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  • 特開-集中力向上剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055579
(43)【公開日】2023-04-18
(54)【発明の名称】集中力向上剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/54 20060101AFI20230411BHJP
   A61K 36/65 20060101ALI20230411BHJP
   A61K 36/725 20060101ALI20230411BHJP
   A61K 36/9068 20060101ALI20230411BHJP
   A61K 36/484 20060101ALI20230411BHJP
   A61K 35/02 20150101ALI20230411BHJP
   A61K 35/618 20150101ALI20230411BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230411BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
A61K36/54
A61K36/65
A61K36/725
A61K36/9068
A61K36/484
A61K35/02
A61K35/618
A61P25/00
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021165105
(22)【出願日】2021-10-06
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ▲1▼販売店舗:B&Dドラッグストア(上小田井店、清須店、則武店、岩塚店、八田店、平和堂豊成店、アルテ太平通店、富田店、滝の水店、味鋺店、新守山店、本山駅店、猪高店、牧の原店、一社店、原店、島田橋店、小牧店、鳥居松店、フィールネットワーク店、如意申店、勝川駅店、中央台店、高蔵寺白山店) 販売開始日:令和3年7月31日 ▲2▼ウェブサイトのアドレス:https://lohaco.yahoo.co.jp/ https://lohaco.yahoo.co.jp/store/h-lohaco/item/ah87133/ ウェブサイトの掲載開始日:令和3年7月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】清水 那有多
【テーマコード(参考)】
4C087
4C088
【Fターム(参考)】
4C087AA01
4C087AA02
4C087BA07
4C087BB16
4C087CA47
4C087MA02
4C087NA14
4C087ZA02
4C087ZC75
4C088AB12
4C088AB33
4C088AB58
4C088AB60
4C088AB81
4C088AD01
4C088AD08
4C088BA37
4C088MA08
4C088NA14
4C088ZA02
4C088ZC75
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は集中力を向上できる内服薬を提供することである。
【解決手段】桂枝加竜骨牡蛎湯エキスは、集中力向上剤の有効成分となる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
桂枝加竜骨牡蛎湯エキスを含有する、集中力向上剤。
【請求項2】
電子機器の操作における集中力を向上する、請求項1に記載の集中力向上剤。
【請求項3】
実証に対して適用される、請求項1又は2に記載の集中力向上剤。
【請求項4】
メンタルヘルス不調の訴えのない人に対して適用される、請求項1~3のいずれかに記載の集中力向上剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集中力向上剤に関する。
【背景技術】
【0002】
仕事や勉強を効率的に進めるためには、集中力は欠かせない。集中力が落ちると、ミスが起きやすくなったり、生産性が落ちたり等、仕事や勉強のパフォーマンスに悪影響し得るため、集中力の向上は社会的活動を営む人々にとって常に重要な課題となっている。長時間のデスクワーク、リモート会議の多用による業務中断機会の増大、家族が同居する自宅での在宅ワークの普及等に伴い、集中力が低下しやすくなる要因も多様化しており、集中力の向上の要請はますます大きくなっている。
【0003】
集中力の向上のためのアプローチとして、カフェイン飲料を摂取することが一般的に行われる。このアプローチは経験的知見のみならず科学的根拠にも基づいており、「カフェイン摂取による集中力や注意力の向上」は、欧州食品安全機関EFSAが「科学的根拠があり、ヘルスクレーム(食品機能性の表示)が可能である」ことを認めた効果の一つである(非特許文献1)。
【0004】
ここで、メンタルヘルスの観点からストレスの評価法に注目が集まっており、ストレスとの関連性が確認されているバイオマーカーであるコルチゾールは、ストレスマーカーとして最もよく利用されているものの1つである(非特許文献2、3等)。このため、コルチゾール量は、メンタルストレスの軽減又は解消を目的とした手段によるメンタルストレスへの実際の効果を客観的に評価するための指標として用いられている。例えば、音楽によるストレス解消効果を唾液中コルチゾール量の測定によって確認したこと(非特許文献4)、オルニチンの摂取によりメンタルストレスが軽減されることを唾液中コルチゾール量の測定によって確認したこと(非特許文献5、6等)等の報告があり、唾液中コルチゾール量はメンタルストレスの客観的指標として汎用されている。
【0005】
上記のように、メンタルストレスつまり不快ストレスとコルチゾール分泌量との正の相関が広く知られている一方で、集中とコルチゾール分泌量との正の相関も知られている。例えば、暗算課題を課した被験者において、暗算課題遂行中の統制感が高い群において、低い群よりも、暗算課題遂行においてより集中し努力しており、主観的ストレス度やいらだち感が低いにもかかわらずコルチゾール分泌が高かったこと(非特許文献7)、及び課題遂行中の集中とコルチゾール分泌とに有意な正の相関がみられ、学習活動における集中という心理変数変化をコルチゾールにより評価可能であること(非特許文献8)等の報告がある。
【0006】
集中力や注意力の向上が認められると公的に認められているカフェインについても、摂取することでコルチゾールが上昇することが報告されている(非特許文献9)。つまり、カフェインの摂取が集中力を高める機序は、カフェインがコルチゾール値を上昇させる作用によると認められる。なお、カフェインの精神運動刺激作用は良く知られているところであり、アデノシンA2A受容体の遮断を介して間接的に、興奮性神経伝達物質のグルタミン酸、ドーパミンなどのシナプス間隙への放出を促進する作用機序等(非特許文献10)によるものとされている。つまり、カフェインがコルチゾール値の上昇に現れる集中力向上をもたらすのは、精神運動刺激作用によるものと考えられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】EFSA J 2011; 9(4): 2054
【非特許文献2】日本補完代替医療学会誌/4 巻 (2007) 3 号 p. 91-101
【非特許文献3】日薬理誌 129,80-84(2007)
【非特許文献4】人間環境学研究 第 11 巻 1 号 19-25
【非特許文献5】栄養学雑誌 第69巻 5号 Supplement 300 (2011)
【非特許文献6】食品と開発 VOL. 48 NO. 3 97-99 (2013)
【非特許文献7】心理学研究 第74巻 第2号 164-170 (2003)
【非特許文献8】電子情報通信学会技術研究報告 101(706) 157-164 (2002)
【非特許文献9】ストレスマネジメント効果の客観的評価への応用、ストレスマネジメント研究 9, 3-17 (2012)
【非特許文献10】J. Neurochem. 105, 1067-1079 (2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、集中力を高めるには、神経を興奮する作用があるカフェインのような成分を利用してコルチゾールを上昇させることが合理的である。一方で、カフェインの感受性は人により大きく異なる。このため、カフェイン感受性が強い人にとっては、カフェインの摂取量や摂取時間が大幅に制限され、カフェインによる集中力向上効果をうまく享受できない場合がある。このため、集中力を向上できる経口剤として新たな選択肢が望まれる。
【0009】
そこで、本発明は、集中力を向上できる経口剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、鋭意検討を行ったところ、桂枝加竜骨牡蛎湯が、コルチゾールを低減する作用があるにもかかわらず、集中力を向上できるという予想外の効果を見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0011】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 桂枝加竜骨牡蛎湯エキスを含有する、集中力向上剤。
項2. 電子機器の操作における集中力を向上する、項1に記載の集中力向上剤。
項3. 実証に対して適用される、項1又は2に記載の集中力向上剤。
項4. メンタルヘルス不調の訴えのない人に対して適用される、項1~3のいずれかに記載の集中力向上剤。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、集中力を向上できる経口剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の集中力向上剤による事務作業のミス率の改善効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の集中力向上剤は、桂枝加竜骨牡蛎湯エキスを含有し、集中力の向上に用いられることを特徴とする。以下、本発明の集中力向上剤について詳述する。
【0015】
桂枝加竜骨牡蛎湯エキス
桂枝加竜骨牡蛎湯の漢方処方としては、「新 一般用漢方処方の手引き」(合田 幸広・袴塚 高志監修、日本漢方生薬製剤協会編集、株式会社じほう発行)に記載されている漢方処方が好ましく、具体的には、ケイヒ、シャクヤク、タイソウ、リュウコツ、ボレイ、カンゾウ、及びショウキョウからなる混合生薬が挙げられる。また、桂枝加竜骨牡蛎湯には、漢方生薬調査会により定められた「漢方製剤の基本的取扱い方針」に規定されるように、現在繁用されている漢方関係の書簡に記載されている混合生薬(漢方処方)が包含される。
【0016】
また、桂枝加竜骨牡蛎湯を構成する各生薬の分量としては、ケイヒが1~4重量部、好ましくは1.5~3重量部;シャクヤクが1~4重量部、好ましくは1.5~3重量部;タイソウが1~4重量部、好ましくは1.5~3重量部;リュウコツが0.75~3重量部、好ましくは1~2重量部;ボレイが0.75~3重量部、好ましくは1~2重量部;カンゾウが0.5~2重量部、好ましくは0.75~1.5重量部;ショウキョウ0.25~1.5重量部、好ましくは0.5~1重量部が挙げられる。
【0017】
本発明で使用される桂枝加竜骨牡蛎湯エキスの製造に供される生薬調合物の好適な例としては、ケイヒ2重量部、シャクヤク2重量部、タイソウ2重量部、リュウコツ1.5重量部、ボレイ1.5重量、カンゾウ1重量部、及びショウキョウ0.5重量部が挙げられる。
【0018】
桂枝加竜骨牡蛎湯のエキスの形態としては、軟エキス等の液状のエキス、又は固形状の乾燥エキス末のいずれであってもよい。
【0019】
桂枝加竜骨牡蛎湯の液状のエキスは、桂枝加竜骨牡蛎湯処方に従った混合生薬を抽出処理し、得られた抽出液を必要に応じて濃縮することにより得ることができる。また、桂枝加竜骨牡蛎湯の乾燥エキス末は、液状のエキスを乾燥処理することにより得ることができる。
【0020】
桂枝加竜骨牡蛎湯のエキスの製造において、抽出処理に使用される抽出溶媒としては、特に限定されず、水又は含水エタノールが挙げられる。桂枝加竜骨牡蛎湯の抽出処理としては、特に限定されないが、例えば、桂枝加竜骨牡蛎湯に含まれる生薬の総重量(乾燥重量換算)に対して、5~10倍量程度の抽出溶媒で抽出した後、1/2容量になるまで濃縮し、固形分を除いたものを、桂枝加竜骨牡蛎湯の液状エキスとして得る方法が挙げられる。また、この液状エキスを乾燥処理に供することにより、桂枝加竜骨牡蛎湯の乾燥エキス末が得られる。乾燥処理としては、特に限定されず、公知の方法を用いればよく、例えば、スプレードライ法や、エキスの濃度を高めた軟エキスに適当な吸着剤(例えば無水ケイ酸、デンプン等)を加えて吸着末とする方法等が挙げられる。
【0021】
本発明において桂枝加竜骨牡蛎湯としてエキスを使用する場合、前述の方法で調製したエキスを使用してもよいし、市販されるものを使用してもよい。例えば、桂枝加竜骨牡蛎湯の乾燥エキス末としては、桂枝加竜骨牡蛎湯乾燥エキス-F(アルプス薬品工業製)等がそれぞれ商品として知られており、商業的に入手することもできる。
【0022】
本発明の集中力向上剤において、桂枝加竜骨牡蛎湯エキスの含有量としては、本発明の効果を奏する限り、特に限定されないが、桂枝加竜骨牡蛎湯エキスの乾燥エキス末量換算で、通常5~100重量%、好ましくは10~90重量%、より好ましくは20~80重量%、更に好ましくは30~60重量%が挙げられる。なお、本発明において、桂枝加竜骨牡蛎湯の乾燥エキス末量換算とは、桂枝加竜骨牡蛎湯の乾燥エキス末を使用する場合にはそれ自体の量であり桂枝加竜骨牡蛎湯の液状のエキスを使用する場合には、溶媒を除去した残量に換算した量である。また、桂枝加竜骨牡蛎湯の乾燥エキス末が、製造時に添加される吸着剤等の添加剤を含む場合は、当該添加剤を除いた量である。
【0023】
その他の成分
本発明の集中力向上剤は、桂枝加竜骨牡蛎湯エキス単独からなるものであってもよく、製剤形態に応じた添加剤や基剤を含んでいてもよい。このような添加剤及び基剤としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、等張化剤、可塑剤、分散剤、乳化剤、溶解補助剤、湿潤化剤、安定化剤、懸濁化剤、粘着剤、コーティング剤、光沢化剤、水、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、高級アルコール類、エステル類、水溶性高分子、界面活性剤、金属石鹸、低級アルコール類、多価アルコール、pH調整剤、緩衝剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、防腐剤、矯味剤、香料、粉体、増粘剤、色素、キレート剤等が挙げられる。これらの添加剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの添加剤及び基剤の含有量については、使用する添加剤及び基剤の種類、集中力向上剤の製剤形態等に応じて適宜設定される。
【0024】
また、本発明の集中力向上剤は、桂枝加竜骨牡蛎湯エキスの他に、必要に応じて、他の栄養成分や薬理成分を含有していてもよい。このような栄養成分や薬理成分としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、制酸剤、健胃剤、消化剤、整腸剤、鎮痙剤、粘膜修復剤、抗炎症剤、収れん剤、鎮吐剤、鎮咳剤、去痰剤、消炎酵素剤、鎮静催眠剤、抗ヒスタミン剤、カフェイン類、強心利尿剤、抗菌剤、血管収縮剤、血管拡張剤、局所麻酔剤、生薬エキス、ビタミン類、メントール類等が挙げられる。これらの栄養成分や薬理成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの成分の含有量については、使用する成分の種類、集中力向上剤の製剤形態等に応じて適宜設定される。
【0025】
製剤形態
本発明の集中力向上剤の製剤形態については、経口投与が可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、散剤、細粒剤、顆粒剤(ドライシロップを含む)、錠剤、丸剤、カプセル剤(軟カプセル剤、硬カプセル剤)等の固形状製剤;ゼリー剤等の半固形状製剤;液剤、懸濁剤、シロップ剤等の液状製剤が挙げられる。これらの製剤形態の中でも、含有成分の安定性や携帯性等の観点から、好ましくは固形状製剤が挙げられる。
【0026】
本発明の集中力向上剤を前記製剤形態に調製するには、桂枝加竜骨牡蛎湯エキス、及び必要に応じて添加される添加剤、基剤、及び薬理成分を用いて、医薬分野で採用されている通常の製剤化手法に従って製剤化すればよい。
【0027】
用途
本発明の集中力向上剤は、集中力の向上を目的として用いられる。集中力を要する作業としては、事務作業が挙げられ、好ましくはデスクワークが挙げられ、より好ましくはパソコン、スマートフォン、電子タブレット等の電子機器の操作が挙げられ、さらに好ましくは、電子機器のディスプレイを凝視する動作を伴う作業が挙げられる。作業の内容としては、勉強及び仕事を問わない。
【0028】
本発明の集中力向上剤の適用対象の好ましい例としては、日常、上記電子機器を用いた作業を行っている人が挙げられ、当該作業の時間としては、1日当たり、例えば、集中力低下等の自覚症状の訴えが増加する4時間以上、好ましくは集中力低下の自覚症状の割合が高くなる6時間以上が挙げられる。
【0029】
本発明の集中力向上剤は、集中力を向上させるにも関わらずストレスマーカーであるコルチゾール量を低下させる作用がある。このため、本発明の集中力向上剤は、心理的な要素(人間関係の不良、経済事情の不良、目的の難易度、目的達成へのプレッシャー、能力不足、各種ハラスメントに対する心理的な負担が挙げられる。)を原因とするメンタルヘルス不調(一般的に、ストレスマーカーであるコルチゾール量が多い状態)に対して用いることも有用である。
【0030】
一方で、本発明の集中力向上剤は、メンタル不調の改善とは無関係の用途に用いられるため、好ましくは、メンタルヘルス不調の訴えのない人に対して適用される。
【0031】
なお、集中力の向上効果は、主観的に評価することもできるし、事務作業のミス率を測定することで評価することもできる。ミス率の測定については、例えば、所定の文字入力をさせた場合にタイピングミスを行った確率を測定してもよいし、暗算をさせた場合に誤答した確率を測定してもよいが、好ましくは、タイピングミスを行った確率を測定することができる。
【0032】
用量・用法
本発明の集中力向上剤は経口投与によって使用される。本発明の集中力向上剤の用量については、投与対象者の年齢、性別、体質、症状の程度等に応じて適宜設定されるが、例えば、ヒト1人に対して1日当たり、桂枝加竜骨牡蛎湯エキスの乾燥エキス末量換算で0.2~20g程度、好ましくは0.5~10g程度、より好ましくは1~5g程度、さらに好ましくは2~3g程度となる量で、1日1~3回、好ましくは2又は3回の頻度で服用すればよい。服用タイミングについては、特に制限されず、食前、食後、又は食間のいずれであってもよいが、食前(食事の30分前)又は食間(食後2時間後)が好ましい。
【0033】
本発明の集中力向上剤は、デジタル不調を改善する効果に優れているため、例えば5日~10日程度でも改善効果を得ることができる。従って、本発明の集中力向上剤の服用期間としては、例えば5日以上、6日以上、7日以上、8日以上、又は9日以上が挙げられ、また、服用期間の上限としては、例えば4週間以下、好ましくは3週間以下、より好ましくは2週間以下、さらに好ましくは10日以下、9日以下、8日以下、7日以下、又は6日以下が挙げられる。
【実施例0034】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0035】
桂枝加竜骨牡蛎湯エキス末の製造
原料生薬を、ケイヒ2重量部、シャクヤク2重量部、タイソウ2重量部、リュウコツ1.5重量部、ボレイ1.5重量、カンゾウ1重量部、及びショウキョウ0.5重量部の割合で用い、これらを刻んだ後、水20倍重量(210重量部)を用いて約100℃で1時間抽出し、遠心分離して抽出液を得、減圧下で濃縮してスプレードライヤーを用いて乾燥し、桂枝加竜骨牡蛎湯エキス末を得た。得られた桂枝加竜骨牡蛎湯エキス末は、原料生薬混合物105g当たり25gであった。なお、スプレードライヤーによる乾燥は、抽出液を回転数10000rpmのアトマイザーに落下させ、150℃の空気の熱風を供給して行った。
【0036】
試験例
(試験方法)
健常な(メンタルヘルス不調の訴えがない)男女10名を被験対象とした。これらの被験対象は、仕事柄、日常的に、パソコン等の電子機器のディスプレイを凝視する事務作業を一日6時間以上行っており、このような事務作業が続くことにより集中力の低下を実感していた。
【0037】
試験日前日に転記用の英語論文を配布し、試験当日のパソコンを開いた時点(起床後約2時間半後)でWordソフトを用い転記用の論文を15分間タイピングにより転記させた。その直後、コルチゾール(ストレスマーカー)測定用に唾液を採取した。試験日当日は、パソコン等の電子機器のディスプレイの凝視を含む通常どおりの事務作業(仕事)を行い、事務作業終了後にもう一度英語論文の15分間の転記タイピング作業を行ってWordファイルを作成し、その直後に唾液を採取した。この試験を、桂枝加竜骨牡蛎湯エキスの非服用期間については、試験開始前(0日)、試験開始5日後、及び服用開始10日後に行い、桂枝加竜骨牡蛎湯エキスの服用期間については、試験開始前(桂枝加竜骨牡蛎湯エキスの服用前つまり0日)、服用開始5日後、及び服用開始10日後に行った。なお、桂枝加竜骨牡蛎湯エキスの服用は、食前又は食間に、1日当たり2.3g(乾燥エキス換算量)を1日2回に分けて行った。
【0038】
採取した唾液中のコルチゾールをELISAで測定した。人体中のコルチゾール濃度は一般的に朝が高く夜になるにつれて低くなる性質があることから、朝のコルチゾール値を100%とした場合の夜のコルチゾール値の相対量(%)を導出し、平均化した。
【0039】
作成されたWordファイルにおいて、総タイピング数に対するミスタイピング数の割合(ミス率)を導出し、試験前におけるミス率を100%とした場合の各試験日におけるミス率を導出し、各点の近似直線の傾きに-1を掛けた値を改善度として導出した。当該改善度が高いほど、集中力が高いことを示す。結果を図1に示す。
【0040】
(結果)
コルチゾール相対量平均値は、服用前で69%(この値は、事務作業を行わなかった休日における測定値に比べて上昇している)、服用開始5日後で44%、服用開始10日後で44%であった。つまり、桂枝加竜骨牡蛎湯エキスの服用により、コルチゾール量が低減することが示された。
【0041】
このように桂枝加竜骨牡蛎湯エキスの服用によりコルチゾール量が低減するにも関わらず、図1に示すとおり、桂枝加竜骨牡蛎湯エキスの服用期間ではミス改善度が高く、集中力が向上していた。事実、被験者は、服用期間において集中力の向上を実感したと回答した。
【0042】
さらに、被験対象の中には、漢方医学における実証に相当する体力がある人も含まれており、そのような人においては、コルチゾール相対量の低減の程度が大きかったが、それらの人は、服用期間において、集中力の向上効果がより一層強く得られた。
図1