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特開2023-57392発光装置、照明装置、画像表示装置及び車両用表示灯
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  • 特開-発光装置、照明装置、画像表示装置及び車両用表示灯 図1
  • 特開-発光装置、照明装置、画像表示装置及び車両用表示灯 図2
  • 特開-発光装置、照明装置、画像表示装置及び車両用表示灯 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057392
(43)【公開日】2023-04-21
(54)【発明の名称】発光装置、照明装置、画像表示装置及び車両用表示灯
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/64 20060101AFI20230414BHJP
   C09K 11/62 20060101ALI20230414BHJP
   C09K 11/61 20060101ALI20230414BHJP
   C09K 11/59 20060101ALI20230414BHJP
   C09K 11/78 20060101ALI20230414BHJP
   C09K 11/79 20060101ALI20230414BHJP
   C09K 11/80 20060101ALI20230414BHJP
   C09K 11/86 20060101ALI20230414BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20230414BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20230414BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20230414BHJP
   F21V 9/38 20180101ALI20230414BHJP
   F21V 9/30 20180101ALI20230414BHJP
   F21S 43/14 20180101ALI20230414BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20230414BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20230414BHJP
【FI】
C09K11/64
C09K11/62
C09K11/61
C09K11/59
C09K11/78
C09K11/79
C09K11/80
C09K11/86
C09K11/08 J
G02B5/20
H01L33/50
F21V9/38
F21V9/30
F21S43/14
F21S2/00 481
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021166904
(22)【出願日】2021-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】上田 恭太
(72)【発明者】
【氏名】稲田 悠平
(72)【発明者】
【氏名】広崎 尚登
【テーマコード(参考)】
2H148
3K244
4H001
5F142
【Fターム(参考)】
2H148AA07
2H148AA19
3K244AA05
3K244BA01
3K244BA48
3K244CA02
3K244DA01
3K244DA24
4H001CA01
4H001CA05
4H001XA03
4H001XA07
4H001XA08
4H001XA09
4H001XA11
4H001XA12
4H001XA13
4H001XA14
4H001XA17
4H001XA19
4H001XA20
4H001XA21
4H001XA30
4H001XA31
4H001XA35
4H001XA38
4H001XA39
4H001XA49
4H001XA53
4H001XA56
4H001XA57
4H001XA64
4H001YA58
4H001YA59
4H001YA63
4H001YA65
4H001YA66
5F142AA25
5F142DA44
5F142DA73
5F142HA01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】演色性が良好な発光装置、照明装置、画面表示装置及び車両用表示灯を提供する。
【解決手段】下記式[1]で表される組成を有する結晶相を含む蛍光体を備える発光装置。
Re(Sr1-yMAMBMC[1]
(MAはCa、Ba、Na、K、Y、Gd、及びLaから選ばれる1種以上の元素。MBはLi、Mg、及びZnから選ばれる1種以上の元素。MCはAl、Si、Ga、In、及びScから選ばれる1種以上の元素。XはF、Cl、Br、及びIから選ばれる1種以上の元素。ReはEu、Ce、Pr、Tb、及びDyから選ばれる1種以上の元素。a、b、c、d、e、f、x、yは、それぞれ、下記式を満たす。
0.8≦a≦1.2、1.4≦b≦2.6、1.4≦c≦2.6、1.1≦d≦2.9、1.1≦e≦2.9、0.0≦f≦0.1、0.0<x≦0.2、0.0<y≦0.7)
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式[1]で表される組成を有する結晶相を含む蛍光体を備える、発光装置。
Re(Sr1-yMAMBMC[1]
(上記式[1]中、
MAはCa、Ba、Na、K、Y、Gd、及びLaから成る群から選ばれる1種以上の元素を含み、
MBはLi、Mg、及びZnから成る群から選ばれる1種以上の元素を含み、
MCはAl、Si、Ga、In、及びScから成る群から選ばれる1種以上の元素を含み、
XはF、Cl、Br、及びIから成る群から選ばれる1種以上の元素を含み、
ReはEu、Ce、Pr、Tb、及びDyから成る群から選ばれる1種以上の元素を含み、
a、b、c、d、e、f、x、yは、それぞれ、下記式を満たす。
0.8≦a≦1.2
1.4≦b≦2.6
1.4≦c≦2.6
1.1≦d≦2.9
1.1≦e≦2.9
0.0≦f≦0.1
0.0<x≦0.2
0.0<y≦0.7)
【請求項2】
前記蛍光体の粉末X線回析スペクトルにおいて、2θ=10~12度の領域に現れる(110)のピーク強度をIx、2θ=37~39度の領域に現れる(121)のピーク強度をIyとしたとき、0<Ix/Iy<0.2であり、2θ=30度の領域に現れる不純物相のSrO相に由来する(111)のピーク強度をIzとしたとき、Iz/Iy<0.25となる、請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記式[1]において、0.0≦y≦0.05である、請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記式[1]において、MAはCaである、請求項1~3のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記式[1]において、MBの80モル%以上がLiである、請求項1~4のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記式[1]において、MCの80モル%以上がAlである、請求項1~5のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記式[1]において、Reの80モル%以上がEuである、請求項1~6のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項8】
前記蛍光体は、発光スペクトルにおいて620nm以上、645nm以下の範囲に発光ピーク波長を有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項9】
前記蛍光体は、発光スペクトルにおける半値幅(FWHM)が70nm以下である、請求項1~8のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項10】
更に黄色蛍光体及び/又は緑色蛍光体を備える、請求項1~9のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項11】
前記黄色蛍光体及び/又は緑色蛍光体は、ガーネット系蛍光体、シリケート系蛍光体、窒化物蛍光体、及び酸窒化物蛍光体のいずれか1種以上を含む、請求項10に記載の発光装置。
【請求項12】
第1の発光体と、該第1の発光体からの光の照射によって可視光を発する第2の発光体とを備え、該第2の発光体が前記式[1]で表される組成を有する結晶相を含む蛍光体を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項13】
請求項12に記載の発光装置を光源として備える照明装置。
【請求項14】
請求項12に記載の発光装置を光源として備える画像表示装置。
【請求項15】
請求項12に記載の発光装置を光源として備える車両用表示灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置、照明装置、画像表示装置及び車両用表示灯に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギーの流れを受け、LEDを用いた照明やバックライトの需要が増加している。ここで用いられるLEDは、青または近紫外波長の光を発するLEDチップ上に、蛍光体を配置した白色発光LEDである。
【0003】
このようなタイプの白色発光LEDとしては、青色LEDチップ上に、青色LEDチップからの青色光を励起光として、赤色に発光する窒化物蛍光体と緑色に発光する蛍光体を用いたものが近年用いられている。LEDとしては、更なる発光効率が求められており、赤色蛍光体としても発光特性に優れた蛍光体を備える発光装置が所望されている。
【0004】
発光装置に用いられる赤色蛍光体としては、例えば一般式K(Si,Ti)F:Mn、KSi1-xNaAl:Mn(0<x<1)で表されるKSF蛍光体、一般式(Sr,Ca)AlSiN:Euで表されるS/CASN蛍光体等が知られているが、KSF蛍光体についてはMn賦活の劇物であるため、より人体及び環境によい蛍光体が求められている。また、S/CASN蛍光体については半値幅(FWHM)が80nm~90nm程度と比較的大きいものが多く、より半値幅の小さい新規赤色蛍光体が求められている。
【0005】
また、近年の発光装置に適用し得る赤色蛍光体として、例えば、特許文献1には、実施例にSrLiAl:Euの組成式で表される蛍光体、並びにこれを用いた発光装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6335884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された蛍光体は発光ピーク波長が650nm程度と長いため、赤色の視感度が低く、発光装置におけるルーメン当量(Lm/W)が低下するほか、照明やディスプレイに用いた際に演色性又は色再現性が低下しやすい、という課題を有する。
【0008】
上記課題に鑑みて、本発明は、演色性又は色再現性が良好な発光装置、照明装置、画像表示装置及び車両用表示灯を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は鋭意検討したところ、特定組成で表される結晶相を含む蛍光体を備える発光装置を用いることで、上記課題を解決しうることを見出して本発明を完成させた。
即ち、本発明は、以下のものを含む。
【0010】
〔1〕 下記式[1]で表される組成を有する結晶相を含む蛍光体を備える、発光装置。
Re(Sr1-yMAMBMC [1]
(上記式[1]中、
MAはCa、Ba、Na、K、Y、Gd、及びLaから成る群から選ばれる1種以上の元素を含み、
MBはLi、Mg、及びZnから成る群から選ばれる1種以上の元素を含み、
MCはAl、Si、Ga、In、及びScから成る群から選ばれる1種以上の元素を含み、
XはF、Cl、Br、及びIから成る群から選ばれる1種以上の元素を含み、
ReはEu、Ce、Pr、Tb、及びDyから成る群から選ばれる1種以上の元素を含み、
a、b、c、d、e、f、x、yは、それぞれ、下記式を満たす。
0.8≦a≦1.2
1.4≦b≦2.6
1.4≦c≦2.6
1.1≦d≦2.9
1.1≦e≦2.9
0.0≦f≦0.1
0.0<x≦0.2
0.0<y≦0.7)
【0011】
〔2〕 前記蛍光体の粉末X線回析スペクトルにおいて、2θ=10~12度の領域に現れる(110)のピーク強度をIx、2θ=37~39度の領域に現れる(121)のピーク強度をIyとしたとき、0<Ix/Iy<0.2であり、2θ=30度の領域に現れる不純物相のSrO相に由来する(111)のピーク強度をIzとしたとき、Iz/Iy<0.25となる、〔1〕に記載の発光装置。
【0012】
〔3〕 前記式[1]において、0.0≦y≦0.05である、〔1〕又は〔2〕に記載の発光装置。
【0013】
〔4〕 前記式[1]において、MAはCaである、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の発光装置。
【0014】
〔5〕 前記式[1]において、MBの80モル%以上がLiである、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の発光装置。
【0015】
〔6〕 前記式[1]において、MCの80モル%以上がAlである、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の発光装置。
【0016】
〔7〕 前記式[1]において、Reの80モル%以上がEuである、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の発光装置。
【0017】
〔8〕 前記蛍光体は、発光スペクトルにおいて620nm以上、645nm以下の範囲に発光ピーク波長を有する、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の発光装置。
【0018】
〔9〕 前記蛍光体は、発光スペクトルにおける半値幅(FWHM)が70nm以下である、〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の発光装置。
【0019】
〔10〕 更に黄色蛍光体及び/又は緑色蛍光体を備える、〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の発光装置。
【0020】
〔11〕 前記黄色蛍光体及び/又は緑色蛍光体は、ガーネット系蛍光体、シリケート系蛍光体、窒化物蛍光体、及び酸窒化物蛍光体のいずれか1種以上を含む、〔10〕に記載の発光装置。
【0021】
〔12〕 第1の発光体と、該第1の発光体からの光の照射によって可視光を発する第2の発光体とを備え、該第2の発光体が前記式[1]で表される組成を有する結晶相を含む蛍光体を含む、〔1〕~〔11〕のいずれかに記載の発光装置。
【0022】
〔13〕 〔12〕に記載の発光装置を光源として備える照明装置。
【0023】
〔14〕 〔12〕に記載の発光装置を光源として備える画像表示装置。
【0024】
〔15〕 〔12〕に記載の発光装置を光源として備える車両用表示灯。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、演色性が良好な発光装置、並びに高品質な照明装置、画像表示装置及び車両用表示灯を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施例におけるサンプル2のXRDスペクトルチャートである。
図2】実施例におけるサンプル2の発光スペクトルチャートである。
図3】実施例において、シミュレーションした発光装置の発光特性を示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明について実施形態や例示物を示して説明するが、本発明は以下の実施形態や例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変形して実施することができる。
【0028】
なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。また、本明細書中の蛍光体の組成式において、各組成式の区切りは読点(、)で区切って表わす。また、カンマ(,)で区切って複数の元素を列記する場合には、列記された元素のうち1種又は2種以上を任意の組み合わせ及び組成で含有していてもよいことを示している。例えば、「(Ca,Sr,Ba)Al:Eu」という組成式は、「CaAl:Eu」と、「SrAl:Eu」と、「BaAl:Eu」と、「Ca1-xSrAl:Eu」と、「Sr1-xBaAl:Eu」と、「Ca1-xBaAl:Eu」と、「Ca1-x-ySrBaAl:Eu」(但し、式中、0<x<1、0<y<1、0<x+y<1である。)とを全て包括的に示しているものとする。
【0029】
<蛍光体>
本発明は一実施態様において、発光装置であり、該発光装置は下記式[1]で表される組成を有する結晶相を含む蛍光体(以下、「本実施形態の蛍光体」と称す場合がある。)を備える。
Re(Sr1-yMAMBMC [1]
(上記式[1]中、
MAはCa、Ba、Na、K、Y、Gd、及びLaから成る群から選ばれる1種以上の元素を含み、
MBはLi、Mg、及びZnから成る群から選ばれる1種以上の元素を含み、
MCはAl、Si、Ga、In、及びScから成る群から選ばれる1種以上の元素を含み、
XはF、Cl、Br、及びIから成る群から選ばれる1種以上の元素を含み、
ReはEu、Ce、Pr、Tb、及びDyから成る群から選ばれる1種以上の元素を含み、
a、b、c、d、e、f、x、yは、それぞれ、下記式を満たす。
0.8≦a≦1.2
1.4≦b≦2.6
1.4≦c≦2.6
1.1≦d≦2.9
1.1≦e≦2.9
0.0≦f≦0.1
0.0<x≦0.2
0.0<y≦0.7)
【0030】
式[1]中、Reにはユーロピウム(Eu)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)及びイッテルビウム(Yb)等を用いることができるが、本発明においては、波高波長および発光量子効率の観点から、ReはEu、Ce、Pr、Tb、及びDyから成る群から選ばれる1種以上の元素を含み、好ましくはEuを含み、より好ましくはReの80モル%以上はEuであり、更に好ましくはReはEuである。
【0031】
式[1]中、Srはストロンチウムを表す。
【0032】
式[1]中、MAはカルシウム(Ca)、バリウム(Ba)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、イットリウム(Y)、ガドリニウム(Gd)、及びランタニウム(La)から成る群から選ばれる1種以上の元素を含み、好ましくはCaを含み、より好ましくはMAはCaである。
【0033】
式[1]中、MBはリチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、及び亜鉛(Zn)から成る群から選ばれる1種以上の元素を含み、好ましくはLiを含み、より好ましくはMBの80モル%以上はLiであり、更に好ましくはMBはLiである。
【0034】
式[1]中、MCはアルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、及びスカンジウム(Sc)から成る群から選ばれる1種以上の元素を含み、好ましくはAl又はSiを含み、より好ましくはAlを含み、更に好ましくはMCの80モル%以上はAlであり、特に好ましくはMCはAlである。
【0035】
式[1]中、Nは窒素元素、Oは酸素元素を表す。
【0036】
式[1]中、Xはフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、及びヨウ素(I)から成る群から選ばれる1種以上の元素を含む。すなわち、特定の実施形態においては、結晶構造安定化及び蛍光体全体の電荷バランスを取る観点から、NやOは、その一部がXで表した上記ハロゲン元素で置換されていてもよい。
【0037】
前記式[1]は、明記した以外の成分が、不可避的に、意図せず、又は微量添加成分等に由来して、微量に含まれる場合を含む。
明記した以外の成分としては、意図的に加えた元素と元素番号1つ異なる元素、意図的に加えた元素の同族元素、意図的に加えた希土類元素と別の希土類元素、及びRe原料にハロゲン化物を用いた際のハロゲン元素、その他各種原料に不純物として一般的に含まれ得る元素などが挙げられる。
明記した以外の成分が不可避的に、または意図せず含まれる場合としては、例えば原料の不純物由来、及び粉砕工程、合成工程等の製造プロセスにおいて導入される場合が考えられる。また、微量添加成分としては反応助剤、及びRe原料などが挙げられる。
【0038】
上記式[1]中、a、b、c、d、e、f、xはそれぞれ蛍光体に含まれるMA、MB、MC、N、O、X及びReのモル含有量を示す。また、yはSrとMAのモル総量を1とした時のMAのモル含有量を示す。
【0039】
aの値は通常0.7以上、好ましくは0.8以上、より好ましくは0.85以上、更に好ましくは0.9以上であり、通常1.3以下、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.1以下である。
b、cの値はそれぞれ独立に、通常1.4以上、好ましくは1.6以上、より好ましくは1.8以上であり、通常2.6以下、好ましくは2.4以下、より好ましくは2.2以下である。
d、eの値はそれぞれ独立に、通常1.1以上、好ましくは1.4以上、より好ましくは1.7以上であり、通常2.9以下、好ましくは2.6以下、より好ましくは2.3以下である。
fの値は、通常0.0以上で、通常0.1以下、好ましくは0.06以下、より好ましくは0.04以下、更に好ましくは0.02以下である。
xの値は0.0より大きく、通常0.0001以上、好ましくは0.001以上であり、通常0.2以下、好ましくは0.15以下、より好ましくは0.1以下、更に好ましくは0.08以下である。
【0040】
b、c、d、eが上記範囲にあることで、結晶構造が安定化する。また、d、e、fの値は蛍光体全体の電荷バランスを取る目的で適度に調節できる。
【0041】
yの値は0.0より大きく、通常0.01以上、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.2以上であり、通常0.7以下、好ましくは0.6以下、より好ましくは0.5以下、更に好ましくは0.4以下である。
yの値が上記範囲にあることで、結晶構造が安定化し、また発光ピーク波長が良好な蛍光体となる。
【0042】
また、aの値が上記範囲にあることで、結晶構造が安定化し、異相の少ない蛍光体が得られる。
【0043】
b+cの値、並びにd+e+fの値は、それぞれ独立に、好ましくは3.0以上、より好ましくは3.4以上、更に好ましくは3.7以上であり、好ましくは5.0以下、より好ましくは4.6以下、更に好ましくは4.3以下である。
b+cの値、並びにd+e+fの値がそれぞれ上記範囲であることで、結晶構造が安定化する。
いずれの含有量も上記した範囲であると得られる蛍光体の発光ピーク波長及び発光スペクトルにおける半値幅が良好である点で好ましい。
【0044】
なお、前記蛍光体の元素組成の特定方法は特に限定されず、常法で求めることができ、例えばGD-MS、ICP分光分析法、又はエネルギー分散型X線分析装置(EDX)等により特定できる。
【0045】
[結晶相の粒径
前記蛍光体の結晶相の粒径は、体積基準の平均粒径で通常2μm以上35μm以下であり、下限値は、好ましくは3μm、より好ましくは4μm、更に好ましくは5μmであり、また上限値は、好ましくは30μm以下、より好ましくは25μm以下、更に好ましくは20μm、特に好ましくは15μmである。体積基準の平均粒径が上記下限以上であると結晶相がLEDパッケージ内で示す発光特性の点から好ましく、上記上限以下であると結晶相がLEDパッケージの製造工程においてノイズづまりを回避できる点から好ましい。
蛍光体の結晶相の体積基準の平均粒径は、レーザー粒度計により測定できる。ここで体積基準の平均粒径とは、レーザー回折・散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置を用いて、試料を測定し、粒度分布(累積分布)を求めたときの体積基準の相対粒子量が50%になる粒子径(d50)と定義される。
【0046】
{蛍光体の物性など}
[空間群]
前記蛍光体における結晶系(空間群)は、P42/mであることがより好ましい。前記蛍光体における空間群は、粉末X線回折又は単結晶X線回折にて区別しうる範囲において統計的に考えた平均構造が上記の長さの繰り返し周期を示していれば特に限定されないが、「International Tables for Crystallography(Third,revised edition),Volume A SPACE-GROUP SYMMETRY」に基づく84番に属するものであることが好ましい。
上記の空間群であることで、発光スペクトルにおける半値幅(FWHM)が小さくなり、発光効率の良い蛍光体が得られる。
ここで、空間群は常法に従って求めることができ、例えば電子線回折や粉末又は単結晶を用いたX線回折構造解析及び中性子線回折構造解析等により求めることができる。
【0047】
前記蛍光体の粉末X線回析スペクトルにおいて2θ=10~12度の領域に現れる(110)のピーク強度をIx、2θ=37~39度の領域に現れる(121)のピーク強度をIy、2θ=30度の領域に現れる不純物相のSrO相に由来する(111)のピーク強度をIzとしたとき、Iyを1としたときのIxの相対強度であるIx/Iyは通常0.3以下であり、好ましくは0.25以下、より好ましくは0.2以下、更に好ましくは0.15以下であり、また通常0以上であるが、小さければ小さいほど良い。
また、Iyを1とした時のIzの相対強度であるIz/Iyは通常0.5以下であり、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.3以下、更に好ましくは0.25以下であり、特に好ましくは0.2以下、とりわけ好ましくは0.15以下であり、また通常0以上であるが、小さければ小さいほど良い。
【0048】
上記(121)のピークは結晶系(空間群)がP42/mである際に観察される特徴的なピークの1つであり、Iyが相対的に高いことで、よりP42/mの相純度が高い蛍光体を得られる。
Ix/Iy又はIz/Iyが上記上限以下であることで、相純度が高く、半値幅(FWHM)の小さい蛍光体であるため、発光装置の発光効率が向上する。
【0049】
[発光スペクトルの特性]
前記蛍光体は、適切な波長を有する光を照射することで励起し、発光スペクトルにおいて良好な発光ピーク波長および半値幅(FWHM)を示す赤色光を放出する。以下、上記発光スペクトル及びその測定に係る励起波長、発光ピーク波長および半値幅(FWHM)について記載する。
【0050】
(励起波長)
前記蛍光体は、通常270nm以上、好ましくは300nm以上、より好ましくは320nm以上、更に好ましくは350nm以上、特に好ましくは400nm以上、また、通常500nm以下、好ましくは480nm以下、より好ましくは460nm以下の波長範囲に励起ピークを有する。即ち、近紫外から青色領域の光で励起される。
なお、発光スペクトルの形状、及び下記発光ピーク波長および半値幅の記載は励起波長に寄らず適用できるが、量子効率を向上させる観点からは、吸収及び励起の効率が良い上記範囲の波長を有する光を照射することが好ましい。
【0051】
(発光ピーク波長)
前記蛍光体は、発光スペクトルにおけるピーク波長が通常620nm以上、好ましくは625nm以上、より好ましくは630nm以上である。また、この発光スペクトルにおけるピーク波長は通常649nm以下、好ましくは645nm以下、より好ましくは640nm以下である。
【0052】
蛍光体の発光スペクトルにおけるピーク波長が上記範囲であることで、発光色が良好な赤色となり、これを用いることで演色性又は色再現性の良い発光装置を提供できる。また、蛍光体の発光スペクトルにおけるピーク波長が上記上限以下であることで、赤色の視感度が良好で、ルーメン当量lm/Wの良好な発光装置を提供できる。
【0053】
(発光スペクトルの半値幅)
前記蛍光体は、発光スペクトルにおける発光ピークの半値幅が、通常80nm以下、好ましくは70nm以下、より好ましくは60nm以下、更に好ましくは55nm以下、特に好ましくは50nm以下であり、また通常10nm以上である。
発光ピークの半値幅が上記範囲内であることで、液晶ディスプレイなどの画像表示装置に使用する場合には色純度を低下させずに画像表示装置の色再現範囲を広くすることができる。
また、発光ピーク波長および半値幅が上記上限以下にあることで、発光波長領域の視感度が相対的に高い蛍光体を提供でき、このような蛍光体を発光装置に用いることで、変換効率の高い発光装置を提供することができる。
【0054】
なお、前記蛍光体を波長450nmの光で励起するには、例えば、GaN系LEDを用いることができる。また、前記蛍光体の発光スペクトルの測定、並びにその発光ピーク波長、ピーク相対強度及びピーク半値幅の算出は、例えば、市販のキセノンランプ等300~400nmの発光波長を有する光源と、一般的な光検出器を備える傾向測定装置など、市販のスペクトル測定装置を用いて行うことができる。
【0055】
<発光装置>
本発明は一実施態様において、第1の発光体(励起光源)と、当該第1の発光体からの光の照射によって可視光を発する第2の発光体とを含む発光装置であって、該第2の発光体として、前記式[1]で表される組成を有する結晶相を含む本実施形態の蛍光体を含む発光装置である。ここで、第2の発光体は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0056】
本実施態様における発光装置は、該第2の発光体として、前記式[1]で表される組成を有する結晶相を含む本実施形態の蛍光体を含むほか、更に、励起光源からの光の照射下において、黄色、緑色、ないし赤色領域(橙色ないし赤色)の蛍光を発する蛍光体を使用することができる。具体的には、発光装置を構成する場合、黄色蛍光体としては、550nm以上、600nm以下の波長範囲に発光ピークを有するものが好ましく、緑色蛍光体としては、500nm以上、560nm以下の波長範囲に発光ピークを有するものが好ましい。また、橙色ないし赤色蛍光体は、通常615nm以上、好ましくは620nm以上、より好ましくは625nm以上、更に好ましくは630nm以上で、通常660nm以下、好ましくは650nm以下、より好ましくは645nm以下、更に好ましくは640nm以下の波長範囲に発光ピークを有するものである。
上記の波長帯の蛍光体を適切に組み合わせることで、優れた色再現性を示す発光装置を提供できる。尚、励起源については、420nm未満の波長範囲に発光ピークを有するものを用いてもよい。
【0057】
以下、赤色蛍光体として、620nm以上、645nm以下の波長範囲に発光ピークを有する、前記式[1]で表される組成を有する結晶相を含む本実施形態の蛍光体を用い、且つ第1の発光体が300nm以上460nm以下の波長範囲に発光ピークを有するものを用いる場合の、発光装置の態様について記載するが、本実施態様はこれらに限定されるものではない。
【0058】
上記の場合、本実施態様の発光装置は、例えば、次の(A)、(B)又は(C)の態様とすることができる。
(A)第1の発光体として、300nm以上460nm以下の波長範囲に発光ピークを有するものを用い、第2の発光体として、550nm以上600nm以下の波長範囲に発光ピークを有する少なくとも1種の蛍光体(黄色蛍光体)、及び前記[1]で表される組成を有する結晶相を含む本実施形態の蛍光体を用いる態様。
(B)第1の発光体として、300nm以上460nm以下の波長範囲に発光ピークを有するものを用い、第2の発光体として、500nm以上560nm以下の波長範囲に発光ピークを有する少なくとも1種の蛍光体(緑色蛍光体)、及び前記[1]で表される組成を有する結晶相を含む本実施形態の蛍光体を用いる態様。
(C)第1の発光体として、300nm以上460nm以下の波長範囲に発光ピークを有するものを用い、第2の発光体として、550nm以上600nm以下の波長範囲に発光ピークを有する少なくとも1種の蛍光体(黄色蛍光体)、500nm以上560nm以下の波長範囲に発光ピークを有する少なくとも1種の蛍光体(緑色蛍光体)、及び前記[1]で表される組成を有する結晶相を含む本実施形態の蛍光体を用いる態様。
【0059】
上記の態様における緑色又は黄色の蛍光体としては市販のものを用いることができ、例えば、ガーネット系蛍光体、シリケート系蛍光体、窒化物蛍光体、酸窒化物蛍光体などを用いることができる。
【0060】
(黄色蛍光体)
黄色蛍光体に用いることができるガーネット系蛍光体としては、例えば、(Y,Gd,Lu,Tb,La)(Al,Ga)12:(Ce,Eu,Nd)、 シリケート系蛍光体としては、例えば、(Ba,Sr,Ca,Mg)SiO:(Eu,Ce)、窒化物蛍光体及び酸窒化物蛍光体としては、例えば、(Ba,Ca,Mg)Si:Eu(SION系蛍光体)、(Li,Ca)(Si,Al)12(O,N)16:(Ce,Eu)(α-サイアロン蛍光体)、(Ca,Sr)AlSi(O,N):(Ce,Eu)(1147蛍光体)、(La,Ca,Y、Gd)(Al,Si)11:(Ce、Eu)(LSN蛍光体)などが挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
黄色蛍光体としては、上記蛍光体においてガーネット系蛍光体が好ましく、中でも、YAl12:Ceで表されるYAG系蛍光体が最も好ましい。
【0061】
(緑色蛍光体)
緑色蛍光体に用いることができるガーネット系蛍光体としては、例えば、(Y,Gd,Lu,Tb,La)(Al,Ga)12:(Ce,Eu,Nd)、Ca(Sc,Mg)Si12:(Ce,Eu)(CSMS蛍光体)、シリケート系蛍光体としては、例えば、(Ba,Sr,Ca,Mg)SiO10:(Eu,Ce)、(Ba,Sr,Ca,Mg)SiO:(Ce,Eu)(BSS蛍光体)、 酸化物蛍光体としては、例えば、(Ca,Sr,Ba,Mg)(Sc,Zn):(Ce,Eu)(CASO蛍光体)、窒化物蛍光体及び酸窒化物蛍光体としては、例えば、(Ba,Sr,Ca,Mg)Si:(Eu,Ce)、Si6-zAl8-z:(Eu,Ce)(β-サイアロン蛍光体)(0<z≦1)、(Ba,Sr,Ca,Mg,La)(Si,Al)12:(Eu,Ce)(BSON蛍光体)、アルミネート蛍光体としては、例えば、(Ba,Sr,Ca,Mg)Al1017:(Eu,Mn)(GBAM系蛍光体)などが挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
(赤色蛍光体)
赤色蛍光体としては、前記式[1]で表される組成を有する結晶相を含む本実施形態の蛍光体を用いるが、本実施形態の蛍光体に加えて、例えばMn付活フッ化物蛍光体、ガーネット系蛍光体、硫化物蛍光体、ナノ粒子蛍光体、窒化物蛍光体、酸窒化物蛍光体などの他の橙色ないし赤色蛍光体を用いることができる。他の橙色ないし赤色蛍光体としては、例えば下記の蛍光体を用いることができる。
Mn付活フッ化物蛍光体としては、例えば、K(Si,Ti)F:Mn、KSi1-xNaAl:Mn(0<x<1)(まとめてKSF蛍光体)、 硫化物蛍光体としては、例えば、(Sr,Ca)S:Eu(CAS蛍光体)、LaS:Eu(LOS蛍光体)、 ガーネット系蛍光体としては、例えば、(Y,Lu,Gd,Tb)MgAlSi12:Ce、ナノ粒子としては、例えば、CdSe、窒化物または酸窒化物蛍光体としては、例えば、(Sr,Ca)AlSiN:Eu(S/CASN蛍光体)、(CaAlSiN1-x・(SiO:Eu(CASON蛍光体)、(La,Ca)(Al,Si)11:Eu(LSN蛍光体)、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu(258蛍光体)、(Sr,Ca)Al1+xSi4-x7-x:Eu(1147蛍光体)、M(Si,Al)12(O,N)16:Eu(Mは、Ca,Srなど)(αサイアロン蛍光体)、Li(Sr,Ba)Al:Eu(上記のxは、いずれも0<x<1)などが挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
[発光装置の構成]
本実施態様に係る発光装置は、第1の発光体(励起光源)を有し、且つ、第2の発光体として少なくとも前記式[1]で表される組成を有する結晶相を含む本実施形態の蛍光体を使用することができ、その構成は制限されず、公知の装置構成を任意にとることが可能である。
装置構成及び発光装置の実施形態としては、例えば、特開2007-291352号公報に記載のものが挙げられる。その他、発光装置の形態としては、砲弾型、カップ型、チップオンボード、リモートフォスファー等が挙げられる。
【0064】
{発光装置の用途}
発光装置の用途は特に制限されず、通常の発光装置が用いられる各種の分野に使用することが可能であるが、演色性が高い点から、中でも照明装置や画像表示装置の光源として、とりわけ好適に用いることができる。
また、発光波長が良好な赤色の蛍光体を備える点から、赤色の車両用表示灯、又は該赤色を含む白色光の車両用表示灯に用いることもできる。
【0065】
[照明装置]
本発明は一実施態様において、前記発光装置を光源として備える照明装置とすることができる。
前記発光装置を照明装置に適用する場合、その照明装置の具体的構成に制限はなく、前述のような発光装置を公知の照明装置に適宜組み込んで用いればよい。例えば、保持ケースの底面に多数の発光装置を並べた面発光照明装置等を挙げることができる。
【0066】
[画像表示装置]
本発明は一実施態様において、前記発光装置を光源として備える画像表示装置とすることができる。
前記発光装置を画像表示装置の光源として用いる場合、その画像表示装置の具体的構成に制限はないが、カラーフィルターとともに用いることが好ましい。例えば、画像表示装置として、カラー液晶表示素子を利用したカラー画像表示装置とする場合は、前記発光装置をバックライトとし、液晶を利用した光シャッターと赤、緑、青の画素を有するカラーフィルターとを組み合わせることにより画像表示装置を形成することができる。
【0067】
[車両用表示灯]
本発明は一実施形態において、前記発光装置を備える車両用表示灯とすることができる。
車両用表示灯に用いる発光装置は、特定の実施形態においては、白色光を放射する発光装置であることが好ましい。白色光を放射する発光装置は、発光装置から放射される光が、光色の黒体輻射軌跡からの偏差duvが-0.0200~0.0200であり、かつ色温度が5000K以上、30000K以下であることが好ましい。
車両用表示灯に用いる発光装置は、特定の実施形態においては、赤色光を放射する発光装置であることが好ましい。該実施形態においては、例えば、発光装置が青色LEDチップから照射される青色光を吸収して赤色に発光することで、赤色光の車両用表示灯としてもよい。
車両用表示灯は、車両のヘッドランプ、サイドランプ、バックランプ、ウインカー、ブレーキランプ、フォグランプなど、他の車両や人等に対して何らかの表示を行う目的で車両に備えられた照明を含む。
【実施例0068】
以下、本発明の実施例に代わる実験例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限り、下記のものに限定されるものではない。
【0069】
{測定方法}
[粉末X線回折測定]
粉末X線回折(XRD)は、粉末X線回折装置SmartLab 3(Rigaku社製)にて精密測定した。
測定条件は以下の通りである。
CuKα管球使用
X線出力=40kV、200mA
発散スリット=自動
検出器=高速1次元X線検出器(D/teX Ultra 250)
捜査範囲 2θ=5~80度
読み込み幅=0.02度
【0070】
[発光スペクトルの測定]
キセノンランプを用い、波長365nmの光を蛍光体に照射し、分光蛍光光度計を用いて450~800nmの波長領域の発光スペクトルを測定した。
【0071】
本発明例として、前記式[1]で表される組成を有する結晶相を含む本実施形態の蛍光体に該当する赤色蛍光体(サンプル1~5)を用意した。また、本発明との比較対象として、Caの含有量が0であることで前記式[1]を満たさないサンプル6を用意した。
各サンプルの組成、空間群、発光ピーク波長、半値幅を、参考例としてのSrLiAlの文献値と共に、表1に示す。また、代表例としてサンプル2の蛍光体のXRDスペクトルチャート及び発光スペクトルチャートをそれぞれ図1及び図2に示す。
サンプル2の半値幅は65nmと良好であり、XRDにおけるIx/Iy及びIz/Iyはそれぞれ0.194、0.216と相の純度も良好であり、発光装置に適用した場合、変換効率が良好な発光装置を得られることが分かる。
【0072】
【表1】
【0073】
本実験例に係るサンプル1~5の蛍光体は、いずれも空間群P42/mを示し、かつ発光ピーク波長は白色LEDに用いた際の演色性又は色再現性が理想的となる620nm以上640nm以下の範囲であった。
【0074】
次に、式[1]を満たす前記蛍光体を備える発光装置の特性に係るシミュレーションの結果を記載する。
【0075】
赤色蛍光体として前記サンプル2の蛍光体、又は発光ピーク波長628nmのSCASN蛍光体(三菱ケミカル社製、BR-102C)と、緑色蛍光体としてLuAG蛍光体(三菱ケミカル社製、BG-801/A4)とを備える白色LEDの発光スペクトルを前記手法にて導出した。全てのシミュレーションは、449nmの光を放出する青色LEDチップを仮定して実施した。また、色度座標がプランク曲線上の3000K~8000Kの白色光の座標と一致する様に緑色蛍光体及び赤色蛍光体の量を調整し、各色温度における特性を比較した。結果を図3(a)~(f)に示す。また、各スペクトルから演色性評価数Ra、赤色の演色性評価数R9、並びに変換効率(LER)を求めた結果を表2に示す。
なお、表2における“蛍光体質量 相対値“とは、赤色蛍光体+緑色蛍光体の合計質量を100%とした際の、各色蛍光体の質量割合である。
【0076】
【表2】
【0077】
表2に示す通り、前記式[1]で表される組成を有する結晶相を含む蛍光体を備える発光装置は、従来の赤色蛍光体を用いた場合と比べ、幅広い色温度領域において変換効率、演色性に優れることが分かる。
【0078】
また、同じくシミュレーションにて前記白色LEDをバックライトとした画像表示装置の特性を評価した。赤色蛍光体としてサンプル2に係る蛍光体、又は発光ピーク波長628nmのSCASN蛍光体(三菱ケミカル社製、BR-102C)と、緑色蛍光体としてβ-SiAlON蛍光体(三菱ケミカル社製、BG-601/K)とを使用し、前記白色LEDの光を一般的な画像表示装置(ディスプレイ等)において用いられるカラーフィルターに通した後の色度座標(x、y)が(0.3101、0.3162)となる様に調節した場合の変換効率、及び該LED装置が表示できる色域がNTSCの色域の何%をカバーしているか(以下、カバー率と記載する場合もある)を算出した結果を表3に示す。
【0079】
【表3】
【0080】
表3に示す通り、前記式[1]で表される組成を有する結晶相を含む蛍光体を備える発光装置及び画像表示装置などは、従来の赤色蛍光体を用いる場合と比べ、変換効率と色域カバー率が共に優れることが分かる。
【0081】
以上示す通り、前記式[1]で表される組成を有する結晶相を含む蛍光体は赤色として好ましい波長、及び優れた半値幅を有し、この様な蛍光体を備える発光装置を用いることで、演色性その他の特性に優れる発光装置、照明装置、画像表示装置及び車両用表示灯などを提供できる。
図1
図2
図3