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特開2023-57292基板処理システム、情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057292
(43)【公開日】2023-04-21
(54)【発明の名称】基板処理システム、情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06N 20/00 20190101AFI20230414BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20230414BHJP
【FI】
G06N20/00 160
H01L21/302 101G
H01L21/302 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021166724
(22)【出願日】2021-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】赤羽 修平
(72)【発明者】
【氏名】永井 龍
(72)【発明者】
【氏名】田中 康基
【テーマコード(参考)】
5F004
【Fターム(参考)】
5F004CA08
5F004CB02
5F004CB04
5F004CB05
5F004CB12
(57)【要約】
【課題】プラズマ処理が行われる処理空間内の状態を定量化する基板処理システム、情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラムを提供する。
【解決手段】基板処理システムは、基板に対してプラズマ処理が行われるごとに、複数種類の時系列データを取得する取得部と、第1のフェーズにおいて取得された複数種類の時系列データそれぞれのデータ密集度を算出することで、時系列データの種類数に応じた数の学習済みの外れ値検知モデルを生成する学習部と、第2のフェーズにおいて取得された複数種類の時系列データを、対応する前記学習済みの外れ値検知モデルにそれぞれ入力し、前記第1のフェーズにおいて取得された複数種類の時系列データからの乖離度を算出することで、前記第2のフェーズにおける処理空間内の状態を定量化する定量化部とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に対してプラズマ処理が行われるごとに、複数種類の時系列データを取得する取得部と、
第1のフェーズにおいて取得された複数種類の時系列データそれぞれのデータ密集度を算出することで、時系列データの種類数に応じた数の学習済みの外れ値検知モデルを生成する学習部と、
第2のフェーズにおいて取得された複数種類の時系列データを、対応する前記学習済みの外れ値検知モデルにそれぞれ入力し、前記第1のフェーズにおいて取得された複数種類の時系列データからの乖離度を算出することで、前記第2のフェーズにおける処理空間内の状態を定量化する定量化部と
を有する基板処理システム。
【請求項2】
前記学習部は、算出したデータ密集度に基づいて、前記第1のフェーズにおいて取得された複数種類の時系列データそれぞれの外れ値の範囲を学習することで、前記学習済みの外れ値検知モデルを生成する、請求項1に記載の基板処理システム。
【請求項3】
前記定量化部は、前記第2のフェーズにおいて取得された複数種類の時系列データを、対応する前記学習済みの外れ値検知モデルにそれぞれ入力することで、複数種類の時系列データそれぞれにおいて外れ値を検知し、検知した外れ値に基づいて、複数種類の時系列データそれぞれについて前記乖離度を算出する、請求項2に記載の基板処理システム。
【請求項4】
前記定量化部により算出された乖離度のうち、特定の乖離度に基づいて、対応する制御ノブを調整する調整部を更に有し、
第3のフェーズにおいて、基板に対してプラズマ処理を行う際に、前記調整部により調整された調整後の制御ノブを用いてプラズマ処理を行う、請求項2に記載の基板処理システム。
【請求項5】
前記第2のフェーズにおいて取得された複数種類の時系列データは、前記第1のフェーズにおいてプラズマ処理が行われた基板よりも後の基板に対してプラズマ処理が行われた際に取得された時系列データである、請求項4に記載の基板処理システム。
【請求項6】
前記第2のフェーズにおいて取得された複数種類の時系列データは、前記第1のフェーズにおいてプラズマ処理が行われた基板よりも前の基板に対してプラズマ処理が行われた際に取得された時系列データである、請求項4に記載の基板処理システム。
【請求項7】
基板に対してプラズマ処理が行われるごとに、複数種類の時系列データを取得する取得部と、
第1のフェーズにおいて取得された複数種類の時系列データそれぞれのデータ密集度を算出することで、時系列データの種類数に応じた数の学習済みの外れ値検知モデルを生成する学習部と、
第2のフェーズにおいて取得された複数種類の時系列データを、対応する前記学習済みの外れ値検知モデルにそれぞれ入力し、前記第1のフェーズにおいて取得された複数種類の時系列データからの乖離度を算出することで、前記第2のフェーズにおける処理空間内の状態を定量化する定量化部と
を有する情報処理装置。
【請求項8】
基板に対してプラズマ処理が行われるごとに、複数種類の時系列データを取得する取得工程と、
第1のフェーズにおいて取得された複数種類の時系列データそれぞれのデータ密集度を算出することで、時系列データの種類数に応じた数の学習済みの外れ値検知モデルを生成する学習工程と、
第2のフェーズにおいて取得された複数種類の時系列データを、対応する前記学習済みの外れ値検知モデルにそれぞれ入力し、前記第1のフェーズにおいて取得された複数種類の時系列データからの乖離度を算出することで、前記第2のフェーズにおける処理空間内の状態を定量化する定量化工程と
を有する情報処理方法。
【請求項9】
基板に対してプラズマ処理が行われるごとに、複数種類の時系列データを取得する取得工程と、
第1のフェーズにおいて取得された複数種類の時系列データそれぞれのデータ密集度を算出することで、時系列データの種類数に応じた数の学習済みの外れ値検知モデルを生成する学習工程と、
第2のフェーズにおいて取得された複数種類の時系列データを、対応する前記学習済みの外れ値検知モデルにそれぞれ入力し、前記第1のフェーズにおいて取得された複数種類の時系列データからの乖離度を算出することで、前記第2のフェーズにおける処理空間内の状態を定量化する定量化工程と
をコンピュータに実行させるための情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理システム、情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
基板の製造プロセスにおいて取得された複数種類の時系列データを用いて、例えば、プラズマ処理が行われる処理空間(チャンバ)内の状態を定量化する試みがなされている。処理空間内の状態を定量化し、それぞれの状態に応じた制御ノブを調整できれば、プラズマ処理後の基板を均質化させることができるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6633391号明細書
【特許文献2】米国特許第7829468号明細書
【特許文献3】米国特許第10565513号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、プラズマ処理が行われる処理空間内の状態を定量化する基板処理システム、情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様による基板処理システムは、例えば、以下のような構成を有する。即ち、
基板に対してプラズマ処理が行われるごとに、複数種類の時系列データを取得する取得部と、
第1のフェーズにおいて取得された複数種類の時系列データそれぞれのデータ密集度を算出することで、時系列データの種類数に応じた数の学習済みの外れ値検知モデルを生成する学習部と、
第2のフェーズにおいて取得された複数種類の時系列データを、対応する前記学習済みの外れ値検知モデルにそれぞれ入力し、前記第1のフェーズにおいて取得された複数種類の時系列データからの乖離度を算出することで、前記第2のフェーズにおける処理空間内の状態を定量化する定量化部とを有する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、プラズマ処理が行われる処理空間内の状態を定量化する基板処理システム、情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】基板処理システムのシステム構成の一例を示す図である。
図2】学習装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図3】各フェーズにおいて処理前基板に対してプラズマ処理が行われるごとに取得される複数種類の時系列データの一例を示す図である。
図4】学習装置の機能構成の一例を示す図である。
図5】定量化装置の機能構成の一例を示す図である。
図6】複数種類の時系列データそれぞれの乖離度の具体例を示す図である。
図7】調整装置の機能構成の一例を示す図である。
図8】最適化処理の流れを示すフローチャートである。
図9】発光分光分析装置により取得された発光強度データの一例を示す図である。
図10】複数の処理前基板に対してプラズマ処理を行った際のエッチングレートの推移と、本実施例における動作フェーズとの関係を示す図である。
図11】定量化フェーズにおける各波長の発光強度データの乖離度の一例を示す図である。
図12】特定の波長における乖離度とエッチングレートとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、各実施形態について添付の図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省略する。
【0009】
[第1の実施形態]
<基板処理システムのシステム構成>
はじめに、基板処理システムのシステム構成について説明する。図1は、基板処理システムのシステム構成の一例を示す図である。図1に示すように、基板処理システム100は、基板処理装置110、時系列データ取得装置120_1~120_n、学習装置130、定量化装置140、調整装置150を有する。
【0010】
基板処理装置110は、プラズマ処理が行われる処理空間(チャンバ)を有し、当該処理空間において、対象物(処理前基板1、2、・・・等)に対してプラズマ処理を行い、結果物(処理後基板1、2、・・・等)を生成する。なお、ここでいう処理前基板1、2、・・・等とは、処理空間においてプラズマ処理が行われる前の基板を指し、処理後基板1、2、・・・等とは、処理空間においてプラズマ処理が行われた後の基板を指す。
【0011】
時系列データ取得装置120_1~120_nは取得部の一例であり、それぞれ処理空間において処理前基板1、2、・・・等に対してプラズマ処理が行われる前、あるいは、プラズマ処理が行われている最中の時系列データを取得する。時系列データ取得装置120_1~120_nは、互いに異なる種類の測定項目について測定を行うものとし、時系列データ取得装置120_1~120_nそれぞれが測定する測定項目の数は1つであっても複数であってもよい。
【0012】
なお、図1において、時系列データ1_1~時系列データn_1は、「処理前基板1」に対してプラズマ処理が行われる前、あるいは、プラズマ処理が行われている最中に、時系列データ取得装置120_1~120_nにより取得された時系列データである。
【0013】
同様に、時系列データ1_2~時系列データn_2は、「処理前基板2」に対してプラズマ処理が行われる前、あるいは、プラズマ処理が行われている最中に、時系列データ取得装置120_1~120_nにより取得された時系列データである。
【0014】
図1の例は、更に、処理前基板x、処理前基板x+1、処理前基板y、処理前基板y+1に対してプラズマ処理が行われる前、あるいは、プラズマ処理が行われている最中に取得された時系列データについて示している。
【0015】
なお、後述するように、基板処理システム100の動作フェーズは、学習フェーズ(第1のフェーズの一例)、定量化フェーズ(第2のフェーズの一例)、調整フェーズ(第3のフェーズの一例)に分類される。
【0016】
このうち、学習フェーズにおいて取得された複数種類の時系列データは、学習装置130に送信される。一方、定量化フェーズにおいて取得された複数種類の時系列データは、定量化装置140に送信される。
【0017】
学習装置130は、学習フェーズにおいて取得された複数種類の時系列データそれぞれについて、各時間のデータ密集度を算出し、外れ値の範囲を学習する。外れ値の範囲が学習されたそれぞれの学習済みモデルは、定量化装置140に通知される。
【0018】
定量化装置140は、定量化フェーズにおいて取得された複数種類の時系列データを、対応する学習済みモデルにそれぞれ入力することで、複数種類の時系列データそれぞれの各時間のデータ密集度を算出することで外れ値を検知する。また、定量化装置140は、検知した外れ値に基づいて、定量化フェーズにおいて取得された複数種類の時系列データそれぞれについて、学習フェーズにおいて取得された、対応する複数種類の時系列データそれぞれからの乖離度を算出する。これにより、定量化装置140では、定量化フェーズにおいて処理前基板に対してプラズマ処理が行われた際の処理空間内の状態(チャンバコンディション)を定量化することができる。なお、定量化された処理空間内の状態である乖離度は、調整装置150に通知される。
【0019】
調整装置150は、定量化装置140より通知された処理空間内の状態に応じて制御ノブの調整量を算出し、調整が必要な制御ノブと算出した調整量とを基板処理装置110に通知する。これにより、基板処理装置110では、次の処理前基板に対してプラズマ処理を行うにあたり、処理空間内の状態に適したプラズマ処理を行うことができる。
【0020】
なお、図1の説明では、複数種類の時系列データの詳細について言及しなかったが、複数種類の時系列データには、例えば、基板処理装置110が有する各種センサにより測定されたプロセスデータが含まれていてもよい。更に、ここでいうプロセスデータには、例えば、
・RF/DCデータ:プラズマ処理の高周波電力、反射電力、電圧、電流、磁力、
・ガス圧力データ:処理空間内の圧力、FCS圧力、配管圧力、ガス供給圧力、バルブ開度、裏面He圧力、
・ガス流量データ:RCS流量、MFC流量、ポンプ回転数、ポンプ電流値、ポンプ温度、
・駆動データ:モータ電流値、モータトルク、モータ回転数、
・温度データ:壁面温度、冷媒温度、電極温度、基板温度、
等が含まれていてもよい。あるいは、複数種類の時系列データには、例えば、プロセスデータに代えて、あるいは、プロセスデータに加えて、発光分光分析装置により測定された、
・発光データ:各波長の発光強度データ、
が含まれていてもよい。あるいは、複数種類の時系列データには、例えば、プロセスデータに代えて、あるいは、プロセスデータに加えて、分光反射率計により測定された、
・分光データ:基板や壁面の各波長の分光測定データ、
が含まれていてもよい。あるいは、複数種類の時系列データには、例えば、プロセスデータに代えて、あるいは、プロセスデータに加えて、質量分析装置(例えば、四重極形質量分析装置)により測定された、
・質量分析データ:質量に関する値(m/z値)の種類数に応じた数の検出強度データ、
が含まれていてもよい。あるいは、複数種類の時系列データには、例えば、プロセスデータに代えて、あるいは、プロセスデータに加えて、プラズマ計測装置により測定された、
・イオンデータ:イオンエネルギ分布、イオン角度分布、
等が含まれていてもよい。
【0021】
<学習装置等のハードウェア構成>
次に、学習装置130、定量化装置140、調整装置150のハードウェア構成について説明する。なお、学習装置130、定量化装置140、調整装置150は、同様のハードウェア構成を有することから、ここでは、学習装置130のハードウェア構成について説明する。図2は、学習装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0022】
図2に示すように、学習装置130は、プロセッサ201、メモリ202、補助記憶装置203、ユーザインタフェース装置204、接続装置205、通信装置206を有する。なお、学習装置130の各ハードウェアは、バス207を介して相互に接続されている。
【0023】
プロセッサ201は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等の各種演算デバイスを有する。プロセッサ201は、各種プログラム(例えば、後述する学習プログラム等)をメモリ202上に読み出して実行する。
【0024】
メモリ202は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の主記憶デバイスを有する。プロセッサ201とメモリ202とは、いわゆるコンピュータを形成し、プロセッサ201が、メモリ202上に読み出した各種プログラムを実行することで、当該コンピュータは各種機能を実現する。
【0025】
補助記憶装置203は、各種プログラムや、各種プログラムがプロセッサ201によって実行される際に用いられる各種データを格納する。
【0026】
ユーザインタフェース装置204は、例えば、学習装置130のユーザが各種コマンドの入力操作等を行うキーボードまたはタッチパネル、学習装置130の処理内容を表示するディスプレイ等を含む。
【0027】
接続装置205は、基板処理システム100内の他の装置と接続する接続デバイスである。通信装置206は、ネットワークを介して不図示の外部装置と通信するための通信デバイスである。
【0028】
<基板処理システムの動作フェーズ>
次に、基板処理システム100の動作フェーズと時系列データとの関係について説明する。図3は、各フェーズにおいて処理前基板に対してプラズマ処理が行われるごとに取得される複数種類の時系列データの一例を示す図である。
【0029】
図3の例は、学習フェーズにおいて、処理前基板1~処理前基板xに対して、プラズマ処理が行われた場合を示している。この場合、学習装置130には、
・処理前基板1に対してプラズマ処理が行われた際に取得された複数種類の時系列データ(時系列データ1_1~時系列データn_1)から、
・処理前基板xに対してプラズマ処理が行われた際に取得された複数種類の時系列データ(時系列データ1_x~時系列データn_x)まで、
が通知される。
【0030】
これにより、学習装置130では、通知された複数種類の時系列データそれぞれについて各時間のデータ密集度を算出し、外れ値の範囲を学習する。この結果、学習装置130は、時系列データの種類数に応じた数(n個)の学習済みモデルを生成する。
【0031】
また、図3の例は、定量化フェーズにおいて、処理前基板x+1に対して、プラズマ処理が行われた場合を示している。この場合、定量化装置140には、
・処理前基板x+1に対してプラズマ処理が行われた際に取得された複数種類の時系列データ(時系列データ1_x+1~時系列データn_x+1)、
が通知される。
【0032】
これにより、定量化装置140では、通知された複数種類の時系列データを、対応するn個の学習済みモデルにそれぞれ入力し、学習フェーズにおいて取得された、対応する複数種類の時系列データそれぞれからの乖離度を算出する。この結果、定量化装置140では、処理前基板x+1に対してプラズマ処理が行われた際の処理空間内の状態(チャンバコンディション)を定量化することができる。
【0033】
また、図3の例は、定量化された処理空間内の状態である乖離度に基づいて、調整装置150が制御ノブを調整した調整フェーズにおいて、基板処理装置110が、処理前基板y、処理前基板y+1、・・・に対して、プラズマ処理を行った様子を示している。
【0034】
このように定量化フェーズにおいて定量化された処理空間内の状態に基づいて、制御ノブを調整したうえで、調整フェーズにおいてプラズマ処理を行う構成とすることで、調整フェーズにおいては、処理空間内の状態に適したプラズマ処理を行うことができる。
【0035】
なお、基板処理システム100における動作フェーズの切り替えタイミングは任意であり、例えば、予め定められた数の処理前基板に対してプラズマ処理が行われた場合に、学習フェーズから定量化フェーズに切り替えられるように構成してもよい。また、予め定められた数の処理前基板に対してプラズマ処理が行われた場合に、定量化フェーズから調整フェーズに切り替えられるように構成してもよい。このとき、基板処理システム100は、1ロット内で全てのフェーズが切り替えられるように構成してもよいし、複数のロットに跨って各フェーズが切り替えられるように構成してもよい。
【0036】
また、基板処理システム100による学習フェーズと定量化フェーズの複数種類の時系列データの取得順序は任意であり、例えば、図3に示すように学習フェーズ→定量化フェーズの順序で複数種類の時系列データが取得されるように構成してもよい。具体的には、定量化フェーズにおいて取得された複数種類の時系列データが、学習フェーズにおいてプラズマ処理が行われた処理前基板よりも後の処理前基板に対してプラズマ処理が行われた際に取得された時系列データとなるように構成してもよい。
【0037】
あるいは、基板処理システム100は、定量化フェーズ→学習フェーズの順序で複数種類の時系列データが取得されるように構成してもよい。具体的には、定量化フェーズにおいて取得された複数種類の時系列データが、学習フェーズにおいてプラズマ処理が行われた処理前基板よりも前の処理前基板に対してプラズマ処理が行われた際に取得された時系列データとなるように構成してもよい。
【0038】
また、基板処理システム100における動作フェーズの実行パターンは任意であり、基板処理システム100は、例えば、定量化フェーズと調整フェーズとが、並行して実行されるように構成してもよい。具体的には、調整フェーズにおいて処理前基板y、時系列データy+1、・・・等に対してプラズマ処理が行われた際に取得された複数種類の時系列データ(時系列データ1_y~時系列データn_y等)が、定量化装置140に通知されるように構成してもよい。これにより、基板処理システム100は、調整フェーズと並行して定量化フェーズを実行させることが可能となる。
【0039】
この結果、例えば、調整フェーズにおいて、調整装置150は、一定数の処理前基板に対してプラズマ処理を行うごとに、定量化された処理空間内の状態に基づいて制御ノブを調整し、調整後の制御ノブのもとで、プラズマ処理を行うことが可能となる。
【0040】
ただし、この場合も、調整フェーズにおいてプラズマ処理が行われる際に用いられる制御ノブの調整量は、直前の定量化フェーズにおいて算出された乖離度に基づいて算出されるものとする。
【0041】
また、基板処理システム100において、学習フェーズ及び定量化フェーズの実行回数は任意である。例えば、基板処理システム100は、学習フェーズ及び定量化フェーズが、同一ロット内で、複数回実行されるように構成してもよいし、ロットが切り替わるごとに、1回実行されるように構成してもよい。あるいは、同一のレシピを用いて複数のロットに対してプラズマ処理が行われる場合にあっては、レシピが切り替わるごとに、1回実行されるように構成してもよい。あるいは、予め定められた数のロットに対してプラズマ処理(または、予め定められた数の処理前基板に対してプラズマ処理)が行われるごとに、1回実行されるように構成してもよい。あるいは、所定時間に1回実行されるように構成してもよい。
【0042】
<学習装置の機能構成>
次に、学習装置130の機能構成について説明する。図4は、学習装置の機能構成の一例を示す図である。学習装置130には、学習プログラムがインストールされており、当該プログラムが実行されることで、学習装置130は、学習部400として機能する。
【0043】
図4に示すように、学習部400は、時系列データの種類数に応じた数の外れ値検知モデル(モデル410_1~モデル410_n)を有する。
【0044】
モデル410_1には、
・学習フェーズにおいて処理前基板1に対してプラズマ処理が行われることで時系列データ取得装置120_1により取得された時系列データ1_1から、
・学習フェーズにおいて処理前基板xに対してプラズマ処理が行われることで時系列データ取得装置120_1により取得された時系列データ1_xまで、
が入力される。これにより、モデル410_1は、学習フェーズにおいて、プラズマ処理が行われるごとに時系列データ取得装置120_1により取得された時系列データについて、各時間のデータ密集度を算出する。更に、モデル410_1は、学習フェーズにおいて、プラズマ処理が行われるごとに時系列データ取得装置120_1により取得された時系列データについて、外れ値の範囲を学習する。なお、学習フェーズにおいてモデル410_1により学習された外れ値の範囲は、基準範囲情報として後述するモデル510_1に設定される。
【0045】
同様に、モデル410_2には、
・学習フェーズにおいて処理前基板1に対してプラズマ処理が行われることで時系列データ取得装置120_2により取得された時系列データ2_1から、
・学習フェーズにおいて処理前基板xに対してプラズマ処理が行われることで時系列データ取得装置120_2により取得された時系列データ2_xまで、
が入力される。これにより、モデル410_2は、学習フェーズにおいて、プラズマ処理が行われるごとに時系列データ取得装置120_2により取得された時系列データについて、各時間のデータ密集度を算出する。更に、モデル410_2は、学習フェーズにおいて、プラズマ処理が行われるごとに時系列データ取得装置120_1により取得された時系列データについて、外れ値の範囲を学習する。なお、学習フェーズにおいてモデル410_2により学習された外れ値の範囲は、基準範囲情報として後述するモデル510_2に設定される。
【0046】
以下、図4では、モデル410_3~モデル410_n-1について省略しているため、これらの外れ値検知モデルの説明については省略する。
【0047】
モデル410_nには、
・学習フェーズにおいて処理前基板1に対してプラズマ処理が行われることで時系列データ取得装置120_nにより取得された時系列データn_1から、
・学習フェーズにおいて処理前基板xに対してプラズマ処理が行われることで時系列データ取得装置120_nにより取得された時系列データn_xまで、
が入力される。これにより、モデル410_nは、学習フェーズにおいて、プラズマ処理が行われるごとに時系列データ取得装置120_nにより取得された時系列データについて、各時間のデータ密集度を算出する。更に、モデル410_nは、学習フェーズにおいて、プラズマ処理が行われるごとに時系列データ取得装置120_nにより取得された時系列データについて、外れ値の範囲を学習する。なお、学習フェーズにおいてモデル410_nにより学習された外れ値の範囲は、基準範囲情報として後述するモデル510_nに設定される。
【0048】
なお、モデル510_1~モデル510_nそれぞれに設定される基準範囲情報は任意である。モデル410_1~モデル410_nそれぞれに入力される複数種類の時系列データが、例えば、処理空間内の状態が正常な状態のもとでプラズマ処理が行われた際に取得された時系列データであった場合、基準範囲情報は、正常範囲を示す情報となる。また、モデル410_1~モデル410_nそれぞれに入力される複数種類の時系列データが、例えば、処理空間内の状態が異常な状態のもとでプラズマ処理が行われた際に取得された時系列データであった場合、基準範囲情報は、異常範囲を示す情報となる。
【0049】
あるいは、モデル410_1~モデル410_nそれぞれに入力される複数種類の時系列データの中に、
・処理空間内の状態が正常な状態のもとでプラズマ処理が行われた際に取得された複数種類の時系列データと、
・処理空間内の状態が異常な状態のもとでプラズマ処理が行われた際に取得された複数種類の時系列データと、
が含まれていたとする。この場合、学習部400では、例えば、以下のような手順で処理を行う。
・処理空間内の状態が正常な状態のもとでプラズマ処理が行われた際に取得された複数種類の時系列データを、モデル410_1~モデル410_nにそれぞれ入力することで外れ値の範囲を学習し、基準範囲情報として、正常範囲を示す情報を算出する。
・学習を行ったモデル410_1~モデル410_nに、処理空間内の状態が異常な状態のもとでプラズマ処理が行われた際に取得された複数種類の時系列データをそれぞれ入力し、上記算出した正常範囲に基づいて検知された外れ値の検知精度を検証する。
・モデル410_1~モデル410_nのうち、外れ値の検知精度が高いモデルを、定量化フェーズにおいて用いるモデルとして特定する。
【0050】
<定量化装置の機能構成>
次に、定量化装置140の機能構成について説明する。図5は、定量化装置の機能構成の一例を示す図である。定量化装置140には、定量化プログラムがインストールされており、当該プログラムが実行されることで、定量化装置は、定量化部500として機能する。
【0051】
図5に示すように、定量化部500は、時系列データの種類数に応じた数の学習済みの外れ値検知モデル(モデル510_1~510_n)と、乖離度算出部(乖離度算出部520_1~520_n)とを有する。また、定量化部500は、出力部530を有する。
【0052】
モデル510_1には、
・定量化フェーズにおいて処理前基板x+1に対してプラズマ処理が行われることで時系列データ取得装置120_1により取得された時系列データ1_x+1、
が入力される。これにより、モデル510_1は、プラズマ処理が行われるごとに時系列データ取得装置120_1により取得された時系列データについて、各時間のデータ密集度を算出する。更に、モデル510_1は、設定された基準範囲情報に基づいて、当該時系列データの外れ値を検知し、乖離度算出部520_1に通知する。
【0053】
同様に、モデル510_2には、
・定量化フェーズにおいて処理前基板x+1に対してプラズマ処理が行われることで時系列データ取得装置120_2により取得された時系列データ2_x+1、
が入力される。これにより、モデル510_2は、プラズマ処理が行われるごとに時系列データ取得装置120_2により取得された時系列データについて、各時間のデータ密集度を算出する。更に、モデル510_2は、設定された基準範囲情報に基づいて、当該時系列データの外れ値を検知し、乖離度算出部520_2に通知する。
【0054】
以下、図5では、モデル510_3~モデル510_n-1について省略しているため、これらの外れ値検知モデルの説明については省略する。
【0055】
モデル510_nには、
・定量化フェーズにおいて処理前基板x+1に対してプラズマ処理が行われることで時系列データ取得装置120_nにより取得された時系列データn_x+1、
が入力される。これにより、モデル510_nは、プラズマ処理が行われるごとに時系列データ取得装置120_nにより取得された時系列データについて、各時間のデータ密集度を算出する。更に、モデル510_nは、設定された基準範囲情報に基づいて、当該時系列データの外れ値を検知し、乖離度算出部520_nに通知する。
【0056】
乖離度算出部520_1は、モデル510_1により検知された外れ値を示す2値情報に基づいて、時系列データ1_x+1全体の乖離度を集計し、出力部530に通知する。
【0057】
同様に、乖離度算出部520_2は、モデル510_2により検知された外れ値を示す2値情報に基づいて、時系列データ2_x+1全体の乖離度を集計し、出力部530に通知する。
【0058】
以下、図5では、乖離度算出部520_3~乖離度算出部520_n-1について省略しているため、これらの乖離度算出部の説明については省略する。
【0059】
乖離度算出部520_nは、モデル510_nにより検知された外れ値を示す2値情報に基づいて、時系列データn_x+1全体の乖離度を集計し、出力部530に通知する。
【0060】
出力部530は、モデル510_1~510_nのうち、予め特定されたモデル(あるいは学習部400により特定されたモデル)に対応する乖離度算出部を特定する。また、出力部530は、特定した乖離度算出部より通知された乖離度が、定量化フェーズにおいて定量化された処理空間内の状態(チャンバコンディション)であるとして、調整装置150に通知する。
【0061】
<乖離度の具体例>
次に、乖離度算出部520_1~520_nからそれぞれ出力される乖離度の具体例について説明する。図6は、複数種類の時系列データそれぞれの乖離度の具体例を示す図である。図6において、横軸は、時系列データの種類を表している。また、縦軸は、定量化フェーズにおいて取得された複数種類の時系列データそれぞれについて算出された、時系列データ全体の乖離度を表している。
【0062】
図6の例に示すように、時系列データの種類によっては、学習フェーズにおいて取得された時系列データに対して、定量化フェーズにおいて取得された時系列データが大きく乖離しているものもある。
【0063】
したがって、特定の種類の時系列データの乖離度に着目することで、学習フェーズに対する定量化フェーズの処理空間内の状態の変化を捉えることができる。
【0064】
<調整装置の機能構成>
次に、調整装置150の機能構成について説明する。図7は、調整装置の機能構成の一例を示す図である。調整装置150には、調整プログラムがインストールされており、当該プログラムが実行されることで、調整装置150は、調整部710として機能する。
【0065】
調整部710は、定量化装置140により定量化された処理空間内の状態である乖離度を取得すると、関係性データ格納部720を参照する。関係性データ格納部720には、特定のモデルに対応する乖離度算出部から出力される乖離度と、対応する制御ノブの調整量との対応関係を予め実験的に求めたテーブル730が格納されている。
【0066】
調整部710では、テーブル730を参照することにより、特定のモデルに対応する乖離度算出部から出力された乖離度に基づいて、対応する制御ノブの調整量を算出する。図7の例は、モデル510_1に対応する乖離度算出部520_1から出力される乖離度("乖離度1")に基づいて、対応する制御ノブ("制御ノブA")の調整量("f(乖離度1)")が算出されることを示している。また、図7の例は、モデル510_2に対応する乖離度算出部520_2から出力される乖離度("乖離度2")に基づいて、対応する制御ノブ("制御ノブB")の調整量("f(乖離度2)")が算出されることを示している。また、図7の例は、モデル510_3に対応する乖離度算出部520_3から出力された乖離度("乖離度3")に基づいて、対応する制御ノブ("制御ノブC")の調整量("f(乖離度3)")が算出されることを示している。
【0067】
<基板処理システムによる最適化処理の流れ>
次に、基板処理システム100によるプラズマ処理において、処理空間内の状態を定量化し、それぞれの状態に応じた制御ノブを調整することでプラズマ処理を最適化する最適化処理の流れについて説明する。図8は、最適化処理の流れを示すフローチャートである。図8のフローチャートは、所定のタイミングで、学習フェーズ、定量化フェーズ及び調整フェーズを1回実行する場合の最適化処理の流れを示している。
【0068】
ステップS801において、学習装置130は、学習フェーズにおいて、基板処理装置110によりプラズマ処理が行われた際に、各時系列データ取得装置により取得された複数種類の時系列データを取得する。
【0069】
ステップS802において、学習装置130は、学習フェーズにおいて取得した複数種類の時系列データを、対応するモデルにそれぞれ入力することで、各時間のデータ密集度を算出し、外れ値の範囲を学習する。これにより、学習装置130は、時系列データの種類数に応じた数の学習済みモデルを生成する。
【0070】
ステップS803において、定量化装置140は、定量化フェーズにおいて、基板処理装置110によりプラズマ処理が行われた際に、各時系列データ取得装置により取得された複数種類の時系列データを取得する。
【0071】
ステップS804において、定量化装置140は、定量化フェーズにおいて取得した複数種類の時系列データを、対応する学習済みモデルにそれぞれ入力することで、各時間のデータ密集度を算出し、外れ値を検知する。また、定量化装置140は、検知した外れ値に基づいて、定量化フェーズにおいて取得した複数種類の時系列データそれぞれについて、学習フェーズにおいて取得された、対応する複数種類の時系列データそれぞれからの乖離度を算出する。また、定量化装置140は、特定の学習済みモデルに対応する乖離度が、定量化された処理空間内の状態であるとして、調整装置150に通知する。
【0072】
ステップS805において、調整装置150は、定量化された処理空間内の状態である乖離度に基づいて、対応する制御ノブの調整量を算出する。また、調整装置150は、調整フェーズにおいて、調整が必要な制御ノブと算出した調整量とを基板処理装置110に通知する。
【0073】
<まとめ>
以上の説明から明らかなように、第1の実施形態に係る基板処理システム100は、
・処理前基板に対してプラズマ処理が行われるごとに、複数種類の時系列データをそれぞれ取得する。
・学習フェーズにおいて取得された複数種類の時系列データそれぞれのデータ密集度を算出し、外れ値の範囲を学習する。これにより、時系列データの種類数に応じた数の学習済みの外れ値検知モデルを生成する。
・定量化フェーズにおいて取得された複数種類の時系列データを、対応する学習済みの外れ値検知モデルにそれぞれ入力する。これにより、学習フェーズにおいて取得された複数種類の時系列データからの乖離度を算出し、定量化フェーズにおける処理空間内の状態を定量化する。
【0074】
この結果、第1の実施形態によれば、プラズマ処理が行われる処理空間内の状態を定量化することができる。
【0075】
<<実施例>>
続いて、上記第1の実施形態に係る基板処理システム100の実施例について説明する。本実施例は、
・基板処理装置:エッチング処理装置、
・時系列データ取得装置120_1~120_n:波長200~800[nm]の発光分光分析装置(n=601)、
・時系列データ1_1~時系列データ1_n:波長200~800[nm]の各発光強度データ、
・モデル:外れ値検知モデル、
・動作フェーズの切り替えタイミング:1ロット内、
・学習フェーズの処理前基板:1ロット内の10枚目の処理前基板、
・定量化フェーズの処理前基板:1ロット内の1枚目及び9枚目の処理前基板、
・調整フェーズの処理前基板:1ロット内の11枚目以降の処理前基板、
等の構成例のもとで各動作フェーズを実行したものである。
【0076】
(1)発光強度データの具体例
図9は、発光分光分析装置により取得された発光強度データの一例を示す図である。図9において、横軸は、200~800[nm]の波長を表しており、縦軸は、各波長の所定の時間での発光強度を表している。本実施例では、プラズマ処理中の各波長の発光強度データ(図9参照)を、複数種類の時系列データとして取得した。
【0077】
(2)動作フェーズの具体例
図10は、複数の処理前基板に対してプラズマ処理を行った際のエッチングレートの推移と、本実施例における動作フェーズとの関係を示す図である。図10において、横軸は、プラズマ処理された処理前基板の枚数を表しており、縦軸は、各処理前基板に対してプラズマ処理を行った際のエッチングレートを表している。更に、上段には、それぞれの処理前基板に対してプラズマ処理が行われた際の動作フェーズを示している。
【0078】
なお、図10の例の場合、プラズマ処理された処理前基板の枚数が少ない状況では、エッチングレートは低く、プラズマ処理された処理前基板の枚数が多くなると、エッチングレートが高くなり、やがて、エッチングレートが安定するといった推移を示している。
【0079】
このようなエッチングレートの推移に対して、本実施例では、10枚目の処理前基板に対するプラズマ処理を学習フェーズとし、1枚目の処理前基板と9枚目の処理前基板とに対するプラズマ処理を定量化フェーズとした。更に、11枚目以降の処理前基板に対するプラズマ処理を調整フェーズとした。
【0080】
(3)定量化フェーズにおける各波長の乖離度の具体例
図11は、定量化フェーズにおける各波長の発光強度データの乖離度の一例を示す図である。このうち、図11(a)は、定量化フェーズにおいて、1枚目の処理前基板に対してプラズマ処理が行われた際に取得された各波長の発光強度データと、各波長の発光強度データを学習済みモデルに入力することで算出された乖離度とを示している。
【0081】
また、図11(b)は、定量化フェーズにおいて、9枚目の処理前基板に対してプラズマ処理が行われた際に取得された各波長の発光強度データと、各波長の発光強度データを学習済みモデルに入力することで算出された乖離度とを示している。
【0082】
図11(a)と図11(b)とを比較すると、両者は、各波長の発光強度データが類似している一方で、特定の波長の乖離度については、大きく異なっている。ここで、乖離度と、エッチングレートとの関係について検討する。
【0083】
図10で示したように、学習フェーズにおいてプラズマ処理された10枚目の処理前基板は、エッチングレートが安定した後にプラズマ処理された処理前基板である。また、定量化フェーズにおいてプラズマ処理された処理前基板のうち、9枚目の処理前基板も、エッチングレートが安定した後にプラズマ処理された処理前基板である。つまり、両者はエッチングレートの差が少ない状況でプラズマ処理されている。そして、図11(b)に示したように、定量化フェーズにおいて、9枚目の処理前基板に対してプラズマ処理が行われた際に取得された各波長の発光強度データは、学習フェーズにおいて取得された各波長の発光強度データとの乖離度が少ない。
【0084】
一方で、図10で示したように、定量化フェーズにおいてプラズマ処理された処理前基板のうち、1枚目の処理前基板は、エッチングレートが安定する前にプラズマ処理された処理前基板であり、学習フェーズにおけるエッチングレートとの差が大きい。そして、図11(a)に示したように、定量化フェーズにおいて、1枚目の処理前基板に対してプラズマ処理が行われた際に取得された各波長の発光強度データは、学習フェーズにおいて取得された各波長の発光強度データとの乖離度が大きい。
【0085】
このように、学習フェーズにおいて取得された各波長の発光強度データからの乖離度は、概ね、処理空間内の状態の一例であるエッチングレートの変化を表しているということができる。
【0086】
具体的には、エッチングレートが安定した後に行われるプラズマ処理を学習フェーズとした場合、学習フェーズにおいて取得された各波長の発光強度データからの乖離度は、安定した後のエッチングレートからの変化を表しているということができる。
【0087】
また、エッチングレートが安定する前に行われるプラズマ処理を学習フェーズとした場合、学習フェーズにおいて取得された各波長の発光強度データからの乖離度は、安定する前のエッチングレートからの変化を表しているということができる。
【0088】
(4)波長の特定
図12は、特定の波長における乖離度とエッチングレートとの関係を示す図である。このうち、図12(a)は、図11(a)と同じグラフに、特定の波長の領域1200を追記したものである。一方、図12(b)は、図12(a)に示す特定の波長の領域1200に含まれる乖離度と、エッチングレートとの関係を示した図である。
【0089】
図12(b)に示すように、特定の波長における乖離度とエッチングレートとは概ね線形の関係を有している。
【0090】
したがって、定量化フェーズにおいて算出された各波長の乖離度のうち、領域1200に含まれる波長の乖離度を特定して、制御ノブを調整することで、本実施例によれば、エッチングレートの変化に適したプラズマ処理を行うことができる。なお、このときの制御ノブは、例えば、学習フェーズ(つまり、10枚目の処理前基板に対するプラズマ処理)において用いられた制御ノブの制御量に、特定した波長の乖離度に応じた調整量を付加することで調整してもよい。
【0091】
[その他の実施形態]
上記第1の実施形態では、外れ値検知モデルを用いる場合について説明したが、モデルの種類はこれに限定されず、時系列データのデータ密集度に基づいてデータの外れ値を検知することができれば、他のモデルを用いてもよい。
【0092】
また、上記第1の実施形態では、基板処理装置110とは別体に学習装置130、定量化装置140、調整装置150を設ける構成とした。しかしながら、学習装置130、定量化装置140、調整装置150の一部または全部は、基板処理装置110と一体として設けられてもよい。
【0093】
また、上記第1の実施形態では、学習装置130、定量化装置140、調整装置150が互いに別体として構成されるものとして説明したが、これらの装置の一部または全部は、一体の情報処理装置として構成されてもよい。この場合、学習装置130において実行される学習プログラム、定量化装置140により実行される定量化プログラム、調整装置150において実行される調整プログラムの一部または全部を含む情報処理プログラムが情報処理装置にて実行されることになる。
【0094】
なお、上記実施形態に挙げた構成等に、その他の要素との組み合わせ等、ここで示した構成に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0095】
100 :基板処理システム
110 :基板処理装置
120_1~120_n :時系列データ取得装置
130 :学習装置
140 :定量化装置
150 :調整装置
400 :学習部
410_1~410_n :モデル
500 :定量化部
510_1~510_n :モデル
520_1~520_n :乖離度算出部
530 :出力部
710 :調整部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12