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特開2023-55728硬化性組成物、膜、カラーフィルタ、カラーフィルタの製造方法、固体撮像素子、画像表示装置、及び、高分子化合物
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  • 特開-硬化性組成物、膜、カラーフィルタ、カラーフィルタの製造方法、固体撮像素子、画像表示装置、及び、高分子化合物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055728
(43)【公開日】2023-04-18
(54)【発明の名称】硬化性組成物、膜、カラーフィルタ、カラーフィルタの製造方法、固体撮像素子、画像表示装置、及び、高分子化合物
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/12 20060101AFI20230411BHJP
   G03F 7/031 20060101ALI20230411BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20230411BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20230411BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20230411BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20230411BHJP
   H10K 59/38 20230101ALI20230411BHJP
   H10K 85/10 20230101ALI20230411BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
C08F290/12
G03F7/031
G03F7/038 501
G03F7/004 505
G02B5/20 101
G02B5/22
H10K59/38
H10K85/10
H01L27/146 D
【審査請求】有
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003576
(22)【出願日】2023-01-13
(62)【分割の表示】P 2020572220の分割
【原出願日】2020-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2019024236
(32)【優先日】2019-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 純一
(72)【発明者】
【氏名】深見 祐太朗
(72)【発明者】
【氏名】金子 祐士
(72)【発明者】
【氏名】尾田 和也
(72)【発明者】
【氏名】小泉 宙夢
(57)【要約】      (修正有)
【課題】支持体との密着性に優れた膜が形成される硬化性組成物を提供する。また、上記硬化性組成物から形成された膜、カラーフィルタ、上記硬化性組成物を用いたカラーフィルタの製造方法、上記膜又は上記カラーフィルタを含む固体撮像素子及び画像表示装置、新規な高分子化合物を提供する。
【解決手段】顔料、並びに、下記条件1及び下記条件2の少なくとも一方を満たす樹脂を含む硬化性組成物である。
条件1:上記樹脂が、アニオン構造、上記アニオン構造とイオン結合する第四級アンモニウムカチオン構造、及び、ラジカル重合性基を同一の側鎖に有する構成単位を含む;
条件2:上記樹脂が、第四級アンモニウムカチオン構造、及び、ラジカル重合性基が連結された基を側鎖に有する構成単位を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料、並びに、下記条件1及び下記条件2の少なくとも一方を満たす樹脂を含み、
前記樹脂が下記式(D5)で表される構成単位を更に含む、
硬化性組成物;
条件1:前記樹脂が、アニオン構造、前記アニオン構造とイオン結合する第四級アンモニウムカチオン構造、及び、ラジカル重合性基を同一の側鎖に有する構成単位を含み、前記アニオン構造が前記樹脂と共有結合しており、前記アニオン構造に対して、ラジカル重合性基及び第四級アンモニウムカチオン構造を有する化合物がイオン結合した構造を有する;
条件2:前記樹脂が、第四級アンモニウムカチオン構造、及び、ラジカル重合性基が連結された基を側鎖に有する構成単位を含み、
前記条件2における第四級アンモニウムカチオン構造の対アニオンは前記樹脂中に存在し、
前記条件2における前記ラジカル重合性基は、(メタ)アリル基、(メタ)アクリルアミド基、又は、(メタ)アクリロキシ基である。
【化1】

式(D5)中、RD9は、水素原子又はアルキル基を表し、XD6は、酸素原子又はNR-を表し、Rは水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、LD3は2価の連結基を表し、YD1はアルキレンカルボニルオキシ基を表し、ZD1は、炭素数1~20の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~20の芳香族炭化水素基を表し、pは1以上の整数を表し、pが2以上である場合、p個のYD1は同一であってもよいし異なっていてもよい。
【請求項2】
前記樹脂が下記式(A1)で表される構成単位、及び、下記式(B1)で表される構成単位の少なくとも一方を含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【化2】

式(A1)中、RA1は水素原子又はアルキル基を表し、AA1は酸基からプロトンが乖離した基を含む構造を表し、RA2及びRA3はそれぞれ独立に、アルキル基又はアラルキル基を表し、LA1はmAが1である場合には1価の置換基を表し、mAが2以上である場合にはmA価の連結基を表し、LA2はnA+1価の連結基を表し、LA3は2価の連結基を表し、RA4は水素原子又はアルキル基を表し、nAは1以上の整数を表し、mAは1以上の整数を表し、mAが2以上の場合には、2以上のRA2、2以上のRA3及び2以上のLA2はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよく、mAが2以上の場合には、第四級アンモニウムカチオンを含む構造であるmA個の構造のうち、ある構造に含まれるRA2及びRA3よりなる群から選ばれた少なくとも1つは、別の構造に含まれるRA2及びRA3よりなる群から選ばれた少なくとも1つと環構造を形成してもよく、nA及びmAよりなる群から選ばれた少なくとも一方が2以上の場合には、2以上のLA3及び2以上のRA4はそれぞれ同一であってもよいし異なっていてもよく、RA2、RA3及びLA2のうち少なくとも2つが結合して環を形成してもよい;
式(B1)中、RB1は水素原子又はアルキル基を表し、LB1は2価の連結基を表し、RB2及びRB3はそれぞれ独立に、アルキル基を表し、LB2はnB+1価の連結基を表し、LB3は2価の連結基を表し、RB4は水素原子又はアルキル基を表し、nBは1以上の整数を表し、nBが2以上の場合には、2以上のLB3及び2以上のRB4はそれぞれ同一であってもよいし異なっていてもよく、RB2、RB3、LB1及びLB2のうち少なくとも2つが結合して環を形成してもよい。
【請求項3】
前記式(A1)中のnAが1であり、LA2及びLA3の結合が下記式(C1)~下記式(C4)により表される基のうちいずれか1つを表すか、又は、前記式(B1)中のnBが1であり、LB2及びLB3が下記式(C1)~下記式(C4)により表される基のうちいずれか1つを表す、請求項2に記載の硬化性組成物;
【化3】

式(C1)~式(C4)中、LC1、LC2及びLC3はそれぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表し、波線部は式(A1)又は式(B1)中の窒素原子との結合部位を、*は式(A1)中のRA4が結合した炭素原子又は式(B1)中のRB4が結合した炭素原子との結合部位を、それぞれ表す。
【請求項4】
前記樹脂における、式(A1)で表される構成単位、及び、式(B1)で表される構成単位の含有量が、1質量%~60質量%である、請求項2又は3に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記樹脂における、式(A1)で表される構成単位、及び、式(B1)で表される構成単位の含有量が、前記樹脂の全質量に対し、5質量%以上である、請求項2又は3に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記樹脂が、前記条件1を満たす樹脂である、請求項1~5のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
前記樹脂が前記条件2を満たす場合、前記樹脂は下記式(D4)で表される構成単位を更に含み、前記樹脂の酸価が40~90mgKOH/gである、請求項1~6のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【化4】

式(D4)中、RD8は、水素原子又はアルキル基を表し、XD5は、-COO-、-CONR-又はアリーレン基を表し、Rは、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、LD2は、炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、炭素数6~20の芳香族炭化水素基、又は、炭素数1~10の脂肪族炭化水素基及び炭素数6~20の芳香族炭化水素基よりなる群から選ばれた2以上の基とエーテル結合及びエステル結合よりなる群から選ばれた1以上の基とを結合した基を表し、更に、LD2は、XD5がアリーレン基である場合、単結合であってもよい。
【請求項8】
前記樹脂が、ラジカル重合性基を有し、かつ、式(A1)で表される構成単位、及び、式(B1)で表される構成単位とは異なる構成単位Dを更に含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
前記樹脂が、前記構成単位Dとして、下記式(D1)で表される構成単位を更に含む、請求項8に記載の硬化性組成物。
【化5】

式(D1)中、RD1~RD3はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、XD1は、-COO-、-CONRD6-又はアリーレン基を表し、RD6は、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、RD4は、2価の連結基を表し、LD1は、下記式(D2)、式(D3)又は式(D3’)により表される基を表し、RD5は、(n+1)価の連結基を表し、XD2は、酸素原子又はNRD7-を表し、RD7は、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、Rは水素原子又はメチル基を表し、nDは1以上の整数を表し、nDが2以上の場合、2以上のXD2及び2以上のRはそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【化6】

式(D2)、式(D3)及び式(D3’)中、XD3は、酸素原子又は-NH-を表し、XD4は、酸素原子又はCOO-を表し、Re1~Re3はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、Re1~Re3のうちの少なくとも2つが結合し、環構造を形成していてもよく、XD5は、酸素原子又は-COO-を表し、Re4~Re6はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、Re4~Re6のうちの少なくとも2つが結合し、環構造を形成していてもよく、*及び波線部は他の構造との結合位置を表す。
【請求項10】
光重合開始剤として、オキシム化合物を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項11】
重合性化合物を更に含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項12】
カラーフィルタの着色層又は赤外線吸収層形成用である、請求項1~11のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の硬化性組成物から形成された膜。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか1項に記載の硬化性組成物から形成されたカラーフィルタ。
【請求項15】
請求項1~12のいずれか1項に記載の硬化性組成物を支持体上に適用して組成物層を形成する工程と、
前記組成物層をパターン状に露光する工程と、
未露光部を現像除去して着色パターンを形成する工程と、を含む
カラーフィルタの製造方法。
【請求項16】
請求項1~12のいずれか1項に記載の硬化性組成物を支持体上に適用して組成物層を形成し、前記組成物層を硬化して硬化層を形成する工程と、
前記硬化層上にフォトレジスト層を形成する工程と、
露光及び現像することにより前記フォトレジスト層をパターニングしてレジストパターンを得る工程と、
前記レジストパターンをエッチングマスクとして前記硬化層をエッチングする工程と、を含む、
カラーフィルタの製造方法。
【請求項17】
請求項13に記載の膜又は請求項14に記載のカラーフィルタを含む固体撮像素子。
【請求項18】
請求項13に記載の膜又は請求項14に記載のカラーフィルタを含む画像表示装置。
【請求項19】
下記式(A1)で表される構成単位、及び、下記式(B1)で表される構成単位の少なくとも一方、並びに、下記式(D5)で表される構成単位を含み、
式(B1)で表される構成単位を含む場合、第四級アンモニウムカチオン構造の対アニオンは高分子化合物中に存在し、
式(B1)で表される構成単位を含む場合、ラジカル重合性基を有し、かつ、式(A1)で表される構成単位、及び、式(B1)で表される構成単位とは異なる構成単位Dを更に含む、
高分子化合物;
【化7】

式(A1)中、RA1は水素原子又はアルキル基を表し、AA1は酸基からプロトンが乖離した基を含む構造を表し、RA2及びRA3はそれぞれ独立に、アルキル基又はアラルキル基を表し、LA1はmAが1である場合には1価の置換基を表し、mAが2以上である場合にはmA価の連結基を表し、LA2はnA+1価の連結基を表し、LA3は2価の連結基を表し、RA4は水素原子又はアルキル基を表し、nAは1以上の整数を表し、mAは1以上の整数を表し、mAが2以上の場合には、2以上のRA2、2以上のRA3及び2以上のLA2はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよく、mAが2以上の場合には、第四級アンモニウムカチオンを含む構造であるmA個の構造のうち、ある構造に含まれるRA2及びRA3よりなる群から選ばれた少なくとも1つは、別の構造に含まれるRA2及びRA3よりなる群から選ばれた少なくとも1つと環構造を形成してもよく、nA及びmAよりなる群から選ばれた少なくとも一方が2以上の場合には、2以上のLA3及び2以上のRA4はそれぞれ同一であってもよいし異なっていてもよく、RA2、RA3及びLA2のうち少なくとも2つが結合して環を形成してもよい;
式(B1)中、RB1は水素原子又はアルキル基を表し、LB1は2価の連結基を表し、RB2及びRB3はそれぞれ独立に、アルキル基を表し、LB2はnB+1価の連結基を表し、LB3はエーテル結合(-O-)、エステル結合(-COO-)、アミド結合(-NHCO-)、又はアルキレン基を表し、RB4は水素原子又はアルキル基を表し、nBは1以上の整数を表し、nBが2以上の場合には、2以上のLB3及び2以上のRB4はそれぞれ同一であってもよいし異なっていてもよく、RB2、RB3、LB1及びLB2のうち少なくとも2つが結合して環を形成してもよい。
【化8】

式(D5)中、RD9は、水素原子又はアルキル基を表し、XD6は、酸素原子又はNR-を表し、Rは水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、LD3は2価の連結基を表し、YD1はアルキレンカルボニルオキシ基を表し、ZD1は、炭素数1~20の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~20の芳香族炭化水素基を表し、pは1以上の整数を表し、pが2以上である場合、p個のYD1は同一であってもよいし異なっていてもよい。
【請求項20】
前記式(A1)中のnAが1であり、LA2及びLA3の結合が下記式(C1)~下記式(C4)により表される基のうちいずれか1つを表すか、又は、前記式(B1)中のnBが1であり、LB2及びLB3が下記式(C1)~下記式(C4)により表される基のうちいずれか1つを表す、請求項19に記載の高分子化合物;
【化9】

式(C1)~式(C4)中、LC1、LC2及びLC3はそれぞれ独立に、2価の連結基を表し、波線部は式(A1)又は式(B1)中の窒素原子との結合部位を、*は式(A1)中のRA4が結合した炭素原子又は式(B1)中のRB4が結合した炭素原子との結合部位を、それぞれ表す。
【請求項21】
前記式(A1)で表される構成単位を含む、請求項19又は20に記載の高分子化合物。
【請求項22】
前記式(B1)で表される繰返し単位を含む場合、式(D4)で表される構成単位を更に有し、酸価が40~90mgKOH/gである、請求項19~21のいずれか1項に記載の高分子化合物。
【化10】

式(D4)中、RD8は、水素原子又はアルキル基を表し、XD5は、-COO-、-CONR-又はアリーレン基を表し、Rは、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、LD2は、炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、炭素数6~20の芳香族炭化水素基、又は、炭素数1~10の脂肪族炭化水素基及び炭素数6~20の芳香族炭化水素基よりなる群から選ばれた2以上の基とエーテル結合及びエステル結合よりなる群から選ばれた1以上の基とを結合した基を表し、更に、LD2は、XD5がアリーレン基である場合、単結合であってもよい。
【請求項23】
式(A1)で表される構成単位、及び、式(B1)で表される構成単位の含有量が、高分子化合物の全質量に対し、5質量%以上である、請求項19~22のいずれか1項に記載の高分子化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物、膜、カラーフィルタ、カラーフィルタの製造方法、固体撮像素子、画像表示装置、及び、高分子化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラ、カメラ付き携帯電話等の普及から、電荷結合素子(CCD)イメージセンサなどの固体撮像素子の需要が大きく伸びている。ディスプレイや光学素子のキーデバイスとしてカラーフィルタ等が使用されている。
【0003】
カラーフィルタは、着色剤と樹脂とを含む硬化性組成物を用いて製造されている。また、一般的に着色剤として顔料を用いた場合、分散剤などを用いて硬化性組成物中に顔料を分散させることも行われている。
【0004】
特許文献1には、(A)少なくとも、特定の構造の重合体成分を含有する重合体主鎖の、一方の末端のみに特定の構造の重合性二重結合基を結合して成る、重量平均分子量3×10以下の一官能性マクロモノマー、特定の構造の四級アンモニウム塩モノマー、及び特定の構造の酸アミド基を少なくとも1つ分子中に有するモノマーとから少なくとも成る共重合体、(B)感放射線性化合物、並びに(C)顔料を含有する感放射線性着色組成物に関する発明が開示されている。
また、特許文献2には、電着塗料組成物であって、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸などからなる群から選択されたカルボン酸化合物 0.5~30質量%、特定の構造のグリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートと第四級アンモニウム塩の反応物 0.5~30質量%、炭素数2~5のヒドロキシアルキルアクリレートとヒドロキシアルキルメタクリレートからなる群から選択された少なくとも一つの水酸基を含有するモノマー 10~40質量%、炭素数2~5のアルキルアクリレートとアルキルメタクリレートからなる群から選択された不飽和モノマー10~70質量%を60~120℃で反応させて得られた重量平均分子量が3,000~30,00であり、1~2.5μmの乾燥塗膜の厚さとした際に3.0-6.0の誘電率を有するアクリレート共重合体 10~15質量%、及び、アントラキノン系顔料とフタロシアニン系顔料から選択される平均粒子径20~150nmの顔料 1~5質量%を含む電着塗料組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10ー254133号公報
【特許文献2】韓国公開特許第2001-0066314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
硬化組成物を用いて形成される膜に関し、支持体との密着性について、更なる向上が望まれている。
本発明の目的は、支持体との密着性に優れた膜が形成される硬化性組成物を提供することである。また、上記硬化性組成物から形成された膜、カラーフィルタ、上記硬化性組成物を用いたカラーフィルタの製造方法、上記膜又は上記カラーフィルタを含む固体撮像素子及び画像表示装置、新規な高分子化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の代表的な実施形態は下記の通りである。
<1> 顔料、並びに、下記条件1及び下記条件2の少なくとも一方を満たす樹脂を含む
硬化性組成物;
条件1:上記樹脂が、アニオン構造、上記アニオン構造とイオン結合する第四級アンモニウムカチオン構造、及び、ラジカル重合性基を同一の側鎖に有する構成単位を含む;
条件2:上記樹脂が、第四級アンモニウムカチオン構造、及び、ラジカル重合性基が連結された基を側鎖に有する構成単位を含む。
<2> 上記樹脂が下記式(A1)で表される構成単位、及び、下記式(B1)で表される構成単位の少なくとも一方を含む、<1>に記載の硬化性組成物。
【化1】

式(A1)中、RA1は水素原子又はアルキル基を表し、AA1は酸基からプロトンが乖離した基を含む構造を表し、RA2及びRA3はそれぞれ独立に、アルキル基又はアラルキル基を表し、LA1はmAが1である場合には1価の置換基を表し、mAが2以上である場合にはmA価の連結基を表し、LA2はnA+1価の連結基を表し、LA3は2価の連結基を表し、RA4は水素原子又はアルキル基を表し、nAは1以上の整数を表し、mAは1以上の整数を表し、mAが2以上の場合には、2以上のRA2、2以上のRA3及び2以上のLA2はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよく、mAが2以上の場合には、第四級アンモニウムカチオンを含む構造であるmA個の構造のうち、ある構造に含まれるRA2及びRA3よりなる群から選ばれた少なくとも1つは、別の構造に含まれるRA2及びRA3よりなる群から選ばれた少なくとも1つと環構造を形成してもよく、nA及びmAよりなる群から選ばれた少なくとも一方が2以上の場合には、2以上のLA3及び2以上のRA4はそれぞれ同一であってもよいし異なっていてもよく、RA2、RA3及びLA2のうち少なくとも2つが結合して環を形成してもよい;
式(B1)中、RB1は水素原子又はアルキル基を表し、LB1は2価の連結基を表し、RB2及びRB3はそれぞれ独立に、アルキル基を表し、LB2はnB+1価の連結基を表し、LB3は2価の連結基を表し、RB4は水素原子又はアルキル基を表し、nBは1以上の整数を表し、nBが2以上の場合には、2以上のLB3及び2以上のRB4はそれぞれ同一であってもよいし異なっていてもよく、RB2、RB3、LB1及びLB2のうち少なくとも2つが結合して環を形成してもよい。
<3> 上記式(A1)中のnAが1であり、LA2及びLA3の結合が下記式(C1)~下記式(C4)により表される基のうちいずれか1つを表すか、又は、上記式(B1)中のnBが1であり、LB2及びLB3が下記式(C1)~下記式(C4)により表される基のうちいずれか1つを表す、<2>に記載の硬化性組成物;
【化2】

式(C1)~式(C4)中、LC1、LC2及びLC3はそれぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表し、波線部は式(A1)又は式(B1)中の窒素原子との結合部位を、*は式(A1)中のRA4が結合した炭素原子又は式(B1)中のRB4が結合した炭素原子との結合部位を、それぞれ表す。
<4> 上記樹脂における、式(A1)で表される構成単位、及び、式(B1)で表される構成単位の含有量が、1質量%~60質量%である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<5> 上記樹脂が、ラジカル重合性基を有し、かつ、式(A1)で表される構成単位、及び、式(B1)で表される構成単位とは異なる構成単位Dを更に含む、<1>~<4>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<6> 上記樹脂が、上記構成単位Dとして、下記式(D1)で表される構成単位を更に含む、<5>に記載の硬化性組成物。
【化3】

式(D1)中、RD1~RD3はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、XD1は、-COO-、-CONRD6-又はアリーレン基を表し、RD6は、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、RD4は、2価の連結基を表し、LD1は、下記式(D2)、式(D3)又は式(D3’)により表される基を表し、RD5は、(n+1)価の連結基を表し、XD2は、酸素原子又はNRD7-を表し、RD7は、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、Rは水素原子又はメチル基を表し、nDは1以上の整数を表し、nDが2以上の場合、2以上のXD2及び2以上のRはそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【化4】

式(D2)、式(D3)及び式(D3’)中、XD3は、酸素原子又は-NH-を表し、XD4は、酸素原子又はCOO-を表し、Re1~Re3はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、Re1~Re3のうちの少なくとも2つが結合し、環構造を形成していてもよく、XD5は、酸素原子又は-COO-を表し、Re4~Re6はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、Re4~Re6のうちの少なくとも2つが結合し、環構造を形成していてもよく、*及び波線部は他の構造との結合位置を表す。
<7> 上記樹脂が下記式(D5)で表される構成単位を更に含む、<1>~<6>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
【化5】

式(D5)中、RD9は、水素原子又はアルキル基を表し、XD6は、酸素原子又はNR-を表し、Rは水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、LD3は2価の連結基を表し、YD1はアルキレンオキシ基又はアルキレンカルボニルオキシ基を表し、ZD1は、炭素数1~20の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~20の芳香族炭化水素基を表し、pは1以上の整数を表し、pが2以上である場合、p個のYD1は同一であってもよいし異なっていてもよい。
<8> 光重合開始剤として、オキシム化合物を含む、<1>~<7>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<9> 重合性化合物を更に含む、<1>~<8>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<10> カラーフィルタの着色層又は赤外線吸収層形成用である、<1>~<9>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<11> <1>~<10>のいずれか1つに記載の硬化性組成物から形成された膜。
<12> <1>~<10>のいずれか1つに記載の硬化性組成物から形成されたカラーフィルタ。
<13> <1>~<10>のいずれか1つに記載の硬化性組成物を支持体上に適用して組成物層を形成する工程と、
上記組成物層をパターン状に露光する工程と、
未露光部を現像除去して着色パターンを形成する工程と、を含む
カラーフィルタの製造方法。
<14> <1>~<10>のいずれか1つに記載の硬化性組成物を支持体上に適用して組成物層を形成し、上記組成物層を硬化して硬化層を形成する工程と、
上記硬化層上にフォトレジスト層を形成する工程と、
露光及び現像することにより上記フォトレジスト層をパターニングしてレジストパターンを得る工程と、
上記レジストパターンをエッチングマスクとして上記硬化層をエッチングする工程と、を含む、
カラーフィルタの製造方法。
<15> <11>に記載の膜又は<12>に記載のカラーフィルタを含む固体撮像素子。
<16> <11>に記載の膜又は<12>に記載のカラーフィルタを含む画像表示装置。
<17> 下記式(A1)で表される構成単位、及び、下記式(B1)で表される構成単位の少なくとも一方を含む、高分子化合物;
【化6】

式(A1)中、RA1は水素原子又はアルキル基を表し、AA1は酸基からプロトンが乖離した基を含む構造を表し、RA2及びRA3はそれぞれ独立に、アルキル基又はアラルキル基を表し、LA1はmAが1である場合には1価の置換基を表し、mAが2以上である場合にはmA価の連結基を表し、LA2はnA+1価の連結基を表し、LA3は2価の連結基を表し、RA4は水素原子又はアルキル基を表し、nAは1以上の整数を表し、mAは1以上の整数を表し、mAが2以上の場合には、2以上のRA2、2以上のRA3及び2以上のLA2はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよく、mAが2以上の場合には、第四級アンモニウムカチオンを含む構造であるmA個の構造のうち、ある構造に含まれるRA2及びRA3よりなる群から選ばれた少なくとも1つは、別の構造に含まれるRA2及びRA3よりなる群から選ばれた少なくとも1つと環構造を形成してもよく、nA及びmAよりなる群から選ばれた少なくとも一方が2以上の場合には、2以上のLA3及び2以上のRA4はそれぞれ同一であってもよいし異なっていてもよく、RA2、RA3及びLA2のうち少なくとも2つが結合して環を形成してもよい;
式(B1)中、RB1は水素原子又はアルキル基を表し、LB1は2価の連結基を表し、RB2及びRB3はそれぞれ独立に、アルキル基を表し、LB2はnB+1価の連結基を表し、LB3は2価の連結基を表し、RB4は水素原子又はアルキル基を表し、nBは1以上の整数を表し、nBが2以上の場合には、2以上のLB3及び2以上のRB4はそれぞれ同一であってもよいし異なっていてもよく、RB2、RB3、LB1及びLB2のうち少なくとも2つが結合して環を形成してもよい。
<18> 上記式(A1)中のnAが1であり、LA2及びLA3の結合が下記式(C1)~下記式(C4)により表される基のうちいずれか1つを表すか、又は、上記式(B1)中のnBが1であり、LB2及びLB3が下記式(C1)~下記式(C4)により表される基のうちいずれか1つを表す、<17>に記載の高分子化合物;
【化7】

式(C1)~式(C4)中、LC1、LC2及びLC3はそれぞれ独立に、2価の連結基を表し、波線部は式(A1)又は式(B1)中の窒素原子との結合部位を、*は式(A1)中のRA4が結合した炭素原子又は式(B1)中のRB4が結合した炭素原子との結合部位を、それぞれ表す。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、支持体との密着性に優れた膜が形成される硬化性組成物が提供される。また、上記硬化性組成物から形成された膜、カラーフィルタ、上記硬化性組成物を用いたカラーフィルタの製造方法、上記膜又は上記カラーフィルタを含む固体撮像素子及び画像表示装置、新規な高分子化合物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例におけるパターン上の硬化物におけるアンダーカット幅の測定位置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。
本明細書において、「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さない基(原子団)と共に置換基を有する基(原子団)をも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。
本明細書において「露光」とは、特に断らない限り、光を用いた露光のみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線を用いた描画も露光に含める。また、露光に用いられる光としては、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線等の活性光線又は放射線が挙げられる。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの双方、又は、いずれかを表し、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの双方、又は、いずれかを表し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及びメタクリロイルの双方、又は、いずれかを表す。
本明細書において、構造式中のMeはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、Buはブチル基を表し、Phはフェニル基を表す。
本明細書において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)法により測定したポリスチレン換算値である。
本明細書において、近赤外線とは、波長700~2,500nmの光をいう。
本明細書において、固形分とは、組成物の全成分から溶剤を除いた成分の質量をいう。
本明細書において、顔料とは、溶剤に対して溶解しにくい化合物を意味する。例えば、顔料は、23℃の水100g及び23℃のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100gに対する溶解度がいずれも0.1g以下であることが好ましく、0.01g以下であることがより好ましい。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書において、特段の記載がない限り、組成物は、組成物に含まれる各成分として、その成分に該当する2種以上の化合物を含んでもよい。また、特段の記載がない限り、組成物における各成分の含有量とは、その成分に該当する全ての化合物の合計含有量を意味する。
本明細書において、特段の記載がない限り、構造式中の波線部又は*(アスタリスク)は他の構造との結合部位を表す。
本明細書において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0011】
(硬化性組成物)
本発明の硬化性組成物は、
顔料、並びに、下記条件1及び下記条件2の少なくとも一方を満たす樹脂(以下、「特定樹脂」ともいう。)を含む。
条件1:上記樹脂が、アニオン構造、上記アニオン構造とイオン結合する第四級アンモニウムカチオン構造、及び、ラジカル重合性基を同一の側鎖に有する構成単位を含む;
条件2:上記樹脂が、第四級アンモニウムカチオン構造、及び、ラジカル重合性基が連結された基を側鎖に有する構成単位を含む。
【0012】
本発明の硬化性組成物によれば、支持体との密着性に優れた膜が得られる。上記効果が得られる理由としては、下記のように推測される。
【0013】
本発明の硬化性組成物における特定樹脂は、上記条件1及び上記条件2の少なくとも一方を満たすことにより、同一の側鎖に第四級アンモニウムカチオン構造、及び、ラジカル重合性基を含む。
この第四級アンモニウム構造同士の静電相互作用により、第四級アンモニウムカチオン構造と同一の側鎖に含まれるラジカル重合性基の重合において、特定樹脂の分子内でのラジカル重合性基の重合(分子内架橋)が抑制され、例えば、特定樹脂の分子間など、ある特定樹脂分子と、他の特定樹脂分子との間での重合(分子間架橋)が起こりやすいため、支持体との密着性に優れた膜が得られると推測される。
ここで、特許文献1及び2のいずれの文献にも、上述の条件1及び条件2の少なくとも一方を満たす樹脂を含む硬化性組成物については、記載も示唆もない。
【0014】
本発明の硬化性組成物は、硬化性組成物を用いて得られるパターンのパターン形状にも優れやすいと考えられる。これは、上述の第四級アンモニウム構造同士の静電相互作用により、上述の分子間架橋が起こりやすいため、硬化性組成物の硬化性が向上する等の理由によるものであると推測される。
また、本発明の硬化性組成物が、後述する重合性化合物を更に含む場合、上述の第四級アンモニウム構造同士の静電相互作用により、樹脂同士の重合よりも、樹脂と重合性化合物との間での重合が更に起こりやすいため、硬化性組成物の硬化性に優れやすく、硬化性組成物を硬化して得られるパターンのパターン形状に更に優れやすいと考えられる。
本発明の硬化性組成物が特定樹脂を含むことにより、硬化性組成物の保存安定性も向上しやすい。これは、上述の静電相互作用により、顔料の凝集が抑制される等の理由によるものであると推測される。
本発明の硬化性組成物が特定樹脂を含むことにより、上記パターンの形成時における現像残渣の発生が抑制されやすい。これは、側鎖に上記第四級アンモニウム構造を含むことにより特定樹脂の親水性が向上し、現像残渣が除去されやすいためであると推測される。
本発明の硬化性組成物が特定樹脂を含むことにより、引き置き欠陥が抑制されやすい。「引き置き欠陥」とは、硬化性組成物を支持体等に付与して組成物層を形成した後、露光、現像等によるパターニングまである程度の期間(例えば、12時間~3日間等)が経過した場合に、得られるパターンに欠陥(例えば、組成物層に粒状の凝集物が時間経過で発生する。このような成分は現像除去が難しい為、支持体上に残留し欠陥となる等)が認められるという現象である。本発明の硬化性組成物においては、上述の静電相互作用により、上記組成物層においても顔料の凝集の発生が抑制されるため、引き置き欠陥が抑制されやすいと推測される。
【0015】
本発明の硬化性組成物は、カラーフィルタ用の硬化性組成物として好ましく用いることができる。具体的には、カラーフィルタの画素形成用の組成物として好ましく用いることができる。
また、本発明の硬化性組成物は、固体撮像素子用の硬化性組成物として好ましく用いることができ、固体撮像素子に用いられるカラーフィルタの画素形成用の硬化性組成物としてより好ましく用いることができる。
また、本発明の硬化性組成物は、表示装置用の硬化性組成物として好ましく用いることもでき、表示装置に用いられるカラーフィルタの画素形成用の着色組成物としてより好ましく用いることができる。
また、本発明の硬化性組成物は、カラーマイクロレンズの形成用の組成物として用いることもできる。カラーマイクロレンズの製造方法としては、特開2018-010162号公報に記載された方法などが挙げられる。
【0016】
以下、本発明の硬化性組成物について詳細に説明する。
【0017】
<顔料>
本発明の硬化性組成物は、顔料を含有する。
顔料としては、白色顔料、黒色顔料、有彩色顔料、透明顔料、近赤外線吸収顔料が挙げられる。なお、本発明において、白色顔料は純白色のみならず、白に近い明るい灰色(例えば灰白色、薄灰色など)の顔料などを含む。
また、顔料は、無機顔料、有機顔料のいずれでもよく、分散安定性をより向上させやすいという理由から有機顔料であることが好ましい。
また、顔料は、波長400~2,000nmの範囲に極大吸収波長を有するものが好ましく、波長400~700nmの範囲に極大吸収波長を有するものがより好ましい。
また、波長400~700nmの範囲に極大吸収波長を有する顔料(好ましくは有彩色顔料)を用いた場合においては、本発明の硬化性組成物は、カラーフィルタにおける着色層又は赤外線吸収層形成用の硬化性組成物として好ましく用いることができる。
着色層としては、例えば、赤色着色層、緑色着色層、青色着色層、マゼンタ色着色層、シアン色着色層、イエロー色着色層などが挙げられる。
【0018】
顔料の平均一次粒子径は、1~200nmが好ましい。下限は5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましい。上限は、180nm以下が好ましく、150nm以下がより好ましく、100nm以下が更に好ましい。顔料の平均一次粒子径が上記範囲であれば、硬化性組成物中における顔料の分散安定性が良好である。なお、本発明において、顔料の一次粒子径は、顔料の一次粒子を透過型電子顕微鏡により観察し、得られた画像写真から求めることができる。具体的には、顔料の一次粒子の投影面積を求め、上記投影面積と同面積の真円の直径(円相当径)を顔料の一次粒子径として算出する。また、本発明における平均一次粒子径は、400個の顔料の一次粒子についての一次粒子径の算術平均値とする。また、顔料の一次粒子とは、凝集のない独立した粒子をいう。
【0019】
〔有彩色顔料〕
有彩色顔料としては、特に限定されず、公知の有彩色顔料を用いることができる。有彩色顔料としては、波長400~700nmの範囲に極大吸収波長を有する顔料が挙げられる。例えば、黄色顔料、オレンジ色顔料、赤色顔料、緑色顔料、紫色顔料、青色顔料などが挙げられる。これらの具体例としては、例えば、以下が挙げられる。
【0020】
カラーインデックス(C.I.)Pigment Yellow(以下、単に「PY」ともいう。) 1,2,3,4,5,6,10,11,12,13,14,15,16,17,18,20,24,31,32,34,35,35:1,36,36:1,37,37:1,40,42,43,53,55,60,61,62,63,65,73,74,77,81,83,86,93,94,95,97,98,100,101,104,106,108,109,110,113,114,115,116,117,118,119,120,123,125,126,127,128,129,137,138,139,147,148,150,151,152,153,154,155,156,161,162,164,166,167,168,169,170,171,172,173,174,175,176,177,179,180,181,182,185,187,188,193,194,199,213,214,231,232(メチン/ポリメチン系),233(キノリン系)等(以上、黄色顔料)、
C.I.Pigment Orange(以下、単に「PO」ともいう。) 2,5,13,16,17:1,31,34,36,38,43,46,48,49,51,52,55,59,60,61,62,64,71,73等(以上、オレンジ色顔料)、
C.I.Pigment Red(以下、単に「PR」ともいう。) 1,2,3,4,5,6,7,9,10,14,17,22,23,31,38,41,48:1,48:2,48:3,48:4,49,49:1,49:2,52:1,52:2,53:1,57:1,60:1,63:1,66,67,81:1,81:2,81:3,83,88,90,105,112,119,122,123,144,146,149,150,155,166,168,169,170,171,172,175,176,177,178,179,184,185,187,188,190,200,202,206,207,208,209,210,216,220,224,226,242,246,254,255,264,270,272,279,294(キサンテン系、Organo Ultramarine、Bluish Red),295(アゾ系),296(アゾ系)等(以上、赤色顔料)、
C.I.Pigment Green(以下、単に「PG」ともいう。) 7,10,36,37,58,59,62,63等(以上、緑色顔料)、
C.I.Pigment Violet(以下、単に「PV」ともいう。) 1,19,23,27,32,37,42,60(トリアリールメタン系),61(キサンテン系)等(以上、紫色顔料)、
C.I.Pigment Blue(以下、単に「PB」ともいう。) 1,2,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,22,29,60,64,66,79,80,87(モノアゾ系),88(メチン/ポリメチン系)等(以上、青色顔料)。
【0021】
本発明の硬化性組成物は、本発明の効果がより得られやすい観点からは、顔料として緑色顔料を含むことが好ましく、ハロゲン化フタロシアニンを含むことがより好ましく、PG 36及び/又はPG 58を含むことが更に好ましい。
また、本発明の硬化性組成物は、上記緑色顔料と黄色顔料とを同時に含むことも好ましい。この場合の黄色顔料としては、PY 150及び/又はPY 185が好ましく挙げられる。
【0022】
-緑色顔料-
また、緑色顔料として、1分子中のハロゲン原子数が平均10~14個であり、臭素原子数が平均8~12個であり、塩素原子数が平均2~5個であるハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を用いることもできる。具体例としては、国際公開第2015/118720号に記載の化合物が挙げられる。また、緑色顔料として中国特許出願公開第106909027号明細書に記載の化合物、リン酸エステルを配位子として有するフタロシアニン化合物などを用いることもできる。
【0023】
-青色顔料-
また、青色顔料として、リン原子を有するアルミニウムフタロシアニン化合物を用いることもできる。具体例としては、特開2012-247591号公報の段落0022~0030、特開2011-157478号公報の段落0047に記載の化合物が挙げられる。
【0024】
-黄色顔料-
また、黄色顔料として、特開2017-201003号公報に記載されている顔料、特開2017-197719号公報に記載されている顔料を用いることができる。
また、黄色顔料として、下記式(I)により表されるアゾ化合物及びその互変異性構造のアゾ化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種のアニオンと、2種以上の金属イオンと、メラミン化合物とを含む金属アゾ顔料を用いることもできる。
【化8】

式中、R及びRはそれぞれ独立して、-OH又はNRであり、R及びRはそれぞれ独立して、=O又は=NRであり、R~Rはそれぞれ独立して、水素原子又はアルキル基である。R~Rが表すアルキル基の炭素数は1~10が好ましく、1~6がより好ましく、1~4が更に好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐及び環状のいずれであってもよく、直鎖又は分岐が好ましく、直鎖がより好ましい。アルキル基は置換基を有していてもよい。置換基は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シアノ基及びアミノ基が好ましい。
【0025】
上記の金属アゾ顔料については、特開2017-171912号公報の段落番号0011~0062、0137~0276、特開2017-171913号公報の段落番号0010~0062、0138~0295、特開2017-171914号公報の段落番号0011~0062、0139~0190、特開2017-171915号公報の段落番号0010~0065、0142~0222の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0026】
-赤色顔料-
赤色顔料として、特開2017-201384号公報に記載の構造中に少なくとも1つ臭素原子が置換したジケトピロロピロール系顔料、特許第6248838号の段落番号0016~0022に記載のジケトピロロピロール系顔料などを用いることもできる。また、赤色顔料として、芳香族環に対して、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子が結合した基が導入された芳香族環基がジケトピロロピロール骨格に結合した構造を有する化合物を用いることもできる。このような化合物としては、式(DPP1)により表される化合物であることが好ましく、式(DPP2)により表される化合物であることがより好ましい。
【化9】
【0027】
上記式中、R11及びR13はそれぞれ独立して置換基を表し、R12及びR14はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、n11及びn13はそれぞれ独立して0~4の整数を表し、X12及びX14はそれぞれ独立して酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を表し、X12が酸素原子又は硫黄原子の場合は、m12は1を表し、X12が窒素原子の場合は、m12は2を表し、X14が酸素原子又は硫黄原子の場合は、m14は1を表し、X14が窒素原子の場合は、m14は2を表す。R11及びR13が表す置換基としては、上述した置換基Tで挙げた基が挙げられ、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基、アミド基、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、スルホキシド基、スルホ基などが好ましい具体例として挙げられる。
【0028】
本発明において、有彩色顔料は、2種以上組み合わせて用いてもよい。また、有彩色顔料は、2種以上組み合わせて用いる場合、2種以上の有彩色顔料の組み合わせで黒色を形成していてもよい。そのような組み合わせとしては、例えば以下の(1)~(7)の態様が挙げられる。硬化性組成物中に有彩色顔料を2種以上含み、かつ、2種以上の有彩色顔料の組み合わせで黒色を呈している場合においては、本発明の硬化性組成物は、近赤外線透過フィルタとして好ましく用いることができる。
(1)赤色顔料と青色顔料とを含有する態様。
(2)赤色顔料と青色顔料と黄色顔料とを含有する態様。
(3)赤色顔料と青色顔料と黄色顔料と紫色顔料とを含有する態様。
(4)赤色顔料と青色顔料と黄色顔料と紫色顔料と緑色顔料とを含有する態様。
(5)赤色顔料と青色顔料と黄色顔料と緑色顔料とを含有する態様。
(6)赤色顔料と青色顔料と緑色顔料とを含有する態様。
(7)黄色顔料と紫色顔料とを含有する態様。
【0029】
〔白色顔料〕
白色顔料としては、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、シリカ、タルク、マイカ、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、中空樹脂粒子、硫化亜鉛などが挙げられる。白色顔料は、チタン原子を有する粒子が好ましく、酸化チタンがより好ましい。また、白色顔料は、波長589nmの光に対する25℃における屈折率が2.10以上の粒子であることが好ましい。前述の屈折率は、2.10~3.00であることが好ましく、2.50~2.75であることがより好ましい。
【0030】
また、白色顔料は「酸化チタン 物性と応用技術 清野学著 13~45ページ 1991年6月25日発行、技報堂出版発行」に記載の酸化チタンを用いることもできる。
【0031】
白色顔料は、単一の無機物からなるものだけでなく、他の素材と複合させた粒子を用いてもよい。例えば、内部に空孔や他の素材を有する粒子、コア粒子に無機粒子を多数付着させた粒子、ポリマー粒子からなるコア粒子と無機ナノ微粒子からなるシェル層とからなるコア及びシェル複合粒子を用いることが好ましい。上記ポリマー粒子からなるコア粒子と無機ナノ微粒子からなるシェル層とからなるコア及びシェル複合粒子としては、例えば、特開2015-047520号公報の段落番号0012~0042の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0032】
白色顔料は、中空無機粒子を用いることもできる。中空無機粒子とは、内部に空洞を有する構造の無機粒子であり、外殻に包囲された空洞を有する無機粒子のことを言う。中空無機粒子としては、特開2011-075786号公報、国際公開第2013/061621号、特開2015-164881号公報などに記載された中空無機粒子が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0033】
〔黒色顔料〕
黒色顔料としては特に限定されず、公知のものを用いることができる。例えば、カーボンブラック、チタンブラック、グラファイト等が挙げられ、カーボンブラック、チタンブラックが好ましく、チタンブラックがより好ましい。チタンブラックとは、チタン原子を含有する黒色粒子であり、低次酸化チタンや酸窒化チタンが好ましい。チタンブラックは、分散性向上、凝集性抑制などの目的で必要に応じ、表面を修飾することが可能である。例えば、酸化珪素、酸化チタン、酸化ゲルマニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、又は、酸化ジルコニウムでチタンブラックの表面を被覆することが可能である。また、特開2007-302836号公報に表されるような撥水性物質での処理も可能である。黒色顔料として、カラーインデックス(C.I.)Pigment Black 1,7等が挙げられる。チタンブラックは、個々の粒子の一次粒子径及び平均一次粒子径のいずれもが小さいことが好ましい。具体的には、平均一次粒子径が10~45nmであることが好ましい。チタンブラックは、分散物として用いることもできる。例えば、チタンブラック粒子とシリカ粒子とを含み、分散物中のSi原子とTi原子との含有比が0.20~0.50の範囲に調整された分散物などが挙げられる。上記分散物については、特開2012-169556号公報の段落0020~0105の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。チタンブラックの市販品の例としては、チタンブラック10S、12S、13R、13M、13M-C、13R-N、13M-T(商品名:三菱マテリアル(株)製)、ティラック(Tilack)D(商品名:赤穂化成(株)製)などが挙げられる。
【0034】
〔近赤外線吸収顔料〕
近赤外線吸収顔料は、有機顔料であることが好ましい。また、近赤外線吸収顔料は、波長700nmを超え1,400nm以下の範囲に極大吸収波長を有することが好ましい。また、近赤外線吸収顔料の極大吸収波長は、1,200nm以下であることが好ましく、1,000nm以下であることがより好ましく、950nm以下であることが更に好ましい。また、近赤外線吸収顔料は、波長550nmにおける吸光度A550と極大吸収波長における吸光度Amaxとの比であるA550/Amaxが0.1以下であるものが好ましく、0.05以下であることがより好ましく、0.03以下であることが更に好ましく、0.02以下であることが特に好ましい。下限は、特に限定はないが、例えば、0.0001以上とすることができ、0.0005以上とすることもできる。上述の吸光度の比が上記範囲であれば、可視光透明性及び近赤外線遮蔽性に優れた近赤外線吸収顔料とすることができる。なお、本発明において、近赤外線吸収顔料の極大吸収波長及び各波長における吸光度の値は、近赤外線吸収顔料を含む硬化性組成物を用いて形成した膜の吸収スペクトルから求めた値である。
【0035】
近赤外線吸収顔料としては、特に限定はないが、ピロロピロール化合物、リレン化合物、オキソノール化合物、スクアリリウム化合物、シアニン化合物、クロコニウム化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、ピリリウム化合物、アズレニウム化合物、インジゴ化合物及びピロメテン化合物が挙げられ、ピロロピロール化合物、スクアリリウム化合物、シアニン化合物、フタロシアニン化合物及びナフタロシアニン化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、ピロロピロール化合物又はスクアリリウム化合物であることが更に好ましく、ピロロピロール化合物であることが特に好ましい。
【0036】
〔透明顔料〕
透明顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、シリカ、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸バリウム、アルミナホワイト、炭酸カルシウム、ステアリン酸カルシウムなどが挙げられる。
これらの中でも、着色力が小さいものが好ましく、酸化チタン又は酸化ジルコニウムがより好ましく、酸化ジルコニウムが更に好ましい。
【0037】
硬化性組成物の全固形分中における顔料の含有量は5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることが更に好ましく、30質量%以上であることがより一層好ましく、40質量%以上であることが特に好ましく、50質量%以上であることが最も好ましい。上限は80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることが更に好ましい。
【0038】
〔顔料誘導体〕
本発明の硬化性組成物は、顔料誘導体を含んでもよい。本発明では、顔料と顔料誘導体を併用することも好ましい態様である。顔料誘導体としては、発色団の一部分を、酸基、塩基性基またはフタルイミドメチル基で置換した構造を有する化合物が挙げられる。顔料誘導体を構成する発色団としては、キノリン系骨格、ベンゾイミダゾロン系骨格、ジケトピロロピロール系骨格、アゾ系骨格、フタロシアニン系骨格、アンスラキノン系骨格、キナクリドン系骨格、ジオキサジン系骨格、ペリノン系骨格、ペリレン系骨格、チオインジゴ系骨格、イソインドリン系骨格、イソインドリノン系骨格、キノフタロン系骨格、スレン系骨格、金属錯体系骨格等が挙げられ、キノリン系骨格、ベンゾイミダゾロン系骨格、ジケトピロロピロール系骨格、アゾ系骨格、キノフタロン系骨格、イソインドリン系骨格およびフタロシアニン系骨格が好ましく、アゾ系骨格およびベンゾイミダゾロン系骨格がより好ましい。顔料誘導体が有する酸基としては、スルホ基、カルボキシ基が好ましく、スルホ基がより好ましい。顔料誘導体が有する塩基性基としては、アミノ基が好ましく、三級アミノ基がより好ましい。顔料誘導体の具体例としては、後述の実施例に記載の化合物や、特開2011-252065号公報の段落番号0162~0183に記載された化合物が挙げられる。顔料誘導体の含有量は、顔料100質量部に対して1~30質量部が好ましく、3~20質量部がさらに好ましい。顔料誘導体は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
<特定樹脂>
本発明の硬化性組成物は、下記条件1及び下記条件2の少なくとも一方を満たす樹脂(特定樹脂)を含む。
条件1:上記樹脂が、アニオン構造、上記アニオン構造とイオン結合する第四級アンモニウムカチオン構造、及び、ラジカル重合性基を同一の側鎖に有する構成単位を含む。
条件2:上記樹脂が、第四級アンモニウムカチオン構造、及び、ラジカル重合性基が連結された基を側鎖に有する構成単位を含む。
【0040】
本発明における特定樹脂は、線状高分子化合物、星型高分子化合物、櫛形高分子化合物のいずれであってもよいし、分岐点を複数有する特開2007-277514号公報等に記載の特定末端基を有する星型高分子化合物であってもよく、樹脂の形態は問わない。
条件1又は条件2における側鎖の分子量(分子量分布を有する場合には、重量平均分子量)は50~1500であることが好ましく、100~1000であることがより好ましい。
また、特定樹脂は、付加重合型樹脂であることが好ましく、アクリル樹脂であることがより好ましい。特定樹脂が付加重合型樹脂である場合、条件1又は条件2における側鎖が、付加重合により形成される分子鎖に結合する分子鎖であって、付加重合以外の方法により形成された分子鎖である態様が挙げられる。
【0041】
また、特定樹脂は、分散剤であってもよい。本明細書において、主に顔料などの粒子を分散させるために用いられる樹脂を分散剤ともいう。ただし、特定樹脂のこのような用途は一例であって、このような用途以外の目的で使用することもできる。
【0042】
〔条件1〕
上記条件1におけるアニオン構造、上記アニオン構造とイオン結合する第四級アンモニウムカチオン構造、及び、ラジカル重合性基を同一の側鎖に有する構成単位において、アニオン構造と第四級アンモニウムカチオン構造とは、イオン結合していてもよいし、解離していてもよい。
また、条件1における側鎖は、アニオン構造と、第四級アンモニウムカチオン構造と、ラジカル重合性基と、をそれぞれ少なくとも1つ有していればよく、アニオン構造、第四級アンモニウムカチオン構造、及び、ラジカル重合性基よりなる群から選ばれた少なくとも1種を1つの側鎖に複数有していてもよい。
【0043】
-アニオン構造-
上記条件1におけるアニオン構造としては、特に限定されないが、カルボキシラートアニオン、スルホナートアニオン、ホスホナートアニオン、ホスフィナートアニオン、フェノラートアニオン等の酸基に由来するアニオンが挙げられ、カルボキシラートアニオンが好ましい。
また、上記条件1におけるアニオン構造は、樹脂の主鎖に直結していてもよい。例えば、アクリル樹脂におけるアクリル酸に由来する構成単位に含まれるカルボキシ基(側基、side group)がアニオン化した場合に、樹脂の主鎖に直結したアニオン構造となる。
また、アニオン構造と第四級アンモニウムカチオン構造が結合した場合の主鎖と第四級アンモニウムカチオン構造との距離(原子数)は、4~70元素が好ましく、4~50元素がより好ましく、4~30元素が更に好ましい。
本明細書において、高分子化合物中の2つの構造の距離とは、2つの構造を最短で結ぶ連結基の原子数をいう。
第四級アンモニウムカチオン構造とラジカル重合性基との距離は、2~30元素が好ましく、3~20元素がより好ましく、4~15元素が更に好ましい。
ラジカル重合性基と主鎖との距離は、6~100元素が好ましく、6~70元素がより好ましく、6~50元素が更に好ましい。
【0044】
-第四級アンモニウムカチオン構造(条件1)-
上記条件1における第四級アンモニウムカチオン構造としては、窒素原子に結合する4つの炭素原子が含まれる4つの基のうち、少なくとも3つが炭化水素基である構造が好ましく、少なくとも3つがアルキル基であることがより好ましい。
上記窒素原子に結合する4つの炭素原子を含む4つの基のうち、少なくとも1つはラジカル重合性基との結合部位を含む連結基である。上記連結基は、2価~6価の連結基であることが好ましく、2価~4価の連結基であることがより好ましく、2価又は3価の連結基であることがより好ましい。上記連結基としては、後述の式(A1)におけるLA2により表される基が挙げられる。
また、上記窒素原子に結合する4つの炭素原子を含む4つの基のうち、1つのみが上記連結基であることが好ましい。
上記4つの炭素原子を含む4つの基のうち、2つ又は3つが炭素数1~4のアルキル基であることが好ましく、2つが炭素数1~4のアルキル基であり、かつ、残りの2つの基のうち、1つが炭素数4~20の炭化水素基であることが好ましい。また、上記2つ又は3つのアルキル基は同一の基であってもよいし、異なる基であってもよい。
上記炭素数1~4のアルキル基としては、メチル基又はエチル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
上記炭素数4~20の炭化水素基としては、炭素数4~20のアルキル基、又は、ベンジル基が好ましい。
上記条件1において、側鎖が複数の第四級アンモニウムカチオン構造を含む場合、第四級アンモニウムカチオン構造同士は連結基を介して結合しており、第四級アンモニウムカチオン構造同士が環構造を形成していてもよい。形成される環構造としては、下記式により表される環構造が挙げられる。下記式において、*はラジカル重合性基との結合部位を含む連結基との結合部位を表す。
【化10】
【0045】
-ラジカル重合性基(条件1)-
ラジカル重合性基としては、エチレン性不飽和基を有する基が好ましい。エチレン性不飽和基を有する基としては、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリルアミド基、(メタ)アクリロキシ基、ビニルフェニル基などが挙げられ、反応性の観点からは(メタ)アクリロキシ基又はビニルフェニル基が好ましく、(メタ)アクリロキシ基がより好ましい。
【0046】
〔条件2〕
上記条件2における側鎖において、第四級アンモニウムカチオン構造と、ラジカル重合性基とは連結されている。すなわち、1つの側鎖が少なくとも1つの第四級アンモニウムカチオン構造と、少なくとも1つのラジカル重合性基と、の両方を有する。
上記条件2における側鎖は、第四級アンモニウムカチオン構造と、ラジカル重合性基と、をそれぞれ少なくとも1つ有していればよく、第四級アンモニウムカチオン構造、及び、ラジカル重合性基よりなる群から選ばれた少なくとも1種を1つの側鎖に複数有していてもよい。
また、主鎖と第四級アンモニウムカチオン構造との距離(原子数)は、4~20元素が好ましく、4~15元素がより好ましく、4~10元素が最も好ましい。
第四級アンモニウムカチオン構造と重合性基との距離は、2~30元素が好ましく、3~20元素がより好ましく、4~15元素が更に好ましい。
重合性基と主鎖との距離は、6~50元素が好ましく、6~30元素がより好ましく、6~20元素が更に好ましい。
【0047】
-第四級アンモニウムカチオン構造(条件2)-
上記条件2における第四級アンモニウムカチオン構造としては、窒素原子に結合する4つの炭素原子を含む4つの基のうち、少なくとも2つが炭化水素基である構造が好ましく、少なくとも2つがアルキル基であることがより好ましい。
上記炭化水素基としては、アルキル基又はアリール基が好ましく、アルキル基又はフェニル基がより好ましい。
上記アルキル基としては、炭素数1~4のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基であることがより好ましく、メチル基であることが更に好ましい。また、上記2つのアルキル基は同一の基であってもよいし、異なる基であってもよい。
上記窒素原子に結合する4つの炭素原子を含む4つの基のうち、少なくとも1つはラジカル重合性基との結合部位を含む連結基であり、少なくとも1つは特定樹脂における主鎖との結合部位を含む連結基である。
上記ラジカル重合性基との連結基は、2価~6価の連結基であることが好ましく、2価~4価の連結基であることがより好ましく、2価又は3価の連結基であることがより好ましい。上記連結基としては、後述の式(B1)におけるLB2により表される基が挙げられる。
上記特定樹脂における主鎖との結合部位を含む連結基は、2価の連結基であることが好ましい。上記連結基としては、後述の式(B1)におけるLB1により表される基が挙げられる。
上記条件2における第四級アンモニウムカチオン構造の対アニオンは、特定樹脂中に存在してもよいし、硬化性組成物に含まれる他の成分中に存在してもよいが、特定樹脂中に存在することが好ましい。
【0048】
-ラジカル重合性基(条件2)-
ラジカル重合性基としては、エチレン性不飽和基を有する基が好ましい。エチレン性不飽和基を有する基としては、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリルアミド基、(メタ)アクリロキシ基、ビニルフェニル基などが挙げられ、反応性の観点からは(メタ)アクリロキシ基又はビニルフェニル基が好ましく、(メタ)アクリロキシ基がより好ましい。
【0049】
〔式(A1)で表される構成単位、及び、式(B1)で表される構成単位〕
上記樹脂は、下記式(A1)で表される構成単位、及び、下記式(B1)で表される構成単位の少なくとも一方を含むことが好ましい。
下記式(A1)で表される構成単位を含む樹脂は、条件1を満たす樹脂であり、下記式(B1)で表される構成単位を含む樹脂は、条件2を満たす樹脂である。
【化11】

式(A1)中、RA1は水素原子又はアルキル基を表し、AA1は酸基からプロトンが乖離した基を含む構造を表し、RA2及びRA3はそれぞれ独立に、アルキル基又はアラルキル基を表し、LA1はmAが1である場合には1価の置換基を表し、mAが2以上である場合にはmA価の連結基を表し、LA2はnA+1価の連結基を表し、LA3は2価の連結基を表し、RA4は水素原子又はアルキル基を表し、nAは1以上の整数を表し、mAは1以上の整数を表し、mAが2以上の場合には、2以上のRA2、2以上のRA3及び2以上のLA2はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよく、mAが2以上の場合には、第四級アンモニウムカチオンを含む構造であるmA個の構造のうち、ある構造に含まれるRA2及びRA3よりなる群から選ばれた少なくとも1つは、別の構造に含まれるRA2及びRA3よりなる群から選ばれた少なくとも1つと環構造を形成してもよく、nA及びmAよりなる群から選ばれた少なくとも一方が2以上の場合には、2以上のLA3及び2以上のRA4はそれぞれ同一であってもよいし異なっていてもよく、RA2、RA3及びLA2のうち少なくとも2つが結合して環を形成してもよい;
式(B1)中、RB1は水素原子又はアルキル基を表し、LB1は2価の連結基を表し、RB2及びRB3はそれぞれ独立に、アルキル基を表し、LB2はnB+1価の連結基を表し、LB3は2価の連結基を表し、RB4は水素原子又はアルキル基を表し、nBは1以上の整数を表し、nBが2以上の場合には、2以上のLB3及び2以上のRB4はそれぞれ同一であってもよいし異なっていてもよく、RB2、RB3、LB1及びLB2のうち少なくとも2つが結合して環を形成してもよい。
【0050】
式(A1)中、RA1は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基が好ましく、水素原子又はメチル基がより好ましい。
式(A1)中、AA1は酸基からプロトンが乖離した基を含む構造を表し、酸基としてはカルボキシ基、スルホ基、リン酸基、ホスホン酸基、フェノール性ヒドロキシ基が挙げられ、カルボキシ基が好ましい。AA1に含まれる酸基は1つであっても複数であってもよく、1つであることが好ましい。また、AA1における酸基は、式(A1)中のRA1が結合した炭素原子と直接結合してもよいし、連結基を介して結合してもよい。上記連結基としては、炭化水素基、エーテル結合(-O-)、エステル結合(-COO-)、アミド結合(-CONH-)及び、これらが2以上結合した基が好ましい。上記炭化水素基としては、2価の炭化水素基が挙げられ、アルキレン基又はアリーレン基が好ましく、炭素数1~20のアルキレン基又はフェニレン基がより好ましい。また、本明細書において、特段の記載がない限り、アミド結合における水素原子はアルキル基、アリール基等の公知の置換基により置換されていてもよい。
式(A1)中、RA2及びRA3はそれぞれ独立に、アルキル基であることが好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましく、メチル基又はエチル基が更に好ましく、メチル基が特に好ましい。
式(A1)中、RA2又はRA3がアラルキル基である場合、炭素数7~22のアラルキル基が好ましく、炭素数7~10のアラルキル基がより好ましく、ベンジル基が更に好ましい。
式(A1)中、LA1はmAが2以上である場合、mA価の炭化水素基が好ましく、飽和脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、又はこれらが2以上結合した構造からmA個の水素原子を除いた基がより好ましい。mAが1である場合、LA1はアルキル基、アリール基、又は、アラルキル基が好ましく、炭素数4~20のアルキル基、又は、ベンジル基がより好ましい。
式(A1)中、LA2は後述する式(C1-1)~式(C4-1)により表される基のうちいずれか1つであることが好ましい。
式(A1)中、LA3はエーテル結合(-O-)、エステル結合(-COO-)、アミド結合(-NHCO-)、アルキレン基、又は、アリーレン基が好ましく、エステル結合又はフェニレン基がより好ましい。
式(A1)中、RA4は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基が好ましく、水素原子又はメチル基がより好ましい。
式(A1)中、nAは1~10であることが好ましく、1~4であることがより好ましく、1又は2であることが更に好ましく、1であることが特に好ましい。
式(A1)中、mAは1~10であることが好ましく、1~4であることがより好ましく、1~3であることが更に好ましい。
【0051】
式(B1)中、RB1は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基が好ましく、水素原子又はメチル基がより好ましい。
式(B1)中、LB1は2価の連結基を表し、炭化水素基、エーテル結合(-O-)、エステル結合(-COO-)、アミド結合(-CONH-)及び、これらが2以上結合した基が好ましい。上記炭化水素基としては、2価の炭化水素基が挙げられ、アルキレン基又はアリーレン基が好ましく、炭素数1~20のアルキレン基又はフェニレン基がより好ましい。
式(B1)中、RB2及びRB3はそれぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましく、メチル基又はエチル基が更に好ましく、メチル基が特に好ましい。
式(B1)中、LB2は後述する式(C1-1)~式(C4-1)により表される基のうちいずれか1つであることが好ましい。
式(B1)中、LB3はエーテル結合(-O-)、エステル結合(-COO-)、アミド結合(-NHCO-)、アルキレン基、又は、アリーレン基が好ましく、エステル結合又はフェニレン基がより好ましい。
式(B1)中、nBは1~10であることが好ましく、1~4であることがより好ましく、1又は2であることが更に好ましく、1であることが特に好ましい。
【0052】
式(A1)のLA2、又は、式(B1)中のLB2は下記式(C1-1)~下記式(C4-1)により表される基のうちいずれか1つであることが好ましい。
【化12】


式(C1-1)~式(C4-1)中、LC11はnC1+1価の連結基を表し、LC21はnC2+1価の連結基を表し、LC31はnC3+1価の炭化水素基を表し、nC1~nC3はそれぞれ独立に、1以上の整数を表し、波線部は式(A1)又は式(B1)中の窒素原子との結合部位を、*は式(A1)中のRA4が結合した炭素原子又は式(B1)中のRB4が結合した炭素原子との結合部位を、それぞれ表す。
また、式(C3-1)におけるLC21は、式(C3-1)中のシクロヘキサン環のいずれの炭素原子に結合してもよいことを表している。
【0053】
式(C1-1)又は式(C2-1)中、LC11はnC1+1価の炭化水素基、エーテル結合、エステル結合、又は、これらが2以上結合した基が好ましく、飽和脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、エーテル結合、エステル結合、又は、これらが2以上結合した構造からnC1+1個の水素原子を除いた基がより好ましい。
式(C1-1)又は式(C2-1)中、nC1は1~10であることが好ましく、1~4であることが好ましく、1又は2であることがより好ましい。
【0054】
式(C3-1)中、LC21はnC2+1価の炭化水素基、エーテル結合、エステル結合、又は、これらが2以上結合した基が好ましく、飽和脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、エーテル結合、エステル結合、又は、これらが2以上結合した構造からnC2+1個の水素原子を除いた基がより好ましい。
式(C3-1)中、nC2は1~10であることが好ましく、1~4であることが好ましく、1又は2であることがより好ましい。
【0055】
式(C4-1)中、LC31は飽和脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、又は、これらが2以上結合した構造からnC3+1個の水素原子を除いた基が好ましい。
式(C4-1)中、nC3は1~10であることが好ましく、1~4であることが好ましく、1又は2であることがより好ましい。
【0056】
式(A1)において、LA2が式(C1-1)、式(C2-1)又は式(C3-1)により表される基である場合、LA3はエステル結合であることが好ましい。
式(A1)において、LA2が式(C4-1)により表される基である場合、LA3はフェニレン基であることが好ましい。
式(B1)において、LB2が式(C1-1)、式(C2-1)又は式(C3-1)により表される基である場合、LB3はエステル結合であることが好ましい。
式(B1)において、LB2が式(C4-1)により表される基である場合、LB3はフェニレン基であることが好ましい。
【0057】
特定樹脂が式(A1)で表される構成単位、及び、式(B1)で表される構成単位の少なくとも一方を含む場合、式(A1)中のnAが1であり、LA2及びLA3の結合が下記式(C1)~下記式(C4)により表される基のうちいずれか1つを表すか、又は、式(B1)中のnBが1であり、LB2及びLB3が下記式(C1)~下記式(C4)により表される基のうちいずれか1つを表す態様が好ましい。
【化13】

式(C1)~式(C4)中、LC1、LC2及びLC3はそれぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表し、波線部は式(A1)又は式(B1)中の窒素原子との結合部位を、*は式(A1)中のRA4が結合した炭素原子又は式(B1)中のRB4が結合した炭素原子との結合部位を、それぞれ表す。
また、式(C3)におけるLC2は、式(C3)中のシクロヘキサン環のいずれの炭素原子に結合してもよいことを表している。
【0058】
式(C1)又は式(C2)中、LC1は2価の炭化水素基、エーテル結合、エステル結合、又は、これらが2以上結合した基が好ましく、アルキレン基、アリーレン基、エーテル結合、エステル結合、又は、これらが2以上結合した基がより好ましく、炭素数1~20のアルキレン基、フェニレン基、エーテル結合、又は、これらが2以上結合した基がより好ましい。
式(C3)中、LC2は2価の炭化水素基、エーテル結合、エステル結合、又は、これらが2以上結合した基が好ましく、アルキレン基、アリーレン基、エーテル結合、エステル結合、又は、これらが2以上結合した基がより好ましく、炭素数1~20のアルキレン基、フェニレン基、エーテル結合、又は、これらが2以上結合した基がより好ましい。
式(C4)中、LC3は2価の炭化水素基、エーテル結合、エステル結合、又は、これらが2以上結合した基が好ましく、アルキレン基、アリーレン基、エーテル結合、エステル結合、又は、これらが2以上結合した基がより好ましく、炭素数1~20のアルキレン基がより好ましい。
【0059】
式(A1)で表される構成単位としては、以下に示す構造が好ましく挙げられるが、これらに限定されるものではない。下記具体例中、nは1以上の整数を表す。
【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【0060】
その他、第四級アンモニウムカチオン構造とラジカル重合性基とを含むカチオン部の構造としては、下記構造も挙げられる。
【化18】
【0061】
式(B1)で表される構成単位としては、以下に示す構造が好ましく挙げられるが、これらに限定されないことは言うまでもない。
【化19】

【化20】

また、これらの構造において、第四級アンモニウムカチオン構造を有する構成単位の少なくとも一部が、下記式(A1-1-1)(式(A-1)における部分構造である。)に対する式(A1-1-1’)で表される構造となっていてもよい。
具体的には、第四級アンモニウムカチオン構造を有する構成単位に含まれる上述の式(C1)で表される構造が、上述の式(C2)で表される構造となっていてもよい。式(A1-1-1’)のような構造は、一例としては、アミン化合物と、エポキシ基及びアクリロイル基を有する化合物との反応において、構造異性体として存在する。
【化21】
【0062】
特定樹脂は、式(A1)で表される構成単位を、1種単独で有していても、2種以上を有していてもよい。
また特定樹脂は、式(B1)で表される構成単位を、1種単独で有していても、2種以上を有していてもよい。
式(A1)で表される構成単位、及び、式(B1)で表される構成単位の含有量(2種以上含む場合は、合計含有量)は、特定樹脂の全質量に対し、1質量%~60質量%であることが好ましく、5質量%~40質量%であることがより好ましく、5~20質量%であることが更に好ましい。
【0063】
〔構成単位D〕
特定樹脂は、ラジカル重合性基を有し、かつ、式(A1)で表される構成単位、及び、式(B1)で表される構成単位とは異なる構成単位Dを更に含むことも好ましい。
構成単位Dにおけるラジカル重合性基としては、エチレン性不飽和基を有する基が好ましい。エチレン性不飽和基を有する基としては、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリルアミド基、(メタ)アクリロキシ基、ビニルフェニル基などが挙げられ、反応性の観点からは(メタ)アクリロキシ基又はビニルフェニル基が好ましく、(メタ)アクリロキシ基がより好ましい。
【0064】
〔式(D1)により表される構成単位〕
特定樹脂は、上記構成単位Dとして、下記式(D1)で表される構成単位を更に含むことが好ましい。
【化22】

式(D1)中、RD1~RD3はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、XD1は、-COO-、-CONRD6-又はアリーレン基を表し、RD6は、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、RD4は、2価の連結基を表し、LD1は、下記式(D2)、式(D3)又は式(D3’)により表される基を表し、RD5は、(n+1)価の連結基を表し、XD2は、酸素原子又はNRD7-を表し、RD7は、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、Rは水素原子又はメチル基を表し、nDは1以上の整数を表し、nDが2以上の場合、2以上のXD2及び2以上のRはそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【化23】

式(D2)、式(D3)及び式(D3’)中、XD3は、酸素原子又は-NH-を表し、XD4は、酸素原子又はCOO-を表し、Re1~Re3はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、Re1~Re3のうちの少なくとも2つが結合し、環構造を形成していてもよく、XD5は、酸素原子又は-COO-を表し、Re4~Re6はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、Re4~Re6のうちの少なくとも2つが結合し、環構造を形成していてもよく、*及び波線部は他の構造との結合位置を表す。
【0065】
硬化性組成物において、上述の式(D1)で表される構成単位を含む特定樹脂を用いることにより、得られる膜の深部硬化性に優れやすい。
上記効果が得られる理由は不明であるが、以下のように推測される。
式(D1)により表される構成単位を有する樹脂においては、側鎖に極性基である式(D2)、式(D3)又は式(D3’)により表される基を有することにより、組成物中において、上記(メタ)アクリロイル基が動く幅が大きくなり、反応性に優れると考えられる。また、式(D2)、式(D3)又は式(D3’)により表される基を有することにより、樹脂同士の凝集を抑制し、分散性に優れ、より上記(メタ)アクリロイル基が反応しやすくなるため、上記深部硬化性に優れる硬化性組成物が得られやすいと考えられる。
また、式(D1)により表される構成単位を含むことにより、主鎖から離れた位置に式(D2)、式(D3)又は式(D3’)により表される基を介して高反応性の(メタ)アクリロイル基を導入することができる。これにより、樹脂分子内の(メタ)アクリロイル基同士で反応するのではなく、樹脂分子間又は組成物中の他の架橋成分(例えば、重合性化合物など)と反応する確率が高められ、顔料濃度の高い組成物中でも効率良く架橋反応が進行し、深部硬化性及びパターン形状を向上できると考えられる。
また、式(D1)により表される構成単位は、比較的長い側鎖構造を有し、式(D2)、式(D3)又は式(D3’)により表される極性基を側鎖に有するため、顔料への吸着性を高め、かつ、顔料粒子同士の凝集を抑制する立体的な反発性を発現すると考えられる。その結果、顔料の分散性が向上されると考えられる。
更に、特定樹脂が後述する式(D4)により表される構成単位を有することにより、主鎖から離れた位置に吸着性基となるカルボン酸を導入することができ、顔料吸着性を高め分散安定性を向上することができると考えられる。
また、式(D1)により表される構成単位を導入することにより、基板密着性及びパターン形状も、上記深部硬化性に優れることにより、改良され、更に、後述する式(D4)により表される構成単位を有することにより、硬化性組成物の分散安定性が向上されると考えられる。
【0066】
式(D1)におけるRD1~RD3はそれぞれ独立に、深部硬化性の観点から、水素原子又はメチル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。また、深部硬化性の観点から、RD1は水素原子又はメチル基であり、かつRD2及びRD3は水素原子であることが更に好ましい。LD1が式(D2)により表される基である場合、RD1はメチル基であることが更に好ましく、LD1が式(D3)又は式(D3’)により表される基である場合、RD1は水素原子であることが更に好ましい。
式(D1)におけるXD1は、深部硬化性の観点から、-COO-又はCONRD6-であることが好ましく、-COO-であることがより好ましい。XD1がアリーレン基である場合、炭素数6~20の2価の芳香族炭化水素基であることが好ましく、フェニレン基又はナフチレン基がより好ましく、フェニレン基が更に好ましい。XD1が-COO-である場合、-COO-における炭素原子が式(D1)中のRD1が結合した炭素原子と結合することが好ましい。XD1が-CONRD6-である場合、-CONRD6-における炭素原子が式(D1)中のRD1が結合した炭素原子と結合することが好ましい。
D6は、水素原子又はアルキル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
式(D1)におけるRD4は、深部硬化性の観点から、炭化水素基、又は、2以上の炭化水素基とエーテル結合及びエステル結合よりなる群から選ばれた1以上の構造とが結合した基であることが好ましく、炭化水素基、又は、2以上の炭化水素基と1以上のエステル結合とが結合した基であることがより好ましい。
また式(D1)におけるRD4は、アルキレン基、エーテル基、カルボニル基、フェニレン基、シクロアルキレン基、及び、エステル結合よりなる群から選ばれた2以上の基を結合した基であることが好ましく、アルキレン基、エーテル基、及び、エステル結合よりなる群から選ばれた2以上の基を結合した基であることがより好ましい。
また、式(D1)におけるRD4は、深部硬化性の観点から、総原子数2~60の基であることが好ましく、総原子数2~50の基であることがより好ましく、総原子数2~40の基であることが特に好ましい。
更に、深部硬化性の観点から、RD4が、炭化水素基、アルキレンオキシ基、アルキレンカルボニルオキシ基及び下記構造により表されるいずれかの基よりなる群から選ばれた基であり、かつ上記RD5が、アルキレン基、又は、2以上のアルキレン基とエーテル結合及びエステル結合よりなる群から選ばれた1以上の構造とが結合した基であることが特に好ましい。
【化24】
【0067】
上記式中、*及び波線部は他の構造との結合位置を表し、*が式(D1)におけるXD1との結合部位を、波線部がLD1との結合位置を表すことが好ましい。
また、上記式中、LF1及びLF2はそれぞれ独立に、炭化水素基を表し、nは0以上の整数を表す。
F1及びLF2はそれぞれ独立に、炭素数2~20のアルキレン基である態様も好ましい。
F1及びLF2は同一の基である態様も好ましい。
nは0~100である態様も好ましい。
【0068】
式(D1)におけるnDは、深部硬化性の観点から、1~6の整数であることが好ましく、1~3の整数であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。
式(D1)におけるRD5は、深部硬化性の観点から、2価の連結基であることが好ましく、アルキレン基、又は、2以上のアルキレン基とエーテル結合及びエステル結合よりなる群から選ばれた1以上の構造とが結合した基であることがより好ましく、アルキレンオキシアルキレン基であることが更に好ましく、メチレンオキシ-n-ブチレン基であることが特に好ましい。
また、式(D1)におけるRD5は、深部硬化性の観点から、総原子数2~40の基であることが好ましく、総原子数2~30の基であることがより好ましく、総原子数2~20の基であることが特に好ましい。
式(D1)におけるXD2は、深部硬化性の観点から、酸素原子であることが好ましい。
D7は、水素原子又はアルキル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
は、水素原子であることが好ましい。
【0069】
式(D1)におけるLD1は、分散性の観点からは、上記式(D2)により表される基であることが好ましく、パターン形状及び現像残渣抑制の観点からは、上記式(D3)又は式(D3’)により表される基であることが好ましい。
上記式(D2)、式(D3)及び式(D3’)において、*がRD4との結合部位であり、波線部がRD5との結合部位であることが好ましい。
式(D2)におけるXD3は、深部硬化性及び分散性の観点から、酸素原子であることが好ましい。
また、LD1が、式(D2)により表される基である場合、深部硬化性及び分散性の観点から、RD4が、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、n-ブチレン基及びイソブチレン基よりなる群から選ばれた基であり、かつRD5が、エチレン基であることが特に好ましい。
式(D3)又は式(D3’)におけるXD4は、深部硬化性、パターン形状及び現像残渣抑制の観点から、-COO-であることが好ましい。XD4が上記-COO-である場合、-COO-における酸素原子と、Re1が結合した炭素原子と、が結合することが好ましい。
式(D3)又は式(D3’)におけるRe1~Re3は、深部硬化性、パターン形状及び現像残渣抑制の観点から、水素原子であることが好ましい。
また、LD1が、式(D3)又は式(D3’)により表される基である場合、深部硬化性、パターン形状及び現像残渣抑制の観点から、RD4が、炭化水素基、2以上の炭化水素基とエーテル結合及びエステル結合よりなる群から選ばれた1以上の構造とが結合した基、又は、下記構造により表されるいずれかの基であり、かつRD5が、アルキレン基、又は、2以上のアルキレン基とエーテル結合及びエステル結合よりなる群から選ばれた1以上の構造とが結合した基であることが特に好ましい。
【0070】
式(D2)により表される基としては、下記式(D2-1)又は式(D2-2)により表される基が好ましく挙げられる。
また、式(D3)により表される基としては、下記式(D3-1)又は式(D3-2)により表される基が好ましく挙げられる。
【化25】
【0071】
式(D2-1)、式(D2-2)、式(D3-1)、及び、式(D3-2)における*及び波線部は、式(D2)又は式(D3)中の*及び波線部と同義であり、好ましい態様も同様である。
また、式(D3-1)、及び、式(D3-2)の構造において、少なくとも一部が、下記式(D3-1)に対する式(D3-1’)、下記式(D3-2)に対する式(D3-2’)で表される構造となっていてもよい。式(D3-1’)のような構造は、一例としては、カルボン酸化合物と、エポキシ基及びアクリロイル基を有する化合物との反応において、構造異性体として存在する。式(D3-2’)のような構造は、一例としては、フェノール化合物と、エポキシ基及びアクリロイル基を有する化合物との反応において、構造異性体として存在する。
【化26】
【0072】
式(D1)により表される構成単位としては、以下に示す構造が好ましく挙げられるが、これらに限定されないことは言うまでもない。下記具体例中、mは2以上の整数を表し、nは1以上の整数を表す。
【化27】

【化28】

【化29】
【0073】
特定樹脂は、式(D1)により表される構成単位を、1種単独で有していても、2種以上を有していてもよい。
式(D1)により表される構成単位の含有量は、現像性、パターン形状、分散安定性、及び、深部硬化性の観点から、特定樹脂の全質量に対し、1~80質量%であることが好ましく、1~70質量%であることがより好ましく、1~60質量%であることが特に好ましい。
【0074】
〔式(D4)により表される構成単位〕
特定樹脂は、分散安定性、及び、現像性の観点から、下記式(D4)により表される構成単位を更に有することが好ましい。
【化30】

式(D4)中、RD8は、水素原子又はアルキル基を表し、XD5は、-COO-、-CONR-又はアリーレン基を表し、Rは、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、LD2は、炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、炭素数6~20の芳香族炭化水素基、又は、炭素数1~10の脂肪族炭化水素基及び炭素数6~20の芳香族炭化水素基よりなる群から選ばれた2以上の基とエーテル結合及びエステル結合よりなる群から選ばれた1以上の基とを結合した基を表し、更に、LD2は、XD5がアリーレン基である場合、単結合であってもよい。
【0075】
式(D4)におけるRD8は、水素原子であることが好ましい。
式(D4)におけるXD5は、分散安定性の観点から、-COO-又は-CONR-であることが好ましく、-COO-であることがより好ましい。XD5が-COO-である場合、-COO-における炭素原子が式(D4)中のRD8が結合した炭素原子と結合することが好ましい。XD5が-CONRDB-である場合、-CONRDB-における炭素原子が式(D4)中のRD8が結合した炭素原子と結合することが好ましい。
は、水素原子又はアルキル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
式(D4)におけるLD2は、分散安定性の観点から、炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、又は、2以上の炭素数1~10の脂肪族炭化水素基と1以上のエステル結合とを結合した基であることが好ましく、炭素数1~10の脂肪族炭化水素基であることが更に好ましく、炭素数1~10のアルキレン基であることが特に好ましい。
【0076】
式(D4)により表される構成単位としては、以下に示す構造が好ましく挙げられるが、これらに限定されないことは言うまでもない。下記具体例中、nは1以上の整数を表す。
【化31】
【0077】
特定樹脂は、式(D4)により表される構成単位を、1種単独で有していても、2種以上を有していてもよい。
式(D4)により表される構成単位の含有量は、現像性、パターン形状、及び、分散安定性の観点から、特定樹脂の全質量に対し、20質量%~80質量%であることが好ましく、20質量%~70質量%であることがより好ましく、20質量%~60質量%であることが特に好ましい。
【0078】
〔式(D5)により表される構成単位〕
特定樹脂は、分散安定性の観点から、下記式(D5)により表される構成単位を更に有することが好ましく、分散安定性、及び、現像性の観点から、上記式(D4)により表される構成単位、及び、下記式(D5)により表される構成単位を更に有することがより好ましい。
【化32】
【0079】
式(D5)中、RD9は、水素原子又はアルキル基を表し、XD6は、酸素原子又はNR-を表し、Rは水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、LD3は2価の連結基を表し、YD1はアルキレンオキシ基又はアルキレンカルボニルオキシ基を表し、ZD1は、炭素数1~20の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~20の芳香族炭化水素基を表し、pは1以上の整数を表し、pが2以上である場合、p個のYD1は同一であってもよいし異なっていてもよい。
【0080】
式(D5)におけるRD9は、水素原子又はメチル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
式(D5)におけるXD6は、分散安定性の観点から、酸素原子であることが好ましい。
は、水素原子又はアルキル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
式(D5)におけるLD3は、分散安定性の観点から、総原子数2~30の基であることが好ましく、総原子数3~20の基であることがより好ましく、総原子数4~10の基であることが特に好ましい。
また、式(D5)におけるLD3は、分散安定性の観点から、ウレタン結合又はウレア結合を有する基であることが好ましく、ウレタン結合を有する基であることがより好ましく、アルキレン基とウレタン結合とが結合した基であることが特に好ましい。
【0081】
式(D5)におけるYD1は、分散安定性の観点から、アルキレンカルボニルオキシ基であることが好ましい。また、p個のYD1が複数の構造を含む場合、それらの構造はランダムに配列していてもよいし、ブロックを形成して配列していてもよい。
上記アルキレンカルボニルオキシ基の炭素数は、分散安定性の観点から、2~30であることが好ましく、3~10であることがより好ましく、5~8であることが特に好ましい。
分散安定性の観点から、pは、1以上の整数であり、3以上の整数であることが好ましい。
また、pは100以下であることが好ましく、60以下であることがより好ましく、40以下であることが特に好ましい。
式(D5)におけるZD1は、分散安定性の観点から、炭素数1~20の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、炭素数4~20のアルキル基であることがより好ましく、炭素数6~20のアルキル基であることが特に好ましい。
また、ZD1における上記アルキル基は、分散安定性の観点から、分岐アルキル基であることが好ましい。
【0082】
式(D5)により表される構成単位としては、以下に示す構造が好ましく挙げられるが、これらに限定されないことは言うまでもない。下記具体例中、nは1以上の整数を表し、a及びbはそれぞれ独立に、1以上の整数を表す。
また、a個のオキシアルキレンカルボニル構造又はアルキレンオキシ構造とb個のオキシアルキレンカルボニル構造又はアルキレンオキシ構造はランダムに配列していることが好ましい。
【化33】
【0083】
上記特定樹脂は、式(D5)により表される構成単位を、1種単独で有していても、2種以上を有していてもよい。
式(D5)により表される構成単位の含有量は、現像性、及び、分散安定性の観点から、特定樹脂の全質量に対し、5質量%~80質量%であることが好ましく、5質量%~70質量%であることがより好ましく、5質量%~60質量%であることが特に好ましい。
【0084】
〔その他の構成単位〕
特定樹脂は、上述した式(A1)、式(B1)、式(D1)、式(D4)及び式(D5)により表される構成単位以外のその他の構成単位を有していてもよい。
その他の構成単位としては、特に制限はなく、公知の構成単位を有することができる。
【0085】
〔特定樹脂の物性〕
-重量平均分子量-
特定樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1,000以上であることが好ましく、1,000~200,000であることがより好ましく、1,000~100,000であることが特に好ましい。
【0086】
-エチレン性不飽和結合価-
特定樹脂のエチレン性不飽和結合価は、深部硬化性、パターン形状、及び、基板密着性の観点から、0.01mmol/g~2.5mmol/gであることが好ましく、0.05mmol/g~2.3mmol/gであることがより好ましく、0.1mmol/g~2.2mmol/gであることが更に好ましく、0.1mmol/g~2.0mmol/gであることが特に好ましい。
特定樹脂のエチレン性不飽和結合価は、特定樹脂の固形分1gあたりのエチレン性不飽和基のモル量を表したものであり、実施例に記載の方法により測定される。
【0087】
-酸価-
特定樹脂の酸価は、現像性の観点からは、30~110mgKOH/gであることが好ましく、40~90mgKOH/gであることがより好ましい。
上記酸価は、実施例に記載の方法により測定される。
【0088】
-アミン価-
特定樹脂のアミン価は、支持体との密着性の観点からは、0.03~0.8mmol/gであることが好ましく、0.1~0.5mmol/gであることがより好ましい。
上記アミン価は、実施例に記載の方法により測定される。
【0089】
硬化性組成物は、特定樹脂を1種単独で含有しても、2種以上を含有してもよい。
特定樹脂の含有量は、支持体との密着性、及び、保存安定性の観点から、硬化性組成物の全固形分に対して、10~45質量%であることが好ましく、12~40質量%であることがより好ましく、14~35質量%であることが特に好ましい。
また、特定樹脂の含有量は、支持体との密着性、及び、保存安定性の観点から、顔料の含有量100質量部に対して、20~60質量部含有することが好ましく、22~55質量部であることがより好ましく、24~50質量部であることが特に好ましい。
【0090】
特定樹脂の合成方法は、特に制限はなく、公知の方法、及び、公知の方法を応用して合成することができる。
例えば、上記特定樹脂の前駆体を公知の方法により合成した後、高分子反応により、上記式(A1)又は式(B1)により表される構成単位におけるラジカル重合性基を有する基を導入する方法が挙げられる。
上記式(A1)により表される構成単位は、上記特定樹脂の前駆体が有するカルボキシ基と、アミン化合物と、エポキシ基及びアクリロイル基を有する化合物との反応等により導入される。また、上記式(A1)により表される構成単位は、上記特定樹脂の前駆体が有するアミン化合物と、ハロゲノ基及びアクリロイル基を有する化合物との反応により導入される。
上記式(B1)により表される構成単位は、上記特定樹脂の前駆体が有するアミノ基と、エポキシ基及びアクリロイル基を有する化合物との反応により導入される。また、上記式(B1)により表される構成単位は、上記特定樹脂の前駆体が有するアミノ基と、ハロゲノ基及びアクリロイル基を有する化合物との反応により導入される。
上記式(D1)により表される構成単位は、上記特定樹脂の前駆体が有するカルボキシ基と、エポキシ基およびアクリロイル基を有する化合物との反応、ならびに、上記特定樹脂の前駆体が有するヒドロキシ基と、イソシアナト基およびアクリロイル基を有する化合物との反応等により導入される。
これらの合成方法はあくまで一例であり、特定樹脂の合成方法は特に限定されるものではない。
また、特定樹脂が星型高分子化合物、又は、特定末端基を有する星型高分子化合物である場合、これらの高分子化合物は、例えば、特開2007-277514号公報に記載の合成法を参考に合成することができる。
【0091】
また、上記特定樹脂は、現像性を担う構成単位、分散性を担う構成単位、硬化性を担う構成単位等の異なる構成単位から構成されており、異なる機能を効果的に発現するためには、上記特定樹脂の組成が均一化していることが好ましい。
上記特定樹脂の組成を均一化する方法としては、例えば、異なるモノマー種の消費速度を合わせるように反応系内にモノマーを滴下する手法が挙げられる。一般的には、消費速度の遅いモノマー種の反応系内の初期濃度を上げ、消費速度の速いモノマー種を滴下することで反応系内での濃度差を作ることで反応速度を合わすことが可能である。
【0092】
本発明における特定樹脂の具体例としては、後述する実施例におけるPA-1~PA-22、及び、PB-1~PB-18が挙げられる。
【0093】
〔含有量〕
硬化性組成物の全固形分中における特定樹脂の含有量は、5~50質量%が好ましい。下限は、8質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。上限は、40質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい。また、硬化性組成物の全固形分中における酸基を有する特定樹脂の含有量は、5~50質量%が好ましい。下限は、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましい。上限は、40質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい。
【0094】
また、硬化性組成物の全固形分中における、後述する重合性化合物と特定樹脂との合計の含有量は、硬化性、現像性及び被膜形成性の観点から10~65質量%が好ましい。下限は、15質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上が更に好ましい。上限は、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下が更に好ましい。また、重合性化合物の100質量部に対して、特定樹脂を30~300質量部含有することが好ましい。下限は50質量部以上が好ましく、80質量部以上がより好ましい。上限は250質量部以下が好ましく、200質量部以下がより好ましい。
【0095】
<重合性化合物>
本発明の硬化性組成物は、重合性化合物を含有することが好ましい。上述の特定樹脂に該当する化合物は、重合性化合物には該当しないものとする。重合性化合物としては、ラジカル、酸又は熱により架橋可能な公知の化合物を用いることができる。本発明において、重合性化合物は、例えば、エチレン性不飽和基を有する化合物であることが好ましい。エチレン性不飽和基としては、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。本発明で用いられる重合性化合物は、ラジカル重合性化合物であることが好ましい。
【0096】
重合性化合物としては、モノマー、プレポリマー、オリゴマーなどの化学的形態のいずれであってもよいが、モノマーが好ましい。重合性化合物の分子量は、100~3,000が好ましい。上限は、2,000以下がより好ましく、1,500以下が更に好ましい。下限は、150以上がより好ましく、250以上が更に好ましい。
【0097】
重合性化合物は、エチレン性不飽和基を3個以上含む化合物であることが好ましく、エチレン性不飽和基を3~15個含む化合物であることがより好ましく、エチレン性不飽和基を3~6個含む化合物であることが更に好ましい。また、重合性化合物は、3~15官能の(メタ)アクリレート化合物であることが好ましく、3~6官能の(メタ)アクリレート化合物であることがより好ましい。重合性化合物の具体例としては、特開2009-288705号公報の段落番号0095~0108、特開2013-029760号公報の段落0227、特開2008-292970号公報の段落番号0254~0257、特開2013-253224号公報の段落番号0034~0038、特開2012-208494号公報の段落番号0477、特開2017-048367号公報、特許第6057891号公報、特許第6031807号公報に記載されている化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0098】
重合性化合物としては、ジペンタエリスリトールトリアクリレート(市販品としてはKAYARAD D-330;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としてはKAYARAD D-320;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(市販品としてはKAYARAD D-310;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(市販品としてはKAYARAD DPHA;日本化薬(株)製、NKエステルA-DPH-12E;新中村化学工業(株)製)、及びこれらの(メタ)アクリロイル基がエチレングリコール及び/又はプロピレングリコール残基を介して結合している構造の化合物(例えば、サートマー社から市販されている、SR454、SR499)が好ましい。また、重合性化合物としては、ジグリセリンEO(エチレンオキシド)変性(メタ)アクリレート(市販品としてはM-460;東亞合成(株)製)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業(株)製、NKエステルA-TMMT)、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(日本化薬(株)製、KAYARAD HDDA)、RP-1040(日本化薬(株)製)、アロニックスTO-2349(東亞合成(株)製)、NKオリゴUA-7200(新中村化学工業(株)製)、8UH-1006、8UH-1012(大成ファインケミカル(株)製)、ライトアクリレートPOB-A0(共栄社化学(株)製)などを用いることもできる。
【0099】
また、重合性化合物として、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキシ変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシ変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシ変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどの3官能の(メタ)アクリレート化合物を用いることも好ましい。3官能の(メタ)アクリレート化合物の市販品としては、アロニックスM-309、M-310、M-321、M-350、M-360、M-313、M-315、M-306、M-305、M-303、M-452、M-450(東亞合成(株)製)、NKエステル A9300、A-GLY-9E、A-GLY-20E、A-TMM-3、A-TMM-3L、A-TMM-3LM-N、A-TMPT、TMPT(新中村化学工業(株)製)、KAYARAD GPO-303、TMPTA、THE-330、TPA-330、PET-30(日本化薬(株)製)などが挙げられる。
【0100】
重合性化合物は、酸基を有する化合物を用いることもできる。酸基を有する重合性化合物を用いることで、硬化性組成物から形成された膜の現像時に未露光部の重合性化合物が除去されやすく、現像残渣の発生を抑制できる。酸基としては、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基等が挙げられ、カルボキシ基が好ましい。酸基を有する重合性化合物の市販品としては、アロニックスM-510、M-520、アロニックスTO-2349(東亞合成(株)製)等が挙げられる。酸基を有する重合性化合物の好ましい酸価としては、0.1~40mgKOH/gであり、より好ましくは5~30mgKOH/gである。重合性化合物の酸価が0.1mgKOH/g以上であれば、現像液に対する膜の溶解性が良好であり、40mgKOH/g以下であれば、製造や取扱い上、有利である。
【0101】
重合性化合物は、カプロラクトン構造を有する化合物であることも好ましい態様である。カプロラクトン構造を有する重合性化合物は、例えば、日本化薬(株)からKAYARAD DPCAシリーズとして市販されており、DPCA-20、DPCA-30、DPCA-60、DPCA-120等が挙げられる。
【0102】
重合性化合物は、アルキレンオキシ基を有する重合性化合物を用いることもできる。アルキレンオキシ基を有する重合性化合物は、エチレンオキシ基及び/又はプロピレンオキシ基を有する重合性化合物が好ましく、エチレンオキシ基を有する重合性化合物がより好ましく、エチレンオキシ基を4~20個有する3~6官能(メタ)アクリレート化合物がさらに好ましい。アルキレンオキシ基を有する重合性化合物の市販品としては、例えばサートマー社製のエチレンオキシ基を4個有する4官能(メタ)アクリレートであるSR-494、イソブチレンオキシ基を3個有する3官能(メタ)アクリレートであるKAYARAD TPA-330などが挙げられる。
【0103】
重合性化合物は、フルオレン骨格を有する重合性化合物を用いることもできる。フルオレン骨格を有する重合性化合物の市販品としては、オグソールEA-0200、EA-0300(大阪ガスケミカル(株)製、フルオレン骨格を有する(メタ)アクリレートモノマー)などが挙げられる。
【0104】
重合性化合物としては、トルエンなどの環境規制物質を実質的に含まない化合物を用いることも好ましい。このような化合物の市販品としては、KAYARAD DPHA LT、KAYARAD DPEA-12 LT(日本化薬(株)製)などが挙げられる。
【0105】
重合性化合物としては、特公昭48-041708号公報、特開昭51-037193号公報、特公平02-032293号公報、特公平02-016765号公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58-049860号公報、特公昭56-017654号公報、特公昭62-039417号公報、特公昭62-039418号公報に記載されたエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物も好適である。また、特開昭63-277653号公報、特開昭63-260909号公報、特開平01-105238号公報に記載された分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する重合性化合物を用いることも好ましい。また、重合性化合物としては、UA-7200(新中村化学工業(株)製)、DPHA-40H(日本化薬(株)製)、UA-306H、UA-306T、UA-306I、AH-600、T-600、AI-600、LINC-202UA(共栄社化学(株))製などの市販品を用いることもできる。
【0106】
硬化性組成物の全固形分中における重合性化合物の含有量は0.1~50質量%であることが好ましい。下限は、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましい。上限は、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下が更に好ましい。重合性化合物は、1種単独であってもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合は、それらの合計が上記範囲となることが好ましい。
【0107】
<光重合開始剤>
本発明の硬化性組成物は光重合開始剤を含むことが好ましい。光重合開始剤としては、特に制限はなく、公知の光重合開始剤の中から適宜選択することができる。例えば、紫外線領域から可視領域の光線に対して感光性を有する化合物が好ましい。光重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤であることが好ましい。
【0108】
光重合開始剤としては、ハロゲン化炭化水素誘導体(例えば、トリアジン骨格を有する化合物、オキサジアゾール骨格を有する化合物など)、アシルホスフィン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール、オキシム化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ケトン化合物、芳香族オニウム塩、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物などが挙げられる。光重合開始剤は、露光感度の観点から、トリハロメチルトリアジン化合物、ベンジルジメチルケタール化合物、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物、アシルホスフィン化合物、ホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシム化合物、トリアリールイミダゾールダイマー、オニウム化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物、シクロペンタジエン-ベンゼン-鉄錯体、ハロメチルオキサジアゾール化合物及び3-アリール置換クマリン化合物であることが好ましく、オキシム化合物、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物、及び、アシルホスフィン化合物よりなる群から選ばれる化合物であることがより好ましく、本発明の効果が得られやすい観点からは、オキシム化合物であることが更に好ましい。光重合開始剤については、特開2014-130173号公報の段落0065~0111、特許第6301489号公報の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0109】
α-ヒドロキシケトン化合物の市販品としては、IRGACURE-184、DAROCUR-1173、IRGACURE-500、IRGACURE-2959、IRGACURE-127(以上、BASF社製)などが挙げられる。α-アミノケトン化合物の市販品としては、IRGACURE-907、IRGACURE-369、IRGACURE-379、及び、IRGACURE-379EG(以上、BASF社製)などが挙げられる。アシルホスフィン化合物の市販品としては、IRGACURE-819、DAROCUR-TPO(以上、BASF社製)などが挙げられる。
【0110】
オキシム化合物としては、特開2001-233842号公報に記載の化合物、特開2000-080068号公報に記載の化合物、特開2006-342166号公報に記載の化合物、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.1653-1660)に記載の化合物、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.156-162)に記載の化合物、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995年、pp.202-232)に記載の化合物、特開2000-066385号公報に記載の化合物、特開2000-080068号公報に記載の化合物、特表2004-534797号公報に記載の化合物、特開2006-342166号公報に記載の化合物、特開2017-019766号公報に記載の化合物、特許第6065596号公報に記載の化合物、国際公開第2015/152153号に記載の化合物、国際公開第2017/051680号に記載の化合物、特開2017-198865号公報に記載の化合物、国際公開第2017/164127号の段落番号0025~0038に記載の化合物、国際公開第2013/167515号に記載の化合物などが挙げられる。オキシム化合物の具体例としては、3-ベンゾイルオキシイミノブタン-2-オン、3-アセトキシイミノブタン-2-オン、3-プロピオニルオキシイミノブタン-2-オン、2-アセトキシイミノペンタン-3-オン、2-アセトキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ベンゾイルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、3-(4-トルエンスルホニルオキシ)イミノブタン-2-オン、及び2-エトキシカルボニルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オンなどが挙げられる。市販品としては、IRGACURE OXE01、IRGACURE OXE02、IRGACURE OXE03、IRGACURE OXE04(以上、BASF社製)、TR-PBG-304(常州強力電子新材料有限公司製)、アデカオプトマーN-1919((株)ADEKA製、特開2012-014052号公報に記載の光重合開始剤2)が挙げられる。また、オキシム化合物としては、着色性が低い化合物や、透明性が高く変色し難い化合物を用いることも好ましい。市販品としては、アデカアークルズNCI-730、NCI-831、NCI-930(以上、(株)ADEKA製)などが挙げられる。
【0111】
本発明において、光重合開始剤として、フルオレン環を有するオキシム化合物を用いることもできる。フルオレン環を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2014-137466号公報に記載の化合物が挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれる。
【0112】
本発明において、光重合開始剤として、フッ素原子を有するオキシム化合物を用いることもできる。フッ素原子を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2010-262028号公報に記載の化合物、特表2014-500852号公報に記載の化合物24、36~40、特開2013-164471号公報に記載の化合物(C-3)などが挙げられる。これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0113】
本発明において、光重合開始剤として、ニトロ基を有するオキシム化合物を用いることができる。ニトロ基を有するオキシム化合物は、二量体とすることも好ましい。ニトロ基を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2013-114249号公報の段落番号0031~0047、特開2014-137466号公報の段落番号0008~0012、0070~0079に記載されている化合物、特許4223071号公報の段落番号0007~0025に記載されている化合物、アデカアークルズNCI-831((株)ADEKA製)が挙げられる。
【0114】
本発明において、光重合開始剤として、ベンゾフラン骨格を有するオキシム化合物を用いることもできる。具体例としては、国際公開第2015/036910号に記載されるOE-01~OE-75が挙げられる。
【0115】
本発明において好ましく使用されるオキシム化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0116】
【化34】

【化35】
【0117】
本発明において用いられる光重合開始剤は、波長350~500nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物が好ましく、波長360~480nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物がより好ましい。
また、本発明において用いられる光重合開始剤の波長365nmにおけるモル吸光係数は、本発明の効果がより得られやすい観点から、1,000L・mol-1・cm-1以上であることが好ましく、3,000L・mol-1・cm-1以上であることがより好ましく、5,000L・mol-1・cm-1以上であることが更に好ましい。また最大値は、特に限定されないが、100,000L・mol-1・cm-1以下であることが好ましい。 光重合開始剤のモル吸光係数は、公知の方法を用いて測定することができる。例えば、分光光度計(Varian社製Cary-5 spectrophotometer)にて、酢酸エチル溶媒を用い、0.01g/Lの濃度で測定することが好ましい。
【0118】
光重合開始剤として、2官能あるいは3官能以上の光ラジカル重合開始剤を用いてもよい。そのような光ラジカル重合開始剤を用いることにより、光ラジカル重合開始剤の1分子から2つ以上のラジカルが発生するため、良好な感度が得られる。また、非対称構造の化合物を用いた場合においては、結晶性が低下して溶剤などへの溶解性が向上して、経時で析出しにくくなり、硬化性組成物の経時安定性を向上させることができる。2官能あるいは3官能以上の光ラジカル重合開始剤の具体例としては、特表2010-527339号公報、特表2011-524436号公報、国際公開第2015/004565号、特表2016-532675号公報の段落番号0412~0417、国際公開第2017/033680号の段落番号0039~0055に記載されているオキシム化合物の2量体、特表2013-522445号公報に記載されている化合物(E)及び化合物(G)、国際公開第2016/034963号に記載されているCmpd1~7、特表2017-523465号公報の段落番号0007に記載されているオキシムエステル類光開始剤、特開2017-167399号公報の段落番号0020~0033に記載されている光開始剤、特開2017-151342号公報の段落番号0017~0026に記載されている光重合開始剤(A)などが挙げられる。
【0119】
本発明の硬化性組成物の全固形分中の光重合開始剤の含有量は0.1~30質量%が好ましい。下限は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。上限は、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。本発明の硬化性組成物において、光重合開始剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0120】
<その他の樹脂>
本発明の硬化性組成物は、その他の樹脂を更に含んでもよい。本発明において、上述の特定樹脂に該当する化合物は、その他の樹脂には該当しないものとする。その他の樹脂は、例えば、顔料などの粒子を硬化性組成物中で分散させる用途やバインダーの用途で配合される。ただし、その他の樹脂のこのような用途は一例であって、このような用途以外の目的で使用することもできる。
【0121】
その他の樹脂の重量平均分子量(Mw)は、3,000~2,000,000が好ましい。上限は、1,000,000以下が好ましく、500,000以下がより好ましい。下限は、4,000以上が好ましく、5,000以上がより好ましい。
【0122】
その他の樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、エン・チオール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリアリーレンエーテルホスフィンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂などが挙げられる。これらの樹脂から1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。また、特開2017-206689号公報の段落番号0041~0060に記載の樹脂、特開2018-010856号公報の段落番号0022~0071に記載の樹脂を用いることもできる。
【0123】
〔酸基を有する樹脂〕
本発明の硬化性組成物は、その他の樹脂として酸基を有する樹脂を含むことが好ましい。この態様によれば、硬化性組成物の現像性を向上させることができ、矩形性に優れた画素を形成しやすい。酸基としては、カルボキシ基、リン酸基、スルホ基、フェノール性ヒドロキシ基などが挙げられ、カルボキシ基が好ましい。酸基を有する樹脂は、例えば、アルカリ可溶性樹脂として用いることができる。
【0124】
酸基を有する樹脂は、酸基を側鎖に有する構成単位を含むことが好ましく、酸基を側鎖に有する構成単位を樹脂の全構成単位中5~70モル%含むことがより好ましい。酸基を側鎖に有する構成単位の含有量の上限は、50モル%以下であることが好ましく、30モル%以下であることがより好ましい。酸基を側鎖に有する構成単位の含有量の下限は、10モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることがより好ましい。
本明細書において、構成単位の含有量をモル%で記載する場合には、構成単位はモノマー単位と同義であるものとする。
【0125】
酸基を有する樹脂は、下記式(ED1)で示される化合物及び/又は下記式(ED2)により表される化合物(以下、これらの化合物を「エーテルダイマー」と称することもある。)を含むモノマー成分に由来する構成単位を含むことも好ましい。
【0126】
【化36】
【0127】
式(ED1)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1~25の炭化水素基を表す。
【化37】

式(ED2)中、Rは、水素原子又は炭素数1~30の有機基を表す。式(ED2)の詳細については、特開2010-168539号公報の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0128】
エーテルダイマーの具体例としては、例えば、特開2013-029760号公報の段落番号0317の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0129】
本発明で用いられる樹脂は、下記式(X)で示される化合物に由来する構成単位を含むことも好ましい。
【化38】

式(X)中、Rは、水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数2~10のアルキレン基を表し、Rは、水素原子又はベンゼン環を含んでもよい炭素数1~20のアルキル基を表す。nは1~15の整数を表す。
【0130】
酸基を有する樹脂については、特開2012-208494号公報の段落番号0558~0571(対応する米国特許出願公開第2012/0235099号明細書の段落番号0685~0700)の記載、特開2012-198408号公報の段落番号0076~0099の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、酸基を有する樹脂は市販品を用いることもできる。
【0131】
酸基を有する樹脂の酸価は、30~500mgKOH/gが好ましい。下限は、50mgKOH/g以上が好ましく、70mgKOH/g以上がより好ましい。上限は、400mgKOH/g以下が好ましく、300mgKOH/g以下がより好ましく、200mgKOH/g以下が更に好ましい。酸基を有する樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5,000~100,000が好ましい。また、酸基を有する樹脂の数平均分子量(Mn)は、1,000~20,000が好ましい。
【0132】
酸基を有する樹脂としては、例えば下記構造の樹脂などが挙げられる。下記構造中、括弧の添字は各構成単位の含有量(モル%)を表す。
【化39】
【0133】
〔分散剤〕
本発明の硬化性組成物は、分散剤としての樹脂を含むこともできる。分散剤としては、酸性分散剤(酸性樹脂)、塩基性分散剤(塩基性樹脂)が挙げられる。ここで、酸性分散剤(酸性樹脂)とは、酸基の量が塩基性基の量よりも多い樹脂を表す。酸性分散剤(酸性樹脂)は、酸基の量と塩基性基の量の合計量を100モル%としたときに、酸基の量が70モル%以上を占める樹脂が好ましく、実質的に酸基のみからなる樹脂がより好ましい。酸性分散剤(酸性樹脂)が有する酸基は、カルボキシ基が好ましい。酸性分散剤(酸性樹脂)の酸価は、20~180mgKOH/gが好ましく、30~150mgKOH/gがより好ましく、50~100mgKOH/gがさらに好ましい。また、塩基性分散剤(塩基性樹脂)とは、塩基性基の量が酸基の量よりも多い樹脂を表す。塩基性分散剤(塩基性樹脂)は、酸基の量と塩基性基の量の合計量を100モル%としたときに、塩基性基の量が50モル%を超える樹脂が好ましい。塩基性分散剤が有する塩基性基は、アミノ基であることが好ましい。
【0134】
分散剤として用いる樹脂は、酸基を有する構成単位を含むことが好ましい。分散剤として用いる樹脂が酸基を有する構成単位を含むことにより、フォトリソグラフィ法によりパターン形成する際、現像残渣の発生をより抑制できる。
【0135】
分散剤として用いる樹脂は、グラフト樹脂であることも好ましい。グラフト樹脂の詳細は、特開2012-255128号公報の段落番号0025~0094の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0136】
分散剤として用いる樹脂は、主鎖及び側鎖の少なくとも一方に窒素原子を含むポリイミン系分散剤であることも好ましい。ポリイミン系分散剤としては、pKa14以下の官能基を有する部分構造を有する主鎖と、原子数40~10,000の側鎖とを有し、かつ主鎖及び側鎖の少なくとも一方に塩基性窒素原子を有する樹脂が好ましい。塩基性窒素原子とは、塩基性を呈する窒素原子であれば特に制限はない。ポリイミン系分散剤については、特開2012-255128号公報の段落番号0102~0166の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0137】
分散剤として用いる樹脂は、コア部に複数個のポリマー鎖が結合した構造の樹脂であることも好ましい。このような樹脂としては、例えばデンドリマー(星型ポリマーを含む)が挙げられる。また、デンドリマーの具体例としては、特開2013-043962号公報の段落番号0196~0209に記載された高分子化合物C-1~C-31などが挙げられる。
【0138】
また、上述した酸基を有する樹脂(アルカリ可溶性樹脂)を分散剤として用いることもできる。
【0139】
また、分散剤として用いる樹脂は、エチレン性不飽和基を側鎖に有する構成単位を含む樹脂であることも好ましい。エチレン性不飽和基を側鎖に有する構成単位の含有量は、樹脂の全構成単位中10モル%以上であることが好ましく、10~80モル%であることがより好ましく、20~70モル%であることが更に好ましい。
【0140】
分散剤は、市販品としても入手可能であり、そのような具体例としては、BYKChemie社製のDISPERBYKシリーズ(例えば、DISPERBYK-111、161など)、日本ルーブリゾール(株)製のソルスパースシリーズ(例えば、ソルスパース76500など)などが挙げられる。また、特開2014-130338号公報の段落番号0041~0130に記載された顔料分散剤を用いることもでき、この内容は本明細書に組み込まれる。なお、上記分散剤として説明した樹脂は、分散剤以外の用途で使用することもできる。例えば、バインダーとして用いることもできる。
【0141】
-硬化性基を有する樹脂-
本発明において用いられる分散剤としては、硬化性基を有する樹脂も好適にあげられる。
上記分散剤における硬化性基としては、エチレン性不飽和基が好ましく、ビニル基、ビニルフェニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基、及び、マレイミド基よりなる群から選ばれた少なくとも1種がより好ましく、(メタ)アクリロイル基が更に好ましく、アクリロイル基が特に好ましい。
また、硬化性基を有する樹脂は、硬化性基を側鎖に有することが好ましく、側鎖の分子末端に有することも好ましい。
また、分散剤の好ましい重量平均分子量は、10,000~100,000であることが好ましい。
硬化性基を有する樹脂としては、上述の式(D1)で表される構成単位を含む樹脂が挙げられ、上述の式(D1)で表される構成単位と、上述の式(D4)で表される構成単位及び上述の式(D5)で表される構成単位よりなる群から選ばれた少なくとも1種と、を含む樹脂が好ましく、上述の式(D1)で表される構成単位と、上述の式(D4)で表される構成単位及び上述の式(D5)で表される構成単位を含む樹脂がより好ましい。
また、上記硬化性基を有する樹脂は、上述の条件1及び条件2のいずれをも満たさない樹脂である。
【0142】
〔含有量〕
本発明の硬化性組成物がその他の樹脂を含む場合、硬化性組成物の全固形分中におけるその他の樹脂の含有量は、0.5~50質量%が好ましい。下限は、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましい。上限は、40質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい。また、硬化性組成物の全固形分中における酸基を有する樹脂の含有量は、0.5~50質量%が好ましい。下限は、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましい。上限は、40質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい。
【0143】
<環状エーテル基を有する化合物>
本発明の硬化性組成物は、環状エーテル基を有する化合物を含有することができる。環状エーテル基としては、エポキシ基、オキセタニル基などが挙げられる。環状エーテル基を有する化合物は、エポキシ基を有する化合物であることが好ましい。エポキシ基を有する化合物としては、1分子内にエポキシ基を1つ以上有する化合物が挙げられ、エポキシ基を2つ以上有する化合物が好ましい。エポキシ基は、1分子内に1~100個有することが好ましい。エポキシ基の数の上限は、例えば、10個以下とすることもでき、5個以下とすることもできる。エポキシ基の数の下限は、2個以上が好ましい。エポキシ基を有する化合物としては、特開2013-011869号公報の段落番号0034~0036、特開2014-043556号公報の段落番号0147~0156、特開2014-089408号公報の段落番号0085~0092に記載された化合物、特開2017-179172号公報に記載された化合物を用いることもできる。これらの内容は、本明細書に組み込まれる。
【0144】
エポキシ基を有する化合物は、低分子化合物(例えば、分子量2000未満、さらには、分子量1,000未満)でもよいし、高分子化合物(macromolecule)(例えば、分子量1,000以上、ポリマーの場合は、重量平均分子量が1,000以上)のいずれでもよい。エポキシ基を有する化合物の重量平均分子量は、200~100,000が好ましく、500~50,000がより好ましい。重量平均分子量の上限は、10,000以下が好ましく、5,000以下がより好ましく、3,000以下が更に好ましい。
【0145】
エポキシ基を有する化合物としては、エポキシ樹脂を好ましく用いることができる。エポキシ樹脂としては、例えばフェノール化合物のグリシジルエーテル化物であるエポキシ樹脂、各種ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物であるエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、ハロゲン化フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、エポキシ基をもつケイ素化合物とそれ以外のケイ素化合物との縮合物、エポキシ基を持つ重合性不飽和化合物とそれ以外の他の重合性不飽和化合物との共重合体等が挙げられる。エポキシ樹脂のエポキシ当量は、310~3,300g/eqであることが好ましく、310~1,700g/eqであることがより好ましく、310~1,000g/eqであることが更に好ましい。
【0146】
環状エーテル基を有する化合物の市販品としては、例えば、EHPE3150((株)ダイセル製)、EPICLON N-695(DIC(株)製)、マープルーフG-0150M、G-0105SA、G-0130SP、G-0250SP、G-1005S、G-1005SA、G-1010S、G-2050M、G-01100、G-01758(以上、日油(株)製、エポキシ基含有ポリマー)等が挙げられる。
【0147】
本発明の硬化性組成物が環状エーテル基を有する化合物を含有する場合、硬化性組成物の全固形分中における環状エーテル基を有する化合物の含有量は、0.1~20質量%が好ましい。下限は、例えば0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。上限は、例えば、15質量%以下が好ましく、10質量%以下が更に好ましい。環状エーテル基を有する化合物は1種のみでもよく、2種以上でもよい。2種以上の場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0148】
<シランカップリング剤>
本発明の硬化性組成物は、シランカップリング剤を含有することができる。この態様によれば、得られる膜の支持体との密着性をより向上させることができる。本発明において、シランカップリング剤は、加水分解性基とそれ以外の官能基とを有するシラン化合物を意味する。また、加水分解性基とは、ケイ素原子に直結し、加水分解反応及び縮合反応の少なくともいずれかによってシロキサン結合を生じ得る置換基をいう。加水分解性基としては、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基などが挙げられ、アルコキシ基が好ましい。すなわち、シランカップリング剤は、アルコキシシリル基を有する化合物が好ましい。また、加水分解性基以外の官能基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、エポキシ基、オキセタニル基、アミノ基、ウレイド基、スルフィド基、イソシアネート基、フェニル基などが挙げられ、アミノ基、(メタ)アクリロイル基及びエポキシ基が好ましい。シランカップリング剤の具体例としては、特開2009-288703号公報の段落番号0018~0036に記載の化合物、特開2009-242604号公報の段落番号0056~0066に記載の化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0149】
硬化性組成物の全固形分中におけるシランカップリング剤の含有量は、0.1~5質量%が好ましい。上限は、3質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましい。下限は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。シランカップリング剤は、1種のみでもよく、2種以上でもよい。2種以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0150】
<溶剤>
本発明の硬化性組成物は、溶剤を含有することができる。溶剤としては、有機溶剤が挙げられる。溶剤は、各成分の溶解性や硬化性組成物の塗布性を満足すれば基本的には特に制限はない。有機溶剤としては、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤、炭化水素系溶剤などが挙げられる。これらの詳細については、国際公開第2015/166779号の段落番号0223を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。また、環状アルキル基が置換したエステル系溶剤、環状アルキル基が置換したケトン系溶剤を好ましく用いることもできる。有機溶剤の具体例としては、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジクロロメタン、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、2-ヘプタノン、シクロヘキサノン、酢酸シクロヘキシル、シクロペンタノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミドなどが挙げられる。ただし溶剤としての芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等)は、環境面等の理由により低減したほうがよい場合がある(例えば、有機溶剤全量に対して、50質量ppm(parts per million)以下とすることもでき、10質量ppm以下とすることもでき、1質量ppm以下とすることもできる)。
【0151】
本発明においては、金属含有量の少ない溶剤を用いることが好ましく、溶剤の金属含有量は、例えば10質量ppb(parts per billion)以下であることが好ましい。必要に応じて質量ppt(parts per trillion)レベルの溶剤を用いてもよく、そのような高純度溶剤は例えば東洋合成社が提供している(化学工業日報、2015年11月13日)。
【0152】
溶剤から金属等の不純物を除去する方法としては、例えば、蒸留(分子蒸留や薄膜蒸留等)やフィルタを用いたろ過を挙げることができる。ろ過に用いるフィルタのフィルタ孔径としては、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、3μm以下が更に好ましい。フィルタの材質は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン又はナイロンが好ましい。
【0153】
溶剤には、異性体(原子数が同じであるが構造が異なる化合物)が含まれていてもよい。また、異性体は、1種のみが含まれていてもよいし、複数種含まれていてもよい。
【0154】
本発明において、有機溶剤中の過酸化物の含有率が0.8mmol/L以下であることが好ましく、過酸化物を実質的に含まないことがより好ましい。
【0155】
硬化性組成物中における溶剤の含有量は、10~95質量%であることが好ましく、20~90質量%であることがより好ましく、30~90質量%であることが更に好ましい。
【0156】
また、本発明の硬化性組成物は、環境規制の観点から環境規制物質を実質的に含有しないことが好ましい。なお、本発明において、環境規制物質を実質的に含有しないとは、硬化性組成物中における環境規制物質の含有量が50質量ppm以下であることを意味し、30質量ppm以下であることが好ましく、10質量ppm以下であることが更に好ましく、1質量ppm以下であることが特に好ましい。環境規制物質は、例えばベンゼン;トルエン、キシレン等のアルキルベンゼン類;クロロベンゼン等のハロゲン化ベンゼン類等が挙げられる。これらは、REACH(Registration Evaluation Authorization and Restriction of CHemicals)規則、PRTR(Pollutant Release and Transfer Register)法、VOC(Volatile Organic Compounds)規制等のもとに環境規制物質として登録されており、使用量や取り扱い方法が厳しく規制されている。これらの化合物は、本発明の硬化性組成物に用いられる各成分などを製造する際に溶媒として用いられることがあり、残留溶媒として硬化性組成物中に混入することがある。人への安全性、環境への配慮の観点よりこれらの物質は可能な限り低減することが好ましい。環境規制物質を低減する方法としては、系中を加熱や減圧して環境規制物質の沸点以上にして系中から環境規制物質を留去して低減する方法が挙げられる。また、少量の環境規制物質を留去する場合においては、効率を上げる為に該当溶媒と同等の沸点を有する溶媒と共沸させることも有用である。また、ラジカル重合性を有する化合物を含有する場合、減圧留去中にラジカル重合反応が進行して分子間で架橋してしまうことを抑制するために重合禁止剤等を添加して減圧留去してもよい。これらの留去方法は、原料の段階、原料を反応させた生成物(例えば重合した後の樹脂溶液や多官能モノマー溶液)の段階、又はこれらの化合物を混ぜて作製した硬化性組成物の段階いずれの段階でも可能である。
【0157】
<重合禁止剤>
本発明の硬化性組成物は、重合禁止剤を含有することができる。重合禁止剤としては、ハイドロキノン、p-メトキシフェノール、ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、ピロガロール、tert-ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン塩(アンモニウム塩、第一セリウム塩等)が挙げられる。中でも、p-メトキシフェノールが好ましい。硬化性組成物の全固形分中における重合禁止剤の含有量は、0.0001~5質量%が好ましい。
【0158】
<界面活性剤>
本発明の硬化性組成物は、界面活性剤を含有することができる。界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などの各種界面活性剤を使用することができる。界面活性剤については、国際公開第2015/166779号の段落番号0238~0245を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0159】
本発明において、界面活性剤はフッ素系界面活性剤であることが好ましい。硬化性組成物にフッ素系界面活性剤を含有させることで液特性(特に、流動性)がより向上し、省液性をより改善することができる。また、厚みムラの小さい膜を形成することもできる。
【0160】
フッ素系界面活性剤中のフッ素含有率は、3~40質量%が好適であり、より好ましくは5~30質量%であり、特に好ましくは7~25質量%である。フッ素含有率がこの範囲内であるフッ素系界面活性剤は、塗布膜の厚さの均一性や省液性の点で効果的であり、硬化性組成物中における溶解性も良好である。
【0161】
フッ素系界面活性剤としては、特開2014-041318号公報の段落番号0060~0064(対応する国際公開第2014/017669号の段落番号0060~0064)等に記載の界面活性剤、特開2011-132503号公報の段落番号0117~0132に記載の界面活性剤が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えば、メガファックF171、F172、F173、F176、F177、F141、F142、F143、F144、R30、F437、F475、F479、F482、F554、F780、EXP、MFS-330(以上、DIC(株)製)、フロラードFC430、FC431、FC171(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS-382、SC-101、SC-103、SC-104、SC-105、SC-1068、SC-381、SC-383、S-393、KH-40(以上、旭硝子(株)製)、PolyFox PF636、PF656、PF6320、PF6520、PF7002(以上、OMNOVA社製)等が挙げられる。
【0162】
また、フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を含有する官能基を持つ分子構造を有し、熱を加えるとフッ素原子を含有する官能基の部分が切断されてフッ素原子が揮発するアクリル系化合物も好適に使用できる。このようなフッ素系界面活性剤としては、DIC(株)製のメガファックDSシリーズ(化学工業日報、2016年2月22日)(日経産業新聞、2016年2月23日)、例えばメガファックDS-21が挙げられる。
【0163】
また、フッ素系界面活性剤は、フッ素化アルキル基又はフッ素化アルキレンエーテル基を有するフッ素原子含有ビニルエーテル化合物と、親水性のビニルエーテル化合物との重合体を用いることも好ましい。このようなフッ素系界面活性剤は、特開2016-216602号公報の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0164】
フッ素系界面活性剤としては、ブロックポリマーを用いることもできる。例えば特開2011-089090号公報に記載された化合物が挙げられる。フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位と、アルキレンオキシ基(好ましくはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基)を2以上(好ましくは5以上)有する(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位と、を含む含フッ素高分子化合物も好ましく用いることができる。下記化合物も本発明で用いられるフッ素系界面活性剤として例示される。
【化40】

上記の化合物の重量平均分子量は、好ましくは3,000~50,000であり、例えば、14,000である。上記の化合物中、構成単位の割合を示す%はモル%である。
【0165】
また、フッ素系界面活性剤は、エチレン性不飽和基を側鎖に有する含フッ素重合体を用いることもできる。具体例としては、特開2010-164965号公報の段落番号0050~0090及び段落番号0289~0295に記載された化合物、例えばDIC(株)製のメガファックRS-101、RS-102、RS-718K、RS-72-K等が挙げられる。フッ素系界面活性剤は、特開2015-117327号公報の段落番号0015~0158に記載の化合物を用いることもできる。
【0166】
ノニオン系界面活性剤としては、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン並びにそれらのエトキシレート及びプロポキシレート(例えば、グリセロールプロポキシレート、グリセロールエトキシレート等)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル、プルロニックL10、L31、L61、L62、10R5、17R2、25R2(BASF社製)、テトロニック304、701、704、901、904、150R1(BASF社製)、ソルスパース20000(日本ルーブリゾール(株)製)、NCW-101、NCW-1001、NCW-1002(和光純薬工業(株)製)、パイオニンD-6112、D-6112-W、D-6315(竹本油脂(株)製)、オルフィンE1010、サーフィノール104、400、440(日信化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0167】
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、トーレシリコーンDC3PA、トーレシリコーンSH7PA、トーレシリコーンDC11PA、トーレシリコーンSH21PA、トーレシリコーンSH28PA、トーレシリコーンSH29PA、トーレシリコーンSH30PA、トーレシリコーンSH8400(以上、東レ・ダウコーニング(株)製)、TSF-4440、TSF-4300、TSF-4445、TSF-4460、TSF-4452(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)、KP-341、KF-6001、KF-6002(以上、信越シリコーン(株)製)、BYK307、BYK323、BYK330(以上、ビックケミー社製)等が挙げられる。
【0168】
硬化性組成物の全固形分中における界面活性剤の含有量は、0.001質量%~5.0質量%が好ましく、0.005~3.0質量%がより好ましい。界面活性剤は、1種のみでもよく、2種以上でもよい。2種以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0169】
<他の着色剤>
本発明の硬化性組成物は、上述した顔料以外の他の着色剤を含有してもよい。他の着色剤としては、例えば、染料が挙げられる。
〔染料〕
染料としては特に制限はなく、公知の染料が使用できる。染料は、有彩色染料であってもよく、近赤外線吸収染料であってもよい。有彩色染料としては、ピラゾールアゾ化合物、アニリノアゾ化合物、トリアリールメタン化合物、アントラキノン化合物、アントラピリドン化合物、ベンジリデン化合物、オキソノール化合物、ピラゾロトリアゾールアゾ化合物、ピリドンアゾ化合物、シアニン化合物、フェノチアジン化合物、ピロロピラゾールアゾメチン化合物、キサンテン化合物、フタロシアニン化合物、ベンゾピラン化合物、インジゴ化合物、ピロメテン化合物が挙げられる。また、特開2012-158649号公報に記載のチアゾール化合物、特開2011-184493号公報に記載のアゾ化合物、特開2011-145540号公報に記載のアゾ化合物を用いることもできる。また、黄色染料として、特開2013-054339号公報の段落番号0011~0034に記載のキノフタロン化合物、特開2014-026228号公報の段落番号0013~0058に記載のキノフタロン化合物などを用いることもできる。近赤外線吸収染料としては、ピロロピロール化合物、リレン化合物、オキソノール化合物、スクアリリウム化合物、シアニン化合物、クロコニウム化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、ピリリウム化合物、アズレニウム化合物、インジゴ化合物及びピロメテン化合物が挙げられる。また、特開2017-197437号公報に記載のスクアリリウム化合物、国際公開第2017/213047号の段落番号0090~0107に記載のスクアリリウム化合物、特開2018-054760号公報の段落番号0019~0075に記載のピロール環含有化合物、特開2018-040955号公報の段落番号0078~0082に記載のピロール環含有化合物、特開2018-002773号公報の段落番号0043~0069に記載のピロール環含有化合物、特開2018-041047号公報の段落番号0024~0086に記載のアミドα位に芳香族環を有するスクアリリウム化合物、特開2017-179131号公報に記載のアミド連結型スクアリリウム化合物、特開2017-141215号公報に記載のピロールビス型スクアリリウム骨格又はクロコニウム骨格を有する化合物、特開2017-082029号公報に記載されたジヒドロカルバゾールビス型のスクアリリウム化合物、特開2017-068120号公報の段落番号0027~0114に記載の非対称型の化合物、特開2017-067963号公報に記載されたピロール環含有化合物(カルバゾール型)、特許第6251530号公報に記載されたフタロシアニン化合物などを用いることもできる。
【0170】
また、本発明の硬化性組成物は、他の着色剤として色素多量体を含んでもよい。色素多量体は、溶剤に溶解して用いられる染料であることが好ましいが、色素多量体は、粒子を形成していてもよく、色素多量体が粒子である場合は通常溶剤に分散した状態で用いられる。粒子状態の色素多量体は、例えば乳化重合によって得ることができ、特開2015-214682号公報に記載されている化合物及び製造方法が具体例として挙げられる。色素多量体は、一分子中に、色素構造を2以上有するものであり、色素構造を3以上有することが好ましい。上限は、特に限定はないが、100以下とすることもできる。一分子中に有する複数の色素構造は、同一の色素構造であってもよく、異なる色素構造であってもよい。色素多量体の重量平均分子量(Mw)は、2,000~50,000が好ましい。下限は、3,000以上がより好ましく、6,000以上がさらに好ましい。上限は、30,000以下がより好ましく、20,000以下がさらに好ましい。色素多量体は、特開2011-213925号公報、特開2013-041097号公報、特開2015-028144号公報、特開2015-030742号公報、国際公開第2016/031442号等に記載されている化合物を用いることもできる。
【0171】
硬化性組成物が他の着色剤を含む場合、硬化性組成物の全固形分中における他の着色剤の含有量は1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることが特に好ましい。上限としては特に制限はないが、70質量%以下であることが好ましく、65質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることが更に好ましい。
また、他の着色剤の含有量は、顔料の100質量部に対して5~50質量部であることが好ましい。上限は、45質量部以下であることが好ましく、40質量部以下であることがより好ましい。下限は、10質量部以上であることが好ましく、15質量部以上であることが更に好ましい。
また、本発明の硬化性組成物は他の着色剤を実質的に含有しないこともできる。本発明の硬化性組成物が他の着色剤を実質的に含まない場合、本発明の硬化性組成物の全固形分中における他の着色剤の含有量が0.1質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以下であることがより好ましく、含有しないことが特に好ましい。
【0172】
<紫外線吸収剤>
本発明の硬化性組成物は、紫外線吸収剤を含有することができる。紫外線吸収剤は、共役ジエン化合物、アミノジエン化合物、サリシレート化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、アクリロニトリル化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン化合物、インドール化合物、トリアジン化合物などを用いることができる。これらの詳細については、特開2012-208374号公報の段落番号0052~0072、特開2013-068814号公報の段落番号0317~0334、特開2016-162946号公報の段落番号0061~0080の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。紫外線吸収剤の具体例としては、下記構造の化合物などが挙げられる。紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、UV-503(大東化学(株)製)などが挙げられる。また、ベンゾトリアゾール化合物としては、ミヨシ油脂製のMYUAシリーズ(化学工業日報、2016年2月1日)が挙げられる。
【化41】
【0173】
硬化性組成物の全固形分中における紫外線吸収剤の含有量は、0.01~10質量%が好ましく、0.01~5質量%がより好ましい。本発明において、紫外線吸収剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0174】
<酸化防止剤>
本発明の硬化性組成物は、酸化防止剤を含有することができる。酸化防止剤としては、フェノール化合物、亜リン酸エステル化合物、チオエーテル化合物などが挙げられる。フェノール化合物としては、フェノール系酸化防止剤として知られる任意のフェノール化合物を使用することができる。好ましいフェノール化合物としては、ヒンダードフェノール化合物が挙げられる。フェノール性ヒドロキシ基に隣接する部位(オルト位)に置換基を有する化合物が好ましい。前述の置換基としては炭素数1~22の置換又は無置換のアルキル基が好ましい。また、酸化防止剤は、同一分子内にフェノール基と亜リン酸エステル基を有する化合物も好ましい。また、酸化防止剤は、リン系酸化防止剤も好適に使用することができる。リン系酸化防止剤としてはトリス[2-[[2,4,8,10-テトラキス(1,1-ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-6-イル]オキシ]エチル]アミン、トリス[2-[(4,6,9,11-テトラ-tert-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-2-イル)オキシ]エチル]アミン、亜リン酸エチルビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)などが挙げられる。酸化防止剤の市販品としては、例えば、アデカスタブ AO-20、アデカスタブ AO-30、アデカスタブ AO-40、アデカスタブ AO-50、アデカスタブ AO-50F、アデカスタブ AO-60、アデカスタブ AO-60G、アデカスタブ AO-80、アデカスタブ AO-330(以上、(株)ADEKA)などが挙げられる。
【0175】
硬化性組成物の全固形分中における酸化防止剤の含有量は、0.01~20質量%であることが好ましく、0.3~15質量%であることがより好ましい。酸化防止剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0176】
<酸化剤>
本発明の硬化性組成物は、酸化剤を含有することができる。
酸化剤には、上述の重合禁止剤としても働く化合物が含まれる場合がある。
酸化剤としては、たとえばキノン化合物、キノジメタン化合物などが挙げられる。キノン化合物としてはベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキノン、クロラニル、ジクロロジシアノベンゾキノン(DDQ)などを用いることができる。キノジメタン化合物としては7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、2-フルオロ-7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン(FTCNQ)、2,5-ジフルオロ-7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン(F2TCNQ)、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン(F4TCNQ)などを用いることができる。
酸化剤は含有する顔料又は染料の最低空軌道(LUMO)よりも低いことが好ましい。酸化剤のLUMOは好ましくは-3.5eV以下であり、より好ましくは-3.8eV以下であり、最も好ましくは-4.0eV以下である。
硬化性組成物の全固形分中における酸化剤の含有量は、0.0001~10質量%であることが好ましく、0.0005~5質量%であることがより好ましく、0.001~1質量%であることが最も好ましい。酸化剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0177】
<その他成分>
本発明の硬化性組成物は、必要に応じて、増感剤、硬化促進剤、フィラー、熱硬化促進剤、可塑剤及びその他の助剤類(例えば、導電性粒子、充填剤、消泡剤、難燃剤、レベリング剤、剥離促進剤、香料、表面張力調整剤、連鎖移動剤など)を含有してもよい。これらの成分を適宜含有させることにより、膜物性などの性質を調整することができる。これらの成分は、例えば、特開2012-003225号公報の段落番号0183以降(対応する米国特許出願公開第2013/0034812号明細書の段落番号0237)の記載、特開2008-250074号公報の段落番号0101~0104、0107~0109等の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、本発明の硬化性組成物は、必要に応じて、潜在酸化防止剤を含有してもよい。潜在酸化防止剤としては、酸化防止剤として機能する部位が保護基で保護された化合物であって、100~250℃で加熱するか、又は酸/塩基触媒存在下で80~200℃で加熱することにより保護基が脱離して酸化防止剤として機能する化合物が挙げられる。潜在酸化防止剤としては、国際公開第2014/021023号、国際公開第2017/030005号、特開2017-008219号公報に記載された化合物が挙げられる。潜在酸化防止剤の市販品としては、アデカアークルズGPA-5001((株)ADEKA製)等が挙げられる。
【0178】
また、本発明の硬化性組成物は、得られる膜の屈折率を調整するために金属酸化物を含有させてもよい。金属酸化物としては、TiO、ZrO、Al、SiO等が挙げられる。金属酸化物の一次粒子径は1~100nmが好ましく、3~70nmがより好ましく、5~50nmが更に好ましい。金属酸化物はコア-シェル構造を有していてもよい。また、この場合、コア部は中空状であってもよい。
【0179】
また、本発明の硬化性組成物は、耐光性改良剤を含んでもよい。耐光性改良剤としては、特開2017-198787号公報の段落番号0036~0037に記載の化合物、特開2017-146350号公報の段落番号0029~0034に記載の化合物、特開2017-129774号公報の段落番号0036~0037、0049~0052に記載の化合物、特開2017-129674号公報の段落番号0031~0034、0058~0059に記載の化合物、特開2017-122803号公報の段落番号0036~0037、0051~0054に記載の化合物、国際公開第2017/164127号の段落番号0025~0039に記載の化合物、特開2017-186546号公報の段落番号0034~0047に記載の化合物、特開2015-025116号公報の段落番号0019~0041に記載の化合物、特開2012-145604号公報の段落番号0101~0125に記載の化合物、特開2012-103475号公報の段落番号0018~0021に記載の化合物、特開2011-257591号公報の段落番号0015~0018に記載の化合物、特開2011-191483号公報の段落番号0017~0021に記載の化合物、特開2011-145668号公報の段落番号0108~0116に記載の化合物、特開2011-253174号公報の段落番号0103~0153に記載の化合物などが挙げられる。
【0180】
本発明の硬化性組成物の粘度(25℃)は、例えば、塗布により膜を形成する場合、1~100mPa・sであることが好ましい。下限は、0.1mPa・s以上がより好ましく、0.2mPa・s以上が更に好ましい。上限は、10mPa・s以下がより好ましく、5mPa・s以下が更に好ましく、3mPa・s以下が特に好ましい。
【0181】
本発明の硬化性組成物は、顔料などと結合又は配位していない遊離の金属の含有量が100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましく、10ppm以下であることが更に好ましく、実質的に含有しないことが特に好ましい。本明細書において、ppmは質量基準である。この態様によれば、顔料分散性の安定化(凝集抑止)、分散性向上に伴う分光特性の向上、硬化性成分の安定化、金属原子・金属イオンの溶出に伴う導電性変動の抑止、表示特性の向上などの効果が期待できる。また、特開2012-153796号公報、特開2000-345085号公報、特開2005-200560号公報、特開平08-043620号公報、特開2004-145078号公報、特開2014-119487号公報、特開2010-083997号公報、特開2017-090930号公報、特開2018-025612号公報、特開2018-025797号公報、特開2017-155228号公報、特開2018-036521号公報などに記載された効果も得られる。上記の遊離の金属の種類としては、Na、K、Ca、Sc、Ti、Mn、Cu、Zn、Fe、Cr、Co、Mg、Al、Sn、Zr、Ga、Ge、Ag、Au、Pt、Cs、Ni、Cd、Pb、Bi等が挙げられる。また、本発明の硬化性組成物は、顔料などと結合又は配位していない遊離のハロゲンの含有量が100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましく、10ppm以下であることが更に好ましく、実質的に含有しないことが特に好ましい。ハロゲンとしては、F、Cl、Br、I及びそれらの陰イオンが挙げられる。硬化性組成物中の遊離の金属やハロゲンの低減方法としては、イオン交換水による洗浄、ろ過、限外ろ過、イオン交換樹脂による精製等の方法が挙げられる。
【0182】
本発明の硬化性組成物は、テレフタル酸エステルを実質的に含まないことも好ましい。
【0183】
<収容容器>
本発明の硬化性組成物の収容容器としては、特に限定はなく、公知の収容容器を用いることができる。また、収容容器として、原材料や硬化性組成物中への不純物混入を抑制することを目的に、容器内壁を6種6層の樹脂で構成する多層ボトルや6種の樹脂を7層構造にしたボトルを使用することも好ましい。このような容器としては例えば特開2015-123351号公報に記載の容器が挙げられる。
また、本発明の硬化性組成物や、イメージセンサを製造するために用いられる組成物の収容容器としては、容器内壁からの金属溶出を防ぎ、組成物の保存安定性を高め、成分変質を抑制する目的で、収容容器の内壁をガラス製やステンレス製などにすることも好ましい。
本発明の硬化性組成物の保存条件としては特に限定はなく、従来公知の方法を用いることができる。また、特開2016-180058号公報に記載された方法を用いることもできる。
【0184】
<硬化性組成物の調製方法>
本発明の硬化性組成物は、前述の成分を混合して調製できる。硬化性組成物の調製に際しては、全成分を同時に溶剤に溶解及び/又は分散して硬化性組成物を調製してもよいし、必要に応じて、各成分を適宜2つ以上の溶液又は分散液としておいて、使用時(塗布時)にこれらを混合して硬化性組成物を調製してもよい。
【0185】
また、硬化性組成物の調製に際して、顔料を分散させるプロセスを含むことが好ましい。顔料を分散させるプロセスにおいて、顔料の分散に用いる機械力としては、圧縮、圧搾、衝撃、剪断、キャビテーションなどが挙げられる。これらプロセスの具体例としては、ビーズミル、サンドミル、ロールミル、ボールミル、ペイントシェーカー、マイクロフルイダイザー、高速インペラー、サンドグラインダー、フロージェットミキサー、高圧湿式微粒化、超音波分散などが挙げられる。またサンドミル(ビーズミル)における顔料の粉砕においては、径の小さいビーズを使用する、ビーズの充填率を大きくする事等により粉砕効率を高めた条件で処理することが好ましい。また、粉砕処理後にろ過、遠心分離などで粗粒子を除去することが好ましい。また、顔料を分散させるプロセス及び分散機は、「分散技術大全、株式会社情報機構発行、2005年7月15日」や「サスペンション(固/液分散系)を中心とした分散技術と工業的応用の実際 総合資料集、経営開発センター出版部発行、1978年10月10日」、特開2015-157893号公報の段落番号0022に記載のプロセス及び分散機を好適に使用出来る。また顔料を分散させるプロセスにおいては、ソルトミリング工程にて粒子の微細化処理を行ってもよい。ソルトミリング工程に用いられる素材、機器、処理条件等は、例えば特開2015-194521号公報、特開2012-046629号公報の記載を参酌できる。
【0186】
硬化性組成物の調製にあたり、異物の除去や欠陥の低減などの目的で、硬化性組成物をフィルタでろ過することが好ましい。フィルタとしては、従来からろ過用途等に用いられているフィルタであれば特に限定されることなく用いることができる。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、ナイロン(例えばナイロン-6、ナイロン-6,6)等のポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂(高密度、超高分子量のポリオレフィン樹脂を含む)等の素材を用いたフィルタが挙げられる。これら素材の中でもポリプロピレン(高密度ポリプロピレンを含む)及びナイロンが好ましい。
【0187】
フィルタの孔径は、0.01~7.0μmが好ましく、0.01~3.0μmがより好ましく、0.05~0.5μmが更に好ましい。フィルタの孔径が上記範囲であれば、微細な異物をより確実に除去できる。フィルタの孔径値については、フィルタメーカーの公称値を参照することができる。フィルタは、日本ポール株式会社(DFA4201NIEYなど)、アドバンテック東洋株式会社、日本インテグリス株式会社(旧日本マイクロリス株式会社)及び株式会社キッツマイクロフィルタ等が提供する各種フィルタを用いることができる。
【0188】
また、フィルタとしてファイバ状のろ材を用いることも好ましい。ファイバ状のろ材としては、例えばポリプロピレンファイバ、ナイロンファイバ、グラスファイバ等が挙げられる。市販品としては、ロキテクノ社製のSBPタイプシリーズ(SBP008など)、TPRタイプシリーズ(TPR002、TPR005など)、SHPXタイプシリーズ(SHPX003など)が挙げられる。
【0189】
フィルタを使用する際、異なるフィルタ(例えば、第1のフィルタと第2のフィルタなど)を組み合わせてもよい。その際、各フィルタでのろ過は、1回のみでもよいし、2回以上行ってもよい。また、上述した範囲内で異なる孔径のフィルタを組み合わせてもよい。また、第1のフィルタでのろ過は、分散液のみに対して行い、他の成分を混合した後で、第2のフィルタでろ過を行ってもよい。
【0190】
(膜)
本発明の膜は、上述した本発明の硬化性組成物から形成された膜である。
本発明の膜は、本発明の硬化性組成物を硬化してなる硬化膜であることが好ましい。また、本発明の膜は、本発明の硬化性組成物の硬化物よりなる膜であることが好ましい。
本発明の膜は、カラーフィルタ、近赤外線透過フィルタ、近赤外線カットフィルタ、ブラックマトリクス、遮光膜、屈折率調整膜などに用いることができる。例えば、カラーフィルタの着色層として好ましく用いることができる。
本発明の膜の膜厚は、目的に応じて適宜調整できる。例えば、膜厚は、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下がさらに好ましい。膜厚の下限は、0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.3μm以上がさらに好ましい。
【0191】
(カラーフィルタ)
本発明のカラーフィルタは、本発明の硬化性組成物から形成されたカラーフィルタである。本発明のカラーフィルタは、上述した本発明の膜を有することが好ましい。本発明の膜をカラーフィルタに用いる場合においては、顔料として、有彩色顔料を用いることが好ましい。
本発明のカラーフィルタの膜厚は、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下がさらに好ましい。膜厚の下限は、0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.3μm以上が更に好ましい。本発明のカラーフィルタは、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)などの固体撮像素子や画像表示装置などに用いることができる。
【0192】
また、本発明のカラーフィルタは、本発明の膜と保護層とを含んでもよい。上記保護層と本発明の膜とは接していてもよいし、間に更に別の層を有してもよいし、間に空隙を有してもよい。保護層を含むことにより、酸素遮断化、低反射化、親疎水化、特定波長の光(紫外線、近赤外線、赤外線等)の遮蔽等の種々の機能を付与することができる。保護層の厚さとしては、0.01~10μmが好ましく、0.1~5μmがさらに好ましい。保護層の形成方法としては、溶剤に溶解した樹脂組成物を塗布して形成する方法、化学気相蒸着法、成型した樹脂を接着材で貼りつける方法等が挙げられる。保護層を構成する成分としては、(メタ)アクリル樹脂、エン・チオール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリアリーレンエーテルホスフィンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、ポリオール樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アラミド樹脂、ポリアミド樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、変性シリコーン樹脂、フッ素系樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、セルロース樹脂、Si、C、W、Al、Mo、SiO、Siなどが挙げられ、これらの成分を二種以上含有しても良い例えば、酸素遮断化を目的とした保護層の場合、保護層はポリオール樹脂、SiO、Siを含むことが好ましい。また、低反射化を目的とした保護層の場合、保護層は(メタ)アクリル樹脂、フッ素樹脂を含むことが好ましい。
【0193】
樹脂組成物を塗布して保護層を形成する場合、樹脂組成物の塗布方法としては、スピンコート法、キャスト法、スクリーン印刷法、インクジェット法等の公知の方法を用いることができる。樹脂組成物に含まれる溶剤は、公知の溶剤(例えば、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセテート、シクロペンタノン、乳酸エチル等)を用いることが出来る。保護層を化学気相蒸着法にて形成する場合、化学気相蒸着法としては、公知の化学気相蒸着法(熱化学気相蒸着法、プラズマ化学気相蒸着法、光化学気相蒸着法)を用いることができる。
【0194】
保護層は、必要に応じて、有機粒子、無機粒子、特定波長(例えば、紫外線、近赤外線、赤外線等)の吸収剤、屈折率調整剤、酸化防止剤、密着剤、界面活性剤等の添加剤を含有しても良い。有機・無機粒子の例としては、例えば、高分子微粒子(例えば、シリコーン樹脂微粒子、ポリスチレン微粒子、メラミン樹脂微粒子)、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化アルミニウム、窒化チタン、酸窒化チタン、フッ化マグネシウム、中空シリカ、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等が挙げられる。特定波長の吸収剤は公知の吸収剤を用いることができる。例えば、紫外線吸収剤としては、共役ジエン化合物、アミノジエン化合物、サリシレート化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、アクリロニトリル化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン化合物、インドール化合物、トリアジン化合物などを用いることができる。これらの詳細については、特開2012-208374号公報の段落番号0052~0072、特開2013-068814号公報の段落番号0317~0334、特開2016-162946号公報の段落番号0061~0080の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。赤外線吸収剤としては、例えば、環状テトラピロール色素、オキソカーボン色素、シアニン色素、クアテリレン色素、ナフタロシアニン色素、ニッケル錯体色素、銅イオン色素、イミニウム色素、サブフタロシアニン色素、キサンテン色素、アゾ系色素、ジピロメテン色素、ピロロピロール色素などを用いることができる。これらの詳細については、特開2018-054760号公報の段落番号0020~0072、特開2009-263614号公報、国際公開第2017/146092号の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。これらの添加剤の含有量は適宜調整できるが、保護層の全質量に対して0.1~70質量%が好ましく、1~60質量%がさらに好ましい。
【0195】
また、保護層としては、特開2017-151176号公報の段落番号0073~0092に記載の保護層を用いることもできる。
【0196】
<カラーフィルタの製造方法の第一の態様>
本発明のカラーフィルタの製造方法は、硬化性組成物を支持体上に適用して組成物層を形成する工程(組成物層形成工程)と、上記組成物層をパターン状に露光する工程(露光工程)と、未露光部を現像除去して着色パターンを形成する工程(現像工程)と、を含む。
以下、各工程について説明する。
【0197】
〔組成物層形成工程〕
組成物層形成工程では、本発明の硬化性組成物を用いて、支持体上に硬化性組成物層を形成する。支持体としては、特に限定は無く、用途に応じて適宜選択できる。例えば、ガラス基板、シリコン基板などが挙げられ、シリコン基板であることが好ましい。また、シリコン基板には、電荷結合素子(CCD)、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)、透明導電膜などが形成されていてもよい。また、シリコン基板には、各画素を隔離するブラックマトリクスが形成されている場合もある。また、シリコン基板には、上部の層との密着性改良、物質の拡散防止或いは基板表面の平坦化のために下塗り層が設けられていてもよい。
【0198】
硬化性組成物層を形成する工程では、硬化性組成物が支持体に付与される。
硬化性組成物の付与方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、滴下法(ドロップキャスト);スリットコート法;スプレー法;ロールコート法;回転塗布法(スピンコーティング);流延塗布法;スリットアンドスピン法;プリウェット法(たとえば、特開2009-145395号公報に記載されている方法);インクジェット(例えばオンデマンド方式、ピエゾ方式、サーマル方式)、ノズルジェット等の吐出系印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、反転オフセット印刷、メタルマスク印刷法などの各種印刷法;金型等を用いた転写法;ナノインプリント法などが挙げられる。インクジェットでの適用方法としては、特に限定されず、例えば「広がる・使えるインクジェット-特許に見る無限の可能性-、2005年2月発行、住ベテクノリサーチ」に示された方法(特に115ページ~133ページ)や、特開2003-262716号公報、特開2003-185831号公報、特開2003-261827号公報、特開2012-126830号公報、特開2006-169325号公報などに記載の方法が挙げられる。また、硬化性組成物の塗布方法については、国際公開第2017/030174号、国際公開第2017/018419号の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0199】
支持体上に形成した硬化性組成物層は、乾燥(プリベーク)してもよい。低温プロセスにより膜を製造する場合は、プリベークを行わなくてもよい。プリベークを行う場合、プリベークの温度は、150℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましく、110℃以下が更に好ましい。下限は、例えば、50℃以上とすることができ、80℃以上とすることもできる。プリベーク時間は、10~300秒が好ましく、40~250秒がより好ましく、80~220秒がさらに好ましい。プリベークは、ホットプレート、オーブン等で行うことができる。
【0200】
〔露光工程〕
次に、硬化性組成物層をパターン状に露光する(露光工程)。例えば、硬化性組成物層に対し、ステッパー露光機やスキャナ露光機などを用いて、所定のマスクパターンを有するマスクを介して露光することで、パターン状に露光することができる。これにより、露光部分を硬化することができる。
【0201】
露光に際して用いることができる放射線(光)としては、g線、i線等が好ましく用いられる。また、波長300nm以下の光(好ましくは波長180~300nmの光)を用いることもできる。波長300nm以下の光としては、KrF線(波長248nm)、ArF線(波長193nm)などが挙げられ、KrF線(波長248nm)が好ましい。また、300nm以上の長波な光源も利用できる。
【0202】
また、露光に際して、光を連続的に照射して露光してもよく、パルス的に照射して露光(パルス露光)してもよい。なお、パルス露光とは、短時間(例えば、ミリ秒レベル以下)のサイクルで光の照射と休止を繰り返して露光する方式の露光方法のことである。パルス露光の場合、パルス幅は、100ナノ秒(ns)以下であることが好ましく、50ナノ秒以下であることがより好ましく、30ナノ秒以下であることが更に好ましい。パルス幅の下限は、特に限定はないが、1フェムト秒(fs)以上とすることができ、10フェムト秒以上とすることもできる。周波数は、1kHz以上であることが好ましく、2kHz以上であることがより好ましく、4kHz以上であることが更に好ましい。周波数の上限は50kHz以下であることが好ましく、20kHz以下であることがより好ましく、10kHz以下であることが更に好ましい。最大瞬間照度は、50,000,000W/m以上であることが好ましく、100,000,000W/m以上であることがより好ましく、200,000,000W/m以上であることが更に好ましい。また、最大瞬間照度の上限は、1,000,000,000W/m以下であることが好ましく、800,000,000W/m以下であることがより好ましく、500,000,000W/m以下であることが更に好ましい。なお、パルス幅とは、パルス周期における光が照射されている時間のことである。また、周波数とは、1秒あたりのパルス周期の回数のことである。また、最大瞬間照度とは、パルス周期における光が照射されている時間内での平均照度のことである。また、パルス周期とは、パルス露光における光の照射と休止を1サイクルとする周期のことである。
【0203】
照射量(露光量)は、例えば、0.03~2.5J/cmが好ましく、0.05~1.0J/cmがより好ましい。露光時における酸素濃度については適宜選択することができ、大気下で行う他に、例えば酸素濃度が19体積%以下の低酸素雰囲気下(例えば、15体積%、5体積%、又は、実質的に無酸素)で露光してもよく、酸素濃度が21体積%を超える高酸素雰囲気下(例えば、22体積%、30体積%、又は、50体積%)で露光してもよい。また、露光照度は適宜設定することが可能であり、通常1,000W/m~100,000W/m(例えば、5,000W/m、15,000W/m、又は、35,000W/m)の範囲から選択することができる。酸素濃度と露光照度は適宜条件を組み合わせてよく、例えば、酸素濃度10体積%で照度10,000W/m、酸素濃度35体積%で照度20,000W/mなどとすることができる。
【0204】
〔現像工程〕
次に、硬化性組成物層の未露光部を現像除去してパターン(画素)を形成する。硬化性組成物層の未露光部の現像除去は、現像液を用いて行うことができる。これにより、露光工程における未露光部の硬化性組成物層が現像液に溶出し、光硬化した部分だけが残る。現像液としては、下地の素子や回路などにダメージを起さない有機アルカリ現像液が望ましい。現像液の温度は、例えば、20~30℃が好ましい。現像時間は、20~180秒が好ましい。また、残渣除去性を向上するため、現像液を60秒ごとに振り切り、さらに新たに現像液を供給する工程を数回繰り返してもよい。
【0205】
現像液は、アルカリ剤を純水で希釈したアルカリ性水溶液(アルカリ現像液)であることが好ましい。アルカリ剤としては、例えば、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジグリコールアミン、ジエタノールアミン、ヒドロキシアミン、エチレンジアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、エチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセンなどの有機アルカリ性化合物や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウムなどの無機アルカリ性化合物が挙げられる。アルカリ剤は、分子量が大きい化合物の方が環境面及び安全面で好ましい。アルカリ性水溶液のアルカリ剤の濃度は、0.001~10質量%が好ましく、0.01~1質量%がより好ましい。また、現像液は、さらに界面活性剤を含有していてもよい。界面活性剤としては、上述した界面活性剤が挙げられ、ノニオン系界面活性剤が好ましい。現像液は、移送や保管の便宜などの観点より、一旦濃縮液として製造し、使用時に必要な濃度に希釈してもよい。希釈倍率は特に限定されないが、例えば1.5~100倍の範囲に設定することができる。また、現像後純水で洗浄(リンス)することも好ましい。また、リンスは、現像後の硬化性組成物層が形成された支持体を回転させつつ、現像後の硬化性組成物層へリンス液を供給して行うことが好ましい。また、リンス液を吐出させるノズルを支持体の中心部から支持体の周縁部に移動させて行うことも好ましい。この際、ノズルの支持体中心部から周縁部へ移動させるにあたり、ノズルの移動速度を徐々に低下させながら移動させてもよい。このようにしてリンスを行うことで、リンスの面内ばらつきを抑制できる。また、ノズルを支持体中心部から周縁部へ移動させつつ、支持体の回転速度を徐々に低下させても同様の効果が得られる。
【0206】
現像後、乾燥を施した後に追加露光処理や加熱処理(ポストベーク)を行うことが好ましい。追加露光処理やポストベークは、硬化を完全なものとするための現像後の処理であり、加熱温度は、例えば100~240℃が好ましく、200~240℃がより好ましい。ポストベークは、現像後の膜を、上記条件になるようにホットプレートやコンベクションオーブン(熱風循環式乾燥機)、高周波加熱機等の加熱手段を用いて、連続式あるいはバッチ式で行うことができる。
追加露光処理を行う場合、露光に用いられる光は、波長400nm以下の光であることが好ましい。また、追加露光処理は、韓国公開特許第10-2017-0122130号公報に記載の方法で行ってもよい。
【0207】
画素の幅としては、0.5~20.0μmであることが好ましい。下限は、1.0μm以上であることが好ましく、2.0μm以上であることがより好ましい。上限は、15.0μm以下であることが好ましく、10.0μm以下であることがより好ましい。
【0208】
画素のヤング率としては0.5~20GPaが好ましく、2.5~15GPaがより好ましい。
【0209】
画素は高い平坦性を有することが好ましい。具体的には、画素の表面粗さRaとしては、100nm以下であることが好ましく、40nm以下であることがより好ましく、15nm以下であることが更に好ましい。下限は規定されないが、例えば0.1nm以上であることが好ましい。表面粗さの測定は、例えばVeeco社製のAFM(原子間力顕微鏡) Dimension3100を用いて測定することができる。
また、画素上の水の接触角は適宜好ましい値に設定することができるが、典型的には、50~110°の範囲である。接触角は、例えば接触角計CV-DT・A型(協和界面科学(株)製)を用いて測定できる。
【0210】
画素の体積抵抗値は高いことが望まれる。具体的には、画素の体積抵抗値は10Ω・cm以上であることが好ましく、1011Ω・cm以上であることがより好ましい。上限は規定されないが、例えば1014Ω・cm以下であることが好ましい。画素の体積抵抗値は、例えば超高抵抗計5410(アドバンテスト社製)を用いて測定することができる。
【0211】
以上説明した、組成物層形成工程、露光工程及び現像工程(さらに、必要に応じて追加露光処理や加熱処理)を所望の色相数だけ繰り返すことにより、所望の色層よりなるカラーフィルタが形成される。
上記製造方法は、カラーフィルタの画素の製造方法であるが、本発明の硬化性組成物によれば、例えば、カラーフィルタの画素間に設けられるブラックマトリックスも製造される。ブラックマトリックスは、例えば、本発明の硬化性組成物に顔料として黒色顔料を添加したものを用いる以外は、上記画素の製造方法と同様に、パターン露光、現像を行い、更に必要に応じてポストベークを行うことにより製造することができる。
【0212】
(カラーフィルタの製造方法の第二の態様)
本発明のカラーフィルタの製造方法の第二の態様は、本発明の硬化性組成物を支持体上に適用して組成物層を形成し、上記組成物層を硬化して硬化層を形成する工程(硬化層形成工程)と、上記硬化層上にフォトレジスト層を形成する工程(フォトレジスト層形成工程)と、露光及び現像することにより上記フォトレジスト層をパターニングしてレジストパターンを得る工程(レジストパターン形成工程)と、上記レジストパターンをエッチングマスクとして上記硬化層をエッチングする工程(エッチング工程)と、を含む。
以下、各工程について説明する。
【0213】
<硬化層形成工程>
硬化層形成工程においては、本発明の硬化性組成物を、支持体上に付与し、硬化して硬化層を形成する。
支持体としては、上述の組成物層形成工程における支持体が好ましく用いられる。
また、硬化性組成物の付与方法としては、上述の組成物膜形成工程における付与方法が好ましく用いられる。
付与された硬化性組成物の硬化方法としては、特に限定されず、光又は熱により硬化することが好ましい。
光による硬化を行う場合、光としては、硬化性組成物に含まれる開始剤に応じて適宜選択すればよいが、例えば、g線、i線、等の紫外線が好ましく用いられる。露光量は5~1,500mJ/cmが好ましく、10~1,000mJ/cmがより好ましく、10~500mJ/cmが更に好ましい。
熱による硬化を行う場合、加熱温度は、120~250℃であることが好ましく、160~230℃であることがより好ましい。加熱時間は、加熱手段により異なるが、ホットプレート上で加熱する場合、例えば3~30分間が好ましく、オーブン中で加熱する場合、例えば30~90分間が好ましい。
【0214】
<フォトレジスト層形成工程>
フォトレジスト層形成工程においては、上記硬化層上にフォトレジスト層が形成される。
フォトレジスト層の形成においては、例えば、公知のネガ型又はポジ型の感光性組成物が用いられ、ポジ型の感光性組成物が好ましい。
上記感光性組成物を上記硬化層上に塗布し、必要に応じて乾燥を行うことにより、フォトレジスト層が得られる。
フォトレジスト層の形成方法としては、特に限定されず、公知の方法により行えばよい。
フォトレジスト層の厚さとしては、0.1~3μmが好ましく、0.2~2.5μmがより好ましく、0.3~2μmがより好ましい。
【0215】
<レジストパターン形成工程>
レジストパターン形成工程においては、上記フォトレジスト層をパターン状に露光し、現像することによりレジストパターンが形成される。
上記露光及び現像は、特に限定されず、公知の方法により行われる。
【0216】
<エッチング工程>
エッチング工程においては、上記レジストパターンを介して上記硬化層がエッチングされる。
エッチング方法としては、特に限定されず、公知の方法により行えばよいが、例えば、ドライエッチングによる方法が挙げられる。
【0217】
<レジストパターンを剥離する工程>
本発明におけるカラーフィルタの製造方法の第二の態様は、上記エッチング工程後、レジストパターンを剥離する工程を更に含んでもよい。
レジストパターンの剥離方法としては、特に限定されず、公知の方法が用いられる。
【0218】
(固体撮像素子)
本発明の固体撮像素子は、上述した本発明の膜又は本発明のカラーフィルタを含む。本発明の固体撮像素子の構成としては、本発明の膜を含み、固体撮像素子として機能する構成であれば特に限定はないが、例えば、以下のような構成が挙げられる。
【0219】
基板上に、固体撮像素子(CCD(電荷結合素子)イメージセンサ、CMOS(相補型金属酸化膜半導体)イメージセンサ等)の受光エリアを構成する複数のフォトダイオード及びポリシリコン等からなる転送電極を有し、フォトダイオード及び転送電極上にフォトダイオードの受光部のみ開口した遮光膜を有し、遮光膜上に遮光膜全面及びフォトダイオード受光部を覆うように形成された窒化シリコン等からなるデバイス保護膜を有し、デバイス保護膜上に、カラーフィルタを有する構成である。更に、デバイス保護膜上であってカラーフィルタの下(基板に近い側)に集光手段(例えば、マイクロレンズ等。以下同じ)を有する構成や、カラーフィルタ上に集光手段を有する構成等であってもよい。また、カラーフィルタは、隔壁により例えば格子状に仕切られた空間に、各着色画素が埋め込まれた構造を有していてもよい。この場合の隔壁は各着色画素に対して低屈折率であることが好ましい。このような構造を有する撮像装置の例としては、特開2012-227478号公報、特開2014-179577号公報、国際公開第2018/043654号に記載の装置が挙げられる。本発明の固体撮像素子を備えた撮像装置は、デジタルカメラや、撮像機能を有する電子機器(携帯電話等)の他、車載カメラや監視カメラ用としても用いることができる。
【0220】
(画像表示装置)
本発明の画像表示装置は、上述した本発明の膜又は本発明のカラーフィルタを含む。画像表示装置としては、液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンス表示装置などが挙げられる。画像表示装置の定義や各画像表示装置の詳細については、例えば「電子ディスプレイデバイス(佐々木昭夫著、(株)工業調査会、1990年発行)」、「ディスプレイデバイス(伊吹順章著、産業図書(株)平成元年発行)」などに記載されている。また、液晶表示装置については、例えば「次世代液晶ディスプレイ技術(内田龍男編集、(株)工業調査会、1994年発行)」に記載されている。本発明が適用できる液晶表示装置に特に制限はなく、例えば、上記の「次世代液晶ディスプレイ技術」に記載されている色々な方式の液晶表示装置に適用できる。
【0221】
(高分子化合物)
本発明の高分子化合物は、上述の式(A1)で表される構成単位、及び、上述の式(B1)で表される構成単位の少なくとも一方を含む。
本発明の高分子化合物は、上述の本発明の硬化性組成物における特定樹脂と同様であり、好ましい態様も同様である。
【実施例0222】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0223】
<特定樹脂PA-1の合成>
三口フラスコに、モノマー2として濃度(固形分含有量)が50質量%の後述するマクロモノマーB-1溶液、モノマー1としてモノマーA-1、PGMEA(プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート)を導入し、混合物を得た。
窒素を吹き込みながら、上記混合物を撹拌した。次に、窒素をフラスコ内に流しながら、混合物を75℃まで昇温した。次に、混合物に、ドデシルメルカプタン(0.82g)、次いで、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸メチル)0.43g、以下「V-601」ともいう。)を添加し、重合反応を開始した。
混合物を75℃で2時間加熱した後、更にV-601(0.43g)を混合物に追加した。2時間後、更にV-601(0.43g)を混合物に追加した。
更に2時間反応後、混合物を90℃に昇温し、3時間撹拌した。上記操作により、重合反応は終了した。
反応終了後、空気下でアミン化合物としてジメチルドデシルアミン(F-1)と重合禁止剤として2,2,6,6,-テトラメチルピペリジン1-オキシル(Q-1、TEMPO)を加えた後、反応性化合物として4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(モノマーC-1)を滴下した。
滴下終了後、空気下、90℃、24時間反応を続けた後、酸価測定により反応終了を確認した。得られた混合物に30質量%溶液になるようPGMEAを追加することで樹脂PA-1を得た。
モノマーB-1(溶液中の固形分量)、モノマーA-1、モノマーC-1、F-1及びQ-1の使用量は、後述の表1に記載の通りとした。
得られた特定樹脂PA-1の重量平均分子量は17,200、酸価は70mgKOH/mgであった。
特定樹脂PA-1は、上述の条件1を満たす樹脂であり、また、上述の式(A1)で表される構成単位を有する樹脂である。
【0224】
-重量平均分子量の測定方法-
各マクロモノマー、及び、樹脂の重量平均分子量(Mw)は、下記測定条件の下、GPC(Gel permeation chromatography)測定により算出した。樹脂の重量平均分子量は表1又は表2に記載した。
装置:HLC-8220GPC(東ソー(株)製)
検出器:示差屈折計(RI検出器)
プレカラム TSKGUARDCOLUMN MP(XL)6mm×40mm(東ソー(株)製)
サンプル側カラム:以下4本を直結〔全て東ソー(株)製〕
TSK-GEL Multipore-HXL-M 7.8mm×300mm
リファレンス側カラム:サンプル側カラムに同じ
恒温槽温度:40℃
移動相:テトラヒドロフラン
サンプル側移動相流量:1.0mL/分
リファレンス側移動相流量:0.3mL/分
試料濃度:0.1質量%
試料注入量:100μL
データ採取時間:試料注入後16分~46分
サンプリングピッチ:300ms(ミリ秒)
【0225】
-酸価の測定方法-
また、各樹脂の酸価は水酸化ナトリウム水溶液を用いた中和滴定により求めた。具体的には、得られた樹脂を溶媒に溶解させた溶液に、電位差測定法を用いて水酸化ナトリウム水溶液で滴定し、樹脂の固形1gに含まれる酸のミリモル数を算出し、次に、その値を水酸化カリウム(KOH)の分子量56.1をかけることにより求めた。樹脂の酸価は表1又は表2の「酸価」の欄に記載した。表1又は表2中、酸価の単位は(mgKOH/g)である。
【0226】
-C=C価(エチレン性不飽和結合価)の測定方法-
下記方法により、各樹脂のC=C価を測定した。
アルカリ処理により特定樹脂からエチレン性不飽和基部位(例えば、上記特定樹脂の式D1により表される構成単位において、アクリロキシ基を有する場合は、アクリル酸)の低分子成分(a)を取り出し、その含有量を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定し、その測定値に基づいて下記式からエチレン性不飽和結合価(C=C価)を算出した。
具体的には、特定樹脂0.1gをテトラヒドロフラン/メタノール混合液(50mL/15mL)に溶解させ、4mol/L水酸化ナトリウム水溶液10mLを加え、40℃で2時間反応させた。反応液を4mol/Lメタンスルホン酸水溶液10.2mLで中和し、その後、イオン交換水5mLとメタノール2mLを加えた混合液を100mLメスフラスコに移液し、メタノールでメスアップすることでHPLC測定サンプルを調製し、以下の条件で測定する。なお、低分子成分(a)の含有量は別途作成した低分子成分(a)の検量線から算出し、エチレン性不飽和結合価は下記式より算出した。特定樹脂のC=C価は表1又は表2の「C=C価」の欄に記載した。表1又は表2中、C=C価の単位は(mmol/g)である。
【0227】
<<エチレン性不飽和結合価算出式>>
エチレン性不飽和結合価(mmol/g)=(低分子成分(a)含有量(ppm)/低分子成分(a)の分子量(g/mol))/(調液ポリマーの秤量値(g)×(ポリマー液の固形分濃度(%)/100)×10)
-HPLC測定条件-
測定機器: Agilent-1200(アジレント・テクノロジー(株)製)
カラム: Phenomenex社製 Synergi 4u Polar-RP 80A,250mm×4.60mm(内径)+ガードカラム
カラム温度:40℃
分析時間:15分
流速:1.0mL/min(最大送液圧力:182bar(18.2MPa))
注入量:5μl
検出波長:210nm
溶離液:テトラヒドロフラン(安定剤不含HPLC用)/バッファー溶液(リン酸0.2体積%及びトリエチルアミン0.2体積%を含有するイオン交換水溶液)=55/45(体積%)
なお、本明細書において、体積%は25℃における値である。
【0228】
-アミン価の測定方法-
試料約 0.5gを精密に量り、酢酸50mL を加えて溶かし、0.1 mol/L 過塩素酸酢酸溶液で電気滴定法(電位差滴定)電位差自動滴定装置(AT-710M;京都電子工業(株)製)を用い、により滴定した。また、同様の方法で空試験を行って補正した。
アミン価=a×5.611/c
a:0.1mol/L 過塩素酸の消費量(mL)
c:試料の量(g)
樹脂のアミン価は表1又は表2の「アミン価」の欄に記載した。表1又は表2中、アミン価の単位は(mmol/g)である。
【0229】
<特定樹脂PA-2~PA-25の合成>
使用するモノマー1、モノマー2、モノマー3、反応性化合物、アミン化合物、及び、重合禁止剤を表1に記載のものに変更した以外は、PA-1の合成方法と同様の方法によりPA-2~PA-22を合成した。モノマー3を添加する場合、モノマー3はモノマー1及びモノマー2の混合物に更に添加した。
表1中、「含有量」の欄に記載の数値の単位は「g」である。表1中、「-」と記載した成分は使用しなかった。
PA-2~PA-22は、上述の条件1を満たす樹脂であり、また、上述の式(A1)で表される構成単位を有する樹脂である。
表1中、「構成単位A1」の欄の記載は、上述の式(A1-1)~式(A1-17)のいずれかにより表される構成単位であって、各樹脂に含まれる構成単位を示している。
【0230】
<樹脂PZ-1の合成>
使用するモノマー1、モノマー2、モノマー3、反応性化合物、アミン化合物、及び、重合禁止剤を表1に記載のものに変更した以外は、PA-1の合成方法と同様の方法によりPZ-1を合成した。
樹脂PZ-1は、アミン化合物としてF-8を用いた為四級アンモニウムカチオン構造とラジカル重合性基が連結された構造を形成できず、上述の条件1及び条件2のいずれをも満たさない樹脂である。
【0231】
【表1】
【0232】
表1中に記載した各成分の詳細を以下に示す。
〔モノマー1〕
・A-1:アロニックスM-5300、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノアクリレート(東亞合成(株)製)
・A-2:ライトエステルHO-MS、2-メタクリロイロキシエチルコハク酸(共栄社化学製)
・A-3:ライトエステルHOA-HH、2-アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸(共栄社化学製)
・A-4:βCEA、β-カルボキシエチルアクリレート(ダイセル・オルネクス製)
・A-5:ビニル安息香酸(東京化成工業(株)製)
・A-6:CB-12-メタクリロイロキシエチルフタル酸(新中村化学工業(株)製)
・A-7:12-methacrylamidododecanoic acid(合成品、公知の方法により合成した。)
・A-8:4-(4-(acryloyloxy)butoxy)benzoic acid(合成品、公知の方法により合成した。)
・A-9:メタクリル酸
・A-10:ビニルスルホン酸(東京化成工業(株)製)
・A-11:ビニルホスホン酸(東京化成工業(株)製)
・A-12:10-(Phosphonooxy)decyl Methacrylate(富士フイルム和光純薬(株)製)
【0233】
〔モノマー2〕
・B-1:下記合成例B1による合成品
・B-2:下記合成例B2による合成品
・B-3:下記合成例B3による合成品
・B-4:ブレンマーPSE1300(日油(株)製)、ステアロキシポリエチレングリコールモノメタクリレート
・B-5:ブレンマー75ANEP-600(日油(株)製)ノニルフェノキシ(エチレングリコール-ポリプロピレングリコール)モノアクリレート
・B-6:ブレンマー50POEP800B(日油(株)製)オクトキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールモノメタクリレート
B-1~B-6の少なくとも1種の化合物をモノマー2として用いることにより、上述の式(D5)で表される構成単位が特定樹脂に導入される。
【0234】
-B-1の合成-
オキシアルキレンカルボニル基からなる構成単位を含有する、モノマー2であるマクロモノマーB-1(単に「B-1」ともいう。)の合成方法を以下に示す。
フラスコに、ε-カプロラクトン(1256.62部、環状化合物に該当する。)、及び、2-エチル-1-ヘキサノール(143.38部、開環重合開始剤に該当する。)を導入し、混合物を得た。次に、窒素を吹き込みながら、上記混合物を撹拌した。
次に、混合物にモノブチル錫オキシド(0.63部)を加え、得られた混合物を90℃に加熱した。6時間後、H-NMR(nuclear magnetic resonance)を用いて、混合物中における2-エチル-1-ヘキサノールに由来するシグナルが消失したのを確認後、混合物を110℃に加熱した。窒素下にて110℃で2時間重合反応を続けた後、H-NMRでε-カプロラクトンに由来するシグナルの消失を確認した後、80℃に降温し、上記化合物を含有する混合物に2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(0.78部)を添加した後、更に、得られた混合物に対して、2-メタクリロイロキシエチルイソシアネート(174.15部)を30分かけて滴下した。滴下終了から1時間後、H-NMRにて2-メタクリロイロキシエチルイソシアネート(MOI)に由来するシグナルが消失したのを確認後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)(1575.57部)を混合物に添加し、濃度が50質量%のマクロモノマーB-1溶液を得た。マクロモノマーB-1の構造は、H-NMRにより確認した。得られたマクロモノマーB-1の重量平均分子量は3,000であった。
【化42】
【0235】
-B-2の合成-
2-エチル-1-ヘキサノール(143.38g)を、ステアリルアルコール(297.88g)に変更した以外は、B-1の合成と同様にしてB-2を合成した。
B-2の構造(式(B-2)に示した)は、H-NMRにより確認した。得られたB-2の重量平均分子量は3,400であった。
【化43】
【0236】
-B-3の合成-
フラスコに、ε-カプロラクトン(243.45部、環状化合物に該当する。)、δ-バレロラクトン(60.86部、環状化合物に該当する。)、及び、2-エチル-1-ヘキサノール(35.69部、開環重合開始剤に該当する。)を導入し、混合物を得た。次に、窒素を吹き込みながら、上記混合物を撹拌した。
次に、混合物にモノブチル錫オキシド(0.156部)を加え、得られた混合物を90℃に加熱した。6時間後、H-NMR(nuclear magnetic resonance)を用いて、混合物中における2-エチル-1-ヘキサノールに由来するシグナルが消失したのを確認後、混合物を110℃に加熱した。窒素下にて110℃で12時間重合反応を続けた後、H-NMRでε-カプロラクトン及びδ-バレロラクトンに由来するシグナルの消失を確認した後、80℃に降温し、上記化合物を含有する混合物に2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(0.19部)を添加した後、更に、得られた混合物に対して、2-メタクリロイロキシエチルイソシアネート(42.52部)を30分かけて滴下した。滴下終了から1時間後、H-NMRにて2-メタクリロイロキシエチルイソシアネート(MOI)に由来するシグナルが消失したのを確認後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)(382.87部)を混合物に添加し、濃度が50質量%のマクロモノマーB-3溶液を得た。マクロモノマーB-3の構造は、H-NMRにより確認した。得られたマクロモノマーB-3の重量平均分子量は3,000であった。
【化44】
【0237】
〔モノマー3〕
・E-1:ベンジルメタクリレート(東京化成工業(株)製)
・E-3:2-エチルヘキシルメタクリレート(東京化成工業(株)製)
・E-4:アロニックスM120(東亞合成(株)製)2-(2-((2-ethylhexyl)oxy)ethoxy)ethyl acrylate
・E-5:メタクリル酸ジシクロペンタニル(東京化成工業(株)製)
・E-6:2-メトキシエチルアクリレート(東京化成工業(株)製)
・E-7:2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロリド(東京化成工業(株)製)
【0238】
〔反応性化合物〕
・C-1:4HBAGE、4-ヒドロキシブチル アクリレート グリシジルエーテル(日本化成工業(株)製)
・C-2:3,4-エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート((株)ダイセル製)
・C-3:グリシジルアクリレート(東京化成工業(株)製)
・C-4:9-(oxiran-2-yl)nonyl acrylate(下記合成品)
・C-5:3-(oxiran-2-ylmethoxy)-3-oxopropyl acrylate(下記合成品)
・C-6:2-methyl-2-(((oxiran-2-ylmethoxy)carbonyl)amino)propane-1,3-diyl diacrylate(下記合成品)
・C-7:GMA、グリシジルメタクリレート(東京化成工業(株)製)
・C-8:アリルグリシジルエーテル(東京化成工業(株)製)
・C-9:クロロメチルスチレン(東京化成工業(株)製)
【0239】
-C-4の合成-
10-ウンデセン-1-オール(東京化成工業(株)製) 200g、DMAc:ジメチルアセトアミド 1,378gを投入したフラスコを氷冷しながら3-クロロプロピオニルクロリド(東京化成工業(株)製) 153.65gを滴下し、1.5時間氷冷下で撹拌した。H-NMRにて原料アルコールの消失及び目的物を確認し、撹拌を止めた。酢酸エチル 2,000mlを加え、3.5質量%塩酸水溶液 2,000mlで2回水洗し、5質量%重曹水 2,000mlにて2回水洗し、有機層を硫酸マグネシウムにて乾燥し、溶媒を減圧留去することで中間体 296gを得た。その中間体 192gとジクロロメタン 918gを投入したフラスコに水浴下でメタクロロ過安息香酸:mCPBA 200gを1時間おきに5回分割添加し、終夜撹拌した。
H-NMRにて原料の末端ニ重結合のピークが消失したのを確認し、反応液に対し5質量%重曹水を 1,487g加え2時間撹拌した。その後、酢酸エチル 500mlを加え、抽出し、5質量%チオ硫酸ナトリウム水溶液 500mlを加え1時間撹拌し、水層を廃棄し、有機層を減圧濃縮することで中間体 211.5gを得た。
上記中間体 210g、塩化メチレン 822g、p-メトキシフェノール 182.3mgを加え氷冷下でジアザビシクロウンデセン 231gと塩化メチレン 441gの混合液を10℃以下を保持しながら滴下した。
H-NMRにて生成物を確認し、酢酸 91.1g、塩化メチレン 147gの混合液を10℃以下を保持しながら滴下し、室温にて2時間撹拌した。
塩化メチレンを減圧濃縮し、ヘキサンを1,050gを加え水 420gで水洗し、5質量%重曹水 420gにて水洗し、目的物であるC-4 137.9gを得た。
【0240】
-C-5の合成-
β-カルボキシエチルアクリレート 23.3g、p-メトキシフェノール 87mg、クロロホルム 117g、グリシドール 16.8g、N、N-ジメチルアミノピリジン 1.98gをフラスコに加え、氷冷下で1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩 37.26gを分割添加し、1時間撹拌した。その後、0.1規定(0.1mol/L)塩酸水 150mlで水洗した後、水 150mlで水洗し、有機層を減圧濃縮し、目的物であるC-5 20gを得た。
【0241】
-C-6の合成-
フラスコに、グリシドール(アルドリッチ製) 5.0g、酢酸ブチル 53g、p-メトキシフェノール 0.04g、カレンズBEI(昭和電工(株)製) 14.5g、ネオスタンU600(日東化成(株)製) 0.04gを加え、ゆっくりと60℃に昇温させた。60℃で4時間重合反応を続けた後、H-NMRでカレンズBEIに由来するシグナルの消失を確認し、水50gを加え撹拌させた。分液し水層を廃棄することにより得られた有機層を再度水50gで洗浄した。洗浄後の有機層に、硫酸マグネシウム3gを加え、ろ過した後、2,6-ジt-ブチル-4-メチルフェノール(0.4g)を加えて濃縮することでC-6を12g得た。
【0242】
〔アミン化合物〕
・F-1:ジメチルドデシルアミン(東京化成工業(株)製)
・F-2:ジメチルブチルアミン(東京化成工業(株)製)
・F-3:ジメチルベンジルアミン(東京化成工業(株)製)
・F-4:2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(東京化成工業(株)製)
・F-5:2-(ジメチルアミノメチル)フェノール
・F-6:N,N-ジメチルピペラジン(東京化成工業(株)製)
・F-7:トリエチルアミン(東京化成工業(株)製)
・F-8:TBAB(テトラブチルアンモニウムブロミド)(東京化成工業(株)製)
【0243】
〔重合禁止剤〕
・Q-1:TEMPO free radical:2,2,6,6,-テトラメチルピペリジン1-オキシル
・Q-2:4-hydroxy-TEMPO free radical:4-ヒドロキシ-2,2,6,6,-テトラメチルピペリジン2-オキシル
・Q-3:p-メトキシフェノール
【0244】
<特定樹脂PA-26の合成>
特開2007-277514号公報に記載の合成法にて得た連鎖移動剤CTA-1(下記構造)の20質量%溶液 36.25質量部、及びメタクリル酸 18質量部、メタクリル酸メチル 20質量部の混合溶液を、30質量%1-メトキシ-2-プロパノール溶液になるよう調製し、窒素気流下、75℃に加熱した。
これにアゾビスイソブチロニトリル(AIBN、和光純薬工業(株)製、開始剤) 0.5質量部を加えて3時間加熱後、再度AIBN 0.5部を加えて、窒素気流下、90℃で3時間反応させた。その後、室温(25℃、以下同様)まで冷却し空気に置換した後、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル 20質量部、ジメチルドデシルアミン 4.02質量部、TEMPO(2,2,6,6,-テトラメチルピペリジン1-オキシル) 0.023質量部を加え、90℃、36時間加熱撹拌した。
その後、室温まで冷却し、アセトンで希釈した。多量のメタノールを用いて再沈殿させた後、真空乾燥させることにより、高分子化合物PA-26:ポリスチレン換算の重量平均分子量18,600、酸価88.5mgKOH/g、C=C価1.44mmol/g、アミン価0.27mmol/gの固体(特定樹脂PA-26)65.1質量部を得た。
PA-26は、上述の条件1を満たす樹脂であり、上述の式(A1)で表される構成単位を有する樹脂である。
【0245】
【化45】
【0246】
<特定樹脂PA-27の合成>
特開2007-277514号公報に記載の合成法にて得た連鎖移動剤CTA-15(下記構造)の30質量%溶液24.17質量部、及びメタクリル酸 10質量部、メタクリル酸メチル 29.59質量部の混合溶液を、30質量%1-メトキシ-2-プロパノール溶液になるよう調製し、窒素気流下、75℃に加熱した。
これにV-601 0.5質量部を加えて3時間加熱後、再度V-601 0.5質量部を加えて、窒素気流下、90℃で3時間反応させた。その後、室温まで冷却し空気に置換した後、グリシジルメタクリレート 14.21質量部、ジメチルドデシルアミン 4質量部、TEMPO 0.023質量部を加え、90℃、36時間加熱撹拌した。
その後、室温まで冷却し、アセトンで希釈した。多量のメタノールを用いて再沈殿させた後、真空乾燥させることにより、高分子化合物PA-27:ポリスチレン換算の重量平均分子量13,800、酸価21mgKOH/g、C=C価1.54mmol/g、アミン価0.29mmol/gの固体51.5質量部を得た。
PA-27は、上述の条件1を満たす樹脂であり、上述の式(A1)で表される構成単位を有する樹脂である。
【0247】
【化46】
【0248】
<特定樹脂PB-2の合成>
三口フラスコに、モノマー2として濃度(固形分含有量)が50質量%のマクロモノマーB-1溶液、モノマー1としてω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノアクリレート、モノマー4としてアクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル、PGMEA 171gを導入し、混合物を得た。
窒素を吹き込みながら、上記混合物を撹拌した。次に、窒素をフラスコ内に流しながら、混合物を75℃まで昇温した。次に、混合物に、ドデシルメルカプタン 1.34g、次いで、V-601 0.7gを添加し、重合反応を開始した。混合物を75℃で2時間加熱した後、更にV-601 0.7gを混合物に追加した。2時間後、更にV-601 0.7gを混合物に追加した。
更に2時間反応後、混合物を90℃に昇温し、3時間撹拌した。上記操作により、重合反応は終了した。
反応終了後、空気下でTEMPO(Q-1)を加えた後、4-ヒドロキシブチル アクリレート グリシジルエーテル (C-1)を滴下した。
滴下終了後、空気下、90℃、24時間反応を続けた。得られた混合物に30質量%溶液になるようPGMEAを追加することで樹脂PB-2を得た。
モノマー2(溶液中の固形分量)、モノマー1、モノマー4、C-1、及びQ-1の使用量は、後述の表2に記載の通りとした。
得られた樹脂PB-2の重量平均分子量は17,800、酸価は75mgKOH/mg19,200、酸価は60mgKOH/mgであった。
特定樹脂PB-2は、上述の条件2を満たす樹脂であり、上述の式(B1)で表される構成単位を有する樹脂である。
【0249】
<特定樹脂PB-1、PB-3~PB-18の合成>
使用するモノマー1、モノマー2、モノマー3、モノマー4、反応性化合物、及び、重合禁止剤を表1に記載のものに変更した以外は、PA-1の合成方法と同様の方法によりPB-1、及び、PB-3~PB-18を合成した。モノマー3を添加する場合、モノマー3はモノマー1、モノマー2及びモノマー4の混合物に更に添加した。
表2中、「含有量」の欄に記載の数値の単位は「質量%」である。表2中、「-」と記載した成分は使用しなかった。
表2中、「構成単位B1」の欄の記載は、上述の式(B1-1)~式(B1-12)のいずれかにより表される構成単位であって、各樹脂に含まれる構成単位を示している。
PB-1、及び、PB-3~PB-18は、上述の条件2を満たす樹脂であり、また、上述の式(B1)で表される構成単位を有する樹脂である。
【0250】
<樹脂PZ-2の合成>
使用するモノマー1、モノマー2、モノマー3、モノマー4、反応性化合物、及び、重合禁止剤を表2に記載のものに変更した以外は、PB-2の合成方法と同様の方法によりPZ-2を合成した。
樹脂PZ-2は、モノマー4としてE-1、E-7を用いた為四級アンモニウムカチオン構造とラジカル重合性基が連結された構造を形成できず、上述の条件1及び条件2のいずれをも満たさない樹脂である。
【0251】
【表2】
【0252】
表2中に記載の成分のうち、上述した以外の成分について下記に示す。
【0253】
〔モノマー4〕
・D-1:アクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル(東京化成工業(株)製)
・D-2:メタクリル酸2-(ジエチルアミノ)エチル(東京化成工業(株)製)
・D-3:2-(((2-(dimethylamino)ethoxy)carbonyl)amino)ethyl acrylate(合成品、Bulletin of the Chemical Society of Japan, 2011, vol. 84, # 11, p. 1215 - 1226を参考に合成した。)
・D-4:N,N-dimethyl-1-(4-vinylphenyl)methanamine(合成品、Angewandte Chemie - International Edition, 2007, vol. 46, # 46, p. 8869 - 8871を参考に合成した。)
【0254】
<特定樹脂PB-19の合成>
特開2007-277514号公報に記載の合成法にて得た連鎖移動剤CTA-1(上記構造)の20質量%溶液 36.25質量部、及びメタクリル酸 12質量部、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル 5.46質量部、メタクリル酸メチル 14質量部の混合溶液を、30質量%1-メトキシ-2-プロパノール溶液になるよう調製し、窒素気流下、75℃に加熱した。
これにAIBN 0.5質量部を加えて3時間加熱後、再度AIBN 0.5質量部を加えて、窒素気流下、90℃で3時間反応させた。その後、室温(25℃、以下同様)まで冷却し空気に置換した後、4-ヒドロキシブチル アクリレート グリシジルエーテル 15質量部、TEMPO 0.023質量部を加え、90℃、36時間加熱撹拌した。
その後、室温まで冷却し、アセトンで希釈した。多量のメタノールを用いて再沈殿させた後、真空乾燥させることにより、高分子化合物PB-19:ポリスチレン換算の重量平均分子量14,600、酸価67.4mgKOH/g、C=C価1.39mmol/g、アミン価0.71mmol/gの固体(特定樹脂PB-19)62.9質量部を得た。
PB-19は、上述の条件2を満たす樹脂であり、上述の式(B1)で表される構成単位を有する樹脂である。
【0255】
<特定樹脂PB-20の合成>
特開2007-277514号公報に記載の合成法にて得た連鎖移動剤CTA-24(下記構造)の30質量%溶液 24.17質量部、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル 14.32質量部、及びメタクリル酸2-ヒドロキシエチル 6.51質量部の混合溶液に対し30質量%1-メトキシ-2-プロパノール溶液になるよう調製し、窒素気流下、75℃に加熱した。
これにV-601 0.5質量部を加えて3時間加熱後、再度V-601 0.5質量部を加えて、窒素気流下、90℃で3時間反応させた。その後、室温(25℃、以下同様)まで冷却し空気に置換した後、4-ヒドロキシブチル アクリレート グリシジルエーテル 20.02質量部、TEMPO 0.023質量部を加え、90℃、36時間加熱撹拌した。その後、室温まで冷却し空気に置換した後、昭和電工(株)製カレンズBEI 11.96質量部、日東化成社製ネオスタンU600 0.61質量部、TEMPO 0.023質量部を加え、90℃、36時間加熱撹拌した。
その後、室温まで冷却し、アセトンで希釈した。多量のメタノールを用いて再沈殿させた後、真空乾燥させることにより、高分子化合物PB-20:ポリスチレン換算の重量平均分子量19500、酸価12.5mgKOH/g、C=C価3.33mmol/g、アミン価1.67mmol/gの固体(特定樹脂PB-20)57.4質量部を得た。
PB-20は、上述の条件2を満たす樹脂であり、上述の式(B1)で表される構成単位を有する樹脂である。
【0256】
<顔料分散液の調製>
下記表3~表5記載の顔料、分散助剤(顔料誘導体)、樹脂、重合禁止剤、及び、溶剤を混合したのち、直径0.3mmのジルコニアビーズ230質量部を加えて、ペイントシェーカーを用いて5時間分散処理を行い、ビーズをろ過で分離して分散液を製造した。下記の表3~表5に記載の含有量を示す数値は質量部である。
また、例えば顔料分散液R-12における「樹脂」の「種類」欄のPA-12/P1=1/1等の記載は、樹脂として、PA-12と、P1とを1/1(質量比)の割合で使用し、その合計使用量が4.2質量部であることを示している。
また、表3~表5中、「-」の記載は該当する化合物を含有しないことを示している。
【0257】
【表3】
【0258】
【表4】
【0259】
【表5】
【0260】
上記表中の略語で示す素材の詳細は下記の通りである。
【0261】
〔顔料〕
・PR254:C.I.Pigment Red 254
・PR264:C.I.Pigment Red 264
・PR272:C.I.Pigment Red 272
・PY139:C.I.Pigment Yellow 139
・PY150:C.I.Pigment Yellow 150
・PB15:6:C.I.Pigment Blue 15:6
・PV23:C.I.Pigment Violet 23
・PG58:C.I.Pigment Green 58
・PG36:C.I.Pigment Green 36
・PY185:C.I.Pigment Yellow 185
・TiON:酸窒化チタン
・TiN:窒化チタン
・K1:下記構造の化合物
・K2:下記構造の化合物
【化47】
【0262】
〔分散助剤(顔料誘導体)〕
・B1~B3:下記構造の化合物
・K3~K4:下記構造の化合物
【化48】
【0263】
〔樹脂(特定樹脂)〕
・PA-1~PA-27:上記合成例における合成品
・PB-1~PB-20:上記合成例における合成品
・PZ-1~PZ-2:上記合成例における合成品
【0264】
〔重合禁止剤〕
・Q1:TEMPO free radical:2,2,6,6,-テトラメチルピペリジン1-オキシル
・Q2:4-hydroxy-TEMPO free radical:4-ヒドロキシ-2,2,6,6,-テトラメチルピペリジン2-オキシル
・Q3:p-メトキシフェノール
【0265】
〔溶剤〕
・J1:PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
・J2:シクロヘキサノン
・J3:シクロペンタノン
・J4:PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)
【0266】
(実施例1~76、比較例1~2)
各実施例及び比較例において、下記表6~表8に記載の原料を混合して硬化性組成物を調製した。
表6~表8中、「顔料分散液1」又は「顔料分散液2」の欄の「R-1」、「Y-1」等の記載は、上述した「顔料分散液R-1」、「顔料分散液Y-1」等を使用したことを意味している。
また、例えば「顔料分散液1」等の欄の「R-13/R-19=9/1」等の記載は、顔料分散液として「R-13」及び「R-19」を合計で44.8質量部を含有し、かつ、「R-13」及び「R-19」の含有質量比が9:1であること等を示している。
また、表6~表8中、「-」の記載は該当する化合物を含有しないことを示している。
【0267】
【表6】
【0268】
【表7】
【0269】
【表8】
【0270】
表6~表8中、上述した以外の略語で示す化合物の詳細は下記の通りである。
【0271】
〔その他の樹脂〕
・P1:下記構造の樹脂。主鎖に付記した数値はモル比である。Mw=11,000。
・P2:下記構造の樹脂。主鎖に付記した数値はモル比である。Mw=30,000。
【化49】
【0272】
〔光重合開始剤〕
・I1:IRGACURE OXE02(BASF社製)
・I2:IRGACURE OXE03(BASF社製)
・I3:IRGACURE OXE04(BASF社製)
・I4:下記式(I4)で表される構造の化合物
・I5:アデカアークルズNCI-831((株)ADEKA製)
・I6:IRGACURE 369(BASF社製)
【化50】
【0273】
〔重合性化合物〕
・M1:下記式(M)で表される化合物、a+b+c=3
・M2:下記式(M)で表される化合物、a+b+c=4
・M3:下記式(M)で表される化合物、a+b+c=5の化合物とa+b+c=6の化合物を1:3(質量比)で混合したもの
・M4:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)
・M5:下記式(M5)で表される化合物
・M6:下記式(M6)で表される化合物
【化51】
【0274】
〔界面活性剤〕
・H1:メガファックF-781F(DIC(株)製)
【0275】
<密着感度(密着性)評価>
各実施例又は比較例において得られた硬化性組成物を、それぞれ、予めヘキサメチルジシラザンを噴霧した8インチ(1インチは2.54cm)のシリコンウエハの上に、乾燥後膜厚が0.8μmになるようにスピンコーターを用いて塗布し、100℃で120秒間プリベークした。
塗布基板をi線ステッパー露光装置FPA-i5+(キヤノン(株)製)を使用して、塗布膜に365nmの波長で、1.1μm四方のアイランドパターンを有するマスクを通し、50~1,700mJ/cmの露光量でi線を照射した。露光後、アルカリ現像液CD-2000(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)を使用して、25℃、40秒間の条件で現像した。その後、流水で30秒間リンスした後、スプレー乾燥し、着色パターンを得た。
上記着色パターンは、硬化性組成物を用いて形成された膜に該当する。
得られた着色パターンについて、走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S-9220)を用いてパターン上方から観察し、パターンサイズ計測を行った。また光学顕微鏡を用いて密着性の評価を行った。全てのパターンが密着している時のパターンサイズを下記評価基準に従って5段階で評価した。評価結果は、表6~表8の「密着感度」の欄に記載した。
評価結果が5に近いほど、支持体との密着性に優れているといえる。評価結果は、3、4又は5が好ましく、4又は5がより好ましく、5が最も好ましい。
〔評価基準〕
5:パターンサイズが0.9μm以上1.0μm未満で密着している。
4:パターンサイズが1.0μm以上1.05μm未満で密着している。
3:パターンサイズが1.05μm以上1.1μm未満で密着している。
2:パターンサイズが1.1μm以上1.2μm未満で密着している。
1:パターンサイズが1.2μm以上でないと密着しない。
【0276】
<パターン形状の評価>
以下の方法により、各実施例又は比較例において得られた硬化性組成物を用いてそれぞれパターン状の硬化物を形成し、上記硬化物のエッジ形状(パターン形状)を評価した。
上記パターン状の硬化物は、硬化性組成物を用いて形成された膜に該当する。
【0277】
〔硬化性組成物層形成工程〕
シリコンウエハ上に、乾燥後の膜厚が0.9μmになるように、硬化性組成物層(組成物膜)を形成した。硬化性組成物層の形成は、スピンコートを用いて行った。上記膜厚となるよう、スピンコートの回転数を調整した。塗布後の硬化性組成物層を、シリコンウエハを下にしてホットプレート上に載置して乾燥した。ホットプレートの表面温度は100℃で、乾燥時間は、120秒間とした。
【0278】
〔露光工程〕
得られた硬化性組成物層を、以下の条件で露光した。
露光は、i線ステッパー(商品名「FPA-3000iS+」、キャノン社製)を用いて行った。硬化性組成物膜に対して、線形20μm(幅20μm、長さ4mm)を有するマスクを介して400mJ/cmの露光量(照射時間0.5秒)でi線を照射(露光)した。
【0279】
〔現像工程〕
硬化後の硬化性組成物層を、以下の条件により現像し、パターン状の硬化膜を得た。
硬化後の硬化性組成物層に対して、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)0.3質量%水溶液を用いて、23℃で、60秒間のパドル現像を5回繰り返し、パターン状の硬化物を得た。その後、パターン状の硬化物をスピンシャワーを用いてリンスし、更に純水で洗浄した。
【0280】
〔ポストベーク工程〕
上記で得られたパターン状の硬化物を、クリーンオーブンCLH-21CDH(光洋サーモ社製)を用いて220℃で300秒間加熱した。
更に、加熱後のパターン状の硬化物を、表面温度220℃のホットプレートに載置し、300秒間加熱した。
【0281】
〔評価〕
上記のパターン状の硬化物を走査型電子顕微鏡で撮影し、1.5μmパターン断面のエッジ形状を下記基準にて評価した。
図1に示すように、ウエハ4上に形成されたパターン状の硬化物1のパターンエッジ部2における底部の切れ込みの長さTを測定した。なお、図1において、Lは露光領域、Lは未露光領域に相当する。評価は以下の基準により行った。評価結果は、表6~表8の「パターン形状」の欄に記載した。
アンダーカット幅が小さいほど、パターン形状に優れるといえる。評価結果は、A又はAAであることが好ましく、AAであることがより好ましい。
-評価基準-
「AA」:アンダーカット幅(上記長さT)が0μmを超え、0.05μm以下だった。
「A」:アンダーカット幅が0.05μmを超え、0.15μm以下だった。
「B」:アンダーカット幅が0.15μmを超え、0.25μm以下だった。
「C」:アンダーカット幅が0.25μmを超えた。
【0282】
<保存安定性の評価>
〔1.硬化性組成物の露光感度(初期)〕
各実施例及び比較例において、それぞれ、調製直後の各硬化性組成物を、ガラス基板上にスピンコートを用いて塗布し、乾燥して膜厚1.0μmの硬化性組成物層を形成した。スピンコートの条件は、まず、回転数:300rpm(rotation per minute)で、5秒間、次いで、800rpmで20秒間とした。また、乾燥条件は100℃で80秒とした。
上記により得られた塗膜に対して、i線ステッパー露光装置FPA-3000i5+(Canon(株)製)を用いて、波長365nmの光を、1μmのラインアンドスペースを有するパターンマスクを通して10~1,600mJ/cmの露光量で照射し、露光した。次に、60%CD-2000(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ社製)現像液を使用して、露光後の硬化性組成物膜を、25℃、60秒間の条件で現像し、パターン状の硬化膜を得た。その後、パターン状の硬化膜を流水で20秒間リンスした後、エアー乾燥した。
上記パターン状の硬化膜は、硬化性組成物を用いて形成された膜に該当する。
上記露光において、光が照射された領域の現像後のパターン線幅が、1.0μm以上となる最小の露光量を露光感度とし、この露光感度を初期の露光感度とした。
【0283】
〔2.硬化性組成物の露光感度(経時後:45℃で30日間経過後)〕
調製直後の硬化性組成物を密閉容器に封入し、器内温度が45℃に設定された恒温器(EYELA/LTI-700)内に保持し、30日間経過後に取り出した。取り出した硬化性組成物を用いて、調製直後の硬化性組成物を用いて行ったのと同様の試験を行い、露光感度を求めた。これを経時後の露光感度とした。
【0284】
〔評価〕
初期の露光感度と、経時後の露光感度から、以下の式で求められる露光感度の変動率(%)を算出した。上記変動率(%)の値が小さいほど、硬化性組成物の保存安定性が優れていることを示す。
(式)変動率=[(経時後の露光感度-初期の露光感度)/初期の露光感度]×100
評価結果は、表6~表8の「保存安定性」の欄に記載した。評価結果は、3、4又は5が好ましく、4又は5がより好ましく、5が最も好ましい。
【0285】
-評価基準-
「5」:変動率が0%~3%だった。
「4」:変動率が3%を超え、6%以下だった。
「3」:変動率が6%を超え、10%以下だった。
「2」:変動率が10%を超え、15%以下だった。
「1」:変動率が15%を超えていた。
【0286】
<現像残渣(未露光部残渣)の評価>
上記の〔1.硬化性組成物の露光感度(初期)〕の試験において、上記現像後のパターン線幅が1.0μm以上となる最小の露光量で得られた硬化膜を、ガラス基板ごと220℃のオーブンで1時間加熱した。硬化膜を加熱した後、ガラス基板上の、露光工程において光が照射されなかった領域(未露光部)に存在する残渣の数をSEM(Scanning Electron Microscope、倍率:20,000倍)にて観察し、未露光部残渣を評価した。評価は以下の基準により行い、結果を表6~表8の「現像残渣」の欄に示した。
残渣の個数が少ないほど、現像残渣の発生が抑制されているといえる。評価結果は、3、4又は5が好ましく、4又は5がより好ましく、5が最も好ましい。
【0287】
-評価基準-
「5」:パターンが形成され、未露光部には、残渣が全く観察されなかった。
「4」:パターンが形成され、未露光部1.0μm四方に残渣が1~3個観察された。
「3」:パターンが形成され、未露光部1.0μm四方に残渣が4~10個観察された。
「2」:パターンが形成され、未露光部1.0μm四方に残渣が11個以上観察された。
「1」:現像不良でパターンが形成されなかった。
【0288】
<引き置き欠陥(欠陥)の評価>
各実施例及び比較例における硬化性組成物を、それぞれ乾燥後の膜厚が0.9μmになるようにスピンコート法でガラス基板上に塗布し、その後、ホットプレート上にて、硬化性組成物を塗布したガラス基板を100℃で2分間加熱して塗膜を得た。24時間後に、上述の「パターン形状の評価」と同じ条件で露光、現像、ポストベーク工程を経てパターン状の硬化物を得た。
このパターン状の硬化物を光学顕微鏡MT-3600LW(FLOVEL製)を用いて観察することにより、引き置き欠陥(異物発生の有無)を評価した。異物が少ないほど貯蔵安定性が良好であり、引き置き欠陥が抑制されているといえる。評価結果は、3、4又は5が好ましく、4又は5がより好ましく、5が最も好ましい。
【0289】
〔評価基準〕
「5」:パターン状の硬化物上に異物が認められない。
「4」:パターン状の硬化物上に認められる異物が5個未満である。
「3」:パターン状の硬化物上に認められる異物が5~10個である。
「2」:パターン状の硬化物上に認められる異物が11~50個である。
「1」:パターン状の硬化物上に認められる異物が51~100個である。
【0290】
(実施例77~78、比較例3~4)
各実施例及び比較例において、下記表9に記載の原料を混合して硬化性組成物を調製した。
表9中、「顔料分散液1」又は「顔料分散液2」の欄の「R-1」、「Y-1」等の記載は、上述した「顔料分散液R-1」、「顔料分散液Y-1」等を使用したことを意味している。
また、表9中、「-」の記載は該当する化合物を含有しないことを示している。
【0291】
【表9】
【0292】
<ガラス基板密着感度(密着性)評価>
〔下塗り層付ガラス基板の作製〕
ガラス基板(コーニング1737)を0.5質量%水酸化ナトリウム水溶液で超音波洗浄した後、水洗、脱水ベーク(200℃/20分)を行った。次いで、洗浄したガラス基板上に乾燥後の膜厚が0.1μmになるようにスピンコーターを用いてCT-4000(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)を塗布し、ホットプレートを用いて220℃で1時間加熱乾燥させて、下塗り層付ガラス基板を調製した。
【0293】
〔密着感度の評価〕
上記下塗り層付ガラス基板を用いた以外は、上述の「密着感度(密着性)評価」に記載の評価方法と同様の方法により評価した。評価結果は、表9の「ガラス基板密着感度」の欄に記載した。
【0294】
以上、実施例及び比較例に示されたように、実施例の硬化性組成物によれば、支持体との密着性に優れた膜が形成された。
比較例1における硬化性組成物は、条件1又は条件2の少なくとも一方を満たす樹脂を含まず、支持体との密着性に優れた膜が形成されなかった。
比較例2における硬化性組成物は、条件1又は条件2の少なくとも一方を満たす樹脂を含まず、支持体との密着性に優れた膜が形成されなかった。
【0295】
(実施例101~実施例164)
上記硬化性組成物と色が重複しないように、Green組成物、Blue組成物、Red組成物のうちのいずれか1つを製膜後の膜厚が1.0μmになるようにスピンコート法で塗布した。例えば、実施例1~50の硬化性組成物の色は、Redであり、実施例51~56の硬化性組成物の色は、Blueであり、実施例57~64の硬化性組成物の色は、Greenである。
実施例1~50のRed組成物、57~64のGreen組成物、又は、51~56のBlue組成物のいずれかと、上記組成物と色が重ならないように、後述のRed組成物、後述のGreen組成物、及び、後述のBlue組成物よりなる群から選ばれる2種の組成物と、の計3色の組成物(Red組成物、Green組成物、及び、Blue組成物、いずれか1色の組成物が実施例1~64の組成物である。)をそれぞれ準備した。
次いで、ホットプレートを用いて、100℃で2分間加熱した。次いで、i線ステッパー露光装置FPA-3000i5+(キヤノン(株)製)を用い、1,000mJ/cmで2μm四方のドットパターンのマスクを介して露光した。次いで、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)0.3質量%水溶液を用い、23℃で60秒間パドル現像を行った。その後、スピンシャワーにてリンスを行い、更に純水にて水洗した。次いで、ホットプレートを用いて、200℃で5分間加熱することで、Red組成物、Green組成物、及び、Blue組成物をそれぞれパターニングし、赤、緑及び青の着色パターン(Bayerパターン)を形成した。
なお、Bayerパターンとは、米国特許第3,971,065号明細書に開示されているような、一個の赤色(Red)素子と、二個の緑色(Green)素子と、一個の青色(Blue)素子とを有する色フィルタ素子の2×2アレイを繰り返したパターンである。
得られた固体撮像素子について、画像の取り込みを行い、画像性能を評価した。実施例1~実施例64で得られたいずれの組成物を使用した場合でも、低照度の環境下であっても画像をはっきりと認識できた。
【0296】
実施例101~実施例164で使用したRed組成物、Green組成物、Blue組成物、及び、赤外線透過フィルタ形成用組成物は、以下の通りである。
【0297】
-Red組成物-
下記成分を混合し、撹拌した後、孔径0.45μmのナイロン製フィルタ(日本ポール(株)製)でろ過して、Red組成物を調製した。
Red顔料分散液:51.7質量部
樹脂4(40質量%PGMEA溶液):0.6質量部
重合性化合物4:0.6質量部
光重合開始剤1:0.3質量部
界面活性剤1:4.2質量部
PGMEA:42.6質量部
【0298】
-Green組成物-
下記成分を混合し、撹拌した後、孔径0.45μmのナイロン製フィルタ(日本ポール(株)製)でろ過して、Green組成物を調製した。
Green顔料分散液:73.7質量部
樹脂4(40質量%PGMEA溶液):0.3質量部
重合性化合物1:1.2質量部
光重合開始剤1:0.6質量部
界面活性剤1:4.2質量部
紫外線吸収剤(UV-503、大東化学(株)製):0.5質量部
PGMEA:19.5質量部
【0299】
-Blue組成物-
下記成分を混合し、撹拌した後、孔径0.45μmのナイロン製フィルタ(日本ポール(株)製)でろ過して、Blue組成物を調製した。
Blue顔料分散液:44.9質量部
樹脂4(40質量%PGMEA溶液):2.1質量部
重合性化合物1:1.5質量部
重合性化合物4:0.7質量部
光重合開始剤1:0.8質量部
界面活性剤1:4.2質量部
PGMEA:45.8質量部
【0300】
-赤外線透過フィルタ形成用組成物-
下記組成における成分を混合し、撹拌した後、孔径0.45μmのナイロン製フィルタ(日本ポール(株)製)でろ過して、赤外線透過フィルタ形成用組成物を調製した。
【0301】
<組成100>
顔料分散液1-1:46.5質量部
顔料分散液1-2:37.1質量部
重合性化合物5:1.8質量部
樹脂4:1.1質量部
光重合開始剤2:0.9質量部
界面活性剤1:4.2質量部
重合禁止剤(p-メトキシフェノール):0.001質量部
シランカップリング剤:0.6質量部
PGMEA:7.8質量部
【0302】
<組成101>
顔料分散液2-1:1,000質量部
重合性化合物(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート):50質量部
樹脂:17質量部
光重合開始剤(1-[4-(フェニルチオ)]-1,2-オクタンジオン-2-(O-ベンゾイルオキシム)):10質量部
PGMEA:179質量部
アルカリ可溶性重合体FA-1:17質量部(固形分濃度35質量部)
【0303】
<アルカリ可溶性重合体FA-1の合成例>
反応容器に、ベンジルメタクリレート14部、N-フェニルマレイミド12部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート15部、スチレン10部及びメタクリル酸20部をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート200部に溶解し、更に2,2’-アゾイソブチロニトリル3部及びα-メチルスチレンダイマー5部を投入した。反応容器内を窒素パージ後、撹拌及び窒素バブリングしながら80℃で5時間加熱し、アルカリ可溶性重合体FA-1を含む溶液(固形分濃度35質量%)を得た。この重合体は、ポリスチレン換算の重量平均分子量が9,700、数平均分子量が5,700であり、Mw/Mnが1.70であった。
【0304】
<顔料分散液2-1>
C.I.ピグメントブラック32を60部、C.I.ピグメントブルー15:6を20部、C.I.ピグメントイエロー139を20部、日本ルーブリゾール(株)製のソルスパース76500を80部(固形分濃度50質量%)、アルカリ可溶性重合体F-1を含む溶液を120部(固形分濃度35質量%)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを700部混合し、ペイントシェーカーを用いて8時間分散し、着色剤分散液2-1を得た。
【0305】
Red組成物、Green組成物、Blue組成物、及び、赤外線透過フィルタ形成用組成物に使用した原料は、以下の通りである。
【0306】
・Red顔料分散液
C.I.Pigment Red 254を9.6質量部、C.I.Pigment Yellow 139を4.3質量部、分散剤(Disperbyk-161、BYKChemie社製)を6.8質量部、PGMEAを79.3質量部とからなる混合液を、ビーズミル(ジルコニアビーズ0.3mm径)により3時間混合及び分散して、顔料分散液を調製した。その後更に、減圧機構付き高圧分散機NANO-3000-10(日本ビーイーイー(株)製)を用いて、2,000kg/cmの圧力下で流量500g/minとして分散処理を行った。この分散処理を10回繰り返し、Red顔料分散液を得た。
【0307】
・Green顔料分散液
C.I.Pigment Green 36を6.4質量部、C.I.Pigment
Yellow 150を5.3質量部、分散剤(Disperbyk-161、BYKChemie社製)を5.2質量部、PGMEAを83.1質量部からなる混合液を、ビーズミル(ジルコニアビーズ0.3mm径)により3時間混合及び分散して、顔料分散液を調製した。その後更に、減圧機構付き高圧分散機NANO-3000-10(日本ビーイーイー(株)製)を用いて、2,000kg/cmの圧力下で流量500g/minとして分散処理を行った。この分散処理を10回繰り返し、Green顔料分散液を得た。
【0308】
・Blue顔料分散液
C.I.Pigment Blue 15:6を9.7質量部、C.I.Pigment Violet 23を2.4質量部、分散剤(Disperbyk-161、BYKChemie社製)を5.5部、PGMEAを82.4部からなる混合液を、ビーズミル(ジルコニアビーズ0.3mm径)により3時間混合及び分散して、顔料分散液を調製した。その後更に、減圧機構付き高圧分散機NANO-3000-10(日本ビーイーイー(株)製)を用いて、2,000kg/cmの圧力下で流量500g/minとして分散処理を行った。この分散処理を10回繰り返し、Blue顔料分散液を得た。
【0309】
・顔料分散液1-1
下記組成の混合液を、0.3mm径のジルコニアビーズを使用して、ビーズミル(減圧機構付き高圧分散機NANO-3000-10(日本ビーイーイー(株)製))で、3時間、混合、分散して、顔料分散液1-1を調製した。
・赤色顔料(C.I.Pigment Red 254)及び黄色顔料(C.I.Pigment Yellow 139)からなる混合顔料:11.8質量部
・樹脂(Disperbyk-111、BYKChemie社製):9.1質量部
・PGMEA:79.1質量部
【0310】
・顔料分散液1-2
下記組成の混合液を、0.3mm径のジルコニアビーズを使用して、ビーズミル(減圧機構付き高圧分散機NANO-3000-10(日本ビーイーイー(株)製))で、3時間、混合、分散して、顔料分散液1-2を調製した。
・青色顔料(C.I.Pigment Blue 15:6)及び紫色顔料(C.I.Pigment Violet 23)からなる混合顔料:12.6質量部
・樹脂(Disperbyk-111、BYKChemie社製):2.0質量部
・樹脂A:3.3質量部
・シクロヘキサノン:31.2質量部
・PGMEA:50.9質量部
【0311】
樹脂A:下記構造(Mw=14,000、各構成単位における比はモル比である。)
【0312】
【化52】
【0313】
・重合性化合物1:KAYARAD DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートとの混合物、日本化薬(株)製)
・重合性化合物4:下記構造
【0314】
【化53】
【0315】
・重合性化合物5:下記構造(左側化合物と右側化合物とのモル比が7:3の混合物)
【0316】
【化54】
【0317】
・樹脂4:下記構造(酸価:70mgKOH/g、Mw=11,000、各構成単位における比はモル比である。)
【0318】
【化55】
【0319】
・光重合開始剤1:IRGACURE-OXE01(1-[4-(フェニルチオ)]-1,2-オクタンジオン-2-(O-ベンゾイルオキシム)、BASF社製)
・光重合開始剤2:下記構造
【0320】
【化56】
【0321】
・界面活性剤1:下記混合物(Mw=14,000)の1質量%PGMEA溶液。下記の式中、構成単位の割合を示す%(62%及び38%)の単位は、質量%である。
【0322】
【化57】
【0323】
・シランカップリング剤:下記構造の化合物。以下の構造式中、Etはエチル基を表す。
【0324】
【化58】
【符号の説明】
【0325】
1:硬化物
2:硬化物のパターンエッジ部
4:支持体(ウエハ)
:露光領域
:未露光領域
T:硬化物のパターンエッジ部における底部の切れ込みの長さ
図1