C、FC-430、FC-431(いずれも、住友スリーエム株式会社製);メガファックF-470、F-1405、F-474(いずれも、大日本インキ化学工業株式会社製);ゾニール(Zonyl)TBS、FSP、FSA、FSN-100、FSN、FSO-100、FSO、FS-300、UR、キャプストーンFS-30、FS-31、FS-3100、FS-34、FS-35(いずれも、Chemours社製);FT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW(いずれも、株式会社ネオス社製)、ポリフォックスPF-136A,PF-156A、PF-151N、PF-154、PF-159(オムノバ社製)、ユニダインDSN-403N(ダイキン工業株式会社製)などが挙げられ、これらの中でも、良好な印字品質、特に発色性、紙に対する浸透性、濡れ性、均染性が著しく向上する点から、Chemours社製のFS-3100、FS-34、FS-300、株式会社ネオス製のFT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW、オムノバ社製のポリフォックスPF-151N及びダイキン工業株式会社製のユニダインDSN-403Nが特に好ましい。
【0064】
インク中における界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、濡れ性、吐出安定性に優れ、画像品質が向上する点から、0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましい。
【0065】
<その他添加剤>
インクには、必要に応じて、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤等を加えても良い。
【0066】
<インクの物性>
インクの物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
インクの25℃での粘度は、印字濃度や文字品位が向上し、また、良好な吐出性が得られる点から、5mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましい。ここで、粘度は、例えば回転式粘度計(東機産業社製RE-80L)を使用することができる。測定条件としては、25℃で、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間で測定可能である。
インクの表面張力としては、記録媒体上で好適にインクがレベリングされ、インクの乾燥時間が短縮される点から、25℃で、35mN/m以下が好ましく、32mN/m以下がより好ましい。
インクのpHとしては、接液する金属部材の腐食防止の観点から、7~12が好ましく、8~11がより好ましい。
【0067】
<インクの製造方法>
インクの製造方法としては、例えば、水系分散体、有機溶剤、水、樹脂、及びその他の成分を水性媒体中に分散又は溶解し、撹拌混合して製造する方法が挙げられる。分散は、例えば、サンドミル、ホモジナイザー、ボールミル、ペイントシェイカー、超音波分散等により行うことができる。撹拌混合は、例えば、通常の撹拌羽を用いた撹拌機、マグネチックスターラー、高速の分散機等により行うことができる。
【0068】
<<記録媒体>>
記録媒体としては特に制限はなく、普通紙、光沢紙、特殊紙、布などを用いることができるが、非浸透性基材であってもよい。
非浸透性基材とは、水透過性、水吸収性、又は水吸着性が低い表面を有する基材を指し、内部に多数の空洞があっても外部に開口していない基材も含まれる。より定量的には、ブリストー(Bristow)法において、接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m以下である基材を指す。
非浸透性基材としては、例えば、塩化ビニル樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネートフィルムなどのプラスチックフィルムを、好適に使用することができる。
【0069】
<<記録装置、記録方法>>
図1を参照して、記録方法および記録装置について説明する。図1は、記録装置の一例を示す概略図である。
図1に示す記録装置1は、記録媒体10にインクを付与することで記録媒体10に画像を形成する装置である。記録装置1は、給紙手段11と、インクを付与する手段12と、加熱手段13と、巻取り手段15と、を備える。
【0070】
<給紙手段、給紙工程>
給紙手段11は、インクを付与する手段12がインクを付与する位置に記録媒体10を給紙する手段である。なお、記録方法の一工程としての給紙工程は、給紙手段により好適に実施することができる。
給紙される記録媒体10としては、連続紙が用いられることが好ましい。連続紙とは、画像形成の際の搬送方向に連続し、搬送方向におけるプリント単位(1ページ)の長さよりも長い記録媒体である。連続紙の長さは、給紙手段11から巻取り手段15に至るまでの搬送経路の長さより長いことが好ましい。連続紙としては、例えば、ロール状に丸められたロール紙を用いることができる。図1に示す例では、ロール状に丸められた記録媒体10が給紙手段11にセットされている。そして、給紙手段11から給紙された記録媒体10を、巻取り手段15を用いて巻き取ることで、記録媒体10が搬送方向(図1の矢印16、及び矢印17で示す方向)に搬送される。なお、記録媒体10としては、連続紙に限らずカット紙を記録媒体として用いてもよい。カット紙とは、画像形成の際の搬送方向におけるプリント単位(1ページ)ごとに独立した記録媒体である。
【0071】
<インクを付与する手段、インクを付与する工程>
インクを付与する手段12は、給紙手段11から矢印16の方向に給紙された記録媒体10に対してインクを付与して画像を形成する手段である。インクを付与する手段12としては、シングルパス方式のインクジェットラインヘッドで構成されたヘッドユニットが好ましい。インクジェット記録方式で付与する手段の場合、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の各インクに対応する4つの吐出ヘッドを有していることが好ましい。また、オレンジ(O)、グリーン(G)などの特色インク、光沢性の付与や他の処理を行う後処理液を吐出する吐出ヘッドを有していてもよい。インクジェット記録方法以外にも、例えば、ブレードコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法、スプレーコート法などを用いてインクを付与する手段が挙げられる。なお、記録方法の一工程としてのインクを付与する工程は、インクを付与する手段により好適に実施することができる。
吐出させるインクの液滴の大きさとしては、例えば、2pL以上40pL以下が好ましく、その吐出噴射の速さとしては、5m/s以上20m/s以下が好ましく、その駆動周波数としては、1kHz以上が好ましく、その解像度としては、300dpi以上が好ましい。
なお、上記の吐出ヘッドは、それぞれ、インクを収容するインク収容体(インク収容容器の一例)からインクが供給される。インク収容容器としては、インクを収容できればよく、例えば、樹脂等でケーシングされたカートリッジや、ボトル等が挙げられる。カートリッジにおいては、内袋がポリエチレン等の樹脂製のアルミパウチにインクが収容されている形態であってもよい。
【0072】
<加熱手段、加熱工程>
加熱手段13は、インクを付与する手段12から記録媒体10に付与されたインクを加熱する手段である。加熱手段13としては、記録媒体10のインクを付与されていない面に接触して加熱を行うヒートドラムであることが好ましい。ヒートドラムの温度は、印刷速度やインクの乾燥性にもよるが、100℃以上130℃以下であることが好ましい。ヒートドラムによる加熱に組み合わせ可能な他の加熱手段としては、例えば、温風加熱、赤外線照射、紫外線照射等の手段、これらを組み合わせた手段が挙げられる。なお、記録方法の一工程としての加熱工程は、加熱手段により好適に実施することができる。
【0073】
<巻取り手段、巻取り工程>
巻取り手段15は、給紙手段11と対向する位置に配置されており、給紙手段11から給紙され、印刷層を形成された記録媒体10を巻き取る手段である。給紙手段11と巻取り手段15の回転速度をそれぞれ調整することで、記録媒体10に働く張力を調整することができる。なお、記録媒体の種類によっては、給紙手段および巻取り手段を省略することができる。なお、記録方法の一工程としての巻取り工程は、巻取り手段により好適に実施することができる。
【実施例0074】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0075】
<ポリエステル樹脂αの合成例>
窒素導入管、脱水管、攪拌器、及び熱電対を有する500mLの四つ口フラスコに、ジオールとしてビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物(富士フィルムワコーケミカル社製:4,4’-イソプロピリデンビス(2-フェノキシエタノール))275質量部と、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物79質量部(日本乳化剤社製:BA-P2グリコール)と、ジカルボン酸としてイソフタル酸ジメチル140質量部と、アジピン酸26質量部と、を投入して混合した。次に、反応容器内を十分に窒素ガスで置換した後、300ppm(モノマーに対して)のチタンテトライソプロポキシドを添加し、窒素ガス気流下にて4時間で200℃まで昇温させ、更に、2時間かけて230℃に昇温し、流出物がなくなるまで反応を行った。その後、5mmHg~30mmHgの減圧下、1時間反応させて樹脂aを得た。
得られた樹脂aは、酸価(AV)が0.5mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)が47℃、重量平均分子量(Mw)が5,000であった。
次に、得られた樹脂a160質量部を窒素気流下、180℃にて溶融し、無水トリメリット酸6質量部を加えて40分攪拌することで、樹脂の酸価調整をおこない、酸価(AV)20mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)51℃、重量平均分子量(Mw)5,100のポリエステル樹脂αを得た。
【0076】
なお、重量平均分子量(Mw)は、分子量既知のポリスチレン試料によって作成した検量線を標準としてGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)にて測定した。カラムは排除限界6万のもの、2万のもの、1万のものを直列に繋いだものを使用した。
・装置:GPC(東ソー(株)製)、検出器:RI、測定温度:40℃
・移動相:テトラヒドロフラン、流量:0.45mL/min.
【0077】
<顔料分散剤Iの合成例>
1,6-ヘキサンジオール(東京化成工業社製)62.0質量部を700mlのジクロロメタンに溶解し、ピリジン(東京化成工業社製)20.7質量部を加え攪拌をした。この溶液に、100mlのジクロロメタンに2-ナフタレンカルボニルクロリド(東京化成工業社製)を溶解させた溶液を2時間かけて滴下した後、室温で6時間攪拌した。得られた反応溶液を水洗した後、有機層を単離し、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。残留物を溶離液としてジクロロメタン/メタノール(体積比で98/2)混合溶媒を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで化合物を得た。
次に、得られた上記化合物42.1質量部を80mlの乾燥メチルエチルケトンに溶解し、攪拌しながら60℃の加熱を行った。この溶液に、20mlの乾燥メチルエチルケトンにカレンズMOI(昭和電工社製)24.0質量部を溶解させた溶液を1時間かけて滴下した後、70℃で12時間攪拌した。室温まで冷却した後、溶媒を留去した。残留物を溶離液としてジクロロメタン/メタノール(体積比で99/1)混合溶媒を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、モノマーを得た。
次にアクリル酸(東京化成工業社製)2.30質量部、上記モノマー8.54質量部及び2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(東京化成工業社製)0.31質量部を100mlのメチルエチルケトンに溶解し、窒素ガス気流下、75℃の温度条件で5時間攪拌を行った。その後、室温まで冷却した反応溶液をヘキサンを用いて再沈殿を5回繰り返し、共重合体の精製を行った。精製処理後は共重合体をろ別し、減圧乾燥することで顔料分散剤Iを得た。
【0078】
<顔料プレ分散体Aの作製例(工程1)>
以下の処方の材料を混合し、110mlのガラス製スクリュー菅瓶に投入後、直径2.0mmのジルコニアボール(ニッカトー社製、YTZボール)170質量部を投入し、シェーカー(IKA社製、Vibrax VXR basic)に瓶を固定し、1000rpmで24時間分散させた。その後、メディアと分散液をろ別し、平均孔径5.0μmのPTFEメンブレンフィルターでろ過することで顔料プレ分散体Aを作製した。この顔料プレ分散体AのELSZ-1000における累積50%体積粒径(D50)は103nmであった。
・シアン顔料(DIC社製、FASTOGEN BLUE TGR-SD、D50:90nm):15.0質量部
・顔料分散剤(アジスパー PB821、味の素ファインテクノ社製、疎水性):3.8質量部
・テトラヒドロフラン:41.2質量部
【0079】
[実施例1]
<水系分散体A1の調整例(工程2~4)、インク1の調整例>
スリーワンモーター、アンカー翼、熱電対を備え付けた0.3Lのセパラブルフラスコに、顔料(P:Pigment)とポリエステル(R:Resin)の質量比(P/R)が0.5となるように、顔料プレ分散体A60gとポリエステル樹脂α30gとを加えて40℃で混合攪拌し、次いで、ポリエステルとテトラヒドロフラン(S:Solvent)の質量比(R/S)が1.4となるように、減圧下メチルエチルケトンを除去した後、ポリエステルの有する酸価を中和すべく、カルボキシル基に対して等量のトリエチルアミン1.1gを加えて0.5時間混合攪拌することで顔料分散樹脂溶液を得た。
次に、顔料分散樹脂溶液を350rpmの速度で攪拌しながらイオン交換水64gを15ml/minの速度で滴下し、20分間攪拌することで分散液を得た。
最後に、テトラヒドロフランを除去し、目開き67μmのナイロン製の網を用いてろ過精製した。イオン交換水により固形量を30%に調整することで、顔料一次粒子を二個以上含有した顔料内包樹脂粒子を含む水系分散体A1を得た。
【0080】
上記で得られた水系分散体A1を用い、下記処方のインクを調製し、25℃における粘度を7.5mPa・sに調整した後、平均孔径10μmのメンブレンフィルターで濾過を行い、インク1を調製した。
・水系分散体1(固形分として):10.75質量%
・プロピレングリコール:約40質量%(インク粘度が7.5mPa・sになる量)
・シリコーン系界面活性剤(日信化学工業製シルフェイスSAG503A):1.0質量%
・脂肪族ジアルコール系界面活性剤(日信化学工業製サーフィノールAD01):0.1質量%
・水:残量(合計量:100質量%)
【0081】
[実施例2]
<水系分散体A2の調整例(工程2~4)、インク2の調整例>
実施例1において、顔料とポリエステルの質量比(P/R)を0.7に変更した以外は実施例1と同様にして顔料一次粒子を二個以上含有した顔料内包樹脂粒子を含む水系分散体A2(固形量:30%)を得た。
また、実施例1において、水系分散体A1の代わりに水系分散体A2を使用した以外は実施例1と同様にしてインク2を調製した。
【0082】
[比較例1]
<水系分散体A3の調整例(工程2~4)、インク3の調整例>
実施例1において、顔料とポリエステルの質量比(P/R)を0.2に変更した以外は実施例1と同様にして顔料一次粒子を二個以上含有した顔料内包樹脂粒子を含む水系分散体A3(固形量:30%)を得た。
また、実施例1において、水系分散体A1の代わりに水系分散体A3を使用した以外は実施例1と同様にしてインク3を調製した。
【0083】
[比較例2]
<水系分散体A4の調整例(工程2~4)、インク4の調整例>
実施例1において、顔料とポリエステルの質量比(P/R)を0.8に変更した以外は実施例1と同様にして顔料一次粒子を二個以上含有した顔料内包樹脂粒子を含む水系分散体A4(固形量:30%)を得た。
また、実施例1において、水系分散体A1の代わりに水系分散体A4を使用した以外は実施例1と同様にしてインク4を調製した。
【0084】
[比較例3]
下記のポリエステル単独樹脂エマルション及び水系分散体Bを作製し、顔料内包樹脂粒子を含まないインク5を調製した。
【0085】
<ポリエステル単独樹脂エマルションの作製例>
スリーワンモーター、アンカー翼、熱電対を備え付けた0.3Lのセパラブルフラスコに、ポリエステル樹脂α25gとテトラヒドロフラン14gを加え、40℃で混合攪拌すること樹脂溶液を得た。次いで、ポリエステルの有する酸価を中和すべく、カルボキシル基に対して等量のトリエチルアミン0.84gを加えて20分間攪拌した。350rpmの速度で攪拌しながらイオン交換水53gを15ml/minの速度で滴下し、20分間攪拌することでエマルションを作製した。最後にメチルエチルケトンを除去し、目開き67μmのナイロン製の網を用いてろ過精製した。イオン交換水により固形量を30%に調整し、累積50%体積粒径(D50)78nmのポリエステル単独樹脂エマルションを得た。
【0086】
<水系分散体Bの調整例>
2.3質量部の顔料分散剤Iを、20.3質量部の2.7%ジメチルアミノエタノール水溶液で中和しながら溶解させ、顔料分散剤I水溶液を作製した。次に、以下の処方の材料を混合し、110mlのガラス製スクリュー菅瓶に投入後、直径1.0mmのジルコニアボール(ニッカトー社製、YTZボール)176質量部を投入し、シェーカー(IKA社製、Vibrax VXR basic)に瓶を固定し、1000rpmで72時間分散させた。その後、メディアと分散液をろ別し、平均孔径5.0μmの酢酸セルロースメンブレンフィルターでろ過することで水系分散体Bを作製した。この水系分散体BのELSZ-1000における累積50%体積粒径(D50)は120nmであった。
・シアン顔料(BASF社製、HELIOGEN Blue D7110F):9.0質量部
・顔料分散剤I水溶液:22.5質量部
・水:29.0質量部
【0087】
<インク5の調整例>
上記で得られたポリエステル単独樹脂エマルション及び水系分散体Bを用い、下記処方のインクを調製し、25℃における粘度を7.5mPa・sに調整した後、平均孔径10μmのメンブレンフィルターで濾過を行い、インク5を調製した。
・ポリエステル単独樹脂エマルション(固形分として):8.958質量%
・水系分散体B(固形分として):1.792質量%
・プロピレングリコール:約40質量%(インク粘度が7.5mPa・sになる量)
・シリコーン系界面活性剤(日信化学工業製シルフェイスSAG503A):1.0質量%
・脂肪族ジアルコール系界面活性剤(日信化学工業製サーフィノールAD01):0.1質量%
・水:残量(合計量:100質量%)
【0088】
[比較例4]
<インク6の調整例>
比較例3において、下記処方のインクを調製した以外は比較例3と同様にして、インク6を調製した。
・ポリエステル単独樹脂エマルション(固形分として):7.167質量%
・水系分散体B(固形分として):3.583質量%
・プロピレングリコール:約40質量%(インク粘度が7.5mPa・sになる量)
・シリコーン系界面活性剤(日信化学工業製シルフェイスSAG503A):1.0質量%
・脂肪族ジアルコール系界面活性剤(日信化学工業製サーフィノールAD01):0.1質量%
・水:残量(合計量:100質量%)
【0089】
[比較例5]
<インク7の調整例>
比較例3において、下記処方のインクを調製した以外は比較例3と同様にして、インク7を調製した。
・ポリエステル単独樹脂エマルション(固形分として):5.972質量%
・水系分散体B(固形分として):4.778質量%
・プロピレングリコール:約40質量%(インク粘度が7.5mPa・sになる量)
・シリコーン系界面活性剤(日信化学工業製シルフェイスSAG503A):1.0質量%
・脂肪族ジアルコール系界面活性剤(日信化学工業製サーフィノールAD01):0.1質量%
・水:残量(合計量:100質量%)
【0090】
[比較例6]
<インク8の調整例>
比較例3において、下記処方のインクを調製した以外は比較例3と同様にして、インク8を調製した。
・ポリエステル単独樹脂エマルション(固形分として):5.375質量%
・水系分散体B(固形分として):5.375質量%
・プロピレングリコール:約40質量%(インク粘度が7.5mPa・sになる量)
・シリコーン系界面活性剤(日信化学工業製シルフェイスSAG503A):1.0質量%
・脂肪族ジアルコール系界面活性剤(日信化学工業製サーフィノールAD01):0.1質量%
・水:残量(合計量:100質量%)
【0091】
次に、得られた各水系分散体及び各インクに関し、以下の測定又は評価を行った。結果を表1に示した。
【0092】
[顔料内包樹脂粒子の割合]
水系分散体における顔料内包樹脂粒子の割合は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察することにより算出した。具体的には、まず、水系分散体を、固形分濃度が0.1質量%となるようにイオン交換水で希釈して試料液を作製した。次いで、親水化処理を行ったコロジオン膜貼付メッシュ(日新EM社製コロジオン膜貼付メッシュ Cu150メッシュ)上に、試料液を、マイクロピペットを用いて1μL載せ、すぐに三角形に切ったろ紙で試料液を吸い取った。次いで、10倍に希釈したEMステイナーを、マイクロピペットを用いて1μL載せ、すぐに三角形に切ったろ紙で試料液を吸い取った。減圧乾燥の後、透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製JEM-2100F)にて、加速電圧200kV、倍率40000倍で観察を行った。50nm以上の粒径を有する樹脂粒子を3つ以上含む視野の画像を、任意に場所を変更して5枚以上取得し、全画像の50nm以上の粒径を有する樹脂粒子の個数の合計を100個とした場合における50nm以上の粒径を有する顔料内包樹脂粒子の個数を求めた。次に、下記評価基準に基づいて、顔料内包樹脂粒子の個数を評価した。
(評価基準)
・A:顔料内包樹脂粒子の個数が30個以上
・B:顔料内包樹脂粒子の個数が30個未満
【0093】
[顔料面積比率]
水系分散体における顔料面積比率は、塗工膜表面における顔料面積量を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察することにより算出した。具体的には、まず、水系分散体を固形分濃度が10.75質量%となるようにイオン交換水で調製した調整液を作成し、調整液を塗工紙(ルミアートグロス130、STORA ENSO社製)に対して0.15mmバーコーターを用いて塗工してから0℃で12時間乾燥させて平均厚み2μmの塗工膜を形成した。次に、塗工膜を切り出してSEM観察用スタブにカーボンテープを用いて固定し、塗工膜の表面をカーボン蒸着により導電処理し、導電処理後の塗工膜を走査型電子顕微鏡(SEM、ZEISS製Merlin)により、所定の条件(反射電子検出器、試料入射電圧1.5kV、試料距離2.7~3.3mm、検出器手前のグリッド電圧1kV、倍率20000倍)で観察することで観察像を取得し、観察像を二値化することによって観察像中における顔料の面積である顔料面積を取得し(顔料及び樹脂の反射電子放出量の違いから、観察像におけるコントラストの違いにより顔料部分を見分けることが可能)、顔料面積の観察像の面積に対する割合を顔料面積比率とした。なお、顔料面積比率は、任意に場所を変更して観察することで取得した3つ以上の観察像から算出される顔料面積比率の平均を採用した。
【0094】
[シアン画像濃度]
まず、次の手法によりインクを用いて印刷画像を作製した。具体的には、インクジェットプリンター(リコー製IPSiO GXe5500)の外装を外し、背面マルチ手差しフィーダーを取り付け、ヘッドを含めたインク供給経路に洗浄液として純水を通液することで洗浄し、洗浄液が着色しなくなるまで十分に通液して洗浄液を装置から抜ききって評価用印刷装置とした。その後、調製したインクを、インクカートリッジに充填し評価用インクカートリッジとした。充填動作を行わせ、全ノズルに評価インクが充填されて異常画像が出ないことを確認し、プリンタ添付のドライバで光沢紙きれいモードを選択後、ユーザー設定でカラーマッチングoffを印字モードとした。このモードで記録媒体(ルミアートグロス130)へのインク付着量が20g/mとなるようにヘッドの駆動電圧を変更することで吐出量を調整してベタ画像を印刷した。更に、得られたベタ画像を100℃のオーブンにて5分間加熱乾燥させた印刷画像を作製した。
次に、印刷画像を有する記録媒体の下に白色の普通紙を置いた状態で、分光測色濃度計X-Rite939を用いて全濃度を測色し、L空間上の-bの値をシアンの画像濃度とした。
【0095】
[光沢度]
まず、上記の[シアン画像濃度]と同様の手法によりインクを用いて印刷画像を作製した。
次に、印刷画像を有する記録媒体の下に白色の普通紙を置いた状態で、光沢計マイクロトリグロスを用いて60°光沢を測定した。
【0096】
[表面粗さ]
まず、上記の[シアン画像濃度]と同様の手法によりインクを用いて印刷画像を作製した。
次に、記録媒体から印刷画像部を切り出し、走査型プローブ顕微鏡(SPM)を用いて観察し、以下の条件で表面粗さを求めた。なお、観察は任意に場所を変更して3視野行い、表面粗さの平均値を求めた。
・装置:走査プローブ型顕微鏡(Bruker製、DimensionIcon)
・カンチレバー:オリンパス製OMCL-AC240TS
・測定モード:タッピングモード
・観察範囲:2μm四方
【0097】
【表1】
【符号の説明】
【0098】
1 記録装置
10 記録媒体
11 給紙手段
12 インクを付与する手段
13 加熱手段
15 巻取り手段
16 記録媒体の搬送方向
17 記録媒体の搬送方向
【先行技術文献】
【特許文献】
【0099】
【特許文献1】特開2016-196621号公報
【特許文献2】特開2002-322396号公報
【特許文献3】特開2019-99819号公報
図1