IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本放送協会の特許一覧

特開2023-56595多方向ROI設定装置およびMTF測定装置、ならびに、それらのプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056595
(43)【公開日】2023-04-20
(54)【発明の名称】多方向ROI設定装置およびMTF測定装置、ならびに、それらのプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01M 11/02 20060101AFI20230413BHJP
【FI】
G01M11/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021165896
(22)【出願日】2021-10-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】正岡 顕一郎
(57)【要約】
【課題】個別にROIを設定することなく、多方向のROIを設定することが可能な多方向ROI設定装置を提供する。
【解決手段】多方向ROI設定装置20は、多方向のROIを配置する基準となる円形状のホイールと、ホイールの円周上に多方向のROIを円周の中心に対して放射状に配置したROIとで構成されるROIホイールを、チャート画像に重畳して描画するROIホイール描画手段24と、操作信号に基づいて、ホイールの位置、大きさおよび形状、ならびに、多方向のROIすべてに共通した変形操作で、ROIホイール描画手段24に対してROIホイールを再描画させるROIホイール制御手段23と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
等角度間隔でコントラストの異なるエッジを有するチャートを撮像系で撮像したチャート画像に対して、前記エッジを跨いだ前記撮像系のMTFを測定する領域である多方向のROIを設定する多方向ROI設定装置であって、
前記多方向のROIを配置する基準となる円形状のホイールと、前記ホイールの円周上に前記多方向のROIを円周の中心に対して放射状に配置したROIとで構成されるROIホイールを、前記チャート画像に重畳して描画するROIホイール描画手段と、
操作信号に基づいて、前記ホイールの位置、大きさおよび形状、ならびに、前記多方向のROIに共通した変形操作で、前記ROIホイール描画手段に対して前記ROIホイールを再描画させるROIホイール制御手段と、
を備えることを特徴とする多方向ROI設定装置。
【請求項2】
前記ROIホイール制御手段は、前記ROIホイール描画手段が描画するホイールの中心位置を前記操作信号により更新して、前記ROIホイールを再描画させる移動手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の多方向ROI設定装置。
【請求項3】
前記ROIホイール制御手段は、前記ROIホイール描画手段が描画するホイールの中心で直交する第1軸および第2軸の傾き角度を、前記操作信号により更新して、前記ROIホイールを再描画させる回転手段を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の多方向ROI設定装置。
【請求項4】
前記ROIホイール制御手段は、前記ROIホイール描画手段が描画するROIの大きさおよび形状を、前記操作信号により更新して、前記ROIホイールを再描画させるROI変形手段を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の多方向ROI設定装置。
【請求項5】
前記ROI変形手段は、前記ホイールの中心に近い辺の前記ROIの長さを、前記操作信号により更新することを特徴とする請求項4に記載の多方向ROI設定装置。
【請求項6】
前記ROIホイール制御手段は、前記ROIホイール描画手段が描画するホイールの中心で直交する第1軸の半径および第2軸の半径を、前記操作信号により更新して、前記ROIホイールを再描画させるホイール変形手段を備えることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の多方向ROI設定装置。
【請求項7】
コンピュータを、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の多方向ROI設定装置として機能させるための多方向ROI設定プログラム。
【請求項8】
等角度間隔でコントラストの異なるエッジを有するチャートを用いて、前記エッジを跨いだ撮像系のMTFを測定する領域である多方向のROIで前記MTFを測定するMTF測定装置であって、
前記撮像系が前記チャートを撮像したチャート画像に対して、前記多方向のROIを設定する請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の多方向ROI設定装置と、
前記多方向ROI設定装置で設定された多方向のROIに対応する画像である方向別のROI画像を前記チャート画像から抽出する画像抽出手段と、
前記画像抽出手段で抽出した方向別のROI画像ごとに、前記MTFを算出する方向別MTF算出手段と、
を備えることを特徴とするMTF測定装置。
【請求項9】
コンピュータを、請求項8に記載のMTF測定装置として機能させるためのMTF測定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像系の解像度の空間周波数特性を表すMTF(Modulation Transfer Function)を測定するための多方向の関心領域(ROI:Region Of Interest)を設定する多方向ROI設定装置およびMTF測定装置、ならびに、それらのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エッジ応答を分析して、MTFを測定する手法(エッジ法)は、デジタルカメラ等の撮像系の解像度特性を評価するために広く用いられている。
エッジ法は、測定対象の撮像画像の水平垂直の正方グリッドのサンプリング位置に対して、2階調のエッジが取得された画像の関心領域(ROI)から超解像された1次元のエッジ拡がり関数(ESF:Edge Spread Function)のエッジ勾配を分析することによりMTFを算出する。
【0003】
MTFは画像の細かさを表す指標で、正弦波に対する変調度を空間周波数の関数で表したものである。空間周波数の単位はcycles/pixelであって、0.5cycles/pixelはナイキスト周波数、1cycle/pixelはサンプリング周波数を表す。なお、この単位の「pixel」は、実際のイメージセンサの物理的な画素ピッチではなく、出力信号の画像フォーマットで定義される水平垂直の正方グリッドのサンプリング間隔である。
【0004】
ISO12233には、デジタルカメラの解像度特性を測定する手法(以下、ISO法)が規定されている(非特許文献1参照)。
ISO法は、わずかに傾いた垂直方向に近い(nearV)エッジ、または、水平方向に近い(nearH)エッジを撮像し、MTFを測定したい部分のエッジを含む関心領域(ROI)を選定する。そして、ISO法は、エッジがnearVであれば水平の投影軸に配置されたビン配列に、エッジに平行な方向でROIの画素を投影(ビニング:binning)する。この投影軸のビン幅は、1画素に対してオーバーサンプリングされた幅で、ROIの1画素の幅の1/4,1/8といったサブピクセル幅である。
【0005】
そして、ISO法は、投影軸のビンに投影された画素の値を各ビンで平均化することで、エッジ広がり関数(ESF:Edge Spread Function)を求め、エッジ広がり関数を微分することで、線広がり関数(LSF:Line Spread Function)を求める。
そして、ISO法は、線広がり関数をフーリエ変換して絶対値をとり、直流(空間周波数“0”)で正規化することで、MTFを算出する。
なお、ISO法は、エッジがnearHであれば、ROIを90°回転させて、nearVと同様のアルゴリズムでMTFを算出する。
【0006】
カメラの画素構造や画像処理により解像度特性の異方性が考えられる場合、多方向のMTF測定が必要になる。そこで、従来は、図26に示すようなスターバーストのMTF測定用チャートCH用いて、多方向のMTFを測定する手法が提案されている(特許文献1,非特許文献2参照)。このMTF測定用チャートは、チャート中心から、コントラストの異なる色の領域が放射状に形成されたチャートである。例えば、図26のMTF測定用チャートCHは、エッジ(直線境界)が偶数個であり、コントラストの異なる領域が等分割角になっている。
【0007】
スターバーストのMTF測定用チャートCHを用いてMTFを測定する従来手法は、図27に示すように、MTF測定用チャートCHを所定の角度θ(例えば、3°等)だけ傾けて撮像し、放射方向のエッジごとに、撮像画像に関心領域ROI(R1,R2,…)を設定する。
このとき、従来手法は、1つのROI(R1)と中心位置Oとを設定し、中心位置Oに対して、機械的に等間隔に他のROI(R2,R3,…)を設定する。
そして、従来手法は、基準となるROI(R1)と同じ向きに、他のROI(R2,R3,…)を回転させ、それぞれのROIにおいて、関心領域の各画素を水平軸に投影し、オーバーサンプリングされたエッジ広がり関数を得てISO法と同様にMTFを求める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010-237177号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】ISO 12233:2017,“Photography - Electronic still picture imaging - Resolution and spatial frequency responses”
【非特許文献2】K. Masaoka, K. Arai and Y. Takiguchi:“Realtime Measurement of Ultrahigh-Definition Camera Modulation Transfer Function,” SMPTE Motion Imaging Journal,Vol.127,No.10,pp.14-22 (2018)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来手法のように、スターバーストのMTF測定用チャートにおいて、1つのROIに対して機械的に他のROIを設定すると、撮像画像に幾何学歪みある場合、アナモフィックレンズ等を用いて横方向にスケーリングして撮像した場合、あるいは、設定した中心位置がずれている場合、機械的に設定された複数のROIの一部が、適切にエッジを囲むことができないことがあるという問題がある。
また、マウス等を使って、人が手作業で複数のROIをそれぞれ設定することも可能であるが、非常に手間がかかるという問題がある。
【0011】
そこで、本発明は、多方向のMTFを測定するために、個別にROIを設定することなく、多方向のROIを設定することが可能な多方向ROI設定装置およびMTF測定装置、ならびに、それらのプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため、本発明に係る多方向ROI設定装置は、等角度間隔でコントラストの異なるエッジを有するチャートを撮像系で撮像したチャート画像に対して、前記エッジを跨いだ撮像系のMTFを測定する領域である多方向のROIを設定する多方向ROI設定装置であって、ROIホイール描画手段と、ROIホイール制御手段と、を備える構成とした。
【0013】
かかる構成において、多方向ROI設定装置は、ROIホイール描画手段によって、チャート画像に重畳してROIホイールを描画する。このROIホイールは、多方向のROIを配置する基準となる円形状のホイールと、ホイールの円周上に多方向のROIを円周の中心に対して放射状に配置したROIとで構成される。このROIホイールによって、操作者は、エッジに対して、ROIが正しく設定されているか否かを視覚的に確認することができる。
また、多方向ROI設定装置は、ROIホイール制御手段によって、操作者が操作するマウス、キーボード等の操作信号に基づいて、ホイールの位置、大きさおよび形状、ならびに、多方向のROIに共通した変形操作で、ROIホイール描画手段に対してROIホイールを再描画させる。この多方向のROIの変形操作は、1つの変形操作がすべてのROIに対して適用される。
【0014】
このように、ホイールの位置を操作可能とすることで、多方向ROI設定装置は、ホイールの中心を放射中心に設定することが可能になる。また、ホイールの大きさや形状を操作可能とすることで、多方向ROI設定装置は、ホイールの円周上に配置されるROIの位置を調整することが可能になり、操作者が所望する位置にROIを設定することが可能になる。
また、多方向のROIに共通した変形操作を可能とすることで、多方向ROI設定装置は、一度にROIの大きさや形状を変更することができ、個別にROIを設定する必要がない。
なお、多方向ROI設定装置は、コンピュータを、前記した各手段として機能させるための多方向ROI設定プログラムで動作させることができる。
【0015】
また、前記課題を解決するため、本発明に係るMTF測定装置は、等角度間隔でコントラストの異なるエッジを有するチャートを用いて、前記エッジを跨いだ撮像系のMTFを測定する領域である多方向のROIで前記MTFを測定するMTF測定装置であって、多方向ROI設定装置と、画像抽出手段と、方向別MTF算出手段と、を備える構成とした。
【0016】
かかる構成において、MTF測定装置は、多方向ROI設定装置によって、撮像系がチャートを撮像したチャート画像に対して、多方向のROIを設定する。
そして、MTF測定装置は、画像抽出手段によって、多方向ROI設定装置で設定された多方向のROIに対応する画像である方向別のROI画像をチャート画像から抽出する。
そして、MTF測定装置は、方向別MTF算出手段によって、画像抽出手段で抽出した方向別のROI画像ごとに、MTFを算出する。
なお、MTF測定装置は、コンピュータを、前記した各手段として機能させるためのMTF測定プログラムで動作させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、以下に示す優れた効果を奏するものである。
本発明によれば、多方向のROIを個別に設定することなく、1つの操作をすべてのROIに対して適用することができる。
また、本発明によれば、多方向のROIをROIホイールで提示するため、操作者は、ROIの位置や大きさを容易に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係るMTF測定装置の構成を示すブロック構成図である。
図2】本発明の実施形態に係る多方向ROI設定装置(多方向ROI設定手段)の構成を示すブロック構成図である。
図3】MTF測定用チャートの一例を示すパターン図である。
図4図3のMTF測定用チャートを所定角度傾けた状態を示す図である。
図5図4のMTF測定用チャートを撮像したチャート画像を示す図である。
図6】ROIホイールの構造を説明するための説明図である。
図7】多方向ROIを設定するための設定画面の一例を示す図である。
図8】ROIホイールの中心と、チャート画像の放射中心とがずれた状態を説明するための説明図である。
図9】ROIホイールの中心を、チャート画像の放射中心に合わせた状態を説明するための説明図である。
図10】ROIホイールの回転処理を説明するための説明図である。
図11】ROIの大きさ(幅)を変更する処理を説明するための説明図である。
図12】ROIの大きさ(高さ)を変更する処理を説明するための説明図である。
図13】ROIの形状を変更する処理を説明するための説明図である。
図14】ホイールの大きさを変更する処理を説明するための説明図である。
図15】ホイールの変形する処理を説明するための説明図である。
図16】ROIのエッジの傾きを説明するための説明図である。
図17】エッジプロファイルの生成手法を説明するための説明図である。
図18】MTFの測定結果を示すグラフである。
図19】MTFの測定結果を示す他のグラフ(レーダチャート)である。
図20】本発明の実施形態に係るMTF測定装置の動作を示すフローチャートである。
図21】本発明の実施形態に係る多方向ROI設定装置(多方向ROI設定)の動作を示すフローチャートである。
図22】他のMTF測定用チャートの一例を示すパターン図である。
図23図22のMTF測定用チャートの放射領域にROIホイールを適用した例を示す図である。
図24図22のMTF測定用チャートの同心円領域の等脚台形の脚にROIホイールを適用した例を示す図である。
図25図22のMTF測定用チャートの同心円領域の等脚台形の上底にROIホイールを適用した例を示す図である。
図26】MTF測定用チャートの一例を示すパターン図である。
図27】従来の多方向のROIを設定する手法を説明するため説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
[MTF測定装置の構成]
最初に、図1図2を参照して、本発明の実施形態に係る多方向ROI設定装置(多方向ROI設定手段)を備えたMTF測定装置の構成について説明する。
【0020】
MTF測定装置1は、等角度間隔でコントラストの異なるエッジを有するチャート(MTF測定用チャート)を用いて、エッジを跨いだ撮像系のMTFを測定する領域である多方向のROIでMTFを測定するものである。
ここでは、MTF測定装置1は、チャート画像記憶手段10と、多方向ROI設定手段20と、画像抽出手段30と、方向別MTF算出手段40と、測定結果出力手段50と、を備える。
ここでは、MTF測定装置1は、被測定対象となるレンズ、カメラ等の撮像系2と、MTF測定装置1を操作するユーザインタフェースを提供する表示装置3とを接続しているものとする。なお、ここでは、表示装置3に操作者の操作を操作信号として出力するキーボードKBおよびマウスMSを入力手段として備える構成とするが、この入力手段は、タッチパネル等、他の構成であっても構わない。
【0021】
チャート画像記憶手段10は、被測定対象の撮像系2で、MTF測定用チャートCHを撮像した画像(チャート画像)を記憶するものであって、半導体メモリ等の一般的な記憶装置である。
MTF測定用チャートCHは、等角度間隔でコントラストの異なるエッジを有する。例えば、MTF測定用チャートCHには、図3に示すように、チャート面の所定位置を中心位置として、当該中心位置から予め定めた等分割角で放射状に区分された放射領域ごとにコントラストの異なる色を配色したパターンを用いることができる。図3の例では、MTF測定用チャートCHは、分割角が22.5°で、放射状の16の方向にエッジが形成されている。なお、MTF測定用チャートCHは、等分割角でコントラストが放射状に区分されていれば、分割角、すなわち、エッジの数は任意である。
【0022】
また、このチャート画像記憶手段10に記憶されるチャート画像は、図4に示すように、MTF測定用チャートCHを、撮像系2により所定角度θだけ回転して撮像された、図5に示す画像(チャート画像IMG)である。この所定角度θは、ISO法で多様な位相を測定することが可能な角度として予め定められた数度程度(2°以上5°以下)の角度である。なお、このチャート画像IMGは、MTF測定用チャートCHを測定時に壁面に添付する際に予め所定角度θ分回転させて撮像したものであってもよいし、撮像系2を所定角度θ分回転させて撮像したものであってもよい。
【0023】
多方向ROI設定手段(多方向ROI設定装置)20は、MTF測定用チャートCHを撮像系2で撮像したチャート画像に対して、多方向のROIを設定するものある。
【0024】
ここで、図2を参照して、多方向ROI設定手段20の構成について説明する。ここでは、多方向ROI設定手段20は、ROIホイール情報記憶手段21と、設定画面制御手段22と、ROIホイール制御手段23と、ROIホイール描画手段24と、を備える。
【0025】
ROIホイール情報記憶手段21は、チャート画像に設定する放射状のROIの位置、大きさおよび形状を、視覚的に提示するROIホイールを特定するための情報を記憶するものであって、半導体メモリ等の一般的な記憶装置である。
図6に示すように、ROIホイールRWは、多方向のROIを配置する基準となる円形状のホイールWと、ホイールWの円周上に多方向のROIを円周の中心Oに対して放射状に配置した複数のROIとで構成された、ROIの位置、大きさおよび形状を設定するための指標である。
ホイールWは、ROIを配置する円(楕円を含む)の大きさを示す。
ROIは、ホイールWの円周状に配置され、設定するROIの位置、大きさおよび形状を示す。
【0026】
ROIホイール情報記憶手段21は、ROIホイールを特定する情報として、ホイールWの半径、傾きおよび中心位置と、ROIの数、大きさおよび形状とを記憶する。
ホイールWの半径は、図6に示すように、ホイールWの中心Oを通る垂直方向の第1軸Aにおける半径および第1軸Aと直交しホイールWの中心Oを通る第2軸Aにおける半径の2つとする。
ホイールWの傾きは、例えば、垂直方向に対する第1軸Aの傾きである。
ホイールWの中心位置は、チャート画像上の座標位置である。
また、ROIの大きさおよび形状は、多方向のROIすべてで同一とし、ホイールWの中心Oに近い辺の画素数、中心Oから遠い辺の画素数、および、中心Oに近い辺と中心Oから遠い辺との距離(画素数)とする。
【0027】
ROIホイール情報記憶手段21には、これらの情報を予め初期値として記憶しておく。なお、ROIの大きさおよび形状の初期値は、特定の大きさの長方形で、放射方向を長辺とする。また、ホイールWの半径の初期値は、第1軸Aにおける半径と第2軸Aにおける半径とを一致させ、ホイールWを円形状とし、傾きがないものとする。
ROIホイール情報記憶手段21は、後記するROIホイール制御手段23によって更新される。
【0028】
設定画面制御手段22は、チャート画像にROIホイールを重畳し、ROIを設定するための画面を制御するものである。
例えば、設定画面制御手段22は、図7に示すような、設定画面WDを表示装置3に表示する。
設定画面制御手段22は、チャート画像記憶手段10に記憶されているチャート画像IMGを設定画面WDに表示し、ROIホイール描画手段24を介して、ROIホイール情報記憶手段21に記憶されている情報で特定されるROIホイールRWをチャート画像IMG上に重畳させる。
【0029】
ここでは、ROIホイールRWを構成するROIを幅100ピクセル、高さ200ピクセルの長方形、ホイールWの半径を300ピクセル、ROIホイールRWの傾き角度を0°、ホイールWのアスペクト比(図6のAの長さ/Aの長さ)を1とした例を示している。
また、ここでは、設定画面制御手段22は、設定画面WD上にテキストボックスI,Iを表示する。そして、設定画面制御手段22は、キーボードKBを介して、テキストボックスI(または隣接するスピンボタン)でエッジ数を設定された場合、ROIの数を設定されたエッジ数として、ROIホイール情報記憶手段21を更新し、ROIホイール描画手段24によって、ROIホイールRWを再描画する。なお、エッジ数は、2の倍数とし、スピンボタンの押下によって、2ずつ増減されるものとする。
【0030】
また、設定画面制御手段22は、キーボードKBを介して、テキストボックスI(または隣接するスピンボタン)で半径を設定された場合、設定された半径を、図6に示す第1軸Aにおける半径および第2軸Aにおける半径として、ROIホイール情報記憶手段21を更新し、ROIホイール描画手段24によって、ROIホイールRWを再描画する。
【0031】
また、設定画面制御手段22は、設定画面WD上にリセットボタンBを表示し、リセットボタンBを押下されることで、ホイールWを円形状、ROIを長方形に初期化する。ここでは、設定画面制御手段22は、ROIホイール情報記憶手段21に記憶されているホイールWおよびROIの形状を初期化し、ROIホイール描画手段24によって、ROIホイールRWを再描画する。
【0032】
また、設定画面制御手段22は、マウスMSで終了ボタンBを押下された段階、あるいは、マウスMSのダブルクリックで、多方向のROIの設定処理を終了し、ROIホイール情報記憶手段21に記憶されているROIホイールRWで特定される個々のROIのチャート画像上の位置(4頂点の座標)を、例えば、12時方向に最も近いROIから時計回りの順にROI情報として画像抽出手段30に出力する。
なお、設定画面制御手段22は、ROI情報に、ホイールWのチャート画像IMG上の中心位置およびアスペクト比を加える。
また、設定画面制御手段22は、ボタンの押下および解放や、テキストボックス内でのキー入力以外のマウスMS、キーボードKBの押下情報やキーコード等の操作信号については、ROIホイール制御手段23に出力する。
【0033】
ROIホイール制御手段23は、操作信号に基づいて、ホイールのWの位置、大きさおよび形状、ならびに、多方向のROIに共通した変形操作で、ROIホイール描画手段24に対してROIホイールRWを再描画させるものである。ここでは、ROIホイール制御手段23は、移動手段230と、回転手段231と、変形手段232と、を備える。
【0034】
移動手段230は、ROIホイール描画手段24が描画するホイールWの中心位置を操作信号により更新して、ROIホイールRWを再描画させることで、ROIホイールRW全体の位置を移動させるものである。
移動手段230は、ROIホイール情報記憶手段21に記憶されているホイールWの中心位置を含む所定範囲の中心領域を、マウスMSでドラッグされることで、所定のサンプリング間隔でホイールWの中心位置を更新する。
移動手段230は、ホイールWの中心位置を更新後、ROIホイール描画手段24にROIホイールRWの再描画を指示する。
【0035】
例えば、図8に示すように、チャート画像IMG上に描画したROIホイールRWのホイールWの中心と、チャート画像IMGの放射の中心とがずれている場合、移動手段230は、ホイールWの中心領域CをマウスMSでドラッグされることで、ROIホイールRWをマウスMSの動きに応じて移動させる。
そして、図9に示すように、ROIホイールRWのホイールWの中心と、チャート画像IMGの放射の中心とが一致する位置で、マウスMSのボタンをリリースされることで、正しい位置にROIホイールRWが設定されることになる。
【0036】
回転手段231は、ROIホイール描画手段24が描画するホイールWの中心で直交する第1軸および第2軸の傾き角度を、操作信号により更新して、ROIホイールを再描画させることで、ROIホイールRWを、ホイールWの中心を基準に回転させるものである。
回転手段231は、キーボードKBから所定のキーを押下されたり、マウスMSのホイールを前後に操作されたりすることで、ROIホイール情報記憶手段21に記憶されているROIホイールRWの傾き角度を更新する。
【0037】
例えば、回転手段231は、キーボードKBから所定のキーとして右方向のカーソルキーのキーコードを入力した場合、時計回りの回転指示と判定し、1°傾き角度を加算する。また、回転手段231は、キーボードKBから所定のキーとして左方向のカーソルキーのキーコードを入力した場合、反時計回りの回転指示と判定し、1°傾き角度を減算する。
また、例えば、回転手段231は、マウスMSからホイールを後方(手前)に回す操作信号を入力した場合、時計回りの回転指示と判定し、ホイールの1ステップの動作に対して1°傾き角度を加算する。また、回転手段231は、マウスMSからホイールを前方(奥)に回す操作信号を入力した場合、反時計回りの回転指示と判定し、ホイールの1ステップの動作に対して1°傾き角度を減算する。
【0038】
回転手段231は、ROIホイールRWの傾き角度を更新後、ROIホイール描画手段24にROIホイールRWの再描画を指示する。
これによって、回転手段231は、1°刻みでROIホイールRWを回転させることができ、図10に示すように、ROIホイールRWを任意の角度(図10は9°の例)だけ回転させることができる。
【0039】
変形手段232は、ROIホイールRWを変形するものである。ここでは、変形手段232は、ROI変形手段232aと、ホイール変形手段232bと、を備える。
変形手段232は、ROIをマウスMSで選択された状態と、ホイールWをマウスMSで選択された状態とで、ROI変形手段232aおよびホイール変形手段232bの動作の切り替えを行う。なお、変形手段232は、ROIが選択された場合、ROIの色を濃くし、ホイールWが選択された場合、ホイールWの色を濃くして、選択状態を可視化してもよい。もちろん、「ROI選択中」、「ホイール選択中」等の文字列を画面上に表示することとしてもよい。
【0040】
ROI変形手段232aは、ROIホイール描画手段24が描画するROIの大きさおよび形状を、操作信号により更新して、ROIホイールを再描画させることで、ROIの大きさ、形状を変形するものである。
このROI変形手段232aは、1つのROIに対する変形処理を、すべてのROIに対して共通して適用する。ここでは、ROI変形手段232aは、1つのROIが選択された状態で、所定のキーコードを入力することで、すべてのROIの変形を行う。
【0041】
例えば、ROI変形手段232aは、キーボードKBから所定のキーとして、shift(シフト)キーの押下状態で、左方向のカーソルキーを押下されたキーコードを入力した場合、ROIの放射方向に対して垂直方向の大きさを増加させる。すなわち、ROI変形手段232aは、ROIのホイールWの中心に近い辺と中心から遠い辺の両辺の長さを増加させる。
また、ROI変形手段232aは、キーボードKBから所定のキーとして、shiftキーの押下状態で、右方向のカーソルキーを押下されたキーコードを入力した場合、ROIの放射方向に対して垂直方向の大きさを減少させる。すなわち、ROI変形手段232aは、ROIのホイールWの中心に近い辺と中心から遠い辺の両辺の長さ減少させる。
ROI変形手段232aは、ROIの大きさを増減後、ROIホイール描画手段24にROIホイールRWの再描画を指示する。
これによって、ROI変形手段232aは、図11に示すように、ROIの放射方向に対して垂直方向の大きさを任意の大きさに設定することができる。
【0042】
また、ROI変形手段232aは、キーボードKBから所定のキーとして、ctrl(コントロール)キーの押下状態で、左方向のカーソルキーを押下されたキーコードを入力した場合、ROIの放射方向の大きさを増加させる。すなわち、ROI変形手段232aは、ROIのホイールWの中心に近い辺と中心から遠い辺との距離を伸長させる。
また、ROI変形手段232aは、キーボードKBから所定のキーとして、ctrlキーの押下状態で、右方向のカーソルキーを押下されたキーコードを入力した場合、ROIの放射方向の大きさを減少させる。すなわち、ROI変形手段232aは、ROIのホイールWの中心に近い辺と中心から遠い辺との距離を短縮させる。
ROI変形手段232aは、ROIの大きさを増減後、ROIホイール描画手段24にROIホイールRWの再描画を指示する。
これによって、ROI変形手段232aは、図12に示すように、ROIの放射方向の大きさを任意の大きさに設定することができる。
【0043】
また、ROI変形手段232aは、キーボードKBから所定のキーとして、ctrlキーおよびshiftキーの押下状態で、左方向のカーソルキーを押下されたキーコードを入力した場合、ROIのホイールWの中心に近い辺の長さを増加させる。
また、ROI変形手段232aは、キーボードKBから所定のキーとして、ctrlキーおよびshiftキーの押下状態で、右方向のカーソルキーを押下されたキーコードを入力した場合、ROIのホイールWの中心に近い辺の長さを減少させる。
ROI変形手段232aは、ROIのホイールWの中心に近い辺の長さを増減後、ROIホイール描画手段24にROIホイールRWの再描画を指示する。
これによって、ROI変形手段232aは、図13に示すように、ROIのホイールWの中心に近い辺の長さを任意の大きさに設定することができる。
【0044】
ホイール変形手段232bは、ROIホイール描画手段24が描画するホイールWの中心で直交する第1軸の半径および第2軸の半径を、操作信号により更新して、ROIホイールを再描画させることで、ホイールWの大きさ、形状を変形するものである。
ここでは、ホイール変形手段232bは、ホイールWが選択された状態で、所定のキーコードを入力することで、ホイールWの変形を行う。
【0045】
例えば、ホイール変形手段232bは、キーボードKBから所定のキーとして、ctrlキーの押下状態で、左方向のカーソルキーを押下されたキーコードを入力した場合、ホイールWの半径(第1軸の半径および第2軸の半径)を増加させる。
また、ホイール変形手段232bは、キーボードKBから所定のキーとして、ctrlキーの押下状態で、右方向のカーソルキーを押下されたキーコードを入力した場合、ホイールWの半径(第1軸の半径および第2軸の半径)を減少させる。
ホイール変形手段232bは、ホイールWの半径を増減後、ROIホイール描画手段24にROIホイールRWの再描画を指示する。
これによって、ホイール変形手段232bは、図14に示すように、ホイールWの半径を任意の大きさに設定することができる。
【0046】
また、ホイール変形手段232bは、キーボードKBから所定のキーとして、shiftキーの押下状態で、左方向のカーソルキーを押下されたキーコードを入力した場合、ホイールWのアスペクト比(図6のAの長さ/Aの長さ)を増加させる。
また、ホイール変形手段232bは、キーボードKBから所定のキーとして、shiftキーの押下状態で、右方向のカーソルキーを押下されたキーコードを入力した場合、ホイールWのアスペクト比を減少させる。
ホイール変形手段232bは、ホイールWの半径を増減後、ROIホイール描画手段24にROIホイールRWの再描画を指示する。
これによって、ホイール変形手段232bは、図15に示すように、ホイールWのアスペクト比を任意の比率に設定することができる。
【0047】
ROIホイール描画手段24は、多方向のROIを配置する基準となる円形状のホイールWと、ホイールWの円周上に多方向のROIを円周の中心に対して放射状に配置したROIとで構成されるROIホイールRWを、チャート画像に重畳して描画するものである。
このROIホイール描画手段24は、ROIホイール情報記憶手段21に記憶されているROIホイールRWを特定する情報に基づいて、ROIホイールRWの各座標を算出し、設定画面WD(図7)上にROIホイールRWを描画(レンダリング)する。
【0048】
具体的には、ROIホイール描画手段24は、ROIホイール情報記憶手段21に記憶されているROIホイール情報を参照して、ホイールWの中心位置を基準として、ホイールWを描画する。このとき、ROIホイール描画手段24は、図6に示す第1軸Aにおける半径および第2軸Aにおける半径で楕円を描画する。
【0049】
また、ROIホイール描画手段24は、ROIの数、大きさおよび形状に基づいて、ホイールWの円周上に、ROIの中心(ホイールWの中心に近い辺の中心と、ホイールWの中心から遠い辺の中心とを結ぶ線分の中心)が位置し、ROIのホイールWの中心に近い辺の中心と、ホイールWの中心から遠い辺の中心とを結ぶ線分が放射方向となるように、ROIを等角度間隔に描画する。このとき、ホイールWが楕円である場合、例えば、図6に示す第1軸Aにおける半径を基準として、アスペクト比に応じて、各ROIを第2軸A方向に拡大または縮小する。
また、ROIホイール描画手段24は、ROIホイールRWが傾いている場合、その傾きの角度に応じで、ROIホイールRWを回転して描画する。
さらに、ROIホイール描画手段24は、ROIホイールRWの中心や傾きを、操作者に分かりやすくするため、第1軸Aおよび第2軸A、ならびに、中心位置を所定の大きさで視覚化した中心領域Cを描画する。
【0050】
ROIホイール描画手段24は、個々のROIのチャート画像上の位置(4頂点の座標)を、ROIホイール情報記憶手段21に記憶する。これによって、設定終了時に、設定画面制御手段22が、個々のROIのチャート画像上の位置(4頂点の座標)をROI情報として出力することができる。
なお、ROIホイール描画手段24は、ROIホイールRWのROIの内部を特定の色(例えば、橙色)で半透明に着色してもよい。また、ROIホイール描画手段24は、ROIホイールRWのホイールWの内部を特定の色(例えば、水色)で半透明に着色してもよい。
【0051】
以上説明したように、多方向ROI設定手段20は、等角度間隔でコントラストの異なるエッジを有するチャート画像から、個別にROIを設定することなく、すべてのROIがエッジを囲むように設定することができる。
なお、多方向ROI設定手段20は、コンピュータを、前記した各手段として機能させるための多方向ROI設定プログラムで動作させることができる。
図1に戻って、MTF測定装置1の構成について説明を続ける。
【0052】
画像抽出手段30は、多方向ROI設定手段20で設定された多方向のROIの画像(ROI画像)を、チャート画像から抽出するものである。
画像抽出手段30は、例えば、12時方向に最も近いROIから時計回りの順に、多方向ROI設定手段20で設定された多方向のROI画像を、チャート画像記憶手段10から抽出する。
画像抽出手段30は、抽出した画像(多方向のROI画像)を、方向別MTF算出手段40に出力する。
【0053】
方向別MTF算出手段40は、画像抽出手段30で抽出された方向別のROI画像から、MTFを算出するものである。ここでは、方向別MTF算出手段40は、エッジプロファイル生成手段41と、MTF算出手段42と、を備える。
【0054】
エッジプロファイル生成手段41は、各ROI画像のエッジ傾きを検出し、当該エッジの向きに応じたエッジプロファイル(エッジ広がり関数(ESF))を生成するものである。例えば、エッジプロファイル生成手段41は、図16に示すように、ROI画像における水平方向および垂直方向の軸を2軸とする座標系(xy座標系)において、ROI画像のxy座標値とその画素値とからエッジeの傾き(エッジ傾きθe)を求める。このエッジ傾きθeは、正規累積密度関数等によるフィッティングにより求めることができる。
【0055】
エッジプロファイル生成手段41は、図17に示すように、エッジ傾きθeに沿って、ROI画像の各画素値を、エッジに垂直な投影軸x′に投影し、x′軸のビンごとに入った画素値の平均を算出する。なお、x′軸のビン幅vは、ROI画像の1画素の1/4、1/8等、1画素に対してオーバーサンプリングされた幅とする。
これによって、エッジプロファイル生成手段41は、方向別のROI画像から、エッジプロファイルを生成することができる。
エッジプロファイル生成手段41は、生成したエッジプロファイルをMTF算出手段42に出力する。
【0056】
MTF算出手段42は、方向別のROI画像ごとに、MTFを算出するものである。このMTF算出手段42は、一般的なエッジ法(ISO法等)を用いて、エッジプロファイルからMTFを算出する。すなわち、MTF算出手段42は、ROI画像ごとにエッジプロファイルを順次微分することで線広がり関数(LSF)を求める。そして、MTF算出手段42は、線広がり関数をフーリエ変換して絶対値をとり、直流(空間周波数“0”)で正規化することで、MTFを算出する。
MTF算出手段42は、算出したMTFを測定結果出力手段50に出力する。
【0057】
測定結果出力手段50は、方向別MTF算出手段40で算出された方向別のMTFを測定結果として出力するものである。
例えば、測定結果出力手段50は、図18に示すように、横軸に空間周波数(cycles/pixel)、縦軸にMTF(%)をとった座標上に、方向別MTF算出手段40で算出したMTFをプロットすることで、MTFをグラフ化して表示装置3に表示する。
【0058】
なお、測定結果出力手段50は、図19に示すように、ROIの回転角度ごと(例えば、0°,22.5°,45°,…,337.5°)の放射状の軸上に、方向別MTF算出手段40で算出したMTFをプロットし、軸上にプロットした点を連結することでレーダチャートを生成してもよい。
これによって、操作者は、表示装置3に出力されるグラフによって、撮像系2のMTFの測定結果を視認することができる。
【0059】
以上説明したように、MTF測定装置1は、等角度間隔でコントラストの異なるエッジを有するMTF測定用チャートCHを用いて、個別にROIを設定することなく、すべてのROIがエッジを囲むように設定して、MTFを測定することができる。
なお、MTF測定装置1は、コンピュータを、前記した各手段として機能させるためのMTF測定プログラムで動作させることができる。
【0060】
[MTF測定装置の動作]
次に、図20図21を参照(構成については適宜図1図2参照)して、本発明の実施形態に係る多方向ROI設定装置(多方向ROI設定手段)を備えたMTF測定装置の動作について説明する。
【0061】
ステップS1において、MTF測定装置1は、撮像系2によって、MTF測定用チャートCHを撮像し、撮像したチャート画像をチャート画像記憶手段10に記憶する。
ステップS2において、多方向ROI設定手段20は、ステップS1でチャート画像記憶手段10に記憶されたチャート画像に、MTF測定を行うための多方向のROIを設定する(多方向ROI設定処理)。
【0062】
ここで、図21を参照して、ステップS2の処理を行う多方向ROI設定手段(多方向ROI設定装置)20の動作について説明する。
ステップS20において、設定画面制御手段22は、ステップS1でチャート画像記憶手段10に記憶されたチャート画像を含んだ設定画面WD(図7)を表示装置3に表示する。
ステップS21において、ROIホイール描画手段24は、ROIホイール情報記憶手段21に記憶されているROIホイール情報の初期値を読み出す。
ステップS22において、ROIホイール描画手段24は、ステップS21で読み出したROIホイール情報の初期値から、ROIホイールRWの構成要素となるホイールW、多方向のROIを描画するための各座標を算出する。
ステップS23において、ROIホイール描画手段24は、ステップS20で表示した設定画面WDのチャート画像上にROIホイールRWを重畳して描画する。
【0063】
ステップS24において、ROIホイール制御手段23は、操作者が操作するマウスMS、キーボードKBの押下情報やキーコードの操作信号に基づいて、ROIホイール情報記憶手段21に記憶されているROIホイール情報を更新する。
【0064】
このステップS24において、ROIホイール制御手段23の移動手段230は、中心領域C(図8)をマウスMSでドラッグされることで、所定のサンプリング間隔で、ROIホイール情報記憶手段21に記憶されているホイールWの中心位置を更新する。
また、ROIホイール制御手段23の回転手段231は、例えば、キーボードKBの左右のカーソルキーの押下や、マウスMSのホイール操作によって、ROIホイールRWの傾き角度を更新する。
【0065】
また、ROIホイール制御手段23の変形手段232のROI変形手段232aは、例えば、shiftキーの押下状態で、左方向のカーソルキーを押下された場合、ROIのホイールWの中心に近い辺と中心から遠い辺の両辺の長さを増加させ、右方向のカーソルキーを押下された場合、ROIのホイールWの中心に近い辺と中心から遠い辺の両辺の長さ減少させる。
また、ROI変形手段232aは、例えば、ctrlキーの押下状態で、左方向のカーソルキーを押下された場合、ROIのホイールWの中心に近い辺と中心から遠い辺との距離を伸長させ、右方向のカーソルキーを押下された場合、ROIのホイールWの中心に近い辺と中心から遠い辺との距離を短縮させる。
また、ROI変形手段232aは、例えば、ctrl+shiftキーの押下状態で、左方向のカーソルキーを押下された場合、ROIのホイールWの中心に近い辺の長さを増加させ、右方向のカーソルキーを押下された場合、ROIのホイールWの中心に近い辺の長さを減少させる。
【0066】
また、ROIホイール制御手段23の変形手段232のホイール変形手段232bは、例えば、ctrlキーの押下状態で、左方向のカーソルキーを押下された場合、ホイールWの半径(第1軸の半径および第2軸の半径)を増加させ、右方向のカーソルキーを押下された場合、ホイールWの半径を減少させる。
また、ホイール変形手段232bは、例えば、shiftキーの押下状態で、左方向のカーソルキーを押下された場合、ホイールWのアスペクト比(図6のAの長さ/Aの長さ)を増加させ、右方向のカーソルキーを押下された場合、ホイールWのアスペクト比を減少させる。
【0067】
ステップS25において、ROIホイール描画手段24は、ステップS24で更新されたROIホイール情報記憶手段21に記憶されているROIホイール情報を読み出す。
ステップS26において、ROIホイール描画手段24は、ステップS25で読み出したROIホイール情報から、ROIホイールRWの構成要素となるホイールW、多方向のROIを描画するための各座標を算出する。
ステップS27において、ROIホイール描画手段24は、設定画面WDのチャート画像上のROIホイールRWを再描画する。
【0068】
ステップS28において、ROIホイール制御手段23は、ROI設定が終了したか否かを判定する。例えば、ROIホイール制御手段23は、マウスMSによる終了ボタンB図7)の押下、あるいは、マウスMSのダブルクリックで、ROI設定の終了を判定する。
ROI設定が終了していない場合(ステップS28でNo)、多方向ROI設定手段20は、ステップS24に戻って、多方向のROIの設定動作を繰り返す。
【0069】
一方、ROI設定が終了した場合(ステップS28でYes)、ステップS29において、ROIホイール制御手段23は、ステップS26で算出された多方向のROIの座標を出力し、多方向ROI設定処理を終了する。
その後、MTF測定装置1は、図20のステップS3以降の動作を行う。
【0070】
ステップS3において、画像抽出手段30は、ステップS2で設定された多方向のROI画像を、チャート画像記憶手段10から抽出して読み出す。
ステップS4において、方向別MTF算出手段40のエッジプロファイル生成手段41は、ステップS3で抽出された各ROI画像のエッジ傾きに応じて、エッジに垂直な投影軸にROI画像の画素値を投影し、ビンごとに平均化することで、エッジプロファイル(エッジ広がり関数)を生成する。
【0071】
ステップS5において、方向別MTF算出手段40のMTF算出手段42は、ステップS4で生成された各ROI画像のエッジプロファイルについて、線広がり関数を求めた後、線広がり関数をフーリエ変換して絶対値をとり、直流(空間周波数“0”)で正規化することで、MTFを算出する。
ステップS6において、測定結果出力手段50は、ステップS5で算出されたMTFをプロットしたグラフを生成し、表示装置3に出力する。
【0072】
以上の動作によって、MTF測定装置1は、等角度間隔でコントラストの異なるエッジを有するMTF測定用チャートCHを用いて、個別にROIを設定することなく、すべてのROIがエッジを囲むように設定して、MTFを測定することができる。
【0073】
以上、本発明の各実施形態を詳述してきたが、本発明は前記した実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
ここでは、MTF測定装置1は、MTF測定用チャートとして、図3に示したスターバーストのMTF測定用チャートCHを用いる例で説明した。
しかし、MTF測定装置1が用いるMTF測定用チャートは、等角度間隔でコントラストの異なるエッジを有するチャートであれば、スターバーストチャートに限定されない。
【0074】
例えば、MTF測定装置1は、図22に示すMTF測定用チャートCH2を用いることができる。
MTF測定用チャートCH2は、チャート面の所定位置を中心Oとし、予め定めた数の二等辺三角形Iを、二等辺三角形Iの頂点を中心Oとして等角度間隔に配置した放射領域BL1と、放射領域BL1の周囲に、脚の延長線が中心Oを通る等脚台形Tを、中心Oから同心円状に、放射方向および円周方向にそれぞれ離間して配置した同心円領域BL2と、を有する。なお、二等辺三角形Iおよび等脚台形Tの領域と、二等辺三角形Iおよび等脚台形T以外の領域とでは、コントラストが異なる色を配色している。ここでは、二等辺三角形Iおよび等脚台形Tの領域を黒色、二等辺三角形Iおよび等脚台形T以外の領域を白色で配色されているものとする。
【0075】
MTF測定装置1は、MTF測定用チャートCH2を用いてMTFを測定する場合、図23図25に示すように、MTF測定用チャートCH2を所定角度傾けて撮像したチャート画像IMG2において、ROIホイールRWを描画することで、多方向のROIを設定する。
【0076】
図23は、放射領域BL1の二等辺三角形Iの等辺にROIが設定されるようにROIホイールRWを描画した状態を示す。
図24は、同心円領域BL2の等脚台形Tの脚にROIが設定されるようにROIホイールRWを描画した状態を示す。
図25は、同心円領域BL2の等脚台形Tの上底にROIが設定されるようにROIホイールRWを描画した状態を示す。もちろん、等脚台形Tの下底にROIを設定するようにしてもよい。
【0077】
MTF測定用チャートCH2を用いた場合、図23図24に示すように、放射方向のエッジにROIを設定するには、放射方向を長辺としてROIを設定するが、図25に示すように、放射方向に垂直なエッジにROIを設定するには、放射方向を短辺としてROIを設定する。
この長辺と短辺との切り替えは、例えば、図7の設定画面WD上のリセットボタンBを続けて押下することで切り替える等、任意のインタフェースで行うことができる。
【0078】
このように、MTF測定装置1は、図22に示すように放射方向や円周方向にエッジを有し、多方向のROIを設定可能なMTF測定用チャートCH2であっても、個別にROIを設定することなく、多方向のROIがエッジを囲むように設定して、MTFを測定することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 MTF測定装置
10 チャート画像記憶手段
20 多方向ROI設定手段(多方向ROI設定装置)
21 ROIホイール情報記憶手段
22 設定画面制御手段
23 ROIホイール制御手段
230 移動手段
231 回転手段
232 変形手段
231a ROI変形手段
232b ホイール変形手段
24 ROIホイール描画手段
30 画像抽出手段
40 方向別MTF算出手段
41 エッジプロファイル生成手段
42 MTF算出手段
50 測定結果出力手段
2 撮像系
3 表示装置
CH MTF測定用チャート
CH2 MTF測定用チャート
KB キーボード
MS マウス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27