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特開2023-57579アルキル芳香族炭化水素製造用金属担持触媒、及び該触媒を用いてアルキル芳香族炭化水素を製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057579
(43)【公開日】2023-04-24
(54)【発明の名称】アルキル芳香族炭化水素製造用金属担持触媒、及び該触媒を用いてアルキル芳香族炭化水素を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/22 20060101AFI20230417BHJP
   B01J 23/652 20060101ALI20230417BHJP
   C07C 2/86 20060101ALI20230417BHJP
   C07C 15/06 20060101ALI20230417BHJP
   C07C 15/08 20060101ALI20230417BHJP
   C07C 15/02 20060101ALI20230417BHJP
   C07C 6/00 20060101ALI20230417BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20230417BHJP
【FI】
B01J29/22 M ZAB
B01J23/652 M
C07C2/86
C07C15/06
C07C15/08
C07C15/02
C07C6/00
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021167115
(22)【出願日】2021-10-12
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「NEDO先導研究プログラム/未踏チャレンジ2050/CO2とH2からの高付加価値化学品合成に関する先導的研究」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(71)【出願人】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100193725
【弁理士】
【氏名又は名称】小森 幸子
(74)【代理人】
【識別番号】100163038
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 武志
(74)【代理人】
【識別番号】100207240
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 喜弘
(72)【発明者】
【氏名】鳥屋尾 隆
(72)【発明者】
【氏名】清水 研一
(72)【発明者】
【氏名】陳 家偉
(72)【発明者】
【氏名】鎌倉 春花
(72)【発明者】
【氏名】印部 拓人
(72)【発明者】
【氏名】松下 康一
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA03
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA04A
4G169BA04B
4G169BA05A
4G169BA05B
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BC54A
4G169BC59A
4G169BC59B
4G169BC60A
4G169BC60B
4G169BC75A
4G169BC75B
4G169CB02
4G169CB25
4G169CB41
4G169CB43
4G169CB62
4G169CC11
4G169CC12
4G169CC21
4G169DA06
4G169EA01Y
4G169EA02Y
4G169EB18Y
4G169FA02
4G169FA08
4G169FC08
4G169ZA01A
4G169ZA06B
4H006AA02
4H006AC23
4H006AC27
4H006BA14
4H006BA26
4H006BA30
4H006BA55
4H006BA71
4H006BC13
4H006BE20
4H006BE41
4H039CA11
4H039CA19
4H039CL25
4H039CL60
(57)【要約】
【課題】副生成物であるメタンの生成される割合に比べ、アルキル芳香族炭化水素(芳香環の水素がメチル基で置換された芳香族炭化水素)を高収率で生成できる、アルキル芳香族炭化水素を製造する方法の提供。
さらに、副生成物であるメタンの生成される割合に比べ、芳香族炭化水素にメチル基がより多く置換された多置換アルキル芳香族炭化水素(芳香環の2つ以上の水素がそれぞれメチル基で置換された芳香族炭化水素)を高収率で生成できる、アルキル芳香族炭化水素を製造する方法の提供。
また、上記これらのアルキル芳香族炭化水素を製造する方法に使用するための触媒の提供。
【解決手段】芳香族炭化水素、二酸化炭素、及び水素から、メチル基を有するアルキル芳香族炭化水素を製造するために用いるアルキル芳香族炭化水素製造用金属担持触媒であって、前記アルキル芳香族炭化水素製造用金属担持触媒は、担体と、前記担体に担持された金属を有し、前記金属は、第1の金属としてPtと、第2の金属としてV、W、及びMoからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属との少なくとも2種類の金属を有する、アルキル芳香族炭化水素製造用金属担持触媒である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族炭化水素、二酸化炭素、及び水素から、メチル基を有するアルキル芳香族炭化水素を製造するために用いるアルキル芳香族炭化水素製造用金属担持触媒であって、
前記アルキル芳香族炭化水素製造用金属担持触媒は、担体と、前記担体に担持された金属を有し、
前記金属は、第1の金属としてPtと、第2の金属としてV、W、及びMoからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属との少なくとも2種類の金属を有する、アルキル芳香族炭化水素製造用金属担持触媒。
【請求項2】
前記担体が、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウムのいずれかである、請求項1に記載のアルキル芳香族炭化水素製造用金属担持触媒。
【請求項3】
前記アルキル芳香族炭化水素製造用金属担持触媒における第1の金属であるPtの含有量が、前記アルキル芳香族炭化水素製造用金属担持触媒の質量を基準として0.3質量%以上5.0質量%以下である、請求項1~2のいずれか一項に記載のアルキル芳香族炭化水素製造用金属担持触媒。
【請求項4】
前記アルキル芳香族炭化水素製造用金属担持触媒における第2の金属の酸化物としての含有量が、前記アルキル芳香族炭化水素製造用金属担持触媒の質量を基準として5.0質量%以上50.0質量%以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のアルキル芳香族炭化水素製造用金属担持触媒。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のアルキル芳香族炭化水素製造用金属担持触媒、及び結晶性アルミノシリケート粒子の存在下で、芳香族炭化水素、二酸化炭素、及び水素から、メチル基を有するアルキル芳香族炭化水素を生成させる工程を含む、アルキル芳香族炭化水素を製造する方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法によって、メチル基を有する複数種のアルキル芳香族炭化水素を得る工程と、
前記複数種のアルキル芳香族炭化水素の間のトランスアルキル化反応により、C8芳香族炭化水素を生成させる工程と、
を含む、C8芳香族炭化水素を製造する方法。
【請求項7】
請求項5に記載の方法において、前記二酸化炭素として炭素を含む物質の燃焼によって生成する二酸化炭素を用いることによって二酸化炭素を固定化することを含む、二酸化炭素を固定化する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルキル芳香族炭化水素製造用金属担持触媒、及び該触媒を用いてアルキル芳香族炭化水素を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルキル芳香族炭化水素、特にアルキルベンゼン類は、幅広い用途を有する。例えば、トルエンは、航空機用ガソリン、高オクタン配合原料油、ペンキ及び塗料として用いられる。o-キシレンは、例えばビタミン及び医薬品の合成、染料、殺虫剤、及び無水フタル酸の製造に用いられる。m-キシレンは、例えば溶剤、及び染料等の有機化合物を合成するための中間体として用いられる。p-キシレンは、例えばテレフタル酸の合成に用いられ、テレフタル酸は、例えばダクロン、マイラー等の合成樹脂及び繊維の製造の中間体として用いられる。キシレンの異性体の混合物は、航空機用ガソリン、保護被覆、又は、アルキル樹脂、ラッカー、エナメル及びラバーセメント等の溶剤として用いられる。
【0003】
トルエン及びキシレン等のメチル基を有するアルキル芳香族炭化水素は、一般に、石油精製工程、又はエチレンクラッカーの分解ガスから得られる。キシレン類を多く製造するために、トルエンの不均化プロセス、又は、トルエンと炭素数が9以上のアルキルベンゼン類とのトランスアルキル化プロセスが実施されている。
【0004】
アルキル化剤として二酸化炭素を用いてアルキル芳香族炭化水素を製造することができれば、地球環境への負荷低減に貢献できることが期待される。
【0005】
低濃度の二酸化炭素を化学反応の原料として利用する場合、二酸化炭素の濃縮及び分離のために大量のエネルギーを消費する。そのため、二酸化炭素を原料として用いるために、二酸化炭素をメタノール又はジメチルエーテル(DME)に変換する方法がこれまで提案されている(特許文献1)。しかし、低濃度の二酸化炭素を含む排ガスは、実際には大気に放出されていることが多いのが実情である。
【0006】
そこで、芳香族炭化水素を二酸化炭素と反応させてアルキル芳香族炭化水素を得る方法であって、触媒と反応物の分離が容易な不均一系触媒を用いて、高い収率でアルキル芳香族炭化水素を得る方法が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5557255号公報
【特許文献2】国際公開第2021/049579号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記特許文献2は、メチル基で置換されたアルキル芳香族炭化水素を高収率で生成することができるが、同時に副生成物であるメタンも多く生成される。
メチル基を有するアルキル芳香族炭化水素の製造において、反応に供する水素をより有効に活用するためには、副生するメタンの生成を抑制するのが好ましい。
また、メチル基を有するアルキル芳香族炭化水素の製造において、芳香族炭化水素にメチル基がより多く置換された多置換アルキル芳香族炭化水素を高収率に得ることができれば、得られたアルキル芳香族炭化水素の活用範囲が広がり、実用上好ましい。
そこで、副生成物であるメタンの生成を抑制し、かつメチル基で置換されたアルキル芳香族炭化水素を高収率で生成できる方法の提供、特に芳香族炭化水素にメチル基がより多く置換された多置換アルキル芳香族炭化水素を高収率で生成できる方法の提供が望まれていた。
【0009】
本発明は、副生成物であるメタンの生成は抑えつつ、アルキル芳香族炭化水素(芳香環の水素がメチル基で置換された芳香族炭化水素)を高収率で生成できる、アルキル芳香族炭化水素を製造する方法の提供を目的とする。さらに、本発明は、副生成物であるメタンの生成は抑えつつ、芳香族炭化水素にメチル基がより多く置換された多置換アルキル芳香族炭化水素(芳香環の2つ以上の水素がそれぞれメチル基で置換された芳香族炭化水素)を高収率で生成できる、アルキル芳香族炭化水素を製造する方法の提供を目的とする。
また、本発明は、上記これらのアルキル芳香族炭化水素を製造する方法に使用するための触媒の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、担体にPtと、特定の金属との少なくとも2種類の金属を担持してなる金属担持触媒を、アルキル芳香族炭化水素製造用の触媒として用いることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下の態様を包含するものである。
[1]芳香族炭化水素、二酸化炭素、及び水素から、メチル基を有するアルキル芳香族炭化水素を製造するために用いるアルキル芳香族炭化水素製造用金属担持触媒であって、
前記アルキル芳香族炭化水素製造用金属担持触媒は、担体と、前記担体に担持された金属を有し、
前記金属は、第1の金属としてPtと、第2の金属としてV、W、及びMoからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属との少なくとも2種類の金属を有する、アルキル芳香族炭化水素製造用金属担持触媒。
[2]前記担体が、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウムのいずれかである、[1]に記載のアルキル芳香族炭化水素製造用金属担持触媒。
[3]前記アルキル芳香族炭化水素製造用金属担持触媒における第1の金属であるPtの含有量が、前記アルキル芳香族炭化水素製造用金属担持触媒の質量を基準として0.3質量%以上5.0質量%以下である、[1]~[2]のいずれかに記載のアルキル芳香族炭化水素製造用金属担持触媒。
[4]前記アルキル芳香族炭化水素製造用金属担持触媒における第2の金属の酸化物としての含有量が、前記アルキル芳香族炭化水素製造用金属担持触媒の質量を基準として5.0質量%以上50.0質量%以下である、[1]~[3]のいずれかに記載のアルキル芳香族炭化水素製造用金属担持触媒。
[5][1]~[4]のいずれかに記載のアルキル芳香族炭化水素製造用金属担持触媒、及び結晶性アルミノシリケート粒子の存在下で、芳香族炭化水素、二酸化炭素、及び水素から、メチル基を有するアルキル芳香族炭化水素を生成させる工程を含む、アルキル芳香族炭化水素を製造する方法。
[6][5]に記載の方法によって、メチル基を有する複数種のアルキル芳香族炭化水素を得る工程と、
前記複数種のアルキル芳香族炭化水素の間のトランスアルキル化反応により、C8芳香族炭化水素を生成させる工程と、
を含む、C8芳香族炭化水素を製造する方法。
[7][5]に記載の方法において、前記二酸化炭素として炭素を含む物質の燃焼によって生成する二酸化炭素を用いることによって二酸化炭素を固定化することを含む、二酸化炭素を固定化する方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一側面によれば、副生成物であるメタンの生成される割合に比べ、アルキル芳香族炭化水素(芳香環の水素がメチル基で置換された芳香族炭化水素)を高収率で生成できる、アルキル芳香族炭化水素を製造する方法を提供することができる。
さらに、本発明の一側面によれば、副生成物であるメタンの生成される割合に比べ、芳香族炭化水素にメチル基がより多く置換された多置換アルキル芳香族炭化水素(芳香環の2つ以上の水素がそれぞれメチル基で置換された芳香族炭化水素)を高収率で生成できる、アルキル芳香族炭化水素を製造する方法を提供することができる。
また、本発明の一側面によれば、上記これらのアルキル芳香族炭化水素を製造する方法に使用するための触媒を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、以下に記載する構成要件の説明は、本発明を説明するための例示であり、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。
【0014】
(アルキル芳香族炭化水素製造用金属担持触媒)
アルキル芳香族炭化水素製造用金属担持触媒(以下、金属担持触媒ともいう)は、芳香族炭化水素、二酸化炭素、及び水素から、メチル基を有するアルキル芳香族炭化水素を製造する方法に使用する。
金属担持触媒は、担体と、該担体に担持された金属を有する。
金属は、第1の金属と、第2の金属の少なくとも2種類の金属を有する。
第1の金属はPtであり、第2の金属はV、W、及びMoからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属(以下、「特定の第2の金属」又は「特定の金属」ともいう)である。
【0015】
担体に、Ptと特定の金属との少なくとも2種類の金属を担持してなる本発明の金属担持触媒を、アルキル芳香族炭化水素製造用の触媒として用いる。該金属担持触媒の存在下で、芳香族炭化水素、二酸化炭素、及び水素から、メチル基を有するアルキル芳香族炭化水素を生成させた場合、下記実施例で示す通り、副生成物であるメタンの生成は抑えつつ、メチル基で置換されたアルキル芳香族炭化水素を高収率で生成することができる。また、本発明の金属担持触媒を、アルキル芳香族炭化水素製造用の触媒として用いた場合には、下記実施例で示す通り、副生成物であるメタンの生成は抑えつつ、芳香族炭化水素にメチル基がより多く置換された多置換アルキル芳香族炭化水素を高収率で生成することができる。
【0016】
担体は、触媒としての活性を有する金属を担持することができるものであり、例えば、金属酸化物が挙げられる。金属酸化物としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、又は酸化ケイ素等の金属酸化物が挙げられる。
担体としての粒子の一次粒子の粒径としては、例えば、10~1000nmである。ここで粒径は、X線回折法によって求めることができる。
【0017】
金属担持触媒における第1の金属であるPtの含有量は、金属担持触媒の質量を基準として0.3質量%以上5.0質量%以下、又は0.5質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。第1の金属の含有量がこれら範囲内にあると、特に高い収率でアルキル芳香族炭化水素が生成し易い傾向がある。なお、第1の金属の含有量が少ない場合、水素化活性が低いために二酸化炭素の水素化反応が進行しにくく、多置換アルキル芳香族炭化水素が生成しにくくなる。
【0018】
金属担持触媒において、担体に担持される金属としては、第1の金属のPtの他に、V、W、及びMoからなる群より選ばれる特定の第2の金属が挙げられる。
第2の金属は、酸化物として使用され、金属として担体に担持された後に酸化されても良く、あるいは酸化物としてそのまま担体に担持されていてもよい。
金属担持触媒における第2の金属の酸化物としての含有量は、金属担持触媒の質量を基準として5.0質量%以上50.0質量%以下、より好ましくは5.0質量%以上30.0質量%以下である。第2の金属の酸化物としての含有量がこれら範囲内にあると、多置換アルキル芳香族炭化水素の生成が多く、副生成物であるメタンの生成が少なくなる傾向がある。
なお、金属担持触媒中に第2の金属が2種類以上含有される場合には、上述した第2の金属の酸化物としての含有量は、2種類以上の第2の金属を合計した値である。
【0019】
金属担持触媒は、通常の方法によって調製することができる。例えば、担体に金属化合物の水溶液を接触させることと、担体及び金属化合物の水溶液の混合物から溶媒を除去し、残留した固形物を焼成することとを含む方法によって、金属担持触媒を得ることができる。
【0020】
金属担持触媒は、通常、反応触媒として用いられる前に還元処理されるとよい。還元処理の方法は、特に制限されない。例えば、水素ガスを含む雰囲気下で金属担持触媒の触媒粒子を加熱する方法によって金属担持触媒を還元処理することができる。還元処理のための温度は、例えば200~800℃である。還元処理の時間は、0.1~5時間である。
【0021】
(アルキル芳香族炭化水素を製造する方法)
本発明のアルキル芳香族炭化水素を製造する方法は、上述した本発明の金属担持触媒を用いて、メチル基を有するアルキル芳香族炭化水素を製造する。
アルキル芳香族炭化水素を製造する方法の好ましい実施態様としては、例えば、上記金属担持触媒及び結晶性アルミノシリケート粒子の存在下で、芳香族炭化水素、二酸化炭素、及び水素からメチル基を有するアルキル芳香族炭化水素を生成させる工程を含む方法が挙げられる。
【0022】
金属担持触媒とともに用いられる結晶性アルミノシリケート粒子は、金属担持触媒とは別の粒子として反応系に導入される。結晶性アルミノシリケート粒子は、一般に、ケイ素原子、アルミニウム原子及び酸素原子を含む複合酸化物を含む粒子である。
結晶性アルミノシリケート粒子の一次粒子の粒径としては、例えば、0.1~500nmである。ここで粒径は、X線回折法によって求めることができる。
【0023】
結晶性アルミノシリケート粒子を構成する複合酸化物を、SiO、及びAlを含む組成式で表したときに、Alに対するSiOのモル比(SiO/Al比)は、例えば、5~1000、又は20~600である。
【0024】
結晶性アルミノシリケート粒子は、MOR(モルデナイト)、MFI(ZSM-5)、BEA(ベータ型)、FAU(Y型)及びCHA(チャバサイト)からなる群より選ばれる少なくとも1種のゼオライトを含んでいてもよい。これらのゼオライトは、プロトン(H)又はアンモニウム(NH )をカチオンとして有していてもよい。例えば、ゼオライトが、プロトンを有するH-MOR、H-MFI、H-BEA若しくはH-FAU、又は、アンモニウムを有するNH-MFIであってもよい。
【0025】
金属担持触媒及び結晶性アルミノシリケート粒子の存在下で、芳香族炭化水素を二酸化炭素、及び水素と反応させることにより、メチル基を有するアルキル芳香族炭化水素が効率的に生成される。
反応の条件は、反応が進行するように適切に調整される。
反応温度は、例えば、150~400℃であり、好ましくは200~260℃であり、より好ましくは220~260℃である。
反応温度は、用いられる金属担持触媒中の金属の種類や含有量、又は担体の種類や含有量の違いを考慮し、あるいは反応条件の違い(例えば、触媒と各種反応物との接触時間を変える等)を考慮して、適宜好ましい温度を設定するとよいが、反応温度が低いと水素化活性が低いため、アルキル化が進行しにくくなる。
反応雰囲気の圧力は、例えば、0.1~10MPaである。二酸化炭素と水素との比率(モル比、又は圧力比)は、例えば、10:1~1:100である。なお、反応ガス中に一酸化炭素が含まれてもよいが、二酸化炭素に対する一酸化炭素の比率(モル比、又は圧力比)が1よりも少ない、すなわち、二酸化炭素が多い方が好ましい。これは、一酸化炭素による触媒被毒が起こりやすいためである。また、二酸化炭素の有効活用の点からも、二酸化炭素の比率が大きいほうが更に有利である。
【0026】
原料として用いられる芳香族炭化水素は、例えば、ベンゼン、アルキルベンゼン(例えばトルエン、m-キシレン)、又はこれらの組み合わせであってもよい。ベンゼンを用いる場合、複数種のアルキル芳香族炭化水素を含む混合物が生成されることが多い。生成される混合物としては、例えば、トルエンと、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、1,2,3-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,3,4-テトラメチルベンゼン、1,2,3,5-テトラメチルベンゼン、1,2,4,5-テトラメチルベンゼン、ペンタメチルベンゼン、ヘキサメチルベンゼンからなる群より選ばれる少なくとも1種のその他のメチルベンゼン化合物とを含む混合物が挙げられる。
二酸化炭素をより多く分子内に取り込み、トランスアルキル化反応の原料に用いるためには、多置換アルキル芳香族炭化水素(例えば、ペンタメチルベンゼン、ヘキサメチルベンゼン)を生成することが望ましい。本発明の金属担持触媒を用いると、芳香族炭化水素にメチル基がより多く置換された多置換アルキル芳香族炭化水素を高収率で生成することができる。
【0027】
生成した複数種のアルキル芳香族炭化水素の間のトランスアルキル化反応により、C8芳香族炭化水素を生成させてもよい。C8芳香族炭化水素は、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン又はこれらの組み合わせであってもよい。例えば、トルエン及び炭素数9以上のメチルベンゼン化合物を含む混合物のトランスアルキル化反応によって、キシレン類を含むC8芳香族炭化水素を生成させてもよい。トランスアルキル化反応は、当業者が採用する通常の方法によって行うことができる。また、本発明において水素を有効活用するためには、副生するメタンや芳香族炭化水素の核水添生成物であるシクロヘキサンおよびアルキルシクロヘキサン類の生成を、極力抑制することが望ましい。
【0028】
原料として使用される二酸化炭素は、比較的純度の低い二酸化炭素であってもよい。低濃度の二酸化炭素を含む混合ガスは、例えば、石油精製、石油化学、発電、製鉄、ボイラーなどにおいて、炭化水素を燃料として燃焼させる工程、又は、未反応の炭化水素を燃焼させる工程から発生する。一般的に、ボイラー又は燃焼システムから排出される排ガス中には、二酸化炭素の他、空気由来の窒素及び酸素、並びに不完全燃焼の一酸化炭素が含まれる。さらに、硫黄酸化物又は窒素酸化物も含まれることが多い。通常、不完全燃焼を抑制するために空気の比率を高める燃焼方式が採用され、酸素は燃焼に消費されるため減少するが、反応しない窒素の濃度が高くなる。その結果、窒素を過剰に含む混合ガス中に、酸素及び二酸化炭素が少量含有される。一例として、石油精製における代表的な装置である接触分解装置の再生塔燃焼ガスの組成は、一般に窒素80容量%、二酸化炭素15容量%、一酸化炭素及び酸素がそれぞれ2容量%となっている。
【0029】
一酸化炭素の一部はアルキル化反応に利用できるため、原料が一酸化炭素を大量に含んでいてもよい。窒素及び酸素はアルキル化反応を阻害しないため、これらが原料に含まれていてもよい。
【0030】
原料ガス中の二酸化炭素の濃度は特に限定されないが、原料ガスの体積を基準として、95容量%未満が好ましく、50容量%未満がさらに好ましく、20容量%未満が特に好ましい。原料ガス中の二酸化炭素の濃度は、原料ガスの体積を基準として、1容量%以上が好ましく、2容量%以上がさらに好ましく、5容量%以上が特に好ましい。原料ガス中の二酸化炭素の濃度が1容量%以上であると、反応を特に効率的に進めることができる。原料ガス中の二酸化炭素の濃度が95容量%未満であっても使用することができ、二酸化炭素の濃縮にかかるエネルギー、設備、コストなどが軽減できる。
【0031】
二酸化炭素に対する水素の分圧比は、好ましくは2以上70未満、より好ましくは5以上70未満である。二酸化炭素に対する水素の分圧比が上記範囲の中でも高いと、効率的に二酸化炭素の変換が進行する傾向がある。また二酸化炭素に対する水素の分圧比が上記範囲の中でも低いと、芳香族炭化水素化合物の核水添反応の進行が抑制される傾向がある。
【0032】
原料の全圧は、好ましくは1MPa以上7.6MPa未満、より好ましくは1.5MPa以上7.6MPa未満である。原料の全圧が上記範囲の中でも高いと、アルキル化反応が十分に進行し易い傾向がある。また原料の全圧が上記範囲の中でも低いと、芳香族炭化水素化合物の核水添反応の進行が抑制される傾向がある。
【0033】
触媒に対する芳香族炭化水素化合物の比率は、例えばベンゼンを原料として用いる場合、ベンゼン/金属担持触媒(質量比)は、0.1以上20未満であると好ましく、0.5以上10未満であるとより好ましい。触媒に対する芳香族炭化水素化合物の比率が上記範囲の中でも低いと、アルキル化反応が十分に進行し易い傾向がある。また触媒に対する芳香族炭化水素化合物の比率が上記範囲の中でも高いと経済的に有利である。
【0034】
以上例示された方法において、炭素を含む物質の燃焼によって生成する二酸化炭素を含む原料ガスを用いることによって、排ガス中に含まれる二酸化炭素を固定することができる。本発明のアルキル芳香族炭化水素を製造する方法を用いることにより、効率的に二酸化炭素を固定化することができる。炭素を含む物質は炭化水素であってもよい。
【実施例0035】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0036】
(試験例1)
1-1.金属担持触媒
<実施例1-1>
以下の方法により、Pt及びMoが酸化チタン粒子に担持された金属担持触媒粒子を調製した。
七モリブデン酸六アンモニウム四水和物(和光純薬工業)1.1039g、酸化チタン粒子(P-25、日本アエロジル)2.01g及びイオン交換水100mLの混合物を室温で30分撹拌した。混合物を50℃に加熱しながら減圧下で溶媒を留去し、残渣を110℃で一晩乾燥した。乾燥後の固形物を、瑪瑙乳鉢及び乳棒ですりつぶした。得られた粉体を大気雰囲気下、500℃で3時間焼成して、MoOが担持された酸化チタン粒子を得た。得られた粒子にジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液(フルヤ金属)1.9565g、及びイオン交換水100mLの混合物を室温で30分撹拌した。混合物を50℃に加熱しながら減圧下で溶媒を留去し、残渣を110℃で一晩乾燥した。乾燥後の固形物を、瑪瑙乳鉢及び乳棒ですりつぶした。得られた粉体を大気雰囲気下、500℃で3時間焼成して、MoO及びPt金属が酸化チタンに担持された金属担持触媒粒子を得た。
仕込み量から計算されるPt金属の含有量は、金属担持触媒粒子の量を基準として、3質量%であり、MoOの含有量は、金属担持触媒粒子の量を基準として、30質量%であった。
【0037】
<比較例1-1>
ジアンミンジニトロ白金(II)硝酸溶液(フルヤ金属)1.9565g、酸化チタン粒子(P-25、日本アエロジル)2.91g、及びイオン交換水400mLの混合物を、室温で30分撹拌した。次いで、50℃に加熱しながら減圧下で溶媒を留去し、残渣を110℃で一晩乾燥した。乾燥後の固形物を、瑪瑙乳鉢及び乳棒ですりつぶした後、大気雰囲気下、500℃で3時間焼成して、Pt金属が酸化チタンに担持された金属担持触媒粒子を得た。仕込み量から計算されるPt金属の含有量は、金属担持触媒粒子の量を基準として、3質量%であった。
【0038】
<比較例1-2>
ジアンミンジニトロ白金(II)硝酸溶液に代えて、過レニウム酸アンモニウム(SIGMA-ALDRICH)0.1297gを用いたこと以外は比較例1-1と同様にして、Reが酸化チタン粒子に担持された金属担持触媒粒子を得た。仕込み量から計算されるRe金属の含有量は、金属担持触媒粒子の量を基準として、3質量%であった。
【0039】
<比較例1-3>
七モリブデン酸六アンモニウム四水和物(和光純薬工業)1.1039g、酸化チタン粒子(P-25、日本アエロジル)2.01g及びイオン交換水100mLの混合物を室温で30分撹拌した。混合物を50℃に加熱しながら減圧下で溶媒を留去し、残渣を110℃で一晩乾燥した。乾燥後の固形物を、瑪瑙乳鉢及び乳棒ですりつぶした。得られた粉体を大気雰囲気下、500℃で3時間焼成して、MoOが担持された酸化チタン粒子を得た。
【0040】
1-2.ベンゼンのメチル化反応
結晶性アルミノシリケート粒子100mgと、各金属担持触媒粒子を金属量として0.0081mmolとなるように固定床反応器に充填し、20mL/分の水素気流下、500℃で0.5時間、還元処理した。
結晶性アルミノシリケート粒子として、ゼオライト粒子(モルデナイト(H-MOR)、SiO/Al=90/1(モル比)、東ソー製)を用いた。
還元処理した金属担持触媒粒子および上記ゼオライト粒子を空気に触れないように、1mmolのベンゼンとともにオートクレーブ中で混合した。その後、オートクレーブに5MPaの水素、及び1MPaの二酸化炭素を導入した。
オートクレーブ中、240℃、12時間反応を進行させた。
生成物をガスクロマトグラフィーで分析して、ベンゼン又はCOの仕込み量を基準とする各成分の収率を求めた。結果を表1に示す。表中の略記は下記化合物を意味する。
【0041】
123-Tri-MB:1,2,3-トリメチルベンゼン
124-Tri-MB:1,2,4-トリメチルベンゼン
135-Tri-MB:1,3,5-トリメチルベンゼン
1234-Tetra-MB:1,2,3,4-テトラメチルベンゼン
1235-Tetra-MB:1,2,3,5-テトラメチルベンゼン
1245-Tetra-MB:1,2,4,5-テトラメチルベンゼン
PMB:ペンタメチルベンゼン
HMB:ヘキサメチルベンゼン
EB:エチルベンゼン
CH:シクロヘキサン
MCH:メチルシクロヘキサン
C2-C4:炭素数2~4の炭化水素
【0042】
得られた各成分の収率結果を、以下のように評価した。これにより、副生成物であるメタンの生成される割合に対し、メチル基を有するアルキル芳香族炭化水素の収率を評価した。なお、その際、芳香族炭化水素にメチル基がより多く置換された多置換アルキル芳香族炭化水素が生成されるほど高評価になるよう、芳香族炭化水素に置換されているメチル基の数に応じた重みづけをして評価した。評価の詳細は以下のとおりである。
【0043】
[評価方法]
メチル基数に換算したアルキル芳香族炭化水素の収率を計算するため、下記の方法に従い、1)の値を求める。
1)の計算方法:トルエンは収率×1、キシレンは収率×2、トリメチルベンゼンは収率×3、テトラメチルベンゼン×4、ペンタメチルベンゼンは収率×5、ヘキサメチルベンゼンは収率×6をし、これらすべてを合計する。
次に、副生成物であるメタンの収率を2)の値とする。
そして、下記の方法に従い、3)の値を求める。
3)の計算方法:1)/2)を計算する。
例えば、実施例2aを例に、3)の値を計算すると、以下のようになる。
1)の値:14.2×1+(2.8+2.5+2.8)×2+(0.8+2.6+0.2)×3+(0.2+0.0+2.2)×4+7.0×5+3.0×6=103.6
2)の値:10.0
3)の値:103.6/10.0=10.4
【0044】
3)の値に対して、下記基準により、副生成物であるメタンの生成される割合に対する、多置換アルキル芳香族炭化水素の収率を評価する。
-評価基準-
A:3)の値が10以上
B:3)の値が7.5以上10未満
C:3)の値が3.5以上7.5未満
D:3)の値が3.5未満
【0045】
【表1】
【0046】
表1に示されるように、第1の金属であるPtと、第2の金属であるMoとを有する金属担持触媒粒子と、結晶性アルミノシリケート粒子(ここではゼオライト粒子)とを組み合わせて用い、芳香族炭化水素(ここではベンゼン)、二酸化炭素、及び水素から、メチル基を有するアルキル芳香族炭化水素を製造させたところ、副生成物であるメタンの生成は抑えつつ、メチル基を有するアルキル芳香族炭化水素を高い収率で生成できることが確認された。特に、副生成物であるメタンの生成は抑えつつ、芳香族炭化水素にメチル基がより多く置換された多置換アルキル芳香族炭化水素を高収率で生成できることが確認された。
【0047】
(試験例2)
<実施例1-1>
実施例1-1は、上述した通りである。
【0048】
<実施例2-1>
七モリブデン酸六アンモニウム四水和物に代えて、タングステン酸アンモニウムパラ五水和物(和光純薬工業)1.0134gを用いたこと以外は、実施例1-1と同様にして、WOが酸化チタンに担持された金属担持触媒粒子を得た。
仕込み量から計算されるWOの含有量は、金属担持触媒粒子の量を基準として、30質量%であった。
【0049】
<実施例2-2>
担体として酸化チタン粒子に代えて、酸化ジルコニウム粒子(JRC-ZRO-5(商品名)、第一稀元素化学工業製)を用いたこと以外は、実施例1-1と同様にして、MoO及びPt金属が酸化ジルコニウムに担持された金属担持触媒粒子を調製した。
【0050】
得られた各金属担持触媒粒子を用いたこと以外は試験例1と同様の条件で、ベンゼンのメチル化反応の試験を行った。
生成物をガスクロマトグラフィーで分析した結果を表2に示す。
【0051】
【表2】
【0052】
表2に示されるように、第1金属であるPtと第2金属とが各種の担体に担持された金属担持触媒粒子と、結晶性アルミノシリケート粒子とを組み合わせて用い、芳香族炭化水素、二酸化炭素、及び水素から、メチル基を有するアルキル芳香族炭化水素を製造させたところ、副生成物であるメタンの生成は抑えつつ、メチル基を有するアルキル芳香族炭化水素を高い収率で生成できることが確認された。特に、副生成物であるメタンの生成は抑えつつ、芳香族炭化水素にメチル基がより多く置換された多置換アルキル芳香族炭化水素を高収率で生成できることが確認された。
【0053】
(試験例3)
<実施例1-1>
実施例1-1は、上述した通りである。
【0054】
<実施例3-1~3-4>
Pt金属の量を、金属担持触媒粒子の質量を基準として0.3質量%、0.5質量%、1.0質量%、又は5.0質量%に変更したこと以外は、実施例1-1と同様にして、実施例3-1~3-4の金属担持触媒粒子を調製した。
【0055】
得られた各金属担持触媒粒子を用いたこと以外は試験例1と同様の条件で、ベンゼンのメチル化反応の試験を行った。
生成物をガスクロマトグラフィーで分析した結果を表3に示す。
【0056】
【表3】
【0057】
表3に示されるように、Ptの量が異なる各種の金属担持触媒粒子と、結晶性アルミノシリケート粒子とを組み合わせて用い、芳香族炭化水素、二酸化炭素、及び水素から、メチル基を有するアルキル芳香族炭化水素を製造させたところ、副生成物であるメタンの生成は抑えつつ、メチル基を有するアルキル芳香族炭化水素を高い収率で生成できることが確認された。特に、副生成物であるメタンの生成は抑えつつ、芳香族炭化水素にメチル基がより多く置換された多置換アルキル芳香族炭化水素を高収率で生成できることが確認された。
なお、実施例3-1~3-3は、C評価であり、比較例1-1と同じレベルの評価結果となったが、これは、Ptの含有量が0.3質量%~1質量%と比較例1-1に比べるとかなり少ないからである。しかし、このようにPtの含有量がかなり少ない場合であっても、比較例1-1と同様の評価結果が得られたということは、いかに本発明の金属担持触媒が、メチル基を有するアルキル芳香族炭化水素の生成に優れているかということを表している。
【0058】
(試験例4)
<実施例1-1>
実施例1-1は、上述した通りである。
【0059】
<実施例4-1~4-5>
MoOの量を、金属担持触媒粒子の質量を基準として5.0質量%、10.0質量%、15.0質量%、20.0質量%、又は50.0質量%に変更したこと以外は、実施例1-1と同様にして、実施例4-1~4-5の金属担持触媒粒子を調製した。
【0060】
得られた各金属担持触媒粒子を用いたこと以外は試験例1と同様の条件で、ベンゼンのメチル化反応の試験を行った。
生成物をガスクロマトグラフィーで分析した結果を表4に示す。
【0061】
【表4】
【0062】
表4に示されるように、MoOの量が異なる各種の金属担持触媒粒子と、結晶性アルミノシリケート粒子とを組み合わせて用い、芳香族炭化水素、二酸化炭素、及び水素から、メチル基を有するアルキル芳香族炭化水素を製造させたところ、副生成物であるメタンの生成は抑えつつ、メチル基を有するアルキル芳香族炭化水素を高い収率で生成できることが確認された。特に、副生成物であるメタンの生成は抑えつつ、芳香族炭化水素にメチル基がより多く置換された多置換アルキル芳香族炭化水素を高収率で生成できることが確認された。
【0063】
(試験例5)
<実施例4-3>
実施例4-3は、上述した通りである。
【0064】
<実施例5-1~5-5>
メチル基を有するアルキル芳香族炭化水素を生成させる際の反応温度を220℃、230℃、250℃、260又は280℃に変更したこと以外は、試験例1と同様の条件で、実施例4-3の金属担持触媒粒子及び結晶性アルミノシリケートを用いたベンゼンのメチル化反応の試験を行った。
生成物をガスクロマトグラフィーで分析した結果を表5に示す。
【0065】
【表5】
【0066】
表5に示されるように、金属担持触媒粒子と、結晶性アルミノシリケート粒子とを組み合わせて用い、芳香族炭化水素、二酸化炭素、及び水素から、種々の反応温度で、メチル基を有するアルキル芳香族炭化水素を製造させたところ、副生成物であるメタンの生成は抑えつつ、メチル基を有するアルキル芳香族炭化水素を高い収率で生成できることが確認された。特に、副生成物であるメタンの生成は抑えつつ、芳香族炭化水素にメチル基がより多く置換された多置換アルキル芳香族炭化水素を高収率で生成できることが確認された。
なお、実施例5-1、5-2は、C評価であり、比較例1-1と同じレベルの評価結果となったが、これは、反応温度が比較例1-1の240℃に比べると低いからである。しかし、このように低い反応温度で反応させても、比較例1-1と同様の評価結果が得られたということは、いかに本発明の金属担持触媒が、メチル基を有するアルキル芳香族炭化水素の生成に優れているかということを表している。
【0067】
(試験例6)
<実施例6-1~6-2>
担体として酸化チタン粒子に代えて、酸化アルミニウム粒子(Catapal B(商品名)Sasol製を3時間900℃で焼成)を用いたこと以外は、実施例1-1と同様な方法により、酸化アルミニウム粒子にPtとMoが担持された実施例6-1~6-2の金属担持触媒粒子を調製した。
Ptの量、及びMoOの量は、下記表6で示すとおりとし、実施例6-1~6-2の金属担持触媒粒子を作製した。
【0068】
得られた各金属担持触媒粒子を用いて、試験例1と同様の条件で、ベンゼンのメチル化反応の試験を行った。尚、各実施例におけるメチル基を有するアルキル芳香族炭化水素を生成させる際の反応温度は、下記表6に示す通りとした。
生成物をガスクロマトグラフィーで分析した結果を表6に示す。
【0069】
【表6】
【0070】
表6に示されるように、第1金属と第2金属とが酸化アルミニウムの担体に担持された金属担持触媒粒子と、結晶性アルミノシリケート粒子とを組み合わせて用い、芳香族炭化水素、二酸化炭素、及び水素から、メチル基を有するアルキル芳香族炭化水素を製造させたところ、副生成物であるメタンの生成は抑えつつ、メチル基を有するアルキル芳香族炭化水素を高い収率で生成できることが確認された。特に、副生成物であるメタンの生成は抑えつつ、芳香族炭化水素にメチル基がより多く置換された多置換アルキル芳香族炭化水素を高収率で生成できることが確認された。
【0071】
本発明によれば、芳香族炭化水素、二酸化炭素、及び水素から、メチル基を有するアルキル芳香族炭化水素を、不均一系触媒を用いて高い収率で得ることができる。さらに、炭素を含む物質の燃焼によって生成し、大気に放出されていた低濃度の二酸化炭素を原料として適用することもできる。そのため、従来は大気に放出されていたような低濃度の二酸化炭素を含む排ガス(例えば、石油精製工場、発電所などで発生する、炭化水素の燃焼により生成する混合ガス)を効率的に利用することができる。その結果、地球環境への負荷のより一層の低減につながることが期待される。