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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057346
(43)【公開日】2023-04-21
(54)【発明の名称】加熱装置及び液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20230414BHJP
   H05B 3/00 20060101ALI20230414BHJP
【FI】
B41J2/01 125
B41J2/01 401
H05B3/00 335
H05B3/00 310D
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021166828
(22)【出願日】2021-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100182453
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 英明
(72)【発明者】
【氏名】神田 雄太
【テーマコード(参考)】
2C056
3K058
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EB13
2C056EB14
2C056EB30
2C056EB38
2C056EB46
2C056EC14
2C056EC35
2C056HA46
3K058BA18
3K058CA16
3K058CA22
3K058CE24
3K058DA00
3K058GA06
(57)【要約】
【課題】加熱範囲を搬送対象物の幅方向に渡って変更する。
【解決手段】加熱装置は、液体が付与された搬送対象物を加熱する加熱部21,22を備え、加熱部21,22は、その加熱範囲を、搬送対象物が搬送される搬送面と平行で搬送方向に直交する幅方向Bに渡って変更可能である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が付与された搬送対象物を加熱する加熱部を備え、
前記加熱部は、その加熱範囲を、前記搬送対象物が搬送される搬送面と平行で搬送方向に直交する幅方向に渡って変更可能であることを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
前記加熱部は、前記搬送対象物に対して非接触で加熱する非接触加熱部を含み、
前記非接触加熱部は、前記搬送対象物を非接触で加熱するための熱付与エネルギーを放出する熱付与エネルギー放出部と、前記熱付与エネルギー放出部と前記搬送面との間の前記幅方向の一部の範囲に介在し前記熱付与エネルギーを遮蔽する遮蔽部材を有し、
前記遮蔽部材は、前記熱付与エネルギーを遮蔽する遮蔽位置と、前記遮蔽位置から退避した退避位置とに移動可能である請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記遮蔽部材は、前記搬送対象物の前記幅方向の大きさに応じて位置変更可能である請求項2に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記遮蔽部材は、前記搬送対象物の前記搬送面に直交する方向の大きさに応じて位置変更可能である請求項2又は3に記載の加熱装置。
【請求項5】
環境温度を検知する温度検知部を備え、
前記遮蔽部材は、前記温度検知部によって検知された温度に応じて位置変更可能である請求項2から4のいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項6】
前記非接触加熱部によって前記搬送対象物の加熱を開始してからの経過時間を計測する経過時間計測部を備え、
前記遮蔽部材は、前記経過時間計測部によって計測された経過時間に応じて位置変更可能である請求項2から5のいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項7】
前記加熱部は、前記搬送対象物に接触して加熱する接触加熱部を含み、
前記接触加熱部は、前記幅方向の異なる範囲において発熱可能な加熱源を有する請求項1から6のいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項8】
前記加熱源は、前記搬送対象物の前記幅方向の大きさに応じて発熱範囲を変更可能である請求項7に記載の加熱装置。
【請求項9】
前記加熱源は、前記搬送対象物の前記搬送面に直交する方向の大きさに応じて発熱範囲を変更可能である請求項7又は8に記載の加熱装置。
【請求項10】
環境温度を検知する温度検知部を備え、
前記加熱源は、前記温度検知部によって検知された温度に応じて発熱範囲を変更可能である請求項7から9のいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項11】
前記接触加熱部によって前記シートの加熱を開始してからの経過時間を計測する経過時間計測部を備え、
前記加熱源は、前記経過時間計測部によって計測された経過時間に応じて発熱範囲を変更可能である請求項7から10のいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項12】
搬送対象物を搬送する搬送部と、
前記搬送対象物に液体を吐出する液体吐出部と、
前記液体吐出部によって液体が付与された前記搬送対象物を加熱する加熱装置を備える液体吐出装置であって、
前記加熱装置として、請求項1から11のいずれか1項に記載の加熱装置を備えることを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱装置及び液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を吐出する液体吐出装置として、紙などのシートにインクを吐出して画像を形成するインクジェット式の画像形成装置が知られている。
【0003】
インクジェット式の画像形成装置においては、シートに吐出されたインクの乾燥を促進させるため、シートを加熱する加熱装置が設けられているものがある。例えば、特許文献1(特開2019-177701号公報)においては、シートを加熱する手段として、シートを非接触で加熱する赤外線ヒータと、シートに接触して加熱する加熱ドラムを備える加熱装置(乾燥装置)が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような加熱装置は、シートを幅方向(シート搬送面に平行でシート搬送方向に対して直交する方向)に渡って一様に加熱可能に構成されていることが一般的である。しかしながら、シートの幅は、一様ではなく、様々なサイズ(幅)が存在する。このため、最大幅よりも小さい幅のシートが加熱装置を通過する場合、非接触式の加熱装置においては、シートが通過しない領域においても熱エネルギーが付与されることにより、周囲の部材が不必要に加熱される。
【0005】
また、接触式の加熱装置においては、シートが通過しない(接触しない)領域の熱が奪われにくいため、シートが通過しない領域が蓄熱により過剰に温度上昇する問題が発生する。その場合、熱により加熱装置が劣化又は損傷する虞があるばかりか、蓄熱部とそれ以外の部分との間の温度差によりシートの加熱ムラが発生する虞がある。さらに、非接触式の加熱装置が接触式の加熱装置と対向して配置される構成の場合、シートが通過しない領域においては、非接触式の加熱装置から放出された熱エネルギーがシートに与えられることなく接触式の加熱装置に付与されるため、接触式の加熱装置における温度上昇がより顕著になる。
【0006】
このように、従来の構成においては、加熱装置の加熱範囲が、シートなどの搬送対象物の幅方向に渡って一様に設定されているため、種々の弊害が生じる懸念があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る加熱装置は、液体が付与された搬送対象物を加熱する加熱部を備え、前記加熱部は、その加熱範囲を、前記搬送対象物が搬送される搬送面と平行で搬送方向に直交する幅方向に渡って変更可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、加熱範囲を搬送対象物の幅方向に渡って変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るインクジェット式画像形成装置の全体構成を示す図である。
図2】本実施形態に係るインクジェット画像形成装置の制御システムを示す図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る加熱装置をシート幅方向から見た側面図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る加熱装置をシート搬送方向から見た正面図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る加熱装置の制御システムを示す図である。
図6】最大幅のシートが搬送される場合の加熱装置の動作を示す図である。
図7】最小幅のシートが搬送される場合の加熱装置の動作を示す図である。
図8】中間幅のシートが搬送される場合の加熱装置の動作を示す図である。
図9】本発明の第2実施形態に係る加熱装置をシート搬送方向から見た正面図である。
図10】本発明の第3実施形態に係る加熱装置の制御システムを示す図である。
図11】本発明の第3実施形態に係る加熱装置の動作の一例を示す図である。
図12】本発明の第3実施形態に係る加熱装置の動作の他の例を示す図である。
図13】本発明の第4実施形態に係る加熱装置の制御システムを示す図である。
図14】本発明の第4実施形態に係る加熱装置の動作の一例を示す図である。
図15】本発明の第4実施形態に係る加熱装置の動作の他の例を示す図である。
図16】本発明の第5実施形態に係る加熱装置の制御システムを示す図である。
図17】接触加熱部と非接触加熱部の他の配置例を示す図である。
図18】接触加熱部と非接触加熱部のさらに別の配置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材及び構成部品などの構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0011】
まず、図1及び図2に基づき、本発明に係る液体吐出装置の一実施形態であるインクジェット式画像形成装置の構成について説明する。図1は、インクジェット式画像形成装置の全体構成を示す図、図2は、インクジェット画像形成装置の制御システムを示す図である。
【0012】
図1に示されるように、本実施形態に係る画像形成装置100は、画像形成用のシートSを供給するシート供給部1と、シートSの表側の面に画像を形成する第1画像形成部3と、シートSの裏側の面に画像を形成する第2画像形成部4と、シートSの表裏を反転させる表裏反転部5と、シートSを乾燥させる第1乾燥部6及び第2乾燥部7と、画像が形成されたシートSを回収するシート回収部2を備えている。また、本実施形態に係る画像形成装置100は、シート供給部1、第1画像形成部3、第2画像形成部4、表裏反転部5、第1乾燥部6、第2乾燥部7、シート回収部2を制御するための制御部8(図2参照)を備えている。
【0013】
シート供給部1は、長尺のシートSがロール状に巻回された供給ローラ11と、シートSに付与される張力を調整する張力調整機構12を有している。供給ローラ11は、図1に示される矢印方向に回転可能に構成されており、供給ローラ11が回転することにより、シートSが繰り出される。張力調整機構12は、シートSを掛け渡して張力を付与する複数のローラを有している。これらのローラのうちの一部のローラが移動することにより、シートSの張力が調整され、シートSが供給ローラ11から一定の張力で繰り出される。
【0014】
第1画像形成部3は、シートSに対して液体のインクを吐出する液体吐出部としての吐出ヘッド13と、搬送されるシートSを支持するシート支持部材としてのプラテン14を有している。プラテン14は、吐出ヘッド13と対向するように配置されており、シート供給部1から供給されたシートSの下面を支持する。吐出ヘッド13は、制御部8によって生成された画像データのうち、シートSの表側の面に形成される画像データに基づいてインクをシートSの表側の面に吐出し、シートSに画像を形成する。ここで、インクは、色材と溶剤、溶剤に分散された結晶性樹脂粒子を含む液体である。結晶性樹脂は、所定の融点以上に熱せられると相変化を起こし結晶状態から液体に融解する樹脂である。また、プラテン14は、吐出ヘッド13とシートSとの距離を一定に保てるように、吐出ヘッド13に対して接近離間可能に構成されている。
【0015】
第1乾燥部6は、シートS上のインクの乾燥を促進させるためにシートSを加熱する加熱装置20を有している。加熱装置20は、シートSに接触して加熱する加熱ドラム21と、シートSに対して非接触で加熱する温風発生部22とを含む。加熱ドラム21は、外周面にシートSが巻きつけられながら回転する円筒状の部材であり、内部にハロゲンヒータなどの加熱源が配置されている。一方、温風発生部22は、シートSに吹き付ける温風を発生させる部分であり、ヒータなどの発熱部材と、発熱部材によって加熱された熱気を搬送路に向かって送風するファンなどの送風装置を有している。
【0016】
図1に示されるように、加熱ドラム21は、シートSが搬送される搬送路よりも下側(シートSの裏側)に配置されている。このため、第1画像形成部3からシートSが搬送されると、シートSの下面(裏側の面)が加熱ドラム21の外周面に接触し、回転する加熱ドラム21によってシートSが加熱されながら搬送される。このとき、加熱ドラム21の回転速度は、画像形成装置100が備えるシート供給部1、シート回収部2、搬送ローラなどの搬送部の搬送速度とほぼ同一速度に設定されている。このため、シートSは、加熱ドラム21の外周面に対して搬送方向にずれることがなく搬送される。
【0017】
一方、温風発生部22は、搬送路よりも上側(シートSの表側)で、加熱ドラム21対向するように配置されている。このため、第1画像形成部3からシートSが搬送されると、加熱ドラム21の熱と温風発生部22の温風によってシートSが表裏両側から加熱され、シートSの表側の面に付与されたインクの乾燥が促進される。
【0018】
表裏反転部5は、シートSの表側と裏側の位置を反転させる公知の装置により構成される。第1乾燥部6から搬送されたシートSは、表裏反転部5を通過する際、表裏反転されて第2画像形成部4へ送られる。すなわち、シートSの表側の面が上向きの状態で搬送されると、表裏反転部5によって表側の面が下向き(裏側の面が上向き)となるように反転されて搬送される。
【0019】
第2画像形成部4は、基本的に第1画像形成部3と同じ構成であり、インクを吐出する吐出ヘッド15と、シートSを支持するプラテン16を有している。ただし、第2画像形成部4においては、シートSの裏側の面に対して画像が形成される。すなわち、シートSは、表裏反転部5によって表裏反転された状態で第2画像形成部4へ搬送されるので、第2画像形成部4は、制御部8によって生成された画像データのうち、シートSの裏側の面に形成される画像データに基づいてインクをシートSの裏側の面に吐出し、シートSに画像を形成する。
【0020】
第2乾燥部7は、第1乾燥部6と同じ構成の加熱装置30を有している。すなわち、第2乾燥部7の加熱装置30は、接触加熱部である加熱ドラム31と、非接触加熱部である温風発生部32とを含む。図2に示されるように、第2乾燥部7の加熱ドラム31は、第1乾燥部6の加熱ドラム21と同じように、搬送路よりも下側に配置されているが、搬送されるシートSは表裏反転されるため、シートSの表側の面に接触する。このとき、シートSの表側の面に画像が形成されていたとしても、すでに第1乾燥部6によってインクの乾燥が促進されているため、加熱ドラム31が表側の画像に接触しても、画像が乱れることはない。第2乾燥部7の温風発生部32は、搬送路よりも上側(シートSの裏側)に配置され、シートSに向かって温風を送風することにより、シートSの上面(裏側の面)が主に加熱される。これにより、シートSの裏側のインクが効果的に乾燥されると共に、シートSの表側の面のインクの乾燥もさらに促進される。
【0021】
シート回収部2は、シートSを巻き取って回収する回収ローラ17と、シートSに付与される張力を調整する張力調整機構18を有している。回収ローラ17は、図1に示される矢印方向に回転可能に構成されており、回収ローラ17が回転することにより、シートSがロール状に巻き取られて回収される。張力調整機構18は、シート供給部1の張力調整機構12と同じように、複数のローラを有し、これらのローラのうちの一部のローラが移動することにより、シートSの張力が調整され、シートSは回収ローラ17によって一定の張力で巻き取られる。
【0022】
制御部8は、PC(Personal Computer)などの情報処理装置によって構成される。制御部8は、シートSの表側の面及び裏側の面に形成される画像データを生成するほか、シート供給部1、第1画像形成部3、第2画像形成部4、表裏反転部5、第1乾燥部6、第2乾燥部7、シート回収部2の各種動作を制御する。例えば、制御部8は、第1乾燥部6及び第2乾燥部7の各加熱ドラム21,31の温度を制御する。各加熱ドラム21,31の温度は、シートS上のインクが乾燥する温度であって、かつ、インクに含まれる樹脂が溶解しないように樹脂の融点温度より低い温度に制御されることが好ましい。ただし、シートSの種類によっては、シートSからインクが剥がれにくいので、そのようなシートSが用いられる場合は、第2乾燥部7における加熱ドラム31の温度を、上記樹脂の融点温度より低い温度(第1温度)のほか、樹脂の融点温度以上の高い温度(第2温度)に設定できるようにしてもよい。加熱ドラム31の温度を高い温度(第2温度)に制御することにより、シートS上のインクの乾燥を早め、生産性を向上させることができる。
【0023】
ところで、本発明の実施形態に係る画像形成装置においては、一種類のシートだけではなく、幅サイズが異なる複数種類のシートを搬送可能に構成されている。しかしながら、このような種々のシートを搬送可能な画像形成装置においては、シートを加熱する加熱装置(乾燥装置)の加熱範囲が一様であると、従来のような弊害が発生する虞がある。すなわち、幅サイズが小さいシートが搬送された場合は、シートが通過しない非通過領域における加熱ドラムの熱がシートによって奪われにくいため、非通過領域における加熱ドラムの温度上昇が顕著になる。このため、加熱ドラムが熱により劣化したり、加熱ドラムの表面温度差により加熱ムラが発生し、画像品質が低下したりする虞がある。
【0024】
さらに、上記実施形態のように、温風発生部が加熱ドラムに対向するように配置されている場合は、シートに吹き付けられない温風が加熱ドラムに吹き付けられるため、シートが通過しない非通過領域における感光体ドラムの温度上昇がより一層顕著となる。また、搬送されるシートが長尺のシートである場合は、所定の長さにカットされた所謂カット紙に比べて、シートの通過に伴う温度分布のばらつきが継続して生じるため、 シートが通過しない非通過領域における加熱ドラムの温度上昇が顕著になりやすい傾向にある。
【0025】
そこで、本発明の実施形態においては、上記のような弊害を抑制するため、下記のような構成を採用している。以下、本実施形態に係る加熱装置(乾燥装置)の構成について、詳しく説明する。
【0026】
図3は、本発明の実施形態に係る加熱装置をシート幅方向から見た側面図、図4は、その加熱装置をシート搬送方向から見た正面図である。ここで、上記第1乾燥部6及び上記第2乾燥部7が有する各加熱装置20,30の構成は、基本的に同じであるので、一方の加熱装置20の構成のみについて説明し、他方の加熱装置30の構成については説明を省略する。
【0027】
なお、上記「シート搬送方向」とは、シートが搬送される方向であり、例えば図3中の矢印Aにより示される方向を意味する。一方、「シート幅方向」とは、シートが搬送される搬送面と平行で、かつ、シート搬送方向に直交する方向であり、図4中の矢印Bにより示される方向を意味する。また、「搬送面」とは、搬送されるシートが通過する面であり、例えば、シートを掛け渡して搬送する搬送ローラの場合は、複数の搬送ローラのシート接触部を繋いだ仮想面、シートを載置して搬送する搬送ベルトの場合は、搬送ベルトのシート載置面などが含まれる。また、以下の説明中の「シート搬送方向」、「シート幅方向」、「搬送面」も同じ意味である。
【0028】
図3及び図4に示されるように、本実施形態に係る加熱装置20は、加熱ドラム31をその内側から加熱する加熱源としての複数のハロゲンヒータ41A,41Bを有している。本実施形態においては、2つのハロゲンヒータ41A,41Bが設けられており、各ハロゲンヒータ41A,41Bは、それぞれの加熱範囲がシート幅方向B(図4参照)において異なっている。
【0029】
本実施形態の場合、2つのハロゲンヒータ41A,41Bのうち、図4中の上側のハロゲンヒータ41Aは、最大幅のシートが通過する最大通過領域(最大通過幅)W1のうち、その中央Mを含む中央側の領域に発熱部410を有している。このため、上側のハロゲンヒータ41Aの発熱部410が発熱すると、主に加熱ドラム31の中央側の領域が加熱される。ここで、本実施形態においては、上側のハロゲンヒータ41Aの発熱部410が、少なくとも最小幅のシートが通過する最小通過領域(最小通過幅)W2を含む領域に渡って配置されているが、発熱部410が配置される範囲(大きさ)は、中央Mを含む範囲であれば適宜変更可能である。
【0030】
これに対して、図4における下側のハロゲンヒータ41Bは、上記上側のハロゲンヒータ41Aの発熱部410よりも両外側(中央Mからシート幅方向Bに離れた位置)に配置される一対の発熱部411を有している。このため、下側のハロゲンヒータ41Bの各発熱部411が発熱すると、主に加熱ドラム31の両端側の領域が加熱される。
【0031】
また、本実施形態に係る加熱装置20は、シートSが搬送される搬送路(搬送面)と温風発生部22との間へ移動可能な遮蔽部材42を有している。遮蔽部材42は、搬送路と温風発生部22との間に介在することにより、温風発生部22から放出される温風を遮蔽する。なお、ここでいう「遮蔽」には、温風発生部22から放出される温風を完全に遮蔽する場合のほか、温風の一部のみを遮蔽する場合も含まれる。
【0032】
図3に示されるように、遮蔽部材42は、シート搬送方向A及びこれと反対方向に移動可能に構成されている。これにより、遮蔽部材42は、搬送路と温風発生部22との間に介在して温風を遮蔽する遮蔽位置(図3中の実線で示される位置)と、その遮蔽位置から退避した退避位置(図3中の二点鎖線で示される位置)とに移動できる。なお、遮蔽部材42の移動方向は、図3に示されるシート搬送方向A及びこれと反対方向に限らず、シート幅方向Bであってもよいし、その他の方向であってもよい。また、遮蔽部材42の材料は、ある程度の耐熱性を有し、温風を遮蔽できる材料であれば、特に限定されない。
【0033】
図4に示されるように、遮蔽部材42は、シート幅方向Bに渡って複数配置されている。本実施形態においては、遮蔽部材42が、最小幅のシートが通過する最小通過領域W2よりも両外側の領域(中央Mを含まない両端側の領域)にそれぞれ2つずつ配置されている。本実施形態においては、4つの遮蔽部材42のうち、内側(中央Mに近い側)の2つの遮蔽部材42A同士が一緒に移動し、外側(中央Mから遠い側)の2つの遮蔽部材42Bが一緒に移動するように構成されている。なお、各遮蔽部材42が1つずつ独立して移動可能に構成されていてもよい。
【0034】
図5は、本実施形態に係る加熱装置の制御システムを示す図である。
【0035】
図5に示されるように、本実施形態に係る制御部8は、シートの幅(幅方向Bの大きさ)を決定するシート幅決定部81を有している。シート幅決定部81は、例えば、シートの種類ごとに幅情報をあらかじめ記憶し、選択されたシートの種類に応じてその幅を決定するものであってもよいし、選択されたシートの幅を検知するセンサから得られる情報に基づきシートの幅を決定するものであってもよい。制御部8は、シート幅決定部81によって決定されたシート幅に基づいて、加熱装置20が有する各ハロゲンヒータ41A,41B及び各遮蔽部材42A,42Bを制御する。
【0036】
続いて、本実施形態に係る加熱装置の動作及び制御について説明する。
【0037】
まず、図6に示されるように、最大幅のシートSaが搬送される場合は、両方のハロゲンヒータ41A,41Bを発熱させる。これにより、加熱ドラム21における最大幅のシートSaが通過する最大通過領域W1全体が一様に加熱される。また、この場合、各遮蔽部材42A,42Bは、すべて退避位置に配置される。従って、温風発生部22の温風は、最大幅のシートSaが通過する最大通過領域W1全体に渡って遮蔽されることなく搬送路へ送風される。このため、最大幅のシートSaが加熱装置20へ搬送されると、加熱ドラム21の熱と温風発生部22の温風によってシートSaがその幅方向全体に渡って加熱される。
【0038】
これに対して、図7に示されるように、最小幅のシートSbが搬送される場合は、2つのハロゲンヒータ41A,41Bのうち、中央側に発熱部410を有するハロゲンヒータ41Aのみを発熱させる。これにより、加熱ドラム21のうち、最小幅のシートSbが通過する中央側の領域が主に加熱される。また、この場合、各遮蔽部材42A,42Bは、温風発生部22と搬送路との間の遮蔽位置に移動する。これにより、温風発生部22から送風される温風のうち、最小通過領域W2よりも外側の温風が遮蔽される状態となる。一方、最小通過領域W2の内側の領域においては、温風が遮蔽されない状態が確保されるため、最小幅のシートSbに対しては温風が送風される。従って、この場合は、最小幅のシートSbが加熱装置20へ搬送されると、加熱ドラム21の熱と温風発生部22の温風によりシートSbがその幅方向全体に渡って加熱される。
【0039】
また、図8に示されるように、最大幅と最小幅の間の中間幅のシートScが搬送される場合は、両方のハロゲンヒータ41A,41Bを発熱させると共に、4つの遮蔽部材42A,42Bのうち、外側の2つの遮蔽部材42Bのみを遮蔽位置に配置する。この場合、中間幅のシートScが通過する通過領域においては、加熱ドラム21が加熱されると共に、温風発生部22から温風が遮蔽されずに送風されるため、中間幅のシートScは、加熱ドラム21の熱と温風発生部22の温風によりその幅方向全体に渡って加熱される。
【0040】
以上のように、本実施形態においては、搬送されるシートの幅に応じて、発熱させるハロゲンヒータと、遮蔽位置に移動させる遮蔽部材が選択されることにより、加熱装置の加熱範囲をシート幅方向に渡って変更することができる。特に幅が小さい最小幅のシートSbが搬送される場合(図7に示される場合)は、加熱ドラム21が加熱される範囲と、温風発生部22から搬送路へ送風される温風の範囲を小さくすることにより、シートSbが通過しない非通過領域における加熱ドラム21の過剰な温度上昇を抑制できる。これにより、加熱ドラム21の劣化、及び、加熱ドラム21の温度差に起因するシートの加熱ムラの発生を抑制でき、耐久性と画像品質を向上させることが可能である。また、不必要なハロゲンヒータの発熱も低減できるため、省エネ性が向上する。
【0041】
上記本実施形態においては、加熱ドラム21の加熱範囲を、最大通過領域W1に対応した範囲と最小通過領域W2に対応した範囲のいずれかに変更可能であるが、これらの範囲以外に中間幅のシートScが通過する通過領域に対応した加熱範囲も選択できるように、ハロゲンヒータの本数を増やしてもよい。また、遮蔽部材42についても、より多くの種類のシート幅に対応できるように、遮蔽部材42の数を増やしてもよい。
【0042】
続いて、図9に基づき、本発明の第2実施形態について説明する。以下、第2実施形態の構成のうち、上記実施形態(第1実施形態)の構成と同じ部分については説明を省略し、主に異なる部分について説明する。
【0043】
図9に示されるように、本実施形態においては、加熱装置50が備える接触加熱部及び非接触加熱部の構成が、上記実施形態とは異なっている。それ以外は、同じ構成である。具体的に、本実施形態に係る加熱装置50は、接触加熱部として、上記加熱ドラム21の代わりに板状の加熱プレート51を備え、非接触加熱部として、上記温風発生部22の代わりに高周波誘電加熱部52を備えている。
【0044】
加熱プレート51は、内部に加熱源としての複数のヒータ53を有する板状の部材であり、シートSに接触するように配置されている。一方、高周波誘電加熱部52は、シートSに接触しない位置に配置され、所定波長の高周波をシートSへ放出することにより、シートSに加熱作用を生じさせ、シートSを加熱する。この加熱作用の強さは加熱対象物の材質に依存するため、放出される高周波の波長はシートSの材質に応じて最適な波長が選択されている。
【0045】
加熱プレート51内に配置される複数のヒータ53は、シート幅方向Bに並んで配置され、互いに独立して発熱可能に構成されている。このため、発熱させるヒータ53を選択することにより、加熱プレート51の加熱範囲をシート幅方向Bに変更することが可能である。
【0046】
高周波誘電加熱部52と搬送路(搬送面)との間には、高周波誘電加熱部52から放出される高周波を遮蔽する複数の遮蔽部材54A,54Bが移動可能に配置されている。各遮蔽部材54A,554Bは、高周波誘電加熱部52と搬送路との間に介在する遮蔽位置と、その遮蔽位置から退避した退避位置との間で移動する。また、各遮蔽部材54A,54Bは、高周波誘電加熱部52と搬送路との間のシート幅方向Bの領域のうち、その一部の範囲(図9に示される例においては、最小通過領域W2を除く両外側の範囲)に介在するように配置されている。各遮蔽部材54A,54Bの材料としては、金属材料などを用いることができる。また、高周波を遮蔽できる材料であれば、それ以外の材料であってもよい。
【0047】
このように、本実施形態においては、加熱プレート51を加熱する複数のヒータ53が互いに独立して発熱可能に構成されているため、搬送されるシートの幅に応じて発熱させるヒータ53を選択することにより、加熱プレート51の加熱範囲を変更できる。すなわち、最大幅よりも小さい幅のシートが搬送される場合は、そのシートの幅に応じて一部のヒータ53のみを発熱させることにより、シートが通過しない非通過領域における加熱プレート51の過剰な温度上昇を抑制できる。これにより、上記実施形態(第1実施形態)と同じように、耐久性の向上と画像品質の向上を図れる。また、不必要な発熱も低減できるため、省エネ性も向上する。一方、最大幅のシートが搬送される場合は、すべてのヒータ53を発熱させることにより、最大幅のシートを一様に加熱することが可能である。
【0048】
さらに、搬送されるシートの幅に応じて、各遮蔽部材54A,54Bを遮蔽位置又は退避位置へ移動させることにより、高周波誘電加熱部52から放出される高周波を、主にシートが通過する通過領域に制限して照射することができる。これにより、シートが通過しない非通過領域に高周波が照射されることによる加熱プレート51の過剰な温度上昇を抑制できる。また、不要な箇所への高周波の照射を抑制でき、高周波が周囲に照射されることによる弊害の発生も低減できる。
【0049】
続いて、以下に説明する本発明の各実施形態は、上記第1実施形態とは主に加熱装置を制御する制御システムが異なる実施形態である。各実施形態における基本的構成については、上記実施形態と同じであるので、制御システムの違いについて説明する。
【0050】
図10は、本発明の第3実施形態に係る加熱装置の制御システムを示す図である。
【0051】
図10に示される実施形態においては、制御部8が、シートの厚さ(搬送面に直交する方向の大きさ)を決定するシート厚さ決定部82を有している。シート厚さ決定部82は、例えば、シートの種類ごとに厚さ情報をあらかじめ記憶し、選択されたシートの種類に応じてその厚さを決定するものであってもよいし、選択されたシートの厚さを検知するセンサから得られる情報に基づきシートの厚さを決定するものであってもよい。本実施形態において、制御部8は、シート厚さ決定部82によって決定されたシート厚さに基づいて、加熱装置20が有する各ハロゲンヒータ41A,41B及び各遮蔽部材42A,42Bを制御する。
【0052】
一般的に、シートは、同じ幅であっても厚い方が、熱容量が大きく、シートが薄い場合に比べてインクを乾燥させるための熱を多く必要になるため、加熱ドラムを加熱するハロゲンヒータの設定温度(目量加熱温度)を高く設定する傾向にある。しかしながら、ハロゲンヒータの設定温度を高く設定すると、シートが通過しない非通過領域においておける加熱ドラムの蓄熱量が多くなり、過剰な温度上昇が発生しやすくなる。従って、同じ幅であってもシートの厚さが厚い場合は、加熱ドラムが過剰に温度上昇しないように加熱範囲を制限する制御を行うことが好ましい。
【0053】
例えば、上記第1実施形態においては、中間幅のシートが搬送される場合、図8に示されるように、両方のハロゲンヒータ41A,41Bを発熱させると共に、内側の2つ遮蔽部材42Aを退避位置に配置して、シートSc全体に温風が送風されるようにしているが、シートが厚い場合は、図11に示されるように、同じ中間幅のシートScであっても加熱範囲を制限することが好ましい。すなわち、図11に示される例においては、外側の2つの遮蔽部材42Bに加え、内側の2つの遮蔽部材42Aも遮蔽位置に移動させることにより、シートSc及び加熱ドラム21へ送風される温風の送風範囲を狭くしている。これにより、温風による加熱ドラム21の蓄熱が低減されるので、シートScが通過しない非通過領域における加熱ドラム21の過剰な温度上昇を抑制できるようになる。
【0054】
また、図12に示される例のように、送風範囲を狭くすることはせず、ハロゲンヒータ41A,41Bによる発熱範囲を制限することにより、非通過領域における加熱ドラム21の過剰な温度上昇を抑制してもよい。すなわち、中央側の領域に発熱部410を有するハロゲンヒータ41Aのみを発熱させる。さらに、シートの厚さに応じて、温風の送風範囲とハロゲンヒータの発熱範囲の両方を制御することにより加熱範囲を調整することも可能である。このように、シートの厚さに応じて接触加熱部と非接触加熱部の少なくとも一方の加熱範囲を調整することにより、接触加熱部の過剰な温度上昇を抑制できるほか、周囲への不必要な熱の影響も抑制できるようになる。
【0055】
図13は、本発明の第4実施形態に係る加熱装置の制御システムを示す図である。
【0056】
図13に示される実施形態においては、制御部8が、温度センサなどの温度検知部84によって検知された環境温度の情報を取得する温度情報取得部83を有している。温度検知部84によって検知される環境温度は、画像形成装置周辺の雰囲気温度であってもよいし、シートの温度であってもよい。制御部8は、温度検知部84によって検知された環境温度に基づいて、加熱装置20が有する各ハロゲンヒータ41A,41B及び各遮蔽部材42A,42Bを制御する。
【0057】
環境温度が低い場合、これに伴ってシートの温度も低くなるため、環境温度が高い場合に比べて、シートに与える熱量を多くしないと、インクの乾燥が効果的に行われない虞がある。従って、同じ種類(同じ幅、同じ厚さ、同じ材質)のシートであっても環境温度が低い場合は、シートに与える熱量を多くすることが好ましい。
【0058】
例えば、上記第1実施形態においては、最小幅のシートが搬送される場合、図7に示されるように、中央側の領域に発熱部410を有するハロゲンヒータ41Aのみを発熱させると共に、すべての遮蔽部材42A,42Bを遮蔽位置に配置して、加熱範囲を制限するようにしているが、環境温度が低い場合は、図14に示されるように、同じ最小幅のシートSbであっても加熱範囲を広げることが好ましい。すなわち、図14に示される例においては、内側の2つの遮蔽部材42Aを退避位置に移動させることにより、シートSb及び加熱ドラム21に対して温風が送風される送風範囲を広げている。これにより、加熱ドラム21の温度又は蓄熱量が上がるので、環境温度が低い場合においてもシートSbを効果的に加熱し、インクの乾燥を促進させることができるようになる。
【0059】
また、図15に示される例のように、温風の送風範囲を広げず、ハロゲンヒータ41A,41Bによる発熱範囲を広げることにより、加熱ドラム21の温度又は蓄熱量を上げてもよい。さらに、環境温度に応じて、温風の送風範囲とハロゲンヒータの発熱範囲の両方を制御することにより加熱範囲を調整することも可能である。このように、環境温度に応じて接触加熱部と非接触加熱部の少なくとも一方の加熱範囲を調整することにより、シートを効果的に加熱し、インクの乾燥を促進させることができるようになる。
【0060】
図16は、本発明の第5実施形態に係る加熱装置の制御システムを示す図である。
【0061】
図16に示される実施形態においては、制御部8が、タイマーなどの経過時間計測部86によって計測される経過時間の情報を取得する時間情報取得部85を有している。具体的に、経過時間計測部86は、加熱ドラムなどの接触加熱部又は温風発生部などの非接触加熱部によるシートの加熱が開始されてからの経過時間を計測する。接触加熱部と非接触加熱部による加熱開始が同時に行われる場合は、これらの加熱開始タイミングからの時間を計測すればよい。一方、接触加熱部と非接触加熱部の加熱開始タイミングが異なる場合は、局部的な温度上昇の弊害が直接的に生じ得る接触加熱部の加熱開始タイミングからの時間を計測することが好ましい。なお、接触加熱部又は非接触加熱部のシート加熱開始タイミングを判定できれば、それより前のタイミング(例えば、シートに対するインクの吐出が開始されたタイミング)からの時間が計測されてもよい。制御部8は、経過時間計測部86によって計測された経過時間に基づいて、加熱装置20が有する各ハロゲンヒータ41A,41B及び各遮蔽部材42A,42Bを制御する。
【0062】
上述のシートが通過しない非通過領域における過剰な温度上昇などの弊害は、接触加熱部又は非接触加熱部によるシートの加熱開始後すぐに生じるのではなく、その後のシートの通過に伴う局部的な蓄熱量の増加により発生する。従って、シートの加熱が開始されてからしばらくの間は、加熱範囲の制限を行わなくてもよい。
【0063】
このため、本実施形態においては、経過時間計測部86によって、接触加熱部によるシートの加熱が開始されてからの時間を計測し、計測時間があらかじめ設定された時間に達した場合に、遮蔽部材を遮蔽位置に移動させたり、発熱させるヒータを選択したりして(図7図8参照)、非接触加熱部と接触加熱部の少なくとも一方の加熱範囲を制限する。すなわち、接触加熱部の蓄熱量のばらつきが大きくなり過剰な温度上昇が生じる前に、加熱範囲の制限を行うことにより、接触加熱部の温度上昇を抑制する。このように、接触加熱部又は非接触加熱部における加熱範囲の制限は、シートの加熱が開始されてから所定時間経過後に行ってもよい。
【0064】
以上、異なる制御システムの実施形態について説明したが、各実施形態の制御システムのうち、2つ又は3つ以上を適宜組み合わせて併用することも可能である。例えば、図5に示されるようなシート幅に応じて加熱範囲を制御するシステムと、図10に示されるようなシート厚さに応じて加熱範囲を制御するシステムを併用してもよい。また、このような制御システムは、加熱ドラムと温風発生部を備える構成(第1実施形態)に限らず、加熱プレートと高周波誘電加熱部を有する構成(第2実施形態)にも適用可能である。
【0065】
また、本発明は、上記実施形態に限らず、発明の内容を逸脱しない範囲において適宜設計変更可能である。
【0066】
上記実施形態においては、接触加熱部(加熱ドラム、加熱プレート)と非接触加熱部(温風発生部、高周波誘電加熱部)が、搬送路を介して互いに対向するように配置される場合を例に説明したが、接触加熱部と非接触加熱部の相対的な位置関係はこれに限定されない。
【0067】
例えば、図17に示される例のように、接触加熱部(この場合、加熱ドラム21)と非接触加熱部(この場合、温風発生部22)が、シート搬送方向Aにおいて互いに異なる位置に配置されてもよい。
【0068】
また、図18に示される例のように、接触加熱部(この場合、加熱ドラム21)と非接触加熱部(この場合、温風発生部22)が、シートS又は搬送路に対して同じ側に配置されてもよい。なお、この場合、接触加熱部がシートSのインク面(図18における上面)に接触するように配置されているが、接触加熱部よりもシート搬送方向Aの上流側の非接触加熱部によって先にシート上のインクの乾燥処理が行われ、インクの乾燥がある程度行われている場合は、その後、下流側の接触加熱部がシートのインク面に接触しても、画像の乱れを抑制することが可能である。
【0069】
また、非接触加熱部は、温風を送風する温風発生部、又は、所定波長の高周波を放出する高周波誘電加熱部に限らず、非接触でシートを加熱するための熱付与エネルギーを放出するその他の熱付与エネルギー放出部であってもよい。また、これらの熱付与エネルギー放出部を複数組み合わせて用いてもよい。
【0070】
また、上記実施形態においては、接触加熱部と非接触加熱部の両方を備える加熱装置を例に説明したが、本発明は、接触加熱部と非接触加熱部の一方のみを備える加熱装置にも適用可能である。
【0071】
また、本発明は、シートにインクを吐出して画像を形成するインクジェット式画像形成装置に限らず、インク以外の液体を吐出する液体吐出装置にも適用可能である。例えば、本発明に係る液体吐出装置は、画像形成装置のほか、画像形成前のシートに対してその表面を改質するために処理液を吐出する装置など、画像を形成しない液体吐出装置であってもよい。
【0072】
また、本発明において用いられるシートは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、液体が付着して固着するもの、又は、液体が付着して浸透するものなどであればよい。具体的に、シートには、用紙のほか、樹脂フィルム、壁紙、電子基板なども含まれる。また、シートの材質としては、紙、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなどが挙げられる。また、シートは、長尺に形成された連続紙(ロール紙)のほか、あらかじめ所定のサイズにカットされたカット紙であってもよい。さらに、本発明は、液体が付与される搬送対象物を加熱する加熱装置であれば、シート以外の搬送対象物を搬送する装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0073】
20 加熱装置
21 加熱ドラム(接触加熱部)
22 温風発生部(非接触加熱部)
30 加熱装置
31 加熱ドラム(接触加熱部)
32 温風発生部(非接触加熱部)
41A ハロゲンヒータ(加熱源)
41B ハロゲンヒータ(加熱源)
42A 遮蔽部材
42B 遮蔽部材
50 加熱装置
51 加熱プレート(接触加熱部)
52 高周波誘電加熱部(非接触加熱部)
53 ヒータ(加熱源)
54A 遮蔽部材
54B 遮蔽部材
81 シート幅決定部
82 シート厚さ決定部
83 温度情報取得部
84 温度検知部
85 時間情報取得部
86 経過時間計測部
100 画像形成装置(液体吐出装置)
S シート(搬送対象物)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0074】
【特許文献1】特開2019-177701号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
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図15
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