(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055293
(43)【公開日】2023-04-18
(54)【発明の名称】プラズマエッチング装置、及びプラズマエッチング方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20230411BHJP
H05H 1/24 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
H01L21/302 101E
H05H1/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021164503
(22)【出願日】2021-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】早川 晋
(72)【発明者】
【氏名】溝本 康隆
【テーマコード(参考)】
2G084
5F004
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084CC12
2G084CC13
2G084CC14
2G084CC33
2G084CC34
2G084DD38
2G084FF02
2G084FF07
5F004AA16
5F004BB13
5F004BB14
5F004BB22
5F004BB28
5F004CA05
5F004CA06
5F004CA08
5F004DA18
5F004DA23
5F004DA26
5F004DB01
5F004DB03
5F004DB19
5F004EA38
5F004EB08
(57)【要約】
【課題】基板の厚みを調整する、技術を提供する。
【解決手段】プラズマエッチング装置は、基板保持部と、プラズマ生成部と、ノズルと、電極と、高周波電源と、移動部と、制御部と、を備える。前記基板保持部は、処理室の内部で基板を保持する。前記プラズマ生成部は、前記基板をエッチングするエッチングガスを前記処理室の外部でプラズマ化する。前記ノズルは、前記プラズマ化した前記エッチングガスを、前記基板保持部で保持されている前記基板の一部に供給する。前記電極は、前記基板保持部に設けられている。前記高周波電源は、前記電極にバイアス用の高周波電力を印可する。前記移動部は、前記基板における前記プラズマ化した前記エッチングガスの供給位置を移動させる。前記制御部は、前記プラズマ生成部、前記高周波電源、及び前記移動部を制御する。前記制御部は、前記供給位置に応じて、前記高周波電力の電圧を変更する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室の内部で基板を保持する基板保持部と、
前記基板をエッチングするエッチングガスを前記処理室の外部でプラズマ化するプラズマ生成部と、
前記プラズマ化した前記エッチングガスを、前記基板保持部で保持されている前記基板の一部に供給するノズルと、
前記基板保持部に設けられている電極と、
前記電極にバイアス用の高周波電力を印可する高周波電源と、
前記基板における前記プラズマ化した前記エッチングガスの供給位置を移動させる移動部と、
前記プラズマ生成部、前記高周波電源、及び前記移動部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記供給位置に応じて、前記高周波電力の電圧を変更する制御を行う、プラズマエッチング装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記基板の厚み分布の測定データを取得し、取得した前記測定データに基づいて前記高周波電力の前記電圧を変更する制御を行う、請求項1に記載のプラズマエッチング装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記供給位置に応じて、前記プラズマ化した前記エッチングガスの流量又は供給時間を変更する制御を行う、請求項1又は2に記載のプラズマエッチング装置。
【請求項4】
処理室の内部で基板を保持する基板保持部と、
前記基板をエッチングするエッチングガスを前記処理室の外部でプラズマ化するプラズマ生成部と、
前記プラズマ化した前記エッチングガスを、前記基板保持部で保持されている前記基板の一部に供給するノズルと、
前記基板における前記プラズマ化した前記エッチングガスの供給位置を移動させる移動部と、
前記プラズマ生成部、及び前記移動部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記供給位置に応じて、前記プラズマ化した前記エッチングガスの流量又は供給時間を変更する制御を行う、プラズマエッチング装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記基板の厚み分布の測定データを取得し、取得した前記測定データに基づいて前記流量又は前記供給時間を変更する制御を行う、請求項3又は4に記載のプラズマエッチング装置。
【請求項6】
前記移動部は、前記基板保持部を回転させることで、前記基板を回転させる回転移動部を含み、
前記基板の径方向に複数の前記ノズルを有する、請求項1~5のいずれか1項に記載のプラズマエッチング装置。
【請求項7】
処理室の内部の基板保持部で基板を保持することと、
前記基板をエッチングするエッチングガスを前記処理室の外部でプラズマ化することと、
前記プラズマ化した前記エッチングガスをノズルから吐出し、前記基板保持部で保持されている前記基板の一部に供給することと、
前記基板保持部に設けられている電極にバイアス用の高周波電力を印可することと、
前記基板における前記プラズマ化した前記エッチングガスの供給位置を移動させることと、
前記供給位置に応じて、前記高周波電力の電圧を変更することと、
を有する、プラズマエッチング方法。
【請求項8】
前記基板の厚み分布の測定データを取得することと、取得した前記測定データに基づいて前記高周波電力の前記電圧を変更することと、を有する、請求項7に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項9】
前記ノズルは、前記基板の径方向に複数配置される、請求項7又は8に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項10】
処理室の内部の基板保持部で基板を保持することと、
前記基板をエッチングするエッチングガスを前記処理室の外部でプラズマ化することと、
前記プラズマ化した前記エッチングガスをノズルから吐出し、前記基板保持部で保持されている前記基板の一部に供給することと、
前記基板における前記プラズマ化した前記エッチングガスの供給位置を移動させることと、
前記供給位置に応じて、前記プラズマ化した前記エッチングガスの流量又は供給時間を変更することと、
を有する、プラズマエッチング方法。
【請求項11】
前記基板の厚み分布の測定データを取得することと、取得した前記測定データに基づいて前記プラズマ化した前記エッチングガスの流量又は供給時間を変更することと、を有する、請求項10に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項12】
前記ノズルは、前記基板の径方向に複数配置され、
前記ノズルごとに独立に、前記ノズルから吐出される前記プラズマ化した前記エッチングガスの流量又は供給時間を変更することを有する、請求項10又は11に記載のプラズマエッチング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラズマエッチング装置、及びプラズマエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のプラズマエッチング装置は、真空チャンバーと、静電チャックテーブルと、ノズルと、ノズル揺動手段と、制御手段と、を備える。静電チャックテーブルは、真空チャンバー内で被加工物を保持する。ノズルは、静電チャックテーブルに保持された被加工物の一部にプラズマエッチングガスを供給する。ノズル揺動手段は、水平な円弧状の軌跡を描くようにノズルを揺動させる。制御部は、静電チャックの回転量とノズルの位置とを制御し、被加工物の任意の一部にプラズマエッチングガスを供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の一態様は、基板の厚みを調整する、技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係るプラズマエッチング装置は、基板保持部と、プラズマ生成部と、ノズルと、電極と、高周波電源と、移動部と、制御部と、を備える。前記基板保持部は、処理室の内部で基板を保持する。前記プラズマ生成部は、前記基板をエッチングするエッチングガスを前記処理室の外部でプラズマ化する。前記ノズルは、前記プラズマ化した前記エッチングガスを、前記基板保持部で保持されている前記基板の一部に供給する。前記電極は、前記基板保持部に設けられている。前記高周波電源は、前記電極にバイアス用の高周波電力を印可する。前記移動部は、前記基板における前記プラズマ化した前記エッチングガスの供給位置を移動させる。前記制御部は、前記プラズマ生成部、前記高周波電源、及び前記移動部を制御する。前記制御部は、前記供給位置に応じて、前記高周波電力の電圧を変更する。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一態様によれば、基板の厚みを調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るプラズマエッチング装置を示す図である。
【
図3】
図3は、基板処理方法の一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、薄化前の基板の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、基板の薄化に用いられる研削装置の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、吐出ノズルの配置の第1例を示す図である。
【
図8】
図8は、吐出ノズルの配置の第2例を示す図である。
【
図9】
図9は、吐出ノズルの配置の第3例を示す図である。
【
図10】
図10は、吐出ノズルの配置の第4例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略することがある。本明細書において、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向は互いに垂直な方向である。X軸方向及びY軸方向は水平方向、Z軸方向は鉛直方向である。
【0009】
先ず、
図1及び
図2を参照して、一実施形態に係るプラズマエッチング装置1について説明する。プラズマエッチング装置1は、プラズマ化したエッチングガスによって基板Wをエッチングする。プラズマエッチング装置1は、本実施形態では真空プラズマ装置であるが、大気圧プラズマ装置であってもよい。
【0010】
プラズマエッチング装置1は、例えば、処理容器10と、排気部15と、基板保持部20と、プラズマ生成部30と、ノズル40と、電極50と、高周波電源51と、移動部60と、制御部90と、を備える。
【0011】
処理容器10は、処理室11を内部に有する。処理容器10は、基板Wの搬入出口12と、搬入出口12を開閉するゲートバルブ13と、を有する。
【0012】
排気部15は、処理室11のガスを排気することで、処理室11を減圧する。排気部15は、処理容器10に接続される配管16を含む。排気部15は、図示しないが、配管16の途中に設けられる開閉バルブと、配管16の途中に設けられる圧力制御器とを含む。
【0013】
真空ポンプなどの減圧源が作動し、開閉バルブが配管16を開くと、配管16が処理室11のガスを吸引する。処理室11のガス圧は、圧力制御器によって制御される。圧力制御器は、例えばバタフライバルブなどの圧力調整バルブを備える。
【0014】
基板保持部20は、処理室11の内部で基板Wを保持する。基板保持部20は、例えば静電チャックである。静電チャックは、減圧雰囲気下で、基板Wを吸着できる。なお、プラズマエッチング装置1が大気圧下で基板Wをエッチングする場合、基板保持部20は真空チャックであってもよい。
【0015】
プラズマ生成部30は、基板Wをエッチングするエッチングガスを処理室11の外部でプラズマ化する。プラズマ化したエッチングガスは、ラジカルを含む。ラジカルは、例えばイオンを含む。ラジカルは、基板Wの第1主面Waに衝突することで、基板Wをエッチングする。プラズマ生成部30は、図示しないが、例えば、プラズマ生成用の電極と、電極に高周波電力を供給する高周波電源を含む。
【0016】
プラズマ生成部30は、例えばマイクロ波でエッチングガスをプラズマ化する。マイクロ波の周波数は、例えば2.45GHzである。プラズマは、マイクロ波プラズマには限定されず、容量結合プラズマ、又は誘導結合プラズマ等であってもよい。ラジカルが生成されればよい。プラズマ生成用の高周波電力は、周波数が例えば450kHz~2.45GHzであり、電圧が例えば0.5kV~5kVである。
【0017】
プラズマ生成部30は、図示しないが、プラズマ生成用の電極が設けられるガス供給室を有し、ガス供給室でエッチングガスをプラズマ化する。エッチングガスは、混合ガスであってもよく、例えばSF6ガスとO2ガスの混合ガスであってもよい。ガス供給室には、エッチングガスの他に、エッチングガスを希釈する希釈ガスを供給してもよい。希釈ガスとしては、Arガスなどの不活性ガスが用いられる。
【0018】
プラズマ生成部30は、例えば、ガスの種類毎に、個別配管と、個別配管の途中に設けられる開閉バルブと、個別配管の途中に設けられる流量制御器とを含む。開閉バルブが個別配管を開くと、供給源からガス供給室にガスが供給される。その供給量は流量制御器によって制御される。一方、開閉バルブが個別配管を閉じると、供給源からガス供給室へのガスの供給が停止される。
【0019】
ノズル40は、プラズマ生成部30でプラズマ化したエッチングガスを、基板保持部20で保持されている基板Wの一部に供給する。ノズル40は、プラズマ化したエッチングガスを吐出する吐出ノズル41を有する。吐出ノズル41は、例えば基板Wの第1主面Waに対して垂直に、プラズマ化したエッチングガスを吐出する。吐出ノズル41は、その下端に吐出口41aを有する。
【0020】
プラズマ化したエッチングガスの流量及び供給時間は、例えばプラズマ生成部30の流量制御器及び開閉弁を用いて制御する。プラズマ化したエッチングガスの流量が多いほど、エッチング速度が速い。また、プラズマ化したエッチングガスの供給時間が長いほど、エッチング量が大きい。
【0021】
ノズル40は、吐出ノズル41を取り囲む吸引ノズル42を有してもよい。吐出ノズル41と吸引ノズル42は、二重管を構成する。吸引ノズル42は、プラズマ化したエッチングガスを吸引することで、基板Wのエッチングされる領域を絞る。吸引ノズル42の下端の吸引口42aは、例えば吐出ノズル41の下端の吐出口41aよりも下方に設置される。
【0022】
電極50は、基板保持部20に設けられている。例えば、電極50は、基板保持部20の内部に埋設されている。基板保持部20が基板Wを水平に保持する場合、鉛直方向から見たときに、電極50は基板Wと同程度以上の大きさを有する。電極50には、高周波電源51が電気的に接続される。
【0023】
高周波電源51は、電極50に高周波電力を印可する。その高周波電力は、プラズマ化したエッチングガスのラジカルを基板Wに引き込むための電力であり、ラジカルのエネルギーを制御するためのバイアス用の電力である。バイアス用の高周波電力は、周波数が例えば0.1MHz~100MHzであり、電圧が例えば0.5kV~5kVである。バイアス用の高周波電力は、プラズマ生成用の高周波電力とは独立に制御される。
【0024】
高周波電源51は、電極50に高周波電力を印可することで、基板Wの第1主面Waの近傍にシース領域を発生させる。シース領域は、イオンなどのラジカルが基板Wの第1主面Waに繰り返し衝突する領域である。ラジカルの衝突によって、基板Wの第1主面Waがエッチングされる。高周波電力の電圧が高いほど、ラジカルのエネルギーが高く、エッチング速度が速い。
【0025】
移動部60は、基板Wにおけるプラズマ化したエッチングガスの供給位置を移動させる。移動部60は、例えば、回転移動部61と、直線移動部62とを有する。回転移動部61は、基板保持部20を回転させる。回転移動部61は、例えばモータを含む。直線移動部62は、基板保持部20の回転中心線と直交する方向に基板保持部20を移動させる。直線移動部62は、例えばモータと、モータの回転運動を直線運動に変換するボールねじと、を含む。
【0026】
基板保持部20が基板Wを水平に保持する場合、回転移動部61は鉛直な回転中心線を中心に基板保持部20を回転させ、直線移動部62は基板保持部20を水平方向に移動させる。なお、移動部60は、基板保持部20とノズル40を相対的に移動すればよく、ノズル40を移動してもよい。移動部60は、特許文献1と同様にノズル40を旋回移動させてもよい。
【0027】
制御部90は、例えばコンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)91と、メモリ等の記憶媒体92とを備える。記憶媒体92には、プラズマエッチング装置1において実行される各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御部90は、記憶媒体92に記憶されたプログラムをCPU91に実行させることにより、プラズマエッチング装置1の動作を制御する。
【0028】
次に、
図3を参照して、
図1及び
図2に示すプラズマエッチング装置1を用いた基板処理方法について説明する。基板処理方法は、例えば、
図3に示すステップS101~S103を含む。プラズマエッチング装置1は、ステップS103を実施する。
【0029】
図3のステップS101では、基板Wの薄化を行う。基板Wは、例えばシリコンウェハであるが、化合物半導体ウェハであってもよい。基板Wは、ガラス基板であってもよい。基板Wは、
図4に示すように、第1主面Waと、第1主面Waとは反対向きの第2主面Wbと、を有する。
【0030】
基板Wの第1主面Waは、プラズマエッチング装置1でエッチングされる。基板Wの第2主面Wbには、不図示のデバイスが形成されている。デバイスは、例えば電子回路であり、
図4に破線で示す複数本のストリートで区画される領域毎に形成されている。ステップS103の後で、基板Wは、複数本のストリートに沿って切断され、複数のチップに分割される。
【0031】
基板Wの第2主面Wbには、デバイスを保護する保護膜Fが形成されていてもよい。保護膜Fは、基板Wの薄化を行う間、デバイスを保護する。保護膜Fは、基板Wの第2主面Wbの全体を覆う。保護膜Fは、基板Wの薄化後に除去される。なお、基板Wの第2主面Wbには、保護膜Fが形成される代わりに、基板Wとは別の第2基板が接合されていてもよい。第2基板は、シリコンウェハ、化合物半導体ウェハ又はガラス基板である。第2基板の基板Wに対向する面にも、デバイスが形成されていてもよい。
【0032】
基板Wの薄化には、例えば
図5に示す研削装置100を用いる。研削装置100は、例えば、フランジ101と、スピンドル軸102と、第1回転モータ103と、チャック104と、第2回転モータ105と、を備える。
【0033】
フランジ101は、スピンドル軸102の下端に設けられる。フランジ101には、研削工具Dが取り付けられる。研削工具Dは、例えば、円盤状の研削ホイールD1と、研削ホイールD1の下面にリング状に配列される複数の砥石D2と、を含む。第1回転モータ103は、回転中心線R1を中心にスピンドル軸102を回転させることで、研削工具Dを回転させる。
【0034】
チャック104は、基板Wの第1主面Waを上に向けて、基板Wを下方から保持する。チャック104の基板Wを吸着する吸着面、つまりチャック104の上面は、チャック104の回転中心線R2を中心に対称な円錐面であってもよい。チャック104の回転中心線R2の傾斜角度を調整することで、基板Wの径方向における厚み分布を調整できる。第2回転モータ105は、回転中心線R2を中心にチャック104を回転させることで、基板Wを回転させる。
【0035】
図6に示すように、リング状に配列される複数の砥石D2の軌道Eは、基板Wの上面の中心を通るように設定される。また、基板Wの上面の中心がチャック104の回転中心線R2を通るように、基板Wがチャック104に吸着される。チャック104と共に基板Wが回転することにより、基板Wの上面全体が砥石D2によって研削される。
【0036】
研削後の基板Wは、厚み分布を有する。厚みのばらつきは、例えば厚みの最大値と最小値の差(TTV:Total Thickness Variation)で表される。厚みのばらつきは、例えば
図6に示す砥石D2の軌道E上での砥石D2と基板Wの相対速度差などに起因する。保護膜Fが用いられる場合、保護膜Fの変形によって厚みのばらつきが大きくなる。
【0037】
なお、基板Wの薄化には、不図示のレーザー加工装置を用いてもよい。レーザー加工装置は、基板Wの内部に改質層を形成する。改質層は、基板Wの径方向及び周方向に間隔をおいて複数形成される。複数の改質層を起点に基板Wを分割することで、基板Wを薄化することができる。この場合も、薄化後の基板Wは、厚み分布を有する。
【0038】
図3のステップS102では、薄化した基板Wの厚み分布の測定を行う。基板Wの厚み分布の測定には、
図1に示す測定装置200を用いる。基板Wの厚み分布の測定場所は、研削装置100又はレーザー加工装置の内部でもよいし、プラズマエッチング装置1の内部でもよいし、研削装置100又はレーザー加工装置からプラズマエッチング装置1に基板Wを搬送する搬送経路の途中でもよい。
【0039】
測定装置200は、非接触式と接触式のいずれでもよいが、好ましくは非接触式である。非接触式の測定装置200は、例えば、基板Wを透過する赤外光を用いて、基板Wの第1主面Waで反射した光と、基板Wの第2主面Wbで反射した光との干渉を利用し、基板Wの厚み分布を測定する。非接触式の測定装置200は、静電容量型の変位センサ、又はレーザー変位センサを用いて、基板Wまでの距離を測定することで、基板Wの厚み分布を測定してもよい。
【0040】
測定装置200は、基板Wの厚み分布の測定データをプラズマエッチング装置1に送信する。送信する測定データは、基板Wの第1主面Waにおける座標と、座標ごとの基板Wの厚みを含む。プラズマエッチング装置1の制御部90は、測定装置200の送信した測定データを受信し、受信した基板Wの厚み分布の測定データに基づき基板のエッチングを制御することで、基板Wの厚みムラを低減する制御を行う。
【0041】
図3のステップS103では、基板Wのプラズマエッチングを行う。基板Wのプラズマエッチングには、
図1及び
図2に示すプラズマエッチング装置1を用いる。プラズマエッチング装置1の制御部90は、例えば、プラズマ化したエッチングガスの供給位置に応じて、バイアス用の高周波電力の電圧を変更する制御を行う。これにより、基板Wの厚み分布を調節できる。
【0042】
具体的には、例えば、制御部90は、基板Wの厚み分布の測定データを取得し、取得した測定データに基づいてバイアス用の高周波電力の電圧を変更する制御を行う。制御部90は、例えば基板Wの厚みの最小値を基準として、基板Wの厚みが厚い位置ほど、バイアス用の高周波電力の電圧を高く設定する。これにより、基板Wの厚みムラを低減できる。
【0043】
なお、制御部90は、バイアス用の高周波電力の電圧を変更する制御に代えて、又は加えて、プラズマ化したエッチングガスの流量又は供給時間を変更する制御を行ってもよい。制御部90は、例えば基板Wの厚みの最小値を基準として、基板Wの厚みが厚い位置ほど、流量を多く設定するか、供給時間を長く設定する。これにより、基板Wの厚みムラを低減できる。
【0044】
なお、基板Wの厚み分布は、例えば基板Wのロットごとに同じ傾向を有する。そこで、制御部90は、プラズマ化したエッチングガスの供給位置と、バイアス用の高周波電力の電圧などを対応付けて予め記憶しておき、記憶したデータに従って基板Wのエッチングを制御することで、基板Wの厚みムラを低減する制御を行ってもよい。
【0045】
次に、
図7~
図10を参照して、吐出ノズル41の本数及び配置について説明する。
図7~
図10において、黒丸は基板Wの第1主面Waの中心を示す。
図7に示すように、吐出ノズル41の本数が1本である場合、プラズマ化したエッチングガスの供給位置が基板Wの第1主面Waの全体で変位するように、基板WのZ軸周りの回転と、基板WのX軸方向の移動とが行われる。
【0046】
図8に示すように、吐出ノズル41が基板Wの径方向に複数配置される場合も、基板WのZ軸周りの回転と、基板WのX軸方向の移動とが行われる。吐出ノズル41の本数を増やすほど、基板WのX軸方向の移動距離を短縮でき、スループットを向上できる。
図9及び
図10に示すように、基板WのX軸方向の移動距離をゼロにすることも可能である。
【0047】
複数本の吐出ノズル41は、プラズマ化したエッチングガスの流量及び供給時間を独立に制御可能である。制御部90は、吐出ノズル41ごとに独立に、プラズマ化したエッチングガスの流量又は供給時間を変更する制御を行う。制御部90は、吐出ノズル41の吐出位置における基板Wの厚みの厚さに応じて、吐出ノズル41ごとに独立に流量又は供給時間を変更する制御を行う。
【0048】
制御部90は、例えば基板Wの厚みの最小値を基準として、基板Wの厚みが厚い位置に配置された吐出ノズル41ほど、流量を多く設定するか、供給時間を長く設定する。これにより、基板Wの厚みムラを低減できる。基板Wの厚みの最小値が目標値である場合、基板Wの厚みが最小値の位置に配置された吐出ノズル41からは、エッチングガスを吐出しない制御を行うことが好ましい。
【0049】
なお、制御部90は、プラズマ化したエッチングガスの流量又は供給時間を変更する制御に代えて、又は加えて、バイアス用の高周波電力の電圧を変更する制御を行ってもよい。具体的には、制御部90は、例えば基板Wの厚みの最小値を基準として、基板Wの厚みが厚い位置ほど、バイアス用の高周波電力の電圧を高く設定する制御を行う。これにより、基板Wの厚みムラを低減できる。基板Wの厚みの最小値が目標値である場合、基板Wの厚みが最小値の位置に配置された吐出ノズル41からは、エッチングガスを吐出しない制御を行うことが好ましい。
【0050】
図9に示すように複数本の吐出ノズル41が千鳥配置されてもよいし、
図10に示すように複数本の吐出ノズル41がランダム配置されてもよい。基板Wの第1主面Waを径方向に分割してなる複数の領域A1~A4の各々の真上に、領域A1~A4と同じ幅の吐出口41aが存在すれば、基板WのZ軸周りの回転のみで、基板Wの第1主面Waの全体にプラズマ化したエッチングガスを供給できる。
【0051】
以上、本開示に係るプラズマエッチング装置、及びプラズマエッチング方法の実施形態等について説明したが、本開示は上記実施形態等に限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、及び組み合わせが可能である。それらについても当然に本開示の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0052】
1 プラズマエッチング装置
11 処理室
20 基板保持部
30 プラズマ生成部
40 ノズル
50 電極
51 高周波電源
60 移動部
90 制御部
W 基板