IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本製粉株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023054474
(43)【公開日】2023-04-14
(54)【発明の名称】亜麻仁含有組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 25/00 20160101AFI20230407BHJP
【FI】
A23L25/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021163341
(22)【出願日】2021-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100156982
【弁理士】
【氏名又は名称】秋澤 慈
(72)【発明者】
【氏名】小坂 学
(72)【発明者】
【氏名】関口 千絵
【テーマコード(参考)】
4B036
【Fターム(参考)】
4B036LC05
4B036LH13
4B036LH27
4B036LP05
(57)【要約】
【課題】亜麻仁と油とを混合し微粒化して製造した亜麻仁ペーストを低温(5~15℃)で長期保存した際におこる固形成分と油分の分離を防ぎ、かつ低温のまま又は室温に戻した状態で使用しやすい流動性を有する亜麻仁含有組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】ココナッツ粉砕物、硬化処理されていない植物油及び亜麻仁粉砕物からなる亜麻仁含有組成物であって、亜麻仁含有組成物の全量に対し、ココナッツ粉砕物を8~32質量%、硬化処理されていない植物油を3~27質量%含有し、残余は亜麻仁粉砕物であり、調製後、5~15℃で30日静置しても相分離しない、亜麻仁含有組成物、により上記課題を解決する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ココナッツ粉砕物、硬化処理されていない植物油及び亜麻仁粉砕物からなる亜麻仁含有組成物であって、亜麻仁含有組成物の全量に対し、ココナッツ粉砕物を8~32質量%、硬化処理されていない植物油を3~27質量%含有し、残余は亜麻仁粉砕物であり、調製後、5~15℃で30日静置しても相分離しない、前記亜麻仁含有組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の亜麻仁含有組成物の製造方法であって、硬化処理されていない植物油の存在下で亜麻仁を粉砕し、亜麻仁粉砕物を得る工程を含む前記製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の亜麻仁含有組成物を含む食品。
【請求項4】
請求項1に記載の亜麻仁含有組成物を食品原料に添加する工程を含む、食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は亜麻仁含有組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
亜麻仁(亜麻の種子)にはα-リノレン酸のほか、リグナンや食物繊維等の健康機能成分が含まれており、これらを有効に利用することが望まれている。しかしながら、亜麻仁は穀粒の状態でもその構成成分である多価不飽和脂肪酸(α-リノレン酸)が酸化され易いことから味や臭いが経時的に劣化すること、亜麻仁は硬い殻に覆われているために粉砕加工の歩留が悪く硬い殻を主成分とした副産物が得られること、粉砕加工の歩留が悪いため、前記の様な健康機能成分が十分に得られ難いこと等の問題があった。
このような問題を解決するために、亜麻仁と油とを混合し微粒化して製造した亜麻仁ペーストが提案されている。
亜麻仁と油とを混合し微粒化して製造した亜麻仁ペーストは、10日間程度静置保存しておいても固形成分と油分とに分離することはないが、長期間静置保存しておくと固形分と油分に分離し、使用する前に固形分と油分をほぐす作業が必要である。特に30日間以上静置保存しておくと、固形分は硬い塊状になり、手で揉み解すことが極めて困難になり使い勝手が悪く、幅広く普及させることができなかった。
【0003】
このような問題を解決する方法として、パルミチン酸やステアリン酸の長鎖飽和脂肪酸を含む融点が高い脂肪、粘性糖液、水溶液、水を加えることで、分離を防止する方法が提案されている。
パルミチン酸やステアリン酸の長鎖飽和脂肪酸を含む脂肪として、ラード、バター、ショートニング、マーガリンなどあるが、健康機能性の観点から長鎖飽和脂肪酸を含む脂肪を配合することは、機能性効果を十分にアピールできない問題がある。また、ショートニングやマーガリンは不飽和脂肪酸を含む植物性油脂を水素添加などで硬化処理して製造するが、飽和脂肪酸を多く含む硬化油であるため一部の消費者から好まれない。粘性糖液の配合は、健康機能性として低糖質を十分にアピールできない。
水溶液や水を加える場合、微生物による変敗を防ぐため、アルコールや保存料などを配合することは、健康機能性として問題がある。また、食塩、有機酸を含むものは味覚の点から使用できる量と用途が限定されてしまう。
【0004】
焙煎された胡麻粒を石臼状又はロール状の磨砕機で磨砕して製造される胡麻ペースト(練りごま)においても同様に長期保存すると固形分と油分が分離することが知られており、約2ヶ月程度で完全に分離して固形分が硬い塊状になる。このような問題を解決するために、特許文献1では練り胡麻にエタノールを添加すること、特許文献2では胡麻をすりつぶしたペースト内に硬化油またはショートニングを添加すること、特許文献3ではねり胡麻に多糖類を添加することが開示されている。また、特許文献4では固形分の50%以上の粒子径が0.01~20μmになるように微粒化することで、ペースト状黒ごまにおける固形分と油分の分離を抑制できることが開示されている。しかし、亜麻仁のほうが胡麻よりも硬いため、胡麻ペーストにおける上記のような手段を亜麻仁ペーストに適用できるとはいい難い。融点が高い飽和脂肪酸であるパルミチン酸やステアリン酸の長鎖飽和脂肪酸を含む脂肪である硬化油、ショートニングを配合する方法は、健康機能性の観点から機能性効果を十分にアピールできない問題がある。
解決方法として、(特開2017-184632の)亜麻仁ペーストに粘性糖液を加えることで分離防止が可能となる(特許文献5)。しかし、粘性糖液の配合は、健康機能性として低糖質を十分にアピールできない問題がある。
【0005】
亜麻仁粉砕物及び食用油からなる亜麻仁ペーストに、水または水溶液を添加してなる、長期保存しても固形分と油分の分離が起こらない亜麻仁ペースト組成物及びそれを含む食品がある(特許文献6)。しかし、水溶液や水を加える場合、微生物による変敗を防ぐため、アルコールや保存料などを配合することは、健康機能性として問題がある。また、食塩、有機酸を含むものは味覚の点から使用できる量と用途が限定されてしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-25658号公報
【特許文献2】特開2005-204568号公報
【特許文献3】特開昭60-114176号公報
【特許文献4】特開2008-220276号公報
【特許文献5】特開2020-22427号公報
【特許文献6】特開2020-171221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
亜麻仁と油とを混合し微粒化して製造した亜麻仁ペーストを低温(5~15℃)で長期保存した際におこる固形成分と油分の分離を防ぎ、かつ低温のまま又は室温に戻した状態で使用しやすい流動性を有する亜麻仁含有組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等はココナッツ粉砕物、硬化処理されていない植物油及び亜麻仁粉砕物からなる亜麻仁含有組成物であって、亜麻仁含有組成物の全量に対し、ココナッツ粉砕物を8~32質量%、硬化処理されていない植物油を3~27質量%含有し、残余は亜麻仁粉砕物であり、調製後、5~15℃で30日静置しても相分離しない、前記亜麻仁含有組成物によって亜麻仁と油とを混合し微粒化して製造した亜麻仁ペーストを低温(5~15℃)で長期保存した際におこる固形成分と油分の分離を防ぐことができ、また低温のまま又は室温に戻した状態で使用しやすい流動性を有する(例えば、10℃でペースト状又は10℃で固体状であっても室温25℃でペースト状の性状を呈する)新規ペースト組成物を提供出来ることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は以下の通りである。
[1]ココナッツ粉砕物、硬化処理されていない植物油及び亜麻仁粉砕物からなる亜麻仁含有組成物であって、亜麻仁含有組成物の全量に対し、ココナッツ粉砕物を8~32質量%、硬化処理されていない植物油を3~27質量%含有し、残余は亜麻仁粉砕物であり、調製後、5~15℃で30日静置しても相分離しない、前記亜麻仁含有組成物。
[2] [1]に記載の亜麻仁含有組成物の製造方法であって、硬化処理されていない植物油の存在下で亜麻仁を粉砕し、亜麻仁粉砕物を得る工程を含む前記製造方法。
[3][1]に記載の亜麻仁含有組成物を含む食品。
[4][1]に記載の亜麻仁含有組成物を食品原料に添加する工程を含む、食品の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、亜麻仁と油とを混合し微粒化して製造した亜麻仁ペーストを低温(5~15℃)で長期保存した際に固形成分と油分の分離を防ぐことができ、また低温のまま又は室温に戻した状態で使用しやすい流動性を有する亜麻仁含有組成物を提供することができる。本発明の亜麻仁含有組成物は5~15℃でペースト状又は固体状の性状、5~15℃で固体状のものは25℃でペースト状の性状を取り得る。本発明の亜麻仁含有組成物は、5~15℃でペースト状のものはチューブタイプ、スパウトタイプなどの樹脂容器に入れて冷蔵庫などで低温で保管し、そのまま取り出して絞り出しして使用することができる。5~15℃で固体状のものは25℃でペースト状を呈し、バターのように室温に戻して塗り広げて使用することができる。これにより、亜麻仁含有組成物を、例えばベーカリー製品のスプレッド、フィリング材、練りこみ油脂等として使用した食品や、ドレッシング、マヨネーズ、ディップ、ソース、麺類や鍋物用のスープ等の液状又はペースト状の食品を容易に製造することができる。さらに本発明の亜麻仁含有組成物は食物繊維や低糖質で健康機能性が高い多価不飽和脂肪酸と中鎖脂肪酸を多く含むため、腸内環境の改善、コレステロールの低下など多くの健康機能性が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の亜麻仁含有組成物はココナッツ粉砕物、硬化処理されていない植物油及び亜麻仁粉砕物からなる。
【0012】
アマニ(亜麻仁)は、欧州の地中海地方原産の自生植物であるアマ科植物アマ(亜麻、学名:Linum usitatissimum)の種子(仁)のことであり、英名 Flax Seed (フラックスシード)、学名 Linum usitatissimumと呼ばれる。
本発明において、亜麻仁は、国内産、外国産などの産地や品種を問わず原料として使用できる。
未処理、乾燥処理、湿熱処理、乾熱処理等、種子形状が維持された亜麻仁を使用することができる。好ましくは焙煎処理亜麻仁である。焙煎処理することで、胡麻等と同様に風味並びに芳香を得ることができるためである。焙煎処理は、例えば30秒~120分、100~400℃で加熱することによって行う。
【0013】
本発明においてココナッツは、産地や品種を問わず原料として使用でき、デシケートココナッツ又はトーストココナッツの少なくともどちらか一方を使用する。デシケートココナッツとはココナッツの胚乳を乾燥機で乾燥させ、細切りや粉末状にカットした物をいう。トーストココナッツとは、デシケートココナッツを焙煎機などで軽く焦げ目をつけたものを言う。ココナッツの粒度は特に限定されないが、粉砕処理の容易さの観点から細かい方がよく、デシケートココナッツの粒径は目開き0.84mmの篩を通過したエキストラファインであることが好ましい。
【0014】
本発明において硬化処理されていない植物油脂は、植物種子から抽出した植物油脂で水素添加により不飽和脂肪酸から飽和脂肪酸に反応させる硬化処理を行っていない植物油脂であれば特に限定されない。
硬化処理されていない植物油脂は、機能性のある脂肪酸として多価不飽和脂肪酸と中鎖脂肪酸を含むものが好ましい。具体的に示すと、好ましくは亜麻仁油、ココナッツオイル、えごま油、パーム核油、米油、オリーブ油、ごま油、キャノーラ油等であり、より好ましくは亜麻仁油、ココナッツオイルである。
【0015】
本発明の亜麻仁含有組成物は亜麻仁含有組成物の全量に対し、ココナッツ粉砕物を8~32質量%、硬化処理されていない植物油を3~27質量%含有し、残余は亜麻仁粉砕物である。好ましくは亜麻仁含有組成物の全量に対し、ココナッツ粉砕物を8~22質量%、硬化処理されていない植物油を3~27質量%含有し、残余は亜麻仁粉砕物である。より好ましくは、亜麻仁含有組成物の全量に対し、ココナッツ粉砕物を8~12質量%、硬化処理されていない植物油を3~27質量%含有し、残余は亜麻仁粉砕物である。
ココナッツ粉砕物、硬化処理されていない植物油及び亜麻仁粉砕物が上記本願所定の範囲である場合、低温(5~15℃)で長期保存した際に固形成分と油分の分離を防ぐことができ、使用しやすい流動性を有する亜麻仁含有組成物を提供することができる。
本願発明の効果にはココナッツ粉砕物、硬化処理されていない植物油及び亜麻仁粉砕物の量のバランスが関与していると考えられるが、ココナッツ粉砕物の含有量が亜麻仁含有組成物の全量に対し20質量%を超えると固形分と油分の分離は抑制できるが低温のまま又は室温に戻した状態で流動性が低くなる傾向にあり、32質量%を超えると固形分と油分の分離の抑制効果が認められなくなり、8質量%未満であると固形分と油分の分離の抑制効果が認められない。
また硬化処理されていない植物油の含有量が亜麻仁含有組成物の全量に対し27質量%を超えると固形分と油分の分離の抑制効果が認められず、3質量%未満であると亜麻仁含有組成物の製造効率が低くなり、また流動性が低くなる傾向にあった。
【0016】
本発明の亜麻仁含有組成物は、調製後、5~15℃で30日静置しても相分離しない。ここで相分離しないとは、亜麻仁含有組成物に含まれる固形分と油分が分離しないことをいう。
本発明の亜麻仁含有組成物は、5~15℃においてペースト状又は固体状の性状、5~15℃で固体状のものは、25℃でペースト状の性状を取り得る。本発明の亜麻仁含有組成物は、流動性と高い粘性を有し、亜麻仁粉砕物やココナッツ粉砕物などの固形分が硬化処理されていない植物油中に分離せずに分散している状態にある。5~15℃、25℃でペースト状の性状を取り得ることで、低温のまま又は室温に戻した状態においてチューブタイプ、スパウトタイプなどの樹脂容器から絞り出しして使用したり、スプレッドのように塗り広げて使用したりすることができる。
本発明において、B型粘度計(リオン社製、ビスコテスタVT-06)で測定した10℃における亜麻仁含有組成物の粘度は好ましくは150dPa・s以上である。
【0017】
本発明の亜麻仁含有組成物の製造方法は、硬化処理されていない植物油の存在下で亜麻仁を粉砕して亜麻仁粉砕物を得る工程を含む。硬化処理されていない植物油の存在下で亜麻仁を粉砕することで、亜麻仁粉砕物の酸化臭を抑制することができる。
本発明の亜麻仁含有組成物の製造方法において、硬化処理されていない植物油の存在下で亜麻仁を粉砕して亜麻仁粉砕物を得る工程を含んでいれば、原料であるココナッツ、硬化処理されていない植物油脂及び亜麻仁を混合、粉砕する順番は問わない。例えば、亜麻仁、硬化処理をしていない植物油脂を混合して粉砕し、さらにココナッツを加え混合粉砕してもよい。亜麻仁、植物油脂、ココナッツのすべてを混合した後に粉砕してもよい。また、最初にココナッツを粉砕し、そこに亜麻仁粉砕物と硬化処理をしていない植物油脂を加え混合した後に粉砕してもよい。
【0018】
本発明において、粉砕は好ましくは湿式粉砕である。ここで湿式粉砕とは対象物を水や油などの液体中で粉砕する方式を意味する。このような処理としては磨石式(砥石式)、切刃式、胴搗式、媒体攪拌式、圧縮式、衝撃式、すり潰式等の湿式粉砕方法及びそれらの組合せを例示することができ、好ましくは磨石式湿式粉砕方法又は切刃式湿式粉砕方法、最も好ましくは磨石式湿式粉砕方法である。
【0019】
粉砕の条件は適宜変更することができる。例えば、切刃式湿式粉砕方法に用いられるカッターミキサーであれば、回転数300~3500rpm、処理時間2~20分で処理することが出来る。
この設定は、所望される亜麻仁含有組成物の食感や粘度等により適宜変更可能であるが、粉砕の程度の目安として、亜麻仁含有組成物の固形分である亜麻仁粉砕物及びココナッツ粉砕物の平均粒径が200μm以下となるまで粉砕することが好ましい。
【0020】
ペースト化工程における亜麻仁と硬化処理されていない植物油脂の質量比は特に限定されないが、亜麻仁:硬化処理されていない植物油脂=60:40~95:5であることが好ましく、70:30~85:15であることがさらに好ましい。亜麻仁の量が亜麻仁と硬化処理されていない植物油脂の質量比60:40よりも少なくなると固液分離しやすく固結状態が進む傾向がある。亜麻仁の量が亜麻仁と硬化処理されていない植物油脂の質量比95:5よりも多くなるとペースト化の効率が低下する傾向にある。
【0021】
本発明の亜麻仁含有組成物は、様々な食品に添加することが可能である。このような食品としてはドレッシング、マヨネーズ、ディップ、ソース、麺類や鍋物用のスープ、ベーカリー製品用のクリーム、フラワーペーストなどのフィリング材、スプレッド等の液状又はペースト状の食品などが挙げられるがこれらに限定されない。特にマヨネーズ、ディップ、クリーム、フラワーペースト、スプレッド等、低温で流動性を保つ必要がある食品において優位に使用することができる。
【実施例0022】
以下本発明を具体的に説明する為に実施例を示すが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0023】
製造例 亜麻仁含有組成物の製造
(1)亜麻仁を10~15分、150~200℃ になるように焙煎処理し、焙煎処理亜麻仁を得た。
(2)表1に記載の質量比となるように焙煎処理亜麻仁と植物油脂を容器に投入し(合計約1kg)、ヘラを用いて全体が十分に馴染むように混合した。
(3)焙煎処理亜麻仁と植物油脂の混合物をカッターミキサー(ステファン製)に投入し、回転速度3000rpmで5分間粉砕し亜麻仁粉砕物を含む亜麻仁ペーストを得た。さらにカッターミキサー(ステファン製)にデシケートココナッツ(エキストラファイン)を投入し、回転速度3000rpmで4分間粉砕し、ココナッツ粉砕物を含む亜麻仁含有組成物を得た。
【0024】
試験例1:焙煎処理亜麻仁、植物油脂、ココナッツの割合と亜麻仁含有組成物の分散性
焙煎処理亜麻仁、植物油脂、ココナッツを表1に記載の質量にし、製造例に従って亜麻仁含有組成物を作製した。植物油脂として亜麻仁油(株式会社ニップン製)を使用した。
亜麻仁含有組成物を樹脂製の透明な袋に300gずつ分取し、脱気密封した後10℃で静置保存した。保存開始から30日後にペーストの状態を観察し、固形分と油分とに分離しているか確認した。結果を表1に示す。なお「分離 固結」は固形成分と油分の分離と固形分の固結が観察されたもの、「分離 固結無」は固形成分と油分の分離が観察されるものの固形分の固結が観察されなかったもの、「分離せず ペースト状」は固形成分と油分の分離が観察されず、ペースト状のもの、「分離せず 固体」は固形成分と油分の分離が観察されず、固体状であってペースト状のものと異なり流動性が無いものを示す。
10℃における亜麻仁含有組成物の粘度は、1号ロータを装着したビスコテスタVT-06(リオン社製)を用い、10℃において62.5rpmで10秒間攪拌した後測定した。
【0025】
表1-1
【0026】
表1-2
【0027】
表1-3
【0028】
表1-4
【0029】
ココナッツ8~32質量%且つ植物油脂が3~27質量%で、残りが焙煎処理亜麻仁で合計100%質量となる亜麻仁含有組成物であれば、10℃で長期保存した場合に固形分と油分が分離せず、ペースト状または固体状を有していた。10℃で長期保存した場合に固形分と油分が分離せず、固体状であった実施例6~11は室温(25℃)に戻すとペースト状となった。ココナッツ8~22質量%且つ植物油脂が3~27質量%で、残りが焙煎処理亜麻仁で合計100%質量となる亜麻仁含有組成物であれば、10℃で長期保存した場合に固形分と油分が分離せず、ペースト状であった。
【0030】
試験例2:5℃~15℃での亜麻仁含有組成物の流動性
保存温度10℃で分離せず、ペースト状である実施例1~5について、5℃から15℃でペーストの流動性を評価した。絞り口の直径が1cmのスパウト付き樹脂容器に入れ、5℃、10℃、15℃で30日間保存し、10名のパネラーにより評価基準表に従い流動状態を評価した。結果を表2に示す。なお、すべての温度において評価点が3点以上であるものを総合評価○とした。
【0031】
評価基準表

【0032】
表2

ココナッツ8~22質量%且つ植物油脂が3~27質量%で、残りが焙煎処理亜麻仁で合計100%質量となる亜麻仁含有組成物であれば5~15℃で流動性を保持することが示され、低温で流動性を保つ必要がある食品に利用できることが分かった。