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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057055
(43)【公開日】2023-04-20
(54)【発明の名称】組成物及びインク組成物
(51)【国際特許分類】
   H10K 30/60 20230101AFI20230413BHJP
   C08G 61/12 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
H01L31/08 T
C08G61/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161562
(22)【出願日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】P 2021166474
(32)【優先日】2021-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢野 綾香
(72)【発明者】
【氏名】石野 雄太
(72)【発明者】
【氏名】猪口 大輔
【テーマコード(参考)】
4J032
5F849
【Fターム(参考)】
4J032BA04
4J032BA20
4J032BB05
4J032CG01
5F849AA03
5F849AB11
5F849BA10
5F849BA28
5F849BB03
5F849CB05
5F849DA30
5F849FA02
5F849FA03
5F849FA04
5F849FA05
5F849GA02
5F849GA04
5F849HA12
5F849LA01
5F849LA07
5F849XA02
5F849XA35
5F849XA39
5F849XA40
(57)【要約】      (修正有)
【課題】インク組成物における経時的な粘度増大抑制。
【解決手段】式(I)で表される構成単位を含む高分子化合物であって、式(II)で表される末端構造を有する不純物高分子化合物をさらに含み、式(II)で表される末端構造と相補的な水素結合を2組以上形成することができる添加剤及び芳香族炭化水素を含む溶媒をさらに含む、高分子組成物及び活性層に含む光電変換素子。


(A、B及びY構造は、明細書に別途式定義される。)
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表される構成単位を含む高分子化合物であって、下記式(I)で表される構成単位を含み、かつ下記式(II)で表される末端構造を有する不純物高分子化合物をさらに含む前記高分子化合物と、
前記不純物高分子化合物のうちの下記式(II)で表される末端構造と相補的な水素結合を2組以上形成することができる添加剤と、
芳香族炭化水素を含む溶媒と
を含む、組成物。
【化1】
(式(I)中、
Aは、置換基を有していてもよい2価の有機基を表し、
Bは、チアジアゾール骨格、オキサジアゾール骨格、又はトリアゾール骨格を含む環構造を表し、
Yは、-CH-で表される基又は窒素原子を表す。)
【化2】
(式(II)中、
B及びYは、前記定義のとおりである。)
【請求項2】
前記Aが、下記式(IV)で表される2価の有機基である、請求項1に記載の組成物。
【化3】
(式(IV)中、
Ar及びArは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい3価の芳香族複素環基を表し、
Zは下記式(Z-1)~式(Z-7)のいずれか1つで表される基を表す。)
【化4】
(式(Z-1)~(Z-7)中、Rは、
水素原子、
ハロゲン原子、
置換基を有していてもよいアルキル基、
置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
置換基を有していてもよいアルケニル基、
置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、
置換基を有していてもよいアルキニル基、
置換基を有していてもよいシクロアルキニル基、
置換基を有していてもよいアリール基、
置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいシクロアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいアリールオキシ基、
置換基を有していてもよいアルキルチオ基、
置換基を有していてもよいシクロアルキルチオ基、
置換基を有していてもよいアリールチオ基、
置換基を有していてもよい1価の複素環基、
置換基を有していてもよい置換アミノ基、
置換基を有していてもよいイミン残基、
置換基を有していてもよいアミド基、
置換基を有していてもよい酸イミド基、
置換基を有していてもよい置換オキシカルボニル基、
シアノ基、
ニトロ基、
-C(=O)-Rcで表される基、又は
-SO-Rdで表される基を表し、
Rc及びRdは、それぞれ独立して、
水素原子、
置換基を有していてもよいアルキル基、
置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
置換基を有していてもよいアリール基、
置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいシクロアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいアリールオキシ基、又は
置換基を有していてもよい1価の複素環基を表す。
式(Z-1)~式(Z-7)中、Rが2つある場合、2つあるRは同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項3】
前記添加剤がアミド構造を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
赤外分光法により測定したときの前記式(I)で表される構成単位を含む主鎖由来のピーク強度に対する前記式(II)で表される末端構造に由来するピーク強度の割合が8%以上である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
前記Bがチアジアゾール骨格を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項6】
前記Aがチオフェン骨格を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項7】
前記添加剤が、4-メチルカルボスチリル、プロピオンアミド、又はピリジノールである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の組成物と、n型半導体材料とを含有するインク組成物。
【請求項9】
前記n型半導体材料が、フラーレン化合物又は非フラーレン化合物である、請求項8に記載のインク組成物。
【請求項10】
請求項8に記載のインク組成物を固化した固化膜。
【請求項11】
請求項10に記載の固化膜を活性層として含む、光電変換素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物、さらには光電変換素子の機能層を形成するためのインク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
光電変換素子は、例えば、省エネルギー、二酸化炭素の排出量の低減の観点から極めて有用なデバイスであり、注目されている。
【0003】
光電変換素子、例えば光検出素子(OPD)の製造にあたっては、インク組成物を塗布対象に塗工する塗布法により、活性層、電子輸送層、正孔輸送層などの機能層を形成する製造方法が適用されることが知られている(非特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Strobel 2019 Flex. Print. Electron. 4 043001
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような光電変換素子の製造方法においては、例えば、同一の塗工条件でインク組成物を塗布した場合でも、インク組成物の粘度が変化すると、形成される機能層の厚さが均一ではなくなってしまい、製造される光電変換素子の特性にばらつきが生じたり、所望の特性が得られなくなってしまう場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を進めたところ、インク組成物に含まれる高分子化合物の末端構造に着目して、当該末端構造に結合しうる所定の添加剤を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記[1]~[11]を提供する。
[1] 下記式(I)で表される構成単位を含む高分子化合物であって、下記式(I)で表される構成単位を含み、かつ下記式(II)で表される末端構造を有する不純物高分子化合物をさらに含む前記高分子化合物と、
前記不純物高分子化合物のうちの下記式(II)で表される末端構造と相補的な水素結合を2組以上形成することができる添加剤と、
芳香族炭化水素を含む溶媒と
を含む、組成物。
【化1】
(式(I)中、
Aは、置換基を有していてもよい2価の有機基を表し、
Bは、チアジアゾール骨格、オキサジアゾール骨格、又はトリアゾール骨格を含む環構造を表し、
Yは、-CH-で表される基又は窒素原子を表す。)
【化2】
(式(II)中、
B及びYは、前記定義のとおりである。)
[2] 前記Aが、下記式(IV)で表される2価の有機基である、[1]に記載の組成物。
【化3】
(式(IV)中、
Ar及びArは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい3価の芳香族複素環基を表し、
Zは下記式(Z-1)~式(Z-7)のいずれか1つで表される基を表す。)
【化4】
(式(Z-1)~(Z-7)中、Rは、
水素原子、
ハロゲン原子、
置換基を有していてもよいアルキル基、
置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
置換基を有していてもよいアルケニル基、
置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、
置換基を有していてもよいアルキニル基、
置換基を有していてもよいシクロアルキニル基、
置換基を有していてもよいアリール基、
置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいシクロアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいアリールオキシ基、
置換基を有していてもよいアルキルチオ基、
置換基を有していてもよいシクロアルキルチオ基、
置換基を有していてもよいアリールチオ基、
置換基を有していてもよい1価の複素環基、
置換基を有していてもよい置換アミノ基、
置換基を有していてもよいイミン残基、
置換基を有していてもよいアミド基、
置換基を有していてもよい酸イミド基、
置換基を有していてもよい置換オキシカルボニル基、
シアノ基、
ニトロ基、
-C(=O)-Rで表される基、又は
-SO-Rで表される基を表し、
及びRは、それぞれ独立して、
水素原子、
置換基を有していてもよいアルキル基、
置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
置換基を有していてもよいアリール基、
置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいシクロアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいアリールオキシ基、又は
置換基を有していてもよい1価の複素環基を表す。
式(Z-1)~式(Z-7)中、Rが2つある場合、2つあるRは同一であっても異なっていてもよい。)
[3] 前記添加剤がアミド構造を含む、[1]又は[2]に記載の組成物。
[4] 赤外分光法により測定したときの前記式(I)で表される構成単位を含む主鎖由来のピーク強度に対する前記式(II)で表される末端構造に由来するピーク強度の割合が8%以上である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の組成物。
[5] 前記Bがチアジアゾール骨格を含む、[1]~[4]のいずれか1つに記載の組成物。
[6] 前記Aがチオフェン骨格を含む、[1]~[5]のいずれか1つに記載の組成物。
[7] 前記添加剤が、4-メチルカルボスチリル、プロピオンアミド、又はピリジノールである、[1]~[6]のいずれか1つに記載の組成物。
[8] [1]~[7]のいずれか1つに記載の組成物と、n型半導体材料とを含有するインク組成物。
[9] 前記n型半導体材料が、フラーレン化合物又は非フラーレン化合物である、[8]に記載のインク組成物。
[10] [8]又は[9]に記載のインク組成物を固化した固化膜。
[11] [10]に記載の固化膜を活性層として含む、光電変換素子。
【発明の効果】
【0007】
本発明の組成物によれば、特に光電変換素子の機能層を形成するためのインク組成物における経時的な粘度の増大を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、光電変換素子の構成例を模式的に示す図である。
図2図2は、イメージ検出部の構成例を模式的に示す図である。
図3図3は、指紋検出部の構成例を模式的に示す図である。
図4図4は、X線撮像装置用のイメージ検出部の構成例を模式的に示す図である。
図5図5は、静脈認証装置用の静脈検出部の構成例を模式的に示す図である。
図6図6は、間接方式のTOF型測距装置用イメージ検出部の構成例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、図面は、発明が理解できる程度に、構成要素の形状、大きさ及び配置が概略的に示されているに過ぎない。本発明は以下の記述によって限定されるものではなく、各構成要素は本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。以下の説明に用いる図面において、同様の構成要素については同一の符号を付して示し、重複する説明については省略する場合がある。また、本発明の実施形態にかかる構成は、必ずしも図示例の配置で使用されるとは限らない。
【0010】
1.共通する用語の説明
本明細書において、「高分子化合物」とは、分子量分布を有し、ポリスチレン換算の数平均分子量が、1×10以上1×10以下である重合体を意味する。高分子化合物に含まれる構成単位は、合計100モル%である。
【0011】
本明細書において、「構成単位」とは、高分子化合物中に1個以上存在する単位であって単量体化合物(モノマー)に由来する単位を意味する。
【0012】
本明細書において、「水素原子」は、軽水素原子であっても、重水素原子であってもよい。
【0013】
本明細書において、「ハロゲン原子」の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
【0014】
「置換基を有していてもよい」態様には、化合物又は基を構成するすべての水素原子が無置換の場合、及び1個以上の水素原子の一部又は全部が置換基によって置換されている場合の両方の態様が含まれる。
【0015】
置換基の例としては、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、1価の複素環基、置換アミノ基、アシル基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、置換オキシカルボニル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、及びニトロ基が挙げられる。
【0016】
本明細書において、「アルキル基」は置換基を有していてもよい。「アルキル基」は、特に断らない限り、直鎖状、分岐状、及び環状のいずれであってもよい。直鎖状のアルキル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1~50であり、好ましくは1~30であり、より好ましくは1~20である。分岐状又は環状であるアルキル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~50であり、好ましくは3~30であり、より好ましくは4~20である。
【0017】
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソアミル基、2-エチルブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、3-n-プロピルヘプチル基、アダマンチル基、n-デシル基、3,7-ジメチルオクチル基、2-エチルオクチル基、2-n-ヘキシル-デシル基、n-ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル墓、オクタデシル基、エイコシル基等の非置換アルキル基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、3-フェニルプロピル基、3-(4-メチルフェニル)プロピル基、3-(3,5-ジ-n-ヘキシルフェニル)プロピル基、6-エチルオキシヘキシル基等の置換アルキル基が挙げられる。
【0018】
「シクロアルキル基」は、単環の基であってもよく、多環の基であってもよい。シクロアルキル基は、置換基を有していてもよい。シクロアルキル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~30であり、好ましくは3~20である。
【0019】
シクロアルキル基の例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、アダマンチル基などの、置換基を有さないアルキル基、及びこれらの基における水素原子が、アルキル基、アルキルオキシ基、アリール基、フッ素原子などの置換基で置換された基が挙げられる。
【0020】
置換基を有するシクロアルキル基の具体例としては、メチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基が挙げられる。
【0021】
「アルケニル基」は、直鎖状でもあってもよく、分岐状であってもよい。アルケニル基は、置換基を有していてもよい。アルケニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常2~30であり、好ましくは2~20である。
【0022】
アルケニル基の例としては、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、7-オクテニル基などの、置換基を有しないアルケニル基、及びこれらの基における水素原子が、アルキルオキシ基、アリール基、フッ素原子などの置換基で置換された基が挙げられる。
【0023】
「シクロアルケニル基」は、単環の基であってもよく、多環の基であってもよい。シクロアルケニル基は、置換基を有していてもよい。シクロアルケニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~30であり、好ましくは3~20である。
【0024】
シクロアルケニル基の例としては、シクロヘキセニル基などの、置換基を有さないシクロアルケニル基、及びこれらの基における水素原子が、アルキル基、アルキルオキシ基、アリール基、フッ素原子などの置換基で置換された基が挙げられる。
【0025】
置換基を有するシクロアルケニル基の例としては、メチルシクロヘキセニル基、及びエチルシクロヘキセニル基が挙げられる。
【0026】
「アルキニル基」は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。アルキニル基は、置換基を有していてもよい。アルキニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常2~30であり、好ましくは2~20である。
【0027】
アルキニル基の例としては、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、3-ペンチニル基、4-ペンチニル基、1-ヘキシニル基、5-ヘキシニル基などの、置換基を有しないアルキニル基、及びこれらの基における水素原子が、アルキルオキシ基、アリール基、フッ素原子などの置換基で置換された基が挙げられる。
【0028】
「シクロアルキニル基」は、単環の基であってもよく、多環の基であってもよい。シクロアルキニル基は、置換基を有していてもよい。シクロアルキニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常4~30であり、好ましくは4~20である。
【0029】
シクロアルキニル基の例としては、シクロヘキシニル基などの置換基を有しないシクロアルキニル基、及びこれらの基における水素原子が、アルキル基、アルキルオキシ基、アリール基、フッ素原子などの置換基で置換された基が挙げられる。
【0030】
置換基を有するシクロアルキニル基の例としては、メチルシクロヘキシニル基、及びエチルシクロヘキシニル基が挙げられる。
【0031】
「アルキルオキシ基」は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。アルキルオキシ基は、置換基を有していてもよい。アルキルオキシ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1~30であり、好ましくは1~20である。
【0032】
アルキルオキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、3,7-ジメチルオクチルオキシ基、3-ヘプチルドデシルオキシ基、ラウリルオキシ基などの、置換基を有しないアルキルオキシ基、及びこれらの基における水素原子が、アルキルオキシ基、アリール基、フッ素原子等の置換基で置換された基が挙げられる。
【0033】
「シクロアルキルオキシ基」が有するシクロアルキル基は、単環の基であってもよく、多環の基であってもよい。シクロアルキルオキシ基は、置換基を有していてもよい。シクロアルキルオキシ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~30であり、好ましくは3~20である。
【0034】
シクロアルキルオキシ基の例としては、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基などの、置換基を有しないシクロアルキルオキシ基、及びこれらの基における水素原子が、フッ素原子、アルキル基などの置換基で置換された基が挙げられる。
【0035】
「アルキルチオ基」は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。アルキルチオ基は、置換基を有していてもよい。アルキルチオ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1~30であり、好ましくは1~20である。
【0036】
置換基を有していてもよいアルキルチオ基の例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n-ブチルチオ基、イソブチルチオ基、tert-ブチルチオ基、n-ペンチルチオ基、n-ヘキシルチオ基、n-ヘプチルチオ基、n-オクチルチオ基、2-エチルヘキシルチオ基、n-ノニルチオ基、n-デシルチオ基、3,7-ジメチルオクチルチオ基、3-ヘプチルドデシルチオ基、ラウリルチオ基、及びトリフルオロメチルチオ基が挙げられる。
【0037】
「シクロアルキルチオ基」が有するシクロアルキル基は、単環の基であってもよく、多環の基であってもよい。シクロアルキルチオ基は、置換基を有していてもよい。シクロアルキルチオ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~30であり、好ましくは3~20である。
【0038】
置換基を有していてもよいシクロアルキルチオ基の例としては、シクロヘキシルチオ基が挙げられる。
【0039】
「p価の芳香族炭素環基」とは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子p個を除いた残りの原子団を意味する。p価の芳香族炭素環基は、置換基をさらに有していてもよい。
【0040】
「アリール基」は、1価の芳香族炭素環基を意味する。アリール基は置換基を有していてもよい。アリール基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含まないで、通常6~60であり、好ましくは6~48である。
【0041】
アリール基の例としては、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントラセニル基、2-アントラセニル基、9-アントラセニル基、1-ピレニル基、2-ピレニル基、4-ピレニル基、2-フルオレニル基、3-フルオレニル基、4-フルオレニル基、2-フェニルフェニル基、3-フェニルフェニル基、4-フェニルフェニル基などの、置換基を有しないアリール基、及びこれらの基における水素原子が、アルキル基、アルキルオキシ基、アリール基、フッ素原子などの置換基で置換された基が挙げられる。
【0042】
「アリールオキシ基」は、置換基を有していてもよい。アリールオキシ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常6~60であり、好ましくは6~48である。
【0043】
アリールオキシ基の例としては、フェノキシ基、1-ナフチルオキシ基、2-ナフチルオキシ基、1-アントラセニルオキシ基、9-アントラセニルオキシ基、1-ピレニルオキシ基などの置換基を有しないアリールオキシ基、及びこれらの基における水素原子が、アルキル基、アルキルオキシ基、フッ素原子などの置換基で置換された基が挙げられる。
【0044】
「アリールチオ基」は、置換基を有していてもよい。アリールチオ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常6~60であり、好ましくは6~48である。
【0045】
置換基を有していてもよいアリールチオ基の例としては、フェニルチオ基、C1~C12アルキルオキシフェニルチオ基、C1~C12アルキルフェニルチオ基、1-ナフチルチオ基、2-ナフチルチオ基、及びペンタフルオロフェニルチオ基が挙げられる。「C1~C12」は、その直後に記載された基の炭素原子数が1~12であることを表す。さらに、「Cm~Cn」は、その直後に記載された基の炭素原子数がm~nであることを表す。以下同様である。
【0046】
「p価の複素環基」(pは、1以上の整数を表す。)は、置換基を有していてもよい複素環式化合物から環を構成する炭素原子又はヘテロ原子に直接結合する水素原子のうちのp個の水素原子を除いた残りの原子団を意味する。「p価の複素環基」には、「p価の芳香族複素環基」が含まれる。「p価の芳香族複素環基」は、置換基を有していてもよい芳香族複素環式化合物から、環を構成する炭素原子又はヘテロ原子に直接結合している水素原子のうちのp個の水素原子を除いた残りの原子団を意味する。
【0047】
芳香族複素環式化合物には、複素環自体が芳香族性を示す化合物に加えて、複素環自体は芳香族性を示さなくとも、複素環に芳香環が縮環している化合物が包含される。
【0048】
芳香族複素環式化合物のうち、複素環自体が芳香族性を示す化合物の具体例としては、オキサジアゾール、チアジアゾール、チアゾール、オキサゾール、チオフェン、ピロール、ホスホール、フラン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、トリアジン、ピリダジン、キノリン、イソキノリン、カルバゾール、及びジベンゾホスホールが挙げられる。
【0049】
芳香族複素環式化合物のうち、複素環自体が芳香族性を示さず、複素環に芳香環が縮環している化合物の具体例としては、フェノキサジン、フェノチアジン、ジベンゾボロール、ジベンゾシロール、及びベンゾピランが挙げられる。
【0050】
p価の複素環基は、置換基を有していてもよい。p価の複素環基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常2~60であり、好ましくは2~20である。
【0051】
1価の複素環基の例としては、1価の芳香族複素環基(例、チエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、キノリル基、イソキノリル基、ピリミジニル基、トリアジニル基)、1価の非芳香族複素環基(例、ピペリジル基、ピペラジル基)、及びこれらの基における水素原子が、アルキル基、アルキルオキシ基、フッ素原子などの置換基で置換された基が挙げられる。
【0052】
「置換アミノ基」は、置換基を有するアミノ基を意味する。アミノ基が有する置換基としては、アルキル基、アリール基、及び1価の複素環基が好ましい。置換アミノ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常2~30である。
【0053】
置換アミノ基の例としては、ジアルキルアミノ基(例、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基)、ジアリールアミノ基(例、ジフェニルアミノ基、ビス(4-メチルフェニル)アミノ基、ビス(4-tert-ブチルフェニル)アミノ基、ビス(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)アミノ基)が挙げられる。
【0054】
「アシル基」は、置換基を有していてもよい。アシル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常2~20であり、好ましくは2~18である。アシル基の具体例としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、トリフルオロアセチル基、及びペンタフルオロベンゾイル基が挙げられる。
【0055】
「イミン残基」とは、イミン化合物から、炭素原子-窒素原子二重結合を構成する炭素原子又は窒素原子に直接結合する水素原子を1個除いた残りの原子団を意味する。「イミン化合物」とは、分子内に、炭素原子-窒素原子二重結合を有する有機化合物を意味する。イミン化合物の例としては、アルジミン、ケチミン、及びアルジミン中の炭素原子-窒素原子二重結合を構成する窒素原子に結合している水素原子が、アルキル基などの置換基で置換された化合物が挙げられる。
【0056】
イミン残基の炭素原子数は、通常2~20であり、好ましくは2~18である。イミン残基の例としては、下記の構造式で表される基が挙げられる。
【0057】
【化5】
【0058】
「アミド基」とは、アミドから窒素原子に結合した水素原子1つを除いた残りの原子団を意味する。アミド基の炭素原子数は、通常1~20程度であり、好ましくは1~18である。アミド基の具体例としては、ホルムアミド基、アセトアミド基、プロピオアミド基、ブチロアミド基、ベンズアミド基、トリフルオロアセトアミド基、ペンタフルオロベンズアミド基、ジホルムアミド基、ジアセトアミド基、ジプロピオアミド基、ジブチロアミド基、ジベンズアミド基、ジトリフルオロアセトアミド基、及びジペンタフルオロベンズアミド基が挙げられる。
【0059】
「酸イミド基」とは、酸イミドから窒素原子に結合した水素原子1つを除いた残りの原子団を意味する。酸イミド基の炭素原子数は、通常4~20である。酸イミド基の具体例としては、以下に示す基が挙げられる。
【0060】
【化6】
【0061】
「置換オキシカルボニル基」とは、R’-O-(C=O)-で表される基を意味する。ここで、R’は、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、又は1価の複素環基を表す。
置換オキシカルボニル基は、炭素原子数が通常2~60であり、好ましくは炭素原子数が2~48である。
【0062】
置換オキシカルボニル基の具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、2-エチルヘキシルオキシカルボニル基、ノニルオキシカルボニル基、デシルオキシカルボニル基、3,7-ジメチルオクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基、トリフルオロメトキシカルボニル基、ペンタフルオロエトキシカルボニル基、パーフルオロブトキシカルボニル基、パーフルオロヘキシルオキシカルボニル基、パーフルオロオクチルオキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基、及びピリジルオキシカルボニル基が挙げられる。
【0063】
「アルキルスルホニル基」は、直鎖状でもあってもよく、分岐状であってもよい。アルキルスルホニル基は、置換基を有していてもよい。アルキルスルホニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1~30である。アルキルスルホニル基の具体例としては、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、及びドデシルスルホニル基が挙げられる。
【0064】
「2価の有機基」は、直鎖状、分岐状、環状のいずれの態様であってもよい。2価の有機基としては、例えば、2価の直鎖状脂肪族炭化水素基、2価の分岐状脂肪族炭化水素基、2価の環状炭化水素基、2価の芳香族炭化水素基、2価の複素環基、2価の芳香族複素環基が挙げられる。「2価の有機基」が環状の構造を含む場合には、「2価の有機基」は縮環構造、橋かけ構造を含んでいてもよい。
【0065】
化学式に付される「*」は、結合手を表す。
【0066】
「π共役系」とは、π電子が複数の結合にわたって非局在化している系を意味する。
【0067】
「(メタ)アクリル」には、アクリル、メタクリル、及びこれらの組み合わせが含まれる。
【0068】
本実施形態において、「インク組成物」は、塗布法に用いられる液状の組成物を意味し、着色した液に限定されない。また、「塗布法」は、インク組成物に代表される液状物質を用いて膜を形成する方法を意味している。
【0069】
本実施形態において、「組成物」及び「インク組成物」は、溶液であってもよく、分散液、エマルション(乳濁液)、サスペンション(懸濁液)等の分散液であってもよい。
【0070】
2.組成物
本実施形態の組成物は、式(I)で表される構成単位を含む高分子化合物であって、式(I)で表される構成単位を含み、かつ式(II)で表される末端構造を有する不純物高分子化合物をさらに含む高分子化合物を含有している。組成物に含まれうる高分子化合物は、通常、p型半導体材料である。本実施形態の組成物は、芳香族炭化水素を含む溶媒をさらに含む。本実施形態の組成物に含まれうる高分子化合物及び溶媒の詳細については後述する。
【0071】
3.インク組成物
本実施形態のインク組成物は、既に説明した「組成物」に加えて、n型半導体材料をさらに含みうる。すなわち、本実施形態のインク組成物は、p型半導体材料である2種以上の高分子化合物と、有機溶媒と、n型半導体材料とを含むことが好ましい。
【0072】
本実施形態のインク組成物は、光電変換素子製造用のインク組成物であって、好ましくは機能層である活性層を形成するためのインク組成物であることが想定されている。
【0073】
以下、本実施形態の「組成物」及び「インク組成物」に含まれうる成分について具体的に説明する。
【0074】
本実施形態において、p型半導体材料は、2種以上の電子供与性の高分子化合物を含み、n型半導体材料は、少なくとも1種の電子受容性化合物を含みうる。
【0075】
インク組成物に含まれる半導体材料が、p型半導体材料及びn型半導体材料のうちのいずれとして機能するかは、選択された化合物のHOMOエネルギーレベルの値又はLUMOエネルギーレベルの値から相対的に決定しうる。
【0076】
p型半導体材料のHOMO及びLUMOのエネルギーレベルの値と、n型半導体材料のHOMO及びLUMOのエネルギーレベルの値との関係は、インク組成物から形成される(固化)膜が、光電変換機能、光検出機能といった所定の機能を発揮する範囲に適宜設定することができる
【0077】
(1)p型半導体材料
本実施形態において、p型半導体材料は、高分子化合物である。具体的には、本実施形態のインク組成物が含みうるp型半導体材料は、ドナー構成単位(D構成単位ともいう。)とアクセプター構成単位(A構成単位ともいう。)とを含むドナー・アクセプター構造を有するπ共役系の高分子化合物(D-A型共役高分子化合物ともいう。)を含む。
【0078】
ここで、ドナー構成単位はπ電子が過剰である構成単位であり、アクセプター構成単位はπ電子が欠乏している構成単位である。
【0079】
本実施形態において、p型半導体材料を構成し得る構成単位には、ドナー構成単位とアクセプター構成単位とが直接的に結合した構成単位、さらにはドナー構成単位とアクセプター構成単位とが、任意好適なスペーサー(基又は構成単位)を介して結合した構成単位も含まれる。
【0080】
本実施形態において、p型半導体材料である高分子化合物としては、例えば、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミン構造を含むポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体が挙げられる。
【0081】
本実施形態において、p型半導体材料である高分子化合物は、チアジアゾール骨格を含む構成単位及び/又はチオフェン骨格を有する構成単位を含むことが好ましい。
【0082】
本実施形態において、組成物に含まれるp型半導体材料である高分子化合物は、下記式(I)で表される構成単位を含む高分子化合物であって、下記式(I)で表される構成単位を含み、かつ下記式(II)で表される末端構造を有する不純物高分子化合物をさらに含む高分子化合物である。
【0083】
【化7】
【0084】
式(I)中、
Aは、置換基を有していてもよい2価の有機基を表し、
Bは、チアジアゾール骨格、オキサジアゾール骨格、又はトリアゾール骨格を含む環構造を表し、
Yは、-CH-で表される基又は窒素原子を表す。
【0085】
【化8】
【0086】
式(II)中、
Bは、チアジアゾール骨格、オキサジアゾール骨格、又はトリアゾール骨格を含む環構造を表し、
Yは、-CH-で表される基又は窒素原子を表す。
【0087】
本実施形態において、上記のとおり、式(I)で表される構成単位は、Aで表される構造(構成単位)と、Bで表される環構造を含む構造(構成単位)とを含んでいる。
【0088】
本実施形態においては、Aはドナー構成単位(D構成単位)であり、Bを含む環構造はアクセプター構成単位(A構成単位)である。
【0089】
上記のとおり、本実施形態の高分子化合物は、不純物として不純物高分子化合物を含む。ここで、不純物高分子化合物としては、上記式(I)で表される構成単位を含み、かつ上記式(II)で表される末端構造を有する高分子化合物が想定されている。
【0090】
式(II)で表される末端基は、上記のとおり、アミド構造を含む末端構造を有しており、通常、高分子化合物の合成に用いられる原料である単量体に由来する。上記式(II)で表される末端基には、例えばケト互変異性化により合成後に生成した基が含まれる。
【0091】
よって、p型半導体材料である高分子化合物は、当初から不純物高分子化合物を含んでいる場合があり、さらには当初は不純物高分子化合物を含んでいなかったとしても、例えばケト互変異性化により事後的に、高分子化合物が不純物高分子化合物を含むこととなってしまう場合もありうる。
【0092】
式(I)中、Aは、下記式(III)で表される構造(構成単位)であることが好ましい。
【0093】
【化9】
【0094】
式(III)中、Arは、2価の芳香族複素環基又はアリーレン基を表す。
【0095】
式(III)中、Arで表される2価の芳香族複素環基(構成単位)の炭素原子数は、通常2~60であり、好ましくは4~60であり、より好ましくは4~20である。Arで表される2価の芳香族複素環基は置換基を有していてもよい。Arで表される2価の芳香族複素環基が有していてもよい置換基の例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、1価の複素環基、置換アミノ基、アシル基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、置換オキシカルボニル基、アルケニル基、アルキニル基、シアノ基、及びニトロ基が挙げられる。Ar(A)は、チオフェン骨格を含むことが好ましい。
【0096】
Arで表される2価の芳香族複素環基の例としては、下記式(101)~式(190)で表される基が挙げられる(なお、式(146)、(148)、(150)及び(154)は欠番である。)。
【0097】
【化10】
【0098】
【化11】
【0099】
【化12】
【0100】
【化13】
【0101】
式(101)~式(190)中、Rは前記と同じ意味を表す。Rが複数存在する場合、複数のRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0102】
Arで表される2価の芳香族複素環基(構成単位)としては、下記式(III-1)~式(III-6)で表される2価の基(構成単位)が好ましい。
【0103】
【化14】
【0104】
式(III-1)~式(III-6)中、X及びXは、それぞれ独立に、酸素原子又は硫黄原子を表し、Rは上記と同じ意味を表す。Rが複数存在する場合、複数のRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0105】
原料化合物(単量体)の入手性の観点から、式(III-1)~式(III-6)中のX及びXは、いずれも硫黄原子であることが好ましい。
【0106】
本実施形態において、p型半導体材料である高分子化合物は、2種以上の式(III)で表される構成単位を含んでいてもよい。
【0107】
Arで表されるアリーレン基とは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から、水素原子2つを除いた残りの原子団を意味する。芳香族炭化水素には、縮合環を有する化合物、独立したベンゼン環及び縮合環からなる群から選ばれる2つ以上が、直接又はビニレン等の2価の基を介して結合した化合物も含まれる。
【0108】
芳香族炭化水素が有していてもよい置換基の例としては、複素環式化合物が有していてもよい置換基として挙げた上記例と同様の置換基が挙げられる。
【0109】
Arで表されるアリーレン基における、置換基を除いた部分の炭素原子数は、通常6~60であり、好ましくは6~20である。置換基を含めたアリーレン基の炭素原子数は、通常6~100である。
【0110】
Ar1で表されるアリーレン基の例としては、フェニレン基(例えば、下記式1~式3)、ナフタレン-ジイル基(例えば、下記式4~式13)、アントラセン-ジイル基(例えば、下記式14~式19)、ビフェニル-ジイル基(例えば、下記式20~式25)、ターフェニル-ジイル基(例えば、下記式26~式28)、縮合環化合物基(例えば、下記式29~式35)、フルオレン-ジイル基(例えば、下記式36~式38)、及びベンゾフルオレン-ジイル基(例えば、下記式39~式46)が挙げられる。
【0111】
【化15】
【0112】
【化16】
【0113】
【化17】
【0114】
【化18】
【0115】
【化19】
【0116】
【化20】
【0117】
【化21】
【0118】
【化22】
【0119】
式1~式46中、Rは前記と同義である。Rが複数ある場合、複数あるRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0120】
式(I)中、Aは、下記式(IV)で表される構造(構成単位)であることがより好ましい。
【0121】
【化23】
【0122】
式(IV)中、
Ar及びArは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい3価の芳香族複素環基を表し、
Zは下記式(Z-1)~式(Z-7)のいずれか1つで表される基を表す。
【0123】
【化24】
【0124】
式(Z-1)~(Z-7)中、Rは、
水素原子、
ハロゲン原子、
置換基を有していてもよいアルキル基、
置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
置換基を有していてもよいアルケニル基、
置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、
置換基を有していてもよいアルキニル基、
置換基を有していてもよいシクロアルキニル基、
置換基を有していてもよいアリール基、
置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいシクロアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいアリールオキシ基、
置換基を有していてもよいアルキルチオ基、
置換基を有していてもよいシクロアルキルチオ基、
置換基を有していてもよいアリールチオ基、
置換基を有していてもよい1価の複素環基、
置換基を有していてもよい置換アミノ基、
置換基を有していてもよいイミン残基、
置換基を有していてもよいアミド基、
置換基を有していてもよい酸イミド基、
置換基を有していてもよい置換オキシカルボニル基、
シアノ基、
ニトロ基、
-C(=O)-Rで表される基、又は
-SO-Rで表される基を表し、
及びRは、それぞれ独立して、
水素原子、
置換基を有していてもよいアルキル基、
置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
置換基を有していてもよいアリール基、
置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいシクロアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいアリールオキシ基、又は
置換基を有していてもよい1価の複素環基を表す。
式(Z-1)~式(Z-7)中、Rが2つある場合、2つあるRは同一であっても異なっていてもよい。
【0125】
式(Z-1)~(Z-7)中のRは、好ましくは水素原子、アルキル基、又はアリール基であり、より好ましくは水素原子又はアルキル基であり、さらに好ましくは、水素原子又は炭素原子数1~40のアルキル基であり、より好ましくは水素原子又は炭素原子数1~30のアルキル基であり、特に好ましくは水素原子又は炭素原子数1~20のアルキル基である。これらの基は、置換基を有していてもよい。Rが複数存在する場合、複数存在するRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0126】
式(IV)で表される構造(構成単位)は、下記式(IV-1)で表される構造(構成単位)であることが好ましい。
【0127】
【化25】
【0128】
式(IV-1)中、Zは前記と同様の意味を表す。
【0129】
式(IV-1)で表される構造(構成単位)の好ましい例としては、下記式(501)~式(505)で表されるチオフェン骨格を含む構造(構成単位)が挙げられる。
【0130】
【化26】
【0131】
上記式(501)~式(505)中、Rは前記と同様の意味を表す。Rが2つ存在する場合、2つのRは互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0132】
本実施形態において、上記式(I)で表される構成単位を含む高分子化合物の例としては、式(I)で表される構成単位中のAであって、高分子化合物の少なくとも一端側に位置しているAに、末端基としてハロゲン原子が結合した高分子化合物が挙げられる。
【0133】
本実施形態のp型半導体材料である高分子化合物に含まれる式(I)で表される構成単位は、上記Aで表される構造(式(III)又は(IV)で表される構造(構成単位))に加えて、下記式(V)で表される構造(Bで表される環構造を含む構造(構成単位))を含む。
【0134】
【化27】
【0135】
前記式(V)中、Bは、チアジアゾール骨格、オキサジアゾール骨格、又はトリアゾール骨格を含む環構造を表し、Yは、-CH-で表される基又は窒素原子を表す。Bは、チアジアゾール骨格を含むことが好ましい。
【0136】
前記式(V)で表される構造(構成単位)の炭素原子数は、通常2~20であり、好ましくは4~20であり、より好ましくは4~10である。
【0137】
下記式(V)で表される構造(構成単位)は、置換基をさらに有していてもよい。置換基の例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、1価の複素環基、置換アミノ基、アシル基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、置換オキシカルボニル基、アルケニル基、アルキニル基、シアノ基、及びニトロ基が挙げられる。
【0138】
式(V)で表される構造(構成単位)の好ましい例としては、下記式(V-1)~式(V-3)で表される2価の基が挙げられる。
【0139】
【化28】
【0140】
式(V-1)~式(V-3)中、Rは前記と同じ意味を表す。Rが複数存在する場合、複数のRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0141】
本実施形態において、p型半導体材料である高分子化合物は、2種以上のAで表される構造(式(III)又は(IV)で表される構造(構成単位)を含んでいてもよく、2種以上の式(V)で表される構造(構成単位)を含んでいてもよい。
【0142】
本実施形態において、p型半導体材料である高分子化合物、さらには不純物高分子化合物は、その主鎖が既に説明した式(I)で表される構成単位のみから構成されているD-A型共役高分子化合物であってよく、さらに他の構成単位を含むD-A型共役高分子化合物であってもよい。
【0143】
既に説明した式(I)で表される構成単位を含むp型半導体材料である高分子化合物において、式(I)で表される構成単位の合計量は、高分子化合物が含むすべての構成単位の量を100モル%としたときに、通常20~100モル%であり、p型半導体材料としての電荷輸送性を向上させる観点から、好ましくは40~100モル%であり、より好ましくは50~100モル%である。
【0144】
p型半導体材料である高分子化合物の好適な具体例としては、下記式P-1で表される高分子化合物が挙げられる。
【0145】
【化29】
【0146】
本実施形態において、p型半導体材料である高分子化合物は、所定のポリスチレン換算の重量平均分子量を有することが好ましい。
【0147】
ここで、ポリスチレン換算の重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、ポリスチレンの標準試料を用いて算出した重量平均分子量を意味する。
【0148】
p型半導体材料である高分子化合物のポリスチレン換算の重量平均分子量は、特に溶媒に対する溶解性を向上させる観点から、3000以上500000以下であることが好ましい。
【0149】
アミド構造である前記式(II)で表される末端構造の割合の測定は、例えば、従来公知の任意好適な測定装置(例えば、ThermoFisher社製Nicolet iS50 FT-IR)を用いる常法に従う赤外分光法により行うことができる。
【0150】
具体的には、本実施形態の高分子化合物にさらに含まれる不純物高分子化合物に含まれるアミド構造を含む末端構造に由来するC=O伸縮ピーク(1700cm-1)強度を、式(I)で表される構成単位を含む主鎖由来のピーク(954cm-1)強度で除算し、さらに100を乗じた値を、不純物高分子化合物に含まれるアミド構造を含む末端構造の割合(%)とすればよい。
【0151】
なお、赤外分光法において、1500cm-1以上の波長領域には官能基に由来する特定の波長領域の吸収(特性吸収帯ともいう。)が観測され、1500cm-1以下の波長領域(指紋領域ともいう)には、官能基に由来する吸収と分子構造に由来する吸収が観測される。しかしながら、観測される吸収ピークは、赤外吸収スペクトルのピーク形状、ピーク強度又はベースライン形状などの影響により、上記の波数から±10cm-1の範囲でシフトすることがある。
【0152】
また、不純物高分子化合物に含まれるアミド構造を含む末端構造に由来するC=O伸縮ピーク及び式(1)で表される構成単位を含む主鎖由来の吸収ピークの波数は、式(1)又は式(2)に含まれるA、B及びYのそれぞれの構造により、±50cm-1の範囲でシフトする場合がある。
【0153】
本実施例において、不純物高分子化合物に含まれるアミド構造を含む末端構造に由来するC=O伸縮ピーク強度及び式(1)で表される構成単位を含む主鎖由来のピーク強度は、それぞれ1700cm-1及び954cm-1であるか又は上記の範囲でシフトしているピークであって、不純物高分子化合物に含まれるアミド構造を含む末端構造に由来するC=O伸縮ピーク及び式(1)で表される構成単位を含む主鎖由来のピークとして同定した波数における数値を使用している。吸収ピークがシフトしている場合は、上記のシフト範囲及び公知文献に記載の吸収波長の領域を参考にして吸収ピークを特定し、上記割合を算出すればよい。
【0154】
(p型半導体材料である高分子化合物の製造方法)
本実施形態において、既に説明したp型半導体材料である高分子化合物は、従来公知の任意好適な製造方法(例えば国際公開第2013/051676号、国際公開第2011/052709号、国際公開第2018/220785号に記載の方法)に従って製造することができる。
【0155】
本実施形態において、既に説明したp型半導体材料である高分子化合物は、従来公知の任意好適な溶媒を重合溶媒として用いる重合工程(反応工程)を含む方法により製造することができる。
【0156】
本実施形態の高分子化合物の製造方法に好適に適用できる重合溶媒としては、例えば、炭化水素溶媒、ケトン溶媒、アルコール溶媒、エーテル溶媒、フェノール類溶媒、及びカルボン酸エステル溶媒が挙げられる。本実施形態において、重合溶媒としては、アルコール溶媒を用いることが好ましい。
【0157】
本実施形態において、重合溶媒は、少なくとも1種の炭化水素溶媒である第1の溶媒、少なくとも1個の炭素原子、少なくとも1個の水素原子、及び少なくとも1個の酸素原子のみからなる少なくとも1種の有機溶媒である第2の溶媒、及び水を含みうる。
【0158】
重合溶媒は、第1の溶媒、第2の溶媒、及び水以外の任意の溶媒を含んでいてもよい。任意の溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンが挙げられる。任意の溶媒の体積比率は、第1の溶媒の体積、第2の溶媒の体積、及び水の体積の合計に対して、好ましくは50体積%以下であり、より好ましくは25体積%以下であり、さらに好ましくは10体積%以下である。反応溶媒は、好ましくは実質的に前記第1の溶媒、前記第2の溶媒、及び水のみからなる。
【0159】
第1の溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素溶媒、脂環式炭化水素溶媒、及び芳香族炭化水素溶媒が挙げられる。
【0160】
脂肪族炭化水素溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカンが挙げられる。
【0161】
脂環式炭化水素溶媒としては、例えば、シクロヘキサン、デカリンが挙げられる。
芳香族炭化水素溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン(オルトキシレン)、トリメチルベンゼン(例、メシチレン)、テトラリン、インダン、ナフタレン、メチルナフタレンが挙げられる。
【0162】
第1の溶媒は、1種単独の炭化水素溶媒であっても、2種以上の炭化水素溶媒の組み合わせであってもよい。
【0163】
第1の溶媒は、好ましくはトルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、デカリン、テトラリン、インダン、ナフタレン、及びメチルナフタレンからなる群から選択される1種以上であり、より好ましくは、トルエン、メシチレン、及びテトラリンからなる群から選択される1種以上であり、さらに好ましくは、トルエン、メシチレン、又はテトラリンである。
【0164】
第2の溶媒としての有機溶媒は、ヒドロキシ基、オキソ基、オキシカルボニル基(-(C=O)-O-で表される基)、エーテル結合(-O-で表される基)等の、酸素原子を含む基を、1つのみ有していてもよいし、2つ以上有していてもよい。
【0165】
また、第2の溶媒としての有機溶媒は、酸素原子を含む基を、1種のみ有していてもよいし、2種以上有していてもよい。
【0166】
第2の溶媒としては、例えば、アルコール溶媒、エーテル溶媒、ケトン溶媒、フェノール溶媒、及びカルボン酸エステル溶媒が挙げられる。
【0167】
アルコール溶媒としては、例えば、第1級アルコール(例、メタノール、エタノール、2-フェニルエタノール、n-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、3-メチル-1-ブタノール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、2-エチル-1-ヘキサノール、1-オクタノール、ベンジルアルコール)、第2級アルコール(例、イソプロピルアルコール、sec-ブチルアルコール、2-オクタノール、3-ペンタノール、シクロヘキサノール)、第3級アルコール(例、tert-ブチルアルコール、1-メチルシクロヘキサノール、1-エチルシクロヘキサノール、1-メチルシクロペンタノール、tert-アミルアルコール、2-フェニル-2-プロパノール、2-メチル-1-フェニル-2-プロパノール、2-メチル-2-ペンタノール、3-エチル-3-ペンタノール)が挙げられる。
【0168】
エーテル溶媒としては、アニソール、シクロペンチルメチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサンが挙げられる。
【0169】
ケトン溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンが挙げられる。
【0170】
フェノール類溶媒としては、例えば、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾールが挙げられる。
【0171】
カルボン酸エステル溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、γ―ブチルラクトンが挙げられる。
【0172】
第2の溶媒は、1種単独でも、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0173】
第2の溶媒は、好ましくはアルコール溶媒、エーテル溶媒、及びケトン溶媒からなる群から選択される1種以上である。
【0174】
第2の溶媒は、水と混和しない溶媒であってもよい。ある溶媒が「水と混和しない」とは、当該溶媒に対して5質量%以上の水を当該溶媒に添加して得られた液、及び、水に対して5質量%以上の当該溶媒を水に添加して得られた液が、透明な1相の溶液を形成しないことをいう。
【0175】
第2の溶媒として用いられうる、水と混和しない溶媒としては、例えば、2-フェニルエタノール、3-メチル-1-ブタノール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、2-エチル-1-ヘキサノール、1-オクタノール、ベンジルアルコール、2-オクタノール、シクロヘキサノール、1-メチルシクロヘキサノール、1-エチルシクロヘキサノール、1-メチルシクロペンタノール、2-フェニル-2-プロパノール、2-メチル-1-フェニル-2-プロパノール、2-メチル-2-ペンタノール、3-エチル-3-ペンタノール、シクロペンチルメチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルイソブチルケトン、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチルが挙げられる。
【0176】
ある溶媒が「水と混和する」とは、当該溶媒に対して5質量%以上の水を当該溶媒に添加して得られた液、及び、水に対して5質量%以上の当該溶媒を水に添加して得られた液が、両方にて透明な1相の溶液を形成することをいう。
【0177】
第2の溶媒は、水と混和する溶媒であってもよい。第2の溶媒として用いられうる、水と混和する溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、sec-ブチルアルコール、3-ペンタノール、tert-ブチルアルコール、tert-アミルアルコール、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、フェノール、酢酸エチル、γ―ブチルラクトンが挙げられ、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンからなる群から選択される1種以上が好ましく、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフランからなる群から選択される1種以上がより好ましい。
【0178】
第1の溶媒と第2の溶媒との組み合わせとしては、例えば、第1の溶媒として挙げられた上記例と、第2の溶媒として挙げられた上記例とのすべての組み合わせが挙げられる。第1の溶媒と第2の溶媒との組み合わせは、特に限定されない。
【0179】
第1の溶媒、第2の溶媒、及び水は、体積比a:b:cで混合される。ここで、a+b+c=100であり、cは10を超え100未満である。すなわち、第1の溶媒の体積、第2の溶媒の体積、及び水の体積の合計に対する水の体積比率c(%)は、10体積%を超え100体積%未満である。
【0180】
水の体積比率は、反応溶媒を調製するために用いられた第1の溶媒の体積、第2の溶媒の体積、及び水の体積に基づいて決定される。
【0181】
第2の溶媒が水と混和する場合、第1の溶媒の体積、第2の溶媒の体積、及び水の体積の合計に対する水の体積比率c(%)は、10体積%を超え、好ましくは25体積%以上であり、より好ましくは25体積%を超え、さらに好ましくは35体積%以上であり、さらに好ましくは35体積%を超え、さらに好ましくは45体積%以上であり、さらに好ましくは45体積%を超え、さらに好ましくは50体積%以上であり、特に好ましくは50体積%を超える。
【0182】
第2の溶媒は水と混和する場合、第1の溶媒の体積、第2の溶媒の体積、及び水の体積の合計に対する水の体積比率c(%)は、100体積%未満であり、好ましくは90体積%以下であり、より好ましくは90体積%未満であり、さらに好ましくは80体積%以下であり、さらに好ましくは80体積%未満であり、さらに好ましくは70体積%以下であり、さらに好ましくは70体積%未満であり、さらに好ましくは65体積%以下であり、特に好ましくは65体積%未満である。
【0183】
第2の溶媒が水と混和する場合、第1の溶媒の体積、第2の溶媒の体積、及び水の体積の合計に対する水の体積比率c(%)は、10体積%を超え100体積%未満であり、好ましくは25体積%以上90体積%以下であり、より好ましくは25体積%を超え90体積%未満であり、さらに好ましくは35体積%以上80体積%以下であり、さらに好ましくは35体積%を超え80体積%未満であり、さらに好ましくは45体積%以上70体積%以下であり、さらに好ましくは45体積%を超え70体積%未満であり、さらに好ましくは50体積%以上65体積%以下であり、特に好ましくは50体積%を超え65体積%未満である。
【0184】
第2の溶媒が水と混和しない場合、第1の溶媒の体積、第2の溶媒の体積、及び水の体積の合計に対する水の体積比率c(%)は、10体積%を超え、好ましくは20体積%以上であり、より好ましくは20体積%を超え、さらに好ましくは25体積%以上であり、さらに好ましくは25体積%を超え、さらに好ましくは35体積%以上であり、さらに好ましくは35体積%を超え、さらに好ましくは45体積%以上であり、さらに好ましくは45体積%を超え、さらに好ましくは50体積%以上であり、特に好ましくは50体積%を超える。
【0185】
第2の溶媒が水と混和しない場合、第1の溶媒の体積、第2の溶媒の体積、及び水の体積の合計に対する水の体積比率c(%)は、100体積%未満であり、好ましくは90体積%以下であり、より好ましくは90体積%未満であり、さらに好ましくは80体積%以下であり、さらに好ましくは80体積%未満であり、さらに好ましくは70体積%以下であり、さらに好ましくは70体積%未満であり、さらに好ましくは65体積%以下であり、特に好ましくは65体積%未満である。
【0186】
第2の溶媒が水と混和しない場合、第1の溶媒の体積、第2の溶媒の体積、及び水の体積の合計に対する水の体積比率c(%)は、10体積%を超え100体積%未満であり、好ましくは20体積%以上90体積%以下であり、より好ましくは20体積%を超え90体積%未満であり、さらに好ましくは25体積%以上90体積%以下であり、さらに好ましくは25体積%を超え90体積%未満であり、さらに好ましくは35体積%以上80体積%以下であり、さらに好ましくは35体積%を超え80体積%未満であり、さらに好ましくは45体積%以上70体積%以下であり、さらに好ましくは45体積%を超え70体積%未満であり、さらに好ましくは50体積%以上65体積%以下であり、特に好ましくは50体積%を超え65体積%未満である。
【0187】
第1の溶媒と第2の溶媒の混合体積比a:bは1:9~9:1の範囲が好ましく、3:7~7:3の範囲がより好ましい。
【0188】
(2)添加剤
本実施形態の組成物は、既に説明した式(II)で表されるアミド構造を含む末端構造(末端基)と相補的な水素結合を2組以上形成することができる添加剤(化合物)を含む。
【0189】
本実施形態において好適に用いることができる添加剤としては、例えば、下記式で表される化合物が挙げられる。本実施形態においては、添加剤として、1種又は2種以上の後述する化合物を組み合わせて用いることができる。
【0190】
【化30】
【0191】
【化31】
【0192】
【化32】
【0193】
【化33】
【0194】
前記式中、Aは、酸素原子、硫黄原子またはNH基を表し、好ましくは酸素原子またはNH基である。複数あるAは同一であっても異なっていてもよい。前記式中、複数あるRは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、置換基を有していてもよいアルキルチオ基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアリールチオ基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基、置換基を有していてもよいアリールアルキルオキシ基、置換基を有していてもよいアリールアルキルチオ基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアシルオキシ基、置換基を有していてもよいアミド基、置換基を有していてもよいアリールアルケニル基、置換基を有していてもよいアリールアルキニル基、臭素原子、フッ素原子、ヨウ素原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ニトロ基、シアノ基を表す。
【0195】
前記式で表される添加物である化合物の具体例としては、下記式(a)~(i)で表される化合物が挙げられる。
【0196】
【化34】
【0197】
本実施形態において、添加剤の好適な具体例としては、上記例示の鎖状アミド構造を有する添加剤及び芳香族性を示す環状アミド構造を有する添加剤が挙げられる。
【0198】
また、具体的な添加剤の例としては、前記式(a)で表される4-メチルカルボスチリル(4MCS)、前記式(d)で表されるプロピオンアミド、前記式(b)で表される2-ピリジノールが挙げられる。
【0199】
本実施形態において、不純物高分子化合物のアミド構造と相互作用させ、組成物(インク組成物)の経時的な増粘率を抑制する観点から、芳香族性を示す環状アミド構造を有する添加剤を使用することが好ましい。すなわち、本実施形態においては、上記例示の具体的な添加剤のうち、前記式(a)で表される4-メチルカルボスチリル(4MCS)及び前記式(b)で表される2-ピリジノールを採用することが好ましい。
【0200】
本実施形態において、添加剤の含有量(添加量)は、組成物(インク組成物)の特性及び作用効果を損なわないことを条件として特に限定されない。添加剤の添加量は、組成物中に含まれるp型半導体材料である高分子化合物に含まれる不純物高分子化合物のアミド構造を含む末端構造に結合して、不純物高分子化合物同士の結合を抑制して、組成物(インク組成物)の経時的な増粘率を抑制する観点から、前記式(II)で表される末端構造を有する不純物高分子化合物の物質量と等量とすればよく、前記式(II)で表される末端構造を有する不純物高分子化合物の物質量に対して(若干の)過剰量とすることが好ましい。
【0201】
より具体的には、本実施形態の組成物において、添加剤の添加量は、溶媒に対する添加剤の溶解度を超えない濃度となる量とすることができる。
【0202】
本実施形態の組成物において、添加剤の添加量は、前記式(II)で表される末端構造を有する不純物高分子化合物の物質量と添加剤の物質量が等量以上となる量とすることが好ましく、添加剤の添加量が、前記式(II)で表される末端構造を有する不純物高分子化合物の物質量と前記式(I)で表される構成単位を含む高分子化合物の物質量との総量と等量以上となる量であることがより好ましい。
【0203】
添加剤同士の会合を抑制し、かつ前記式(II)で表される末端構造を有する不純物高分子化合物の当該末端構造と添加剤との間に水素結合を生成させることにより効果的に結合させる観点から、前記式(II)で表される末端構造を有する不純物高分子化合物の物質量と前記式(I)で表される構成単位を含む高分子化合物の物質量との総量に対する添加剤の物質量が10000倍以下となる量とすることがより好ましい。
【0204】
本実施形態の組成物において、例えば、不純物高分子化合物の分子量が添加剤の分子量の1000倍である場合、前記式(II)で表される末端構造を有する不純物高分子化合物と前記式(I)で表される構成単位を含む高分子化合物との合計の濃度が6mg/mLである場合には、添加剤は0.006mg/mL以上60mg/mL以下の濃度となるように添加することが好ましい。
【0205】
組成物(インク組成物)の調製にあたり、添加剤の添加のタイミングは、高分子化合物と溶媒との溶液の加熱した後、降温させ、溶液が常温にまで戻ったタイミングで添加することが好ましい。
【0206】
添加剤を添加する方法は、特に限定されない。添加剤は、組成物(インク組成物)の調製にあたり、従来公知の任意好適な手順に従って添加することができる。
【0207】
具体的には、添加剤は、組成物(インク組成物)の調製にあたり、他の成分(p型半導体である高分子化合物、n型半導体材料及び溶媒)と混合する態様としてもよく、例えば、予め、p型半導体材料のみ、又はp型半導体材料及び溶媒と混合しておき、さらにn型半導体材料、又はn型半導体材料及び溶媒と混合する態様としてもよい。
【0208】
本実施形態によれば、上記化合物を添加剤として用いることにより、赤外分光法により測定したときの前記式(I)で表される構成単位を含む主鎖由来のピーク強度に対する前記(II)で表される末端構造に由来するピーク強度の割合が、例えば、6%以上、さらには8%以上であったとしても、通常、2%、さらには3%を超えると粘度が経時的に増大してしまう傾向があるところ、当該末端構造に添加剤である上記化合物が水素結合を形成してキャッピングすることにより、p型半導体材料である高分子化合物同士の結合を効果的に抑制することができる。そのため、組成物、さらには特に光電変換素子の機能層を形成するためのインク組成物における経時的な粘度の増大を抑制することができる。組成物において経時的な粘度が増加すると、形成される膜(固化膜)の厚さが不均一となり、その結果インク組成物から形成される固化膜を含む光電変換素子では、その特性にばらつきが生じたり、所望の特性が得られなくなるおそれがある。したがって、本実施形態によれば、製造される光電変換素子の特性におけるばらつきの発生を抑制することができる。
【0209】
すなわち、既に説明した添加剤を用いる本実施形態の態様は、赤外分光法により測定したときの前記式(I)で表される構成単位を含む主鎖由来のピーク強度に対する前記式(II)で表される末端構造に由来するピーク強度の割合が好ましくは8%以上、より好ましくは6.4%以上、さらには6%以上である場合において特に好ましく適用することができる。
【0210】
(3)n型半導体材料
本実施形態のインク組成物が含みうるn型半導体材料は、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。
【0211】
低分子化合物であるn型半導体材料(電子受容性化合物)の例としては、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8-ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、C60フラーレン等のフラーレン及びその誘導体であるフラーレン誘導体(以下、フラーレン化合物という場合がある。)、並びに、バソクプロイン等のフェナントレン誘導体が挙げられる。
【0212】
高分子化合物であるn型半導体材料の例としては、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミン構造を有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、並びに、ポリフルオレン及びその誘導体が挙げられる。
【0213】
n型半導体材料としては、フラーレン及びフラーレン誘導体から選ばれる1種以上が好ましく、フラーレン誘導体がより好ましい。
【0214】
フラーレンの例としては、C60フラーレン、C70フラーレン、C76フラーレン、C78フラーレン、及びC84フラーレンが挙げられる。フラーレン誘導体の例としては、これらのフラーレンの誘導体が挙げられる。フラーレン誘導体とは、フラーレンの少なくとも一部が修飾された化合物を意味する。
【0215】
フラーレン誘導体の例としては、下記式で表される化合物が挙げられる。
【0216】
【化35】
【0217】
式中、
は、アルキル基、アリール基、1価の複素環基、又はエステル構造を有する基を表す。複数あるRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
は、アルキル基、又はアリール基を表す。複数あるRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0218】
で表されるエステル構造を有する基の例としては、下記式で表される基が挙げられる。
【0219】
【化36】
【0220】
式(19)中、u1は、1~6の整数を表す。u2は、0~6の整数を表す。Rは、アルキル基、アリール基、又は1価の複素環基を表す。
【0221】
60フラーレン誘導体の例としては、下記の化合物が挙げられる。
【0222】
【化37】
【0223】
70フラーレン誘導体の例としては、下記の化合物が挙げられる。
【0224】
【化38】
【0225】
フラーレン誘導体の具体例としては、[6,6]-フェニル-C61酪酸メチルエステル(C60PCBM、[6,6]-Phenyl C61 butyric acid methyl ester)、[6,6]-フェニル-C71酪酸メチルエステル(C70PCBM、[6,6]-Phenyl C71 butyric acid methyl ester)、[6,6」-フェニル-C85酪酸メチルエステル(C84PCBM、[6,6]-Phenyl C85 butyric acid methyl ester)、及び[6,6]-チエニル-C61酪酸メチルエステル([6,6]-Thienyl C61 butyric acid methyl ester)が挙げられる。
【0226】
本実施形態のインク組成物に含まれうるn型半導体材料には、フラーレン化合物ではない化合物が含まれる。本明細書において、フラーレン化合物ではないn型半導体材料を、「非フラーレン化合物」という。非フラーレン化合物としては、多種の化合物が公知であり、従来公知の任意好適な非フラーレン化合物を本実施形態においてn型半導体材料として用いることができる。
【0227】
本実施形態にかかるインク組成物は、n型半導体材料である化合物を、1種のみ含んでいてもよく、複数種類含んでいてもよい。
【0228】
本実施形態において、n型半導体材料である非フラーレン化合物は、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド構造を含む化合物であることが好ましい。非フラーレン化合物であるペリレンテトラカルボン酸ジイミド構造を含む化合物の例としては、下記式で表される化合物が挙げられる。
【0229】
【化39】
【0230】
【化40】
【0231】
【化41】
【0232】
【化42】
【0233】
式中、Rは、前記定義のとおりである。複数あるRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0234】
本実施形態において、n型半導体材料は、好ましくは、下記式(VI)で表される化合物を含む。下記式(VI)で表される化合物は、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド構造を含む非フラーレン化合物である。
【0235】
【化43】
【0236】
前記式(VI)中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、置換基を有していてもよいシクロアルキルオキシ基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよい1価の芳香族複素環基を表す。複数あるRは互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0237】
好ましくは、複数あるRは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキル基である。
【0238】
は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、置換基を有していてもよいシクロアルキルオキシ基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよい1価の芳香族複素環基を表す。複数あるRは同一であっても異なっていてもよい。
【0239】
式(VI)で表される化合物の好ましい例としては、下記式で表される化合物が挙げられる。
【0240】
【化44】
【0241】
本実施形態において、n型半導体材料は、下記式(VII)で表される化合物を含むことが好ましい。

-B10-A (VII)
【0242】
式(VII)中、
及びAは、それぞれ独立に、電子求引性の基を表し、B10は、π共役系を含む基を表す。
【0243】
及びAである電子求引性の基の例としては、-CH=C(-CN)で表される基、及び下記式(a-1)~式(a-9)で表される基が挙げられる。
【0244】
【化45】
【0245】
式(a-1)~式(a-7)中、
Tは、置換基を有していてもよい炭素環、又は置換基を有していてもよい複素環を表す。炭素環及び複素環は、単環であってもよく、縮合環であってもよい。これらの環が置換基を複数有する場合、複数ある置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0246】
Tである置換基を有していてもよい炭素環の例としては、芳香族炭素環が挙げられる。Tである置換基を有していてもよい炭素環は、好ましくは芳香族炭素環である。Tである置換基を有していてもよい炭素環の具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環、ピレン環、及びフェナントレン環が挙げられ、好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、及びフェナントレン環であり、より好ましくはベンゼン環及びナフタレン環であり、さらに好ましくはベンゼン環である。これらの環は、置換基を有していてもよい。
【0247】
Tである置換基を有していてもよい複素環の例としては、芳香族複素環が挙げられ、好ましくは芳香族複素環である。Tである置換基を有していてもよい複素環の具体例としては、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、及びチエノチオフェン環が挙げられ、好ましくはチオフェン環、ピリジン環、ピラジン環、チアゾール環、及びチエノチオフェン環であり、より好ましくはチオフェン環である。これらの環は、置換基を有していてもよい。
【0248】
Tである炭素環又は複素環が有し得る置換基の例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルキルオキシ基、アリール基、及び1価の複素環基が挙げられ、好ましくはフッ素原子、及び/又は炭素原子数1~6のアルキル基である。
【0249】
、X、及びXは、それぞれ独立して、酸素原子、硫黄原子、アルキリデン基、又は=C(-CN)で表される基を表し、好ましくは、酸素原子、硫黄原子、又は=C(-CN)で表される基である。
【0250】
は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、置換基を有していてもよいアリール基又は1価の複素環基を表す。
【0251】
a1、Ra2、Ra3、Ra4、及びRa5は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、置換基を有していてもよいアリール基又は1価の複素環基を表し、好ましくは、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基である。
【0252】
【化46】
【0253】
式(a-8)及び式(a-9)中、Ra6及びRa7は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、置換基を有していてもよいシクロアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい1価の芳香族炭素環基、又は置換基を有していてもよい1価の芳香族複素環基を表し、複数あるRa6及びRa7は、同一であっても異なっていてもよい。
【0254】
及びAである電子求引性の基としては、下記の式(a-1-1)~式(a-1-4)並びに式(a-6-1)及び式(a-7-1)のいずれかで表される基が好ましく、式(a-1-1)で表される基がより好ましい。ここで、複数あるRa10は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を表し、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、又は置換基を有していてもよいアルキル基を表す。Ra3、Ra4、及びRa5は、それぞれ独立して、前記と同義であり、好ましくはそれぞれ独立して置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。
【0255】
【化47】
【0256】
10であるπ共役系を含む基の例としては、後述する式(VIII)で表される化合物における、-(Sn1-B11-(Sn2-で表される基が挙げられる。
【0257】
本実施形態において、n型半導体材料は、下記式(VIII)で表される化合物であることが好ましい。

-(Sn1-B11-(Sn2-A (VIII)
【0258】
式(VIII)中、A及びAは、それぞれ独立に、電子求引性の基を表す。A及びAの例及び好ましい例は、前記式(VII)におけるA及びAについて説明した例及び好ましい例と同様である。
【0259】
及びSは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の炭素環基、置換基を有していてもよい2価の複素環基、-C(Rs1)=C(Rs2)-で表される基(ここで、Rs1及びRs2は、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基(好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよい1価の複素環基を表す。)、又は-C≡C-で表される基を表す。
【0260】
及びSで表される、置換基を有していてもよい2価の炭素環基及び置換基を有していてもよい2価の複素環基は、縮合環であってもよい。2価の炭素環基又は2価の複素環基が、複数の置換基を有する場合、複数ある置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0261】
式(VIII)中、n1及びn2は、それぞれ独立に、0以上の整数を表し、好ましくはそれぞれ独立に、0又は1を表し、より好ましくは、いずれも0又は1を表す。
【0262】
2価の炭素環基の例としては、2価の芳香族炭素環基が挙げられる。
2価の複素環基の例としては、2価の芳香族複素環基が挙げられる。
2価の芳香族炭素環基又は2価の芳香族複素環基が縮合環である場合、縮合環を構成する環の全部が芳香族性を有する縮合環であってもよく、一部のみが芳香族性を有する縮合環であってもよい。
【0263】
及びSの例としては、既に説明したArで表される2価の芳香族複素環基の例として挙げられた式(101)~(190)のいずれかで表される基、及びこれらの基における水素原子が置換基で置換された基が挙げられる。
【0264】
及びSは、好ましくは、それぞれ独立に、下記式(s-1)又は(s-2)で表される基を表す。
【0265】
【化48】
【0266】
式(s-1)及び(s-2)中、
は、酸素原子又は硫黄原子を表す。
a10は、前記定義のとおりである。
【0267】
及びSは、好ましくは、それぞれ独立に、式(142)、式(148)、若しくは式(184)で表される基、又はこれらの基における水素原子が置換基で置換された基であり、より好ましくは、前記式(142)若しくは式(184)で表される基、又は式(184)で表される基における1つの水素原子が、アルキルオキシ基で置換された基である。
【0268】
11は、炭素環構造及び複素環構造からなる群から選択された2以上の構造の縮合環基であり、かつオルト-ペリ縮合構造を含まない縮合環基であり、かつ置換基を有していてもよい縮合環基を表す。
【0269】
11で表される縮合環基は、互いに同一である2以上の構造を縮合した構造を含んでいてもよい。
【0270】
11で表される縮合環基が複数の置換基を有する場合、複数ある置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0271】
11で表される縮合環基を構成し得る炭素環構造の例としては、下記式(Cy1)又は式(Cy2)で表される環構造が挙げられる。
【0272】
【化49】
【0273】
11で表される縮合環基を構成し得る複素環構造の例としては、下記式(Cy3)~式(Cy10)のいずれかで表される環構造が挙げられる。
【0274】
【化50】
【0275】
式(VIII)中、B11は、好ましくは、前記式(Cy1)~式(Cy10)で表される構造からなる群から選択された2以上の構造の縮合環基であって、オルト-ペリ縮合構造を含まない縮合環基であり、かつ置換基を有していてもよい縮合環基である。B11は、式(Cy1)~式(Cy10)で表される構造のうち、2以上の同一の構造が縮合した構造を含んでいてもよい。
【0276】
11は、より好ましくは、式(Cy1)~式(Cy6)及び式(Cy8)で表される構造からなる群から選択された2以上の構造の縮合環基であって、オルト-ペリ縮合構造を含まない縮合環基であり、かつ置換基を有していてもよい縮合環基である。
【0277】
11である縮合環基が有していてもよい置換基は、好ましくは置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、及び置換基を有していてもよい1価の複素環基である。B11で表される縮合環基が有していてもよいアリール基は、例えば、アルキル基により置換されていてもよい。
【0278】
11である縮合環基の例としては、下記式(b-1)~式(b-14)で表される基、及びこれらの基における水素原子が、置換基(好ましくは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、又は置換基を有していてもよい1価の複素環基)で置換された基が挙げられる。B11である縮合環基としては、下記式(b-2)又は(b-3)で表される基、又はこれらの基における水素原子が、置換基(好ましくは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、又は置換基を有していてもよい1価の複素環基)で置換された基が好ましく、下記式(b-2)又は(b-3)で表される基がより好ましい。
【0279】
【化51】
【0280】
【化52】
【0281】
式(b-1)~式(b-14)中、
a10は、前記定義のとおりである。
式(b-1)~式(b-14)中、複数あるRa10は、それぞれ独立して、好ましくは置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基である。
【0282】
式(VII)又は式(VIII)で表される化合物の例としては、下記式で表される化合物が挙げられる。
【0283】
【化53】
【0284】
上記式中、Rは、前記定義のとおりであり、Xは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基又は置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
上記式中、Rは、好ましくは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいアルキルオキシ基である。
【0285】
式(VII)又は(VIII)で表される化合物としては、下記式で表される化合物が挙げられる。
【0286】
【化54】
【0287】
本実施形態のインク組成物おいて、n型半導体材料は、上記非フラーレン化合物に加えて、さらに既に説明したフラーレン及びフラーレン誘導体(フラーレン化合物)を組み合わせて含んでいてもよい。
【0288】
本実施形態におけるn型半導体材料の好適な具体例としては、下記式で表される化合物が挙げられる。
【0289】
【化55】
【0290】
【化56】
【0291】
【化57】
【0292】
(4)溶媒
本実施形態の組成物、及びインク組成物は、溶媒として、芳香族炭化水素を含む溶媒を含みうる。当該芳香族炭化水素は置換基を有していてもよい。芳香族炭化水素としては、特に既に説明したp型半導体材料である高分子化合物を溶解させることができる化合物であることが好ましい。
【0293】
本実施形態において、溶媒に含まれうる芳香族炭化水素としては、例えば、トルエン、キシレン(例、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン)、トリメチルベンゼン(例、メシチレン、1,2,4-トリメチルベンゼン(プソイドクメン))、ブチルベンゼン(例、n-ブチルベンゼン、sec-ブチルベンゼン、tert-ブチルベンゼン)、メチルナフタレン(例、1-メチルナフタレン)、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン(テトラリン)、インダン、1-クロロナフタレン、クロロベンゼン及びジクロロベンゼン(1,2-ジクロロベンゼン)が挙げられる。
【0294】
本実施形態において、溶媒は、1種のみの芳香族炭化水素を含んでいても、2種以上の芳香族炭化水素を含んでいてもよい。
【0295】
溶媒に含まれうる芳香族炭化水素は、好ましくは、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、メシチレン、1,2,4-トリメチルベンゼン、n-ブチルベンゼン、sec-ブチルベンゼン、tert-ブチルベンゼン、メチルナフタレン、テトラリン、1-クロロナフタレン、クロロベンゼン及びジクロロベンゼン(1,2-ジクロロベンゼン)からなる群から選択される1種以上であり、より好ましくはトルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、メシチレン、1,2,4-トリメチルベンゼン、n-ブチルベンゼン、sec-ブチルベンゼン、tert-ブチルベンゼン、メチルナフタレン、テトラリン、インダン、1-クロロナフタレン、クロロベンゼン又はジクロロベンゼン(o-ジクロロベンゼン)である。
【0296】
本実施形態の組成物及びインク組成物においては、上記例示の芳香族炭化水素に加えて、さらなる溶媒を組み合わせて用いてもよい。
【0297】
本実施形態において、さらなる溶媒の例としては、ハロゲン化アルキル、芳香族カルボニル化合物、芳香族エステル化合物及び含窒素複素環式化合物が挙げられる。
【0298】
ハロゲン化アルキルとしては、例えば、クロロホルムが挙げられる。
芳香族カルボニル化合物としては、例えば、置換基を有していてもよいアセトフェノン、置換基を有していてもよいプロピオフェノン、置換基を有していてもよいブチロフェノン、置換基を有していてもよいシクロへキシルフェノン、置換基を有していてもよいベンゾフェノンが挙げられる。
【0299】
芳香族エステル化合物としては、例えば、置換基を有していてもよいメチルベンゾエート(安息香酸メチル)、置換基を有していてもよい安息香酸エチル、置換基を有していてもよい安息香酸プロピル、置換基を有していてもよい安息香酸ブチル、置換基を有していてもよい安息香酸イソプロピル、置換基を有していてもよい安息香酸ベンジル、置換基を有していてもよい安息香酸シクロへキシル、置換基を有していてもよい安息香酸フェニルが挙げられる。
【0300】
含窒素複素環式化合物としては、例えば、置換基を有していてもよいピリジン、置換基を有していてもよいキノリン、置換基を有していてもよいキノキサリン、置換基を有していてもよい1,2,3,4-テトラヒドロキノリン、置換基を有していてもよいピリミジン、置換基を有していてもよいピラジン、及び置換基を有していてもよいキナゾリンが挙げられる。
【0301】
含窒素複素環式化合物は、環構造に直接的に結合する置換基を有していてもよい。
含窒素複素環式化合物の環構造(例、キノリン環構造、1,2,3,4-テトラヒドロキノリン環構造、キノキサリン環構造)が有していてもよい置換基としては、例えば、炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数1~5のアルコキシ基、ハロゲン基、及びアルキルチオ基が挙げられる。
【0302】
ピリジン環構造を含む含窒素複素環式化合物としては、例えば、置換基を有していてもよいピリジン、置換基を有していてもよいキノリン、及び置換基を有していてもよいイソキノリンが挙げられる。
【0303】
ピラジン環構造を含む含窒素環式化合物としては、例えば、置換基を有していてもよいピラジン、置換基を有していてもよいキノキサリンが挙げられる。
【0304】
テトラヒドロピリジン環構造を含む含窒素環式化合物としては、例えば、置換基を有していてもよい1,2,3,4-テトラヒドロキノリン、及び置換基を有していてもよい1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリンが挙げられる。
【0305】
ピリミジン環構造を含む含窒素環式化合物としては、例えば、置換基を有していてもよいピリミジン、及び置換基を有していてもよいキナゾリンが挙げられる。
【0306】
本実施形態において、溶媒は、さらなる有機溶媒として、ハロゲン化アルキル、芳香族カルボニル化合物、芳香族エステル化合物又は含窒素複素環式化合物をさらに1種のみを含んでいても、これらから選択される2種以上をさらに含んでいてもよい。
【0307】
本実施形態においては、特に環境保全の観点から、ハロゲンを含まない溶媒を使用することが好ましい。
【0308】
(溶媒及びさらなる溶媒の重量比)
本実施形態の組成物及びインク組成物が、上記溶媒及び上記さらなる溶媒を含む場合、溶媒のさらなる溶媒に対する重量比(溶媒/さらなる溶媒)は、p型半導体材料及びn型半導体材料の溶解性をより向上させる観点から、80/20~99.9/0.1の範囲とすることが好ましい。
【0309】
(組成物及びインク組成物における溶媒の重量百分率)
本実施形態の組成物及びインク組成物に含まれる溶媒の総重量は、組成物又はインク組成物の全重量を100質量%としたときに、p型半導体材料及びn型半導体材料の溶解性をより向上させる観点から、好ましくは90質量%以上であり、より好ましくは92質量%以上であり、さらに好ましくは95質量%以上であり、組成物又はインク組成物中のp型半導体材料及びn型半導体材料の濃度をより高くして一定の厚さ以上の層を形成し易くする観点から、好ましくは99.9質量%以下である。
【0310】
本実施形態の組成物及びインク組成物は、既に説明した溶媒及びさらなる溶媒に加えて、任意の溶媒をさらに含んでいてもよい。組成物又はインク組成物に含まれる全溶媒の合計重量を100質量%とした場合に、任意の有機溶媒の含有率は、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、さらに好ましくは3重量%以下である。任意の溶媒としては、さらなる溶媒よりも沸点が高い溶媒を用いることが好ましい。
【0311】
(インク組成物におけるp型半導体材料及びn型半導体材料の濃度)
インク組成物における、p型半導体材料及びn型半導体材料の合計の濃度は、必要とされる機能層(活性層)の厚さ、所望の特性等に応じて、任意好適な濃度とすることができる。p型半導体材料及びn型半導体材料の合計の濃度は、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、さらに好ましくは0.01質量%以上20質量%以下であり、特に好ましくは0.01質量%以上10質量%以下であり、さらに特に好ましくは0.01質量%以上5質量%以下であり、とりわけ好ましくは0.1質量%以上5質量%以下である。
【0312】
インク組成物中、p型半導体材料及びn型半導体材料は溶解していても分散していてもよい。インク組成物中、p型半導体材料及びn型半導体材料は、少なくとも一部が溶解していることが好ましく、全部が溶解していることがより好ましい。
【0313】
(p型半導体材料のn型半導体材料に対する重量比(p/n比))
インク組成物中のp型半導体材料のn型半導体材料に対する重量比(p型半導体材料/n型半導体材料)は、好ましくは1/9以上であり、より好ましくは1/5以上であり、さらに好ましくは1/3以上であり、好ましくは9/1以下であり、より好ましくは5/1以下であり、さらに好ましくは3/1以下である。
【0314】
4.インク組成物の製造方法
本実施形態において、インク組成物は、従来公知の任意好適な方法により製造することができる。
【0315】
インク組成物は、n型半導体材料を含まない、既に説明した「組成物」を用いて調製することができる。
【0316】
インク組成物において、特に2種以上の溶媒が用いられる場合には、例えば、既に説明した溶媒及びさらなる溶媒を混合して混合溶媒を調製した後、混合溶媒にp型半導体材料及びn型半導体材料を添加して製造する方法、さらには溶媒にp型半導体材料を添加した(第1)組成物を調製し、これとは別に、さらなる溶媒にn型半導体材料を添加した(第2)組成物を調製し、得られた2種以上の組成物を混合して調製(製造)する方法、換言すると、組成物を調製する工程が、2種以上の組成物を調製する工程を含み、インク組成物を調製する工程が、2種以上の組成物を混合する工程を含む製造方法などにより、製造することができる。
【0317】
インク組成物を調製するにあたり、溶媒(及びさらなる溶媒)とp型半導体材料及びn型半導体材料とを、溶媒の沸点以下の温度まで加温して混合してもよい。
【0318】
本実施形態において、インク組成物を調製する工程は、0℃以上200℃以下の条件下で行われることが好ましく、0℃以上100℃以下での条件下で行われることが好ましい。
【0319】
本実施形態において、上述のとおり調製されたインク組成物はろ過してもよい。インク組成物のろ過は、具体的には、インク組成物を調製(製造)するにあたり、溶媒(及びさらなる溶媒)とp型半導体材料及びn型半導体材料とを混合した後、得られた混合物(インク組成物)を、所定の孔径を有するフィルターを用いて常法に従ってろ過すればよい。
【0320】
本実施形態において、ろ過に用いられうるフィルターとしては、例えば、セルロースアセテート、ガラス繊維、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)といったフッ素樹脂で形成されたフィルターが挙げられる。
【0321】
5.組成物及びインク組成物の用途
本実施形態の組成物は、成分、すなわちp型半導体材料である高分子化合物の分析等に用いることができ、さらにはインク組成物の原料として用いることができる。
【0322】
本実施形態のインク組成物は、通常、p型半導体材料及びn型半導体材料を含む膜(固化膜)を形成するために用いられる。
【0323】
本実施形態のインク組成物は、光電変換素子に含まれる機能層である活性層を形成するために好適に用いられる。特に、本実施形態のインク組成物は、使用時において逆バイアス電圧が印加される光電変換素子である光検出素子に含まれる活性層を形成するために特に好適に用いることができる。
【0324】
6.インク組成物の固化膜
本実施形態のインク組成物を用いて膜(塗工された塗膜)を形成した後、膜から溶媒を除去して膜を固化させることによりインク組成物の固化膜を形成することができる。インク組成物の固化膜は光電変換素子(光検出素子)に含まれる機能層、特に活性層を形成するために好適に用いることができる。インク組成物の固化膜は、従来公知の任意好適な製造方法により製造することができる。
【0325】
本実施形態において、インク組成物の固化膜の製造方法は、インク組成物を塗布対象に塗布(塗工)して塗膜を得る工程(i)、及び得られた塗膜から溶媒を除去する工程(ii)を含む。以下、工程(i)及び工程(ii)について説明する。
【0326】
[工程(i)]
工程(i)において、インク組成物を塗布対象に塗布する方法としては、既に説明した従来公知の任意の塗布法を用いることができる。本実施形態において、塗布法としては、スリットコート法、ナイフコート法、スピンコート法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、インクジェットコート法、ノズルコート法、又はキャピラリーコート法が好ましく、スリットコート法、スピンコート法、キャピラリーコート法、又はバーコート法がより好ましく、スリットコート法又はスピンコート法がさらに好ましい。
【0327】
工程(i)において、インク組成物は、任意の塗布対象に塗布される。インク組成物は、光電変換素子の製造工程において、例えば、電極(陽極又は陰極)、電子輸送層、又は正孔輸送層などの光電変換素子が含みうる機能層に塗布されうる。
【0328】
[工程(ii)]
工程(ii)において、工程(i)により形成されたインク組成物の塗膜から、溶媒を除去する方法としては、任意好適な方法を用いることができる。溶媒を除去する方法の例としては、熱風乾燥法、赤外線加熱乾燥法、フラッシュランプアニール乾燥法、減圧乾燥法などの乾燥法が挙げられる。
【0329】
7.光電変換素子
(1)光電変換素子の構成
本実施形態にかかる光電変換素子は、第1電極と、第2の電極と、該第1電極及び第2の電極の間に設けられている活性層とを含み、該活性層が既に説明した固化膜である。
以下、図面を参照して本実施形態の光電変換素子の構成例について具体的に説明する。
【0330】
図1は、光電変換素子の構成例を模式的に示す図である。
【0331】
図1に示されるように、光電変換素子10は、支持基板11に設けられている。光電変換素子10は、支持基板11に接するように設けられている第1の電極12と、第1の電極12に接するように設けられている電子輸送層13と、電子輸送層13に接するように設けられている活性層14と、活性層14に接するように設けられている正孔輸送層15と、正孔輸送層15に接するように設けられている第2の電極16とを備えている。この構成例では、第1の電極16に接するように封止部材17がさらに設けられている。
以下、本実施形態の光電変換素子に含まれ得る構成要素について具体的に説明する。
【0332】
(基板)
光電変換素子は、通常、基板(支持基板)上に形成される。また、さらに基板(封止基板)により封止される場合もある。基板には、通常、第1の電極及び第2の電極からなる一対の電極のうちの一方が形成される。基板の材料は、特に有機化合物を含む層を形成する際に化学的に変化しない材料であれば特に限定されない。
【0333】
基板の材料としては、例えば、ガラス、プラスチック、高分子フィルム、シリコンが挙げられる。不透明な基板が用いられる場合には、不透明な基板側に設けられる電極とは反対側の電極(換言すると、不透明な基板から遠い側の電極)が透明又は半透明の電極とされることが好ましい。
【0334】
(電極)
光電変換素子は、一対の電極である第1の電極及び第2の電極を含んでいる。第1の電極及び第2の電極のうち、少なくとも一方の電極は、光を入射させるために、透明又は半透明の電極とすることが好ましい。
【0335】
透明又は半透明の電極の材料の例としては、導電性の金属酸化物膜、半透明の金属薄膜が挙げられる。具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらの複合体であるインジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、NESA等の導電性材料、金、白金、銀、銅が挙げられる。透明又は半透明である電極の材料としては、ITO、IZO、酸化スズが好ましい。また、電極として、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体などの有機化合物が材料として用いられる透明導電膜を用いてもよい。透明又は半透明の電極は、第1の電極であっても第2の電極であってもよい。
【0336】
一対の電極のうちの一方の電極が透明又は半透明であれば、他方の電極は光透過性の低い電極であってもよい。光透過性の低い電極の材料の例としては、金属、及び導電性高分子が挙げられる。光透過性の低い電極の材料の具体例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等の金属、及びこれらのうちの2種以上の合金、又は、これらのうちの1種以上の金属と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン及び錫からなる群から選ばれる1種以上の金属との合金、グラファイト、グラファイト層間化合物、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体が挙げられる。合金としては、マグネシウム-銀合金、マグネシウム-インジウム合金、マグネシウム-アルミニウム合金、インジウム-銀合金、リチウム-アルミニウム合金、リチウム-マグネシウム合金、リチウム-インジウム合金、及びカルシウム-アルミニウム合金が挙げられる。
【0337】
(活性層)
本実施形態の光電変換素子は、活性層として、既に説明したインク組成物の固化膜を含む。本実施形態の活性層は、バルクヘテロジャンクション型の構造を有している。
【0338】
本実施形態において、活性層の厚さは、特に限定されない。活性層の厚さは、例えば、暗電流の抑制と生じた光電流の取り出しとのバランスを考慮して、任意好適な厚さとすることができる。活性層の厚さは、特に暗電流をより低減する観点から、好ましくは100nm以上であり、より好ましくは100nm以上であり、さらに好ましくは200nm以上である。また、活性層の厚さは、好ましくは5μm以下であり、より好ましくは1μm以下であり、さらに好ましくは600nm以下である。
【0339】
(中間層)
図1に示されるとおり、本実施形態の光電変換素子は、光電変換効率などの特性を向上させるための構成要素として、例えば、電荷輸送層(電子輸送層、正孔輸送層、電子注入層、正孔注入層)などの中間層(バッファー層)を備えていることが好ましい。
【0340】
また、中間層に用いられる材料の例としては、カルシウムなどの金属、酸化モリブデン、酸化亜鉛などの無機酸化物半導体、及びPEDOT(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン))とPSS(ポリ(4-スチレンスルホネート))との混合物(PEDOT:PSS)が挙げられる。
【0341】
中間層は、従来公知の任意好適な形成方法により形成することができる。中間層は、真空蒸着法や活性層の形成方法と同様の塗布法により形成することができる。
【0342】
図1に示されるように、本実施形態の光電変換素子は、第1の電極と活性層との間に、電子輸送層を備えることが好ましい。電子輸送層は、活性層から電極へと電子を輸送する機能を有する。
別の実施形態では、光電変換素子は、電子輸送層を備えていなくてもよい。
【0343】
第1の電極に接して設けられる電子輸送層を、特に電子注入層という場合がある。第1の電極に接して設けられる電子輸送層(電子注入層)は、第1の電極への電子の注入を促進する機能を有する。電子輸送層(電子注入層)は、活性層に接していてもよい。
【0344】
電子輸送層は、電子輸送性材料を含む。電子輸送性材料の例としては、ポリアルキレンイミン及びその誘導体、フルオレン構造を含む高分子化合物、カルシウムなどの金属、金属酸化物が挙げられる。
【0345】
ポリアルキレンイミン及びその誘導体の例としては、エチレンイミン、プロピレンイミン、ブチレンイミン、ジメチルエチレンイミン、ペンチレンイミン、ヘキシレンイミン、ヘプチレンイミン、オクチレンイミンといった炭素原子数2~8のアルキレンイミン、特に炭素原子数2~4のアルキレンイミンの1種又は2種以上を常法により重合して得られるポリマー、並びにそれらを種々の化合物と反応させて化学的に変性させたポリマーが挙げられる。ポリアルキレンイミン及びその誘導体としては、ポリエチレンイミン(PEI)及びエトキシ化ポリエチレンイミン(PEIE)が好ましい。
【0346】
フルオレン構造を含む高分子化合物の例としては、ポリ[(9,9-ビス(3’-(N,N-ジメチルアミノ)プロピル)-2,7-フルオレン)-オルト-2,7-(9,9’-ジオクチルフルオレン)](PFN)及びPFN-P2が挙げられる。
【0347】
金属酸化物の例としては、酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛、アルミニウムドープ酸化亜鉛、酸化チタン及び酸化ニオブが挙げられる。金属酸化物としては、亜鉛を含む金属酸化物が好ましく、中でも酸化亜鉛が好ましい。
【0348】
その他の電子輸送性材料の例としては、ポリ(4-ビニルフェノール)、ペリレンジイミドが挙げられる。
【0349】
本実施形態にかかる光電変換素子は、中間層が電子輸送層であって、基板(支持基板)、第1の電極、電子輸送層、活性層、正孔輸送層、第2の電極がこの順に互いに接するように積層された構成を有することが好ましい。
【0350】
図1に示されるように、本実施形態の光電変換素子は、第2の電極と活性層との間に、中間層として正孔輸送層を備えていることが好ましい。正孔輸送層は、活性層から第2の電極へと正孔を輸送する機能を有する。正孔輸送層は、第2の電極に接していてもよい。正孔輸送層は活性層に接していてもよい。
別の実施形態では、光電変換素子は、正孔輸送層を備えていなくてもよい。
【0351】
第2の電極に接して設けられる正孔輸送層を、特に正孔注入層という場合がある。第2の電極に接して設けられる正孔輸送層(正孔注入層)は、活性層で発生した正孔の第2の電極への注入を促進する機能を有する。
【0352】
正孔輸送層は、正孔輸送性材料を含む。正孔輸送性材料の例としては、ポリチオフェン及びその誘導体、芳香族アミン化合物、芳香族アミン残基を有する構成単位を含む高分子化合物、CuSCN、CuI、NiO、酸化タングステン(WO)及び酸化モリブデン(MoO)が挙げられる。
【0353】
(封止部材)
本実施形態の光電変換素子は、封止部材をさらに含み、かかる封止部材により封止された封止体とすることが好ましい。
封止部材は任意好適な従来公知の部材を用いることができる。封止部材の例としては、基板(封止基板)であるガラス基板とUV硬化性樹脂などの封止材(接着剤)との組合せが挙げられる。
【0354】
封止部材は、1層以上の層構造である封止層であってもよい。封止層を構成する層の例としては、ガスバリア層、ガスバリア性フィルムが挙げられる。
【0355】
封止層は、水分を遮断する性質(水蒸気バリア性)又は酸素を遮断する性質(酸素バリア性)を有する材料により形成することが好ましい。封止層の材料として好適な材料の例としては、三フッ化ポリエチレン、ポリ三フッ化塩化エチレン(PCTFE)、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、脂環式ポリオレフィン、エチレン-ビニルアルコール共重合体などの有機材料、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、ダイヤモンドライクカーボンなどの無機材料などが挙げられる。
【0356】
封止部材は、通常、光電変換素子が適用される、例えば後述する適用例のデバイスに組み込まれる際において実施され得る加熱処理に耐えうる材料により構成される。
【0357】
(2)光電変換素子の製造方法
本実施形態の光電変換素子は、従来公知の任意好適な製造方法により製造しうる。本実施形態の光電変換素子は、構成要素を形成するにあたり選択された材料に好適な工程を組み合わせて製造すればよい。
【0358】
以下、本発明の実施形態として、基板(支持基板)、第1の電極、正孔輸送層、活性層、電子輸送層、第2の電極がこの順に互いに接する構成を有する光電変換素子の製造方法を説明する。
【0359】
(基板を用意する工程)
本工程では、例えば第1の電極が設けられた支持基板を用意する。また、既に説明した電極の材料により形成された導電性の薄膜が設けられた基板を市場より入手し、必要に応じて、導電性の薄膜をパターニングして第1の電極を形成することにより、第1の電極が設けられた支持基板を用意することができる。
【0360】
本実施形態にかかる光電変換素子の製造方法において、支持基板上に第1の電極を形成する場合の第1の電極の形成方法は特に限定されない。第1の電極は、既に説明した材料を、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、めっき法、塗布法などの従来公知の任意好適な方法によって、第1の電極を形成すべき構成(例、支持基板、活性層、正孔輸送層)上に形成することができる。
【0361】
(正孔輸送層の形成工程)
光電変換素子の製造方法は、活性層と第1の電極との間に設けられる正孔輸送層(正孔注入層)を形成する工程を含んでいてもよい。
【0362】
正孔輸送層の形成方法は特に限定されない。正孔輸送層の形成工程をより簡便にする観点からは、従来公知の任意好適な塗布法によって正孔輸送層を形成することが好ましい。正孔輸送層は、例えば、既に説明した正孔輸送層を構成しうる材料と溶媒とを含む塗布液を用いる塗布法や真空蒸着法により形成することができる。
【0363】
(活性層の形成工程)
本実施形態の光電変換素子の製造方法においては、正孔輸送層上に活性層が形成される。活性層は、任意好適な従来公知の形成工程により形成することができる。本実施形態において、活性層は、既に説明したインク組成物を用いる塗布法により製造することができる。
【0364】
活性層は、既に説明した「固化膜」と同様にして形成することができる。本実施形態では、p型半導体材料と、n型半導体材料と、溶媒とを含むインク組成物を、正孔輸送層上に塗布して塗膜を形成する工程、次いで、前記塗膜を乾燥させる工程を含む工程により、活性層を形成することができる。
【0365】
(電子輸送層の形成工程)
本実施形態の光電変換素子の製造方法は、活性層に接するように設けられた電子輸送層(電子注入層)を形成する工程を含みうる。
【0366】
電子輸送層の形成方法は特に限定されない。電子輸送層の形成工程をより簡便にする観点からは、従来公知の任意好適な真空蒸着法によって電子輸送層を形成することが好ましい。
【0367】
(第2の電極の形成工程)
第2の電極の形成方法は特に限定されない。第2の電極は、例えば、上記例示の電極の材料を、塗布法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、めっき法など従来公知の任意好適な方法によって形成することができる。以上の工程により、本実施形態の光電変換素子が製造される。
【0368】
(封止体の形成工程)
封止体の形成にあたり、本実施形態では、従来公知の任意好適な封止材(接着剤)及び基板(封止基板)を用いる。具体的には、製造された光電変換素子の周辺を囲むように、支持基板上に、例えばUV硬化性樹脂などの封止材を塗布した後、封止材により隙間なく貼り合わせた後、選択された封止材に好適な、UV光の照射などの方法を用いて支持基板と封止基板との間隙に光電変換素子を封止することにより、光電変換素子の封止体を得ることができる。
【0369】
(3)光電変換素子の用途
本実施形態の光電変換素子の用途としては、光検出素子、太陽電池が挙げられる。
より具体的には、本実施形態の光電変換素子は、電極間に電圧(逆バイアス電圧)を印加した状態で、透明又は半透明の電極側から光を照射することにより、光電流を流すことができ、光検出素子(光センサー)として動作させることができる。また、光検出素子を複数集積することによりイメージセンサーとして用いることもできる。本実施形態の光電変換素子は、特に光検出素子として好適に用いることができる。
【0370】
また、本実施形態の光電変換素子は、光が照射されることにより、電極間に光起電力を発生させることができ、太陽電池として動作させることができる。光電変換素子を複数集積することにより太陽電池モジュールとすることもできる。
【0371】
(4)光電変換素子の適用例
本実施形態にかかる光電変換素子は、光検出素子として、ワークステーション、パーソナルコンピュータ、携帯情報端末、入退室管理システム、デジタルカメラ、及び医療機器などの種々の電子装置が備える検出部に好適に適用することができる。
【0372】
本実施形態の光電変換素子は、上記例示の電子装置が備える、例えば、X線撮像装置及びCMOSイメージセンサーなどの固体撮像装置用のイメージ検出部(例えば、X線センサーなどのイメージセンサー)、指紋検出部、顔検出部、静脈検出部及び虹彩検出部などの生体の一部分の所定の特徴を検出する生体情報認証装置の検出部(例えば、近赤外線センサー)、パルスオキシメータなどの光学バイオセンサーの検出部などに好適に適用することができる。
【0373】
本実施形態の光電変換素子は、固体撮像装置用のイメージ検出部として、さらにはTime-of-flight(TOF)型距離測定装置(TOF型測距装置)に好適に適用することもできる。
【0374】
TOF型測距装置では、光源からの放射光が測定対象物において反射された反射光を光電変換素子で受光させることにより距離を測定する。具体的には、光源から放射された照射光が測定対象物で反射して反射光として戻るまでの飛行時間を検出して測定対象物までの距離を求める。TOF型には、直接TOF方式と間接TOF方式とが存在する。直接TOF方式では光源から光を照射した時刻と反射光を光電変換素子で受光した時刻との差を直接計測し、間接TOF方式では飛行時間に依存した電荷蓄積量の変化を時間変化に換算することで距離を計測する。間接TOF方式で用いられる電荷蓄積により飛行時間を得る測距原理には、光源からの放射光と測定対象で反射される反射光との位相から飛行時間を求める連続波(特に正弦波)変調方式とパルス変調方式とがある。
【0375】
以下、本実施形態にかかる光電変換素子が好適に適用され得る検出部のうち、固体撮像装置用のイメージ検出部及びX線撮像装置用のイメージ検出部、生体認証装置(例えば指紋認証装置や静脈認証装置など)のための指紋検出部及び静脈検出部、並びにTOF型測距装置(間接TOF方式)のイメージ検出部の構成例について、図面を参照して説明する。
【0376】
(固体撮像装置用のイメージ検出部)
図2は、固体撮像装置用のイメージ検出部の構成例を模式的に示す図である。
【0377】
イメージ検出部1は、CMOSトランジスタ基板20と、CMOSトランジスタ基板20を覆うように設けられている層間絶縁膜30と、層間絶縁膜30上に設けられている、本発明の実施形態にかかる光電変換素子10と、層間絶縁膜30を貫通するように設けられており、CMOSトランジスタ基板20と光電変換素子10とを電気的に接続する層間配線部32と、光電変換素子10を覆うように設けられている封止層40と、封止層40上に設けられているカラーフィルター50とを備えている。
【0378】
CMOSトランジスタ基板20は、従来公知の任意好適な構成を設計に応じた態様で備えている。
【0379】
CMOSトランジスタ基板20は、基板の厚さ内に形成されたトランジスタ、コンデンサなどを含み、種々の機能を実現するためのCMOSトランジスタ回路(MOSトランジスタ回路)などの機能素子を備えている。
【0380】
機能素子としては、例えば、フローティングディフュージョン、リセットトランジスタ、出力トランジスタ、選択トランジスタが挙げられる。
【0381】
このような機能素子、配線などにより、CMOSトランジスタ基板20には、信号読み出し回路などが作り込まれている。
【0382】
層間絶縁膜30は、例えば酸化シリコン、絶縁性樹脂などの従来公知の任意好適な絶縁性材料により構成することができる。層間配線部32は、例えば、銅、タングステンなどの従来公知の任意好適な導電性材料(配線材料)により構成することができる。層間配線部32は、例えば、配線層の形成と同時に形成されるホール内配線であっても、配線層とは別途形成される埋込みプラグであってもよい。
【0383】
封止層40は、光電変換素子10を機能的に劣化させてしまうおそれのある酸素、水などの有害物質の浸透を防止又は抑制できることを条件として、従来公知の任意好適な材料により構成することができる。封止層40は、既に説明した封止部材17と同様の構成とすることができる。
【0384】
カラーフィルター50としては、従来公知の任意好適な材料により構成され、かつイメージ検出部1の設計に対応した例えば原色カラーフィルターを用いることができる。また、カラーフィルター50としては、原色カラーフィルターと比較して、厚さを薄くすることができる補色カラーフィルターを用いることもできる。補色カラーフィルターとしては、例えば(イエロー、シアン、マゼンタ)の3種類、(イエロー、シアン、透明)の3種類、(イエロー、透明、マゼンタ)の3種類、及び(透明、シアン、マゼンタ)の3種類が組み合わされたカラーフィルターを用いることができる。これらは、カラー画像データを生成できることを条件として、光電変換素子10及びCMOSトランジスタ基板20の設計に対応した任意好適な配置とすることができる。
【0385】
カラーフィルター50を介して光電変換素子10が受光した光は、光電変換素子10によって、受光量に応じた電気信号に変換され、電極を介して、光電変換素子10外に受光信号、すなわち撮像対象に対応する電気信号として出力される。
【0386】
次いで、光電変換素子10から出力された受光信号は、層間配線部32を介して、CMOSトランジスタ基板20に入力され、CMOSトランジスタ基板20に作り込まれた信号読み出し回路により読み出され、図示しないさらなる任意好適な従来公知の機能部によって信号処理されることにより、撮像対象に基づく画像情報が生成される。
【0387】
(指紋検出部)
図3は、表示装置に一体的に構成される指紋検出部の構成例を模式的に示す図である。
【0388】
携帯情報端末の表示装置2は、本発明の実施形態にかかる光電変換素子10を主たる構成要素として含む指紋検出部100と、当該指紋検出部100上に設けられ、所定の画像を表示する表示パネル部200とを備えている。
【0389】
この構成例では、表示パネル部200の表示領域200aと一致する領域に指紋検出部100が設けられている。換言すると、指紋検出部100の上方に、表示パネル部200が一体的に積層されている。
【0390】
表示領域200aのうちの一部の領域においてのみ指紋検出を行う場合には、当該一部の領域のみに対応させて指紋検出部100を設ければよい。
【0391】
指紋検出部100は、本発明の実施形態にかかる光電変換素子10を本質的な機能を奏する機能部として含む。指紋検出部100は、図示されていない保護フィルム(protection film)、支持基板、封止基板、封止部材、バリアフィルム、バンドパスフィルター、赤外線カットフィルムなどの任意好適な従来公知の部材を所望の特性が得られるような設計に対応した態様で備え得る。指紋検出部100には、既に説明したイメージ検出部の構成を採用することもできる。
【0392】
光電変換素子10は、表示領域200a内において、任意の態様で含まれ得る。例えば、複数の光電変換素子10が、マトリクス状に配置されていてもよい。
【0393】
光電変換素子10は、既に説明したとおり、支持基板11に設けられており、支持基板11には、例えばマトリクス状に電極(第一の電極又は第二の電極)が設けられている。
【0394】
光電変換素子10が受光した光は、光電変換素子10によって、受光量に応じた電気信号に変換され、電極を介して、光電変換素子10外に受光信号、すなわち撮像された指紋に対応する電気信号として出力される。
【0395】
表示パネル部200は、この構成例では、タッチセンサーパネルを含む有機エレクトロルミネッセンス表示パネル(有機EL表示パネル)として構成されている。表示パネル部200は、例えば有機EL表示パネルの代わりに、バックライトなどの光源を含む液晶表示パネルなどの任意好適な従来公知の構成を有する表示パネルにより構成されていてもよい。
【0396】
表示パネル部200は、既に説明した指紋検出部100上に設けられている。表示パネル部200は、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)220を本質的な機能を奏する機能部として含む。表示パネル部200は、さらに任意好適な従来公知のガラス基板といった基板(支持基板210又は封止基板240)、封止部材、バリアフィルム、円偏光板などの偏光板、タッチセンサーパネル230などの任意好適な従来公知の部材を所望の特性に対応した態様で備え得る。
【0397】
以上説明した構成例において、有機EL素子220は、表示領域200aにおける画素の光源として用いられるとともに、指紋検出部100における指紋の撮像のための光源としても用いられる。
【0398】
ここで、指紋検出部100の動作について簡単に説明する。
指紋認証の実行時には、表示パネル部200の有機EL素子220から放射される光を用いて指紋検出部100が指紋を検出する。具体的には、有機EL素子220から放射された光は、有機EL素子220と指紋検出部100の光電変換素子10との間に存在する構成要素を透過して、表示領域200a内である表示パネル部200の表面に接するように載置された手指の指先の皮膚(指表面)によって反射される。指表面によって反射された光のうちの少なくとも一部は、間に存在する構成要素を透過して光電変換素子10によって受光され、光電変換素子10の受光量に応じた電気信号に変換される。そして、変換された電気信号から、指表面の指紋についての画像情報が構成される。
【0399】
表示装置2を備える携帯情報端末は、従来公知の任意好適なステップにより、得られた画像情報と、予め記録されていた指紋認証用の指紋データとを比較して、指紋認証を行う。
【0400】
(X線撮像装置用のイメージ検出部)
図4は、X線撮像装置用のイメージ検出部の構成例を模式的に示す図である。
【0401】
X線撮像装置用のイメージ検出部1は、CMOSトランジスタ基板20と、CMOSトランジスタ基板20を覆うように設けられている層間絶縁膜30と、層間絶縁膜30上に設けられている、本発明の実施形態にかかる光電変換素子10と、層間絶縁膜30を貫通するように設けられており、CMOSトランジスタ基板20と光電変換素子10とを電気的に接続する層間配線部32と、光電変換素子10を覆うように設けられている封止層40と、封止層40上に設けられているシンチレータ42とシンチレータ42を覆うように設けられている反射層44と、反射層44を覆うように設けられている保護層46とを備えている。
【0402】
CMOSトランジスタ基板20は、従来公知の任意好適な構成を設計に応じた態様で備えている。
【0403】
CMOSトランジスタ基板20は、基板の厚さ内に形成されたトランジスタ、コンデンサなどを含み、種々の機能を実現するためのCMOSトランジスタ回路(MOSトランジスタ回路)などの機能素子を備えている。
【0404】
機能素子としては、例えば、フローティングディフュージョン、リセットトランジスタ、出力トランジスタ、選択トランジスタが挙げられる。
【0405】
このような機能素子、配線などにより、CMOSトランジスタ基板20には、信号読み出し回路などが作り込まれている。
【0406】
層間絶縁膜30は、例えば酸化シリコン、絶縁性樹脂などの従来公知の任意好適な絶縁性材料により構成することができる。層間配線部32は、例えば、銅、タングステンなどの従来公知の任意好適な導電性材料(配線材料)により構成することができる。層間配線部32は、例えば、配線層の形成と同時に形成されるホール内配線であっても、配線層とは別途形成される埋込みプラグであってもよい。
【0407】
封止層40は、光電変換素子10を機能的に劣化させてしまうおそれのある酸素、水などの有害物質の浸透を防止又は抑制できることを条件として、従来公知の任意好適な材料により構成することができる。封止層40は、既に説明した封止部材17と同様の構成とすることができる。
【0408】
シンチレータ42は、X線撮像装置用のイメージ検出部1の設計に対応した従来公知の任意好適な材料により構成することができる。シンチレータ42の好適な材料の例としては、CsI(ヨウ化セシウム)やNaI(ヨウ化ナトリウム)、ZnS(硫化亜鉛)、GOS(酸硫化ガドリニウム)、GSO(ケイ酸ガドリニウム)といった無機材料の無機結晶や、アントラセン、ナフタレン、スチルベンといった有機材料の有機結晶や、トルエン、キシレン、ジオキサンといった有機溶媒にジフェニルオキサゾール(PPO)やテルフェニル(TP)などの有機材料を溶解させた有機液体、キセノンやヘリウムといった気体、プラスチックなどを用いることができる。
【0409】
上記の構成要素は、シンチレータ42が入射したX線を可視領域を中心とした波長を有する光に変換して画像データを生成できることを条件として、光電変換素子10及びCMOSトランジスタ基板20の設計に対応した任意好適な配置とすることができる。
【0410】
反射層44は、シンチレータ42で変換された光を反射する。反射層44は、変換された光の損失を低減し、検出感度を増大させることができる。また、反射層44は、外部から直接的に入射する光を遮断することもできる。
【0411】
保護層46は、シンチレータ42を機能的に劣化させてしまうおそれのある酸素、水などの有害物質の浸透を防止又は抑制できることを条件として、従来公知の任意好適な材料により構成することができる。
【0412】
ここで、上記の構成を有するX線撮像装置用のイメージ検出部1の動作について簡単に説明する。
【0413】
X線やγ線といった放射線エネルギーがシンチレータ42に入射すると、シンチレータ42は放射線エネルギーを吸収し、可視領域を中心とした紫外から赤外領域の波長の光(蛍光)に変換する。そして、シンチレータ42によって変換された光は、光電変換素子10によって受光される。
【0414】
このように、シンチレータ42を介して光電変換素子10が受光した光は、光電変換素子10によって、受光量に応じた電気信号に変換され、電極を介して、光電変換素子10外に受光信号、すなわち撮像対象に対応する電気信号として出力される。検出対象である放射線エネルギー(X線)は、シンチレータ42側、光電変換素子10側のいずれから入射させてもよい。
【0415】
次いで、光電変換素子10から出力された受光信号は、層間配線部32を介して、CMOSトランジスタ基板20に入力され、CMOSトランジスタ基板20に作り込まれた信号読み出し回路により読み出され、図示しないさらなる任意好適な従来公知の機能部によって信号処理されることにより、撮像対象に基づく画像情報が生成される。
【0416】
(静脈検出部)
図5は、静脈認証装置用の静脈検出部の構成例を模式的に示す図である。
静脈認証装置用の静脈検出部300は、測定時において測定対象である手指(例、1以上の手指の指先、手指及び掌)が挿入される挿入部310を画成するカバー部306と、カバー部306に設けられており、測定対象に光を照射する光源部304と、光源部304から照射された光を測定対象を介して受光する光電変換素子10と、光電変換素子10を支持する支持基板11と、支持基板11と光電変換素子10を挟んで対向するように配置されており、所定の距離でカバー部306から離間して、カバー部306とともに挿入部310を画成するガラス基板302から構成されている。
【0417】
この構成例では、光源部304は、光電変換素子10とは、使用時において測定対象を挟んで離間するように、カバー部306と一体的に構成されている透過型撮影方式を示しているが、光源部304は必ずしもカバー部306側に位置させる必要はない。
【0418】
光源部304からの光を、測定対象に効率的に照射できることを条件として、例えば、光電変換素子10側から測定対象を照射する反射型撮影方式としてもよい。
【0419】
静脈検出部300は、本発明の実施形態にかかる光電変換素子10を本質的な機能を奏する機能部として含む。静脈検出部300は、図示されていない保護フィルム(protection film)、封止部材、バリアフィルム、バンドパスフィルター、近赤外線透過フィルター、可視光カットフィルム、指置きガイドなどの任意好適な従来公知の部材を所望の特性が得られるような設計に対応した態様で備え得る。静脈検出部300には、既に説明したイメージ検出部1の構成を採用することもできる。
【0420】
光電変換素子10は、任意の態様で含まれ得る。例えば、複数の光電変換素子10が、マトリクス状に配置されていてもよい。
【0421】
光電変換素子10は、既に説明したとおり、支持基板11に設けられており、支持基板11には、例えばマトリクス状に電極(第一の電極又は第二の電極)が設けられている。
【0422】
光電変換素子10が受光した光は、光電変換素子10によって、受光量に応じた電気信号に変換され、電極を介して、光電変換素子10外に受光信号、すなわち撮像された静脈に対応する電気信号として出力される。
【0423】
静脈検出時(使用時)において、測定対象は、光電変換素子10側のガラス基板302に接触していても、接触していなくてもよい。
【0424】
ここで、静脈検出部300の動作について簡単に説明する。
静脈検出時には、光源部304から放射される光を用いて静脈検出部300が測定対象の静脈パターンを検出する。具体的には、光源部304から放射された光は、測定対象を透過して光電変換素子10の受光量に応じた電気信号に変換される。そして、変換された電気信号から、測定対象の静脈パターンの画像情報が構成される。
【0425】
静脈認証装置では、従来公知の任意好適なステップにより、得られた画像情報と、予め記録されていた静脈認証用の静脈データとを比較して、静脈認証が行われる。
【0426】
(TOF型測距装置用イメージ検出部)
図6は、間接方式のTOF型測距装置用イメージ検出部の構成例を模式的に示す図である。
【0427】
TOF型測距装置用イメージ検出部400は、CMOSトランジスタ基板20と、CMOSトランジスタ基板20を覆うように設けられている層間絶縁膜30と、層間絶縁膜30上に設けられている、本発明の実施形態にかかる光電変換素子10と、光電変換素子10を挟むように離間して配置されている2つの浮遊拡散層402と、光電変換素子10と浮遊拡散層402を覆うように設けられている絶縁層401と、絶縁層401上に設けられており、互いに離間して配置されている2つのフォトゲート404とを備えている。
【0428】
離間した2つのフォトゲート404の間隙からは絶縁層401の一部分が露出しており、残余の領域は遮光部406により遮光されている。CMOSトランジスタ基板20と浮遊拡散層402とは層間絶縁膜30を貫通するように設けられている層間配線部32によって電気的に接続されている。
【0429】
層間絶縁膜30は、例えば酸化シリコン、絶縁性樹脂などの従来公知の任意好適な絶縁性材料により構成することができる。層間配線部32は、例えば、銅、タングステンなどの従来公知の任意好適な導電性材料(配線材料)により構成することができる。層間配線部32は、例えば、配線層の形成と同時に形成されるホール内配線であっても、配線層とは別途形成される埋込みプラグであってもよい。
【0430】
絶縁層401は、この構成例では、酸化シリコンにより構成されるフィールド酸化膜などの従来公知の任意好適な構成とすることができる。
【0431】
フォトゲート404は、例えばポリシリコンなどの従来公知の任意好適な材料により構成することができる。
【0432】
TOF型測距装置用イメージ検出部400は、本発明の実施形態にかかる光電変換素子10を本質的な機能を奏する機能部として含む。TOF型測距装置用イメージ検出部400は、図示されていない保護フィルム(protection film)、支持基板、封止基板、封止部材、バリアフィルム、バンドパスフィルター、赤外線カットフィルムなどの任意好適な従来公知の部材を所望の特性が得られるような設計に対応した態様で備え得る。
【0433】
ここで、TOF型測距装置用イメージ検出部400の動作について簡単に説明する。
【0434】
光源から光が照射され、光源からの光が測定対象より反射され、反射光を光電変換素子10で受光する。光電変換素子10と浮遊拡散層402との間には2つのフォトゲート404が設けられており、交互にパルスを加えることによって、光電変換素子10によって発生した信号電荷を2つの浮遊拡散層402のいずれかに転送し、浮遊拡散層402に電荷が蓄積される。2つのフォトゲート404を開くタイミングに対して、光パルスが等分にまたがるように到来すると、2つの浮遊拡散層402に蓄積される電荷量は等量になる。一方のフォトゲート404に光パルスが到達するタイミングに対して、他方のフォトゲート404に光パルスが遅れて到来すると、2つの浮遊拡散層402に蓄積される電荷量に差が生じる。
【0435】
浮遊拡散層402に蓄積された電荷量の差は、光パルスの遅延時間に依存する。測定対象までの距離Lは、光の往復時間tdと光の速度cを用いてL=(1/2)ctdの関係にあるので、遅延時間が2つの浮遊拡散層402の電荷量の差から推定できれば、測定対象までの距離を求めることができる。
【0436】
光電変換素子10が受光した光の受光量は、2つの浮遊拡散層402に蓄積される電荷量の差として電気信号に変換され、光電変換素子10外に受光信号、すなわち測定対象に対応する電気信号として出力される。
【0437】
次いで、浮遊拡散層402から出力された受光信号は、層間配線部32を介して、CMOSトランジスタ基板20に入力され、CMOSトランジスタ基板20に作り込まれた信号読み出し回路により読み出され、図示しないさらなる任意好適な従来公知の機能部によって信号処理されることにより、測定対象に基づく距離情報が生成される。
【0438】
8.光検出素子
前記のとおり、本実施形態の光電変換素子は、照射された光を、受光量に応じた電気信号に変換し、電極を介して外部回路に出力しうる光検出機能を有しうる。よって、本発明の実施形態の光電変換素子は、光検出機能を有する光検出素子として特に好適に適用されうる。ここで、本実施形態の光検出素子は、光電変換素子そのものであってもよく、光電変換素子に加えて、電圧制御のためなどの機能素子をさらに含んでいてもよい。
【実施例0439】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示す。本発明は下記の実施例に限定されない。
【0440】
下記スキームに示されるとおり、化合物1、2及び3を用いて、高分子化合物P-1、P-2、P-5、P-6、P-8及びP-9を合成した。
【0441】
【化58】
【0442】
(実施例1)
<高分子化合物P-1の合成>
まず、化合物1及び化合物2は、国際公開第2014/112656号に記載の方法により合成した。
次いで、常温で冷却装置を備えたガラス製反応容器に、化合物1(8.82mmol)、化合物2(8.82mmol)、化合物3(18mmol)、水(540mL)、40質量%リン酸カリウム水溶液(60mL)、テトラリン(300mL)、1-メチルシクロヘキサノール(300mL)、及びクロリド(メタニド){ビス(1,1-ジメチルエチル)[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)フェニル]ホスファン}パラジウム(0.22mmol)を加えて混合した。
【0443】
得られた混合物を65℃で2時間攪拌した。生じた有機層を水、酢酸水で洗浄した後、洗浄済みの有機層をメタノールに加えて析出した固体を濾過することによって粗ポリマーとして回収した。
【0444】
得られた粗ポリマーをテトラリンに溶解させて、5B(JIS P 3801:5種B)濾紙に通液させた後、再度メタノールに加えて析出した固体を濾過によって回収することにより高分子化合物P-1を得た。
【0445】
<GPC測定用試料の調製>
溶媒としてテトラリンを用い、当該溶媒に、既に説明した高分子化合物P-1を6mg/mLの濃度で溶解させ、80℃で3時間加熱を行って溶解液を得た。
【0446】
次いで、得られた溶解液の温度を常温にまで戻した後、添加剤である4-メチルカルボスチリル(4MCS)を10mg/mLの濃度になるように加え、2時間静置した。
【0447】
溶解液中における添加剤の不溶解成分をメルク社製ミリポア 0.45μmPVDFフィルター(型番:SLHV033NB)で濾過して除去し、GPC測定用試料を得た。
【0448】
<GPC測定>
RI検出器とUV-Vis検出器とを備えたゲル浸透クロマトグラフィー装置を用い、下記の分析条件により測定され、算出された値を分子量とした。上記のとおり調製したGPC測定用試料を用いて、調製当日に測定した値(Init)、調製後7日間、常温で保管した後に測定した値(7日後)を得た。結果を下記表1に示した。
【0449】
[分析条件]
加熱装置:IKA社製 Dry Block Heater 4
加熱条件:内温80℃
装置:島津製作所社製 Prominence 20Aシリーズ
カラム:Shodex KD-806M KD-G 4A(ガードカラム)
移動相:富士フイルム和光純薬社製 オルト-ジクロロベンゼン
流量:1.0mL/min
温度:60℃
検出波長:600nm
標準品:アジレント社製 ポリマーラボラトリーズ 標準ポリスチレン
【0450】
<赤外分光法によるアミド構造を含む末端構造の割合の測定>
乳鉢と乳棒とを用いて、既に説明した高分子化合物P-1を細かくなるまですりつぶし、臭化カリウムと高分子化合物P-1とを5質量%の濃度となるように、色が均一になるまで混合して試料を調製した。
【0451】
得られた試料を錠剤形成器に入れて錠剤を形成し、下記の測定条件で、赤外分光法(透過法)により高分子化合物のアミド構造を含む末端構造の割合の測定を行った。なお、臭化カリウムのみで形成した錠剤をブランクとして用いた。
[測定条件]
測定法:赤外分光法(透過法)
装置:ThermoFisher社製 Nicolet iS50 FT-IR
積算回数:32回
含有量:高分子化合物10mg、KBr200mg
【0452】
一部の高分子化合物に含まれるアミド構造を含む末端構造に由来するC=O伸縮ピーク強度を、全ての高分子化合物に含まれる主鎖由来のピーク強度で除算し、さらに100を乗じた値をアミド構造を含む末端構造の割合(%)とした。結果を下記表1に示した。
【0453】
ここで、一部の高分子化合物に含まれるアミド構造を含む末端構造に由来するC=O伸縮ピークとしては、1700cm-1であるか、又はピークがシフトしている場合には±10cm-1の範囲でシフトしているピークであって、当該高分子化合物に含まれる上記C=O伸縮ピークとして同定した波数における強度を採用した。
【0454】
また、全ての高分子化合物に含まれる主鎖由来のピークとしては、954cm-1であるか、又はピークがシフトしている場合には±10cm-1の範囲でシフトしているピークであって、高分子化合物に含まれる主鎖由来のピークとして同定した波数における強度を採用した。
【0455】
(実施例2)
<高分子化合物P-2の合成>
まず、化合物1及び化合物2を、国際公開第2014/112656号に記載の方法により合成した。
次いで、常温で冷却装置を備えたガラス製反応容器に、化合物1(13.02mmol)、化合物2(13.02mmol)、化合物3(26.5mmol)、水(794.9mL)、40質量%リン酸カリウム水溶液(88.4mL)、テトラリン(441.7mL)、1-メチルシクロヘキサノール(441.7mL)、及びクロリド(メタニド){ビス(1,1-ジメチルエチル)[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)フェニル]ホスファン}パラジウム(0.32mmol)を加えて混合した。
【0456】
得られた混合物を65℃で2時間攪拌した。生じた有機層を水、酢酸水で洗浄した後、洗浄済みの有機層をメタノールに加えて析出した固体を濾過することによって粗ポリマーとして回収した。
【0457】
得られた粗ポリマーをテトラリンに溶解させて、5B(JIS P 3801:5種B)濾紙に通液させた後、再度メタノールに加えて析出した固体を濾過によって回収することにより、高分子化合物P-2を得た。
【0458】
<GPC測定及びアミド構造を含む末端構造の割合の測定>
高分子化合物P-2を用い、添加剤として4-メチルカルボスチリル(4MCS)を添加した以外は実施例1と同様にして、GPC測定を行った。なお、赤外分光法による測定は、添加剤である4-メチルカルボスチリル(4MCS)を添加せずに実施した。結果を下記表1に示した。
【0459】
(比較例1)
4-メチルカルボスチリル(4MCS)を用いなかった以外は実施例1と同様にして、GPC測定を行った。結果を下記表1に示した。
【0460】
(比較例2)
4-メチルカルボスチリル(4MCS)を用いなかった以外は実施例2と同様にして、GPC測定を行った。結果を下記表1に示した。
【0461】
<化合物9の合成>
以下の手順のとおり化合物9の合成を行った。
【0462】
まず、下記のスキームのとおり化合物4を合成した。
【0463】
【化59】
【0464】
窒素ガスで内部の雰囲気を置換したフラスコにマグネシウム(65.2g、2.68mol)、THF(275mL)、ヨウ素(2粒)を加えて、撹拌した。ヨウ素の紫色が消えた後に、1-Bromo-3-hexylbenzene(612.9g、2.54mol)のTHF(4730mL)溶液を滴下し、グリニャール試薬を発生させた。
【0465】
次に、別のフラスコに1,3-Dibromobenzene(550g、2.33mol)、THF(2783mL)、PdCl(dppf)・CHCl(7.62g、9.33mmol)を加え、撹拌して10℃まで冷却した。このフラスコに調製済みのグリニャール試薬を内温が10℃を超えないように滴下し、反応液を得た。その後1時間撹拌し、反応液に水を注いで反応を停止させ、分液して有機層を得た。
【0466】
得られた有機層を硫酸マグネシウムで脱水し、硫酸マグネシウムをろ過によって除去した後、ろ液をロータリーエバポレーターで濃縮した。
【0467】
濃縮されたろ液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン溶媒)で精製することで化合物4を532.2g(1.68mol、収率67%)得た。
【0468】
化合物4のH-NMR測定結果は下記のとおりである。
δ(ppm):7.73 (t, 1H), 7.52-7.50 (dt, 1H), 7.48-7.45 (dq, 1H), 7.38-7.28 (m, 4H), 7.21-7.18 (m, 1H), 2.67 (t, 2H), 1.69-1.58 (m, 2H), 1.40-1.28 (m, 6H), 0.89 (t, 3H)
【0469】
次に、下記のスキームのとおり化合物6を合成した。
【0470】
【化60】
【0471】
窒素ガスで内部の雰囲気を置換した容量1Lの四つ口フラスコにマグネシウム(1.61g,0.066mol)、THF(47g)、ヨウ素(32mg)を加え、撹拌した。ヨウ素の紫色が消えた後に、化合物4(19.8g、0.063mmol)のTHF(36g)溶液を滴下し、グリニャール試薬を発生させた。
【0472】
国際公開第2011/136311号に記載の方法で合成した化合物5(5.21g、0.025mol)及びTHF(107g)を含む溶液を内温が40℃を超えないように四つ口フラスコに滴下し、反応液を得た。その後1時間撹拌し、反応液に塩化アンモニウム水溶液を注いで反応を停止させ、分液した。得られた有機層を硫酸マグネシウムで脱水し、硫酸マグネシウムをろ過によって除去した後、得られたろ液をロータリーエバポレーターで濃縮した。
【0473】
展開溶媒としてヘキサン及び酢酸エチルを使用するシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで、化合物6を14.21g(20.7mmol、収率83%)得た。
【0474】
化合物6のH-NMR測定結果は下記のとおりである。
δ(ppm):7.82-7.76 (m, 1H), 7.64 (s, 2H), 7.43 (m, 2H), 7.31 (m, 10H), 7.25 (m, 2H), 7.21 (m, 1H), 7.13 (m, 2H), 6.91 (d, 1H), 6.64 (d, 1H), 6.43 (d, 1H), 3.72-3.64 (m, 1H), 2.63 (t, 4H), 1.61 (m, 4H), 1.22-1.34 (m, 12H), 0.86 (t, 6H)
【0475】
次いで、下記のスキームのとおり化合物7を合成した。
【0476】
【化61】
【0477】
容量500mLの四つ口フラスコに化合物6(14.21g、0.0208mmol)、ヘプタン(130g)を仕込み、反応容器内の雰囲気を窒素ガスで置換した後にトリフルオロ酢酸(0.409g、0.0036mmol)を仕込み、60℃に昇温して30分間撹拌した後に、常温まで冷却して反応溶液を得た。
【0478】
反応溶液を水で2回洗浄した後、有機層を硫酸マグネシウムで脱水し、シリカゲルを充填した桐山ロートに通液させ、ろ液をロータリーエバポレーターで濃縮することで化合物7を13.37g(収率96.6%)得た。
【0479】
得られた化合物7のH-NMR測定結果は下記のとおりである。
δ(ppm):7.73 (s, 2H), 7.64 (s, 2H), 7.45-7.43 (m, 7H), 7.33-7.31 (m, 2H), 7.26 (s, 2H), 7.22 (s, 1H), 7.16-7.13 (m, 1H), 6.93 (d, 1H), 6.65 (d, 1H), 6.44 (d, 1H), 2.64 (t, 4H), 1.67-1.58 (m, 4H), 1.34-1.26 (m, 12H), 0.86 (t, 6H)
【0480】
下記のスキームのとおり化合物8を合成した。
【0481】
【化62】
【0482】
アルゴンガスで内部の雰囲気を置換したフラスコに化合物7(25.0g)、テトラエチルエチレンジアミンを(5.6mL)、脱水テトラヒドロフラン(436mL)を入れ、攪拌して溶解させた。次いで溶液をドライアイス及びアセトンを含む冷却槽で-65℃まで冷却した後、1.6mol/LのnBuLiヘキサン溶液(58.9mL)をフラスコに滴下し、-65℃で2時間攪拌した。-65℃を維持したまま、トリイソプロポキシボラン(19.74g)をTHF40mLに溶解させた溶液をフラスコに滴下し、-65℃でさらに1時間攪拌した後、常温まで昇温させて反応液を得た。
【0483】
次に、得られた反応液に濃度2%の塩酸を290mL入れ、分液した。得られた有機層を硫酸マグネシウムとトリメチロールエタン(13.5g)を加えて1時間常温で攪拌した。濾過によって硫酸マグネシウムを除き、ろ液を得た。得られたろ液について減圧下で溶媒を留去し、トルエン(700mL)を加えて析出した固体をろ過によって除去した後、ヘキサンを加えて上澄みを除いた後、減圧下で溶媒を除去することで化合物8を37.7g(収率109%)得た。
【0484】
(実施例3)
下記のスキームのとおり、高分子化合物P-3及びP-4を合成した。
【0485】
【化63】
【0486】
冷却装置を備えたガラス製反応容器に、常温で、原料として化合物1(1.05mmol)、化合物8(1.05mmol)、化合物3(2.1mmol)、水(62.5g)、濃度40質量%のリン酸カリウム水溶液(7.6mL)、THF(49mL)、テトラリン(21mL)、及びビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウム(0)(0.02mmol)を加えて65℃で1時間攪拌した。さらに反応容器に原料としてフェニルホウ酸(2.1mmol)及び濃度40質量%のリン酸カリウム水溶液(11.0mL)の混合溶液を加えて、65℃で1時間攪拌した。生じた有機層をジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム水溶液、酢酸水、及び水で洗浄した後、洗浄済みの有機層をメタノールに加えて析出した固体を濾過することによって粗ポリマーとして回収した。
【0487】
得られた粗ポリマーをテトラリンに溶解させて、5B(JIS P 3801:5種B)濾紙に通液させた後、再度メタノールに加えて析出した固体を濾過によって回収することにより高分子化合物P-3を得た。
【0488】
<GPC測定及びアミド構造を含む末端構造の割合の測定>
高分子化合物P-3を用い、添加剤として4-メチルカルボスチリル(4MCS)を添加した以外は実施例1と同様にして、GPC測定を行った。なお、赤外分光法による測定は、添加剤である4-メチルカルボスチリル(4MCS)を添加せずに実施した。結果を下記表1に示した。
【0489】
(比較例3)
4-メチルカルボスチリル(4MCS)を用いなかった以外は実施例3と同様にして、GPC測定を行った。結果を下記表1に示した。
【0490】
(実施例4)
加えた原料を、化合物3(2.1mmol)、化合物8(1.061mmol)及び化合物1(1.061mmol)とした以外は、高分子化合物P-3と同様にして高分子化合物P-4を合成した。
【0491】
<GPC測定及びアミド構造を含む末端構造の割合の測定>
高分子化合物P-4を用い、添加剤として4-メチルカルボスチリル(4MCS)を添加した以外は実施例1と同様にして、GPC測定を行った。なお、赤外分光法による測定は、添加剤である4-メチルカルボスチリル(4MCS)を添加せずに実施した。結果を下記表1に示した。
【0492】
(比較例4)
4-メチルカルボスチリル(4MCS)を用いなかった以外は実施例4と同様にして、GPC測定を行った。結果を下記表1に示した。
【0493】
(比較例5)
まず、化合物1及び化合物2を、国際公開第2014/112656号に記載の方法により合成した。
【0494】
次いで、常温で冷却装置を備えたガラス製反応容器に、化合物1(12.95mmol)、化合物2(12.95mmol)、化合物3(26.5mmol)、水(789.8mL)、40質量%リン酸カリウム水溶液(93.5mL)、オルトキシレン(441mL)、シクロヘキサノン(441mL)、及びクロリド(メタニド){ビス(1,1-ジメチルエチル)[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)フェニル]ホスファン}パラジウム(0.32mmol)を加えて混合した。
【0495】
得られた混合物を65℃で2時間攪拌した。生じた有機層を水、酢酸水で洗浄した後、洗浄済みの有機層をメタノールに加えて析出した固体を濾過することによって粗ポリマーとして回収した。
【0496】
得られた粗ポリマーをオルトキシレンに溶解させて、5B(JIS P 3801:5種B)濾紙に通液させた後、再度メタノールに加えて析出した固体を濾過によって回収することにより高分子化合物P-5を得た。
【0497】
<GPC測定及びアミド構造を含む末端構造の割合の測定>
高分子化合物P-5を用い、添加剤として4-メチルカルボスチリル(4MCS)を添加した以外は実施例1と同様にして、GPC測定を行った。なお、赤外分光法による測定は、添加剤である4-メチルカルボスチリル(4MCS)を添加せずに実施した。結果を下記表2に示した。
なお、表2中、「N.D.」はC=O伸縮ピーク強度が検出限界値以下であったためアミド構造を含む末端構造の割合が算出できなかったことを示している。
【0498】
(比較例6)
4-メチルカルボスチリル(4MCS)を用いなかった以外は比較例5と同様にして、GPC測定を行った。結果を下記表2に示した。
【0499】
(比較例7)
まず、化合物1及び化合物2を、国際公開第2014/112656号に記載の方法により合成した。
【0500】
次いで、冷却装置を備えたガラス製反応容器に、常温で、化合物1(8.92mmol)、化合物2(8.92mmol)、化合物3(18mmol)、水(540mL)、40質量%リン酸カリウム水溶液(60mL)、テトラリン(300mL)、1-メチルシクロヘキサノール(300mL)、及びクロリド(メタニド){ビス(1,1-ジメチルエチル)[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)フェニル]ホスファン}パラジウム(0.22mmol)を加えて混合した。
【0501】
得られた混合物を65℃で2時間攪拌した。生じた有機層を水、酢酸水で洗浄した後、洗浄済みの有機層をメタノールに加えて析出した固体を濾過することによって粗ポリマーとして回収した。
【0502】
得られた粗ポリマーをテトラリンに溶解させて、5B(JIS P 3801:5種B)濾紙に通液させた後、再度メタノールに加えて析出した固体を濾過によって回収することにより高分子化合物P-6を得た。
【0503】
<GPC測定及びアミド構造を含む末端構造の割合の測定>
高分子化合物P-6を用い、添加剤として4-メチルカルボスチリル(4MCS)を添加した以外は実施例1と同様にして、GPC測定を行った。なお、赤外分光法による測定は、添加剤である4-メチルカルボスチリル(4MCS)を添加せずに実施した。結果を下記表2に示した。
【0504】
(比較例8)
4-メチルカルボスチリル(4MCS)を用いなかった以外は比較例7と同様にして、GPC測定を行った。結果を下記表2に示した。
【0505】
(実施例5)
下記のスキームのとおり、高分子化合物P-7を合成した。
【0506】
【化64】
【0507】
冷却装置を備えたガラス製反応容器に、常温で、化合物1(2.54mmol)、化合物3(2.50mmol)、水(75.5mL)、40質量%リン酸カリウム水溶液(13.8mL)、テトラリン(42.3mL)、1-メチルシクロヘキサノール(40.1mL)、及びクロリド(メタニド){ビス(1,1-ジメチルエチル)[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)フェニル]ホスファン}パラジウム(0.016mmol)を加えて混合した。
【0508】
得られた混合物を65℃で2時間攪拌した。生じた有機層を水、酢酸水で洗浄した後、洗浄済みの有機層をメタノールに加えて析出した固体を濾過することによって粗ポリマーとして回収した。
【0509】
得られた粗ポリマーをテトラリンに溶解させて、5B(JIS P 3801:5種B)濾紙に通液させた後、再度メタノールに加えて析出した固体を濾過によって回収することにより、高分子化合物P-7を得た。
【0510】
<GPC測定及びアミド構造を含む末端構造の割合の測定>
高分子化合物P-7を用い、添加剤として4-メチルカルボスチリル(4MCS)を添加した以外は実施例1と同様にして、GPC測定を行った。なお、赤外分光法による測定は、添加剤である4-メチルカルボスチリル(4MCS)を添加せずに実施した。結果を下記表3に示した。
【0511】
(実施例6)
<GPC測定及びアミド構造を含む末端構造の割合の測定>
高分子化合物P-7を用い、添加剤として2-ピリジノールを添加した以外は実施例1と同様にして、GPC測定を行った。なお、赤外分光法による測定は、添加剤である2-ピリジノールを添加せずに実施した。結果を下記表3に示した。
【0512】
(実施例7)
<GPC測定及びアミド構造を含む末端構造の割合の測定>
高分子化合物P-7を用い、添加剤としてプロピオンアミドを添加した以外は実施例1と同様にして、GPC測定を行った。なお、赤外分光法による測定は、添加剤であるプロピオンアミドを添加せずに実施した。結果を下記表3に示した。
【0513】
(比較例9)
4-メチルカルボスチリル(4MCS)を用いなかった以外は実施例5と同様にして、GPC測定を行った。結果を下記表3に示した。
【0514】
(実施例8)
冷却装置を備えたガラス製反応容器に、常温で、化合物1(8.82mmol)、化合物2(8.82mmol)、化合物3(18.000mmol)、水(540mL)、40質量%リン酸カリウム水溶液(89.4mL)、テトラリン(300mL)、1-メチルシクロヘキサノール(300mL)、及びクロリド(メタニド){ビス(1,1-ジメチルエチル)[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)フェニル]ホスファン}パラジウム(0.22mmol)を加えて混合した。
【0515】
得られた混合物を65℃で2時間攪拌した。生じた有機層を水、酢酸水で洗浄した後、洗浄済みの有機層をメタノールに加えて析出した固体を濾過することによって粗ポリマーとして回収した。
【0516】
得られた粗ポリマーをテトラリンに溶解させて、5B(JIS P 3801:5種B)濾紙に通液させた後、再度メタノールに加えて析出した固体を濾過によって回収することにより高分子化合物P-8を得た。
【0517】
<GPC測定及びアミド構造を含む末端構造の割合の測定>
高分子化合物P-8を用い、添加剤として4-メチルカルボスチリル(4MCS)を添加した以外は実施例1と同様にして、GPC測定を行った。なお、赤外分光法による測定は、添加剤である4-メチルカルボスチリル(4MCS)を添加せずに実施した。結果を下記表3に示した。
【0518】
(実施例9)
<GPC測定及びアミド構造を含む末端構造の割合の測定>
高分子化合物P-8を用い、添加剤として2-ピリジノールを添加した以外は実施例1と同様にして、GPC測定を行った。なお、赤外分光法による測定は、添加剤である2-ピリジノールを添加せずに実施した。結果を下記表3に示した。
【0519】
(実施例10)
<GPC測定及びアミド構造を含む末端構造の割合の測定>
高分子化合物P-8を用い、添加剤としてプロピオンアミドを添加した以外は実施例1と同様にして、GPC測定を行った。なお、赤外分光法による測定は、添加剤であるプロピオンアミドを添加せずに実施した。結果を下記表3に示した。
【0520】
(比較例10)
4-メチルカルボスチリル(4MCS)を用いなかった以外は実施例8と同様にして、GPC測定を行った。結果を下記表3に示した。
【0521】
(実施例11)
常温で冷却装置を備えたガラス製反応容器に、化合物1(13.024mmol)、化合物2(13.024mmol)、化合物3(26.500mmol)、水(794mL)、40質量%リン酸カリウム水溶液(8.4mL)、テトラリン(441.7mL)、1-メチルシクロヘキサノール(441.7mL)、及びクロリド(メタニド){ビス(1,1-ジメチルエチル)[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)フェニル]ホスファン}パラジウム(0.32mmol)を加えて混合した。
【0522】
得られた混合物を65℃で2時間攪拌した。生じた有機層を水、酢酸水で洗浄した後、洗浄済みの有機層をメタノールに加えて析出した固体を濾過することによって粗ポリマーとして回収した。
【0523】
得られた粗ポリマーをテトラリンに溶解させて、5B(JIS P 3801:5種B)濾紙に通液させた後、再度メタノールに加えて析出した固体を濾過によって回収することにより高分子化合物P-9を得た。
【0524】
<GPC測定及びアミド構造を含む末端構造の割合の測定>
高分子化合物P-9を用い、添加剤として4-メチルカルボスチリル(4MCS)を添加した以外は実施例1と同様にして、GPC測定を行った。なお、赤外分光法による測定は、添加剤である4-メチルカルボスチリル(4MCS)を添加せずに実施した。結果を下記表3に示した。
【0525】
(実施例12)
<GPC測定及びアミド構造を含む末端構造の割合の測定>
高分子化合物P-9を用い、添加剤として2-ピリジノールを添加した以外は実施例1と同様にして、GPC測定を行った。なお、赤外分光法による測定は、添加剤である2-ピリジノールを添加せずに実施した。結果を下記表3に示した。
【0526】
(実施例13)
<GPC測定及びアミド構造を含む末端構造の割合の測定>
高分子化合物P-9を用い、添加剤としてプロピオンアミドを添加した以外は実施例1と同様にして、GPC測定を行った。なお、赤外分光法による測定は、添加剤であるプロピオンアミドを添加せずに実施した。結果を下記表3に示した。
【0527】
(比較例11)
4-メチルカルボスチリル(4MCS)を用いなかった以外は実施例11と同様にして、GPC測定を行った。結果を下記表3に示した。
【0528】
【表1】
【0529】
【表2】
【0530】
【表3】
【符号の説明】
【0531】
1 イメージ検出部
2 表示装置
10 光電変換素子
11、210 支持基板
12 第1の電極
13 電子輸送層
14 活性層
15 正孔輸送層
16 第2の電極
17 封止部材
20 CMOSトランジスタ基板
30 層間絶縁膜
32 層間配線部
40 封止層
42 シンチレータ
44 反射層
46 保護層
50 カラーフィルター
100 指紋検出部
200 表示パネル部
200a 表示領域
220 有機EL素子
230 タッチセンサーパネル
240 封止基板
300 静脈検出部
302 ガラス基板
304 光源部
306 カバー部
310 挿入部
400 TOF型測距装置用イメージ検出部
401 絶縁層
402 浮遊拡散層
404 フォトゲート
406 遮光部
図1
図2
図3
図4
図5
図6