(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057700
(43)【公開日】2023-04-24
(54)【発明の名称】プロセスチーズ類およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23C 19/082 20060101AFI20230417BHJP
【FI】
A23C19/082
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021167321
(22)【出願日】2021-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】711002926
【氏名又は名称】雪印メグミルク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】余 卓尓
(72)【発明者】
【氏名】金子 渉
(72)【発明者】
【氏名】西郷 直記
(72)【発明者】
【氏名】花澤 智仁
【テーマコード(参考)】
4B001
【Fターム(参考)】
4B001AC01
4B001AC46
4B001BC01
4B001BC07
4B001BC08
4B001BC13
4B001BC99
4B001DC01
4B001EC99
(57)【要約】 (修正有)
【課題】粒子感があり、脆く、断面に凹凸がある組織を有するプロセスチーズ類、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】原料チーズ、溶融塩及び/又は副原料を含み、以下の(A)、(B)又は(C)のいずれか1つの条件を満たし、
(A)原料チーズは、脂肪含量15質量%以下、タンパク質含量30質量%以上のスキムチーズを全原料チーズに対し70質量%以上含む、
(B)副原料として、加工澱粉を含む、
(C)原料チーズとして脂肪含量15質量%以下、タンパク質含量30質量%以上のスキムチーズ及び副原料として加工澱粉を含む、
プロセスチーズ類であって、プロセスチーズ類の全質量基準で、タンパク質含量が10%以上、水分含量が70%以下、pHが5.00から6.35、粒子感があり、脆く、断面に凹凸を有するプロセスチーズ類を、凍結解凍処理、あるいは冷蔵のみにより得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料チーズ、溶融塩及び/又は副原料を含むプロセスチーズ類であって、
以下の(A)、(B)又は(C)のいずれか1つの条件を満たし、
(A)前記原料チーズは、脂肪含量15質量%以下、タンパク質含量30質量%以上のスキムチーズを全原料チーズに対し70質量%以上含む、
(B)前記副原料は、加工澱粉を含む、
(C)前記プロセスチーズ類は、前記原料チーズとして脂肪含量15質量%以下、タンパク質含量30質量%以上のスキムチーズ及び副原料として加工澱粉を含む、
プロセスチーズ類の全質量基準で、タンパク質含量が10%以上、水分含量が70%以下、pHが5.00から6.35、粒子感があり、脆く、断面に凹凸を有するプロセスチーズ類。
【請求項2】
幅35mm×厚み15mm×高さ10mmに成型したプロセスチーズ類の試験体を、25mm間隔を空けて設置した2つの支持体(幅90mm、厚み5mm、高さ32mm)上に、端部に合わせて固定せずに水平に乗せ、前記試験体の上面から冶具(幅90mm、厚み5mm、冶具先端は直径5mmの半円形)を前記試験体の中央部に接触させてから、0.33mm/sの速度で降下させた際に、前記治具が接触してから前記試験体が折れるまでの前記治具の降下距離が4.2mm以内である、請求項1記載のプロセスチーズ類。
【請求項3】
折れた前記試験体の断面を、形状測定レーザー顕微鏡(株式会社キーエンス、VK-9710)を用いて測定した、算術平均粗さRa(観察視野内の全データを平均した高さの平面を基準面とし、各点の高さと基準面の高さの差の絶対値を平均したもの)が50μm以上である、請求項1又は2記載のプロセスチーズ類。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載のプロセスチーズ類の製造方法であって、
原料チーズ、溶融塩及び/又は副原料を混合して、以下の(A)、(B)又は(C)のいずれか1つの条件を満たす原料を得る混合工程と、
(A)前記原料チーズは、脂肪含量15質量%以下、タンパク質含量30質量%以上のスキムチーズを全原料チーズに対し70質量%以上含む、
(B)副原料として、加工澱粉を含む、
(C)前記プロセスチーズ類は、前記原料チーズとして脂肪含量15質量%以下、タンパク質含量30質量%以上のスキムチーズ及び副原料として加工澱粉を含む、
混合した前記原料を加熱溶融する加熱溶融工程と、
加熱溶融した前記原料を70℃以上の高温に保持する高温保持工程と、
高温保持した前記原料を、10℃以下まで冷却する工程、もしくは-10℃以下まで凍結する凍結工程と、
凍結した前記原料を解凍する解凍工程と、
を含む、プロセスチーズ類の製造方法。
【請求項5】
前記高温保持工程における保持時間及び保持方法が、85℃における粘度が100dPa・s以上になるまで静置する方法、及び/又は撹拌する方法、あるいは85℃、10分以上撹拌する方法である、請求項4記載のプロセスチーズ類の製造方法。
【請求項6】
-10℃以下まで凍結する前記凍結工程凍結工程において、高温保持した原料を-2.0℃から-7.9℃に到達するまでの凍結速度を-40℃/h以下とする、請求項4又は5記載のプロセスチーズ類の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な食感を有するプロセスチーズ類、およびその製造方法に関する。
なお、本発明において「プロセスチーズ類」とは、プロセスチーズ、チーズフードなど、乳等省令(昭和6年12月27日厚生省令第52号)、公正競争規約の成分規格において規定されたものの他、乳等を主要原料とする食品など(以下、「乳主原」という。)の当該技術分野における通常の意味を有する範囲のものを全て包含する。
【背景技術】
【0002】
プロセスチーズ類は、一般的に、様々なナチュラルチーズを原料とし、それらが持つ独特の風味や物理化学的な特徴を活かして、溶融塩と呼ばれる乳化剤を用いて加熱溶融することで得られる。また、食感、物性等を改良するため、安定剤や乳化剤等を添加し、それらの種類、使用量、配合、配合比および乳化条件等の製造条件によって、最終製品に様々な特徴を与えることができる。
【0003】
これまでにも、プロセスチーズ類の配合や乳化条件等の製造方法による風味や物性制御等に関する様々な検討がなされ、風味発現の制御や、熱によりとろけるような特徴や、糸を引くといった特徴、熱に対して溶けにくい等の機能性を付与するような検討により、多くの技術が確立されてきた。
【0004】
近年、食の欧米化に伴い、日本国内のチーズ消費量は増加している。特に、ナチュラルチーズの消費量は増加傾向にあり、それらのチーズ特有の食感や風味が好まれている。特にチェダーチーズやゴーダチーズ等の硬質・半硬質系のチーズは、熟成されることで、砕いたチーズ断面に凹凸のある組織を有し、脆くてボロボロと崩れるような食感は、芳醇な風味とともに好まれている。
【0005】
プロセスチーズ類は、ナチュラルチーズと比べて、配合や製造条件等により前述に記載した風味や物性の制御が可能な点や加熱殺菌が可能であることから保存性が高い点がメリットとして挙げられる。したがって、このようなプロセスチーズ類のメリットを有しながら、ナチュラルチーズ特有の食感を同時に付与することが求められる。
【0006】
プロセスチーズ類の食感改良に関しては、原料・副原料の調整や、加工工程の変更等、これまでに多数の試みがなされている。原料・副原料について、例えば、タピオカ加工澱粉およびα化澱粉を配合することで、加熱時および冷却後、糸引き性を有する歯切れの良いホクホクした食感を有するプロセスチーズ類の製造方法(特許文献1)、所定の柔軟性を備えているナチュラルチーズ又はプロセスチーズを原料チーズとして使用するとともに、当該ナチュラルチーズ又はプロセスチーズの全原料チーズに対する使用割合を特定し、最終製品の水分及び、pHを特定の範囲に調整することで、粘弾性が殆ど無く、容易に砕け粒子状となる物性を有した、口溶けの良い軽い食感を有するプロセスチーズ類の製造方法(特許文献2)、加工工程について、例えば:ハード系およびセミハード系などのナチュラルチーズを粉砕した後に加圧再成形する工程を経ることで、口中で砕けやすく、かつ口中でべたつかない食感の再成形チーズ類の製造方法(特許文献3)等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014-113127号公報
【特許文献2】国際公開2011/115185号公報
【特許文献3】特開2016-144455公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1~3には、砕いたチーズ断面に凹凸のある組織を有し、脆くてボロボロと崩れるようなナチュラルチーズ特有の食感を、プロセスチーズ類に付与する技術については開示されていない。
そこで、本発明の課題は、特定の原料チーズや副原料を使用し、粒子感があり脆く、断面に凹凸がある組織を有するナチュラルチーズ特有の食感が付与されたプロセスチーズ類を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するものであり、本発明には以下の構成が含まれる。
(1)原料チーズ、溶融塩及び/又は副原料を含むプロセスチーズ類であって、
以下の(A)、(B)又は(C)のいずれか1つの条件を満たし、
(A)前記原料チーズは、脂肪含量15質量%以下、タンパク質含量30質量%以上のスキムチーズを全原料チーズに対し70質量%以上含む、
(B)前記副原料は、加工澱粉を含む、
(C)前記プロセスチーズ類は、前記原料チーズとして脂肪含量15質量%以下、タンパク質含量30質量%以上のスキムチーズ及び前記副原料として加工澱粉を含む、
プロセスチーズ類の全質量基準で、タンパク質含量が10%以上、水分含量が70%以下、pHが5.00から6.35、粒子感があり、脆く、断面に凹凸を有するプロセスチーズ類。
(2) 幅35mm×厚み15mm×高さ10mmに成型した前記プロセスチーズ類の試験体を、25mm間隔を空けて設置した2つの支持体(幅90mm、厚み5mm、高さ32mm)上に、端部に合わせて固定せずに水平に乗せ、前記試験体の上面から冶具(幅90mm、厚み5mm、冶具先端は直径5mmの半円形)を前記試験体の中央部に接触させてから、0.33mm/sの速度で降下させた際に、前記治具が接触してから前記試験体が折れるまでの前記治具の降下距離が4.2mm以内である、前記(1)記載のプロセスチーズ類。
(3) 折れた前記試験体の断面を、形状測定レーザー顕微鏡(株式会社キーエンス、VK-9710)を用いて測定した、算術平均粗さRa(観察視野内の全データを平均した高さの平面を基準面とし、各点の高さと基準面の高さの差の絶対値を平均したもの)が50μm以上である、前記(1)又は(2)記載のプロセスチーズ類。
(4) 前記(1)~(3)のいずれか1つに記載のプロセスチーズ類の製造方法であって、
原料チーズ、溶融塩及び/又は副原料を混合して、以下の(1)、(2)又は(3)のいずれか1つの条件を満たす原料を得る混合工程と、
(1)前記原料チーズは、脂肪含量15質量%以下、タンパク質含量30質量%以上のスキムチーズを全原料チーズに対し70質量%以上含む、
(2)副原料として、加工澱粉を含む、
(3)前記プロセスチーズ類は、前記原料チーズとして脂肪含量15質量%以下、タンパク質含量30質量%以上のスキムチーズ及び副原料として加工澱粉を含む、
混合した前記原料を加熱溶融する加熱溶融工程と、
加熱溶融した前記原料を、70℃以上の高温に保持する高温保持工程と、
高温保持した前記原料を、10℃以下まで冷却する工程、もしくは-10℃以下まで凍結する凍結工程と、
凍結した前記原料を解凍する解凍工程と、
を含む、プロセスチーズ類の製造方法。
(5) 前記高温保持工程における保持時間及び保持方法が、85℃における粘度が100dPa・s以上になるまで静置する方法、及び/又は撹拌する方法、あるいは85℃、10分以上撹拌する方法である前記(4)記載のプロセスチーズ類の製造方法。
(6) -10℃以下まで凍結する前記凍結工程において、高温保持した原料を-2.0℃から-7.9℃に到達するまでの凍結速度を-40℃/h以下とする、前記(4)又は(5)記載のプロセスチーズ類の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、特定の原料チーズ及び/又は特定の副原料を使用することで、粒子感があり脆く、断面に凹凸がある組織を有するナチュラルチーズ特有の食感が付与されたプロセスチーズ類を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明のプロセスチーズ類の曲げ試験方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明者等は、特定の原料チーズ及び/又は特定の副原料を使用し、粒子感があり脆く、断面に凹凸がある組織を有するナチュラルチーズ特有の食感(以下、「該食感」と称する)が付与されたプロセスチーズ類を提供するという課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の原料チーズ及び/又は特定の副原料を使用し、加熱溶融して調製したプロセスチーズ類を、特定の条件下で、加熱保持した後に、冷却のみ、もしくは凍結・解凍処理することにより従来のプロセスチーズ類とは異なる該食感を付与することができることを見出した。本発明は上記知見に基づくものである。
以下、本発明のプロセスチーズ類およびその製造方法について、具体的に説明する。
【0013】
[プロセスチーズ類]
本発明のプロセスチーズ類は、原料チーズと、溶融塩と、必要に応じ副原料と、を含み、以下の物性パラメータを満足する。なお、以下の説明において%はプロセスチーズ類の全質量基準である。
・タンパク質含量
プロセスチーズ類は、タンパク質含量は10質量%以上であり、16質量%以上であることが好ましい。タンパク質含量の上限の制限は特にないが35質量%程度である。
・水分含量
またプロセスチーズ類は、水分含量は70質量%以下であり、60質量%以下が好ましい。水分含量の下限の制限は特にないが43%程度である。
【0014】
・pH
プロセスチーズ類のpHは、5.00以上6.35以下であり、5.20以上6.00以下がより好ましい。
プロセスチーズ類のpHは、プロセスチーズ類12gに水40gを加え、ホモブレンダーで3分間均質化し、この均質溶液のpHをpHメーターで測定することにより確認することができる。
【0015】
本発明のプロセスチーズ類は、粒子感、脆さ、断面の凹凸というナチュラルチーズ特有の該食感を付与されている。該食感の点から、プロセスチーズ類は、加えて、以下の物性パラメータの要件を満足することが好ましい。
即ち、幅35mm×厚み15mm×高さ10mmに成型したチーズ類の試験体を、25mm間隔を空けて設置した2つの支持体(幅90mm、厚み5mm、高さ32mm)上に、端部に合わせて固定せずに水平に乗せ、前記試験体の上面から冶具(幅90mm、厚み5mm、冶具先端は直径5mmの半円形)を前記試験体の中央部に接触させてから、0.33mm/sの速度で降下させた際に、前記治具が接触してから前記試験体が折れるまでの前記治具の降下距離が4.2mm以内であり、特に3.2mm以内であることが好ましい。
【0016】
また前述の折れた試験体の断面を、形状測定レーザー顕微鏡(株式会社キーエンス、VK-9710)を用いて測定した算術平均粗さRa(観察視野内の全データを平均した高さの平面を基準面とし、各点の高さと基準面の高さの差の絶対値を平均したもの)が50μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましい。Raの上限は特にない。
【0017】
[プロセスチーズ類の原料]
本発明のプロセスチーズ類は、特定の原料チーズ及び特定の副原料の少なくとも1つを必須の成分とする。
・原料チーズ
本発明において特定の副原料を使用しない場合に、脂肪含量15質量%以下、タンパク質含量30質量%以上のスキムチーズを特定の原料チーズとして使用するとともに、当該スキムチーズの全原料チーズに対する使用割合は70質量%以上になることが必須となる(前記条件(A))。
特定の副原料を使用する場合に、原料チーズは特に限定されない。例えば、原料チーズとして、特定の原料チーズのみを使用してもよいし、特定の原料チーズと、特定の原料チーズ以外の原料チーズを使用してもよいし、特定の原料チーズ以外の原料チーズのみを使用してもよい。特定の原料チーズ以外の原料チーズとしては、通常、プロセスチーズ類の原料として用いられるゴーダチーズやチェダーチーズなどの半硬質チーズや、パルメザンなどの硬質チーズや等のナチュラルチーズを例示することができる。これらの原料チーズは1種類もしくは2種類以上を混合して使用することも可能であるが、硬質系ナチュラルチーズ、及び/又は半硬質系ナチュラルチーズの少なくとも1つを原料チーズとして含まれるようにすることが好ましい。
原料チーズ(特定の原料チーズ+特定の原料チーズ以外の原料チーズ)の配合量は、最終的に得られるプロセスチーズ類に必要な風味に合わせて、決定することができるが、これらの原料チーズを最終製品であるチーズ類に対して、40質量%以上含有させ、好ましくは70質量%~90質量%含有させることができる。
【0018】
・副原料
本発明では、特定の原料チーズを使用しない場合には、溶融塩を除く特定の副原料として加工澱粉を使用することが必須となる(前記条件(B))。加工澱粉としては、酸化澱粉、架橋澱粉、酵素処理澱粉等が挙げられるが、酸化澱粉の添加量が全加工澱粉に対し80質量%以上になることが好ましい。酸化澱粉は、未加工澱粉を酸化剤で処理することにより得られる澱粉である。酸化処理に使用できる酸化剤としては、例えば、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、さらし粉、過酸化水素、過マンガン酸カリウム、過酢酸、硝酸が挙げられる。
これら特定の副原料の添加量は、原料チーズ全量に対し、好ましくは1.0質量%~20.0質量%である。
特定の原料チーズを使用する場合には、これら特定の副原料の使用なしに該食感を付与することができるが、後述するように、特定の原料チーズと特定の副原料を併用してもよく、その他の目的や更なる食感の向上を目的として、特定の副原料、溶融塩以外の副原料を添加してもよい。この場合に使用できる副原料は、特に限定されず、プロセスチーズ類の製造に使用するものであればいずれの原料を配合することができる。例えば、プロセスチーズ類に使用できる溶融塩以外の乳化剤、安定剤(増粘多糖類、セルロース等、ただし加工澱粉は除く)、香料、pH調整剤等の食品添加物のほか、タンパク質源としての乳素材、澱粉、ゼラチン、寒天等の食品、脂肪調整のためのバター、その他の動物油脂、植物油脂、風味付け等に使用するシーズニング等を例示することができる。これらの副原料は、本発明品の食感形成、構造形成に積極的には寄与しておらず、食感的に特に問題の無い範囲において使用することが可能である。これらの特定の副原料、溶融塩以外の副原料の添加量は、原料チーズ全量に対し、好ましくは1.0質量%~20.0質量%である。
【0019】
・特定の原料チーズ及び特定の副原料の併用
本発明では、特定の原料チーズ及び特定の副原料を併用することもできる(前記条件(C))。この場合は、脂肪含量15質量%以下、タンパク質含量30質量%以上のスキムチーズを原料チーズとして使用する。当該スキムチーズの全原料チーズに対する使用割合の下限は特にないが、30質量%以上になることが好ましい。加えて、特定の副原料として加工澱粉を使用する。加工澱粉は、酸化澱粉、架橋澱粉、酵素処理澱粉等挙げられるが、酸化澱粉の添加量が全加工澱粉に対し80質量%以上になるのが好ましい。
また特定の副原料の添加量は、原料チーズ全量に対し、好ましくは1.0質量%~20.0質量%である。
特定の原料チーズと特定の副原料の質量比は、30:1~10:1であるとよい。
特定の原料チーズ以外の原料チーズは特に限定されないが、通常、プロセスチーズ類の原料として用いられるゴーダチーズやチェダーチーズなどの半硬質チーズや、パルメザンなどの硬質チーズ等のナチュラルチーズを例示することができる。これらを1種類もしくは2種類以上を混合して使用することも可能であるが、硬質系ナチュラルチーズ、及び/又は半硬質系ナチュラルチーズの少なくとも1つを原料チーズとして含まれるようにことが好ましい。原料チーズの配合量は、最終的に得られるプロセスチーズ類に必要な風味に合わせて、決定することができるが、これらの原料チーズを最終製品であるチーズ類に対して、40質量%以上含有させ、好ましくは70質量%~90質量%含有させることができる。その他の目的や更なる食感の向上を目的として、特定の副原料以外の副原料を添加してもよい。この場合に使用できる副原料は、特に限定されず、プロセスチーズ類の製造に使用するものであればいずれの原料を配合することができる。例えば、プロセスチーズ類に使用できる溶融塩以外の乳化剤、安定剤(増粘多糖類、加工澱粉、セルロース等)、香料、pH調整剤等の食品添加物のほか、タンパク質源としての乳素材、澱粉、ゼラチン、寒天等の食品、脂肪調整のためのバター、その他の動物油脂、植物油脂、風味付け等に使用するシーズニング等を例示することができる。これらの副原料は、本発明品の食感形成、構造形成に積極的には寄与しておらず、食感的に特に問題の無い範囲において使用することが可能である。これら特定の副原料、溶融塩以外の副原料の添加量は、原料チーズ全量に対し、好ましくは1.0質量%~20.0質量%である。
【0020】
・溶融塩
本発明において使用する溶融塩としては、リン酸塩を用いることが好ましく、例えば、水溶性のポリリン酸塩、ジリン酸塩、モノリン酸塩等のリン酸塩などを例示することができる。これらを1種類もしくは2種類以上併用することも可能である。これら溶融塩の添加量は、原料チーズ全量に対し、好ましくは1.0%質量~3.0質量%である。
【0021】
本発明においては、原料にプレクックチーズを添加することも可能である。プレクックチーズとは、プロセスチーズ類の製造過程で発生した仕掛品であり、プロセスチーズ類と同成分のものである。
【0022】
[プロセスチーズ類の製造方法]
本発明のプロセスチーズ類は、
原料チーズ、溶融塩及び/又は副原料を混合して、以下の(A)、(B)又は(C)のいずれか1つの条件を満たす原料を得る混合工程と、
(A)前記原料チーズは、脂肪含量15質量%以下、タンパク質含量30質量%以上のスキムチーズを全原料チーズに対し70質量%以上含む、
(B)副原料として、加工澱粉を含む、
(C)前記プロセスチーズ類は、前記原料チーズとして脂肪含量15質量%以下、タンパク質含量30質量%以上のスキムチーズ及び副原料として加工澱粉を含む、
混合した前記原料を加熱溶融する加熱溶融工程と、
加熱溶融した前記原料を、70℃以上の高温に保持する高温保持工程と、
高温保持した前記原料を、10℃以下まで冷却する工程、もしくは-10℃以下まで凍結する凍結工程と、
凍結した前記原料を解凍する解凍工程と、
を含む方法により、好ましく製造することができる。
【0023】
・混合工程
本工程においては、原料チーズ、溶融塩、及び/又は副原料を含む原料と、混合する。原料としては、原料チーズ、溶融塩及び/又は副原料を前記(A)、(B)又は(C)の要件を満たす混合し、前記水分含量を満たすように原料を調製する。混合は、調製した原料を、通常のプロセスチーズを乳化する際に使用する乳化装置を用い、混合乳化する。乳化装置としては、例えば、ケトル型乳化機やステファン型乳化機のようなバッチ式乳化機、サーモシリンダーのような連続式乳化機などを例示することができる。
【0024】
・加熱溶融工程
本工程では、前記工程で混合した原料を加熱溶融する。加熱溶融は、上記の乳化機を用いて、一般的なプロセスチーズ類の加熱溶融工程を経ればよく、例えば、ステファン型乳化機を用いて、500rpm~1500rpmの攪拌を行いながら、70℃以上、好ましくは80℃以上まで加熱する方法が挙げられる。
【0025】
・高温保持工程
本工程では、前記工程で加熱溶融した原料を70℃以上、好ましくは80℃以上の高温に保持する。本工程における保持時間及び保持方法としては、85℃での粘度が100dPa・s以上になるまで静置する方法、及び/又は攪拌する方法、あるいは85℃、10分以上撹拌する方法を好ましく挙げることができる。例えば、ステファン型乳化機を用いて、500rpm~1500rpmの攪拌を行いながら、70℃以上の温度を保持する方法が挙げられる。
【0026】
・冷却工程
本工程では、前記工程で高温保持した原料を3~15℃の範囲まで冷却すればよい。例えば、高温保持された原料を、10℃に設定した恒温器内で所定の時間保存する方法が挙げられる。
【0027】
・凍結工程
本工程では、前記工程で高温保持した原料を-10℃以下まで冷却して凍結する。原料の凍結は、原料の温度が-2.0℃から-7.9℃に到達するまでの凍結速度を-40℃/h以下とすることが好ましい。例えば、上記の高温保持工程後の原料を、容器やフィルム等に充填した後、原料の品温を、上記の凍結速度で-10℃以下まで冷却すればよい。また、凍結工程前に、上記の高温保持した原料を前記冷却工程で一度冷蔵保存することも可能である。この場合、冷蔵保存は、3~15℃の範囲とすることが好ましい。
【0028】
・解凍工程
本工程では、前記工程で凍結した原料を0℃以上まで昇温して解凍すればよい。例えば、凍結された原料を、10℃に設定した恒温器内で所定の時間保存する方法が挙げられる。
【0029】
なお、本発明のプロセスチーズ類は特徴的な食感を有しているため、その食感を活かす食シーン、例えば、ポーションタイプやカットして食するブロックタイプ等の形状とすると、本発明の効果がより発現され、望ましい形態と言える。しかし、特にこれらの形状に限定されるものではなく、スライスタイプ、ダイスタイプ、シュレッドタイプ等の他のいずれの形状、形態でも問題はない。
【実施例0030】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。特に明記しない限り、%は質量基準である。
【0031】
[実施例1]
チェダーチーズ1.5kgとゴーダチーズ1.1kgを粉砕し、原料ナチュラルチーズとして用いた。これに溶融塩としてポリリン酸Na52.0g、pH調整剤として重曹19.5g、特定の副原料としてコーン酸化澱粉(スタビローズBM、松谷化学工業株式会社)110.0gを混合した後、最終的なタンパク質含量が16%となるように水を添加し、高せん断タイプのステファン型式乳化釜を用い、1500rpmで85℃まで加熱溶融した。85℃に到達後、そのままの回転数で粘度が100dPa・S以上になるまで撹拌保持した。得られたプロセスチーズ類は、フィルムに400gずつ充填して、厚さが20mmになるように成型した。その後、冷蔵庫(10℃)で8時間以上冷却した後、-12℃の冷凍庫内で8時間以上保存し凍結した。凍結したプロセスチーズ類は、冷蔵庫(10℃)で一晩かけて解凍し、実施例品1を得た。
【0032】
[実施例2]
特定の原料チーズである脂肪含量15%以下、タンパク質含量30%以上のスキムチーズ3.0kgを粉砕し、原料ナチュラルチーズとして用いた。これに溶融塩としてポリリン酸Na90.0g、pH調整剤として重曹22.3gを混合した後、最終的なタンパク質含量が28%となるように水を添加し、高せん断タイプのステファン型式乳化釜を用い、1500rpmで85℃まで加熱溶融した。85℃に到達後、そのままの回転数で粘度が100dPa・S以上になるまで撹拌保持した。得られたプロセスチーズ類は、フィルムに400gずつ充填して、厚さが20mmになるように成型した。その後、冷蔵庫(10℃)で8時間以上冷却した後、実施例品2を得た。
【0033】
[実施例3]
実施例品2と同様の原材料でプロセスチーズ類を調製し、冷蔵庫(10℃)で8時間以上冷却した後、-12℃の冷凍庫内で8時間以上保存し凍結した。凍結したプロセスチーズ類は、冷蔵庫(10℃)で一晩かけて解凍し、実施例品3を得た。
【0034】
[実施例4]
実施例2において、特定の副原料としてコーン酸化澱粉(スタビローズBM、松谷化学工業株式会社)118gを追加し、他の原材料と混合して用いた以外は、実施例2と同様の製造方法を経た実施例品4を得た。
【0035】
[実施例5]
実施例品4と同様の原材料でプロセスチーズ類を調製し、冷蔵庫(10℃)で8時間以上冷却した後、-12℃の冷凍庫内で8時間以上保存し凍結した。凍結したプロセスチーズ類は、冷蔵庫(10℃)で一晩かけて解凍し、実施例品5を得た。
【0036】
[実施例6]
特定の原料チーズである脂肪含量15%以下、タンパク質含量30%以上のスキムチーズ1.6kgを粉砕し、原料ナチュラルチーズとして用いた。これに溶融塩としてポリリン酸Na48.0g、pH調整剤として重曹22.0g、特定の副原料としてコーン酸化澱粉(スタビローズBM、松谷化学工業株式会社)320.0gを混合した後、最終的なタンパク質含量が11%となるように水を添加し、高せん断タイプのステファン型式乳化釜を用い、1500rpmで85℃まで加熱溶融した。85℃に到達後、そのままの回転数で10分程度撹拌保持した。得られたプロセスチーズ類は、フィルムに400gずつ充填して、厚さが20mmになるように成型した。その後、冷蔵庫(10℃)で8時間以上冷却した後、実施例品6を得た。
【0037】
[実施例7]
実施例品6と同様の原材料でプロセスチーズ類を調製し、冷蔵庫(10℃)で8時間以上冷却した後、-12℃の冷凍庫内で8時間以上保存し凍結した。凍結したプロセスチーズ類は、冷蔵庫(10℃)で一晩かけて解凍し、実施例品7を得た。
【0038】
[比較例1]
チェダーチーズ1.5kgとゴーダチーズ1.1kgを粉砕し、原料ナチュラルチーズとして用いた。これに溶融塩としてポリリン酸Na52.0g、pH調整剤として重曹16.7g、プレクックとして6Pチーズ(市販プロセスチーズ、商品名:「雪印6Pチーズ」、製造元:雪印メグミルク株式会社)130.0gを混合した後、最終的なタンパク質含量が19%となるように水を添加した。また、凍結工程は、-25℃の冷凍庫を用いた以外、実施例1と同様の製造方法を経た比較例品1を得た。
【0039】
[比較例2]
副原料としてコーン酸化澱粉(スタビローズBM、松谷化学工業株式会社)110.0gの代わりにセオラス(セオラスDX-2、旭化成株式会社)35.0gを混合した後、最終的なタンパク質含量が17%となるように水を添加する以外、実施例1と同様の製造方法を経た比較例品2を得た。
【0040】
[比較例3]
副原料としてコーン酸化澱粉(スタビローズBM、松谷化学工業株式会社)110.0gの代わりにエンドウ未加工澱粉(Pea starch N-735、ロケットジャパン株式会社)115.0gを混合した後、最終的なタンパク質含量が16%となるように水を添加する以外、実施例1と同様の製造方法を経た比較例品3を得た。
【0041】
[比較例4]
副原料としてコーン酸化澱粉(スタビローズBM、松谷化学工業株式会社)110.0gの代わりにハイアミロースコーン酢酸澱粉(クリスプフィルム、イングレディオン・ジャパン株式会社)110.0gを混合した後、最終的なタンパク質含量が17%となるように水を添加する以外、実施例1と同様の製造方法を経た比較例品4を得た。
【0042】
[比較例5]
チェダーチーズ1.5kgと脂肪含量15%以下、タンパク質含量30%以上のスキムチーズ1.5kgを粉砕し、原料ナチュラルチーズとして用いた。これに溶融塩としてポリリン酸Na75.0g、pH調整剤として重曹22.3gを混合した後、最終的なタンパク質含量が24%となるように水を添加し、高せん断タイプのステファン型式乳化釜を用い、1500rpmで85℃まで加熱溶融した。85℃に到達後、そのままの回転数で粘度が100dPa・S以上になるまで撹拌保持した。得られたプロセスチーズ類は、フィルムに400gずつ充填して、厚さが20mmになるように成型した。その後、冷蔵庫(10℃)で8時間以上冷却した後、-12℃の冷凍庫内で8時間以上保存し凍結した。凍結したプロセスチーズ類は、冷蔵庫(10℃)で一晩かけて解凍し、比較例品5を得た。
【0043】
[試験例]
A:官能評価法
実施例品1~7、比較例品1~5、および市販のプロセスチーズ(商品名:「雪印6Pチーズ」、製造元:雪印メグミルク株式会社)の1品に関して、訓練されたパネラー4名により、ブラインドでの官能評価を実施した。官能評価項目は、プロセスチーズ類を喫食した際の「脆さ」および「粒子感」と、目視で観察した際の「チーズの断面の凹凸」とした。官能評価基準は、以下のように定義した。プロセスチーズ類の「もろさ」は、咀嚼時に、嚥下可能なサイズまで、プロセスチーズ類を破壊するために必要な力の合計と定義した。「脆さ」の官能評価点は、市販のプロセスチーズを基準(0点)とし、3点~-3点で点数付けした。つまり、「脆さ」がとても強く感じられた:3点、強く感じられた:2点、やや強く感じられた:1点、市販のプロセスチーズと同等:0点、やや弱く感じられた:-1点、弱く感じられた-2点、とても弱く感じられた:-3点とした。
プロセスチーズ類の「粒子感」は、咀嚼時に、舌上で感じられる細分化されたチーズの粒子の量と定義した。「粒子感」の官能評価点は、市販のプロセスチーズを基準(0点)とし、3点~-3点で点数付けした。つまり、「粒子感」がとても強く感じられた:3点、強く感じられた:2点、やや強く感じられた:1点、市販のプロセスチーズと同等:0点、やや弱く感じられた:-1点、弱く感じられた:-2点、とても弱く感じられた:-3点とした。
プロセスチーズ類の「チーズの断面の凹凸」は、チーズを手で割り、その断面を目視で観察した際の凹凸の程度と定義した。「チーズの断面の凹凸」の官能評価点は、市販のプロセスチーズを基準(0点)とし、3点~-3点で点数付けした。つまり、「チーズの断面の凹凸」がとてもある:3点、凹凸がある:2点、やや凹凸がある:1点、市販のプロセスチーズと同等:0点、やや凹凸がない:-1点、凹凸がない:-2点、とても凹凸がない:-3点とした。結果を表2に示す。
【0044】
B:物性評価法(チーズが折れるまでの距離)
実施例品1~7、比較例品1~5、および市販のプロセスチーズ(商品名:「雪印6Pチーズ」、製造元:雪印メグミルク株式会社)の1品に関して、テクスチャーアナライザー(英弘精機(株)、TA-XT2i)を用いたチーズの曲げ試験を次の手順で実施した。幅35mm×厚み15mm×高さ10mmに成型したチーズ類の試験体(
図1の1参照)を、25mm間隔を空けて設置した2つの支持体(幅90mm、厚み5mm、高さ32mm)(
図1の3、4参照)上に、端部に合わせて固定をせずに水平に乗せ、試験体の上面から冶具(幅90mm、厚み5mm、高さ13mm、冶具先端は直径5mmの半円形)(
図1の2参照)を試験体の中央部に接触させ、接触から、0.33mm/sの速度で降下させた際に、治具にチーズが接触してからチーズが折れるまでの治具の降下距離を測定した。なお、成型したチーズは、測定前に予め10℃で30分以上保持した。折れるまでの距離を表2に示す。
【0045】
C:物性評価法(チーズの断面の凹凸)
実施例品1~7、比較例品1~5、および市販のプロセスチーズ(商品名:「雪印6Pチーズ」、製造元:雪印メグミルク株式会社)の1品に関して、上記記載の折れたチーズの断面を、形状測定レーザー顕微鏡(株式会社キーエンス、VK-9710)を用いて、算術平均高さRa(観察視野内の全データを平均した高さの平面を基準面とし、各点の高さと基準面の高さの差の絶対値を平均したもの)を測定した。結果を表2に示す。
【0046】
D: 総合評価
実施例品1~7、比較例品1~5、および市販のプロセスチーズ(商品名:「雪印6Pチーズ」、製造元:雪印メグミルク株式会社)の1品に関して、以下のように総合的に評価した。評価基準について、プロセスチーズ類を喫食した際の「脆さ」および「粒子感」と、目視で観察した際の「チーズの断面の凹凸」の官能評価点から、いずれも0.75点以上、および、市販品のプロセスチーズと比べ、折れるまでの距離が小さく、断面凹凸の算術平均粗さが高かった場合は、該食感を有すると判断し、〇とする。それ以外の場合は、該食感を乏しいと判断し、×とする。結果を表2に示す。
【0047】
【0048】
【0049】
表1の測定値から、実施例品1~7、および比較例品1~5は、いずれも、タンパク質含量が10%以上、水分含量が70%以下、pHが5.00から6.35であった。
表2の官能評価点の結果から、実施例品1~7は、従来法で調製した比較例品1よりも、脆く、粒子感とチーズ断面の凹凸が増加した、該食感を発現した。また、特定の副原料であるコーン酸化澱粉の添加(実施例品1)、特定の原料チーズである脂肪15%以下、タンパク質30%以上のスキムチーズの使用(実施例品2、3)、特定の副原料と特定の原料チーズの併用(実施例品4、5)、特定の原料チーズを特定の副原料に置換する(実施例品6、7)ことにより、該食感の発現への影響は変わらなかった。冷却工程のみでも該食感を発現できた(実施例品2、4、6)が、凍結解凍工程を経ると、脆さの官能評価点がより高くなった(実施例品3、5、7)。
一方、比較例品2~5より、本発明の方法で調製した実施例品1に対して、特定の副原料以外の添加物への変更(比較例品2、3、4)や、特定の原料チーズの使用量が70%未満(比較例品5)となる場合には、該食感が発現しないことが示された。
表2の機器分析値の結果から、該食感を有する実施例品1~7は、曲げ試験による折れるまでの距離が4.2mm以内であり、表面粗さ計の測定によるチーズの断面の算術平均粗さ(Ra)が50μm以上であった。これらの数値は該食感の特性値であることが認められた。