(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057349
(43)【公開日】2023-04-21
(54)【発明の名称】バケット情報取得装置およびこれを備えた建設機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/26 20060101AFI20230414BHJP
【FI】
E02F9/26 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021166835
(22)【出願日】2021-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100178582
【弁理士】
【氏名又は名称】行武 孝
(72)【発明者】
【氏名】▲橋▼本 涼太
(72)【発明者】
【氏名】島津 泰彦
(72)【発明者】
【氏名】山口 拓則
(72)【発明者】
【氏名】沖本 翔
【テーマコード(参考)】
2D015
【Fターム(参考)】
2D015HA03
(57)【要約】
【課題】3次元データからバケット形状情報を直接演算する場合と比較して、処理負荷を低減しながら前記バケット形状情報を取得することが可能なバケット情報取得装置およびこれを備えた建設機械を提供する。
【解決手段】バケット情報取得装置5は、ステレオカメラ63と、データ処理部502と、近似線特定部503と、バケット形状演算部504とを備える。ステレオカメラ63は、バケット23の距離分布を取得する。データ処理部502は、前記距離分布からバケット23の断面である基準断面を抽出する。近似線特定部503は、直線および曲線から構成され前記基準断面を近似する近似線Kを特定する。バケット形状演算部504は、バケット23の形状に関する情報であるバケット形状情報を近似線Kに基づいて演算する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械において所定の移動面に沿って回動中心軸回りに回動するバケットの形状に関する情報を取得するバケット情報取得装置であって、
基準点に対する前記バケットの3次元距離分布を取得する距離分布取得部と、
前記距離分布取得部によって取得された前記距離分布から、前記バケットを前記移動面と平行な平面で切断した前記バケットの断面である基準断面を抽出する基準断面抽出部と、
直線および曲線から構成され前記基準断面に近似する近似線を前記基準断面に基づいて特定する近似線特定部と、
前記バケットの形状に関する情報であるバケット形状情報を前記近似線に基づいて演算するバケット形状演算部と、
を備える、バケット情報取得装置。
【請求項2】
前記近似線特定部は、前記近似線が一対の線分と当該一対の線分同士を接続する少なくとも一つの曲線とから構成されるように前記近似線を特定する、請求項1に記載のバケット情報取得装置。
【請求項3】
前記少なくとも一つの曲線は、少なくとも一つの円弧を含み、
前記バケット形状演算部は、前記一対の線分のそれぞれの長さと、前記少なくとも一つの円弧の曲率半径とを前記バケット形状情報としてそれぞれ演算する、請求項2に記載のバケット情報取得装置。
【請求項4】
前記建設機械に備えられ前記バケットを前記回動中心軸回りに回動させることが可能なバケット駆動部に、前記バケットが地面に対して互いに異なる複数の姿勢を順にとるような駆動指令信号を入力する駆動指令入力部を更に備え、
前記バケット形状演算部は、前記バケット駆動部によって設定される前記複数の姿勢のそれぞれにおいて特定された前記近似線に基づいて、前記基準点に対する前記回動中心軸の相対位置を前記バケット形状情報として演算する、請求項1乃至3の何れか1項に記載のバケット情報取得装置。
【請求項5】
前記複数の姿勢は、少なくとも3つの姿勢を含み、
前記バケット形状演算部は、前記少なくとも3つの姿勢に対応する少なくとも3つの前記近似線の先端を通る一の円弧の中心位置を前記回動中心軸の前記相対位置として演算する、請求項4に記載のバケット情報取得装置。
【請求項6】
前記バケット形状演算部は、前記近似線の先端と当該先端とは反対側の基端とを結ぶ線分と前記近似線とによって囲まれる領域の面積である収容断面積を前記バケット形状情報として演算する、請求項1乃至5の何れか1項に記載のバケット情報取得装置。
【請求項7】
前記バケット形状演算部は、前記距離分布取得部によって取得された距離分布から左右方向における前記バケットの寸法である幅寸法を演算するとともに、前記収容断面積と前記幅寸法とから前記バケットの収容容積を前記バケット形状情報として演算する、請求項6に記載のバケット情報取得装置。
【請求項8】
前記バケット形状演算部は、前記距離分布から前記バケットの左右一対の側壁の前記基準点に対する相対位置を演算するとともに、前記先端および前記基端を結ぶ線分と前記近似線とによって囲まれた領域の図心の前記基準点に対する相対位置を演算し、前記図心を通り前記左右方向に延びる直線と前記左右一対の側壁とがそれぞれ交わる左右一対の交点間の距離を前記幅寸法として演算する、請求項7に記載のバケット情報取得装置。
【請求項9】
前記バケット形状演算部によって演算された前記バケット形状情報に応じて前記建設機械の出力特性を変更するための出力特性信号を前記建設機械に入力する出力特性信号入力部を更に備える、請求項1乃至8の何れか1項に記載のバケット情報取得装置。
【請求項10】
前記バケット形状演算部は、所定の周期で前記バケット形状情報を演算することが可能であり、
前記バケット形状演算部によって演算された前記バケット形状情報を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された過去のバケット形状情報と前記バケット形状演算部によって演算された新たなバケット形状情報とのずれ量を判定する判定部と、
前記判定部によって前記過去のバケット形状情報と前記新たなバケット形状情報とのずれ量が予め設定された閾値を超えている場合に、警告信号を出力する警告信号出力部と、
を更に備える、請求項1乃至9の何れか1項に記載のバケット情報取得装置。
【請求項11】
前記近似線特定部によって特定された前記近似線を表示することが可能な表示部を更に備える、請求項1乃至10の何れか1項に記載のバケット情報取得装置。
【請求項12】
前記表示部は、前記近似線と前記基準断面とを重畳して表示することが可能である、請求項11に記載のバケット情報取得装置。
【請求項13】
前記表示部に表示された前記近似線と前記基準断面との相対位置に応じて前記近似線を修正するための指令を受け付けることが可能な修正指令入力部を更に備え、
前記近似線特定部は、前記修正指令入力部に入力された前記指令に応じて前記近似線の形状を修正することが可能である、請求項12に記載のバケット情報取得装置。
【請求項14】
作業現場における前記建設機械の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記位置情報と前記バケット形状情報とを互いに関連付けて前記建設機械から離れた位置に配置される管理装置に送信する送信部と、
を更に備える、請求項1乃至13の何れか1項に記載のバケット情報取得装置。
【請求項15】
機体と、
先端部を有し前記機体に起伏可能に支持された起伏体と、
前記起伏体の前記先端部に左右方向に延びる回動中心軸回りに回動可能に支持されたバケットと、
前記バケットの形状に関する情報であるバケット形状情報を取得することが可能な、請求項1乃至14の何れか1項に記載のバケット情報取得装置と、
を備える、建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バケットの形状に関する情報を取得することが可能なバケット情報取得装置およびこれを備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、作業現場の地面を掘削するためのバケットを備えた油圧ショベル(建設機械)が知られている。当該油圧ショベルは、地面上を走行可能な下部走行体と、当該下部走行体上に搭載される上部本体と、当該上部本体に支持される作業アタッチメントとを有する。前記作業アタッチメントの先端部には、バケットが装着される。
【0003】
特許文献1には、バケットを有する建設機械の作業量を計測する技術が開示されている。当該技術では、建設機械が複数のカメラと画像処理部とを有する。複数のカメラは、掘削作業によって土砂を抱え込んだ状態のバケットと、前記土砂を排土した後のバケットとをそれぞれ撮影し、それぞれの3次元データを取得する。画像処理部は、各3次元データに基づいて土砂を含むバケットの形状に関する情報(バケット形状情報)を取得し、掘削時のバケット形態情報と排土後のバケット形態情報との差からバケットの作業量(土砂運搬量)を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された技術では、画像処理部が、カメラで撮影された3次元データから各バケット形状情報を演算するため、演算時に画像処理部が扱うデータ量が多くなり、演算処理の負荷も大きくなるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、3次元データからバケット形状情報を直接演算する場合と比較して、取り扱うデータ量や処理負荷を低減しながら前記バケット形状情報を取得することが可能なバケット情報取得装置およびこれを備えた建設機械を提供することにある。
【0007】
本発明によって提供されるのは、建設機械においてバケットの形状に関する情報を取得するためのバケット情報取得装置である。前記バケットは、所定の移動面に沿って回動中心軸回りに回動する。バケット情報取得装置は、距離分布取得部と、基準断面抽出部と、近似線特定部と、バケット形状演算部とを備える。距離分布取得部は、基準点に対する前記バケットの3次元距離分布を取得する。基準断面抽出部は、前記距離分布取得部によって取得された前記距離分布から、前記バケットを前記移動面と平行な平面で切断した前記バケットの断面である基準断面を抽出する。近似線特定部は、直線および曲線から構成され前記基準断面に近似する近似線を前記基準断面に基づいて特定する。バケット形状演算部は、前記バケットの形状に関する情報であるバケット形状情報を前記近似線に基づいて演算する。
【0008】
本構成によれば、近似線特定部が基準断面から近似線を特定し、バケット形状演算部が当該近似線に基づいてバケット形状情報を演算することができる。近似線の情報は距離分布取得部が取得する3次元距離分布(3次元データ)と比較してデータ量が小さいため、前記3次元距離分布に基づいてバケットの形状情報を直接演算する場合と比較して、バケット形状演算部が取り扱うデータ量や処理負荷を低減しながら、建設機械に装着されているバケット形状情報を取得することができる。
【0009】
上記の構成において、前記近似線特定部は、前記近似線が一対の線分と当該一対の線分同士を接続する少なくとも一つの曲線とから構成されるように前記近似線を特定することが望ましい。
【0010】
本構成によれば、近似線特定部が近似線を一対の線分と一以上の曲線とによって特定するため、近似線を更に多くの線分によって特定する場合や点の集合体として特定する場合と比較して、近似線のデータ量を少なくすることができる。
【0011】
上記の構成において、前記少なくとも一つの曲線は、少なくとも一つの円弧を含み、前記バケット形状演算部は、前記一対の線分のそれぞれの長さと、前記少なくとも一つの円弧の曲率半径とを前記バケット形状情報としてそれぞれ演算することが望ましい。
【0012】
本構成によれば、近似線を構成する一対の線分の長さおよび円弧の曲率半径という簡易な情報に基づいて、バケットの形状を特定することができる。
【0013】
上記の構成において、前記建設機械に備えられ前記バケットを前記回動中心軸回りに回動させることが可能なバケット駆動部に、前記バケットが地面に対して互いに異なる複数の姿勢を順にとるような駆動指令信号を入力する駆動指令入力部を更に備え、前記バケット形状演算部は、前記バケット駆動部によって設定される前記複数の姿勢のそれぞれにおいて特定された前記近似線に基づいて、前記基準点に対する前記回動中心軸の相対位置を前記バケット形状情報として演算することが望ましい。
【0014】
本構成によれば、バケットの複数の姿勢に基づいて回動中心軸の位置を容易に把握することができる。また、バケットが回動した際のその先端の可動範囲を把握することができるため、バケットが周囲の物体と衝突することを精度良く回避することができる。
【0015】
上記の構成において、前記複数の姿勢は、少なくとも3つの姿勢を含み、前記バケット形状演算部は、前記少なくとも3つの姿勢に対応する少なくとも3つの前記近似線の先端を通る一の円弧の中心位置を前記回動中心軸の前記相対位置として演算することが望ましい。
【0016】
本構成によれば、回動時の近似線の先端の軌跡を利用して回動中心軸の位置を把握することができる。
【0017】
上記の構成において、前記バケット形状演算部は、前記近似線の先端と当該先端とは反対側の基端とを結ぶ線分と前記近似線とによって囲まれる領域の面積である収容断面積を前記バケット形状情報として演算することが望ましい。
【0018】
本構成によれば、バケット形状演算部の処理負荷を抑えながら、バケットの基本的な収容能力を容易に把握することができる。
【0019】
上記の構成において、前記バケット形状演算部は、前記距離分布取得部によって取得された距離分布から前記左右方向における前記バケットの寸法である幅寸法を演算するとともに、前記収容断面積と前記幅寸法とから前記バケットの収容容積を前記バケット形状情報として演算することが望ましい。
【0020】
本構成によれば、バケット形状演算部の処理負荷を抑えながら、バケットの土砂収容能力を正確に把握することができる。
【0021】
上記の構成において、前記バケット形状演算部は、前記距離分布から前記バケットの左右一対の側壁の前記基準点に対する相対位置を演算するとともに、前記先端および前記基端を結ぶ線分と前記近似線とによって囲まれた領域の図心の前記基準点に対する相対位置を演算し、前記図心を通り前記左右方向に延びる直線と前記左右一対の側壁とがそれぞれ交わる左右一対の交点間の距離を前記幅寸法として演算することが望ましい。
【0022】
本構成によれば、3次元データを直接用いて幅寸法を演算する場合と比較して、バケット形状演算部の処理負荷を更に抑えることができる。
【0023】
上記の構成において、前記バケット形状演算部によって演算された前記バケット形状情報に応じて前記建設機械の出力特性を変更するための出力特性信号を前記建設機械に入力する出力特性信号入力部を更に備えることが望ましい。
【0024】
本構成によれば、バケットの形状、作業量に対して建設機械の出力が不足することや過剰になることを防止することができる。この結果、建設機械の省エネ効果を高めることができる。
【0025】
上記の構成において、前記バケット形状演算部は、所定の周期で前記バケット形状情報を演算することが可能であり、前記バケット形状演算部によって演算された前記バケット形状情報を記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された過去のバケット形状情報と前記バケット形状演算部によって演算された新たなバケット形状情報とのずれ量を判定する判定部と、前記判定部によって前記過去のバケット形状情報と前記新たなバケット形状情報とのずれ量が予め設定された閾値を超えている場合に、警告信号を出力する警告信号出力部とを更に備えることが望ましい。
【0026】
本構成によれば、バケットに摩耗、変形、破損、損傷などが生じている可能性がある場合に、その事実を速やかに作業者に報知することができる。
【0027】
上記の構成において、前記近似線特定部によって特定された前記近似線を表示することが可能な表示部を更に備えることが望ましい。
【0028】
本構成によれば、作業者は表示部を確認することでバケットの基本的な形状を容易に把握することができる。
【0029】
上記の構成において、前記表示部は、前記近似線と前記基準断面とを重畳して表示することが可能であることが更に望ましい。
【0030】
本構成によれば、作業者は表示部に表示された近似線と基準断面とを比較することで、近似線の近似精度を容易に確認することができる。
【0031】
上記の構成において、前記表示部に表示された前記近似線と前記基準断面との相対位置に応じて前記近似線を修正するための指令を受け付けることが可能な修正指令入力部を更に備え、前記近似線特定部は、前記修正指令入力部に入力された前記指令に応じて前記近似線の形状を修正することが可能であるものでもよい。
【0032】
本構成によれば、表示部に表示された近似線と基準断面とに大きなずれがある場合には、作業者が自らの意思で近似線を修正することができるため、近似線の特定に突発的に大きな誤差が生じた場合でも、当該誤差を含んだ状態でバケットの形状情報を演算することを防止することができる。
【0033】
上記の構成において、作業現場における前記建設機械の位置情報を取得する位置情報取得部と、前記位置情報と前記バケット形状情報とを互いに関連付けて前記建設機械から離れた位置に配置される管理装置に送信する送信部とを更に備えることが望ましい。
【0034】
本構成によれば、建設機械の位置情報およびバケット形状情報を管理装置が取得および蓄積することができる。このため、管理装置は、前記建設機械から取得した情報に基づいて、どのようなバケットの形状、作業能力を有する建設機械がどの位置、地域で作業しているかを把握することができる。
【0035】
また、本発明によって提供されるのは建設機械であって、当該建設機械は、機体と、先端部を有し前記機体に起伏可能に支持された起伏体と、前記起伏体の前記先端部に左右方向に延びる回動中心軸回りに回動可能に支持されたバケットと、前記バケットの形状に関する情報であるバケット形状情報を取得することが可能な上記の何れかに記載のバケット情報取得装置と、を備える。
【0036】
本構成によれば、3次元距離分布に基づいてバケットの形状情報を直接演算する場合と比較して、バケット形状演算部が取り扱うデータ量や処理負荷を低減しながら、バケットの形状情報を取得することができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、3次元データからバケット形状情報を直接演算する場合と比較して、取り扱うデータ量や処理負荷を低減しながら前記バケット形状情報を取得することが可能なバケット情報取得装置およびこれを備えた建設機械が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明の一実施形態に係るバケット情報取得装置を含む建設機械の側面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るバケット情報取得装置を含む建設機械のブロック図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るバケット情報取得装置が実行するバケット情報取得処理のフローチャートである。
【
図4】建設機械の機体側からバケットを見た図である。
【
図5】バケットの基準断面および近似線を示す図である。
【
図6】バケットの基準断面、近似線および図心を示す図である。
【
図7】本発明の変形実施形態に係るバケット情報取得装置が実行するバケット情報取得処理のフローチャートである。
【
図8】バケットが3つの姿勢に順に設定される様子を示す図である。
【
図9】本発明の変形実施形態に係るバケット情報取得装置が実行するバケット情報取得処理のフローチャートである。
【
図10】本発明の変形実施形態に係るバケット情報取得装置が実行するバケット情報取得処理のフローチャートである。
【
図11】本発明の変形実施形態に係るバケット情報取得装置が実行するバケット情報取得処理のフローチャートである。
【
図12】本発明の変形実施形態に係る建設機械および管理装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る油圧ショベル1(建設機械)の側面図を示す。
【0040】
油圧ショベル1は、地面G(走行面)上を走行可能な下部走行体10および下部走行体10に旋回可能に支持される上部旋回体12と、上部旋回体12に搭載される作業アタッチメント20とを備える。下部走行体10および上部旋回体12は、本発明の機体を構成する。
【0041】
下部走行体10は、地面G上を走行可能である。下部走行体10は、クローラ式の走行部を含む。
【0042】
上部旋回体12は、前記下部走行体10に支持される旋回フレーム121と、当該旋回フレーム121上に搭載されるキャブ13とを有する。キャブ13は、作業者が搭乗することを許容するものであり、油圧ショベル1を操作するための各種の装置が配置されている。
【0043】
作業アタッチメント20は、上部旋回体12に対して相対移動可能なように上部旋回体12に装着され、地面に対する所定の作業を行う。作業アタッチメント20は、旋回フレーム121の前端部に水平な回転中心軸回りに起伏方向に回動可能に連結されるブーム21と、当該ブーム21の先端部に水平な回転中心軸回りに回動可能に連結されるアーム22と、当該アーム22の先端部(起伏体の先端部)に水平な回転中心軸(左右方向に延びる回転軸)回りに回動可能に連結されるバケット23とを含む。ブーム21、アーム22およびバケット23の回転中心軸は互いに平行に設定されている。ブーム21およびアーム22は、本発明の起伏体を構成する。また。作業アタッチメント20は、ブーム21を起伏(回動)させるように伸縮するブームシリンダ21S(起伏体シリンダ)と、アーム22を回動させるように伸縮するアームシリンダ22S(起伏体シリンダ)と、バケット23を回動させるように伸縮するバケットシリンダ23Sとを更に有する。これらのシリンダの各々は油圧式シリンダから構成される。
【0044】
キャブ13は、旋回フレーム121の前部であって当該旋回フレーム121の幅方向について前記ブーム21と隣接する部位(
図1に示される例ではブーム21の左側)に搭載され、油圧ショベル1の操縦を行うための運転室を構成する。すなわち、当該キャブ13内において、作業者は、下部走行体10の走行、上部旋回体12の旋回、及び作業アタッチメント20の作動のための操作を行う。
【0045】
油圧ショベル1は、更にバケット情報取得装置5を備える。バケット情報取得装置5は、バケット23の形状に関する情報(バケット形状情報)を取得する。
図2は、本実施形態に係る油圧ショベル1を含む油圧ショベル1のブロック図である。油圧ショベル1は、更に、操作部51と、入力部52と、シリンダストロークセンサ61と、本体位置情報取得部62(位置情報取得部)と、ステレオカメラ63(距離分布取得部)と、IMU(慣性計測装置:inertial measurement unit)64と、駆動部71と、表示部72と、送信部73と、報知部74とを備える。
【0046】
操作部51は、キャブ13内に配置され、作業者によって操作される。すなわち、操作部51は、油圧ショベル1を操作するための操作を受け付ける。当該操作には、下部走行体10の走行、上部旋回体12の旋回、作業アタッチメント20(ブーム21、アーム22、バケット23)の駆動などが含まれる。
【0047】
入力部52は、キャブ13内に配置され、各種の情報の入力を受け付ける。一例として、入力部52は、各種の入力ボタン、スイッチや後記の表示部72に含まれるタッチパネルなどを有する。特に、入力部52は、バケット情報取得処理において参照される情報の入力を受け付けることが可能とされている。
【0048】
シリンダストロークセンサ61は、前述のブームシリンダ21S、アームシリンダ22Sおよびバケットシリンダ23Sにそれぞれ装着される3つのセンサを含み、各シリンダのストローク(伸長量、長さ)を検出する。シリンダストロークセンサ61によって検出された各シリンダのストロークは、バケット23の位置や姿勢を演算するために使用される。なお、バケット23の位置や姿勢を演算するために、シリンダストロークセンサ61に代えて、ブーム21、アーム22およびバケット23の回動角度をそれぞれ検出するアングルセンサが用いられても良い。
【0049】
本体位置情報取得部62は、作業現場における油圧ショベル1(機体)の位置情報を取得する。一例として、本体位置情報取得部62は、予め上部旋回体12に設けられた本体基準点の作業現場における絶対座標に関する情報である本体座標情報を取得することが可能である。本体基準点を構成する本体位置情報取得部62は、キャブ13の上面部に配置されており、GNSS移動局として機能する。一方、上記の本体座標情報を取得するために、GNSS(Global Navigation Satellite System/全球測位衛星システム)基準局が設けられている(不図示)。GNSS基準局は、作業現場に配置された、または、作業現場に最も近い位置に配置された基準局である。なお、GNSSとして、公知のGPS(Global Positioning System)に加え、GLONASS(Global Navigation Satellite System)、Galileo、準天頂衛星(QZSS:Quasi-Zenith Satellite System)等の衛星測位システムが採用されてもよい。
【0050】
ステレオカメラ63(距離分布取得部)は、キャブ13の上面部の前端に配置されている。ステレオカメラ63は、キャブ13の前方の周囲物体を撮影する。詳しくは、ステレオカメラ63は、基準点(座標原点)を有し、バケット23を含む周囲物体の前記基準点に対する3次元距離分布を取得することが可能とされている。3次元距離分布は、前記基準点と周囲の複数の測定点との距離の分布である。取得された距離分布は、3次元距離データとして制御部50に入力される。本実施形態では、ステレオカメラ63が検出する3次元距離データに基づいて、バケット23の形状が推定される。この際、バケット23の形状、位置などは上記の基準点を基準として設定される。なお、基準点は、油圧ショベル1の他の特定部分であってもよい。また、他の実施形態において、前記距離分布取得部は、TOF(Time Of Flight)センサやLiDAR(Light Detection And Ranging)センサから構成されてもよい。
【0051】
IMU64は、油圧ショベル1の機体(上部旋回体12)の水平面に対する角度を検出する。
【0052】
駆動部71は、油圧ショベル1の各種構造体を駆動するものであり、操作部51によって操作される下部走行体10、上部旋回体12、作業アタッチメント20などを駆動する。特に、駆動部71は、バケット23が地面を掘削するように作業アタッチメント20を駆動することが可能である。この際、駆動部71は、所定の指令信号を受け入れ当該指令信号に応じた出力特性に基づいて作業アタッチメント20を駆動することが可能である。前記出力特性は、弱、中、強などのように段階的に設定される。駆動部71は、油圧ポンプ、油圧モータなどの油圧回路を含む。
【0053】
表示部72は、キャブ13内に配置され、所定の表示指令信号を受け入れ、当該表示指令信号に応じて、作業者に報知する各種の情報を表示する。当該情報には、後記のバケット形状情報、油圧ショベル1の位置情報などが含まれる。また、表示部72は、作業現場におけるマップ情報を表示することが可能であり、当該マップ上に、取得されたバケット形状情報と本体位置情報取得部62によって取得された油圧ショベル1の位置情報とを互いに関連付けて表示することができる。
【0054】
送信部73は、本体位置情報取得部62によって取得された油圧ショベル1の位置情報とバケット情報取得装置5によって取得されるバケット23の形状情報とを、作業現場から離れた場所に配置されたデータセンターや遠隔管理センター(後記のサーバー90参照、管理装置の一例)などに送信する。
【0055】
報知部74は、所定の報知情報を作業者に報知する。一例として、報知部74は、キャブ13に設けられた警告ランプや警告ブザーなどを含む。
【0056】
制御部50は、CPU(Central Processing Unit)、制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、CPUの作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)等から構成されている。制御部50には、
図2に示すように、操作部51、入力部52、シリンダストロークセンサ61、本体位置情報取得部62、ステレオカメラ63、IMU64、駆動部71、表示部72、送信部73および報知部74がそれぞれ接続されている。
【0057】
制御部50は、前記CPUがROMに記憶された制御プログラムを実行することにより、駆動制御部501、データ処理部502(基準断面抽出部)、近似線特定部503、バケット形状演算部504、判定部505、出力特性設定部506および記憶部507を備えるように機能する。油圧ショベル1の制御部50は、バケット情報取得装置5の一部を構成する。
【0058】
駆動制御部501は、操作部51が受ける操作の内容に応じて、駆動部71に駆動指令信号を入力する。この結果、下部走行体10、上部旋回体12および作業アタッチメント20などの動作が制御される。
【0059】
データ処理部502は、ステレオカメラ63によって取得された3次元距離データ(距離分布)に所定の処理を行う。特に、データ処理部502は、ステレオカメラ63によって取得された距離分布から、バケット23を左右方向(上部旋回体12の左右方向)と交差する平面で切断したバケット23の断面である基準断面J(
図5)を抽出する。
【0060】
近似線特定部503は、直線および曲線から構成され前記基準断面Jを近似する近似線K(
図5)を前記基準断面Jに基づいて特定する。
【0061】
バケット形状演算部504は、バケット23の形状に関する情報であるバケット形状情報を演算する。特に、バケット形状演算部504は、近似線特定部503によって特定された近似線Kに基づいてバケット形状情報を演算する。当該バケット形状情報には、近似線Kの寸法、形状、後記の収容断面積、図心の位置、バケット23の幅寸法、バケット容量V、バケット支点部233(回転軸)の位置などが含まれる。
【0062】
判定部505は、後記のバケット情報取得処理において実行される各種の判定処理を実行する。
【0063】
出力特性設定部506は、バケット形状演算部504によって演算されるバケット形状情報に基づいて、駆動部71の出力特性を設定(調整)し、当該特性に応じた指令信号を駆動部71に入力する。
【0064】
記憶部507は、油圧ショベル1の作動や、バケット情報取得処理において参照される各種の閾値、パラメータなどを予め格納(記憶)している。
【0065】
図3は、本実施形態に係るバケット情報取得装置5が実行するバケット情報取得処理のフローチャートである。
図4は、油圧ショベル1の機体側からバケット23を見た図である。
図5は、バケット23の基準断面Jおよび近似線Kを示す図である。
図6は、バケット23の基準断面J、近似線Kおよび図心Hを示す図である。
【0066】
図3を参照して、バケット情報取得装置5が実行するバケット情報取得処理について説明する。作業者は、キャブ13に設けられた入力部52を通じてバケット情報取得処理を開始するための指令を入力ことができる。当該指令は、アーム22の先端部に新たなバケット23が装着された際や1日の作業が開始するタイミングで行われても良い。なお、バケット23は、所定の移動面に沿って前記回動中心軸回りに回動する。油圧ショベル1が水平に配置される場合、前記回動中心軸は上部旋回体12の左右方向と平行に延びる。
【0067】
バケット情報取得処理が開始されると(ステップS1)、ステレオカメラ63がキャブ13の前方のバケット23を撮影する。この結果、バケット23を含む周囲物体の所定の基準点に対する距離分布(3次元データ)が取得される(ステップS2)。なお、前記基準点(原点)は、たとえばステレオカメラ63が配置されているキャブ13の上面部に設定されている。
【0068】
ステレオカメラ63によって取得された3次元データは、制御部50に入力され(ステップS3)、データ処理部502によって所定の処理を受ける。ステレオカメラ63の撮像範囲にはバケット23以外の地面なども含まれているため、データ処理部502はステレオカメラ63が取得した距離分布(3次元距離データ)からバケット23の距離分布を前記基準点からの距離に応じて抽出する。更に、データ処理部502は、抽出された距離分布から、バケット23を移動面と平行な平面(上部旋回体12の左右方向と直交(交差)する平面)で切断したバケット23の断面である基準断面J(
図5)を抽出する。本実施形態では、データ処理部502は、バケット23の左右方向の中央部における断面データ(2次元データ)を抽出する(ステップS4)。当該断面データには、バケット23の厚さ方向およびバケット23の長さ方向の距離分布データが多く含まれている。なお、基準断面Jの抽出のために、ステレオカメラ63の取付位置と作業アタッチメント20の中央断面の左右方向幅とが、予め記憶部507に記憶されている。そして、基準断面Jは、作業アタッチメント20の中央断面と平行な面、または、バケット23の回動軸と直交する面に設定されることが望ましい。
【0069】
図4を参照して、バケット23の形状の一例について説明する。バケット23は、バケット本体230と、複数の爪部231と、左右一対の横爪部232と、左右一対のバケット支点部233と、左右一対のバケットリンク支点部234(
図1)とを有する。
【0070】
バケット本体230は、バケット23の本体部分であって掘削した土砂を収容する形状を有している。バケット本体230は、底部230Aと、左右一対の壁部230Bとを有する。底部230Aは、断面視で略U字形状を有している。左右一対の壁部230Bは、底部230Aの左右の端部にそれぞれ接続されている。複数の爪部231は、底部230Aの先端部にそれぞれ装着されており、地面を掘削する機能を有している。左右一対の横爪部232は、壁部230Bの端部に固定されており、バケット本体230内への土砂の進入を促進する。
【0071】
左右一対のバケット支点部233は、バケット本体230の基端部(上端部)に固定されている。バケット支点部233は、不図示の連結ピンによってアーム22の先端部に回動可能に装着される。すなわち、左右一対のバケット支点部233は、バケット23の回動中心軸を構成する。左右一対のバケットリンク支点部234は、左右一対のバケット支点部233の後方においてバケット本体230に固定されている。左右一対のバケットリンク支点部234は、バケットシリンダ23S(
図1)のシリンダロッドに繋がるリンク部材に回動可能に接続されている。
【0072】
図3のステップS4において、データ処理部502が2次元データを抽出すると、
図4の断面位置V-Vで切断された、
図5の断面データ(基準断面J)が取得される。なお、3次元データに対して2次元データを取得するための切断面は、IMU64の検出結果に応じて鉛直方向に延びるように設定されてもよいし、予めステレオカメラ63の座標系に設定された仮想水平軸と直交する平面でもよい。また、バケット23の左右方向における中心部は、3次元データから決定されても良いし、予めその位置が記憶部507に格納され、データ処理部502によって参照されてもよい。
【0073】
次に、近似線特定部503が、バケット23の前記基準断面Jに対応する近似線Kを特定する(
図3のステップS5)。本実施形態では、近似線特定部503は、近似線Kが一対の直線状の線分(底板上部直線部AD、底板下部直線部BE)と当該一対の線分同士を接続する少なくとも一つの曲線(曲線部DCE)とから構成されるように近似線Kを特定する(
図5)。
【0074】
具体的に、近似線特定部503は、底板上部直線部ADの端点(点A)を基準断面Jの基端(板端)に固定する。次に、近似線特定部503は、底板下部直線部BEの端部(点B)を基準断面Jの先端(爪先)に固定する。次に、近似線特定部503は、点Aから基準断面Jに沿って直線を延ばし、基準断面Jが当該直線から離れる位置を点Dとする。同様に、近似線特定部503は、点Bから基準断面Jに沿って直線を延ばし、基準断面Jが当該直線から離れる位置を点Eとする。この結果、近似線特定部503が、底板上部直線部AD、底板下部直線部BEを特定する。この際、バケット形状演算部504が、各直線部の長さ(L2、L1)をバケット形状情報として演算する。
【0075】
次に、近似線特定部503は、曲線部DCEを、点D、点Eにおいて底板上部直線部AD、底板下部直線部BEにそれぞれ接する円弧と仮定し、バケット形状演算部504が、曲線部DCEの曲率半径Rを演算する。この結果、近似線特定部503が、曲線部DCEの形状を特定する。なお、他の実施形態において、近似線特定部503は、点Dと点Eとの間の基準断面J上の任意の点Cを抽出し、点D、点C、点Eを通る円弧を曲線部DCEとして特定してもよい。この際、近似線特定部503は、点A、点Bに対して最も深い位置(奥行きが大きい)における点を、点Cとして抽出することが望ましい。上記のようにして、近似線特定部503は、バケット23の基準断面Jを近似する近似線Kを特定することができる。なお、特定された近似線Kは表示部72に表示されることで、その形状を作業者に報知してもよい。この際、近似線Kと基準断面Jとが重畳して表示部72に表示されることが望ましい。
【0076】
次に、バケット形状演算部504が、近似線Kの先端(点B)と当該先端とは反対側の基端(点A)とを結ぶ線分ABと近似線Kとによって囲まれる領域の面積である収容断面積S(
図6)をバケットの形状情報として演算する(
図3のステップS6)。当該面積Sの演算は、公知の画像処理法を用いることができる。一例として、
図6の点A、点B、点C、点D、点Eによって囲まれる領域を二値化して、その画素数を計測してもよい。また、線分ABを基準として、当該線分ABから線分AD、曲線DCE、線分BEまでの距離を積分することで面積Sが演算されてもよい。
【0077】
次に、バケット形状演算部504は、
図6の図心Hの位置を演算する(
図3のステップS7)。すなわち、バケット形状演算部504は、近似線Kの先端(点B)および基端(点A)を結ぶ線分ABと近似線Kとによって囲まれた領域の図心Hの位置を演算する。当該図心Hの演算にも、断面一次モーメントを用いた公知の演算法などを用いることができる。
【0078】
次に、バケット形状演算部504は、距離Wを算出する(
図3のステップS8)。距離Wは、左右方向におけるバケット23の寸法である幅寸法に相当する。具体的に、バケット形状演算部504は、ステレオカメラ63によって取得された距離分布から、バケット23の左右一対の壁部230B(側壁)(
図4)の前記基準点に対する相対位置をそれぞれ特定する。更に、バケット形状演算部504は、図心H(
図6)を通り左右方向に延びる直線と左右一対の壁部230Bとがそれぞれ交わる左右一対の交点間の距離Wを演算することで、バケット23の幅寸法を演算(推定)する。この際、前記左右方向は予めステレオカメラ63の基準点(原点)に応じて設定されてもよいし、IMU64の検出結果に応じて設定、補正されてもよい。
【0079】
次に、バケット形状演算部504は、バケット形状情報としてバケット容量V(収容容積)を算出する(
図3のステップS9)。具体的に、バケット形状演算部504は、前記演算された収容断面積Sと前記推定された前記距離W(幅寸法)との積からバケット容量Vを演算する。
【0080】
上記のように、本実施形態では、ステレオカメラ63によって取得された距離分布に基づいて、バケット23の断面形状(基準断面J)を示す近似線Kの寸法、収容断面積S、幅寸法W、バケット容量Vを含むバケット形状情報を取得することができる。特に、近似線特定部503が、バケット23の中央部(
図4の断面位置V-V)における断面データ(2次元データ)から近似線Kを特定することで、バケット23の断面形状を精度良く近似した近似線Kを取得することができる。近似線Kは、ステレオカメラ63によって取得された3次元データ、2次元データと比較して情報量(データ量)が少ないため、バケット形状情報の演算処理を少ない処理負荷で実行することができる。したがって、3次元データなどからバケット形状情報を直接演算する場合と比較して、油圧ショベル1における制御部50(バケット形状演算部504)の処理負荷を抑えながら、バケット23の形状情報を精度良く取得することができる。なお、取得されたバケット形状情報は、油圧ショベル1のその他の制御などに利用してもよい。この場合も、バケットの形状情報が少ないデータ容量から構成されるため、制御時の処理負荷を低減することができる。
【0081】
また、本実施形態では、近似線特定部503およびバケット形状演算部504が取得したバケット23の形状情報が表示部72に表示されることで、作業者がバケット23の形状、特徴を容易に理解することができる。この際、表示部72に簡易表示するための3Dモデルが上記のバケット形状情報に基づいて作成されてもよい。なお、本実施形態では、ステレオカメラ63がバケット23の距離分布を取得するため、作業者にとって未知のバケット23が油圧ショベル1に装着されている場合でも、その形状情報を容易に把握することができる。
【0082】
また、本実施形態では、近似線特定部503は、近似線Kが一対の線分と当該一対の線分同士を接続する少なくとも一つの曲線とから構成されるように近似線Kを特定するため、近似線Kが更に多くの線分を含む場合と比較して近似線Kを特定する情報量を少なくすることができる。
【0083】
更に、本実施形態では、バケット形状演算部504が、前記一対の線分のそれぞれの長さL1、L2と前記少なくとも一つの円弧の曲率半径Rとをバケット形状情報としてそれぞれ演算する。このため、長さおよび半径から構成される簡易な情報に基づいて、バケット23の形状を特定することができる。なお、バケット形状情報には上記の円弧の角度が含まれても良い。
【0084】
また、本実施形態では、バケット形状演算部504が近似線Kを用いてバケット23の収容断面積を演算することができるため、バケット形状演算部504の処理負荷を抑えながら、バケット23の基本的な収容能力を容易に把握することができる。
【0085】
また、バケット形状演算部504は、ステレオカメラ63によって取得された距離分布からバケット23の幅寸法を演算するとともに、収容断面積と幅寸法とからバケットの収容容積を演算する。このため、バケット形状演算部504の処理負荷を抑えながら、バケット23の土砂収容能力を正確に把握することができる。
【0086】
この際、バケット形状演算部504は図心を通る直線と左右一対の壁部230Bとの交点同士の距離に基づいてバケット23の幅寸法を演算するため、3次元データを直接用いて幅寸法を演算する場合と比較して、バケット形状演算部504の処理負荷を更に抑えることができる。
【0087】
次に、本発明の各変形実施形態について説明する。
図7は、本発明の第1変形実施形態に係るバケット情報取得装置が実行するバケット情報取得処理のフローチャートである。
図8は、バケットが3つの姿勢に順に設定される様子を示す図である。本変形実施形態では、バケット形状演算部504が、ステレオカメラ63の基準点に対するバケット支点部233(回動中心軸)の相対位置をバケット形状情報として更に演算する。なお、本変形実施形態においても、
図3と同様のバケット形状情報が取得される。
【0088】
本変形実施形態におけるバケット情報特定処理が開始されると、繰り返し変数nが1に設定され(ステップS11)、駆動部71によってバケットシリンダ23Sが駆動される。この際、駆動制御部501(駆動指令入力部)は、バケット23が地面に対して互いに異なる少なくとも3つの姿勢を変数nに応じて順にとるような駆動指令信号を前記バケット駆動部に入力する。バケット23が1つ目の姿勢(
図8のバケット23P)とされると、先の実施形態と同様の手順で、バケットの撮影(ステップS13)、3次元データの取得(ステップS14)、中央部の2次元データの抽出(ステップS15)がそれぞれ実行される。更に、バケット形状演算部504は、バケット23の爪先M(n)の座標を抽出する(ステップS16)。当該爪先M(n)の座標には、前述の近似線Kの点Bの座標を用いることができる。取得された座標は、記憶部507に記憶される。
【0089】
次に、判定部505が、nが3か否かを判定する(ステップS17)。ここで、n<3(ステップS17でNO)の場合、ステップS18においてnに1が加えられ、ステップS12からステップS17までが繰り返される。なお、
図8には、バケット23の2つ目の姿勢(バケット23Q)、3つ目の姿勢(バケット23R)がそれぞれ示されている。
【0090】
ステップS17においてn=3(ステップS17でYES)の場合、バケット形状演算部504は、記憶部507に記憶された各近似線Kの爪先の3つの座標、M(1)、M(2)、M(3)を通る一の円弧CPの中心座標を、基準点に対するバケット支点部233の相対位置として算出する(ステップS19)。
【0091】
この結果、制御部50は、ステレオカメラ63の基準点に対するバケット支点部233の位置を把握することができる。また、制御部50は、バケット23が回動した際のその先端の可動範囲(円弧CP)を把握することができるため、バケット23が周囲の物体と衝突することを精度良く回避することができる。更に、バケット形状演算部504は、3つの近似線Kの先端(爪先)を通る一の円弧の中心位置を基準点に対するバケット支点部233の相対位置として演算するため、少ない演算負荷でバケット支点部233(回動中心軸)の位置を把握することができる。
【0092】
なお、駆動制御部501は、油圧ショベル1の機体の姿勢、バケット23を含む作業アタッチメント20の姿勢に基づいて、バケット23の先端(爪先)と周囲の物体とが衝突する可能性がある場合には、駆動部71に対して緊急停止信号を入力し、その駆動を停止させてもよい。
【0093】
なお、上記の説明では、バケット23が3つの姿勢に設定される場合にて説明したが、バケット23が2以上(複数)の姿勢に設定される態様でもよい。姿勢が2つの場合、上記の爪先の座標に相当する参照点が2カ所設定されることが望ましい。
【0094】
図9は、本発明の第2変形実施形態に係るバケット情報取得装置が実行するバケット情報取得処理のフローチャートである。本変形実施形態は、近似線特定部503が特定した近似線Kを作業者が修正可能な点に特徴を有する。
図9において、ステップS21からステップS24、ステップS27からステップS30は、それぞれ、
図3のステップS2からステップS5、ステップS6からステップS9と同じである。
【0095】
本変形実施形態では、ステップS24において近似線特定部503が近似線Kを特定すると、近似線特定部503が表示部72に対して指令信号を入力し、表示部72にバケット23の基準断面Jおよび近似線Kを重畳して表示させる(ステップS25)。
【0096】
次に、作業者は、表示部72に表示された近似線Kと基準断面Jとの相対位置に基づいて、近似線Kを修正するための指令を入力する(ステップS26)。この際、表示部72(修正指令入力部)がタッチパネル式のディスプレイであれば、作業者は表示部72に表示された近似線Kの修正対象部分を指で操作して、基準断面Jに近づけることができる。なお、他の実施形態において、作業者は入力部52(修正指令入力部)を通じて修正内容を入力してもよい。近似線特定部503は、表示部72に入力された前記指令に応じて近似線Kの形状を修正することができる。修正された近似線Kの情報は、記憶部507に記憶される。
【0097】
このように、本変形実施形態では、表示部72が近似線Kを表示することができるため、作業者は少ないデータ容量の処理でバケット23の基本的な形状を容易に把握することができる。また、表示部72には、近似線Kと基準断面Jとが重畳して表示されるため、作業者は表示部72に表示された近似線と基準断面Jとを比較することで近似線Kの近似精度を容易に確認することができる。
【0098】
更に、表示部72に表示された近似線Kと基準断面Jとに大きなずれがある場合には、作業者が自らの意思で近似線Kを修正することができるため、突発的に大きな近似誤差が生じた場合でも、バケット23の形状情報を誤って演算することを防止することができる。また、作業者が自らの意思で近似線Kを修正することで、所定の検出時間を要する一連の処理フロー(たとえば
図3)を再度実行することが抑止される。
【0099】
図10は、本発明の第3変形実施形態に係るバケット情報取得装置が実行するバケット情報取得処理のフローチャートである。本変形実施形態では、近似線特定部503が特定したバケット23の形状情報に応じて、油圧ショベル1の出力特性を変更することが可能とされている。
図10を参照して、当該出力特性変更処理が開始されると、判定部505が、バケット情報入力モードがON状態であるか否かを判定する。バケット情報入力モードは、メンテナンスや交換のためにバケット23がアーム22の先端から取り外された場合などに、作業者が入力部52を通じてメンテナンス履歴、交換履歴などを入力するモードである。ステップS31において、バケット情報入力モードがONされた場合、バケット23が交換されたため、近似線特定部503が近似線Kを特定するとともにバケット形状演算部504がバケット23の形状情報(バケット形状情報)を演算する(ステップS32)。当該ステップは、たとえば、
図3のすべてのステップに相当する。
【0100】
次に、判定部505が、記憶部507に記憶されている前回のバケット形状情報(近似線K、収容断面積S、幅寸法W、バケット容量V)と、ステップS32において取得されたバケット形状情報とを比較する(ステップS33)。ここで、前回のバケット形状情報と新たなバケット形状情報とが異なる場合(ステップS33でNO)、出力特性設定部506(
図2)(出力特性信号入力部)が駆動部71に対して出力特性を変更するための出力特性信号を入力する(ステップS35)。当該出力特性信号は、取得された新たなバケット形状情報に対応して設定される。たとえば、バケット23の収容断面積Sやバケット容量Vが交換作業を通じて相対的に大きくなっている場合、バケット23に収容される土砂の最大重量も増大するため、出力特性設定部506は駆動部71の出力を増大させる。
【0101】
なお、ステップS31においてバケット情報入力モードがOFFの場合(ステップS31でNO)およびステップS33においてバケット形状情報が前回取得されたものと同じ場合(ステップS33でYES)には、出力特性設定部506は前回の出力特性を使用し(ステップS36)、当該出力特性に対応する出力特性信号を駆動部71に入力する(ステップS35)。
【0102】
このように、本変形実施形態では、バケット形状演算部504が演算したバケット形状情報に応じて、油圧ショベル1の出力を調整することが可能であるため、バケット23の形状、作業量に対して油圧ショベル1の出力が不足することや過剰になることを防止することができる。この結果、油圧ショベル1の省エネ効果を高めることができる。
【0103】
図11は、本発明の第4変形実施形態に係るバケット情報取得装置が実行するバケット情報取得処理のフローチャートである。本変形実施形態では、近似線Kの寸法などのバケット形状情報が所定の周期で取得され、その情報に大きな変化があれば作業者に警告情報が報知される。
図11に示すように、バケット情報取得処理が開始されると、
図3のフローと同様に、近似線特定部503が近似線Kを特定し、バケット形状演算部504がバケット形状情報を演算する(
図11のステップS41)。記憶部507は、取得されたバケット形状情報(近似線Kなど)を記憶する。
【0104】
次に、判定部505が、上記のバケット形状情報が取得されてから経過した時間Tが予め設定された閾値TAを超えたか否かを判定する(ステップS42)。ここで、時間Tが閾値TAに達していない場合(ステップS42でNO)、ステップS42に戻る。一方、時間Tが閾値TAに達している場合(ステップS42でYES)、近似線特定部503およびバケット形状演算部504が
図3のフローと同様にバケット形状情報を再取得する(
図11のステップS43)。このように、本変形実施形態では、近似線特定部503およびバケット形状演算部504が、所定の周期でバケット形状情報を取得する。閾値TA(周期)は、作業現場の条件に応じて設定されればよいが、一例として1日または1週間、半年などに設定される。
【0105】
次に、判定部505が、ステップS41、S43でそれぞれ取得されたバケット形状情報を比較する。具体的に、判定部505は、まず、両ステップで取得された近似線Kの曲率半径Rの差(R(n)-R(n-1))の絶対値(ずれ量)が予め設定された閾値RA以下であるか否かを判定する(ステップS44)。ここで、上記の絶対値が閾値RAを超えている場合(ステップS44でNO)、バケット形状演算部504(警告信号出力部)は報知部74に対して警告信号を出力する。この結果、報知部74が警告情報を報知する(ステップS46)。
【0106】
一方、ステップS44において、上記の絶対値が閾値RA以下の場合(ステップS44でYES)、判定部505は、両ステップで取得された近似線Kの直線部Lの長さの差(L(n)-L(n-1))の絶対値(ずれ量)が予め設定された閾値LA以下であるか否かを判定する(ステップS45)。なお、ステップS45は、底板上部直線部AD(
図5)、底板下部直線部BEのそれぞれおいて実行される。ここで、上記の絶対値が閾値LAを超えている場合(ステップS45でNO)、判定部505(警告信号出力部)は報知部74に対して警告信号を出力する。この結果、報知部74が警告情報を報知する(ステップS46)。ステップS45において、上記の絶対値が閾値LA以下の場合(ステップS45でYES)、バケット形状演算部504は、バケット情報取得処理を終了する。
【0107】
このように、本変形実施形態では、バケット23に摩耗、変形、破損、損傷などが生じている可能性がある場合に、その事実を速やかに作業者に報知することができる。
【0108】
なお、記憶部507は、過去のバケット形状情報のすべてを記憶しても良いし、所定の履歴を残しながら上書き処理するものでもよい。また、取得されたバケット形状情報は、後記のように遠隔地の管理装置(サーバー)などに送信されてもよい。
【0109】
図12は、本発明の第5変形実施形態に係る油圧ショベル1およびサーバー90(管理装置)の模式図である。本変形実施形態では、近似線特定部503およびバケット形状演算部504が取得した情報がサーバー90に送信される。サーバー90は、作業現場から離れた場所に設置されたデータセンターや遠隔管理センターなどに配置されている。
【0110】
図12を参照して、サーバー90は、サーバー側受信部901と、サーバー側出力特性設定部902と、サーバー側記憶部903と、サーバー側送信部904とを有する。
【0111】
本変形実施形態では、近似線特定部503およびバケット形状演算部504が
図3のようにバケット形状情報を取得すると、本体位置情報取得部62(
図2)が作業現場における最新の油圧ショベル1の位置情報を取得する。
【0112】
次に、送信部73(
図2)が、油圧ショベル1の位置情報とバケット形状情報とを互いに関連付けてサーバー90に送信する。サーバー90でサーバー側受信部901が当該情報を受信すると、サーバー側記憶部903が、これらの情報を互いに関連付けて記憶する。
【0113】
このように、本実施形態では、油圧ショベル1が取得した作業現場における位置情報およびバケット形状情報をサーバー90が取得、蓄積することができる。このため、
図12に示すように、サーバー90は、油圧ショベル1A(一の建設機械)から取得した情報に基づいて、どのようなバケット23の形状、作業能力を有する油圧ショベルがどの位置、地域で作業しているかを把握することができる。この結果、サーバー90は、サーバー側送信部904から油圧ショベル1Aとは異なる油圧ショベル1B(他の建設機械)の受信部75に対して、適切な作業内容(作業位置、作業量)を指示することができる。たとえば、油圧ショベル1Aの作業能力が現在の作業位置における作業内容に対して充分であれば、油圧ショベル1Bを他の作業現場に誘導することができる。一方、油圧ショベル1Aの作業能力が現在の作業位置における作業内容に対して不足している場合には、油圧ショベル1Bに油圧ショベル1Aの作業を補助させることができる。
【0114】
また、このようにサーバー90のサーバー側記憶部903を用いることで、油圧ショベル1の記憶部507よりも大容量の記憶部によって、複数の作業現場における油圧ショベル1の位置情報、バケット23の形状情報を蓄積することができる。
【0115】
なお、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、以下のような変形実施形態を更にとることができる。
【0116】
(1)上記の実施形態では、近似線Kの曲線部が円弧からなる態様にて説明したが、前記曲線部は円弧ではなく、他の曲線であってもよい。また、曲線部は、2以上の曲線(円弧)が繋がったものでもよい。
【0117】
(2)上記の実施形態では、基準断面Jがバケット23の幅方向(左右方向)の中央部に位置する態様にて説明したが、基準断面Jの位置は中央部に限定されるものではない。
【0118】
(3)近似線Kの特定について、予め記憶部507に複数の近似線Kのパターンが記憶されており、その中から最も基準断面Jに合致した近似線507が抽出、特定されてもよい。この際、記憶された近似線Kのパターンを拡大、縮小して、基準断面Jと比較してもよい。
【符号の説明】
【0119】
1 油圧ショベル
10 下部走行体
12 上部旋回体
13 キャブ
20 作業アタッチメント
21 ブーム
22 アーム
23 バケット
230 バケット本体
230A 底部
230B 壁部
231 爪部
232 横爪部
233 バケット支点部
234 バケットリンク支点部
23S バケットシリンダ
5 バケット情報取得装置
50 制御部
501 駆動制御部
502 データ処理部
503 近似線特定部
504 バケット形状演算部
505 判定部
506 出力特性設定部
507 記憶部
51 操作部
52 入力部
61 シリンダストロークセンサ
62 本体位置情報取得部
63 ステレオカメラ
64 IMU
71 駆動部
72 表示部
73 送信部
74 報知部
75 送信部
90 サーバー
H 図心
J 基準断面
K 近似線