(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055335
(43)【公開日】2023-04-18
(54)【発明の名称】エッチング方法及びエッチング装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20230411BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
H01L21/302 101B
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021164621
(22)【出願日】2021-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【弁理士】
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【弁理士】
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】福永 裕介
(72)【発明者】
【氏名】後平 拓
【テーマコード(参考)】
5F004
【Fターム(参考)】
5F004AA03
5F004BA04
5F004BB12
5F004BB13
5F004BB18
5F004BB22
5F004BB23
5F004BB26
5F004BD03
5F004CA03
5F004CA06
5F004CA08
5F004DA04
5F004DA17
5F004DA18
5F004DA20
5F004DA23
5F004DA24
5F004DA25
5F004DA28
5F004DB01
5F004DB02
5F004DB03
5F004DB07
5F004DB08
5F004DB09
5F004DB10
5F004DB14
5F004DB19
5F004EA03
5F004EA06
5F004EA28
5F004FA08
(57)【要約】
【課題】エッチングレートを向上できるエッチング方法及びエッチング装置を提供する。
【解決手段】例示的実施形態に係るエッチング方法は、(a)エッチング対象膜の表面に、第1処理ガスを用いて、窒素原子及び水素原子を含む第1層を形成する工程と、(b)ハロゲン原子及び水素原子を含む第2処理ガスを用いて、第1層を第2層に改質する工程と、(c)第3処理ガスから生成されるプラズマを用いて、表面に第2層が形成されたエッチング対象膜をエッチングする工程とを含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッチング対象膜のエッチング方法であって、
(a)前記エッチング対象膜の表面に、第1処理ガスを用いて、窒素原子及び水素原子を含む第1層を形成する工程と、
(b)ハロゲン原子及び水素原子を含む第2処理ガスを用いて、前記第1層を第2層に改質する工程と、
(c)第3処理ガスから生成されるプラズマを用いて、前記表面に前記第2層が形成された前記エッチング対象膜をエッチングする工程と、
を含む、エッチング方法。
【請求項2】
前記エッチング対象膜は窒素原子を含有する膜を含み、
前記第1処理ガスは水素原子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記エッチング対象膜は窒素原子を含有しない膜を含み、
前記第1処理ガスは水素原子及び窒素原子を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記エッチング対象膜は水素原子又は水素含有ガスを含有する膜を含み、
前記第1処理ガスは窒素原子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1処理ガスが、水素ガス及び窒素ガスを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のエッチング方法。
【請求項6】
前記第2処理ガスが、ハロゲン化水素及びハロゲン化アルキルのうち少なくとも1つを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のエッチング方法。
【請求項7】
前記第2処理ガスが、フッ化水素ガスを含む、請求項6に記載のエッチング方法。
【請求項8】
前記第2処理ガスが、水素含有ガス及びハロゲン含有ガスを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のエッチング方法。
【請求項9】
前記(c)では、前記プラズマ中のイオンを前記エッチング対象膜の前記表面に照射することによって、前記エッチング対象膜がエッチングされる、請求項1~8のいずれか一項に記載のエッチング方法。
【請求項10】
前記(a)、前記(b)及び前記(c)が同時に行われる、請求項1~9のいずれか一項に記載のエッチング方法。
【請求項11】
前記(b)は前記(a)の後に行われ、
前記(c)は前記(b)の後に行われる、請求項1~9のいずれか一項に記載のエッチング方法。
【請求項12】
前記(b)では、プラズマを生成することなく前記第2処理ガスを用いる、請求項11に記載のエッチング方法。
【請求項13】
前記(b)では、前記第2処理ガスから生成されるプラズマを用いる、請求項11に記載のエッチング方法。
【請求項14】
前記(c)の後、前記(a)と前記(b)と前記(c)とを繰り返す工程を更に含む、請求項11~13のいずれか一項に記載のエッチング方法。
【請求項15】
前記エッチング対象膜はシリコン含有膜を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載のエッチング方法。
【請求項16】
前記(a)、前記(b)及び前記(c)のそれぞれにおいて、前記エッチング対象膜を含む基板の温度が70℃以下に設定される、請求項1~15のいずれか一項に記載のエッチング方法。
【請求項17】
シリコン酸化膜のエッチング方法であって、
水素ガス、窒素ガス及びフッ化水素ガスを含む処理ガスから生成されるプラズマを用いて、前記シリコン酸化膜をエッチングする工程を含む、エッチング方法。
【請求項18】
前記エッチングする工程において、前記シリコン酸化膜を含む基板の温度が70℃以下に設定される、請求項17に記載のエッチング方法。
【請求項19】
前記処理ガスの全流量に対する前記フッ化水素ガスの流量の割合は、50体積%以上90体積%以下である、請求項17又は18に記載のエッチング方法。
【請求項20】
前記水素ガス及び前記窒素ガスの合計流量に対する前記水素ガスの流量の割合は、75体積%以下である、請求項17~19のいずれか一項に記載のエッチング方法。
【請求項21】
チャンバと、
前記チャンバ内において基板を支持するための基板支持部であり、前記基板は、エッチング対象膜を含む、基板支持部と、
第1処理ガス、第2処理ガス及び第3処理ガスのそれぞれを前記チャンバ内に供給するように構成されたガス供給部であり、前記第2処理ガスはハロゲン原子及び水素原子を含む、ガス供給部と、
前記第3処理ガスからプラズマを生成するように構成されたプラズマ生成部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
(a)前記エッチング対象膜の表面に、前記第1処理ガスを用いて、窒素原子及び水素原子を含む第1層を形成し、
(b)前記第2処理ガスを用いて、前記第1層を第2層に改質し、
(c)前記第3処理ガスから生成されるプラズマを用いて、前記表面に前記第2層が形成された前記エッチング対象膜をエッチングするよう、前記ガス供給部及び前記プラズマ生成部を制御するように構成される、エッチング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例示的実施形態は、エッチング方法及びエッチング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、フッ化水素を用いてシリコン酸化膜をプラズマエッチングする方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、エッチングレートを向上できるエッチング方法及びエッチング装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの例示的実施形態において、エッチング対象膜のエッチング方法は、(a)前記エッチング対象膜の表面に、第1処理ガスを用いて、窒素原子及び水素原子を含む第1層を形成する工程と、(b)ハロゲン原子及び水素原子を含む第2処理ガスを用いて、前記第1層を第2層に改質する工程と、(c)第3処理ガスから生成されるプラズマを用いて、前記表面に前記第2層が形成された前記エッチング対象膜をエッチングする工程と、を含む。
【発明の効果】
【0006】
一つの例示的実施形態によれば、エッチングレートを向上できるエッチング方法及びエッチング装置が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、一つの例示的実施形態に係るエッチング装置を概略的に示す図である。
【
図2】
図2は、一つの例示的実施形態に係るエッチング装置を概略的に示す図である。
【
図3】
図3は、一つの例示的実施形態に係るエッチング方法のフローチャートである。
【
図4】
図4は、一例の基板の部分拡大断面図である。
【
図5】
図5は、一つの例示的実施形態に係るエッチング方法の一工程を示す断面図である。
【
図6】
図6は、一つの例示的実施形態に係るエッチング方法の一工程を示す断面図である。
【
図7】
図7は、一つの例示的実施形態に係るエッチング方法の一工程を示す断面図である。
【
図8】
図8は、一つの例示的実施形態に係るエッチング方法を実行することによって得られる一例の基板の部分拡大断面図である。
【
図9】
図9は、第1実験~第5実験においてエッチング方法を実行した際のエッチングレートを示すグラフである。
【
図10】
図10は、第3実験及び第6実験~第8実験においてエッチング方法を実行した際のエッチングレートを示すグラフである。
【
図11】
図11は、第3実験、第5実験及び第9実験~第14実験においてエッチング方法を実行した際のエッチングレートを示すグラフである。
【
図12】
図12は、第15実験~第19実験においてエッチング方法を実行した際のエッチング量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、種々の例示的実施形態について説明する。
【0009】
一つの例示的実施形態において、エッチング対象膜のエッチング方法は、(a)前記エッチング対象膜の表面に、第1処理ガスを用いて、窒素原子及び水素原子を含む第1層を形成する工程と、(b)ハロゲン原子及び水素原子を含む第2処理ガスを用いて、前記第1層を第2層に改質する工程と、(c)第3処理ガスから生成されるプラズマを用いて、前記表面に前記第2層が形成された前記エッチング対象膜をエッチングする工程と、を含む。
【0010】
上記実施形態のエッチング方法によれば、(c)において、プラズマのエネルギーにより、第2層に含まれるハロゲン原子とエッチング対象膜との反応が促進される。その結果、エッチング対象膜のエッチングレートを向上できる。
【0011】
前記エッチング対象膜は窒素原子を含有する膜を含み、前記第1処理ガスは水素原子を含んでもよい。
【0012】
前記エッチング対象膜は窒素原子を含有しない膜を含み、前記第1処理ガスは水素原子及び窒素原子を含んでもよい。
【0013】
前記エッチング対象膜は水素原子又は水素含有ガスを含有する膜を含み、前記第1処理ガスは窒素原子を含んでもよい。
【0014】
前記第1処理ガスが、水素ガス及び窒素ガスを含んでもよい。この場合、例えばアンモニア、又はアミノ基を有する化合物を含む第1層が形成される。
【0015】
前記第2処理ガスが、ハロゲン化水素及びハロゲン化アルキルのうち少なくとも1つを含んでもよい。
【0016】
前記第2処理ガスが、フッ化水素ガスを含んでもよい。この場合、フッ化水素が第1層と結合することによって第2層が形成される。
【0017】
前記第2処理ガスが、水素含有ガス及びハロゲン含有ガスを含んでもよい。
【0018】
前記(c)では、前記プラズマ中のイオンを前記エッチング対象膜の前記表面に照射することによって、前記エッチング対象膜がエッチングされてもよい。この場合、イオン照射のエネルギーによって、第2層に含まれるハロゲン原子とエッチング対象膜との反応が更に促進される。
【0019】
前記(a)、前記(b)及び前記(c)が同時に行われてもよい。
【0020】
前記(b)は前記(a)の後に行われ、前記(c)は前記(b)の後に行われてもよい。
【0021】
前記(b)では、プラズマを生成することなく前記第2処理ガスを用いてもよい。
【0022】
前記(b)では、前記第2処理ガスから生成されるプラズマを用いてもよい。
【0023】
上記エッチング方法は、前記(c)の後、前記(a)と前記(b)と前記(c)とを繰り返す工程を更に含んでもよい。
【0024】
前記エッチング対象膜はシリコン含有膜を含んでもよい。
【0025】
前記(a)、前記(b)及び前記(c)のそれぞれにおいて、前記エッチング対象膜を含む基板の温度が70℃以下に設定されてもよい。
【0026】
一つの例示的実施形態において、シリコン酸化膜のエッチング方法は、水素ガス、窒素ガス及びフッ化水素ガスを含む処理ガスから生成されるプラズマを用いて、前記シリコン酸化膜をエッチングする工程を含む。
【0027】
上記実施形態のエッチング方法によれば、シリコン酸化膜のエッチングレートを向上できる。エッチングレートが向上するメカニズムは以下のように考えられるが、これに限定されない。水素ガス及び窒素ガスによりシリコン酸化膜の表面に、窒素原子及び水素原子を含む第1層が形成される。第1層にフッ化水素が結合することによって、第1層は第2層に改質される。プラズマのエネルギーにより、第2層に含まれるフッ素原子とシリコン酸化膜との反応が促進される。その結果、シリコン酸化膜のエッチングレートを向上できる。
【0028】
前記エッチングする工程において、前記シリコン酸化膜を含む基板の温度が70℃以下に設定されてもよい。
【0029】
前記処理ガスの全流量に対する前記フッ化水素ガスの流量の割合は、50体積%以上90体積%以下であってもよい。この場合、シリコン酸化膜のエッチングレートを更に向上できる。
【0030】
前記水素ガス及び前記窒素ガスの合計流量に対する前記水素ガスの流量の割合は、75体積%以下であってもよい。この場合、シリコン酸化膜のエッチングレートを更に向上できる。
【0031】
一つの例示的実施形態において、エッチング装置は、チャンバと、前記チャンバ内において基板を支持するための基板支持部であり、前記基板は、エッチング対象膜を含む、基板支持部と、第1処理ガス、第2処理ガス及び第3処理ガスのそれぞれを前記チャンバ内に供給するように構成されたガス供給部であり、前記第2処理ガスはハロゲン原子及び水素原子を含む、ガス供給部と、前記第3処理ガスからプラズマを生成するように構成されたプラズマ生成部と、制御部と、を備え、前記制御部は、(a)前記エッチング対象膜の表面に、前記第1処理ガスを用いて、窒素原子及び水素原子を含む第1層を形成し、(b)前記第2処理ガスを用いて、前記第1層を第2層に改質し、(c)前記第3処理ガスから生成されるプラズマを用いて、前記表面に前記第2層が形成された前記エッチング対象膜をエッチングするよう、前記ガス供給部及び前記プラズマ生成部を制御するように構成される。
【0032】
上記実施形態のエッチング装置によれば、(c)において、プラズマのエネルギーにより、第2層に含まれるハロゲン原子とエッチング対象膜との反応が促進される。その結果、エッチング対象膜のエッチングレートを向上できる。
【0033】
以下、図面を参照して種々の例示的実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0034】
図1は、プラズマ処理システムの構成例を説明するための図である。一実施形態において、プラズマ処理システムは、プラズマ処理装置1及び制御部2を含む。プラズマ処理システムは、基板処理システムの一例であり、プラズマ処理装置1は、基板処理装置又はエッチング装置の一例である。プラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、基板支持部11及びプラズマ生成部12を含む。プラズマ処理チャンバ10は、プラズマ処理空間を有する。また、プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間に供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間からガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。ガス供給口は、後述するガス供給部20に接続され、ガス排出口は、後述する排気システム40に接続される。基板支持部11は、プラズマ処理空間内に配置され、基板を支持するための基板支持面を有する。
【0035】
プラズマ生成部12は、プラズマ処理空間内に供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマを生成するように構成される。プラズマ処理空間において形成されるプラズマは、容量結合プラズマ(CCP;CapacitivelyCoupled Plasma)、誘導結合プラズマ(ICP;Inductively Coupled Plasma)、ECRプラズマ(Electron-Cyclotron-resonance plasma)、ヘリコン波励起プラズマ(HWP:HeliconWave Plasma)、又は、表面波プラズマ(SWP:Surface Wave Plasma)等であってもよい。また、AC(Alternating Current)プラズマ生成部及びDC(DirectCurrent)プラズマ生成部を含む、種々のタイプのプラズマ生成部が用いられてもよい。一実施形態において、ACプラズマ生成部で用いられるAC信号(AC電力)は、100kHz~10GHzの範囲内の周波数を有する。従って、AC信号は、RF(RadioFrequency)信号及びマイクロ波信号を含む。一実施形態において、RF信号は、100kHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。
【0036】
制御部2は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部2は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御部2の一部又は全てがプラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御部2は、処理部2a1、記憶部2a2及び通信インターフェース2a3を含んでもよい。制御部2は、例えばコンピュータ2aにより実現される。処理部2a1は、記憶部2a2からプログラムを読み出し、読み出されたプログラムを実行することにより種々の制御動作を行うように構成され得る。このプログラムは、予め記憶部2a2に格納されていてもよく、必要なときに、媒体を介して取得されてもよい。取得されたプログラムは、記憶部2a2に格納され、処理部2a1によって記憶部2a2から読み出されて実行される。媒体は、コンピュータ2aに読み取り可能な種々の記憶媒体であってもよく、通信インターフェース2a3に接続されている通信回線であってもよい。処理部2a1は、CPU(Central Processing Unit)であってもよい。記憶部2a2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース2a3は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0037】
以下に、プラズマ処理装置1の一例としての容量結合型のプラズマ処理装置の構成例について説明する。
図2は、容量結合型のプラズマ処理装置の構成例を説明するための図である。
【0038】
容量結合型のプラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、電源30及び排気システム40を含む。また、プラズマ処理装置1は、基板支持部11及びガス導入部を含む。ガス導入部は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理チャンバ10内に導入するように構成される。ガス導入部は、シャワーヘッド13を含む。基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置される。シャワーヘッド13は、基板支持部11の上方に配置される。一実施形態において、シャワーヘッド13は、プラズマ処理チャンバ10の天部(ceiling)の少なくとも一部を構成する。プラズマ処理チャンバ10は、シャワーヘッド13、プラズマ処理チャンバ10の側壁10a及び基板支持部11により規定されたプラズマ処理空間10sを有する。プラズマ処理チャンバ10は接地される。シャワーヘッド13及び基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10の筐体とは電気的に絶縁される。
【0039】
基板支持部11は、本体部111及びリングアセンブリ112を含む。本体部111は、基板Wを支持するための中央領域111aと、リングアセンブリ112を支持するための環状領域111bとを有する。ウェハは基板Wの一例である。本体部111の環状領域111bは、平面視で本体部111の中央領域111aを囲んでいる。基板Wは、本体部111の中央領域111a上に配置され、リングアセンブリ112は、本体部111の中央領域111a上の基板Wを囲むように本体部111の環状領域111b上に配置される。従って、中央領域111aは、基板Wを支持するための基板支持面とも呼ばれ、環状領域111bは、リングアセンブリ112を支持するためのリング支持面とも呼ばれる。
【0040】
一実施形態において、本体部111は、基台1110及び静電チャック1111を含む。基台1110は、導電性部材を含む。基台1110の導電性部材は下部電極として機能し得る。静電チャック1111は、基台1110の上に配置される。静電チャック1111は、セラミック部材1111aとセラミック部材1111a内に配置される静電電極1111bとを含む。セラミック部材1111aは、中央領域111aを有する。一実施形態において、セラミック部材1111aは、環状領域111bも有する。なお、環状静電チャックや環状絶縁部材のような、静電チャック1111を囲む他の部材が環状領域111bを有してもよい。この場合、リングアセンブリ112は、環状静電チャック又は環状絶縁部材の上に配置されてもよく、静電チャック1111と環状絶縁部材の両方の上に配置されてもよい。また、後述するRF電源31及び/又はDC電源32に結合される少なくとも1つのRF/DC電極がセラミック部材1111a内に配置されてもよい。この場合、少なくとも1つのRF/DC電極が下部電極として機能する。後述するバイアスRF信号及び/又はDC信号が少なくとも1つのRF/DC電極に供給される場合、RF/DC電極はバイアス電極とも呼ばれる。なお、基台1110の導電性部材と少なくとも1つのRF/DC電極とが複数の下部電極として機能してもよい。また、静電電極1111bが下部電極として機能してもよい。従って、基板支持部11は、少なくとも1つの下部電極を含む。
【0041】
リングアセンブリ112は、1又は複数の環状部材を含む。一実施形態において、1又は複数の環状部材は、1又は複数のエッジリングと少なくとも1つのカバーリングとを含む。エッジリングは、導電性材料又は絶縁材料で形成され、カバーリングは、絶縁材料で形成される。
【0042】
また、基板支持部11は、静電チャック1111、リングアセンブリ112及び基板のうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路1110a、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路1110aには、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。一実施形態において、流路1110aが基台1110内に形成され、1又は複数のヒータが静電チャック1111のセラミック部材1111a内に配置される。また、基板支持部11は、基板Wの裏面と中央領域111aとの間の間隙に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。
【0043】
シャワーヘッド13は、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10s内に導入するように構成される。シャワーヘッド13は、少なくとも1つのガス供給口13a、少なくとも1つのガス拡散室13b、及び複数のガス導入口13cを有する。ガス供給口13aに供給された処理ガスは、ガス拡散室13bを通過して複数のガス導入口13cからプラズマ処理空間10s内に導入される。また、シャワーヘッド13は、少なくとも1つの上部電極を含む。なお、ガス導入部は、シャワーヘッド13に加えて、側壁10aに形成された1又は複数の開口部に取り付けられる1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0044】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース21及び少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介してシャワーヘッド13に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調又はパルス化する少なくとも1つの流量変調デバイスを含んでもよい。
【0045】
電源30は、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ10に結合されるRF電源31を含む。RF電源31は、少なくとも1つのRF信号(RF電力)を少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源31は、プラズマ生成部12の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を少なくとも1つの下部電極に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオン成分を基板Wに引き込むことができる。
【0046】
一実施形態において、RF電源31は、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bを含む。第1のRF生成部31aは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に結合され、プラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、ソースRF信号は、10MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第1のRF生成部31aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のソースRF信号は、少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に供給される。
【0047】
第2のRF生成部31bは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも1つの下部電極に結合され、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成するように構成される。バイアスRF信号の周波数は、ソースRF信号の周波数と同じであっても異なっていてもよい。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号の周波数よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、100kHz~60MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第2のRF生成部31bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のバイアスRF信号は、少なくとも1つの下部電極に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。
【0048】
また、電源30は、プラズマ処理チャンバ10に結合されるDC電源32を含んでもよい。DC電源32は、第1のDC生成部32a及び第2のDC生成部32bを含む。一実施形態において、第1のDC生成部32aは、少なくとも1つの下部電極に接続され、第1のDC信号を生成するように構成される。生成された第1のDC信号は、少なくとも1つの下部電極に印加される。一実施形態において、第2のDC生成部32bは、少なくとも1つの上部電極に接続され、第2のDC信号を生成するように構成される。生成された第2のDC信号は、少なくとも1つの上部電極に印加される。
【0049】
種々の実施形態において、第1及び第2のDC信号がパルス化されてもよい。この場合、電圧パルスのシーケンスが少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に印加される。電圧パルスは、矩形、台形、三角形又はこれらの組み合わせのパルス波形を有してもよい。一実施形態において、DC信号から電圧パルスのシーケンスを生成するための波形生成部が第1のDC生成部32aと少なくとも1つの下部電極との間に接続される。従って、第1のDC生成部32a及び波形生成部は、電圧パルス生成部を構成する。第2のDC生成部32b及び波形生成部が電圧パルス生成部を構成する場合、電圧パルス生成部は、少なくとも1つの上部電極に接続される。電圧パルスは、正の極性を有してもよく、負の極性を有してもよい。また、電圧パルスのシーケンスは、1周期内に1又は複数の正極性電圧パルスと1又は複数の負極性電圧パルスとを含んでもよい。なお、第1及び第2のDC生成部32a,32bは、RF電源31に加えて設けられてもよく、第1のDC生成部32aが第2のRF生成部31bに代えて設けられてもよい。
【0050】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、圧力調整弁及び真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間10s内の圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0051】
図3は、一つの例示的実施形態に係るエッチング方法のフローチャートである。
図3に示されるエッチング方法(以下、「方法MT1」という)は、上記実施形態のエッチング装置により実行され得る。方法MT1は、基板Wに適用され得る。
【0052】
図4は、一例の基板の部分拡大断面図である。
図4に示されるように、一実施形態において、基板Wは、エッチング対象膜REとマスクMKとを備え得る。マスクMKはエッチング対象膜RE上に設けられる。
【0053】
エッチング対象膜REは、凹部R1を含んでもよい。凹部R1は、側壁R1s及び底部R1bを有する。凹部R1は、開口であってもよい。凹部R1は例えばホール又はトレンチである。凹部R1は、後述の工程ST3と同様に、プラズマ処理装置1を用いたプラズマエッチングにより形成され得る。エッチング対象膜REは、複数の凹部R1を含んでもよい。
【0054】
エッチング対象膜REは、シリコン含有膜を含んでもよい。シリコン含有膜は、シリコン酸化膜(SiO2膜)、シリコン窒化膜(SiN膜)、シリコン酸化窒化膜(SiON)、シリコン炭化膜(SiC膜)、シリコン炭化窒化膜(SiCN膜)、有機含有シリコン酸化膜(SiOCH膜)、及びシリコン膜(Si膜)のうち、いずれかの単層膜であってよいし、少なくとも2種を含む積層膜であってもよい。シリコン含有膜は、少なくとも2種のシリコン含有膜が交互に配列された多層膜であってもよい。なお、シリコン窒化膜(SiN膜)、シリコン酸化窒化膜(SiON膜)、又はシリコン炭化窒化膜(SiCN膜)は、窒素を含有するシリコン含有膜である。シリコン酸化膜(SiO2膜)、シリコン炭化膜(SiC膜)、有機含有シリコン酸化膜(SiOCH膜)、又はシリコン膜(Si膜)は、窒素を含有しないシリコン含有膜である。シリコン膜(Si膜)は、単結晶シリコン膜、多結晶シリコン膜(Poly-Si膜)、又は非結晶シリコン膜(α-Si膜)であってもよい。
【0055】
エッチング対象膜REは、ゲルマニウム含有膜を含んでもよい。ゲルマニウム含有膜は、ゲルマニウム膜(Ge膜)及びシリコンゲルマニウム膜(SiGe膜)のいずれか1つの単層膜であってもよい。ゲルマニウム含有膜は、ゲルマニウム膜(Ge膜)及びシリコンゲルマニウム膜(SiGe膜)を含む積層膜であってもよい。
【0056】
エッチング対象膜REは、金属含有膜を含んでもよい。金属含有膜は、例えば、タングステン(W)、炭化タングステン(WC)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、窒化チタン(TiN)及びルテニウム(Ru)のうち少なくとも1つを含有してもよい。また、金属含有膜は、例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)などの金属酸化物を含有してもよい。
【0057】
マスクMKは、開口OPを有する。開口OPに対応してエッチング対象膜REに凹部R1が設けられる。開口OPの幅は、例えば100nm以下であり得る。隣り合う開口OP間の距離は、例えば100nm以下であり得る。
【0058】
マスクMKは、有機膜を含んでもよい。有機膜は、スピンオンカーボン膜及びアモルファスカーボン膜の少なくとも一つを含み得る。エッチング対象膜REが有機膜を含む場合、マスクMKは、シリコン酸化膜を含んでもよい。
【0059】
以下、方法MT1について、方法MT1が上記実施形態のエッチング装置を用いて基板Wに適用される場合を例にとって、
図3~
図8を参照しながら説明する。
図5~
図7のそれぞれは、一つの例示的実施形態に係るエッチング方法の一工程を示す断面図である。
図8は、一つの例示的実施形態に係るエッチング方法を実行することによって得られる一例の基板の部分拡大断面図である。プラズマ処理装置1が用いられる場合には、制御部2によるプラズマ処理装置1の各部の制御により、プラズマ処理装置1において方法MT1が実行され得る。方法MT1では、
図2に示されるように、プラズマ処理チャンバ10内に配置された基板支持部11上の基板Wを処理する。方法MT1により、基板Wはエッチングされ得る。
【0060】
図3に示されるように、方法MT1は、工程ST1、工程ST2、工程ST3及び工程ST4を含む。工程ST1~工程ST4は、順に実行され得る。工程ST1~工程ST3は同時に実行されてもよい。工程ST1及び工程ST2が同時に実行された後に工程ST3が実行されてもよい。工程ST1が実行された後に、工程ST2及び工程ST3が同時に実行されてもよい。工程ST3は、工程ST3の後の工程ST1と同時に行われてもよい。工程ST4は行われなくてもよい。工程ST1~工程ST4において、基板Wは、同一のプラズマ処理チャンバ10内で実行される、いわゆるin-situ(インサイチュ)で処理され得る。これにより、スループットが向上する。また、基板Wは各工程の間で大気に晒されることがないため、大気中の水分等による影響を受けることなく安定した処理が可能となる。
【0061】
工程ST1~工程ST4において、基板Wの温度は、70℃以下、50℃以下又は20℃以下であってもよいし、更に-10℃以下であってもよい。基板Wの温度は、基板Wを支持するための基板支持部11の温度によって調整され得る。基板Wの温度は、例えばプラズマエッチングによって、基板支持部11の温度よりも高くなり得る。工程ST1~工程ST4において、基板支持部11の温度は、20℃以下、0℃以下又は-30℃以下に設定されてもよいし、更に-60℃以下に設定されてもよい。1つの例示的実施形態における基板Wと基板支持部11との温度差は、約50℃である。
【0062】
なお、基板Wの温度は、ブラインによって所定の温度に調整された基板支持部11の温度が、基板支持部11の表面および伝熱ガスを介して基板Wに伝熱されることにより調整される。また、基板Wはプラズマ励起用の第1高周波電力によって生成されるプラズマに曝され、プラズマからの光やバイアス用の第2高周波電力によって引き込まれたイオンが基板Wに照射されるため、基板Wの温度、特に基板Wのプラズマに面した表面温度は、調整された基板支持部11の温度より高くなる。また、温度調整された対向電極やチャンバ側壁からの輻射熱によっても、基板Wの温度が上昇する場合がある。そのため、基板支持部11の温度と基板Wの温度の間に差が生じる。
【0063】
1つの例示的実施形態における温度差は、約50℃であるが、プロセス条件や基板支持部11の設計による温度調整効率によって、温度差は異なる。また、エッチング処理中の実際の基板Wの温度を測定することが出来るか、もしくは、プロセス条件から基板支持部11の調整温度と実際の基板Wの表面温度との温度差が推測出来るならば、予め定められた温度範囲で基板Wの温度を調整するために基板支持部11の調整温度の設定値を増減してもよい。なお、第1高周波電力および第2高周波電力の出力が小さい条件など、基板支持部11の調整温度と実際のウェハの表面温度との温度差が小さいと推測されるならば、基板Wの温度と基板支持部11の温度とは同等と見做してもよい。
【0064】
なお、プロセス条件や基板支持部11の設計による温度調整効率によって温度差が異なる場合であっても、一つの例示的実施形態に係るエッチング方法における結果は基板Wの表面での反応によるものであるため、基板Wの温度を基準として用いることが望ましい。
【0065】
また、工程ST1~工程ST4において、基板Wは、同一の真空搬送系に接続され、真空状態のまま基板Wを搬送可能な異なるプラズマ処理チャンバ10で実行される、いわゆるin-system(インシステム)で処理され得る。これにより、基板Wは各工程の間で大気に晒されることがないため、大気中の水分等による影響を受けることなく安定した処理が可能となる。
【0066】
図5に示されるように、工程ST1では、例えば第1プラズマP1を用いて、エッチング対象膜REの表面に第1層F1を形成する。第1層F1は、基板Wの凹部R1の底部R1bに形成され得る。第1層F1は、凹部R1の側壁R1sに形成されなくてもよいし、凹部R1の側壁R1sに形成されてもよい。第1プラズマP1は第1処理ガスから生成される。工程ST1では、第1プラズマP1に基板Wを晒してもよい。第1プラズマP1は、基板Wの凹部R1の底部R1bに第1層F1を形成可能である。工程ST1では、プラズマを生成することなく、第1処理ガスを用いて、エッチング対象膜REの表面に第1層F1を形成してもよい。工程ST1では、プラズマを生成することなく、第1処理ガスに基板Wを晒してもよい。第1処理ガスは、プラズマ処理装置1のガス供給部20からプラズマ処理チャンバ10内に供給され得る。第1プラズマP1は、プラズマ処理装置1のプラズマ生成部12によって生成され得る。
【0067】
第1処理ガスは、水素原子及び窒素原子の少なくとも1つを含んでもよい。第1処理ガスは、水素含有ガス及び窒素含有ガスの少なくとも1つを含んでもよい。水素含有ガスは、水素(H2)ガス、水蒸気(H2O)、炭化水素(CxHy)ガス及びハイドロフロロカーボンガスのうち少なくとも1つを含み得る。窒素含有ガスは、窒素(N2)ガス、ジアゼン(N2H2)ガス、ヒドラジン(N2H4)ガス、アンモニア(NH3)ガス、窒素酸化物(NOx)ガス、三フッ化窒素(NF3)ガス、及び、メチルアミン(CH3NH2)ガス、アニリン(C6NH7)ガスなどアミノ基(-NH2)を含むガスのうち少なくとも1つを含み得る。第1処理ガスは、ハロゲン化水素を含まなくてもよい。
【0068】
エッチング対象膜REが、例えばシリコン窒化膜又は窒化チタン膜など窒素原子を含有する膜を含む場合、第1処理ガスは水素原子を含んでもよい。この場合、膜中の窒素原子と第1処理ガス中の水素原子とが第1層F1に含まれる。エッチング対象膜REが、例えばシリコン酸化膜、ゲルマニウム膜(Ge膜)、タングステン膜(W膜)など窒素原子を含有しない膜を含む場合、第1処理ガスは水素原子及び窒素原子を含んでもよい。この場合、第1処理ガス中の水素原子及び窒素原子が第1層F1に含まれる。エッチング対象膜REが水素原子を含む場合、または、エッチング対象膜RE中に水素ガスもしくは水蒸気(H2O)などの水素含有ガスが取り込まれている場合、第1処理ガスは窒素原子を含んでもよい。この場合、膜中の水素原子又は水素含有ガスと第1処理ガス中の窒素原子とが第1層F1に含まれる。なお、エッチング対象膜REがいずれの場合であっても、第1処理ガスが水素原子及び窒素原子の両方を含んでいることによって、より効果的にエッチング対象膜REの表面に第1層F1が形成される。
【0069】
第1層F1は窒素原子及び水素原子を含む。第1層F1は、アンモニア(NH3)、又はアミノ基(-NH2)を有する化合物を含んでもよい。第1層F1は、第1プラズマP1とエッチング対象膜REとの相互作用(例えば吸着又は化学結合)の結果として形成される。
【0070】
工程ST1において、基板Wを支持するための基板支持部11にバイアス電力が印加されてもよい。バイアス電力は、
図2の電源30により印加され得る。基板支持部11に負のバイアス電圧が印加されると、第1プラズマP1中の正イオン(例えばN
2
+)がエッチング対象膜REの表面に引き込まれる。第1プラズマP1中のイオンは、凹部R1の底部R1bに照射され得る。これにより、第1層F1は、基板Wの凹部R1の底部R1bに形成され得る。
【0071】
図6に示されるように、工程ST2では、例えば第2プラズマP2を用いて、第1層F1を第2層F2に改質する。第2プラズマP2は第2処理ガスから生成される。工程ST2では、第2プラズマP2に基板Wを晒してもよい。工程ST2では、プラズマを生成することなく第2処理ガスを用いて、第1層F1を第2層F2に改質してもよい。工程ST2では、プラズマを生成することなく、第2処理ガスに基板Wを晒してもよい。第2処理ガスは、第1処理ガスと異なってもよいし、第1処理ガスと同じであってもよい。第2プラズマP2は、第1層F1を第2層F2に改質可能である。第2処理ガスは、プラズマ処理装置1のガス供給部20からプラズマ処理チャンバ10内に供給され得る。第2プラズマP2は、プラズマ処理装置1のプラズマ生成部12によって生成され得る。
【0072】
第2処理ガスは、ハロゲン原子及び水素原子を含む。第2処理ガスはハロゲン含有ガスを含んでもよい。ハロゲン含有ガスは、極性を有するハロゲン化合物を含んでもよい。ハロゲン化合物は、ハロゲン化水素(HX:XはF、Cl、Br及びIのうちいずれか1つ)であってもよいし、ハロゲン化アルキル(CnH2n+1X:XはF、Cl、Br及びIのうちいずれか1つ。nは1以上の整数。)であってもよい。ハロゲン化アルキルは、例えば、CH3Br(ブロモメタン)又はC2H5Cl(クロロエタン)などである。第2処理ガスはフッ化水素ガスを含んでもよい。
【0073】
第2処理ガスは、水素含有ガスとハロゲン含有ガスの組合せであってよい。水素含有ガスは、水素(H2)ガス、水蒸気(H2O)、炭化水素ガス及びハロゲン化アルキル(CnH2n+1X:XはF、Cl、Br及びIのうちいずれか1つ。nは1以上の整数。)ガスのうち少なくとも1つを含み得る。ハロゲン含有ガスは、フッ素(F2)ガス、塩素(Cl2)ガス、臭素(Br2)ガス、三フッ化塩素(ClF3)ガス、五フッ化臭素(BrF5)ガス、七フッ化ヨウ素(IF7)ガス、三フッ化窒素(NF3)ガス、六フッ化硫黄(SF6)ガス、三フッ化リン(PF3)ガス、五フッ化リン(PF5)ガス、六フッ化タングステン(WF6)ガス、フロロカーボンガス、クロロフロロカーボンガス及びブロモフロロカーボンガスのうち少なくとも1つを含み得る。水素含有ガスとハロゲン含有ガスの混合ガスのプラズマによって、ハロゲン化水素またはハロゲン化アルキルが生成される。または、プラズマを生成することなく気相反応によって、ハロゲン化水素またはハロゲン化アルキルが生成される。例えば、水蒸気(H2O)と三フッ化塩素(ClF3)ガスは反応性が高いので、プラズマを生成することなくフッ化水素(HF)を発生しやすい。
【0074】
第2層F2は、窒素原子、水素原子及びハロゲン原子を含み得る。第2層F2は、ハロゲン化水素を含んでもよい。第2層F2は、第2プラズマP2と第1層F1との相互作用(例えば化学結合)の結果として形成される。例えばフッ化水素の水素原子が第1層F1のアミノ基の窒素原子に結合することによって、第2層F2が形成され得る。フッ化水素の水素原子とアミノ基の窒素原子とは、配位結合及び水素結合のうち少なくとも1つによって結合され得る。
【0075】
工程ST2の後、プラズマ処理チャンバ10内のパージが行われてもよい。パージガスは、プラズマ処理装置1のガス供給部20からプラズマ処理チャンバ10内に供給され得る。
【0076】
図7に示されるように、工程ST3では、第3プラズマP3を用いて、表面に第2層F2が形成されたエッチング対象膜REをエッチングする。第2層F2は凹部R1の底部R1bに形成されるので、凹部R1の底部R1bがエッチングされ得る。工程ST3では、第3プラズマP3に基板Wを晒してもよい。第3プラズマP3は、凹部R1の底部R1bをエッチング可能である。第3プラズマP3は第3処理ガスから生成される。第3処理ガスは、プラズマ処理装置1のガス供給部20からプラズマ処理チャンバ10内に供給され得る。第3プラズマP3は、プラズマ処理装置1のプラズマ生成部12によって生成され得る。第3処理ガスは、第1処理ガス及び第2処理ガスと異なってもよいし、第1処理ガス又は第2処理ガスと同じであってもよい。
【0077】
第3処理ガスは、貴ガスを含み得る。貴ガスはアルゴン(Ar)を含み得る。
【0078】
工程ST3において、第3プラズマP3中のイオンをエッチング対象膜REの表面に照射することによって、エッチング対象膜REがエッチングされてもよい。第3処理ガスが貴ガスを含む場合、貴ガスの正イオンがエッチング対象膜REの表面に照射される。
【0079】
工程ST3において、基板Wを支持するための基板支持部11にバイアス電力が印加されてもよい。バイアス電力は、
図2の電源30により印加され得る。バイアス電力により、エッチング対象膜REのエッチングレートが増大する。基板支持部11に負のバイアス電圧が印加されると、第3プラズマP3中の正イオンがエッチング対象膜REの表面に引き込まれる。第3プラズマP3中のイオンは、凹部R1の底部R1bに照射され得る。
【0080】
図8に示されるように、工程ST4では、凹部R1の深さDPが閾値に到達したかを判定してもよい。凹部R1の深さDPは、例えばエンドポイントモニタ等によりモニタされ得る。判定は、基板処理装置の制御部2によって行われ得る。凹部R1の深さDPが閾値に到達している場合、方法MT1を終了する。凹部R1の深さDPが閾値に到達していない場合、工程ST1に戻り、工程ST1~ST4を繰り返す。工程ST4では、工程ST1~工程ST3の繰り返し回数が閾値に到達したかを判定してもよい。このように、方法MT1は、工程ST3の後、工程ST1と工程ST2と工程ST3とを繰り返す工程を更に含んでもよい。これにより、深い凹部R1を形成できる。
【0081】
方法MT1の終了後において、凹部R1の深さDPは3μm以上であってもよいし、凹部R1のアスペクト比(凹部R1の幅WDに対する深さDP)は30以上であってもよい。方法MT1の終了後において、凹部R1の深さDPに対するマスクMKの厚さTHの比率(TH/DP)は、1/5以上であってもよい。
【0082】
工程ST1~工程ST3が同時に実行される場合、第1処理ガス、第2処理ガス及び第3処理ガスを含む処理ガスから生成されるプラズマを用いてエッチング対象膜REがエッチングされる。例えば、水素ガス、窒素ガス及びフッ化水素ガスを含む処理ガスから生成されるプラズマを用いて、エッチング対象膜REがエッチングされる。処理ガスの全流量に対するフッ化水素ガスの流量の割合は、20体積%以上又は50体積%以上であってもよいし、100体積%未満、90体積%以下又は80体積%以下であってもよい。水素ガス及び窒素ガスの合計流量に対する水素ガスの流量の割合は、75体積%以下であってもよい。
【0083】
上記実施形態の方法MT1によれば、工程ST3において、プラズマのエネルギーにより、第2層F2に含まれるハロゲン原子とエッチング対象膜REとの反応が促進される。その結果、エッチング対象膜REのエッチングレートを向上できる。
【0084】
工程ST3では、第3プラズマP3中のイオンをエッチング対象膜REの表面に照射することによって、エッチング対象膜REがエッチングされてもよい。この場合、イオン照射のエネルギーによって、第2層F2に含まれるハロゲン原子とエッチング対象膜REとの反応が更に促進される。
【0085】
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上述した例示的実施形態に限定されることなく、様々な追加、省略、置換、及び変更がなされてもよい。また、異なる実施形態における要素を組み合わせて他の実施形態を形成することが可能である。
【0086】
以下、方法MT1の評価のために行った種々の実験について説明する。以下に説明する実験は、本開示を限定するものではない。
【0087】
(第1実験)
第1実験では、シリコン酸化膜を備えるウェハと、フォトレジストを備えるウェハとを準備した。その後、上記プラズマ処理システムを用いて、各ウェハに対して上記方法MT1を実行した。工程ST1~工程ST3は同時に実行された。具体的には、水素ガス(H2)、窒素ガス(N2)及びフッ化水素ガス(HF)を含む処理ガスから生成されるプラズマを用いてエッチングを行った。処理ガスの全流量に対するフッ化水素ガスの流量の割合は20体積%であった。すなわち、処理ガスの全流量に対する水素ガス及び窒素ガスの合計流量の割合は80体積%であった。水素ガス及び窒素ガスの合計流量に対する水素ガスの流量の割合は50体積%であった。すなわち、水素ガス及び窒素ガスの合計流量に対する窒素ガスの流量の割合は50体積%であった。基板支持部11の温度は-60℃であった。また、基板Wの温度は-10℃であった。
【0088】
(第2実験)
第2実験では、処理ガスの全流量に対するフッ化水素ガスの流量の割合を50体積%としたこと以外は第1実験の方法と同じ方法を実行した。すなわち、処理ガスの全流量に対する水素ガス及び窒素ガスの合計流量の割合は50体積%であった。
【0089】
(第3実験)
第3実験では、処理ガスの全流量に対するフッ化水素ガスの流量の割合を75体積%としたこと以外は第1実験の方法と同じ方法を実行した。すなわち、処理ガスの全流量に対する水素ガス及び窒素ガスの合計流量の割合は25体積%であった。
【0090】
(第4実験)
第4実験では、処理ガスの全流量に対するフッ化水素ガスの流量の割合を90体積%としたこと以外は第1実験の方法と同じ方法を実行した。すなわち、処理ガスの全流量に対する水素ガス及び窒素ガスの合計流量の割合は10体積%であった。
【0091】
(第5実験)
第5実験では、処理ガスの全流量に対するフッ化水素ガスの流量の割合を100体積%としたこと以外は第1実験の方法と同じ方法を実行した。すなわち、処理ガスの全流量に対する水素ガス及び窒素ガスの合計流量の割合は0体積%であった。
【0092】
(第1実験結果)
第1実験~第5実験において方法が実行された各ウェハについて、シリコン酸化膜及びフォトレジストの膜厚を測定した。膜厚の測定結果から、シリコン酸化膜のエッチングレートとフォトレジストのエッチングレートを算出した。
図9は、第1実験~第5実験においてエッチング方法を実行した際のエッチングレートを示すグラフである。グラフの横軸は、処理ガスの全流量に対するフッ化水素ガスの流量の割合(体積%)を示す。第1実験~第5実験におけるフッ化水素ガスの流量の割合は、それぞれ20体積%、50体積%、75体積%、90体積%及び100体積%である。グラフの縦軸は、エッチングレート(nm/min)を示す。グラフ中、E1はシリコン酸化膜のエッチングレートを示し、E2はフォトレジストのエッチングレートを示す。
【0093】
図9に示されるように、処理ガスの全流量に対するフッ化水素ガスの流量の割合が50体積%以上90体積%以下であると、シリコン酸化膜のエッチングレートが比較的大きくなることが分かる。第1実験~第5実験において、フォトレジストに対するシリコン酸化膜のエッチング選択比は、それぞれ1.56、3.04、4.30、4.05及び3.31であった。
【0094】
(第6実験)
第6実験では、水素ガス及び窒素ガスの合計流量に対する水素ガスの流量の割合を25体積%としたこと以外は第3実験の方法と同じ方法を実行した。すなわち、水素ガス及び窒素ガスの合計流量に対する窒素ガスの流量の割合は75体積%であった。
【0095】
(第7実験)
第7実験では、水素ガス及び窒素ガスの合計流量に対する水素ガスの流量の割合を75体積%としたこと以外は第3実験の方法と同じ方法を実行した。すなわち、水素ガス及び窒素ガスの合計流量に対する窒素ガスの流量の割合は25体積%であった。
【0096】
(第8実験)
第8実験では、水素ガス及び窒素ガスの合計流量に対する水素ガスの流量の割合を100体積%としたこと以外は第3実験の方法と同じ方法を実行した。すなわち、水素ガス及び窒素ガスの合計流量に対する窒素ガスの流量の割合は0体積%であった。
【0097】
(第2実験結果)
第3実験及び第6実験~第8実験において方法が実行された各ウェハについて、シリコン酸化膜及びフォトレジストの膜厚を測定した。膜厚の測定結果から、シリコン酸化膜のエッチングレートとフォトレジストのエッチングレートを算出した。
図10は、第3実験及び第6実験~第8実験においてエッチング方法を実行した際のエッチングレートを示すグラフである。グラフの横軸は、水素ガス及び窒素ガスの合計流量に対する水素ガスの流量の割合を示す。第6実験、第3実験、第7実験及び第8実験における水素ガスの流量の割合は、それぞれ25体積%、50体積%、75体積%及び100体積%である。グラフの縦軸は、エッチングレート(nm/min)を示す。グラフ中、E3はシリコン酸化膜のエッチングレートを示し、E4はフォトレジストのエッチングレートを示す。E5及びE6は、第5実験におけるシリコン酸化膜のエッチングレート及びフォトレジストのエッチングレートをそれぞれ示す。
【0098】
図10に示されるように、水素ガス及び窒素ガスの合計流量に対する水素ガスの流量の割合が75体積%以下であると、シリコン酸化膜のエッチングレートが比較的大きくなることが分かる。第6実験、第3実験、第7実験、第8実験及び第5実験において、フォトレジストに対するシリコン酸化膜のエッチング選択比は、それぞれ3.69、4.30、5.05、4.40及び3.31であった。
【0099】
(第9実験)
第9実験では、基板支持部11の温度を-30℃、すなわち基板Wの温度を20℃としたこと以外は第3実験の方法と同じ方法を実行した。
【0100】
(第10実験)
第10実験では、基板支持部11の温度を0℃、すなわち基板Wの温度を50℃としたこと以外は第3実験の方法と同じ方法を実行した。
【0101】
(第11実験)
第11実験では、基板支持部11の温度を20℃、すなわち基板Wの温度を70℃としたこと以外は第3実験の方法と同じ方法を実行した。
【0102】
(第12実験)
第12実験では、基板支持部11の温度を-30℃、すなわち基板Wの温度を20℃としたこと以外は第5実験の方法と同じ方法を実行した。
【0103】
(第13実験)
第13実験では、基板支持部11の温度を0℃、すなわち基板Wの温度を50℃としたこと以外は第5実験の方法と同じ方法を実行した。
【0104】
(第14実験)
第14実験では、基板支持部11の温度を20℃、すなわち基板Wの温度を70℃としたこと以外は第5実験の方法と同じ方法を実行した。
【0105】
(第3実験結果)
第3実験、第5実験及び第9実験~第14実験において方法が実行された各ウェハについて、シリコン酸化膜及びフォトレジストの膜厚を測定した。膜厚の測定結果から、シリコン酸化膜のエッチングレートとフォトレジストのエッチングレートを算出した。
図11は、第3実験、第5実験及び第9実験~第14実験においてエッチング方法を実行した際のエッチングレートを示すグラフである。グラフの横軸は、基板Wの温度(℃)を示す。第3実験及び第5実験における基板Wの温度は-10℃である。第9実験及び第12実験における基板Wの温度は20℃である。第10実験及び第13実験における基板Wの温度は50℃である。第11実験及び第14実験における基板Wの温度は70℃である。グラフの縦軸は、エッチングレート(nm/min)を示す。グラフ中、E7及びE8は、第3実験及び第9実験~第11実験におけるシリコン酸化膜のエッチングレート及びフォトレジストのエッチングレートをそれぞれ示す。E9及びE10は、第5実験及び第12実験~第14実験におけるシリコン酸化膜のエッチングレート及びフォトレジストのエッチングレートをそれぞれ示す。
【0106】
図11に示されるように、基板支持部11の温度が低くなるに連れて、シリコン酸化膜のエッチングレートが比較的大きくなることが分かる。また、グラフ中のE7及びE9から、フッ化水素ガスに水素ガス及び窒素ガスを添加することにより、シリコン酸化膜のエッチングレートが大きくなることが分かる。
【0107】
(第15実験)
第15実験では、シリコン酸化膜を備えるウェハを準備した。その後、上記プラズマ処理システムを用いて、ウェハに対して上記方法MT1を実行した。工程ST1~工程ST4は順に実行された。工程ST1~工程ST4において、基板支持部11の温度は-60℃であった。工程ST1では、水素ガス(H2)及び窒素ガス(N2)を含む第1処理ガスから生成された第1プラズマP1にウェハを晒した。水素ガス及び窒素ガスの合計流量に対する水素ガスの流量の割合は50体積%であった。すなわち、水素ガス及び窒素ガスの合計流量に対する窒素ガスの流量の割合は50体積%であった。工程ST2では、プラズマを生成することなく、フッ化水素ガス(HF)を含む第2処理ガスにウェハを晒した。工程ST2の後、アルゴンガスを用いてプラズマ処理チャンバ10内のパージを行った。工程ST3では、アルゴンガス(Ar)を含む第3処理ガスから生成される第3プラズマP3にウェハを晒した。工程ST4では、工程ST1~工程ST3の繰り返し回数(サイクル数)が10になるまで工程ST1~工程ST3を繰り返し実行した。
【0108】
(第16実験)
第16実験では、工程ST1を実行しなかったこと以外は第15実験の方法と同じ方法を実行した。
【0109】
(第17実験)
第17実験では、工程ST2を実行しなかったこと以外は第15実験の方法と同じ方法を実行した。
【0110】
(第18実験)
第18実験では、工程ST2及び工程ST3を実行しなかったこと以外は第15実験の方法と同じ方法を実行した。
【0111】
(第19実験)
第19実験では、工程ST1及び工程ST2を実行しなかったこと以外は第15実験の方法と同じ方法を実行した。
【0112】
(第4実験結果)
第15実験~第19実験において方法が実行されたウェハについて、シリコン酸化膜の膜厚を測定した。膜厚の測定結果から、シリコン酸化膜のエッチング量を算出した。
図12は、第15実験~第19実験においてエッチング方法を実行した際のエッチング量を示すグラフである。グラフの縦軸は、シリコン酸化膜のエッチング量(nm)を示す。グラフ中、H
2/N
2+HF+Arは第15実験の結果を示す。HF+Arは第16実験の結果を示す。H
2/N
2+Arは第17実験の結果を示す。H
2/N
2は第18実験の結果を示す。Arは第19実験の結果を示す。
【0113】
図12に示されるように、第15実験及び第16実験の結果から、工程ST1を実行することにより、シリコン酸化膜のエッチング量が4倍程度に大きくなることが分かる。第15実験及び第16実験における工程ST2の時間は同じであるので、工程ST1を実行することにより、シリコン酸化膜のエッチングレートが4倍程度に大きくなることも分かる。
【0114】
以上の説明から、本開示の種々の実施形態は、説明の目的で本明細書で説明されており、本開示の範囲及び主旨から逸脱することなく種々の変更をなし得ることが、理解されるであろう。したがって、本明細書に開示した種々の実施形態は限定することを意図しておらず、真の範囲と主旨は、添付の特許請求の範囲によって示される。
【符号の説明】
【0115】
2…制御部、10…プラズマ処理チャンバ、11…基板支持部、12…プラズマ生成部、20…ガス供給部、F1…第1層、F2…第2層、MT1…方法、P3…第3プラズマ、RE…エッチング対象膜、W…基板。