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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057140
(43)【公開日】2023-04-20
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20230413BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
H01L21/302 101D
H05H1/46 C
H05H1/46 R
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022126
(22)【出願日】2023-02-16
(62)【分割の表示】P 2021103961の分割
【原出願日】2019-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 功
(72)【発明者】
【氏名】伊澤 勝
(72)【発明者】
【氏名】安井 尚輝
(72)【発明者】
【氏名】池田 紀彦
(72)【発明者】
【氏名】山田 一也
(57)【要約】
【課題】ウエハ表面の荷電粒子を除去することにより、垂直性の高いトレンチ形状を得ることができ、またトレンチ内部のエッチング対象でない膜のダメージを低減することが可能なプラズマ処理装置を提供する。
【解決手段】プラズマ処理装置は、試料がプラズマ処理される処理室と、プラズマを生成するための高周波電力を供給する第一の高周波電源と、前記試料が載置される試料台と、前記試料台に高周波電力を供給する第二の高周波電源とを備えるプラズマ処理装置において、周期的に繰り返される波形により変化させた直流電圧を前記試料台の導体の基材に印加する直流電源をさらに備え、一周期の前記波形は、所定時間に所定量以上変化する振幅の期間を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料がプラズマ処理される処理室と、プラズマを生成するための高周波電力を供給する第一の高周波電源と、前記試料が載置される試料台と、前記試料台に高周波電力を供給する第二の高周波電源とを備えるプラズマ処理装置において、
周期的に繰り返される波形により変化させた直流電圧を前記試料台の導体の基材に印加する直流電源をさらに備え、
一周期の前記波形は、所定時間に所定量以上変化する振幅の期間を有することを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプラズマ処理装置において、
前記振幅の変化時間及び変化量は、前記波形によって前記試料に生じる電流の最大値の10%以上を1ms以上維持させる振幅の変化時間及び変化量であることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載のプラズマ処理装置において、
前記波形は、三角波であることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載のプラズマ処理装置において、
前記試料台は、前記試料を静電吸着させるための電極を具備し、
前記直流電圧は、前記電極に印加されることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項5】
請求項1に記載のプラズマ処理装置において、
前記試料台に供給される高周波電力は、前記直流電圧が前記試料台に印加されている時、前記試料台に供給されることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項6】
請求項1に記載のプラズマ処理装置において、
前記波形の周波数は、500Hz以下であることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項7】
請求項1に記載のプラズマ処理装置において、
前記波形は、矩形波であり、
前記矩形波は、立ち上がりおよび立ち下がりの時定数が各々0.43ms以上であることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項8】
請求項3または請求項7に記載のプラズマ処理装置において、
前記直流電圧が下降する時間に対する前記直流電圧が上昇する時間の比は、1から値Dを減じた値により前記値Dを除した値であり、
前記値Dは、前記試料上の誘電体内における電子の移動度と前記誘電体内におけるイオンの移動度との和により前記イオンの移動度を除した値であることを特徴とするプラズマ
処理装置。
【請求項9】
請求項8に記載のプラズマ処理装置において、
前記波形の周波数は、Hzを単位としたとき、1から前記値Dを減じた値または前記値Dのいずれか小さい方の値を1000倍にした値であることを特徴とするプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程においては、半導体装置に含まれるコンポーネントの微細化や集積化への対応が求められている。例えば、集積回路やナノ電気機械システムにおいて、構造物のナノスケール化がさらに推進されている。
【0003】
通常、半導体デバイスの製造工程において、微細パターンを成形するためにリソグラフィ技術が用いられる。この技術は、レジスト層の上にデバイス構造のパターンを適用し、レジスト層のパターンによって露出した基板を選択的にエッチング除去するものである。その後の処理工程において、エッチング領域内に他の材料を堆積させれば、集積回路を形成できる。
【0004】
従って、半導体デバイスの製造においては、プラズマエッチング処理装置が欠かせないものになっている。プラズマエッチング処理では、所定の真空度まで減圧された処理室内部に供給されたガスを真空容器内部に形成された電場等によりプラズマ化する。このとき、プラズマ内に生じた反応性の高いイオンやラジカルが、処理対象物であるウエハの表面と物理的、化学的に反応することによりエッチングが行われる。
【0005】
プラズマエッチング処理においては、ウエハの載置台に高周波電圧を印加することが広く行われている。キャパシタを介して高周波電源が接続された載置台に高周波電圧を印加すると、プラズマと載置台の間に生じるシースに整流作用があることから、自己バイアスにより載置台は時間平均すると負電圧となる。そのため正イオンが加速され、エッチングが速やかに進行するとともに、垂直性が増すため異方性エッチングを実現できる。そして載置台に印加する高周波電圧の振幅を調整することで、エッチング速度や垂直性を制御することが可能となる。
【0006】
一般的には、ウエハの載置台に印加される前記高周波電圧として正弦波が用いられるが、特許文献1に開示されたように、正弦波の代わりに矩形波を用いることもある。プラズマから載置台に流入するイオンのエネルギーは、プラズマと載置台の間にかかる電場によって決まる。正弦波の高周波電圧を印加すると、前記電場がなだらかに変化するため様々なエネルギーのイオンが載置台に流入する。しかし、矩形波の高周波電圧を印加すると、イオンのエネルギーは高いものと低いものとに明確に分かれるため、エッチングの制御が容易になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012-216608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
プラズマエッチング処理では、荷電粒子が衝突することによってウエハ上に成膜された誘電体材料が帯電する。プラズマエッチング処理では、図1に示すようにウエハ上にトレンチ形状を形成することも多く、その場合、一般的にはトレンチ(Trench)の側壁がウエハ表面に対し垂直になることが望ましいとされる。しかし、トレンチ構造において高周波電圧を印加すると、図1に示すようにトレンチ(Trench)の側壁が帯電することがある。これは、高周波電圧による負の自己バイアスによって正イオンはトレンチ(Trench)内に垂直に入射するのに対し、電子や負イオンの方向はランダムなため、側壁には負の荷電粒子がより多く衝突するからである。その結果、図1に示すように、トレンチ(Trench)内に飛来するイオン(Ion)は軌道が曲げられて側壁に衝突し、側壁がエッチングされるため、トレンチ(Trench)側壁の垂直性の悪化を招く。
【0009】
また工程の都合上、トレンチ内の一部にエッチングされるべきでないメタル層が存在することもある。例えばそのようなメタル層が存在する場合においてイオンの軌道が曲がってしまうと、イオンはメタル層に対し斜めに入射することとなる。するとイオンが垂直に入射する場合と比べてメタル層はスパッタされやすくなるため、メタル層のダメージが増えてしまい、所望のエッチングを行えないこともある。以上のことから、ウエハ表面に帯電した荷電粒子を除去することが、高精度なエッチング処理を行う上での課題である。
【0010】
ウエハ表面の荷電粒子を除去するためには、荷電粒子と逆極性の電圧をウエハに印加し、ウエハ上に成膜された誘電体材料内部に電場を形成することで、荷電粒子による継続的な電流を発生させることが一つの方策である。しかし、荷電粒子は誘電体材料内部での移動速度が小さいため、荷電粒子を誘電体材料から除去するにはミリ秒オーダの時間がかかることが知られている。一方で、特許文献1に開示されたような高周波電圧は、載置台と高周波電源の間にあるキャパシタを通過できるよう、一般的には数百kHzから数MHzの周波数が用いられている。そのため特許文献1の技術は、荷電粒子の除去に適さない。
【0011】
本発明は、ウエハ表面の荷電粒子を除去することにより、垂直性の高いトレンチ形状を得ることができ、またトレンチ内部のエッチング対象でない膜のダメージを低減することが可能なプラズマ処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、代表的な本発明にかかるプラズマ処理装置の一つは、試料がプラズマ処理される処理室と、プラズマを生成するための高周波電力を供給する第一の高周波電源と、前記試料が載置される試料台と、前記試料台に高周波電力を供給する第二の高周波電源とを備えるプラズマ処理装置において、周期的に繰り返される波形により変化させた直流電圧を前記試料台の導体の基材に印加する直流電源をさらに備え、一周期の前記波形は、所定時間に所定量以上変化する振幅の期間を有することにより達成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ウエハ表面の荷電粒子を除去することにより、垂直性の高いトレンチ形状を得ることができ、またトレンチ内部のエッチング対象でない膜のダメージを低減することが可能なプラズマ処理装置を提供することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、プラズマエッチング処理におけるトレンチ形状、およびその側壁が帯電した場合のイオン軌道を示す模式図である。
図2図2は、本実施形態にかかるプラズマ処理装置の模式的な構成の一例を示す概略図である。
図3図3は、図1に示した実施形態にかかるプラズマ処理装置の一部の断面図、及び載置台に接続されたバイアス電圧発生部の概略を模式的に示す図である。
図4図4は、プラズマ処理装置の電気的な等価回路を示す図である。
図5図5は、図4に示した実施形態にかかる直流電源において出力される電圧波形を示す図である。
図6図6は、図4の等価回路を基に回路シミュレータで計算した電流の波形を示す図であり、図5の電圧によってウエハ上で発生する電流を模式的に示す図である。
図7図7は、変形した直線三角波の電圧波形を示す図である。
図8図8は、曲線三角波にかかる電圧波形を示す図である。
図9図9は、ウエハから流れる電流の波形を示す図である。
図10図10は、マイクロ波電源、高周波電源及び直流電源の出力開始及び終了時刻の関係を示す図である。
図11図11は、図1で示した実施形態の変形例1にかかるプラズマ処理装置の一部の断面図、及び載置台に接続されたバイアス電圧発生部の概略を模式的に示す図である。
図12図12は、図1で示した実施形態の変形例2にかかるプラズマ処理装置の一部の断面図、及び載置台に接続されたバイアス電圧発生部の概略を模式的に示す図である。
図13図13は、図1で示した実施形態の変形例3にかかるプラズマ処理装置の一部の断面図、及び載置台に接続されたバイアス電圧発生部の概略を模式的に示す図である。
図14図14は、図1で示した実施形態の変形例3において、静電吸着電源の出力する電圧波形を示す図である。
図15図15は、図1で示した実施形態の変形例4にかかるプラズマ処理装置の一部の断面図、及び載置台に接続されたバイアス電圧発生部の概略を模式的に示す図である。
図16図16は、図1で示した実施形態の変形例4において、バイアス電圧発生部の出力する電圧波形を示す図である。
図17図17は、図1で示した実施形態の変形例5にかかるプラズマ処理装置の一部の断面図、及び載置台に接続されたバイアス電圧発生部の概略を模式的に示す図である。
図18図18は、図1で示した実施形態の変形例5において、静電吸着電源の出力する電圧波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を用いて本願発明にかかるプラズマ処理装置の実施の形態を説明する。なお、本明細書中、電圧波形の「直線三角波」とは、最小電圧から最大電圧まで直線的に上昇し、最大電圧に達した後に直ちに最小電圧まで直線的に低下することを周期的に繰り返す波形をいい、電圧波形の「曲線三角波」とは、最小電圧から最大電圧まで、正の微分係数が単調減少する曲線に沿って上昇し、最大電圧に達した後に直ちに最小電圧まで、負の微分係数が単調増加する曲線に沿って低下することを周期的に繰り返す波形をいう。
【0016】
[実施形態1]
図2乃至図10を用いて、本実施形態を説明する。図2は、本実施形態に関わるプラズマ処理装置の模式的な構成の一例を示す概略図である。
【0017】
図2に示す本実施形態にかかるプラズマ処理装置100は、その一例であるマイクロ波ECRプラズマエッチング装置である。ここでは、真空処理室104の内部に配置された電極、真空処理室104の外部に配置された電場及び磁場の発生装置、並びに電源等が模式的に示されている。
【0018】
プラズマ処理装置100は、真空処理室104を備える。真空処理室104の内部には試料台である電極125が配置され、電極125の上部には試料であるウエハ126が載置されている。真空処理室104内部では、ガス供給機構105から真空処理室104に供給されたガスに対し、真空処理室104の外部に配置された電場発生手段及び磁場発生手段により形成された電場及び磁場が作用することによって、プラズマ136が発生する。プラズマ136にはイオン及びラジカルが含まれており、これらがウエハ126の表面と相互作用することによってプラズマエッチング処理がなされる。
【0019】
真空処理室104には、容器101の上部にシャワープレート102、さらに上部に誘電体窓103が配置されており、真空処理室104を囲う容器101は、誘電体窓103によって気密封止されている。
【0020】
真空処理室104の外部に設けられたガス供給機構105は、ガス配管106を通じて、誘電体窓103とシャワープレート102との間に設けられた空間107と接続される。空間107は、シャワープレート102に設けられた複数の細孔108を通じて真空処理室104と連通している。
【0021】
真空処理室104の下部には可変コンダクタンスバルブ112が配置され、この可変コンダクタンスバルブ112を通じて接続されたターボ分子ポンプ113により、真空処理室104内のガスが排気される。ターボ分子ポンプ113は、さらに粗引きポンプ114と接続されている。可変コンダクタンスバルブ112とターボ分子ポンプ113及び粗引きポンプ114は、それぞれ制御部150と接続しており、制御部150によって動作が制御される。
【0022】
より具体的には、真空処理室104の内部圧力を測定する圧力計115が設けられており、この圧力計115の値に応じて制御部150は、可変コンダクタンスバルブ112の開度をフィードバック制御し、真空処理室104の圧力を所望の値になるよう制御している。
【0023】
プラズマ処理装置100の上部には、第一の高周波電源であるマイクロ波電源116が設けられており、このマイクロ波電源116の周波数は例えば2.45GHzである。マイクロ波電源116より発生したマイクロ波は、自動整合器117、方形導波管118、方形円形導波管変換器119、円形導波管120を通じて、空洞共振器121へと伝搬する。自動整合器117は反射波を自動的に抑制する働きがあり、また空洞共振器121は、マイクロ波電磁場分布をプラズマ処理に適した分布に調整する働きを持つ。マイクロ波電源116は、制御部150により制御される。
【0024】
空洞共振器121の下部には、マイクロ波導入窓である誘電体窓103、及びシャワープレート102を挟んで真空処理室104が設けられている。空洞共振器121で分布が調整されたマイクロ波は、誘電体窓103及びシャワープレート102を介して真空処理室104へ伝搬する。
【0025】
真空処理室104及び空洞共振器121の周囲には、電磁石を構成するソレノイドコイル122、123、124が配置されている。制御部150で制御されたコイル電源140により、各ソレノイドコイル122,123,124に電流を流すことで、真空処理室104内部に磁場が形成される。
【0026】
以上のように真空処理室104の内部に高周波電場及び磁場が形成されると、電場及び磁場の強さが特定の関係となる領域(例えば2.45GHzの電場であれば磁場の強さが0.0875Tとなる領域)において、後述する電子サイクロトロン共鳴(Electron Cyclotron Resonance;ECR)によるプラズマが形成される。
【0027】
以下に、ECRについて詳細に説明する。真空処理室104内部に存在する電子はローレンツ力により、ソレノイドコイル122,123,124によって発生した磁場の磁力線に沿って回転しながら移動する。このときマイクロ波電源116より伝搬したマイクロ波の周波数が前記回転の周波数と一致すると、電子が共鳴的に加速され、プラズマが効果的に発生する。これをECRと呼ぶ。
【0028】
ECRが発生する領域(ECR面)は磁場分布により制御できる。具体的には、制御部150によりコイル電源140を介してソレノイドコイル122、123、124の各々に流れる電流を制御することで真空処理室104内部の磁場分布を制御し、真空処理室104の内部におけるプラズマ発生領域を制御することができる。またプラズマ中の荷電粒子の拡散は磁力線に対して垂直な方向へは抑制されるため、磁場分布制御によりプラズマの拡散を制御し、プラズマの損失を低減することも可能である。これらの効果によりウエハ126の上方におけるプラズマの分布を制御し、プラズマ処理の均一性を向上することができる。
【0029】
電極125はECR面の下側に位置し、図示していない梁により真空処理室104に固定されている。電極125及び真空処理室104は略円筒形であり、各々の円筒の中心軸は同一である。プラズマ処理装置100にはロボットアーム等の搬送装置(図示せず)が備えられており、処理対象物であるウエハ126は、前記搬送装置により電極125上部に搬送される。ウエハ126は、電極125内部に形成された静電吸着電極135の静電吸着により電極125上に保持される。
【0030】
電極125にはバイアス電圧発生部127が接続されており、バイアス電圧発生部127を通じてウエハ126にバイアス電圧が印加される。プラズマ136内のイオンがウエハ126の側に引き込まれる量はバイアス電圧に依存する。そこで、制御部150でバイアス電圧発生部127を制御してウエハ126に発生させるバイアス電圧を調整することにより、プラズマ処理形状(エッチング形状の分布)を制御することができる。
【0031】
また電極125には温度制御機構128が搭載されており、電極125を通じてウエハ126の温度を制御することによってもプラズマ処理形状の制御が可能である。
【0032】
以上の構成は、すべて制御部150である制御用コンピュータに接続され、適切なシーケンスで動作するよう、そのタイミング及び動作量が制御されている。動作シーケンスの詳細なパラメータはレシピと呼ばれ、制御は予め設定されたレシピに基づいて行われる。
【0033】
レシピは通常、複数のステップから構成されている。ステップ毎にガス供給機構105から真空処理室104に供給するガス種・ガス流量、マイクロ波電源116の出力電力、ソレノイドコイル122、123、124に流れる電流量、バイアス電圧発生部127より発生するバイアス電圧の態様等の処理条件が設定されており、各ステップは予め設定された順序及び時間で実行される。
【0034】
図3は、図2に示した実施形態にかかる電極125の断面及びバイアス電圧発生部127の詳細を示す模式図である。
【0035】
電極125は、導体の基材129、誘電体膜130を有し、バイアス電圧発生部127は基材129と接続されている。また電極125は、ウエハ126及び基材129の間に静電吸着電極135a,135bをそれぞれ有し、この静電吸着電極135a,135bは誘電体膜130によって周囲と絶縁されている。
【0036】
静電吸着電極135aは電極の外周部に環状に配置されており、静電吸着電極135bは、静電吸着電極135aの内側であって電極の中央部に配置されている。静電吸着電源139は電源ユニット139a、139bを有し、電源ユニット139aは静電吸着電極135aに、電源ユニット139bは静電吸着電極135bに、それぞれ接続されている。電源ユニット139a、139bから各々独立して電圧を出力することで、ウエハ126を電極125に吸着する力が生じる。
【0037】
バイアス電圧発生部127は、高周波電源(第二の高周波電源)131、自動整合器132、周期的に繰り返される波形により変化させた直流電圧を出力する直流電源133、ローパスフィルタ134を有し、高周波電源131は自動整合器132を介して、直流電源133はローパスフィルタ134を介して、それぞれ基材129に接続されている。高周波電源131及び直流電源133はそれぞれ制御部(制御機構)150と接続されており、制御部150からの信号に応じて動作が制御される。
【0038】
高周波電源131の出力周波数は、マイクロ波電源116より低く、かつ、誘電体膜130を介してウエハ126にバイアス電圧を伝達可能な程度に高い。具体的には、高周波電源131の出力周波数として数百kHzから数MHzを用いる。自動整合器132は、プラズマ136のインピーダンスに応じて内部素子の回路定数を変化させることでインピーダンスマッチングを行い、高周波電源131が効率的に電力をウエハ126に伝達できるようにしている。
【0039】
図4は、プラズマ処理装置100の電気的な等価回路を表す。バイアス電圧発生部127からの出力は、基材129に相当する点129’を通り、誘電体膜130に相当するキャパシタ130’、ウエハ126に相当する点126’、ウエハ126とプラズマ136との間のシースに相当する並列回路138a、プラズマ136に相当する抵抗136’、プラズマ136と図1のアース137に相当するアース137’との間のシースに相当する並列回路138bを通じてアース137’へと伝達される。この等価回路では、バイアス電圧発生部127にて発生した電圧Vと、ウエハ126から流れる電流Iの間には、比例定数Aを用いてI=A×dV/dtの関係が概ね成り立つ。
【0040】
図5は直流電源133が出力する電圧波形を示す図である。直流電源133は、制御部150からの指令に従い、周波数f,振幅Vの直線三角波151に従い変化する電圧を出力する。すなわち、直流電源133が出力する電圧波形は、一周期の波形が、所定時間に所定量以上変化する振幅の期間を有する。ここでウエハから流れる電流Iはバイアス電圧発生部127の電圧の微分に比例するため、直線三角波の微分である矩形波状の電流がウエハから流れる。
【0041】
従来技術のように、電圧の立ち上がり・立ち下がりが急峻な矩形波では、電圧の微分値に比例するウエハから流れる電流Iの継続が瞬時に終了する。一方、直線三角波であれば、電圧が上昇または下降している間、電流Iが継続して流れる。ウエハの電荷除去の為には電流Iの継続時間が最低でも1ms以上で、それが長いほど好ましい。したがって、電流Iの継続時間が短い矩形波よりも、直線三角波を用いたほうが、ウエハ表面の電荷除去効果が高まる。後述する曲線三角波についても、同様な効果がある。
【0042】
特に立ち下がりについては、立ち下がりが急峻な矩形波と、後述する曲線三角波とでエッチング結果を比較したところ、曲線三角波の方がエッチングの対象でないメタル層のダメージが低減されており、立ち下がり時の電流Iの継続時間は重要である。
【0043】
この電流Iを、図4の等価回路を基に回路シミュレータで計算したものが、図6に示す波形152である。シミュレーションではf=50Hzとして計算した。シミュレーションの結果によれば、電流Iは矩形波状に変化し、極性が正負交互に入れ替わりつつ、各々の極性で1/(2×f)=10msの間継続して流れていることがわかる。
【0044】
ウエハ上の誘電体内部に蓄積した荷電粒子を誘電体外部まで移動させるには、ミリ秒オーダの時間が必要であり、仮にウエハから流れる正もしくは負の電流が各々1ms未満しか継続しない場合、誘電体内部で荷電粒子が引き寄せられては戻ることを繰り返すのみとなる。そのためfは概ね500Hz以下にする必要がある。この条件を満たせば正および負の電流が各々1ms以上継続するため、荷電粒子除去に有効に作用する。
【0045】
また正電荷と負電荷ではウエハ内での移動度が異なることも考えられる。なお移動度μとは、電場Eを印加したときの荷電粒子の平均移動速度をvとしたときに、μ=v/Eで表される値である。
【0046】
そこで、両方の電荷を移動度によらず確実に除去しつつウエハからなるべく多くの電流が流れるよう、図7に示すような、変形した直線三角波153に従い変化する電圧を直流電源133から出力してもよい。この波形は、電圧が最小値から最大値まで上昇する時間と、最大値から最小値まで下降する時間との比が、D:(1-D)である。
【0047】
ここで、Dは、ウエハ上の誘電体内部における電子とイオン各々の移動度をそれぞれμ、μとしたとき、D=μ/(μ+μ)と表される。換言すれば、Dは、ウエハ上の誘電体内における電子の移動度と誘電体内におけるイオンの移動度との和によりイオンの移動度を除した値である。このとき直線三角波153で電圧が上昇する時間と下降する時間の比は、(1/μ):(1/μ)となり、これは負電荷の移動に要する時間と正電荷の移動に要する時間の比となる。一方、各極性の時間を各々1ms以上確保するため、周波数fは、f≦1000Dおよびf≦1000(1-D)を共に満たすよう定めなければならない。ただしfの単位はHzである。なお、三角波形の周波数fは、Hzを単位としたとき、1からDを減じた値またはDのいずれか小さい方の値を1000倍にした値であると好ましい。
【0048】
本実施形態によれば、載置台に印加される高周波バイアス電圧とは別に、直流電源から出力される直線三角波を重畳させることで、ウエハ表面の荷電粒子の除去に十分な時間継続する電流が発生する。この電流により試料表面の荷電粒子が除去され、垂直性の高いトレンチ形状を得ることができ、またトレンチ内部のエッチング対象でない膜のダメージを低減することが可能となる。
【0049】
さらに直線三角波151の代わりに、図8に示すような曲線三角波154の電圧を印加することでも同様の効果が得られる。曲線三角波154は、時定数の大きい矩形波ということもできるが、直線三角波に類似した特性を持つ。曲線三角波154を時定数の大きい矩形波から形成する場合、デューティ比を50%とした場合、立ち上がり時定数τおよび立ち下がり時定数τを各々0.43ms以上、典型的には数ms程度とすることが望ましい。加えて各電流は1ms以上継続する必要があるから、曲線三角波154の周波数fは500Hz以下にしなければならない。
【0050】
これらの条件を満たせば、図9に示すように、ウエハから流れる電流155は最大値の10%以上を維持しつつ、電圧立ち上がりおよび立ち下がり開始時から1ms以上持続するため、荷電粒子の除去に寄与することができる。換言すれば、直流電源から出力される電圧波形の振幅の変化時間及び変化量は、電圧波形によってウエハに生じる電流の最大値の10%以上を1ms以上維持させる振幅の変化時間及び変化量であると好ましい。
【0051】
またウエハ上誘電体内部の電子およびイオンの移動度μおよびμの差を考慮して、曲線三角波154のデューティ比Dを50%以外にしてもよい。この場合Dは、D:(1-D)=(1/μ):(1/μ)を満たすようにすればよいから、D=μ/(μ+μ)となる。換言すれば、Dは、ウエハ上の誘電体内における電子の移動度と誘電体内におけるイオンの移動度との和によりイオンの移動度を除した値である。一方、各極性の時間を各々1ms以上確保するため、周波数fは、f≦1000Dおよびf≦1000(1-D)を共に満たすよう定めなければならない。ただしfの単位はHzである。なお、三角波形の周波数fpは、Hzを単位としたとき、1からDを減じた値またはDのいずれか小さい方の値を1000倍にした値であると好ましい。
【0052】
直線三角波の代わりに曲線三角波を用いると、矩形波を用いる場合と同様に直流電源133の制御が容易になる。曲線三角波を用いる場合は、制御部150より出力される制御信号はONおよびOFFの2種類の状態を交互に出力すればよく、時定数τおよびτは、制御信号もしくは直流電源133の出力に対しローパスフィルタを適用する、または直流電源133に出力フィードバックを設ける等の手段により実現することができる。
【0053】
なお、図5図7及び図8において、波形151、153及び154は常に電圧が正となるように示されているが、実際には常に電圧が負、あるいは正と負にまたがるような波形であってもよい。これは、ウエハから流れる電流は電圧の微分であるため、電圧の正負は影響を及ぼさないからである。
【0054】
図10は、(a)高周波電源131、(b)マイクロ波電源116及び(c)直流電源133の出力開始及び終了時刻の関係を示す図であり、縦軸に出力、横軸に時間をとって示している。マイクロ波電源116の出力開始は高周波電源131の出力開始以前であることが望ましい。なぜなら、プラズマの有無により高周波電源131から見たときのチャンバのインピーダンスは大きく異なるため、マイクロ波電源116の出力によりプラズマが発生した後に高周波電源131の出力を開始する方が、高周波電源131の出力が安定するからである。また同様の理由により、高周波電源131の出力終了は、マイクロ波電源116の出力終了以前であることが望ましい。
【0055】
直流電源133の出力開始は、高周波電源131の出力開始以前であることが望ましい。これは以下の理由による。高周波電源131から高周波電力が出力されていると、プラズマ136とウエハ126との間の電圧が高くなるため、ウエハ126に引き込まれる荷電粒子の垂直性が高くなり、ウエハ126上のトレンチ側壁が帯電しやすくなる。一方、直流電源133が出力されることによる装置及びエッチング結果への悪影響はない。そのため、直流電源133の出力を高周波電源131の出力以前とすることで、より効果的にトレンチ側壁への帯電を抑制することが可能となる。また同様の理由により、直流電源133の出力終了は、高周波電源131の出力終了以後であることが望ましい。
【0056】
また、マイクロ波電源116によってプラズマが発生すると、プラズマ136とウエハ126の間に電位差が生じるため、高周波電源131が出力を開始している場合よりは程度が弱いものの、荷電粒子は垂直性を持ってしまう。一方、直流電源133がマイクロ波電源116以前に出力されることによる悪影響はない。そのため、直流電源133とマイクロ波電源116の出力タイミングの関係は、前述の直流電源133と高周波電源131の出力タイミングの関係と同様にすることが望ましい。すなわち、高周波電源131の出力開始は、直流電源133の出力開始以降であることが望ましく、また高周波電源131の出力終了は、直流電源133の出力終了以前であることが望ましい。
【0057】
一方、直流電源133と静電吸着電源139との出力タイミングの関係については、どちらが先に出力開始あるいは終了されても、装置およびエッチングに悪影響はないため、特に問題ない。
【0058】
[変形例1]
図11を用いて、本発明の実施形態についての第一の変形例を説明する。なお、既に説明した図2乃至図4に示されたものと同一の符号が付された構成は、同一の機能を有する部分であるので、その構成については重複説明を省略する。
【0059】
図11は本変形例にかかる、電極125の断面及びバイアス電圧発生部127、静電吸着電源139の詳細を示す模式図である。本変形例ではバイアス電圧発生部127が、キャパシタ138a’、138b’を介して静電吸着電極135a、135bとそれぞれ並列に接続されている。キャパシタ138a’、138b’を介して接続することにより、バイアス電圧発生部127が静電吸着電源139による直流電圧の影響を受けないようになっている。またキャパシタ138a’、138b’の容量を調整することにより、前述した実施形態における基材129と静電吸着電極135a、135bの間の容量を模擬することができ、該実施形態と本変形例にてウエハに対して同等の効果をもたらすことができる。上述した実施形態にかかる図3の構成と重複する構成については、説明を省略する。
【0060】
[変形例2]
図12を用いて、本発明の実施形態についての第二の変形例を説明する。図12は本変形例にかかる、電極125の断面及びバイアス電圧発生部127、静電吸着電源139、三角波発生部142の詳細を示す模式図である。本変形例では、静電吸着電極135aおよび135bと基材129の間に、三角波印加電極141が配置されている。前記電極は誘電体膜130によって周囲と絶縁されており、またローパスフィルタ134を介して直流電源133と接続されている。また基材129には自動整合器132を介して高周波電源131と接続されている。上述した実施形態にかかる図3の構成と重複する構成については、説明を省略する。
【0061】
三角波印加電極141と静電吸着電極135a及び135bとの間の誘電体膜130の厚さは、上述した実施形態における基材129と静電吸着電極135a及び135bの間の誘電体膜130の厚さと等しくすることが望ましい。そうすることで三角波の印加箇所と静電吸着電極135a及び135bの間の容量が、本変形例と該実施形態において等しくなり、本変形例において、ウエハに対して該実施形態と同様の効果をもたらすことができる。
【0062】
[変形例3]
図13及び図14を用いて、本発明の実施形態についての第三の変形例を説明する。図13は本変形例にかかる、電極125の断面及びバイアス電圧発生部127、静電吸着電源139の詳細を示す模式図である。本変形例では、基材129にバイアス電圧発生部127が、静電吸着電極135a及び135bに静電吸着電源139が、それぞれ接続され、バイアス電圧発生部127及び静電吸着電源139は、制御部150により制御される。
【0063】
ここでバイアス電圧発生部127は、基材129に接続する代わりに、キャパシタを介して静電吸着電極135a及び135bに接続してもよい。
【0064】
図14は、静電吸着電源139より出力される電圧の波形を示し、波形143aは静電吸着電源139aの出力、波形143bは静電吸着電源139bの出力をそれぞれ示す図である。上述した実施形態においては、静電吸着電源139a及び139bはそれぞれ異なる直流電圧を出力するが、本変形例においてはそれぞれの直流電圧に三角波を重畳させた波形を出力するよう、各電源が制御部150により制御される。
【0065】
波形143a及び143bに重畳される三角波は、直線三角波であっても、曲線三角波であってもよく、また周波数及びデューティ比は前述の実施形態と同じ考え方で決定される。一方、ウエハ126から流れる電流が該実施形態と等しくなる振幅は、該実施形態より小さくなる。これは静電吸着電極135a及び135bとウエハ126との間の誘電体膜130は、基材129とウエハ126との間の誘電体膜130よりも小さくなるため、前者の静電容量が後者のものより大きいからである。
【0066】
また波形143a及び143bに重畳される三角波の位相は、一致していることが望ましい。位相を一致させることにより、静電吸着電極135a及び135bの間の電位差は常に一定となり、ウエハ126の吸着に影響を与えないようにすることができる。
【0067】
[変形例4]
図15及び図16を用いて、本発明の実施形態についての第四の変形例を説明する。図15は本変形例にかかる、電極125の断面及びバイアス電圧発生部127、静電吸着電源139の詳細を示す模式図である。本変形例では、基材129にバイアス電圧発生部127が、静電吸着電極135a及び135bに静電吸着電源139が、それぞれ接続され、バイアス電圧発生部127及び静電吸着電源139は、制御部150により制御される。バイアス電圧発生部127は自動整合器132、アンプ144及び任意波形生成部145を有しており、アンプ144は自動整合器132を介して基材129と接続されている。またアンプ144は、任意波形生成部145から入力された電圧をあるゲインで増幅して出力する。
【0068】
図16はアンプ144の出力する電圧波形146を示す図である。波形146は、上述した実施形態において高周波電源131の出力する高周波と、同じく該実施形態において直流電源133が出力する三角波とを重畳したものである。任意波形生成部145は、アンプ144が波形146を出力するよう、波形146の各時刻の電圧について、アンプ144のゲインで除した電圧をアンプ144に入力する。また、任意波形生成部145は、アンプ144が周波数特性を持つ場合に、アンプ144の出力が波形146になるよう、周波数特性から逆算して特定の周波数成分を強く、あるいは弱くした波形をアンプ144に入力してもよい。
【0069】
[変形例5]
図17及び図18を用いて、本発明の実施形態についての第五の変形例を説明する。図15は本変形例にかかる、電極125の断面及び静電吸着電源160の詳細を示す模式図である。本変形例では、静電吸着電源160は任意波形生成部147a及び147b、アンプ148a及び148b、並びに自動整合器149a及び149bを有し、アンプ148aは自動整合器149aを介して静電吸着電極135aに、アンプ148bは自動整合器149bを介して静電吸着電極135bに、それぞれ接続されている。アンプ148a及び148bは、任意波形生成部147a及び147bからそれぞれ入力された電圧を、あるゲインで増幅してそれぞれ出力する。
【0070】
図18はアンプ148a及び148bの出力電圧である波形161a及び161bを示す図である。波形161a及び波形161bは、変形例3における静電吸着電源139a及び139bの出力波形に、さらに高周波を重畳させたものである。重畳する高周波の周波数は、上述した実施形態において高周波電源131の出力する高周波と等しい。一方、電圧の振幅は、該実施形態における高周波電源131の出力電圧振幅に対して、該実施形態において基材129に印加された高周波が静電吸着電極135a及び135bに伝わるときの減衰率を乗じたものとすることで、ウエハ126上にて該実施形態と同等の効果を得ることができる。
【0071】
任意波形生成部147a及び147bは、波形161a及び161bの各時刻の電圧を、アンプ148a又は148bのゲインでそれぞれ除した電圧を、アンプ148a及び148bにそれぞれ入力する。また、任意波形生成部147a及び147bは、アンプ148a及び148bが周波数特性を持つ場合に、アンプ148a及び148bの出力が波形161a及び161bになるよう、周波数特性から逆算して特定の周波数成分を強く、あるいは弱くした波形をアンプ148a及び148bに入力してもよい。
【0072】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0073】
また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。なお、図面に記載した各部材や相対的なサイズは、本発明を分かりやすく説明するため簡素化・理想化しており、実装上はより複雑な形状となることもある。
【0074】
なお、上記実施の形態で説明した構造や方法については、上記実施の形態のものに限定されるものではなく、様々な応用例が含まれる。
【符号の説明】
【0075】
100 プラズマ処理装置、104 真空処理室、125 電極、126 ウエハ、127 バイアス用高周波電源、129 基材、130 誘電体膜、131 高周波電源、132,149a、149b 自動整合器、133 直流電源、134 ローパスフィルタ、135a,135b 静電吸着電極、136 プラズマ、138a、138b 並列回路、139,139a、139b、160 静電吸着電源、139a,139b 電源ユニット、145,147a、147b 任意波形生成部、150 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【手続補正書】
【提出日】2023-02-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料がプラズマ処理される処理室と、プラズマを生成するための高周波電力を供給する第一の高周波電源と、前記試料を静電吸着させるための膜を具備し前記試料が載置される試料台と、前記試料台に高周波電力を供給する第二の高周波電源と、前記膜の内部に配置された電極に第一の直流電圧を印可する第一の直流電源とを備えるプラズマ処理装置において、
周期的に繰り返される波形により変化させた第二の直流電圧を前記第一の直流電圧に重畳させる第二の直流電源をさらに備え、
一周期の前記波形は、所定時間に所定量以上変化する振幅の期間を有することを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプラズマ処理装置において、
前記第二の高周波電源は、前記試料台の導体の基材に高周波電圧を印可することを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載のプラズマ処理装置において、
前記振幅の変化時間及び変化量は、前記波形によって前記試料に生じる電流の最大値の10%以上を1ms以上維持させる振幅の変化時間及び変化量であることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載のプラズマ処理装置において、
前記波形は、三角波であることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項5】
請求項1に記載のプラズマ処理装置において、
前記試料台に供給される高周波電力は、前記直流電圧が前記試料台に印加されている時、前記試料台に供給されることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項6】
請求項1に記載のプラズマ処理装置において、
前記波形の周波数は、500Hz以下であることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項7】
請求項1に記載のプラズマ処理装置において、
前記波形は、矩形波であり、
前記矩形波は、立ち上がりおよび立ち下がりの時定数が各々0.43ms以上であることを特徴とするプラズマ処理装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
上記課題を解決するために、代表的な本発明にかかるプラズマ処理装置の一つは、試料がプラズマ処理される処理室と、プラズマを生成するための高周波電力を供給する第一の高周波電源と、前記試料を静電吸着させるための膜を具備し前記試料が載置される試料台と、前記試料台に高周波電力を供給する第二の高周波電源と、前記膜の内部に配置された電極に第一の直流電圧を印可する第一の直流電源とを備えるプラズマ処理装置において、周期的に繰り返される波形により変化させた第二の直流電圧を前記第一の直流電圧に重畳させる第二の直流電源をさらに備え、一周期の前記波形は、所定時間に所定量以上変化する振幅の期間を有することにより達成される。