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  • 特開-含鉄クリンカーの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055525
(43)【公開日】2023-04-18
(54)【発明の名称】含鉄クリンカーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 7/02 20060101AFI20230411BHJP
   C22B 1/02 20060101ALI20230411BHJP
   C22B 1/24 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
C22B7/02 A
C22B1/02
C22B1/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021164973
(22)【出願日】2021-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】高谷 悟
(72)【発明者】
【氏名】原 博之
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA10
4K001AA30
4K001BA14
4K001BA18
4K001CA06
4K001CA16
4K001CA18
4K001CA23
4K001GA07
4K001HA01
(57)【要約】
【課題】還元焙焼処理によって、鉄鋼ダストと、「鉄の水酸化物を含有する含鉄脱水ケーキ」から「含鉄クリンカー」を製造する際に、「含鉄脱水ケーキ」由来の還元焙焼ロータリーキルン内壁への付着物の形成を抑制して、含鉄クリンカーの生産性を向上させること。
【解決手段】鉄鋼ダストを造粒して還元焙焼用ペレットを得る予備混合工程S10と、予備混合工程S10で得た還元焙焼用ペレット及び鉄の水酸化物を含有する含鉄脱水ケーキを還元雰囲気で焙焼する還元焙焼工程S20と、を備え、含鉄脱水ケーキを、予備混合工程S10には投入せずに、還元焙焼工程S20に直接装入する、含鉄クリンカーの製造方法とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄の酸化物及び亜鉛の酸化物を含有する鉄鋼ダストと、
鉄の水酸化物を含有する含鉄脱水ケーキと、
を原料とする、含鉄クリンカーの製造方法であって、
前記鉄鋼ダストを造粒して還元焙焼用ペレットを得る予備混合工程と、
前記予備混合工程で得た前記還元焙焼用ペレット及び前記含鉄脱水ケーキを還元雰囲気で焙焼する還元焙焼工程と、
を備え、
前記含鉄脱水ケーキは、前記予備混合工程には投入せずに、前記還元焙焼工程に直接装入する、
含鉄クリンカーの製造方法。
【請求項2】
前記鉄の水酸化物は、液中に溶解していた鉄を析出させることで得られた鉄の水酸化物である、請求項1に記載の含鉄クリンカーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含鉄クリンカーの製造方法に関する。本発明は、詳しくは、鉄鋼業における高炉や電気炉等から発生する鉄鋼ダストと、一例として非鉄金属製錬において排出される製錬中間物であり、鉄を水酸化物の形で含有する、「含鉄脱水ケーキ」から、還元された鉄分を多く含み鉄源として利用可能な「含鉄クリンカー」を製造する含鉄クリンカーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
亜鉛製錬所における亜鉛地金の原料として用いる酸化亜鉛鉱の製造原料として、鉄鋼業における高炉や電気炉等から発生する鉄鋼ダストが広く用いられている。酸化亜鉛鉱は、鉄鋼ダスト等の亜鉛を含有する原料にウェルツプロセスによる還元焙焼処理を施すことによって得ることができる。この鉄鋼ダスト等の還元焙焼処理は、一般に、ロータリーキルンによる還元焙焼処理によって行われる。尚、上記の還元焙焼処理によって、揮発せずにキルン中に残った還元焙焼残渣は、還元された鉄分が多く含有される鉄源として回収されている(特許文献1参照)。又、このようにして回収された鉄源は、「含鉄クリンカー」と称する製品として、鉄鋼メーカー向けの鉄原料として有効に利用されている。
【0003】
一方、多くの非鉄金属製錬プロセスにおいて、鉄を水酸化物の形で含有する脱水ケーキ(本明細書において「含鉄脱水ケーキ」と称する)が、製錬中間物として排出されている。この「含鉄脱水ケーキ」を、鉄鋼ダストと同様に、上記のウェルツプロセスによって還元焙焼処理を施すことによって、鉄源として利用可能な「含鉄クリンカー」の製造原料として利用しようとする取り組みも行われている。
【0004】
ここで、ウェルツプロセスによる還元焙焼処理においては、原料とする鉄鋼ダストは、カーボン等の還元剤等と共に、還元焙焼処理を行うロータリーキルン内に装入される。この際、亜鉛の回収率をより向上させるために、ロータリーキルン内に装入する鉄鋼ダストを予め還元剤と混合造粒して、大きさ5~10mm程度の還元剤内装型のペレットに成形することが広く行われている(特許文献2参照)。そして、上記の「含鉄脱水ケーキ」を、ウェルツプロセスによる還元焙焼処理に鉄源として装入する場合にも、従来においては、「含鉄脱水ケーキ」も、他の鉄源である鉄鋼ダストと共に混合造粒されペレット化された状態で還元焙焼処理を行うロータリーキルンに装入されていた。
【0005】
しかしながら、上述のように、「鉄の水酸化物を含有する含鉄脱水ケーキ」を鉄鋼ダストと共に混合造粒してペレット化した混合原料を、還元焙焼処理を行うロータリーキルンに装入した場合には、鉄鋼ダストのみを装入した場合と比較して、とりわけ大量の付着物がローリーキルンの内側の側壁に形成されることが多かった。このような付着物を除去するためには、還元焙焼ロータリーキルンの操業を停止して、付着物を取り除く作業を行わなければならず、これに起因する還元焙焼ロータリーキルンの稼働率の低下が問題となっていた。
【0006】
例えば、特許文献1には、亜鉛を含有する原料からの還元鉄の製造に際して、還元焙焼処理を行うロータリーキルンにCaO源を装入し、添加するCaO源の粒度及び原料中におけるCaO/SiO比を最適化することによって、ロータリーキルン内壁における付着物の形成を抑制する技術が開示されている。しかしながら、鉄分を水酸化物の形で含む脱水ケーキを用いる場合に問題となる上記の大量の付着物の形成を回避する技術的手段については何ら言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013-159797号公報
【特許文献2】特開2015-120948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、還元焙焼処理によって、鉄鋼ダストと、「鉄の水酸化物を含有する含鉄脱水ケーキ」から「含鉄クリンカー」を製造する際に、「含鉄脱水ケーキ」由来の還元焙焼ロータリーキルン内壁への付着物の形成を抑制して、含鉄クリンカーの生産性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、「含鉄脱水ケーキ」を、鉄鋼ダスト等の原料を予めペレットする予備混合工程には投入せずに、還元焙焼工程に直接装入するプロセスによって、上記課題が解決可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。より、具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0010】
(1) 鉄の酸化物及び亜鉛の酸化物を含有する鉄鋼ダストと、鉄の水酸化物を含有する含鉄脱水ケーキと、を原料とする、含鉄クリンカーの製造方法であって、前記鉄鋼ダストを造粒することにより還元焙焼用ペレットを得る予備混合工程と、前記予備混合工程で得た前記還元焙焼用ペレット及び前記含鉄脱水ケーキを還元雰囲気で焙焼する還元焙焼工程と、を備え、前記含鉄脱水ケーキを、前記予備混合工程には投入せずに、前記還元焙焼工程に直接装入する、含鉄クリンカーの製造方法。
【0011】
(1)の含鉄クリンカーの製造方法によれば、還元焙焼処理によって、鉄鋼ダストと、「鉄の水酸化物を含有する含鉄脱水ケーキ」から「含鉄クリンカー」を製造する際に、「含鉄脱水ケーキ」由来の還元焙焼ロータリーキルン内壁への付着物の形成を抑制して、含鉄クリンカーの生産性を向上させることができる。
【0012】
(2) 前記鉄の水酸化物は、液中に溶解していた鉄を析出させることで得られた鉄の水酸化物である、(1)に記載の含鉄クリンカーの製造方法。
【0013】
(2)の含鉄クリンカーの製造方法によれば、(1)の含鉄クリンカーの製造方法の奏する上記効果を、より良好な水準で発現させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、還元焙焼処理によって、鉄鋼ダストと、「鉄の水酸化物を含有する含鉄脱水ケーキ」から「含鉄クリンカー」を製造する際に、「含鉄脱水ケーキ」由来の還元焙焼ロータリーキルン内壁への付着物の形成を抑制して、含鉄クリンカーの生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の「含鉄クリンカーの製造方法」の実施態様の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<全体構成>
図1に示すように、本発明の「含鉄クリンカーの製造方法」は、鉄鋼ダストを造粒することにより「還元焙焼用ペレット」を得る予備混合工程S10と、「鉄の水酸化物を含有する含鉄脱水ケーキ」を、予備混合工程S10で得た「還元焙焼用ペレット」と共に、還元焙焼工程S20に装入し、還元された鉄分が多く含有される「含鉄クリンカー」を回収するプロセスである。尚、本発明の「含鉄クリンカーの製造方法」において、還元焙焼工程S20に投入する鉄鋼ダストの全てが予備混合工程S10で造粒されたペレットである必要はなく、少なくとも、上記鉄鋼ダストの一部が予備混合工程S10で造粒されたペレットであればよい。
【0017】
尚、「含鉄クリンカーの製造方法」は、図1に示すように、上述の予備混合工程S10及び還元焙焼工程S20に加えて、湿式工程S30、乾燥加熱工程S40等を更に行うことにより、鉄鋼ダストから酸化亜鉛を回収するプロセスを行う既存の粗酸化亜鉛製造設備において実施することができるプロセスである。
【0018】
<予備混合工程>
予備混合工程S10は、還元焙焼工程S20に先行して、鉄鋼ダスト、及び、必要に応じて、粉コークス等の還元剤等を混合して、これらを造粒することにより、「還元焙焼用ペレット」を得る工程である。
【0019】
予備混合工程S10において「還元焙焼用ペレット」を得るための混合造粒の作業は、公知のペレタイジング装置を用いて行うことができる。この作業、所謂、ペレタイジングは、具体例として、回転式のパン型ペレタイザー、又は、2軸不等速ピン式造粒機を用いて、鉄鋼ダストと粉コークスとを、所定のペレット組成となるように連続的に供給し、ミスト状の水分を添加しながら混合造粒することにより行うことができる。尚、「還元焙焼用ペレット」のサイズは、ハンドリングのし易さに加えて、亜鉛回収率を向上させるために、1mm以上20mm以下程度の範囲であることが好ましい。又、「還元焙焼用ペレット」の含水率は、造粒する為の条件に加えて、粒径を制御するために、10質量%以上15質量%以下程度の範囲であることが好ましい。
【0020】
<還元焙焼工程>
還元焙焼工程S20は、「鉄の水酸化物を含有する含鉄脱水ケーキ」を、予備混合工程S10で得た「還元焙焼用ペレット」と共に、還元雰囲気で焙焼することによって、還元された鉄分が多く含有される「含鉄クリンカー」を回収する工程である。尚、この還元焙焼工程S20においては、上述の各原材料(「鉄の水酸化物を含有する含鉄脱水ケーキ」及び「還元焙焼用ペレット」)に加えて、必要に応じて、粉コークス等の還元剤及び石灰石等の組成調整剤等も併せて添加される。又、本明細書において、「含鉄脱水ケーキ」とは、「鉄の水酸化物を含有する脱水ケーキ」全般のことを言うが、主として、非鉄金属製錬プロセスにおける製錬中間物の利用が想定されている。
【0021】
還元焙焼工程S20は、上述したウェルツプロセスの還元焙焼工程を行うロータリーキルンを用いて行なうことができる。このロータリーキルン内で、鉄鋼ダストに含まれる酸化亜鉛(ZnO)は、還元焙焼され、揮発した金属亜鉛は排ガス中で再酸化されて粉状の酸化亜鉛(ZnO)となる。一方で、還元焙焼処理によって、揮発せずにキルン中に残った還元焙焼残渣には還元された鉄分が多く含有されるため、この還元焙焼残渣が、鉄源として有用な「含鉄クリンカー」としてキルン排出端より回収される。
【0022】
本発明の「含鉄クリンカーの製造方法」は、鉄分を主として酸化物の形で含む鉄鋼ダストを還元剤と混合して造粒する上記の予備混合工程S10を必須の工程とする一方で、上記の「含鉄脱水ケーキ」については、予備混合工程S10には装入せずに、還元焙焼工程S20を行うロータリーキルンに直接装入することを主たる特徴とするプロセスである。
【0023】
ここで、「鉄の水酸化物を含有する含鉄脱水ケーキ」は、通常、フィルタープレス等の脱水機で脱水されており、35%程度の水分を含む粘性の大きな固形物である。「含鉄脱水ケーキ」を鉄鋼ダスト等と共に混合造粒したペレットを、還元焙焼処理を行う還元焙焼炉であるロータリーキルン炉内に装入していた従来の含鉄クリンカーの製造において、還元焙焼ロータリーキルンの内側の側壁に大量の付着物が発生していたことの要因は、粘性が大きい「含鉄脱水ケーキ」が、鉄鋼ダストとの混合造粒時にペレット内で十分に均一に分散せず、ペレット内で「含鉄脱水ケーキ」由来の鉄の水酸化物が不均一に偏在していたことに起因すると考えられる。鉄の水酸化物が不均一に偏在しているペレットが、還元焙焼工程S20を行うロータリーキルンに装入された場合には、炉内での装入物の還元度にバラつきが生じて、局所的に酸化鉄(FeO)を主成分とした低融点物質が形成され、この低融点物質が、還元焙焼ロータリーキルン内で熔融した後、当該ロータリーキルンの内側の側壁に付着して、上述の付着物を形成することになるからである。
【0024】
これに対して、本発明の「含鉄クリンカーの製造方法」においては、「含鉄脱水ケーキ」は、予備混合工程S10を経ずに、還元焙焼ロータリーキルンに直接装入される。より具体的には、「含鉄脱水ケーキ」は、予備混合工程S10で得た鉄鋼ダストを含有する「還元焙焼用ペレット」を切り出す定量フィーダーと同様の定量フィーダーを用いて、「還元焙焼用ペレット」用の上記フィーダーとは別のフィーダーによって、還元焙焼工程S20を行うロータリーキルンに装入される。
【0025】
そして、本発明の「含鉄クリンカーの製造方法」においては、予備混合工程S10を経ずに、還元焙焼工程S20を行うロータリーキルンに直接装入された「含鉄脱水ケーキ」が、ロータリーキルンの炉内を加熱乾燥されながら移動する過程において粉化する。そして粉化した「含鉄脱水ケーキ」由来の粉体(鉄の水酸化物)が、ロータリーキルンの回転による撹拌により、炉内を移動する過程において、鉄鋼ダストを含有する上記の「還元焙焼用ペレット」中に均一に分散して浸透していく。このようにして炉内で形成される造粒物は、これに含まれる大分部の鉄が十分に還元された形で含まれる還元焙焼残滓となり、この、還元焙焼残滓が、「含鉄クリンカー」として、還元焙焼工程S20を行うロータリーキルンの排出端から回収される。
【0026】
ここで、本発明の「含鉄クリンカーの製造方法」において原料として用いる「含鉄脱水ケーキ」は、特には、湿式製錬工程等において、液中に含まれる鉄を水酸化物の形で析出して得られる析出物等、液中に溶解していた鉄を析出させることで得られた鉄の水酸化物を主たる成分とするものであることが好ましい。このような水酸化物は、極めて精細な微粒子の形で得られるため、このような鉄の水酸化物からなる「含鉄脱水ケーキ」は、還元焙焼工程S20を行うロータリーキルンによる撹拌により、極めて粒度の小さな精細な微粒子の状態となる。このように極めて粒度の小さな精細な微粒子の状態となることにより、「含鉄脱水ケーキ」由来の鉄の水酸化物が、鉄鋼ダストを含有する造粒物である「還元焙焼用ペレット」内に、より容易に、且つ、より均一に分散して浸透していくことができるからである。
【0027】
以上説明した各工程からなる本発明の「含鉄クリンカーの製造方法」によって得ることができる「含鉄クリンカー」は、鉄品位が十分に高く、セメントメーカーや鉄鋼メーカーにおいて鉄源として好ましく利用することができる。
【0028】
<湿式工程>
湿式工程S30は、酸化亜鉛鉱を製造する全体プロセスにおいて、還元焙焼工程S20において回収された亜鉛を含有する粗酸化亜鉛(粗酸化亜鉛ダスト)に湿式処理を施し、ハロゲン成分等の水溶性不純物を液相に分離して、純度の高い粗酸化亜鉛を粗酸化亜鉛ケーキとして得る工程である。
【0029】
<乾燥加熱工程>
乾燥加熱工程S40は、湿式工程S30において回収した粗酸化亜鉛ケーキを、乾燥加熱装置に装入して焼成することにより、亜鉛製錬の原料となる酸化亜鉛鉱(焼鉱)を得る工程である。
【実施例0030】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0031】
<実施例>
実施例の試験操業として、本発明の「含鉄クリンカーの製造方法」によって、鉄鋼ダストと「鉄の水酸化物を含有する含鉄脱水ケーキ」を原材料として、「含鉄クリンカー」を得る試験操業を下記の条件で行った。又、この試験操業は、予備混合工程、還元焙焼工程を上述した態様で行った。
【0032】
「鉄の水酸化物を含有する含鉄脱水ケーキ」としては、鉄50質量%を水酸化物の形で含む脱水ケーキを用いた。この「含鉄脱水ケーキ」を、予備混合工程によって得た、鉄鋼ダストを含む「還元焙焼用ペレット」180t/日に対し、20質量%の割合、即ち、36t/日で、別々の定量フィーダーを用いて還元焙焼ロータリーキルンに装入する態様で還元焙焼工程を行った。尚、粉コークスは鉄鋼ダストと鉄の水酸化物の合計に対して25質量%、粉石灰石は鉄鋼ダストと鉄の水酸化物の合計に対して14質量%を供給した。
【0033】
還元焙焼工程を行う還元焙焼ロータリーキルンは、炉内温度を1400℃まで加熱した。「含鉄脱水ケーキ」及び「還元焙焼用ペレット」に含まれる塩素、硫黄等の不純物は塩化鉛、塩化カドミウム等の形で揮発除去され、還元焙焼ロータリーキルンの排出端から「含鉄クリンカー」を回収した。
【0034】
以上の試験操業を1か月継続後、還元焙焼ロータリーキルンを降温させ、炉内の確認を行ったところ、炉内側壁に付着物は、ほとんど形成されていなかった。
【0035】
<比較例>
実施例で用いた物と同一の「鉄の水酸化物を含有する含鉄脱水ケーキ」について、鉄鋼ダスト等と共に予備混合工程に投入して、予め、全ての鉄源材料を混合造粒することによって得たペレットを、定量フィーダーを用いて還元焙焼ロータリーキルンに装入する態様で還元焙焼工程を行った。「鉄の水酸化物を含有する含鉄脱水ケーキ」を、鉄鋼ダストと共に予め混合造粒してペレット化したことの他は、上記実施例と同様の条件で還元焙焼工程を行う態様で、比較例の試験操業を行った。この操業においては、還元焙焼ロータリーキルンの炉内において、操業開始直後から、装入物の一部が炉内側壁に付着しはじめ、操業を2週間継続したところで、還元焙焼ロータリーキルンの炉内は、この付着物により完全に閉塞した。付着物を除去するために、降温、付着物除去作業、昇温の作業を合計で5日間、操業を停止して行うことが必要であった。
【0036】
上記の各試験操業の結果より、本発明の「含鉄クリンカーの製造方法」によれば、還元焙焼処理によって、鉄鋼ダストと、「鉄の水酸化物を含有する含鉄脱水ケーキ」から「含鉄クリンカー」を製造する際に、「含鉄脱水ケーキ」由来の還元焙焼ロータリーキルン内壁への付着物の形成を抑制して、含鉄クリンカーの生産性を向上させることができることが確認された。
【符号の説明】
【0037】
S10 予備混合工程
S20 還元焙焼工程
S30 湿式工程
S40 乾燥加熱工程
図1