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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005687
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】炭化珪素粒子
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/956 20170101AFI20230111BHJP
   C04B 35/569 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
C01B32/956
C04B35/569
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021107766
(22)【出願日】2021-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000236702
【氏名又は名称】株式会社フジミインコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】増田 祐司
(72)【発明者】
【氏名】牛田 尚幹
(72)【発明者】
【氏名】諌山 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 未那
【テーマコード(参考)】
4G146
【Fターム(参考)】
4G146MA14
4G146MB02
4G146MB18A
4G146MB18B
4G146MB24
4G146MB26
4G146MB28
4G146NA04
4G146NA25
4G146NA28
4G146PA02
4G146PA06
4G146PA08
(57)【要約】
【課題】円形度が高い炭化珪素粒子を提供する。
【解決手段】顆粒の画像解析より算出される面積値を、顆粒の最大径から算出される円相当面積値で除算した値が、百分率で80%以上である、結晶系がα型の炭化珪素粒子。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顆粒の画像解析より算出される面積値を、前記顆粒の最大径から算出される円相当面積値で除算した値が、百分率で80%以上である、結晶系がα型の炭化珪素粒子。
【請求項2】
前記顆粒の画像解析より算出される面積値を、前記顆粒の最大径から算出される円相当面積値で除算した値の標準偏差が、0.02以上0.05以下である、請求項1に記載の炭化珪素粒子。
【請求項3】
前記顆粒の平均粒子径が、0.5μm以上100μm以下である、請求項1又は2に記載の炭化珪素粒子。
【請求項4】
前記顆粒の造粒に用いられる一次粒子の平均粒子径に対する前記顆粒の平均粒子径の比は、15以上150以下である、請求項1から3のいずれか1項に記載の炭化珪素粒子。
【請求項5】
前記顆粒は分散剤及び有機ポリマーを含有しない、請求項1から4のいずれか1項に記載の炭化珪素粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化珪素粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素は、研磨材、放熱フィラー、樹脂への充填材、コーティング材、複合材、焼結材、など多岐にわたる用途で使用される。特に、樹脂組成へ混合して使用される、放熱フィラー、充填材、コーティング材においては、充填性・加工性・均質性の観点より球形状が好ましい。また、焼結材や放熱フィラーの用途においては、最密充填により充填量を高めて使用する事例が多く、形状がそろっているものが好ましい。球状α型炭化珪素及びその製造方法として、例えば特許文献1に開示されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-95637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された球状α型炭化珪素の製造方法によれば、造粒時に分散剤を使用している。分散剤により分散状態に調整された一次粒子は、液滴の乾燥過程で顆粒表面に移動し、顆粒表面が埋没するなど、顆粒の円形度が低くなり易い。
【0005】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、円形度が高い炭化珪素粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る炭化珪素粒子は、顆粒の画像解析より算出される面積値を、前記顆粒の最大径から算出される円相当面積値で除算した値が、百分率で80%以上である、結晶系がα型の炭化珪素粒子である。
本発明の一態様に係る炭化珪素粒子の製造方法は、炭化珪素の一次粒子と溶媒とを含むスラリーにpH調整剤を添加して、前記スラリーのpHを前記炭化珪素の等電点に調整する工程と、前記pHが調整された前記スラリーを噴霧し乾燥させて、前記炭化珪素の二次粒子を造粒する工程とを含む、結晶系がα型の炭化珪素粒子の製造方法である。
本発明の一態様に係る組成物は、上記の炭化珪素粒子を母材に含有する組成物である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、円形度が高い炭化珪素粒子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態に係る真球度を説明するための図である。
図2図2は、アスペクト比を説明するための図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る炭化珪素粒子(顆粒)を含む組成物の製造方法を工程順に示すフローチャートである。
図4図4は、本実施形態に係る顆粒の円相当径を例示する図である。
図5図5は、本発明の実施例1から7で得られた顆粒のSEM画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の一例を示したものである。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。また、以下の実施形態には種々の変更又は改良を加えることが可能であり、その様な変更又は改良を加えた形態も本発明に含まれ得る。
【0010】
本発明の実施形態(以下、本実施形態)に係る炭化珪素(SiC)粒子は、顆粒の画像解析より算出される面積値を、顆粒の最大径から算出される円相当面積値で除算した値が、百分率で80%以上である、結晶系がα型(主に六方晶)の炭化珪素粒子である。
本明細書では、「顆粒の画像解析より算出される面積値を、顆粒の最大径から算出される円相当面積値で除算した値」を「真球度」と呼称する。真球度は、本発明者が見出した、円形度に関する指標である。
【0011】
図1は、本実施形態に係る真球度を説明するための図である。図2は、アスペクト比を説明するための図である。例えば、上記の特許文献1は、粒子の円形度を「平均アスペクト比(短径/長径)」で評価している。図2に示すように、顆粒の短径及び長径以外の部分はアスペクト比(短径/長径)の数値に反映されない。このため、アスペクト比では、顆粒の円形度を十分に評価できない可能性がある。
【0012】
これに対して、本発明者が見出した「真球度」は、図1に示すように、画像解析で得られる顆粒の最大径から、この最大径を直径とする最大径相当円(正円)を想定し、画像解析で得られる顆粒の面積値と最大径相当円の面積値との比率から、円形度を評価するものである。図2に示したアスペクト比による評価方法と比べて、「真球度」では、短径及び長径以外の部分についても、画像解析で得られる顆粒の面積値に含まれており、真球度の数値に反映される。このため、「真球度」は、顆粒が円形(真球)に近い形か否かをより正確に評価することができる。「真球度」が1に近いほど、すなわち、百分率で100%に近いほど、顆粒は円形(真球)に近いといえる。
【0013】
上記したように、本実施形態に係る炭化珪素粒子は、研磨剤、放熱フィラー、樹脂(例えば、プラスチック、硬化性樹脂、ゴム等)への充填材、コーティング材、複合材、焼結材、など多岐にわたる用途に使用可能である。
【0014】
例えば、本実施形態に係る炭化珪素粒子は、フィラー(充填剤)として、プラスチック、硬化性樹脂、ゴム等の樹脂に配合して樹脂組成物とすることができる。この樹脂組成物は、本実施形態に係る炭化珪素粒子と樹脂とを含有するが、炭化珪素粒子及び樹脂のみで構成されていてもよいし、炭化珪素粒子と樹脂に補強材、添加剤等の他の成分を配合して構成されていてもよい。
【0015】
また、この樹脂組成物を成形して、例えば放熱材料としてもよい。放熱材料は、本実施形態に係る炭化珪素粒子を含有する樹脂組成物の成形体のみで構成されていてもよいし、成形体と他の部材とで構成されていてもよい。成形体の形状や成形方法は特に限定されない。
【0016】
本実施形態に係る炭化珪素粒子は、上記したように、真球度が80%以上である。真球度が100%に近づくほど、炭化珪素粒子(顆粒)の形状は真球に近づき、顆粒の形状が球形に揃うため、各用途における効果が大きくなる。
例えば、本実施形態に係る炭化珪素粒子(顆粒)を含有する放熱材料は、顆粒の形状が真球に近づき、形状が球形に揃うことによって、充填性を高めること(高充填)が可能となる。また、粒子間の相互作用を小さくでき、プラスチック、硬化性樹脂、ゴム等の樹脂に配合して樹脂組成物とする場合、増粘抑制(加工性の向上)が可能となる。
【0017】
本実施形態に係る炭化珪素粒子(顆粒)を含有する樹脂組成物は、顆粒の形状が真球に近づき、顆粒の形状が球形に揃うことによって、顆粒間の相互作用を小さくでき、増粘抑制(加工性の向上)が可能となる。
【0018】
本実施形態に係る炭化珪素粒子(顆粒)を含有するコーティング材は、顆粒の形状が真球に近づき、顆粒の形状が球形に揃うことによって、増粘抑制(加工性の向上)と等方性(均質性)の向上とが可能となる。
【0019】
本実施形態に係る炭化珪素粒子を含有する複合材、例えば、CMC(Ceramics matrix composites)、MMC(Metal matrix composites)等は、炭化珪素粒子(顆粒)の形状が真球に近づき、顆粒の形状が球形に揃うことによって、増粘抑制(加工性の向上)と等方性(均質性)の向上とが可能となる。
また、本実施形態に係る炭化珪素粒子を含有する焼結材は、炭化珪素粒子(顆粒)の形状が真球に近づき、顆粒の形状が球形に揃うことによって、充填性を高めること(高充填)が可能となる。
上記の放熱材料、樹脂組成物、コーティング材、複合材、焼結材は、いずれも、本発明の「組成物」の一例である。
【0020】
以下に、本実施形態に係る炭化珪素粒子及び樹脂組成物について、さらに詳細に説明する。本実施形態に係る炭化珪素粒子は、炭化珪素の一次粒子から造粒された顆粒である。顆粒を二次粒子と言い換えてもよい。本実施形態に係る炭化珪素粒子は、焼結前の顆粒であってもよいし、焼結後の顆粒であってもよい。焼結は、焼成と言い換えてもよい。
【0021】
(一次粒子)
本実施形態に係る炭化珪素粒子(顆粒)は、結晶系がα型の炭化珪素(一次粒子)から造粒される。一次粒子の平均粒子径D50は、0.03μm以上5.00μm以下であり、好ましくは0.05μm以上3.00μm以下であり、より好ましくは0.08μm以上1.50μm以下である。一次粒子の平均粒子径D50とは、一次粒子を集めた粉末の体積基準の積算粒子径分布において、小粒径側からの積算頻度が50%となる粒子径を意味する。本明細書では、一次粒子の平均粒子径D50を、単に「一次粒子径」ともいう。
【0022】
(スラリー)
(1)固形分濃度
本実施形態に係る炭化珪素粒子(顆粒)は、一次粒子を含む粉末に溶媒(例えば、水)を加えてスラリーを生成し、このスラリーをスプレードライヤ等の噴霧装置に供給し造粒することで形成される。スラリーの固形分濃度は、5質量%以上50質量%以下であり、好ましくは7.5質量%以上45質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上40質量%以下である。
(2)pH値
本実施形態において、スラリーには、分散剤及び有機ポリマー(例えば、バインダー)を添加しない。分散剤及び有機ポリマーを添加せず、pH調整剤を添加して、スラリーのpHを炭化珪素の等電点(凝集域)に調整する。炭化珪素の等電点は、pH3.0~4.0付近である。例えば、スラリーのpH値を1.0以上6.0以下、好ましくは3.0以上5.0以下、より好ましくは等電点付近に調整する。スラリーのpH値が等電点付近に調整されることで、炭化珪素の一次粒子の表面電位(例えば、ゼータ電位)はほぼゼロになり、一次粒子間に働く電気的力(引力及び斥力)が小さくなるので、スラリー中で一次粒子は凝集する。
【0023】
(3)分散剤及び有機ポリマーの不使用
分散剤が添加されたスラリー、または分散剤を含まないがpH値が分散域に調整された液滴を乾燥させて造粒する場合は、液滴の乾燥過程で一次粒子が顆粒表面に移動し、表面が埋没するなど、円形度が低くなり易い。また、分散剤や有機ポリマーを使用すると、脱脂が必要となり、環境・工程負荷が大きくなり易い。脱脂が不十分の場合は、残炭による品質不良が発生する可能性がある。
【0024】
これに対し、本実施形態では、分散剤や有機ポリマーを使用せず、スラリーのpH調整により、炭化珪素の等電点(凝集域)付近で造粒する。これにより、一次粒子の再配列が起こり難く、造粒直後の形状が保持されて乾燥されるため、中実かつ球形な顆粒を得ることができる。顆粒の円形度を高めることが可能である。
また、分散剤や有機ポリマーを使用しないため、脱脂が不要となり、環境・工程負荷低減や、残炭による品質不良の発生を回避することが可能である。
【0025】
(pH調整剤)
スラリーに添加するpH調整剤は、酸及びアルカリのいずれであってもよい。pH調整剤としての酸の具体例としては、無機酸や、カルボン酸、有機硫酸等の有機酸が挙げられる。無機酸の具体例としては、硫酸、硝酸、ホウ酸、炭酸、次亜リン酸、亜リン酸、リン酸等が挙げられる。
【0026】
pH調整剤としての塩基の具体例としては、アルカリ金属の水酸化物又はその塩、アルカリ土類金属の水酸化物又はその塩、水酸化第四級アンモニウム又はその塩、アンモニア、アミン等が挙げられる。アルカリ金属の具体例としては、カリウム、ナトリウム等が挙げられる。また、アルカリ土類金属の具体例としては、カルシウム、ストロンチウム等が挙げられる。さらに、塩の具体例としては、炭酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、酢酸塩等が挙げられる。さらに、第四級アンモニウムの具体例としては、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等が挙げられる。
【0027】
(顆粒)
(1)真球度
本実施形態に係る炭化珪素粒子(顆粒)の真球度は、上記したように80%以上100%以下であるが、好ましくは85%以上100%以下であり、より好ましくは90%以上100%以下である。真球度が100%に近づくほど、炭化珪素粒子(顆粒)の形状は真球に近づき、顆粒の形状が球形に揃うため、各用途における効果が大きくなる。なお、真球度は所定個数の顆粒の平均値である。当該所定個数、すなわち顆粒毎の真球度を算出する粒子の個数は、測定精度や再現性を高める観点から、100個以上とすることが適当である。
【0028】
(2)真球度の標準偏差
また、炭化珪素粒子(顆粒)の真球度の標準偏差は、0.02以上0.05以下であり、好ましくは0.02以上0.04以下である。真球度の標準偏差が小さいほど、顆粒の形状がさらに揃い、効果のばらつきを小さくすることができる。なお、この標準偏差は、上記顆粒の真球度を測定した際の所定個数の顆粒を母集団とした標準偏差であることが適当である。
【0029】
(3)平均粒子径
本実施形態に係る炭化珪素粒子(顆粒)は、炭化珪素の一次粒子から造粒される二次粒子である。二次粒子の平均粒子径D50は、0.5μm以上100μm以下であり、好ましくは2μm以上60μm以下であり、より好ましくは4μm以上50μm以下である。二次粒子の平均粒子径D50とは、二次粒子を集めた粉末の体積基準の積算粒子径分布において、小粒径側からの積算頻度が50%となる粒子径を意味する。本明細書では、二次粒子の平均粒子径D50を、単に「二次粒子径」ともいう。
二次粒子径は、後述の実施例で説明するように、画像解析から算出される顆粒の円相当径で示される。一次粒子径は、レーザー回折散乱法により測定される値である。
【0030】
(4)一次粒子径に対する二次粒子径の比
一次粒子径に対する二次粒子径の比は、5以上300以下であり、好ましくは10以上200以下であり、より好ましくは15以上150以下である。
【0031】
(樹脂組成物)
上記したように、本実施形態に係る炭化珪素粒子(顆粒)は、フィラー(充填剤)として、プラスチック、硬化性樹脂、ゴム等の樹脂(本発明の「母材」の一例)に配合して樹脂組成物とすることができる。
【0032】
(製造方法)
図3は、本発明の実施形態に係る炭化珪素粒子(顆粒)を含む組成物の製造方法を工程順に示すフローチャートである。まず、結晶系がα型である炭化珪素の一次粒子を含む粉体を生成し、この粉体と溶媒(例えば、水)とを混合して、スラリーを生成する(図3のステップST1)。
次に、スラリーにpH調整剤を添加して、スラリーのpHを炭化珪素の等電点(凝集域)付近に調整する(図3のステップST2)。なお、本実施形態において、分散剤及び有機ポリマー(例えば、バインダー)はスラリーに添加しない。
【0033】
次に、等電点付近に調整されたスラリーを、スプレードライヤを用いて乾燥室内に噴霧し乾燥させて、結晶系がα型である炭化珪素粒子(顆粒)を生成する(図3のステップST3)。ステップST3では、分散剤を使用せず、pH調整により炭化珪素の凝集域で造粒するため、一次粒子の再配列が起こり難い。顆粒は、造粒直後の形状を保持した状態で乾燥されるため、中実かつ球形な顆粒が得られる。
【0034】
スプレードライヤの噴霧方式としては、加圧2流体ノズルによる固定噴霧方式、回転ディスクによる噴霧方式等がある。いずれの方式を採用してもよいが、固定噴霧方式を使用する事でより微小径の顆粒を得ることが出来る。
スプレードライヤによる噴霧と乾燥とにより形成された顆粒は、後流側に設けられた捕集容器、サイクロン、バグフィルター等に捕集される。
【0035】
なお、本実施形態では、噴霧されるスラリーに予め焼結助剤を添加しておいてもよい。これにより、次に説明する顆粒の焼結工程で、顆粒の焼結を促進することができ、顆粒の内部をより緻密化することが可能である。
【0036】
次に、図3のステップST4では、ステップST3で得られた顆粒を焼結する。例えば、ステップST3で得られた顆粒をアルゴン(Ar)等の不活性ガスの雰囲気下で焼結する。焼結の温度は、例えば1800℃以上2000℃以下である。これにより、焼結された顆粒が得られる。なお、焼結の雰囲気を窒素(N)とすると顆粒が窒化される可能性があるため、本実施形態においては焼結の雰囲気をArとすることが好ましい。
【0037】
以上のステップST1からST3まで、又は、ステップST1から焼結工程を含むステップST4までが、本実施形態に係る炭化珪素粒子(顆粒)の製造工程である。
【0038】
次に、図3のステップST5で、焼結した顆粒を母材に配合して組成物を生成する(図3のステップST6)。例えば、焼結した顆粒をフィラーとして、プラスチック、硬化性樹脂、ゴム等の樹脂に配合して、樹脂組成物を生成する。以上の工程を経て、本実施形態に係る組成物が完成する。
【実施例0039】
次に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
炭化珪素の一次粒子と水とを混合して、原料であるスラリーを得た。スラリーの固形分濃度は16.1質量%である。炭化珪素の一次粒子として、粒度#40000の炭化珪素粉末(型番:GC#40000)を用いた。炭化珪素の一次粒子径D50は、0.25μmである。
【0040】
次に、このスラリーにpH調整剤を添加して、スラリーのpHを炭化珪素の凝集域であるpH4.0付近(=炭化珪素の等電点)に調整した。スラリーには、分散剤や有機ポリマーは添加しなかった。
炭化珪素の一次粒子、溶媒(水)及びpH調整剤の混合は、攪拌機を用いて行った。攪拌機による攪拌の回転数は、6000rpmとした。攪拌時間は、10minとした。
【0041】
攪拌機で攪拌されたスラリーを、回転ディスクによる噴霧方式のスプレードライヤに供給して造粒を行い、炭化珪素の顆粒(未焼結、二次粒子)を得た。
【0042】
(実施例2)
実施例2では、実施例1よりもさらに、顆粒(二次粒子)を小さく形成した。具体的には、固定式噴霧方式を用いた。
(実施例3)
実施例3では、炭化珪素の一次粒子として、粒度#8000の炭化珪素粉末(型番:GC#8000)を用いた。炭化珪素の一次粒子径D50は、1.2μmである。これ以外は、実施例1と同様にして、実施例3の顆粒(未焼結、二次粒子)を得た。
【0043】
(実施例4)
実施例2で得られた未焼結の顆粒を、焼結炉を用いて焼結して、実施例4の顆粒(焼結済み、二次粒子)を得た。焼結炉の運転条件は、炉内の雰囲気がアルゴン(Ar)、焼結温度が1800℃以上2000℃以下、焼結時間が4時間である。
【0044】
(参考例1)
参考例1では、炭化珪素の一次粒子径D50を0.35μmとした。これ以外は、実施例1と同様の方法で、炭化珪素の顆粒(未焼結、二次粒子)を得た。スラリーのpHは4.0付近であり、分散剤は添加していない。なお、参考例1は、実施例1~4と比べてサンプル数(n)が少なく、nが100未満である。これが理由で、参考例とした。
(参考例2)
参考例2では、スラリーのpHを9.0付近とし、分散域での造粒を実施した。これ以外は、参考例1と同様の方法で、炭化珪素の顆粒(未焼結、二次粒子)を得た。
【0045】
(得られた顆粒の物性)
(1)顆粒の画像解析と、顆粒の円相当径の算出
実施例1から4で得られた顆粒について、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いて表面を観察し、SEM画像を撮影した。また、得られたSEM画像を解析して顆粒の面積値を算出した。そして、算出した面積値から、顆粒の円相当径を算出した。
【0046】
図4は、顆粒の円相当径を例示する図である。例えば図4に示すように、算出した顆粒の面積値と同じ面積値となる正円(顆粒の相当円)を想定し、想定した正円の径(顆粒の円相当径)を算出した。画像解析から算出した顆粒の円相当径を下記の表1に示す。
【0047】
(2)二次粒子径/一次粒子径 比
実施例1から4で得られた顆粒について、一次粒子径と二次粒子径との比を算出した。算出結果を下記の表1に示す。
一次粒子径は、表1に示した一次粒子径D50(μm)である。二次粒子径は、下記の表1に示した顆粒の円相当径(μm)であり、各実施例の任意の100個の顆粒の円相当径の平均値である。
【0048】
(3)真球度(顆粒面積/最大径相当円面積 比)
実施例1から4で得られた顆粒について、真球度(顆粒の画像解析で得られた面積値と、顆粒の最大径から算出される最大径相当円の面積値との比)を算出した。真球度の算出結果を下記の表1に示す。なお、真球度は上記顆粒の円相当径を測定した際の顆粒100個の真球度の平均値とした。
(4)真球度の標準偏差
実施例1から4で得られた顆粒について、真球度の標準偏差を算出した。実施例1から4において、上記顆粒の円相当径を測定した際の任意の100個の顆粒を母集団とした標準偏差を下記の表1に示す。
(5)アスペクト比
実施例1から4で得られた顆粒について、短径、長径を測定して、アスペクト比(短径/長径)を算出した。算出結果を下記の表1に示す。なお、アスペクト比は上記顆粒の円相当径を測定した際の顆粒100個のアスペクト比の平均値とした。
【0049】
(6)真球度算出の元となるデータ
実施例1から4で得られた顆粒の真球度について、算出の元となるデータを下記の表1に示す。算出の元となるデータは、画像解析による顆粒面積(μm)と、画像解析による顆粒最大径(μm)と、顆粒最大径から算出した顆粒の最大径相当円面積(μm)と、である。顆粒面積、顆粒最大径および最大径相当円面積はいずれも上記顆粒の円相当径を測定した際の顆粒100個の顆粒面積、顆粒最大径、最大径相当円面積の平均値とした。
【表1】
【0050】
(評価)
図5は、本発明の実施例1から4と、参考例1、2で得られた顆粒のSEM画像を示す図である。図5に示すように、実施例1から4と、参考例1で得られた顆粒は、目視で円形度が高いことが確認された。
また、表1に示すように、実施例1から4で得られた顆粒の真球度は0.83以上0.95以下(百分率で、83%以上95%以下)であり、真球度の標準偏差は0.02以上0.04以下であった。
【0051】
一方、参考例2で得られた顆粒は、表面が凹んでおり、目視でも明らかに円形度が低い。参考例2では、造粒を分散域で実施したため、液滴の乾燥過程で顆粒表面が埋没したと考えられる。造粒を分散域で実施すると、参考例2のSEM画像ように、表面が埋没した顆粒が散見された。
【0052】
実施例2、4のデータを比較して分かるように、一次粒子径が0.25μmであり二次粒子径が約4μmである場合、二次粒子(顆粒)の真球度は焼結前後で変化量が小さいことが確認された。
【0053】
また、実施例2、4のデータを比較して分かるように、二次粒子(顆粒)の真球度の標準偏差(すなわち、ばらつき)は、二次粒子を焼結することで大きな変化は無い事が確認された。
【0054】
本実施形態の炭化珪素粒子(顆粒)は分散剤や有機ポリマーを含まないため、真球度は、焼結前と焼結後とで変動量が小さいことが確認された。
図1
図2
図3
図4
図5