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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057648
(43)【公開日】2023-04-24
(54)【発明の名称】処理方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 12/00 20060101AFI20230417BHJP
   C23C 14/08 20060101ALI20230417BHJP
   C23C 14/34 20060101ALI20230417BHJP
【FI】
C23C12/00
C23C14/08
C23C14/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021167233
(22)【出願日】2021-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】及川 雅之
(72)【発明者】
【氏名】中井 淳一
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029AA02
4K029BA03
4K029BA44
4K029CA05
4K029GA01
(57)【要約】
【課題】基材の表面に表面粗さが小さいアルミニウム酸化層を形成できる技術を提供する。
【解決手段】本開示の一態様による処理方法は、基材を準備する工程と、前記基材の表面にアルミニウムを成膜する工程と、前記基材を第1温度で熱処理することにより前記アルミニウムを前記基材に拡散浸透させる工程と、前記アルミニウムが拡散浸透した前記基材を前記第1温度より高い第2温度で熱処理することによりアルミニウム酸化層を形成する工程と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材を準備する工程と、
前記基材の表面にアルミニウムを成膜する工程と、
前記基材を第1温度で熱処理することにより前記アルミニウムを前記基材に拡散浸透させる工程と、
前記アルミニウムが拡散浸透した前記基材を前記第1温度より高い第2温度で熱処理することによりアルミニウム酸化層を形成する工程と、
を有する、処理方法。
【請求項2】
前記拡散浸透させる工程及び前記アルミニウム酸化層を形成する工程は、酸素を含む雰囲気で行われる、
請求項1に記載の処理方法。
【請求項3】
前記酸素を含む雰囲気は、大気雰囲気である、
請求項2に記載の処理方法。
【請求項4】
前記基材は、ステンレス鋼又はニッケル基合金である、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項5】
前記基材は、アルミニウムを含まない金属又は合金により形成される、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項6】
前記アルミニウムは、物理気相堆積により前記基材の表面に成膜される、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
合金鋼にアルミニウムをコーティングし、次いでコーティングのアルミニウムを加熱してアルミニウムを酸化させ、これにより、アルミナの層を形成する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-193258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基材の表面に表面粗さが小さいアルミニウム酸化層を形成できる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様による処理方法は、基材を準備する工程と、前記基材の表面にアルミニウムを成膜する工程と、前記基材を第1温度で熱処理することにより前記アルミニウムを前記基材に拡散浸透させる工程と、前記アルミニウムが拡散浸透した前記基材を前記第1温度より高い第2温度で熱処理することによりアルミニウム酸化層を形成する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基材の表面に表面粗さが小さいアルミニウム酸化層を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態の処理方法の一例を示すフローチャート
図2】組成分析の結果を示す図
図3】組成分析の結果を示す図
図4】組成分析の結果を示す図
図5】表面粗さの測定結果を示す図
図6】表面粗さの測定結果を示す図
図7】耐食性評価の結果を示す図
図8】耐食性評価の結果を示す図
図9】耐食性評価の結果を示す図
図10】耐食性評価の結果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付の図面を参照しながら、本開示の限定的でない例示の実施形態について説明する。添付の全図面中、同一又は対応する部材又は部品については、同一又は対応する参照符号を付し、重複する説明を省略する。
【0009】
〔処理方法〕
図1を参照し、実施形態の処理方法の一例について説明する。実施形態の処理方法は、基材準備工程S1、成膜工程S2、第1熱処理工程S3及び第2熱処理工程S4をこの順に実施することにより、基材の表面にアルミニウム酸化層を形成することを含む。以下、各工程について説明する。
【0010】
(基材準備工程S1)
基材準備工程S1は、処理対象となる基材を準備する工程である。基材としては、例えばアルミニウム(Al)を含まない金属(以下「非Al金属」という。)、Alを含まない合金(以下「非Al合金」という。)を利用できる。非Al金属としては、例えば一般構造用圧延鋼材(SS材)が挙げられる。非Al合金としては、SUS304、SUS316、SUS316L等のステンレス鋼、NCF600等のニッケル基合金が挙げられる。また、基材としては、Alを含む金属、Alを含む合金を利用してもよい。ただし、材料費が安くかつ加工費が安いという観点から、非Al金属又は非Al合金により形成される基材を利用することが好ましい。
【0011】
(成膜工程S2)
成膜工程S2は、基材の表面にアルミニウムを成膜する工程である。アルミニウムは、例えばスパッタリング、蒸着、イオンプレーティング等の物理気相堆積(PVD:Physical Vapor Deposition)により成膜できる。PVDによって基材の表面にアルミニウムを成膜する場合、メタルマスク等のマスクを使用することにより、基材の必要な部位のみにアルミニウムを選択的に成膜できる。成膜工程S2において基材の表面に成膜するアルミニウムの膜厚は、例えば1μm~2μmであってよい。
【0012】
(第1熱処理工程S3)
第1熱処理工程S3は、基材を第1温度T1で熱処理することにより、基材の表面に成膜されたアルミニウムを基材中に拡散浸透させる工程である。第1熱処理工程S3は、酸素を含む雰囲気、例えば大気雰囲気で行われる。第1温度T1は、基材の種類に応じて定められる。第1温度T1は、アルミニウムが基材に拡散浸透する温度以上であればよい。第1温度T1は、基材に含まれる金属元素とアルミニウムとの合金化温度よりも低い温度であることが好ましい。これにより、基材に含まれる金属元素とアルミニウムとの合金化による基材の表面荒れを抑制できる。第1温度T1は、例えば500℃以上700℃以下である。
【0013】
(第2熱処理工程S4)
第2熱処理工程S4は、アルミニウムが拡散浸透した基材を第2温度T2で熱処理することによりアルミニウム酸化層を形成する工程である。第2熱処理工程S4は、酸素を含む雰囲気、例えば大気雰囲気で行われる。第2温度T2は、基材の種類に応じて定められる。第2温度T2は、第1温度T1より高い温度である。第2温度T2は、例えば750℃以上1000℃以下である。
【0014】
以上に説明した実施形態の処理方法によれば、基材の表面にアルミニウムを成膜し、次いで基材を第1温度T1で熱処理することによりアルミニウムを基材に拡散浸透させる。次いで、アルミニウムが拡散浸透した基材を第1温度T1より高い第2温度T2で熱処理することによりアルミニウム酸化層を形成する。これにより、アルミニウムを基材に拡散浸透させる温度を低温化できる。その結果、基材に含まれる金属元素とアルミニウムとが合金化することが抑制されるので、基材の表面に表面粗さが小さいアルミニウム酸化層を形成できる。
【0015】
〔実施例〕
(実施例1)
実施例1として、実施形態の処理方法を用いて基材を処理することにより、基材の表面にアルミニウム酸化層が形成されることを確認するための実験を行った。実施例1では、基材としてSUS316L及びNCF600を使用した。実施例1では、成膜工程S2においてスパッタリングにより基材の表面に1.6μmのアルミニウムを成膜した。実施例1では、第1熱処理工程S3において基材を大気雰囲気の下、560℃で3時間熱処理を行った。実施例1では、第2熱処理工程S4において基材を大気雰囲気の下、850℃で1時間熱処理を行った。実施例1では、基材を実施形態の処理方法により処理した後、処理された基材の表面近傍における原子濃度をX線光電子分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)により測定した。
【0016】
図2は、SUS316Lに対して実施形態の処理方法における成膜工程S2及び第1熱処理工程S3を行った後、XPSによりアルミニウム(Al)原子濃度、酸素(O)原子濃度及び鉄(Fe)原子濃度を測定した結果を示す図である。図2中、横軸は基材の表面からの深さ[nm]を示し、縦軸は原子濃度[at%]を示す。図2中、実線はAl原子濃度、破線はO原子濃度、点線はFe原子濃度を示す。
【0017】
図2に示されるように、Al原子濃度は基材の表面から1000nmまでの深さにおいて略均一であり、30at%~40at%程度であることが分かる。一方、O原子濃度は基材の表面から1000nmの深さにかけて65at%程度から10at%程度まで低下していることが分かる。また、Fe原子濃度は基材の表面から1000nmの深さにかけて0at%から35at%程度まで上昇していることが分かる。これらの結果から、SUS316Lに対し、実施形態の処理方法における成膜工程S2及び第1熱処理工程S3をこの順に行うことにより、SUS316L中にアルミニウムが拡散浸透することが示された。
【0018】
図3は、SUS316Lに対して実施形態の処理方法における成膜工程S2、第1熱処理工程S3及び第2熱処理工程S4を行った後、XPSによりアルミニウム(Al)原子濃度、酸素(O)原子濃度及び鉄(Fe)原子濃度を測定した結果を示す図である。図3中、横軸は基材の表面からの深さ[nm]を示し、縦軸は原子濃度[at%]を示す。図3中、実線はAl原子濃度、破線はO原子濃度、点線はFe原子濃度を示す。
【0019】
図3に示されるように、Al原子濃度は基材の表面から400nmまでの深さにおいて略均一であり、35at%程度であることが分かる。また、O原子濃度は基材の表面から400nmの深さにおいて略均一であり、65at%程度であることが分かる。また、Fe原子濃度は基材の表面から400nmまでの深さにおいて0at%程度であることが分かる。これらの結果から、基材の表面から400nmまでの深さにおいてアルミニウム酸化層が形成されていることが示された。
【0020】
図4は、NCF600に対して実施形態の処理方法における成膜工程S2、第1熱処理工程S3及び第2熱処理工程S4を行った後、XPSによりアルミニウム(Al)原子濃度、酸素(O)原子濃度及びニッケル(Ni)原子濃度を測定した結果を示す図である。図4中、横軸は基材の表面からの深さ[nm]を示し、縦軸は原子濃度[at%]を示す。図4中、実線はAl原子濃度、破線はO原子濃度、点線はNi原子濃度を示す。
【0021】
図4に示されるように、Al原子濃度は基材の表面から200nmまでの深さにおいて略均一であり、35at%程度であることが分かる。また、O原子濃度は基材の表面から200nmの深さにおいて略均一であり、65at%程度であることが分かる。また、Ni原子濃度は基材の表面から200nmまでの深さにおいて0at%程度であることが分かる。これらの結果から、基材の表面から200nmまでの深さにおいてアルミニウム酸化層が形成されていることが示された。
【0022】
(実施例2)
実施例2として、実施形態の処理方法を用いて基材を処理することにより、基材の表面に表面粗さが小さいアルミニウム酸化層が形成されることを確認するための実験を行った。実施例2では、基材を実施形態の処理方法により処理した後、レーザ顕微鏡により基材の表面粗さを測定した。実施例2では、基材としてSUS316L及びNCF600を使用した。実施例2では、成膜工程S2においてスパッタリングにより基材の表面に1.6μmのアルミニウムを成膜した。実施例2では、第1熱処理工程S3において基材を大気雰囲気の下、560℃で3時間熱処理を行った。実施例2では、第2熱処理工程S4において基材を大気雰囲気の下、850℃で1時間熱処理を行った。また、比較のために、実施形態の処理方法に代えてカロライジング処理により基材の表面にアルミニウム酸化層を形成した後、レーザ顕微鏡により基材の表面粗さを測定した。
【0023】
図5は、基材としてSUS316Lを使用した場合における基材の表面粗さの測定結果を示す図である。図5中、棒グラフは処理前の基材表面の測定値に対する処理後の基材表面の測定値の変化率を示す。図5中、「第1熱処理後」と記載された棒グラフは基材に対して実施形態の処理方法における成膜工程S2及び第1熱処理工程S3を行った場合の結果を示す。また、「第2熱処理後」と記載された棒グラフは基材に対して実施形態の処理方法における成膜工程S2、第1熱処理工程S3及び第2熱処理工程S4を行った場合の結果を示す。また、「カロライジング処理後」と記載された棒グラフは基材に対してカロライジング処理を行った場合の結果を示す。また、図5中、「Ra」及び「Ry」はそれぞれJISB0601:2013で定義される算術平均粗さ及び最大高さ粗さであり、「S」は基材表面の表面積である。
【0024】
図5に示されるように、「第2熱処理後」では「カロライジング処理後」に比べて最大高さ粗さRyが小さくなっていることが分かる。この結果から、基材としてSUS316Lを使用した場合、実施形態の処理方法を用いて基材を処理することにより、カロライジング処理を用いて基材を処理するよりも、基材の表面に表面粗さが小さいアルミニウム酸化層を形成できることが示された。
【0025】
図6は、基材としてNCF600を使用した場合における基材の表面粗さの測定結果を示す図である。図6中、棒グラフは処理前の基材表面の測定値に対する処理後の基材表面の測定値の変化率を示す。図6中、「第1熱処理後」と記載された棒グラフは基材に対して実施形態の処理方法における成膜工程S2及び第1熱処理工程S3を行った場合の結果を示す。また、「第2熱処理後」と記載された棒グラフは基材に対して実施形態の処理方法における成膜工程S2、第1熱処理工程S3及び第2熱処理工程S4を行った場合の結果を示す。また、「カロライジング処理後」と記載された棒グラフは基材に対してカロライジング処理を行った場合の結果を示す。また、図6中、「Ra」及び「Ry」はそれぞれJISB0601:2013で定義される算術平均粗さ及び最大高さ粗さであり、「S」は基材表面の表面積である。
【0026】
図6に示されるように、「第2熱処理後」では「カロライジング処理後」に比べて算術平均粗さRa及び最大高さ粗さRyが小さくなっていることが分かる。この結果から、基材としてNCF600を使用した場合においても、実施形態の処理方法を用いて基材を処理することにより、カロライジング処理を用いて基材を処理するよりも、基材の表面に表面粗さが小さいアルミニウム酸化層を形成できることが示された。
【0027】
(実施例3)
実施例3として、実施形態の処理方法を用いて基材を処理することにより、基材の表面に腐食性ガスに対する耐食性が高いアルミニウム酸化層が形成されることを確認するための実験を行った。実施例3では、実施形態の処理方法により基材の表面にアルミニウム酸化層を形成した後、基材を腐食性ガスであるClFガスに曝露した。また、エネルギー分散型X線分析(EDX:Energy dispersive X-ray spectroscopy)により、ClFガスに曝露する前後の基材表面の元素分析を行った。実施例3では、基材としてSUS316L及びNCF600を使用した。実施例3では、成膜工程S2においてスパッタリングにより基材の表面に1.6μmのアルミニウムを成膜した。実施例3では、第1熱処理工程S3において基材を大気雰囲気の下、560℃で3時間熱処理を行った。実施例3では、第2熱処理工程S4において基材を大気雰囲気の下、850℃で1時間熱処理を行った。実施例3では、基材をClFガスに曝露する際、チャンバ内に基材を収容し、チャンバ内の温度を400℃、圧力を3kPaに調整し、チャンバ内にClFガスを100sccmの流量で供給した状態で、5時間保持した。また、比較のために、実施形態の処理方法に代えてカロライジング処理により基材の表面にアルミニウム酸化層を形成した後、基材をClFガスに曝露し、EDXにより、ClFガスに曝露する前後の基材表面の元素分析を行った。
【0028】
図7及び図8は、基材としてSUS316Lを使用した場合における元素分析の結果を示す図である。図7は実施形態の処理方法により基材の表面にアルミニウム酸化層を形成した場合の結果を示し、図8はカロライジング処理により基材の表面にアルミニウム酸化層を形成した場合の結果を示す。図7及び図8中、棒グラフは基材の組成比[重量(wt)%]を示す。図7及び図8中、「曝露前」と記載された棒グラフは基材をClFガスに曝露する前の組成比を示し、「曝露後」と記載された棒グラフは基材をClFガスに曝露した後の組成比を示す。
【0029】
図7に示されるように、実施形態の処理方法により基材の表面にアルミニウム酸化層を形成した場合、曝露前に0wt%であったF濃度が曝露後に6.58wt%に増加していることが分かる。また、図8に示されるように、カロライジング処理により基材の表面にアルミニウム酸化層を形成した場合、曝露前に0wt%であったF濃度が曝露後に10.03wt%に増加していることが分かる。すなわち、実施形態の処理方法により基材の表面にアルミニウム酸化層を形成した場合、カロライジング処理により基材の表面にアルミニウム酸化層を形成した場合よりも、ClFガスの曝露後におけるF濃度が低いことが分かる。この結果から、基材としてSUS316Lを使用した場合、実施形態の処理方法を用いることにより、カロライジング処理を用いるよりも、基材の表面にClFガスに対する耐食性が高いアルミニウム酸化層を形成できることが示された。
【0030】
図9及び図10は、基材としてNCF600を使用した場合における元素分析の結果を示す図である。図9は実施形態の処理方法により基材の表面にアルミニウム酸化層を形成した場合の結果を示し、図10はカロライジング処理により基材の表面にアルミニウム酸化層を形成した場合の結果を示す。図9及び図10中、棒グラフは基材の組成比[重量(wt)%]を示す。図9及び図10中、「曝露前」と記載された棒グラフは基材をClFガスに曝露する前の組成比を示し、「曝露後」と記載された棒グラフは基材をClFガスに曝露した後の組成比を示す。
【0031】
図9に示されるように、実施形態の処理方法により基材の表面にアルミニウム酸化層を形成した場合、曝露前に0wt%であったF濃度が曝露後に2.64wt%に増加していることが分かる。また、図10に示されるように、カロライジング処理により基材の表面にアルミニウム酸化層を形成した場合、曝露前に0wt%であったF濃度が曝露後に3.68wt%に増加していることが分かる。すなわち、実施形態の処理方法により基材の表面にアルミニウム酸化層を形成した場合、カロライジング処理により基材の表面にアルミニウム酸化層を形成した場合よりも、ClFガスの曝露後におけるF濃度が低いことが分かる。この結果から、基材としてNCF600を使用した場合においても、実施形態の処理方法を用いることにより、カロライジング処理を用いるよりも、基材の表面にClFガスに対する耐食性が高いアルミニウム酸化層を形成できることが示された。
【0032】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0033】
なお、上記の実施形態では、第1熱処理工程S3及び第2熱処理工程S4が酸素を含む雰囲気で行われる場合を説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、第1熱処理工程S3及び第2熱処理工程S4の少なくとも一方が還元雰囲気で行われてもよい。還元雰囲気としては、水素ガス等の還元ガスと、アルゴンガス等の不活性ガスとを含む雰囲気が挙げられる。
【符号の説明】
【0034】
S1 基材準備工程
S2 成膜工程
S3 第1熱処理工程
S4 第2熱処理工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10