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特開2023-56141セメント水和物含有物への二酸化炭素の固定化方法及び固定化システム
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  • 特開-セメント水和物含有物への二酸化炭素の固定化方法及び固定化システム 図1
  • 特開-セメント水和物含有物への二酸化炭素の固定化方法及び固定化システム 図2
  • 特開-セメント水和物含有物への二酸化炭素の固定化方法及び固定化システム 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056141
(43)【公開日】2023-04-19
(54)【発明の名称】セメント水和物含有物への二酸化炭素の固定化方法及び固定化システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/62 20060101AFI20230412BHJP
   B09B 3/70 20220101ALI20230412BHJP
   B09B 5/00 20060101ALI20230412BHJP
   B01D 53/81 20060101ALI20230412BHJP
【FI】
B01D53/62 ZAB
B09B3/00 304Z
B09B5/00 L
B01D53/81
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021165287
(22)【出願日】2021-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【弁理士】
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】大泉 理紗
(72)【発明者】
【氏名】小西 正芳
(72)【発明者】
【氏名】中村 丞吾
(72)【発明者】
【氏名】菊池 定人
【テーマコード(参考)】
4D002
4D004
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002BA01
4D002BA12
4D002CA07
4D002DA66
4D002EA06
4D004AA31
4D004AA33
4D004AB03
4D004AC05
4D004CA22
4D004CA34
4D004CA45
4D004CB31
4D004CC02
4D004CC03
4D004CC13
4D004DA06
4D004DA17
(57)【要約】
【課題】
セメント水和物含有物を用いて、燃焼排ガスなどに含まれる二酸化炭素を効率的に固定し、かつ、得られたセメント水和物含有物中の六価クロムの含有量を低減することでセメント水和物含有物からの六価クロムの溶出を低減した、セメント水和物含有物への二酸化炭素の固定化方法及び固定化システムを提供すること。
【解決手段】
セメント水和物含有物に120℃以上の温度の過熱水蒸気接触加熱を供給し、セメント水和物含有物を加熱すると共に、二酸化炭素を加え、該セメント水和物含有物に二酸化炭素を固定化することを特徴とする二酸化炭素の固定化方法及び固定化システムである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント水和物含有物に、120℃以上の温度の過熱水蒸気と接触加熱を行う過熱水蒸気処理工程と、
該過熱水蒸気処理工程中に二酸化炭素を加え、該セメント水和物含有物に該二酸化炭素を固定化することを特徴とする二酸化炭素の固定化方法。
【請求項2】
請求項1に記載の二酸化炭素の固定化方法において、該過熱水蒸気処理工程中に、還元性ガス、還元性物質もしくは有機物の少なくともいずれかを存在させ、処理後のセメント水和物含有物からの六価クロムの溶出を低減することを特徴とする二酸化炭素の固定化方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の二酸化炭素の固定化方法において、該セメント水和物含有物が、再生骨材、コンクリート又はモルタルからなる建材の廃材、セメントペースト物の廃材、または、レディーミクストコンクリートで発生するスラッジのいずれかであることを特徴とする二酸化炭素の固定化方法。
【請求項4】
セメント水和物含有物に、120℃以上の温度の過熱水蒸気と接触加熱を行う過熱水蒸気処理手段と、
該過熱水蒸気処理手段に二酸化炭素を供給し、該セメント水和物含有物に該二酸化炭素を固定化することを特徴とする二酸化炭素の固定化システム。
【請求項5】
請求項4に記載の二酸化炭素の固定化システムにおいて、該過熱水蒸気処理手段に、還元性ガス、還元性物質もしくは有機物の少なくともいずれかを供給し、処理後のセメント水和物含有物からの六価クロムの溶出を低減することを特徴とする二酸化炭素の固定化システム。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の二酸化炭素の固定化システムにおいて、該セメント水和物含有物が、再生骨材、コンクリート又はモルタルからなる建材の廃材、セメントペースト物の廃材、または、レディーミクストコンクリートで発生するスラッジのいずれかであることを特徴とする二酸化炭素の固定化システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント水和物含有物への二酸化炭素の固定化方法及び固定化システムに関し、特に、過熱水蒸気を用いたセメント水和物含有物への二酸化炭素の固定化方法及び固定化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
工場の排ガス等の二酸化炭素含有ガス中の二酸化炭素を固定化し、大気中への二酸化炭素の排出量を削減するため、種々の技術開発が行われている。
例えば、特許文献1には、組成としてCaOおよび/またはCa(OH)を含む固体粒子の集合体に、COを含む排ガスを接触させて、排ガス中のCOを固体粒子にCaCOとして固定することにより、排ガス中のCO濃度を低減させることを特徴とする排出炭酸ガスの削減方法が、開示されている。この方法によれば、工業プロセス等で発生した排ガス中のCOを効率的に吸収・除去して、COの大気中への排出量を削減することができる。
【0003】
特許文献2では、廃コンクリートを破砕して得た材料を集積し、水分供給して撹拌することで湿潤状態とし、該湿潤状態の材料に、排熱を伴う排気ガスを供給して前記材料を乾燥させ、再度水分供給・材料撹拌と排ガス供給とからなる交互工程を繰り返すことで、前記材料中に前記排気ガス中の二酸化炭素を固定化させることを特徴とする二酸化炭素の固定化方法が、記載されている。この方法によれば、排熱を伴う排ガス中の二酸化炭素の固定化を、廃コンクリートの再生砂を用いて実現することができる。
【0004】
特許文献3には、コンクリート構造物の表面に、水、セメント、混和材料、骨材を含有するコンクリート組成物を硬化して得られ、表層部に空隙を有し、該表層部において大気中の二酸化炭素を固定化する二酸化炭素固定化成型体を備えてなる二酸化炭素固定化コンクリート構造物が、記載されている。該構造物によれば、大気中の二酸化炭素を効果的に固定化することができる。
【0005】
特許文献4には、セメント質硬化体に、350℃以上の温度を有する二酸化炭素含有ガスを接触させて、前記二酸化炭素含有ガスに含まれている二酸化炭素を、前記セメント質硬化体に固定化する接触工程を含む二酸化炭素の固定化方法が記載されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1乃至4による二酸化炭素の固定化方法では、コンクリート中に含まれる六価クロムが、二酸化炭素の固定化処理後の処理物から容易に溶出し、環境汚染の原因となるという問題があった。このため処理物の処分自体が困難となっていた。
【0007】
一方、六価クロムを含有する土壌から、六価クロムの溶出を抑制する方法として、特許文献5には、六価クロムを含有する土壌を、還元雰囲気下において、200~600℃で加熱処理する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000-197810号公報
【特許文献2】特開2009-90198号公報
【特許文献3】特開2008-75391号公報
【特許文献4】特開2020-131074号公報
【特許文献5】特開2003-334532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、上述したような問題を解決し、セメント水和物含有物を用いて、燃焼排ガスなどに含まれる二酸化炭素を効率的に固定し、かつ、得られたセメント水和物含有物中の六価クロムの含有量を低減することでセメント水和物含有物からの六価クロムの溶出を低減した、セメント水和物含有物への二酸化炭素の固定化方法及び固定化システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明のセメント水和物含有物への二酸化炭素の固定化方法及び固定化システムは、以下の技術的特徴を有する。
(1) セメント水和物含有物に、120℃以上の温度の過熱水蒸気と接触加熱を行う過熱水蒸気処理工程と、該過熱水蒸気処理工程中に二酸化炭素を加え、該セメント水和物含有物に該二酸化炭素を固定化することを特徴とする二酸化炭素の固定化方法である。
【0011】
(2) 上記(1)に記載の二酸化炭素の固定化方法において、該過熱水蒸気処理工程中に、還元性ガス、還元性物質もしくは有機物の少なくともいずれかを存在させ、処理後のセメント水和物含有物からの六価クロムの溶出を低減することを特徴とする。
【0012】
(3) 上記(1)又は(2)に記載の二酸化炭素の固定化方法において、該セメント水和物含有物が、再生骨材、コンクリート又はモルタルからなる建材の廃材、セメントペースト物の廃材、または、レディーミクストコンクリートで発生するスラッジのいずれかであることを特徴とする。
【0013】
(4) セメント水和物含有物に、120℃以上の温度の過熱水蒸気と接触加熱を行う過熱水蒸気処理手段と、該過熱水蒸気処理手段に二酸化炭素を供給し、該セメント水和物含有物に該二酸化炭素を固定化することを特徴とする二酸化炭素の固定化システムである。
【0014】
(5) 上記(4)に記載の二酸化炭素の固定化システムにおいて、該過熱水蒸気処理手段に、還元性ガス、還元性物質もしくは有機物の少なくともいずれかを供給し、処理後のセメント水和物含有物からの六価クロムの溶出を低減することを特徴とする。
【0015】
(6) 上記(4)又は(5)に記載の二酸化炭素の固定化システムにおいて、該セメント水和物含有物が、再生骨材、コンクリート又はモルタルからなる建材の廃材、セメントペースト物の廃材、または、レディーミクストコンクリートで発生するスラッジのいずれかであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、二酸化炭素の固定化方法及び固定化システムにおいて、セメント水和物含有物に、120℃以上の温度の過熱水蒸気と接触加熱を行うと共に、該過熱水蒸気で加熱中に二酸化炭素を加え、該セメント水和物含有物に該二酸化炭素を固定化するため、効率的にセメント水和物含有物を加熱でき、炭酸化を促進することが可能となる。しかも、過熱水蒸気で処理炉内の酸素濃度を非常に低く保つことができ、還元性物質等を利用することで容易に還元状態に保持できる。これにより、本発明の二酸化炭素の固定化方法及び固定化システムで処理された処理物は、六価クロムの溶出量が抑制され、処理物のリサイクルなどの利用分野も拡大することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の二酸化炭素の固定化方法の概要を説明する図である。
図2】過熱水蒸気に二酸化炭素や還元ガスを混合する方法を説明する図である。
図3】本発明の二酸化炭素の固定化方法の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のセメント水和物含有物への二酸化炭素の固定化方法及び固定化システムについて、図面を参照しながら、好適例を用いて詳細に説明する。
本発明は、図1に示すように、セメント水和物含有物に120℃以上の温度の過熱水蒸気接触加熱を供給し、セメント水和物含有物を加熱すると共に、二酸化炭素を加え、該セメント水和物含有物に二酸化炭素を固定化することを特徴とする二酸化炭素の固定化方法及び固定化システムである。
【0019】
本発明では、効率的な加熱を行うため、熱ガスではなく、過熱水蒸気を用いる。過熱水蒸気は熱ガスと比較して、エネルギーを多く持っていることから効率的に加熱を行うことができる。
処理炉に供給する過熱水蒸気の温度は、120℃以上が必要であり、好適には200℃以上、さらに好適には300℃以上である。また、後述するのように、300℃以上、500℃以下では、高い二酸化炭素の固化率(固化量)が期待できる。さらに、過熱水蒸気の温度が高過ぎる場合には、六価クロムに再転化する反応も生じ、六価クロムの溶出量の抑制効果が低下すると共に、使用エネルギーの消費量も多くなる。このため、使用するエネルギーに対する処理効果(二酸化炭素の固化量や六価クロムに溶出量)を考慮し、700℃以下、好適には600℃以下、より好適には500℃以下とする。
【0020】
本発明では、過熱水蒸気を利用することから、加熱処理を行う処理炉内は酸素濃度を非常に低く保つことが可能であり、さらに、還元性物質を併用することで、処理対象物を容易に還元状態に保つことができ、処理物からの六価クロムの溶出量を効果的に抑制することも可能となる。
【0021】
ところで、過熱水蒸気を利用した場合において、処理炉内の酸素濃度が低くなることに加えて、廃コンクリートに含まれる高性能AE減水剤などの有機物を過熱水蒸気(無酸素状態)で加熱分解することで、還元性物質を生成することも可能である。このような場合には、還元性ガスを別途供給する必要はない。
【0022】
処理炉内の還元性物質として一酸化炭素を利用する場合には、一酸化炭素の濃度は、50ppm以上、好適には100ppm以上に設定する。
【0023】
本発明に使用するセメント水和物含有物としては、解体されたコンクリート塊、それらを細かく粉砕されたもの、またコンクリート塊から製造される再生骨材およびその微粉部分、生コン工場の水処理設備から排出される生コンスラッジ、木質セメント板、ALC廃材などセメントが利用され、その水和物が付着もしくは含まれる物質を対象とする。中でも、再生骨材、コンクリート又はモルタルからなる建材の廃材、セメントペースト物の廃材、または、レディーミクストコンクリートで発生するスラッジは、資材のコストや廃材の有効利用の観点からもより好ましい。
【0024】
本発明では、図1に示すように、処理炉内にセメント水和物含有物を直接投入することも可能であるが、図2に示すように、過熱水蒸気で加熱する前に、熱ガス(熱風)を利用して、予熱することも可能である。熱ガスとして、温度の高い排ガスなどが利用可能である。また、セメント水和物含有物を事前に加熱することで、過熱水蒸気での過熱を効率的に行うことも可能となる。
【0025】
さらに、図2に示すように、セメント水和物含有物を加熱炉で加熱乾燥させた後、すりもみや摩砕により粒径を細かくすることで、二酸化炭素を取り込み易く構成することが可能となる。また、骨材からモルタル等を剥がす効果も期待できる。さらに、過熱水蒸気で処理することで、骨材からモルタルがより一層剥がれ易くなる。処理炉から排出される処理物を粒径の大きさで分別し、例えば、粒径が1mm以下の微粉、1mm以上の再生骨材に分け、それぞれ異なる用途に利用することも可能である。また、分別する前に、処理物をすりもみや摩砕などの粉砕処理を行うことも可能である。
【0026】
過熱水蒸気を供給する処理炉には、図1に示すように、二酸化炭素や還元ガス等を個別に供給することも可能であるが、図3に示すように、過熱水蒸気に混ぜて二酸化炭素や還元ガス(CO)を供給することも可能である。
【0027】
一例として、蒸気ボイラーで水を水蒸気に変化させ、約120℃、約0.5MPaの飽和水蒸気を発生させる。これに二酸化炭素を混合し、過熱水蒸気発生装置を供給する。飽和水蒸気を過熱水蒸気にする方法は様々であるが、例えば、高周波電源から発生する高周波を用いて発熱体を誘導加熱する方法は、温度設定も細かく設定でき、構造も簡素化できるため好ましい。過熱水蒸気は120℃~1000℃の範囲で設定可能であり、処理炉の容量や処理されるセメント水和物含有物の処理量に応じて設定される。また、六価クロムの溶出量を十分に低下させるためには、過熱水蒸気の温度を300℃~500℃の範囲に設定することがより好ましい。
【0028】
本発明においては、過熱水蒸気で処理を行う際には、還元性ガス、還元性物質もしくは有機物の少なくともいずれかを存在させ、還元性雰囲気中で処理を行う。これにより、処理後のセメント水和物含有物からの六価クロムの溶出を低減することが可能となる。図3に示すように、過熱水蒸気発生装置と処理炉との間で、過熱水蒸気に還元性物質として一酸化炭素を供給し、処理炉に供給することも可能である。
【0029】
図1に示すように、処理炉では、過熱水蒸気のみの加熱で、十分に温度を保つことができない場合は、補助電熱ヒーターなどの加熱手段を併用することも可能である。
また、処理炉内の圧力を適切に維持するため、不要なガスは、粉塵や有害物質を除去した後、大気に放出される。
さらに、処理炉を連続的に稼働させるためには、例えば、特許文献5に示すような傾斜回転炉を用いることも可能である。
【0030】
本発明の二酸化炭素の固定化方法の効果を確認するため、以下の実験を行った。
(実験手順)
(1)水蒸気ボイラーで飽和水蒸気(0.2Mpa、120℃)100kg/hを発生し、過熱水蒸気発生装置に供給した。
(2)過熱水蒸気発生装置(野村技工社製、GE-100型、高周波電源出力20kw)を用いて、最高550℃の過熱水蒸気を発生させ、処理炉(内寸W400mm×H400mm×D400mm)に供給した。
(3)炉内の温度は、供給する過熱水蒸気の温度制御で行った。
(4)初期の温度低下をできるだけ早く設定温度に回復するため、電気ヒーターを補助的に用いた。
(5)サンプル(廃コンクリートから製造された路盤材RC10を使用)は、厚さ10mm程度に敷き詰め、処理炉内に設置した。
(6)二酸化炭素については、分圧が0-20%に制御できるように、流量計で調整した。
(7)一酸化炭素についても、濃度が0-200ppmになるように、流量計で調整した。
【0031】
上記の実験手順で処理された処理物について、以下の方法で分析を行った。
(分析方法)
(1)六価クロム溶出量は、環境省告示第46号法に準拠。
(2)含有炭酸カルシウム増加量
TG熱重量分析にて、500-850℃の重量変化を炭酸カルシウムと考える。
過熱水蒸気処理をする前と、後で、分析を行い、増加した量を求めた。乾燥状態の試料ベースに算出した。
具体的には、以下の式で算出した。
(式) 炭酸カルシウム増加量(%)=(Qb-Qa)/Qa×100
ここで、Qa及びQbの意味は以下のとおり。
Qa:単位サンプル量(105℃乾燥ベース)中の未処理のサンプルに含まれる炭酸カルシウム量
Qb:単位サンプル量(105℃乾燥ベース)中の処理後のサンプルに含まれる炭酸カルシウム量
【0032】
実験は、過熱水蒸気のみで二酸化炭素の固定化を行った場合(表1)と過熱水蒸気と還元性ガス(CO)とを組み合わせて二酸化炭素の固定化を行った場合(表2)で実施した。各実験の結果は以下のとおりである。なお、各実験における二酸化炭素供給時間は60分である。また、比較例として、過熱水蒸気を用いる代わりに電気ヒーターで加熱を行った。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
表1及び表2の結果から、比較例1と実施例3、又は比較例2と実施例7を参照すると、過熱水蒸気を利用した場合は、電気ヒーターで加熱した場合と比較し、同じ300℃でも約20倍以上の炭酸カルシム増加量が確認でき、過熱水蒸気を用いた方が二酸化炭素の固定化が効率よく行われていることが確認される。
【0036】
また、過熱水蒸気を利用することで、特に実施例3及び4を参照すると、300℃以上の過熱水蒸気を用いた場合には、処理物の六価クロムの溶出量が効果的に抑制されていることが理解される。これは、過熱水蒸気の利用で酸素供給量が減少したことに加え、廃コンクリートに含まれる有機物が、過熱水蒸気で加熱分解され、還元性物質が生成されたことが影響していると想定される。
【0037】
当然、実施例5乃至9に示すように、還元性物質(CO)を供給して処理することにより、六価クロムの溶出を効果的に抑制することが可能となる。しかも、300℃より低い温度であっても、六価クロムの溶出量を抑制していることが確認できる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上説明したように、本発明によれば、セメント水和物含有物を用いて、燃焼排ガスなどに含まれる二酸化炭素を効率的に固定し、かつ、得られたセメント水和物含有物中の六価クロムの含有量を低減することでセメント水和物含有物からの六価クロムの溶出を低減した、セメント水和物含有物への二酸化炭素の固定化方法及び固定化システムを提供することが可能となる。

図1
図2
図3