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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023054792
(43)【公開日】2023-04-14
(54)【発明の名称】聴覚装置および眼鏡型聴覚装置
(51)【国際特許分類】
   H04R 25/02 20060101AFI20230407BHJP
   G02C 11/06 20060101ALI20230407BHJP
   H04R 25/00 20060101ALI20230407BHJP
【FI】
H04R25/02 A
G02C11/06
H04R25/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160277
(22)【出願日】2022-10-04
(31)【優先権主張番号】P 2021163725
(32)【優先日】2021-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業、総括実施型研究ERATO「川原万有情報網プロジェクト」、産業技術力強化法第17条の適用を受けるもの
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】川原 圭博
(72)【発明者】
【氏名】新城 光樹
(72)【発明者】
【氏名】野崎 悦
(72)【発明者】
【氏名】高木 健
(72)【発明者】
【氏名】笠島 博信
(72)【発明者】
【氏名】金井 智美
(57)【要約】
【課題】眼鏡に装着される骨伝導スピーカの使用中における位置を適切にする技術を提供する。
【解決手段】聴覚装置は、眼鏡のつるに固定される固定部と、眼鏡の使用者に骨伝導により伝達される振動を生成する、固定部に設けられた振動生成部と、を備え、固定部は、穴を有し、つるが穴に挿入されることによりつるに固定される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼鏡のつるに固定される固定部と、
前記眼鏡の使用者に骨伝導により伝達される振動を生成する、前記固定部に設けられた振動生成部と、を備え、
前記固定部は、穴を有し、前記つるが前記穴に挿入されることにより前記つるに固定される、
聴覚装置。
【請求項2】
前記固定部に設けられた、前記振動を前記使用者に骨伝導により伝達する骨伝導部を、さらに備える、
請求項1に記載の聴覚装置。
【請求項3】
前記振動生成部と前記固定部とを接続し、前記振動生成部により生成された振動が前記固定部に伝達されることを抑制する伝達抑制部を、さらに備える、
請求項2に記載の聴覚装置。
【請求項4】
前記振動生成部および前記骨伝導部と結合しており、前記振動生成部により生成された振動を前記骨伝導部に伝達する振動伝達部を、さらに備える、
請求項2に記載の聴覚装置。
【請求項5】
前記振動伝達部が通過可能な大きさを有する孔を含み、前記振動生成部を収容する筐体を、さらに備え、
前記振動伝達部は、前記振動生成部に結合した部分から前記筐体の孔を通過して、前記骨伝導部に結合した部分に伸びるように構成されている、
請求項4に記載の聴覚装置。
【請求項6】
前記筐体の孔と前記振動伝達部との間に形成される隙間を密閉する密閉部を、さらに備える、
請求項5に記載の聴覚装置。
【請求項7】
前記骨伝導部は、形状記憶樹脂により構成されている、
請求項2に記載の聴覚装置。
【請求項8】
周囲に生じた音響に基づく音響電気信号を生成する信号生成部をさらに備え、
前記振動生成部は、前記音響電気信号に基づいて前記振動を生成する、
請求項2に記載の聴覚装置。
【請求項9】
前記骨伝導部が前記使用者と接触することによって前記使用者から所定の範囲の接触力を受けているとき、前記骨伝導部が前記使用者から受ける接触力の前記固定部の変位に伴う変化を緩和する緩和部をさらに備える、
請求項2に記載の聴覚装置。
【請求項10】
前記緩和部は、弾性体と、前記弾性体を支持する支持部と、前記骨伝導部が受ける力に応じた力を前記弾性体に伝達する力伝達部と、を有し、
前記弾性体は、前記力伝達部から力が伝達されていないとき、前記支持部により支持されており、前記骨伝導部が前記所定の範囲の接触力を受けたことに応じて、前記力伝達部から伝達される力によって前記所定の方向にさらに変形する、
請求項9に記載の聴覚装置。
【請求項11】
眼鏡と、
前記眼鏡のつるに設けられた骨伝導スピーカと、を備え、
前記つるは、前記つるの長手方向に伸びた金属板を有し、
前記金属板の少なくとも一部は、前記つるにおいて前記骨伝導スピーカよりも前方に位置する、
眼鏡型聴覚装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、聴覚装置および眼鏡型聴覚装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、眼鏡に補聴器を装着する技術が提案されている。たとえば、特許文献1には、折れ曲がり形状の凹部を有する、補聴器が固定された補助具が記載されている。引用文献1に記載の技術では、補助具の凹部を眼鏡のテンプルに引っ掛けることにより、補助具に固定された補聴器が眼鏡に装着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-81268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、骨伝導を用いた補聴器には、骨伝導スピーカがある。骨伝導スピーカは、使用中に振動し、使用者の頭部の骨に振動を与えることにより、使用者に音声を知覚させるスピーカである。
【0005】
本発明者らは、骨伝導スピーカについて以下のような課題を認識するに至った。特許文献1に記載の技術では、耳の穴から空気伝導によって音を伝える補聴器が想定されている。補助具の凹部を眼鏡のテンプルに引っ掛けることで補助具をテンプルに固定しても、十分に強く補助具をテンプルに固定できない場合ある。このため、特許文献1に記載の補助具を用いて骨伝導スピーカを眼鏡に装着すると、使用中に骨伝導スピーカが振動し、骨伝導スピーカの位置が適切な位置からずれてしまう可能性があった。
【0006】
本発明は係る状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、眼鏡に装着される骨伝導スピーカの使用中における位置を適切にするための技術の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、聴覚装置である。この聴覚装置は、眼鏡のつるに固定される固定部と、眼鏡の使用者に骨伝導により振動を伝達する、固定部に設けられた骨伝導部と、を備え、固定部は、穴を有し、つるが穴に挿入されることによりつるに固定される。
【0008】
本発明の別の態様は、眼鏡型聴覚装置である。この眼鏡型聴覚装置は、眼鏡と、眼鏡のつるに設けられた骨伝導スピーカと、を備え、つるは、つるの長手方向に伸びた金属板を有し、金属板の少なくとも一部は、つるにおいて骨伝導スピーカよりも前方に位置する。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、眼鏡に装着される骨伝導スピーカの使用中における位置を適切にするための技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係る眼鏡型聴覚装置を示す図である。
図2】同実施形態に係る聴覚装置を示す図である。
図3】同実施形態に係る聴覚装置の断面図である。
図4】第2実施形態に係る眼鏡型聴覚装置を示す図である。
図5】同実施形態に係るヒンジを示す図である。
図6】同実施形態に係るレールを示す図である。
図7】同実施形態に係るモダンの断面図である。
図8】同実施形態に係る骨伝導スピーカを示す図である。
図9】第3変形例に係る骨伝導スピーカの断面図である。
図10】第3変形例に係る緩和機構の構成を示す断面図である。
図11】第3変形例に係る緩和機構の機能を説明するための図である。
図12図12(a)~図12(c)は、第4変形例に係る緩和機構の構成および動作を説明するための模式図である。
図13】第5変形例に係る緩和機構の構成を示す模式図である。
図14】第6変形例に係る緩和機構の構成を説明するための断面図である。
図15図15(a)は、第8変形例に係る骨伝導部の正面図であり、図15(b)は、図15(a)のA-A断面図であり、図15(c)は、同変形例に係る骨伝導部の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る眼鏡型聴覚装置1を示す図である。眼鏡型聴覚装置1は、眼鏡10と、眼鏡10に固定された聴覚装置11と、を備える。
【0013】
眼鏡10は、フロントフレーム12と、ノーズパッド14と、フロントフレーム12に接続されたつる15a,15bとを備える。本実施形態では、左側のつる15aに聴覚装置11が固定されるものとして説明する。なお、聴覚装置11が固定されるつるは、左側のつる15aに限定されるものではなく、右側のつる15bであってもよい。あるいは、2つの聴覚装置が左側のつる15aおよび右側のつる15bにそれぞれ固定されてもよい。
【0014】
つる15a,15bは、フロントフレーム12から延びて形成されており、眼鏡10の使用者の頭部に接触する部材である。つる15a,15bは、テンプル16a,16bと、テンプル16a,16bに接続されたモダン18a,18bと、を有する。ここで、モダンは、使用時に使用者の頭部または耳あるいはその両方に当たり、眼鏡の端部を構成する部材である。本実施形態では、つる15aが有するモダン18aに聴覚装置11が固定されている。
【0015】
図2は、本実施形態に係る聴覚装置11の外観図である。聴覚装置11は、固定部20および骨伝導スピーカ30を備える。
【0016】
固定部20は、眼鏡10のモダン18aに固定されるように構成されており、骨伝導スピーカ30が設けられている。本実施形態に係る固定部20は、穴214を有する中空部材210と、中空部材210と結合しており骨伝導スピーカ30が搭載されている搭載部220とを備える。穴214は、モダン18aを挿入可能な大きさの開口部212を有する。中空部材210は、モダン18aが穴214に挿入されることにより、モダン18aに固定される。より詳細には、中空部材210は、開口部212から挿入されたモダン18aに穴214の内面が当接することにより、モダン18aに固定される。さらに詳細には、中空部材210は、モダン18aと穴214の内面との間に生じる摩擦力によりモダン18aに固定される。
【0017】
骨伝導スピーカ30は、骨伝導を利用して使用者に音響を知覚させるデバイスである。骨伝導では、振動を使用者に与えることで、その振動が使用者の頭部の骨を伝わって内耳に伝搬し、使用者に音響として知覚される。本実施形態では、各種の骨伝導に関する技術の中でも、軟骨伝導と呼ばれる、耳介の軟骨に振動を伝達することにより効率よく音響を提示する方式を採用した例について説明する。
【0018】
本実施形態に係る骨伝導スピーカ30は、筐体32、防水リング34および骨伝導部36を備える。筐体32の内部において生成された振動が骨伝導部36を通じて眼鏡10の使用者に伝達されることにより、使用者は音声を知覚できる。本実施形態では、筐体32と骨伝導部36との間に防水リング34が設けられているため、たとえば使用者の汗などの水が筐体32に侵入することが抑制される。
【0019】
図3は、本実施形態に係る聴覚装置11の断面図である。図3に示すように、本実施形態に係る聴覚装置11は、外部の信号生成部40に電気的に接続されている。信号生成部40は、各種の公知のマイクなどの音響を電気信号に変換できる装置を有してよい。より詳細には、信号生成部40は、周囲の音響に基づき音響電気信号を生成し、その音響電気信号を骨伝導スピーカ30に再生させる回路を有してよい。また、信号生成部40は、必要に応じて、CPU(Central Processing Unit)などの演算処理装置、およびROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などの記憶装置を備えてよい。
【0020】
本実施形態に係る聴覚装置11では、中空部材210が有する穴214に眼鏡のモダン18aを挿入し、穴214の内面216がモダン18aに当接すると、内面216とモダン18aとの間に生じる摩擦力によって聴覚装置11がモダン18aに固定される。このとき、穴214に挿入されるモダン18aの長さや向きを調節することにより、使用者が骨伝導による音響をより適切に知覚できるように、聴覚装置11の位置や向きを調整できる。また、中空部材210をたとえば穴214の中心軸を中心に回転させることにより骨伝導スピーカ30の位置を調整することも可能である。なお、本実施形態では、穴214は、中空部材210を貫通するように構成されているが、穴は一端が閉じるように構成されて良い。
【0021】
穴214の内面216は、高い静止摩擦係数をもつ材料(たとえば、樹脂など)で構成されていることが好ましい。これにより、中空部材210は、より強く眼鏡10のモダン18aに固定できるようになる。この結果、たとえば使用者が眼鏡を掛ける動作などによって骨伝導スピーカ30の位置が適切な位置からずれることが抑制される。
【0022】
また、中空部材210は、変形可能な材料で構成されていてもよい。これにより、中空部材210の穴214の形状を柔軟に変形させることが可能となり、中空部材210を多様な形状の眼鏡のモダンを固定することが可能となる。
【0023】
本実施形態に係る骨伝導スピーカ30は、筐体32、振動生成部310、伝達抑制部312、振動伝達部33、防水リング34および骨伝導部36を備える。
【0024】
筐体32は、振動生成部310を収容する収容部322と、収容部322に嵌合された蓋部324とを備える。蓋部324は、振動伝達部33が通過可能な大きさを有する孔を有する。
【0025】
振動生成部310は、音響電気信号に基づく振動(具体的には、機械的振動)を生成できる。本実施形態に係る振動生成部310は、配線42を通じて信号生成部40に電気的に接続されており、信号生成部40により生成された音響電気信号を取得して、その音響電気信号に基づいて振動を生成できる。振動生成部310が振動を生成する方法は各種の公知の方法であってよく、たとえば、圧電式および電磁式などを利用した方法であって良い。振動生成部310は、生成した振動を骨伝導部36に伝達できる。
【0026】
本実施形態では、振動生成部310により生成された振動は、振動伝達部33を通じて骨伝導部36に伝達される。このように本実施形態では、使用者の耳介の裏側に接触させる構成を主として骨伝導部36とすることができるため、耳介の裏側に配置される構成を小さくすることができ、頭部と耳介の裏側との間に大きな筐体32が邪魔にならないようにすることができる。
【0027】
振動伝達部33は、たとえば金属などの材料により構成されてよい。振動伝達部33は、振動生成部310と骨伝導部36とを接続し、振動生成部310により生成された振動を骨伝導部36に伝達する。本実施形態に係る振動伝達部33は、振動生成部310に結合した平板部332と、平板部332と結合しており筐体32の外側に突出している突出部334とを備える。突出部334は、平板部332から蓋部324の孔を通過して、骨伝導部36に伸びるように構成されている。平板部332は、振動生成部310により生成された振動を受ける。その振動は、突出部334を通じて、骨伝導部36に伝達される。
【0028】
骨伝導部36は、振動を眼鏡10の使用者に骨伝導により伝達する。骨伝導部36は、表面が内側(すなわち、振動伝達部33が配置されている側)に湾曲した板状の形状を有してよい。これにより、骨伝導部36が、より使用者の頭部の形状に適合し易くなる。
【0029】
また、骨伝導部36は、たとえば形状記憶樹脂などにより構成されてよい。具体的には、骨伝導部36の全体が形状記憶樹脂で構成されてよいし、あるいは、その表面が形状記憶樹脂で構成され、その内部が他の材料で構成されてよい。形状記憶樹脂は、人の体温程度の温度で変形可能となる樹脂である。形状記憶樹脂は、たとえば、ポリウレタン系形状記憶ポリマーなどであってよい。形状記憶樹脂は、人体から熱を受けることにより変形可能となり、使用者の頭部(たとえば、耳介の裏側など)に適合する形状に変形され得る。これにより、骨伝導部36が使用者の頭部に適合し易くなり、使用者に振動をより効率よく伝達することが可能となり、音響の聞こえ方が改善される。また、骨伝導部36が使用者の皮膚に接触する際の圧力が局所的に集中することが抑制されるため、聴覚装置11の使用による痛みを軽減することが可能となる。
【0030】
仮に骨伝導部36の位置が適切な位置からずれると、骨伝導部36が接触する耳介の位置が変わる。耳介の位置によって骨伝導部36の最適な形状は異なるため、骨伝導部36の位置が変わると、骨伝導部36の最適な形状が変わる。このため、骨伝導部36の位置が適切な位置からずれると、骨伝導部36の形状が、接触する耳介に応じた適切な形状でなくなる。その結果、使用者が骨伝導に基づく音響を知覚しにくくなったり、使用者に痛みが生じたりする可能性がある。骨伝導部36の形状が決まった形状であると、このような可能性が高くなるが、上述のように形状記憶樹脂を用いた板状の骨伝導部36であれば、骨伝導部36が接触する耳介の位置が変わったとしても、骨伝導部36の形状がその位置に適した形状に変化できるので、上述の可能性を低減できる。
【0031】
伝達抑制部312は、たとえばゴムなどにより構成されてよい。伝達抑制部312は、振動生成部310と中空部材210とを接続し、振動生成部310により生成された振動が中空部材210に伝達されることを抑制できる。これにより、振動生成部310が生成した振動を骨伝導部36に効率よく伝達することが可能になる。
【0032】
また、本実施形態では、筐体32の内部には隙間が形成されている。たとえば、振動生成部310と収容部322との間には、空間304が形成されている。これにより、振動生成部310により生成された振動が収容部322に伝達されることが抑制され、より効率よく骨伝導部36に振動を伝達することが可能となる。また、振動伝達部33と蓋部324との間には、空間304と連通する隙間306が形成されている。これにより、振動伝達部33から蓋部324に振動が伝達されることが抑制され、より効率よく骨伝導部36に振動を伝達することが可能となる。
【0033】
さらに、本実施形態では、突出部334と防水リング34との間に隙間308が形成されている。これにより、突出部334から防水リング34に振動が伝達されることが抑制され、より効率よく骨伝導部36に振動を伝達することが可能となる。
【0034】
本実施形態に係る聴覚装置11によれば、聴覚装置11を眼鏡のつる(より詳細には、モダン)に固定することで、眼鏡に骨伝導スピーカとしての機能をもたせることが可能となる。これにより、骨伝導スピーカ専用の構造体を耳に引っかけるなどの必要がなく、眼鏡をかける動作のみで、簡便に骨伝導スピーカを使用者の頭部に装着することが可能となる。
【0035】
また、本実施形態に係る聴覚装置11によれば、使用者は眼鏡を利用して骨伝導スピーカ30を装着できる。このため、骨伝導スピーカ30を装着するために必要な機構を少なくすることができ、外観に優れた聴覚装置11を提供でき、さらに、機構が壊れる可能性を低減することが可能となる。また、聴覚装置11は、眼鏡と一体となっているため、他者から聴覚装置を装着していることが見えづらくなる。
【0036】
さらに、骨伝導スピーカ30自体の小さな構造体で支えることで使用者に装着するのではなく、眼鏡の構造を利用して使用者に装着するため、使用者の頭部(たとえば、耳介など)に局所的に力が加わりにくくなるため、使用者に痛みが生じることが抑制される。
【0037】
[第2実施形態]
図4は、第2実施形態に係る眼鏡型聴覚装置50を示す図である。第2実施形態に係る眼鏡型聴覚装置50は、フロントフレーム52と、フロントフレーム52に接続されたつる53と、ノーズパッド54と、骨伝導スピーカ60と、を備える。
【0038】
つる53は、テンプル56およびテンプル56に接続されたモダン58を有する。本実施形態に係る眼鏡型聴覚装置50では、フロントフレーム52とテンプル56とは、ヒンジ55を通じて接続されている。本実施形態では、ヒンジ55は、テンプル56の長手方向にスライド可能に、テンプル56が有するレール562に設けられている。
【0039】
モダン58は、各種の樹脂により構成されてよく、たとえば熱可塑性樹脂あるいは使用者の力で変形可能な程度に柔らかい樹脂であってよい。本実施形態では、モダン58は、骨伝導スピーカ60を備えている。本実施形態に係る骨伝導スピーカ60は、音響電気信号に基づいて振動を生成し、生成した振動を骨伝導により使用者に伝達するスピーカである。
【0040】
また、本実施形態に係るモダン58は、モダン58の長手方向に伸びた金属板を備えている。本実施形態では、金属板は、モダン58の内部に配置されているため、外部から見えないが、図4には、金属板が配置されている位置を破線で示している。
【0041】
図5は、本実施形態に係るヒンジ55の構成を示す図である。ヒンジ55は、スライド部552と、スライド部552に設けられた接続部554を備える。接続部554には孔556が設けられており、この孔556にはフロントフレーム52の端部が接続される。これによりヒンジ55とフロントフレーム52とが接続される。また、スライド部552には、孔558a、558bが設けられている。この孔558a、558bにネジを通してそのネジがレール562に固定されることにより、ヒンジ55はレール562に固定される。
【0042】
図6は、本実施形態に係るテンプル56が有するレール562の構成を示す図である。テンプル56は、その内部空間であるスライド空間564を有している。ヒンジ55のスライド部552がこのスライド空間564に嵌め込まれることにより、ヒンジ55がテンプル56にスライド可能に設けられる。
【0043】
図7は、本実施形態に係るモダン58の断面を示す図である。図7では、骨伝導スピーカ60を省略してモダン58の断面を示している。図7に示すように、金属板57は、モダン58の内部において、つる53(より詳細にはモダン58)の長手方向に沿って配置されている。また、金属板57の少なくとも一部は、モダン58において骨伝導スピーカ60よりも前方(フロントフレーム側)に位置する。
【0044】
本実施形態に係る金属板57は、骨伝導スピーカを囲む包囲部572と、その包囲部572に接続されており、モダン58の長手方向に伸びた変形部574とを備える。変形部574は、骨伝導スピーカが配置される位置よりもフロントフレーム側に設けられている。使用者は、金属板57を変形させることにより、モダン58の形状を変形させることができる。より具体的には、使用者は、変形部574をねじったり折り曲げたりすることにより、モダン58を変形させることができる。
【0045】
本実施形態に係る金属板57は、板状の形状を有している。このため、金属板57は、円柱状の形状である場合には難しい軸の周方向にねじられるような変形も可能である。このため、使用者は、モダン58の長手方向の軸を中心に金属板57を回転させて、金属板57をねじることができる。これにより、使用者は、モダン58が備える骨伝導スピーカ60の位置をより適切にすることができる。
【0046】
本実施形態では、金属板57は、骨伝導スピーカ60の少なくとも一部を挿入可能な大きさの孔576を有する。骨伝導スピーカ60の一部は、この孔576の内部に設けられる。このように骨伝導スピーカ60が配置されることにより、骨伝導スピーカ60の周囲に金属板57が設けられている場合であっても、モダン58が厚くなりすぎることを抑制できる。モダン58が耳介の裏側で邪魔にならないようにできる。
【0047】
また、本実施形態では、モダン58は、骨伝導スピーカ60の孔576を囲む包囲部572を有する。これにより、骨伝導スピーカ60の周囲において、モダン58の剛性が高められる。この結果、より確実に骨伝導スピーカ60の位置が固定されるため、骨伝導スピーカ60の音声の聞きやすさが向上する。
【0048】
図8は、本実施形態に係る骨伝導スピーカ60の構成を示す図である。図8には、金属板57と、その孔576の内部に設けられた骨伝導スピーカ60と、が示されている。
【0049】
本実施形態に係る骨伝導スピーカ60は、主として、振動生成部61、振動板64およびバネ部68a,68bを備える。
【0050】
振動生成部61は、音響電気信号に基づいて振動を生成できる。振動生成部61は、この音響電気信号を、マイクなどの音響を電気信号に変換可能な外部装置(図示しない。)から取得してもよいし、眼鏡型聴覚装置50に内蔵された装置から取得してもよい。振動生成部61は、略直方体の形状を有し、その一面に凸部62を有している。
【0051】
本実施形態では、振動板64は、板状の形状を有し、振動生成部61の凸部62の表面に配置されている。振動板64は、振動生成部61により生成された振動を、眼鏡型聴覚装置50の使用者に骨伝導により伝達できる。具体的には、振動板64は、使用時に使用者の頭部(たとえば、耳介の裏側など)に当接し、使用者に振動を伝達する。これにより、使用者は、周囲の音響を知覚できる。
【0052】
本実施形態では、振動生成部61が有する面のうちの、モダン58の長手方向に沿った軸と略垂直な2つの面には、それぞれ凹状の接続部66a,66bが設けられている。これらの接続部66a,66bは、振動生成部61をバネ部68a,68bとそれぞれ接続している。
【0053】
本実施形態では、金属板57の孔576の内部には、振動生成部61により生成された振動がモダン58に伝達されることを抑制する伝達抑制部が設けられている。より具体的には、接続部66a,66bのそれぞれには、振動生成部61とモダン58とを接続するバネ部68a,68bが設けられている。これらのバネ部68a,68bは、振動生成部61により生成された振動が、モダン58に伝達されることを抑制できる。このため、本実施形態では、振動生成部61により生成された振動が、振動板64に伝達され易くなる。
【0054】
本実施形態に係る眼鏡型聴覚装置50によれば、モダン58の内部に設けられた金属板57を変形させることにより、モダン58に設けられた骨伝導スピーカ60が使用者の頭部に当たる位置、強さおよび角度を調節できる。本実施形態に係る眼鏡型聴覚装置50によれば、使用者の個人の頭部の大きさあるいは骨格に合わせて、骨伝導スピーカ60の位置および角度を調節することが可能である。このため、様々な使用者が使用する場合にも、骨伝導スピーカ60の装着感と聞こえ方とを両立しつつ、これらを調節することができる。
【0055】
また、骨伝導スピーカ60が設けられている領域のモダン58は、簡単に変形しないよう、ある程度の剛性を有することが好ましい。たとえば、包囲部572がある程度の厚みを有することにより、骨伝導スピーカ60が設けられている領域のモダン58の剛性を高めることができる。包囲部572の厚みdは、たとえば、0.6mm以上であってよい。
【0056】
[第1変形例]
第1実施形態において眼鏡10および聴覚装置11の構成の一例を説明したが、これらの構成は、第1実施形態の構成に限定されるものではない。たとえば、より強固に聴覚装置を眼鏡に固定できるように、聴覚装置および眼鏡は、上述した眼鏡10および聴覚装置11の構成に加えて、さらに磁石をそれぞれ有してよい。具体的には、聴覚装置11の中空部材210の一部、より詳細には開口部212の近傍に磁石を設ける。一方、眼鏡10のつる15に関しては、聴覚装置11がつる15に固定されたときに聴覚装置11の開口部212が位置する場所の近傍に磁石を設ける。
【0057】
使用者は、聴覚装置を使用する際には、聴覚装置の中空部材210の穴に眼鏡のつる15を通し、聴覚装置の磁石とつるの磁石とを互いに結合させる。これにより、より強固に聴覚装置を眼鏡に固定させ、使用中に聴覚装置11がずれにくくなる。また、磁石を用いることにより眼鏡をカスタマイズでき、つるが任意の形状を有する場合であっても、より確実に聴覚装置をつるに固定することが可能となる。なお、使用者は、必要に応じて、聴覚装置を眼鏡から取り外すことも可能である。
【0058】
なお、眼鏡には、磁石に限らず、聴覚装置に設けられた磁石と磁気的に結合可能な各種の部材を設けてよい。たとえば、眼鏡は、磁石に代えて鉄などの磁石と磁気的に結合可能な材料を含む部品を有してよい。同様に、聴覚装置は、磁石に代えて、眼鏡に設けられる磁石と磁気的に結合可能な各種の部品(たとえば鉄などを含む部品)を有してよい。また、磁石などの部品は、脱着可能につるに設けられてよい。これにより、必要に応じて当該部品をつる15から取り外すことが可能となる。
【0059】
[第2変形例]
第1実施形態では、聴覚装置11の中空部材210が直接的に眼鏡10のつる15に固定される例を説明した。これに限らず、中空部材210にアダプタが設けられ、このアダプタを介して聴覚装置11が眼鏡10のつる15に固定されてよい。この場合、中空部材210に設けられたアダプタは、固定部として機能する。
【0060】
アダプタは、たとえば、中空部材210の穴214に挿入されることによって、中空部材210により支持されてよい。アダプタは、つる15が挿入される穴を有し、具体的には、中空部材210の穴214よりも小さい穴を有する。このため、アダプタを中空部材210に設けることにより、より細いつるに聴覚装置11を固定することが可能となる。また、アダプタの形状、位置および向きなどを工夫することにより、骨伝導の調整の自由度を向上させることができる。
【0061】
アダプタの穴は、中空部材210の穴214の中心からずれた位置にあってよい。たとえば、アダプタの穴は、中空部材210の穴214の中心よりも下側にずれた位置にあってよい。アダプタの穴が中空部材210の穴214の中心に位置する場合、聴覚装置11を眼鏡10に固定した状態で使用者が眼鏡10を装着すると、特に眼鏡10のつる15が細いとき、聴覚装置11によって眼鏡10のつる15が通常より高くなる。この結果、眼鏡10の安定性が低下する。アダプタの穴を中空部材210の穴214の中心よりも下側にずらすことにより、眼鏡10の装着時において、つる15の位置が高くなることを抑制し、装着時の快適性を向上させることができる。
【0062】
また、アダプタは、切れ込みを有してよい。具体的には、アダプタは、その穴の内周面からアダプタの外周面にわたって設けられた切れ込みを有してよい。これにより、アダプタは、切れ込みにおいて変形可能となる。このため、たとえばつる15の先端が太い場合であっても、より簡便にアダプタにつる15を挿入することが可能となる。
【0063】
また、アダプタの穴の向きは、中空部材210の穴214の空いた向きと同一であってもよいし、中空部材210の穴214の空いた向きから傾いた方向の向きであってよい。アダプタの穴の向きを中空部材210の穴214の空いた向きと異ならせることにより、骨伝導スピーカ30の角度を調整することが可能となる。
【0064】
また、アダプタの外表面あるいは、中空部材210の穴214の内表面は、蛇腹の形状を有してよい。これにより、アダプタを中空部材210に固定したあと、アダプタが中空部材210から意図せず抜けることを抑制できる。
【0065】
[第3変形例]
図9は、第3変形例に係る骨伝導スピーカ38の断面図である。図9では、図3に示す骨伝導スピーカ30の構成要素と実質的に同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。第3変形例に係る骨伝導スピーカ38は、主に、図3に示した突出部334に代えて緩和機構70(緩和部)を有する点で、第1実施形態に係る骨伝導スピーカ30と異なる。
【0066】
緩和機構70は、骨伝導部36が使用者と接触することによって使用者から所定の範囲の接触力を受けているとき、骨伝導部36が使用者から受ける接触力の固定部20の変位に伴う変化を緩和する。なお、変位は、並進移動による変位に限らず、回転移動による変位も含むものとする。
【0067】
本実施形態に係る緩和機構70は、一端が骨伝導部36に固定されており、他端が平板部307を介して振動生成部310に固定されている。第3変形例に係る骨伝導スピーカ38では、振動生成部310が生成した振動は、平板部307および緩和機構70を介して骨伝導部36に伝達される。したがって、平板部307および緩和機構70は、振動伝達部として機能する。
【0068】
緩和機構70は、弾性体と、弾性体を支持する支持部と、骨伝導部36が受ける力に応じた力を弾性体に伝達する力伝達部と、を有する。弾性体は、機械的なバネ特性を有する物体であればよく、たとえば、コイルバネ(圧縮コイルバネまたは引張コイルバネ)、板バネ、スポンジまたはフォーム材などであってよい。第3変形例では、図10を参照しながら、弾性体が圧縮コイルバネで構成されている例を説明する。
【0069】
弾性体は、力伝達部から力が伝達されていないとき、自然長から所定の方向に変形した状態で支持部により支持されている。ここで、所定の方向は、弾性体が縮む方向であってよいし、伸びる方向であってよい。弾性体は、骨伝導部36が所定の範囲の接触力を受けたことに応じて、この接触力に応じた力が力伝達部から伝達され、その力によって所定の方向にさらに変形する。弾性体の変形により、骨伝導部36が所定の範囲の接触力を受けたことに応じて、聴覚装置の変位による使用者に加わる接触力の増加を抑制できる。具体的には、聴覚装置が使用者に近づく方向に変位したとしても、弾性体の変位によって骨伝導部36の接触力が急速に増加することを抑制し、接触力を適切な範囲から外れにくくできる。
【0070】
骨伝導スピーカ38は、使用時において、使用者の耳介の裏側と後頭部との間の空間に配置されるが、この空間は狭いため、使用時にこの空間に配置される骨伝導スピーカ38のサイズは小さいことが好ましい。第3変形例では、緩和機構70は、振動生成部310と骨伝導部36とを接続するように配置されている。これにより、緩和機構70により骨伝導スピーカ38が大きくなりすぎることが抑制され、使用者が装着時に骨伝導スピーカ38の干渉によって不快に感じにくくなる。ただし、緩和機構70の配置は、これに限定されるものではない。緩和機構70は、たとえば伝達抑制部312に代えて、あるいは伝達抑制部312の一部を置き換えるように配置されてよいし、振動生成部310と伝達抑制部312との間に配置されてよい。
【0071】
図10は、第3変形例に係る緩和機構70の構成を示す断面図である。図10に示すように、緩和機構70は、バネ72、支持部74および力伝達部76を有する。
【0072】
力伝達部76は、骨伝導部36が受ける力に応じた力をバネ72に伝達する。力伝達部76は、柱体形状を有し、たとえば、円柱形状および角柱形状などを有してよい。力伝達部76は、その一端762が骨伝導部36に接続されており、その他端764がバネ72に接続されている。力伝達部76は、一端762を通じて骨伝導部36から接触力を受け、その接触力に応じた力を、他端764を通じてバネ72に伝達する。力伝達部76が骨伝導部36から受ける接触力は、骨伝導部36の変位に応じて変化する。たとえば、骨伝導部36が使用者に接触しているとき、骨伝導部36が使用者に近づく方向に変位すると、力伝達部76が骨伝導部36から受ける接触力は増加し、骨伝導部36が使用者から離れる方向に変位すると、力伝達部76から受ける接触力は減少する。
【0073】
支持部74は、バネ72を支持するものであり、具体的には、箱形の形状を有し、その内部空間742にバネ72を収容する。支持部74の底部744は、振動生成部310に固定されている平板部307に接続されている。また、支持部74の上面部746には開口部748が設けられており、力伝達部76は、その開口部748を通るように配置されている。なお、平板部307は、必ずしも設けられている必要はない。支持部74は、平板部307を介さずに、直接的に振動生成部310に固定されてよい。
【0074】
第3変形例に係るバネ72は、圧縮コイルバネで構成されている。バネ72は、力伝達部76から力が伝達されていないとき、自然長よりも圧縮された状態で支持部74により支持されている。また、バネ72は、骨伝導部36が所定の範囲の接触力を受けると、その接触力に応じた力が力伝達部76から伝達され、さらに圧縮されている。
【0075】
バネ72のばね定数は、特に限定されるものではないが、1N/mm以下であることが好ましく、たとえば0.1N/mmなどであってよい。ばね定数を1N/mm以下とすることにより、使用者が骨伝導部36から受ける接触力を、より確実に適切な範囲から外れることを抑制できる。
【0076】
また、バネ72は、そのばね定数が振動の周波数に応じて異なるように構成されてよい。具体的には、振動の周波数が所定値以上である場合には、振動の周波数が所定値よりも小さい場合よりもバネが硬くなる(すなわち、ばね定数が大きくなる)ように、バネ72が構成されてよい。当該所定値は、たとえば20Hzであってよい。人間が聞き取れる音の周波数は、20Hz以上といわれている。このため、振動の周波数が20Hz以上であるとき、振動の周波数が20Hz未満のときよりもばね定数が大きくなるようにバネを構成することにより、骨伝導スピーカ38の接触力が所望の範囲から外れることを抑制しつつ、必要な振動をより確実に使用者に伝えることが可能となる。
【0077】
バネ72は、力伝達部76から力を伝達されていないとき、図10に示すように、一端722が底部744に接した状態で支持部74に固定されており、他端724が支持部74の上面部746に接している。このとき、バネ72の長さLは、バネ72の自然長よりも短い。このため、バネ72には、バネ72の自然長と長さLの差分およびばね定数に応じた力F1[N]で圧縮された状態で、支持部74に収容されている。なお、バネ72の一端722は、底部744に固定されなくてよい。たとえば、底部744に孔を設け、その孔にバネ72を通し、バネ72の一端722を直接的に平板部307または振動生成部310などに接続してよい。
【0078】
バネ72は、バネ72を圧縮する方向の力を力伝達部76から受ける。その力がF1以下である場合には、バネ72はそれ以上伸びない。一方、バネ72が受ける力がF1を超える場合には、バネ72はその力により圧縮される。バネ72が受ける力がさらに大きくなり、ある力F2がバネ72にかかると、バネ72は、限界まで圧縮され、それ以上圧縮されなくなる。
【0079】
力F1と力F2の傾きは、たとえばバネ72のばね定数を変更することにより調整でき、たとえば、ばね定数が小さいほど、より広い変位量の範囲において、接触力を所望の範囲内にすることが可能となる。ただし、ばね定数が小さすぎると、音の伝達効率が悪くなるため、ある程度の大きさのばね定数をもつバネ72を用いることが好ましい。また、振動の周波数が高いほど、ばね定数が高いバネ72を用いることが好ましい。
【0080】
図11は、第3変形例に係る緩和機構70の機能を説明するための図である。図11には、第3変形例に係る緩和機構70を備える骨伝導スピーカ38について、固定部20の変位量と接触力との関係を実線で示し、緩和機構70を備えない骨伝導スピーカ(具体的には、図3を参照して説明した骨伝導スピーカ30)について、固定部20の変位量と接触力との関係を破線で示す。さらに、図11には、接触力がないときにバネが自然長になるように構成されている緩和機構を用いる場合について、変位量と接触力との関係を一点鎖線で示している。
【0081】
図11では、変位量が大きくなるほど固定部20が使用者に近づく方向に並進移動し、変位量がX1未満のときには骨伝導部36が使用者から離れており、変位量がX1のときに骨伝導部36が使用者に接触するものとする。また、縦軸には、接触力について、所望の範囲の下限および上限をFminおよびFmaxで示している。
【0082】
図11において破線で示されるように、緩和機構70を備えない骨伝導スピーカの場合、骨伝導部36が接触すると骨伝導部36が使用者に接触力を加えるようになり、さらに変位量が大きくなると、接触力の大きさは急速に増加する。変位量がX2になると、使用者に加わる接触力は、所望の範囲の下限Fminに達する。さらに変位量が大きくなり、変位量がX4を超えると、使用者に加わる接触力は、所望の範囲の上限Fmaxを超える。
【0083】
一方、実線で示されるように、緩和機構70を備える骨伝導スピーカ38の場合、骨伝導部36が使用者に接近し、変位量がX1になると、骨伝導部36が使用者に接触し、骨伝導部36が使用者に接触力を加えるようになる。骨伝導部36は、使用者から接触力を受け、緩和機構70の力伝達部76は、接触力に応じた力をバネ72に伝達する。さらに変位量が大きくなるにつれて、緩和機構70を備えない骨伝導スピーカと同様に、使用者に加わる接触力が増加する。これに伴い、バネ72に伝達される力は大きくなるが、バネ72に伝達される力がバネ72を圧縮できる程度の大きさでないとき、バネ72は変形しない。
【0084】
変位量がX2になると、使用者に加わる接触力の大きさがFminになる。さらに変位量が大きくなり、変位量がX3になると、接触力の大きさがF1に達し、バネ72には接触力F1に応じた力が伝達され、バネ72が圧縮されるようになる。バネ72が圧縮されることにより、変位量が大きくなることに伴う接触力の増加が抑制される。図11に示す例では、変位量がX3~X5の範囲にあり、接触力の大きさがF1~F2の範囲にあるとき、変位量の増加に伴う接触力の増加が抑制される。
【0085】
変位量がX5になり、接触力の大きさがF2になると、接触力に応じた力によってバネ72が限界まで圧縮され、接触力F2より大きな力をバネ72に加えても、それ以上バネ72が圧縮されないようになる。このため、さらに変位量が大きくなると、変位量の増加に伴い使用者に加わる力が急速に大きくなる。変位量がX6を超えると、使用者に加わる力が、所望の範囲の上限Fmaxを超える。
【0086】
接触力がないときにバネが自然長になるように緩和機構が構成されている場合には、図11において一点鎖線で示されるように、変位量がX1を超えると、変位量の増加に応じて接触力が緩やかに増加する。このとき、バネの圧縮により、接触力の増加が抑制される。変位量がX6を超えたX7となると、接触力が所望の範囲の下限Fminになる。
【0087】
骨伝導において、聞こえ方がよく、かつ長時間着用が負担にならない骨伝導スピーカの接触力は、0.1N~1.0N程度であることが適切であることが知られている。しかしながら、緩和機構を有しない骨伝導スピーカの場合、接触力が適切な範囲にあったとしても、わずかに聴覚装置が変位することによって、図11の破線に示すように、接触力が適切な範囲を逸脱する。その結果、音が聞こえない、もしくは骨伝導スピーカが接触している部分が痛くなってしまうという問題が生じ得る。
【0088】
第3変形例に係る骨伝導スピーカ38は、緩和機構70を有することにより、所定の範囲の接触力(図11に示す例では、F1~F2)が使用者に加わるとき、変位量の増加に伴う接触力の増加が抑制される。これにより、緩和機構がない場合には、接触力が所望の範囲になるときの変位量がX2~X4であるのに対し、緩和機構を有する変形例3に係る骨伝導スピーカ38では、接触力が所望の範囲になるときの変位量をX2~X6に拡大できる。このため、変形例3に係る骨伝導スピーカ38によれば、接触力が適切な範囲から外れることを抑制し、この結果、音声が聞こえなくなったり、骨伝導スピーカが接触している部分が痛くなったりすることを抑制できる。
【0089】
接触力がないときに自然長でバネが支持されるように緩和機構が構成される場合(図11に示す一点鎖線)には、接触力が所望の範囲の下限Fminよりも低くなる変位量の範囲が広くなりすぎることがある。これに対し、第3変形例に係る緩和機構70は、接触力がないときにバネ72が圧縮されるように、バネ72が支持部74に支持される。このため、第3変形例に係る緩和機構70によれば、接触力が生じるときのその傾きを大きくし、接触力を所望の範囲に簡便に高めることが可能となる。
【0090】
[第4変形例]
図12(a)~図12(c)は、第4変形例に係る緩和機構80の構成および動作を説明するための模式図である。第4変形例に係る緩和機構80は、主として、バネが引張コイルバネで構成されている点で、第3変形例に係る緩和機構70と異なる。図12(a)に示すように、第4変形例に係る緩和機構80は、バネ82a,82b、支持部84および力伝達部86を有する。
【0091】
支持部84は、バネ82a,82bを支持する。支持部84は、支柱840a,840b、第1支持部材842a,842bおよび第2支持部材844を有する。支柱840aおよび第1支持部材842aは、支柱840bおよび第1支持部材842bと実質的に同一の構成をそれぞれ有してよい。ここでは、主に支柱840aおよび第1支持部材842aについて説明し、支柱840bおよび第1支持部材842bの説明は適宜省略する。なお、図12(a)には、2セットのバネ82a,82b、支柱840a,840bおよび第1支持部材842a,842bを示しているが、バネ、支柱および第1支持部材のセットの数は、1つであってよいし、3つ以上であってよい。
【0092】
第1支持部材842aは、筐体(図12(a)には図示しない。)などに固定されており、バネ82の一端を支持する。支柱840aは、柱体形状を有し、たとえば円柱形状または角柱形状などを有してよい。支柱840aの一端は、第1支持部材842aに固定されている。支柱840aは、バネ82aの内部を貫通するように配置されている。これにより、バネ82aが支柱840aの伸びる方向に対して垂直な方向にずれることが抑制される。
【0093】
第2支持部材844は、バネ82a,82bの他端を支持する。第2支持部材844は、図3を参照して説明した振動生成部310の機能を有するように構成されてよいし、当該機能などを有する別に設けられた構成に固定されてよい。第4変形例では、第2支持部材844が振動生成部としての機能を有するものとする。第2支持部材844の表面には、骨伝導部88に固定された力伝達部86の端部が接触している。
【0094】
以下では、第2支持部材844が力伝達部86から力を受けていないときの第2支持部材844の位置を基準とし、そのときの第2支持部材844の変位量を0とする。第2支持部材844の変位量が0のとき、支柱840a,840bの他端は、第2支持部材844の表面に接している。また、このとき、第2支持部材844の骨伝導部88が配置されている側と反対側において、第2支持部材844から離れた位置に防振材89が配置されている。防振材89は、上述した伝達抑制部312と実質的に同一の構成を有してよい。
【0095】
第4変形例に係るバネ82aは、引張コイルバネで構成されている。バネ82aは、一端が第1支持部材842aに固定されており、他端が第2支持部材844に固定されている。バネ82aは、第2支持部材844の変位量が0のとき、その長さが自然長よりも長くなるように、第1支持部材842aおよび第2支持部材844に固定されている。このため、バネ82aには、その長さと自然長との差分およびばね定数に応じた力がかかり、バネ82aが引っ張られている。
【0096】
骨伝導部88は、第1実施形態に係る骨伝導部36と実質的に同一の構成を有してよい。力伝達部86は、柱体形状を有し、骨伝導部88の使用者に接触する第1の面880とは反対側の第2の面882に一端が固定されている。第4変形例では、第2支持部材844が振動生成部としての機能を有するため、第2支持部材844が生成した振動は、力伝達部86および骨伝導部88を介して使用者に伝達される。したがって、第4変形例では、力伝達部86は、振動伝達部としての機能も有する。
【0097】
骨伝導部88の第1の面880が使用者に接触して、第1の面880から第2の面882に向かう方向に使用者から接触力を受けると、力伝達部86は、接触力を利用して第2支持部材844を押す。第2支持部材844が押されることにより、バネ82a,82bには、第2支持部材844を通じて、接触力に応じた力が力伝達部86から伝達される。
【0098】
第2支持部材844を押す力が、第2支持部材844の変位量が0のときにバネ82a,82bが引っ張られる力よりも大きくなると、図12(b)に示すように、第2支持部材844は押される方向に変位する。これに伴い、第2支持部材844に固定されたバネ82a,82bが伸びる。さらに大きな力によって第2支持部材844が押されると、図12(c)に示すように、第2支持部材844は、防振材89に接触し、力伝達部86が押す方向に変位しないようになる。
【0099】
第4変形例では、図12(a)に示すように、第2支持部材844が変位していないとき、バネ82a,82bが自然長よりも伸びた状態で保持されている。第4変形例では、第2支持部材844にかかる力が、図12(a)に示す状態のバネ82a,82bが引っ張られる力より大きく、図12(c)に示す状態の第2支持部材844にかかる力以下であるとき、バネ82a,82bは伸縮できる。第2支持部材844にかかる力が、バネ82a,82bが伸縮できる範囲にあるとき、第3変形例と同様に、聴覚装置の変位に応じた使用者への接触力の増加を抑制できる。
【0100】
[第5変形例]
図13は、第5変形例に係る緩和機構81の構成を示す模式図である。図13では、図12(a)~図12(c)に示した構成要素と実質的に同一の構成を有する構成要素には同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。第5変形例は、主として、緩和機構81が支柱の代わりにストッパ部材を有する点で、第4変形例とは異なる。
【0101】
第5変形例に係る緩和機構81は、バネ82a,82b、支持部85および力伝達部86を有する。第5変形例に係る支持部85は、第1支持部材842a,842b、第2支持部材844およびストッパ部材846a,846bを有する。ストッパ部材846aは、ストッパ部材846bと実質的に同一の構成を有する。図13には、2セットのバネ82a,82b、第1支持部材842a,842bおよびストッパ部材846a,846bが示されているが、バネ、第1支持部材およびストッパ部材のセットの数は、1つであってよいし、3つ以上であってよい。
【0102】
ストッパ部材846a,846bは、第2支持部材844の変位を制限する。ストッパ部材846a,846bは、たとえば筐体(図13には図示しない。)に固定されている。ストッパ部材846a,846bは、第2支持部材844が力伝達部86から力を受けていないとき、第2支持部材844と接触し、第2支持部材844がバネ82a,82bに引っ張られる方向に変位することを制限する。このとき、バネ82a,82bは、自然長よりも長い状態で保持されている。
【0103】
第5変形例に係る緩和機構81によれば、第4変形例に係る緩和機構80と同様に、聴覚装置の変位に応じた接触力の増加を抑制できる。
【0104】
[第6変形例]
図14は、第6変形例に係る緩和機構83を説明するための断面図である。図14では、第5変形例において図13に示した構成要素と実質的に同一の構成を有する構成要素には同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0105】
図14に示すように、眼鏡のつるに固定される固定部25は、緩和機構83、振動生成部87および防振材89を収容されている。具体的には、固定部25は、つるが挿入される孔254を有する円筒部材250および円筒部材250に一体的に設けられた収容部252を有し、この収容部252が緩和機構83、振動生成部87および防振材89を収容する。振動生成部87は、上述の振動生成部310と同様の機能を有してよい。
【0106】
第6変形例に係る緩和機構83は、バネ82、支持部材843および力伝達部830を有する。第6変形例に係るバネ82は、引張コイルバネで構成されており、一端が支持部材843に固定されており、他端が力伝達部830に固定されている。バネ82は、力伝達部830で囲まれた空間838に配置されている。支持部材843は、たとえば収容部252に固定されてよい。なお、支持部材843は収容部252と別体で設けられていなくてよく、支持部材843および収容部252が一つの部品で構成されてよい。
【0107】
力伝達部830は、第1接続部832、第2接続部834および支持面836を有する。第1接続部832および第2接続部834は、骨伝導部88にそれぞれ接続され、支持面836にそれぞれ連結されている。支持面836は、バネ82の他端を支持し、支持部の一部として機能する。
【0108】
また、図14には図示していないが、力伝達部830の変位(具体的には、バネ82が圧縮される方向の変位)を抑制するストッパ部材が設けられている。力伝達部830は、骨伝導部88から力を受けていないとき、バネ82を自然長よりも伸びた状態で支持している。このとき、ストッパ部材は、バネ82の引っ張りによって力伝達部830が変位しないように、力伝達部830(たとえば支持面836)と接触している。
【0109】
骨伝導部88が使用者と接触し、所定の接触力が骨伝導部88に加わると、力伝達部830は、バネ82を伸ばすように、振動生成部87と一体となって変位する。接触力が大きくなり、振動生成部87が防振材89と接触すると、力伝達部830および振動生成部87は、バネ82が伸びる方向に変位しないようになる。力伝達部830および振動生成部87が変位可能な変位量の範囲において、バネ82の伸縮により、接触力が所望の範囲から外れることを抑制できる。
【0110】
[第7変形例]
第7変形例では、図3に示す構成要素に加えて、力センサおよびアクチュエータを有する骨伝導スピーカについて説明する。
【0111】
力センサは、各種の公知の力を計測可能なセンサで構成される。第7変形例に係る力センサは、骨伝導スピーカ30(より具体的には、骨伝導部36)に加わる力を計測する。力センサは、骨伝導部36から伝達抑制部312までの任意の位置に配置されてよく、たとえば、伝達抑制部312の周囲、あるいは伝達抑制部312の少なくとも一部を置き換えるように配置されてよい。力センサは、計測結果をアクチュエータに伝達する。
【0112】
アクチュエータは、力センサの計測結果に応じて、骨伝導スピーカ30(より具体的には、骨伝導部36)を駆動する。アクチュエータは、たとえば、ボールねじまたはパウチモータなどで構成されてよい。パウチモータは、たとえば、たとえば35℃程度の温度で気化する、チューブに封入された液体を有する。パウチモータは、この液体をヒータで加熱して気化させ、チューブを膨らませることによって動作する。アクチュエータは、たとえば、伝達抑制部312の周囲、あるいは伝達抑制部312の少なくとも一部を置き換えるように配置されてよい。
【0113】
アクチュエータは、骨伝導部36が使用者に加える力の大きさが所望の範囲の大きさになるように、骨伝導部36を駆動してよい。たとえば、アクチュエータは、力センサの計測結果に基づいて、骨伝導部36が使用者に加える力の大きさが所望の範囲(たとえば、0.1N~1.0N)から外れたことを検出した場合に、骨伝導部36が使用者に加える力の大きさが所望の範囲になるように、骨伝導部36を駆動してよい。これにより、音が聞き取りにくくなったり、使用者が痛みを感じたりすることを抑制できる。
【0114】
[第8変形例]
図15(a)~図15(c)を参照しながら、第8変形例に係る骨伝導部90の構成を説明する。図15(a)は、第8変形例に係る骨伝導部90の正面図であり、図15(b)は、図15(a)のA-A断面図であり、図15(c)は、第8変形例に係る骨伝導部90の背面図である。図15(a)~図15(c)に示す骨伝導部90は、使用者の右耳に接触するものである。
【0115】
図15(a)および図15(b)に示すように、骨伝導部90の正面900(耳介に接触する面)は、主として曲面で形成されている。具体的には、正面900の中央領域902は、内側に凹むように構成されており、丸みを帯びた端部領域904に接続されている。正面900の曲面の曲率半径は、特に限定されるものではないが、0.5mm~100mmであることが好ましい。中央領域902の曲率半径は、端部領域904の曲率半径よりも大きい。
【0116】
使用者の耳介の裏側は、曲面および凹凸をもつ。このため、骨伝導部が平板で構成されていると、骨伝導部と耳介の裏側との接触面積が小さい。この結果、骨伝導部が接触する領域に応力が集中し、痛みが生じるという問題があった。
【0117】
これに対して、第8変形例に係る骨伝導部90によれば、中央領域902が内側に凹む曲面で構成されているため、使用時に骨伝導部90と耳介の裏側との接触面積を大きくすることができる。この結果、応力が集中することを抑制し、使用者に痛みが生じることを抑制できる。応力の集中を抑制するうえで、中央領域902は、100mm以下の曲率半径を有することが好ましく、端部領域904は、0.5mm以上の曲率半径を有することが好ましい。
【0118】
このように、骨伝導部90の正面900の曲率半径が0.5mm~100mmであることにより、骨伝導部が平板である場合と比べて骨伝導部90と耳介との接触面積を大きくし、応力の集中を抑制できる。また、正面900の曲率半径をこのような範囲にすることにより、骨伝導部90の形状を様々な体格の耳介の形状に適合させ、効率よく音を使用者に伝えることが可能となる。
【0119】
また、図15(a)に示すように、骨伝導部90は、正面視した場合に、左右非対称となるように構成されてよい。具体的には、左右の一方に突出部906が形成されることによって、骨伝導部90が左右非対称に構成されてよい。これにより、使用者の耳の形状に応じて、より確実に、正面900の形状を耳の形状に適合させることが可能となる。
【0120】
図15(c)に示すように、骨伝導部90の裏面920は、中央に平面部922、辺縁に曲面部924を有する。裏面920は、通常、耳に接触しないため、主として平面部922を有してよい。また、骨伝導部90を振動生成部に接続するために、裏面920(たとえば平面部922)には、骨伝導部90と振動生成部とを接続する振動伝達部を設けるための穴が形成されてよい。
【0121】
[補足]
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素の組合せに様々な変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。上述の各実施形態および各変形例の組み合わせ、および上述の各実施形態や各変形例と以下の変形との組合せによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる実施形態、変形例および変形それぞれの効果をあわせもつ。
【0122】
上記実施形態では、振動伝達部と振動生成部とが別体である例について説明した。これに限らず、振動伝達部と振動生成部とが一体で構成されてもよい。すなわち、振動を生成する部材が、骨伝導により直接振動を使用者に伝達してよい。
【0123】
第1実施形態では、つる15a(より詳細にはモダン18)が固定部20の穴214の内面に当接することにより、固定部20がつる15aに固定される例について説明した。これに限らず、穴214の内面には各種の部材が配置されてよく、つる15aが穴214の内面に配置された部材に当接することにより、固定部20がつる15aに固定されてよい。たとえば固定部の穴の断面形状が円形であり、たとえば120°ごとに穴の内面にゴムの突起が3カ所に設けられ、つるがこれらの突起と接触することにより、固定部がつるに固定されてもよい。
【0124】
また、第2実施形態において説明した金属板57を有するモダンを備えた眼鏡に、第1実施形態において説明した聴覚装置11を脱着可能に固定してもよい。これにより、使用者は、モダンを変形させることにより骨伝導スピーカの位置および角度などを調節できる。さらに、使用者は、聴覚装置の固定部の位置および向きを調整することにより、より適切に骨伝導スピーカの位置および角度などを調節できる。
【0125】
また、第2実施形態では、主としてモダン58に金属板が設けられる例について説明したが、これに限らず、テンプル56に金属板が設けられてもよいし、モダン58およびテンプル56に金属板が設けられてもよい。
【0126】
また、上記実施形態では、周囲の音響に基づく音響電気信号を生成する装置(たとえば信号生成部40)が聴覚装置の外部に設けられる例について説明したが、これに限らず、音響電気信号を生成する装置は、聴覚装置の一部として設けられてよい。
【符号の説明】
【0127】
1 眼鏡型聴覚装置、 10,50 眼鏡、 11 聴覚装置、 15,53 つる、 16,56 テンプル、 18,58 モダン、 20 固定部、 30,60 骨伝導スピーカ、 33 振動伝達部、 34 防水リング、 36 骨伝導部、 40 信号生成部、 57 金属板、 61,310 振動生成部、64 振動板、68 バネ部、70,80,81 緩和機構、72,82 バネ、74,84 支持部、76,86 力伝達部、210 中空部材、 212 開口部、 214 穴、 216 内面、 220 搭載部、322 収容部、 572 包囲部、 574 変形部
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