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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056258
(43)【公開日】2023-04-19
(54)【発明の名称】基準電圧源回路
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/822 20060101AFI20230412BHJP
   H01L 21/8222 20060101ALI20230412BHJP
【FI】
H01L27/04 B
H01L27/082 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021165506
(22)【出願日】2021-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小金 伴弘
【テーマコード(参考)】
5F038
5F082
【Fターム(参考)】
5F038BB04
5F038BB06
5F038BB07
5F038BB08
5F082AA19
5F082AA21
5F082BC13
5F082BC15
5F082FA01
5F082HA44
5F082HA47
5F082HA64
5F082HA67
5F082HB12
5F082HB13
5F082HB15
5F082HB16
5F082HB62
5F082HB65
(57)【要約】
【課題】性能評価等のために外部からケーブルを接続した場合においても安定的な動作を可能とする。
【解決手段】基準電源回路は、コレクタ及びベースがそれぞれ接地された第1PNPバイポーラトランジスタ及び第2PNPバイポーラトランジスタを備える。第1PNPバイポーラトランジスタのエミッタには、第3抵抗の一端が接続され、第3抵抗の他端と基準電圧出力端子との間には第1抵抗が接続される。第2PNPバイポーラトランジスタのエミッタと基準電圧出力端子との間には第2抵抗が接続される。差動増幅器の非反転入力端子は、第2PNPバイポーラトランジスタのエミッタに接続され、反転入力端子は第1抵抗及び第3抵抗の間に設けられたノードに接続され、出力端子が基準電圧出力端子に接続される。反転入力端子と基準電圧出力端子との間には第1容量が接続される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コレクタ及びベースがそれぞれ接地された第1PNPバイポーラトランジスタ及び第2PNPバイポーラトランジスタと、
前記第1PNPバイポーラトランジスタのエミッタに一端が接続された第3抵抗と、
前記第3抵抗の他端と基準電圧出力端子との間に接続された第1抵抗と、
前記第2PNPバイポーラトランジスタのエミッタと前記基準電圧出力端子との間に接続された第2抵抗と、
非反転入力端子が前記第2PNPバイポーラトランジスタのエミッタに接続され、反転入力端子が前記第1抵抗及び前記第3抵抗の間に設けられたノードに接続され、出力端子が前記基準電圧出力端子に接続された差動増幅器と、
前記反転入力端子と前記基準電圧出力端子との間に接続された第1容量と、
を備え、
前記第1のPNPバイポーラトランジスタと前記第2のPNPバイポーラトランジスタの正規化エミッタ面積比が、第1のPNPバイポーラトランジスタ:第2のPNPバイポーラトランジスタ=m:1(mは正の数)に設定される、基準電圧源回路。
【請求項2】
コレクタ及びベースがそれぞれ接地された第1PNPバイポーラトランジスタ及び第2PNPバイポーラトランジスタと、
前記第1PNPバイポーラトランジスタのエミッタに一端が接続された第3抵抗と、
前記第3抵抗の他端と基準電圧出力端子との間に接続された第1抵抗と、
前記第2PNPバイポーラトランジスタのエミッタと前記基準電圧出力端子との間に接続された第2抵抗と、
非反転入力端子が前記第2PNPバイポーラトランジスタのエミッタに接続され、反転入力端子が前記第1抵抗及び前記第3抵抗の間に設けられたノードに接続され、出力端子が前記基準電圧出力端子に接続された差動増幅器と、
前記非反転入力端子と接地点との間に接続された第2容量と、
を備え、
前記第1のPNPバイポーラトランジスタと前記第2のPNPバイポーラトランジスタの正規化エミッタ面積比が、第1のPNPバイポーラトランジスタ:第2のPNPバイポーラトランジスタ=m:1(mは正の数)に設定される、基準電圧源回路。
【請求項3】
コレクタ及びベースがそれぞれ接地された第1PNPバイポーラトランジスタ及び第2PNPバイポーラトランジスタと、
前記第1PNPバイポーラトランジスタのエミッタに一端が接続された第3抵抗と、
前記第3抵抗の他端と基準電圧出力端子との間に接続された第1抵抗と、
前記第2PNPバイポーラトランジスタのエミッタと前記基準電圧出力端子との間に接続された第2抵抗と、
非反転入力端子が前記第2PNPバイポーラトランジスタのエミッタに接続され、反転入力端子が前記第1抵抗及び前記第3抵抗の間に設けられたノードに接続され、出力端子が前記基準電圧出力端子に接続された差動増幅器と、
前記反転入力端子と前記基準電圧出力端子との間に接続された第1容量と、
前記非反転入力端子と接地点との間に接続された第2容量と、
を備え、
前記第1のPNPバイポーラトランジスタと前記第2のPNPバイポーラトランジスタの正規化エミッタ面積比が、第1のPNPバイポーラトランジスタ:第2のPNPバイポーラトランジスタ=m:1(mは正の数)に設定される、基準電圧源回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基準電圧源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばリニアレギュレータやDCDCコンバータ等の電源ICに搭載される集積回路で用いられるアナログ回路の一種として、基準電圧を負荷に供給するための基準電圧源回路が知られている(例えば非特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】浅田邦博・永田穣 監訳、P.R.グレイ/P.J.フルスト/S.H.レビス/R.G.メイヤー 共著、「システムLSIのためのアナログ集積回路設計技術(基礎編)(応用編)」培風館、2004年
【非特許文献2】KAREL E. KUIJK, “A precision reference voltage source,” IEEE Journal of Solid-State Circuits, vol.8, no. 3, pp.222-226, June.1973.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで図9は参考技術に係る基準電圧源回路1´の一例である。基準電圧源回路1´はバンドギャップリファレンス電圧源として構成され、コレクタ及びベースがそれぞれ接地された第1PNPバイポーラトランジスタQp1p、及び、第2PNPバイポーラトランジスタQp2pを備える。第1PNPバイポーラトランジスタQp1pのエミッタには、第3抵抗R3pの一端が接続される。第3抵抗R3pの他端には第1抵抗R1pの一端が接続される。第1抵抗R1pの他端には、第2抵抗R2pの一端が接続される。第2抵抗R2pの他端は、第2PNPバイポーラトランジスタQp2pのエミッタに接続される。
【0005】
基準電圧源回路1´は、差動増幅器AMPを有する。差動増幅器AMPの非反転入力端子は、第2PNPバイポーラトランジスタQp2pのエミッタに接続され、反転入力端子は第1抵抗R1pと第3抵抗R3pとの接続点のノードに接続され、出力端子は第1抵抗R1pと第2抵抗R2pとの接続点のノードに接続される。ここで差動増幅器AMPの非反転入力端子の電位をν2p、反転入力端子-の電位をν1p、電圧利得をA1pとすると、差動増幅器AMPの出力電圧VOpは、次式で表される。
【0006】
差動増幅器AMPの電圧利得A1pを十分に大きく設定すると、ν2p≒ν1pとみなすことができる。このとき第1PNPバイポーラトランジスタQp1pのエミッタベース間電圧をVEBQp1p、第2PNPバイポーラトランジスタのQp2pのエミッタベース間電圧VEBQp2pとすると、第3抵抗R3pに流れる電流IR3pは、次式で表される。
【0007】
一般的に、PNPバイポーラトランジスタのコレクタ電流、ベース電流、飽和電流、ベースコレクタ電流増幅率、正規化エミッタ面積比、及び、熱電圧はそれぞれICp、IBp、ISp、β、m、及び、Vと表され、コレクタ電流とエミッタベース間電圧VEBとの関係、及び、コレクタ電流とベース電流との関係は、ガンメル・プーンモデルの場合、次式で表される。
【0008】
ここで、第1PNPバイポーラトランジスタQp1pの正規化エミッタ面積比をm、第2PNPバイポーラトランジスタQp2pの正規化エミッタ面積比を1と仮定すると、図9に示す参考例では、第1抵抗R1p及び第2抵抗R2pが等しく設定された場合(すなわちR1p=R2p)、前述のようにν2p≒ν1pであることから、(3)式のべースエミッタ間電圧VEBを(2)式の電位VEBQp1p及び電位VEBQp2pにそれぞれ適用することにより、(2)式は次式のように変形される。
【0009】
そして第1抵抗R1pに発生する電圧と、第3抵抗R3pに発生する電圧と、電位VEBQp1pの和が出力電圧Vopであるから、(4)式を用いると出力電圧Vopは、次式で表される。
前述の非特許文献1および非特許文献2によれば、PNPバイポーラトランジスタのエミッタベース間電圧VEBの温度特性は負の傾きを持っていることが知見として判明しているため、(5)式より、第1項に示される第1PNPバイポーラトランジスタQp1pのエミッタベース間電圧VEBQp1の温度特性の負の傾きを、第2項の熱電圧Vの持つ正の温度特性で打ち消すことで、バンドギャップリファレンス電圧源では、出力電圧VOpを温度不感とした安定的な電圧出力が可能となる。
【0010】
上記構成を有する基準電圧源回路1´の場合、出力電圧VOpのバラつき要因は、(5)式の第1項に示される第1PNPバイポーラトランジスタQp1pのエミッタベース間電圧VEBQp1pのみである。このバラつきは、第3抵抗R3pをトリミングすることで調整可能である。第3抵抗R3pをトリミングすると(5)式の第2項が変化するが、これは前述した条件であるR1p=R2pを満たしつつ、第1抵抗R1p及び第2抵抗R2pをトリミングすることで元の値に戻すことが可能である。
【0011】
尚、(5)式の第2項は出力電圧VOpのバラつきの要因とはならない。なぜなら、R1p/R3pについては集積回路上では相対精度が良く、熱電圧Vは温度にのみ依存する定数であり、ln(m)は定数であるため、(5)式の第2項にはバラつき要因が無いためである。
【0012】
ここで基準電圧源回路1´の製造時に例えば出荷前検査等において、基準電圧源回路1´の性能を評価するために、測定装置をケーブルを介して接続する場合がある。例えば、性能評価に基づいて第3抵抗R3pを調整する際には、第1PNPバイポーラトランジスタQp1pのエミッタベース間電圧VEBQp1pを把握するために、第1PNPバイポーラトランジスタQp1pのエミッタ電位を計測する必要があり、また第3抵抗R3pの値を把握するために第3抵抗R3pの両端の電位を計測する必要がある。この場合、第1抵抗R1pと第3抵抗R3pとの間、及び、第1PNPバイポーラトランジスタのエミッタと第3抵抗R3pとの間には電圧をモニタリングするための端子がそれぞれ設けられ、これらの端子にケーブルを介して計測装置が接続される。このとき基準電圧源回路1´にはケーブルや計測装置に対応する容量成分Cp1p及びCp2pが付加される。これらの容量成分Cp1p及びCp2pは、基準電圧源回路1´を備える集積回路のサイズに対して、ケーブルが十分長いことから無視できない。
【0013】
図10図9に示す基準電圧源回路1´に容量成分Cp1p及びCp2pが付加された場合の回路図である。第1PNPバイポーラトランジスタQp1pの電圧電流変換率をgmQp1p、第2PNPバイポーラトランジスタQp2pの電圧電流変換率をgmQp2pとすると、図9に示す基準電圧源回路1´におけるループ利得は、次式で表される。
一方、容量成分Cp1p及びCp2pが付加された図10に示す基準電圧源回路1´におけるループ利得は、上記(6)式から次式のように変化する。
【0014】
(6)式及び(7)式を比較すると、基準電圧源回路1´に容量成分Cp1p及びCp2pが付加されることにより、(7)式に示すように、負帰還ループ表す第1項には、これらの容量成分と回路中の各抵抗成分とによって形成されるローパスフィルタの影響により位相遅れが生じてしまい回路が不安定になり、場合によっては発振が生じてしまうおそれがある。また、このように基準電圧源回路1´の安定性が低下すると、各接点における電位が通常時と調整時とで異なる値となってしまい、適切な性能評価が難しくなってしまう。
【0015】
本開示の少なくとも一実施形態は上述の事情に鑑みなされたものであり、性能評価等のために外部からケーブルを接続した場合においても安定的な動作が可能な基準電圧源回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(1)一態様に係る基準電圧源回路は、上記課題を解決するために、
コレクタ及びベースがそれぞれ接地された第1PNPバイポーラトランジスタ及び第2PNPバイポーラトランジスタと、
前記第1PNPバイポーラトランジスタのエミッタに一端が接続された第3抵抗と、
前記第3抵抗の他端と基準電圧出力端子との間に接続された第1抵抗と、
前記第2PNPバイポーラトランジスタのエミッタと前記基準電圧出力端子との間に接続された第2抵抗と、
非反転入力端子が前記第2PNPバイポーラトランジスタのエミッタに接続され、反転入力端子が前記第1抵抗及び前記第3抵抗の間に設けられたノードに接続され、出力端子が前記基準電圧出力端子に接続された差動増幅器と、
前記反転入力端子と前記基準電圧出力端子との間に接続された第1容量と、
を備え、
前記第1のPNPバイポーラトランジスタと前記第2のPNPバイポーラトランジスタの正規化エミッタ面積比が、第1のPNPバイポーラトランジスタ:第2のPNPバイポーラトランジスタ=m:1(mは正の数)に設定される。
【0017】
上記(1)の態様によれば、基準電圧源回路のうち反転入力端子と基準電源出力端子との間に第1容量が接続される。これにより、基準電源回路に含まれる負帰還ループを正帰還ループに対して相対的に強化することで、負帰還ループ側に性能評価のための測定用のケーブルや装置等を接続した場合であっても、回路動作が不安定になることを効果的に防止できる。
【0018】
(2)一態様に係る基準電圧源回路は、上記課題を解決するために、
コレクタ及びベースがそれぞれ接地された第1PNPバイポーラトランジスタ及び第2PNPバイポーラトランジスタと、
前記第1PNPバイポーラトランジスタのエミッタに一端が接続された第3抵抗と、
前記第3抵抗の他端と基準電圧出力端子との間に接続された第1抵抗と、
前記第2PNPバイポーラトランジスタのエミッタと前記基準電圧出力端子との間に接続された第2抵抗と、
非反転入力端子が前記第2PNPバイポーラトランジスタのエミッタに接続され、反転入力端子が前記第1抵抗及び前記第3抵抗の間に設けられたノードに接続され、出力端子が前記基準電圧出力端子に接続された差動増幅器と、
前記非反転入力端子と接地点との間に接続された第2容量と、
を備え、
前記第1のPNPバイポーラトランジスタと前記第2のPNPバイポーラトランジスタの正規化エミッタ面積比が、第1のPNPバイポーラトランジスタ:第2のPNPバイポーラトランジスタ=m:1(mは正の数)に設定される。
【0019】
上記(2)の態様によれば、基準電圧源回路のうち非反転入力端子と接地点との間に第2容量が接続される。これにより、基準電源回路に含まれる負帰還ループを正帰還ループに対して相対的に強化することで、負帰還ループ側に性能評価のための測定用のケーブルや装置等を接続した場合であっても、回路動作が不安定になることを効果的に防止できる。
【0020】
(3)一態様に係る基準電圧源回路は、上記課題を解決するために、
コレクタ及びベースがそれぞれ接地された第1PNPバイポーラトランジスタ及び第2PNPバイポーラトランジスタと、
前記第1PNPバイポーラトランジスタのエミッタに一端が接続された第3抵抗と、
前記第3抵抗の他端と基準電圧出力端子との間に接続された第1抵抗と、
前記第2PNPバイポーラトランジスタのエミッタと前記基準電圧出力端子との間に接続された第2抵抗と、
非反転入力端子が前記第2PNPバイポーラトランジスタのエミッタに接続され、反転入力端子が前記第1抵抗及び前記第3抵抗の間に設けられたノードに接続され、出力端子が前記基準電圧出力端子に接続された差動増幅器と、
前記反転入力端子と前記基準電圧出力端子との間に接続された第1容量と、
前記非反転入力端子と接地点との間に接続された第2容量と、
を備え、
前記第1のPNPバイポーラトランジスタと前記第2のPNPバイポーラトランジスタの正規化エミッタ面積比が、第1のPNPバイポーラトランジスタ:第2のPNPバイポーラトランジスタ=m:1(mは正の数)に設定される。
【0021】
上記(3)の態様によれば、上記(1)の態様が有する第1容量と、上記(2)の態様が有する第2容量との両方を有する。これにより、基準電源回路に含まれる負帰還ループを正帰還ループに対してより相対的に強化できる。その結果、負帰還ループ側に性能評価のための測定用のケーブルや装置等を接続した場合であっても、回路動作が不安定になることを、更に効果的に防止できる。
【発明の効果】
【0022】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、性能評価等のために外部からケーブルを接続した場合においても安定的な動作が可能な基準電圧源回路を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1実施形態に係る基準電圧源回路の回路図である。
図2図1に対して容量成分及びが付加された場合の回路図である。
図3】第2実施形態に係る基準電圧源回路の回路図である。
図4図3に対して容量成分及びが付加された場合の回路図である。
図5】第3実施形態に係る基準電圧源回路の回路図である。
図6図5に対して容量成分及びが付加された場合の回路図である。
図7図5の基準電圧源回路の振幅特性及び位相特性を図9の基準電圧源回路と比較して示す検証結果である。
図8図6の基準電圧源回路の振幅特性及び位相特性を図10の基準電圧源回路と比較して示す検証結果である。
図9】参考技術に係る基準電圧源回路の回路図である。
図10図9に対して容量成分が付加された場合の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0025】
図1は第1実施形態に係る基準電圧源回路1Aの回路図であり、図2図1に対して容量成分Cp1及びCp2が付加された場合の回路図である。基準電圧源回路1Aはバンドギャップリファレンス電圧源として構成され、コレクタ及びベースがそれぞれ接地された第1PNPバイポーラトランジスタQp1、及び、第2PNPバイポーラトランジスタQp2を備える。第1PNPバイポーラトランジスタQp1のエミッタには、第3抵抗Rの一端が接続される。第3抵抗Rの他端には第1抵抗Rの一端が接続される。第1抵抗Rの他端には、第2抵抗Rの一端が接続される。第2抵抗Rの他端は、第2PNPバイポーラトランジスタQp2のエミッタに接続される。
【0026】
基準電圧源回路1Aは、差動増幅器AMPを有する。図1に示すように、差動増幅器AMPの非反転入力端子は、第2PNPバイポーラトランジスタQp2のエミッタに接続され、反転入力端子は第1抵抗Rと第3抵抗Rとの接続点のノードに接続され、出力端子は第1抵抗Rと第2抵抗Rとの接続点のノードに接続される。基準電圧源回路1Aは、差動増幅器AMPの反転入力端子と基準電圧出力端子との間に接続された第1容量Cを備える。また基準電圧源回路1Aは、第1抵抗Rと第3抵抗Rとの接続点のノード、又は、第1PNPバイポーラトランジスタQp1のエミッタと第3抵抗Rとの接続点のノードに、電圧モニタリング用端子T1、T2が設けられる。図2では、これらの電圧モニタリング用端子T1、T2に対してケーブル(不図示)を介して電圧測定装置(不図示)が接続された場合に生じる容量成分Cp1及びCp2が示されている。
【0027】
このような構成を有する基準電圧源回路1Aは、差動増幅器AMPの出力端子から第1抵抗Rを介して反転入力端子に戻る負帰還ループLと、差動増幅器AMPの出力端子から第2抵抗Rを介して非反転入力端子に戻る正帰還ループLとを有する。このような基準電圧源回路1Aにおいて第1容量Cが付加されることで負帰還ループLのループ利得が増加し、負帰還ループLが正帰還ループLに対して相対的に強化される。これにより、負帰還ループL側に設けられた電圧モニタリング用端子T1、T2に性能評価のための測定用のケーブルや装置等を接続することで、容量成分Cp1及びCp2が生じた場合であっても、回路動作が不安定になることが防止され、安定的な動作が可能となる。
【0028】
図3は第2実施形態に係る基準電圧源回路1Bの回路図であり、図4図3に対して容量成分Cp1及びCp2が付加された場合の回路図である。尚、図3及び図4に示す基準電圧源回路1Bでは、前述の第1実施形態に係る基準電圧源回路1Aに対応する構成については共通の符号で示しており、特段の記載がない限りにおいて重複する説明は省略する。
【0029】
図3に示すように、基準電圧源回路1Bは、差動増幅器AMPの非反転入力端子と接地点との間に接続された第2容量Cを備える。また基準電圧源回路1Bは、第1抵抗Rと第3抵抗Rとの接続点のノード、又は、第1PNPバイポーラトランジスタQp1のエミッタと第3抵抗Rとの接続点のノードに、電圧モニタリング用端子T1、T2が設けられる。図4では、これらの電圧モニタリング用端子T1、T2に対してケーブル(不図示)を介して電圧測定装置(不図示)が接続された場合に生じる容量成分Cp1及びCp2が示されている。
【0030】
このような構成を有する基準電圧源回路1Bは、差動増幅器AMPの出力端子から第1抵抗Rを介して反転入力端子に戻る負帰還ループLと、差動増幅器AMPの出力端子から第2抵抗Rを介して非反転入力端子に戻る正帰還ループLとを有する。このような基準電圧源回路1Bにおいて第2容量Cが付加されることで正帰還ループLのループ利得が減少し、負帰還ループLが正帰還ループLに対して相対的に強化される。これにより、負帰還ループL側に設けられた電圧モニタリング用端子T1、T2に性能評価のための測定用のケーブルや装置等を接続することで、容量成分Cp1及びCp2が生じた場合であっても、回路動作が不安定になることが防止され、安定的な動作が可能となる。
【0031】
図5は第3実施形態に係る基準電圧源回路1Cの回路図であり、図6図5に対して容量成分Cp1及びCp2が付加された場合の回路図である。尚、図5及び図6に示す基準電圧源回路1Cでは、前述の第1実施形態に係る基準電圧源回路1A、及び、第2実施形態に係る基準電圧源回路1Bに対応する構成については共通の符号で示しており、特段の記載がない限りにおいて重複する説明は省略する。
【0032】
図5に示すように、基準電圧源回路1Cは、差動増幅器AMPの反転入力端子と基準電圧出力端子との間に接続された第1容量Cと、差動増幅器AMPの非反転入力端子と接地点との間に接続された第2容量Cと、を備える。また基準電圧源回路1Cは、第1抵抗Rと第3抵抗Rとの接続点のノード、又は、第1PNPバイポーラトランジスタQp1のエミッタと第3抵抗Rとの接続点のノードに、電圧モニタリング用端子T1、T2が設けられる。図6では、これらの電圧モニタリング用端子T1、T2に対してケーブル(不図示)を介して電圧測定装置(不図示)が接続された場合に生じる容量成分Cp1及びCp2が示されている。
【0033】
このような構成を有する基準電圧源回路1Cは、差動増幅器AMPの出力端子から第1抵抗Rを介して反転入力端子に戻る負帰還ループLと、差動増幅器AMPの出力端子から第2抵抗Rを介して非反転入力端子に戻る正帰還ループLとを有する。このような基準電圧源回路1Cにおいて第1容量C及び第2容量Cが付加されることで負帰還ループLのループ利得が増加しで正帰還ループLのループ利得が減少するため、負帰還ループLが正帰還ループLに対して相対的に強化される。これにより、負帰還ループL側に設けられた電圧モニタリング用端子T1、T2に性能評価のための測定用のケーブルや装置等を接続することで、容量成分Cp1及びCp2が生じた場合であっても、回路動作が不安定になることが防止され、前述の第1実施形態に係る基準電圧源回路1A、及び、第2実施形態に係る基準電圧源回路1Bよりも、更に安定的な動作が可能となる。
【0034】
ここで図5に示す回路におけるループ利得AL1、及び、図6に示す回路におけるループ利得AL2は、差動増幅器AMPの電圧利得をA、第1PNPバイポーラトランジスタQp1の電圧電流変換率をgmQp1、第2PNPバイポーラトランジスタQp2の電圧電流変換率をgmQp2とすると、それぞれ下記の式で表される。
ここで、a=Cp1p2+Cp2、b=Cp1mQp1+Cp1+Cp2+Cp2+CmQp1+C、c=RmQp1+RmQp1+1、d=Cp2、e=Cp2+CmQp1+C、f=1である。
【0035】
(8-1)及び(8-2)式によれば、図5に示す基準電圧源回路1Cのループ利得AL1は、負帰還ループLを表す第1項が周波数の増加に対して増加し、正帰還ループLを表す第2項は周波数の増加に対して減少するので、図9に示す参考技術よりも安定性に優れていることがわかる。また負帰還ループLを表す第1項の分子次数が(7)式に比べて1つ増え、且つ、分母の次数は2のまま変化していないため、位相余裕が最大で90°改善されていることが示されている。
【0036】
続いて図7図5の基準電圧源回路1Cの振幅特性及び位相特性を図9の基準電圧源回路1´と比較して示す検証結果であり、図8図6の基準電圧源回路1Cの振幅特性及び位相特性を図10の基準電圧源回路1´と比較して示す検証結果である。図7及び図8では、R1p=R=400kΩ、R2p=R=400kΩ、R2p=R=400kΩ、R3p=R=40kΩ、PNPバイポーラトランジスタQ1p1及びQp1の正規化エミッタ面積比を8、Cp1p=Cp1=100pF、Cp2p=Cp2=100pF、C=10pF、C=10pF、A1p=A=ADC/[(1-s/p)(1-s/p)]、ADC=107.7dB、p=2π×2.33Hz、p=2π×1.24MHzとした場合の検証結果を示している。
【0037】
まず図7によれば、図9の基準電圧源回路1´の位相余裕が87°@80kHzであり、図5の基準電圧源回路1Cにおける位相余裕が70°@1MHzであるため、どちらも安定であることが示されている。また図8によれば、図10の基準電圧源回路1´の位相余裕が-16.5°@50kHzであり不安定であるのに対して、図6の基準電圧源回路1Cの位相余裕が71.5°@50kHzであり、安定性を維持していることが示されている。このことから、容量成分Cp1及びCp2が付加された基準電圧源回路1Cは、容量成分Cp1p及びCp2pが付加された基準電圧源回路1´より安定性が優れていることが確認された。
【0038】
以上説明したように上記各実施形態によれば、基準電圧源回路1A~1Cは、第1容量C1又は第2容量C2の少なくとも一方を備えることにより、基準電源回路に含まれる負帰還ループを正帰還ループに対して相対的に強化することで、負帰還ループ側に性能評価のための測定用のケーブルや装置等を接続した場合であっても、回路動作が不安定になることを効果的に防止できる。
【符号の説明】
【0039】
1A,1B,1C(1´) 基準電圧源回路
AMP 差動増幅器
Cp1(Cp1p) 容量成分
Ln 負帰還ループ
Lp 正帰還ループ
Qp1(Q1p1) 第1バイポーラトランジスタ
Qp2(Qp2p) 第2バイポーラトランジスタ
R1(R1p) 第1抵抗
R2(R2p) 第2抵抗
R3(R3p) 第3抵抗
C1 第1容量
C2 第2容量

図1
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図10