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特開2023-54868較正装置、変換装置、較正方法、および較正プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023054868
(43)【公開日】2023-04-17
(54)【発明の名称】較正装置、変換装置、較正方法、および較正プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01R 23/165 20060101AFI20230410BHJP
   H03M 1/12 20060101ALI20230410BHJP
   G01R 35/00 20060101ALI20230410BHJP
【FI】
G01R23/165 B
H03M1/12 C
G01R35/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021163815
(22)【出願日】2021-10-05
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年6月7日に、ウェブサイト(アドレス:https://ieeexplore.ieee.org/document/9447940)にて、IEEE Transactions on Circuits and Systems I:Regular PapersのEarly Accessの一部として、Modulated Wideband Converterの補償に関する研究について公開(論文名:「High-Precision Sub-Nyquist Sampling System Based on Modulated Wideband Converter for Communication Device Testing」)。
(71)【出願人】
【識別番号】390005175
【氏名又は名称】株式会社アドバンテスト
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅見 幸司
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 哲也
(72)【発明者】
【氏名】ゾルボー ビャムバドルジ
【テーマコード(参考)】
5J022
【Fターム(参考)】
5J022AA01
5J022BA01
(57)【要約】
【解決手段】入力信号に複数の信号パターンのそれぞれを乗じて帯域制限することにより複数のバンドパス信号のそれぞれを得て、複数のバンドパス信号から入力信号に応じた出力信号を再構成する変換器に対して、複数の周波数帯域にトーンを有するマルチトーン信号を較正用入力信号として供給する較正用信号供給部と、マルチトーン信号に応じて変換器により得られる複数の較正用バンドパス信号を取得する較正用バンドパス信号取得部と、複数の較正用バンドパス信号に基づいて、変換器における再構成のパラメータを較正する較正処理部とを備える較正装置を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号に複数の信号パターンのそれぞれを乗じて帯域制限することにより複数のバンドパス信号のそれぞれを得て、前記複数のバンドパス信号から入力信号に応じた出力信号を再構成する変換器に対して、複数の周波数にトーンを有するマルチトーン信号を較正用入力信号として供給する較正用信号供給部と、
前記較正用入力信号に応じて前記変換器により得られる複数の較正用バンドパス信号を取得する較正用バンドパス信号取得部と、
前記複数の較正用バンドパス信号のそれぞれに基づいて、前記複数のバンドパス信号のそれぞれを補正する補正フィルタを較正する較正処理部と
を備える較正装置。
【請求項2】
前記較正用入力信号は、前記複数の信号パターンの繰り返し周波数の整数倍の周波数を中心周波数とし、前記繰り返し周波数の幅を有する周波数スロットの中に、前記中心周波数に対して非対称に配置された前記複数の周波数のそれぞれにトーンを有する請求項1に記載の較正装置。
【請求項3】
前記較正用入力信号の各トーンは、前記中心周波数を中心として当該トーンの周波数と対称な周波数に前記較正用入力信号の他のトーンが存在しない周波数を有する請求項2に記載の較正装置。
【請求項4】
前記較正用入力信号の各トーンは、前記周波数スロットの中に、予め定められた周波数間隔で配置される請求項2または3に記載の較正装置。
【請求項5】
前記較正用入力信号の各トーンは、同じ信号強度を有する請求項2から4のいずれか一項に記載の較正装置。
【請求項6】
前記較正処理部は、
第1の前記較正用バンドパス信号における一の周波数スロット内に含まれる複数のトーン間での信号強度の変化に応じて、当該一の周波数スロット内における、前記第1の較正用入力信号から前記第1の較正用バンドパス信号を得るまでのパスの少なくとも一部における周波数特性を推定し、
前記第1の較正用バンドパス信号を補正する前記補正フィルタを、前記一の周波数スロット内において前記周波数特性の逆特性に応じた特性に較正する
請求項2から5のいずれか一項に記載の較正装置。
【請求項7】
前記較正処理部は、前記第1の較正用バンドパス信号を補正する前記補正フィルタを較正して、前記帯域制限のカットオフ周波数までの各周波数スロットについて、当該周波数スロットにおける前記周波数特性の逆特性に応じた特性とする請求項6に記載の較正装置。
【請求項8】
前記較正処理部は、前記第1の較正用バンドパス信号における隣接する第1の周波数スロットおよび第2の周波数スロットの間の境界において、前記第1の周波数スロット側の前記パスの周波数特性と、前記第2の周波数スロット側の前記パスの周波数特性とを近付ける調整を行なう請求項6または7に記載の較正装置。
【請求項9】
入力信号に複数の信号パターンのそれぞれを乗じて帯域制限することにより複数のバンドパス信号のそれぞれを得て、前記複数のバンドパス信号から入力信号に応じた出力信号を再構成する変換器と、
請求項1から8のいずれか一項に記載の較正装置と
を備える変換装置。
【請求項10】
前記変換器は、
前記入力信号に複数の信号パターンのそれぞれを乗じる複数のミキサと、
前記複数のミキサが出力する複数の信号のそれぞれを帯域制限する複数のバンドパスフィルタと、
前記複数のバンドパスフィルタを通過した信号をそれぞれサンプリングした前記複数のバンドパス信号を出力する複数のAD変換器と、
前記複数のバンドパス信号をそれぞれ補正した複数の補正バンドパス信号を出力する複数の補正フィルタ部と、
前記複数の補正バンドパス信号から前記出力信号を再構成する再構成部と
を有する請求項9に記載の変換装置。
【請求項11】
前記複数の補正フィルタ部のそれぞれは、
前記複数のバンドパス信号のうち当該補正フィルタ部に入力されるバンドパス信号を低域濾波するローパスフィルタと、
前記ローパスフィルタを通過したバンドパス信号を補正する補正フィルタと
を有する請求項10に記載の変換装置。
【請求項12】
入力信号に複数の信号パターンのそれぞれを乗じて帯域制限することにより複数のバンドパス信号のそれぞれを得て、前記複数のバンドパス信号から入力信号に応じた出力信号を再構成する変換器に対して、複数の周波数にトーンを有するマルチトーン信号を較正用入力信号として供給し、
前記較正用入力信号に応じて前記変換器により得られる複数の較正用バンドパス信号を取得し、
前記複数の較正用バンドパス信号のそれぞれに基づいて、前記複数のバンドパス信号のそれぞれを補正する補正フィルタを較正する
較正方法。
【請求項13】
コンピュータにより実行され、前記コンピュータを、
入力信号に複数の信号パターンのそれぞれを乗じて帯域制限することにより複数のバンドパス信号のそれぞれを得て、前記複数のバンドパス信号から入力信号に応じた出力信号を再構成する変換器に対して、複数の周波数にトーンを有するマルチトーン信号を較正用入力信号として供給する較正用信号供給部と、
前記較正用入力信号に応じて前記変換器により得られる複数の較正用バンドパス信号を取得する較正用バンドパス信号取得部と、
前記複数の較正用バンドパス信号のそれぞれに基づいて、前記複数のバンドパス信号のそれぞれを補正する補正フィルタを較正する較正処理部と
して機能させる較正プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、較正装置、変換装置、較正方法、および較正プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮センシングは、広い周波数帯域中にスパースに存在する狭帯域信号をサンプリングする技術である。圧縮センシングを行う変換器として、モジュレーテッド・ワイドバンド・コンバータ(MWC:Modulated Wideband Converter)が知られている(非特許文献1~2)。MWCは、狭帯域信号がスパースに存在する広帯域の入力信号に複数の周期符号関数(PSF:Periodic Sign Function)をそれぞれ乗じてサンプリングした複数の信号を用いて元の入力信号を再構成する。非特許文献3~8は、このようなMWCを較正(キャリブレーション)する技術を開示する。非特許文献10~12は、理想的でないローパスフィルタを用いた場合にMWCによる信号の再構成能力が劣化することを示す。非特許文献13~17は、ローパスフィルタの周波数特性を補正する技術を開示する。
[先行技術文献]
[非特許文献]
[非特許文献1]Mishali and Y. C. Eldar,「From theory to practice: Sub-nyquist sampling of sparse wideband analog signals」,IEEE Journal of Selected Topics in Signal Processing,vol. 4,no. 2,pp. 375-391,April 2010
[非特許文献2]D. L. Donoho,「Compressed sensing」,in IEEE Transactions on Information Theory,vol. 52,no. 4,pp. 1289-1306,April 2006
[非特許文献3]Peng Wang,Fei You, and Songbai He,「An Improved Signal Reconstruction of Modulated Wideband Converter Using a Sensing Matrix Built upon Synchronized Modulated Signals」,Circuits Syst. Signal Process. 38,7,July 2019
[非特許文献4]J. Park,J. Jang and H. Lee,「A calibration for the modulated wideband converter using sinusoids with unknown phases」,2017 Ninth International Conference on Ubiquitous and Future Networks(ICUFN),Milan,2017,pp. 951-955
[非特許文献5]L. Chen, J. Jin and Y. Gu,「A calibration system and perturbation analysis for the Modulated Wideband Converter」,IEEE 10th INTERNATIONAL CONFERENCE ON SIGNAL PROCESSING PROCEEDINGS,Beijing,2010,pp. 78-81
[非特許文献6]Liu, Weisong et al.,「Design of a Single Channel Modulated Wideband Converter for Wideband Spectrum Sensing: Theory, Architecture and Hardware Implementation」,Sensors(Basel, Switzerland) vol. 17,5 1035.4 May. 2017
[非特許文献7]E. Israeli et al.,「Hardware calibration of the modulated wideband converter」,2014 IEEE Global Communications Conference,Austin,TX,2014,pp. 948-953
[非特許文献8]N. Fu,S. Jiang,L. Deng and L. Qiao,「Successive-phase correction calibration method for modulated wideband converter system」,in IET Signal Processing,vol. 13,no. 6,pp. 624-632,8 2019
[非特許文献9]S. Boyd,「Multitone signals with low crest factor」,IEEE Trans. Circuits Syst.,vol. CAS-33,no. 10,pp. 1018-1022,Oct. 1986
[非特許文献10]J. Zhang,N. Fu,W. Yu,and X. Peng,「Analysis of non-idealities of low-pass filter in random demodulator」,Proc. SPIE,vol. 8759,01 2013
[非特許文献11]P. J. Pankiewicz,T. Arildsen,and T. Larsen,「Sensitivity of the random demodulation framework to filter tolerances」, in 2011 19th European Signal Processing Conference,2011,pp. 534-538
[非特許文献12]S. Smaili and Y. Massoud,「Accurate and efficient modeling of random demodulation based compressive sensing systems with a general filter」,in 2014 IEEE International Symposium on Circuits and Systems(ISCAS),2014,pp. 2519-2522
[非特許文献13]Zhao Yijiu,Long Ling,Zhuang Xiaoyan,and Dai Zhijian,「Model calibration for compressive sampling system with non-ideal lowpass filter」,in 2015 12th IEEE International Conference on Electronic Measurement Instruments (ICEMI),vol. 02,July 2015,pp. 808-812
[非特許文献14]Y. Zhao,H. Wang,and Z. Dai,「Model calibration of non-ideal lowpass filter in modulated wideband converter for compressive sampling」,Compel-the International Journal for Computation and Mathematics in Electrical and Electronic Engineering,vol. 34,pp. 941-951,2015
[非特許文献15]Y. Chen,M. Mishali,Y. C. Eldar,and A. O. Hero,「Modulated wideband converter with non-ideal lowpass filters」,in 2010 IEEE International Conference on Acoustics,Speech and Signal Processing,2010,pp.3630-3633
[非特許文献16]L.-L. Nguyen,R. Gautier,A. Fiche,G. Burel,and E. Radoi,「Digital compensation of lowpass filters imperfection in the modulated wideband converter compressed sensing scheme for radio frequency monitoring」,Signal Processing,vol. 152,pp. 292-310,2018,[Online]http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0165168418302081
[非特許文献17]L. Nguyen,A. Fiche,R. Gautier,C. Canaff,E. Radoi,and G. Burel,「Implementation of modulated wideband converter compressed sensing scheme based on cots lowpass filter with amplitude and phase compensation for spectrum monitoring」,in 2018 15th IEEE International Conference on Advanced Video and Signal Based Surveillance (AVSS),2018,pp. 1-6
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の態様においては、較正装置を提供する。較正装置は、入力信号に複数の信号パターンのそれぞれを乗じて帯域制限することにより複数のバンドパス信号のそれぞれを得て、複数のバンドパス信号から入力信号に応じた出力信号を再構成する変換器に対して、複数の周波数にトーンを有するマルチトーン信号を較正用入力信号として供給する較正用信号供給部を備えてよい。較正装置は、較正用入力信号に応じて変換器により得られる複数の較正用バンドパス信号を取得する較正用バンドパス信号取得部を備えてよい。較正装置は、複数の較正用バンドパス信号のそれぞれに基づいて、複数のバンドパス信号のそれぞれを補正する補正フィルタを較正する較正処理部を備えてよい。
【0004】
較正用入力信号は、複数の信号パターンの繰り返し周波数の整数倍の周波数を中心周波数とし、繰り返し周波数の幅を有する周波数スロットの中に、中心周波数に対して非対称に配置された複数の周波数のそれぞれにトーンを有してよい。
【0005】
較正用入力信号の各トーンは、中心周波数を中心として当該トーンの周波数と対称な周波数に較正用入力信号の他のトーンが存在しない周波数を有してよい。
【0006】
較正用入力信号の各トーンは、周波数スロットの中に、予め定められた周波数間隔で配置されてよい。
【0007】
較正用入力信号の各トーンは、同じ信号強度を有してよい。
【0008】
較正処理部は、第1の較正用バンドパス信号における一の周波数スロット内に含まれる複数のトーン間での信号強度の変化に応じて、当該一の周波数スロット内における、較正用入力信号から第1の較正用バンドパス信号を得るまでのパスの少なくとも一部における周波数特性を推定してよい。
【0009】
較正処理部は、第1の較正用バンドパス信号を補正する補正フィルタを、一の周波数スロット内において周波数特性の逆特性に応じた特性に較正してよい。
【0010】
較正処理部は、第1の較正用バンドパス信号を補正する補正フィルタを較正して、帯域制限のカットオフ周波数までの各周波数スロットについて、当該周波数スロットにおける周波数特性の逆特性に応じた特性としてよい。
【0011】
較正処理部は、第1の較正用バンドパス信号における隣接する第1の周波数スロットおよび第2の周波数スロットの間の境界において、第1の周波数スロット側のパスの周波数特性と、第2の周波数スロット側のパスの周波数特性とを近付ける調整を行なってよい。
【0012】
本発明の第2の態様においては、変換装置を提供する。変換装置は、入力信号に複数の信号パターンのそれぞれを乗じて帯域制限することにより複数のバンドパス信号のそれぞれを得て、複数のバンドパス信号から入力信号に応じた出力信号を再構成する変換器を備えてよい。変換装置は、較正装置を備えてよい。
【0013】
変換器は、入力信号に複数の信号パターンのそれぞれを乗じる複数のミキサを有してよい。変換器は、複数のミキサが出力する複数の信号のそれぞれを帯域制限する複数のバンドパスフィルタを有してよい。変換器は、複数のバンドパスフィルタを通過した信号をそれぞれサンプリングした複数のバンドパス信号を出力する複数のAD変換器を有してよい。変換器は、複数のバンドパス信号をそれぞれ補正した複数の補正バンドパス信号を出力する複数の補正フィルタ部を有してよい。変換器は、複数の補正バンドパス信号から出力信号を再構成する再構成部を有してよい。
【0014】
複数の補正フィルタ部のそれぞれは、複数のバンドパス信号のうち当該補正フィルタ部に入力されるバンドパス信号を低域濾波するローパスフィルタを有してよい。複数の補正フィルタ部のそれぞれは、ローパスフィルタを通過したバンドパス信号を補正する補正フィルタを有してよい。
【0015】
本発明の第3の態様においては、較正方法を提供する。較正方法においては、入力信号に複数の信号パターンのそれぞれを乗じて帯域制限することにより複数のバンドパス信号のそれぞれを得て、複数のバンドパス信号から入力信号に応じた出力信号を再構成する変換器に対して、複数の周波数にトーンを有するマルチトーン信号を較正用入力信号として供給してよい。較正方法においては、較正用入力信号に応じて変換器により得られる複数の較正用バンドパス信号を取得してよい。較正方法においては、複数の較正用バンドパス信号のそれぞれに基づいて、複数のバンドパス信号のそれぞれを補正する補正フィルタを較正してよい。
【0016】
本発明の第4の態様においては、コンピュータにより実行される較正プログラムを提供する。較正プログラムは、コンピュータを、入力信号に複数の信号パターンのそれぞれを乗じて帯域制限することにより複数のバンドパス信号のそれぞれを得て、複数のバンドパス信号から入力信号に応じた出力信号を再構成する変換器に対して、複数の周波数にトーンを有するマルチトーン信号を較正用入力信号として供給する較正用信号供給部として機能させてよい。較正プログラムは、コンピュータを、較正用入力信号に応じて変換器により得られる複数の較正用バンドパス信号を取得する較正用バンドパス信号取得部として機能させてよい。較正プログラムは、コンピュータを、複数の較正用バンドパス信号のそれぞれに基づいて、複数のバンドパス信号のそれぞれを補正する補正フィルタを較正する較正処理部として機能させてよい。
【0017】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態に係る変換装置の構成を示す。
図2】本実施形態に係る変換装置のサンプリングフローの一例を示す。
図3】周波数領域における入力信号X(f)の波形の一例を示す。
図4】周波数領域における信号パターンP(f)の波形の一例を示す。
図5】周波数領域における、入力信号および信号パターンP(f)を乗じた信号Yp(f)の波形の一例を示す。
図6】周波数領域における、入力信号および信号パターンを乗じた信号を帯域制限したバンドパス信号Y(f)の波形の一例を示す。
図7】周波数領域における、バンドパス信号Y(f)から再構成した出力信号Xo(f)の波形の一例を示す。
図8】本実施形態に係る変換装置の較正フローの一例を示す。
図9】周波数領域における、較正用入力信号Xcal(f)および信号パターンP(f)を乗じた信号Yp(f)の波形の一例を示す。
図10】本実施形態に係る較正用信号供給部の構成を示す。
図11】本実施形態に係る構成処理部の構成を示す。
図12】ローパスフィルタの理想の周波数特性および実際の周波数特性の例を示す。
図13】マルチトーン信号を再構成した出力信号に生じる不要なイメージの例を示す。
図14】変換装置のフロントエンド部分のモデルを示す。
図15】本実施形態の変形例に係る変換装置の構成を示す。
図16】本実施形態の変形例に係る補正フィルタ部の構成を示す。
図17】本実施形態の変形例に係る補正フィルタの較正フローの一例を示す。
図18】本実施形態の変形例に係る較正処理部の構成を示す。
図19】本実施形態の変形例に係る、較正処理部の動作フローの一例を示す。
図20】本実施形態の変形例に係る、較正用入力信号Z^(f)のベースバンドスペクトラムの一例を示す。
図21】本実施形態の変形例に係る、較正用入力信号X(f)のスペクトラムの一例を示す。
図22】本実施形態の変形例に係る、信号パターンP(f)のスペクトラムの一例を示す。
図23】本実施形態の変形例に係る、AD変換器に入力される信号のスペクトラムの一例を示す。
図24】本実施形態の変形例に係る、補正前および補正後の出力信号のスペクトラムの一例を示す。
図25】本実施形態の変形例に係る、補正前および補正後において較正用入力信号X(f)を入力したことに応じてAD変換器および補正フィルタ部が出力する出力信号のスペクトラムの一例を示す。
図26】本実施形態の変形例に係るローパスフィルタおよび補正フィルタの周波数特性の一例を示す。
図27】本発明の複数の態様が全体的または部分的に具現化されてよいコンピュータの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0020】
図1は、本実施形態に係る変換装置100の構成を示す。変換装置100は、広い周波数帯域中にスパースに存在する狭帯域信号であってよいアナログの入力信号x(t)をサンプリングして、デジタルの出力信号xo(t)として出力する。ここで、tは時刻を示す。また、変換装置100は、外部からの入力信号x(t)に代えて較正用入力信号xcal(t)を用いて較正を行う機能を有する。
【0021】
変換装置100は、セレクタ110、周期信号発生器120-1~m、ミキサ130-1~m、バンドパスフィルタ140-1~m、AD変換器150-1~m、再構成部160、較正用信号供給部170、較正用バンドパス信号取得部180、および較正処理部190を備える。周期信号発生器120-1~m、ミキサ130-1~m、バンドパスフィルタ140-1~m、AD変換器150-1~m、および再構成部160は、アナログの入力信号x(t)に複数の信号パターンp(t)(ただしiは、1≦i≦mである整数)のそれぞれを乗じて帯域制限することにより複数のバンドパス信号y[n]のそれぞれを得て、複数のバンドパス信号y[n]から入力信号x(t)に応じた出力信号xo(t)を再構成する変換器として機能する。この変換器は、MWCであってよい。
【0022】
複数の周期信号発生器120-1~m(以下、「周期信号発生器120」とも示す。)のそれぞれは、互いに異なる信号パターンp(t)を発生する。本実施形態に係る信号パターンp(t)は、予め定めれられた周期Tpを有し、その周期TpをM分割した区間毎に、正または負の符号(例えば±1)を有する周期的符号関数(PSF:Periodic Sign Function)である。ここで、信号パターンの繰り返し周波数fp(Hz)は、1/Tpとなる。なお、複数の周期信号発生器120は、周期Tpのクロックをトリガとして同一タイミングで信号パターンp(t)の発生を開始するように構成されてよい。
【0023】
複数のミキサ130-1~m(以下、「ミキサ130」とも示す。)は、セレクタ110および複数の周期信号発生器120に接続され、入力信号x(t)に複数の信号パターンpi(t)のそれぞれを乗じる。そして、複数のミキサ130は、信号yp(t)=x(t)・p(t)を出力する。
【0024】
複数のバンドパスフィルタ140-1~m(以下、「バンドパスフィルタ140」とも示す。)は、複数のミキサ130に接続され、複数のミキサ130が出力する複数の信号yp(t)のそれぞれを帯域制限する。そして、複数のバンドパスフィルタ140は、帯域制限された複数の信号y(t)を出力する。
【0025】
複数のAD変換器150-1~m(以下、「AD変換器150」とも示す。)は、複数のバンドパスフィルタ140に接続され、複数のバンドパスフィルタ140を通過した信号y(t)をそれぞれサンプリングしたデジタルの複数のバンドパス信号y[n]を出力する。ここで、複数のAD変換器150のそれぞれのサンプリング周波数を、fs(Hz)と表す。サンプリング周波数fsは、信号パターンp(t)の符号の周波数fpよりも高く、例えばfs≧fpである。nは、サンプリングタイミング毎の離散時間を示し、t=n・Tsとなる。
【0026】
再構成部160は、複数のAD変換器150に接続され、複数のバンドパス信号y[n]から、入力信号x(t)に応じた出力信号xo(t)を再構成する。ここで、出力信号xo(t)は、アナログのx(t)をデジタルに変換した信号である。これに代えて、再構成部160は、アナログのx(t)をダウンコンバート等したアナログまたはデジタルの信号であってもよい。再構成部160は、専用回路によって実現されてもよく、プログラマブル回路によって実現されてもよい。また、再構成部160は、コンピュータ上で再構成プログラムを実行することによって実現されてもよい。
【0027】
セレクタ110、較正用信号供給部170、較正用バンドパス信号取得部180、および較正処理部190は、入力信号x(t)を出力信号xo(t)に変換する上記の変換器を較正する較正装置として機能する。このような較正装置は、専用回路によって実現されてもよく、プログラマブル回路によって実現されてもよい。また、較正装置は、コンピュータ上で再構成プログラムを実行することによって実現されてもよい。
【0028】
セレクタ110は、外部からの入力信号x(t)を変換器に入力するか、較正用入力信号xcal(t)を変換器に入力するかを切り替える。セレクタ110は、較正用信号供給部170に接続され、変換装置100の通常動作時には外部からの入力信号x(t)を複数のミキサ130へと入力し、変換装置100の較正動作時には較正用信号供給部170からの較正用入力信号xcal(t)を複数のミキサ130へと入力する。
【0029】
較正用信号供給部170は、較正処理部190に接続され、較正処理部190からの指示に応じて較正用入力信号xcal(t)を発生し、セレクタ110を介して変換器に供給する。較正用入力信号xcal(t)は、入力信号x(t)と同様にして、複数のミキサ130、複数のバンドパスフィルタ140、および複数の150によって複数の較正用バンドパス信号y[n]に変換される。
【0030】
較正用バンドパス信号取得部180は、複数のAD変換器150に接続される。較正用バンドパス信号取得部180は、較正用入力信号xcal(t)に応じて変換器により得られる複数の較正用バンドパス信号y[n]を取得する。
【0031】
較正処理部190は、較正用バンドパス信号取得部180に接続され、較正動作を行う。較正動作において、較正処理部190は、セレクタ110に対して較正用入力信号xcal(t)を変換器へと供給するように切り替えることを指示し、較正用信号供給部170に対して較正用入力信号xcal(t)の発生を指示する。較正処理部190は、較正用入力信号xcal(t)に応じて較正用バンドパス信号取得部180によって取得される複数の較正用バンドパス信号y[n]に基づいて、変換器における再構成のパラメータを較正する。本実施形態に係る較正処理部190は、再構成部160が用いる再構成のパラメータを設定または調整する。
【0032】
図2は、本実施形態に係る変換装置100のサンプリングフローの一例を示す。ステップ200(S200)において、変換装置100は、入力信号x(t)を入力する。通常動作においてセレクタ110は、入力信号x(t)を複数のミキサ130へと供給する。
【0033】
S210において、複数の周期信号発生器120は、複数の信号パターンp(t)を発生する。S220において、複数のミキサ130は、入力信号x(t)と複数の信号パターンp(t)とをそれぞれ乗じた複数の信号yp(t)を生成して出力する。
【0034】
S230において、複数のバンドパスフィルタ140は、複数の信号yp(t)を帯域制限した複数のバンドパス信号y(t)を生成して出力する。S240において、複数のAD変換器150は、複数のバンドパス信号y(t)をサンプリングしてAD(Analog-Digital)変換することにより、複数のデジタルのバンドパス信号y[n]を取得する。
【0035】
S250において、再構成部160は、複数のバンドパス信号y[n]に基づいて、出力信号xo(t)を再構成する。以下、図3~7を用いて、変換装置100のサンプリング動作をより具体的に説明する。
【0036】
図3は、周波数領域における入力信号X(f)の波形の一例を示す。入力信号x(t)は、例えば2.4GHzといったような広い周波数帯域中の一部に存在する、例えば20MHzといったような狭帯域信号である。したがって、入力信号x(t)は、横軸を周波数、縦軸を各周波数成分の振幅とした周波数領域においては、図3に示したように、広い周波数帯域の一部に、狭帯域の信号310-1~2およびこれらに対応する負の周波数成分である信号320-1~2を有する入力信号X(f)となる。
【0037】
図4は、周波数領域における信号パターンP(f)の波形の一例を示す。信号パターンp(t)は、周期Tpを有する。したがって、以下の式(1)に示すようにフーリエ展開することができる。
【数1】
【0038】
式(1)から、信号パターンp(t)を周波数領域で表した信号パターンP(f)をl=-L~Lの範囲で表すと図4のとおりとなる。ここで、ci,lは、周波数領域の信号パターンP(f)における、周波数l・fpの周波数成分を示す。
【0039】
図5は、周波数領域における、入力信号X(f)および信号パターンP(f)を乗じた信号Yp(f)の波形の一例を示す。周波数領域における信号Yp(f)は、時間領域における信号yp(t)=x(t)・p(t)を周波数領域に変換したものであり、以下の式(2)に示すフーリエ変換によって表される。
【数2】
【0040】
式(2)から、信号Yp(f)は、図5に示したように、入力信号X(f)を、fpの整数倍lfpずつシフトしてp(f)の各周波数成分ci,lによって重み付けした和となる。このようにして、変換器は、広い周波数帯域内にスパースに存在する狭帯域信号を、ベースバンド近傍に周波数変換することができる。
【0041】
図6は、周波数領域における、入力信号X(f)および信号パターンP(f)を乗じた信号Yp(f)を帯域制限したバンドパス信号Y(f)の波形の一例を示す。本実施形態において、バンドパスフィルタ140は、周波数fbpf未満の周波数成分を低域濾波し、周波数fbpf以上の周波数成分をカットするローパスフィルタである。この場合、バンドパスフィルタ140は、図6に示したように、図5に示した信号Yp(f)における、周波数-fbpf以下の周波数成分および周波数fbpf以上の周波数成分を帯域制限し、周波数-fbpfを超え周波数fbpf未満の周波数成分を低域濾波する。ここで、周波数fbpfは、サブナイキストサンプリングを実現するために、サンプリング周波数fsの2倍またはそれ以上であってよい。
【0042】
バンドパス信号Yは、デジタルのバンドパス信号y[n]の離散フーリエ変換によって以下の式(3)のように近似できる。
【数3】
【0043】
ここで、Lは、X(f)の全ての非0成分がバンドパス信号Yの-fs/2≦f≦fs/2の範囲に含まれるように選択される正の整数である。Lは、この条件を満たす最小の正整数であってよい。
【0044】
式(3)は、以下の式(4)に示す行列ベクトル積の形で表すことができる。
【数4】
【0045】
図7は、周波数領域における、バンドパス信号Y(f)から再構成した出力信号Xo(f)の波形の一例を示す。式(4)のci,lの行列をAと表すと、行列Aは、m行2L+1列であり、2L+1はmと比較して非常に大きいから、左辺のYのベクトルから右辺のX(f-lfp)のベクトルを一意に算出することは困難である。しかし、入力信号X(f)が十分にスパースである場合、右辺のX(f-lfp)の大部分は0となり、行列Aに含まれる複数のパラメータci,lを用いて左辺のYのベクトルから右辺のX(f-lfp)のベクトルを一意に算出することができる。
【0046】
このような原理により、再構成部160は、複数のバンドパス信号y[n]のそれぞれを周波数領域のバンドパス信号Y(f)に変換し、図4に示した信号パターンの各周波数成分ci,lから算出される再構成のパラメータを用いて周波数領域の複数のバンドパス信号Y(f)から図3に示したような周波数領域の出力信号Xo(f)を再構成し、周波数領域の出力信号Xo(f)を時間領域の出力信号xo(t)に逆変換することにより、出力信号xo(t)を求めることができる。ここで、再構成部160は、出力信号xo(t)を、デジタルの離散時間信号xo[n]の形式で出力してもよい。
【0047】
なお、上記の説明においては、周波数領域のバンドパス信号Y(f)から周波数領域のXo(f)を再構成する例を示した。これに代えて、変換装置100は、周波数領域における上記の演算と等価な時間領域の演算を用いることによって、時間領域のバンドパス信号y[n]から時間領域の出力信号xo(t)を再構成することも可能である。
【0048】
また、上記の説明においては、各バンドパスフィルタ140は、ローパスフィルタである場合を示した。しかし、上記の処理は、出力信号xo(t)を再構成するのに十分は周波数範囲の信号を帯域濾波できれば同様に行うことができるから、各バンドパスフィルタ140は、バンドパスフィルタであってもよい。
【0049】
以上に示した変換装置100によれば、周波数-Lfpから周波数Lfpを含むような広い周波数帯域の中にある狭帯域信号を、周波数Lfpと比較して非常に小さいサンプリング周波数fsを有する複数のAD変換器150を用いてサンプリングすることができる。これにより、変換装置100は、例えば、数GHzから数十GHzの周波数帯域中にスパースに存在する20MHzの狭帯域信号を、サンプリング周波数80MHzのAD変換器150を複数用いてサンプリングすることが可能となる。
【0050】
図8は、本実施形態に係る変換装置の較正フローの一例を示す。S800において、較正用信号供給部170は、較正動作の開始を較正処理部190から指示されたことに応じて、較正用入力信号xcal(t)を発生する。較正動作においてセレクタ110は、較正用入力信号xcal(t)を複数のミキサ130へと供給する。
【0051】
S810において、複数の周期信号発生器120は、通常動作時のS220と同様に、複数の信号パターンp(t)を発生する。S820において、複数のミキサ130は、通常動作時のS230と同様に、較正用入力信号xcal(t)と複数の信号パターンp(t)とをそれぞれ乗じた複数の信号yp(t)を生成して出力する。
【0052】
S830において、複数のバンドパスフィルタ140は、通常動作時のS230と同様に、複数の信号yp(t)を帯域制限した複数の較正用バンドパス信号y(t)を生成して出力する。S840において、複数のAD変換器150は、通常動作時のS240と同様に、複数の較正用バンドパス信号y(t)をサンプリングしてAD変換することにより、複数のデジタルの較正用バンドパス信号y[n]を出力する。較正用バンドパス信号取得部180は、複数のAD変換器150が出力する複数の較正用バンドパス信号y[n]を取得する。
【0053】
S850において、較正処理部190は、複数の較正用バンドパス信号y[n]に基づいて、再構成部160が用いる再構成のパラメータを較正する。以下、図9を用いて、変換装置100の較正動作をより具体的に説明する。
【0054】
図9は、周波数領域における、較正用入力信号Xcal(f)および信号パターンP(f)を乗じた信号Yp(f)の波形の一例を示す。図1から図7に関して示したように、変換装置100は、理想的には行列Aの要素となる各信号パターンp(t)の周波数成分ci,lが与えられれば、入力信号x(t)に応じた出力信号xo(t)を正しく再構成することができる。しかし、現実には、変換装置100は、非常にセンシティブであり、実際に使用する部品の特性および配線の特性等の影響を大きく受ける。したがって、出力信号xo(t)を正しく再構成するためには、変換装置100の較正が必要となる。
【0055】
非特許文献3~8は、単一トーンの較正用信号を用いて周波数領域をスイープすることにより、再構成のパラメータを較正する技術を開示する。しかし、このような技術においては、異なるタイミングにおいて発生される単一トーンの較正用信号を用いた測定結果から、全ての再構成用パラメータを算出するのに時間を要してしまう。また、異なる複数のタイミングのそれぞれで単一トーンの較正用信号を発生するので、これらの較正用信号が、開始タイミングに重畳されるランダムジッタによる位相ずれ等の影響を受ける可能性があり、再構成用パラメータを精度良く設定することができない可能性があった。
【0056】
これに対し、本実施形態に係る較正用信号供給部170は、図9の上段の周波数スペクトルに例示したように、複数の周波数帯域にトーンを有するマルチトーン信号を較正用入力信号xcal(t)として変換器に供給する。較正用入力信号xcal(t)は、それぞれが複数の信号パターンp(t)の繰り返し周波数fpの整数倍lの周波数l・fpを中心とし、繰り返し周波数fpの幅を有する、互いに異なる複数の周波数帯域のそれぞれの中にトーンを有してよい。ミキサ130は、このような較正用入力信号xcal(t)に信号パターンp(t)を乗じることにより、信号パターンp(t)における互いに異なる周波数成分ci,lをベースバンド近傍に周波数変換することができる。この結果、バンドパスフィルタ140は、互いに異なる周波数成分ci,lを通過させ、AD変換器150は、互いに異なる周波数成分ci,lを含むバンドパス信号y[n]をサンプリングすることができる。
【0057】
較正用入力信号xcal(t)は、入力信号x(t)における検出対象の周波数範囲を繰り返し周波数fp毎に分割して得られる複数の周波数帯域にトーンを有してよい。検出対象の周波数範囲が0から(L+1/2)fpである場合、較正用入力信号xcal(t)は、図9の上段に示したように、検出対象の周波数範囲を繰り返し周波数fp毎に分割して得られる、周波数l・fp(l=0~L)を中心とする各周波数帯域にトーンを有してよい。これに代えて、較正用入力信号xcal(t)は、少なくとも2つのlに対応する周波数帯域のそれぞれにトーンを有するものであってもよい。
【0058】
ここで、上記のような複数の周波数帯域のうちの異なる2つの周波数帯域内のトーン同士は、繰り返し周波数fpの整数倍からオフセットされた周波数差を有してよい。2つのトーンにこのような周波数差を持たせることにより、バンドパスフィルタ140は、較正用入力信号xcal(t)に信号パターンp(t)を乗じる結果、信号パターンの互いに異なる周波数成分ci,lを、ベースバンド近傍におけるこの周波数差分ずれた位置へと周波数変換させることができる。これにより、較正処理部190は、これらの異なる周波数成分ci,lを分離して検出することができる。
【0059】
図9に示した較正用入力信号xcal(t)は、基本周波数をf、繰り返し周波数をfp、オフセット周波数をΔf、lを整数としたときに、検出対象の周波数範囲内で、周波数f+l・fp+lΔfのトーンを有する。このような較正用入力信号xcal(t)は、ある周波数帯域内のトーンと、その周波数帯域に隣接する高周波数帯域内のトーンとの間に、fp+Δfの周波数差を有する。ここで、基本周波数fは、-1/2fp≦f≦1/2fpであってよく、オフセット周波数Δfは、全てのトーンが対応する周波数帯域から外れないような正または負の周波数であってよい。
【0060】
Δfを正の微小周波数とした場合、較正用入力信号xcal(t)に信号パターンp(t)を乗じると、図9の下段に示したように、周波数領域における信号パターンP(f)の各周波数l・fpの周波数成分ci,l(l=0~L)が、ベースバンド近傍において周波数軸上で同じ並びで圧縮されて配列されたバンドパス信号Yp(f)が得られる。したがって、較正処理部190は、周波数領域におけるバンドパス信号Yp(f)から周波数順に周波数成分ci,1を検出することができる。なお、Δfを負の微小周波数とした場合、バンドパス信号Yp(f)における周波数成分ci,lの並びは逆順となる。
【0061】
なお、図9に示した較正用入力信号xcal(t)に代えて、較正用入力信号xcal(t)は、検出対象の周波数範囲内で、周波数f0+l・fp+qΔfのトーンを有してもよい。ここで、qは、複数の周波数帯域について0≦q≦Lを満たすように重複なく選択された整数であってよく、この条件の下でランダムに選択された整数であってもよい。
【0062】
このようにして、変換装置100は、周期信号発生器120-i、ミキサ130-i、バンドパスフィルタ140-i、およびAD変換器150-iを有するi番目のフロントエンドについて、マルチトーンの較正用入力信号xcal(t)に応じて取得されるバンドパス信号y[n]から、P(f)の複数の周波数成分ci,l(l=0~L)を取得することができる。したがって、較正処理部190は、これら複数の周波数成分ci,lに対応する複数の再構成用パラメータを一括して較正することができる。
【0063】
さらに、変換装置100は、2以上または全てのフロントエンドについて、同じタイミングで供給したマルチトーンの較正用入力信号xcal(t)に応じて取得されるバンドパス信号y[n]から、P(f)の複数の周波数成分ci,l(l=0~L)を取得することができる。この場合、較正処理部190は、2以上または全てのiについて、これら複数の周波数成分ci,lに対応する複数の再構成用パラメータまたは全ての再構成用パラメータを一括して較正することができる。
【0064】
ここで、同じタイミングで供給したマルチトーンの較正用入力信号xcal(t)に応じて取得した複数の周波数成分ci,lは、異なるタイミングで較正用入力信号xcal(t)を供給した場合に生じるランダムジッタの影響を受けない。したがって、較正処理部190は、再構成部160の再構成用パラメータを精度良く較正することができる。
【0065】
なお、上記の説明は、較正用入力信号xcal(t)の各トーンが振幅1かつ位相0である単純な場合を例として説明した。各トーンが1以外の振幅および0でない位相の少なくとも一方を有する場合、バンドパス信号Yp(f)中の各周波数成分は、周波数領域における較正用入力信号X(f)の対応するトーンと周波数領域における信号パターンP(f)における対応する周波数成分ci,lとの積となる。したがって、較正処理部190は、バンドパス信号Yp(f)中の各周波数成分を、較正用入力信号X(f)中の対応するトーンの周波数成分で除することにより、信号パターンP(f)の対応する周波数成分を算出することができる。
【0066】
図10は、本実施形態に係る較正用信号供給部1000の構成を示す。較正用信号供給部1000は、図1の較正用信号供給部170として用いられてもよく、図1の較正用信号供給部170とは異なる構成をとるものであってもよい。
【0067】
較正用信号供給部1000は、トリガ発生器1010と、複数のサイン波発生器1020-1~kと、複数のアッテネータ1030-1~kと、マルチプレクサ1040と、位相振幅設定部1050とを有する。トリガ発生部1010は、較正用入力信号xcal(t)の開始タイミングを示すトリガを発生する。トリガ発生器1010は、周期的にトリガを発生することにより、較正用入力信号xcal(t)を周期的に発生させてもよい。
【0068】
複数のサイン波発生器1020-1~k(「サイン波発生器1020」とも示す。)は、トリガ発生器1010に接続され、較正用入力信号xcal(t)に含めるべき各トーンをそれぞれ発生する。例えば、サイン波発生器1020-1は、図9における周波数fのトーン、サイン波発生器1020-2は、周波数fp+f+Δfのトーン、…、サイン波発生器1020-kは、周波数Lfp+f+LΔfのトーンを発生する。この場合、kは、L+1である。ここで、各トーンは単一周波数を有するサイン波信号である。
【0069】
本実施形態において、各サイン波発生器1020は、トーンを出力すべき初期位相の指示を位相振幅設定部1050から受けて、トリガに対して指定された初期位相を有するトーンを出力する。各サイン波発生器1020は、トーンを出力すべき初期位相の指示として、トリガに対するトーンの開始タイミングの遅延時間の指示を受けてもよい。
【0070】
複数のアッテネータ1030-1~k(「アッテネータ1030」とも示す。)は、複数のサイン波発生器1020に接続され、対応するサイン波発生器1020が出力するトーンの振幅を、位相振幅設定部1050から指定される重みに応じてそれぞれ増幅または減衰させる。これにより、各アッテネータ1030は、対応するサイン波発生器1020からのトーンに、位相振幅設定部1050から指定される重みを乗じたトーンを出力する。
【0071】
マルチプレクサ1040は、複数のアッテネータ1030に接続される。マルチプレクサ1040は、複数のアッテネータ1030が出力する、振幅または位相の少なくとも1つが調整されたトーンを合成(すなわち加算)して、較正用入力信号xcal(t)として出力する。
【0072】
位相振幅設定部1050は、各サイン波発生器1020が出力するべきトーンの初期位相を、各サイン波発生器1020に対して指示する。また、位相振幅設定部1050は、各アッテネータ1030がトーンに乗じるべき重みを、各アッテネータ1030に対して指示する。これにより、位相振幅設定部1050は、複数のトーンの初期位相をずらすこと、または複数のトーンの振幅を調整することの少なくとも1つを行うことで、較正用入力信号xcal(t)の最大振幅を変換器の定格範囲内に抑える。
【0073】
より具体的には、複数のミキサ130、複数のバンドパスフィルタ140、および複数のAD変換器150を含む変換器を正しく動作させるために、本実施形態に係る較正用信号供給部1000は、較正用入力信号の振幅を変換器の定格範囲内に制限する。ここで、較正用信号供給部1000は、複数のトーンの合成波を較正用入力信号として変換器に供給するところ、多数のトーンのピークが同時に発生すると、合成波の最大振幅が大きくなってしまう。そこで、位相振幅設定部1050は、複数のトーンのピークがずれるように、複数のサイン波発生器1020に指示する初期位相を調整する。ここで、位相振幅設定部1050は、変換装置100の製造者または使用者等によって予め指定された初期位相の組を格納し、格納された初期位相を各サイン波発生器1020に対して設定してもよい。これに代えて、位相振幅設定部1050は、複数のトーンの初期位相に応じた合成波の最大振幅を数値計算またはシミュレーション等によって算出し、合成波の振幅が最小となるように各トーンの初期位相を調整してもよい。また、位相振幅設定部1050は、複数のトーンの振幅を実質的に同一とし、複数のトーンの位相を非特許文献9に記載のNeuman位相とすることによって、較正用入力信号xcal(t)の最大振幅を変換器の定格範囲内に抑えてもよい。
【0074】
また、マルチプレクサ1040は、複数のアッテネータ1030のそれぞれに対して、対応するサイン波発生器1020が出力するトーンの重みを指定することにより、較正用入力信号の振幅を変換器の定格範囲内に制限してもよい。位相振幅設定部1050は、複数のトーンの振幅を一律に変更してもよく、少なくとも2つのトーンの振幅が異なるようにトーン毎に調整してもよい。ここで、位相振幅設定部1050は、変換装置100の製造者または使用者等によって予め指定された重みの組を格納し、格納された重みを各アッテネータ1030に対して設定してもよい。これに代えて、位相振幅設定部1050は、複数のトーンの振幅に応じた合成波の最大振幅を数値計算またはシミュレーション等によって算出し、合成波の振幅が最小となるように調整してもよい。例えば、位相振幅設定部1050は、合成波が最大振幅となるタイミングにおいて、合成波の振幅増加により大きく寄与するトーンの振幅をより小さく調整してもよい。位相振幅設定部1050は、各トーンの初期位相の調整および各トーンの振幅の調整を併用して、合成波の最大振幅を変換器の定格範囲内に抑えてもよい。
【0075】
以上において、変換装置100が複数の周波数帯域のうちのいずれかについては測定対象外としている場合には、較正用信号供給部1000は、その周波数帯域に対応するサイン波発生器1020およびアッテネータ1030の組を有しない構成をとってもよい。なお、複数のサイン波発生器1020および複数のアッテネータ1030の一部または全てに代えて、コンピュータが対応する一部または全てのトーンの合成波をプログラム処理による演算を用いて生成し、これをDA変換器または任意波形発生器(AWG:Arbitrary Waveform Generator)がアナログに変換して出力する方式を用いてもよい。
【0076】
図11は、本実施形態に係る較正処理部1100の構成を示す。較正処理部1100は、図1の較正処理部190として用いられてもよく、図1の較正処理部190とは異なる構成をとるものであってもよい。
【0077】
較正処理部1100は、信号成分検出部1110および較正パラメータ算出部1120を有する。信号成分検出部1110は、較正用バンドパス信号取得部180等の較正用バンドパス信号取得部に接続され、複数のバンドパス信号y[n]のそれぞれから、対応する信号パターンp(t)に含まれる各周波数成分ci,lを検出する。本実施形態に係る信号成分検出部1110は、離散フーリエ変換により、複数のバンドパス信号y[n]のそれぞれを、周波数領域のバンドパス信号Y(f)に変換する(式(3)参照)。そして、信号成分検出部1110は、周波数領域のバンドパス信号Y(f)から、信号パターンp(t)に含まれる各周波数成分ci,lに対応する各周波数成分を抽出する。ここで、較正用入力信号xcal(t)は既知であるから、信号成分検出部1110は、抽出した各周波数成分から信号パターンp(t)に含まれる各周波数成分ci,lの振幅および初期位相を逆算することができる。
【0078】
較正パラメータ算出部1120は、信号成分検出部1110に接続され、各周波数成分ci,lを用いて、周波数領域の複数のバンドパス信号Y(f)(すなわち式(4)の左辺のベクトル)から、周波数領域の出力信号X(f)の各周波数帯域の信号(すなわち式(4)の右辺のX(f-lfp)のベクトル)を算出するための再構成用パラメータを算出する。ここで、周波数領域の出力信号X(f)は十分にスパースであるから、出力信号X(f)における信号がない周波数帯域が既知であれば、その周波数帯域に対応するX(f-lfp)と、そのX(f-lfp)に対応する行列Aの列とを式(4)から削除することができる。そして、較正パラメータ算出部1120は、このように縮退された行列Aの一般逆行列(Bと示す)を算出して再構成用パラメータとする。再構成部160は、このようにして得られた再構成用パラメータを用いて、入力信号x(t)に応じた複数のバンドパス信号y[n]を離散フーリエ変換により周波数領域の複数のバンドパス信号Y(f)に変換し、複数のバンドパス信号Y(f)のベクトルに行列Bを乗じることによって出力信号X(f)に含まれる複数の信号X(f-lfp)を得ることができる。
【0079】
これに代えて、較正パラメータ算出部1120は、各周波数成分ci,lを再構成用パラメータとして再構成部160に供給してもよい。この場合、再構成部160は、再構成用パラメータである各周波数成分ci,lの値から、一般逆行列Bを算出してから出力信号X(f)を算出してもよい。
【0080】
ここで、出力信号X(f)における信号がない周波数帯域が未知である場合、再構成部160は、出力信号X(f)における信号がある周波数帯域を検出してから、上記の処理を行ってもよい。再構成部160は、一例として、非特許文献1に記載された手法を用いて出力信号X(f)を再構成してもよい。
【0081】
なお、本実施形態に係る較正処理部1100は、周波数領域における演算を用いて再構成用パラメータを算出した。これに代えて、較正処理部1100は、上記の周波数領域における演算に対応する時間領域の演算を用いて再構成用パラメータを算出してもよい。
【0082】
図12は、バンドパスフィルタ140として用いるローパスフィルタの理想の周波数特性および実際の周波数特性の例を示す。本図のグラフは、横軸に周波数をとり、縦軸に周波数特性H(f)をとる。ローパスフィルタは、理想的には、破線で示すようにカットオフ周波数(fbpf)未満において一定のゲイン(例えばゲイン1.0)を有し、カットオフ周波数以上においてはゲインが0であることが望ましい。しかし、バンドパスフィルタ140として用いるローパスフィルタはアナログ回路であるから、実際には、太い実線で示したようにカットオフ周波数未満において周波数に応じてゲインが変化し、カットオフ周波数以上においてもゲインがなだらかに低下する等のゲイン特性を有する。
【0083】
また、ローパスフィルタは、理想的には、周波数に依存せず一定の位相特性を有することが望ましい。しかし、実際には、バンドパスフィルタ140として用いるローパスフィルタは、細い実線で示したように、群遅延等の影響により周波数に応じて位相が変化する等の位相特性を有する。
【0084】
図13は、マルチトーン信号を再構成した出力信号に生じる不要なイメージの例を示す。本図は、横軸に周波数をとり、縦軸に信号強度(dBFS)をとる。本図のグラフは、90.25MHzを中心とする90~90.5MHzの周波数帯域において一定の周波数間隔でトーンを有するマルチトーン信号をWMCによって再構成した出力信号を示す。
【0085】
現実のローパスフィルタを用いた場合、再構成された出力信号には、元のマルチトーン信号に対応する信号に、ローパスフィルタによって発生するスプリアスが不要なイメージとして重畳してしまう。本図の例においては、周波数89.5~90MHzの範囲にこのような不要なイメージが顕著に見られる。
【0086】
図14は、変換装置100のフロントエンド部分のモデルを示す。本図のモデルは、変換装置100におけるひと組のミキサ130、バンドパスフィルタ140、およびAD変換器150を模式化したものである。
【0087】
ミキサ130は、理想ミキサ1400に、信号入力特性1410、PSF入力特性1420、およびミキサ出力特性1430の各周波数特性が重畳されたモデルで表すことができる。理想ミキサ1400は、理想的な周波数特性(周波数応答)を有するミキサである。現実のミキサ130においては、入力信号x(t)は、ミキサ130に特有の信号入力特性1410の影響を受ける。この信号入力特性1410を、HRFと示す。
【0088】
また、現実のミキサ130においては、周期信号発生器120が発生すべき理想の信号パターンp(t)は、ミキサ130に特有のPSF入力特性1420の影響を受ける。このPSF入力特性1420を、HLOと示す。また、現実のミキサ130においては、ミキサ130が出力する信号は、ミキサ130に特有のミキサ出力特性1430の影響を受ける。このミキサ出力特性1430を、HIFと示す。
【0089】
バンドパスフィルタ140として用いる現実のローパスフィルタは、理想の周波数特性とは異なる周波数特性HLPFを有するモデルで表すことができる。この周波数特性HLPFは、例えば図12中における実線で示された周波数特性である。
【0090】
AD変換器150は、理想的な周波数特性を有する理想AD変換器1440に、AD変換特性1450の影響が重畳されたモデルで表すことができる。このAD変換特性1450を、HADCと示す。
【0091】
以上において、理想ミキサ1400に入力される信号パターンの実際の各周波数成分c i,lは、以下の式(5)に示すように、理想の周波数成分ci,lにPSF入力特性1420(HLO)を乗じたものとなる。
【数5】
【0092】
図1から図11に関して示したように、較正処理部190および較正処理部1100は、実際の各周波数成分c i,lを算出して再構成部160を較正することができる。ここで、以下の式(6)に示すように、ミキサ出力特性1430(HIF)、バンドパスフィルタ140の周波数特性(HLPF)、およびAD変換特性1450(HADC)を合わせた等価周波数特性をHeqとする。
【数6】
【0093】
AD変換器150のサンプリング周波数fsが信号パターンの周波数fpと等しい場合(fs=fpの場合)、i番目のフロントエンドのAD変換器150が出力する実際のバンドパス信号Y (ejωTs)は、以下の式(7)で表される。
【数7】
【0094】
ここで、R(f)は、HRF(f)の1周波数スロット分(周波数l・fpを中心とする周波数幅fpの周波数帯域分)のスペクトラムであり、R(f)=HRF(f-lf)である。また、入力信号X(f)における、中心周波数がlfpで周波数の幅がfpの周波数スロット内の信号のスペクトラムをZ(f)と示す。
【0095】
AD変換器150のサンプリング周波数fsが信号パターンの周波数fpのq倍である場合(fs=qfpかつqは正の整数の場合)、i番目のフロントエンドのAD変換器150が出力する実際のバンドパス信号Y'(ejωTs)は、以下の式(8)で表される。
【数8】
【0096】
なお、信号入力特性1410の影響は微小であるので、無視することができる。これに代えて、変換装置100等の変換装置は、一例として、等価周波数特性Heqに対する補正を行ない、図1から図11に示したように再構成部160を較正した後に、さらに基準となる入力信号を入力して信号入力特性1410に対する較正を行なってもよい。
【0097】
図15は、本実施形態の変形例に係る変換装置1500の構成を示す。本図に示した変換装置1500は、図1に示した変換装置100の変形例である。本図に示した各構成要素のうち、図1と同一の符号を付した構成要素は、図1における対応する構成要素と同様の機能および構成を有する。したがって、以下相違点を除き、説明を省略する。
【0098】
変換装置1500は、図1に示した変換装置100を,各フロントエンドが実際に有する等価周波数特性Heqの影響を低減または除去するように変更した構成をとる。変換装置1500は、変換装置100における複数のAD変換器150~mの後段に複数の補正フィルタ部1555-1~m(「補正フィルタ部1555」とも示す。)を加えた構成をとる。複数の補正フィルタ部1555は、複数のAD変換器150からの複数のバンドパス信号y1[n]~ym[n]を補正した複数の補正バンドパス信号を出力する。これにより、各補正フィルタ部1555は、バンドパス信号y[n]に重畳された等価周波数特性Heqの影響を低減または除去する。再構成部160は、複数の補正バンドパス信号から出力信号を再構成する。
【0099】
これに伴い、変換装置1500は、図1の較正用信号供給部170および較正処理部190に代えて、較正用信号供給部1570および較正処理部1590を備える。較正用信号供給部1570は、較正処理部1590に接続される。較正用信号供給部1570は、較正処理部1590からの指示に応じて、各補正フィルタ部1555を較正するための較正用入力信号xcal(t)を発生し、セレクタ110を介して複数の周期信号発生器120、複数のミキサ130、複数のバンドパスフィルタ140、複数のAD変換器150、複数の補正フィルタ部1555、および再構成部160を有する変換器に供給する。
【0100】
較正処理部1590は、較正用バンドパス信号取得部180に接続される。較正処理部1590は、較正用信号供給部1570が発生した較正用入力信号xcal(t)に応じて変換器により得られる複数の較正用バンドパス信号y[n]を較正用バンドパス信号取得部180から受け取る。本図の例において、較正処理部1590は、複数の補正フィルタ部1555により補正された複数の較正用バンドパス信号を較正用バンドパス信号取得部180から受け取る。較正処理部1590は、複数の較正用バンドパス信号のそれぞれに基づいて、複数のバンドパス信号のそれぞれを補正するための補正フィルタ部1555内の補正フィルタを較正する。なお、較正用信号供給部1570および較正処理部1590は、図1から11に示したような、再構成部160が用いる再構成のパラメータを較正するための較正用信号供給部170および較正処理部190の機能および構成を含んでよい。
【0101】
以上に示した較正処理部1590は、複数の補正フィルタ部1555により補正された複数の較正用バンドパス信号を較正用バンドパス信号取得部180から受け取る。このため、図14に示した等価周波数特性Heqは、較正用入力信号から較正用バンドパス信号を得るまでのパスの一部における周波数特性となる。較正処理部1590は、複数の補正フィルタ部1555による補正後の複数の較正用バンドパス信号を用いて補正フィルタを較正することにより、較正後の補正フィルタに対して更に較正処理を繰り返して、補正フィルタの精度を高めることができる。
【0102】
これに代えて、較正処理部1590は、複数の補正フィルタ部1555により補正される前の、複数のAD変換器150が出力する複数の較正用バンドパス信号を較正用バンドパス信号取得部180から受け取って、複数の補正フィルタを較正してもよい。この場合、図14に示した等価周波数特性Heqは、較正用入力信号から較正用バンドパス信号を得るまでのパス全体の周波数特性となる。
【0103】
図16は、本実施形態の変形例に係る補正フィルタ部1555の構成を示す。補正フィルタ部1555は、アップサンプラ1600と、ローパスフィルタ1610と、補正フィルタ1620と、ダウンサンプラ1630とを有する。
【0104】
アップサンプラ1600は、複数のAD変換器150からの複数のバンドパス信号のうち、補正フィルタ部1555に入力されるバンドパス信号をアップサンプリングする。ローパスフィルタ1610は、アップサンプラ1600に接続される。ローパスフィルタ1610は、アップサンプラ1600によりアップサンプリングされたバンドパス信号を低域濾波し、カットオフ周波数以上の高周波数成分を低減または除去する。ローパスフィルタ1610のカットオフ周波数は、バンドパスフィルタ140が有すべき理想のカットオフ周波数(図12に示したカットオフ周波数)と同じであってよい。これに代えて、ローパスフィルタ1610は、バンドパスフィルタ140のカットオフ周波数よりも高いカットオフ周波数を有してもよい。ローパスフィルタ1610の周波数特性を、H(ejω)と示す。
【0105】
補正フィルタ1620は、ローパスフィルタ1610に接続される。補正フィルタ1620は、ローパスフィルタ1610を通過したバンドパス信号を補正する。補正フィルタ1620の周波数特性を、H(ejω)と示す。
【0106】
ダウンサンプラ1630は、ダウンサンプラ1630により補正されたバンドパス信号をダウンサンプリングする。ダウンサンプラ1630は、デシメーションフィルタであってよく、バンドパス信号を間引いて出力する間引きフィルタであってもよい。
【0107】
以上に示した補正フィルタ部1555は、AD変換器150によりAD変換されたデジタルのバンドパス信号におけるカットオフ周波数(fbpf)以上の周波数成分(図12参照)をデジタルのローパスフィルタ1610によって低域濾波することができる。ローパスフィルタ1610としては、バンドパス信号におけるカットオフ周波数以上の周波数成分に応じて再構成部160が出力する再構成された出力信号の誤差が許容範囲内となるように例えばデジタルフィルタの次数等を予め調整したデジタルフィルタを用いることができる。
【0108】
また、補正フィルタ部1555は、デジタルのバンドパス信号におけるカットオフ周波数未満の周波数成分を補正フィルタ1620によって補正することができる。一例として、補正フィルタ1620は、カットオフ周波数未満において、等価周波数特性Heqの逆特性を有するように調整される。これにより、補正フィルタ1620は、ミキサ130から補正フィルタ部1555までのフロントエンドが、カットオフ周波数未満において一定のゲインを有するようにバンドパス信号を補正することができる。また、補正フィルタ1620は、フロントエンドが、カットオフ周波数未満において一定の位相遅延を有するようにバンドパス信号を補正してもよい。
【0109】
なお、本変形例においては、アップサンプラ1600およびダウンサンプラ1630は、ローパスフィルタ1610によるローパスフィルタ処理および補正フィルタ1620におよる補正処理の精度を高めるために、バンドパス信号の周波数を一旦上昇させている。これに代えて、補正フィルタ部1555は、アップサンプラ1600およびダウンサンプラ1630のうちの少なくとも1つを有しない構成をとってもよい。
【0110】
図17は、本実施形態の変形例に係る補正フィルタの較正フローの一例を示す。本変形例に係る較正フローは、図8に示した構成フローの変形例であるから、以下相違点を除き説明を省略する。
【0111】
S1700において、較正用信号供給部1570は、複数の周波数にトーンを有するマルチトーン信号である較正用入力信号xcal(t)を発生する。ここで、補正フィルタ1620の較正に用いる較正用入力信号xcal(t)については、図20および図21に関連して後述する。較正動作においてセレクタ110は、較正用入力信号xcal(t)を複数のミキサ130へと供給する。
【0112】
S810からS830は、図8のS810からS830と同様である。S1740において、複数のAD変換器150は、複数の較正用バンドパス信号y(t)をサンプリングしてAD変換することにより、複数のデジタルの較正用バンドパス信号y[n]を出力する。本変形例において、複数の補正フィルタ部1555は、複数のAD変換器150が出力する複数のデジタルの較正用バンドパス信号y[n]を補正した信号を、複数のデジタル較正用バンドパス信号y[n]として出力する。較正用バンドパス信号取得部180は、複数の補正フィルタ部1555が出力する複数の較正用バンドパス信号y[n]を取得する。その他の点については、S1740はS840と同様であるから以下相違点を除き説明を省略する。
【0113】
S1750において、較正処理部190は、複数の較正用バンドパス信号y[n]に基づいて、複数の補正フィルタ部1555のそれぞれの補正フィルタ1620を較正する。なお、変換装置1500は、複数のフロントエンドに対して同時に較正用入力信号xcal(t)を供給した結果に基づいて(S1700~S1740)、複数のフロントエンドのそれぞれの補正フィルタ1620を較正してよい。これに代えて、変換装置1500は、複数のフロントエンドのそれぞれに対し、個別に図17の処理を行なってよい。以下、図18から図26を用いて、較正処理部1590の構成、および変換装置1500による補正フィルタ1620の較正動作をより具体的に説明する。
【0114】
図18は、本実施形態の変形例に係る較正処理部1590の構成を示す。較正処理部1590は、周波数特性算出部1810と、補間処理部1820と、補正フィルタ決定部1830と、補正フィルタ設定部1840とを有する。
【0115】
周波数特性算出部1810は、補正フィルタ1620を較正するためのマルチトーン信号である較正用入力信号xcal(t)が変換器に入力されたことに応じて各AD変換器150が出力する、補正後の複数の較正用バンドパス信号y[n]を受け取る。ここで、周波数特性算出部1810が受け取る複数の較正用バンドパス信号y[n]は、式(8)のバンドパス信号Y'(ejωTs)を補正フィルタ部1555により補正したものであるから、較正用入力信号xcal(t)の各トーンが信号パターンP(f)の各周波数成分ci,lによって各周波数スロットに周波数変換された多数のトーンを有する。そして、各較正用バンドパス信号y[n]に含まれる各周波数のトーンは、等価周波数特性Heqにおけるその周波数の特性の影響を受けている。
【0116】
周波数特性算出部1810は、各フロントエンドiについて、較正用バンドパス信号y[n]に含まれる各トーンに基づいて、各トーンの周波数における等価周波数特性H^eqを算出する。周波数特性算出部1810が算出する等価周波数特性H^eqは、各トーンの周波数位置のみに対応する特性を有する離散的な等価周波数特性となる。
【0117】
補間処理部1820は、周波数特性算出部1810に接続される。補間処理部1820は、各フロントエンドiについて、離散的な等価周波数特性H^eqを補間することにより、連続的な等価周波数特性Heqを推定する。
【0118】
補正フィルタ決定部1830は、補間処理部1820に接続される。補正フィルタ決定部1830は、各フロントエンドiについて、推定された等価周波数特性Heqに基づいて、補正フィルタ1620の周波数特性を決定する。ここで、補正フィルタ決定部1830は、推定された等価周波数特性Heqをキャンセルし、または等価周波数特性Heqの影響を低減するように、補正フィルタ1620の周波数特性を決定する。
【0119】
補正フィルタ設定部1840は、補正フィルタ決定部1830に接続される。補正フィルタ設定部1840は、決定された周波数特性を有するように補正フィルタ1620のパラメータを算出する。補正フィルタ設定部1840は、算出したパラメータを補正フィルタ1620に設定する。
【0120】
図19は、本実施形態の変形例に係る、較正処理部1590の動作フローの一例を示す。較正処理部1590は、図17のS1750において、本図に示す処理を行なう。
【0121】
S1910において、周波数特性算出部1810は、各フロントエンドiについて、較正用バンドパス信号y[n]に含まれる各トーンに基づいて、各トーンの周波数における離散的な等価周波数特性H^eqを算出する。S1920において、補間処理部1820は、各フロントエンドiについて、離散的な等価周波数特性H^eqを補間することにより、連続的な等価周波数特性Heqを推定する。
【0122】
S1930において、補正フィルタ決定部1830は、各フロントエンドiについて、推定された等価周波数特性Heqに基づいて、補正フィルタ1620の周波数特性を決定する。S1940において、補正フィルタ設定部1840は、決定された周波数特性を有するように補正フィルタ1620のパラメータを算出する。補正フィルタ設定部1840は、算出したパラメータを補正フィルタ1620に設定する。
【0123】
図20は、本実施形態の変形例に係る、較正用入力信号X(f)のベースバンドスペクトラムの一例を示す。本変形例において、ベースバンドの較正用入力信号Z (f)は、本図の右側に示すように、周波数0を中心周波数とし、繰り返し周波数の幅fpを有する周波数スロットの中に、中心周波数に対して非対称に配置された複数の周波数のそれぞれにトーンを有する。
【0124】
較正用入力信号Z^(f)の少なくとも1つのトーンは、中心周波数を中心として当該トーンの周波数と対称な周波数に較正用入力信号Z^(f)の他のトーンが存在しない周波数を有する。例えば、較正用入力信号Z^(f)は、本図における周波数3/4Δfを有するトーンに関して、中心周波数0を中心としてこのトーンの周波数と対称な周波数-3/4Δfに他のトーンを有しない。本変形例においては、較正用入力信号Z^(f)の全てのトーンが、中心周波数を中心として当該トーンの周波数と対称な周波数に較正用入力信号Z^(f)の他のトーンが存在しない周波数を有するように定められる。
【0125】
較正用入力信号Z^(f)の各トーンは、周波数スロットの中に、予め定められた周波数間隔で配置されてよい。本変形例においては、較正用入力信号Z^(f)の各トーンは、周波数幅fpを有する周波数スロットの中に、Δfの周波数間隔で配置され、その中の1つのトーンは中心周波数から-1/4Δfの位置に配置されてよい。
【0126】
本図の左側は、ベースバンドの較正用入力信号Z^(f)に伴って発生する、周波数軸を中心としてZ^(f)の各トーンの周波数の正負を反転させたベースバンドの共役イメージZ^-k(f)を示す。較正用入力信号Z^k(f)の各トーンが中心周波数に対して非対称に配置されることにより、共役イメージZ^-k(f)の各トーンは、較正用入力信号Z^k(f)の各トーンと異なる周波数に位置することになる。
【0127】
図21は、本実施形態の変形例に係る、較正用入力信号X(f)のスペクトラムの一例を示す。図17のS1700において、較正用信号供給部1570は、図20に示したベースバンドの較正用入力信号Z^(f)を、信号パターンの繰り返し周波数fpの整数倍(図中k倍)の周波数を中心周波数とする周波数スロット内に発生させることにより、較正用入力信号X(f)を発生する。ここでkは1以上の整数であってよく、2以上であってもよい。
【0128】
較正用入力信号X(f)におけるk番目の周波数スロット(中心周波数kfpの周波数スロット)には、図20の右側に示したベースバンドの較正用入力信号Z^(f)が周波数シフトされて配置される。本変形例において、較正用入力信号X(f)は、時間領域において下記の式(9)で表されてよい。
【数9】
【0129】
ここで、φξは較正用入力信号xLPF(t)の初期位相であり、Gは周波数スロット内のトーン数である。一例としてGは奇数である。fcはベースバンドの較正用入力信号Z^(f)を発生させる周波数スロットの中心周波数であり、fc=kfpであってよい。Δfはトーン間の周波数間隔であり、Δf=fp/Gであってよい。
【0130】
式(9)に示した較正用入力信号xLPF(t)の各トーンは、同じ信号強度を有する。これに代えて、較正用入力信号の少なくとも1つのトーンは、他のトーンと異なる信号強度を有してもよい。
【0131】
較正用信号供給部1570は、図10の位相振幅設定部1050に関連して説明したのと同様に、較正用入力信号xLPF(t)の振幅が最小となるように各トーンの初期位相φξを調整してもよい。例えば、較正用信号供給部1570は、以下の式(10)に示したように、各トーンの初期位相φξを非特許文献9に記載のNeuman位相とすることによって、較正用入力信号xLPF(t)の最大振幅を変換器の定格範囲内に抑えてもよい。
【数10】
【0132】
較正用入力信号X(f)におけるk番目の周波数スロットにベースバンドの較正用入力信号Z^(f)を周波数シフトして配置すると、本図に示したように、較正用入力信号X(f)における-k番目の周波数スロット(中心周波数-kfpの周波数スロット)には、図20の右側に示したようなZ^(f)の共役イメージZ^-k(f)が重畳される。較正用入力信号X(f)は、k番目および-k番目以外の周波数スロットには、トーンを有しなくてよい。なお、実際にミキサ130に入力される較正用入力信号X(f)は、例えば図中に示したような信号入力特性1410(HRF)の影響を受ける。
【0133】
図22は、本実施形態の変形例に係る、信号パターンP(f)のスペクトラムの一例を示す。図17のS810において、周期信号発生器120は、本図に示した信号パターンP(f)を発生する。
【0134】
図4に関して示したように、信号パターンP(f)は、l=-L~Lの範囲で周波数l・fpの周波数成分ci,lを含む。なお、信号パターンP(f)における負の周波数成分ci,-l1(l1>0)は、周波数軸(周波数0に位置する縦軸)に対して対称な正の周波数成分ci,l1の共役イメージであり、正の周波数成分ci,l1と同じ大きさを有する。なお、実際にミキサ130に入力される信号パターンP(f)は、例えば図中に示したようなPSF入力特性1420(HLO)の影響を受ける。
【0135】
図23は、本実施形態の変形例に係る、AD変換器150が出力する信号のスペクトラムの一例を示す。図17のS820において、ミキサ130は、図21に示した較正用入力信号X(f)に、図22に示した信号パターンP(f)を乗じる。これにより、較正用入力信号X(f)におけるkfpを中心周波数とする周波数スロットにあるZ^(f―kfp)は、P(f)に含まれる各周波数成分ci,lと乗じられて、中心周波数が(k+l)fpである各周波数スロット内に周波数変換され、ci,lが乗じられた信号ci,l・Z^(f―(k+l)fp)となる。
【0136】
本図に示したように、kfpを中心周波数とする周波数スロットにある較正用入力信号Z^(f―kfp)は、周波数成分ci,-(k+1)と乗じられ、中心周波数が-fpである周波数スロット内に周波数変換されて、信号ci,-(k+1)・Z^(f+fp)となる。較正用入力信号Z^(f―kfp)は、周波数成分ci,-kと乗じられ、中心周波数が0である周波数スロット内に周波数変換されて、信号ci,-k・Z^(f)となる。また、較正用入力信号Z^(f―kfp)は、周波数成分ci,-(k-1)と乗じられ、中心周波数がfpである周波数スロット内に周波数変換されて、信号ci,-(k-1)・Z^(f-fp)となる。
【0137】
同様に、-kfpを中心周波数とする周波数スロットにある較正用入力信号Z^-k(f+kfp)は、周波数成分ci,k-1と乗じられ、中心周波数が-fpである周波数スロット内に周波数変換されて、信号ci,k-1・Z^-k(f+fp)となる。較正用入力信号Z^-k(f+kfp)は、周波数成分ci,kと乗じられ、中心周波数が0である周波数スロット内に周波数変換されて、信号ci,k・Z^-k(f)となる。また、較正用入力信号Z^(f―kfp)は、周波数成分ci,k+1と乗じられ、中心周波数がfpである周波数スロット内に周波数変換されて、信号ci,k+1・Z^-k(f-fp)となる。
【0138】
なお、本図においては、説明の便宜上、中心周波数が0および±1・fpの周波数スロットのみを図示している。実際には、較正用入力信号X(f)は、信号パターンP(f)の周波数成分ci,-L0からci,L0のそれぞれと乗じられて、中心周波数が-(L0+k)・fpから(L0+k)・fpまでの各周波数スロットに周波数変換される。
【0139】
このように、較正用入力信号X(f)および信号パターンP(f)を乗じた信号は、各角周波数スロットに、ベースバンドの較正用入力信号Z^(f)を周波数変換した複数のトーンと、中心周波数に中心としてZ^(f)を反転した共役イメージZ^-k(f)を周波数変換した複数のトーンとの両方とを含む。ここで、ベースバンドの較正用入力信号Z^(f)は、中心周波数を中心として反転した共役イメージに対して非対称に配置された複数のトーンを有するので、各周波数スロットにおける較正用入力信号Z^(f)からの各トーンは、共役イメージZ^-k(f)からの各トーンと異なる周波数を有する。
【0140】
例えば、本図における中心周波数が0の周波数スロットにおいては、較正用入力信号Z^(f)の各トーンは、・・・,-Δf/4,3Δf/4,・・・の周波数に配置される。これに対し、共役イメージZ^-k(f)の各トーンは、・・・,-Δ3f/4,Δf/4,・・・の周波数に配置される。このため、較正用入力信号Z^(f)からの各トーンと共役イメージZ^-k(f)からの隣接するトーンとの間には、Δf/2の周波数差がある。
【0141】
図17のS830において、バンドパスフィルタ140は、ミキサ130が出力するこのような信号yp(t)を帯域制限する。本変形例においてはバンドパスフィルタ140は一例としてローパスフィルタであり、ミキサ130が出力する信号を低域濾波する。図17のS1740において、AD変換器150は、バンドパスフィルタ140が帯域制限した較正用バンドパス信号y(t)をサンプリングしてデジタルの較正用バンドパス信号y[n]を取得する。デジタルの較正用バンドパス信号y[n]に対応する周波数領域の較正用バンドパス信号Y(f)は、等価周波数特性Heqの影響を受ける。実際の較正用バンドパス信号Y(f)は、以下の式(11)に示すY (f)で表される。
【数11】
【0142】
図17のS1740において、補正フィルタ部1555は、デジタルの較正用バンドパス信号y[n]を補正して出力する。ここで、説明の便宜上、補正フィルタ部1555内のローパスフィルタ1610は理想的なローパスフィルタであるとする。また、補正フィルタ1620は、周波数によらずゲイン1かつ位相遅延0であり、入力される信号をそのまま出力するように初期化されているものとする。この場合、較正処理部1900は、較正用バンドパス信号取得部180を介して、本図に示したように、信号ci,l・Z^(f―(k+l)fp)および信号ci,l・Z^-(f―(-k+l)fp)を含む、等価周波数特性Heqの影響を受けた較正用バンドパス信号Y (f)を受け取る。なお、較正用バンドパス信号Y (f)は、ローパスフィルタ1610によって低域濾波されている。
【0143】
図17のS1750において、較正処理部1590は、較正用バンドパス信号Y (f)を用いて補正フィルタ1620を較正する。まず、較正処理部1590内の周波数特性算出部1810は、図19のS1910において、較正用バンドパス信号y[n]に含まれる各トーンに基づいて、各トーンの周波数f^における離散的な等価周波数特性H^eq[f^]を算出する。
【0144】
(1)PSF入力特性1420の影響を考慮しない場合
PSF入力特性1420による影響が小さく無視してよい場合には、式(11)において、信号パターンP(f)の実際の周波数成分c i,l=理想の周波数成分ci,lと置換することにより、以下の式(12)を得ることができる。なお、式(11)から式(12)への変形においては、信号入力特性1410の影響も無視している。
【数12】
【0145】
は、較正用バンドパス信号Y (f)におけるトーンが存在する周波数であり、図23においてはf=-Δf/4+n・Δf/2(ただしnはY (f)においてトーンが存在する範囲内の整数)である。ここで、信号パターンP(f)の理想の周波数成分ci,lは、信号パターンP(f)から計算することができる。また、理想の較正用入力信号Z(f)も既知である。したがって、周波数特性算出部1810は、較正用バンドパス信号Y (f)の各トーンが存在する各周波数fにおけるHeq(f)の離散的な等価周波数特性Heq[f]を算出することができる。
【0146】
なお、図23に示したように、較正用バンドパス信号Y (f)の各周波数スロットにおいて、ベースバンドの較正用入力信号Z^(f)に対応する各トーンと、共役イメージZ^-k(f)に対応する各トーンとは異なる周波数を持つ。したがって、周波数特性算出部1810は、較正用バンドパス信号Y (f)における、ベースバンドの較正用入力信号Z^(f)に対応する各トーンと、共役イメージZ^-k(f)に対応する各トーンとを区別することができる。
【0147】
例えば、f^=3・Δf/4を式(12)に代入すると、図20に示したように、較正用入力信号Z(f^-lp)(ここではl=0)の共役イメージZ-k(f^-lp)は周波数スロット内におけるこの周波数f^にトーンを有しないから0となる。したがって、f^=3・Δf/4の場合、式(12)はHeq[3・Δf/4]=Y (3・Δf/4)/{ci,-k(3・Δf/4)}となる。また、f^が中心周波数lfの周波数スロットに含まれるZ(f)のトーンに対応する場合、Heq[f^]=Y (f^)/{ci,-(k-l)(f^-lf)}となる。
【0148】
したがって、周波数特性算出部1810は、較正用バンドパス信号Y (f^)のあるトーンToの信号強度を、較正用入力信号X(f)における、トーンToに周波数変換された元のトーンTiの信号強度と、信号パターンP(f)における、トーンTiをトーンToに周波数変換した周波数成分ci,αの信号強度とで割ることにより等価周波数特性Heq[f^]のゲインを算出することができる。また、周波数特性算出部1810は、較正用バンドパス信号Y (f^)のあるトーンToの位相から、較正用入力信号X(f)における、トーンToに周波数変換された元のトーンTiの位相と、信号パターンP(f)における、トーンTiをトーンToに周波数変換した周波数成分ci,αの位相とを減じることにより等価周波数特性Heq[f^]の位相を算出することができる。このようにして、周波数特性算出部1810は、較正用バンドパス信号Y (f)に含まれる複数のトーン間での信号強度および位相に応じて、離散的な等価周波数特性Heq[f^]のゲインおよび位相を算出することができる。
【0149】
(2)PSF入力特性1420の影響を考慮する場合
PSF入力特性1420による影響を考慮する場合には、式(11)における信号パターンP(f)の実際の周波数成分c i,lは不明である。そして、式(12)におけるci,-(k-l)およびci,-(k+l)は実際の周波数成分c i,-(k-l)およびc i,-(k+l)のままとなるので、直接等価周波数特性Heq[f^]を算出することができない。
【0150】
しかし、この場合においても、図23に示すように、同一の周波数スロット内においては、較正用入力信号X(f)における正側のスペクトラムZ(f)の各トーンに乗じられる周波数成分c i,-(k-l)は同一であり、較正用入力信号X(f)における負側のスペクトラムZ-k(f)の各トーンに乗じられる周波数成分c i,k-lも同一である。
【0151】
そこで、周波数特性算出部1810は、較正用バンドパス信号Y (f)における各周波数スロット内に含まれる複数のトーン間での信号強度および位相の変化に応じて、各周波数スロット内における離散的な等価周波数特性Heq[f^]のゲインおよび位相の相対変化を算出する。例えば、図23においてH^eq[3・Δf/4]=Y (3・Δf/4)/{ci,-k(3・Δf/4)}のゲインが1.0、H^eq[7・Δf/4]=Y (7・Δf/4)/{ci,-k(7・Δf/4)}のゲインが0.9であったとする。ここで、Z(f)の各トーンの信号強度は周波数によらず一定であったとすると、周波数特性算出部1810は、H^eq[7・Δf/4]のゲインは、H^eq[3・Δf/4]のゲインの0.9倍であると算出することができる。また、周波数特性算出部1810は、位相特性についても同様に、Y (3・Δf/4)の位相からZ(3・Δf/4)の位相を減じたH^eq[3・Δf/4]の位相と、Y (7・Δf/4)の位相からZ(7・Δf/4)の位相を減じたH^eq[7・Δf/4]の位相との間の位相差を算出することができる。
【0152】
なお、周波数特性算出部1810は、上記の(1)および(2)のいずれにおいても、較正用バンドパス信号Y~i(f)における、較正用入力信号X(f)の元のスペクトラムZ(f)および共役イメージZ-k(f)の両方からのトーンを用いて離散的な等価周波数特性H^eqを算出してもよく、いずれか一方のみからのトーンを用いて離散的な等価周波数特性H^eqを算出してもよい。
【0153】
図19のS1920において、補間処理部1820は、離散的な等価周波数特性H^eqを補間することにより、連続的な等価周波数特性Heqを推定する。PSF入力特性1420の影響を考慮しない場合(上記(1)の場合)、補間処理部1820は、本変形例においては周波数ΔfまたはΔf/2間隔で算出された離散的な等価周波数特性H^eqのゲイン特性および位相特性を補間して連続な等価周波数特性Heqを推定する。補間処理部1820は、補間方法として、線形補間、多項式補間、スプライン補間、またはその他の任意の手法を用いてよい。
【0154】
PSF入力特性1420の影響を考慮する場合(上記(2)の場合)においても、補間処理部1820は、上記(1)の場合と同様にして、較正用バンドパス信号Y (f)における各周波数スロット内に含まれる複数のトーン間での信号強度および位相の変化に応じて、各周波数スロット内における等価周波数特性Heqのゲイン特性および位相特性の変化を推定する。これにより、補間処理部1820は、周波数スロット間では不連続であるが、周波数スロット内においては連続な等価周波数特性Heqを推定することができる。
【0155】
また、補間処理部1820は、較正用バンドパス信号Y (f)における隣接するある周波数スロット(「第1の周波数スロット」と示す。)およびその隣の周波数スロット(「第2の周波数スロット」と示す。)の間の境界において、第1の周波数スロット側の等価周波数特性Heqと、第2の周波数スロット側の等価周波数特性Heqとを近付ける調整を行なう。例えば図23において、補間処理部1820は、中心周波数を0とする周波数スロットを第1の周波数スロットとし、第1の周波数スロット内で連続な第1の等価周波数特性Heqと、中心周波数をfpとする第2の周波数スロット内で連続な第2の等価周波数特性Heqとを算出したとする。この段階では、第1の等価周波数特性Heqと、第2の等価周波数特性Heqとは不連続である。そこで例えば、補間処理部1820は、第1および第2の周波数スロットの境界である周波数fp/2における第2の等価周波数特性Heqのゲイン特性および位相特性を、周波数fp/2における第1の等価周波数特性Heqのゲイン特性および位相特性と一致させるように調整し、第2の等価周波数特性Heqにおける他の周波数のゲイン特性および位相特性も同じ調整量分調整する。補間処理部1820は、中心周波数が0以外の周波数スロットを第1の周波数スロットとみなし、第1の周波数スロットに隣接する第2の周波数スロットとの間で等価周波数特性Heqを近付けるように調整してよい。
【0156】
これにより、補間処理部1820は、例えば中心周波数を0とする周波数スロットから高周波数の周波数スロットへと順に等価周波数特性Heqを調整して、連続な等価周波数特性Heqを推定することができる。なお、補間処理部1820は、中心周波数が0以外の周波数スロットを、この処理の起点としてもよい。
【0157】
図19のS1930において、補正フィルタ決定部1830は、等価周波数特性Heqを相殺することができるように補正フィルタ1620の周波数特性Hを決定する。補正フィルタ決定部1830は、補正フィルタ1620の周波数特性Hを、バンドパスフィルタ140およびローパスフィルタ1610における帯域制限のカットオフ周波数fbpfまでの各周波数スロットについて、当該周波数スロットにおける等価周波数特性Heqの逆特性に応じた特性とする。ここで、補正フィルタ決定部1830は、補正フィルタ1620の周波数特性Hを、以下の式(13)により決定してよい。
【数13】
【0158】
このように、較正処理部1590は、周波数特性Hc(f)を、推定したHeq(f)およびローパスフィルタ1610の既知の周波数特性H(f)の積の逆特性とする。なお、本変形例においては、較正用バンドパス信号Y (f)は、補正フィルタ部1555を経た信号である。したがって、補正フィルタ1620の周波数特性Hがゲイン1、位相0以外に設定済みである場合には、補正フィルタ1620は、設定済みの周波数特性Hに、推定した等価周波数特性Heq(f)の逆特性を乗じて新たな周波数特性Hを決定してよい。
【0159】
図19のS1940において、補正フィルタ設定部1840は、補正フィルタ1620を決定された周波数特性Hとする補正フィルタ1620のパラメータを算出する。例えば補正フィルタ1620がFIR(Finite Impulse Response)フィルタである場合、補正フィルタ設定部1840は、決定された周波数特性HからFIRフィルタの各フィルタ係数を算出する。補正フィルタ設定部1840は、算出したフィルタ係数を補正フィルタ1620に設定する。
【0160】
以上に示した変換装置1500によれば、各フロントエンドのバンドパスフィルタ140等が有する実際の周波数特性を、補正フィルタ部1555により補償することができる。また、変換装置1500によれば、図21に例示した較正用入力信号を変換器に供給することにより、各フロントエンドのバンドパスフィルタ140等を含むパスの、複数周波数スロットにわたる等価周波数特性Heqを一括して推定することができ、等価周波数特性Heqの逆特性に基づいて補正フィルタ部1555内の補正フィルタ1620の周波数特性を設定することができる。
【0161】
図24は、本実施形態の変形例に係る、補正前および補正後の出力信号のスペクトラムの一例を示す。本図は、式(9)に示した較正用入力信号xLPF(t)を変換装置1500により再構成した出力信号xo(t)のスペクトラムをシミュレーションにより生成した結果を示す。なお、フロントエンドの数mは4、AD変換器150のサンプリング周波数fsは信号パターンの周波数fpの16倍(q=16)である。
【0162】
補正フィルタ部1555による補正を行なわない場合、出力信号xo(t)のスペクトラムには、バンドパスフィルタ140等の実際の周波数特性に応じて、-45dB程度までの共役イメージ(スプリアス)が発生している。これに対し、較正処理部1590によって補正フィルタ1620を較正した後には、変換装置1500は、スプリアスを-76dB程度まで抑え込むことができている。
【0163】
図25は、本実施形態の変形例に係る、補正前および補正後において較正用入力信号XLPF(f)を入力したことに応じてAD変換器150および補正フィルタ部1555が出力する出力信号のスペクトラムの一例を示す。本図は、変換装置1500の変換器部分の回路をオンボードで実装して、実際の回路を用いて測定した結果を示す。ここで、信号パターンp(t)の繰り返し周波数fpが1MHz、周波数スロットの数Lが160、入力信号x(t)の検出対象となる周波数帯域幅が160MHz、信号パターンp(t)の1周期のシンボル数が500,フロントエンドの数mが4、AD変換器150のサンプリング周波数fsが100MHz、バンドパスフィルタ140のカットオフ周波数が30MHzである。
【0164】
補正フィルタ部1555による補正を行なわない場合、本図の左側に示したように、周波数0~0.5MHzの周波数スロットでは、低周波数においてバンドパスフィルタ140等のゲイン低下によって出力信号Xo(f)の信号強度の低下が見られる。また、周波数0.5~1.5MHz、1.5~2.5MHz、および2.5MHz~の各周波数スロットにおいても、周波数が上がるにつれてゲインがなだらかに低下している。
【0165】
これに対し、較正処理部1590によって補正フィルタ1620を較正した後の出力信号Xo(f)は、本図の右側に示したように、周波数スロット毎に周波数によらずほぼ一定の信号強度を有するようになる。なお、出力信号Xo(f)は、較正用入力信号XLPF(f)のベースバンドスペクトラムZ(f)およびZ-k(f)に対して、信号パターンP(f)における周波数スロット毎に異なる周波数成分ci,lが乗じられて得られるものであることから、出力信号Xo(f)における周波数スロットの境界は不連続となる。
【0166】
図26は、本実施形態の変形例に係る、バンドパスフィルタ140の一例としてのローパスフィルタ(LPF)、および補正フィルタ1620の周波数特性の一例を示す。本図は、横軸に周波数、縦軸にゲインおよび位相をとり、実際のバンドパスフィルタ140の周波数特性(図中「LPF」)、理想的な補正フィルタ1620の周波数特性(図中「望ましい補正フィルタ」)、および実際の変換装置1500により決定された補正フィルタ1620の周波数特性(図中「実際の補正フィルタ」)を示す。
【0167】
図25に関連して説明したように、実際のバンドパスフィルタ140は、約0.3MHz以下の低周波数においてゲインが低下している。また、実際のバンドパスフィルタ140は、約0.3MHz以上の周波数においてもゲインがなだらかに低下している。また、実際のバンドパスフィルタ140は、本図の下側のグラフに示したように、周波数によって異なる位相特性を有する。
【0168】
本変形例に係る変換装置1500は、本図に示したように、実際のバンドパスフィルタ140に固有の周波数特性を相殺する理想の補正フィルタとほぼ同じ周波数特性を有するように、補正フィルタ1620を較正することができる。このように、本変形例に係る変換装置1500は、サンプリング周波数fsが信号パターンp(t)の繰り返し周波数よりも高い場合、すなわち例えばfs=q・fp(qは1を超える整数)の場合であっても、複数の周波数スロットにわたってバンドパスフィルタ140等の等価周波数特性Heqを相殺するように補正フィルタ1620を調整することができる。
【0169】
なお、変換装置1500の較正用バンドパス信号取得部180、較正用信号供給部1570、および較正処理部1590は、図12から図26に関連して示したように補正フィルタ1620を較正した後に、図1から図11に関連して示したように再構成部160の較正を行なってよい。これにより、変換装置1500は、補正フィルタ部1555によってより理想に近づけた各フロントエンドからの複数の較正用バンドパス信号を用いて再構成部160における再構成パラメータを調整することができる。
【0170】
逆に、変換装置1500の較正用バンドパス信号取得部180、較正用信号供給部1570、および較正処理部1590は、図1から図11に関連して示したように再構成部160の較正を行なった後に、図12から図26に関連して示したように補正フィルタ1620を較正してもよい。図9に関連して説明したように、較正処理部1590は、再構成部160の較正時に、信号パターンP(f)の各周波数成分ci,lの実際の値(信号強度および位相)を検出することができる。較正処理部1590は、再構成部160の較正時に検出した各周波数成分ci,lの実際の値を用いることで、図23に関連して「(1)PSF入力特性1420の影響を考慮しない場合」で説明した手法を用いつつ、PSF入力特性1420の影響を考慮して等価周波数特性Heqを推定することができる。較正処理部1590は、補正フィルタ1620の較正および再構成部160の較正を繰り返し行なうことにより、補正フィルタ1620および再構成部160の精度をさらに高めてもよい。
【0171】
以上に示した較正処理部1590は、補正フィルタ1620のゲイン特性および位相特性の両方を調整する。これに代えて、較正処理部1590は、補正フィルタ1620のゲイン特性および位相特性のいずれか一方のみを調整してもよい。
【0172】
本発明の様々な実施形態は、フローチャートおよびブロック図を参照して記載されてよく、ここにおいてブロックは、(1)操作が実行されるプロセスの段階または(2)操作を実行する役割を持つ装置のセクションを表わしてよい。特定の段階およびセクションが、専用回路、コンピュータ可読媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプログラマブル回路、および/またはコンピュータ可読媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプロセッサによって実装されてよい。専用回路は、デジタルおよび/またはアナログハードウェア回路を含んでよく、集積回路(IC)および/またはディスクリート回路を含んでよい。プログラマブル回路は、論理AND、論理OR、論理XOR、論理NAND、論理NOR、および他の論理操作、フリップフロップ、レジスタ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブルロジックアレイ(PLA)等のようなメモリ要素等を含む、再構成可能なハードウェア回路を含んでよい。
【0173】
コンピュータ可読媒体は、適切なデバイスによって実行される命令を格納可能な任意の有形なデバイスを含んでよく、その結果、そこに格納される命令を有するコンピュータ可読媒体は、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく実行され得る命令を含む、製品を備えることになる。コンピュータ可読媒体の例としては、電子記憶媒体、磁気記憶媒体、光記憶媒体、電磁記憶媒体、半導体記憶媒体等が含まれてよい。コンピュータ可読媒体のより具体的な例としては、フロッピー(登録商標)ディスク、ディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM)、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)、コンパクトディスクリードオンリメモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイ(登録商標)ディスク、メモリスティック、集積回路カード等が含まれてよい。
【0174】
コンピュータ可読命令は、アセンブラ命令、命令セットアーキテクチャ(ISA)命令、マシン命令、マシン依存命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、またはSmalltalk(登録商標)、JAVA(登録商標)、C++等のようなオブジェクト指向プログラミング言語、および「C」プログラミング言語または同様のプログラミング言語のような従来の手続型プログラミング言語を含む、1または複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述されたソースコードまたはオブジェクトコードのいずれかを含んでよい。
【0175】
コンピュータ可読命令は、汎用コンピュータ、特殊目的のコンピュータ、若しくは他のコンピュータ等のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサまたはプログラマブル回路に対し、ローカルにまたはローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネット等のようなワイドエリアネットワーク(WAN)を介して提供され、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく、コンピュータ可読命令を実行してよい。プロセッサの例としては、コンピュータプロセッサ、処理ユニット、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ等を含む。
【0176】
図27は、本発明の複数の態様が全体的または部分的に具現化されてよいコンピュータ2200の例を示す。コンピュータ2200にインストールされたプログラムは、コンピュータ2200に、本発明の実施形態に係る装置に関連付けられる操作または当該装置の1または複数のセクションとして機能させることができ、または当該操作または当該1または複数のセクションを実行させることができ、および/またはコンピュータ2200に、本発明の実施形態に係るプロセスまたは当該プロセスの段階を実行させることができる。そのようなプログラムは、コンピュータ2200に、本明細書に記載のフローチャートおよびブロック図のブロックのうちのいくつかまたはすべてに関連付けられた特定の操作を実行させるべく、CPU2212によって実行されてよい。
【0177】
本実施形態によるコンピュータ2200は、CPU2212、RAM2214、グラフィックコントローラ2216、およびディスプレイデバイス2218を含み、それらはホストコントローラ2210によって相互に接続されている。コンピュータ2200はまた、通信インターフェイス2222、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROMドライブ2226、およびICカードドライブのような入/出力ユニットを含み、それらは入/出力コントローラ2220を介してホストコントローラ2210に接続されている。コンピュータはまた、ROM2230およびキーボード2242のようなレガシの入/出力ユニットを含み、それらは入/出力チップ2240を介して入/出力コントローラ2220に接続されている。
【0178】
CPU2212は、ROM2230およびRAM2214内に格納されたプログラムに従い動作し、それにより各ユニットを制御する。グラフィックコントローラ2216は、RAM2214内に提供されるフレームバッファ等またはそれ自体の中にCPU2212によって生成されたイメージデータを取得し、イメージデータがディスプレイデバイス2218上に表示されるようにする。
【0179】
通信インターフェイス2222は、ネットワークを介して他の電子デバイスと通信する。ハードディスクドライブ2224は、コンピュータ2200内のCPU2212によって使用されるプログラムおよびデータを格納する。DVD-ROMドライブ2226は、プログラムまたはデータをDVD-ROM2201から読み取り、ハードディスクドライブ2224にRAM2214を介してプログラムまたはデータを提供する。ICカードドライブは、プログラムおよびデータをICカードから読み取り、および/またはプログラムおよびデータをICカードに書き込む。
【0180】
ROM2230はその中に、アクティブ化時にコンピュータ2200によって実行されるブートプログラム等、および/またはコンピュータ2200のハードウェアに依存するプログラムを格納する。入/出力チップ2240はまた、様々な入/出力ユニットをパラレルポート、シリアルポート、キーボードポート、マウスポート等を介して、入/出力コントローラ2220に接続してよい。
【0181】
プログラムが、DVD-ROM2201またはICカードのようなコンピュータ可読媒体によって提供される。プログラムは、コンピュータ可読媒体から読み取られ、コンピュータ可読媒体の例でもあるハードディスクドライブ2224、RAM2214、またはROM2230にインストールされ、CPU2212によって実行される。これらのプログラム内に記述される情報処理は、コンピュータ2200に読み取られ、プログラムと、上記様々なタイプのハードウェアリソースとの間の連携をもたらす。装置または方法が、コンピュータ2200の使用に従い情報の操作または処理を実現することによって構成されてよい。
【0182】
例えば、通信がコンピュータ2200および外部デバイス間で実行される場合、CPU2212は、RAM2214にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理に基づいて、通信インターフェイス2222に対し、通信処理を命令してよい。通信インターフェイス2222は、CPU2212の制御下、RAM2214、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROM2201、またはICカードのような記録媒体内に提供される送信バッファ処理領域に格納された送信データを読み取り、読み取られた送信データをネットワークに送信し、またはネットワークから受信された受信データを記録媒体上に提供される受信バッファ処理領域等に書き込む。
【0183】
また、CPU2212は、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROMドライブ2226(DVD-ROM2201)、ICカード等のような外部記録媒体に格納されたファイルまたはデータベースの全部または必要な部分がRAM2214に読み取られるようにし、RAM2214上のデータに対し様々なタイプの処理を実行してよい。CPU2212は次に、処理されたデータを外部記録媒体にライトバックする。
【0184】
様々なタイプのプログラム、データ、テーブル、およびデータベースのような様々なタイプの情報が記録媒体に格納され、情報処理を受けてよい。CPU2212は、RAM2214から読み取られたデータに対し、本開示の随所に記載され、プログラムの命令シーケンスによって指定される様々なタイプの操作、情報処理、条件判断、条件分岐、無条件分岐、情報の検索/置換等を含む、様々なタイプの処理を実行してよく、結果をRAM2214に対しライトバックする。また、CPU2212は、記録媒体内のファイル、データベース等における情報を検索してよい。例えば、各々が第2の属性の属性値に関連付けられた第1の属性の属性値を有する複数のエントリが記録媒体内に格納される場合、CPU2212は、第1の属性の属性値が指定される、条件に一致するエントリを当該複数のエントリの中から検索し、当該エントリ内に格納された第2の属性の属性値を読み取り、それにより予め定められた条件を満たす第1の属性に関連付けられた第2の属性の属性値を取得してよい。
【0185】
上で説明したプログラムまたはソフトウェアモジュールは、コンピュータ2200上またはコンピュータ2200近傍のコンピュータ可読媒体に格納されてよい。また、専用通信ネットワークまたはインターネットに接続されたサーバーシステム内に提供されるハードディスクまたはRAMのような記録媒体が、コンピュータ可読媒体として使用可能であり、それによりプログラムを、ネットワークを介してコンピュータ2200に提供する。
【0186】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0187】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0188】
100 変換装置、110 セレクタ、120 周期信号発生器、130 ミキサ、140 バンドパスフィルタ、150 AD変換器、160 再構成部、170 較正用信号供給部、180 較正用バンドパス信号取得部、190 較正処理部、310 信号、320 信号、1000 較正用信号供給部、1010 トリガ発生器、1020 サイン波発生器、1030 アッテネータ、1040 マルチプレクサ、1050 位相振幅設定部、1100 較正処理部、1110 信号成分検出部、1120 較正パラメータ算出部、1400 理想ミキサ、1410 信号入力特性、1420 PSF入力特性、1430 ミキサ出力特性、1440 理想AD変換器、1450 AD変換特性、1500 変換装置、1555 補正フィルタ部、1570 較正用信号供給部、1590 較正処理部、1600 アップサンプラ、1610 ローパスフィルタ、1620 補正フィルタ、1630 ダウンサンプラ、1810 周波数特性算出部、1820 補間処理部、1830 補正フィルタ決定部、1840 補正フィルタ設定部、2200 コンピュータ、2201 DVD-ROM、2210 ホストコントローラ、2212 CPU、2214 RAM、2216 グラフィックコントローラ、2218 ディスプレイデバイス、2220 入/出力コントローラ、2222 通信インターフェイス、2224 ハードディスクドライブ、2226 DVD-ROMドライブ、2230 ROM、2240 入/出力チップ、2242 キーボード
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