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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005651
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】次亜塩素酸生成用錠剤
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/461 20230101AFI20230111BHJP
【FI】
C02F1/461 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021107699
(22)【出願日】2021-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩見 隆史
(72)【発明者】
【氏名】吉田 慶太郎
【テーマコード(参考)】
4D061
【Fターム(参考)】
4D061DA03
4D061DB10
4D061EA02
4D061ED12
(57)【要約】
【課題】次亜塩素酸の生成に使用可能であって、割れや欠けが抑制された、塩化ナトリウムと酸とを含有する錠剤等を提供する。
【解決手段】コハク酸、フマル酸、リンゴ酸及びアジピン酸からなる群より選択される少なくとも1種の有機酸ならびに塩化ナトリウムを含有する錠剤であって、水中での電気分解により次亜塩素酸を生成するために使用される次亜塩素酸生成用錠剤であり、10kNの圧力で直接打錠した場合に得られる錠剤の引張強度が0.5MPa以上である、錠剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コハク酸、フマル酸、リンゴ酸及びアジピン酸からなる群より選択される少なくとも1種の有機酸ならびに塩化ナトリウムを含有する錠剤であって、
水中での電気分解により次亜塩素酸を生成するために使用される次亜塩素酸生成用錠剤であり、
10kNの圧力で直接打錠した場合に得られる錠剤の引張強度が0.5MPa以上である、錠剤。
【請求項2】
更に、二酸化ケイ素、合成ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム及び合成ヒドロサルタイトからなる群より選択される少なくとも1種を2.4質量%以下で含有する、請求項1に記載の錠剤。
【請求項3】
更に、滑沢剤を含む、請求項1または2に記載の錠剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
次亜塩素酸生成用錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
次亜塩素酸水は、塩化ナトリウムを含有する水溶液を電気分解することにより得られることが知られており、細菌やウイルスに対する除菌、抗菌、また、消臭等を目的として、対象物へ塗布、噴霧等することにより使用されている(特許文献1及び2)。
【0003】
また、次亜塩素酸水は、例えば、強酸性次亜塩素酸水、弱酸性・微酸性次亜塩素酸水に分類できることが知られており、強酸性次亜塩素酸水では次亜塩素酸だけでなく塩素も発生することから、強酸性次亜塩素酸水よりも弱酸性・微酸性次亜塩素酸水において殺菌力が高いともいわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3227580号公報
【特許文献2】特許第5866743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような背景を鑑み、本発明者は、塩化ナトリウムと酸を組み合わせて、弱酸性・微酸性次亜塩素酸水(pH2.7~6.5)と称され得る次亜塩素酸水を製造することに着目した。また、次亜塩素酸水は、一般的には、塩化ナトリウムを含有する水溶液を電気分解槽に注ぎ入れて電気分解することによって用事調製されており、本発明者は、このように使用のたびに水溶液の計量が必要であるといった手間等を有することに着目した。
【0006】
このことから、本発明者は、次亜塩素酸の生成に使用可能な、塩化ナトリウムと酸とを含有する錠剤を製造することを試みたものの、錠剤に割れや欠けが生じることがあった。そこで、本開示は、次亜塩素酸の生成に使用可能であって、割れや欠けが抑制された、塩化ナトリウムと酸とを含有する錠剤を提供することを目的とする。
【0007】
また、従来、このように電気分解して生成された次亜塩素酸水は、その残量を把握しやすいように略透明なスプレー容器等に入れて使用されることもある。しかし、電気分解後に錠剤の溶け残りがあると見た目が悪い、経時的にスプレー等が目詰まりするといった問題があり、また、錠剤の溶け残りは、電気分解が効率よく行われないといった問題等にもつながる。また、スプレー容器以外の容器や装置においても、このような溶け残りは各種不具合の原因になり得るため好ましくない。そこで、本開示は、前述のように割れや欠けが抑制された錠剤であって、且つ、電気分解後の溶け残りが抑制された錠剤を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねたところ、塩化ナトリウムと特定の有機酸とを組み合わせることにより、割れや欠け生じ難い錠剤が得られることを見出した。また、このような錠剤において二酸化ケイ素等を含有させた場合にも、割れや欠け生じ難く、且つ、電気分解後の溶け残りが生じ難い錠剤が得られることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成されたものであり、例えば本開示は次の態様を包含する。
項1.コハク酸、フマル酸、リンゴ酸及びアジピン酸からなる群より選択される少なくとも1種の有機酸ならびに塩化ナトリウムを含有する錠剤であって、
水中での電気分解により次亜塩素酸を生成するために使用される次亜塩素酸生成用錠剤であり、
10kNの圧力で直接打錠した場合に得られる錠剤の引張強度が0.5MPa以上である、錠剤。
項2.更に、二酸化ケイ素、合成ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム及び合成ヒドロサルタイトからなる群より選択される少なくとも1種を2.4質量%以下で含有する、項1に記載の錠剤。
項3.更に、滑沢剤を含む、項1または2に記載の錠剤。
【発明の効果】
【0009】
水中での電気分解による次亜塩素酸の生成において使用できる、割れや欠けが抑制された、塩化ナトリウムと特定の有機酸とを含有する錠剤を提供することができる。割れや欠けが抑制され、且つ、水中での電気分解後の溶け残りが抑制された、塩化ナトリウムと特定の有機酸とを含有する錠剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に包含される実施形態について更に詳細に説明する。
【0011】
本開示は、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸及びアジピン酸からなる群より選択される少なくとも1種の有機酸ならびに塩化ナトリウムを含有する錠剤であって、水中での電気分解により次亜塩素酸を生成するために使用される次亜塩素酸生成用錠剤であり、10kNの圧力で直接打錠した場合に得られる錠剤の引張強度が0.5MPa以上である錠剤を包含する。
【0012】
コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、アジピン酸はいずれも公知の有機酸である。本開示の錠剤中、これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、塩化ナトリウムも従来公知の成分である。
【0013】
本開示の錠剤中、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸及びアジピン酸からなる群より選択される少なくとも1種の有機酸(以下、特定の有機酸と称する場合がある)や塩化ナトリウムの含有量は制限されず、前述の通り、10kNの圧力で直接打錠した場合に得られる錠剤の引張強度が0.5MPa以上となる範囲で適宜使用すればよい。この限りにおいて制限されないが、塩化ナトリウム1質量部あたり、該特定の有機酸が合計量で、好ましくは0.1~1.7質量部が例示され、より好ましくは0.2~1.5質量部、更に好ましくは0.3~1.2質量部が例示される。
【0014】
また、このように本開示の錠剤中、該特定の有機酸や塩化ナトリウムの含有量は制限されないが、錠剤中、塩化ナトリウムは、好ましくは35~95質量%が例示され、より好ましくは40~85質量%、更に好ましくは45~75質量%が例示される。
【0015】
また、このように該特定の有機酸と塩化ナトリウムの含有量は制限されないが、本開示の錠剤中、該特定の有機酸と塩化ナトリウムとの合計量は、好ましくは92~100質量%が例示され、より好ましくは95質量%以上、更に好ましくは97質量%以上が例示される。
【0016】
本開示の錠剤は、この限りにおいて制限されないが、二酸化ケイ素、合成ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、合成ヒドロサルタイトからなる群より選択される少なくとも1種を更に含有していてもよい。これらの成分は、例えば錠剤の成形性を向上させる目的で使用され、1種単独で使用してもよく2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの成分を含有する場合、錠剤中、これらの成分は任意の量で配合すればよく、本開示を制限するものではないが、水中で電気分解を行った後の錠剤の溶け残りを一層抑制する観点からは、錠剤中、これらの成分の含有量はその合計量で、好ましくは2.4質量%以下、より好ましくは0.01~2質量%、更に好ましくは0.1~1.8質量が例示される。
【0017】
また、本開示の錠剤は、本開示の効果を損なわない範囲で、更に滑沢剤を含有していてもよい。滑沢剤として、本開示を制限するものではないが、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル、タルク等が例示される。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。滑沢剤を含有する場合、滑沢剤は任意の量で配合すればよく、本開示を制限するものではないが、本開示の錠剤中、滑沢剤は好ましくは0質量%より多く3質量%以下、より好ましくは0.001~2質量%、更に好ましくは1質量%未満が例示される。なお、前述の二酸化ケイ素、合成ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、合成ヒドロサルタイトは滑沢剤として用いられることのある成分であるが、本開示においてこれらの成分は滑沢剤には含まれない。
【0018】
本開示の錠剤には、本開示の効果を妨げない範囲で、更に任意の他の成分を配合してもよい。該他の成分として、香料、着色料、結合剤、増量剤、崩壊剤、崩壊助剤、コーティング剤等が例示される。これらの他の成分は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよく、また、その含有量も適宜決定すればよい。
【0019】
本開示の錠剤は、従来公知の通常の手順に従い、前記特定の有機酸と塩化ナトリウムを、また、必要に応じて、前述の二酸化ケイ素等及び/または滑沢剤、更に必要に応じて任意の他の成分を混合して、得られた混合物を打錠することにより製造することができる。本開示において錠剤は、例えば造粒工程を経てから打錠してもよいが、造粒工程は行わなくてもよい。本開示において錠剤は、好ましくは前記成分を混合後、得られた混合物を直接打錠(直打法)して製造される。また、錠剤は、剤皮(コーティング)を施さない錠剤(素錠)であってもよく、必要に応じて剤皮を施した錠剤、例えばフィルムコーティング錠、ゼラチン被包錠、糖衣錠、二重錠、多層錠等であってもよい。
【0020】
本開示の錠剤の形状、大きさ等は、本開示の効果を妨げない限り制限されず、適宜決定される。例えば、形状として丸型(円柱型等)、楕円型、三角型、四角型等のあらゆる形状が挙げられる。錠剤1錠あたりの大きさの目安として、丸型の場合、好ましくは直径15mm以下、より好ましくは8~12mm程度、更に好ましくは9~12mm程度が例示され、厚み8mm以下、好ましくは3~6mm程度が例示される。形状が丸型でない場合も、例えば楕円型の場合は、その長径と短径との合計値を2で除した値が前記直径程度の値であるなど、前記値を目安とした大きさが例示される。錠剤1錠あたりの重さとして、200~600mg、好ましくは200~400mgが例示される。
【0021】
本開示の錠剤は、10kNの圧力で直接打錠した場合に得られる錠剤の引張強度が0.5MPa以上である。引張強度は、この限りにおいて制限されないが、好ましくは0.6MPa以上、より好ましくは0.8MPa、更に好ましくは1MPa以上が例示される。本開示の効果が得られる限り、引張強度の上限値は制限されないが、好ましくは4MPa以下、より好ましくは3MPa以下が例示される。この観点から、錠剤の引張強度として、より好ましくは0.5~4MPaが例示される。
【0022】
ここで錠剤の引張強度は次の手順に従い測定、算出した値である。10kNの圧力で直接打錠して製造して得た錠剤(円柱型)を、硬度計(ロードセル式錠剤硬度計PC-30型:岡田精工株式会社製)を用いて直径方向に圧裂破断して破断荷重を測定し、以下の式を用いて引張強度を算出する。
引張強度T.S.(MPa)=2P/(π×D×T)
P:破断荷重(N)、D:錠剤直径(mm)、t:錠剤厚み(mm)
【0023】
なお、錠剤が円柱型以外の形状である場合、それを円柱型とした場合に前記引張強度を満たすものであればよい。このような強度とすることにより、錠剤の割れや欠けを抑制することができる。錠剤においては、例えば輸送時の振動や複数錠を1つの容器内に纏めて収容するといった場合等に割れや欠けが生じることがあり、割れや欠けによって1錠あたりの成分所定量が減少してしまう。そうすると、割れ等が発生した錠剤を水中に投入しても所定成分量に満たないといった問題が生じたり、所望の次亜塩素酸が発生しないといった問題が生じたり、また、所定成分量を水中に投入するためにわざわざ計量が必要になるといった手間等が生じる。このことから、錠剤の割れや欠けを抑制することは、所望の次亜塩素酸を簡便に生成する上で重要である。
【0024】
また、本開示の錠剤は、この限りにおいて制限されないが、より好ましくは、水中での電気分解後に錠剤の溶け残りの発生が抑制されている。次亜塩素酸水は、その残量を把握しやすいように略透明なスプレー容器等に入れて使用されることがあり、電気分解後、錠剤の溶け残りがあると見た目が悪い、経時的にスプレー等が目詰まりするといった問題となる。また、錠剤の溶け残りは、電気分解が効率よく行われないといった問題等にもつながる。このため、溶け残りの発生が抑制された錠剤とすることにより、これらの問題を軽減、解消することができる。この観点から、前述の通り、本開示において、二酸化ケイ素、合成ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、合成ヒドロサルタイトからなる群より選択される少なくとも1種の含有量は0~2.4質量%とすることが好ましい。なお、本開示において次亜塩素酸水は、必ずしも略透明な容器に収容する必要はなく、任意の容器や装置を用いて適宜使用すればよい。ここで、略透明な容器とは、容器内に収容された次亜塩素酸水が容器外から目視で確認できる程度に透明な部分を有する容器を意味する。
【0025】
本開示の錠剤は、水中に錠剤を投入し、該水中での電気分解により次亜塩素酸を生成するために用いられる。従来、塩化ナトリウムを含有する水溶液を電気分解することにより次亜塩素酸が生成されており、水中での電気分解によって次亜塩素酸を生成する手順(条件含む)は公知である。このことから、本開示において、従来の水溶液に代えて、本開示の錠剤を水中に投入して電気分解を行う以外、電気分解して次亜塩素酸を生成する手順は公知の手順に従いえばよい。この限りにおいて電気分解に用いられる装置も制限されない。このことから、本開示において、電気分解後に錠剤の溶け残りの発生が抑制されているとは、このようにして得た製造直後の次亜塩素酸水において溶け残りが抑制されていることを意味する。なお、本開示において、溶け残りの発生が抑制されているかどうかは、後述の実施例に示す通り、電気分解装置に25℃の水1Lを入れ、錠剤1錠を投入後、電圧24V、電流2Aで15分間通電して電気分解を行い、得られた電気分解液において発生した気泡がなくなるのを目視で確認した時の溶液(次亜塩素酸水)において判断される。その判断基準は後述の実施例に従う。
【0026】
また、本開示の錠剤は、この限りにおいて制限されないが、前記条件(電気分解装置に25℃の水1Lを入れ、錠剤1錠を投入後、電圧24V、電流2Aで15分間通電して電気分解を行う)で得た次亜塩素酸水のpHが、25℃で、好ましくは2.7~6.5、より好ましくは4~6.5、更に好ましくは5~6.5が例示される。pHは、pHメーター(pH METER F-52:株式会社堀場製作所製)で測定される。
【0027】
錠剤が投入される水は、水道水、蒸留水、イオン交換水、RO水、Elix水等のいずれであってもよい。また、本開示の効果を妨げない範囲で、該水には、必要に応じて任意の成分を更に配合してもよく、例えば、銀イオン、銅イオン等が挙げられ、このような成分の存在下で、電気分解を行ってもよい。また、このような銀イオン等の成分は、本開示の錠剤を用いた電気分解後に得られた次亜塩素酸水に添加してもよい。これらは、例えば、次亜塩素酸水に起因する効果と、このような任意成分に起因する効果の両方を簡便に得るうえで有用である。
【0028】
本開示の錠剤の水中への投入量(使用量)は、この限りにおいて制限されず、投入する対象である水量、電気分解条件等に応じて適宜設定すればよく、一度に1錠を使用してもよく、例えば2~5錠というように必要に応じて複数錠を使用してもよい。この限りにおいて制限されないが、例えば、本開示の錠剤は、得られた次亜塩素酸水中の有効塩素濃度が、好ましくは35ppm以上、より好ましくは35~500ppm程度となるように使用される。本開示によれば、複数錠を一度に使用する場合であっても錠剤数を数えることによって簡単に次亜塩素酸水を製造することができる。
【0029】
本開示の錠剤では、塩化ナトリウム及び前記特定の有機酸を含有し、流通時等に生じやすい割れや欠けの発生を抑制できることから、これらの成分を使用のたびに計量するといった手間や計量ミス等を軽減することができ、より簡便に次亜塩素酸を生成することができる。また、本開示の錠剤が、溶け残りの発生が抑制されたものである場合には、更に、得られた次亜塩素酸水の見た目を向上することができ、また、スプレー容器等の容器や装置における目詰等の不具合の発生も抑制することができる。このことから、本開示によれば、電気分解による次亜塩素酸の生成において非常に使い勝手のよい錠剤を提供することができる。また、このことから、本開示の錠剤は、例えば1錠ずつ個包装してもよいが、複数錠を1つの容器内に纏めて収容してもよい。このようにして製造された次亜塩素酸水は、従来公知の次亜塩素酸水と同様に、対象物に塗布、噴霧等することにより使用することができる。
【実施例0030】
以下、例を示して本開示をより詳細に説明するが、本開示はこれらに限定されない。
試験例1
錠剤の製造
表1に従って各成分を量り取り、混合した。得られた混合物を、直径9mmの杵を用いて打錠圧10kNで直接打錠し、1錠あたり直径9mm、厚み4~4.5mm、重さ320mgの円柱型の錠剤を得た(n=5)。
【0031】
引張強度評価
このようにして得た錠剤の引張強度を次のようにして算出した。硬度計(ロードセル式錠剤硬度計PC-30型:岡田精工株式会社製)を用いて、錠剤を直径方向に圧裂破断して破断荷重を測定し、以下の式を用いて引張強度を算出した。
引張強度 T.S.(MPa)=2P/(π×D×T)
P:破断荷重(N)、D:錠剤直径(mm)、t:錠剤厚み(mm)
【0032】
このようにして算出した引張強度を、次の基準に従い評価した。
◎:0.7以上
○:0.5以上~0.7未満
×:0.5未満
【0033】
摩損度評価
前述のようにして得た錠剤における割れや欠けを評価するために、錠剤の摩損度を測定、算出した。実施例または比較例の各錠剤について合計質量が6.5gに近くなる錠数を試料とし、その質量を精密に測定した(試験前の錠剤質量)。これらの錠剤を摩損度試験機(TFT-1200:富山産業株式会社製)に投入し、100回転させた後、発生した錠剤表面の摩損物を取り除き、錠剤の質量を精密に測定した(試験後の錠剤質量)。摩損度は以下の式を用いて算出した。
摩損度(%)=(試験前の錠剤質量 - 試験後の錠剤質量)×100/試験前の錠剤質量
【0034】
溶液の透明性
電気分解装置に25℃の水道水1Lを入れ、錠剤1錠を投入後、電圧24V、電流2Aで15分間通電し、電気分解を行った。その後、得られた電気分解液において発生した気泡がなくなるのを確認した後、得られた電気分解液(次亜塩素酸水)中の濁り、溶液表面への不溶物の浮きの有無を目視で確認し、溶液の透明性を次の基準に従い評価した。
○:透明で濁りがない
△:静置状態では透明で濁りがないが、撹拌すると浮遊物が若干みられる
×:静置状態でも常に濁りがあって不透明
【0035】
電気分解液(次亜塩素酸水)のpHは、pHメーター(pH METER F-52:株式会社堀場製作所製)用いて、pH7、pH2、pH4、pH9の順に標準液を用いて「4点校正」を行った後に、25℃にて測定した。
【0036】
結果
結果を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
表1に示す通り、塩化ナトリウムにクエン酸を組み合わせた場合(比較例1)、引張強度が0.39MPaと低い値であり、所望の強度は得られなかった。また、クエン酸に代えて酒石酸を用いた場合(比較例2)も、クエン酸を用いた場合と同様に、引張強度が0.39MPaと低い値であり、所望の強度は得られなかった。これに対して、塩化ナトリウムにコハク酸、リンゴ酸、フマル酸またはアジピン酸を組み合わせた場合(実施例1~4)は、0.6MPa以上の引張強度が得られ、特にアジピン酸を組み合わせた場合は0.7MPa以上の引張強度が得られた。このように、塩化ナトリウムにコハク酸、リンゴ酸、フマル酸、アジピン酸を組み合わせた場合には、所望の引張強度を備えた錠剤が得られた。
【0039】
これらの錠剤の割れや欠けについて評価するために前述の通り摩損度を測定したところ、表1に示す通り、摩損度についても同様の傾向が認められ、塩化ナトリウムに、クエン酸または酒石酸を組み合わせた場合よりも、コハク酸、リンゴ酸、フマル酸またはアジピン酸を組み合わせた場合において、摩損度が低かった。このことから、コハク酸、リンゴ酸、フマル酸、アジピン酸を組み合わせることにより、所望の引張強度を備えた、輸送時等における割れや欠けが生じ難い錠剤を得ることができることが分かった。
【0040】
また、これらの錠剤を用いて製造した電気分解水の透明度はいずれも評価結果が〇であり、透明で濁りがなかった。このことから、塩化ナトリウムにコハク酸、リンゴ酸、フマル酸、アジピン酸を組み合わせた場合、割れ等の発生が抑制された錠剤であって、且つ、電気分解後の溶け残りが抑制された錠剤を得ることができることが分かった。
【0041】
試験例2
表2に従って各成分を量り取り、混合した。得られた混合物を、試験例1と同条件で打錠し、円柱型の錠剤を得た(n=5)。表2に示す通り、試験例2では、塩化ナトリウムと、コハク酸またはアジピン酸と共に、二酸化ケイ素、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム)を用いて錠剤を作製した。表中、各成分量は1錠あたりの量を示す。また、試験例1と同様にして、引張強度、摩損度、溶液の透明性を評価し、pHを測定した。
【0042】
結果
結果を表2に示す。
【0043】
【表2】
【0044】
実施例5~8に示す通り、塩化ナトリウム、コハク酸、アジピン酸に二酸化ケイ素を更に組み合わせた場合であっても所望の引張強度を備える錠剤が得られた。これらの錠剤においても摩損度は低く、割れや欠けが生じ難いことが分かった。また、溶液の透明度は、実施例7において評価が△であったが、実施例5、6及び8ではいずれも評価が〇であった。二酸化ケイ素と共に滑沢剤を更に組み合わせた実施例9においても、同様に、所望の引張強度、溶液の透明性を備える錠剤が得られた。試験例2の結果から、塩化ナトリウム、コハク酸等の有機酸に加えて二酸化ケイ素を用いた場合であっても、また、滑沢剤を用いた場合であっても、割れ等の発生が抑制された錠剤、また、割れ等の発生が抑制されており且つ電気分解後の溶け残りが抑制された錠剤が得られることが分かった。
【0045】
試験例3
表3に従って各成分を量り取り、混合した。得られた混合物を、試験例1と同条件で打錠し、錠剤を得た(n=5)。表3に示す通り、試験例3の実施例10及び11は、前記表2の実施例9において塩化ナトリウムとコハク酸の含有量を変えた以外は同様にして作製した錠剤であり、試験例3の実施例12~14は、前記表2の実施例9において二酸化ケイ素に代えて合成ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムまたはケイ酸マグネシウムを用いて作製した錠剤である。表中、各成分量は1錠あたりの量を示す。試験例1と同様にして、引張強度、摩損度、溶液の透明性を評価し、pHを測定した。
【0046】
結果
結果を表3に示す。
【0047】
【表3】
【0048】
表3の実施例10~14に示す通り、いずれにおいても所望の引張強度、摩損度、溶液の透明性を備える錠剤を製造できた。このことから、二酸化ケイ素に代えて前述の合成ケイ酸アルミニウム等を用いても、同様に所望の錠剤が得られることが分かった。
【0049】
処方例
本開示を制限するものではないが、本開示の錠剤の例を示す。表中、各成分量は1錠あたりの量を示す。いずれの錠剤においても、割れ等の発生が抑制されており、更には、割れ等の発生が抑制されており且つ電気分解後の溶け残りが抑制されている。
【0050】
【表4】
【0051】
【表5】